平成24年11月1日判決言渡同日判決原本交付裁判所書記官平成23年(ワ)第6980号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成24年8月23日判決 原告日新産業株式会社 同訴訟代理人弁護士内田清隆同久保田康宏同訴訟代理人弁理士大谷嘉一同補佐人弁理士西孝雄 被告大昭和精機株式会社 同訴訟代理人弁護士岡田春夫同小池眞一同訴訟代理人弁理士北村修一郎同山﨑徹也 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告 (1)被告は,別紙物件目録1記載の各スタイラス及び同目録2記載の各位置検出器を製造し,譲渡し,又は,譲渡若しくは貸渡しのために展示してはならない。 (2)被告は,その本店,営業所及び工場に存する前項の物件並びにその半製品を廃棄せよ。 (3)被告は,原告に対し,900万円及びこれに対する平成23年6月11日(本訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (4)訴訟費用は被告の負担とする。 (5)仮執行宣言 2 被告主文同旨 第2 事案の概要 1 前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。) 合による金員を支払え。 (4)訴訟費用は被告の負担とする。 (5)仮執行宣言 2 被告主文同旨第2 事案の概要 1 前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。)(1) 当事者原告及び被告は,それぞれ工作機械周辺機器の開発,製造及び販売などを業とする株式会社である。(2) 原告の特許権ア本件特許権原告は,次の特許(以下「本件特許」といい,本件特許の請求項1に係る発明を「本件特許発明」という。また,本件特許に係る明細書及び図面をあわせて「本件明細書」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有している。特許番号特許第4072282号発明の名称位置検出器及びその接触針出願日平成11年4月7日登録日平成20年1月25日特許請求の範囲【請求項1】電気的に絶縁された状態で所定の安定位置を保持する微小移動可能な接触体(5)と,当該接触体に接続された接触検出回路(3,4)とを備え,当該接触検出回路で接触体(5)と被加工物又は工具ないし工具取付軸との接触を電気的に検出する位置検出器において,接触体(5)の接触部がタングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる非磁性材で形成されていることを特徴とする,位置検出器。イ本件特許発明は,次の構成要件に分説することができる。A1 電気的に絶縁された状態で所定の安定位置を保持する微小移動可能な接触体(5)と,A2 当該接触体に接続された接触検出回路(3,4)とを備え,A3 当該接触検出回路で接触体(5)と被加工物又は工具ないし工具取付軸との接触を電気的に検出する位置検出器において,B 接触体(5)の接触部がタングステンカーバイトにニッケルを結 )とを備え,A3 当該接触検出回路で接触体(5)と被加工物又は工具ないし工具取付軸との接触を電気的に検出する位置検出器において,B 接触体(5)の接触部がタングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる非磁性材で形成されていることを特徴とする,C 位置検出器。 (3) 位置検出器の種類材料加工の分野において,被加工物の位置を測定する位置検出器は,通電方式と内部接点方式とに大別されるが,本件特許発明が対象とするのは通電方式の位置検出器である。通電方式では,位置検出器に備え付けられた接触体の接触部が,位置測定の対象である被加工物等に接触したときのみ閉ループが形成されて電流が流れ,その電流を直接あるいは電磁誘導を介して検出することをもって位置測定という目的を達する(したがって,通電しない被加工物の位置の測定には使用できない。)。一方,内部接点方式の位置検出器では,接触体の接触部が被加工物等に接触したときにも接触体及び被加工物等に通電させることはない(したがって,通電しない被加工物の位置の測定にも使用できる。)。通電方式の位置検出器は,さらにリングセンサ(励起コイルと検出コイルで構成される。)を使用しないものと,使用するものとがある。前者では,位置検出器本体内の電池の作用によって,接触体と被加工物等との接触時に電流が流れるが,後者では位置検出器本体内に電池は備えておらず,励起コイルの交流電流の電磁誘導によって,接触体と被加工物等との接触時に電流が流れる。別紙物件目録2記載の位置検出器のうち,ポイントマスターPMG及びポイントマスターPMC(以下,併せて「イ号検出器」という。)は,リングセンサを使用しない通電方式の,同目録2の位置検出器のうち,タッチプローブ(芯出し,計測用)(以下「ロ号検出器 スターPMG及びポイントマスターPMC(以下,併せて「イ号検出器」という。)は,リングセンサを使用しない通電方式の,同目録2の位置検出器のうち,タッチプローブ(芯出し,計測用)(以下「ロ号検出器」という。)は,リングセンサを使用する通電方式の位置検出器である。 (4) 被告の行為及び位置検出器(イ号,ロ号)の構成ア被告は,業として,別紙物件目録1記載①ないし③のスタイラス(接触針。位置検出器の接触体として用いられる。)及び同目録2記載の位置検出器を製造,販売している。 イ別紙物件目録1記載①~③のスタイラスのうち,ST28-1P及びST28-2Pを除いたもの(以下「ハ号スタイラス」という。)を装着したイ号検出器の構成は,以下のとおりであり(イ号検出器の構成を図示すると,別紙イ号図面記載のとおりである。),本件特許発明の構成要件をすべて充足する。 イa1 中心部より周方向3分割の角度で延出された3本の円柱状の支持体がそれぞれ2個一組の鋼球上の間にバネにより付勢された状態で載置されており,内蔵する電池の正極からの接触検出回路及びバネを介したラインと,当該電池の負極からの本体,鋼球及び支持体を介したラインとの間で,3本の支持体が絶縁部を介して基部に固定されることにより,電気的に絶縁された状態で,所定の安定位置を保持する,微小移動可能な基部に装着された接触体と,イa2 前記接触体に電気的に接続されたLEDを備えた接触検出回路とを備え,イa3 前記接触検出回路で前記接触体と被加工物であるワークとの接触を,前記接触体,前記ワーク,工作機械本体の抵抗,及び前記接触検出回路からなるラインが閉成されることにより,電気的に検出する位置検出器において,イb 前記接触体の接触部がタングステンカーバイトにニッケルを結合材 記ワーク,工作機械本体の抵抗,及び前記接触検出回路からなるラインが閉成されることにより,電気的に検出する位置検出器において,イb 前記接触体の接触部がタングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる弱磁性として非磁性材であるHAN6で形成されていることを特徴とする,イc 位置検出器ウハ号スタイラスを装着したロ号検出器の構成は,以下のとおりであり(ロ号検出器の構成を図示すると,別紙ロ号図面記載のとおりである。),本件特許発明の構成要件B,Cを充足する(構成要件A1ないし3を充足するか否かについては争いがある。)。 ロa1 位置検出器外部に設けられたコントロールアンプに接続された検出コイル及び励起コイルの各内周内側に導電体たる本体を設置するとともに,中心部より周方向3分割の角度で延出された3本の円柱状の支持体のそれぞれ2個一組の鋼球上の間にバネにより付勢された状態で載置されており,所定の安定位置を保持する,微小移動可能な基部に装着された接触体と,ロa2 前記励起コイル及び前記検出コイルよりなる電磁誘電機能を利用した接触検出回路が前記コントロールアンプに接続され,ロa3 前記励起コイルをもって励起されている本体及び接触体と被加工物であるワークとの接触を,前記接触体,前記ワーク,及び機械主軸により閉ループ回路が形成されることにより,前記検出コイルに誘電電流が流れ,電気的に検出する位置検出器において,ロb 前記接触体の接触部がタングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる弱磁性として非磁性材であるHAN6で形成されていることを特徴とする,ロc 位置検出器 2 原告の請求原告は,被告に対し,本件特許権に基づき,別紙物件目録1記載①ないし⑤のスタイラス及び同目録2記載の位置検出 あるHAN6で形成されていることを特徴とする,ロc 位置検出器 2 原告の請求原告は,被告に対し,本件特許権に基づき,別紙物件目録1記載①ないし⑤のスタイラス及び同目録2記載の位置検出器の製造・譲渡等の差止め,それら製品及び半製品の廃棄を求めるとともに,特許権侵害の不法行為に基づき,900万円の損害賠償及びこれに対する平成23年6月11日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求めている。 3 争点(1) 技術的範囲の属否 (争点1)アハ号スタイラスを装着したロ号検出器は本件特許発明の技術的範囲に属するか (争点1-1)イその他の被告の各製品は本件特許発明の技術的範囲に属するか(争点1-2)(2) スタイラスの製造販売による本件特許権間接侵害の要件充足性(争点2)(3) 本件特許は,特許無効審判により無効とされるべきものか(争点3)ア本件特許は,進歩性欠如の無効理由を有しており,特許無効審判に より無効とされるべきものか(乙12文献) (争点3-1)イ本件特許は,進歩性欠如の無効理由を有しており,特許無効審判により無効とされるべきものか(乙15文献) (争点3-2)(4) 原告の損害 (争点4)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1-1(ハ号スタイラスを装着したロ号検出器は本件特許発明の技術的範囲に属す (4) 原告の損害 (争点4)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1-1(ハ号スタイラスを装着したロ号検出器は本件特許発明の技術的範囲に属するか)について【原告の主張】(1) 構成要件A1ハ号スタイラスを装着したロ号検出器は構成ロa1を有し,構成要件A1を充足する。 ア 「電気的に絶縁された状態で所定の安定位置を保持する微小移動可能な接触体」における「電気的に絶縁された状態」とは,「接触体と被加工物が接触し,位置検出器本体→接触体→被加工物→位置検出器と電流が流れる閉ループ回路ができない状況において,接触体に電流が流れることがない状況を保っている状態」という意味と解釈される。つまり,被加工物と接触するまで,接触体には電流が流れない状態にあるという意味である。 その理由として,まず請求項の記載からも,「電気的に絶縁された状態で」と「所定の安定位置を保持する微小移動可能な接触体」との間に読点はなく,「電気的絶縁」は「所定の安定位置を保持する」状態のときに生じていることが分かる。 そして,本件特許発明は,接触体を移動,すなわち「安定位置を保持する」状態を変更させ,被加工物と接触して,被加工物の位置を検出する装置についてのものである。そうすると,①「安定位置を保持する」状態では「電気的に絶縁」されており,② 移動して被加工物と接触した状態では,電流が流れることになる,という意味であるということは,文言からの素直な解釈である。 この点,本件明細書の図2では,絶縁体7で絶縁することにより,接触針(同図における接触体)と位置検出器本体が絶縁されていると表示されているようにも思えるが,本件特許発明は,位置検出器本体→接触体→被加工物と電流を流すことが大前提となっ で絶縁することにより,接触針(同図における接触体)と位置検出器本体が絶縁されていると表示されているようにも思えるが,本件特許発明は,位置検出器本体→接触体→被加工物と電流を流すことが大前提となっていることは明らかで,接触体と位置検出器本体が電気的に絶縁されているはずがなく,そのような趣旨に解釈するのは不可能である。 イこのような解釈を踏まえれば,ロ号検出器は,所定の安定位置を保持している状態において,接触体が電気的に絶縁されている,つまり,電流が流れていないのであるから,本件構成要件A1を充足していることは明らかである。 被告は,ロ号検出器の通電量がわずかであるため,そもそも本件特許発明が課題として掲げる磁性化のおそれがない旨主張するが,当該製品においても,接触体と被加工物との間に通電状態と非通電状態を繰り返すことに違いはなく,充足性を否定する根拠にはならない。 (2) 構成要件A2ハ号スタイラスを装着したロ号検出器は構成ロa2を有し,構成要件A2を充足する。この点,「接続」の意味が問題となるが,「接続」とは,二つ以上のものを連絡させることを意味する「接触」とは異なる概念である。無線ランで二つのパソコン間で情報を交信できるようにする場合でも,二つのパソコンを「接続」するというのであり,物理的に有線で接触していない場合でなくても,相互に,情報を交信できるように状態することも「接続」に含まれる。被告は,ロ号検出器の,接触検出回路は,電磁誘電機能により接触体とワーク(被加工物)との接触を感知するものであり,接触体とも本体とも接続されていないと主張するが,その趣旨は単に有線で物理的に接触していないというにとどまり,被告も,接触体とワークが接触したという情報を交信できる状態にしていること自体は認めてい 接触体とも本体とも接続されていないと主張するが,その趣旨は単に有線で物理的に接触していないというにとどまり,被告も,接触体とワークが接触したという情報を交信できる状態にしていること自体は認めているのであるから,接触検出回路が接触体に「接続」されていることは明らかである。 (3) 構成要件A3ハ号スタイラスを装着したロ号検出器は構成ロa3を有し,構成要件A3を充足する。この点,「電気的に検出する」の意味が問題となるが,「電気」(電気が導体の中を流れる現象。電流など。)「的に」(のような性質を利用して)検出することを広く指すものと解される。被告は,ロ号検出器につき,接触検出回路が接触体と被加工物との接触を検知するのは,電磁誘電機能を利用した閉ループ回路の形成である,接触体を通じて閉ループ回路を介し流れる電流は極めて僅かな量であると主張するが,これらの主張は,接触体と被加工物との接触によって生じる電流の流れ,すなわち電気の性質を利用して検出していること,つまり,「電気的に検出する」ものであることを認めるものといえる。 (4) 小括そして,構成要件B及びCの充足性は争いがないところ,ハ号スタイラスを装着したロ号検出器は,本件特許発明の技術的範囲に属する。 【被告の主張】(1) 構成要件A1ア特許請求の範囲の記載において,「電気的に絶縁された状態で」の文言は,「所定の安定位置を」とともに「保持する」に掛かり,「微少移動可能な」とともに,「接触体」を特定しているが,接触体を所定の安定位置を保持しつつ,微小移動可能としているのは,位置検出器において接触体をそのように保持すべき保持機構を有しているからであり,当該保持機構を特定する発明特定事項であると理解される。そのため,「電気的に絶縁された状態で」 移動可能としているのは,位置検出器において接触体をそのように保持すべき保持機構を有しているからであり,当該保持機構を特定する発明特定事項であると理解される。そのため,「電気的に絶縁された状態で」「保持」との発明特定事項も,同じ保持機構に関する発明特定事項である以上,位置検出器から電気的に絶縁された状態で接触体を保持することを特定していると理解される。一方,本件明細書においては,「電気的に絶縁された状態で」の発明特定事項につき,一貫して,位置検出器の本体との間で,電気的に絶縁された状態で保持される保持機構に関する技術的事項を説明する用語として使用されている。このような特許請求の範囲及び明細書の記載からすると,「電気的に絶縁された状態で」とは,位置検出器本体との間で接触体が電気的に絶縁された状態であることを意味すると解される。イこのような解釈は,位置検出器の技術常識にも合致する。まず,内部接点方式と区別される通電方式の位置検出器においては,励起コイルと検出コイルで構成されるリングセンサを使用する位置検出器,つまり,ロ号検出器のように接触体が本体と導電性を保つ必要がある位置検出器と,イ号検出器のように接触体が本体と絶縁されていなければならない位置検出器が,本件特許出願時に既に周知慣用技術として存在していた。そのため,接触体が位置検出器との間で絶縁された状態で保持された位置検出器という発明特定事項が当業者に示されれば,ロ号検出器のような位置検出器が排除されていると当業者が区別できていたことが明らかである。また,ロ号検出器では,交流電流に伴って発生する交流磁界が反転を繰り返すことを特徴としているが,これは消磁器等が着磁した磁性体を非磁性化させる原理そのものであり,磁性体の接触体であっても着磁自体が考 では,交流電流に伴って発生する交流磁界が反転を繰り返すことを特徴としているが,これは消磁器等が着磁した磁性体を非磁性化させる原理そのものであり,磁性体の接触体であっても着磁自体が考えらず,本件特許発明の作用効果として記載される接触体の磁性化を防止する作用効果自体が生じない。そのため,仮に特許請求の範囲の記載には位置検出器のタイプに関連する特定事項がないため,形式的には構成充足を充たすように見える場合であっても,リングセンサを使用する位置検出器については,発明の作用効果を奏すべき技術的前提が異なっている以上,技術的範囲に属さないと判断することが技術的思想たる発明の本来のあるべき解釈論である。ウそして,ハ号スタイラスを装着したロ号製品は,構成ロa1における「中心部より周方向3分割の角度で延出された3本の円柱状の支持体のそれぞれ2個一組の鋼球上の間にバネにより付勢された状態で載置されており」との構造が,接触体の基部中心部より伸出された3本の円柱状の支持体がそれぞれ2個一組の鋼球上に載置される構成であり,接触体と位置検出器との間では電気的な接続を維持している構造となっており,「位置検出器」との間では,「接触体」が「電気的に絶縁された状態で」「保持」されていないから,構成要件A1を充足しない。エ原告は,構成要件A1の解釈において読点の有無を問題にしているが,原告の解釈を裏付けるには,むしろ,「電気的に絶縁された状態で所定の安定位置を保持『し,』微少移動可能な接触体」と記載する必要がある。また,本件明細書は,「電気的に絶縁された状態で移動可能」「かつ」「所定の安定位置に付勢して装着」することを課題解決手段として説明しており,移動の前後を通じて一貫して「電気的に絶縁された状態で」あることを明記しており,絶縁状態か 縁された状態で移動可能」「かつ」「所定の安定位置に付勢して装着」することを課題解決手段として説明しており,移動の前後を通じて一貫して「電気的に絶縁された状態で」あることを明記しており,絶縁状態から「移動」によって通電状態になるとの状態遷移を示すという原告の解釈論と矛盾する。(2) 構成要件A2ア構成要件A2は,これに続く構成要件A3と一体となって,「接触検出回路」が接触体と被加工物との間の接触情報を受け取る構成を明らかにしているが,構成要件A3において,当該接触情報を得るにあたって「電気的に検出する」と特定している以上,その前提となるべき「検出回路」と「接触体」との「接続」の構成も,電気的な接続である必要がある。一方,「接続」につき,原告の主張するような広い解釈をとると,リングセンサを使用する位置検出器,つまり,接触体の磁性化を防止するという発明の課題の解決と関連性のない構成までも含んだ領域まで含まれることになってしまうし,また,その場合に発明の構成が接触体の磁性化を防ぐ機作すらも不明なままである。請求項に係る発明は,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであってはならないのであるから,原告の主張は,サポート要件違反の解釈論というべきである。したがって,構成要件A2における「接続」は,検出回路が,少なくとも,接触体と電気的に接続されている必要がある。イそして,ハ号スタイラスを装着したロ号検出器においては,接触検出回路と電気的に接続されているのは検出コイルまでである。励起コイルと検出コイルとよりなるリングセンサと位置検出器本体との間の電磁誘導機能を利用し,接触体と被加工物との接触情報を接触検出回路に送り出すような構成ロa2における情報の「連絡」は,接触体が接触検出回路に電気的に接続された るリングセンサと位置検出器本体との間の電磁誘導機能を利用し,接触体と被加工物との接触情報を接触検出回路に送り出すような構成ロa2における情報の「連絡」は,接触体が接触検出回路に電気的に接続されたものとはいえない。したがって,ハ号スタイラスを装着したロ号検出器は,構成要件A2を充足しない。(3) 構成要件A3ア 「的」については,一般に名詞およびそれに準ずる語に付いて,形容動詞の語幹をつくるが,① 主に物や人を表す名詞に付いて,それそのものではないが,それに似た性質をもっていることを表す,② 主に抽象的な事柄を表す漢語に付いて,その状態にあることを表す,③ 物事の分野・方面などを表す漢語に付いて,その観点や側面から見て,という意を表すと定義されている。「接触を電気的に検出する」という構成要件A3の特定事項からみれば,上記③の意味として,「電気」の観点や側面から見て,「接触を‥‥検出する」と特定されていると理解するのが自然である。そうすると,接触を検出する方法論は多々あるとしても,「電気の側面から検出」するとあれば,接触体と被加工物との間に流れる電気を直接に検出する構成に限定されていると理解するのが通常というべきである。少なくとも,電気の何らかの性質を利用してといった曖昧な意味を主張して,電流が流れることで生じうる事象の検出を電気の性質を利用した検出手法と位置づけ,「接触を電気的に検出する」と理解することは,文言的にも不可能である。イしたがって,ハ号スタイラスを装着したロ号検出器のように,励起コイル,閉ループ,検出コイルという電磁誘導を利用して接触を検出する構成は,「接触を電気的に検出する」ものとはいえず,構成要件A3を充足しない。 2 争点1-2(その他の被告の各製品は本件特許発明の技術 ,閉ループ,検出コイルという電磁誘導を利用して接触を検出する構成は,「接触を電気的に検出する」ものとはいえず,構成要件A3を充足しない。 2 争点1-2(その他の被告の各製品は本件特許発明の技術的範囲に属するか)について【原告の主張】(1)ST28-1P及びST28-2Pのスタイラスを装着した位置検出器ST28-1P及びST28-2Pのスタイラスは,タングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる非磁性材である。そのため,これらスタイラスを装着した別紙物件目録2記載の各位置検出器は,本件特許発明の技術的範囲に属する。この点,原告が,被告からST28-1P,ST28-2Pとして提出を受けたスタイラスを分析したところ,ニッケルを含有しておらず,非磁性材でもなかったことは確かであるが,質量比4.73パーセントから8.07パーセントの範囲内のコバルトを含むことが確認されており,コバルトをほとんど含まない旨の被告による説明と齟齬が生じている。 (2)A号検出器内部接点方式の位置検出器が本件特許権を侵害しないことを争うものではないが,別紙物件目録2記載3の「ニューゼロセンサ」「ニューゼロセンサOPT3000」「ニューゼロセンサ5000」及び「OPT2000」の位置検出器(以下「A号検出器」という。)もイ号検出器及びハ号検出器と同様の通電方式を採用している。そのため,別紙物件目録1記載の各スタイラスを装着したA号検出器は,本件特許発明の技術的範囲に属する。 この点,被告は,A号検出器は内部接点方式である旨主張する。しかし,A号検出器でも付属品として超硬合金のスタイラスを用意しているが,内部接点方式であれば,その必要はなく,ルビースタイラスを付属品とすれば十分であること,被告のパンフレットにお る旨主張する。しかし,A号検出器でも付属品として超硬合金のスタイラスを用意しているが,内部接点方式であれば,その必要はなく,ルビースタイラスを付属品とすれば十分であること,被告のパンフレットにおいて,A号検出器が内部接点方式であるとは記載されていないこと,内部接点方式と通電方式とは,互いへの変更が容易であることからすると,A号検出器のすべてが内部接点方式であるとは考えられない。 【被告の主張】(1)ST28-1P及びST28-2Pのスタイラスを装着した位置検出器これら先端の球形1mm 及び2mm のスタイラスは,ニッケルを含有しておらず,少なくとも,結合材としての混入量がないことが成分分析でも確認されており,本件特許発明の構成要件Bを充足しないことが明らかである。 (2) A号検出器A号検出器は,被加工物との通電を行わず,スタイラスにも電流が流れないいわゆる内部接点方式の位置検出器であるため,本件特許発明の構成要件A1ないしA3を充足しないことは明らかである。 3 争点2(スタイラスの製造販売による本件特許権間接侵害の要件充足性)について【原告の主張】(1)特許法101条1号別紙物件目録1記載の各スタイラスは,本件特許発明の技術的範囲に属する物の生産にのみ用いる物であるため,その生産,譲渡等の行為は,間接侵害(特許法101条1号)の要件を満たすものである。 この点,被告は,ハ号スタイラスを装着したロ号検出器が本件特許発明の技術的範囲に属しないと主張した上で,ロ号検出器にも使用できるスタイラスにつき,間接侵害の要件を満たさない旨主張するが,ロ号検出器も本件特許発明の技術的範囲に属することは前記のとおりであり,被告の主張は前提を誤っている。 また,被告は,内部接点方式の位置検出器にも につき,間接侵害の要件を満たさない旨主張するが,ロ号検出器も本件特許発明の技術的範囲に属することは前記のとおりであり,被告の主張は前提を誤っている。 また,被告は,内部接点方式の位置検出器にも使用できるスタイラスについても,特許法101条1号の要件を満たさず,間接侵害は成立しない旨主張するが,「その物の生産にのみ用いる物」とは,特許発明の実施以外に社会通念上経済的,商業的ないしは実用的であると認められる用途があるか否かを問うものである。この点,本件特許発明は,スタイラスが磁性を帯び,あるいは,傷が付くことでミクロンオーダーの計測ズレが生じるのを防止したものであり,もとよりスタイラスに電流が流れない内部接点方式の位置検出器を対象としていないし,本件特許発明の作用効果は得られない。つまり,別紙物件目録1記載のスタイラスを内部接点方式の位置検出器に使用しても,その特徴を活かすことはできないため,価格も高いそれらスタイラスを使用する必要性は全くない。そのため,内部接点方式の位置検出器にも使用できるとの理由で特許法101条1号の「その物の生産にのみ用いる物」の該当性が否定されるものではない。 (2)特許法101条2号ア別紙物件目録1記載のスタイラスは,本件特許発明の技術的範囲に属する物の生産に用いる物であって,その発明による課題の解決に不可欠なものであり,かつ,被告は,本件特許発明が特許発明であること及び上記スタイラスが装着された位置検出器(別紙物件目録2)がその発明の実施に用いられていることを知りながら,上記スタイラスの生産,譲渡などを行ったのであるから,間接侵害(特許法101条2号)の要件を満たすといえる。 イこの点,被告は,被告のスタイラスにつき,「日本国内において広く一般に流通しているもの」(同条同 の生産,譲渡などを行ったのであるから,間接侵害(特許法101条2号)の要件を満たすといえる。 イこの点,被告は,被告のスタイラスにつき,「日本国内において広く一般に流通しているもの」(同条同号)であるため,間接侵害は成立しない旨主張するが,この要件は,典型的にはねじ,釘,電球,トランジスター等のような,日本国内において広く普及している一般的な製品,すなわち,特注品ではなく,他の用途にも用いることができ,市場において一般に入手可能な状態にある規格品,普及品を意味するものである。被告のスタイラスのように数十年で数千台しか流通していない物は含まれないし,また,内部の回路が異なるだけの類似の位置検出器においても利用されているだけで,他の用途に用いることができるなどということはできない。したがって,被告のスタイラスが「市場において一般に入手可能な状態にある規格品,普及品」でないことは明白である。 ウ被告は,原告から催告書(乙1)が送られてくる前は,本件特許の存在を知らなかったと主張するが,本件のような位置検出器を生産しているメーカーは世界でも数社しかなく,いずれも競合他社の特許を日々分析している状況の中で,本技術分野で多数の特許出願をしている被告が本件特許を知らなかったなどということは,およそ考えられない。また,被告は,平成22年12月14日付の回答書(乙2)において自社のスタイラスは非磁性材でないと記載しているが,それらスタイラスは非磁性材であることを特徴としており,そのことはパンフレットでも明示されているのであるから,上記記載は虚偽である。したがって,被告は,催告書(乙1)を受け取った平成22年12月4日以降はもちろん,本件特許が登録された平成20年1月25日から,悪意であったというべきである。 【被 ,上記記載は虚偽である。したがって,被告は,催告書(乙1)を受け取った平成22年12月4日以降はもちろん,本件特許が登録された平成20年1月25日から,悪意であったというべきである。 【被告の主張】(1) 特許法101条1号ハ号スタイラスは,イ号検出器以外の被告の位置検出器とも適合する製品であるか,ロ号検出器とのみ適合性のある製品群である。 まず,ハ号スタイラスの内,「ST28-3P」及び「ST28-4P」については,内部接点方式の型式「PMP」の位置検出器との適合性がある。次に柄杆がカーボン製であり,型式が「ST28C-4N」,「ST38C-4N」,「ST48C-4N」,「ST68C-4N」,「ST98C-4N」,及び「ST98C-5N」のハ号スタイラス(別紙物件目録1記載②のスタイラス)については,内部接点方式の型式「PMP」,及び「ZS」シリーズとの適合性が明記されている。そして,型式「ST-40」,「ST-50」,「ST-70」,及び「ST-100」のハ号スタイラス(別紙物件目録1記載③のスタイラス)については,ロ号検出器との適合性のみがカタログに謳われているものであり,かつ,「ST28-1P」や「ST28-2P」という,広く被告の位置検出器との適合性が他のカタログに謳われているスタイラスが同所の併記されているように,内部接点方式の位置検出器とも商業的・経済的に適合性を有するスタイラスである。 したがって,ハ号スタイラスは,本件特許発明の技術的範囲に属しない物の生産にも用いられるものであるから,特許法101条1号の「その物の生産にのみ用いる物」に当たらない。 (2) 特許法101条2号上記(1)のように,本件特許発明と関連しない位置検出器との適合性が認められ,かつ,別売品として販売 許法101条1号の「その物の生産にのみ用いる物」に当たらない。 (2) 特許法101条2号上記(1)のように,本件特許発明と関連しない位置検出器との適合性が認められ,かつ,別売品として販売され,どの位置検出器に装着されるものであるかを把握し難いハ号スタイラスについては,「日本国内において広く一般に流通しているものを除く」(特許法101条2号)との除外要件を充足することが明らかである。 また,被告は,原告から催告書を受け取った平成22年12月6日よりも前の時点では悪意ではなかったのであるから,その期間において,特許法101条2号の間接侵害が成立しないことはより明らかである。本技術分野における特許出願件数をもって悪意性立証となるはずもない。 4 争点3-1(本件特許は,進歩性欠如の無効理由を有しており,特許無効審判により無効とされるべきものか〔乙12文献〕)について【被告の主張】(1)乙12発明特開昭63-2650号公報(乙12。以下「乙12文献」という。)には,以下の発明(以下「乙12発明」という。)が開示されている。 A1 検出器33本体と電気的に絶縁された状態で所定の垂直状態を保持する揺動可能なスタイラス51と,A2 当該スタイラス51と接続されて接触子49とワークピースWとの通電時の信号を発信する回路とを備え,A3 当該接回路でスタイラス51先端の接触子49とワークピースWとの接触時の微弱電流の通電を検知して,検出器33の検出値65に読み込み,ワークピースWの上面位置を表示させるワーク検出装置41において,B’スタイラス51先端の接触子49が,通電性が良好で非磁性の部材からなることを特徴とする,C ワーク検出装置41。(2)本件特許発明と乙12発明との対比本件特許発明 41において,B’スタイラス51先端の接触子49が,通電性が良好で非磁性の部材からなることを特徴とする,C ワーク検出装置41。(2)本件特許発明と乙12発明との対比本件特許発明と乙12発明とを比較すると,乙12発明における「スタイラス」及び「接触子」は,本件特許発明における「接触体」に相当し,「接触子」は「接触体の接触部」に相当する。さらに,乙12発明における「微弱電流の通電を検知する回路」は,本件特許発明における「接触検出回路」に,「ワークピース」は,「被加工物」に相当する。したがって,両者は,A1 電気的に絶縁された状態で所定の安定位置を保持する微小移動可能な接触体と,A2 当該接触体に接続された接触検出回路とを備え,A3 当該接触検出回路で接触体と被加工物との接触を電気的に検出するC 位置検出器である点で一致する一方,本件特許発明が「接触体の接触部がタングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる非磁性材で形成されている」のに対して,乙12発明が「接触体の接触部が,通電性が良好な非磁性の部材よりなる」点ではその物性が共通するものの,その具体的材質についての記載がない点で相違する。 (3)相違点に対応する技術的事項を記載する刊行物等「改訂5版金属便覧」(乙14。以下「乙14文献」という。)は,一般技術文献として技術常識を裏付けるものであるが,乙14文献は,硬質材料または超硬質材料と呼ばれるものが焼結体であり,「超硬合金」がその一種類であること,超硬合金が,「元素周期表Ⅳ,Ⅴ,Ⅵ族の金属の炭化物粉末を,,, の鉄属金属で焼結結合した合金」を総称するものを意味するとし,その現用合金は,タングステンカーバイトのタングステン単独の炭化物粉末を,コバ ,Ⅴ,Ⅵ族の金属の炭化物粉末を,,, の鉄属金属で焼結結合した合金」を総称するものを意味するとし,その現用合金は,タングステンカーバイトのタングステン単独の炭化物粉末を,コバルトを結合材とし焼結体としたものと,タングステンカーバイトと共にチタンカーバイト等の金属の炭化物粉末を,コバルトを結合材とし焼結体としたものが,一般的な超硬合金であったことを示した上で,超硬合金の耐食性を向上させるため,または非磁性の物性を得るためには,ニッケルを結合材として焼結体とすることの技術的事項を開示している。加えて,特公昭45-13212号公報(乙24。以下「乙24文献」という。)は,本件特許出願の40年近く前に頒布された刊行物であり,超硬合金一般の技術常識を明らかにしているが,タングステンカーバイトを主原料とする超硬金属にあっては,その硬くまた強靭な材料として種々な用途に使われていたもので,コバルトを結合材として利用するものが一般的であった中,これと略同等の物性値を得るにあたって,ニッケルを結合材として利用することが知られていたことを示すとともに,ニッケルを一定以上(重量比で1~30%)にして結合材として混入すると,超硬の物性を保って非磁性になるとの技術的事項を開示している。 (4)容易想到性本件特許発明と乙12発明との間の唯一の相違点である接触体の接触部における具体的な材質の選択については,前記(3)のとおり,「タングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる」非磁性の超硬合金が技術的事項として広く知られていたものである。しかも,乙12発明自体,乙12文献の記載において,「検出子49及びスタイラス51は,通電性が良好な非磁性の部材よりなる」として,「接触体の接触部」における好適な材質の物性 のである。しかも,乙12発明自体,乙12文献の記載において,「検出子49及びスタイラス51は,通電性が良好な非磁性の部材よりなる」として,「接触体の接触部」における好適な材質の物性を明記しており,刊行物中の示唆及び機能の共通性より,各刊行物に裏付けられた技術常識に属すべき当該超硬合金の採用は,強く動機付けられている。一方,乙12文献には,スタイラスの先端の接触子に非磁性を求めることの具体的理由は明記されていないが,特開平9-7520号公報(乙13。以下「乙13文献」という。)の記載や,乙12発明が強磁性の環境下のものであることからすると,スタイラスの磁化による測定誤差を防ぐという本件特許発明と同様の課題に基づくものとして,非磁性部材を採用したと理解される。そして,本件特許発明及び乙12発明と同じ移動式の接触体の技術の分野に属する特開平9-329406(乙15。以下「乙15文献」という。)において,「スタイラスの先端の接触子」の材質に関する技術として,「測定子先端の測定子チップ部」を「導電性の超硬合金」で構成することが記載されていること,被告の過去の公然実施例を見ても,スタイラスの先端の接触子としての超硬合金が出願前に広く用いられていたこと(乙19~23)からすると,接触体の摩耗や変形による測定誤差を防ぐという課題も周知のものであったといえる。乙12発明は本件特許発明との課題の共通性も認められるもので,当該課題の解決として相違点に関する最適材料への置換の動機付けは一層強く認められるし,また,そもそも乙12発明の「接触体の接触部が,通電性が良好な非磁性の部材よりなる」との構成に関して,よりよい非磁性の部材を選択するにあたって非磁性の超硬合金を選択することが設計事項に属することも同時に裏付けられている。 「接触体の接触部が,通電性が良好な非磁性の部材よりなる」との構成に関して,よりよい非磁性の部材を選択するにあたって非磁性の超硬合金を選択することが設計事項に属することも同時に裏付けられている。加えて,内部接点方式の位置検出器において,その電気-機械的接点をタングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる超硬合金を使用していたという技術常識(乙17,18。以下,それぞれ「乙17文献」「乙18文献」という。)に鑑みれば,乙12発明のような通電方式の位置検出器であれば,同じく被加工物と電気-機械的接点を行う接触体の接触部においては,当該超硬合金を最適材料として選択することが,当業者にとって,通常の創意の範囲内にある設計事項に属することが一層明らかである。したがって,いずれの観点においても,乙12発明における「スタイラスの先端の接触子」の材質の選定を行う当業者が,位置検出機に装着するスタイラスの先端の接触子の材質として広く用いられている超硬合金の範囲において,乙12文献中の示唆に基づき非磁性材料を維持したまま,乙14文献及び乙24文献に記載の技術的事項に基づき,タングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる非磁性材で形成することは当業者が容易に想到しうるものである。 【原告の主張】(1)乙12文献乙12文献に,スタイラスの接触部が「通電性が良好で非磁性の部材よりなるもの」と記載されていることは認めるが,乙12文献にはその具体的理由の記載がなく,ましてや,どのような非磁性材を用いるかにつき,記載も示唆も一切ない。つまり,本件特許発明は,接触部の磁化による誤差防止と接触体の摩耗や変形による誤差防止という2つの特徴を有するものとして,スタイラスの接触部をタングステンカーバイトにニッケルを 記載も示唆も一切ない。つまり,本件特許発明は,接触部の磁化による誤差防止と接触体の摩耗や変形による誤差防止という2つの特徴を有するものとして,スタイラスの接触部をタングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる超硬合金としたものであるが,乙12文献には,上記2つの特徴がいずれも開示されておらず,本件特許発明へ至る動機付けに欠ける。 (2)非磁性部材にかかる課題の非容易想到性この点,被告は,位置検出器において,「接触体が次第に磁気を帯びてくる」ことにより「磁力で接触針が引かれてわずかに傾き,これによる誤差を生じる」という課題は,本件特許出願当時よく知られていたものである旨主張する。しかし,その根拠とする乙13文献で掲げられている課題は,弾性のある被検査物が磁力により接触体に引かれるという思いつきやすい課題であるのに対し,本件特許発明の課題は,接触体が磁力により被検査物に引かれるというものであり,課題として全く異なる上,思いつきにくく,求められる精度も大きく異なるのであるから,本件特許発明の課題が容易想到であったことの根拠になるものではない。 同様に,乙14文献及び乙24文献も,タングステンカーバイトに対するコバルトやニッケルの結合材に対する挙動を単に開示するだけのものであり,乙12発明に組み合わせる動機付けが存在しない。 また,被告は,乙17文献及び乙18文献記載の内部接点方式の位置検出器において,電気-機械的接点にタングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる超硬合金を使用していたことが記載されているから,本件特許発明において,このような非磁性の超硬合金を選択することは設計事項に属すると主張する。しかし,本件特許発明と乙17文献及び乙18文献とでは,非磁性超硬合金の用途が相違している れているから,本件特許発明において,このような非磁性の超硬合金を選択することは設計事項に属すると主張する。しかし,本件特許発明と乙17文献及び乙18文献とでは,非磁性超硬合金の用途が相違しているのみならず,解決しようとする課題が全く相違している。すなわち,乙17文献,乙18文献はいずれも内部の電気-機械的接点部における接点不具合の改善を目的として上記合金を使用しており,本件特許発明が解決しようとする課題と相違しているため,乙12発明に適用する動機付けが存在しない。むしろ,乙17文献には,タングステンカーバイトにニッケルを結合材として用いることは,乙17文献が防止しようとする「復位失敗」の原因であるとも記載されており,かかる合金を避ける動機が当時存在したことを示すものとさえいえる。 (3)無数の非磁性金属の中から選択することの非容易性また,本件特許発明の技術分野において,タングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる超硬合金の存在自体が知られていたとしても,無数の非磁性金属が流通している中で,同合金を選択する動機付けはない。現に,乙13文献は,非磁性材としてタングステンに銀を混ぜた合金を使用しており,被告の提出した証拠に記載されているいずれの発明においても,タングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる超硬合金を非磁性材として用いている発明はないのである。 5 争点3-2(本件特許は,進歩性欠如の無効理由を有しており,特許無効審判により無効とされるべきものか〔乙15文献〕)について【被告の主張】(1) 乙15発明乙15文献には,以下の発明(以下「乙15発明」という。)が開示されている。 A1 本体部2と電気的に絶縁された状態で所定の垂下せしめた状態を保持する逃がし機構をベー 】(1) 乙15発明乙15文献には,以下の発明(以下「乙15発明」という。)が開示されている。 A1 本体部2と電気的に絶縁された状態で所定の垂下せしめた状態を保持する逃がし機構をベース部2bに格納した測定子2aと,A2 当該測定子2aと接続された電子回路部Cとを備え,A3 当該電子回路部Cで測定子2aの先端の測定子チップ21と被測定物7との接触を電気的に検出するタッチプローブ1において,B 測定子2aの先端の測定子チップ21が通電性の超硬合金からなることを特徴とする,C タッチプローブ1。(2) 本件特許発明と乙15発明との対比本件特許発明と乙15発明とを比較すると,乙15発明の「測定子」は本件特許発明の「接触体」に,「測定子チップ」は「接触体の接触部」に,それぞれ相当する。また,乙15発明の測定対象は「被測定物7」であるが,これが本件特許発明の「被加工物」に相当することも明らかである。 そして,超硬合金に関する技術常識に鑑みて,乙15文献中の「超硬合金」は,「タングステンカーバイトを主原料としてなる焼結体」を意味し,その具体的な結合材の種類が明らかでないに過ぎないことは,刊行物に記載されるに等しい事項である。したがって,本件特許発明と乙15発明とは,A1 電気的に絶縁された状態で所定の安定位置を保持する微小移動可能な接触体と,A2 当該接触体に接続された接触検出回路とを備え,A3 当該接触検出回路で接触体と被加工物との接触を電気的に検出する位置検出器においてB 接触体の接触部がタングステンカーバイトを主原料してなる材料で形成されていることを特徴とするC 位置検出器である点で一致する一方,本件特許発明が「接触体の接触部」の材料につき,「タングステンカーバイ 接触部がタングステンカーバイトを主原料してなる材料で形成されていることを特徴とするC 位置検出器である点で一致する一方,本件特許発明が「接触体の接触部」の材料につき,「タングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる非磁性材で形成されている」と特定しているのに対し,乙15発明は,「測定子先端の測定チップ部」につき「導電性の超硬合金である」としか開示がない点で相違する。(3) 相違点に対応する技術的事項を記載する刊行物等乙14文献には,超硬合金について,耐食性を向上させるためニッケルを結合材として焼結体とすることの技術が開示されている。 (4) 容易想到性本件特許発明と乙15発明との間の唯一の相違点である接触体の接触部における具体的な材質の選択について考えると,まず乙14文献において,耐食性を高めるための「タングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる」超硬合金が技術的事項として広く知られていたものである。そもそも乙15文献は,測定子先端の測定チップ部は導電性の超硬合金につき,酸化腐食防止を課題とするものであるが,当該課題を明記する記載に触れた当業者からすれば,さらに触針の酸化腐食の防止を向上させるために,乙15発明の「測定子チップ」の「超硬合金」を乙14文献の記載に従い,「タングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入した」超硬合金を適用することは,単なる最適材料の選択に止まらず,乙15文献中の課題の示唆に基づく動機付けがあることが明らかであり,容易想到といえる。そして,別課題からの動機付けに基づき,同一構成に想到することが論理づけられた場合,「タングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入した」超硬合金は同時に「非磁性材」でもあることは明らかである。 て,別課題からの動機付けに基づき,同一構成に想到することが論理づけられた場合,「タングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入した」超硬合金は同時に「非磁性材」でもあることは明らかである。そもそも,「物性が適度なバランスをとって満たされる」ように,超硬合金の中で最適材料を選択することは当業者にとり自明な創意の範囲内の活動であり(乙16),かつ,内部接点方式の位置検出器においては,その電気-機械的接点において,既に「タングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入した」超硬合金を適用することが知られていた以上,当然の設計事項ともいえる。したがって,本件特許発明は,その出願前に当業者が,乙15発明と乙14文献記載の技術的事項とに基づき,容易に発明をすることができたものである。 【原告の主張】乙15文献には,三次元測定システムのタッチプローブにおいて,「測定子チップ部21は導電性の超硬合金でなる球状部材で,実際に被測定物7と接触する部分である。」ことは記載されている。しかし,本件特許発 明は,接触部の磁化による誤差防止と接触体の摩耗や変形による誤差防止という2つの特徴を有するものとして,スタイラスの接触部をWC+Ni合金としたものであるが,乙15文献には,上記2つの特徴がいずれも開示されておらず,本件特許発明へ至る動機付けに欠ける。 被告は,乙15文献につき,乙14文献に従い,WC+Ni合金を適用することは容易であると主張するが,乙15文献はもともと接触部の酸化腐食の防止を目的としているものであり,非磁性についての認識に欠けるものであるから非磁性材を用いようとする動機付けが存在しない。 よって,乙15に基づいて本件特許発明を容易に想到できたとはいえない。 6 争点4(原告の損害)について【原 いての認識に欠けるものであるから非磁性材を用いようとする動機付けが存在しない。 よって,乙15に基づいて本件特許発明を容易に想到できたとはいえない。 6 争点4(原告の損害)について【原告の主張】(1) 原告は,本件特許発明を実施した製品を本件特許登録後から現在に至るまで販売している。(2) 被告は,少なくとも,本件特許登録日である平成20年1月25日から平成23年5月30日まで40か月以上にわたり,原告の本件特許権を侵害している。別紙物件目録1,2各記載の位置検出器及びスタイラスは,いずれもその単価が15万円を下ることはなく,被告は,上記期間内に少なくとも合わせて約150個販売した。また,上記位置検出器及びスタイラスの1台当たりの利益率は40%を下ることもない。よって,原告の被った損害額は,上記製品の販売数量に,上記製品の単位数量当たりの利益の額を乗じた900万円と推定される(特許法102条2項)。【被告の主張】争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1-1(ハ号スタイラスを装着したロ号検出器は本件特許発明の技術的範囲に属するか)について次のとおり,ハ号スタイラスを装着したロ号検出器は,本件特許発明の構成要件を全て充足し,本件特許発明の技術的範囲に属する。 なお,前提事実(4)イのとおり,ハ号スタイラスを装着したイ号検出器が,本件特許発明の技術的範囲に属することは当事者間に争いがない。 (1) 本件明細書の記載本件明細書には,以下の記載がある。 「【0001】【発明の属する技術分野】この発明は,接触により工作機械の工具ないし工具取付軸と被加工物との相対位置を検出する位置検出器及びその接触針に関するものである。【0002】【従来の技術】工作機械に取付け る技術分野】この発明は,接触により工作機械の工具ないし工具取付軸と被加工物との相対位置を検出する位置検出器及びその接触針に関するものである。【0002】【従来の技術】工作機械に取付けられた被加工物の位置を接触により検出する位置検出器は,移動可能かつ所定の安定位置に付勢して保持された接触体を備えており,本体が工作機械の工具ホルダに装着されるものと,本体が磁石等により被加工物に装着されるものとがある。【0003】前者の例は図2に示されており,本体1に収納されたプラスチックケース2に電池3が収納され,LED4のアノードが電池3の陽極に,カソードが本体1に接続されており,接触針5は,その円板状の基部6を絶縁体7を介して電気的に絶縁した状態でバネ8により支持杆9に押接して,本体1に装着されている。支持杆9は本体1に螺合されており,これを螺進退させることにより接触針5の位置を微調整する。接触針の基部6は電池3の陰極にリード線11で接続されている。このように構成された位置検出器は,本体1を工作機械の工具ホルダ12に装着して接触針5を被加工物13に接触させると,工作機械を通る電気回路が閉成されてLED4が点灯し,被加工物13の位置が検出される。」「【0005】以上のように,この種の位置検出器の接触体は,電気導体であること,安価であること,必要な硬さと耐摩耗性を備えていること等が要求されるので,焼き入れ性が良好で焼き入れ焼きもどしにより優れた機械的性質を発揮するベアリング鋼が多く用いられている。【0006】【発明が解決しようとする課題】前記のような位置検出器で被加工物の位置を検出する場合,回路が開閉されて接触体が通電状態と非通電状態とを繰り返すことになり,接触体が次第に磁気を帯びてくる。このため切削 明が解決しようとする課題】前記のような位置検出器で被加工物の位置を検出する場合,回路が開閉されて接触体が通電状態と非通電状態とを繰り返すことになり,接触体が次第に磁気を帯びてくる。このため切削加工等で生じた切粉が接触体に付着し,位置検出時に接触体と被加工物や工具との間に介在して測定誤差を生ずる。また接触体が細長い接触針であるときは,接触針を被加工物の側方から接近させたとき磁力で接触針が引かれて僅かに傾き,これによる誤差を生ずる。【0007】接触体をオーステナイト系ステンレス鋼やジュラルミンなどの非磁性金属材で製造してやれば,上記問題を解決できるが,非磁性金属材は硬度が低く,被加工物や工具との繰り返し当接離隔により摩耗や変形による測定誤差を生じる。【0008】本発明は,耐久性があり測定誤差を生じない非磁性の接触体を得ることにより,正確な位置検出を可能にすることを課題としている。【0009】【課題を解決するための手段】この出願の発明に係る位置検出器は,その接触体5の接触部がタングステンカーバイトに結合材としてニッケル約6~16%を混入した非磁性材で形成されていることを特徴とする。上記接触体5は,電気的に絶縁された状態で移動可能かつ所定の安定位置に付勢して装着されている。接触体5は接触検出回路3,4に接続されており,接触体5が工作機械の工具15ないし工具取付軸12及び被加工物13を介して電気的に導通されたときに接触検出回路3,4が開閉されて,被加工物と工具ないし工具取付軸との相対位置が検出される。」「【0013】【作用】接触体5を非磁性材で形成することにより,接触検出回路の開閉動作によって接触体が磁化するのを防止できる。そして接触体の接触部をタングステンカーバイト粉末に結合材としてニッ 【0013】【作用】接触体5を非磁性材で形成することにより,接触検出回路の開閉動作によって接触体が磁化するのを防止できる。そして接触体の接触部をタングステンカーバイト粉末に結合材としてニッケルを混入して焼結してなる非磁性材を用いることにより,接触部に高い硬度を付与することができ,接触部の摩耗や変形による位置検出精度の低下を防止できる。」「【0015】【発明の実施の形態】図1及び図2は本発明の第1実施例を示した図である。図2に示す位置検出器の全体構造については前述した。図1に示す接触針5は球体16と柄杆17とで形成されている。柄杆17は,ベリリューム銅を所定寸法に切削加工したあと約350度の温度で時効硬化処理をして製作されている。 球体16は,タングステンカーバイトの微粉末に6%のニッケルを加えて高温下でニッケルを溶融してタングステンカーバイトと混合し,型内で球形に焼結したものの周面を研磨して真円とし,その周面の1ヶ所にSUS304の雄ネジ18を電気抵抗溶接して製作されている。」(2) 構成要件A1の充足性「電気的に絶縁された状態で所定の安定位置を保持する微小移動可能な接触体」(構成要件A1)のうち,「電気的に絶縁された状態」の部分につき,原告は,位置検出の対象物である被加工物等と接触するまで,「接触体」には電流が流れない状態を意味すると主張するのに対し,被告は,接触体と位置検出器本体との間が絶縁されていることを意味すると主張しているので,この点の解釈を検討する。 ア特許請求の範囲の記載構成要件A1の文言からすると,「接触体」が「電気的に絶縁」という「状態」にあることを求めていることは読み取れるが,絶縁の方法やその部位などについては必ずしも限定する表現になっていない。 文言上は,原告が主張 1の文言からすると,「接触体」が「電気的に絶縁」という「状態」にあることを求めていることは読み取れるが,絶縁の方法やその部位などについては必ずしも限定する表現になっていない。 文言上は,原告が主張するとおり,位置検出の対象物である被加工物等と接触するまで,「接触体」には電流が流れない状態を意味するものと解釈するのが自然であり,これに対し,接触体と位置検出器本体との間が絶縁されていることまでを意味しているとはいえない。イ本件明細書の記載本件明細書上にも,接触体の「電気的に絶縁された状態」を達する方法や部位などを格別限定する記載はない。この点,「接触針5は,その円板状の基部6を絶縁体7を介して電気的に絶縁した状態でバネ8により支持杆9に押接して,本体1に装着されている。」(【0003】)との記載はあるが,この記載は,当該実施例において,接触体の基部と位置検出器本体との間に絶縁体を介在させていることを示すものではあるものの,この実施例のみから,構成要件A1の「電気的に絶縁された状態」の意味を,上記部位に絶縁体を備える構成に限定するものと直ちに解することは困難である。むしろ,本件明細書の記載によれば,本件特許発明が想定するのは,通電方式の位置検出器であることが認められるが,かかる位置検出器は,接触体の接触部が被加工物等に接触したときのみ,接触体,被加工物等及び位置検出器本体を含めた閉ループが形成されて電流が流れ,その電流を検出することをもって位置測定という目的を達するものであり,接触体の接触部が被加工物等に接触していないときには,そのような閉ループが形成されず,接触体にも位置検出器本体にも電流が流れない構成とすることが必須といえる。このような通電方式の位置検出器の基本的な原理に照らして考えると,「電気的に絶縁 いときには,そのような閉ループが形成されず,接触体にも位置検出器本体にも電流が流れない構成とすることが必須といえる。このような通電方式の位置検出器の基本的な原理に照らして考えると,「電気的に絶縁された状態」とは,「接触体」が被加工物等に接触していないときには,「接触体」に電流が流れない状態にあることを示しているものと解することができるし,また,そう解することは,上記アの解釈とも整合的である。ウ被告の主張についてこの点,被告は,構成要件A1は,接触体と位置検出器本体との間が絶縁されていることを求めている,通電方式の位置検出器のうち,接触体が位置検出器本体と絶縁されているのはリングセンサを使用しないタイプだけであり,上記要件は当該位置検出器のみを対象とする趣旨である旨主張する。しかし,本件特許発明の特許請求の範囲において,「絶縁」が接触体と位置検出器本体との間でなされていることを求める明示的な記載はなく,文言上の根拠を欠いた解釈といわざるを得ない。また,リングセンサを使用しない通電方式の位置検出器においては,位置検出器本体内に電池が備えられているため,接触体と被加工物等が接触していないときに閉ループが形成されるのを回避するため,接触体と位置検出器本体との間に絶縁体を備え付けることが必要とされるが,リングセンサを使用する通電方式の位置検出器においては,位置検出器本体内に電池が備え付けられていないため,そのような絶縁体を置くまでもなく,閉ループが形成されないというに過ぎない(弁論の全趣旨)。つまり,前記のとおり,通電方式の位置検出器において必須なのは,接触体が被加工物等に接触していないときに,接触体に電流が流れない状態とすることであるが,リングセンサの使用の有無にかかわらず,その状態を達していれば足 り,通電方式の位置検出器において必須なのは,接触体が被加工物等に接触していないときに,接触体に電流が流れない状態とすることであるが,リングセンサの使用の有無にかかわらず,その状態を達していれば足りるのであり,接触体と位置検出器本体との間に絶縁体を備え付けるという構成の採否によって,技術的範囲の属否を左右させる合理的理由は見出しがたい。そもそも,リングセンサを使用しない位置検出器においても,接触体は位置検出器と近接する部分との間に絶縁体が置かれてはいるものの,位置検出器内の電池とは導体で接続され,この電池を介して位置検出器本体とも絶縁体を介さずつながれているのであるから,位置検出器本体を全体として見れば,接触体と絶縁されているわけではない。 この点でも,被告の解釈論は採りがたいといえる。加えて,被告は,リングセンサを使用する位置検出器では,接触体に流れるのが微弱な交流電流であるため,そもそも本件特許発明が掲げる接触体の磁化による測定誤差という課題が発生しないと主張し,これも構成要件A1に関する上記解釈の根拠としている。しかし,被告の主張する上記技術的事項には,理論的に理解できる部分はあるものの,その提出する実験結果(乙34,44)によっても,十分に実証されているとはいえず,リングセンサを使用する位置検出器が,構成要件A1を充足しないとする根拠として不十分である。したがって,いずれの観点からも,被告の主張は採用できないというべきである。エ小括以上によると,構成要件A1の「電気的に絶縁された状態」とは,「接触体」が被加工物等に接触していないときには,「接触体」に電流が流れない状態にあることを意味しており,それを超えて,接触体と位置検出器本体との間に接触体が備わっていることを求めるものではないと解 接触体」が被加工物等に接触していないときには,「接触体」に電流が流れない状態にあることを意味しており,それを超えて,接触体と位置検出器本体との間に接触体が備わっていることを求めるものではないと解するのが相当である。ハ号スタイラスを装着したロ号検出器は,通電方式の位置検出器として,接触体が被加工物等に接触していないとき,接触体は電流が流れない状態にあることが明らかであり,「電気的に絶縁された状態」にあるといえる。したがって,上記検出器は,構成要件A1を充足する。(3) 構成要件A3の充足性次に,構成要件A2の充足性に先立ち,構成要件A3の充足性を検討する。原告は,「電気的に検出する」の意味につき,接触体と被加工物等との接触を検出する方法につき,電気あるいは電気のような性質を利用する場合を広く含むと主張するのに対し,被告は,接触体と被加工物等とを流れる電流を直接検出する構成に限定されると主張するので,この点の解釈を示し,充足性を判断する。 ア特許請求の範囲の記載構成要件A3は,「当該接触検出回路で接触体(5)と被加工物又は工具ないし工具取付軸との接触を電気的に検出する位置検出器において」というものであるが,「接触検出回路」が「接触体」と「被加工物又は工具ないし工具取付具」との「接触」を「検出」する方法につき,「電気」や「電流」によって検出するとはせず,「電気的に」検出するとしている。 一般に「的に」との用語を名詞の語尾に付けた場合,それそのものではないが,それと似た性質を持つものを含めた語感を持つことになるところ,「電気的に検出する」との表現は,「接触検出回路」が接触体,被加工物等及び位置検出器本体を流れた電流を直接検出する場合のみを指すのではなく,電気と似た性質を持つ媒体を介在させて検 るところ,「電気的に検出する」との表現は,「接触検出回路」が接触体,被加工物等及び位置検出器本体を流れた電流を直接検出する場合のみを指すのではなく,電気と似た性質を持つ媒体を介在させて検出した場合も含んだものと解するのが文言上自然である。イ本件明細書の記載及び技術常識本件明細書においても,「接触体」と「被加工物又は工具ないし工具取付具」との「接触」を「検出」する方法につき,接触体,被加工物等及び位置検出器本体を流れた電流を直接検出するものに限定する記載はない。 むしろ,本件特許発明は,接触体に通電,非通電を繰り返すことで接触体が磁化することに伴う誤差発生防止を課題として掲げるものであることに照らせば,位置検出の過程で接触体への通電を利用する構成であれば足り,「接触検出回路」がその電流を直接検出しているか否かで技術的範囲の属否を左右させる合理的理由は見出しがたいというべきである。ウ被告の主張について被告は,「電気的に検出する」の意味につき,接触体と被加工物との間に流れる電気を直接に検出する構成に限定されると主張するが,あえて「的に」という幅を持たせる文言が使用されていることと整合しない解釈といわざるを得ず,採用できない。エ小括以上によると,構成要件A3の「電気的に検出する」とは,「接触検出回路」が接触体,被加工物等及び位置検出器本体を流れた電流を直接検出する場合のみを指すのではなく,電気と似た性質を持つ媒体を介在させて検出した場合も含んでおり,電磁気学の技術常識に照らし,少なくとも磁気を介在させて検出した場合を含むと解するのが相当である。 そして,ハ号スタイラスを装着したロ号検出器の構成ロa3は,「前記励起コイルをもって励起されている本体及び接触体と被加工物であるワーク 検出した場合を含むと解するのが相当である。 そして,ハ号スタイラスを装着したロ号検出器の構成ロa3は,「前記励起コイルをもって励起されている本体及び接触体と被加工物であるワークとの接触を,前記接触体,前記ワーク,及び機械主軸により閉ループ回路が形成されることにより,前記検出コイルに誘電電流が流れ,電気的に検出する位置検出器」であるが,接触体,被加工物等及び位置検出器本体を流れた電流の電磁誘導によって検出コイルに誘導電流を流し,接触検出回路がこれを検出するというものである。そうすると,被加工物等との接触によって接触体などを流れた電流と接触検出回路が直接検出する電流との間には,磁気が介在することになるが,上記のとおり解釈したところの「電気的に検出する」構成といえる。 したがって,ハ号スタイラスを装着したロ号検出器は,「接触検出回路」が,接触体と被加工物等との接触を「電気的に検出する」ものであり,構成要件A3を充足する。 (4) 構成要件A2の充足性原告は,構成要件A2の「接続」につき,物理的に有線で接触している場合だけでなく,相互に情報を交信できるような状態をも含むと主張するのに対し,被告は,接触検出回路が接触体と直接電気的に接続されていることが必要とされている旨主張するので,この点を検討し,充足性を判断する。 ア特許請求の範囲の記載構成要件A2は,「当該接触体に接続された接触検出回路(3,4)とを備え,」というものであるが,「接続」の意味を明示的に表現する記載はない。しかし,特許請求の範囲の記載全体に照らして考えれば,「接触体」と「接触検出回路」の「接続」は,「接触検出回路」が「接触体」と「被加工物又は工具ないし工具取付軸」との「接触」を 「電気的に検出する」ことを可能とするために必 して考えれば,「接触体」と「接触検出回路」の「接続」は,「接触検出回路」が「接触体」と「被加工物又は工具ないし工具取付軸」との「接触」を 「電気的に検出する」ことを可能とするために必要とされる構成であることが読み取れる。そうすると,「接触体」と「接触検出回路」との「接続」は,上記「接触」を「電気的に検出する」ことが可能な構成であることを求めているとはいえるものの,接触検出回路が接触体と直接電気的に接続されている,つまり,接触体に流れた電流が接触検出回路に直接流れるような構成であることまでは求めていないと解される。イ本件明細書の記載本件明細書において,「接続」の意味や射程を説明する記載は特にない。しかし,本件特許発明は,接触体に通電,非通電を繰り返すことで接触体が磁化することに伴う誤差発生防止を課題として掲げるものであることに照らせば,「位置検出回路」が「接触体」と「被加工物」等との「接触」という情報を,「接触体」への通電を利用して「検出」できるものであることが必須であるところ,「接触体」と「接触検出回路」との「接続」も,かかる情報伝達が可能な構成を求める趣旨であると解して矛盾はない一方,接触体に流れた電流が接触検出回路に直接流れるような構成に限定する合理的理由は見出しがたい。ウ被告の主張について被告は,「接続」につき,接触検出回路が接触体と直接,電気的に接続されていることが必要とされている旨主張するが,その主な根拠としては,この「接続」が,構成要件A3の「電気的に検出する」の前提となる構成であることを挙げる。この点,「接続」が「電気的に検出する」の前提として必要とされる構成であることは被告の指摘のとおりである。しかし,「電気的に検出する」の解釈につき,被告の主張が採用できないこと ることを挙げる。この点,「接続」が「電気的に検出する」の前提として必要とされる構成であることは被告の指摘のとおりである。しかし,「電気的に検出する」の解釈につき,被告の主張が採用できないことは,前記3において論じたとおりであり,「電気的に検出する」を前記3のとおり解釈する以上,その前提となる「接続」についても,前記ア,イのとおり理解するのが一貫性のある解釈といえる。したがって,被告の主張は採用できない。エ小括以上によると,「当該接触体に接続された接触検出回路」の「接続」は,「接触検出回路」が「接触体」と「被加工物」等との「接触」という情報を,前記(3)で示した意味で「電気的に検出する」ことを可能とする情報伝達の構成をとっていることを求めているものの,接触体に流れた電流が接触検出回路に直接流れるなど,物理的なつながりは求めていないと解するのが相当である。ハ号スタイラスを装着したロ号検出器の構成ロa2は,「前記励起コイル及び前記検出コイルよりなる電磁誘電機能を利用した接触検出回路が前記コントロールアンプに接続され」ているというもので,「接触検出回路」と「接触体」とに物理的なつながりがなく,「接触体」に流れた電流が直接「接触検出回路」に流れるわけではないが,「接触体」と「被加工物」との「接触」という情報が,接触体,被加工物等及び接触体本体への電流から電磁誘導を経て,接触検出回路への電流という形で伝達される構成をとっており,前記のとおり,「接触」を「電気的に検出」しているといえる。したがって,ハ号スタイラスを装着したロ号検出器は,「接触検出回路」と「接触体」が,上記のとおりに解した意味で「接続」されているといえるから,構成要件A2を充足する。(5) 小括以上のとおり,ハ号スタ ハ号スタイラスを装着したロ号検出器は,「接触検出回路」と「接触体」が,上記のとおりに解した意味で「接続」されているといえるから,構成要件A2を充足する。(5) 小括以上のとおり,ハ号スタイラスを装着したロ号検出器は,本件特許発明の構成要件A1ないしA3を充足し,また,構成要件B及びCの充足性については争いがないところ,すべての構成要件を充足する。 したがって,ハ号スタイラスを装着したロ号検出器は,本件特許発明の技術的範囲に属する。 2 争点1-2(その他の被告の各製品は本件特許発明の技術的範囲に属するか)について(1) ST28-1P及びST28-2Pのスタイラスを装着した位置検出器証拠(甲8,乙3,4)及び弁論の全趣旨によれば,先端球体の球形が1mm あるいは2mm であるST28-1P及びST28-2Pのスタイラス(接触針)は,ニッケルを結合材として混入するものではないことが認められ,この認定を妨げるに足りる証拠はない。 したがって,ST28-1P及びST28-2Pのスタイラスを装着した位置検出器は,位置検出器の種類及び構成を問わず,本件特許発明の構成要件Bを充足せず,その技術的範囲に属しない。 (2) A号検出器証拠(甲3,4)及び弁論の全趣旨によれば,A号検出器は,接触体に通電することを想定しておらず,通電方式ではなく,内部接点方式の位置検出器であることが認められる。 このような内部接点方式の位置検出器が本件特許発明の技術的範囲に属しないことは当事者間で争いがない。 したがって,A号検出器は,装着するスタイラスの構成にかかわらず,本件特許発明の技術的範囲に属しない。 (3) 別紙物件目録1記載④,⑤のスタイラスを装着した位置検出器被告は,別紙物件目録1記載④のスタイラ 号検出器は,装着するスタイラスの構成にかかわらず,本件特許発明の技術的範囲に属しない。 (3) 別紙物件目録1記載④,⑤のスタイラスを装着した位置検出器被告は,別紙物件目録1記載④のスタイラスの製造,販売を争っているところ,被告が,同スタイラスの製造,販売をしたと認めるに足りる証拠はない。 また,同目録記載①ないし④以外に,同構成を有するスタイラス(同目録記載⑤)が存在することを認めるに足りる証拠もない。 3 争点2(スタイラスの製造販売による本件特許権間接侵害の要件充足性)についてハ号スタイラスを装着したイ号検出器及びロ号検出器がいずれも本件特許発明の技術的範囲に属することを前提に,ハ号スタイラスを製造,販売等することが,間接侵害の要件を満たしているかを検討する(前記2(1),(3)によると,別紙物件目録1記載のスタイラスのうち,ハ号スタイラス以外のスタイラスについて検討する必要はないといえる。)。 (1) 特許法101条1号証拠(甲2~4)によれば,ハ号スタイラスは,これを備え付けても本件特許発明の技術的範囲に属することにはならない内部接点方式の位置検出器とも適合性を有することが認められるから,本件特許発明の技術的範囲に属する製品の生産に「のみ」用いる物(特許法101条1号)であるとはいえない。 この点,原告は,ハ号スタイラスを内部接点方式の位置検出器に用いることは,社会通念上経済的,商業的ないしは実用的であると認められる用途に当たらないため,「その物の生産にのみ用いる」との要件を否定する理由にはならない旨主張する。確かに,内部接点方式の位置検出器では接触体は通電されないため,その接触部の磁化による測定誤差発生という課題はなく,接触部を非磁性体とした接触体を使う必要性に欠ける。しかし,ハ ならない旨主張する。確かに,内部接点方式の位置検出器では接触体は通電されないため,その接触部の磁化による測定誤差発生という課題はなく,接触部を非磁性体とした接触体を使う必要性に欠ける。しかし,ハ号スタイラスは,超硬合金であることに由来し,被加工物等との接触を繰り返すことで摩耗や変形による測定誤差が生じることを防止するという作用効果も有するのであるから,内部接点方式の位置検出器であっても,ハ号スタイラスを装着させる実用性は肯定されるというべきである。したがって,原告の主張は採用できない。 (2) 特許法101条2号アハ号スタイラスは,本件特許発明の技術的範囲に属するハ号スタイラスを装着したイ号検出器及びハ号スタイラスを装着したロ号検出器の生産に用いるものである。 加えて,本件特許発明は,その課題として,通電,非通電を繰り返すことで接触体が磁性化して誤差が発生することを防止するとともに,接触体が被加工物等との当接離隔を繰り返すことで摩耗や変形による測定誤差が発生することを防止することを掲げ,その解決方法として,「接触体(5)の接触部がタングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる非磁性材で形成されている」(構成要件B)との構成を採るものである。そうすると,「接触部がタングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる弱磁性として非磁性材であるHAN6で形成されている」(構成イb,ロb)ハ号スタイラスは,まさに本件特許発明の掲げる課題を解決する構成を成しているといえる。したがって,ハ号スタイラスは,「物の発明」である本件特許につき,「その物の生産に用いる物」であり,かつ「その発明による課題の解決に不可欠なもの」(特許法101条2号)といえる。 イそして,原告は,被告に対し,平成22年 は,「物の発明」である本件特許につき,「その物の生産に用いる物」であり,かつ「その発明による課題の解決に不可欠なもの」(特許法101条2号)といえる。 イそして,原告は,被告に対し,平成22年12月3日付の「催告書」と題する書面を送付し,被告はこれを遅くとも同月6日には受領したが,同書面には,本件特許の特許番号,登録日,本件特許発明の構成要件に加え,イ号検出器が本件特許権を侵害することなどが記載されていた(乙1,弁論の全趣旨)ところ,被告は同日以降,本件特許発明が「特許発明であること」及びハ号スタイラスが「その発明の実施に用いられること」を知っていた(特許法101条2号)といえる。 ただし,同日より前の時点で,被告がそれら事実関係を知っていたと認めるに足りる証拠はない。 ウ一方,被告は,ハ号スタイラスにつき,間接侵害(特許法101条2号)の除外要件である「日本国内において広く一般に流通しているもの」に当たる旨主張する。 確かに,ハ号スタイラスの用途は,これを備え付けた場合に本件特許発明の技術的範囲に属することになるイ号検出器及びロ号検出器に限定されているわけではなく,本件特許発明の技術的範囲に属さない内部接点方式の位置検出器とも適合性を有するものではある(甲2~4)。しかし,結局のところその用途は,位置検出器にその接触体として装着することに限定されており,この点,ねじや釘などの幅広い用途を持つ製品とは大きく異なる。また,そのような用途の限定があるため,実際にハ号スタイラスを購入するのは,位置検出器を使用している者に限られると考えられる。このような事情を踏まえると,ハ号スタイラスは,市場で一般に入手可能な製品であるという意味では,「一般に流通している」物とはいえようが,「広く」流通しているとは言い る者に限られると考えられる。このような事情を踏まえると,ハ号スタイラスは,市場で一般に入手可能な製品であるという意味では,「一般に流通している」物とはいえようが,「広く」流通しているとは言い難い。また,そもそもこのような除外要件が設けられている趣旨は,「広く一般に流通しているもの」の生産,譲渡等を間接侵害に当たるとすることが一般における取引の安全を害するためと解されるが,上記のように用途及び需要者が限定されるハ号スタイラスにつき,取引の安全を理由に間接侵害の対象から除外する必要性にも欠けるといえる。したがって,ハ号スタイラスは「日本国内において広く一般に流通しているもの」に当たらず,この点に関する被告の主張は採用できない。 (3) 小括以上によると,被告によるハ号スタイラスの製造,販売は,本件特許発明との関係において,平成22年12月6日以降,特許法101条2号の規定する間接侵害の要件を満たすものといえる。 4 争点3-1(本件特許は,進歩性欠如の無効理由を有しており,特許無効審判により無効とされるべきものか〔乙12文献〕)について(1) 乙12発明の内容ア本件特許の出願(平成11年4月7日)前の昭和63年1月7日に頒布されたと認められる特開昭63-2650号公報(乙12文献)には,以下の記載がある。 「1.発明の名称工作機械2.特許請求の範囲(1) ベース上に移動自在に設けられたテーブル上のワークピースを加工するための加工ヘッドを上記テーブルより上方に配置して設け,上記ベースあるいはテーブルの少なくとも一方に,テーブルの移動寸法を測定するための第1の測定装置を設け,ワークピースを検出する検出子を下端部に備えてなるワーク検出装置を,前記テーブルの上方位置に上下動自在に配置して テーブルの少なくとも一方に,テーブルの移動寸法を測定するための第1の測定装置を設け,ワークピースを検出する検出子を下端部に備えてなるワーク検出装置を,前記テーブルの上方位置に上下動自在に配置して設けると共に,ワーク検出装置の上下動寸法を検出する第2の測定装置を設けてなることを特徴とする工作機械。 (2) ワーク検出装置は加工ヘッドに支承されていることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の工作機械。 (3) 検出子はワーク検出装置に対して揺動可能に設けられていることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の工作機械。 (4) 検出子は第1の測定装置および第2の測定装置の検出子を兼ねることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の工作機械。 3.発明の詳細な説明[発明の技術分野]本発明は,例えば研削盤,フライス盤,マシニングセンタ等のごとき工作機械に係り,さらに詳細には,ワークピースの寸法を測定する測定装置を備えてなる工作機械に関する。」「 [発明の実施例]‥‥上記スピンドル35の下部には,ワークピースWを検出するワーク検出装置41が装着してある。より詳細には,スピンドル35の下部には,下部を開口した適宜円筒形状の検出子ハウジング43が取付けてあり,この検出子ハウジング43内には,リング状の支持ベース45が内装されている。上記支持ベース45は,検出子ハウジング43に下部側から螺入した適宜管状のキャップ部材47によって検出子ハウジング43内に固定されている。上記支持ベース45には,ワ一クピースWの検出を行なうために,下端部に検出子49を備えたスタイラス51が揺動自在に支承されている。より詳細には,検出子49およびスタイラス51は,通電性が良好で非磁性の部材よりなるものであって,検出子49は,ワーク ために,下端部に検出子49を備えたスタイラス51が揺動自在に支承されている。より詳細には,検出子49およびスタイラス51は,通電性が良好で非磁性の部材よりなるものであって,検出子49は,ワークピースWに接触自在なものであり,本実施例においては高精度の球状に形成してある。上記スタイラス51の上部は支持ベース45を貫通しており,このスタイラス51の上端部に設けたフランジ部53と支持ベース45との間には,圧縮スプリングのごとき弾機55が弾装してある。また,上記支持ベース45の下部側において,スタイラス51には適宜形状の支点部材57が螺着等により適宜に取付けてある。 この支点部材57の上面の複数箇所には,半柱状あるいは半球状の接触部59が形成してあり,各接触部59は,前記支持ベース45の下面に形成された適数のV溝61に係合してある。上記スタイラス51は,支点部材57における各接触部59が支持ベース45のV溝61に係合した状態にあるときには垂直状態に保持されており,水平方向の外力が作動したときには,適宜の接触部を支点として適宜に揺動し得るものである。なお,上記構成のごときワーク検出装置41は,前記検出子49がワークピースWに接触したときに,ワ一クピースWと検出子49との間に微弱電流が通電することによって,ワークピースWを検出するものである。換言すれば,ワークピースWと検出子49との間には,接触時に通電するように電圧が印加してあるものである。再び第1図,第2図を参照するに,前記コラム9には,取付具63を介してカウンター65が取付けてある。このカウンター65は,前記第1の測定装置27,第2の測定装置29の測定結果等を表示するもので,前記ワーク検出装置41における検出子49がワ一クピースWに接触したときに,第1の測 5が取付けてある。このカウンター65は,前記第1の測定装置27,第2の測定装置29の測定結果等を表示するもので,前記ワーク検出装置41における検出子49がワ一クピースWに接触したときに,第1の測定装置27,第2の測定装置29の測定値を読み込むものである。」イ上記アの記載によれば,本件特許出願前に頒布された刊行物(乙12文献)に,次の発明(乙12発明)が記載されているものと認められる。 A1 電気的に絶縁された状態で所定の垂直状態を保持する揺動可能なスタイラス51と,A2 当該スタイラス51と接続されて接触子49とワークピースWとの通電時の信号を発信する回路とを備え,A3 当該接回路でスタイラス51先端の接触子49とワークピースWとの接触時の微弱電流の通電を検知して,検出器33の検出値65に読み込み,ワークピースWの上面位置を表示させるワーク検出装置41において,B’スタイラス51先端の接触子49が,通電性が良好で非磁性の部材からなることを特徴とする,C ワーク検出装置41。(2) 本件特許発明と乙12発明との対比本件特許発明と乙12発明とを比較すると,乙12発明における「スタイラス」及び「接触子」は本件特許発明における「接触体」に,「接触子」は本件特許発明における「接触体の接触部」に,「微弱電流の通電を検知する回路」は本件特許発明における「接触検出回路」に,「ワークピース」は本件特許発明における「被加工物」にそれぞれ相当する。したがって,両者は,「電気的に絶縁された状態で所定の安定位置を保持する微小移動可能な接触体と,当該接触体に接続された接触検出回路とを備え,当該接触検出回路で接触体と被加工物との接触を電気的に検出する位置検出器」である点で一致する一方,本件特許発明が「接触体の接触 する微小移動可能な接触体と,当該接触体に接続された接触検出回路とを備え,当該接触検出回路で接触体と被加工物との接触を電気的に検出する位置検出器」である点で一致する一方,本件特許発明が「接触体の接触部がタングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる非磁性材で形成されている」(構成要件B)のに対して,乙12発明は「接触体の接触部が,通電性が良好な非磁性の部材よりなる」(構成B’)としており,接触体の接触部を「非磁性部材」とする点までは一致するものの,乙12発明ではその具体的材質についての記載がない点で相違する。 (3) 相違点に対応する技術的事項を記載した文献などア乙14文献(ア)本件特許の出願(平成11年4月7日)前の平成2年3月31日に頒布された文献である「改訂5版金属便覧」(乙14文献)には,以下の記載がある。 「・・硬質材料硬質材料または超硬質材料と呼ばれるものとしては,超硬合金,サーメット,セラミックス,ダイヤモンド,c 焼結体などがある。 いずれも,粉末冶金または焼結法によって製造され,組織は一般に1~5μm程度の大きさの硬質相粒子が少量の金属またはセラミック スで結合された形となっている。各材料とも低温から高温において高い硬さを示し,耐摩耗性に優れるとともに,一般にかなり高い靭性を兼備し,あわせて耐熱性,耐食性,耐酸化性などにも優れる。そこで,これらは切削,耐摩耗,耐衝撃あるいは耐食用の工具・部品用材料などとして広く用いられる。」「a.超硬合金本合金( または!)は,元素周期表Ⅳ,Ⅴ,Ⅵ族の金属の炭化物粉末を,,, の鉄属金属で焼結結合した合金を総称していう。実用合金としては,1923年の" または!)は,元素周期表Ⅳ,Ⅴ,Ⅵ族の金属の炭化物粉末を,,, の鉄属金属で焼結結合した合金を総称していう。実用合金としては,1923年の" 特許に基づいて1926年から市販された# 合金(#)が最初のものである。現用合金は大別すると,# 系と#$$ 系の2種であり, 量,$ 量, $量,炭化物粒度などを調整することによって特性を大幅に変化させることが可能となり,各種用途に応じている。」「‥‥₃ ₂ , の添加は耐食性を向上する。 を に置き代えると非磁性としうる。」(イ)前記アの記載によると,超硬合金とは,元素周期表Ⅳ,Ⅴ,Ⅵ 族の金属の炭化物粉末を,鉄,コバルト,ニッケルの鉄属金属で焼結結合した合金の総称であり,高い硬度を持ち,耐摩耗性,耐熱性,耐食性,耐酸化性などに優れていること,現用の超硬合金は,タングステンカーバイト(#)のタングステン単独の炭化物粉末を,コバルトを結合材とし焼結体としたものと,タングステンカーバイトと共にチタンカーバイト等の金属の炭化物粉末を,コバルトを結合材とし焼結体としたものとの二種に大別されること,ニッケルを結合材とした場合には,耐食性が向上し,非磁性としうることといった技術的事項が認められる。 イ乙24文献(ア)本件特許の出願(平成11年4月7日)前の昭和45年5月13日に頒布された文献である特公昭和45-13212号公報(乙24文献)には,以下の記載がある。 「発明の詳細な説明本発明は,非磁性の超硬合金に関するものである。超硬合金は現在,硬く又強靭な材料として種々な用途に使われ,一般に 3212号公報(乙24文献)には,以下の記載がある。 「発明の詳細な説明本発明は,非磁性の超硬合金に関するものである。超硬合金は現在,硬く又強靭な材料として種々な用途に使われ,一般には# を主成分とし,これを で焼結結合したものが広く用いられている。そして# の結合材には他に, 等の鉄族金属があり,これらによって を用いたときとほぼ同等の性質を与える。」「 従って合金炭素量の範囲を選定すれば,# 及び から強靱にして非強磁性の合金を得ることができるものである。なお,#- 合金において 含量が約1%以下では焼結性が著しく悪く高密度の焼結体が得られない。又,30%以上では硬度が高速度鋼のそれと殆ど差がなくなり,超硬合金としての意味を失ってしまう。従って,本発明においては 含量は1%~30%とするものである。」「特許請求の範囲 1 # を を結合材として焼結した超硬合金において,合金中の炭素含有量を遊離炭素を現出する臨界炭素量よりも小ならしめ,常温にて非強磁性とした非強磁性にして強靱なる超硬合金。」(イ)前記アの記載によると,本件特許出願前,既に,超硬合金が,硬く,強靭な材料として種々の用途に使われ,タングステンカーバイト(#)を主成分に主原料とし, を結合材としたものが広く用いられていたこと,タングステンカーバイトを,ニッケルを結合材として焼結した超硬合金は,合金中の炭素含有量を調整すると常温で非磁性になることといった技術的事項が認められる。 ウ前記(2)のとおり,本件特許発明と乙12発明とを対比すると,接触体の接触部を非磁性部材とする点までは一致するものの,乙12発明ではその具体的材質が「タングステンカーバイトにニッケルを結合 。 ウ前記(2)のとおり,本件特許発明と乙12発明とを対比すると,接触体の接触部を非磁性部材とする点までは一致するものの,乙12発明ではその具体的材質が「タングステンカーバイトにニッケルを結合材として混入してなる非磁性材」であることまでの記載がない点で相違しているが,この相違点にかかる物質は,上記ア及びイのとおり,乙14文献及び乙24文献の開示する技術的事項に含まれている。したがって,乙12発明に,乙14文献及び乙24文献に記載の技術的事項を組み合わせる,つまり,乙12発明における「非磁性部材」の具体的材質の選択に当たり,乙14文献及び乙24文献の開示する技術的事項を適用すれば,本件特許発明の構成を得ることができる。 (4) 容易想到性そこで次に,乙12発明の接触体の接触部について,「非磁性部材」の具体的材質の選択に当たり,乙14文献及び乙24文献の開示する技術的事項を適用して本件特許発明を想到することが容易であったかを検討する。まず本件特許発明の掲げる課題は,通電,非通電を繰り返すことで接触体が磁化することに伴う測定誤差発生の防止と,接触体と被加工物等との繰り返しの接触による接触体の摩耗や変形に伴う測定誤差発生の防止とであるが,前者は接触体の接触部を非磁性部材とすることで解決される課題であるから,乙12発明で未解決なのは後者の課題のみである。そして,乙12文献内に明示こそされていないものの,通電方式の位置検出器の接触体の接触部は,金属製の被加工物等と繰り返し接触することが当然に想定されていること,被告において,平成元年の時点で既に接触部を超硬合金とする接触体を製造,販売し,現在まで継続していること(甲2~4,乙19~23)からすると,接触体の摩耗や変形に伴う測定誤差という課題は,本件特許出願( 年の時点で既に接触部を超硬合金とする接触体を製造,販売し,現在まで継続していること(甲2~4,乙19~23)からすると,接触体の摩耗や変形に伴う測定誤差という課題は,本件特許出願(平成11年4月7日)の時点で,当業者にとって周知の課題であったといえるし,また,その解決手法として,接触体の接触部を超硬合金とすることも周知技術であったといえる。 一方,タングステンカーバイトにニッケルを結合材として焼結することで非磁性体の超硬合金が得られるとの技術的事項は,昭和45年には既に文献公知となり(乙24),平成2年頒布の「改訂5版金属便覧」と題する文献にも記載され(乙14),本件特許出願(平成11年4月7日)前に技術常識であったと認められることに加え,本件特許発明と用途や課題が異なるとはいえ,同一の技術分野において本件特許出願前に頒布された文献(乙17,18)中でも,同部材が利用されていた。 そうすると,乙12発明の開示する「非磁性部材」の具体的材質を選択するに際し,上記周知課題及び周知技術の下で,「タングステンカーバイトにニッケルを結合材として焼結した非磁性の超硬合金」を選択することは,単に公知材料からの最適材料の選択に過ぎず,当業者の通常の創作能力の発揮であり,当業者が容易に想到することができたものといえる。したがって,乙12発明に,乙14文献及び乙24文献の開示する技術的事項を組み合わせて本件特許発明に想到することは容易であったといえる。 (5) 原告の主張についてこの点,原告は,通電,非通電を繰り返すことで接触体が磁化することに伴う測定誤差発生の防止という本件特許発明の掲げる課題が,乙12文献ほか,本件特許出願前のどの文献にも開示されておらず,本件特許発明に至る動機付けに欠ける旨主張する。しかし,こ 磁化することに伴う測定誤差発生の防止という本件特許発明の掲げる課題が,乙12文献ほか,本件特許出願前のどの文献にも開示されておらず,本件特許発明に至る動機付けに欠ける旨主張する。しかし,この課題は,乙12文献の開示する乙12発明の構成,つまり,「接触体の接触部を非磁性部材とする」ことで既に解決されているのであるから,当該課題にかかる動機付けがなければ本件特許発明の構成に至ることができないなどというものではない。言い換えれば,通電方式の位置検出器において,「接触体の接触部を非磁性部材とする」構成は,主引例である乙12文献に開示されているのであるから,かかる構成へ至るための課題の開示,動機付けの有無を問題とする必要はないといえる。また,「接触体の接触部を非磁性部材とする」構成の具体的な材料選択をする前提として,そのような上位概念で表現された構成を維持することへの動機付けが求められると解したとしても,あくまで既に公知となっている構成を維持するだけの動機付けがあるか否かの問題であり,新規の構成へ至る動機付けがあったかが問われるわけではない。通電方式の位置検出器において,「接触体の接触部を非磁性部材とする」ことでその磁性化を防止できることは,乙12文献でその構成に触れた当業者にとって明らかであるが,通電方式の位置検出器における測定対象は通電性のある物質であること,乙12文献中の上記構成は強磁性の環境下における位置検出器で採用されたものであることからして,接触体の接触部の磁性化を避けることができれば,切削加工等で生じた切粉の付着など磁性化に伴う不都合を回避する効果が得られることも,乙12文献に触れた当業者が予測し得る範囲内にある。そのため,「接触体の接触部を非磁性部材とする」構成を採る技術的意義は,その構成自体が示唆 着など磁性化に伴う不都合を回避する効果が得られることも,乙12文献に触れた当業者が予測し得る範囲内にある。そのため,「接触体の接触部を非磁性部材とする」構成を採る技術的意義は,その構成自体が示唆するものといえ,これを維持するだけの動機付けがあるといえる。 なお,同様の理由により,当業者の予測し得ない顕著な作用効果や用途を見出したともいえず,かかる観点から本件特許発明の進歩性を肯定することも困難である。したがって,課題の示唆がないことを理由として本件特許発明の容易想到性を否定する原告の主張は採用できない。 (6) 小括以上によると,本件特許は,進歩性欠如の無効理由を有しており,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,原告は,被告に対し,本件特許権に基づく権利を行使することはできない(特許法104条の3)。 第5 結論以上の次第で,原告の請求は,その余の争点について判断するまでもなく理由がないから,いずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁 判 長 裁 判 官山田陽三 裁 判 官松川充康 裁 判 官 西田昌吾物件目録1位置検出器の交換用スタイラスで,次の①ないし④の型式のもの及び⑤の特徴を有するもの(下線付きのもの:ハ号スタイラス)① ST28-1PST28-2PST28-3PST28-4P② ST28C-4NST38C-4NST48C-4NST68C-4NST98C-4NST98C-5N③ 1PST28-2PST28-3PST28-4P② ST28C-4NST38C-4NST48C-4NST68C-4NST98C-4NST98C-5N③ ST40ST50ST70ST100 ④ ST80-3P⑤ 接触体の接触部の材質が,①ないし④と同じもの物件目録2 1 イ号検出器(構成;イ号図面記載のとおり)シリーズ名: ポイントマスター/%&'$()"$*+商品名: ポイントマスター PMC型式: PMC-20PMC-32PMC-20SPMC-32SBBT40-PMC-130BBT50-PMC-160BBT40-PMC-130SBBT50-PMC-160SBT40-PMC-130BT50-PMC-160BT40-PMC-130SBT50-PMC-160S商品名: ポイントマスター PMG型式: PMG-10PMG-20PMG-32PMG-10SPMG-20SPMG-32S 2 ロ号検出器(構成:ロ号図面記載のとおり)シリーズ名: LCタッチセンサ商品名: タッチプローブ(芯出し、計測用)型式: BT40-LCP56BT50-LCP56 3 A号検出器商品名,型式: ニューゼロセンサニューゼロセンサOPT3000ニューゼロセンサ5000 56BT50-LCP56 3 A号検出器商品名,型式: ニューゼロセンサニューゼロセンサOPT3000ニューゼロセンサ5000OPT2000
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