主文 被告人を懲役20年に処する。 未決勾留日数中860日をその刑に算入する。 押収してある折りたたみ式ナイフ1本(平成14年押第80号の1)を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 平成12年5月27日午後2時ころ,兵庫県甲市a町所在のb小学校北側路上において,折から自転車で通行中のA子(当時12歳)を認めるや,強いて同女を姦淫しようと企て,同女に対し,「にわとり小屋があるけど,にわとりの餌は誰がやっているの。餌の置いてあるところ,知ってる。」「その場所まで連れて行って。」「ついてきて。」などと言葉巧みに声を掛け,同女を同校内に誘い込み,同校のにわとり小屋を経て,同校校舎南館1階廊下まで同行させた上,そのころ,同所において,同女に対し,やにわに所携のナイフをその頸部に突きつけ,「言うことを聞かなんだら刺すぞ。トイレに入れ。」などと厳しく告げて脅迫し,同女を同館1階の男子便所内に連れ込み,引き続き,同所において,同女に対し,上記ナイフを示し,「上の服を脱げ。」「ズボンも脱げ。」「泣いたら殺すぞ。」などと厳しく告げて脅迫し,その反抗を抑圧して,同女を全裸にした上,自己の陰茎を露出して同女になめさせ,同女の陰部に自己の陰茎を押し付けるなどして,13歳未満の女子を強いて姦淫しようとしたが,膣内に挿入するに至らなかったため,その目的を遂げず,その際,同女に3日間の安静を要する会陰部擦過傷の傷害を負わせ第2 同年7月9日午後零時40分ころ,同県乙市c町所在のd北側路上において,折から自転車で通行中のB子(当時11歳)を認めるや,強いて同女を姦淫しようと企て,同女に対し,「教頭先生に会う約束をしている。」「職員室へつ 後零時40分ころ,同県乙市c町所在のd北側路上において,折から自転車で通行中のB子(当時11歳)を認めるや,強いて同女を姦淫しようと企て,同女に対し,「教頭先生に会う約束をしている。」「職員室へついて来て。」などと言葉巧みに声を掛け,同女を同町所在のe小学校給食室内休憩室まで同行させた上,そのころ,同所において,同女に対し,やにわに所携のナイフを示し,「全部服を脱げ。」「5秒以内に脱がな殺すぞ。」「言うことを聞かんと殺す。」などと厳しく告げて脅迫し,その反抗を抑圧して,13歳未満の女子を強いて姦淫しようとしたが,膣内に挿入するに至らなかったため,その目的を遂げず,その際,同女に加療約3日間を要する外陰部裂傷の傷害を負わせ第3 同年9月10日午前9時ころ,同県丙市f町所在のg小学校前路上において,折から徒歩で通行中のC子(当時13歳)を認めるや,強いて同女を姦淫しようと企て,同女に対し,「すいません,ここの在校生ですか。」「給食室まで連れてって。」などと言葉巧みに声を掛け,同女を同校校舎北館南側廊下まで同行させた上,そのころ,同所において,同女に対し,やにわに所携のナイフをその腹部に突きつけ,「言うとおりにせんかったら殺すぞ。」などと告げて脅迫し,同女を同校給食棟休憩室に連れ込み,引き続き,同所において,同女に対し,上記ナイフを示し,「服を脱げ。」などと厳しく告げて脅迫し,その反抗を抑圧して,強いて同女を姦淫し第4 同月17日午後1時15分ころ,同県丁市h町近路上において,折から自転車で通行中のD子(当時11歳)を認めるや,強いて同女にわいせつな行為をしようと企て,同女の後ろ襟首及び同女が背負っていたリュックサックを掴んで,上記自転車もろとも同女を路上に引き倒し,そのまま同女を同市h町所在のi小学校校内まで引っ張っていった上,同校校 つな行為をしようと企て,同女の後ろ襟首及び同女が背負っていたリュックサックを掴んで,上記自転車もろとも同女を路上に引き倒し,そのまま同女を同市h町所在のi小学校校内まで引っ張っていった上,同校校舎内に同女を連れ込み,同校南校舎東側階段の3階から4階に通じる踊り場において,同女に対し,「服を脱げ。」「パンツもや。」などと告げて,同女を全裸にさせるとともに,同所付近階段において,やにわに所携のナイフをその顔面に突きつけ,「言うこと聞かな,殺すぞ。」などと厳しく告げて脅迫し,その反抗を抑圧して,上記階段の2階から3階に通じる踊り場において,同女の胸をもみ,その陰部に手指を押し込むなどしてもてあそび,もって,13歳未満の女子に対して強いてわいせつな行為をし,その際,同女に加療約3日間から4日間を要する会陰部裂傷の傷害を負わせ第5 同年10月8日午前8時ころ,滋賀県戊市j町先路上において,折から自転車で通行中のE子(当時10歳)を認めるや,強いて同女にわいせつな行為をしようと企て,同女に対し,「p小の子か。」「k小教えて。」「動物のとこ教えて。」などと言葉巧みに声を掛け,同女を同市j町所在のk小学校内まで同行させた上,そのころ,同校本館と体育館の間の渡り廊下付近で,同女に対し,その背後から同女の肩を掴むとともに,やにわに所携のナイフをその腹部に突きつけ,「泣いたら殺す。」などと厳しく告げて脅迫し,同女を同校校舎本館1階西側非常用出入口軒下に連れ込み,同所において,同女に対し,上記ナイフを示し,「服脱げ。」「全部脱げ。」などと厳しく告げて脅迫し,その反抗を抑圧して,同女を全裸にさせ,その胸や陰部をなで回し,自己の陰茎を同女になめさせ,その陰部に手指を押し込むなどしてもてあそび,もって,13歳未満の女子に対して強いてわいせつな行為をし第6 反抗を抑圧して,同女を全裸にさせ,その胸や陰部をなで回し,自己の陰茎を同女になめさせ,その陰部に手指を押し込むなどしてもてあそび,もって,13歳未満の女子に対して強いてわいせつな行為をし第6 同年10月29日午前9時30分ころ,香川県己市m所在のn小学校校庭において,F子(当時10歳)を認めるや,強いて同女にわいせつな行為をしようと企て,同女に対し,「うさぎの飼育当番,誰。」などと言葉巧みに声を掛け,同女を同校庭内のうさぎ小屋まで同行させた上,そのころ,いきなりその腕を掴んで校舎裏プール脇の通路に連れて行き,同所において,同女に対し,所携のナイフを示して,「しゃべるな,殺すぞ。」などと厳しく告げて脅迫し,その反抗を抑圧して,同女の着衣をめくりあげて,胸や腹などをまさぐるなどしてもてあそび,もって,13歳未満の女子に対して強いてわいせつな行為をし第7 同年11月5日午前9時26分ころから午前10時10分ころまでの間,兵庫県豊岡市内において,氏名不詳者が置き去りにしたI所有の自転車1台(時価3000円相当)を発見したが,正規の届け出をせず,これをほしいままに自己の用に供する目的で使用し,もって,横領し第8 正当な理由がないのに,同日午後零時5分ころ,同市o所在のq小学校校長Jが看守する同小学校の南側教室棟内に侵入し第9 業務その他正当な理由による場合でないのに,同日午後零時12分ころ,同市r町s番t号先路上において,刃体の長さ約8.3センチメートルの折りたたみ式ナイフ1本(平成14年押第80号の1)を携帯したものである。 (証拠の標目)省略(補足説明)第1 判示第1ないし第6の事実について 1 はじめに被告人は,判示第1ないし第6の強制わいせつ,同致傷,強姦,同致傷事件(以下,判示第1の事件を「甲事件」,第2の事件を「 省略(補足説明)第1 判示第1ないし第6の事実について 1 はじめに被告人は,判示第1ないし第6の強制わいせつ,同致傷,強姦,同致傷事件(以下,判示第1の事件を「甲事件」,第2の事件を「乙事件」,第3の事件を「丙事件」,第4の事件を「丁事件」,第5の事件を「戊事件」,第6の事件を「己事件」という。なお,判示第7ないし第9の事件を総括して「豊岡事件」という。)について,各被害者が判示の性的犯行による被害を受けたこと自体はほとんど争わないものの,その犯人性を争い,自らの身に覚えのないことであると主張する。そこで,以下,検討する(なお,引用の証拠について,捜査段階の供述は「○○の捜査供述」,証人の供述は,公判期日と期日外尋問を区別せず「証人○○の供述」又は「○○証言」などと略す。証拠書類は,証拠等関係カード中の請求番号を付して,検察官請求の場合は「検○○号証」又は「検○○」,弁護人請求の場合は「弁○○号証」又は「弁○○」で特定することもある。)。 2 一連の事件発生と捜査経過関係各証拠によれば,以下の事実を認めることができる。 (1) 兵庫県下の連続わいせつ事件の発生兵庫県下では,平成11年後半ころから,休日の小学校内を現場とする女子児童らに対するわいせつないし強姦の事件が相次いでいたところ,平成12年5月27日午後2時ころ,b小学校内において甲事件が,同年7月9日午後零時40分ころ,e小学校内において乙事件が,同年9月10日午前9時ころ,g小学校内において丙事件が,同月17日午後1時15分ころ,i小学校内において丁事件が,それぞれ判示のような態様で発生した。 各事件の被害者は,それぞれ犯人の顔を目撃しており,丁事件では,i小学校の児童2名が,自分たちに声を掛けてくるなどした不審な男を目撃していた。ま 件が,それぞれ判示のような態様で発生した。 各事件の被害者は,それぞれ犯人の顔を目撃しており,丁事件では,i小学校の児童2名が,自分たちに声を掛けてくるなどした不審な男を目撃していた。また,それぞれの現場から犯人の靴による可能性がある足痕跡(以下「現場足跡」という。)が採取された。 (2) 兵庫県警察本部捜査一課(以下「捜査一課」という。)の捜査と容疑者の特定捜査一課は,丁事件発生の数日後,それまで所轄が各々捜査していた上記事件を含む一連のわいせつ等事件の統括的な捜査に着手し,同課員のK捜査員が捜査主任となった。K捜査員が捜査に従事した時点で把握していた17件ほどの事件につきその手口内容を見ると,発生場所が小学校の施設,敷地内であること,ナイフを示して「言うことを聞かなければ殺す。」などと脅していること,わいせつな行為の態様がよく似ていることなどの共通点があったので,これらを踏まえ,過去の犯歴の資料を検討した結果,被告人が容疑者として浮上してきた。さらに,被告人が,平成11年7月ころに一人暮らしを始め,その数か月後くらいから一連の事件が始まっていることも判明した。 捜査一課は,丁事件と丙事件の被害者に対して,平成3年5月8日に撮影された被告人の前刑時の顔写真(以下「前刑写真」という。また,以下において単に「写真」というときは「顔写真」のことをいう。)に他の者のそれを含めた全10枚ぐらいの写真を示したが,両名とも,犯人らしい男を指示することができなかった(以下,このような捜査方法を「写真面割」という。)。そこで,できるだけ最近の被告人の写真を手に入れるべく,被告人が通っていた自動車教習所の教習原簿から白黒写真を接写して撮影し,平成12年10月6日,これと他の者の9枚の白黒写真を貼付した写真面割台帳( で,できるだけ最近の被告人の写真を手に入れるべく,被告人が通っていた自動車教習所の教習原簿から白黒写真を接写して撮影し,平成12年10月6日,これと他の者の9枚の白黒写真を貼付した写真面割台帳(検220号証)を作成して,これを両事件の被害者に示したところ,両名ともに被告人の写真を指示した。 捜査一課は,この写真面割と並行して,同年9月後半ころから,被告人の生活パターンなどを把握するために,被告人の行動観察も始めた。 (3) 戊事件の発生と戊署の捜査平成12年10月8日午前7時50分ころ,k小学校内において,戊事件が発生した。被害者は,犯人の顔を目撃し,また,現場から犯人の靴による可能性がある現場足跡が採取された。 戊署は,戊事件発生の当日から捜査に着手した。同署刑事第1課のL捜査員は,手口分析をした上,滋賀県警本部の手口係に照会したところ,同月15日,同種手口で以前に検挙したことがある被告人が容疑者として浮上し,前刑写真も入手した。しかし,被害者側の事情で協力が得られず,被害者に対して直ちに写真面割を実施することができなかった。なお,戊署では,同月末か同年11月始めころに捜査一課から連絡を受けるまで,兵庫県の捜査一課が被告人を連続わいせつ事件の容疑者としてマークしていたことは知らなかった。 (4) 己事件の発生と己北署の捜査平成12年10月29日午前9時30分ころ,n小学校内において,己事件が発生した。被害者が犯人の顔を目撃したばかりでなく,その当日,事件発生前に,同小学校の父兄2名が同校敷地内にいた不審な男を,同校児童3名が自分たちに声を掛けてきた不審な男をそれぞれ目撃していた。また,犯人の靴による可能性がある現場足跡も採取された。 己北署は,事件発生の当日から捜査一課とは別に いた不審な男を,同校児童3名が自分たちに声を掛けてきた不審な男をそれぞれ目撃していた。また,犯人の靴による可能性がある現場足跡も採取された。 己北署は,事件発生の当日から捜査一課とは別に独自で捜査を開始し,同月31日,容疑者の一人として被告人を割り出した。そして,同日,被害者に対し,前刑写真と他の者9枚の写真を貼付した写真面割台帳を使って写真面割を実施したところ,被害者は被告人の写真ともう一人別の男のそれを指示した。 さらに,同日ころ,己北署は,己事件の目撃者父兄の一人Mに対して,同様に10枚以上の写真面割台帳を使って写真面割を行ったところ,同人は被告人の写真を指示した。 (5) 被告人の逮捕(以下「本件逮捕」という。)平成12年11月5日,捜査一課のK捜査員らが被告人の行動観察のため丁市内から追尾して豊岡市内まで来ていたところ,被告人は,q小学校校舎内の女子便所内にいるところを同校教師に不審者として発見され,その場から逃走したものの,まもなく同人及び捜査一課の課員らによって取り押さえられ,現行犯逮捕された。 その日の豊岡署での捜査一課員による取調べの際,被告人は,q小学校に侵入した理由は小学生の女の子の体に無理矢理いたずらをするためであること,捕まるまでにナイフを女の子に示して脅して無理矢理裸にさせて身体にいたずらをしたことが20件位あることなどを供述したほか,取調べに立ち会ったK捜査員らに対して,「病気ですわ。捕まるまで止まりません。捕まってほっとしたところもある。女の子のうらみを感じていた。最後まで鬼になってかっちりやらな逃げられる。おばさんやいとこに身柄引き受けはいらんと言ってくれ。前はカッターナイフを使っていたが,ばれるので,折りたたみ式ナイフに変えた。なんでわしやとばれたのやろう。 で鬼になってかっちりやらな逃げられる。おばさんやいとこに身柄引き受けはいらんと言ってくれ。前はカッターナイフを使っていたが,ばれるので,折りたたみ式ナイフに変えた。なんでわしやとばれたのやろう。現場で名前を呼ばれてふらふらになりましたわ。こういう事件は,刑務所に入るといじめられる。」など相当な不利益陳述をした。 (6) 被告人逮捕後の捜査と起訴の経過被告人逮捕後は,まず,豊岡事件の捜査が行われ,同事件は平成12年11月24日に起訴された。 その後,豊岡事件逮捕後の被告人を含む10人のカラーの被疑者写真(各人とも正面とやや横向きの2枚組)を綴った写真面割台帳(検221号証,B5版)等を用いて,同年11月下旬ころから翌年3月ころにかけて,各事件の被害者,目撃者等に対し,順次写真面割を実施し,さらに,同年12月ころから翌年3月にかけて,被害者,目撃者に対して,被告人を含めた5人の男性を並列させておきその中から犯人らしき者を選ばせる捜査方法(以下「実面割」という。)も順次実施された。 これと並行し,各事件の犯行現場から採取された犯人の靴による可能性がある現場足跡を資料として,己事件,甲事件及び戊事件については,被告人の勤務先等から押収した被告人の靴との異同鑑定を,また,丁事件,丙事件及び乙事件については,現場足跡相互の異同鑑定が行われた。 以上のような捜査結果を踏まえ,平成12年12月27日に己事件が起訴され,その後,順次,平成13年1月31日に甲事件が,同年3月19日に丁事件が,同年4月27日に戊事件が,同年5月29日に丙事件が,そして,同年6月25日に乙事件が起訴された。 被告人は,捜査の間,逮捕直後に前記のような自白ないし不利益陳述をした後は,一転して否認態度に転じ,特に,豊岡 件が,同年5月29日に丙事件が,そして,同年6月25日に乙事件が起訴された。 被告人は,捜査の間,逮捕直後に前記のような自白ないし不利益陳述をした後は,一転して否認態度に転じ,特に,豊岡事件以外の6事件については,自分は犯人ではないと強く否認し続け,その態度を公判段階においても一貫した。 3 本件の証拠構造及び証拠評価の留意点について(1) 本件各事件において,被告人の犯人性に関する重要な証拠として,各被害者の犯人識別供述,犯行時刻ころに犯行現場付近で不審者を見掛けたとする目撃者の識別供述,各犯行現場から採取した現場足跡による足跡鑑定などがある。さらには,少なからぬ重要性を持つ証拠として,被告人の特異な性的犯罪傾向,前科ないし本件他事件との犯罪手口の共通性,本件事件相互における犯人の服装の類似性等,そして,前記の逮捕直後の自白ないし不利益陳述もある。 (2) このうち識別供述については,人の容貌,風体等が,多かれ少なかれ相似性を有していることに加え,記憶した人物の容貌,風体等と,示された写真あるいは実際の人物の容貌,風体等とを比較対照し,その同一性を判断するという困難な作用を本質としており,かつ,観察自体にはストーリー性が薄いため,記憶に残りにくく,僅かな暗示,誘導によって当初の記憶に変容を来しやすいことや,ひとたび識別供述をすると,目撃者自身も意識しないままこれに固執する傾向があることなどの問題点が指摘されている。したがって,識別供述の信用性を判断するに当たっては,目撃当時の観察条件からする観察の正確性を吟味するほか,その記憶・選別の正確性などを吟味する必要がある。そして,後者を吟味するに当たっては,上記のような記憶の変容等を来すおそれの少ない初期段階における面割結果及びその方法の検討が重要となる。また,本件におい ・選別の正確性などを吟味する必要がある。そして,後者を吟味するに当たっては,上記のような記憶の変容等を来すおそれの少ない初期段階における面割結果及びその方法の検討が重要となる。また,本件においてはいずれも写真面割の後に実面割が為されているところ,このような実面割には写真による無意識的暗示の影響がないとはいえないが,写真では補えない生の人相風体,身体全体の印象等を感じることができるという実面割の特質からして,写真面割とは別の高い証拠価値を認めて良い場合もあろう。さらに,本件の大半がそうであるように,識別供述者が年少者である場合には,年少者が,成人に比して,暗示や誘導に乗りやすいといわれている一方で,表現力が不足しているために,たとえ十分に知覚していたとしても,その表現等がつたなく見えてしまうといった別の問題点も留意する必要がある。 なお,ここで被告人の顔貌について触れると,その顎はやや角張り頬にやや弛みがあり,左目尻の横と下付近にほくろ様のものがあって,眉毛も濃い等の点に特徴が感じられる。普段は眼鏡を掛けておらず,面割に用いられた写真や実面割の際も眼鏡は掛けていない。 (3) 現場足跡については,その採取場所などから,犯人のものである可能性の程度が検討されなければならない。また,対照靴との異同等の鑑定においては,鑑定人の特別な学識経験に基づく判断結果は,それなりに根拠のあるものであろうが,この種鑑定の性質上,資料の写真を対照吟味するなどして客観的にも納得のいく結論かどうかを検証する必要があるのはいうまでもない。 (4) 以上の諸点に留意しつつ,各事件について,それぞれの証拠価値に評価を加えた上,これらを総合して,被告人に犯人性が肯定し得るか否かを判断することにする。 4 己事件(判示第6)について(1) 被害者の 諸点に留意しつつ,各事件について,それぞれの証拠価値に評価を加えた上,これらを総合して,被告人に犯人性が肯定し得るか否かを判断することにする。 4 己事件(判示第6)について(1) 被害者の被害及び犯人識別供述ア関係各証拠,特に,被害者の捜査供述及び証言並びに捜査担当者であるK捜査員,N捜査員及びO捜査員の各証言によれば,被害者の目撃状況,犯人識別過程等について,以下の事実を認めることができる。 (ア) 被害及び目撃状況被害者は,10歳のn小学校に通う小学4年生であったが,平成12年10月29日(日曜日)午前9時25分過ぎころ,バレーボールの練習に参加するために小学校へ行くと,見知らぬ男に,「うさぎ小屋の飼育当番,誰。」と声を掛けられた。その男は,風鈴か鐘の形のような帽子を被り,リュックサックを背負い,手袋をしていた。被害者は,男とともにうさぎ小屋の方へ行った後,体育館に行こうとしたところ,男から急に右腕をすごい力で握られ,無理矢理プール横の狭い通路へ引っ張って行かれた。被害者は,折りたたみ式のナイフを突き出されて「喋ると殺すぞ」と脅された上,アイマスクを被され,手袋をはめたままの手でわいせつ行為をされた。被害者は,連行される間,さらには犯行場所でアイマスクをされる前後に至近距離から被告人の顔を見ており,特に顔の下半分の印象が残っている。 (イ) 写真面割及び実面割等の経過被害者は,前記のとおり,被害から二日後の同月31日に己北署で被告人の前刑写真を用いての写真面割を受けた際,8番か9番(被告人の写真)を犯人に似ている人物として指示した。その後,捜査一課が同年11月28日に実施した検221号証を使っての写真面割の際には,被害者は,犯人に似ている写真として被告 受けた際,8番か9番(被告人の写真)を犯人に似ている人物として指示した。その後,捜査一課が同年11月28日に実施した検221号証を使っての写真面割の際には,被害者は,犯人に似ている写真として被告人のそれを指示した。 同年12月16日には,被害者に対し己北署で実面割が行われた。被告人と同世代の50代,似た体格である男性警察官4名を抽出し,被告人とその4人の合計5人を部屋の中に並列させ,被害者がその部屋の外の廊下から透視鏡で部屋の中を覗いて選別する方法であった(以下,各事件とも実面割は同じ方法である。 何人かが同じ日に実面割をする際には,各自が個別に覗いて識別した。)。被害者は「犯人によく似ている」として被告人を指示した。 同月22日に検察官による検221号証を使った写真面割の際には,被害者は,被告人の写真を犯人と似ていると指示したものの,他の一人の男の写真(4番)も似ているような気もするなどと述べた。 さらに,被害者は,平成14年4月4日,当裁判所による期日外の証人尋問の際も,モニターを通じて被告人の顔を見て,「この人だと思う。」旨答え,検221号証の写真面割台帳を示されて「4か6(被告人の写真)だと思う。どちらかというと6」と答えている。 上記一連の識別供述の過程において,被害者が,捜査官や他の関係者(他の目撃者を含む)から,特段の暗示や誘導を受けた形跡は窺えない(ただし,実面割の際,被告人を含めた5名全員が紺色の上着を着ていたが,その下は,他の4名が白いシャツであるのに被告人だけが縞模様の入ったシャツを,また,他の者が黒い靴であるのに被告人だけ白い運動靴を履いていた。もっとも,服装の違いからいえば,被告人を含め4人は黒いズボンをはいていたが,一人だけ茶系統のズ に被告人だけが縞模様の入ったシャツを,また,他の者が黒い靴であるのに被告人だけ白い運動靴を履いていた。もっとも,服装の違いからいえば,被告人を含め4人は黒いズボンをはいていたが,一人だけ茶系統のズボンをはいていた。)。 イ評価犯人は帽子をかぶっていたため,その顔の全体が見えなかった点はあったものの,少なくとも顔の下半分は十分に見えたはずであり,その他の観察条件は良好であったというのが相当である。 その一連の識別供述は,特に,被害から二日ほどしか経っていない記憶が鮮明であり,しかも被告人が逮捕される前の時期に(被告人逮捕の警察発表が新聞に載る前であって,被告人が言うように面割を受ける者らがその報道によって偏見が植え付けられ悪影響があったなどといえない時期である。),10枚の違った人物写真の中から,選択的ではあるが,選別し得ており,実面割でも指示できていることが重視されるべきである。そして,被告人の顔は前記のとおり顔の下半分に相当な特徴があること,他から意識的な暗示や誘導のあった形跡も窺えないことなどをも考え合わせると,目撃した男が初対面の者であったこと,当初の写真面割で複数の写真を選択しており,記憶の曖昧さが窺えること,実面割の際に,服装の点で被告人だけが浮き上がりかねない危険性があったこと,この他,面割を重ねることによって記憶が固定化されてしまうなどの面割における一般的な問題点を差し引いても,その識別供述にはそれなりの信頼がおけるものというべきである。 (2) 目撃者P子の識別供述ア関係各証拠,特に,P子の捜査供述及び証言並びに捜査担当者であるO捜査員の証言によれば,P子の目撃状況,識別過程等について,以下の事実を認めることができる。 (ア) 目撃状況等P子は,11 の捜査供述及び証言並びに捜査担当者であるO捜査員の証言によれば,P子の目撃状況,識別過程等について,以下の事実を認めることができる。 (ア) 目撃状況等P子は,11歳のn小学校に通う小学6年生であったが,本件当日の被害発生の直前ころ,自転車を同小学校給食場の前に止めて体育館に行こうとしたとき,回りにひさしのある帽子を被り,リュックサックを背負い,手袋をしていた見知らぬ男が左後方から「飼育係の子」と声を掛けてきた。被害者は,5メートルぐらいの距離でしばらく男と話していたが,何かいたずらをされないかと恐かったこともあって,その間,男の顔や動きをじっと見ていた。P子の視力は両方とも1. 2と良好であった。その後,男が「ちょっと来て」と言いながら近寄ってきたので,無視して体育館の方へ走って逃げた。 (イ) 写真面割及び実面割等の経過己北署は,P子に対して,平成12年11月30日,本件逮捕時の被告人の写真と他7枚の写真を貼付した写真面割台帳により写真面割を行ったところ,P子は不審者に似ている写真として被告人のそれを指示した(なお,P子は,「己事件後2週間くらいに,最初に写真を見ており,それは写真面割台帳の状態であった。このときには,犯人を指し示すことができた。その時は調書を作った」旨供述しているところ,同女の供述及び本件証拠関係に照らすと,弁護人の主張にもかかわらず,これは上記の写真面割のことを指しているものと推認するのが相当である。)。 同年の12月16日,P子並びに後記目撃者のQ子らに対し,己北署で,被害者に対して実施したのとほぼ同様の方法で実面割が行われた際,P子は被告人を指示した。 P子は,平成14年4月4日,当裁判所による期日外の証人尋問の際 者のQ子らに対し,己北署で,被害者に対して実施したのとほぼ同様の方法で実面割が行われた際,P子は被告人を指示した。 P子は,平成14年4月4日,当裁判所による期日外の証人尋問の際も,モニターを通じて被告人の顔を見て「このおじさんです。」と答え,検221号証の写真面割台帳を示されて,被告人の写真を指示している。 上記一連の識別供述の過程において,P子が,捜査官や他の関係者(他の被害者,目撃者を含む)から,特段の暗示や誘導を受けた形跡は窺えない(ただし,実面割の際の被告人の服装に特徴があったことは前記のとおりである。)。 イ評価不審者は帽子を被っていて顔の全体が見えなかった点はあったものの,P子のその他の観察条件はかなり良好であったというのが相当である。 その一連の識別供述は,特に,目撃した日からまだ1か月程度の比較的記憶に新しい時期に最初の写真面割が行われ,10枚の違った写真から選別し得ていることや他から特に暗示や誘導のあった形跡も窺えないことなどからすると,目撃した男が初対面の者であったこと,実面割の際に,服装の点で被告人だけが浮き上がりかねない危険性があったこと,この他,面割における一般的な問題点を考慮に入れても,その識別供述には信頼がおけるものというべきである。 (3) 目撃者Q子の識別供述ア関係各証拠,特に,Q子の捜査供述及び証言並びに捜査担当者であるO捜査員の証言によれば,Q子の目撃状況,識別過程等について,以下の事実を認めることができる。 (ア) 目撃状況等Q子は,10歳のn小学校に通う小学4年生であったが,本件発生の当日,同校でバレーボールの練習があったので,友達と一緒に午前9時20分ころ学校に行った。自転車をと ア) 目撃状況等Q子は,10歳のn小学校に通う小学4年生であったが,本件発生の当日,同校でバレーボールの練習があったので,友達と一緒に午前9時20分ころ学校に行った。自転車をとめて二人で話していると,東門から変な男が自転車に乗って学校内に入ってきて,近寄ってきた。その男は,60歳位に見え,丸いひさしがある帽子を被り,左目の下にほくろがあり,リュックを背負って手袋をしていた。 二人で足洗い場の方に移動すると,男は「ちょっと待って」と声を掛けてきた上,後をついてきて「動物係ですか」などとしつこく聞いてきた。Q子は,あまりにしつこいのでおかしいと思い,しばらく3メートル以内の距離で男の顔をじっと見ていた。Q子は,男がいやだったのでそのまま友達と一緒に体育館へ向かって歩いていった。Q子の視力は良好である。 (イ) 写真面割,実面割等の経過Q子は,己事件からまもない時期に,家の近くに止めた車の中で警察官から10枚くらいの複数枚のバラバラの写真を見せられた。このときQ子は,不審者に似ている写真として被告人のものを含めた2枚の写真を選んだ。その後,Q子は,同年11月30日に複数枚の写真が貼付された写真面割台帳を使って写真面割を受け,被告人の写真を指示した。 同年12月16日,前記のとおり,己北署で実面割が行われた際も,Q子は被告人を指示した。 なお,Q子は,平成14年4月4日,当裁判所による期日外の証人尋問の際も,モニターを通じて被告人の顔を見て,声を掛けてきた男である旨述べ,検221号証の写真面割台帳を示されて,被告人の写真を指示している。 上記一連の識別供述の過程において,Q子が,捜査官や他の関係者(他の被害者,目撃者を含む)から,特段の暗示や誘 ,検221号証の写真面割台帳を示されて,被告人の写真を指示している。 上記一連の識別供述の過程において,Q子が,捜査官や他の関係者(他の被害者,目撃者を含む)から,特段の暗示や誘導を受けた形跡は窺えない(ただし,実面割の際の被告人の服装に特徴があったことは前記のとおりである。)。 イ評価不審者は帽子を被っていて顔の全体が見えなかった点はあったものの,Q子のその他の観察条件はかなり良好であったというのが相当である。 その一連の識別供述は,特に,目撃した日から1か月を経過していない早い時期に最初の写真面割が行われており,選択的ではあっても指示できており,他から特に暗示や誘導のあった形跡も窺えないことなどからすると,目撃した男が初対面の者であったこと,実面割の際に,服装の点で被告人だけが浮き上がりかねない危険性があったこと,この他,面割における一般的な問題点を考慮に入れても,その識別供述には信頼がおけるものというべきである。 (4) 目撃者Mの識別供述ア Mの捜査供述及び証言等によれば,同人の目撃状況,識別過程等について,以下の事実を認めることができる。 (ア) 目撃状況等Mは,21年間ほど地元に住んでおり,子供がn小学校に通う38歳の男性であったが,己事件当日の午前7時過ぎころ,同小学校近くの自動販売機でジュースを買って,30メートルから40メートルくらい離れた同小学校の門の方に歩いていたとき,Mとともに野球に行くために同小学校に集合していた知人が,見知らぬ男と門を挟んで話をしているのを見掛けた。その男は,前につばのある帽子を被っており,手袋をしていた。Mは,以前,野球の練習をしている間に父兄の車が車上荒らしにあったので,泥棒には敏感になっていたとこ 男と門を挟んで話をしているのを見掛けた。その男は,前につばのある帽子を被っており,手袋をしていた。Mは,以前,野球の練習をしている間に父兄の車が車上荒らしにあったので,泥棒には敏感になっていたところ,男が野球チームの関係者でないのはもちろん,近所でも見たことのない者であり,寒くもない時期に手袋をはめていたので,泥棒かもしれないと思った上,学校敷地内に入って門を閉めていたことも不審に思い,男の顔を正面及び横から合計で1分間から2分間,最も近いときで2メートルくらいの距離からしっかり見ていた。Mの視力は両目とも1.5と良好であった。また,目撃時の周囲の明るさは,特に薄暗いという感じはなかった。 (イ) 写真面割等の経過Mは,事件から二日ほど後である同年10月31日ころ,警察官から10枚以上の写真面割台帳を見せられた。このときには,二人を候補に挙げ,それから被告人に絞り込んだ。写真を見るときは,もう一人の知人は別室におり,一人で面割を受け,警察官らからのアドバイスも受けていない。写真面割をする前は,指示できるかどうか不安に思っていたが,意外に指示できるものであると自ら驚いた。なお,Mは,平成14年4月4日,当裁判所による期日外証人尋問の際も,被告人の顔を直接見て「不審者と同一である。」旨答えた。 イ評価不審者が帽子を被っていて,顔の全体が見えにくかった点はあるが,その他の観察条件は相当に良好である。 Mの識別供述は,特に,被害から2日ほどしか経っていない記憶の鮮明な時期,しかも,被告人が逮捕に至っていない段階で,10枚の違った人物の写真が示された中で前記のとおり相当な自信をもって選別し得ていることが重視されるべきであり,弁護人の主張にもかかわらず,高い信頼がおけるものといえる。 逮捕に至っていない段階で,10枚の違った人物の写真が示された中で前記のとおり相当な自信をもって選別し得ていることが重視されるべきであり,弁護人の主張にもかかわらず,高い信頼がおけるものといえる。 (5) 被害者及び目撃者の識別供述全体の評価以上の己事件の被害者及び目撃者の各識別供述は,それぞれが異なった場面で目撃した人物に関するものであるが,4人に共通して,その場所的,時間的接着性があり,被害者,P子,Q子の3名に関しては,帽子を被り,リュックを背負い,手袋をしている男の服装や,話しかけた言葉が飼育する動物に関することなどが共通しており,Mに関しては,手袋をしていて不審を抱かせる行動をしていた点で他の被害者,目撃者らと共通性がある(帽子の点では,Mの見た男が野球帽であることが異なっているが,他の3人とは目撃の時間がずれていることからして,その男が帽子を変えたことなども考えられる。)。何よりも,それぞれが別途個別に写真面割等をしながら,いずれも犯人あるいは不審な人物に似た男として被告人の写真等を指示しているのである。これらからすると,それぞれが見た犯人ないし不審者は同一人物であると推認するのが合理的である。そして,4人が揃って同一人物を指摘していること(選択的部分も含める。)は,各自の識別供述の信用性を相互に補強し高めあっているものと認められる。以上に加え,Q子が不審者の左目下にほくろを見たという点が,被告人の顔と合致していることをも加えると,弁護人らの主張にもかかわらず,これらの識別供述の全体は,犯人が被告人と相当によく似た人物であると認定するに十分なものというべきである。 (6) 現場足跡について証人Rの供述,被害者の供述,現場足こん跡採取報告書(検205),実況見分調書(検45)その他関係各証拠によれば であると認定するに十分なものというべきである。 (6) 現場足跡について証人Rの供述,被害者の供述,現場足こん跡採取報告書(検205),実況見分調書(検45)その他関係各証拠によれば,己事件においては,被害者の指示結果と確認に基づき,事件発生の翌日,現場の小学校で現場痕跡の採取が実施されているところ,被害者が連行されたうさぎ小屋付近から被害を受けたプール横にかけて,雨上がりの軟弱な土部分に同模様の靴跡が往復の形で多数残されており,それと同模様の靴跡が校内の別の校舎付近からも多数発見され,その場所から鮮明な現場足跡1個を採取したことが認められる。これら事実関係等に照らせば,その現場足跡が犯人のものであると推認するに十分である。 鑑定書(検81)及び証人Sの供述によれば,その現場足跡と被告人の勤務先から押収した運動靴(製品名「DIADORA」,以下「ディアドラ」という。)の靴底を比較すると,靴底のつま先部,踏付部,かかと部円模様,弧模様の間隔の計測値がほぼ符合し,印象部の履物底の大きさ,模様の形態にほとんど相違がないので,ほぼ同じ大きさでその靴底の模様も同種同形であり,かつ,その現場足跡が被告人のディアドラの靴によって印象されたとしても,特に矛盾しないことが認められる(現場足跡の実大写真と対照靴のカラーホイルとを比較対照すれば,上記の点は容易に認めることができるが,これらの大きさが完全には一致していない。その理由が,鑑定書のいうようにずれているために一致しないのか,それとも,大きさの違う靴によって印象されたため一致しないのかまでは今ひとつ判然としない。鑑定にあたった証人Sは,印象されている模様の一つ一つが幅を持ち,つま先部に向かって印象が深くなっているため,ずれているものと判断した旨供述するところ,確かに,つま先部 までは今ひとつ判然としない。鑑定にあたった証人Sは,印象されている模様の一つ一つが幅を持ち,つま先部に向かって印象が深くなっているため,ずれているものと判断した旨供述するところ,確かに,つま先部に向かって印象が深くなっていることは窺え,また,足跡が印象されていた雨上がりの土という現場の状況からして,足跡がずれる可能性のあることは容易に想像がつくところではあるが,これだけで現場足跡がずれているものと断定して良いかについてはいまだ疑問が残るといわざるを得ないので,上記の認定に止めた。)。 (7) 捜査一課捜査員による事件前日及び当日の行動確認捜査一課のK捜査員,同T捜査員及び同U捜査員の証言によれば,①当時,被告人の行動観察をしていたK捜査員及びT捜査員は,被告人が,己事件発生前日の平成12年10月28日の昼ごろに,勤務先を出て,丁駅に向かい,新幹線に乗って岡山駅で下車したのを確認したが,その後,被告人を見失ったこと,②K捜査員及びT捜査員は,その後丁駅に戻ったが,被告人の自転車は未だ丁駅の駐輪場に止めたままであり,さらに,両名又はK捜査員が午後7時半ころ及び午後9時半ころに被告人方アパートを確認に行った際,いずれも部屋の電気がついておらず,アパートの駐輪場に被告人の自転車がなかったこと,③K捜査員は,翌29日午前5時40分から45分ころ,丁駅の駐輪場において,被告人の自転車が止めたままであることを確認したこと,④K捜査員らは,同日午前8時ころから丁駅で張り込みを開始したところ,U捜査員が午後3時すぎころに東京方面行きの新幹線から降りてきた被告人を確認したことなどが認められる。 これに対し,被告人は,勤務先の平成12年10月28日のタイムカードが午後5時4分に打刻されており(弁10号証の4),被告人はその時刻まで勤 りてきた被告人を確認したことなどが認められる。 これに対し,被告人は,勤務先の平成12年10月28日のタイムカードが午後5時4分に打刻されており(弁10号証の4),被告人はその時刻まで勤務先にいたので,これと矛盾する上記K捜査員らの証言は虚偽のものであると主張する。しかしながら,K捜査員らのこの点に関する証言は,それぞれが迫真性に富んだ具体的なもので,特に,丁駅で被告人を追尾してきたK捜査員とT捜査員が新幹線に乗り込んだものの,車内で被告人を見失い,列車内を端まで捜し歩いたが,見付けることができず,両人が車両の出入口付近で落ち合い,そのことを話し合っていると,その後ろを被告人が通り抜けていった場面(T捜査員証言)とか,岡山駅のホームで被告人が突如職員専用通路に入って行き,その予想もしていなかった行動のために追跡ができずに見失う原因になった場面などには,到底作り事とは思えない迫真性がある。また,互いに符合しており,基本的には不合理な点も見当たらないことに加え,K捜査員とT捜査員が平成12年10月28日に丁駅と岡山市の間を旅行したとして旅費精算をした事実が,警察署の旅行命令簿に記載されていること(検392),捜査一課が豊岡事件発生日に被告人の行動確認をしていたことは間違いがないのであるから,その前の週の平成12年10月28日及び29日に被告人の行動確認をしたことも十分に考えられること,他方,K捜査員らの捜査結果によると,被告人の職場では同僚間で不在者の勤務終了時のタイムカードを打刻するようなこともあることが窺えることなども併せ考慮すると,上記タイムカードの存在が前記認定を覆すに足りるものとはいえない。 また,被告人及び弁護人は,K捜査員らがカメラを持っていたにもかかわらず,上記行動確認結果に沿うような写真がほとんど と,上記タイムカードの存在が前記認定を覆すに足りるものとはいえない。 また,被告人及び弁護人は,K捜査員らがカメラを持っていたにもかかわらず,上記行動確認結果に沿うような写真がほとんど存在していないことをもって,上記供述に信用性がないと指摘する。しかし,犯行につながる証拠等を収集する目的でなされる尾行捜査においては,決定的な瞬間等を恣意の入りにくい写真等で証拠化しておくことも重要であるものの,そもそも容疑者に気付かれた瞬間に捜査目的を逸し,それ以後同様の方法による証拠収集が困難になるという問題もあるのであって,尾行していることが万一にも容疑者に気付かれないよう慎重を期した結果,十分な写真を撮ることができなかったとしても必ずしも不自然であるとはいえないから(もとより,K捜査員らにおいて,己事件の発生を予見していたわけでもない。),この点も,上記各証言の信用性を覆すに足りるものとはいい難い。 ところで,K捜査員やT捜査員の証言中には,その行動観察中に被告人がディアドラの靴を履いていたことを確認した旨の供述部分があり,その観察情況等をかなり具体的に供述しているが,第三者の供述等これを裏付けるに足りるといえる証拠がないことからして,その部分に関してはこれを採用するには躊躇を覚えざるを得ない。 なお,関係各証拠によると,被告人宅から押収された平成12年版のJR時刻表10月号には,索引地図の頁に四国,中国,北陸,名古屋方面までの都市の幾つかに丸印がされ,そこに至るJR路線が赤鉛筆でなぞられているところ,その一つに「己」があり,さらに,時刻表本編にも,幾つかの路線に赤鉛筆で斜線が引かれているところ,岡山発で己を終点とするJR線の列車の欄にも赤鉛筆で斜線が引かれていることが認められる。これらからは,この時期,被告人が関 り,さらに,時刻表本編にも,幾つかの路線に赤鉛筆で斜線が引かれているところ,岡山発で己を終点とするJR線の列車の欄にも赤鉛筆で斜線が引かれていることが認められる。これらからは,この時期,被告人が関心を持っていた旅行先の一つとして,岡山経由で己へ行く案のあったことを認めることができる。 (8) 犯人性の検討以上の諸点その他関係各証拠に基づき検討すると,己事件の犯人は被告人と顔が相当によく似た男であったこと,被告人は,犯人が履いていたディアドラの靴とほぼ同じ大きさで底模様を同じくするディアドラの靴を持っており,被告人の靴によって現場足跡が印象されたとしても,特に矛盾しないことが指摘でき,これらの点だけからでも,被告人が犯人である可能性が相当に高いというべきである。加えて,被告人は,旅行先の候補地の一つとして己に関心を抱いていたところ,まさに本件事件の前日に丁市内の職場を早退して,己市に向かう本州側の連絡駅ともいうべき岡山市まで新幹線で赴き,そこで下車した後,その翌日の昼過ぎまで丁市に戻ってきていないのである。その時間的場所的な符合性の意味するところは大きく,被告人が己に赴いて本件を犯した可能性を格段に高めるものというべきである。そのほかに,関係各証拠上明らかな事実,すなわち,被告人は小学校高学年程度の女子児童に対して異常な性的関心を抱く傾向を有しており,これを脅して支配することで性的快感を得る特異な傾向を持っているところ,小学生の女子児童を狙った他府県にまたがる多数の強制わいせつ事件の前科もあり,その態様はほとんどが小学校内でナイフを突きつけて脅してわいせつ行為をするという本件態様に類似しているものであること,被告人が犯人であることは間違いない豊岡事件において,被告人は,女児に対する性的興奮を満足させる目的のもと(被告 イフを突きつけて脅してわいせつ行為をするという本件態様に類似しているものであること,被告人が犯人であることは間違いない豊岡事件において,被告人は,女児に対する性的興奮を満足させる目的のもと(被告人は,少なくとも,女児に対するわいせつ行為を想像して自慰行為をする目的であったことは認めている。),折りたたみ式ナイフとアイマスクを所持して,小学校内の女子便所に忍び込んでおり,その動機と特殊な所持品が己事件と酷似していることなどを認めることができる。さらに,女子児童に対する多数のわいせつ事犯を犯したことを自認した逮捕直後の不利益陳述(その任意性,信用性については後記する。)もある。 以上を総合すれば,被告人が己事件の犯人であることを優に認めることができ,その認定について合理的な疑いはない。 5 丁事件(判示第4)について(1) 被害者の被害及び犯人識別供述ア関係各証拠,特に,被害者の捜査供述及び証言並びに捜査担当者であるK捜査員,O捜査員及びVの各証言によれば,被害者の目撃状況,犯人識別過程等について,以下の事実を認めることができる。 (ア) 被害及び目撃状況被害者は,11歳のi小学校に通う小学6年生であったが,平成12年9月17日(日曜日)午後1時15分ころ,同小学校でのバレーボールの練習を終えて自宅に帰ろうとして同校付近路上で自転車にまたがっていると(その時の服装は白のTシャツと体操服の赤い半ズボン),何者かにいきなり背負っていたリュックサックを強く引っ張られ,そのまま後ろにひっくり返された。被害者が立ち上がると,さらにTシャツの衿首付近をつかまれ,強い力で同小学校校舎出入口付近まで引きずられ,その場に転倒させられた。その乱暴をした男は,野球帽を被り,サングラスをし,黒のTシャツ た。被害者が立ち上がると,さらにTシャツの衿首付近をつかまれ,強い力で同小学校校舎出入口付近まで引きずられ,その場に転倒させられた。その乱暴をした男は,野球帽を被り,サングラスをし,黒のTシャツを着ていた。その後,被害者は,男から命ぜられるがまま,南校舎の中に入って東側の階段の踊り場まで行き,そこで,折りたたみ式のナイフを突きつけられながら脅されて,全裸にされ,身体を触られるなどした。このとき,被害者は,トイレに行きたいと男に告げてトイレに行った後,隙をみて裸のまま逃げ出した。被害者は至近距離から男の顔を見た。 (イ) 写真面割及び実面割等の経過被害者は,被害から三日後の同月20日,警察官に犯人の特徴を話すなどして,犯人の似顔絵を作成してもらった(検389号証)。その後,捜査一課は,平成12年10月6日までの間に,被害者に対し,被告人の前刑写真を含めた全10枚ぐらいの写真が貼付された写真面割台帳を示したが,被害者は,犯人を指示することはできなかった。被告人が逮捕される前である同年10月11日,被告人の最近の写真を貼付した写真面割台帳(前記の検220号証)を使用して写真面割を実施したところ,被害者は,犯人に似ている男として,被告人の写真を指示した。 同年12月15日,被害者に対し,庚署で実面割が行われた。被害者は,黙ったまま下を向いており,その場では,分からないと回答したが,後に「5人の中に犯人がいることが分かったが,自分の目の前にいて怖かったため指し示すことができなかった」旨を述べた。 被害者は,平成14年7月26日の公判期日においても,モニターを通じて被告人の顔を見て「同じ人である」と答え,検第221号証と同じカラー写真をA4番の用紙に貼付した写真面割台帳(検223 被害者は,平成14年7月26日の公判期日においても,モニターを通じて被告人の顔を見て「同じ人である」と答え,検第221号証と同じカラー写真をA4番の用紙に貼付した写真面割台帳(検223)を示されて,「6番(被告人の写真)」と答えた。 上記一連の識別供述の過程において,被害者が,捜査官や他の関係者(他の目撃者を含む)から,特段の暗示や誘導を受けた形跡は窺えない。 イ評価不審者が帽子を被り,サングラスをしていて,顔の全体が見えにくかった点はあるが,その他の観察条件は良好である。 その一連の識別供述は,特に,被害からまもない記憶の鮮明な時期に似顔絵(眉毛が濃く,頬にやや膨らみのある点で被告人の特徴と似ている。)を書いてもらうことができ,その後,被害から1か月経過しておらず,しかも,被告人が逮捕される前の時期に,10枚の人物写真が示された中で選別し得ており,これらの時に他からの暗示や誘導のあった形跡が窺えないことは重視されるべきである。目撃した男が初対面の者であったこと,前刑写真を見て指示できなかったこと,実面割の際にその場では答えられなかったこと(ただし,その時の心境について後に述べた点の信用性を疑う事情は存しない。),この他,面割における一般的な問題点を差し引いても,その識別供述には信頼がおけるものということができる。 (2) 目撃者W子及びX子の各識別供述ア関係各証拠,特に,W子及びX子の各捜査供述及び各証言並びに捜査担当者であるN捜査員,Y捜査員及びO捜査員の各証言によれば,W子及びX子の目撃状況,識別過程等について,以下の事実を認めることができる。 (ア) 目撃状況等W子は10歳のi小学校4年生,X子は9歳の同小学校3年生であった れば,W子及びX子の目撃状況,識別過程等について,以下の事実を認めることができる。 (ア) 目撃状況等W子は10歳のi小学校4年生,X子は9歳の同小学校3年生であったが,丁事件当日の被害発生直前の午後1時10分ころ,両名が同小学校正門の前を自転車で通り過ぎようとしたとき,野球帽を被り,目がちょっと透き通る位のサングラスをして,黒色のTシャツを着た男が出てきて,「ちょっと待って。ランチルーム,どこか教えてくれる」などと声を掛けてきた(X子は,その日の午前中,同校運動場でサッカーの練習をしていた際も,その男を目撃している。)。両名は男が不審者であるかもしれないと感じ,W子が教えるのを断ると,男は,最初は優しい感じだったのに,急に「何,嫌やて」と言って,眉間にしわを寄せた怖い顔に変わってにらみつけてきた。二人はあわてて逃げた。 (イ) 写真面割,実面割等の経過W子は,自宅に帰ってすぐに母親に対して,今までの中で一番怖い経験をしたと言って,目撃した男の話をした。W子は,その後夕方ころにi小学校でわいせつ事件が起こったことを母親から聞かされた際,目撃した男の仕業に間違いがないと考え,忘れないうちにその人相を書きとめておこうと,男の左目の下にほくろがあったこと,丸い鼻及び太い眉であったことに気を付けて,カレンダーの裏に男の似顔絵を描いた。 捜査一課のN捜査員は,平成12年12月9日にW子宅に行き,W子及びX子の両名に対して,検221号の写真面割台帳を示して写真面割を行った。両名が写真を見せられたのは,それが最初であった。その際,両名は,それぞれ個別に自分の判断で,不審な男に似ている男として被告人の写真を選んだ。 同月23日に,W子及びX子に対して庚署で 名が写真を見せられたのは,それが最初であった。その際,両名は,それぞれ個別に自分の判断で,不審な男に似ている男として被告人の写真を選んだ。 同月23日に,W子及びX子に対して庚署で実面割が行われた際,両名は,個別に透視鏡を見て,それぞれ被告人を指示した。 さらに,両名は,平成14年7月26日の公判期日において,それぞれの証人尋問の際,個別にモニターを通じて被告人の顔を見て,それぞれが「目撃した人と同じ人である」旨答え,また,それぞれ検223号証の写真面割台帳を示されて,それぞれが「6番(被告人の写真)」を指示した。 弁護人は,上記の写真面割に関し,W子及びX子を同席させ,相互間に答え合わせをさせて供述させた疑いがあると主張する。この点,証人N捜査員は,写真面割の際,他の一人を別の部屋において,相互の影響を遮断して選ばせた旨供述するけれども,証人W子及びX子は必ずしもそうした状況を述べておらず,一人が選んでいるとき,他の一人も同じ部屋にいた疑いがあり,その選択の際に他の者から何らかの暗示,影響を受けた可能性が完全には否定できない。その意味では,その写真面割は,方法においてやや適切さを欠いた疑いが払拭できないけれども,W子及びX子においては,それぞれに,他から教えてもらうことなく,自分の判断で被告人の写真を選んだこと自体は優に認められるところである。 その他の点では,W子及びX子が,上記一連の識別供述の過程において,捜査官や他の関係者(被害者を含む)から,特段の暗示や誘導を受けた形跡は窺えない(ただし,実面割の際には,被告人を含めた5名全員が紺色の上着を着ていたが,その下に,他の4名が白いシャツであるのに,被告人だけが濃い色のシャツを着ていた。)。 イ評価 は窺えない(ただし,実面割の際には,被告人を含めた5名全員が紺色の上着を着ていたが,その下に,他の4名が白いシャツであるのに,被告人だけが濃い色のシャツを着ていた。)。 イ評価不審者が帽子を被り,透き通っているとはいえサングラスをかけていた点で,その顔の全体を観察することはできなかったが,その他のそれぞれの観察条件は良好である。 両名の一連の識別供述は,特に,W子は,目撃当日にその男の似顔絵を書き,左目の下にほくろがあったことなど不審者の特徴を記憶していたこと,その写真面割においては,相互の暗示,影響の可能性を全く否定することはできないにしても,10枚の違った男の写真の中から,それぞれが自分の判断で選んでいること,実面割では,被告人の服装についてのみ他と違った面があった点に問題はあったが,それぞれが他から教えを受けることなく一人を指示したこと,これら一連の識別供述の過程において,捜査官等から他には特に暗示や誘導があった形跡が窺えないことからすると,面割における一般的問題点などを差し引いても,それぞれに相当の信頼をおくことができるというべきである。 (3) 被害者及び目撃者の識別供述全体の評価以上の丁事件の被害者及び目撃者の各識別供述は,被害者と目撃者とで違った場面で目撃した人物に関するものであるが,両者に場所的,時間的近接性があり,帽子を被り,サングラスをし,黒色のTシャツを着ていて,不審行動をしていた点で共通性があるので,それぞれが見た犯人ないし不審者は同一人物であると優に推認できる。そして,3人が揃って,基本的に個別に面割しながら,顔の似た人物として被告人の写真等を指示していることからは,各自の識別供述の信用性を相互に補強し高めあっていると認められる。そうすると,これらの識別供述の全 3人が揃って,基本的に個別に面割しながら,顔の似た人物として被告人の写真等を指示していることからは,各自の識別供述の信用性を相互に補強し高めあっていると認められる。そうすると,これらの識別供述の全体は,犯人が左目尻の下付近にほくろ様のものがある点を含めて被告人とよく似た人物であると認定するには十分というべきである。 (4) 被告人の不利益陳述被告人は,前記のとおり,豊岡事件による逮捕当日の平成12年11月5日,警察官に対して,20件くらいの事件を起こしたことなどを供述した際,「その中で,今年の暑い8月か9月ころ,兵庫県内の小学校で,体操服のようなものを着ていたと思う小学校4,5年生くらいに見えた女の子にナイフを向けて脅しその体にいたずらをしようとし裸にしましたが,女の子がトイレに行きたいと言ったことから,トイレに行かせたところ,この女の子に真裸で逃げられてしまったことがありました。」との不利益陳述をした(検115)。 この供述について,弁護人は任意性がないと主張する。確かに,被告人を取り調べたT捜査員の供述及び被告人が逮捕された後に受けた診療のカルテ等(弁14,15)によれば,T捜査員らは同日午後零時10分に逮捕した後,午後零時半ころから午後2時45分ころまで,昼食を遅らせたまま取調べをしたこと,逮捕直後の強制力行使の際,被告人の手首に強い力が働き,後日の診断で右橈骨遠位端が骨折していると判明したことが認められる。しかしながら,取調べに当たったK捜査員及びT捜査員は,その当日,弁解録取等に引き続き,捜査官も被告人も昼食を食べないで取調べを開始したこと,その際は,被告人が,興奮状態下で自分からまくし立てるように一気にしゃべりだし,その言葉に酔いしれ,その後にほっとした表情であったこと,他にも幾多の不利益陳述があ 食べないで取調べを開始したこと,その際は,被告人が,興奮状態下で自分からまくし立てるように一気にしゃべりだし,その言葉に酔いしれ,その後にほっとした表情であったこと,他にも幾多の不利益陳述があったが,供述録取は一部分に止めたこと,被告人は,右手首が痛いとは言っていたが,病院での診察までは求めておらず,空腹も訴えてはいなかったこと,取調べの中止を求めるようなこともなかったことをそれぞれ供述しているところ,これらの供述は,逮捕直後の被告人の心理状態や供述態度を彷彿とさせる内容で真実味があり,被告人の供述(たとえば,被告人が「10余年前」「JR丸亀駅」での前刑の丸亀事件のことを話したのに,T捜査員らが強引に「今年の8月か9月」「兵庫県内」の出来事に置き替えてしまったなどという被告人の弁解はにわかに信用しがたいものである。)と対比して,その信用性を認めるに十分である。そもそも,まだ到底本格的な取調べではないこの時期に,捜査官らがあえて供述を強要する必要があったとも考えられず,また,その後の一連の事件における供述態度等からして,被告人が易々と意に反した供述をするとも思われないことなどをも併せ考えると,手首の痛みや昼食が遅れるなど上記のような事情があったとしても,その取調べにおける被告人の一連の供述が任意性に疑いを抱かせるほどのものでなかったことは明らかである。 なお,弁護人は,捜査官らにおいて,逮捕手続の終わった午後零時30分ころから午後3時45分ころまで留置管理に身柄を引き渡すことなく,被告人の取調べをし,留置管理の管理下でない食事を勝手に与えている点をも挙げ,これらの措置が違法であるとし,この点をその供述の任意性のない理由として付加している。 上記各証拠によると,被告人に対し,T捜査員らは上記のとおり取り調べをした後 手に与えている点をも挙げ,これらの措置が違法であるとし,この点をその供述の任意性のない理由として付加している。 上記各証拠によると,被告人に対し,T捜査員らは上記のとおり取り調べをした後,取調室で昼食をとらせ,午後3時45分ころ留置管理に引き継いだ経過が認められる。確かに,被疑者の身柄を拘束して取調べを行うに当たっては,留置管理と捜査の分離が厳格に運用されるべきことはいうまでもない。その趣旨は,あくまで取調べ等の適正に疑いを招かないためのものであるから,被疑者を一旦留置管理に引き継いだ後は,その留置管理の日課時間や食事提供等に反する捜査側の措置が供述の任意性を疑わせる徴憑とみられることは十分あり得る。しかしながら,逮捕直後の段階で,まだ留置管理の下に引き継ぐ前に,捜査官らが逮捕手続に引き続きしばらくの間取調べを行ったからといって,その取調べ自体が任意性を疑わせるような過酷なものでない限り,その措置が直ちに違法となり,ひいては,取調べによる被疑者の供述の任意性を疑わせるものになるとは考えられない。また,留置管理に引き渡す前の段階で,そのような取調べの後に捜査官らが提供する昼食をとらせたからといって,それが被疑者に対し利益誘導か何かの供述の任意性に影響するような方法でない限り,その措置をもって直ちに違法視したり,任意性を疑わせる事情とみることもできない。本件の場合,上記の証拠に照らせば,逮捕手続に引き続いて取調べを行い(取調官らも昼食をとっておらず,被告人も空腹を訴えていなかった。),その後に遅れていた昼食をとらせたに過ぎず,昼食をとらせることを供述誘導の手段とした形跡は認められないので(空腹の被告人に対し,T捜査員らが握り飯を見せつけ供述を誘導したとの被告人の弁解も,T捜査員らの供述に照らし,到底信用できない。),この点も, せることを供述誘導の手段とした形跡は認められないので(空腹の被告人に対し,T捜査員らが握り飯を見せつけ供述を誘導したとの被告人の弁解も,T捜査員らの供述に照らし,到底信用できない。),この点も,その任意性に関する上記の判断を左右するものではない。 そうすると,その供述状況に照らし,優に信用性も肯定できる上記供述調書の内容は,平成12年の8月か9月ころに兵庫県内の小学校で起こした事件であること,ナイフで脅して体操服のようなものを着た女の子を裸にしたこと,女の子がトイレに行きたいと言い出したこと,トイレに行かせたところ裸のまま逃げ出したことなどが丁事件と時期及び経過の点で見事に合致しているのであって,その特殊かつ異常な経過に照らし他に類例の考えにくいこと(時期と場所を限ればなおさら)などからすると,被告人において,丁事件の記憶を述べたもので,その事件の犯人であることを暗黙のうちに自認していると認めるのが相当である。 (5) 犯人性の検討以上の諸点その他関係各証拠に基づき検討すると,丁事件の犯人は,被告人と顔がよく似ているのみならず,左目尻の下にほくろ様のものがある点でも被告人と共通しており,しかも,被告人がその犯人であることを認めるに等しい不利益陳述をしているのであるから,これらだけからでも,被告人が丁事件の犯人である可能性は相当に高いというべきである。加えて,被告人は,小学校高学年程度の女子児童に対し異常な性的関心を抱いているのみならず,これを脅して支配することで性的快感を得る特異な傾向を持っており,休日に小学校内において,被害者に折りたたみ式ナイフを突きつけて脅し,わいせつ行為に及んだその態様が,被告人が犯人である己事件のそれとよく似ており,小学校内でナイフを突きつけて脅してわいせつ行為に及んだ被告人の前 いて,被害者に折りたたみ式ナイフを突きつけて脅し,わいせつ行為に及んだその態様が,被告人が犯人である己事件のそれとよく似ており,小学校内でナイフを突きつけて脅してわいせつ行為に及んだ被告人の前科とも類似していること,被害には至らなかったが,小学生の女子児童であるW子らに校内を案内させようとして言葉をかけている点も,己事件のきっかけと似ていること,そのほかに,その被害現場が被告人が住む丁市内であることなどを併せ考えると,被告人が丁事件の犯人であることを認めるに十分である。 なお,被告人は,丁事件当日の昼の12時ころ,山陽百貨店に行き,@と会って,第2種電気工事士の実技試験結果の通知葉書を受け取った可能性が強いと述べるが,丁事件当日のことであるかについてすら定かでなく,被告人の供述を裏付けるに足りる証拠は何もないのであって,被告人が丁事件の犯人であることについて到底合理的な疑いを生ぜしめるに足りるものではない。 6 丙事件(判示第3)について(1) 被害者の被害及び犯人識別供述ア関係各証拠,特に,被害者の捜査供述及び証言並びに捜査担当者であるK捜査員,O捜査員及びZ捜査員の各証言,捜査復命書(検390)によれば,被害者の目撃状況,犯人識別過程等について,以下の事実を認めることができる。 (ア) 被害及び目撃状況被害者は,13歳の中学2年生で,g小学校の卒業生であったが,平成12年9月10日(日曜日)午前9時ころ,自宅からu駅に向かい,g小学校近くまで来たとき,道路に設置されたミラー越しにきょろきょろとしている不審な男を見た。男は,いわゆるチューリップハットのような帽子を被り,四角い眼鏡を掛け,白の手袋をしていて,40歳前後のオヤジに見えた。被害者は,変な恐怖感を感じ,関わり合いになり きょろとしている不審な男を見た。男は,いわゆるチューリップハットのような帽子を被り,四角い眼鏡を掛け,白の手袋をしていて,40歳前後のオヤジに見えた。被害者は,変な恐怖感を感じ,関わり合いになりたくないと思って,道路の左端に寄って少し急ぎ足で歩いたが,男が近寄ってきて,「すいません,ここの在校生ですか。」と声を掛けてきたため,卒業生であると伝えると,「給食室の場所を教えてください。」,「牛乳瓶を運ぶのを手伝ってください。」,「場所が分からないからもう1回教えて。給食室まで連れてって。」などと執拗に言ってきた上,肩を掴まれ背中を押されて給食室がある給食棟の休憩室まで連れて行かれた。その途中で,被害者は,男に果物ナイフを突きつけられ「言うとおりにせんかったら殺すぞ。」と脅され,休憩室に入ると,服を脱ぐよう命じられて全裸にさせられ,さらにアイマスクで目隠しをされて,判示の性的被害を受けた。被害者は,休憩室で,アイマスクをされるまでの間,至近距離から犯人の顔を見た。なお,被害者の視力は裸眼で0.03ぐらいであったが,コンタクトレンズをすると1.5ぐらいあり,この日はコンタクトレンズをしていた。 (イ) 写真面割,実面割等の経過被害者は,被害から二日後の平成12年9月12日,兵庫県警察本部鑑識課のZ捜査員に犯人の特徴を話すなどして,犯人の似顔絵を作成してもらったが,その顔は頬にやや膨らみを感じさせるものであった(検390)。 捜査一課は,前記のとおり,丙事件が発生してから1週間ほど後,被害者に対し,被告人の前刑写真を含めた全10枚ぐらいの写真が貼付された写真面割台帳を示したが,犯人らしい男を指示することはできなかった。その後,平成12年10月7日,検220号証の写真面割台帳を用いて写真面割を実施し の前刑写真を含めた全10枚ぐらいの写真が貼付された写真面割台帳を示したが,犯人らしい男を指示することはできなかった。その後,平成12年10月7日,検220号証の写真面割台帳を用いて写真面割を実施したところ,被害者は,顔が少し怖いような雰囲気や,まゆ毛の太いところ,顔の丸い輪郭などが似ているとして,被告人の写真を指示した。 同年12月21日に庚署で,被害者に対し実面割が行われた。被害者は,「あっ,あの人だ」という感じで,躊躇なく被告人を指示し,その理由として「顔の輪郭がぽっちゃりしており,特に,目が印象的で見覚えがあり,間違いがない。」などと述べた。 被害者は,平成14年8月7日の公判期日において,検223号証の写真面割台帳を示されて「6番(被告人の写真)」と答え,モニターを通じて被告人の顔を見て「(犯人と)同じ人。はっきり言える。」と答えた。 これら一連の識別供述の過程において,被害者が,捜査官らから,特段の暗示や誘導を受けた形跡は窺えない(ただし,実面割において,被告人を含めた5名全員が同じような濃紺の上着を着ていたが,ズボンは他の4人が上着と同じ色のものであったのに対し,被告人だけが茶系の明るい色のものを着用していた。靴も被告人だけが白の運動靴であった可能性がある。)。 イ評価犯人は帽子を被っており,顔の全体を見ることはできなかったものの,被害者の視力に問題はなく,午前中の明るい時間帯に,至近距離から,一瞬ではない時間,犯人を目撃しているのであって,しかも,特異な感情を抱かずに偶然に見た場合と異なり,強烈な印象を伴って目撃したものであることなどからすると,観察条件は良好であり,被害者の記憶に強く残ったものと認めるのが相当である。 その一連の識別供 を抱かずに偶然に見た場合と異なり,強烈な印象を伴って目撃したものであることなどからすると,観察条件は良好であり,被害者の記憶に強く残ったものと認めるのが相当である。 その一連の識別供述は,特に,被害直後に似顔絵を描いてもらうに際し,記憶喚起に努めたと考えられ,その似顔絵は頬部に膨らみが感じられる点で被告人の顔と特徴が似ていること,被害から約1か月の記憶にまだ新しく,しかも,まだ犯人の逮捕に至っていない時期に,10枚の複数写真の中から犯人に似ている男を指示し得ており,実面割においては,相当な自信をもって指示できていること,これらの時に他からの暗示や誘導のあった形跡が窺えないことなどは重視されるべきであり,高い信頼がおけるものということができる。犯人が初対面の男であったこと,実面割の際に,服装の点で被告人だけが浮き上がりかねない危険性があったこと,犯人は眼鏡を掛けていたが被告人は掛けていないこと,さらには,40歳前後に見えたとの年齢評価に違いあること(中学生の被害者にとって,成人ないし熟年のいわゆる「オヤジ」男性の年齢推測は難しいと思われる。),この他,面割における一般的な問題点などを差し引いても,上記の信頼は揺るがない。 そうすると,その識別供述は,これだけで被告人が犯人であると認定するするに足りるものではないが,犯人が被告人によく似ているという限りにおいて重要な情況証拠ということができる。 (2) 現場足跡についてア現場足跡の採取証人αの供述,現場足こん跡採取報告書(検206),写真撮影報告書(検268)及び実況見分調書(検173)によると,丙事件当日の実況見分の際,被害現場である給食棟休憩室(和室)の入口前廊下に敷かれた板のすのこ上から2個,同室の入口敷居の上から ),写真撮影報告書(検268)及び実況見分調書(検173)によると,丙事件当日の実況見分の際,被害現場である給食棟休憩室(和室)の入口前廊下に敷かれた板のすのこ上から2個,同室の入口敷居の上から1個のいずれも靴による現場足跡3個が採取されたことが認められる。そして,これらはいずれも同模様であり(検209),その採取場所(通常の利用者はすのこ上はもとより敷居上には土足で上がらない。)や採取経過からすると,これらが犯人のものであると推認するに十分である。 この点,弁護人は,すのこに至る床上から足跡が採取されていない点を不自然というが,関係各証拠によると,すのこの置かれた床はコンクリート床であって,すのこの板と比べて足跡が残りにくい素材であることが認められるので,足跡採取に当たった捜査員がその床からは足跡が採取できなかったと供述する点に疑問を抱く余地はない。上記の認定は揺るがない。 イ丁事件の現場足跡との関係証人βの供述,現場足こん跡採取報告書(検205),実況見分調書(検132),写真撮影報告書(検204)及び鑑定書(検209),その他関係各証拠によると,丁事件でも,被害当日の実況見分の際,犯人が被害者を連れて歩いた北校舎と南校舎とをつなぐ廊下のフローリング上から採取された鮮明な現場足跡4個は,同模様であってアシックス製のランニングシューズによって印象されているところ,犯人は鍵がかかっていた北校舎東側入口の外開きドアの鍵穴に針金様の物を差し込んで開けているのであって(検131),そのような場所に,しかも普段は土足で歩かない廊下に鮮明な形で残されたものであることなどからすると,これらが犯人のものである可能性が高いと認められる(弁護人は,同時に採取された階段の踊り場(被害現場)の現場足跡が鑑定されてい は土足で歩かない廊下に鮮明な形で残されたものであることなどからすると,これらが犯人のものである可能性が高いと認められる(弁護人は,同時に採取された階段の踊り場(被害現場)の現場足跡が鑑定されていない点を問題視するが,そこに至るまでに廊下等をすでに長く歩いたため,靴底の土砂等が落ち,踊り場付近現場足跡は鑑定に耐えるだけの鮮明さに欠けていたためとも考えられるので,これらが鑑定に付されなかった点を異とするには足りないと思われる。)。 鑑定書(検209)によると,丙事件の上記現場足跡3個及び丁事件の上記現場足跡4個は,いずれも同模様であって,アシックス製のランニングシューズのサイズ27.5センチメートルないし27センチメートルとほぼ同じサイズの靴によって印象されたものであることが認められる。 また,別の鑑定書(検278)の内容及びその添付資料によれば,丙事件の現場足跡のうち1個と丁事件の現場足跡2個は,同種,同形,同模様であり,これらが同一の靴によって印象されたとしても,特に矛盾しないことも認められる(この点,同鑑定書の鑑定人であるSは,上記の異同評価として,「同模様」よりも高い評価である「酷似」との結論を出しており,その証人尋問において,上記各現場足跡について,明らかに同一履物であることを裏付けるような損傷痕や一致する摩滅は認められなかったが,これらが同種同形の履物によって印象されている上,それぞれ12個以上の摩滅痕を指摘することができ,各事件の犯行日時の違いによる履物の経時変化を考慮すると,矛盾なく説明することができるから,酷似の意見を付した旨説明する。 しかし,Sが固有特徴として指摘している摩滅痕を見ると,鑑定資料等を精査しても,これらがそもそも摩滅痕といえるのか判然としない。仮にSの言うように万物不同,終生 ら,酷似の意見を付した旨説明する。 しかし,Sが固有特徴として指摘している摩滅痕を見ると,鑑定資料等を精査しても,これらがそもそも摩滅痕といえるのか判然としない。仮にSの言うように万物不同,終生変化という足跡の特殊性から,経時変化を考慮して鑑定を行うものだとしても,経時変化による摩滅痕の進行として,各現場足跡の一致しない摩滅痕を矛盾なく説明することができるのか,仮にこれらを矛盾なく説明することができるとしても,それだけで「酷似」すなわち「同一履物で印象された可能性が極めて高い」との判断が専門家の直感を超えた客観性のあるものかどうか釈然とせず,Sからもこれらの疑問を払拭するに足りる十分な説明がされていない。そうすると,固有特徴の存在を前提とした鑑定意見(検278)を全面的に採用することはためらわれるというほかない。)。 (3) 犯人性の検討以上の諸点その他関係各証拠により検討すると,丙事件の犯人は,被告人に顔がよく似た人物であり,かつ,丁事件において犯人である被告人が現場で履いていた可能性が高いアシックス製の靴とほぼ同じ大きさ,同じ底模様の靴を履いており,これらが同一の靴によって印象されたとしても,特に矛盾のないことを認めることができる。これらだけからしても,被告人が丙事件の犯人である可能性は高いというべきである。加えて,丙事件は,休日に小学校内において,被害者に「給食室の場所を教えてください。」などと声を掛け,その後,ナイフを突きつけて脅して,性的犯行に及んだものであるところ,その犯行場所はもとより,校内を案内させる甘言を含む一連の経過及びナイフを用いた凶悪な態様が,被告人が犯人である前記の己事件及び丁事件とよく似ており,殊に,犯行の際にアイマスクを着用させるという極めて特異な態様については,己事件と同じであり, 含む一連の経過及びナイフを用いた凶悪な態様が,被告人が犯人である前記の己事件及び丁事件とよく似ており,殊に,犯行の際にアイマスクを着用させるという極めて特異な態様については,己事件と同じであり,わいせつな動機のもとにアイマスク及びナイフを携帯して小学校内に潜んでいた豊岡事件とも通じるものがあって,これらが同一犯人であることを強く推測させる。服装等の点に関しても,犯人が季節はずれの手袋をしていた点では己事件の際の被告人と同じである。また,被告人には,小学校高学年程度の女子児童に対する性的関心が強いのみならず,これを脅して支配することで性的快感を得る異常な傾向を持っており,小学校を現場としてナイフを用いて同年齢の多数の児童を脅して性的犯行に及んだ同種前科も存する。そして,丙事件の発生した時期は,丁事件,己事件,豊岡事件とともに2か月以内に連続して起こっており,時期的な関連性も肯定できる。さらに,女子児童に対する多数のわいせつ事犯を犯したことを自認した逮捕直後の不利益陳述もある。 これらを総合すれば,被告人が丙事件の犯人であることを優に認めることができる。 7 乙事件(判示第2)について(1) 被害者の被害及び犯人識別供述ア関係各証拠,被害者の捜査供述及び証言並びに捜査担当者であるK捜査員及びY捜査員の各証言によれば,被害者の目撃状況,犯人識別過程等について,以下の事実を認めることができる。 (ア) 被害及び目撃状況被害者は,11歳のy小学校に通う小学6年生であったが,平成12年7月9日(日曜日)午後零時40分ころ,自転車に乗って自宅から祖母の家に向かっていたところ,e小学校付近路上で自転車に乗った男が,ジロジロと見ながら追い越した後Uターンしてきて自転車を止め,「教頭先生に会う約束 曜日)午後零時40分ころ,自転車に乗って自宅から祖母の家に向かっていたところ,e小学校付近路上で自転車に乗った男が,ジロジロと見ながら追い越した後Uターンしてきて自転車を止め,「教頭先生に会う約束をしている。」「職員室についてきて。」と声を掛けてきた。男は,初めて見るおじさんで,野球帽を被り,サングラスをし,リュックを背負っていた。被害者がついていくと,同校内調理室隣の休憩室の前あたりで男の態度が急に変わり,怖い声で「ついてこい。入れ。」と命令された。被害者が,休憩室に入ると,男は,ズボンの右前ポケットから折りたたみ式ナイフを取り出し,刃を開いて見せるようにしながら,「全部服脱げ。」「5秒以内に脱がな殺すぞ。」と脅してきた。被害者は,全裸にさせられた後に布製のアイマスクを被せられ,その後,判示の性的被害にあった。被害者は至近距離から犯人の顔を見た。被害者の視力は裸眼で両目とも0.3ぐらいであり,本件当時,眼鏡を掛けていなかったが,裸眼でも,教室では前の席なら黒板の字が読め,普通に生活するには特に支障を感じない程度であった。 (イ) 写真面割,実面割等の経過捜査一課は,被告人を容疑者として特定した段階で,被害者に対して写真面割を実施しようとしたが,被害者のカウンセラー又は乙署の署員から,被害者の精神的ショックが大きくて,写真面割に応じられる状況ではないということを聞いたため,被害者が落ち着くまで写真面割を実施しないこととした。初めて被害者に対して写真面割を実施したのは,被害から約7か月経過した平成13年2月8日であり,被害者は,示された前記検223号証の写真面割台帳の中で,犯人に似ている男として,被告人の写真を指示した。 同年3月14日,被害者に対し,乙署で実面割が行われた。被害者は,少 あり,被害者は,示された前記検223号証の写真面割台帳の中で,犯人に似ている男として,被告人の写真を指示した。 同年3月14日,被害者に対し,乙署で実面割が行われた。被害者は,少しへの字に下がった口元の感じが似ており,犯人に間違いがないと思うとして直ちに被告人を指示した。 被害者は,平成14年7月26日の公判廷においても,モニターを通じて被告人の顔を見て「このおじさんです」と答え,検223号証及び検220号証の各写真面割台帳を示されてそれぞれ被告人の写真を指示した。 これら一連の識別供述の過程において,被害者が,捜査官らから,特段の暗示や誘導を受けた形跡は窺えない(ただし,実面割の際,被告人を含めた5名全員が濃紺の上着,ズボンを着用していたが,他の4名が白いシャツ,黒い靴であるのに対し,被告人だけが青いシャツ,白い運動靴を着用していた。)。 イ評価被害者は,犯人が野球帽を被ってサングラスをしていたために,顔全体をみることができなかったものの,正午過ぎの明るい時間帯に,至近距離から,一瞬ではない時間,犯人を目撃する機会があり,しかも,特異な感情を抱かずに偶然に見た場合と異なり,強烈な印象を伴って目撃したもので,視力は0.3ではあったが,本件のような至近距離からの観察には支障がなかったと考えられるので,その観察条件は良好であり,初対面の男ではあったものの,強く記憶に残ったものと推認される。 その一連の犯人識別供述は,事件からすでに7か月を経過した後に初めて写真面割をした点で,新鮮な時期におけるものとはいい難く,記憶の劣化,変容の危険性は考慮に入れなければならないけれども,暗示,誘導なくして10枚の写真のうちから犯人に似た男を一人だけ指示できており, 写真面割をした点で,新鮮な時期におけるものとはいい難く,記憶の劣化,変容の危険性は考慮に入れなければならないけれども,暗示,誘導なくして10枚の写真のうちから犯人に似た男を一人だけ指示できており,その1か月余後の実面割でも,特段の暗示や誘導がないのに相当な確信を持って5人の中から犯人に似た男を指示し得ているのであって,犯人が初対面の男であったこと,実面割の際に,服装の点で被告人だけが浮き上がりかねない危険性があったこと,この他,面割における一般的な問題点など弁護人の指摘する点を考慮に入れてみても,それなりの信頼をおくことができるというべきである。 そうすると,被害者のこの識別供述だけでもって,乙事件の犯人が被告人であると断定することは到底できないが,犯人が被告人と似ているという限りにおいて,重要な情況証拠ということができる。 (2) 現場足跡についてア現場足跡の採取証人θの供述,現場足こん跡採取報告書(検207),実況見分調書(検182)及び鑑定書(検209)によると,乙事件当日の実況見分の際,被害現場である調理場棟(給食室)建物内には,配膳室の西側ドア近くの冷蔵庫の前付近から隣の調理室にかけて何者かが土足で入った痕跡である現場足跡9個が採取されており,他に犯人の足跡らしきものはなく,うち6個は,後に認定するとおり,左右の違いはあっても同模様であること,その採取された場所は犯人が被害者を連れて土足で給食室に侵入した入口付近から犯行場所の休憩室へ通じる道筋でもあることなどが認められ,これらからしてその6個の現場足跡は犯人のものであると推認できる。 イ他事件の現場足跡との関係鑑定書(2通,検209,278)及び証人Sの供述によると,乙事件の上記現場足跡6個は,同模様であり 個の現場足跡は犯人のものであると推認できる。 イ他事件の現場足跡との関係鑑定書(2通,検209,278)及び証人Sの供述によると,乙事件の上記現場足跡6個は,同模様であり,いずれも丙事件の前記現場足跡3個及び丁事件の前記現場足跡4個と同じくアシックス製の前記ランニングシューズのサイズ27.5センチメートル又は27センチメートルとほぼ同じサイズの靴によって印象されており,これらが同一の靴によって印象されたとしても,特に矛盾しないことは認められる(固有特徴の存在を前提とした鑑定意見(検278)を全面的に採用できないのは前記のとおりである。)。 (3) 犯人性の検討以上の諸点その他関係各証拠により検討すると,まず,乙事件の犯人は,被告人に顔が似た人物であり,かつ,その犯行現場で,丁事件及び丙事件の犯人である被告人がそれぞれの犯行の時に履いていた可能性が高いアシックス製の靴とほぼ同じ大きさで,同じ底模様の靴を履いており,これらが同一の靴によって印象されたとしても,特に矛盾しないことが指摘できる。これらからだけでも,被告人が乙事件の犯人である可能性が高いといえる。さらに,乙事件は,休日に,路上で被害者に「教頭先生に会う約束をしている。」「職員室について来て。」などと声を掛けて案内させた小学校内において,ナイフを突きつけて脅して性的犯行に及んだものであるところ,犯行場所はもとより,学校を案内させる甘言を含む一連の経過及びナイフを用いた凶悪な態様が,被告人が犯人である己事件,丁事件及び丙事件とよく似ており,殊に,犯行の際にアイマスクを着用させるという極めて特異な態様は,己事件及び丙事件と同じであり(アイマスクを所持していた点では豊岡事件とも共通する。),全裸にさせるという態様も丁事件及び丙事件のそれと同じで 行の際にアイマスクを着用させるという極めて特異な態様は,己事件及び丙事件と同じであり(アイマスクを所持していた点では豊岡事件とも共通する。),全裸にさせるという態様も丁事件及び丙事件のそれと同じであることに注目せざるを得ない。服装等の点に関しても,野球帽を被り,サングラスをしていた点は,丁事件の被告人の格好と似ており,リュックサックを背負っていた点は,己事件,丁事件及び豊岡事件の場合と似ており,自転車に乗って小学校付近を徘徊している点では,豊岡事件の被告人の犯行前の行動と共通している。また,被告人は,小学校高学年程度の女子児童に対する性的関心が強いのみならず,これを脅して支配することで快感を得る異常な性的傾向を持っており,小学校を現場としてナイフを用いて児童らを脅して性的犯行に及んだ同種前科も存する。そして,乙事件の発生した時期は,上記各事件の最初である丙事件の約2か月前であり,犯行場所も被告人の住む丁市の近辺であり,時期的,場所的な関連性も肯定できる。さらに,逮捕直後に多数の性的犯行を敢行したとの前記の不利益陳述もある。 これらを総合すれば,被告人が乙事件の犯人であることを優に認めることができる。 8 戊事件(判示第5)について(1) 被害者の被害及び犯人識別供述ア関係各証拠,特に,被害者の捜査供述及び証言並びに捜査担当者であるK捜査員及びL捜査員の各証言によれば,被害者の目撃状況,犯人識別過程等について,以下の事実を認めることができる。 (ア) 被害及び目撃状況被害者は,10歳のk小学校に通う小学4年生であったが,平成12年10月8日(日曜日)午前7時50分ころ,ローソンから自宅に戻ろうとしていたとき,リュックサックを背負い白い手袋をして自転車に乗った見知らぬ男(眼鏡は掛け 学校に通う小学4年生であったが,平成12年10月8日(日曜日)午前7時50分ころ,ローソンから自宅に戻ろうとしていたとき,リュックサックを背負い白い手袋をして自転車に乗った見知らぬ男(眼鏡は掛けていない。)から,「p小の子。」「k小,教えて。」「うさぎ飼ってる。」などと声を掛けられた。被害者が同小学校まで案内すると,男が「にわとりのとこまで教えて。」と頼まれたので,体育館の方まで行ったが,男が「ついてき。」と言って,両肩を押してきたので,おかしいと思い,自転車の置いてある方へ走り出したものの,すぐに追いつかれて肩を掴まれ,「どこ行くん。ちゃんと,にわとりのとこまで教えて。」と押し戻された。そして,男は,ポケットの中から取り出した折りたたみ式ナイフを被害者の腹の前に突きだして,怖い声で「泣いたら殺す。」と脅し,被害者の肩を押して本館校舎の中庭に面した非常用出入口踊り場付近まで連れて行った。被害者は,男からナイフを突きつけられて脅され全裸にさせられ,さらに,アイマスクで目隠しをされて,判示の性的被害を受けた。被害者の視力は両目とも1.2以上であった。 (イ) 写真面割,実面割等の経過戊署においては,前記のような経過で,被告人を容疑者として割り出していたが,その写真面割が遅れていたところ,平成12年11月24日に家族の承諾が得られて,検222号証の写真面割台帳で面割を実施したが,被害者は,顔のぽっちゃりした形,目元の感じがすごく似ていると言って,被告人の写真を含めた2枚を選んだが,L捜査員がどちらのほうが似ているかと尋ねると,目元の感じが似ていると言って被告人を指示した(なお,被害者は,事件の当日に写真10枚ぐらいの写真面割台帳を示され,犯人を指示できたとも供述するが,この点は,L捜査員の証言に照らすと,質 尋ねると,目元の感じが似ていると言って被告人を指示した(なお,被害者は,事件の当日に写真10枚ぐらいの写真面割台帳を示され,犯人を指示できたとも供述するが,この点は,L捜査員の証言に照らすと,質問の趣旨を取り違えたか,何らかの誤解に基づくものと窺え,採用できない。)。 平成13年2月17日に,被害者に対し庚署で実面割が行われた。被害者は,迷う様子なく,ぽっちゃりしている顔,丸い目元のところがよく似ていて,犯人に間違いないと言って,直ちに被告人を指示した。 被害者は,平成14年8月7日の公判期日においても,検223号証及び検222号証の写真面割台帳を示されてそれぞれ被告人の写真を指示し,モニターを通じて被告人の顔を見て,「同じ人です。」と答えた。 これら一連の識別供述過程において,被害者が,捜査官らから,特段の暗示や誘導を受けた形跡は窺えない(ただし,被告人を含めた5名全員が紺色の上着を着,他の4人が暗い色のズボンを着用し黒い靴を履いていた中で,被告人だけがや明るい色のスウェットらしきズボンを着用し,サンダルを履いていた。)。 イ評価被害者の視力は良好であったところ,被害者は,午前中の明るい時間帯に,至近距離から犯人を目撃しており,しかも,特異な感情を抱かずに偶然に見た場合と異なり,強烈な印象を伴って目撃したものであることなどを総合すると,観察条件は良好であり,記憶に強く残ったものと認めるのが相当である。 その一連の識別供述は,被害からまださほど経過していない1か月半後に,写真面割で,まず選択的に2枚を選び,そのうち1枚に絞り,さらに,実面割では,確信的に1人を指摘できているのであって,犯人が初対面の男であったこと,当初の写真面割が複数の選択であったこ か月半後に,写真面割で,まず選択的に2枚を選び,そのうち1枚に絞り,さらに,実面割では,確信的に1人を指摘できているのであって,犯人が初対面の男であったこと,当初の写真面割が複数の選択であったこと,実面割の際に,服装の点で被告人だけが浮き上がりかねない危険性があったこと,その他,面割における一般的問題点を考慮しても,それなりに信頼をおくことができるというべきである。 そうすると,その識別供述は,それだけで被告人が犯人であると認定できるほどのものではないけれども,犯人が被告人と似ているという限りにおいて,重要な情況証拠であるということができる。 (2) 現場足跡について証人γの供述,実況見分調書(検152),写真撮影報告書(検265)及び検査嘱託書(検201)によると,戊事件当日の実況見分の際,被害現場である前記の非常用出入口踊り場のコンクリート床面及びそこに至る中庭の犯人が被害者を連れて歩いた排水溝横側コンクリート上から,合計12個の現場足跡が採取されており,その中庭は木が鬱そうと茂っていて人が余り入らない場所と窺えることなどからしても,それらの現場足跡に犯人のものが含まれていると認められる。そして,そのうち排水溝横側コンクリート上から採取された6個は後記に認定するとおり同模様であることをも併せ考えると,これらが犯人の履いた靴によって印象された可能性は高いと認められる。 上記の鑑定書(検203)その他関係各証拠によると,上記の現場足跡6個のうち1個(資料5)は,靴底の一部(つま先部及び踏付部)が印象されたものであるところ,そのうち,踏付部分が被告人の勤務先から押収した前記のディアドラの靴の同部分と円模様,弧模様の間隔の計測値が符合し,大きさ,模様の形態等に相違がなく,他の5個もこれと同模様であっ ものであるところ,そのうち,踏付部分が被告人の勤務先から押収した前記のディアドラの靴の同部分と円模様,弧模様の間隔の計測値が符合し,大きさ,模様の形態等に相違がなく,他の5個もこれと同模様であって,さらに,これらの現場足跡が被告人のディアドラの靴によって印象されたとしても,特に矛盾しないことが認められる。 弁護人は,現場足跡採取を担当したγが作成した検査嘱託書(検201)の検査結果欄に,資料6,8,10の各足跡が「関係者」の足跡である旨記載されているのに,鑑定書では,資料1,4,5ないし7は同模様である旨記載されている点と齟齬するのではないかとの疑問を呈している。しかしながら,関係各証拠によると,右の検査結果は,平成12年10月25日,すなわち,まだ被告人が逮捕に至っておらず,現場足跡と対照すべき靴も特定できていない段階での,足跡だけを見た鑑識員の概括的な意見を聴取した結果であると認められるところ,その検査結果欄を見ると,「関係者」と記載された上記の3資料分以外9個の資料にはいずれも「運動靴様,メーカー不明」と記載されているところ,このような書き分けの根拠は,運動靴様と判定のつくものとそうでないものとを分けたにすぎないと推測される。そうだとすると,対象靴を特定して正式かつ精密に鑑定した結果となにがしかのずれが出てきても何も不思議ではなく,検査嘱託書の検査結果欄に「関係者」と記載された資料6について,その後の正式鑑定の結果,検査嘱託書の検査結果欄に「運動靴様,メーカー不明」と記載された他のものと同模様と判定されたからといって,特に異とするに足りない。弁護人のこの主張をもってしても,上記認定を左右するには至らない。 (3) 時刻表について被告人宅から押収された前記 異とするに足りない。弁護人のこの主張をもってしても,上記認定を左右するには至らない。 (3) 時刻表について被告人宅から押収された前記JR時刻表10月号には,索引地図欄に前記のとおり幾つかの都市に赤鉛筆で丸印がつけられているところ,そのうちの一つに「戊」があり,時刻表本編の東海道山陽新幹線上り頁の丁発名古屋方面行きのうち,まず丁から新大阪までのほとんどの列車の時刻欄に黄色マーカーで印が付けられ,その先では,米原と豊橋の欄だけその発着時刻にほぼ全部同じ印がつけられている(79頁から90頁)。米原が戊市に一番近い新幹線の駅であることを考えると,被告人がこの時期に戊付近への旅行に関心を持っていた事実を認定するに十分である。 (4) 犯人性の検討以上の諸点その他関係各証拠により検討すると,まず,戊事件の犯人は,被告人と顔が似た人物であること,被告人は,戊事件の犯人が犯行現場で履いていた可能性が高いディアドラの靴とほぼ同じ大きさで底模様を同じくするディアドラの靴を持っており,その靴と現場足跡とは矛盾しないことが指摘でき,これらだけでも被告人が犯人である可能性は高いと認められる。加えて,戊事件は,休日の路上で被害者に「うさぎ飼っている,」などと声を掛け,被害現場の小学校内で「にわとりのとこまで教えて。」などと言い,その後,ナイフを突きつけて脅し,性的犯行に及んだものであるところ,その犯行場所はもとより,校内を案内させるための甘言を含む一連の経過及びナイフを用いた凶悪な態様が,被告人が犯人である前記の己事件,丁事件(目撃者らへの誘い行動も含む。),丙事件及び乙事件とよく似ており,殊に,犯行の際にアイマスクを着用させるという極めて特異な態様においては,己事件,丙事件及び乙事件 犯人である前記の己事件,丁事件(目撃者らへの誘い行動も含む。),丙事件及び乙事件とよく似ており,殊に,犯行の際にアイマスクを着用させるという極めて特異な態様においては,己事件,丙事件及び乙事件と同じであり(アイマスクを所持していた点では豊岡事件とも共通する。),全裸にさせるというかなり特異な態様も丁事件,丙事件及び乙事件のそれと同じであることに注目せざるを得ず,これらが同一犯人であることを強く推測させる。服装等の点に関しても,リュックを背負っていた点は,己事件,丁事件,乙事件及び豊岡事件の場合と似ており,季節はずれの手袋をしていた点では,己事件,丙事件及び豊岡事件と同じであり,自転車に乗って徘徊している点では乙事件及び豊岡事件の被告人のそれと共通している。また,被告人には,小学校高学年程度の女子児童に対する性的関心が強いのみならず,これを脅して支配することで性的快感を得る異常な傾向を持っており,小学校を現場としてナイフを用いて同年齢の多数の児童を脅して性的犯行に及んだ同種前科も存する。戊事件の発生した時期は,丙事件,丁事件及び己事件と近接しており時期的な関連性も肯定できる。被告人が,戊近辺への旅行に関心を抱いていた事実も指摘できる。さらに,逮捕直後に多数の性的犯行を敢行したとの前記の不利益陳述もある。 これらを総合すれば,被告人が戊事件の犯人であることを優に認めることができる。 9 甲事件(判示第1)について(1) 被害者の被害及び犯人識別供述ア関係各証拠,特に,被害者の捜査供述及び証言並びに捜査担当者であるK捜査員,N捜査員,O捜査員の各供述によれば,被害者の被害及び目撃状況,犯人識別過程等について,以下の事実を認めることができる。 (ア) 被害及び目撃状況被害者は,12歳の中 員,N捜査員,O捜査員の各供述によれば,被害者の被害及び目撃状況,犯人識別過程等について,以下の事実を認めることができる。 (ア) 被害及び目撃状況被害者は,12歳の中学1年生であり,b小学校の卒業生であったが,平成12年5月27日午後2時ころ,習字の塾に行こうと,b小学校の前を自転車で通ったときに,男の人に呼び止められ,「にわとり小屋があるけど,にわとりの餌は誰がやっているの。餌の置いてあるところ知ってる。その場所まで連れて行って。」と声を掛けられた。男は,父親(43歳)よりも少し年上ぐらいで,頭にバンダナを広げて被り,色の濃くないサングラスか眼鏡を掛けていた。被害者は,校内の自転車置き場に自転車を止めて,男と一緒ににわとり小屋まで行ったが,男は「ついてきて。」と言って校舎の中に入っていった。被害者がついていくと,男は,突然,服の中から取り出したナイフを真正面から突きつけてきて,「言うこときかなんだら刺すぞ。トイレに入れ。」と脅してきた。被害者は,男子トイレ奥の洋式トイレに入り,「泣いたら殺すぞ。」と脅されつつ,全裸にされた上,判示の性的被害を受けた。その際,白の手袋で身体を触られたこともあった。 (イ) 写真面割及び実面割等の経過捜査一課のK捜査員とN捜査員は,平成12年11月24日,被害者方に赴き,同女に対し,検221号証の写真面割台帳を使って初めて写真面割を実施した。被害者は,犯人についての具体的な指示をしなかったものの,上記写真面割台帳をめくっていた際,被告人の写真のある頁で手が止まり,しばらくの間,被告人の写真に目を落として,凝視していた。N捜査員は,被害者に対し,「6番の人が気になるのか」と尋ねたが,被害者は首を傾げるだけではっきりと返事しなかった。この点につき, が止まり,しばらくの間,被告人の写真に目を落として,凝視していた。N捜査員は,被害者に対し,「6番の人が気になるのか」と尋ねたが,被害者は首を傾げるだけではっきりと返事しなかった。この点につき,被害者は,6番の写真が犯人であると分かったが,恐かったため指示することができなかったと述べている。 同年12月23日,被害者に対し,庚署で実面割が行われた。被害者は,特に躊躇することなく「全体の感じからよく似ている」として被告人を指示した。 被害者は,平成14年8月7日の公判廷においても,検223号証の写真面割台帳を示されて被告人の写真を指示し,モニターを通じて被告人の顔を見て,「同じ人だと思う」と答えた。 これら一連の識別供述過程において,被害者が,捜査官らから,特段の暗示や誘導を受けた形跡は窺えない(ただ,実面割の際,被告人を含めた5名全員が紺色の上着を着ていたが,他の4名が白の襟つきのシャツであるのに対し,被告人だけは青いタートルネック風のもの,他の4名が上着とほぼ同色のズボンであるのに対し,被告人だけが明るい色のものであった。)。 被害者は,その証人尋問の際にも,質問に対して何度も沈黙することが繰り返されたのであり,自己の意見ないし感情を表現することが苦手ないし困難な性格であることが窺えた。 イ評価被害者は,犯人がバンダナを被って眼鏡を掛けていたため,顔全体を観察することにはやや難があったが,昼過ぎの時間帯に,至近距離から,一瞬ではない時間,ナイフを突きつけられたときには真正面から犯人を目撃する機会があり,しかも,特異な感情を抱かずに偶然に目撃した場合と異なり,強烈な印象を伴って目撃しており,初対面の男ではあったが,強く記憶に残ったと認められる きつけられたときには真正面から犯人を目撃する機会があり,しかも,特異な感情を抱かずに偶然に目撃した場合と異なり,強烈な印象を伴って目撃しており,初対面の男ではあったが,強く記憶に残ったと認められる。観察状況は良好であったというのが相当である。 その一連の犯人識別供述は,事件からほぼ半年を経過した後に初めて写真面割をした点で,新鮮な時期におけるものとはいい難く,記憶の劣化,変容の危険性は考慮に入れなければならないけれども,暗示,誘導なくして10枚の写真のうちから犯人に似た男の写真に気がついていたというべきで,その1か月余後の実面割でも,特段の暗示や誘導がないのに,5人の中から犯人に似た男を指示し得ているのであって,この実面割の際に,服装の点で被告人だけが浮き上がりかねない危険性があったこと,最初の写真面割で声に出して指示できなかったこと,この他,面割における一般的な問題点などを差し引き考慮に入れてみても,それなりの信頼をおくことができるというべきである。 そうすると,被害者のこの識別供述だけでもって,甲事件の犯人が被告人であると断定することは到底できないが,犯人が被告人と似ているという限りにおいて,重要な情況証拠ということができる。 (2) 現場足跡について証人δの供述,実況見分調書(2通,検89,90),現場足こん跡採取報告書謄本(検266)その他関係各証拠によると,甲事件においては,被害当日の実況見分の際に,被害現場である校舎南館の男子トイレ前の廊下を中心に相当数の現場足跡が採取されたことが認められる。その採取された位置関係に加えて,その廊下は,校舎南館東側出入口付近にいわゆる下駄箱(校内靴も入れる)が設置されている情況等からして普段は土足で歩行する場所ではなく,他方で,犯人は被害者を連れ土足 その採取された位置関係に加えて,その廊下は,校舎南館東側出入口付近にいわゆる下駄箱(校内靴も入れる)が設置されている情況等からして普段は土足で歩行する場所ではなく,他方で,犯人は被害者を連れ土足のまま上がって歩いたと窺えることなどを併せ考えると,その現場足跡は,少なくとも犯人のものを含んでいると認めるのが相当である。 ところで,鑑定書(検98),証人Sの供述,領置調書(検95)及び写真撮影報告書(検96)によると,その現場足跡のうちの男子トイレから廊下の西側部分約10メートルの範囲において採取された幾つかのものは明瞭であり,それらは,いずれも被告人から任意提出された靴(以下「レクソナー」という。)の左右とほぼ同じ大きさで底模様を同じくしており,この現場足跡が被告人のレクソナーの靴によって印象されたとしても,特に矛盾のないことが認められる。 弁護人は,そのレクソナーの現場足跡については,犯人の逃走経路と矛盾しているので,犯人のものではないのではないかと疑問を提起する。確かに,レクソナーの靴によって印象された現場足跡は,上記のとおり男子トイレから西側廊下の一定範囲に明瞭な形で集中し,その東側(犯人が被害者を男子トイレまで連れてきた経路)からは明瞭なものは採取されていない。他方で,男子トイレの西側の先は,休日には廊下にシャッターが下ろされ,出入りすることができないが,これら一連の明瞭な現場足跡の最も西側付近(シャッターの手前)の廊下北側の窓は錠が外されてそこから出入りができる状態であったことなどが認められる。このような状況下でのレクソナーの現場足跡の意味を考えてみると,その靴先の向きを明らかにする証拠はないが(ただ,現場足跡を採取したアセテート紙を貼り付けた台紙には,採取の際にアセテート紙を床に置いた方角を明らかにするた クソナーの現場足跡の意味を考えてみると,その靴先の向きを明らかにする証拠はないが(ただ,現場足跡を採取したアセテート紙を貼り付けた台紙には,採取の際にアセテート紙を床に置いた方角を明らかにするためと思われる方位が記入されているところ(平成14年押第80号の23から29),その方位との関係ではレクソナーの靴を履いた者はトイレ付近から西側に向けて歩いた可能性が高いものと思われる。),西向きだとすると,トイレの床面が濡れていたと考えられること(δ及びSの各証言)から,靴底を濡らして足跡が付着しやすい状態でトイレを出て西に進み,その窓から外に出たものとも考えられ,東向きだとしても,その靴を履いた者が窓から侵入してトイレ方面に歩いたものとも考えられる。いずれにせよ,廊下の窓から土足のまま出入りする不審な行動をとった者がいたことを意味し,そのような者がそのころ甲事件の犯人以外にいるとは思われないことからすると,そのレクソナーの現場足跡は甲事件の犯人のものと認めるほかはないものである(西側からトイレ方向に歩いたとすると,その侵入目的は現場を下見するためであると考えるのが合理的であろう。)。現場足跡の向きを根拠とする弁護人の提起する疑問も上記の認定を左右するものではない。 なお,弁護人は,男子トイレ内から現場足跡が採取されていない不自然さもいうが,トイレ内が上記のとおり濡れていた可能性が高いばかりでなく,その床面が小さいタイルでできていて,廊下のフローリングと素材の違いのあることを考えると,トイレ内から現場足跡が採取されていないことをもって異とするには足りない。 また,被告人は,現場足跡の上記資料26と対照靴を転写したカラーホイルとを比較し,上記資料26に印象されている部分(被告人が内壁と称する部分)が上記カラーホイルには印象 るには足りない。 また,被告人は,現場足跡の上記資料26と対照靴を転写したカラーホイルとを比較し,上記資料26に印象されている部分(被告人が内壁と称する部分)が上記カラーホイルには印象されておらず,また,上記資料26に印象されていない「27.0EE」の部分が上記カラーホイルに印象されているから,現場足跡は対照靴と異なる靴によって印象されたものであるかのような主張をする。確かに被告人の主張するような印象状況の違いが認められるが,事件発生から対照靴が押収されるまで約5か月余りの経時変化があること,靴底の全ての模様が現場足跡として印象されるわけではないこと,そもそも印象又は転写の方法,場所及び環境等に違いがあることなどを考慮すると,被告人の指摘する点をもってしても,現場足跡の靴と被告人の靴が違ったものであるとまでは到底いえない。 (3) 犯人性の検討以上のとおり,甲事件の犯人は,被告人と顔が似た人物であり,被告人は,犯人が犯行現場で履いていたレクソナーの靴とほぼ同じ大きさで底模様を同じくするレクソナーの靴を持っており,その靴と現場足跡が矛盾しないことを指摘することができ,これらだけからでも,被告人が犯人である可能性は高いというべきである。加えて,甲事件は,休日の小学校の前において,被害者に「にわとり小屋まで連れて行って」などと声を掛け,その後,ナイフを突きつけて脅し,わいせつ行為に及んだ事件であるところ,犯行場所はもとより,校内を案内させる甘言を含む一連の経過及びナイフを用いた凶悪な態様が,被告人が犯人である己事件,丁事件,丙事件,乙事件及び戊事件とよく似ており,全裸にさせるという態様も,上記事件の大部分と同じであることも注目せざるを得ない。手袋をしたままでわいせつな行為をしたという特異な態様は己事件でも見ら 件,丙事件,乙事件及び戊事件とよく似ており,全裸にさせるという態様も,上記事件の大部分と同じであることも注目せざるを得ない。手袋をしたままでわいせつな行為をしたという特異な態様は己事件でも見られるところである。また,被告人には,小学校高学年程度の児童に対する性的関心が強いのみならず,これを脅して支配することで性的快感を得る異常な傾向を持っており,小学校を現場としてナイフを用いて児童らを脅して性的犯行に及んだ同種前科も存する。豊岡事件の際の被告人の所持品の中にはバンダナも発見されている。そして,甲事件の発生した時期は,丙事件と近接しており,甲市は丁市の近郊であることからは,時期的,場所的な関連性も肯定できる。 さらに,逮捕直後に多数の性的犯行を敢行したとの前記の不利益陳述もある。 以上を総合すれば,甲事件の犯人が被告人であることについては優に認定することができる。 (4) 被告人のアリバイの主張について被告人は,甲事件当日の昼ごろ,兵庫県辛町内にいるおばのω方を訪れ,λと3人で一緒に食事をしたと思う旨供述しているため,被告人にアリバイが成立するか否か,上記犯人性の認定を左右するものか否かを検討する。 被告人は,上記日時については確信を持って供述しているわけではないことが窺えるところ,ωは,捜査供述において,被告人がω方を訪ねてきた際に,近所にあるスーパーマーケットのマックスバリュ(旧ウェルマート)辛店でにぎり寿司を購入してきて,λを含め3人で食べたことは記憶しているが,その時期については,3月から6月くらいまでの間で,そのころ,ほかに2回来訪していることもあって,時期を明確にすることはできないと述べるにすぎない。λは一緒に食事をしたことすらほとんど覚えていない。 そこで,上記スーパーの売上ジャー 間で,そのころ,ほかに2回来訪していることもあって,時期を明確にすることはできないと述べるにすぎない。λは一緒に食事をしたことすらほとんど覚えていない。 そこで,上記スーパーの売上ジャーナルから(検381添付),日時の裏付けが可能かどうかを検討するに,被告人は,3人で食事をしたときには,λがわざわざ自分の分の食事を持参したとして,ωは上記スーパーでは二人分の食事を購入してきたかのような供述をするので(ただし,ωは,捜査供述においては,にぎり寿司を3個購入したと明確に供述し,公判廷においては,にぎり寿司を2個買ったのか3個買ったのか覚えていないなどと供述している。),これを前提に,被告人が勤務していない日でかつλが入院していない日(検380参照)の,昼ごろの時間帯における上記スーパーの売上ジャーナル(検381)を見ると,同店のにぎり寿司2品の販売実績は,確かに,甲事件当日の平成12年5月27日にあるものの,これに似た寿司類2品の販売実績は同年4月11日(にぎり盛り合わせ)と同月15日(にぎり寿司)にもあるのであって(仮にωがにぎり寿司を3品購入した場合は,甲事件当日には販売実績はなく,同年5月24日に盛り合わせ寿司3品の販売実績がある。),結局のところ,被告人の供述を前提にしても,ω宅訪問が甲事件の日であるとまでは裏付けられないのであって,アリバイが成立するとまではいえない(さらに言えば,被告人は,当初は捜査官に対して「甲事件の日には,ωのおばさんところに行った。その時知っている人の見舞いに行ったような気がする。」と述べていたのであって(検380,381),関係各証拠上,その見舞い相手はλと考えるほかないところ,その供述は,見舞いとは関係なくλを加えて3人で食事をしたとのその後の供述と齟齬しており,そもそもそのアリバイ供述 って(検380,381),関係各証拠上,その見舞い相手はλと考えるほかないところ,その供述は,見舞いとは関係なくλを加えて3人で食事をしたとのその後の供述と齟齬しており,そもそもそのアリバイ供述は,甲事件の起訴後になって初めて言い出されたものである上に,内容的にも曖昧なのである。)。 上記のアリバイに関する諸事情(弁護人のいう「アリバイの成立する合理的可能性」)をもってしても,被告人が甲事件の犯人であるとの上記認定に合理的な疑いを生ぜしめるものではない。 ・総括以上のとおり,判示第1ないし第6の各事件については,いずれも被告人の犯行であると認めることができ,これらについて被告人の有罪は明らかである。 なお,被告人は,公判供述ないし上申書等で,種々の点に触れて自己の無罪を主張しているが,そのほとんどは,各事件の証拠の価値ないし評価に関して独自の見解を述べたものであるところ(採用されていない証拠を根拠にしているものも多い。),これらを逐次検討してみても,上記の認定判断を左右するに足りるものはない。 第2 判示第9の事実について被告人は,判示第9の事実について,ナイフを所持していたのは間違いないが,現行犯逮捕された時に女性捜査員がナイフを持ち去ったので,判示のナイフを所持していたかどうかは疑問である旨供述し,弁護人も,所持していたナイフの特定について犯罪の証明がないと主張するが,証人T捜査員,U捜査員及びN捜査員の供述,κの捜査供述(検23)並びに捜査書類(検19ないし21)を総合すると,被告人が,判示の日時場所において,判示の折りたたみ式ナイフを所持していたことは明らかであるというほかない。 (累犯前科)被告人は,平成4年10月14日岡山地方裁判所で強制わいせつ,強制わいせつ未遂,わいせつ拐取,強制 において,判示の折りたたみ式ナイフを所持していたことは明らかであるというほかない。 (累犯前科)被告人は,平成4年10月14日岡山地方裁判所で強制わいせつ,強制わいせつ未遂,わいせつ拐取,強制わいせつ致傷,わいせつ誘拐罪により懲役7年に処せられ,平成10年7月22日その刑の執行を受け終わったものであって,この事実は検察事務官作成の前科調書によってこれを認める。 (法令の適用)省略(量刑の理由)本件は,10歳から13歳までの女児6名に対して敢行された強姦致傷,強姦,強制わいせつ致傷,強制わいせつの各事案,正当な理由もなく小学校内の女子トイレ内に侵入した建造物侵入の事案,その際に折りたたみ式ナイフを所持していた銃刀法違反の事案,その他放置自転車を領得した占有離脱物横領の事案である。 判示第1ないし第6の強姦等の態様は,いずれも自己の性欲を満たす目的で,ナイフやアイマスクを準備し,容易に抵抗できない小学校高学年の女児にねらいをしぼり,丁事件では無理矢理被害者の背負っていたリュックサックをつかんで引きずって,その他の事件では被害者の親切心につけ込んで校内を案内させて,小学校内の人気のない場所に連行し,いきなりナイフを顔付近等に突きつけて,「殺すぞ」などと厳しく脅迫し,ほとんどの者を全裸にし,アイマスクを被せるなどして強姦ないしわいせつ行為に及んだものである。その一つ一つが計画的である上,まことに卑劣で,危険かつ凶暴な犯行というほかない。その被害者らは,いずれも小学校高学年又は中学生の少女であり,たまたま犯行現場の小学校付近にいたところ,親切心につけ込まれるなどして,誰にも助けを呼べない人気のない場所で,上記のような厳しい態様で被害にあったのであって,その恐怖心等は計り知れない。中には,男性に対する不信感から父親に対してさえ嫌 親切心につけ込まれるなどして,誰にも助けを呼べない人気のない場所で,上記のような厳しい態様で被害にあったのであって,その恐怖心等は計り知れない。中には,男性に対する不信感から父親に対してさえ嫌悪感を抱くようになった者,その動揺等から継続的にカウンセリングを受けなければならなくなった者,また,同じような被害者を出したくないとの思いから正直に被害を申告したにもかかわらず,かえって近隣住民から心ない言葉をぶつけられたり,好奇の目で見られるなどして,転居を余儀なくされた者もいる。本来守られるべき被害者やその家族がこのような二次的な被害に遭わなければならない不条理な現実もある中で,今後も心の傷を背負っていかなければならない被害者や人生をかけて被害者を守っていかなければならないその家族の苦痛は,察するに余りある。これに対して被告人は,慰謝の措置を講じるどころか,自らの犯行を認めようとせず,反省の態度すら示していないのであるから,被害者らの処罰感情が峻烈であるのも当然のことである。 判示第7ないし第9の各事件も,上記各強姦等事件の延長線上にあるものと位置づけるのが相当であり,その犯情は良くない。 被告人は,小学校高学年くらいの女児に性的興味を覚えるようになり,昭和43年に9歳から12歳の女児3名に対する強制わいせつ事件で執行猶予付き懲役刑を受け,平成4年には10歳から13歳の女児10名に対してカッターナイフ等を用いて連続的に敢行した強制わいせつ致傷等事件で懲役7年の実刑に処せられ,平成10年7月に出所したばかりであるにもかかわらず,またもや,前件と同様の凶悪な手口で,同じ年齢層の女児に対する性的犯行を,連続的に繰り返したのである。 背景に女児を強圧的に支配することで性的興奮を覚えるという根強く危険な性格傾向があることや,前件の犯行発覚の失 と同様の凶悪な手口で,同じ年齢層の女児に対する性的犯行を,連続的に繰り返したのである。 背景に女児を強圧的に支配することで性的興奮を覚えるという根強く危険な性格傾向があることや,前件の犯行発覚の失敗に学び,女児にアイマスクを着用させたり,自らの体液を残さないようにするなど,その態様が巧妙になっていることなどからすると,この種事犯に対する常習性が顕著であり,再犯のおそれも高いといわざるを得ない。 以上のような本件犯行の悪質性,結果の重大性,被害感情の大きさ,この種事犯に対する常習性と再犯のおそれを総合すると,各致傷罪における加療期間自体はさほど長いものではないことなどを考慮しても,被告人の刑責はまことに重大であり,主文の刑をもって臨むほかない。 平成16年3月17日神戸地方裁判所姫路支部刑事部裁判長裁判官伊東武是裁判官小倉哲浩裁判官平城文啓
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