【DRY-RUN】主 文 本件控訴を棄却する。 理 由 本件控訴の趣意は被告人並びに弁護人宮沢邦夫提出の控訴趣意書に記載されたと おりであるから、いずれもここにこれを引用しこれ
主文本件控訴を棄却する。 理由本件控訴の趣意は被告人並びに弁護人宮沢邦夫提出の控訴趣意書に記載されたとおりであるから、いずれもここにこれを引用しこれに対し次のように判断する。 被告人の控訴趣意について、(一) 所論は先ず、原判示第一の事実について、右資本増加の登記は、その前にA、オート三輪車(十四万三千円)を会社の所有として登録し、会社の財産帳簿にも記載してあるので、これに応じて資本増加をしたものであつて、右のような場合には資本増加をするが当然であり何ら罪となるべきものではないと云うのであるが、原判決挙示の証拠によれば被告人は判示株式会社B(昭和二十三年十一月二十日設立、資本金六万円、一株の金額五十円、当初商号を株式会社Bと称し、本店を長野県松本市a町b番地に置いていたが、昭和二十四午六月二日商号を前記のとおり改め本店を同市c町d番地に移転したもの)の代表取締役であつたが、昭和二十四年秋頃、同会社取締役C、同D、監査役Eがその個人出資を以てオート三輪車を他より購入し便宜上会社名義で登録した上、会社の商品の運搬に使用し会社から使用料として月額七千円位の金員を受け取つていたので、昭和二十五年三月頃被告人は右オート三輪車を会社資産として計上するため資本金十四万円を増加することとし、増資株の割当は従前の株主にその持株数に応じて按分し、その払込は会社の預金から一時引出して払込を済ませたこととして、登記を済ませようと考え右三名の承認を得たのみで他の株主等には増資のことは話さず、正式に株主総会を開いて資本増加の決議をすることもなく、正式の株主の引受払込もなかつたのに、判示のように昭和二十五年三月三十一日頃F銀行G支店に対する前記会社の預金中から十四万円を引き出し、同日その金をH銀行I支店に右会社の 増加の決議をすることもなく、正式の株主の引受払込もなかつたのに、判示のように昭和二十五年三月三十一日頃F銀行G支店に対する前記会社の預金中から十四万円を引き出し、同日その金をH銀行I支店に右会社の増資による株式払込金として保管預をし同銀行より十四万円の株式払込金保管証明書の交付を受け、同日右保管証明書、内容虚偽の株主総会議事録、株式申込及引受書類等を添えて長野地方法務局松本支局に資本増加の登記申請をなし、同局職員をして会社登記簿原本に右寄書類に基き同会社において昭和二十五年三月十五日十四万円の資本増加をした旨の不実の登記を為さしめこれを同局に備え付けさせた上、右登記完了の翌日H銀行I支店より右保管金金額の払戻を受けこれをBJ名義の当座預金に振り替えたものであつて、その後においても前記増資株式に対する払込はなされていかいことを認めることができる。即ち被告人は前記十四万円の増資については株式の引受並びに払込かないのに、これがあつたもののように装つて、増資の登記の申請をし、前記のように同会社が昭和二十五年三月十五日十四万円の資本増加をした旨の不実の登記をなさしめたのであるから原審の認定は相当であつて、十四万円に相当するオート三輪車が会社資産として計上されたかどうか、又右増資払込金が実質上会社の銀行預金を以て賄われ会社としては当時増資額に相当する資産を保有していたかどうかは本件犯罪の成否に消長を及ぼすものではない。要するに原判決には所論のような違法はないから論旨は理由がない。 (二) 次に所論は判示第二の事実について、判示K株式会社の設立に当つては、発起人L外六名の株式の引受はあつたのであるが、払込期日に金が間に合わぬので、後から都合つき次第払込むとの誓約により、被告人が自己の責任で内五万円は現実に払込み残余の四十五万円はM信用金庫より借り 、発起人L外六名の株式の引受はあつたのであるが、払込期日に金が間に合わぬので、後から都合つき次第払込むとの誓約により、被告人が自己の責任で内五万円は現実に払込み残余の四十五万円はM信用金庫より借り入れてその払込を完了したものであるから罪とならないと主張する。しかし原判決挙示の証拠によれば被告人はこれより先き被告人個人名義で木材燃料商を営んでいたが税金等の関係から個人経営よりも会社組織にした方がよいと考え昭和二十七年五月頃資本金五十万円のK株式会社と云う会社を設立し、その名義で商売を経営しようと考え、当時被告人個人のN信用組合に対する預金の一部とその余はM信用金庫からの一時借入金で五十万円の払込があつたものとして登記を済すこととし、知合の者に自分が前記会社を設立したいから名義だけ株主になつて貰いたい株式の引受や払込は自分一人でするからと云つてその承諾を求めた上、真実株式の引受、払込もなく創立総会を開いたこともないのに、昭和二十七年五月十二日頃払込の一部があつたように仮装するため判示のようにN信用組合に宛て五万円の小切手を振出しこれを株式払込金の一部としてM信用金庫に保管預をし、次いで右株金払込を取扱う金融機関である前記M信用金庫と通謀の上、同月十三日同信用金庫より右会社設立登記完了迄四十五万円を借り受け、これを先の五万円と合せて五十万円の株金払込があつたように仮装し同信用金庫名義の五十万円の株式払込金保管証明書の交付を受けた上、同日長野地方法務局松本支局に対し判示第三記載のように会社設立登記申請書に、内容虚偽の前記株式払込金保管証明書、創立総会議事録、株式申込書等を添附し右会社が適法に成立したもののように仮装して同会社の設立登記申請をなし同局職員をして右各書類に基き会社登記簿原本に、資本金五十万円、発行する株式内容額面株式一千株、一株 議事録、株式申込書等を添附し右会社が適法に成立したもののように仮装して同会社の設立登記申請をなし同局職員をして右各書類に基き会社登記簿原本に、資本金五十万円、発行する株式内容額面株式一千株、一株の金額五百円、発行済株式額面株式一千株、本店松本市e町f番地、商号K株式会社なる会社が昭和二十五年五月十三日成立し同日その登記をした旨の不実の登記を為さしめこれを同局に備えつけさせた上、同月十五日頃前記金庫をして右保管金中より貸付金四十五万円を回収させ、残金五万円は被告人が現<要旨>金を以て払戻を受けその後においても現実に株式払込金の払込はなかつたことが認められる。このように発起</要旨>人が株金払込を取扱う銀行等と通謀の上、株金の全部又は一部の現実の払込がないのに拘わらず払込があつたように仮装する為当該金融機関より一時所要の金員を借り受けこれを同金融機関に預け入れて払込金の保管に関する証明書の発行をうけ、右証明書その他の書類により所期の設立登記等を完了した上は遅滞なく右保管金より先の借入金を返済することを約するが如き行為は当該借入金の授受が現実に行われたと否とを問わず商法第四百九十一条にいわゆる払込を仮装する為預合をなしたものに該当するものであるから原審が被告人の本件所為を判示のように認定し同条を以て問擬したのは相当である。 被告人は引受人の依頼により右払込金を一時立替えたものであつて罪とならないと主張するけれども、本件株式の引受並びに払込が仮装のものであつたことは前示認定のとおりであり且つ被告人が小切手により現実に払込んだと称するものも、その金額は五万円に過ぎず被告人の引受株数の払込金にも足らないものでありその余の分について全然現実の払込がなかつたことは記録上明白であるから被告人の主張は到底これを採用することができない。 (三) 次に所 は五万円に過ぎず被告人の引受株数の払込金にも足らないものでありその余の分について全然現実の払込がなかつたことは記録上明白であるから被告人の主張は到底これを採用することができない。 (三) 次に所論は原判人第三並びに第二の事実につき被告人に罪を犯す意思がなかつたことを主張する。しかし被告人の主張は要するに法の不知を主張するに帰し、且つ被告人がこれらの所為を許されたものと信ずるについて故意過失がなかつたものとは到底認めることができないから論旨は採用するを得ない。 (四) その他所論は本件は捜査権の濫用による不当の起訴である趣旨の主張をしているけれども本件記録に徴するもそのような事実はこれを認め難いばかりでなく、被告人の所為は原判示のようにそれぞれ犯罪を構成することは明らかであるから論旨はすべて排斥を免れたい。 (その他の判決理由は省略する。)(裁判長判事谷中董判事坂間孝司判事荒川省三)
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