平成16(ワ)406 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成21年11月4日 岐阜地方裁判所 その他
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判決文本文26,983 文字)

- 1 -平成21年11月4日判決言渡平成16年(ワ)第406号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成21年9月2日主文 被告は,原告に対し,3618万8829円並びに内2331万2760円に対する平成14年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員及び内1242万1733円に対する平成21年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用はこれを3分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求被告は,原告に対し,1億1175万1350円及びこれに対する平成14年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,原告が被告に対し,被告の従業員である医師らの過失により,左右両側の中大脳動脈瘤の一期的な破裂予防手術(脳動脈瘤頸部クリッピング術)の後に脳梗塞を発症し,弛緩性右片麻痺等の後遺障害を負ったとして,診療契約上の債務不履行,国家賠償法1条1項又は民法715条に基づき損害賠償を求めた事案である。 前提事実(証拠等の記載がない事実は当事者間に争いがない。)当事者等(1)ア原告は,昭和18年4月2日生まれの女性である。 - 2 -イ被告は,土岐市立総合病院(以下「被告病院」といい,単に診療科名を示した場合は,被告病院のことをいう。)を開設する地方公共団体である。O医師(以下「O医師」という。),P医師(以下「P医師」という。),Q医師及びR医師は,脳神経外科の医師として被告に雇用されている者であり,O医師は,平成14年当時,脳神経外科部長であった。 原告は,平成13年11月ころ,X1病院にてMRI検査を受けた。その(2 ,Q医師及びR医師は,脳神経外科の医師として被告に雇用されている者であり,O医師は,平成14年当時,脳神経外科部長であった。 原告は,平成13年11月ころ,X1病院にてMRI検査を受けた。その(2)検査で,直径約7㎜の脳動脈瘤(以下「脳動脈瘤」を単に「動脈瘤」ともいう。)が認められた(乙A1(3頁),乙A9)。 原告は,従前より内科で糖尿病治療を受けていたが,平成14年9月13(3)日(以下の日付けは,特記ない限り,平成14年である。),頭痛がひどかったため頭部MRA検査を受けた。その検査で,大脳右側に直径約10㎜の無症候性未破裂動脈瘤(以下「右側動脈瘤」という。)が認められた。その後の検査で,大脳左側に直径約2ないし3㎜の動脈瘤様の影(以下「左側動脈瘤」という。)が認められた。P医師は,これらの動脈瘤を未破裂動脈瘤(両側中大脳動脈瘤)と診断した(乙A1(4頁),乙A2(38頁),乙A9,乙B3)。 右側動脈瘤は,その大きさ及び形状等から破裂の危険性が高く,手術適応があった。 P医師が動脈瘤の手術等について説明をしたところ,原告は,右側動脈瘤(4)の手術及び左側動脈瘤の手術を一期的に行うことに同意した。 原告は,10月30日,被告との間で両側の動脈瘤について動脈瘤頸部ク(5)リッピング術を実施することを内容とする診療契約を締結した。 原告は,10月31日,被告病院において,術者をP医師,助手をQ医師(6)及びR医師(以下,3人併せて「被告担当医師ら」ともいう。)として,最初に左側動脈瘤の,次に右側動脈瘤の動脈瘤頚部クリッピング術(以下,それぞれ「本件左側手術」,「本件右側手術」といい,併せて「本件手術」と- 3 -もいう。)をそれぞれ受けた(乙A2(300頁~))。 原告は,本件手術直後,左側前頭葉及び左側被殻の脳梗塞(以下「左 れぞれ「本件左側手術」,「本件右側手術」といい,併せて「本件手術」と- 3 -もいう。)をそれぞれ受けた(乙A2(300頁~))。 原告は,本件手術直後,左側前頭葉及び左側被殻の脳梗塞(以下「左側梗(7)塞」という。)並びに右側穿通枝の脳梗塞(以下「右側梗塞」という。)を発症した。 原告は,平成15年1月ころ,基底核を含む右前頭葉梗塞(以下「右前頭葉梗塞」という。)を発症した。 原告は,本件手術直後に弛緩性右片麻痺があった。 (8)医療社団法人X2内科(以下「2内科」という。)のE医師(以下(9)X「E医師」という。)は,平成17年10月14日,原告について,①四肢筋力低下,②極軽度の右麻痺の残存,③軽度の認知症(MMSテスト22点),④発声障害,⑤パーキンソン症候群のため,動作が非常に緩慢で時間がかかる,⑥関節可動域についてはほぼ問題ないとの後遺障害診断書を作成した(甲A1。以下,四肢筋力低下,軽度の右麻痺,軽度の認知症,発声障害,パーキンソン症候群を「残存後遺障害」という。)。 争点及び争点に対する当事者の主張別紙争点整理表のとおり第3当裁判所の判断(民法715条に基づく損害賠償請求について) 医学的知見証拠(甲B1,11,乙B3,6,8,9,証人P,同,鑑定)によれOば,以下の専門的知見が認められる。 未破裂動脈瘤についての手術適応(1)ア平成9年の日本脳ドック学会のガイドラインは次のとおりである(鑑定)。 「6未破裂動脈瘤原則として手術的治療を検討する。手術適応は個々の症例について- 4 -判断されるが,一般的に脳動脈瘤が硬膜内にあり,大きさが5㎜前後より大きく,年齢がほぼ70歳以下の場合は,その他の条件が手術を妨げない限り手術的治療が勧められる。手術が行われない場合は脳動脈瘤の大きさ, れるが,一般的に脳動脈瘤が硬膜内にあり,大きさが5㎜前後より大きく,年齢がほぼ70歳以下の場合は,その他の条件が手術を妨げない限り手術的治療が勧められる。手術が行われない場合は脳動脈瘤の大きさ,形の変化の観察が必要である。現時点では観察間隔あるいは観察項目を特定する確実な知見はないが,さしあたり1年以内に経過観察を行い,増大を認めた場合には手術を勧める。」イ平成15年の日本脳ドック学会のガイドラインは次のとおりである(鑑定)。 「推奨 未破裂動脈瘤が発見された場合は,その医学的情報について正確かつ詳細なインフォームド・コンセントが必要である。 脳動脈瘤が硬膜内にある場合は,原則として手術的治療(開頭術あるいは血管内手術)を検討する。 一般的に脳動脈瘤の最大径が5㎜前後より大きく,年齢がほぼ70歳以下で,その他の条件が治療を妨げない場合には手術的治療が勧められる。ことに10㎜前後よりも大きい病変には強く勧められるが,3,4㎜の病変,また70歳以上の場合にも,脳動脈瘤の大きさ,形,部位,手術のリスク,患者の平均余命などを考慮して個別的に判断する。 手術が行われない場合は発見後,約6か月以内に画像による脳動脈瘤の大きさ,形の変化,症候の出現の観察が必要で,増大あるいは突出部()の形成が認められた場合には手術的治療を勧める。変化blebのない場合は,その後少なくとも1年間隔で経過観察を行う。観察期間中は喫煙,高血圧などの脳動脈瘤破裂の危険因子の除去に努める。 脳動脈瘤が発見されなかった場合,3年以内の再検査の必要性は低い。」- 5 -ウ無症候性未破裂動脈瘤の破裂率及びこれに対する開頭術の危険性についての全国的な調査が平成12年ころから始まっていたが,本件手術がなされた平成14年当時はまだ中間報告も出ていなかった。 - 5 -ウ無症候性未破裂動脈瘤の破裂率及びこれに対する開頭術の危険性についての全国的な調査が平成12年ころから始まっていたが,本件手術がなされた平成14年当時はまだ中間報告も出ていなかった。 無症候性未破裂動脈瘤の破裂率及びこれに対する開頭術の危険性についてのエビデンスレベルの高い文献は,平成19年時点でも存在せず,そのため,平成9年と平成15年のガイドラインについての各医師の受け取りかたもそれぞれで,平成15年から平成17年にかけて,直径5㎜未満の未破裂動脈瘤患者に対して,90%以上未治療とした施設は全体の37. 2%(164施設中61施設),90%以上治療しているとした施設は6%(10施設)であり,平成17年時点においても直径5㎜未満の動脈瘤に対する統一的な診療方針は確立していなかった(乙B9)。 エ平成15年のガイドラインの前提とされた未破裂動脈瘤の破裂率と開頭手術による危険性は次のとおりであるが,平成14年当時その内容は脳神経外科医に広く知られていた。 ア無症候性未破裂動脈瘤の破裂率は,動脈瘤の大きさ等や報告例によ()り年0.05%から2%と大きく幅はあるものの,無症候性未破裂動脈瘤全体としては破裂の危険性は年間約1%程度である。 直径5㎜未満のものは破裂しにくく,3ないし4㎜前後のものでは破裂率は0.5%程度となる。 イ動脈瘤の部位に関しては,中大脳動脈上のものは,比較的破裂の危()険性が低い。 ウ動脈瘤の形に関しては,突出部(ブレブ)を持ったものは破裂の危()険性が特に高い。 エ多発性の場合に破裂の危険性が高まるとの報告もあるが,その程度()を推定する知見はなく,多発性の場合に破裂の危険性が高まるとはいえない。 - 6 -オ動脈瘤が破裂するとクモ膜下出血となり,患者の約50%は死亡又() まるとの報告もあるが,その程度()を推定する知見はなく,多発性の場合に破裂の危険性が高まるとはいえない。 - 6 -オ動脈瘤が破裂するとクモ膜下出血となり,患者の約50%は死亡又()は高度の後遺症に陥る。 カ無症候性未破裂動脈瘤の開頭手術による死亡率は1%以下,後遺症()出現率は5%程度である。 一期的手術の手術適応,手術の危険性及びメリット(乙B1,3,8)(2)ア両側の未破裂動脈瘤に対する開頭手術を一期的に行う例はあまりないが,国内外において行われた例はあり,患者の強い希望があれば施設によっては実施も検討されうる。 イ一期的に行うことで,脳への侵襲が高くなり,頭部の固定が困難となるため,合併症発症の危険性が高まる可能性がある。また,全身麻酔の時間が長くなるため,全身麻酔に伴う合併症発症の危険性は高まる。 ウ一度に手術が終了するため,時間と費用が節約できる。 パーキンソン症候群の機序(証人O)(3)一般に多発性の脳梗塞の場合にパーキンソン症候群が起こるとされ,片側だけの前頭葉の脳梗塞のみで発生する場合は少ない。 発生障害(構音障害)の機序(鑑定)(4)ア脳幹損傷等により発症する声帯の反回神経麻痺により,発声障害が生じることがあり,気管内挿管による合併症の可能性がある。 イブローカ野が損傷した場合,運動性失語が発症することがある。 争点1(左側梗塞の機序)について左側梗塞の梗塞部位及び原因血管(1)ア左側梗塞の梗塞部位及び原因血管についての鑑定人Fの鑑定意見は次のとおりである。 「左側梗塞は,左前頭葉外側底部でシルビウス裂に面した部分の皮質と皮質下(前頭葉弁蓋部),左基底核(尾状核,外包及びレンズ核(被殻及び淡蒼球))並びに放線冠前部に及んでいる。 - 7 -線条体及び基底核は,M1から多数分岐 底部でシルビウス裂に面した部分の皮質と皮質下(前頭葉弁蓋部),左基底核(尾状核,外包及びレンズ核(被殻及び淡蒼球))並びに放線冠前部に及んでいる。 - 7 -線条体及び基底核は,M1から多数分岐する穿通枝の外側に存在する比較的長い穿通枝(線条体動脈又は外側穿通枝)から血流を受けている。本件における左基底核及び放線冠前部の梗塞は,中大脳動脈外側穿通枝の閉塞による。 orbito-前頭葉皮質,皮質下梗塞は,中大脳動脈分枝である眼窩前頭枝()と前頭枝()から血流を受けている。一般的frontalbranchfrontalbranchに,眼窩前頭枝と前頭枝は,中大脳動脈分岐部近くから発する一本の動脈(M2の内の一本)から分かれる枝であるが,より後方の前頭葉弁蓋部に分布する枝にも分岐することがある。本件の術前左頚動脈撮影(DSA画像,乙A3の3~6)及び3D-CTA画像(乙A3の12)によれば,左中大脳動脈M1遠位部から一本の動脈(M2)が前上方に分枝し,間もなく2本の枝に分かれる。その前方の枝が眼窩前頭動脈(枝),後方の枝が前頭動脈(枝)に相当すると考えられる。 この両枝は,CT画像上の前頭葉弁蓋部皮質及び皮質下の梗塞巣に分布する。弁蓋部の梗塞は前頭葉底部のみならず,シルビウス裂に接した前頭葉外側面にも広く及んでいるため,血流停止は,両枝に及んでいると考えられる。 したがって,本件における左前頭葉弁蓋部梗塞は,①眼窩前頭動脈(枝)及び②前頭動脈(枝)又はその元動脈(M2)の閉塞に起因すると結論される。」イ上記鑑定意見は,相当なものであり,本件における左前頭葉弁蓋部梗塞は,①眼窩前頭動脈(枝)及び②前頭動脈(枝)又はその元動脈(M2)の閉塞に起因すると認められる。 原因血管の閉塞原因(2)ア原因血管の閉塞原因についての鑑 あり,本件における左前頭葉弁蓋部梗塞は,①眼窩前頭動脈(枝)及び②前頭動脈(枝)又はその元動脈(M2)の閉塞に起因すると認められる。 原因血管の閉塞原因(2)ア原因血管の閉塞原因についての鑑定人Fの鑑定意見は次のとおりである。 - 8 -「3D-CTA画像(乙A3の13)によると,動脈瘤様膨隆の先端部から小動脈が出ているように見え,それが最外側穿通枝であり,その起始部がやや膨大して動脈瘤のように見えた可能性が高い。外側穿通枝が眼窩前頭動脈起始部に存在する場合,その膨隆を動脈瘤と誤認してクリップをかけると,外側穿通枝は閉塞し,それと同時に親動脈である眼窩前頭動脈の閉塞・狭窄が生じうることになる。眼窩前頭動脈と外側線条体動脈の起始部は少し離れているので,クリッピング動作及びクリップ自体による圧迫によって両者がともに閉塞される可能性は低いと考えられる。脳血栓,脳塞栓が両方の動脈に生じた可能性は否定できないが,何故これらの動脈に限定して生じたのかを説明することは困難である。脳ベラ解除後のクリップヘッドの移動等により,穿通枝並びに眼窩前頭動脈(枝)及び前頭動脈(枝)又はその元動脈(M2)の閉塞が生じた可能性はあるが,それは全ての動脈瘤クリッピングにおいて言えることであり,その蓋然性が本件のクリップにおいて特に高かったとすべき状況は見い出し得ない。」イ3大学院医学系研究科脳神経外科学助教授Gの意見(乙B7)の意見Xは次のとおりである。 「左側動脈瘤と穿通枝の関係については,術中所見から,穿通枝の漏斗状膨隆とは考えにくい。3D-CTA画像(乙A3の13)で漏斗状膨隆に見えるのは,解像度の問題であろう。ただし,動脈瘤の下に穿通枝があった場合に,閉創に至るまでにクリップで圧迫閉塞する可能性は考えられる。したがって,ビデオから判断する限り A3の13)で漏斗状膨隆に見えるのは,解像度の問題であろう。ただし,動脈瘤の下に穿通枝があった場合に,閉創に至るまでにクリップで圧迫閉塞する可能性は考えられる。したがって,ビデオから判断する限り,穿通枝領域の脳梗塞の原因であった可能性は否定できないが,皮質枝領域の脳梗塞の原因とは考えにくい。」ウ4大学医学部脳神経外科教授Hの意見(乙B8)は次のとおりであXる。 「梗塞を起こしている部位の原因血管は,眼窩前頭動脈枝及び前頭動脈枝- 9 -及びレンズ核線状体動脈の穿通枝である。レンズ核線状体動脈の穿通枝は,眼窩前頭動脈枝の分岐部から5㎜ほど中枢側のM1裏側から分岐している。眼窩前頭動脈はM1の表面から,前頭動脈枝は,眼窩前頭動脈枝の分岐部から更に少し離れたところから出ている。これらの血管がクリップで閉塞したとなると1か所の血管閉塞では説明できない。M1の末梢のM2には梗塞は認められず,M1自体の梗塞が認められないのも明らかである。この点,M1の動脈硬化が,前頭動脈枝分岐部近くまで及んでいることが注目される。動脈硬化の強い血管では動脈硬化自体による梗塞を引き起こしてくることがある。そのような場合は少々離れたところでも動脈硬化の程度により梗塞が起きてもおかしくない。このことは3か月後の平成15年1月にもCTで新しい梗塞が確認されていることを見ても,患者自身の動脈硬化が脳梗塞の発症に大きな意味を持っていると考えられる。」エ上記各意見のうち鑑定人Fの「動脈様膨隆の先端部から小動脈が出ているように見え,それが最外側穿通枝であり,その起始部がやや膨大して動脈瘤のように見えた可能性が高い。」との部分は,①証人Pの「本件左側手術の術中,術後において目視により原因血管及び術野の血流等を確認した。」旨の証言,②穿通枝起始部がクリッピングされた や膨大して動脈瘤のように見えた可能性が高い。」との部分は,①証人Pの「本件左側手術の術中,術後において目視により原因血管及び術野の血流等を確認した。」旨の証言,②穿通枝起始部がクリッピングされたのであれば,穿通枝が閉塞するはずであるが,鑑定人Fも,クリップ後に左側動脈瘤の下内側に走る赤い血管(穿通枝)があったと確認していること(鑑定。図12-A)からすると,被告担当医師らがクリップしたのは穿通枝の起始部ではなく,動脈瘤であったと認められ,同意見の部分は採用できない。 その他の各意見は,いずれも合理的なものであり,結局,原因血管の閉塞原因の特定は困難ではあるが,脳ベラ解除後のクリップヘッドの移動等が原因である可能性や動脈硬化の強い血管を手術したこと自体が原因である可能性があり,本件左側手術自体が原因血管の閉塞原因であるということはできる。 - 10 - 争点2(本件左側手術及び一期的手術の手術適応の有無)について(1)前記1の医学的知見のとおり,本件手術当時,無症候性の未破裂動脈瘤(1)についての治療方針に関する統一的な指針はなく,破裂の危険性についてのエビデンスレベルの高い文献等は存在しなかった。 平成9年のガイドラインは,「一般的に脳動脈瘤が硬膜内にあり,大きさが5㎜前後より大きく,年齢がほぼ70歳以下の場合は,その他の条件が手術を妨げない限り手術的治療が勧められる。」としているが,直径5㎜前後より小さい未破裂動脈瘤についての手術適応を全く否定したものとはいえない。 したがって,本件手術当時,直径5㎜前後より小さい未破裂動脈瘤の手術適応の有無は,個々の症例の動脈瘤の破裂の危険性と開頭術による合併症等の危険性とを比較し,患者自身の希望の程度をも考慮し,判断すべきものであったと認められる。 そこで,かかる観点から,本件左側手 術適応の有無は,個々の症例の動脈瘤の破裂の危険性と開頭術による合併症等の危険性とを比較し,患者自身の希望の程度をも考慮し,判断すべきものであったと認められる。 そこで,かかる観点から,本件左側手術及び一期的手術の適応の有無につき検討する。 左側動脈瘤の破裂の可能性(2)ア左側動脈瘤の部位,形状,大きさに関する術前の評価証拠(甲B1,乙B1,8,証人P,証人O,鑑定)によれば,左側動脈瘤は2つあり,いずれも血豆状で大きさは直径約2ないし3㎜であったこと,左側動脈瘤が血豆状であることは手術中の所見からしか診断できないため,術前には診断できないこと,手術前の時点で,被告病院のDSAの解像度が低く,左側動脈瘤が動脈瘤であると断定できないこと,それにもかかわらず,P医師及びO医師は,28日の脳神経外科カンファレンスで左側動脈瘤を直径2ないし3㎜の大きさの脳動脈瘤であると断定的に判断したことが認められる。 被告担当医師らが本件手術前の時点で左側動脈瘤を直径2ないし3㎜の- 11 -大きさの動脈瘤であると断定的に判断をしたことは不適切というべきであるが,結果的に左側動脈瘤は動脈瘤であったことから,以下,左側動脈瘤が2ないし3㎜の大きさの動脈瘤で,血豆状か否かは明らかでなかったことを前提として本件左側手術の適応の有無を検討する。 イ術前評価を前提とした左側動脈瘤の破裂の可能性左側動脈瘤の術前評価は,直径2ないし3㎜の大きさであり,前記1の医学的知見によれば,動脈瘤の大きさは破裂率を左右し,直径5㎜未満のものは破裂する可能性が低く,3ないし4㎜のものでは0.5%であることからすると,術前評価に基づく左側動脈瘤の破裂の可能性は,1年あたり多くても0.5%であると推認できる。 これに,本件手術時,原告は59歳であり,その平均余命は28.31年 のでは0.5%であることからすると,術前評価に基づく左側動脈瘤の破裂の可能性は,1年あたり多くても0.5%であると推認できる。 これに,本件手術時,原告は59歳であり,その平均余命は28.31年であること(厚生省大臣官房統計情報部編「平成14年簡易生命表」,顕著な事実)と併せて考えると,左側動脈瘤の生涯破裂率は,多くても14%(0.5%×28.31年≒14)であると推認できる。 前記1の医学的知見によれば,動脈瘤が破裂した場合,重篤な後遺障害を発症するのは約50%であるから,本件手術当時,左側動脈瘤が破裂し,原告が死亡し又は重篤な後遺障害を負う可能性は,多くても7%(14×50%/100=7)であると推認できる。 本件左側手術及び一期的手術に伴う後遺症出現の可能性(3)前記1の医学的知見のとおり,開頭手術による後遺症出現率は一般に5%程度であるが,一期的に行うことで脳への侵襲が強くなり,頭部の固定が困難となって手術の難易度が上がることから,これよりも高くなると推認される。 以上によれば,左側動脈瘤の生涯破裂率は多くても14%(そのうち重(4)篤な後遺障害を負う確率は7%)であり,これよりも少ない確率であると推認できるところ,一方,本件左側手術に伴う後遺症出現率は,少なくとも5- 12 -%であって(一期的に行うことで,出現率が上昇すると推認される。),左側動脈瘤の破裂の可能性(動脈瘤でない可能性を含む。)と,本件左側手術及び一期的手術に伴う後遺症出現の可能性は,いずれが勝るとも断定できない。 そうとすると,本件左側手術及び一期的手術は,原告が左側動脈瘤の生涯破裂率や本件左側手術及び一期的手術に伴う後遺症出現の可能性をも正確に理解した上で,同手術をすることについて強く希望した場合に限りその適応があるというべきである。 争点2 原告が左側動脈瘤の生涯破裂率や本件左側手術及び一期的手術に伴う後遺症出現の可能性をも正確に理解した上で,同手術をすることについて強く希望した場合に限りその適応があるというべきである。 争点2(一期的手術の手術方法選択の過失の有無)及び争点2(本件(2)(3)左側手術の手技上の過失の有無)について証拠(鑑定書,乙A2(295頁以下),乙A3の14・15)及び弁(1)論の全趣旨によれば,本件手術につき,以下の内容及び経過を認めることができる。 ア10月31日12:00手術室入室12:10挿管(全身麻酔)開始13:20本件左側手術開始13:55頭蓋穿孔14:20マイクロ導入15:41左側動脈瘤クリップ16:00止血確認,閉頭本件左側手術の術中,超音波血流計で血流等を確認しなかった。 17:08本件右側手術開始,頭蓋穿孔17:50マイクロ導入20:10右側動脈瘤クリップ20:30動脈瘤をガーゼで覆い,ビオボンドにてコー- 13 -ティング,止血確認21:00硬膜縫合開始21:30閉創,閉頭22:10本件手術終了22:30刺激にて覚せいせず。ロルファン1A追加。 22:55頭部CT検査被告担当医師らのCT所見では「出血像なし」23:00挿管したまま手術室退室イ11月1日午前抜管。右片麻痺が認められる。 一期的手術の手術方法選択の過失について(2)確かに,一期的手術を行う際は,破裂の危険性が高い方を先に施術するのが常識的である(鑑定)が,術後,脳血管撮影によってクリップのかけ直しができたかどうか,本件右側手術を先にした場合本件左側手術を断念したかどうかは明らかではなく,この点において被告担当医師らに過失があったとは言い難い。 クリップを適切な位置に残置しなかった過失 直しができたかどうか,本件右側手術を先にした場合本件左側手術を断念したかどうかは明らかではなく,この点において被告担当医師らに過失があったとは言い難い。 クリップを適切な位置に残置しなかった過失について(3)上記2で説示のとおり,左側梗塞の発生原因自体が特定できないか(2)ら,被告担当医師らがクリップを適切な位置に残置しなかったとは認められない。 本件手術後,クリップ装着具合を確認するために血管造影検査をしなか(4)った過失本件全証拠によるも,被告担当医師らが本件手術後クリップ装着具合を確認するために,原告に対し,血管造影検査をすべき注意義務を負っていたことを認めるに足りない。 本件左側手術の術中,術後において,目視や超音波血流計により血流等を(5)- 14 -確認しなかった過失証拠(乙A4,乙B1,3,8,証人P,鑑定)及び弁論の全趣旨によれば,超音波血流計による血流確認が必要とされるのは,目視による確認ができない場合や,目視で血流に何らかの異常が認められるような場合であること,P医師は,本件左側手術の術中,術後において目視により原因血管及び術野の血流等を確認したことが認められる。 そうとすれば,被告担当医師らに超音波血流計により血流を確認すべき注意義務はなかったというべきである。 術直後のCTで,原告の基底核に低吸収域が発現し,翌日朝には右片麻(6)痺の存在が認められた時点でただちにCTあるいはMRI検査を行い,脳血管撮影及び再開頭を行うべきところ,いずれも行わなかった過失ア本件手術直後の午後10時55分に撮影されたCT画像で,穿通枝領域に低吸収域が認められるが(鑑定),被告担当医師らは,本件手術直後のCT所見で「出血像なし」と判断したこと(4の認定事実),鑑定人(1)Fも11月2日に撮影されたCT画像と T画像で,穿通枝領域に低吸収域が認められるが(鑑定),被告担当医師らは,本件手術直後のCT所見で「出血像なし」と判断したこと(4の認定事実),鑑定人(1)Fも11月2日に撮影されたCT画像と比較することで初めて低吸収域の存在を確認できたに過ぎないこと(鑑定)からすると,本件手術直後のCT画像のみで,低吸収域の存在を認めることは困難であったと推認できる。 イしかし,証拠(鑑定)によれば,被告担当医師らは,未破裂動脈瘤の破裂予防手術後に,右片麻痺等の神経脱落症状を認めたのであるから,CT検査等の検査を行い,その原因を検索すべき注意義務があったにもかかわらず,これを怠り,CT検査等の検査を行わなかったことが認められ,この点において被告担当医師らの過失が認められる。 争点2(本件手術に関する説明義務違反の有無)について(4)本件左側手術の適応の有無と本件手術に関する説明義務の関係(1)医師は,患者の疾患の治療のために手術を実施するに当たっては,診療契- 15 -約に基づき,特別の事情のない限り,患者に対し,当該疾患の診断(病名と病状),実施予定の手術の内容,手術に付随する危険性,他に選択可能な治療方法があれば,その内容と利害得失,予後などについて説明すべき義務があり,また,医療水準として確立した療法(術式)が複数存在する場合には,患者がそのいずれを選択するかにつき熟慮の上判断することができるような仕方で,それぞれの療法(術式)の違いや利害得失を分かりやすく説明することが求められると解される(最高裁平成10年(オ)第576号同13年11月27日第三小法廷判決・民集55巻6号1154頁参照)。 加えて,前記3で説示のとおり,本件手術は,原告において左側動脈瘤の生涯破裂率や本件左側手術及び一期的手術に伴う後遺症出現の可能性をも正 年11月27日第三小法廷判決・民集55巻6号1154頁参照)。 加えて,前記3で説示のとおり,本件手術は,原告において左側動脈瘤の生涯破裂率や本件左側手術及び一期的手術に伴う後遺症出現の可能性をも正確に理解した上で同手術をすることについて強い希望がある場合に限り,その適応があるというべきであるものである。 したがって,被告担当医師らは,本件手術に関する説明にあたり,本件手術の必要性,有効性及び安全性(左側動脈瘤の生涯破裂率や本件左側手術及び一期的手術に伴う後遺症出現の可能性を含む。)について,原告に対して詳細かつ丁寧に説明すべき義務があったというべきである。 前提となる事実及び後掲各証拠に弁論の全趣旨を併せれば,次のとおり(2)の事実が認められる。 ア本件手術に至る経緯ア原告は,平成14年ころから,糖尿病や高脂血症等の治療のため,()内科に通院していたが,7月ころ,内科担当医に対し,ひどい頭痛がすると訴え,平成13年11月ころにX1病院で頭部MRI検査を受けており,その際,直径7㎜程度の動脈瘤があると指摘されたことを伝えた。 イ原告は,8月9日,被告病院において頭部MRA検査を受け,9月()13日,脳神経外科において,P医師から,右中大脳動脈に動脈瘤の疑- 16 -いがあるとの診断を受けた(乙A1(37頁))。原告は,同日の診察の際,P医師に対し,X1病院での検査の後,県立U病院を受診し,正確な診断のためにはDSAが必要だが,DSA自体に危険性があると言われたためこれを受けなかったと話した(乙A9)。 ウ原告は,10月1日,脳神経外科においてDSAを受け,P医師()は,これにより,原告の右側動脈瘤を認め,左中大脳動脈にも小さい動脈瘤を疑わせる影を認めたため,原告に対し,右側動脈瘤は大きく,破裂の可能性が高いため 脳神経外科においてDSAを受け,P医師()は,これにより,原告の右側動脈瘤を認め,左中大脳動脈にも小さい動脈瘤を疑わせる影を認めたため,原告に対し,右側動脈瘤は大きく,破裂の可能性が高いためクリッピング術を勧めること,左側の影は再検査を要すること,手術をするかどうかは家族と相談して決めて欲しいこと等を伝えた(乙A1(39頁),乙A9)。 エP医師は,10月11日又は18日に,被告病院の看護師を通じて()原告と連絡を取り,原告は,同日,被告病院を訪れた。 このとき,原告は,本件右側手術を受けるかどうかを悩んでいる様子であり,家族に相談をしていないとのことであったため,P医師は,原告に対し,再度10月1日に行ったのと同じ説明を行った上,入院して,左側の脳動脈瘤様の影について精査し,その上で家族と相談して手術をするかどうかを決めるよう提案をした(乙A9,証人P)。 オ原告は,10月中旬ころ,T県に住む原告の長女であるS(以下()「S」という。)に電話し,被告病院や他の病院で,右側に動脈瘤があり,いずれ破裂する可能性が高いと言われたこと等を伝え,どうすべきか相談したところ,Sは,破裂する可能性が高いなら手術した方が良いと伝えた(甲B3)。 カそれから数日後,原告は,再度Sに電話し,手術をすることに決め()たこと及び10月28日に入院して同月31日に手術をし,2週間程度で退院できることを伝えた。Sは,原告に対し,10月30日に被告病院に行き,その際,被告病院の担当医師から説明を受けるつもりでいる- 17 -と伝えた(甲B3)。 キ原告は,10月28日,本件右側手術及び左側動脈瘤様の影の精査()のために被告病院に入院し,3D-CTA検査を受けた(乙A2(22頁),乙A3)。 P医師,O医師,脳神経外科医1名及び研修医 キ原告は,10月28日,本件右側手術及び左側動脈瘤様の影の精査()のために被告病院に入院し,3D-CTA検査を受けた(乙A2(22頁),乙A3)。 P医師,O医師,脳神経外科医1名及び研修医1名の4名は,当該検査結果を踏まえてカンファレンスを行い,その結果,原告の左側の動脈瘤様の影は動脈瘤であるとの診断をし,患者(原告)が強く希望した場合には手術に応じるが,そうでなければこのまま経過観察をすることとした(証人P,証人O)。 P医師は,カンファレンスの後,原告に対して,左側の動脈瘤様の影は動脈瘤であったと伝えた。 クP医師は,10月30日午前の病棟回診時,原告に対し,左側はど()うするか尋ねたところ,原告は,左右の動脈瘤を一度に手術できないかと尋ね返した。P医師は,その旨をO医師に伝えた(証人P)。 ケO医師は,同日午後の部長回診の際,原告に対し,「一回でやっち()ゃいますか。」というような質問をしたところ,原告は,「お願いします。」と答えた。 この日,原告には発熱と下痢の症状が認められため,O医師は,原告に対し,体調が不良であれば本件手術の延期も検討すること及び夕方に家族が来てから再度話して決めることを伝えた(乙A2(40頁),乙A22,証人O)。 イ本件手術前日の説明アP医師は,10月30日午後5時ころから1時間程度,原告,S,()原告の兄であるJ(以下「兄」という。)及びその妻(以下「原告ら」という。)に対して説明を行った。 まず,MRA,DSA,3D-CTAの画像を示しながら,原告の脳- 18 -動脈瘤に関する説明をし,次に,手術説明・同意書を示して,本件手術に関する説明を行った。なお,この時点で,手術説明・同意書には,左右双方の手術を一期的に行うことが記載されてあった。 この時の説明内容は次のとおり る説明をし,次に,手術説明・同意書を示して,本件手術に関する説明を行った。なお,この時点で,手術説明・同意書には,左右双方の手術を一期的に行うことが記載されてあった。 この時の説明内容は次のとおりである(甲B3,5,乙A2(48ないし53,316,317頁),証人P,証人S)。 a原告の病名は未破裂動脈瘤であり,10月1日のDSAで右中大脳動脈に動脈瘤を発見し,左大脳にも小さい左中大脳動脈瘤及び内頸動脈瘤を疑わせる所見があったので,入院後3D-CTAを実施したところ,右側動脈瘤よりは小さいが,左側中大脳動脈上に動脈瘤が認められた。内頸動脈については,骨の影響で3D-CTAでは判然とせず,椎骨動脈撮影では動脈瘤が認められなかった。 b破裂の危険性(手術しない場合の予後)右側動脈瘤は,比較的大きく,徐々に拡大してきているようであり,ブレブ(突出部)を伴うため,将来破裂する可能性が比較的高い。 左側動脈瘤は小さいため,右側と比べると破裂の可能性は低いと考えられるが,原告の左右の動脈瘤はミラーイメージであるから,左側動脈瘤も右側動脈瘤と同様に大きくなる可能性がある。 手術をせず,破裂した場合にはクモ膜下出血となり,ひどい場合は死亡し,重篤な後遺症や意識障害を残すことがある。 c原告の動脈瘤の手術適応a未破裂動脈瘤が見つかった場合,一般には年齢が70歳以上で()あれば経過観察か,強い希望があれば全身状態を鑑み外科的治療を考慮するが,70歳未満の場合は,動脈瘤の部位,大きさ,形態と患者の全身状態を考慮して外科的治療の適応を考慮している。 b未破裂動脈瘤の破裂可能性は年間1%と言われており,60歳()- 19 -の患者の場合,平均寿命を85歳とすると約25%の確率で破裂することになり,手術による片麻痺等の合併症発症率は5ないし1 未破裂動脈瘤の破裂可能性は年間1%と言われており,60歳()- 19 -の患者の場合,平均寿命を85歳とすると約25%の確率で破裂することになり,手術による片麻痺等の合併症発症率は5ないし10%程度であることと比較すると数字上は手術した方がいいと考えることができる。 c右側動脈瘤は外科的治療の適応があると考えるが,左側動脈瘤()は,右側と比較すると小さく破裂の可能性は低いと考えられる。 d手術内容手術する場合,その手術名は脳動脈瘤頸部クリッピング術といい,全身麻酔下に開頭を行い,顕微鏡下に動脈瘤の頸部(付け根)を金属製の小さいクリップで挟み,血流が動脈瘤に流れ込まないようにして破裂を防止する。また,クリップでどうしても挟めない場合には動脈瘤の表面をコーティングすることもある。 e手術自体の危険性及び考えられる合併症aまれに,術中,術後に脳内又は頭蓋内に急性出血が起こること()があり,これによる死亡例も報告されている。また,術中に脳動脈瘤が破裂することや術後にけいれん発作を起こすことがある。 b原告は糖尿病であるため,髄膜炎,創感染等の恐れがある。 ()c脳出血,脳梗塞を起こして意識障害,片麻痺等の神経脱落症状()を残すことがある。手術による合併症の発症率は,約5~10%であり,施設によっては10%前後のところもあるが,被告病院では数%である。但し,出現するかしないかという意味では五分五分である。 dまた,原告は動脈瘤による自覚症状は現存しないが,手術が成()功しても手術することで皮膚に傷跡が残り,症状としてその痛みが残ることがある。 f他の治療法との比較- 20 -コイルを使用して塞栓するという血管内手術で治療する方法もあるが,その手術中に破裂し出血した場合には止血が困難であり,塞栓が不 してその痛みが残ることがある。 f他の治療法との比較- 20 -コイルを使用して塞栓するという血管内手術で治療する方法もあるが,その手術中に破裂し出血した場合には止血が困難であり,塞栓が不十分であったり,将来動脈瘤が増大してくることもあり,治療としては不確実な面があると考えられている。 イP医師は,原告らに対し,原告の体調が整わない場合には手術を中()止することもあり,そのことには問題ないと説明した。 ウP医師は説明を終えると,原告らに対し,質問がないか確認し,待()っているので,結論が出たら教えて欲しい旨伝えて席を外した。 エ原告らは,説明を受けた後,一旦原告の病室に行き,そこでそれぞ()れ手術説明・同意書に署名押印をし,これをナースステーションまで持って行った。 説明義務違反の有無(3)被告担当医師らは,当時,多発性の未破裂動脈瘤やミラーイメージの未破裂動脈瘤について破裂の危険性が高まるとの医学的知見がないにもかかわらず,これがあるかのような説明を行い,また,左側動脈瘤については,画像上,動脈瘤であると断定することが困難であり,動脈瘤でない可能性もあったが,そのことについては何ら説明していない(前記1の医学的知見及び5の認定事実)。 (2)また,被告担当医師らは,後遺症発現の危険性について発症するかしないかは五分五分であるとの説明を行う一方,被告病院では合併症発症率が他の施設よりも低く,安全性が高いかのような説明を行った。一期的に手術を実施することによる発現率の増加について何ら説明をせず,一期的に行うことのメリットのみを説明し,「一緒にやっちゃいますか。」等と,あたかも片側のみの手術でも一期的手術でも手術の危険性上何ら変わらないかのような印象を抱かせるような話をしてさえいる(5の認定事実)。 (2) ットのみを説明し,「一緒にやっちゃいますか。」等と,あたかも片側のみの手術でも一期的手術でも手術の危険性上何ら変わらないかのような印象を抱かせるような話をしてさえいる(5の認定事実)。 (2)そうとすると,被告担当医師らは,原告に対し,本件手術の必要性,有効- 21 -性及び安全性(左側動脈瘤の生涯破裂率や本件左側手術及び一期的手術に伴う後遺症出現の可能性を含む。)について,原告に対して詳細かつ丁寧に説明すべき義務があったにもかかわらず,これを怠り,本件左側手術及び一期的手術に伴う後遺症出現の可能性について適切に説明しなかったというべきであり,被告担当医師らには,説明義務違反があって,不法行為が成立すると認められる。 上記被告担当医師らの説明義務違反と本件左側手術との因果関係の有無(4)原告は,被告病院に行くまでは,DSAについても危険性があるため回避していたこと,10月1日に右側動脈瘤の存在と手術の必要性等について説明を受けた後も2週間程度決断できずにいたこと,10月中旬にはSに相談をし,Sから「破裂の危険性が高いなら。」と手術を勧められ,それをきっかけに本件右側手術をする決意をしていること(5の認定事実)からす(2)ると,原告は,脳に対する外科的侵襲に対しては,慎重な態度であり,動脈瘤破裂の危険性の高さと,Sの意向が原告の手術を受けるという判断に大きな影響を与えていたことが推認できる。 したがって,原告が本件左側手術及び一期的手術に伴う後遺症出現の可能性について適切な説明を受けていれば,本件左側手術の実施に同意しなかったものと認められる。 争点3(上記4,5の被告担当医師らの過失と残存後遺障害との因果関係の有無)について手術後における原告の症状の経過(1)前提となる事実及び証拠(甲A2,甲B3,乙A1,2,証人 認められる。 争点3(上記4,5の被告担当医師らの過失と残存後遺障害との因果関係の有無)について手術後における原告の症状の経過(1)前提となる事実及び証拠(甲A2,甲B3,乙A1,2,証人Kの供述書,鑑定)に弁論の全趣旨を併せれば,次の事実が認められる。 ア原告は,身長158㎝であり,本件手術時の体重は43㎏であった。 イ原告は,本件手術後,麻酔の覚せいが悪く,気管内挿管をしたままの状態で病室に戻った。 - 22 -ウ原告は,11月1日午前に抜管されたが,弛緩性の右片麻痺があり,同月3日まで意識が戻らず,意識が戻った後も,小声での発声は認められたものの,同月5日まで,発語はできなかった。 エP医師が,11月2日,原告に対し頭部CTを実施したところ,左側梗塞及び右側梗塞が認められ,さらに平成15年1月14日撮影の頭部CTにおいて右前頭葉梗塞が認められた。これにより,両側白質の広範な梗塞に至った。 オ原告は,11月11日から突然,筋強剛の症状を発症し,パーキンソン症候群様の症状と認められたため,P医師は,パーキンソン様症状の副作用がある薬剤を中止し,抗パーキンソン病薬を投与したところ,同月14日には筋強剛の症状は目立たなくなった。この時点では,原告には歩行障害は認められなかった。 カ原告は,平成15年1月22日ころから,つま先立ち歩行をするようになり,小刻み歩行やすくみ足などのパーキンソン症候群が認められるようになった。 キ原告は,平成15年7月13日夕方ころから発熱し,安静臥床を余儀なくされたことにより,ADL(日常生活動作)が低下したが,パーキンソン症候群の症状に対しては,内服薬により軽減が見られ,ADLは回復した(乙A2(444頁))。 ク原告は,平成15年8月5日ころから,腹痛を訴えたため,同日,採血と腹部 )が低下したが,パーキンソン症候群の症状に対しては,内服薬により軽減が見られ,ADLは回復した(乙A2(444頁))。 ク原告は,平成15年8月5日ころから,腹痛を訴えたため,同日,採血と腹部CT検査及び腹部エコー検査を受けたところ,総胆管結石(以下「胆石」という。)が疑われる所見が認められた。これにより,原告は腹部圧痛に襲われたため,安静臥床を余儀なくされ(乙A2(96頁~)),同月19日には,2週間にわたる臥床により,歩行障害が顕著になった(乙A2(245,246頁))。 ケ原告は,平成15年8月25日,麻痺性イレウス(以下「イレウス」と- 23 -いう。)による腰痛を発症し,このころ,原告のすくみ足,小刻み歩行がより顕著になった(乙A2(108頁))。 コ原告は,平成15年9月3日,被告病院において胆石及びイレウスの手術を受け,同月9日まで,臥床を強いられた(乙A2(114,115頁,342頁))。 サ原告は,平成15年10月21日,被告病院を退院し,翌22日,全身のリハビリのため,県立5病院に入院した。このとき,同病院のK医X師(以下「K医師」という。)は,原告の状態につき,寝たきり判定度はC2,全介助の状態であると診断した。また,このときの原告の体重は26㎏であった。 シ原告は,平成16年2月中旬ころ,寝たきり判定度A1にまで軽快し,入浴は一部介助が必要であり,下痢の時は排泄を失敗することがあり,歩行には不安定さが残るため声かけは必要であるものの,歩行,食事,排泄は自立し,意思疎通は可能となり,ADLに関してはほぼすべてが解決した(甲B3,乙A11(12頁))。 ス原告は,平成16年2月20日に5病院を退院した。このころ,原X告の体重は35.5㎏あたりで安定していた。同年3月17日から,構音障害につい べてが解決した(甲B3,乙A11(12頁))。 ス原告は,平成16年2月20日に5病院を退院した。このころ,原X告の体重は35.5㎏あたりで安定していた。同年3月17日から,構音障害についてのリハビリのため,6病院へ転院し,平成17年3月までXは入院し,同年6月までは通院した(甲B3,乙A20,証人S)。 セ6病院の耳鼻科医は,原告の構音障害の原因について,加齢及び体重X減少が原因の声帯萎縮によるものと診断した(甲B3,乙A20(15頁))。 ソ6病院での原告の担当医であるL医師(以下「L医師」という。)Xは,平成16年7月23日,原告の状態について,障害老人としての自立度はJ2,痴呆老人としての自立度Ⅰであり,転倒の危険があるため見守りが必要で,通所及び短期入所が相当である旨の診断をした(乙A20- 24 -(22,23頁))。 タ原告は,平成17年6月14日から現在に至るまで,T県の福祉医療施設V(以下「V」という。)に入所し,2内科に通院している。原告Xは,平日は毎日Vで過ごし,週に2日はデイサービスを頼み,残りの日はSが身の回りの手伝いをしている。また,週末は,Sの家で過ごしている。(甲B10,甲C2,甲C4の1~6,甲C5の1~4,甲C6の1~37,甲C7の1~26,甲C8の1,2,甲C9の1~38,甲C10の1~37)チ原告は,平成17年10月14日当時,①四肢筋力低下,②極軽度の右麻痺の残存,③軽度の認知症(MMSテスト22点),④発声障害,⑤パーキンソン症候群のため,動作が非常に緩慢で時間がかかるなどの障害(残存後遺障害)があり,E医師は,同日,その旨の後遺障害診断書を作成した(甲A1)。 右片麻痺の症状を認めた後,CT検査等の検査を行わず,その原因を検(2)索しなかった過失と残存後遺 などの障害(残存後遺障害)があり,E医師は,同日,その旨の後遺障害診断書を作成した(甲A1)。 右片麻痺の症状を認めた後,CT検査等の検査を行わず,その原因を検(2)索しなかった過失と残存後遺障害との因果関係の有無証拠(鑑定)によれば,一般に局所脳虚血領域がCT画像上低吸収域を呈するのは,局所脳虚血領域発生後3時間経過後であり,局所脳虚血発生後3時間以内に血流が再開されれば,脳内組織損傷は軽度にとどまるが,そうでない場合には重度となること,本件手術直後のCT画像によれば,穿通枝領域には既に低吸収域が生じており,仮に,原告に右片麻痺が認められた時点でCT検査等を行ったとしても,左側梗塞を回避することはできかったことが認められ,被告担当医師らが右片麻痺の症状を認めた後,CT検査等の検査を行わず,その原因を検索しなかった過失と残存後遺障害との因果関係は認められない。 説明義務違反と左側梗塞との間の因果関係の有無(3)被告担当医師らが,原告らに対し,本件左側手術及び一期的手術に伴う後- 25 -遺症出現の可能性について適切な説明をしていれば,原告が本件左側手術の実施に同意しなかったこと(5の認定事実)や本件左側手術が原因血管(4)の閉塞原因であること(2の認定事実)からすると,被告担当医師らの(2)説明義務違反と左側梗塞との間には因果関係がある。 左側梗塞と残存後遺障害との間の因果関係の有無(4)ア四肢筋力の低下について前記6の認定事実に証拠(証人Kの供述書,鑑定)によれば,四肢(1)筋力の低下の原因は,左側梗塞の発症とともに,平成15年1月の右前頭葉梗塞の発症,同年8月ころの胆石,胆石胆嚢炎及びイレウスの発症に伴う長期臥床による廃用性萎縮によるものであることが認められる。 したがって,左側梗塞は,四肢筋力の低下との に,平成15年1月の右前頭葉梗塞の発症,同年8月ころの胆石,胆石胆嚢炎及びイレウスの発症に伴う長期臥床による廃用性萎縮によるものであることが認められる。 したがって,左側梗塞は,四肢筋力の低下との一因となったものと認められる。 イ認知症について左前頭葉の梗塞は,認知において統括的機能を果たす前頭前野の一部,またその後方皮質との連絡路白質を含んでいること(鑑定)からすれ()ば,左側梗塞と認知症との間に因果関係があると認められる。 ウ右麻痺について原告には,本件手術後に覚せいしてすぐに弛緩性右片麻痺があったこと,左側梗塞は前頭葉皮質と放線冠の一部の梗塞を含むこと(6の認(1)定事実)からすれば,左側梗塞と右半身の麻痺との間に因果関係があると認められる。 エパーキンソン症候群について原告は,11月11日から突然,パーキンソン症候群様の症状である筋強剛の症状を発症したこと(6の認定事実),原告が本件手術後,左(1)基底核(尾状核,外包及びレンズ核(被殻及び淡蒼球))が広汎に,右基底核では部分的に損傷しているが,同損傷によって血管性のパーキンソン- 26 -症候群が生ずる可能性があること(鑑定)からすると,パーキンソン症候群の症状と左側梗塞との間に因果関係があると認められる。 11月11日に発症したパーキンソン症候群様の症状である筋強剛の症状は,薬剤の投与中止及び抗パーキンソン病薬の投与により一旦落ち着いていたこと及び平成15年1月14日に右前頭葉梗塞が認められた後に小刻み歩行やすくみ足などのパーキンソン症候群が認められるようになったこと(6の認定事実)は認められるものの,同事実をもって,上記認(1)定判断を左右するものではないというべきである。 オ発声障害(構音障害)についてア発声障害(構音障害)についての鑑定 ったこと(6の認定事実)は認められるものの,同事実をもって,上記認(1)定判断を左右するものではないというべきである。 オ発声障害(構音障害)についてア発声障害(構音障害)についての鑑定人Fの鑑定意見は次のとおり()である。 「発声障害が声帯麻痺によるとすれば,声帯麻痺は反回神経麻痺による可能性が高い。反回神経麻痺は,脳幹損傷などによって生じるが,その発声が手術直後から認められていることから,気管内挿管による合併症である可能性も考えられる。一方,左前頭葉梗塞の後部はブローカ野に近いことから,それにより運動性失語が発声し,発声障害に関与していた可能性が否定できない。原告の発声障害においては,声帯麻痺による構語障害とブローカ野の損傷による運動性失語の双方が関与していたと考えられる。原告の発声障害は術後直ちに発声したが,一夜にして高度の両側性声帯萎縮あるいは体重減少が進行するとは考えにくい。」イしかし,前記6の認定事実及び証拠(証人Kの供述書,証人Eの()(1)供述書)によれば,原告の発声障害はブローカ失語ではないこと,本件手術前48㎏あった体重が5病院入院時には26㎏にまで落ちておXり,6病院入院時にはかなり回復したものの,35.5㎏程度に過ぎXなかったこと,同病院医師は,原告の発生障害の原因を老化及び体重減少による声帯萎縮であると診断していることが認められる。 - 27 -そうとすると,上記鑑定意見中,原告の発声障害がブローカ野の損傷による運動性失語である旨の部分は採用できないというべきである。 結局,原告の発声障害の原因は,気管内挿管による合併症並びに老化及び体重減少によるものであると認めるのが相当であって,原告の発声障害と左側梗塞との間に因果関係はないというべきである。 争点4(損害)について 声障害の原因は,気管内挿管による合併症並びに老化及び体重減少によるものであると認めるのが相当であって,原告の発声障害と左側梗塞との間に因果関係はないというべきである。 争点4(損害)について治療関係費3万6750円(1)前記6の認定事実及び証拠(乙A2,乙C1)によれば,原告は,被(1)告病院における11月1日ないし15日までの個室病室代として被告病院に対して3万6750円を支出したこと,同期間の原告の症状は重篤であり,個室の必要があったことが認められる。 入院雑費62万0100円(2)原告は,本件手術後,11月1日から平成15年10月21日までの間は被告病院に,同年10月22日から平成16年2月20日までの間5病X院にそれぞれ入院した(5の認定事実)。 入院雑費は,1日当たり1300円と認めるのが相当であるから,477日で62万0100円となる。 円×日=万円1,300 0,100文書料2万5730円(3)証拠(甲C1,乙C1)によれば,原告は,診断書等の文書料として,被告病院に対して2万4150円,5病院に対して1580円を支払ったこXとが認められる。 付添看護費(4)ア入院付添費118万2500円ア被告病院分118万2500円()前記6の認定事実及び証拠(甲B10)によれば,原告は,本件(1)- 28 -手術後11月1日から平成15年10月21日までの間被告病院に入院していたこと,原告は,同入院期間中,半介助又は全介助の状態であり,リハビリのために付添看護を必要としていたこと,Sが,11月1日から同月末日までの毎日,原告の付添看護をしていたこと及び兄夫婦が,12月から退院までは,週に4日の割合で原告の付添看護をしていたことが認められる。 付添看護費用は としていたこと,Sが,11月1日から同月末日までの毎日,原告の付添看護をしていたこと及び兄夫婦が,12月から退院までは,週に4日の割合で原告の付添看護をしていたことが認められる。 付添看護費用は,1日あたり5500円と認めるのが相当であるから,次の計算式のとおりに算出した118万2500円となる。 円×{(×)}日(日分)≒万円5,50030+ 4/7 2,500イ5病院分0円()X証拠(証人Kの供述書)によれば,5病院では,当時,基準看護をX行っており,患者の家族による特別な介護は必要でなく,原告の兄夫婦は,不定期な面会を行っていたに過ぎないことが認められる。 したがって,5病院における付添看護費は認められない。 Xイ入通院及び自宅付添費96万円前記6認定事実によれば,原告は,平成16年2月20日から平成(1)17年6月13日まで,6病院又は兄夫婦宅において,兄夫婦の看護のXもとで生活をしていたこと,その看護内容は,見守り程度であったことが認められる。 その看護費用は1日あたり2000円と認めるのが相当であり,469日分で93万8000円となる。 円×日=万円2,000 ウ将来の看護費819万3148円ア前記6認定事実及び証拠(甲C2,甲C4の1~6,甲C5の1()(1)~4,甲C6の1~37,甲C7の1~26,甲C8の1,2)によれば,原告は,平成17年6月14日から口頭弁論終結時までの間,週末- 29 -を除き福祉医療施設に入所していること,同所で,週に2日看護サービスを受けていること,平成20年6月30日までに生じた看護サービス代のうち,原告が費用を負担した分は合計9万6051円であることが認められる。口頭弁論終結時までの ること,同所で,週に2日看護サービスを受けていること,平成20年6月30日までに生じた看護サービス代のうち,原告が費用を負担した分は合計9万6051円であることが認められる。口頭弁論終結時までの費用負担額については,平成20年6月30日までの平均額で計算するのが相当である。 したがって,平成20年7月1日から口頭弁論終結日である平成21年9月2日までの看護サービス代のうちの原告負担額は,次の計算式のとおり算出した3万7022円となる。 円/日×日≒万円96,0511113 7,022イ前記6認定事実及び証拠(乙A20)によれば,原告は平成16()(1)年7月23日に症状固定したこと,原告は,同症状固定時に,日常生活動作は自立しているが,パーキンソン症候群により歩行が不安定なため見守りが必要であったこと,原告は,平成17年6月14日から口頭弁論終結時までの間,週末はS宅においてSの看護のもとで過ごしていることが認められる。 したがって,平成17年6月14日から口頭弁論終結時まで週に2日分(443日分)の看護費用(日額2000円)を認めるのが相当であり,以下の計算式のとおり,88万6000円となる。 円×(×/)日≒万円2,0001553 6,000ウ原告は,口頭弁論終結時において,福祉医療施設に入所している()が,いつまで入所できるのかは定かではないため,口頭弁論終結の翌日から平均余命である22年間は1日当たり2000円の看護費を認めるのが相当である。同額を基礎として,中間利息をライプニッツ方式で控除して,口頭弁論終結の翌日から22年間の看護費用を求めると,以下の計算式のとおり717万4075円となる。 円×日×-=万円2,000 (14.8981 ライプニッツ方式で控除して,口頭弁論終結の翌日から22年間の看護費用を求めると,以下の計算式のとおり717万4075円となる。 円×日×-=万円2,000 (14.8981 5.0706) 4,075- 30 -エ以上より,将来の看護費は合計819万3148円となる。 ()万円+万円+万円+万円 6,051 7,022 6,000 4,075=万円 3,148休業損害483万6316円(5)原告は,兄が経営する株式会社Wにおいて,最初はゴルフ場のキャディー,その後事務員として勤務しており,平成13年度の年収入は236万0988円であった。また,原告は,兄夫婦とその次女,原告の母であるMと共に,兄の家に同居しており,勤務の傍ら,主婦業にも従事していた(甲B3,10,甲C11)。 原告は,本件右側手術のみを受け,本件左側手術を受けなかったとすれば,手術から2週間を経過した11月14日から症状固定日である平成16年7月23日までの618日間,平成14年賃金センサス第1巻第1表・産業計・企業規模計・女子労働者・学歴計55歳から59歳までの年収額の8割を基礎に計算した額の収入を得ることができたと推認できる。 したがって,休業損害は,483万6316円となる。 万円××日/日≒万円 0,5000.8 6,316後遺障害による逸失利益1659万4938円(6)原告は,四肢筋力の低下,軽度の認知症,弛緩性右片麻痺及びパーキンソ(1)ン症候群の障害を残して,平成16年7月23日に症状が固定した(6の認定事実)。 証拠(甲A1,乙A20,証人Kの供述書,証人Eの供述書)によれば,上記症状固定時において,四肢筋力の低下は (1)ン症候群の障害を残して,平成16年7月23日に症状が固定した(6の認定事実)。 証拠(甲A1,乙A20,証人Kの供述書,証人Eの供述書)によれば,上記症状固定時において,四肢筋力の低下は軽度であったこと,弛緩性右片麻痺の残存の程度は極軽度で,徒手筋力テストでも左右差が認めらない程度であったこと,認知症は軽度のものであったこと,パーキンソン症候群は,歩行が不安定な状態が残り,見守りが必要であったことが認められる。 そうとすると,原告は,上記後遺障害により,上記症状固定の日から70- 31 -歳に達するまでの10年間を通じて,その労働能力の79%を喪失したと認めるのが相当である。 原告は,被告担当医師らの説明義務違反がなければ,上記症状固定の日から10年間,平成14年賃金センサス第1巻第1表・産業計・企業規模計・女子労働者・学歴計55歳から59歳までの年収額の8割を得ることができたと推認できるので,その額を基礎として,中間利息をライプニッツ方式で控除して10年間の逸失利益を算出すると,1659万4938円となる。 (万円×)×/×-≒万円 0,5000.8 (8.3064 0.9523)1,6594,938慰謝料1800万円(7)本件に現れた一切の諸事情を考慮すると,1800万円が相当である。 素因減額(8)前提事実に前記2及び6の認定事実からすると,原告は糖尿病であ(1)(1)り,M1の動脈硬化が前頭動脈枝分岐部近くまで及ぶなど動脈硬化が進んでいたこと,本件手術から2か月を経過した平成15年1月14日ころに右前頭葉梗塞を発症したこと,パーキンソン症候群の症状のうち歩行障害については,右前頭葉梗塞が発症して初めて見られるようになったこと,四肢筋力低下には,右前頭葉梗塞や した平成15年1月14日ころに右前頭葉梗塞を発症したこと,パーキンソン症候群の症状のうち歩行障害については,右前頭葉梗塞が発症して初めて見られるようになったこと,四肢筋力低下には,右前頭葉梗塞や胆石及びイレウスの発症により臥床を強いられたことも影響していることが認められる。 これらの事情を考慮し,損害の公平な分担の観点から,民法722条を類推適用して,上記損害のうち3割を減額するのが相当である。 したがって,被告が原告に対して賠償すべき損害額は,3531万4638円となる。 万円×≒万円5,0449,4820.73,5314,638弁護士費用300万円(9)被告担当医師らの説明義務違反と相当因果関係のある弁護士費用相当の損害額は,300万円と認めるのが相当である。 - 32 -したがって,被告が原告に対して賠償すべき損害額は,3831万4638円となる。 損害の填補(10)証拠(U社会保険事務所及びT社会保険事務所に対する各調査嘱託)によれば,原告は,傷病手当金として,平成14年12月15日までに13万5148円,平成15年2月15日までに21万0924円,同年4月27日までに24万1542円,同月30日までに1万0206円の受給を受け,障害基礎・厚生年金として,平成16年3月末日までに157万7800円,平成17年9月末日までに157万2800円,平成18年3月末日までに125万8300円,平成20年12月末日までに125万4500円の受給を受けたことが認められる。 これらの給付は損害の填補として給付されたものであるが,同給付の対象となる損害と民事上の損害賠償の対象となる損害とが同性質を有するものについては,当該給付額が控除されるべきであるところ,上記各損害のうち,この性質を有すると解されるのは消極損害( るが,同給付の対象となる損害と民事上の損害賠償の対象となる損害とが同性質を有するものについては,当該給付額が控除されるべきであるところ,上記各損害のうち,この性質を有すると解されるのは消極損害(休業損害及び後遺障害による逸失利益)のみであるため,上記各受給額は消極損害額から控除すべきである(最高裁昭和58年オ第128号同62年7月10日第二小法廷判決・民()集41巻5号1202頁参照)。なお,平成21年1月から支給が開始された障害基礎年金と老齢厚生年金については,本件各証拠に照らしても,原告が,口頭弁論終結時において確定していた支給額が明らかでないため,控除すべきものとは認められない。 (5)(6)4,836,上記及びの素因減額後の合計額は,1500万1878円((×)+(×)≒)であり,まず,遅延損害 0.716,594,9380.715,001,878金から充当すると,別表のとおり,平成20年12月31日の時点で,消極損害の残損害額は1242万1733円で,これに対する残遅延損害金は,45万4336円となる。 - 33 - 以上によれば,原告の民法715条に基づく請求は,3618万8829円並びに内2331万2760円に対する平成14年11月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員及び内1242万1733円に対する平成21年1月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は棄却すべきである。 (国家賠償法1条1項に基づく請求について) 被告担当医師らが公権力の行使にあたる公務員とはいえないことは明らかである。 したがって,原告の国家賠償法1条1項に基づく請求は理由がないからこれを棄却すべきである。 (債務不履行 ついて) 被告担当医師らが公権力の行使にあたる公務員とはいえないことは明らかである。 したがって,原告の国家賠償法1条1項に基づく請求は理由がないからこれを棄却すべきである。 (債務不履行による損害賠償請求について)仮に,原告の債務不履行による損害賠償請求が認められるとしても,その損害額が不法行為による損害賠償額を超えることはないから,これについては判断しないこととする。 (結論)よって,主文のとおり判決する。 岐阜地方裁判所民事第2部裁判長裁判官内田計一裁判官永山倫代裁判官山本菜有子

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