平成19年(ワ)第3107号道路工事差止請求事件判決主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求被告は,以下の事業の施行に係る工事を行ってはならない。 ①施行者の名称名古屋市(被告)②都市計画事業の種類及び名称名古屋市年間都市計画道路事業3・5・118号池内猪高線③事業地名古屋市千種区振甫町3丁目6番を起点とし,同区田代町字姫ヶ池上2番の1を終点とする,延長752メートル,幅員15.0メートルから20.1メートルの道路第2事案の概要本件は,別紙1事業目録1ないし4記載の事業(以下,特に断らない限り,いずれも「本件道路事業」というが,現在被告において実施する予定の本件道路事業は別紙1事業目録4記載の事業(以下「平成18年道路事業」又は「本件差止対象道路事業」という。)である。)の事業地の周辺地域(以下「本件地域」という。)に居住する原告らが,被告に対し,景観権,眺望権,人格権,日照権,所有権,通行権などに基づき,本件差止対象道路事業の施行に係る第1「請求」記載の工事(以下「本件道路工事」といい,本件道路工事により施工される道路を「本件道路」という。)の差止めを求める事案である。 前提事実(当事者間に争いがないか,括弧内に掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者原告らは,本件道路事業の事業地の周辺地域(本件地域)に居住する住民である。本件地域に居住する住民(以下「本件地域住民」という。)の一部(原告らを含む)は,本件道路の一部を高架式道路として建設することに反対し,平成15年2月下旬,四観音道地区環境を守る会(以下「守る会」といい,その参加者を「守る会参加者」という。)を結成した。 被告は,本件道路事業の事業主 路の一部を高架式道路として建設することに反対し,平成15年2月下旬,四観音道地区環境を守る会(以下「守る会」といい,その参加者を「守る会参加者」という。)を結成した。 被告は,本件道路事業の事業主体である。 (2) 本件地域本件地域は,覚王山日泰寺(以下「日泰寺」という。)を中心とする地域であり,日泰寺をはじめとした神社・仏閣のほか,別荘,学校,塔などの個性的な近代建築物が数多く存在する。 原告らは,それぞれ別紙2図面記載のとおり,原告甲aは同図面①に,原告甲bは同図面②に,原告甲cは同図面③に,原告甲dは同図面④に,原告甲eは同図面⑤に,原告甲fは同図面⑥に居住する。 (3) 本件道路事業ア池内猪高線都市計画昭和21年7月23日付けで,本件道路事業の基礎となる旧都計2等大路第2類第11号線池内猪高線(昭和48年の都市計画の変更以降の名称は「名古屋都市計画道路事業3・5・118号池内猪高線」である。)に係る都市計画(以下「池内猪高線都市計画」という。)が決定された(乙1,2)。 被告は,都市計画法(昭和43年法律第100号。ただし,都市計画法については各行為の時点で効力を有するものを意味する。以下同じ。)21条2項において準用する同法18条1項に基づいて,池内猪高線都市計画のうち約170メートルの区間(本件道路事業の一部に係る区間。以下「本件高架式区間」という。)を高架・側道式とし,併せて本件高架式区間の幅員を15.0メートルから20.1メートルとする都市計画変更を決定し,平成4年7月30日付けで告示した(以下,この都市計画の変更を「本件都市計画変更決定」という。)(乙1,11)。 イ本件道路事業に関する事業認可の経緯愛知県知事は,平成5年9月3日,都市計画法59条1項に基づき,被告に対し,本件都市計画変更による変更された池内 件都市計画変更決定」という。)(乙1,11)。 イ本件道路事業に関する事業認可の経緯愛知県知事は,平成5年9月3日,都市計画法59条1項に基づき,被告に対し,本件都市計画変更による変更された池内猪高線都市計画を基礎として別紙1事業目録1記載の都市計画事業(以下「平成5年道路事業」という。)の認可(以下「平成5年道路事業認可」という。)をし,同法62条1項に基づき,同日付けでこれを告示した(乙3,37の1ないし9,38,39)。 被告は,平成6年10月28日,道路法(昭和27年法律第180号。 以下,特に断らない限り,同じ。)8条1項に基づき,池内猪高線第1号を市道に認定し,道路法(平成11年法律第87号による改正前のもの)18条1項に基づき,本件道路を含む区間(名古屋市千種区振甫町3丁目1番の3地先から同区城山新町1丁目1番の3地先まで),延長0.758キロメートル,幅員15.0から28.00メートルを同市道の区域に決定して,これを公示し,これを表示した図面を被告土木局道路部路政課において一般の縦覧に供した(乙4)。 愛知県知事は,平成12年3月24日,都市計画法63条1項に基づき,被告に対し,平成5年道路事業の事業計画の一部を変更する別紙1事業目録2記載の都市計画事業変更の認可(以下「平成12年道路事業変更認可」といい,平成12年道路事業変更認可による都市計画事業を「平成12年道路事業」という。)をし,同条2項の準用する同法62条1項に基づき,同日付けでこれを告示した(乙13,40の1ないし13,41,42)。 愛知県知事は,平成14年3月22日,都市計画法63条1項に基づき,被告に対し,平成12年道路事業の事業計画の一部を変更する別紙1事業目録3記載の都市計画事業変更の認可(以下「平成14年道路事業変更認可」といい,平成14年 月22日,都市計画法63条1項に基づき,被告に対し,平成12年道路事業の事業計画の一部を変更する別紙1事業目録3記載の都市計画事業変更の認可(以下「平成14年道路事業変更認可」といい,平成14年道路事業変更認可による都市計画事業を「平成14年道路事業」という。)をし,同条2項の準用する同法62条1項に基づき,同日付けでこれを告示した(乙43の1ないし13,44,45)。 愛知県知事は,平成18年3月31日,都市計画法63条1項に基づき,被告に対し,平成14年道路事業の事業計画の一部を変更する別紙1事業目録4記載の都市計画事業変更の認可(以下「平成18年道路事業変更認可」又は「本件差止対象道路事業変更認可」という。)をし,同条2項の準用する同法62条2項に基づき,同日付けでこれを告示した(乙32,46の1ないし21,47,48)。 平成12年道路事業変更認可,平成14年道路事業変更認可及び平成18年道路事業変更認可(以下,これらを併せて「本件各道路事業変更認可」といい,これと平成5年道路事業認可を併せて「本件道路事業認可等」という。)では,事業期間が延伸されたほか,本件道路の設計の一部が変更されたが,本件道路の延長,幅員,車線の数,構造形式などの基本的な設計の変更はされていない。 被告は,現在,平成18年道路事業(本件差止対象道路事業)の内容で,本件道路工事を行っている。 ウ本件道路事業の概要(ア) 本件道路は,池内猪高線都市計画における最後の未開通区間である。 被告は,池内猪高線都市計画を,都市計画道路広小路線と都市計画道路新出来町線の中間に位置し,名古屋市東部の都市計画道路小幡西山線から,志段味田代町線等と交差し,名古屋市中心部の名古屋環状線までを東西に結ぶ補助幹線道路で,名古屋市東部地域の住宅地(千種台ふれあいタウン)と都心 間に位置し,名古屋市東部の都市計画道路小幡西山線から,志段味田代町線等と交差し,名古屋市中心部の名古屋環状線までを東西に結ぶ補助幹線道路で,名古屋市東部地域の住宅地(千種台ふれあいタウン)と都心部を結ぶ重要路線の一つと位置付けている(乙37の2,40の2,43の2,46の2)。 (イ) 高架式道路前記のとおり,本件都市計画変更決定において,本件道路事業の一部に係る区間(本件高架式区間)は,高架・側道式に変更されているが,これは,昭和21年の池内猪高線都市計画では平面道路として位置,幅員のみを定めていたのを,本件高架式区間が,日泰寺付近の標高が最も高く,日泰寺の西側は崖地となっているため,この地形に適合するよう高架・側道式に改めたものである。 本件道路事業において,本件道路は,別紙3図面の位置に建設し,本件高架式区間は,2個の橋台の間に6個の橋脚を設置する構造の道路(以下「本件高架式道路」という。)とし,本件高架式道路は,橋長が159.3メートル(構造センター上),勾配が6.2パーセント,幅員9.9メートルであり,本件高架式道路の南北両側に設置される側道を含めると幅員が20.1メートルである(乙5,14,46の10ないし15)。 本件高架式道路の高架下には,長さ20メートル,幅約5メートルから6メートルの空間が6箇所でき,両側には6メートルの側道(以下,本件高架式道路の北側に設置される側道を「本件北側側道」といい,南側に設置される側道を「本件南側側道」といい,これらを「本件各側道」という。)を設け,本件南側側道と本件北側側道では高低差があるため,本件各側道を行き来することができるように高架下に本件北側側道から本件南側側道へ登る階段が設置される予定である(乙11,46の11ないし15,69の2,72の1)。 (ウ) 市道257号線の ため,本件各側道を行き来することができるように高架下に本件北側側道から本件南側側道へ登る階段が設置される予定である(乙11,46の11ないし15,69の2,72の1)。 (ウ) 市道257号線のかさ上げ本件高架式道路が設置されることにより,日泰寺から鉈薬師堂までの間の市道257号線は,本件道路と水平交差する部分(以下「本件交差点」という。)で,現在より約1メートルかさ上げされることとなる。 その結果,市道257号線の北から本件交差点に向かう勾配が約12パーセントとなる。 (4) 地域住民に対する説明等ア被告は,池内猪高線都市計画について,順次整備を行っていったが,本件道路事業に係る区間については,平成3年に至るまで,事業認可はされておらず,本件地域住民に対する説明会などは開かれていなかった。 被告は,本件地域住民に対して,平成3年7月17日に事業計画説明会を,同年12月18日に地域住民事業計画説明会(都市計画変更説明会)を行い(甲90の1ないし4,乙29,30),その後,本件都市計画変更決定を行った。 イ被告は,平成11年9月16日及び同年12月16日,本件地域住民に対して,工事計画についての説明会を行った。 被告は,平成13年3月27日,本件地域住民に対して,本件道路事業についての説明会を行った。 ウ本件高架部一部工事の着工中断被告は,本件高架式道路について,平成15年3月末に高架部橋梁下部工の一部(橋台1基,橋脚4基)の工事(以下「本件高架部一部工事」という。)を着工予定であった。 被告は,平成15年1月23日の住民に対する説明会において,本件高架部一部工事に着工する旨を説明した。 平成15年2月下旬,守る会が結成された。 被告は,平成15年3月6日,本件地域住民に対する説明会を行い,環境影響評価を行わないことなどを説明した おいて,本件高架部一部工事に着工する旨を説明した。 平成15年2月下旬,守る会が結成された。 被告は,平成15年3月6日,本件地域住民に対する説明会を行い,環境影響評価を行わないことなどを説明した(乙9)。 被告は,守る会参加者から,本件高架式区間について地下式の要望が出されたため,一旦本件高架部一部工事の着工を延期し,新たな説明資料を用意した。 エ本件高架部一部工事の着工再開守る会と被告とは,平成15年6月8日,意見交換会を行い,被告が,守る会に対し,高架・側道式による計画の現状を説明し,地下式は,新たな用地の取得が必要となることなどの点で実現性がないことを説明した(乙10)。 守る会は,平成15年6月ころ,地下式による代替案の検討を開始し,中部大学工学部建築学科のj教授(以下「j教授」という。)に代替案のプランの作成を依頼した。 守る会と被告とは,同年8月31日ころ,意見交換会を行い,地下式による代替案についてj教授が説明を行い,守る会と被告との間で,この代替案について協議した(甲16,103,乙6)。 被告は,代替案について検討を行った結果,地下式の実現は困難であると判断し,同年10月3日,守る会に「都市計画道路池内猪高線の整備について(お知らせ)」と題する書面を送付した(甲98,103,乙6)。 被告は,同月7日,「池内猪高線の工事着手のお知らせ(事業の経緯と概要)」を本件地域住民に配布した(甲103,乙6)。 被告は,同年10月29日,本件高架部一部工事に着工した(乙11)。 差止めの対象となる道路事業について原告らの本件請求は,本件道路事業のどの事業に基づく工事の差止めを求めるものかについては,原告らが本件訴えを提起した平成17年6月22日より後に,平成18年道路事業変更認可がされているが,変更前の都市計画事業は,変更 本件道路事業のどの事業に基づく工事の差止めを求めるものかについては,原告らが本件訴えを提起した平成17年6月22日より後に,平成18年道路事業変更認可がされているが,変更前の都市計画事業は,変更後の都市計画事業認可に吸収され,変更後の事業認可の効力のみが残ることになると解されるので,原告らが差止対象とする工事は,平成18年道路事業(本件差止対象道路事業)により施工される工事と解される。 原告らが主張する道路事業の認可や都市計画決定等に関する行政法規違反についても,以下,これを前提に検討する。 争点 (1) 景観利益侵害(2) 日照権侵害(3) 圧迫感・眺望権侵害(4) 所有権侵害(5) 通行権侵害(6) 人格権侵害(7) 本件都市計画変更決定の都市計画法違反(8) 本件都市計画変更決定の名古屋市環境影響評価条例(平成10年名古屋市条例第40号。以下「本件環境影響評価条例」という。)違反(9) 本件差止対象道路事業変更認可の都市計画法違反(10) 本件差止対象道路事業変更認可の道路構造令(昭和45年政令第320号。以下同じ。)違反(11) 本件道路事業の手続上の違法性 当事者の主張(1) 争点(1)(景観利益侵害)について(原告らの主張)ア本件地域の景観は,日泰寺など文化財が点在する谷構造の地形にあって,緑地が多く低層住宅を中心にした町並みである。日泰寺は名古屋でも有数の文化財であり,現在でも多くの信仰を集めている。毎月21日には地域の人々が「弘法様」と呼んでいる行事があり,多くの人々がお参りに訪れ,出店でにぎわう。日泰寺は本件地域全体を象徴するランドマークであり,本件地域は,日泰寺,鉈薬師等の歴史的な建造物を中核に,緑地の多い谷間の区域として,本件地域住民の生活空間としての町並みが発達している。 本件地域は,別 寺は本件地域全体を象徴するランドマークであり,本件地域は,日泰寺,鉈薬師等の歴史的な建造物を中核に,緑地の多い谷間の区域として,本件地域住民の生活空間としての町並みが発達している。 本件地域は,別紙4図面のとおり,地形等を基準に大きく日泰寺側の丘陵地域,四観音道に沿った住居地区,高見側の谷地区の三つの地区に分類することでき,原告らは,四観音道に沿った住居地区又は高見側の谷地区に居住している。 (ア) 四観音道に沿った住居地区四観音道に沿った住居地区は,日泰寺,鉈薬師堂,さらに振甫町に抜ける道路を中心とした区域であり,古くから存在する低層住宅が続き,比較的狭い道路を大きな樹木が覆い,緑豊かな町並みを形成している。 また,日泰寺・鉈薬師堂など文化財の存在がこの地域の歴史的,文化的性質を特徴付けている。四観音道は日泰寺の表参道に通じ,地域住民の生活道路としてだけでなく,参拝客の文化的活動にも使われる。 本件道路により,表参道から四観音道に通じる連続線が分断され,原告らと日泰寺及び日泰寺参道との連続性が失われる。また,本件道路事業により,四観音道は,本件道路との交差点で,現在より1メートルもかさ上げされ,その結果,約12パーセントの急な勾配になり,裏参道としての,さらには生活道路としての機能が果たせなくなる。特に毎月21日の日泰寺の弘法縁日ともなれば,多くの年配の参拝者が鉈薬師堂に訪れるが,そのような住民の文化的活動も不可能になってしまう。 例えば,原告甲cは,親の代から現在地に居住し,本件地域の景観を享受してきたものであるが,原告甲cの住居の南側に本件道路が建設されることによって,この区域の固有性と客観的連続性が破壊され,四観音道が物理的に水平的に分断され,これにより,この区域の連続した町並み景観が破壊され,このような文化景観も破壊されてし 件道路が建設されることによって,この区域の固有性と客観的連続性が破壊され,四観音道が物理的に水平的に分断され,これにより,この区域の連続した町並み景観が破壊され,このような文化景観も破壊されてしまうという不利益を,原告甲cは直接的に被ることになる。 (イ) 高見側の谷地区高見側の谷地区は,2階建ての戸建て住居が中心の低層住宅地であり,しかも敷地規模もおおむね統一されていて,一戸建て建物敷地として平均的な大きさである。 また,この区域は,三つの坂で四観音道の高台と鉈薬師堂の高台に接しており,これらの坂もこの地域の起伏に富んだ柔らかい景観の重要な一部を構成している。そして,鉈薬師堂に通じる二つの坂は,手入れの行き届いた紅葉と竹林の深い緑の美しいトンネルとなっている。 この美しい景観も人々が日常的に植木を大切にし,長年にわたって景観を害する危険のあるマンション建設計画に反対するなど,鉈薬師堂という文化財にふさわしい町並みの形成に努力してきたからである。 本件高架式道路は,勾配が6.2パーセント,橋長が159.3メートル(構造センター上),幅員が9.9メートル,本件高架式道路の南北に設置される本件各側道を含めると20.1メートル,本件高架式道路の路面の従来の地面からの最大高さは,上部橋台部分で約8.7メートル,さらに,その上に防護壁及び防音壁が取り付けられて,コンクリート壁となる巨大構築物である。このような本件高架式道路は,この区域の柔らかい起伏に富む緑多き自然景観や低層住宅地が提供するゆとりのある,落ち着いた空間とは全く相容れない存在である。さらに,本件高架式道路は,高見側の谷地区における南北間の住民の交流を困難に陥れ,地域コミュニティーの統一性と連続性を破壊するものである。 原告甲eは,20数年前にこの地域に移り住み,起伏に富む緑濃い景 に,本件高架式道路は,高見側の谷地区における南北間の住民の交流を困難に陥れ,地域コミュニティーの統一性と連続性を破壊するものである。 原告甲eは,20数年前にこの地域に移り住み,起伏に富む緑濃い景観,東側上方に日泰寺の緑色の屋根を望む景観を満喫していたが,本件高架式道路により,この地域の文化的ランドマークである日泰寺の緑色の屋根を望むことができなくなり,高見側の谷ゾーンの北側と南側の地区の行き来は,本件高架式道路により分断されることとなる。 イ本件地域に居住する原告らは,長年,緑豊かな歴史的空間を維持するため,それぞれが町並みにふさわしい建物を建て,道路に面した庭を整備するなどといった土地利用を行うことによって,景観を守り育ててきたものである。 このように,本件地域は,良好な風景として,人々の歴史的又は文化的環境を形作り,豊かな生活環境を構成するものであって,この景観に近接する本件地域住民である原告らは,上記景観の恵沢を日常的に享受しており,上記景観について景観権ないし景観利益を有するものというべきである。 ウ本件道路,特に本件高架式道路は,その外観が周囲の景観の調和を乱し,景観を著しく破壊するものであって,後述の争点(7)ないし(11)の(原告らの主張)に記載のとおり,行政法規などに違反するものであるから,侵害行為の態様や程度において社会的に容認された行為としての相当性を欠くものである。したがって,本件道路事業は原告らの景観権ないし景観利益を違法に侵害するものである。 (被告の主張)ア本件地域は,都市計画法上の高度制限のない第2種住居地域ないし20メートル高度制限の第2種中高層住宅専用地域であり(乙12),本件高架式道路の高さ(地盤面から路面まで最大7.7メートル。建物でいえば2階建て程度)を大きく上回る規模の建築物を建築す 地域ないし20メートル高度制限の第2種中高層住宅専用地域であり(乙12),本件高架式道路の高さ(地盤面から路面まで最大7.7メートル。建物でいえば2階建て程度)を大きく上回る規模の建築物を建築することが十分に可能な地域である。 現に,本件高架式道路に隣接した場所に10階建のマンション(月宮殿,高さ30メートル,乙15④)や7階建のマンション(陽宮殿,乙15③)など,本件高架式道路の何倍もの高さの建築物が点在している。 また,本件地域は,名古屋市都市景観条例(昭和59年名古屋市条例17号。以下同じ。)に定める都市景観整備区や都市計画法に定める風致地区及び特別用途地区に指定されていないことはもちろん,特に町並みを保存する地域にも指定されていない。 原告らを含む本件地域住民は,名古屋市建築協定条例(昭和52年名古屋市条例59号)2条に基づき,名古屋市長の認可を受け,若水・振甫・田代地区建築協定を締結しているが,この協定が締結されたのは,本件訴訟が提起された後の平成19年2月27日であり,それ以前に,建物の建築に係る自主規制を行ってきたような経緯も聞かれない。 したがって,本件地域について法律上保護に値するような景観利益の存在を認めることはできない。 イ本件道路事業は,都市計画法及び道路法の手続を適法に経て,土地所有者その他関係権利者に対して物件移転補償等を行いながら,進められている。そして,本件道路事業は,後述の争点(7)ないし(11)の(被告の主張)に記載のとおり,行政法規違反等はなく,仮に原告らに景観利益が認められたとしても,その景観利益に対する違法な侵害はない。 (2) 争点(2)(日照権侵害)について(原告らの主張)原告甲eは,自己所有の土地上に夫であるg(以下「g」という。)との共有の建物(以下「原告甲e宅」という。)に居住し する違法な侵害はない。 (2) 争点(2)(日照権侵害)について(原告らの主張)原告甲eは,自己所有の土地上に夫であるg(以下「g」という。)との共有の建物(以下「原告甲e宅」という。)に居住し,g所有の土地の南側部分には最近まで何らの建物も存在せず,日照被害を受けたことは全くなく,庭が広がり良好な日照を享受してきた。 本件高架式道路により,冬至における地上ゼロメートルの高さにおいて,原告甲e宅の南側中央部分においては,午前8時から午後4時までの日照時間はゼロになり,また,立春においても,午前8時から午後4時までの8時間のうち3時間24分が日影となる。 本件地域は,本件地域住民や行政の努力等により,実際は低層の住宅地域として機能してきたもので,これまで原告甲eは十分な日照を享受してきたことから,第2種住居地域であっても,地上4メートルの高さの日照を検討するのは相当ではなく,地上ゼロメートルを基準とした日照被害を検討すべきである。 したがって,本件高架式道路は,原告甲eに看過し得ない重大な日照被害を与えるものである。 (被告の主張)原告らの主張は,争う。 本件地域は,第2種住居地域であるところ,建築基準法(昭和25年法律201号。以下同じ。)56条の2に照らし合わせたとしても,地上ゼロメートルの高さでの日影の検討は必要なく,地上4メートルでの検討で足りる。 また,道路の建設などの公共事業における日陰により生ずる損害の補償については,公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱の施行について(昭和37年6月29日閣議了解。乙17)第3により行っているところ,同第3の規定では,「事業施行中又は事業施行後における日陰・・・・・により生ずる損害等については,この要綱においては損失補償として取り扱うべきでないものとされている。しかしながら,これらの損害 ろ,同第3の規定では,「事業施行中又は事業施行後における日陰・・・・・により生ずる損害等については,この要綱においては損失補償として取り扱うべきでないものとされている。しかしながら,これらの損害等が社会生活上受忍すべき範囲を超えるものである場合には,別途,損害賠償の請求が認められることもあるので,これらの損害等の発生が確実に予見されるような場合には,あらかじめこれらについて賠償することは差し支えないものとする。」とされている。このような日陰により生ずる損害等に係る事前賠償は,公共施設の設置に起因する日陰により生ずる損害等に係る費用負担について(昭和51年2月23日建設省計用発第4号。乙18)に基づき行われるべきもので,第2種住居地域においては,冬至における日陰時間が2階(開口部が真南に面する居室)で5時間を超える場合に限り,行うことができるとされている。 原告甲eについては,本件高架式道路に起因する冬至における日陰時間を調査したところ,上記の5時間を超えることはない(乙16)。 (3) 争点(3)(圧迫感・眺望権侵害)について(原告らの主張)ア圧迫感(ア) 圧迫感とは,東京都環境影響技術指針によれば,「建築物,構造物等と向かい合って立った場合,視覚を通して建築物の外壁面等の大きさから受ける不快感をいい『迫ってくる』『覆われる』という感覚である」。 建築物を建てることにより隣接建物居住者に対する日影,風害,圧迫感等の被害を与え,その被害の限度が社会生活上一般的に被害者において受忍するのを相当とする程度を超えたと認められるときは,違法な生活妨害として不法行為責任を負うものである。 (イ) 本件高架式道路が,本件地域住民に対し与える圧迫感は,許容限界値を超えたものである。 圧迫感の指標は,当該建築物の形態率(当該建物全体に対する天空遮 活妨害として不法行為責任を負うものである。 (イ) 本件高架式道路が,本件地域住民に対し与える圧迫感は,許容限界値を超えたものである。 圧迫感の指標は,当該建築物の形態率(当該建物全体に対する天空遮蔽率(当該建物の外形の水平立体角投射率))の数値で表されるところ,圧迫感の許容限界値は,形態率8パーセントである。 形態率は,当該建築物までの距離と当該建築物の物理的な量を測定し,測定点を中心とする半球に映った建築物の姿を円に正射影した場合の,円の面積に対する建物の投影面積の割合で表される。 そして,甲74号証の1ないし4,75号証ないし78号証によると,本件高架式道路についての形態率は,計測したいずれの地点でも約35パーセントであり,住宅地の形態率の圧迫感としては常軌を逸したものであり,一般的に受忍すべき限度を超えるものである。 イ眺望権侵害本件高架式道路が建設されると,高見側の谷地区に居住する原告らにとって,絶壁のように本件高架式道路が立ちふさがり,眺望が著しく阻害される。 (被告の主張)ア圧迫感原告らの主張は,争う。 形態率は,圧迫感を表す唯一の指標と認められないから,本件高架式道路による圧迫感を論ずる際に形態率を用いることは失当である。 イ眺望権侵害原告らの主張は,争う。 本件地域は,高度制限のない第2種住居地域あるいは20メートル高度制限の第2種中高層住宅専用地域に指定されていたのであり,原告甲e宅の周囲に建物が建築された場合には,これによりある程度の眺望が妨げられるであろうことは当初から予定されていたものであるから,原告甲e宅からの眺望は法的保護の対象になるものではない。 また,本件高架式道路の周囲に,ある場所に対する眺望利益の享受を重要な目的としてそこに建物を建設するような,特別な眺望価値を有する場所も見当たらない。 らの眺望は法的保護の対象になるものではない。 また,本件高架式道路の周囲に,ある場所に対する眺望利益の享受を重要な目的としてそこに建物を建設するような,特別な眺望価値を有する場所も見当たらない。 (4) 争点(4)(所有権侵害)についてア原告甲fの所有権侵害(原告らの主張)原告甲fが所有し,居住する建物(以下「原告甲f宅」という。)の擁壁には,本件高架部一部工事開始後行われた「場所打ち杭」の施工等によって生じた,大きなひび割れがある。 本件道路事業による振動の大きさ,本件高架式道路と甲f宅の擁壁の距離,原告甲f宅の擁壁が鉄筋の入っていないブロック塀であること等を考慮すると,本件道路工事が続行されることにより,原告甲f宅の擁壁が崩落することは明らかであるから,原告甲fの所有権を侵害するものである(被告の主張)原告らの主張は,否認ないし争う。 原告甲f宅については,本件高架部一部工事の直前である平成16年2月3日に,その外観と擁壁のひび割れの状態を調査した(乙19)。 また,本件高架部一部工事のうち振動等を伴う工事が終了した平成16年5月28日に,事後調査を行った(乙20)。これらの調査は,いずれも原告甲fの立会い,確認のもとで行われたものである。 これらの調査結果を精査したところ,事前調査の際,既にひび割れの存在していたことが確認でき,事後調査の結果では,当該ひび割れの程度に変化の見られないこと及び新たなひび割れの発生していないことが確認できた。 また,原告甲fと本件高架部一部工事の請負業者であったn株式会社との間において,平成16年6月15日付けで確認書(乙21)が取り交わされ,本件高架部一部工事に起因する建物その他工作物への被害がなかったことが確認されている。 イ原告甲c,原告甲d及び原告甲bの所有権侵害(原告らの主張) 15日付けで確認書(乙21)が取り交わされ,本件高架部一部工事に起因する建物その他工作物への被害がなかったことが確認されている。 イ原告甲c,原告甲d及び原告甲bの所有権侵害(原告らの主張)(ア) 本件道路事業により,原告甲c,原告甲d及び原告甲bが所有する各土地に本件道路の一部がかかることになり,収用されるおそれがある。 特に原告甲cは,住居の一部を壊さざるをえないが,原告甲cの住居(以下「原告甲c宅」という。)は,昭和13年に建築されたものであり,かなり老朽化が進んでおり,原告甲c宅全体を北側に移動させようとしても崩壊してしまう可能性が高く,収用部分を埋め合わせることは不可能である。しかも,本件道路と原告甲c宅が重なるごくわずかな部分についての収用が予定されているだけであり,原告甲cの損害を填補することはできない。 (イ) 本件道路事業により,原告甲c宅及び原告甲dの住居(以下「原告甲d宅」という。)に面する市道257号線が底上げされ,原告甲cは玄関からの出入りや駐車場の使用が不可能となり,原告甲dは車庫から車を出すことが不可能になる。特に,原告甲c宅は,既に東側が斜面で塞がれているため,本件道路が建設されると南側を本件道路で,西側を底上げされた市道257号線で塞がれることになり,ちょうどすり鉢の底に住居が存在するような状態となり,看過することができない損害が生じることになる。 また,原告甲bの住居(以下「原告甲b宅」という。)の玄関先道路は,本件道路の建設により現状より60センチメートル下がることになるので,玄関と道路との通行が害される。 (ウ) 本件道路事業によるこれらの事態は,原告甲c,原告甲d及び原告甲bの土地の所有権に対する侵害である。 (被告の主張)原告らの主張は,争う。 被告は,原告らの本件道路事業により生じる される。 (ウ) 本件道路事業によるこれらの事態は,原告甲c,原告甲d及び原告甲bの土地の所有権に対する侵害である。 (被告の主張)原告らの主張は,争う。 被告は,原告らの本件道路事業により生じる損害については,公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱に基づき適正な補償を行う予定であり,道路に面する土地が道路と高低差が生じることによって玄関の人の出入りに支障が生じる場合には,出入り口に階段を設置するなどの費用の補償をし,車庫からの車の出入りに支障が生じる場合,スロープを設置するあるいは車庫の敷地をかさ上げするなどの費用の補償をする予定である。 (5) 争点(5)(通行権侵害)について(原告らの主張)市道257号線は,振甫町方面から地下鉄覚王山駅前に通じる抜け道として,従来から交通量が多く,原告甲b,原告甲c,原告甲d及び原告甲aにとっては,地下鉄利用のために通行するほか,近所との交流,買い物,日泰寺への参詣などのために日常的に利用する道路である。 本件道路事業によって,本件道路と市道257号線との交差点(本件交差点)が1.473から1.721メートルの範囲で底上げされ,今まで以上に急勾配になるため,市道257号線を通行する歩行者にとって歩行が困難となり,また,自転車を使用する際にも多大な不利益が生じる。 また,本件交差点には,信号機の設置が予定されていないため,本件道路を横断することが困難になり,市道257号線に極めてひどい交通渋滞が生じることになる。 また,原告甲f宅は,本件南側側道に面することとなるが,本件各側道により高見側の谷地区の南北の交通が遮断される。 これらの事態は,市道257号線などを利用する原告らに対する通行権の侵害にあたる。 (被告の主張)原告らの主張は,争う。 本件道路の建設により市道257号線は形状が変更されるにとど 通が遮断される。 これらの事態は,市道257号線などを利用する原告らに対する通行権の侵害にあたる。 (被告の主張)原告らの主張は,争う。 本件道路の建設により市道257号線は形状が変更されるにとどまり,その通行が不可能又は著しく困難になるものではないから,通行権の妨害は認められない。なお,原告の主張する底上げの高さは誤っている。 (6) 争点(6)(人格権侵害)について(原告らの主張)以下のように,本件道路事業により発生する大気汚染や騒音などにより,原告らの健康,生命が明白な危険にさらされる蓋然性が高く,原告らの人格権を侵害する。 (ア) 大気汚染本件道路は,名古屋長久手線のバイパスに当たり,交通量も多く,大型車の通行もかなりの割合で予測される。 本件道路における自動車交通量について,被告は一日当たり13,500台と予測しているが,本件道路は,片側1車線の道路であり,道路構造令上,本件道路と同規格の道路の予想交通量は1日当たり8000台とされている。この道路構造令は,道路建設の基準となるものであって,これを超える道路は建設すべきではなく,もし建設されるとすると,交通をさばききれず,渋滞を招くことは明白であり,また,本件道路上には新たに信号交差点が設けられ,生活道路からも自動車が流入することになっており,日中は常態として渋滞することが必至である。 加えて,本件地域のうち高見側の谷地区は,谷底の地形であるから,道路上で発生した大気汚染物質の逃げ道がなく,原告らの生活空間に間断なく降り注ぎ,滞留することになる。 このように,本件道路は,通常の道路と異なり,建設当初から渋滞が予測され,その結果,平均旅行速度が遅くなり,ましてや急勾配の道路であることで,大気汚染物質の排出係数が通常の場合よりもはるかに上昇することにより,交通量だけからは計り と異なり,建設当初から渋滞が予測され,その結果,平均旅行速度が遅くなり,ましてや急勾配の道路であることで,大気汚染物質の排出係数が通常の場合よりもはるかに上昇することにより,交通量だけからは計り知れない大気汚染物質が排出されるものであり,原告らの健康,生命が明白な危険にさらされる蓋然性が極めて高い。 (イ) 騒音本件道路を建設することにより,本件地域で生活する原告らには看過し得ない重大な騒音被害が発生する。 すなわち,原告らは,これまで極めて静謐な環境の中で生活してきており,本件道路が建設されると,睡眠障害などの受忍限度を越える騒音被害を受けることになる。 (被告の主張)原告らの主張は,争う。 平成16年7月から平成17年7月にかけて四季を通じ,本件地域で実施した環境調査(大気・騒音・振動の3項目)の測定結果では,すべて環境基準の範囲内であり,公害被害が発生することはない。 環境調査は,本件環境影響評価条例の手続に従ったものではないが,これら3項目の調査方法は,道路を建設しようとする場合における環境影響評価と同様の方法に則ったものである。 (7) 争点(7)(本件都市計画変更決定の都市計画法違反)について(原告らの主張)本件都市計画変更決定は,本件高架式道路が,原告らに甚大な被害を与えるものであるにもかかわらず,日照(日影),通風,騒音,振動,粉塵,景観等のあらゆる環境面のほか,事業費,耐震性,電波障害などあらゆる面で優れた代替案である地下式を全く理由もなく不採用とした点で,事業方式の選定として明らかに違法である。 また,比較案の評価に当たっては,経済性,施工の難易度,関連事業との整合性,事業効果,環境への影響等について比較し,総合的に評価して順位を付けるべきであるにもかかわらず,本件都市計画変更決定においては,一切代替案の比較 たっては,経済性,施工の難易度,関連事業との整合性,事業効果,環境への影響等について比較し,総合的に評価して順位を付けるべきであるにもかかわらず,本件都市計画変更決定においては,一切代替案の比較がなされていない点で手続面においても違法性がある。 そうすると,本件差止対象道路事業変更認可の基礎となる本件都市計画変更決定が違法である以上,本件差止対象道路事業変更認可も違法である。 (被告の主張)原告らの主張は,争う。 本件道路事業に当たっては,被告は本件都市計画変更決定当時から,高架式及び地下式について,費用面のみならず構造面からも比較検討しており,その比較検討の結果は,平成3年12月の事業説明会(乙30)で住民からの質問に対して回答している。 被告としては,本件地域住民にとって使いやすく,利便性の高い道路を目指して高架案を採用したものである。 被告は,本件地域住民に対し,各戸配布した「池内猪高線の工事着手について(お知らせ)」(乙11)の「池内猪高線事業の経緯と概要4.今後の進め方4トンネルとすれば」において,地下式とする場合の問題点を挙げ,実現性がないことを説明している。 (8) 争点(8)(本件都市計画変更決定の本件環境影響評価条例違反)について(原告らの主張)都市計画事業認可及び事業変更認可を行う場合,事業の内容が都市計画に適合していることが必要であり,さらに都市計画は公害防止計画に適合していることが必要とされる。また,愛知地域公害防止計画第3章第1節1は,施策の実施の際,環境に影響を及ぼすおそれのある場合は,環境影響評価法(平成9年法律第81号。以下同じ。)及び本件環境影響評価条例による環境影響評価(環境アセスメント)によって,環境への適切な配慮を行うべきことを定めている。 本件道路事業は,以下のように形式的に見ても本件環境 法律第81号。以下同じ。)及び本件環境影響評価条例による環境影響評価(環境アセスメント)によって,環境への適切な配慮を行うべきことを定めている。 本件道路事業は,以下のように形式的に見ても本件環境影響評価条例及びその委任を受けた名古屋市環境影響評価条例施行細則(平成11年名古屋市規則第26号)2条の「車線の数が4以上であり,かつ,長さが1キロメートル以上であるもの」(以下「規模要件」という。)を満たすものであるし,環境に与える影響の程度が重大であり,環境影響評価を行う実質的必要性が極めて大きいものであるから,本件環境影響評価条例のもとにおいて環境影響評価を行わなければならない事業にあたる。 ア本件道路事業の規模要件該当性(ア) 車線の長さについて本件道路事業は,池内猪高線都市計画の最後の未開通区間の事業である(甲86)。また,池内猪高線都市計画として,本件道路を含めた池内猪高線全体が一つの道路としてとらえられている(乙1)。そうであれば,事業の単位としても,池内猪高線都市計画全体を一つの道路事業としてとらえるべきである。 そして,本件道路の開通により,池内猪高線都市計画の全線が開通することになって池内猪高線都市計画全体について交通量の飛躍的な増加が見込まれることからすれば,実質的に考えても,新しく作られる本件道路の部分だけに限定して環境に与える影響の評価の対象とするのは適切でなく,池内猪高線全体について環境に与える影響の評価の対象とする必要がある。 そうすると,池内猪高線都市計画は全体は延長4560メートルであるから,規模要件である車線の長さ1キロメートル以上を満たす。 (イ) 車線の数について本件道路事業には,本件高架式道路の車線部分2車線に加え,本件各側道として地上部分に2車線が存在するから,計4車線である。 実質的に考えて の長さ1キロメートル以上を満たす。 (イ) 車線の数について本件道路事業には,本件高架式道路の車線部分2車線に加え,本件各側道として地上部分に2車線が存在するから,計4車線である。 実質的に考えても,本件道路事業による交通量の激増の危険性が極めて高いこと,さらに環境への影響の重大な事業について環境への事前の配慮を求めることが本件環境影響評価条例の趣旨であることからすれば,地上部分の本件各側道についても,そこを通るであろう多数の車の環境に与える影響を十分考慮しなければならない。 したがって,本件環境影響評価条例の規模要件である4車線という車線数を数える際には,本件各側道も一つの車線として解釈すべきであるから,本件道路事業は4車線の事業である。 (ウ) したがって,本件道路事業は,環境影響評価対象事業に該当するにもかかわらず,これを欠いているので,本件環境影響評価条例に反し,違法である。 イ本件道路事業における環境影響評価を行う必要性本件道路事業は,池内猪高線都市計画の最後の一部であること,本件道路事業は本件地域の景観を著しく破壊すること,本件道路事業が本件地域住民に多数の重大な影響を与えること,被告の行った環境調査の内容が不十分であることを前提に,環境影響評価法及び本件環境影響評価条例の趣旨に照らして考えれば,被告が本件道路事業について環境影響評価を行う必要性は,極めて高い。 本件環境影響評価条例も環境基本法(平成5年法律第91号。以下同じ。)1条,20条のほか,近時施行された生物多様性基本法(平成20年法律第58号)においても示されている「持続可能な発展」を実現することをその目的としており,また環境影響評価逃れの弊害を防止する必要性があることに変わりはないから,本件環境影響評価条例においても,実質的かつ個別的な事情も含めて,環境影 持続可能な発展」を実現することをその目的としており,また環境影響評価逃れの弊害を防止する必要性があることに変わりはないから,本件環境影響評価条例においても,実質的かつ個別的な事情も含めて,環境影響評価の対象事業となるかを検討しなければならない。したがって,本件環境影響評価条例の規模要件を形式的に解釈適用するのは,条例の趣旨に反し妥当でなく,環境への影響の重大性といった環境影響評価の実質的必要性をも踏まえた上で解釈すれば,本件道路事業は,本件環境影響評価条例の規模要件を満たすものというべきである。 ウ千種台事業との一体性本件地域の東部にほぼ隣接する位置で,近年,本件道路事業のほか千種台地区住宅整備事業(以下「千種台事業」という。)が行われている(甲87)。そして,本件道路事業は,この千種台事業と客観的にも主観的にも一体の事業である。 それにもかかわらず,平成3年7月に千種台事業の環境影響評価が行われた際,本件道路事業については考慮に入れられていない。したがって,本件道路事業を行うに当たっては,本来千種台事業の中で行う必要のあった本件道路事業の環境影響評価を改めて行わなければならない。 エまとめ本件道路事業においては,その実施に際し,環境影響評価を行うべきであるにもかかわらず,それを行っていないのであり,本件差止対象道路事業変更認可は,公害防止計画に適合しておらず違法である。 (被告の主張)原告らの主張は,争う。 ア本件道路事業の規模要件該当性(ア) 車線の長さについて本件環境影響評価条例の対象事業となるか否かは,都市計画事業の場合,認可を受けた事業ごとに判断するため,本件道路事業に関しては,事業認可を受けた延長752メートルの事業区間について判断すれば足りるものである。 (イ) 車線の数について「車線」とは,一縦列の自動 ,認可を受けた事業ごとに判断するため,本件道路事業に関しては,事業認可を受けた延長752メートルの事業区間について判断すれば足りるものである。 (イ) 車線の数について「車線」とは,一縦列の自動車を安全かつ円滑に通行させるために設けられる帯状の車道の部分(副道を除く。)(道路構造令2条5項)であり,「車道」から除かれる「副道」とは,構造上の理由により車両の沿道への出入りが妨げられる区間がある場合に当該出入りを確保するため,当該区間に並行して設けられる帯状の車道の部分(同令11条)である。 本件各側道は,「副道」であり,「車線」ではないから,本件道路事業における車線の数は2車線である。この点,本件都市計画決定においても,本件道路の車線数は「2車線」と決定されている(乙1)。 原告らは,地上部分の本件各側道についても,多数の車が通行すると主張するが,本件各側道の性格を考えると失当である。 (ウ) 以上のように,本件道路事業は,車線の長さ・数のいずれの規模要件も満たさず,本件環境影響評価条例の対象事業とはならない。 (エ) さらに付言すると,本件環境影響評価条例附則第3条において,本件環境影響評価条例の施行日前において既に都市計画決定がなされている事業については,環境影響評価の手続に関する規定は適用しない旨が定められており,本件道路事業はこれに該当するから,環境アセスメントを行わなければならないものではない。 イ千種台事業との一体性について環境影響評価を行うか否かについては,一つの事業ごとに判断されるものであり,複数の事業について,その関連性を検討して,その度合いが強いような場合には,複数の事業を一つの事業とみなして環境影響評価を行わなければならないという原告らの主張は,根拠のない独自の見解である。 また,本件道路事業と千種台事業は飽くま 討して,その度合いが強いような場合には,複数の事業を一つの事業とみなして環境影響評価を行わなければならないという原告らの主張は,根拠のない独自の見解である。 また,本件道路事業と千種台事業は飽くまで別の事業であり,一体の事業ではない。 (9) 争点(9)(本件差止対象道路事業変更認可の都市計画法違反)(原告らの主張)都市計画法61条1号は,事業認可の要件の一つとして事業施行期間が適切であることを掲げている。 本件道路事業については,3回にわたる事業施工期間の延伸がなされているが,これは,都市計画法60条3項2号に定める「設計の概要を表示する図書」が平成5年度の申請時のものと大きく違うことを含め,工事の見通しが極めて杜撰であることにより,事業施工期間についての判断が不適切かつ無責任であったことが原因であり,本件道路事業認可等はすべて,適切な事業施行期間が定められていない。 そうすると,本件差止対象道路事業変更認可は,都市計画法61条1号の「事業施工期間が適切である」とはいえず,違法である。 (被告の主張)原告らの主張は,争う。 被告は,本件道路事業について,より良い道路計画となるよう地元住民の意見も踏まえて検討を重ねるとともに,本件道路事業について地元住民の理解を得るよう努力してきたことなどの事由により,必要に迫られやむを得ず事業施行期間の延伸を申請したものであり,原告らが主張するような工事の見通しが杜撰であったり,事業施行期間についての判断が不適切かつ無責任であったりしたことによるものではない。 したがって,本件差止対象道路事業変更認可は,認可申請に係る事業施行期間が特段の合理的理由もなく,不当に長期にわたるにもかかわらず,それを看過して認可するなど,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものと認められるような場合には当たらず,違 可申請に係る事業施行期間が特段の合理的理由もなく,不当に長期にわたるにもかかわらず,それを看過して認可するなど,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものと認められるような場合には当たらず,違法ではない。 (10) 争点(10)(本件差止対象道路事業変更認可の道路構造令違反)について(原告らの主張)ア本件道路は,一般市道に該当するところ(甲84の1),仮に,本件道路の1日当たりの交通量が,被告の述べる1万3500台という低い数字だとしても,道路構造令3条1項,2項4号,5条3項により,市町村道では,本件道路は本来4車線でなければならない(甲94)。よって,本件道路を2車線として本件道路事業を行うならば,道路構造令に違反する違法がある。 そうすると,道路構造令に違反する道路建設を認めた本件差止対象道路事業変更認可も違法である。 イ被告は計画交通量を1万台と定めたと主張する。しかし,そもそもこの1万台という数字は,いつ,いかなる経緯で出されたかの詳細について,全く不明瞭な数字であり,被告の述べる根拠は,以下のように計画交通量が1万台であることを根拠付けるものではない。 (ア) 被告の主張する本件道路が「道路の標準幅員に関する基準(案)について」(乙67)のいう「補助幹線道路」に該当し,同基準案上補助幹線道路の幅員は16メートルが標準で,車線数は2車線が原則とされているという点については,道路構造令3条,5条により,計画交通量が定まってはじめて車線数が定まるのであって,車線数が2車線であることを計画交通量の根拠とすることはできない。同様に,本件道路が補助幹線道路か否かや,幅員の長さの如何によって,計画交通量の根拠とすることはできない。 (イ) 被告は本件道路を4車線で整備するには,30メートルもの幅員が必要で,そのような道路は妥当 本件道路が補助幹線道路か否かや,幅員の長さの如何によって,計画交通量の根拠とすることはできない。 (イ) 被告は本件道路を4車線で整備するには,30メートルもの幅員が必要で,そのような道路は妥当性がなく非現実的であると主張するが,本件道路の将来の交通量として本来想定される台数は1万2000台を越えているから,道路構造令の規定上4車線未満にすることはできないのであって,本件道路を4車線で建設するのが非現実的かつ妥当性がないというのであれば,本件道路はそもそも作るべきではないということになる。 (ウ) 被告の主張する池内猪高線の他の区間の車線数とのバランスについては,上記のとおり,そもそも車線数は計画交通量の根拠にはならず,計画交通量が定まってはじめて車線数が決まる関係にある。また,前後の区間について,平成17年度の名古屋市の道路交通センサス(甲84)によれば,池内猪高線の開通済み区間の交通量は12時間交通量で1万3842台に達しており,むしろ他の区間も,交通量に比して考えれば4車線とする必要がある道路である。 ウ平成14年7月発行の都市計画道路整備効果調査業務委託報告書(甲97)の中では,本件道路の1日当たり交通量は2万1921台とされていること,平成17年度の名古屋市の道路交通センサス(甲84)によれば,当時の池内猪高線の開通済み区間の12時間交通量は1万3842台であり(甲84),半日だけで既に1万台を上回る数字であることからすれば,実際には,本件道路の交通量として予測される数字は,1万台よりはるかに大きい。 被告も,本件道路の予測交通量に関して,2万1900台や1万5800台など説明を二転三転させた後(甲59,97,原告甲e),池内猪高線便りvol.4(乙25)及び都市計画道路整備効果調査業務委託報告書(乙62)で最終的に 通量に関して,2万1900台や1万5800台など説明を二転三転させた後(甲59,97,原告甲e),池内猪高線便りvol.4(乙25)及び都市計画道路整備効果調査業務委託報告書(乙62)で最終的に計画交通量1万3500台という台数を挙げているが,この数字でさえ1万2000台を上回っている。 エ以上のとおり,1万台という数字は実際には何ら根拠がないものである。 そして,本件道路には本来1万2000台をはるかに超える台数の車が通行することが明確に予測され,被告も都市計画道路整備効果調査業務委託報告書(乙62)で計画交通量を1万3500台としている以上,本件道路を2車線として本件道路事業を行うならば,道路構造令に違反する違法がある。 (被告の主張)原告らの主張は,争う。 ア道路の区分の重要な要素となる計画交通量は,道路構造令2条21号において「道路の設計の基礎とするために,当該道路の存する地域の発展の動向,将来の自動車交通の状況等を勘案して,・・・・・当該道路の新設又は改築に関する計画を策定する者で国土交通省令で定めるものが定める自動車の日交通量をいう。」と定められている。 これは,単にある一時点の交通量のみをもって,計画交通量とするものではなく,地域の発展の動向や将来の自動車交通の状況,整備すべき道路の性質(地域の生活道路か幹線道路であるか)等政策的な判断を伴う諸般の事情を総合的に考慮して,計画交通量を判断すべきであるとの規定である。 そして,計画交通量を定める「国土交通省令で定めるもの」とは,道路構造令施行規則(昭和46年建設省令第7号)1条1項により,その他の道路にあっては当該道路の道路管理者である。 イ本件道路を含む池内猪高線都市計画は,昭和21年に本件都市計画決定がされた路線であり,その後,平成4年に本件都市計画変更決定が行わ 1項により,その他の道路にあっては当該道路の道路管理者である。 イ本件道路を含む池内猪高線都市計画は,昭和21年に本件都市計画決定がされた路線であり,その後,平成4年に本件都市計画変更決定が行われ,平成5年に平成5年道路事業認可を取得している。 そして,この事業化を企図した際,本件道路の道路管理者である被告は,道路構造令2条21号により,「道路の存する地域の発展の動向,将来の自動車交通の状況等を勘案して」,以下のような判断の下,本件道路の計画交通量を1日当たりおおむね10,000台と定めたものである。 (ア) 道路構造令の適用に当たっては,道路幅員などの標準化を図るため,「道路の標準幅員に関する基準(案)について」(乙67)という通達が定められている。この通達は,道路構造令3条に定める第3種,第4種の道路のうち,幹線的な市道を新設等する場合に適用されるものであり,同通達の基準が適用される道路は,主要幹線道路,幹線道路及び補助幹線道路に分類される。 池内猪高線都市計画は,広小路線及び新出来町線という幹線街路のほぼ中間に配置されたものであるなど周辺の交通事情等からすると,「都市部にあっては近隣住区内の幹線となる道路」として補助幹線道路となると判断すべきである。 とすれば,補助幹線道路については,都市部にあってはその幅員は16メートルを標準とし,車線の数は2車線を原則として設定することになる(乙67)。 (イ) また,本件道路は,本件都市計画決定においても同様に補助幹線街路と位置付けられていたものであって,幅員は15メートルと定められていた。幹線道路として4車線で整備するためには30メートル前後の幅員が必要であり,本件道路についてこのような位置付けをすることは妥当でなく,また非現実的でもある。 (ウ) さらに,池内猪高線都市計画については 道路として4車線で整備するためには30メートル前後の幅員が必要であり,本件道路についてこのような位置付けをすることは妥当でなく,また非現実的でもある。 (ウ) さらに,池内猪高線都市計画については,平成4年当時,本件道路の区間以外は,既に2車線で供用されていることから,本件道路を4車線で整備すると,かえって前後の区間とのバランスを欠くことになる。 (エ) 以上のことから,被告は,本件道路の計画交通量をおおむね1万台と定めたのである。そして,このことにより,本件道路は,道路構造令3条2項に基づき,第4種第2級の道路に区分され,その車線数については,同令5条2項により,2車線とされたのである。 (11) 争点(11)(本件道路事業の手続上の違法性)について(原告らの主張)地域景観は,地域住民の総意によって守られるべきである。そのため,本件のような景観を破壊する道路を建設するに当たっては,地域的合意のプロセスが必要である。特に本件道路事業は,50年以上も放置してきた本件都市計画決定を実行して,本件地域に巨大開発を行うのであるから,そのことで不利益を被る本件地域住民との十分な対話を経た上で事業の具体的内容を決定するプロセスが用意されてしかるべきである。 しかしながら,被告は,本件道路事業につき環境影響評価を行わず,守る会の提示した代替案を十分に検討せず,本件地域住民への説明も不足している上に,被告は,平成15年6月8日の説明会において原告ら守る会参加者との間で一旦早急な工事を行わない旨の合意をしていながら,この合意に反し本件高架部一部工事を強行するなど,原告らの景観権等の権利に対する配慮を著しく欠いていることをも踏まえて考えれば,被告は,本件道路事業の計画,着工に当たり必要なプロセスを欠く手続上の違法があり,原告らの不利益は受忍限度の範囲に ど,原告らの景観権等の権利に対する配慮を著しく欠いていることをも踏まえて考えれば,被告は,本件道路事業の計画,着工に当たり必要なプロセスを欠く手続上の違法があり,原告らの不利益は受忍限度の範囲に到底収まるものではない。 (被告の主張)原告らの主張は,争う。 本件道路事業は,都市計画法及び道路法の手続を適法に経て,土地所有者その他の関係権利者に対して物件移転補償等を行いながら(現在未補償の権利者についても,今後,適正な補償を行う予定である。),進められている。 本件道路事業については,本件環境影響評価条例の規模要件に該当せず,被告は,環境影響評価を行う必要はないが,平成16年7月から平成17年7月にかけて四季を通じ,本件道路事業の区域内の三地点で将来予測交通量による環境調査(大気・騒音・振動の3項目)を実施している。 また,被告は,平成3年当時から本件道路の一部が高架式となることを本件地域住民に説明し,本件高架部一部工事の着工時にも工事計画や守る会の代替案について検討を行い,その結果を十分に本件地域住民に説明しているのであり,原告らの主張するような代替案に関する協議の途中において強行着工したことはない。平成15年6月8日に,被告と守る会参加者との間で工事の強行着工をしないことが約束されたことはない。 第3当裁判所の判断 前記前提事実のほか,証拠(甲1ないし13,16ないし40,41の1ないし15,42,45の1ないし4,46の1ないし4,48ないし60,62ないし65,66の1ないし4,71の1ないし8,74ないし77,79ないし81,84の1・2,86ないし89,90の1ないし4,91の1・2,92,93,97ないし104,乙1ないし16,25ないし27,29,30,32,33,35,37の1ないし9,38,39,40の1ないし1 の1・2,86ないし89,90の1ないし4,91の1・2,92,93,97ないし104,乙1ないし16,25ないし27,29,30,32,33,35,37の1ないし9,38,39,40の1ないし13,41,42,43の1ないし13,44,45,46の1ないし21,47,48,61ないし64,66,67,68の1・2,69の1・2,70,71,72の1・2,原告甲e,原告甲a)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 (1) 本件地域の現在の状況ア本件地域における文化財等本件地域は,日泰寺を中心に広がる地域であり,日泰寺をはじめとした神社・仏閣のほか,別荘,学校,塔などの個性的な近代建築物が数多く存在する。 日泰寺は,シャム国(現在のタイ王国)のチュラロンコーン国王から送られた仏舎利(釈迦の遺骨)を安置するために,明治37年に創建された超宗派の仏教寺院であり,多くの人々の信仰を集めている。毎月21日に開かれる「弘法縁日」には,多くの人々が参詣に訪れ,出店でにぎわう。 日泰寺の,南には地下鉄覚王山駅に通じる参道があり,日泰寺の西側を,南北に四観音道が通じている。別紙5の図面のとおり,日泰寺の北側の名古屋市上下水道局東山配水場の敷地内を通っていた四観音道を字界(別紙5の赤色の線)として,西側が字四観音道西(別紙5の緑色の斜線部分),東側が字四観音道東(別紙5の青色の斜線部分)という地名(行政区画)になっている(乙46の16)。字四観音道西内を通る市道257号線に面して,仏師円空作の十二神将像などが安置される鉈薬師堂(医王堂)がある(なお,原告らは,専修院の北から西へ曲がり,鉈薬師堂の東を通る市道257号線の部分を四観音道であると主張しているが,上記のような地名から原告らの主張を認めることはできない。)。 本件地域のうち原 る(なお,原告らは,専修院の北から西へ曲がり,鉈薬師堂の東を通る市道257号線の部分を四観音道であると主張しているが,上記のような地名から原告らの主張を認めることはできない。)。 本件地域のうち原告らの居住する地域を行政区画,地形等を基準にすると,おおむね別紙4記載(ただし,以下,「四観音道に沿った住居地」とあるのを「市道257号線に沿った住居地」と読み替える。)のとおり,覚王山日泰寺側の丘陵地域,市道257号線に沿った住居地区及び高見側の谷地区に区分することができる。 イ市道257号線に沿った住居地区の町並み日泰寺から鉈薬師堂,さらに振甫町に抜ける市道257号線を中心とした区域である。 市道257号線は,大きな樹木が覆い,緑豊かな通路となっていて,地域住民の生活道路としてだけでなく,日泰寺などへの参拝客の通行にも使われている。 もっとも,市道257号線に面する土地上に地上7階建の集合住宅であるザ・マスターズフォートが存在し,また,本件地域内には,覚王山日泰寺側の丘陵地域にメゾン覚王山陽宮殿やメゾン月宮殿が存在するなど,これらはいずれも地上7階建以上の集合住宅である。必ずしも低層の住宅で形成されているとはいえない(乙15)。 原告甲c(別紙2図面③)及び原告甲d(別紙2図面④)は,この地域内の市道257号線に面した土地に居住し,原告甲a(別紙2図面①)及び原告甲b(別紙2図面②)は,市道257号線に面してはいないものの,市道257号線を日常利用する地域に居住している。 ウ高見側の谷地区の町並み日泰寺付近から西に向かって延びた地域で,日泰寺付近との高低差が大きく崖地になっており,また南北も斜面になっており,谷のような形状になっていて,この地域を西に抜けると平坦な土地になる。 高見側の谷地区の北側は,緩やかな斜面であり,鉈薬師堂に通じ 付近との高低差が大きく崖地になっており,また南北も斜面になっており,谷のような形状になっていて,この地域を西に抜けると平坦な土地になる。 高見側の谷地区の北側は,緩やかな斜面であり,鉈薬師堂に通じるいくつかの緩やかな斜面上の通路には,鉈薬師堂の樹木や原告らなど周辺住民の各家々の庭などに植えられた多くの樹木が目立ち,比較的狭い道路は,緑に覆われている。 高見側の谷地区の南側は,やや険しい斜面になっており,斜面上の整備された地区との間は階段状になった斜面住宅地である。 本件高架式道路が存在しない状況では,日泰寺付近との高低差が大きく崖地になっているため,高見側の谷地区と日泰寺付近の高台との間を自動車が通過することができない。本件高架式道路の敷地となる土地の一部は,昭和21年の段階から本件道路が建設予定であったため,本件高架部一部工事が開始する以前は更地で何らの建築物もなく,緑地が目立っていた。 原告甲e(別紙2図面⑤)及び原告甲f(別紙2図面⑥)はこの地域に居住している。 エ本件地域の用途地域等本件道路の建設予定地の両側20メートルの東西に延びる帯状の範囲は,都市計画法上の用途地区区分において第2種住居地域に指定されており,容積率が200パーセント,高度制限がなく,建ぺい率は60パーセントの地域である。また,上記範囲の北側は第2種中高層住居専用地域に,南側は第1種中高層住居専用地域に指定されている。 また,本件地域は,名古屋市都市景観条例に定める都市景観整備区や都市計画法に定める風致地区及び特別用途地区に指定されていない。 原告らを含む本件地域住民が,名古屋市建築協定条例2条に基づき,名古屋市長の認可を受け,若水・振甫・田代地区建築協定を締結しているが,この協定が締結されたのは,本訴訟が提起された後の平成19年2月27日であり,それ以前 民が,名古屋市建築協定条例2条に基づき,名古屋市長の認可を受け,若水・振甫・田代地区建築協定を締結しているが,この協定が締結されたのは,本訴訟が提起された後の平成19年2月27日であり,それ以前に,建物の建築に係る自主規制が行われたことはない。 昭和45年6月ころ,日泰寺の境内周辺を日泰寺が売却し,建築会社により高層マンションである現在のメゾン覚王山陽宮殿やメゾン月宮殿の建築がされはじめたため,地元住民らが市議会にマンション建築中止の請願を行った(甲55)が,結果的に請願の対象とされたメゾン覚王山陽宮殿やメゾン月宮殿は,当初の建築予定とされた階数で建築され,現在に至っている。 (2) 本件道路事業の概要ア高架式道路高見側の谷地区は,日泰寺付近との高低差が大きく崖地になっているため,本件道路のうち高見側の谷地区と日泰寺付近の高台を繋ぐ区間の約170メートルの区間は高架式道路として計画されている。本件高架式道路は,2個の橋台の間に6個の橋脚を有する構造になっているが,高架橋長159.3メートル(構造センター上)で標高差約10メートル,高架部分幅員9.9メートル(側道を含めると20.1メートル)であり,勾配は,6.2パーセントである。 本件高架式道路の路面の従来の地面からの最大高さは,上部橋台部分で約7.7メートルであり,さらにその上に防護壁及び遮音壁が1ないし2メートルの高さで取り付けられることになる。遮音壁は,太陽光を遮らない光性遮音壁が予定されている(乙7,25)。 㨯本件高架式道路の高架下には,長さ20メートル,幅約5メートルから6メートルの空間が6箇所でき,両側には6メートルの側道(本件各側道)が設けられ,本件南側側道と本件北側側道とで高低差があるため,本件各側道を行き来することができるように高架下に本件北側側道から本件 6メートルの空間が6箇所でき,両側には6メートルの側道(本件各側道)が設けられ,本件南側側道と本件北側側道とで高低差があるため,本件各側道を行き来することができるように高架下に本件北側側道から本件南側側道へ登る階段が設置される予定である。 イ市道257号線のかさ上げ本件道路事業により,本件道路と市道257号線との交差点(本件交差点)で,現在より約1メートルかさ上げされることとなり,その結果,市道257号線の北から本件交差点に向かう勾配が約12パーセントとなる。 (3) 本件道路事業に関する地域住民への説明等の経緯ア被告は,池内猪高線都市計画について,順次整備を行っていったが,池内猪高線都市計画に定められた本件道路事業に係る区間については,平成3年に至るまで,事業認可決定はされておらず,本件地域住民に対する説明会などを開いていなかった。本件地域住民において,池内猪高線都市計画に定められた本件道路事業についてそれまでに反対運動が起こされたことはうかがわれない。 被告は,昭和21年の池内猪高線都市計画では平面道路として位置,幅員のみを定めていたが,本件高架式区間が,日泰寺付近の標高が最も高く,日泰寺の西側は崖地となっているため,この地形に適合する方式として,高架式と地下式との比較検討を行った。 被告は,平成3年7月17日に事業計画説明会を,同年12月18日に地域住民事業計画説明会(都市計画変更説明会)を行い,その中で,地域住民から地下式に関する質問があったが,被告は,地下式による方法は,「トンネルの両端で10メートルくらいの差が生じること,道路の両側でも差が生じること,15メートルの幅では上り下りの2段の道路ができないこと,単断面だと両側の土地の高さが異なってくるため使い勝手が悪い道路となるなど,不便な道路となるため」採用が困難である の両側でも差が生じること,15メートルの幅では上り下りの2段の道路ができないこと,単断面だと両側の土地の高さが異なってくるため使い勝手が悪い道路となるなど,不便な道路となるため」採用が困難である旨の回答を行った。 被告は,池内猪高線都市計画のうち約170メートルの区間(本件高架式区間)を高架・側道式とする都市計画変更決定(本件都市計画変更決定)を行い,平成4年7月30日付けで告示した。 イ被告は,平成11年9月16日及び同年12月16日,本件地域住民に対して,工事・計画説明会を開催した。 被告は,平成13年3月27日,同年4月17日及び同年12月2日に,本件地域住民に対し,本件道路事業についての説明会を行った。 ウ本件高架部一部工事の着工延期被告は,本件高架式道路について,平成15年3月末に高架部橋梁下部工の一部(橋台1基,橋脚4基)の工事(本件高架部一部工事)に着工予定であった。 被告は,平成15年1月23日の本件地域住民に対する工事・計画についての説明会において,本件高架部一部工事に着工する旨を説明した。 本件地域住民の一部(守る会参加者)は,平成15年2月下旬,守る会を結成した。 被告は,平成15年3月6日,本件地域住民に対して本件高架部一部工事の着手についての説明会を行い,本件地域住民からの質疑を受け,環境影響評価を行わないことなどを説明した。 被告は,上記説明会などで守る会参加者から,地下式の要望が出されたため,一旦着工を延期し,新たな説明資料を用意することとした。 原告らは,上記説明会の際,被告は,早急な工事を行わない旨の合意をしたと主張し,それに沿う内容の原告甲a,原告甲eの供述や陳述書(以下「原告らの供述」という。)があるが,乙9号証の議事録にはそのような内容の記載はなく,また,仮に上記のような趣旨の発言があったとし したと主張し,それに沿う内容の原告甲a,原告甲eの供述や陳述書(以下「原告らの供述」という。)があるが,乙9号証の議事録にはそのような内容の記載はなく,また,仮に上記のような趣旨の発言があったとしても,既に事業期間を平成18年3月31日までとする平成14年事業認可を得ている被告がそのような合意をするとは考えられず,原告らの供述はにわかに採用することができず,他に被告が早急な工事を行わない旨の合意をしたことを裏付ける証拠はない。 エ本件高架部一部工事の着工再開守る会と被告とは,平成15年6月8日に意見交換会を行い,被告は,守る会に対し,高架・側道式による計画の現状を説明し,地下式は,新たな用地の取得が必要となることなどの点で実現性がないことを説明した。 守る会は,平成15年6月ころ,代替案の検討を開始し,j教授に代替案のプランの作成を依頼した。 守る会と被告とは,同年8月31日ころ,意見交換会を行い,完成した代替案についてj教授がスライドを使用して説明を行い,守る会と被告との間で,代替案について協議した。 被告は,代替案について検討を行った結果,①トンネル東側に新たな用地が必要になること,②トンネル西側で,道路の南と北とで高低差が生じ,道路への出入りが不自由になり,また,南北が分断されること,③トンネル工事は大規模な掘削工事となるため,工事中は付近道路の長期間の交通止め及び南北分断が生じることなど地下式の実現は困難であると判断し,同年10月3日,守る会に「都市計画道路池内猪高線の整備について(お知らせ)」と題する書面(甲98)を送付した。 被告は,同月7日,「池内猪高線の工事着手のお知らせ」(事業の経緯と概要)」と題する書面(乙11)を本件地域住民に配布した。 守る会は,被告に対し,j教授作成の高架式と地下式両案の比較検討資料を提出し 告は,同月7日,「池内猪高線の工事着手のお知らせ」(事業の経緯と概要)」と題する書面(乙11)を本件地域住民に配布した。 守る会は,被告に対し,j教授作成の高架式と地下式両案の比較検討資料を提出した(甲23,24)が,被告は,提案書の内容では地下式は困難であることを回答し,「池内猪高線の整備について(お知らせ)」と題する書面を本件地域住民に配布した(乙11)。 守る会は,同月25日,地下式案の住民説明会を実施し(甲29),同日,地下式の工事期間や工事費などについての質問書(甲99)を被告に交付した。 被告は,同月29日,本件高架部一部工事に着工した。 オ本件高架部一部工事の着工後の経過守る会は,平成15年11月28日,被告に対し,「抗議書,請願書,公開質問状,要求書」を提出するなど,その後も抗議活動を行い,平成16年3月14日にはデモ行進を行い,テレビ番組で報道されるなどした。 また,千種区地域環境審議会が,守る会による本件道路事業に係る環境保全に関する調査審議の申立てについて,名古屋市環境基本条例(平成8年名古屋市条例第6号)31条4項により,本件道路事業の事実経過及び調査に関する資料の提出を求めるなどした(甲48,50,51)。 また,守る会参加者は,平成16年5月20日,道路建設工事禁止の仮処分申立てを行った(平成16年(ヨ)第K号,第L号)が,名古屋地方裁判所は,同年10月18日,同申立てを却下する決定をした(甲103,乙6,7)。 被告は,守る会参加者による抗議に対して,従来どおり地下式は難しいこと,予定どおり工事を行うことなどを伝え,準備工(測量等),仮設道路の整備・仮土留めを行った後,本体工事である橋台・橋脚の築造を順次行い,平成16年7月に本件高架部一部工事は終了した。 原告らは,平成17年6月22日,本件訴えを提起した ,準備工(測量等),仮設道路の整備・仮土留めを行った後,本体工事である橋台・橋脚の築造を順次行い,平成16年7月に本件高架部一部工事は終了した。 原告らは,平成17年6月22日,本件訴えを提起した。 カ本件訴え提起後の経緯被告は,本件環境影響評価条例に定める環境影響評価を実施していないが,平成16年7月から平成17年7月にかけて四季を通じ,本件道路事業の区域内の三地点で将来予測交通量による環境調査(大気・騒音・振動の3項目)を実施した。 そして,被告は,同年8月23日,上記環境調査の結果がいずれも環境基準ないし要請限度の範囲内であったとの内容の池内猪高線便りvol.4(乙25)を本件地域の各戸に配布した。 守る会は,同年9月2日,池内猪高線便りvol.4(乙25)について質問を行い(甲100),同年11月27日,守る会が,被告を招いて集会を開き,被告は,質問に対する回答を行ったが,一部は時間切れのため回答を保留し,同年12月11日に説明会を再度開催することを伝えた(甲101,原告甲a)。 被告は,守る会及び本件地域住民に対し,同年12月5日ないし6日,同年12月11日に予定していた説明会について,本件訴訟における原告準備書面(平成17年12月1日付け)において説明予定の内容が取り上げられていたことを理由として,本件訴訟上で被告の見解を明らかにすることとし,上記説明会を中止する旨を伝えた(甲101,102)。 争点(1)(景観利益侵害)について(1) 原告らは,本件地域は,良好な風景として,人々の歴史的又は文化的環境を形作り,豊かな生活環境を構成するもので,この景観に近接する本件地域住民である原告らは,上記景観の恵沢を日常的に享受しており,上記景観について景観権ないし景観利益を有しており,本件道路,特に本件高架式道路は,その外観 境を構成するもので,この景観に近接する本件地域住民である原告らは,上記景観の恵沢を日常的に享受しており,上記景観について景観権ないし景観利益を有しており,本件道路,特に本件高架式道路は,その外観が周囲の景観の調和を乱し,景観を著しく破壊するものであって,侵害行為の態様や程度において社会的に容認された行為としての相当性を欠くものであると主張する。 (2) 都市の景観は,良好な風景として,人々の歴史的又は文化的環境を形作り,豊かな生活環境を構成する場合には,客観的価値を有するものというべきである。良好な景観に近接する地域内に居住し,その恵沢を日常的に享受している者は,良好な景観が有する客観的な価値の侵害に対して密接な利害関係を有するものというべきであり,これらの者が有する良好な景観の恵沢を享受する利益(景観利益)は,法律上保護に値するものと解するのが相当である(最高裁平成18年3月30日第1小法廷判決・民集60巻3号948頁)。 (3) そこで,本件において原告らに,良好な景観の恵沢を享受する利益(景観利益)が認められるか検討する。 前記認定事実によると,本件地域は,確かに木々や緑地などが多い閑静な住宅地となっているが,日泰寺などの文化財あるいは自然環境を中心とした住宅地を目指して地域の整備を行ってきたという歴史的な経緯があるわけではなく,また,本件訴えの提起に至るまで建築についての自主規制は行われておらず,市道257号線に沿った住居地区及び覚王山日泰寺側の丘陵地域において7階建以上のマンションが建築されるなど,本件地域についての環境や景観の保護に対する意識も様々であり,さらに,本件地域が,現在の地域の状態を守ったり,育てたり,作ったりすることを目的に,都市景観整備区や風致地区などの地域に指定されたこともなく,被告などの行政庁において 護に対する意識も様々であり,さらに,本件地域が,現在の地域の状態を守ったり,育てたり,作ったりすることを目的に,都市景観整備区や風致地区などの地域に指定されたこともなく,被告などの行政庁においても,本件道路建設予定地の両側20メートルの東西に延びる帯状の範囲は,高度制限のない第2種住居地域に指定しており,被告においては昭和21年から現在に至るまで本件都市計画決定及び本件都市計画変更決定に定める本件道路事業を行うことを予定していたのである。 そして,本件地域において,文化財,自然環境,建物の高さや位置,建物の様式などが,現に調和がとれた景観を呈していると認めることはできない。 原告らは,本件地域に居住する本件地域住民は,長年,緑豊かな歴史的空間を維持するため,それぞれが町並みにふさわしい建物を建て,道路に面した庭を整備するなどといった土地利用を行うことによって景観を守り育ててきたと主張する。しかし,上記のとおり,本件地域についての環境や景観の保護に対する意識は本件地域の住民や土地所有者等の間でも様々であり,本件地域において文化財,自然環境,建物の高さや位置,建物の様式などが調和がとれた景観を呈しているとまで認めることはできないから,原告らの主張は採用できない。 そうすると,本件地域の景観は,人々の歴史的又は文化的環境を形作り,豊かな生活環境を構成するものとまで認めることはできず,本件地域に居住する原告らに景観利益を認めることはできない。 (4) よって,原告らの景観権ないし景観利益侵害の主張は理由がない。 争点(2)(日照権侵害)について(1) 前記認定事実のほか,括弧内に掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告甲eは,本件地域のうち,高見側の谷地区内の別紙2図面⑤記載の自己所有の土地に,昭和55年ころ, ) 前記認定事実のほか,括弧内に掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告甲eは,本件地域のうち,高見側の谷地区内の別紙2図面⑤記載の自己所有の土地に,昭和55年ころ,夫と共有の木造2階建の建物(原g告甲e宅)を建築し,同建物に居住している(甲41の6,45の2,46の2,71の6,原告甲e)。 そして,本件道路工事により,原告甲e宅の南側に本件北側側道及び本件高架式道路が設置される。 イ本件道路の建設予定地の両側20メートルの東西に延びる帯状の範囲は,都市計画法上の用途地区区分において第2種住居地域に指定されており,容積率が200パーセント,高度制限がなく,建ぺい率は60パーセントの地域であり,原告甲e宅は,この地域に建築されている。また,上記範囲の北側は第2種中高層住居専用地域に,南側は第1種中高層住居専用地域に指定されている。 そして,原告甲e宅は,建築基準法56条の2及び名古屋市中高層建築物日影規制条例(昭和52年名古屋市条例第58号)により,高さが10メートルを超える建造物については,冬至において,午前8時から午後4時までの間において,平均地盤面から4メートルの高さの水平面に敷地境界線からの水平距離が5メートル以上10メートル以内の範囲に4時間以上の日影を生じさせてはならないとの日影規制の対象区域に存在する。 被告においては,道路の建設などの公共事業における日陰により生ずる損害等に係る事前賠償は,「公共施設の設置に起因する日陰により生ずる損害等に係る費用負担について」に基づき行われ,第2種住居地域においては,冬至における日陰時間が2階(開口部が真南に面する居室)で5時間を超える場合に限り,行うことができるとされている。 ウ昭和21年の段階から本件道路が建設予定であったため,原告甲e宅の南側 いては,冬至における日陰時間が2階(開口部が真南に面する居室)で5時間を超える場合に限り,行うことができるとされている。 ウ昭和21年の段階から本件道路が建設予定であったため,原告甲e宅の南側の本件道路の建設予定地の一部は,本件道路事業の開始以前は更地で何らの建築物もなく,そのため,緑地が目立っており,原告甲e宅の周囲に日照を遮る建築物はなかった。 もっとも,本件地域内においても,原告甲e宅から東方約200メートルの位置にメゾン覚王山陽宮殿が存在するし,メゾン覚王山陽宮殿の北方約100メートルの位置にはザ・マスターズフォートが存在し,また,原告甲e宅東方約300メートルの位置にはメゾン月宮殿が存在し,これらはいずれも地上7階建以上の集合住宅である(乙15,距離は乙46の16など図面による)。 エ原告甲e宅について,本件高架式道路に起因する冬至における日陰時間は,2階(開口部が真南に面する居室)において,5時間を超えることはない(乙16)。 他方,原告ら提出の日影図(甲4,66の1,77,79)などによると,原告甲e宅の地上ゼロメートルの高さにおいて,本件高架式道路に起因する冬至における日影時間は,午前8時から午後4時までの間全部の8時間になり,立春においても,午前8時から午後4時までの間に,3時間24分になるとされているが,しかし,これらの書証では,測定面の高さが,原告甲e宅の地盤面(6.53メートル)で,本件高架式道路の高架部から原告甲e宅までの距離が12.47メートルとされているが,本件高架式道路の境界線から原告宅までの距離は明らかでない。 原告ら提出の日影図の前提となる本件高架式道路の高さについては,地盤面から本件高架式道路の防護壁までの高さに遮音壁の高さを加えたものであると考えられるが,そうすると,本件高架式道路の高さ約 でない。 原告ら提出の日影図の前提となる本件高架式道路の高さについては,地盤面から本件高架式道路の防護壁までの高さに遮音壁の高さを加えたものであると考えられるが,そうすると,本件高架式道路の高さ約1メートルの遮音壁が太陽光を遮らない材質の透光性遮音壁が予定されていること(乙25)は考慮されていないことになる。また,平均地盤面から4メートルの高さの水平面に敷地境界線からの水平距離が5メートル以上10メートル以内の範囲での日影時間については明らかでない。 (2) そこで,本件高架式道路により生ずる日影による被害が,原告甲eの受忍限度を超えるものであるかどうかについて検討する。 まず,本件高架式道路は,建築基準法上の建築物ではないので,同法による規制は直接適用されないものの,同法の規制は,原告甲eの被る被害が受忍限度を超えるか否かを判断する指標となる。しかし,原告甲e宅について日影規制の基準を超える日影があるかについては,証拠上明らかでない。 そして,前記認定事実のとおり,原告甲e宅について,本件高架式道路に起因する冬至における日陰時間は,2階(開口部が真南に面する居室)において,5時間を超えることはないと認められる。 原告らは,本件地域は,域内の住民や行政の努力等により,実際は低層の住宅地域として機能してきたもので,これまで原告甲eは十分な日照を享受してきたことから,冬至における地上ゼロメートルの高さの日影時間を検討すべきであると主張する。しかし,前記認定事実のとおり,本件地域は,高度制限のない第2種住居地域であり,また,原告甲e宅から約200ないし300メートルの位置にも地上7階建以上の集合住宅が存在するのであるから,地域住民や行政の努力により,本件地域が低層住宅地域として機能していたとは言い難く,他に本件地域につき地上ゼロメートルの高さ 300メートルの位置にも地上7階建以上の集合住宅が存在するのであるから,地域住民や行政の努力により,本件地域が低層住宅地域として機能していたとは言い難く,他に本件地域につき地上ゼロメートルの高さの日影時間を基準にすべきことを基礎付けるに足りる証拠はないのであるから,原告らの上記主張は採用できない。 そうすると,原告甲eがこれまで日影のない十分な日照を享受してきたことを考慮しても,本件高架式道路の日影による被害が,原告甲eの受忍限度を超えるものとは認められない。 (3) よって,原告らの日照権侵害の主張は理由がない。 争点(3)(圧迫感・眺望権侵害)について(1) 圧迫感についてア原告らは,本件高架式道路についての形態率は,計測したいずれの地点でも約35パーセントで,住宅地の形態率の圧迫感としては常軌を逸したものであると主張し,それを立証する証拠として甲74号証の1ないし4,75号証ないし79号証などを提出している。 イ甲3,74,75号証及び乙14号証によると,本件高架式道路の本件北側側道上から測定した形態率は,33.11パーセントから37.10パーセントであることが認められるが,この形態率が本件北側側道のどの地点から測定したのか証拠上明らかでない。すなわち,甲74号証の図面,甲75号証の「圧迫感算定図」及び甲76号証の図面の各測定地点は,これらの書面上明らかでなく,これらの書面の作成者であるlの陳述書(甲79)によると,各測定地点間の距離(20メートル)をいうのみで,本件高架式道路から何メートルの地点で測定したものか明らかでない(甲79号証では,全体平面図(甲3)や本線縦断図(乙14)の本件高架式道路中心部からの距離を測定しているようであるが,甲75,76号証には中心部からの距離が記載されていない。)。また,甲56,64 甲79号証では,全体平面図(甲3)や本線縦断図(乙14)の本件高架式道路中心部からの距離を測定しているようであるが,甲75,76号証には中心部からの距離が記載されていない。)。また,甲56,64号証の合成写真の撮影地点も書面上明らかでなく,上記の各測定地点と一致するものでもない。さらに,甲72号証の1ないし4における形態率の許容限度を定めた前提となる実験は,人が連続して立っている建築群を1棟づつ別個に識別しているときの建築物までの水平距離が20ないし30メートルとされていることを前提にしている。すなわち,同実験の実験手法の点から20メートルより近い高層建築物は,全景映写装置や広角レンズの画角には入りきらず,40メートルより遠い建築物は,その対象物の下層のかなりの部分が前景により隠されてしまって実験に適しないため,飽くまで20メートルから40メートル内で測定した場合の形態率について妥当するものである。そして,上記のとおり甲74ないし76号証の測定点と本件高架式道路との距離は明らかでない。そうすると,これらの証拠によっても側道上において本件高架式道路による圧迫感が受忍限度を超えるものと認めるのは問題がある。 加えて,甲72号証の1ないし4における形態率の許容限度を定めた前提となる実験対象は,1棟の建築物から受ける圧迫感であり,本件高架式道路のような建造物について直ちに妥当するものか明らかでなく,本件高架式道路は,高架下に6箇所の空間ができるのであるし,透光性遮音壁が予定されているのであるから,形態率によって圧迫感を判断すること自体相当といえるか疑問である。 また,高架式道路が建設されると,高架式道路という形状によって当然に,その隣接する土地における天空の相当部分が高架式道路によって占められることになるが,本件高架式道路が,他の高架式 るか疑問である。 また,高架式道路が建設されると,高架式道路という形状によって当然に,その隣接する土地における天空の相当部分が高架式道路によって占められることになるが,本件高架式道路が,他の高架式道路と異なり特に圧迫感が受忍限度を超えるものであると認めるに足りる証拠はない。 ウよって,原告らの圧迫感についての主張は理由がない。 (2) 眺望権侵害についてア原告らは,本件高架式道路が建設されると,高見側の谷地区に居住する原告甲eや原告甲fにとって,絶壁のように本件高架式道路が立ちふさがり,眺望が著しく阻害されると主張する。 イもともと風景は,誰でもこれに接しうるものであって,ただ特定の場所からの観望による利益(眺望利益)は,たまたまその場所の独占的占有者のみが事実上これを亨受しうることの結果としてその者に独占的に帰属するにすぎず,その内容は,周辺における客観的状況の変化によって,おのずから変容ないし制約をこうむらざるをえないもので,眺望利益を亨受する者は,人為によるこのような変化を排除しうる権能を当然に持つものということはできない。もっとも,眺望利益もまた,一個の生活利益として保護されるべき価値を有しうるのであり,特に,特定の場所がその場所からの眺望の点で格別の価値をもち,このような眺望利益の亨受を一つの重要な目的としてその場所に建物が建設された場合のように,当該建物の所有者ないし占有者によるその建物からの眺望利益の亨受が社会観念上からも独自の利益として承認せられるべき重要性を有するものと認められる場合には,法的見地からも保護される利益であるといえる場合がある。 ウ前記認定事実のほか,証拠(甲41の6・15,62,71の5・6,原告甲e)及び弁論の全趣旨によれば,高見側の谷地区に居住する原告甲eや原告甲fは,高見側の谷地区から日 あるといえる場合がある。 ウ前記認定事実のほか,証拠(甲41の6・15,62,71の5・6,原告甲e)及び弁論の全趣旨によれば,高見側の谷地区に居住する原告甲eや原告甲fは,高見側の谷地区から日泰寺方面を眺望することができたことは認められるが,このような眺望利益の享受が社会通念上独自の利益として承認されるべき重要性があるとまで認めることはできない。 そうすると,高見側の地域に居住する原告甲eや原告甲fについて,眺望につき法律上保護される利益があるとは認められない。 エよって,原告らの眺望権侵害の主張は理由がない。 争点(4)(所有権侵害)について(1) 原告甲fの所有権侵害についてア原告らは,本件道路工事による振動の大きさ,本件高架式道路と甲fが居住する建物(原告甲f宅)の擁壁の距離,原告甲f宅の擁壁が鉄筋の入っていないブロック塀であること等を考慮すると,本件道路工事が続行されることにより,原告甲f宅の擁壁が崩落することは明らかであるから,本件道路工事は,原告甲fの所有権を侵害するものであると主張し,これに沿う内容の原告甲fの娘で,同居するhの陳述書(甲62)を提出する。 イしかし,前記認定事実のほか,括弧内に掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。 (ア) 原告甲fは,本件地域のうち,高見側の谷地区内の別紙2図面⑥記載の自己所有の土地に自己所有の木造2階建の建物(原告甲f宅)を所有して,同所で居住し(甲45の3,46の3),原告甲f宅の北側に本件南側側道及び本件高架式道路が建設される。 (イ) 被告は,平成15年10月29日,本件高架式区間において本件高架部一部工事に着工し,準備工(測量等),仮設道路の整備・仮土留めを行った後,本体工事である橋台・橋脚の築造を行い,平成16年7月に本件高架部一部工事は終了 0月29日,本件高架式区間において本件高架部一部工事に着工し,準備工(測量等),仮設道路の整備・仮土留めを行った後,本体工事である橋台・橋脚の築造を行い,平成16年7月に本件高架部一部工事は終了した。 株式会社mは,平成16年2月3日,原告甲f宅の事前調査を実施し(乙19),この段階で,原告甲f宅のコンクリートブロック塀や石積に損傷がいくつか見られた(乙20)。事前調査報告については,原告甲fの妻であるiが確認し,署名押印を行った(乙19)。 株式会社mは,同年5月28日,事後調査を実施した際,原告甲f宅の擁壁の損傷について,事前調査と対比して変化は見られなかった(乙20)。事後の調査報告については,原告甲fの娘であるhが確認し,署名押印を行った(乙20)。 (ウ) 原告甲fは,同年6月15日,本件高架部一部工事の施工業者であるn株式会社に対し,本件高架部一部工事によって原告甲f宅,その他工作物への被害がなかったことを確認した内容の確認書に記名押印した(乙21)。 ウ以上のとおり,株式会社mの調査は,原告甲fの家族が確認を行っている上に,原告甲f自身が,nに対し,本件高架部一部工事によって原告甲f宅,その他工作物への被害がなかったことを確認した内容の確認書を作成しているのであるから,hの陳述書をたやすく採用することはできないし,他に,本件道路工事によって原告甲f宅の擁壁が崩落すると認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告らの上記主張は理由がない。 (2) 原告甲c,原告甲d及び原告甲bの所有権侵害についてア前記認定事実のほか,括弧内に掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。 (ア) 原告甲cは,本件地域のうち,市道257号線に沿った住居地区内の別紙2図面③記載の住所地に,木造平家建の建物を所有ないし共有して 掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。 (ア) 原告甲cは,本件地域のうち,市道257号線に沿った住居地区内の別紙2図面③記載の住所地に,木造平家建の建物を所有ないし共有して,同所で居住している(甲45の4,46の4,93)。 原告甲dは,本件地域のうち,市道257号線に沿った住居地区内の別紙2図面④記載の自己所有の土地に,鉄筋コンクリート造陸屋根3階建の建物を所有して,同所で居住している(甲45の1,46の1)。 原告甲bは,本件地域のうち,覚王山日泰寺側の丘陵地域内の別紙2図面②記載の自己が共有持分権100分の93を有する土地上の建物に居住している(甲92)。 本件道路事業に際し,原告甲c,原告甲d及び原告甲bの土地の一部が本件道路にかかるため,いずれもその一部が収用される予定である。 (イ) 本件道路事業により,本件道路と市道257号線とが水平交差する部分(本件交差点)では,現在より,約1メートルかさ上げされることとなり,その結果,市道257号線の北から本件交差点に向かう勾配が約12パーセントとなる(乙26,27)。その結果,市道257号線は,原告甲c宅の玄関や原告甲d宅の車庫よりも高い位置を通過することになり(甲66の4),原告甲bの南側の玄関先の道路は,本件道路の建設により現状より60センチメートル下がる予定である。 (ウ) 被告は,原告らの本件道路事業により生じる損害について,公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱に基づき適正な補償を行う予定である。 具体的には,被告は,道路に面する土地が道路と高低差が生じることによって玄関の人の出入りに支障が生じる場合には,出入り口に階段を設置するなどの費用の補償をし,車庫からの車の出入りに支障が生じる場合には,スロープを設置するあるいは車庫の敷地をかさ上げするなどの費用 って玄関の人の出入りに支障が生じる場合には,出入り口に階段を設置するなどの費用の補償をし,車庫からの車の出入りに支障が生じる場合には,スロープを設置するあるいは車庫の敷地をかさ上げするなどの費用の補償をする予定である。 本件道路事業に関して所有地を収用する予定である原告甲cについては,適正な補償の算定に必要な建物調査が,隣地(民有地)との敷地境界が未確定のため行うことができず,具体的な補償額を算定できない状況にあり,また,原告甲bについては,原告甲bが敷地内への被告の立入調査を認めていないため,具体的な補償額が算定できない状況である。 本件道路事業に際し,車庫部分の土地が本件道路にかかり,所有地が収用される予定である原告甲dについては,建物調査が終わっており,被告は,車庫を残地内に移転する費用を補償する予定である。 イ(ア) 原告らは,原告甲c,原告甲d及び原告甲bの各土地に本件道路の一部がかかることになり,収用されるおそれがあることから,これは原告甲c,原告甲d及び原告甲bの所有権に対する侵害であると主張する。 (イ) そこで,検討するに,所有権は,公共の福祉に適合するように,法律でこれを定め(憲法29条2項,民法206条),正当な補償の下に,これを公共のために用いることができる(憲法29条3項)。 都市計画法69条は,都市計画事業については,これを土地収用法3条各号の1に規定する事業に該当するものとみなし,同法の規定を適用するとし,都市計画法70条は,都市計画事業については,土地収用法20条の規定による事業の認定は行なわず,都市計画法59条の規定による認可又は承認をもつてこれに代えるものとし,都市計画法62条1項の規定による告示をもって土地収用法26条1項の規定による事業の認定の告示とみなすとしており,被告は,都市計画事業の認定を受 規定による認可又は承認をもつてこれに代えるものとし,都市計画法62条1項の規定による告示をもって土地収用法26条1項の規定による事業の認定の告示とみなすとしており,被告は,都市計画事業の認定を受けることで,土地収用法の定める手続により,所有権を取得することができ,同法の定める手続に従い損失補償が行われる。 そうすると,上記認定事実のとおり,本件道路事業によって原告甲c,原告甲d及び原告甲bの各土地が収用されるおそれがあるとしても,本件道路事業は,平成18年道路事業変更認可に基づくものであるから,被告は,原告甲c,原告甲d及び原告甲bの各土地を正当な補償の下に収用することが可能である。 したがって,本件道路事業によって原告甲c,原告甲d及び原告甲bの各土地が収用されるおそれがあることを理由に所有権の侵害があるとする原告らの上記主張は理由がない。 ウ(ア) 原告らは,本件道路事業によって,原告甲c宅及び原告甲d宅に面する市道257号線が底上げされることになり,また,原告甲b宅の玄関先道路は,本件道路の建設により現状より60センチメートル下がることになり,それぞれ玄関からの出入りなどが不可能となるから,原告甲c,原告甲d及び原告甲bの所有権に対する侵害である旨主張する。 (イ) 公共的な目的を有する事業の実施によって,土地の所有権が侵害され,又は将来侵害されるおそれがあり,その侵害行為によって請求者に回復し難い明白かつ重大な損害が生じ,その損害の程度が,当該事業によってもたらされるべき公共の利益を上回る程のものであって,その権利を保全することがその事業を差止めることによってのみ実現される場合には,土地の所有権者は,所有権に基づいて,公共的な目的を有する事業の差止めをすることができる。 本件においては,本件道路事業は,平成18年道路事業変更 の事業を差止めることによってのみ実現される場合には,土地の所有権者は,所有権に基づいて,公共的な目的を有する事業の差止めをすることができる。 本件においては,本件道路事業は,平成18年道路事業変更認可に基づくものであり公共的な目的を有する事業であるから,上記認定事実のとおり,本件道路により,玄関からの人の出入りや車庫からの車の出入りに支障が生じるおそれがあるとしても,それは玄関や車庫などからの出入りを可能とする設備を設置することによって回復することが可能であり,回復し難い明白かつ重大な損害が生じるものとはいえない。 被告は,土地を収用してその土地を事業の用に供することにより当該土地及び残地以外の土地について通路,溝,垣,さくその他の工作物を新設し,改築し,増築し,若しくは修繕し,又は盛土若しくは切土をする必要があると認められるときは,これらの工事をすることを必要とする者の請求により,これに要する費用の全部又は一部を補償しなければならず,被告又は当該工事をすることを必要とする者は,これに代えて被告が当該工事を行うことを要求することができ(都市計画法69条,70条,土地収用法(昭和26年法律第219号)93条),その外,道路を改築したことにより,当該道路に面する土地について,上記の工事をするやむを得ない必要があると認める場合においては,本件道路の道路管理者である被告において,上記と同様の損失補償を行う必要があるとされている(道路法70条)。 そして,被告においても,本件道路事業により生じる損害について,公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱に基づき適正な補償を行うことを予定しているのであるから,原告甲c,原告甲d及び原告甲bは,被告に対し,玄関や車庫などからの出入りを可能とする設備を設置する費用が必要であれば,これらの手続に従って損失補 き適正な補償を行うことを予定しているのであるから,原告甲c,原告甲d及び原告甲bは,被告に対し,玄関や車庫などからの出入りを可能とする設備を設置する費用が必要であれば,これらの手続に従って損失補償を請求すれば足りるものである。 (ウ) 原告らは,原告甲cの住居は,既に東側が斜面で塞がれているため,本件道路が建設されると南側を本件道路で,西側を底上げされた市道257号線で塞がれることになり,ちょうどすり鉢の底に住居が存在するような状態となり,看過することができない損害が生じることになると主張するが,上記のとおり,玄関や車庫などからの出入りを可能とする設備を設置することによって回復することが可能であり,原告らの主張は理由がない。 エよって,原告らの所有権侵害の主張はいずれも理由がない。 争点(5)(通行権侵害)について(1) 原告らは,本件道路事業が市道257号線などを利用する原告らの通行権を侵害すると主張する。 (2) 前記認定事実のほか,括弧内に掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。 ア原告甲cは,本件地域のうち,市道257号線に沿った住居地区内の,市道257号線に面する別紙2図面③記載の土地に居住し,市道257号線を利用する住民である。 原告甲dは,本件地域のうち,市道257号線に沿った住居地区内の,市道257号線に面する別紙2図面④記載の土地に居住し,市道257号線を利用する住民である。 原告甲bは,本件地域のうち,覚王山日泰寺側の丘陵地域内の別紙2図面②記載の土地に居住し,市道257号線に直接面しないものの,市道257号線を利用する住民である。 原告甲aは,本件地域のうち,高見側の谷地区内の別紙2図面①記載の土地に居住し,市道257号線に直接面しないものの,市道257号線を利用する住民である。 原告 市道257号線を利用する住民である。 原告甲aは,本件地域のうち,高見側の谷地区内の別紙2図面①記載の土地に居住し,市道257号線に直接面しないものの,市道257号線を利用する住民である。 原告甲fは,高見側の谷地区内の別紙2図面⑥記載の土地に居住し,原告甲f宅の北側に本件南側側道及び本件高架式道路が建設される。 イ市道257号線は,名古屋市が設置管理する一般公衆の用に供せられている公道であり,振甫町方面から地下鉄覚王山駅前に通じる抜け道として,近所との交流,買い物,日泰寺への参詣などのために,本件地域住民によって日常的に利用される道路である。 本件道路事業により,本件道路と市道257号線とが水平交差する部分(本件交差点)では,現在より,約1メートルかさ上げされることとなり,その結果,市道257号線の北から本件交差点に向かう勾配は約12パーセントとなる(乙26,27)。 ウ本件交差点に信号機は設置されないが,本件交差点から東西に向かう本件道路の両側には約3メートルの歩道が設けられ,本件交差点から東方約100メートル付近に信号機を設置することが予定されている(乙11,46の12,69の2)。 エ本件道路事業により,本件高架式道路の両側には幅6メートルの本件各側道を設け,本件高架式道路の下には,長さ20メートル,幅5メートルから6メートルの空間が6箇所でき,本件各側道を行き来することができるように本件北側側道から本件南側側道へ登る階段が設置される予定である(乙11,46の11ないし15,69の2)。 (3) 原告らは,本件道路事業により市道257号線が急勾配化し,市道257号線における原告らの歩行等が困難になる旨主張するが,上記認定事実のとおり,市道257号線の北から本件交差点に向かう勾配が約12パーセントになるなど勾配が現状より急 57号線が急勾配化し,市道257号線における原告らの歩行等が困難になる旨主張するが,上記認定事実のとおり,市道257号線の北から本件交差点に向かう勾配が約12パーセントになるなど勾配が現状より急になることは認められるが,約12パーセントの勾配となることで直ちに歩行者や自転車の通行が不可能ないし困難になると認めることはできず,他に歩行者等の通行が不可能ないし困難になると認めるに足りる証拠はない。 また,原告らは,本件交差点には,信号機の設置が予定されていないため,本件道路を横断することが困難になり,市道257号線に極めてひどい交通渋滞が生じることになると主張するが,上記認定事実のとおり,本件交差点から東西に向かう本件道路の両側には歩道が設けられ,本件交差点から東方約100メートル付近に信号機を設置することが予定されているから,市道257号線に交通渋滞が生じるとは認められないし,信号機が将来にわたって,どのような状況になっても絶対に設置されないというわけでもない。 さらに,原告甲f宅は,本件南側側道に面することとなるが,原告らは,本件各側道により高見側の谷地区の南北の交通が遮断される旨主張する。しかし,本件高架式道路の下には,件各側道を行き来することができるように階段が設置される予定であるから,原告らの上記主張は理由がない。 (4) よって,原告らの通行権侵害の主張は理由がない。 争点(6)(人格権侵害)について(1) 原告らは,本件道路事業により発生する大気汚染や騒音などにより,原告らの健康,生命が明白な危険にさらされる蓋然性が高いから,原告らの人格権を侵害すると主張する。 (2)ア環境基本法16条1項は,「政府は,大気の汚染,水質の汚濁,土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について,それぞれ,人の健康を保護し,及び生活環境を保全 らの人格権を侵害すると主張する。 (2)ア環境基本法16条1項は,「政府は,大気の汚染,水質の汚濁,土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について,それぞれ,人の健康を保護し,及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。」と定めているところ,大気の汚染に係る環境上の条件についての望ましい基準として,「大気の汚染に係る環境基準について」(昭和48年環境庁告示第25号)(以下「大気質環境基準」という。)を定め,騒音に係る環境上の条件についての望ましい基準として,「騒音に係る環境基準について」(平成10年環境庁告示第64号)(以下「騒音環境基準」という。)を定めている。また,振動規制法(昭和51年法律第64号)16条1項,振動規制法施行規則(昭和51年総理府令第58号)は,道路交通振動の防止のため措置等を執るための要請限度(以下「振動要請限度」という。)を定め,「道路交通振動の要請限度」(昭和52年愛知県告示第1049号)において,本件地域のある第2種住居地域,第2種中高層住居専用地域及び第1種中高層住居専用地域においては,上記規則の別表第2の第1種区域と定められている。 イ池内猪高線だよりvol.4(乙25)の環境調査結果(以下「本件環境調査結果」という。)によると,被告は,平成16年7月から平成17年7月にかけて四季を通じ,本件道路事業の区域内の三地点で将来予測交通量による環境調査(大気・騒音・振動の3項目)を実施し,その結果,大気質予測において二酸化窒素(ppm)及び浮遊粒子状物質(mg/m )は,大気質 環境基準の範囲内であったこと,騒音予測において昼夜間のdB(デシベル)は,いずれも騒音環境基準の範囲内であったこと,振動予測において昼夜間のdB(デシベル)は,いずれも振動要請限度の範囲内であっ 環境基準の範囲内であったこと,騒音予測において昼夜間のdB(デシベル)は,いずれも騒音環境基準の範囲内であったこと,振動予測において昼夜間のdB(デシベル)は,いずれも振動要請限度の範囲内であったことが認められる。 本件環境調査結果における環境調査の前提となった本件道路における予測交通量は,1日当たり約1万3500台とされているところ,この数字は,被告が行った本件地域における将来の予測交通量(乙62)と一致している。 この点,平成14年の都市計画道路整備効果調査業務委託報告書(甲97)において,1日当たり2万1921台という数字とは齟齬があるが,乙66号証によると,これは,将来交通量の算出の際に基本的な前提条件となる道路網の設定に誤りがあったため過大な交通量を予測することとなったためであり,この不備を修正し,改めて算出したのが上記の平成16年の都市計画道路整備効果調査業務委託報告書(乙62)であることが認められる。そうすると,上記1日当たり約1万3500台という本件環境調査結果の前提が特段不合理なものとは認められない。 原告らは,平成17年度の名古屋市の道路交通センサス(甲84の1・2)では,池内猪高線の開通済交通量は12時間交通量で1万3842台であるから,1日当たりで約1万3500台とする被告の予測交通量に信用性がないと主張するが,上記道路交通センサスの調査地点は,本件道路事業の区域より東方へ約2キロメートルの地点(千種富士見台5丁目)で調査した結果であるが,同地点との間には志段味田代線を含むいくつかの道路が交差しているのであるから,必ずしも本件道路事業の区域と同一条件下での観測とはいえないから,その数値をもって本件環境調査結果の前提が特段不合理なものとすることはできない。 ウ加えて,乙63号証によると,平成18年度の本件道 必ずしも本件道路事業の区域と同一条件下での観測とはいえないから,その数値をもって本件環境調査結果の前提が特段不合理なものとすることはできない。 ウ加えて,乙63号証によると,平成18年度の本件道路の南側約1キロメートル以内にほぼ並行に位置する広小路線(交通量1日約5万台,道路勾配約3.4パーセント)沿いにある千種区役所での測定では,窒素酸化物及び浮遊粒子状物質の数値は環境基準を下回っていることが認められる。 エ原告らは,本件地域のうち高見側の谷地区は,谷底の地形であるから,本件道路上で発生した大気汚染物質の逃げ道がなく,原告らの生活空間に間断なく降り注ぎ,滞留することになると主張するが,高見側の谷地区が大気汚染物質が滞留しやすい構造になっていることを裏付けるに足りる的確な証拠はない。 (3) そうすると,本件道路により発生する大気汚染や騒音などにより,原告らの健康,生命が明白な危険にさらされる蓋然性が高いとはいえず,他に本件道路により原告らの健康生命が明白な危険にさらされる蓋然性が高いと認めるに足りる証拠はない。 よって,原告らの人格権侵害の主張は理由がない。 以上のとおり,原告らの主張する権利ないし利益について,その性質や内容を勘案し,本件道路工事の態様や原告らの権利ないし利益に与える影響の質及び程度を考察すると,本件道路工事によって,原告らの権利ないし利益に差止めによって救済すべき侵害が生じるとは認めることができない。 よって,本件道路事業について行政法規違反等があるか否かを判断するまでもなく,原告らの請求は,いずれも理由がないから,いずれもこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第8部裁判長裁判官長谷川恭弘裁判官濱本章子裁判官鈴木喬別紙1事業目録1 施行主体被 いずれもこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第8部裁判長裁判官長谷川恭弘裁判官濱本章子裁判官鈴木喬別紙1事業目録1 施行主体被告 都市計画事業の種類及び名称名古屋都市計画道路事業3・5・118号池内猪高線 事業計画(1) 事業地ア収用の部分名古屋市千種区振甫町3丁目及び4丁目,法王町1丁目並びに田代町字岩谷,字四観音道西,字四観音道東及び姫ヶ池上地内イ使用の部分なし(2) 設計の概要起点名古屋市千種区振甫町3丁目6番終点同区田代町字姫ヶ池上2番の1延長752メートル幅員15.0から20.1メートルの道路(3) 事業期間平成5年9月3日から平成12年3月31日まで事業目録2 施行主体被告 都市計画事業の種類及び名称名古屋都市計画道路事業3・5・118号池内猪高線 事業計画(1) 事業地ア収用の部分変更なしイ使用の部分変更なし(2) 設計の概要起点名古屋市千種区振甫町3丁目6番終点同区田代町字姫ヶ池上2番の1延長752メートル幅員15.0から20.1メートルの道路(3) 事業期間平成5年9月3日から平成14年3月31日まで事業目録3 施行主体被告 都市計画事業の種類及び名称名古屋都市計画道路事業3・5・118号池内猪高線 事業計画(1) 事業地ア収用の部分変更なしイ使用の部分変更なし(2) 設計の概要起点名古屋市千種区振甫町3丁目6番終点同区田代町字姫ヶ池上2番の1延長752メートル幅員15.0から20.1メートルの道路車線の数2車線(3) 事業期間平成5年9月3日から平成18年3月31日まで事業目録4 施行主体被告 都市計画事業の種類 延長752メートル幅員15.0から20.1メートルの道路車線の数2車線(3) 事業期間平成5年9月3日から平成18年3月31日まで事業目録4 施行主体被告 都市計画事業の種類及び名称名古屋都市計画道路事業3・5・118号池内猪高線 事業計画(1) 事業地ア収用の部分変更なしイ使用の部分変更なし(2) 設計の概要起点名古屋市千種区振甫町3丁目6番終点同区田代町字姫ヶ池上2番の1延長752メートル幅員15.0から20.1メートルの道路車線の数2車線(3) 事業期間平成5年9月3日から平成22年3月31日まで〔以下別紙の添付省略〕
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