平成14(行ウ)55 不当利得金等返還請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年4月30日 名古屋地方裁判所
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判決文本文16,167 文字)

主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,166万7240円及び内金105万8740円に対する平成12年6月10日から,内金13万3000円に対する平成12年8月1日から,内金47万5500円に対する平成13年6月12日から,それぞれ還付のための支払決定の日まで年7.3パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,名古屋千種税務署長に対して,平成5年分から平成11年分の所得税の修正申告をなし(かつこれに起因する重加算税賦課決定処分を受け),当初の確定申告に係る納税額との差額,延滞金及び重加算税を納付したが,同修正申告は,客観的に明白な錯誤に基づく(一部)無効なものであると主張して,無効部分に相当する誤納金の返還と,これに対する各納付日の翌日から還付のための支払決定の日まで国税通則法58条1項所定年7.3パーセントの割合による還付加算金の支払を求めた当事者訴訟である。 1 当事者間に争いのない事実等(1) 原告は,名古屋市○区○○丁目○番○号所在の店舗「A」(以下「原告店舗」という。)にて,飲食業を営んでいる。 (2) 原告は,所轄税務署長である千種税務署長から青色申告の承認を得ているところ,平成5年分から平成11年分まで(以下「本件係争年分」という。)の所得税について,それぞれの法定申告期限までに,別表1の各「当初申告」欄のとおり,確定申告(平成5年分については更に修正申告)をした。 ところが,名古屋中税務署個人課税第4部門上席国税調査官B,同署同部門国税調査官C及び千種税務署個人課税第4部門国税調査官D(以下,これらの者を「本件調査担当者」という。)が,平成12年5月23日 ところが,名古屋中税務署個人課税第4部門上席国税調査官B,同署同部門国税調査官C及び千種税務署個人課税第4部門国税調査官D(以下,これらの者を「本件調査担当者」という。)が,平成12年5月23日から同月26日までの間に行った税務調査により,本件係争年分について,原告が帳簿書類を作成していないこと及び上記確定申告において昼食の売上げを除外していることが判明した。 (3) そこで,本件調査担当者が,推計による計算結果に基づき,本件係争年分の昼食の売上除外金額について,修正申告することをしょうようしたところ,原告は,平成12年6月7日,本件係争年分の所得税について,別表1の各「修正申告」欄(ただし,平成5年分については「再修正申告」欄)のとおり,(再)修正申告をした(以下,これらを「本件各修正申告」といい,これに係る申告書を「本件各修正申告書」という。)。 本件各修正申告に伴い,千種税務署長は,同月30日,原告に対し,本件係争年分の所得税に係る重加算税賦課決定処分をした(甲9ないし11)。 (4) 原告は,本件各修正申告及び前記重加算税賦課決定処分に基づき,平成12年6月9日,本税合計346万5700円(別表1の平成5年分についての「再修正申告」欄の納付すべき税額と「修正申告」欄の「納付すべき税額」との差額に,平成6年分から平成11年分についての各「修正申告」欄の「納付すべき税額」と各「当初申告欄」の「納付すべき税額」との差額を加えた合計金額)を,同年7月31日,重加算税のうち44万8000円(同表の平成5年分と平成6年分の各「重加算税の額」の合計金額)を,平成13年6月11日,延滞税合計87万6700円及び重加算税のうち75万2500円(同表の平成7年分ないし平成11年分の各「重加算税の額」の合計)を,それぞれ納付した(甲12の1ないし3, 額)を,平成13年6月11日,延滞税合計87万6700円及び重加算税のうち75万2500円(同表の平成7年分ないし平成11年分の各「重加算税の額」の合計)を,それぞれ納付した(甲12の1ないし3,13の1ないし4,14の1ないし3)。 (5) 原告は,平成12年10月12日,本件係争年分の所得税について減額更正の申出書(乙1)を提出し,さらに,同年12月15日,平成11年分の所得税について更正の請求書(乙2)を提出したが,担当税務職員から青色申告承認の取消し等の可能性を示唆されたため,平成13年3月5日,上記更正の請求を取り下げた(乙3)。 2 本件の争点本件各修正申告(及びこれに起因する重加算税賦課決定処分)は,(一部)無効か。 具体的には,本件各修正申告をするに当たって,原告に,客観的に明白かつ重大な錯誤があり,法の定めた方法以外にその是正を許さないならば,納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情が存するか。 3 当事者の主張の要旨(1) 原告ア本件各修正申告に係る所得税額の不当性(ア) 被告は,本件調査担当者がしょうようした本件各修正申告に係る昼食の売上金額は,別表2のとおり,米の仕入量から,1日当たりの自家消費量に年間営業日数を乗じた数量を控除して業務に使用する量を計算し,これに炊き上がり倍率,使用割合(100パーセントからロス率(廃棄率)を控除した割合)をそれぞれ乗じ,これをランチ1食当たりの米の重量で除し,最後に1食当たりの平均売上単価を乗じて算出したものであると主張するが,その基礎となるロス率及び平均売上単価は,下記のとおり,実態からかけ離れた数字である。 a ロス率について飲食業界では,利用客数の変動が読めないのが通常であり,万が一にもご飯が不足しないように多めに炊くのが常識である。そのため 上単価は,下記のとおり,実態からかけ離れた数字である。 a ロス率について飲食業界では,利用客数の変動が読めないのが通常であり,万が一にもご飯が不足しないように多めに炊くのが常識である。そのため,原告の経験では30ないし50パーセントがロスになる。被告は,ロス率が5パーセントであると主張するが,この数字は,ほとんど完売に近い状態であり,実際の飲食業の経験のない税務職員が机上で考えた理屈というほかなく,実態を無視した数字である。 ちなみに,ご飯のロス率を30,20,10パーセントとした本件係争年分の昼食売上合計金額は,下記のとおりであるところ,原告の昼食用割り箸の仕入量は,年平均5000膳であり,そのうち客が落としたり,原告が調理に使用したり,不良品であるなどの理由で昼食に使用されない分を1割とし,残り4500膳が客に提供されたとの前提で計算した昼食の平均年間売上金額は315万円(4500×700円(後記bのとおり)),7年間分の合計は2205万円となる。そうすると,ロス率としては,下記昼食売上合計金額がこの金額と近似する20パーセントが妥当である。 ロス率30パーセントの場合,7年分の合計1911万2100円同  20パーセントの場合,同 2184万2800円同  10パーセントの場合,同 2457万3976円b 平均売上単価について原告が提供している昼食は下記の3種類で,客の大半がランチを注文するから,平均売上単価は700円であり,被告主張の780円は高すぎる。 ランチ 680円弁当 880円鉄火丼 780円(イ) 前記のとおり,ご飯のロス率20パーセントと平均売上単価700円を基礎に昼食の年間売上金額を計算すると,別表3の項目番号⑬の各課税年欄該当金額となり,適正な所得税額は,別紙計算書の 780円(イ) 前記のとおり,ご飯のロス率20パーセントと平均売上単価700円を基礎に昼食の年間売上金額を計算すると,別表3の項目番号⑬の各課税年欄該当金額となり,適正な所得税額は,別紙計算書のとおり,同計算書項目番号①の各課税年欄該当の金額となるところ,本件各修正申告に係る所得税額は,この金額を上回っている。 イ客観的に明白かつ重大な錯誤の存在(ア) 本件各修正申告の際,本件調査担当者は,本件各修正申告書に記入した数字の根拠を何ら説明しなかった。そのため,原告は,上記のとおり,しょうよう内容が原告の営業実態と極端にかけ離れた数値を基礎にしていることについて知るすべがなく,しょうようされた数字が適正に計算された客観的事実に符合した数字であると誤信していたところ,原告としては,かかる誤信がなければ本件各修正申告書に署名押印することがなかったから,原告に錯誤が存する。 (イ) 客観的事実に符合しない数字に基づき,納税者に対し,その数字の根拠を何ら説明せず,了解を求めることもせず,署名押印を強制することは,申告納税制度の根幹を揺るがすものである。原告は,昼食の売上げを除外していたという弱みから署名押印せざるを得なかったのであり,そのような強要の結果なされた本件各修正申告は,もはや自主的な申告とはいえない。したがって,原告の錯誤は,客観的に明白かつ重大なものというべきであり,申告書の記載それ自体から外形上,客観的に過誤が一見して看取できるものであることを要するとの被告の主張は不当である。 (ウ) 被告は,原告の主張に係る本件係争年分の昼食の売上金額が変遷していることをもって,原告自身にとっても適正な所得税額が明らかでなく,錯誤無効の主張は失当であると主張しているところ,確かに原告の主張に係る昼食売上金額は変遷しているが,これは,本訴に至る が変遷していることをもって,原告自身にとっても適正な所得税額が明らかでなく,錯誤無効の主張は失当であると主張しているところ,確かに原告の主張に係る昼食売上金額は変遷しているが,これは,本訴に至るまで,税務当局から昼食の売上金額の算定根拠について説明がなされなかったために,原告としては,昼食の本当の売上げに近い数字を算出すべく,いろいろな角度から検討せざるを得なかったことによるものであって,そのことをもって,明白かつ重大な錯誤に当たらないとするのは不当である。 ウ特段の事情の存在国税通則法は,申告等の過誤是正の方法として,法定申告期限から1年以内の更正の請求の制度を定めている(23条)が,平成11年分については,青色申告承認の取消しを示唆された結果,取り下げざるを得ず,また,平成5年から10年分までの修正申告については,更正の請求の期限も過ぎており,前記過誤の是正手段はない。 したがって,本件各修正申告における原告の錯誤は,客観的に明白かつ重大であって,国税通則法の定めた過誤是正以外の方法による是正を許さないとすれば,納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情が存するというべきである。 (2) 被告ア錯誤無効の主張が許容される要件一般に,私人の公法上の意思表示については,民法の法律行為に関する規定が適用ないし準用されるが,納税申告は,民主的かつ能率的な租税行政の運営のため,自己の所得等を最もよく知る納税者の自主的申告に租税債務確定の効果を与え,これに基づいてその後の手続を進めることを予定した制度であるから,申告後相当期間を経過した後にその効力が争われ,その効果が否定され得ることになれば,毎年大量の事務を迅速に処理すべきことが要請される税務行政の円滑な運営を著しく阻害することとなり,ひいては制度の根幹 告後相当期間を経過した後にその効力が争われ,その効果が否定され得ることになれば,毎年大量の事務を迅速に処理すべきことが要請される税務行政の円滑な運営を著しく阻害することとなり,ひいては制度の根幹を揺るがす結果を招来しかねない。 そのため,申告等に係る税額が過大である場合に,納税者からの是正方法として,法定申告期限から1年以内に限って更正の請求(国税通則法23条)が認められているのであって,納税者がこれによらず,民法95条の錯誤の規定のみを根拠に,その無効を主張することは原則として許されないというべきである。 したがって,例外的に錯誤による無効主張が認められるのは,その錯誤が客観的に明白かつ重大であって,法の定めた方法以外にその是正を許さないならば,納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情が存する場合に限られるというべきである。 イ本件各修正申告に係る所得税額の正当性本件調査担当者が、原告に対し,本件各修正申告をしょうようするに当たって説明した昼食の売上金額の計算方法は,本件係争年分の米の仕入数量(平成6,7年分は把握できなかったため,その他の年分の平均値である。)から,自家消費分(1日当たり3合を見込み,これに営業日数を乗じる方法で算出したものである。営業日数については,平成9ないし11年分は会計伝票から算出し,平成5ないし8年分についてはほかの年分の平均値である。)を差し引き,ロス率(夜の営業に使用される分も含む。)を5パーセントに見込んで炊き上がりの量(2.45倍)を計算し,ランチ1食当たりのご飯の重量(260グラム)で除して,ランチ1食当たりの平均売上単価(単純平均である780円)を乗じたものである。(別表2参照)。 原告は,ロス率を5パーセント,平均売上単価を780円としたことが実態に反すると主張する ム)で除して,ランチ1食当たりの平均売上単価(単純平均である780円)を乗じたものである。(別表2参照)。 原告は,ロス率を5パーセント,平均売上単価を780円としたことが実態に反すると主張するが,前者については,税務調査の際,原告が「金を出して買っているものであるため捨てることは少ない。」,「夜の客でご飯を食べる客はほとんどいない。」と回答し,本件調査担当者が「5パーセントを見込んだ。」と説明したのに対し,特段の反論がなかったため,常識に従って判断したものであり,後者についても,ランチと弁当のそれぞれの食数の記録が存在せず,本件調査担当者が「単純平均とした。」と説明したのに対し,特段の反論がなかったことから,この数値を採用したものであるから,上記の方法は十分に実態を反映している。 ウ客観的に明白かつ重大な錯誤の不存在(ア) 本件調査担当者は,平成12年5月23日から行われた税務調査の結果に基づいて,原告に対し,修正申告額及びその計算方法並びに修正申告に伴う加算税や延滞税の納付,修正申告後に通知されるであろう市県民税等についてまで繰り返し説明し,原告の主張にも耳を傾けた上,修正申告をすることをしょうようしたものであるから,本件各修正申告は,原告の自主的判断に基づくものであって,本件調査担当者による署名・押印の強要はなく,錯誤も存在しない。 (イ) そもそも,客観的に明白な錯誤とは,明らかな誤記・計算違い等,申告書の記載それ自体から外形上,過誤が一見して看取できるものを指すところ,本件各修正申告書には,国税通則法19条4項所定の事項が漏れなく記載され,適式な修正申告書の体裁を備えており,同申告書の記載からは錯誤の存在は全くうかがえないから,上記要件が存在するとはいえない。 (ウ) 原告は,所得金額について,平成12年10月12日に なく記載され,適式な修正申告書の体裁を備えており,同申告書の記載からは錯誤の存在は全くうかがえないから,上記要件が存在するとはいえない。 (ウ) 原告は,所得金額について,平成12年10月12日に提出した減額更正の申出書においては,368万3065円(平成5年分),403万4993円(平成6年分),381万7484円(平成7年分),439万8215円(平成8年分),576万9973円(平成9年分),547万6156円(平成10年分),433万6495円(平成11年分)と主張し,同年12月15日に提出した更正の請求書においては,147万4399円(平成11年分)と主張し,訴状においては,441万5596円(平成5年分),475万6114円(平成6年分),453万8605円(平成7年分),513万2846円(平成8年分),592万7696円(平成9年分),604万0277円(平成10年分),415万9194円(平成11年分)と主張し,更に最終的に別紙計算書記載の金額を主張している。 このように,原告の主張する適正な所得金額が変遷していることに照らせば,そもそも原告自身にとっても適正な所得金額が明らかではないから,錯誤による無効の主張は,その余について検討するまでもなく失当というべきである。 エ特段の事情の不存在本件調査担当者は,平成12年6月1日,原告に対して調査結果を示し,同月2日,同月7日には修正申告の内容について原告とともに検討を行い,最終的に同月7日,原告から本件各修正申告書が提出されたところ,この間,原告において,説明を聞いた上で検討する十分な余裕があったのであるから,無効主張を許すべき特段の事情は存しない。殊に,平成11年分の修正申告については,更正の請求に係る申立期間内になされたものであり,修正申告の過誤を是正する機会があ する十分な余裕があったのであるから,無効主張を許すべき特段の事情は存しない。殊に,平成11年分の修正申告については,更正の請求に係る申立期間内になされたものであり,修正申告の過誤を是正する機会があったにもかかわらず,原告は,自らの意思で更正の請求を取り下げており,特段の事情は存しない。 第3 当裁判所の判断 1 一般に,私人による公法上の意思表示については,法律行為に関する民法の規定がそのまま適用ないし準用されると解するのは相当でなく,法令によって定められた当該制度の趣旨・目的を総合的に勘案して,その可否,限度及び要件を決すべきである。 ところで,所得税については,原則として,納付すべき税額が納税者のする申告によって確定する,いわゆる申告納税方式が採用されている(国税通則法16条2項1号,所得税法120条)。そして,納税者が確定申告書を提出した後において,申告書に記載した所得税額が適正に計算したときの所得税額に比較して過少であると知った場合には,更正の通知があるまで,当初の申告書に記載した内容を修正する旨の申告書を提出することができ(国税通則法19条),逆に過大であると知った場合には,法定申告期限から1年以内に限って,当初の申告書に記載した内容の更正の請求をすることができるとされている(同法23条)。 このように,法が,申告納税制度を採用した上で,その過誤是正につき特別の規定を設けているのは,所得税の課税標準等について,最もその事情に通じていると思われる納税者自身の自主的申告に基づく方式が,民主主義国家における納税義務確定方式として相応しく,かつ効率的であると考えられた反面,その過誤の是正は法律が特に認めた場合に限ることによって,租税債務をできるだけ速やかに確定し,その効力が争われることによる不安定さを避けようとする国家財政上の要請に応 つ効率的であると考えられた反面,その過誤の是正は法律が特に認めた場合に限ることによって,租税債務をできるだけ速やかに確定し,その効力が争われることによる不安定さを避けようとする国家財政上の要請に応じようとしたためであると考えられる。 したがって,確定申告書の記載内容が納税者の真意と一致しない場合は,民法95条によって直ちにその効力が失われると解すべきものではなく,その錯誤が客観的に明白かつ重大であって,法の定めた方法以外にその是正を許さないならば,納税者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がある場合に限って,無効を主張できるというべきである(最高裁判所昭和39年10月22日第一小法廷判決・民集18巻8号1762頁参照)。 2 そこで本件について検討するに,前記当事者間に争いのない事実等に証拠(甲1ないし11,12の1ないし3,13の1ないし4,14の1ないし3,15,乙1ないし6)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 (1) 原告は,約15年前ころ,原告店舗において,北海料理を看板とする飲食店「A」を開業し,以来,昼(午前11時30分から午後1時までのランチタイム)と夜の2部に分けて営業を続けてきた。原告店舗は,カウンター席10席,テーブル席12席,奥の座敷席16席,合計38席を有しており,原告と同人の妻が調理と接客に従事しているほか,アルバイト1人(現在は原告の娘)が稼働している。 昼の営業におけるメニューは,①単価680円のランチ,②同780円の鉄火丼,③同880円の弁当の3種類であり,原告店舗では,①の容器20個,③の容器10個をそれぞれ備えている。原告店舗が繁華街から外れて位置していることから,その客層は近隣のサラリーマンが多く,そのため土曜日の昼は営業をしていない。 (2) 本件調査担当者は,平成12年5月 器10個をそれぞれ備えている。原告店舗が繁華街から外れて位置していることから,その客層は近隣のサラリーマンが多く,そのため土曜日の昼は営業をしていない。 (2) 本件調査担当者は,平成12年5月23日午前10時前ころ,原告肩書地の自宅を訪れ,在宅していた原告の妻に対し,税務調査のために来訪した旨告げた上で原告との面会を求めたところ,妻は,原告はゴルフに出かけて留守であるが,毎朝午前9時ころには原告店舗に行く旨答えた。そこで,本件調査担当者は,翌日午前9時30分ころに原告店舗に臨場する旨の伝言を依頼した。 (3) 本件調査担当者は,平成12年5月24日午前9時30分ころ,原告店舗に臨場し,原告に対して所属及び氏名を名乗り,身分証明書及び質問検査章を示した上,所得税の調査に赴いた旨を告げたところ,原告は,その調査に協力する態度を示し,夜の営業は,午後4時30分ないし5時に開店し,午後10時ころ閉店すること,定休日は日曜日及び祝日であり,土曜日は営業したりしなかったりであるが,夏場は営業を行わないことが多いこと,昼の営業は開店以来ずっと行っていること,日々の売上げは会計伝票で管理していること,現金出納帳は備え付けていないこと,帳簿書類などはすべて自宅にあることなどを述べた。そこで,本件調査担当者は,原告店舗において,ビール,日本酒及びおしぼりの在庫本数等の確認と,現金の監査等を行った。 本件調査担当者は,引き続き同日午後2時30分ころ,原告の自宅に赴き,原告と面談したところ,原告は,帳簿の記帳をしていないこと,確定申告は会計伝票を集計して行っていることを述べた。そして,本件調査担当者は,原告に対し,会計伝票,領収書,請求書等及び預金通帳等の提示を求め,その了解を得て,借用できる伝票類を借り受け,借用できない書類をコピーして持ち帰った。 ことを述べた。そして,本件調査担当者は,原告に対し,会計伝票,領収書,請求書等及び預金通帳等の提示を求め,その了解を得て,借用できる伝票類を借り受け,借用できない書類をコピーして持ち帰った。 (4) 本件調査担当者は,借用した会計伝票類を検討した結果,集計された売上金額が申告金額を上回っていること及び昼食の売上げが全く記載されていないことが判明したので,平成12年5月26日午前中,原告に電話して昼食の売上げについて尋ねたところ,伝票に記載していないとの回答を得た。 そこで,本件調査担当者は,同日午後,再び原告の自宅を訪れ,同人と面談したところ,開業以来昼食の売上げは全く申告しておらず,夜の営業についても,正確な売上金額等を集計をすることなく,電卓でおおよその見当をつけて申告していたとの回答を得た。これを受けて,本件調査担当者は,昼食の売上げを把握するのに必要と考えられた米の使用状況について尋ねたところ,原告店舗において家族が食べるご飯は仕入れた米を使っており,その食事は1日に1人当たり1,2食であること,原告店舗の営業日は同店で食事を取っていること,原告以外の家族は女性のため食事の量は多くないこと,食事は必ずご飯というわけではなく,パン食の場合もあること,家族で消費する米の量は,1人1日当たり1合にもならず,全部で2合位であることなどの回答を得た。 さらに,本件調査担当者が,昼食1食当たりの米の使用量を尋ねたところ,「普通の量だ。普通の量でやってくれればいい。」との回答であり,炊いたご飯のロスはどれだけかを聞いても,普通であるとの回答しか得られず,捨てる量を聞いても,金を出して買っているものであるため捨てることは少ないという回答を得るにとどまった。そして,夜の客に出すご飯の量についても尋ねたところ,夜の営業ではご飯を食べる客はほと られず,捨てる量を聞いても,金を出して買っているものであるため捨てることは少ないという回答を得るにとどまった。そして,夜の客に出すご飯の量についても尋ねたところ,夜の営業ではご飯を食べる客はほとんどいないとの説明であった。 (5) 本件調査担当者が,平成12年5月29日から31日まで,酒の仕入先及び米の仕入先への反面調査を行ったところ,米の仕入量は,平成5年は940キログラム,平成8年は580キログラム,平成9年は700キログラム,平成10年は620キログラム,平成11年は600キログラムであるとの結果を得たが,平成6年と7年は判明しなかった。 (6) 本件調査担当者は,平成12年6月1日午後3時30分ころ,千種税務署に来署した原告に対し,現状では正しい所得を計算することは困難であり,推計計算せざるを得ないこと,したがって,①夜の営業による売上金額はビールの仕入本数から,②昼食の売上金額は米の仕入数量からそれぞれ推計し,③これらの売上合計金額に同業者の平均所得率を乗ずる方法により,調査対象期間7年分の税額を算出すると,当初申告との税額の差額は400万円ないし500万円になることを説明したところ,原告は,そんな金額になるのか,なんとか3年分にならないのかと述べたものの,修正申告をする必要性があることは理解し,翌日,具体的な話をすることを了解した。 (7) 本件調査担当者は,平成12年6月2日午後3時30分ころ,再び来署した原告に対し,夜の営業における売上げについてはビールの仕入数量から推計したこと,昼食の売上げについては米の仕入数量から一般的なロス率として5パーセントを見込み,自家消費分として営業日数に1日3合を見込んで差し引き,1食当たりの重量で除して算出した食数に平均単価780円を乗ずる計算する方法によったこと,所得金額は推計し なロス率として5パーセントを見込み,自家消費分として営業日数に1日3合を見込んで差し引き,1食当たりの重量で除して算出した食数に平均単価780円を乗ずる計算する方法によったこと,所得金額は推計した売上げに同業者の平均的な所得率を乗じて計算したことを説明し,あらかじめ金額等の数字を記入して作成しておいた所得税の修正申告書と消費税の期限後申告書を示したところ,原告は,年間売上金額が3000万円を超えることは絶対にないと述べて難色を示した。 そこで,本件調査担当者は,上司とも協議した結果,夜の営業における売上げについては,売上げも漏れているが仕入れも漏れているので,今回は昼食の売上漏れのみについて修正申告をしょうようすることとし,原告に対し,その旨提案するとともに,具体的な金額については後に示すことにして,同日午後5時30分ころ,説明を終えた。 (8) 本件調査担当者は,平成12年6月7日午後3時40分ころ,三度来署した原告と面談し,再び昼食の売上げについて米の仕入量に基づく推計の計算方法を説明し,夜の営業における売上げは加算しなかったため,年間売上金額は3000万円を超えず,消費税の申告も不要である旨述べたところ,原告は,メモを取りながら聞く一方で,調査がいい加減であるかのような発言をすることもあった。 そのうち,原告は,税額はどうなるかとの質問をしたため,本件調査担当者は,所得税の本税の増加分が約350万円,重加算税が約130万円,延滞税も同額位になる上,市県民税や国民健康保険料にも影響があることを説明した上,あらかじめ昼食の売上金額を加えた金額を記入しておいた修正申告書を提示した。原告は,対象期間が5年にならないかなどと述べて修正申告になかなか応じようとしなかったが,最終的に,お互い疲れたので終わりにしませんかとの提案に応じる意思を示し を記入しておいた修正申告書を提示した。原告は,対象期間が5年にならないかなどと述べて修正申告になかなか応じようとしなかったが,最終的に,お互い疲れたので終わりにしませんかとの提案に応じる意思を示した。そして,原告は,いったん自宅に戻って印鑑等を持ち帰り(その間15分から20分位),午後5時30分ころ,本件各修正申告書に署名押印をした。 (9) 原告は,前記当事者間に争いのない事実等(4)のとおり,本件係争年分の所得税本税合計346万5700円,延滞税合計87万6700円及び重加算税合計120万0500円を納付した。 (10) ところが,原告は,平成12年10月12日,本件係争年分の所得税について,減額更正の申出書を提出した。同書面には,原告は,県・市民税等の差額納付要請があったのをきっかけとして,改めて本件各修正申告の内容を検討したところ,営業1日当たり約19.9食(平成8年分)から約35.5食(平成5年分)の昼食の売上げがあった計算になるが,この数字は,営業時間,スタッフ数,容器の数,炊飯器の容量(2升1合炊きで21食が限度。残ったご飯は,ほとんど翌日には使用することなく廃棄する。),米の購入量(平成9年が720キログラム,平成10年が760キログラム。平成11年が680キログラム)などに照らすと,事実に反して過大であり,平均食数は15食であること,原告が,実際に昼食の売上状況を記録してみると,同年9月18日(月)は,米2升1合(3.15キログラム)を炊いて,ランチの客16名でご飯が残り,同月19日(火)は,米2升1合(3キロ150グラム)を炊いて,ランチの客15名でご飯が残り,同月20日(水)は,米1升5合(2.25キログラム)を炊いて,ランチの客10名でご飯は残らず,同月21日(木)は米,1升5合(2.25キログラム)を炊いて, を炊いて,ランチの客15名でご飯が残り,同月20日(水)は,米1升5合(2.25キログラム)を炊いて,ランチの客10名でご飯は残らず,同月21日(木)は米,1升5合(2.25キログラム)を炊いて,ランチの客7名,弁当2名,鉄火丼1名でご飯は残らず,同月22日(金)は,米2升1合(3.15キログラム)を炊いて,ランチの客17名,鉄火丼4名でご飯が残らない状況であったこと,以上のとおり記載されている。 (11) さらに,原告は,平成12年12月15日,千種税務署長あてに平成11年分所得税の更正の請求書を提出し,所得金額は147万4399円であり,控除額が154万2560円である結果,納付すべき所得税額は0円であるとして,納付済みの10万2600円の還付を求めた。 しかしながら,原告は,平成13年3月5日,上記更正の請求を担当した千種税務署の係官から,青色申告者に対して更正を行うためには,所得税法155条1項により,帳簿調査を実施する必要があるところ,原告は帳簿の作成をしていないので,青色申告の承認を取り消した後でなければ更正を行うことはできないし,その結果も原告にとって有利なものになりそうにない旨説明された結果,上記請求を取り下げた。 (12) 原告は,本件訴状においては,本件各修正申告が無効である理由として,割り箸の使用数量4500膳(仕入先からの年間納入数量5000膳から,客が落としたり,原告が調理に使用したり,不良品があった分として10パーセントを控除)に平均売上単価700円を乗じた315万円が昼の年間売上金額であると主張していたが,その後,割り箸の仕入数量が米の仕入数量の変動に連動していないことなどから,最終的に,被告主張のロス率5パーセントが過少であり,昼食の平均売上単価780円が過大であると主張するに至っている。 3 以 その後,割り箸の仕入数量が米の仕入数量の変動に連動していないことなどから,最終的に,被告主張のロス率5パーセントが過少であり,昼食の平均売上単価780円が過大であると主張するに至っている。 3 以上を前提に,まず,ご飯のロス率の相当性について検討する。 (1) この点について,原告は,飲食業界では,利用客数の変動が読めないのが通常であり,ご飯が不足しないように余分に炊くのが常識であり,原告の経験では30ないし50パーセント,少なくとも20パーセント以上がロスになる(廃棄される)にもかかわらず,本件各修正申告はロス率が5パーセントであることを前提としているが,これは実態を無視した数字である旨主張し,これに沿う証拠(甲15)も存在するところ,なるほど,一般論としては,飲食業を営む者は,注文に応えられない事態の発生を避けるため,余裕を持った量の食材を準備するのが通常であることは否定できない。 (2) しかしながら,前記認定事実のとおり,原告は,本件調査担当者の質問に対して,米は金を出して買っているものであるため,捨てることは少ないこと,営業日においては原告店舗用に購入した米を原告の家族(原告,妻及び娘)の食事用に充てていること,残ったご飯を翌日に使用することはほとんどないこと,原告の家族の食事は必ずご飯というわけではなく,パン食の場合もあることなどを回答していることが認められ,これらを総合すると,原告は,予測が外れて余ったご飯をまず自家消費分に充て,逆に余らなかった場合はパン食に切り換える方法で調整していると推認することができる(このような調整方法は,家族主体で営んでいる飲食店においては,極めて合理的かつ自然と考えられる。)。 そこで,これを前提に,1年間毎日予測を誤って,炊いたご飯の2割が客に提供されないで余った場合に,どの程度のロス率にな ,家族主体で営んでいる飲食店においては,極めて合理的かつ自然と考えられる。)。 そこで,これを前提に,1年間毎日予測を誤って,炊いたご飯の2割が客に提供されないで余った場合に,どの程度のロス率になるかを試算してみるに,まず,本件各修正申告の基礎となった米の仕入量の平均は688キログラムであるところ,上記の前提では客に提供された米の量はその8割に当たる550.4キログラムであり,余った量は137.6キログラムとなる。そこから,被告主張に係る自家消費分(1日当たり3合,420グラムに平均営業日数288日を乗じたもの)120.96キログラムを控除すると,廃棄に至る量は16.64キログラムとなるが,これは仕入量の約2.42パーセントにすぎない。この計算結果からは,ロス率5パーセントは,自家消費分による調整があるため,かなり大幅な予測違いがあって初めて生じ得る事態であることが判明する。 (3) これに加えて,前記認定事実のとおり,原告は,開業以来15年間,昼食の営業を継続してきたこと,来店する客は近隣のサラリーマンが多く,常連客の割合も大きいことに照らせば,原告がおおよその来客数を予測することは困難ではないと推測できるところ,現に,前記減額更正の申出書においても,5日間のうち3日はご飯が残らないように米を炊いたことが記載されていること,原告は,本件調査担当者から,ご飯のロス率を5パーセントであることを前提とする修正所得金額,更にこれを前提とする修正申告納税額の説明を受けたにもかかわらず,ロス率については特段の反論もなく,本件各修正申告に応じていること(この点について,原告は,本件各修正申告のしょうようを受けるに当たり,その数字の根拠の説明を受けなかったと主張し,甲15にはこれに沿う記載があるが,本件調査担当者が昼の売上金額を推計するにはロス この点について,原告は,本件各修正申告のしょうようを受けるに当たり,その数字の根拠の説明を受けなかったと主張し,甲15にはこれに沿う記載があるが,本件調査担当者が昼の売上金額を推計するにはロス率等について質問する必要があったこと等に照らすと,本件調査担当者が何らの根拠を示すことなくしょうようしたというのは極めて不自然であり,乙4ないし6に本件各修正申告に至る経緯が詳細に記載されていることに照らしても,採用できない。),ロス率5パーセントとする推計方法による販売食数は,年間平均5075食となり,原告が訴状で主張した4500食と比較して約12.8パーセントの差異にとどまっていること,1日当たりの販売食数も,平成5年が約25.5食,平成6年及び平成7年が約17.6食,平成8年が14.3食,平成9年が約18.3食,平成10年が約15.6食,平成11年が約14.5食となり,米の仕入量が群を抜いて多く,原告店舗が繁盛していたと推認される平成5年を除き,1回の炊飯で賄える食数21食以下に収まっていること,以上によれば,本件調査担当者がしょうようした本件各修正申告の基礎となったロス率5パーセントは,原告の営業実態に照らして相応の合理性を有していると認めることができる。 4 次に,平均売上単価の相当性について検討するに,前記認定事実のとおり,原告の昼食メニューには3種類があるところ,その容器数が最も多いものは680円のランチであること,減額更正の申出書には,5日間の販売食数を調査したところ,最も多く販売されたのはランチであったことが記載されていること,以上の事実が認められる。 しかしながら,他方,原告が昼の販売数量について伝票を保存せず,帳簿等を作成していないため,どの程度の割合でランチが注文されるか不明であること(原告は,平均売上単価が700円で 事実が認められる。 しかしながら,他方,原告が昼の販売数量について伝票を保存せず,帳簿等を作成していないため,どの程度の割合でランチが注文されるか不明であること(原告は,平均売上単価が700円である旨主張するが,これも推測にすぎない。),前記認定事実のとおり,原告は,本件調査担当者から昼食の平均売上単価を単純平均の780円とすることについて説明を受け,そのことについては特に反論することなく,780円を前提として計算した昼食の売上金額,及びこれに基づく修正申告所得額等を示されて,本件各修正申告に応じていること,以上によれば,本件調査担当者がしょうようした本件各修正申告の基礎となった平均売上単価780円も,相応の合理性を有していると認めることができる。 5 以上の判断によれば,そもそも原告が錯誤の内容として主張する本件各修正申告に係る所得税額(及びその前提となる所得金額)の不当性を認めることはできず,ましてや上記錯誤が客観的に明白かつ重大なものであって,その是正を許さなければ納税者の利益を著しく害する特段の事情が存するといえないことは明らかである。 6 よって,原告の請求は,その余について判断するまでもなく理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行訴法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり,判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部裁判長裁判官加藤幸雄裁判官舟橋恭子裁判官小嶋宏幸 裁判官小嶋宏幸

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