令和1(ワ)659 損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年4月17日 前橋地方裁判所
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判決文本文20,846 文字)

令和6年4月17日判決言渡同日原本領収裁判所書記官前橋地方裁判所令和元年(ワ)第659号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日令和6年1月31日判決 主文 1 被告Aは、原告に対し、被告Bと連帯して110万円及びこれに対する令和2年1月26日から支払済みまで年5分の割合による金銭を支払え。 2 被告Bは、原告に対し、275万円及びこれに対する令和2年1 月26日から支払済みまで年5分の割合による金銭(ただし、110万円及びこれに対する令和2年1月26日から支払済みまで年5分の割合による金銭の限度で被告Aと連帯して)を支払え。 3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用はこれを120分し、その2を被告Aの、その5を被告 Bの各負担とし、その余を原告の負担とする。 5 この判決は、第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 事案の概要 a町長である原告は、被告らが、原告がa町役場の町長室において被告Bと性交渉をした(以下「本件性交渉」という。)などの虚偽の事実を摘示して原告の名誉を毀損したと主張し、被告らに対し、共同不法行為による損害賠償を請求するとともに、被告Aに対し、民法723条による謝罪広告を請求した。 第2 請求 1 被告らは、原告に対し、連帯して4400万円及びこれに対する令和2年1 月26日から支払済みまで年5分の割合による金銭を支払え。 2 被告Aは、原告に対し、別紙謝罪広告目録記載の謝罪広告を掲載せよ。 (請求の法的根拠)・上記1の主請求:名誉毀損の共同不法行為(民法719条1項)による損害賠償請求 ・上記1 2 被告Aは、原告に対し、別紙謝罪広告目録記載の謝罪広告を掲載せよ。 (請求の法的根拠)・上記1の主請求:名誉毀損の共同不法行為(民法719条1項)による損害賠償請求 ・上記1の附帯請求:遅延損害金請求(起算日は不法行為の日以降の日、利率は平成29年法律第44号による改正前の民法所定。)・上記2:民法723条による名誉回復措置請求第3 事案の概要 1 前提事実 以下の事実は、当事者間に争いがないか、本文中に掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。 ⑴ 当事者ア原告は、a町長である。 イ被告Aは、電子書籍「●●●● ●●●●●」(以下「本件電子書籍」とい う。)を出版したジャーナリストである。 ウ被告B及び被告Cは、下記⑵の各行為があった当時、a町議会議員であった。 ⑵ 事実経過ア被告Bは、令和元年10月頃、被告Aに対し、平成27年1月8日に町長室で原告と肉体関係(本件性交渉)を持った旨記載した被告B直筆の手紙(以下「本 件手紙」という。)、本件性交渉に至る経緯を記載した被告B作成の告白文(以下「本件告白文」という。)等を送付した(以下「本件情報提供」という。)。(乙5、6、60)イ被告Aは、令和元年11月11日、アマゾンジャパン合同会社が運営するウェブサイトにおいて、本件電子書籍を出版した(以下「本件出版行為」といい、同 ウェブサイトの本件電子書籍に係るウェブページを「本件ウェブページ」とい う。)。 本件電子書籍には、別紙記述目録記載の各記述を含め、本件告白文の内容がそのまま掲載されたほか、本件手紙が画像として掲載された。(甲1、乙1、54)ウ被告Bは、令和元年11月29日、被告A同席の下、渋川市役所にお 別紙記述目録記載の各記述を含め、本件告白文の内容がそのまま掲載されたほか、本件手紙が画像として掲載された。(甲1、乙1、54)ウ被告Bは、令和元年11月29日、被告A同席の下、渋川市役所において記者会見を開催し、原告と本件性交渉をしたこと等の発言をした(以下「本件記者会 見発言」という。)。(甲24)エ被告Cは、令和元年12月2日、a町議会において、a町長不信任決議案を提出し、被告Bが原告と本件性交渉をしたことを告発した旨記載された同決議案の理由書を読み上げた(以下「本件理由書読み上げ行為」という。)。 (甲2、25) オ被告Bは、前記エのa町議会において、原告と本件性交渉をしたことは事実であること及び被告B以外の女性から、原告から性被害を受けたとの告発を受けていることを発言した(以下「本件議会発言」という。)。(甲25、26)カ被告Bは、令和元年12月23日、24日及び26日、自身のブログにおいて、原告からセクハラ被害を受けているのは被告Bだけではないこと、被告Bが原 告と望まない肉体関係を持ったこと等を、同月29日、自身のFacebookにおいて、被告Bの知人2名が被告Bから本件性交渉の告白を受けたことを記載し署名した書面2通を、それぞれ公開した(以下「本件ウェブ公開行為」という。)。 (甲27~30)キ被告Bは、令和2年1月9日、原告のセクハラを告発したこと、被告B以外 にも原告からセクハラやパワハラの被害にあったという声が複数届いていること等を記載した折り込みビラを作成し、これをa町内の住戸へ配布した(以下「本件ビラ配布行為」といい、本件情報提供、本件出版行為、本件記者会見発言、本件理由書読み上げ行為、本件議会発言及び本件ウェブ公開行為と合わせて「本件各行為」という。また 町内の住戸へ配布した(以下「本件ビラ配布行為」といい、本件情報提供、本件出版行為、本件記者会見発言、本件理由書読み上げ行為、本件議会発言及び本件ウェブ公開行為と合わせて「本件各行為」という。また、被告Bによる本件情報提供、本件記者会見発言、本件議会発言、本 件ウェブ公開行為及び本件ビラ配布行為を合わせて「本件各B行為」という。)。 (甲18)ク被告Aは、令和4年12月7日付けで、各種SNSにおいて、本件電子書籍の内容が誤報であったことを認め、原告に対する謝罪声明書を発表するとともに、原告に対し、上記と同内容の謝罪文書を送付し、さらに、本件電子書籍の販売を打ち切った。(乙69~72) 2 争点⑴ 本件訴訟の提起が被告Aに対する訴権の濫用に当たるか否か(争点1)⑵ 本件各行為について、名誉毀損が成立するか否か(争点2)⑶ 本件各行為について、違法性阻却事由があるか否か(争点3)⑷ 本件各行為について、被告らの共同不法行為が成立するか否か(争点4) ⑸ 原告の損害額(争点5)⑹ 被告Aによる謝罪広告の必要があるか否か(争点6) 3 争点に対する当事者の主張別紙当事者の主張のとおりである。 第4 判断 1 認定事実本文中に掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 被告Bは、平成27年1月8日、町長室において原告と面会し、b警察署から、被告Bが当時の時間湯(湯長と呼ばれる者の指導・号令によって行われるa温泉の入浴法)の湯長を脅迫したとして事情聴取を受けたことについて相談した。 被告Bは、上記面会の内容を録音していたが、同録音には、原告が被告Bと本件性交渉をしたことや被告Bに対してわいせつ行為をしたことをうかがわせる音声は 情聴取を受けたことについて相談した。 被告Bは、上記面会の内容を録音していたが、同録音には、原告が被告Bと本件性交渉をしたことや被告Bに対してわいせつ行為をしたことをうかがわせる音声は記録されていない。(甲45)⑵ 被告Aは、令和元年8月半ば頃、被告Bがある旅館の関係者と性的関係を持った旨の文書、被告Bが原告を好いており、町長室で二人きりになった時に気持ち が通じたときは嬉しかった旨記載された上、原告と腕を組んでいる写真が貼付され た文書及び被告Bがa町内の複数の男性と関係を持ったことなどが記載された文書を入手した。そこで、被告Aは、令和元年9月9日、上記各文書の真偽等について確認すべく被告Bを取材し、その際に、原告と肉体関係があったか否かを質問したところ、被告Bは、黙ってうなずいた。 同取材の際、被告Aは、被告Bから、上記以上の本件性交渉の具体的な内容等の 説明を受けなかった。(乙2~4、12、54、被告B、被告A)⑶ 被告Aは、令和元年9月19日、原告に対し、時間湯に関する取材をしたが、本件性交渉に関する取材はしなかった。(被告A)⑷ 被告Bは、令和元年10月18日、被告Aに対し、本件手紙、本件告白文等を送付した(本件情報提供)。 本件手紙、本件告白文等には、被告Bが原告と肉体関係(本件性交渉)を持ったことや本件性交渉に至る経緯の記載があるものの、本件性交渉の具体的な内容は記載されていない。(乙5、6)⑸ 被告Aは、令和元年10月18日、被告Bに対し、本件手紙や本件告白文が届いたこと、本件情報提供の内容を略さずにそのまま引用し、被告Bの思いを世の 中の人に受け止めてもらう考えであること等を記載したメールを送信した。 これに対し、被告Bは、同日、被告Aに対し、本件電 こと、本件情報提供の内容を略さずにそのまま引用し、被告Bの思いを世の 中の人に受け止めてもらう考えであること等を記載したメールを送信した。 これに対し、被告Bは、同日、被告Aに対し、本件電子書籍の内容については被告Aに任せることを記載したメールを返信した。(乙62、63)⑹ 被告Aは、令和元年11月11日、アマゾン合同会社の運営するウェブサイトにおいて、別紙記述目録記載の各記述を含め、本件告白文の内容をそのまま掲載 したほか、本件手紙を画像として掲載した本件電子書籍の出版(本件出版行為)をした。また、本件ウェブページには、「a町議会の歴史を変えた初の女性町議員」、「私、〇〇〇〇は、町長室にて町長と肉体関係をもちました(告白書画像)」等、本文中に本件性交渉の内容が記載されていることが分かるような形で、本件電子書籍の目次が記載されていた。 被告Aが被告Bを取材してから本件出版行為をするまでの間に、本件情報提供以 外に、被告Aが被告Bに対して本件性交渉の具体的な内容を確認するとか、被告Bが被告Aに対して本件性交渉の具体的な内容を説明するということはなかった。 (甲1、乙1、54、被告B)⑺ 被告Bは、予め被告Aと記者会見の内容について本件電子書籍の内容が真実であることを伝えることとするとの打合せをした上で、令和元年11月29日、被 告A同席の下、渋川市役所において記者会見を開催し、原告と本件性交渉をしたこと、原告が被告Bを抱き寄せ、キスをして押し倒したこと、被告Bが抵抗したこと等の発言(本件記者会見発言)をした。本件記者会見発言は、テレビで全国放映された。(甲24、被告B本人、被告A本人)⑻ 被告Cは、令和元年12月2日、a町議会において、a町長不信任決議案を 提出し、議長から議案の説明 した。本件記者会見発言は、テレビで全国放映された。(甲24、被告B本人、被告A本人)⑻ 被告Cは、令和元年12月2日、a町議会において、a町長不信任決議案を 提出し、議長から議案の説明をするよう促されたことから、その議事進行に従って、被告Bが原告と本件性交渉をしたことを告発したこと及び原告が町長として欠格であること等が記載された同決議案の理由書を読み上げた(本件理由書読み上げ行為)。(甲2、25)⑼ 被告Bは、令和元年12月2日のa町議会において、原告と本件性交渉をし たことは事実であること及び被告B以外の女性から、原告から性被害を受けたとの告発を受けていることについて発言(本件議会発言)をした。(甲25,26)⑽ 被告Bは、令和元年12月23日、24日、26日及び29日、自身のブログ又はFacebookにおいて、原告からセクハラ被害を受けているのは被告Bだけではないこと及び被告Bが原告と望まない肉体関係を持ったことを記載すると ともに、被告Bの知人2名が被告Bから本件性交渉の告白を受けたことを記載し署名した書面2通の公開(本件ウェブ公開行為)をした。(甲27~30)⑾ 被告Bは、令和2年1月9日、原告のセクハラを告発したこと、被告B以外にも原告からセクハラやパワハラの被害にあったという声が複数届いていること等を記載した折り込みビラを作成し、これをa町内の住戸へ配布した(本件ビラ配布 行為)。(甲18) ⑿ 被告Aは、令和4年12月7日付けで、各種SNSにおいて、本件電子書籍の内容が誤報であったことを認め、原告に対して謝罪する内容の謝罪声明書を発表するとともに、原告に対し、上記と同内容が記載された謝罪文書を送付し、さらに、本件電子書籍の販売を打ち切った。(乙69~72) 2 争 あったことを認め、原告に対して謝罪する内容の謝罪声明書を発表するとともに、原告に対し、上記と同内容が記載された謝罪文書を送付し、さらに、本件電子書籍の販売を打ち切った。(乙69~72) 2 争点1(本件訴訟の提起が被告Aに対する訴権の濫用に当たるか否か)につ いて被告Aは、原告は、本件性交渉があったことを承知しながら、本件性交渉が虚偽であると主張し、威嚇・恫喝の手段として4400万円の損害賠償を請求するなどという被告らの経済力を無視した本件訴訟を提起しているから、本件訴訟は訴権の濫用に当たると主張する。 しかし、後記4⑴のとおり、本件性交渉があったというのは虚偽であるから、原告が被告らに対して損害賠償を求める本件訴訟を提起することが訴権の濫用に当たるとはいえない。 3 争点2(本件各行為について、名誉毀損が成立するか否か)について⑴ 被告Bの本件情報提供について ア本件情報提供は、原告が本件性交渉をしたとの事実を摘示するものであり、原告が、公人であるにもかかわらず、町長室という公的空間で性交渉をする人物であるという印象を与え、原告の社会的評価を低下させるものといえる。 イ被告Bの主張について 被告Bは、本件情報提供は被告Aに対してのみしたものであり、原告の社会 的評価を低下させるものではないと主張する。 しかし、前記前提事実及び前記認定事実のとおり、本件情報提供は、ジャーナリストである被告Aの取材に応じてされたものであるから、本件情報提供は、その内容を被告Aを介して第三者に伝播させる可能性の高い行為といえる。そうすると、本件情報提供が直接的には被告Aに対してのみされたものであったとしても、これ によって、原告の社会的評価を低下させる蓋然性があるから、被告Bの上記主 させる可能性の高い行為といえる。そうすると、本件情報提供が直接的には被告Aに対してのみされたものであったとしても、これ によって、原告の社会的評価を低下させる蓋然性があるから、被告Bの上記主張は 採用することができない。 被告Bは、仮に被告Aの出版行為によって原告の社会的評価が低下したとしても、本件電子書籍の執筆・出版は専ら被告Aが担っており、被告Bは、本件情報提供の内容がそのまま本件電子書籍に記載されることを承知していなかったから、被告Bの本件情報提供と被告Aの本件出版行為による原告の社会的評価の低下との 間に相当因果関係はないと主張する。 一般に、書籍の編集権は当該書籍の著者にあり、著者から取材を受けた者は、提供した情報の内容がそのままの形で書籍に掲載されることを予見していないのが通常であるため、取材を受けた者が提供した情報の内容がそのままの形で書籍に掲載されたとしても、取材を受けた者がした情報提供行為とその内容がそのままの形で 書籍に掲載されたことにより生じた他人の社会的評価の低下との間には、原則として相当因果関係がないものと解される。しかし、著者から取材を受けた者が、提供した情報の内容がそのままの形で書籍に掲載される可能性が高いことを予測しこれを容認しながらあえて著者に対して情報を提供した場合には、取材を受けた者がした情報提供行為とその内容がそのままの形で書籍に掲載されたことにより生じた他 人の社会的評価の低下との間には、例外的に相当因果関係があるものと解される。 前記認定のとおり、本件電子書籍は、本件情報提供に係る本件手紙及び本件告白文の内容をそのままの形で掲載しており、後記⑵で説示するとおり、本件電子書籍の出版によって原告の社会的評価が低下したと認められる。そして、前記認定のとおり は、本件情報提供に係る本件手紙及び本件告白文の内容をそのままの形で掲載しており、後記⑵で説示するとおり、本件電子書籍の出版によって原告の社会的評価が低下したと認められる。そして、前記認定のとおり、被告Bは、本件情報提供をした当日、被告Aから本件情報提供の内容を略さ ずにそのまま引用し、被告Bの思いを世の中の人に受け止めてもらう考えであるとのメールを受信したのに対し、本件電子書籍の内容については被告Aに任せるとのメールを返信していることからすれば、本件情報提供当時から、その内容がそのままの形で本件電子書籍に掲載される可能性が高いことを予測しこれを容認しながらあえて被告Aに対して本件情報提供をしたことが推認される。 そうすると、被告Bの本件情報提供と被告Aの本件出版行為による原告の社会的 評価の低下との間には、相当因果関係があるというべきであるから、被告Bの上記主張は採用することができない。 ウ以上によれば、被告Bの本件情報提供には名誉毀損が成立する。 ⑵ 被告Aの本件出版行為について被告Aは、本件電子書籍及び本件ウェブページの大部分は、原告の社会的評価を 低下させないものであるから、被告Aの本件出版行為に名誉毀損は成立しないと主張する。 しかし、一般の読者の普通の注意と読み方を基準に判断すれば、本件電子書籍及び本件ウェブページの内容は、いずれも原告が本件性交渉をしたとの事実を摘示するものであって、原告が、公人であるにもかかわらず、町長室という公的空間で性 交渉をする人物という印象を与え、原告の社会的評価を低下させるものであるといえる。 したがって、被告Aの本件出版行為には名誉毀損が成立するから、被告Aの上記主張は採用することができない。 ⑶ 被告Cの本件理由書読み上げ行為について 的評価を低下させるものであるといえる。 したがって、被告Aの本件出版行為には名誉毀損が成立するから、被告Aの上記主張は採用することができない。 ⑶ 被告Cの本件理由書読み上げ行為について 国会議員が、国会で個別の国民の名誉を毀損する発言をしたとしても、これが違法とされるためには、当該国会議員が、その職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは、虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、国会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とする(最高裁判所平 成9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3850頁参照)。住民の代表機関である地方議会においても、住民の間に存する多元的な意見及び諸々の利益を、その構成員たる地方議会議員の自由な討論を通して調整し、究極的には多数決原理によって地方の政治を実現していくために、地方議会議員があらゆる面から質疑等を尽くすことが求められているという点で、国会議員と共通するものがある。そこ で、地方議会議員が、地方議会で特定の個人の名誉を毀損する発言をしたとしても、 これが違法とされるためには、当該地方議会議員が、その職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは、虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、その付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とすると解すべきである。 確かに、被告Cの本件理由書読み上げ行為は、被告Bが原告と本件性交渉をしたことを告発したとの事実を摘示するものであるから、原告の社会的評価を低下させるものといえる。しかし、被告Cの本件理由書読み上げ行為は 、被告Cの本件理由書読み上げ行為は、被告Bが原告と本件性交渉をしたことを告発したとの事実を摘示するものであるから、原告の社会的評価を低下させるものといえる。しかし、被告Cの本件理由書読み上げ行為は、a町議会において、a町長不信任決議案の審議に際し、議長から議案の説明をするよう促されたことから、その議事進行に従ってされたものであり、a町議会議員の職務としてされたも のである。そして、本件全証拠によっても、被告Cについて、その付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があると認めるに足りない。 したがって、被告Cの本件理由書読み上げ行為は違法とはいえず、名誉棄損による不法行為は成立しない。 ⑷ 被告Bの本件記者会見発言、本件議会発言、本件ウェブ公開行為及び本件ビラ配布行為についてア被告Bの上記各行為は、原告が本件性交渉をしたとの事実を摘示するものであるから、原告が、公人であるにもかかわらず、町長室という公的空間で性交渉をする人物という印象を与え、原告の社会的評価を低下させるものである。 また、被告Bの本件議会発言、本件ウェブ公開行為及び本件ビラ配布行為は、原告が被告B以外の女性に対しても性加害をしたとの事実を摘示するものであるから、原告が、公人であるにもかかわらず、女性に対して性加害をする人物という印象を与え、原告の社会的評価を低下させるものである。 したがって、被告Bの上記各行為には名誉毀損が成立する。 イ被告Bは、原告及びa町議会議員らが本件出版行為後にa町内に配布したビ ラにより、被告Bが嘘つきでいかがわしい人物であるとの印象付けがされたことからすると、被告Bの上記各行為によって摘示された事実の信用性は著しく乏しく、これによって原告の社 a町内に配布したビ ラにより、被告Bが嘘つきでいかがわしい人物であるとの印象付けがされたことからすると、被告Bの上記各行為によって摘示された事実の信用性は著しく乏しく、これによって原告の社会的評価が低下することはあり得ないと主張する。 しかし、証拠(丙3~5)によれば、原告及びa町議会議員らが、本件出版行為後、本件性交渉が虚偽であること、被告Bが嘘つきであること等を記載した各ビラ をa町内に配布したことが認められるが、各ビラの内容を踏まえても、その配布がされたことで、被告Bの上記各行為によって、その摘示された事実の信用性が失われたとまではいえず、原告の社会的評価が低下しないとはいえない。 したがって、被告Bの上記主張は採用することができない。 ウなお、被告Bの本件議会発言は地方議会議員としてしたa町議会での発言で あるため、前記⑶と同様に、違法か否かが問題となるけれども、後記4で説示したところによれば、被告Bは、原告が本件性交渉をしたとの事実及び原告が被告B以外の女性に対して性加害をしたとの事実がいずれも真実でないことを認識しながら、あえて上記各事実を摘示したものであるから、被告Bには、その付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があるとい うべきである。 したがって、被告Bの本件議会発言は違法であり、名誉毀損が成立することは否定されない。 4 争点3(本件各行為について、違法性阻却事由があるか否か)について事実を摘示しての名誉棄損については、その行為が公共の利害に関する事実に係 り専ら公益を図る目的に出た場合には、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、当該行為には違法性がなく、不法行為は成立しないものと解され、もし、上記事実が真実で 害に関する事実に係 り専ら公益を図る目的に出た場合には、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、当該行為には違法性がなく、不法行為は成立しないものと解され、もし、上記事実が真実であることが証明されなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、当該行為には故意もしくは過失がなく、不法行為は成立しないものと解される(最高裁判所昭和41年6月23 日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁参照)。 ⑴ 被告Bについてア原告が本件性交渉をしたとの事実の摘示について前記認定のとおり、被告Bが平成27年1月8日に原告と面会した際の録音に、本件性交渉があったことをうかがわせる音声は記録されていない。また、被告Bは、本人尋問において、本件性交渉は真実でなかった旨供述している。そうすると、本 件性交渉があったというのは虚偽であると認められるから、被告Bにおいて、原告が本件性交渉をしたとの事実を摘示したことについて、違法性阻却事由は認められない。 被告Bは、原告が、平成27年1月8日、被告Bに対し、被告Bの上着の中に手を入れて胸を触る、太ももを触るなどのわいせつ行為に及んだから、本件各B行為 に係る主要な事実は真実であると主張し、被告Bの供述にはこれに沿う部分がある。 しかし、本件各B行為は本件性交渉の事実を摘示するものであるから、仮に原告の被告Bに対する上記わいせつ行為が真実であったとしても、摘示された事実が真実であるということはできない。また、被告Bが、本件訴訟において、当初、本件性交渉があったことは真実である旨主張していたのに、被告Bの本人尋問の直前に なって、上記主張を撤回した上、原告が被告Bに対してわいせつ行為をしたことは真実であると主張を において、当初、本件性交渉があったことは真実である旨主張していたのに、被告Bの本人尋問の直前に なって、上記主張を撤回した上、原告が被告Bに対してわいせつ行為をしたことは真実であると主張を変遷させ、かつ、この主張の変遷に合理的な理由は見出せないこと、前記認定のとおり、被告Bが平成27年1月8日に原告と面会した際の録音に、原告が被告Bにわいせつ行為をしたことをうかがわせる音声は記録されていないことからすると、被告Bの上記供述は信用することができない。 したがって、被告Bの上記主張は採用することができない。 イ原告が被告B以外の女性に対して性加害をしたとの事実の摘示について被告Bは、ある女性が原告と深い関係になったこと等が記載された投書を受け取ったこと及び複数の元a町議会議員や宿泊業関係者から、当該女性が原告からの連絡に困惑していたこと等を聞いたことからすると、原告が被告B以外の女性に対し て性加害をしたことは真実であるし、被告Bがこれを真実であると信ずるについて 相当な理由があると主張するしかし、被告Bが受け取った上記投書(丙15)には、ある女性が原告と深い関係になったことや原告が当該女性の就職を世話したことなどが記載されているものの、当該女性が原告から性被害を受けた旨は記載されていない。また、被告Bは、本人尋問において、a町民から、原告から性被害を受けた女性がいるという話を聞 いたことはない旨供述している。そうすると、原告が被告B以外の女性に対して性加害をしたことが真実であるとはいえず、また、被告Bがこれを真実であると信ずるについて相当の理由があるとはいえない。 したがって、被告Bにおいて、原告が被告B以外の女性に対して性加害をしたとの事実を摘示したことについて違法性阻却事由は認められ Bがこれを真実であると信ずるについて相当の理由があるとはいえない。 したがって、被告Bにおいて、原告が被告B以外の女性に対して性加害をしたとの事実を摘示したことについて違法性阻却事由は認められず、被告Bの上記主張は 採用することができない。 ウ小括以上によれば、本件各B行為について、違法性阻却事由は認められない。 ⑵ 被告Aについてア前記認定のとおり、被告Aは、令和元年9月9日に被告Bを取材してから同 年11月11日に本件出版行為をするまでの間、被告Bから、本件性交渉の具体的な内容の説明を受けなかったにもかかわらず、被告Bに対し、その説明を求めることも、その内容を確認することもしなかった。また、前記認定のとおり、被告Aは、原告に対し、本件性交渉に関する反面取材をする機会があったのに、これをしていない。そうすると、被告Aは、本件性交渉があったことが真実か否かについて十分 な取材等をしなかったものであるから、本件性交渉があったことが真実と信ずるについて相当の理由があるとはいえない。 したがって、被告Aの本件出版行為について、違法性阻却事由は認められない。 イ被告Aの主張について 被告Aは、①被告Bが、被告Aの取材に応じて、本件性交渉があったことを 告白し、被告Aに対し、本件手紙や本件告白文を送付していること、②被告Bの本 件性交渉を告白した際の態度・様子が自然であったこと、③同告白の内容が自然かつ詳細であったこと、④同告白が客観的事実による裏付けを伴うものであったこと、⑤被告Bに虚偽の告白をする動機がないことからすると、被告Aには、本件性交渉が真実であると信じるについて相当の理由があると主張する。 しかし、上記①、②及び⑤の事情があるとしても、被告Aにおいて本件性交渉が 虚偽の告白をする動機がないことからすると、被告Aには、本件性交渉が真実であると信じるについて相当の理由があると主張する。 しかし、上記①、②及び⑤の事情があるとしても、被告Aにおいて本件性交渉が あったことが真実であると信ずるについて相当な理由があるとの根拠としては足りない。 上記③については、前記アで説示したとおり、被告Aは、本件出版行為までの間、被告Bから、本件性交渉の具体的な内容の説明を受けていないにもかかわらず、その説明を求めたり、その内容を確認したりすることもしなかったのであるから、被 告Bの告白の内容が真実であると信ずるに足りるものであったとはいえない。 上記④については、本件全証拠によっても、本件性交渉があったことを裏付ける客観的事実があったことを認めるに足りない。 被告Aは、原告に対する反面取材をしなかったのは、原告が、強引に湯長制度を廃止したような人物であり、また、虚偽の文書を作成するなどして事実を歪 曲・捏造すると想定される人物であったことから、原告に対して取材をしても意味がなく、かえって取材をすることによる弊害が予想されたためであり、合理的な理由があると主張する。 しかし、原告に対して本件性交渉に関する反面取材をすることの意味は、原告の本件性交渉の事実に対する認否や原告の認識している本件性交渉当日の事実経過を 確認したり、原告の反面取材に対する態度・言動等を観察したりして、被告Bの本件情報提供の内容の真実性を吟味し、場合によっては、原告の認識している上記事実経過を裏付けるような客観的事実の有無を確認することなどを通して、本件性交渉があったことが真実か否かを検討する点にある。そうすると、仮に原告が被告Aの主張するような人物であったとしても、そのことをもって、原告に対する本件性 的事実の有無を確認することなどを通して、本件性交渉があったことが真実か否かを検討する点にある。そうすると、仮に原告が被告Aの主張するような人物であったとしても、そのことをもって、原告に対する本件性 交渉に関する反面取材をせずに、本件出版行為をすることが正当化されるものでは ない。 したがって、被告Aの上記各主張はいずれも採用することができない。 5 争点4(本件各行為について、被告らの共同不法行為が成立するか否か)について⑴ 被告Bの本件情報提供及び被告Aの本件出版行為について 前記認定のとおり、被告Aは、被告Bの本件情報提供を受け、その内容をそのままの形で掲載した本件電子書籍を出版した。そうすると、被告Bの本件情報提供と被告Bの本件出版行為には関連共同性が認められるから、共同不法行為が成立する。 ⑵ 被告Bの本件記者会見発言についてア前記認定のとおり、被告Aは、予め被告Bと記者会見の内容について本件電 子書籍の内容が真実であることを伝えることとするとの打合せをした上で、記者会見に同席した。そうすると、被告Aは、被告Bと共同して、記者会見を開催したものといえ、被告Bの本件記者会見発言について共同不法行為が成立する。 イ原告は、被告Bの本件記者会見発言によって原告が被った名誉毀損の損害と、被告Cの本件理由書読み上げ行為によって原告が被った名誉毀損の損害とが不可分 であるから、被告Cには、民法719条1項後段類推適用による共同不法行為が成立すると主張する。 しかし、前記3⑶で説示したとおり、被告Cの本件理由書読み上げ行為に名誉毀損による不法行為は成立しないから、原告の上記主張はその前提を欠くものであって、採用することができない。 ⑶ 被告Bの本件議会発言について とおり、被告Cの本件理由書読み上げ行為に名誉毀損による不法行為は成立しないから、原告の上記主張はその前提を欠くものであって、採用することができない。 ⑶ 被告Bの本件議会発言についてア原告は、被告Bの本件議会発言は、被告Cの本件理由書読み上げ行為と同一のa町議会でされたものであり、関連共同性が認められるから、被告Cには、民法719条1項前段による共同不法行為が成立すると主張するけれども、この主張が前提を欠くことは、前記⑵イで説示したとおりである。 イ原告は、被告Bの本件議会発言によって原告が被った名誉毀損の損害と、被 告Aの本件出版行為によって原告が被った名誉毀損の損害とが不可分であるから、被告Aには、民法719条1項後段類推適用による共同不法行為が成立すると主張する。 しかし、被告Bの本件議会発言によって原告が被った名誉毀損の損害は、被告Aの本件出版行為によって原告が被った名誉毀損の損害とは別個独立のものというべ きであって、これらの損害が不可分のものとはいえない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ⑷ 被告Bの本件ウェブ公開行為及び本件ビラ配布行為について原告は、被告Bの上記各行為によって原告が被った名誉毀損の損害と、被告Aの本件出版行為及び被告Cの本件理由書読み上げ行為によって原告が被った名誉毀損 の損害とが不可分であるから、被告A及び被告Cには、民法719条1項後段類推適用による共同不法行為が成立すると主張するけれども、これを採用することができないことは、被告Aについては前記⑶イで、被告Cについては前記⑵イで説示したとおりである。 ⑸ 小括 以上によれば、被告Bと被告Aには、被告Bの本件情報提供及び被告Aの本件出版行為並びに被告Bの 被告Aについては前記⑶イで、被告Cについては前記⑵イで説示したとおりである。 ⑸ 小括 以上によれば、被告Bと被告Aには、被告Bの本件情報提供及び被告Aの本件出版行為並びに被告Bの本件記者会見発言について、共同不法行為が成立するから、被告B及び被告Aは、それぞれの損害賠償責任の範囲内で、連帯して賠償金を支払う義務を負う。 6 争点5(原告の損害額)について ⑴ 被告Bについてア慰謝料 250万円被告Bの名誉毀損行為である本件B各行為が合計5回に及ぶこと、これらの行為によって摘示された事実が、原告が本件性交渉をしたこと及び被告B以外の女性に対して性加害をしたことであり、いずれもa町長である原告の社会的評価を大きく 低下させるものであること、殊に本件記者会見発言はテレビで全国放映されたこと、 その他本件に顕れたすべての事情及び弁論の全趣旨を勘案して、慰謝料は250万円が相当である。 イ弁護士費用 25万円弁護士費用は、25万円を相当と認める。 ウ合計 275万円 ⑵ 被告Aについてア慰謝料 100万円被告Aが本件出版行為をしたことに加え、被告Bの本件記者会見発言について共同不法行為が成立すること、これらの行為によって摘示された事実が、前記⑴アで説示したとおり、原告の社会的評価を大きく低下させるものであること、他方、被 告Aが本件電子書籍の内容が誤報であることを認め、原告に謝罪しており、本件電子書籍の販売を打ち切っていること等を考慮し、慰謝料は100万円 社会的評価を大きく低下させるものであること、他方、被 告Aが本件電子書籍の内容が誤報であることを認め、原告に謝罪しており、本件電子書籍の販売を打ち切っていること等を考慮し、慰謝料は100万円が相当である。 イ弁護士費用 10万円弁護士費用は、10万円を相当と認める。 ウ合計 110万円 7 争点6(被告Aによる謝罪広告の必要があるか否か)について前記認定のとおり、被告Aは、各種SNSにおいて、本件電子書籍の内容が誤報であったことを認め、原告に対して謝罪する内容の謝罪声明書を発表し、原告に対して上記と同内容が記載された謝罪文書を送付し、さらに、本件電子書籍の販売を打ち切ったことからすると、被告Aにおいて、損害賠償責任に加えて、謝罪広告を 掲載すべき必要性があるとまではいえない。 第5 結論以上によれば、原告の被告Aに対する請求は、被告Bと連帯して110万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で認容すべきであり、原告の被告Bに対する請求は、275万円及びこれに対する遅延損害金(ただし、110万円及び これに対する遅延損害金の限度で被告Aと連帯して)の支払を求める限度で認容す べきであり、原告の被告Cに対する請求は棄却すべきである。 前橋地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官田中芳樹 裁判官杉浦正典 裁判官清水瑛夫 (別紙)当事者の主張 ⑴ 争点2(本件各行為について、名誉毀損が成立するか否か)について(原告の主張) ア 裁判官清水瑛夫 (別紙)当事者の主張 ⑴ 争点2(本件各行為について、名誉毀損が成立するか否か)について(原告の主張) ア被告Bの本件情報提供について被告Bは、被告Aに対し、本件情報提供をし、原告と本件性交渉をしたとの虚偽の事実を告白した。 被告Bは、被告Aが本件情報提供の内容をそのまま本件電子書籍に掲載することについてあらかじめ承知した上で本件情報提供をしたから、本件情報提供は、原告 の社会的評価の低下と相当因果関係がある。 したがって、被告Bの本件情報提供には名誉毀損が成立する。 イ被告Aの本件出版行為について被告Aは、本件出版行為によって、原告が本件性交渉をしたとの虚偽の事実を公然と摘示し、原告が、公人であるにもかかわらず、町長室という公的空間で性交渉 をする人物として、原告の社会的評価を低下させ、その名誉を毀損した。 したがって、被告Aの本件出版行為には名誉毀損が成立する。 ウ被告Cの本件理由書読み上げ行為について被告Cは、本件理由書読み上げ行為をし、原告が本件性交渉をしたとの虚偽の事実を摘示した。 a町議会がインターネット配信されていることからすると、本件理由書読み上げ行為には、地方議会議員の地方議会での発言であっても、公務の範囲を逸脱した被告C個人の行為として、名誉毀損が成立する。 エ被告Bの本件記者会見発言、本件議会発言、本件ウェブ公開行為及び本件ビラ配布行為について 被告Bは、上記各行為によって、原告と本件性交渉をしたこと及び原告が被告B 以外の女性に対してセクハラ等をしたこととの虚偽の事実を公然と摘示し、原告が、公人であるにもかかわらず、町長室という公的空間で性交渉を 行為によって、原告と本件性交渉をしたこと及び原告が被告B 以外の女性に対してセクハラ等をしたこととの虚偽の事実を公然と摘示し、原告が、公人であるにもかかわらず、町長室という公的空間で性交渉をする人物であり、女性に対して性加害をする人物であるとして、原告の社会的評価を低下させ、その名誉を毀損した。 したがって、被告Bの上記各行為には名誉毀損が成立する。 (被告Bの主張)ア本件情報提供について本件情報提供は、被告Aに対してのみしたものであり、原告の社会的評価を低下させるものではない。 仮に被告Aの本件出版行為によって原告の社会的評価が低下したとしても、本件 電子書籍の執筆・出版は専ら被告Aが担っており、被告Bは、本件情報提供の内容がそのまま本件電子書籍に記載されることを承知していなかった。したがって、被告Bの本件情報提供と被告Aの本件出版行為による原告の社会的評価の低下との間に相当因果関係はなく、被告Bに名誉毀損は成立しない。 イ本件記者会見発言、本件議会発言、本件ウェブ公開行為及び本件ビラ配布行 為について原告及び被告B以外のa町議会議員らが本件出版行為後にa町内に配布したビラにより、被告Bが嘘つきでいかがわしい人物であるとの印象付けがされたことからすると、被告Bの上記各行為によって摘示された事実の信用性は著しく乏しく、これによって原告の社会的評価が低下することはあり得ない。 したがって、被告Bの上記各行為に名誉毀損は成立しない。 (被告Aの主張)本件電子書籍及び本件ウェブページの大部分は、原告の社会的評価を低下させないものであるから、被告Aの本件出版行為に名誉毀損は成立しない。 (被告Cの主張) 被告Cは、被告Bの言葉を信じ、a町議会議員としての職責を全 ージの大部分は、原告の社会的評価を低下させないものであるから、被告Aの本件出版行為に名誉毀損は成立しない。 (被告Cの主張) 被告Cは、被告Bの言葉を信じ、a町議会議員としての職責を全うするためにa 町長不信任決議案を提出し、その理由書を読み上げただけであり、職務とかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示したとか、虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示したものではないから、被告Cの本件理由書読み上げ行為に名誉毀損は成立しない。 また、本件理由書読み上げ行為は、公権力の行使に当たる公務員である被告Cが、 その職務として行ったものであるから、公務員個人である被告Cは責任を負わない。 ⑵ 争点3(本件各行為について、違法性阻却事由があるか否か)について(被告Bの主張)本件性交渉及び原告が被告B以外の女性に対して性加害をしたことを公表することは、公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあ る。 そして、原告は、平成27年1月8日、被告Bに対し、被告Bの上着の中に手を入れて胸を触る、太ももを触るなどのわいせつ行為に及んだから、本件各B行為に係る主要な事実は真実である。 また、被告Bが、ある女性が原告と深い関係になったこと等が記載された投書を 受け取ったこと及び複数の元a町議会議員や宿泊業関係者から、当該女性が原告からの連絡に困惑していたこと等を聞いたことからすると、原告が被告B以外の女性に対して性加害をしたことは真実であるし、被告Bがこれを真実であると信ずるについて相当な理由がある。 したがって、被告Bには違法性阻却事由がある。 (被告Aの主張)本件出版行為は、執務時間中の公的空間における町長のいかがわしい行為という公共の利害に関す ついて相当な理由がある。 したがって、被告Bには違法性阻却事由がある。 (被告Aの主張)本件出版行為は、執務時間中の公的空間における町長のいかがわしい行為という公共の利害に関する事実に係るものであり、その目的が町長の資質・適格性を問うという専ら公益を図ることにあった。 そして、①被告Bが、被告Aの取材に応じて、本件性交渉があったことを告白し、 被告Aに対し、本件手紙や本件告白文を送付していること、②被告Bの本件性交渉 を告白した際の態度・様子が自然であったこと、③同告白の内容が自然かつ詳細であったこと、④同告白が客観的事実による裏付けを伴うものであったこと、⑤被告Bに虚偽の告白をする動機がないことからすると、被告Aには、本件性交渉が真実であると信ずるについて相当の理由がある。 被告Aは、原告に対する反面取材をしていないが、これは、原告が、強引に湯長 制度を廃止したような人物であり、また、虚偽の文書を作成するなどして事実を歪曲・捏造すると想定される人物であったことから、原告に対して取材をしても意味がなく、かえって取材をすることによる弊害が予想されたためであり、原告に対する反面取材をしなかったことには合理的な理由がある。 したがって、被告Aには違法性阻却事由がある (被告Cの主張)被告Cの本件理由書読み上げ行為には、公共性・公益目的性がある。そして、本件理由書読み上げ行為が摘示する、被告Bが原告と本件性交渉をしたことを告白したとの事実は、真実である。 したがって、被告Cには違法性阻却事由がある。 (原告の主張)ア被告Bについて本件性交渉及び原告が被告B以外の女性に対して性加害をしたことは公共の利害に関する事実ではなく、また、これらが公表された目的は公益を図ること る。 (原告の主張)ア被告Bについて本件性交渉及び原告が被告B以外の女性に対して性加害をしたことは公共の利害に関する事実ではなく、また、これらが公表された目的は公益を図ることにない。 そして、本件性交渉及び原告が被告B以外の女性に対して性加害をしたことは、全 て虚偽である。 したがって、被告Bに違法性阻却事由はない。 イ被告Aについて本件電子書籍の記載は、一般的に公表をはばかるような異性関係の醜聞に属する私生活上の行状であるため、公共の利害に関する事実に当たらないし、被告Aが反 対する政策を推し進める原告を窮地に陥れる目的でされたものであって、専ら公益 を図る目的でされたものとはいえない。 そして、①被告Aが、被告Bから本件性交渉について告白されたのに、原告に対して本件性交渉に関する反面取材をしていないこと、②被告Bが、被告Aに対し、本件性交渉があったことを伝えただけで、本件性交渉に関する具体的事実を説明しなかったこと、③被告Bが被告Aに送付した本件告白文は、経緯については詳細な 記載があるのに、肝心の肉体関係に関する記述が欠落しており不自然であることから、被告Aについて、本件性交渉が真実であると信ずるについて相当の理由があるとはいえない。 したがって、被告Aの本件出版行為に違法性阻却事由はない。 ⑶ 争点4(本件各行為について、被告らの共同不法行為が成立するか否か)に ついて(原告の主張)ア被告Bの本件情報提供、被告Aの本件出版行為、被告Cの本件理由書読み上げ行為について被告Aの本件出版行為は、被告Bの本件情報提供の内容を鵜呑みにし、原告に対 する反面取材を経ずにされたものであるから、被告Bの本件情報提供との間に関連共同性がある。 また 行為について被告Aの本件出版行為は、被告Bの本件情報提供の内容を鵜呑みにし、原告に対 する反面取材を経ずにされたものであるから、被告Bの本件情報提供との間に関連共同性がある。 また、被告Cは、原告が本件情報提供の内容が事実に反すると反論していることを知りながら、a町議会議員として慎重な検討をすることなく、本件情報提供の内容を鵜呑みにしたこと及び被告Bが被告Cの提出したa町長不信任決議案の賛同者 となっていることからすると、被告Bの本件情報提供と被告Cの本件理由書読み上げ行為との間には関連共同性がある。 したがって、被告らには共同不法行為が成立する。 イ被告Bの本件記者会見発言について被告Aは、被告Bと共同して、本件記者会見発言があった記者会見を開催したか ら、民法719条1項前段による共同不法行為が成立する。 また、被告Bの本件記者会見発言によって原告が被った名誉毀損の損害と、被告Cの本件理由書読み上げ行為によって原告が被った名誉毀損の損害とが不可分であり、その寄与度が明らかでないため、被害者救済の観点から、被告Cには、民法719条1項後段類推適用による共同不法行為が成立する。 ウ被告Bの本件議会発言について 被告Bの本件議会発言は、被告Cの本件理由書読み上げ行為と同一のa町議会でされたものであり、関連共同性があるから、被告Cには、民法719条1項前段による共同不法行為が成立する。 また、被告Bの本件議会発言によって原告が被った名誉毀損の損害と、被告Aの本件出版行為によって原告が被った名誉毀損の損害とが不可分であり、その寄与度 が明らかでないため、被害者救済の観点から、被告Aには、民法719条1項後段類推適用による共同不法行為が成立する。 エ被告Bの本件ウェブ 被った名誉毀損の損害とが不可分であり、その寄与度 が明らかでないため、被害者救済の観点から、被告Aには、民法719条1項後段類推適用による共同不法行為が成立する。 エ被告Bの本件ウェブ公開行為及び本件ビラ配布行為について被告Bの本件ウェブ公開行為及び本件ビラ配布行為によって原告が被った名誉毀損の損害と、被告Aの本件出版行為及び被告Cの本件理由書読み上げ行為によって 原告が被った名誉毀損の損害とが不可分であり、その寄与度が明らかでないため、被害者救済の観点から、被告A及び被告Cには、民法719条1項後段類推適用による共同不法行為が成立する。 (被告Bの主張)否認ないし争う。 (被告Aの主張)否認ないし争う。 特に被告Bの本件記者会見発言については、被告Bが被告Aとの事前の打ち合わせを無視して一方的に自己の主張を述べるばかりで、被告Aが関与する余地がなかったから、被告Aに共同不法行為は成立しない。 (被告Cの主張) 否認ないし争う。 ⑷ 争点5(原告の損害額)について(原告の主張)ア慰謝料 4000万円原告は、被告らの本件各行為を通じて本件性交渉の事実が全国規模で伝播された ことにより、極めて重大な名誉毀損、人格権侵害を受けた。慰謝料は4000万円を下回らない。 イ弁護士費用 400万円ウ合計 4400万円(被告Bの主張) 否認ないし争う。 (被告Aの主張)被告Aが、本件電子書籍の内容が誤報であったことを認め、謝罪声明書を発表していること、原告に謝罪していること、本件電子書籍の販 (被告Bの主張) 否認ないし争う。 (被告Aの主張)被告Aが、本件電子書籍の内容が誤報であったことを認め、謝罪声明書を発表していること、原告に謝罪していること、本件電子書籍の販売を打ち切ったこと及び本件電子書籍による印税が11万円に達しないことからすると、原告の請求は過大 である。 (被告Cの主張)否認ないし争う。

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