平成26(行ウ)495 請求の追加的併合申立て事件

裁判年月日・裁判所
平成27年7月21日 東京地方裁判所 その他
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判決文本文7,714 文字)

平成27年7月21日判決言渡平成26年(行ウ)第495号請求の追加的併合申立て事件 主文 1 本件各訴えをいずれも却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告が平成24年12月21日付けでしたAに係る厚生年金保険の標準報酬月額を平成7年8月につき44万円,平成8年10月につき44万円とする旨の各決定を取り消す。 第2 事案の概要本件は,被告が,厚生年金保険の保険給付及び保険料の納付の特例等に関する法律(平成26年法律第64号による改正前のもの。以下「納付特例法」という。)1条1項に基づき,原告が使用していたAに係る厚生年金保険の被保険者の資格取得時及び改定年月における標準報酬月額の各決定をしたところ,原告が,上記標準報酬月額の額に誤りがあるとして,上記各決定の取消しを求める事案である。 1 関係法令の定め本件に関係する納付特例法の定めは,別紙のとおりである。 2 前提事実(1) 総務大臣によるあっせんア Aは,平成24年8月16日,総務大臣に対し,原告に勤務していた平成7年8月21日から平成9年4月1日までの期間につき記録の訂正に係る総務大臣によるあっせんを求める旨の申立てをした(甲1の15,16頁)。 イ総務大臣は,平成24年11月27日付けで,厚生労働大臣に対し,A の上記アの期間に係る標準報酬月額を44万円に訂正する必要がある旨のあっせんをした(甲1の18ないし21頁,丙4)。 (2) Aの標準報酬月額の決定等ア厚生年金保険法(平成24年法律第62号による改正前のもの。以下「厚年法」という。)100条の4第1項3号及び4号により厚生労働大臣の権限の委任を受けた被告は,平成24年12月21日 の決定等ア厚生年金保険法(平成24年法律第62号による改正前のもの。以下「厚年法」という。)100条の4第1項3号及び4号により厚生労働大臣の権限の委任を受けた被告は,平成24年12月21日付けで,納付特例法1条1項に基づき,Aが平成7年8月21日に厚生年金保険の被保険者の資格を取得したことを確認するとともに,標準報酬月額を44万円と決定し,港年金事務所長は,その頃A及び原告に通知した(甲1の23頁)。 イ被告は,平成24年12月21日付けで,同項に基づき,平成8年10月1日におけるAの標準報酬月額を44万円と決定し(以下,この決定を上記アの決定と併せて,「本件各決定」という。),港年金事務所長は,その頃A及び原告に通知した(甲1の24頁)。 (3) 納付勧奨及び事業所名称等の公表ア厚生労働大臣は,平成25年1月15日付けで,原告に対し,納付特例法2条2項に基づき,本件各決定に伴い同条1項の特例納付保険料として144万4063円を納付することを勧奨した(甲1の29頁,丙16)。 イ厚生労働大臣は,同年2月15日付けで,原告に対し,上記アと同様の納付勧奨をした(丙17)。 ウ厚生労働大臣は,同年6月27日付けで,原告に対し,同法2条2項及び5項に基づき,特例納付保険料として145万7618円(上記ア及びイの額から加算金の額が増加した。)を納付することを勧奨するとともに,同年7月16日までに納付の申出がされない場合,事業所名称等について公表する旨通知した(丙18)。 エ同年8月20日,被告のホームページ上に,公表期限までに特例納付保険料の納付申出をしなかった事業主として原告の名称及び事業所所在地等 が掲載された(丙19)。 オ厚生労働大臣は,同年11月7日付けで,原告に対 ムページ上に,公表期限までに特例納付保険料の納付申出をしなかった事業主として原告の名称及び事業所所在地等 が掲載された(丙19)。 オ厚生労働大臣は,同年11月7日付けで,原告に対し,上記ウと同様の納付勧奨をした(丙20)。 (4) 審査請求等の経緯ア原告は,平成25年3月15日,関東信越厚生局社会保険審査官に対して審査請求をしたところ(甲1の25,26頁),同審査官は,同年5月10日付けで,原告の審査請求を本件各決定の取消しを求めるものと認めた上で,これを棄却する旨の決定をし,その頃原告に通知した(甲1の36ないし44頁)。 イ原告は,同年7月8日,社会保険審査会に対して再審査請求をしたところ(甲1の45頁),同審査会は,同年12月25日付けで,原告の再審査請求を本件各決定の取消しを求めるものと認めた上で,これを棄却する旨の裁決をし,その頃原告に通知した(甲7,乙2)。 ウ原告は,平成26年6月23日,国を被告として本件各決定の取消し等を求める訴えを提起し(当庁平成26年(行ウ)第287号),同年10月8日,日本年金機構を被告とする本件訴えを追加的に併合して提起し,平成27年1月20日,国を被告とする上記訴えを取り下げた(当裁判所に顕著な事実)。 3 争点(1) 原告が本件各決定の取消訴訟における原告適格を有するか否か。 (2) 本件各決定が適法か否か。 4 当事者の主張(1) 争点(1)(原告適格の有無)について(原告の主張)本件各決定に違法がある場合,事業主である原告は取消訴訟を提起できる。 (被告の主張) 本件各決定に係る被保険者期間における保険料を徴収する権利は時効によって既に消滅しており,本件各決定により直ち 場合,事業主である原告は取消訴訟を提起できる。 (被告の主張) 本件各決定に係る被保険者期間における保険料を徴収する権利は時効によって既に消滅しており,本件各決定により直ちに同保険料の納付義務が生じるものではない。 納付勧奨を受けた対象事業主は,特例納付保険料を納付する旨を書面で申し出た場合にのみ,納付特例法2条7項の規定に基づく特例納付保険料の納付義務が生じるのであり,原告が特例納付保険料の納付を申し出ていない段階では,納付勧奨により同納付義務が生じるものではない。 名誉,感情,信用等の人格的利益への侵害は事実上の効果にすぎず,事業所名等の公表を回避することに法律上の利益はない。 したがって,原告には本件各決定に係る取消訴訟の原告適格はない。 (2) 争点(2)(本件各決定の適法性の有無)について(被告の主張)年金記録確認第三者委員会の設置の趣旨,納付特例法の趣旨及び手続上の仕組みからすると,年金記録に係る苦情のあっせんの手続においては,厚生労働大臣は総務大臣のあっせんを尊重すべきものであり,厚生労働大臣が同法1条1項の確認等を行うに当たって総務大臣のあっせんとは異なる判断を独自に行う余地はない。 本件では,年金記録確認第三者委員会は,Aから提出された平成7年分給与所得の源泉徴収票等を確認した上で審議し,総務大臣は,その審議の結果,Aが申し立てる期間につき標準報酬月額44万円に基づく厚生年金保険料を原告により給与から控除されていたことが認められることから,前提事実(1)イのあっせんを行った。被告は,同あっせんを尊重し,上記委員会の意見と同じ認定・判断を理由として本件各決定を行ったものであり,本件各決定は適法である。 (原告の主張)ア Aが提出した源泉徴収票は改ざんされたもので は,同あっせんを尊重し,上記委員会の意見と同じ認定・判断を理由として本件各決定を行ったものであり,本件各決定は適法である。 (原告の主張)ア Aが提出した源泉徴収票は改ざんされたものである。Aの預金通帳に対 し月額37万円程度の原告名義の振込入金が記帳されていることについては,当時は第三者の名義で振り込むことも可能であり,原告が上記金額を振り込んだのではない。原告は,Aに月額15万円の給与を手渡ししていた。 本件各決定は事実と異なるものであり違法である。 イ年金記録確認第三者委員会は,改ざんされた源泉徴収票等を正当なものとして採用し,Aが審査会に欠席したことを容認して判断をしており,本件各決定には手続上の違法がある。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(原告適格の有無)について(1) 行政処分の取消訴訟における原告適格を定める行政事件訴訟法9条は,処分取消しの訴えは当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」に限り提起することができるとし(同条1項),処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきもの(同条2項)と規定している。 そして,上記「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権 された場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきもの(同条2項)と規定している。 そして,上記「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうと解される。 (2) そこで,上記のことを踏まえて,原告が本件各決定の取消しを求めるにつ き「法律上の利益を有する者」といえるかどうかについて検討する。 ア厚年法75条は,保険料を徴収する権利が時効によって消滅したときは(同法92条1項),当該保険料に係る被保険者であった期間に係る被保険者資格の取得について同法27条の届出又は同法31条1項の被保険者又は被保険者であった者の確認の請求があった後に上記権利が時効によって消滅した場合を除き,当該被保険者であった期間に基づく保険給付は行わないと規定する。 もっとも,事業主による保険料の源泉控除を受け,現に保険料を負担したにもかかわらず,保険料を納付しないという事業主の側に起因する事情により保険料を徴収する権利が時効消滅した被保険者については,その救済を図る必要があることから,このような場合の特例を設けたのが納付特例法である。 そして,納付特例法1条1項に基づく確認等は,厚年法上の厚生労働大臣の確認等(同法18条,21条以下)と同様に,被保険者資格の取得及び喪失並びに標準報酬月額を確定する効力を有するものと解される。 イ上記アのとおり,納付特例法1条1項に基づく確認等は,保険料を徴収する権利が時効によって消滅している場合に限定されており,同法2条6項及び7項のとおり,対象事業主が特例納付保険料の納付の申出をしたときに初めて当該特例納付保険料の納付義務が生じるのであり,同法1条1項に基づ 効によって消滅している場合に限定されており,同法2条6項及び7項のとおり,対象事業主が特例納付保険料の納付の申出をしたときに初めて当該特例納付保険料の納付義務が生じるのであり,同法1条1項に基づく確認等により上記納付義務が生じるものではない。 ウ納付特例法1条1項に基づく確認等がされた場合,同法2条2項により対象事業主に対し納付勧奨がされるが,これは対象事業主に対し任意に特例納付保険料を納付することを促すものにすぎない。 同法3条1号イは,納付勧奨がされたにもかかわらず対象事業主が 同法2条6項の規定による申出を行わなかった場合には,厚生労働大臣は,特例対象者に係る厚年法82条2項の保険料を納付する義務が履行されたかどうか明らかでないと認められる場合において納付勧奨を行ったときを除いて,対象事業主の氏名又は名称を公表しなければならない旨規定するが,納付特例法1条1項に基づく確認等がされた場合に当然に上記の公表がされるわけではなく,対象事業主が特例対象者に係る厚年法82条2項の保険料を納付する義務を履行しなかったと認められる場合に限り上記の公表がされるのであって,これが納付特例法1条1項に基づく確認等の効果であるとはいえない。 エ以上によれば,納付特例法1条1項が,同項に基づく確認等において,対象事業主の利益を個別的利益として保護すべき趣旨を含むものと解することはできず,対象事業主は,同確認等によって自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれがある者に該当するとはいえないから,対象事業主に同確認等の取消しを求める法律上の利益はない。 したがって,原告に本件各決定の取消訴訟における原告適格はないというべきである。 2 結論以上のとおり,本 いから,対象事業主に同確認等の取消しを求める法律上の利益はない。 したがって,原告に本件各決定の取消訴訟における原告適格はないというべきである。 2 結論以上のとおり,本件各訴えは,その余の点について判断するまでもなくいずれも不適法であるから,これらを却下することして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官増田稔 裁判官村田一広 裁判官高橋心平 別紙納付特例法の定め 1 1条(保険給付等に関する特例等)(1) 1項国家行政組織法8条に規定する機関であって年金記録に関する事項の調査審議を専門的に行うものの調査審議の結果として,厚生年金保険法27条に規定する事業主が,同法84条1項又は2項の規定により被保険者の負担すべき保険料を控除した事実があるにもかかわらず,当該被保険者に係る同法82条2項の保険料を納付する義務を履行したことが明らかでない場合(当該保険料(以下「未納保険料」という。)を徴収する権利が時効によって消滅する前に同法27条の規定による届出又は同法31条1項の規定による確認の請求があった場合を除き,未納保険料を徴収する権利が時効によって消滅している場合に限る。)に該当するとの当該機関の意見があった場合には,厚生労働大臣は,当該意見を尊重し,遅滞なく,未納保険料に係る期間を有する者(以下「特例対象者」という。)に係る同法の規定による被保険者の資格の取得及び喪失の確認又は標準報酬月額若しくは標準賞与額の改定若しくは決定(以下この条及び次条において「確認等」という。)を行うものとする。 〔以下略〕(2) 2項厚生労働大臣は,特例対象者 取得及び喪失の確認又は標準報酬月額若しくは標準賞与額の改定若しくは決定(以下この条及び次条において「確認等」という。)を行うものとする。 〔以下略〕(2) 2項厚生労働大臣は,特例対象者に係る確認等を行ったときは,厚生年金保険法28条の規定により記録した事項の訂正を行うものとする。 (3) 3項前項の訂正が行われた場合における厚生年金保険法75条ただし書の規定(〔括弧内略〕)の適用については,未納保険料を徴収する権利が時効によって消滅する前に同法27条の規定による届出があったものとし,厚生労働大 臣が確認等を行った特例対象者の厚生年金保険の被保険者であった期間について同法による保険給付(これに相当する給付を含む。以下同じ。)を行うものとする。 (4) 4及び5項 〔略〕(5) 6項厚生労働大臣は,特例対象者に係る確認等を行ったときは,厚生年金保険法29条1項の規定にかかわらず,当該特例対象者,当該特例対象者を使用し,又は使用していた1項の事業主その他厚生労働省令で定める者に対し,同条1項の規定による通知を行うものとする。〔以下略〕(6) 7項 〔略〕 2 2条(特例納付保険料の納付等)(1) 1項厚生労働大臣が特例対象者に係る確認等を行った場合には,当該特例対象者を使用し,又は使用していた前条1項の事業主(当該事業主の事業を承継する者及び当該事業主であった個人を含む。以下「対象事業主」という。)は,厚生労働省令で定めるところにより,特例納付保険料として,未納保険料に相当する額に厚生労働省令で定める額を加算した額を納付することができる。 (2) 2項厚生労働大臣は,対象事業主に対して,前項の特例納付保険料(以下「特例納付保険料」という。)の納付を勧奨しなけ する額に厚生労働省令で定める額を加算した額を納付することができる。 (2) 2項厚生労働大臣は,対象事業主に対して,前項の特例納付保険料(以下「特例納付保険料」という。)の納付を勧奨しなければならない。〔以下略〕(3) 3及び4項 〔略〕(4) 5項厚生労働大臣は,次条の規定による公表を行う前に2項〔略〕の規定による勧奨を行う場合(特例対象者に係る厚生年金保険法82条2項の保険料を納付する義務が履行されたかどうか明らかでないと認められる場合において2項〔略〕の規定による勧奨を行うときを除く。)には,対象事業主〔略〕に 対して,厚生労働大臣が定める期限までに次項の規定による申出を行わないときは次条の規定による公表を行う旨を,併せて通知するものとする。 (5) 6項対象事業主〔略〕は,2項〔略〕の規定による勧奨を受けた場合には,未納保険料に係るすべての期間に係る特例納付保険料を納付する旨を,厚生労働省令で定めるところにより,厚生労働大臣に対し書面により申し出ることができる。 (6) 7項対象事業主〔略〕は,前項の規定による申出を行った場合には,厚生労働大臣が定める納期限までに,同項に規定する特例納付保険料を納付しなければならない。 (7) 8ないし13項 〔略〕 3 3条(公表)厚生労働大臣は,政府が管掌する厚生年金保険事業及び国民年金事業の適正な運営並びに厚生年金保険制度及び国民年金制度に対する国民の信頼の確保を図るため,次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める事項その他1条1項に規定する場合において厚生労働大臣が講ずる措置で厚生労働省令で定めるものの結果を,インターネットの利用その他の適切な方法により随時公表しなければならない。 1号対象事業主に対して前条2項の規定による勧奨を 合において厚生労働大臣が講ずる措置で厚生労働省令で定めるものの結果を,インターネットの利用その他の適切な方法により随時公表しなければならない。 1号対象事業主に対して前条2項の規定による勧奨を行った場合(特例対象者に係る厚生年金保険法82条2項の保険料を納付する義務が履行されたかどうか明らかでないと認められる場合において前条2項の規定による勧奨を行ったときを除く。)において,イ又はロに掲げる場合に該当するとき。 当該対象事業主の氏名又は名称イ当該対象事業主が前条5項の期限までに同条6項の規定による申出を行わなかった場合 ロ 〔略〕2及び3号 〔略〕

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