令和1(ワ)1520 求償金請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年9月1日 札幌地方裁判所
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判決文本文24,774 文字)

判決 主文 1 被告Aは,原告に対し,373万3069円及びこれに対する令和元年5月28日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2 被告Bは,原告に対し,188万9888円及びこれに対する令和元年5月2 8日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は被告らの負担とする。 4 この判決は,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 主文同旨第2 事案の概要本件は,信販会社である原告が,①被告らは,有限会社D(以下「本件会社」という。)から中古自動車を購入するに際し,原告との間で,原告に購入代金の借入れの保証を委託する旨のオートクレジット契約をそれぞれ締結したところ,被告らは 借入金の返済をせず,それゆえ原告が代位弁済をしたと主張して,被告らに対し,上記各契約に基づく求償金(被告Aにつき373万3069円,被告Bにつき188万9888円)及びこれに対する代位弁済日の翌日である令和元年5月28日から支払済みまで平成29年法律第45号による改正前の商法における商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求め(主位的請求),②仮に上記各契約 が成立していなかったとしても,被告らは立替金名目の下に不正に金員を取得するという詐欺行為に加担したものであると主張して,被告らに対し,共同不法行為に基づき,上記①と同額の損害賠償の支払を求める(予備的請求)事案である。 1 前提事実(証拠等を掲記した事実以外は当事者間に争いがない。)(1) 当事者等 ア原告は,割賦販売法に基づく割賦購入あっせん,信用保証等を業とする信 販会社である。 イ本件会社は,新車・中古車販売等を業とする有限会社である。 (1) 当事者等 ア原告は,割賦販売法に基づく割賦購入あっせん,信用保証等を業とする信 販会社である。 イ本件会社は,新車・中古車販売等を業とする有限会社である。 Cは,平成30年当時,本件会社の代表者を務めていた者である。 ウ被告Aと被告Bは兄妹であり,いずれもCと友人関係にあった者である。 (2) 被告A名義のオートクレジット契約 ア契約書の存在平成30年12月21日付けのオートクレジット契約書(甲2。以下「本件契約書1」といい,これによる契約を「本件契約1」という。)には,被告Aが原告との間でオートクレジット契約を締結する旨の記載があり,被告A名下には被告Aの実印による印影がある。 そして,この本件契約書1には,被告Aが,本件会社から中古自動車(トヨタ・レクサスLS)を380万円で購入するに際し,その全額を損害保険ジャパン日本興亜株式会社(以下「損保ジャパン」という。)から利率年2. 5%,支払回数48回との約定で借り入れた上,原告にその保証を委託する旨記載されている。 イ本件会社への送金本件契約1に基づき,平成30年12月27日,本件会社に対して立替金380万円が送金された(甲4)。 (3) 被告B名義のオートクレジット契約ア契約書の存在 平成30年11月13日付けのオートクレジット契約書(甲3。以下「本件契約書2」といい,これによる契約を「本件契約2」という。)には,被告Bが原告との間でオートクレジット契約を締結する旨の記載があり,被告B名下には被告Bの実印による印影がある。 そして,この本件契約書2には,被告Bが,本件会社から中古自動車(ニ ッサン・モコ)を197万円で購入するに際し,うち195万円 旨の記載があり,被告B名下には被告Bの実印による印影がある。 そして,この本件契約書2には,被告Bが,本件会社から中古自動車(ニ ッサン・モコ)を197万円で購入するに際し,うち195万円を損保ジャ パンから利率年5.2%,支払回数54回との約定で借り入れた上,原告にその保証を委託する旨記載されている。 イ本件会社への送金本件契約2に基づき,平成30年11月22日,被告会社に対して立替金195万円が送金された(甲5)。 (4) Cの死亡Cは,平成31年2月3日,死亡した(弁論の全趣旨)。 (5) 原告の代位弁済原告は,令和元年5月27日,損保ジャパンに対し,①本件契約1による金銭消費貸借につき,その連帯保証人として,残元金372万4643円及び利 息8426円(合計373万3069円),②本件契約2による金銭消費貸借につき,その連帯保証人として,残元金188万5603円及び利息4285円(合計188万9888円)を支払った(甲10,11)。 2 争点(1) 主位的請求(本件契約1及び2に基づく求償金請求) ア本件契約1の成否イ本件契約2の成否ウ被告Aによる抗弁接続の主張の可否エ被告Bによる抗弁接続の主張の可否オ不実告知に基づく取消権の有無 カ原告の請求額(2) 予備的請求(不法行為に基づく損害賠償請求)ア被告Aによる不法行為の有無イ被告Bによる不法行為の有無ウ原告の損害額 第3 当事者の主張 1 争点(1)ア(本件契約1の成否)について(原告の主張)被告Aは,本件契約書1を作成し,もって原告との間で本件契約1を締結したも 損害額 第3 当事者の主張 1 争点(1)ア(本件契約1の成否)について(原告の主張)被告Aは,本件契約書1を作成し,もって原告との間で本件契約1を締結したものである。 この点につき被告Aは,本件契約書1は偽造である旨主張するが,本件契約書 1には被告Aの実印が押捺され,かつ印鑑登録証明書もCのもとにあったのであるから,本件契約1は被告Aの意思に基づいて成立したとするのが合理的である。 また,仮に被告Aには原告との間で本件契約1を締結する具体的な意思がなかったとしても,被告AはCに実印及び印鑑証明カードを交付することによって,クレジット契約の締結について包括的な権限を授与していたといえるから,本件契 約1は被告Aの意思に基づくものというべきである。 なお,仮に被告Aに真にクレジット債務を負担する意思がなかったとしても,それは心裡留保に当たり,原告に対してその無効を主張することはできない(平成29年法律第44号による改正前の民法93条ただし書)。 (被告Aの主張) 否認する。被告Aがトヨタ・レクサスLSを本件会社から購入したことはなく,本件契約書1は,以下のとおり,Cが被告Aの実印を冒用して作成したものである。 被告Aは,Cからいわゆる名義貸しの依頼を受けて,平成30年4月,同人に実印及び印鑑証明カードを渡し,Cはこれを用いてプレミアファイナンシャルサ ービス株式会社(以下「プレミア」という。)とのオートクレジット契約書(購入車をニッサン・エルグランドとするもの)を作成した。また,被告Aは,同年10月にもCに実印及び印鑑証明カードを渡し,Cはこれを用いてプレミアとのオートクレジット契約書(購入車をトヨタ・アルファードとするもの)を作成した。 その るもの)を作成した。また,被告Aは,同年10月にもCに実印及び印鑑証明カードを渡し,Cはこれを用いてプレミアとのオートクレジット契約書(購入車をトヨタ・アルファードとするもの)を作成した。 その後,Cは,被告Aに対し,既存のオートクレジット契約を金利の安い方に 借り換える旨述べた。そこで,被告Aは,同年12月,Cに対して実印及び印鑑 証明カードを渡したところ,Cは被告Aに無断でこれを冒用し,本件契約書1を作成したものである。 2 争点(1)イ(本件契約2の成否)について(原告の主張)被告Bは,本件契約書2を作成し,もって原告との間で本件契約2を締結した ものである。 この点につき被告Bは,本件契約書2は偽造である旨主張するが,本件契約書2には被告Bの実印が押捺されていることから,本件契約2は被告Bの意思に基づいて成立したとするのが合理的である。また,仮に被告Bには原告との間で本件契約2を締結する具体的な意思がなかったとしても,これを事後的に承認して いるのであるから,本件契約2は被告Bの意思に基づくものというべきである。 そもそも被告Bは,原告の担当者からの電話確認に対し,本件契約2の内容について種々回答していたところである。 なお,仮に被告Bに真にクレジット債務を負担する意思がなかったとしても,それは心裡留保に当たり,原告に対してその無効を主張することはできない(平 成29年法律第44号による改正前の民法93条ただし書)。 (被告Bの主張)否認する。被告Bがニッサン・モコを本件会社から購入したことはなく,本件契約書2は,以下のとおり,Cが被告Bの実印を冒用して作成したものである。 被告Bは,Cからいわゆる名義貸しの依頼を受けて,平成30年11月7日, 飲 件会社から購入したことはなく,本件契約書2は,以下のとおり,Cが被告Bの実印を冒用して作成したものである。 被告Bは,Cからいわゆる名義貸しの依頼を受けて,平成30年11月7日, 飲食店でCに会い,同人に実印及び印鑑登録証明書1通を渡した。Cは被告Bの面前で複数枚の書類に上記実印を押捺し,プレミアとのオートクレジット契約書(購入車をトヨタ・ヴォクシーとするもの)を作成した。なお,上記実印はその場で被告Bに返された。 そして,Cは,同月12日,被告Bに対し,追加のオートクレジット契約の締 結を求められ,被告Bはこれを承諾した。もっとも,被告Bは,本件契約書2の 作成日である同月13日にはCと会っておらず,実印や印鑑登録証明書も渡していない。Cは,同月7日の面会時にあらかじめ本件契約書2を準備し,被告Bに秘してその場で押印したものであって,本件契約書2の作成は被告Bの意思によるものではない。 なお,Cは,同月16日,被告Bに「139万円で組みます。色はパープルの モコです。」などと連絡しているが,本件契約書2の作成日は同月13日であって,同日時点では被告Bに無断で作成していたことは明らかである。また,被告Bは,原告の担当者からの電話確認に対して種々の対応をしているが,錯誤によるものであり,仮にこれが追認といえるとしても無効である。 3 争点(1)ウ(被告Aによる抗弁接続の主張の可否)について (被告Aの主張)(1) 仮に本件契約1が原告と被告Aとの間で有効に成立しているとしても,被告Aと本件会社との間にはトヨタ・レクサスLSの売買契約は存在しないから,被告Aは,本件契約1の契約責任を負わない。 (2) この点につき原告は,被告Aによる抗弁接続の主張が信義則に反する旨主張 本件会社との間にはトヨタ・レクサスLSの売買契約は存在しないから,被告Aは,本件契約1の契約責任を負わない。 (2) この点につき原告は,被告Aによる抗弁接続の主張が信義則に反する旨主張 する。 しかし,割賦販売法が抗弁接続の規定(同法35条の3の19第1項)を設けた制度趣旨からすると,抗弁接続の主張が信義則に反するとして制限されるのは,購入者に何らかの過失や不注意があるだけでは足りず,信販会社が販売店に対する調査・管理の義務を尽くしたかどうかをも考慮に入れた上で,購入 者において,販売店がクレジットシステムを悪用して信販会社から不正な利得を取得することにつき,その間の事情を認識しながら,その手続や利得の分配に積極的に加担したような場合に限られるというべきである。 本件においては,被告AはCに利用されたものにすぎず,購入者として保護に値しないということはできない。また,本件契約1の目的物であるトヨタ・ レクサスLSは平成19年式であり,契約当時10年落ちの車両であるにもか かわらず,本体価格は320万円と明らかに異常な高額になっているところ,原告はこの異常性について何らの調査・確認をしていない。さらに,原告の担当者が電話確認をした相手は被告A本人ではなく,その対応には不審な点があったのに,この点についても調査・確認をしていない。しかも,被告Aは直前の平成30年4月及び10月にもオートクレジット契約を締結しており,原告 は与信調査の時点でその不適切利用の可能性を疑うべきであった。 したがって,被告Aによる抗弁接続の主張につき,信義則に反する事情はない。 (原告の主張)(1) 被告AにCとの売買についての具体的な認識がなかったとしても,被告Aが 売買契約の不成 たがって,被告Aによる抗弁接続の主張につき,信義則に反する事情はない。 (原告の主張)(1) 被告AにCとの売買についての具体的な認識がなかったとしても,被告Aが 売買契約の不成立を主張することは,信義則上許されない。 そもそもオートクレジット契約は代金支払の手段であることから,売買契約の存在を当然の前提としており,被告Aがオートクレジット契約について自己の名義の使用を承認している以上,その前提となる売買契約についても,自己の名義の使用を承認していると考えるのが合理的である。 特に,本件において,被告Aは,Cがオートクレジット契約を利用して不正に金融を得ることを認識し,かつ積極的に加担しているのであって,そのような被告Aが売買契約の不成立を原告に主張することは,信義則に反して許されないものである。 (2) この点につき被告Aは,①自分はCに利用されたにすぎない,②自動車の本 体価格が明らかに異常な高額となっていたのに,原告は調査・確認していない,③電話確認の相手方の対応には不審な点があったのに,この点についても調査・確認していない,④原告は与信調査の時点で不適切利用の可能性を疑うべきであったなどと主張する。 しかし,①については,被告AはCに漫然と実印及び印鑑証明カードを渡し ており,むしろ不正行為に協力した形跡さえうかがわれる。②については,売 買価格は本来買主側が関心を持ち,自ら決定すべきものである上,本件において高額すぎるという立証もない。③については,当時の電話確認において,通話相手が被告Aであることを見抜けなかったからといって,その名義貸しの責任が原告に転嫁されるものではない。④については,本件契約1の当時,被告Aの過去の契約はいずれも正常支払中で 話確認において,通話相手が被告Aであることを見抜けなかったからといって,その名義貸しの責任が原告に転嫁されるものではない。④については,本件契約1の当時,被告Aの過去の契約はいずれも正常支払中であった。 したがって,被告Aの上記主張は,いずれも採用することができない。 4 争点(1)エ(被告Bによる抗弁接続の主張の可否)について(被告Bの主張)(1) 仮に本件契約2が原告と被告Bとの間で有効に成立しているとしても,被告Bは,以下のとおり,本件会社に対して生じている事由をもって,割賦販売法 35条の3の19第1項に基づき,原告からの請求に対する支払停止の抗弁を主張する。 ア売買契約の不存在被告Bと本件会社との間にはニッサン・モコの売買契約は存在しないから,被告Bは,当該売買契約の不存在を事由として,原告の請求に対する支払を 拒絶する。 イ債務不履行仮に被告Bと本件会社との間にニッサン・モコの売買契約が存在するとしても,本件契約書2によればその引渡時期は平成30年11月30日頃とされているところ,被告Bはニッサン・モコの引渡しを受けていない(履行遅 滞)。また,今日に至るまでニッサン・モコの所在は不明であり,Cの死亡によりその引渡しはもはや不可能となっている(履行不能)。 したがって,被告Bは,本件会社の売買契約の債務不履行を事由として,原告の請求に対する支払を拒絶する。 (2) この点につき原告は,被告Bによる抗弁接続の主張が信義則に反する旨主張 する。 しかし,被告Aが争点(1)ウにおいて主張したとおり,抗弁接続の主張が信義則に反するとして制限されるのは,信販会社が販売店に対する調査・管理の義務を尽く る旨主張 する。 しかし,被告Aが争点(1)ウにおいて主張したとおり,抗弁接続の主張が信義則に反するとして制限されるのは,信販会社が販売店に対する調査・管理の義務を尽くしたかどうかをも考慮に入れた上で,購入者において,販売店がクレジットシステムを悪用して信販会社から不正な利得を取得することにつき,その間の事情を認識しながら,その手続や利得の分配に積極的に加担したよう な場合に限られるというべきである。 本件においては,被告BもCに利用されたものにすぎず,購入者として保護に値しないということはできない。また,本件契約2の目的物であるニッサン・モコは平成21年式であり,契約当時9年落ちの軽自動車であるにもかかわらず,本体価格及び付属品等を併せた額が195万円と明らかに異常な高額とな っているところ,原告はこの異常性について何らの調査・確認をしていない。 さらに,被告Bは直前の平成30年11月7日にもオートクレジット契約を締結しており,原告は与信調査の時点でその不適切利用の可能性を疑うべきであった。しかも,ニッサン・モコについては令和3年4月13日付けで解体されており,これには原告の協力がうかがわれるのであって,自ら被告Bへのニッ サン・モコの引渡しを不能にした。 なお,原告は,名義貸与者が商品未納を理由とする抗弁を主張することは信義則上許されないとするのが確立した判例であるとも主張するが,原告のいう判例とは購入者側に抗弁接続の主張を認めるべきでない背信性があることを理由としたものにすぎず,名義貸与者による商品未納を理由とする抗弁の主張 自体が直ちに信義則違反であるとする判例が確立されているわけではない。 したがって,被告Bによる抗弁接続の主張につき,信義則に反する事情はな 与者による商品未納を理由とする抗弁の主張 自体が直ちに信義則違反であるとする判例が確立されているわけではない。 したがって,被告Bによる抗弁接続の主張につき,信義則に反する事情はない。 (原告の主張)(1)ア被告Bは,Cがオートクレジット契約を利用して不正に金融を得ること を認識し,かつ積極的に加担しているのであって,そのような被告Bが売買 契約の不成立を原告に主張することは,信義則に反して許されない。のみならず,被告Bは,原告の担当者からの「不正なやり取りはなかったでしょうか。」との質問に対し,「大丈夫です。」などと虚偽回答をしており,その背信性には著しいものがある。 したがって,被告Bが売買契約の不成立を主張することは,信義則上許さ れない。 イまた,被告Bは,ニッサン・モコの引渡しを受けていないことを理由として,原告の請求を拒むことができる旨主張するが,名義貸与者が商品未納を理由とする抗弁を主張することは信義則上許されないとするのが確立した判例である。 (2) この点につき被告Bは,①自分はCに利用されたにすぎない,②自動車の本体価格が明らかに異常な高額となっていたのに,原告は調査・確認していない,③原告は与信調査の時点で不適切利用の可能性を疑うべきであった,④ニッサン・モコは原告の協力により解体されており,原告は自らその引渡しを不能にしたなどと主張する。 しかし,①については,被告Bは売買の実体がないことを十分に認識した上で,割賦金の支払意思がないにもかかわらず虚偽のオートクレジット契約を締結し,原告を欺罔したものである。②については,売買価格は本来買主側が関心を持ち,自ら決定すべきものである上,本件において高額すぎるという立証 払意思がないにもかかわらず虚偽のオートクレジット契約を締結し,原告を欺罔したものである。②については,売買価格は本来買主側が関心を持ち,自ら決定すべきものである上,本件において高額すぎるという立証もない。③については,本件契約2の当時,被告Bの過去の契約は未登録であ って,そもそも原告において認識することができなかった。④については否認ないし争う。 したがって,被告Bの上記主張は,いずれも採用することができない。 5 争点(1)オ(不実告知に基づく取消権の有無)について(被告らの主張) 仮に本件契約1及び2の成立が認められるとしても,被告らは,以下のとおり, 割賦販売法35条の3の13第1項に基づく取消権を行使する。 (1) 被告Aについて被告Aは,Cから金利の安い方に借り換える旨を述べられ,オートローンの借換えのために必要との認識のもとで,本件契約1の締結に応じた。また,その際,Cからは「支払は迷惑かけません」と言われており,Cにおいて支払が しかるべくされるであろうとの認識のもとで名義貸しに応じた。 しかし,金利の安い方に借り換えるとのCの申出は虚偽であって,被告AはCに利用されたものである。 したがって,仮に本件契約1の成立が認められるとしても,被告Aは,本件契約1の締結の動機に関する重要な事項についてCから不実告知を受けたも のであるから,割賦販売法35条の3の13第1項6号に該当し,被告Aは本件契約1について同項に基づく取消権を行使する。 (2) 被告Bについて被告Bは,Cから「オートローンの金額間違えてて足りなくて」との申出を受け,「大丈夫,迷惑はかけないから」としか説明されないまま,本件契約2の 締結を求めら (2) 被告Bについて被告Bは,Cから「オートローンの金額間違えてて足りなくて」との申出を受け,「大丈夫,迷惑はかけないから」としか説明されないまま,本件契約2の 締結を求められたものである。しかし,「オートローンの金額間違えてて足りなくて」との申出は虚偽であり,被告BもまたCに利用されたものである。 したがって,仮に本件契約2の成立が認められるとしても,被告Bは,本件契約2の締結の動機に関する重要な事項についてCから不実告知を受けたものであるから,割賦販売法35条の3の13第1項6号に該当し,被告Bは本 件契約2について同項に基づく取消権を行使する。 (3) 原告の主張についてこの点につき原告は,割賦販売法35条の3の13第1項は訪問販売又は電話勧誘販売について取消権を認めたものであるところ,本件において訪問販売ないし電話勧誘販売であるとの主張はされていない旨主張する。 しかし,「訪問販売」とは,販売業者又は役務の提供の事業を営む者が,営業 所,代理店その他の主務省令で定める場所以外の場所(以下,併せて「営業所等」という。)において,売買契約の申込みを受け,若しくは売買契約を締結して行う商品若しくは特定権利の販売又は役務を有償で提供する契約の申込みを受け,若しくは役務提供契約を締結して行う役務の提供をいう(特定商取引法2条1項1号)。 本件において被告らは,本件契約1及び2の締結に当たり,いずれも本件会社の営業所等に赴いたことはなく,Cが被告Aの店に赴いたり(本件契約1),被告Bを飲食店に呼び出したりして(本件契約2),売買契約の申込みを受けたものである。 したがって,本件契約1及び2はいずれも訪問販売であり,割賦販売法35 いたり(本件契約1),被告Bを飲食店に呼び出したりして(本件契約2),売買契約の申込みを受けたものである。 したがって,本件契約1及び2はいずれも訪問販売であり,割賦販売法35 条の3の13第1項が適用される。 (原告の主張)割賦販売法35条の3の13第1項は,訪問販売又は電話勧誘販売について,消費者保護の観点から取消権を認めたものであるところ,本件において訪問販売ないし電話勧誘販売であるとの主張はされていない。そもそも被告らの行為はい ずれも売買の実体のない金融を目的とした不正行為であり,そのような行為を行った被告らが,その負担を免れるために,正当な取引を行った消費者の保護を目的とする割賦販売法の保護を求めることは,法の趣旨に反して許されない。 6 争点(1)カ(原告の請求額)について(原告の主張) 被告Aは損保ジャパンに対する債務のうち8万3273円の支払をし,被告Bは損保ジャパンに対する債務のうち8万1156円の支払をしたものの,いずれもその後の支払を怠った。 そこで,原告は,平成31年4月19日,被告らに対し,損保ジャパンを代理して,20日以内に返済金の支払を求める催告書を発送し,同書面は遅くとも3 日後には被告らに到達したが,その後も被告らからの支払はなく,被告らは同年 (令和元年)5月12日,期限の利益を喪失した。 そこで,原告は,前記第2,1(5)のとおり損保ジャパンに対する支払を行い,これにより被告らに対する求償権を取得した。 したがって,原告は,被告Aに対しては373万3069円及びこれに対する遅延損害金の,被告Bに対しては188万9888円及びこれに対する遅延損害 金の支払を求める。 (被告らの主張)原告 って,原告は,被告Aに対しては373万3069円及びこれに対する遅延損害金の,被告Bに対しては188万9888円及びこれに対する遅延損害 金の支払を求める。 (被告らの主張)原告による求償権の取得は否認ないし争う。なお,損保ジャパンに対する債務の支払は被告ら名義の口座からの引き落としにより行われたが,それぞれの口座に支払原資を入金していたのはCであり,被告らは何ら支払をしていない。 7 争点(2)ア(被告Aによる不法行為の有無)について(原告の主張)被告Aは,本件契約1に基づく割賦金の支払の意思がないにもかかわらず,虚偽の契約を締結することを承諾し,あたかも真正な契約が成立したかのような外形の作出を了承した。そして,真正な契約が成立したと誤信した原告をして金銭 の支払を余儀なくさせ,もって損害を被らせたものである。 したがって,仮に被告Aに本件契約1に基づく契約責任が成立しないとしても,被告AはCによる詐欺行為に加担したものとして,不法行為に基づく損害賠償責任を負う。 (被告Aの主張) クレジット契約の名義貸し事案において,購入者に不法行為責任としての故意又は過失が認められるのは,単に購入者に何らかの過失や不注意があるだけでは足りず,信販会社が販売店に対する調査・管理の義務を尽くしたかどうかをも考慮に入れた上で,購入者において,販売店がクレジットシステムを悪用して信販会社から不正な利得を取得することにつき,その間の事情を認識しながら,その 手続や利得の分配に積極的に加担したような場合に限られるというべきである。 本件において,被告Aにはこのような事情が認められないから,原告に対する不法行為責任は成立しない。 8 争点(2)イ(被告Bによ 加担したような場合に限られるというべきである。 本件において,被告Aにはこのような事情が認められないから,原告に対する不法行為責任は成立しない。 8 争点(2)イ(被告Bによる不法行為の有無)について(原告の主張)被告Bも,被告Aと同様,本件契約2に基づく割賦金の支払の意思がないにも かかわらず,虚偽の契約を締結することを承諾し,あたかも真正な契約が成立したかのような外形の作出を了承した。そして,真正な契約が成立したと誤信した原告をして金銭の支払を余儀なくさせ,もって損害を被らせたものである。 したがって,仮に被告Bに本件契約2に基づく契約責任が成立しないとしても,被告BはCによる詐欺行為に加担したものとして,不法行為に基づく損害賠償責 任を負う。 (被告Bの主張)被告Aが争点(2)アにおいて主張したところと同様に,被告Bにもそのような事情は認められないから,原告に対する不法行為責任は成立しない。 9 争点(2)ウ(原告の損害額)について (原告の主張)原告は,被告らの各不法行為によって前記第2,1(5)のとおり損保ジャパンに対する支払を余儀なくされ,これと同額の損害を被ったから,被告Aに対しては373万3069円及びこれに対する遅延損害金の,被告Bに対しては188万9888円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める。 (被告らの主張)否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実及び後掲の各証拠によれば,以下の事実が認められる。 (1) 被告らとCとの関係 被告BとCとは中学校の同級生であり,交際していたことがあった。 また,被告Bの兄の被告Aは,自らの経営する 事実が認められる。 (1) 被告らとCとの関係 被告BとCとは中学校の同級生であり,交際していたことがあった。 また,被告Bの兄の被告Aは,自らの経営する飲食店において,Cを従業員として雇っていたことがあった(乙26,27,被告B本人〔1頁〕)。 (2) 被告Aに関する事実経緯アニッサン・エルグランドについての契約 Cは,平成30年4月16日,被告Aに対し,「ちょっと困ってて,相談なんですがお金というか,オートローン組んでもらえないですか?」,「12回払いで返すんで,もちろん金利も払うんですが。」,「170万で組んで,12回払いで口座引き落とし日までに必ず口座に振り込んでおくんで。」などのLINEメッセージを送信した。 被告Aは「イイよ~全然気を遣わないで~」などと送信してこれを承諾し,同月17日,Cの求めに応じて免許証及びゆうちょ銀行のキャッシュカードの画像を送信するとともに,同日夜,Cに対し,実印(銀行印も兼ねたもの)及び印鑑証明カードを渡した。 Cは,同日付けで,被告Aとプレミアとのオートクレジット契約書(乙4) を作成した。当該契約書には,被告Aが本件会社からニッサン・エルグランドを175万円で購入すること,うち170万円をプレミアから分割手数料4万8280円,支払回数12回との約定で借り入れることなどが記載された上,被告Aの上記実印が押捺されていた。 上記契約に係る借入金の弁済は,被告Aのゆうちょ銀行の口座から引き落 とす方法で行われた(乙3〔1ないし3枚目〕,4,6,26〔2ないし4頁〕,被告A本人〔2ないし6,18ないし23頁〕)。 イトヨタ・アルファードについての契約Cは,平成30 とす方法で行われた(乙3〔1ないし3枚目〕,4,6,26〔2ないし4頁〕,被告A本人〔2ないし6,18ないし23頁〕)。 イトヨタ・アルファードについての契約Cは,平成30年10月27日,被告Aに対し,「お願い事があるんですが,今組んでるローン一括するんで,もう一度組んでもらえないですか?」 などのLINEメッセージを送信した。 被告Aはこれを承諾し,同月28日,Cに対し,実印及び印鑑証明カードを渡した。 Cは,同日付けで,被告Aとプレミアとのオートクレジット契約書(乙5)を作成した。当該契約書には,被告Aが本件会社からトヨタ・アルファードを205万円で購入すること,うち200万円をプレミアから分割手数料1 6万4400円,支払回数36回との約定で借り入れることなどが記載された上,被告Aの上記実印が押捺されていた(乙3〔5枚目〕,5,26〔4,5頁〕,被告A本人〔7,8,23,24頁〕)。 ウトヨタ・レクサスLSについての契約(本件契約1)Cは,平成30年12月21日,被告Aに対し,「ローンだったんですが, 金利の安い方に替えてもらえますか?支払いはきちんとします。」などのLINEメッセージを送信した。被告Aが「印鑑証明と印鑑?」と返信したところ,Cは「はい。」などのLINEメッセージを送信した。被告Aは「今月も支払いだけは遅れない様にね~」などと返信した。 被告Aは,Cに対し,実印及び印鑑証明カードを渡した。 Cは,同日付けで,被告Aと原告とのオートクレジット契約書(本件契約書1)を作成した。当該契約書には,被告Aが本件会社からトヨタ・レクサスLSを380万円で購入すること,その全額を損保ジャパンから利率年2. 日付けで,被告Aと原告とのオートクレジット契約書(本件契約書1)を作成した。当該契約書には,被告Aが本件会社からトヨタ・レクサスLSを380万円で購入すること,その全額を損保ジャパンから利率年2. 5%,支払回数48回との約定で借り入れること,原告にその保証を委託することなどが記載された上,被告Aの上記実印が押捺されていた(甲2,乙 3〔6枚目〕,26〔5頁〕,被告A本人〔9,10〕)。 エ原告の担当者による電話確認原告の担当者は,平成30年12月22日,本件契約書1に被告Aの電話番号として記載された番号に架電し,契約内容の確認等を行った。もっとも,上記番号は実際には被告Aの番号ではなく,電話の相手方は,Cないしその 知人が被告Aに成りすましていたものであった(甲18,19,弁論の全趣 旨)。 (3) 被告Bに関する事実経緯ア Cに対する貸付け被告Bは,Cの依頼を受け,平成30年5月頃から9月頃にかけて,Cに対して合計500万円を貸し付けた。 もっとも,これに対するCの返済は,滞っていた(乙27〔1頁〕,被告B本人〔1頁〕)。 イトヨタ・ヴォクシーについての契約Cは,平成30年11月2日,被告Bに対し,「お金の事色々考えたんだけど,オートローン組んでもらいたいんだよね。その中から50万は一旦返し て。月々は15万づつゆうちょ銀行に入れる感じにしたいです。」などのLINEメッセージを送信した。被告Bがその趣旨を確認したところ,Cは,被告Bの名前でローンを組み,ローン会社からCのところにお金が入るというものであり,支払はCがするので迷惑は掛けないなどと説明した。 被告Bは,同月7日,飲食店でCと会い,同人に実印(銀 被告Bの名前でローンを組み,ローン会社からCのところにお金が入るというものであり,支払はCがするので迷惑は掛けないなどと説明した。 被告Bは,同月7日,飲食店でCと会い,同人に実印(銀行印も兼ねたも の)及び印鑑登録証明書を渡した。 Cは,同月3日付けで,被告Bとプレミアとのオートクレジット契約書(乙14)を作成した。当該契約書には,被告Bが本件会社からヴォクシーを210万円で購入すること,うち200万円をプレミアから分割手数料24万7400円,支払回数54回との約定で借り入れることなどが記載された上, 被告Bの上記実印が押捺されていた。 なお,プレミアの担当者は,被告Bに架電し,契約内容の確認等を行ったところ,被告Bはいずれも「はい。」などと答えた。また,被告Bは,プレミアから送付された「お支払い明細書」を受領し,これをCに渡した(乙13〔3ないし5,13枚目〕,14,27〔3,4頁〕,被告B本人〔2ないし 6頁〕)。 ウニッサン・モコについての契約(本件契約2)Cは,平成30年11月12日,被告Bに対し,「オートローンの金額間違えてて足りなくて,違うのでもう一度やっていい?」などのLINEメッセージを送信した。被告Bが,同月13日,「私,二つローン組むことになるって事?」とLINEメッセージで質問したところ,Cは「そうなっちゃう。」 などと回答するとともに,「お金は死んでも必ずかえします。」,「お願いします。」,「もう二度としないんで」,「1番優先で払います。」,「払わなくなる事は絶対にありません。」などと懇願し,被告Bは「わかりました!」とこれを承諾した。 Cは,同日付けで,被告Bと原告とのオートクレジット契約書(本件契約 払います。」,「払わなくなる事は絶対にありません。」などと懇願し,被告Bは「わかりました!」とこれを承諾した。 Cは,同日付けで,被告Bと原告とのオートクレジット契約書(本件契約 書2)を作成した。当該契約書には,被告Bが本件会社からニッサン・モコを197万円で購入すること,うち195万円を損保ジャパンから利率年5. 2%,支払回数54回との約定で借り入れること,原告にその保証を委託することなどが記載された上,被告Bの実印が押捺されていた。 なお,Cは,同月16日,被告Bに対し,「139万で組みます。色は,パ ープルのモコです。」などのLINEメッセージを送信した(甲3,乙13〔5ないし12枚目〕,27〔4,5頁〕,被告B本人〔6ないし8,17頁〕)。 エ原告の担当者による電話確認原告の担当者は,平成30年11月16日,被告Bに架電し,契約内容の確認等を行った。被告Bは,契約書の控えを受領したか,自動車の使用は本 人ということでよいか,自動車の現物の確認はしたかなどの質問に対していずれも「はい,そうです。」,「しました。」などと答えた上,「契約をする際に,お店様からお車の料金はお店が支払をするので契約書にサインをしてください,などといった不正なやり取りはなかったでしょうか。」との質問に対しても,「大丈夫です。」と答えた(甲14,16,被告B本人〔10,19 ないし21頁〕)。 オ返済予定表の受領等被告Bは,平成30年12月14日,原告から本件契約2の「ご返済予定表」を受領し,その内容をCに伝えた(乙13〔15,16枚目〕,乙27〔7頁〕,被告B本人〔10,13頁〕)。 (4) Cの死亡 Cは,平成31年2月3日 件契約2の「ご返済予定表」を受領し,その内容をCに伝えた(乙13〔15,16枚目〕,乙27〔7頁〕,被告B本人〔10,13頁〕)。 (4) Cの死亡 Cは,平成31年2月3日,死亡した(前記第2,1(4))。 (5) 原告の代位弁済原告は,平成31年4月19日,被告らに対し,損保ジャパンを代理して,20日以内に返済金の支払を求める催告書を発送し,同書面は遅くとも3日後には被告らに到達したが,その後も被告らからの支払はなく,被告らは同年(令 和元年)5月12日,期限の利益を喪失した。 そこで,原告は,同年5月27日,損保ジャパンに対し,①本件契約1による金銭消費貸借につき,その連帯保証人として,残元金372万4643円及び利息8426円(合計373万3069円),②本件契約2による金銭消費貸借につき,その連帯保証人として,残元金188万5603円及び利息42 85円(合計188万9888円)を代位弁済した(甲6ないし11,弁論の全趣旨)。 2 争点(1)ア(本件契約1の成否)について原告は,被告Aが本件契約書1を作成し,もって原告との間で本件契約1を締結したと主張するため,以下この点について検討する。 (1) 文書中の印影が本人の印章によって顕出された事実が確定された場合には,反証がない限り,当該印影は本人の意思に基づいて成立したものと推定するのが相当であり,この推定の結果,当該文書は民事訴訟法228条4項にいう「本人又はその代理人の・・・押印があるとき」の要件を充たし,その全体が真正に成立したものと推定される(最高裁昭和39年5月12日第三小法廷判決・ 民集18巻4号597頁参照)。 被告Aは,本件契約書1のうち被告A作成部分 充たし,その全体が真正に成立したものと推定される(最高裁昭和39年5月12日第三小法廷判決・ 民集18巻4号597頁参照)。 被告Aは,本件契約書1のうち被告A作成部分の成立を否認している。しかし,被告Aも,本件契約書1にある被告A名下の印影が自らの実印によること自体は認めているのであって,反証がない限り,当該印影は被告Aの意思に基づいて成立したものと推定され,民事訴訟法228条4項によりその作成部分の全体が真正に成立したものと推定されることになる。 (2) そこで上記反証の有無につき検討するに,被告Aは,Cから既存のオートクレジット契約を金利の安い方に借り換える旨を告げられて承諾し,平成30年12月に実印及び印鑑証明カードを渡したところ,Cが無断でこれを冒用した旨主張する。 しかし,そもそも被告Aは,同年4月にはCから名義貸しによるオートクレ ジット契約締結を依頼されて承諾し,実印及び印鑑証明カードを渡しており(前記1(2)ア),同年10月にもCから再び名義貸しによるオートクレジット契約締結を依頼されて承諾し,実印及び印鑑証明カードを渡しているのであって(同イ),その際,被告Aは,Cからは何の自動車を対象としたローンを組むのかとか,月々の支払金額はいくらかなどといった基本的な事項すら確認して いなかったというのである(被告A本人〔5ないし9頁〕)。 そして,同年12月の承諾についてみても,確かにCのLINEメッセージには「ローンだったんですが,金利の安い方に替えてもらえますか?」との記載があるものの,被告Aは,Cに実印及び印鑑証明カードを渡す際,対象自動車や支払金額につき何ら確認しておらず(被告A本人〔10,11頁〕),他に 契約の趣旨・内容につき具体的に確 か?」との記載があるものの,被告Aは,Cに実印及び印鑑証明カードを渡す際,対象自動車や支払金額につき何ら確認しておらず(被告A本人〔10,11頁〕),他に 契約の趣旨・内容につき具体的に確認したような形跡も何らうかがわれない上,実印及び印鑑証明カードは飽くまでも借換えにのみ用いるようにとか,新たな契約を別個に締結しないようになどといった旨を明示的に告げていたようにもうかがわれない。 これらの経緯等に照らせば,被告Aは,Cに実印及び印鑑証明カードを渡す ことにより,実質的には同人にオートクレジット契約の締結等についての抽象 的・包括的な権限を授与していたものといわざるを得ない。 したがって,Cによる実印の使用については,その権限を越えた冒用であると断じることはできないのであって,被告Aの上記主張は採用することができない。 (3) 以上によれば,上記(1)の推定を覆すに足りる反証があったということはで きないから,本件契約書1はその全体が真正に成立したものと認められ,これにより,被告Aが原告との間で本件契約1を締結した事実が認められる。 したがって,争点(1)アにおける原告の主張は,理由がある。 3 争点(1)イ(本件契約2の成否)について原告は,被告Bが本件契約書2を作成し,もって原告との間で本件契約2を締 結したと主張するため,以下この点について検討する。 (1) 文書の成立の真正については上記2(1)で説示したとおりであるところ,被告Bは,本件契約書2のうち被告B作成部分の成立を否認している。 しかし,被告Bも,本件契約書2にある被告B名下の印影が自らの実印によること自体は認めているのであって,反証がない限り,当該印影は被告Bの意 思に基づいて成立したものと推定 を否認している。 しかし,被告Bも,本件契約書2にある被告B名下の印影が自らの実印によること自体は認めているのであって,反証がない限り,当該印影は被告Bの意 思に基づいて成立したものと推定され,民事訴訟法228条4項によりその作成部分の全体が真正に成立したものと推定されることになる。 (2) そこで上記反証の有無につき検討するに,被告Bは,平成30年11月7日に飲食店でCに会い,同人に実印を渡したところ,Cはあらかじめ本件契約書2を準備しており,被告Bに秘してその場でこれに押印したものであるなどと して,Cによる実印の冒用を主張する。 しかし,被告Bの主張によっても,被告Bは,同月12日,Cから追加のオートクレジット契約の締結を求められ,これを承諾したというのである。しかも,前記認定事実によれば,①Cは,同日,被告Bに対し,追加のオートクレジット契約の締結を求め,②被告Bは,同月13日,そうなれば被告Bにおい て2個のオートクレジット契約を締結することになるのではないかと質問し, ③Cがこれを肯定したところ,被告Bは「わかりました。」とこれを承諾している(前記1(3)ウ)。しかも,④Cは,同月16日,被告Bに対し,新たなオートクレジット契約の対象自動車がニッサン・モコであることを伝えており,⑤被告Bも,同日,原告の担当者による契約内容の確認等に対して「はい,そうです。」などと答えている上,⑥同年12月14日,原告から本件契約2の「ご 返済予定表」を受領し,その内容をCに伝えているのである(同ウないしオ)。 これらの諸事情からすると,その余の点について判断するまでもなく,本件契約2は被告Bの意思に基づいて締結されたものとみるのが相当であって,Cが実印を冒用したとの被告Bの主張は,そもそもそ しオ)。 これらの諸事情からすると,その余の点について判断するまでもなく,本件契約2は被告Bの意思に基づいて締結されたものとみるのが相当であって,Cが実印を冒用したとの被告Bの主張は,そもそもその前提を欠くのではないかといわざるを得ない。念のため検討してみても,被告Bの主張は,要するに, Cに実印及び印鑑登録証明書を渡したのは同年11月7日の時だけであり,本件契約書2の作成日である同月13日にはCに会っていないから,Cが同月7日に被告Bの実印を冒用したというものであるが,この主張自体,その的確な裏付けを欠く。 したがって,いずれにせよ,Cが実印を冒用したとの被告Bの主張は,採用 することができない。 (3) 以上によれば,上記(1)の推定を覆すに足りる反証があったということはできないから,本件契約書2はその全体が真正に成立したものと認められ,これにより,被告Bが原告との間で本件契約2を締結した事実が認められる。 したがって,争点(1)イにおける原告の主張は,理由がある。 4 争点(1)ウ(被告Aによる抗弁接続の主張の可否)について(1) 被告Aは,本件会社との間にはトヨタ・レクサスLSの売買契約は存在しないから,被告Aは本件契約1の契約責任を負わないと主張する(争点(1)エにおける被告Bの主張と同様に,割賦販売法35条の3の19第1項に基づく支払停止の抗弁を主張するものと解される。)。 (2) 割賦販売法35条の3の19第1項の定める抗弁権の接続は,販売業者の違 法不当な行為の結果として締結された商品購入契約等が無効とされ又は取り消されたとしても,これと法的には別の契約である立替払契約に基づく割賦金の支払義務が当然に消滅するものではないことから,消費者保護の観点に立っ の結果として締結された商品購入契約等が無効とされ又は取り消されたとしても,これと法的には別の契約である立替払契約に基づく割賦金の支払義務が当然に消滅するものではないことから,消費者保護の観点に立って,そのような購入契約等について購入者が販売業者に対抗することができる事由をもって,立替払契約に基づく割賦金の支払を拒絶できるようにしたもの と解される。 しかるに,本件についてこれをみると,本件会社と被告Aとの間のトヨタ・レクサスLSの売買契約はそもそも架空ないし真意を欠くというのであり,被告Aはそのことを認識しながら,いわゆる名義貸しを承諾し,漫然とCに実印及び印鑑証明カードを渡して,本件契約1を締結させたものである。しかも, 被告Aによる名義貸しはこれが初めてというわけではなく,本件契約1の直前にも2回にわたって同様の名義貸しを承諾し,Cに実印及び印鑑証明カードを渡してオートクレジット契約を締結させていたものであり(前記1(2)ア,イ),しかも,信販会社から来た書類については,そのままCに渡していたというのである(被告A本人〔11,29ないし31,37頁〕)。このような経緯の下 で名義貸しを行った被告Aに抗弁権の接続を認めるというのは,上記立法の趣旨に沿うものとはいい難い。 したがって,被告Aが本件会社との売買契約の不存在を抗弁として主張することは,信義則上許されないというべきである。 (3) この点につき被告Aは,①自分はCに利用されたものにすぎず,購入者とし て保護に値しないということはできない,②本件契約1の目的物であるトヨタ・レクサスLSは平成19年式なのに,その本体価格が320万円という異常な高額となっているところ,原告はこの点の調査・確認をしていない,③原告の担当者が電話確認をした相手 契約1の目的物であるトヨタ・レクサスLSは平成19年式なのに,その本体価格が320万円という異常な高額となっているところ,原告はこの点の調査・確認をしていない,③原告の担当者が電話確認をした相手は被告A本人ではなく,その対応には不審な点があったのに,この点についても調査・確認をしていない,④被告Aは直前 の平成30年4月及び10月にもオートクレジット契約を締結しており(前記 1(2)ア,イ),原告は与信調査の時点でその不適切利用の可能性を疑うべきであったなどと主張する。 しかし,上記①については,本件証拠上,Cが被告Aに名義貸しを依頼する際に特段の威迫・欺罔等をしたなどといった事情は見当たらず,かえって,最初の名義貸しであるニッサン・エルグランドについての契約の際には,Cから の「ちょっと困ってて,相談なんですがお金というか,オートローン組んでもらえないですか?」とのLINEメッセージに対し,ただ「イイよ~全然気を遣わないで~」などと返信し,躊躇なく承諾しているのであって(前記1(2)ア),被告Aの主張はその前提を欠くものといわざるを得ない。 また,上記②については,被告Aの指摘する本体価格が異常な高額であり, なおかつこのことが当時明らかであったとまでいえるのか,本件全証拠に照らしても必ずしも判然としないし,この点を措くとしても,原告において目的物の価格が高額であるかどうかを調査する義務があるとか,調査しなかった場合に抗弁権の接続を受けてもやむを得ないなどとまで断じることは困難である。 さらに,上記③については,確かに原告の担当者が電話確認をしたのは被告 A本人ではなく,Cないしその知人が被告Aに成りすましていたものである上(前記1(2)エ),その際の音声データ(甲19)に さらに,上記③については,確かに原告の担当者が電話確認をしたのは被告 A本人ではなく,Cないしその知人が被告Aに成りすましていたものである上(前記1(2)エ),その際の音声データ(甲19)によれば,電話の相手方は,生年月日を問われた際に「ちょっと待って」などと言った上,約33秒ほど沈黙していたり(0分30秒時点),被告Aの住所である「a」を「b」と言い間違えたりしている(3分23秒時点)。しかし,上記音声データによれば,電話の 相手方は他の質問についてはおおむね適切に回答しているし,住所の言い間違いも必ずしも明瞭とはいえないのであって,原告において,電話でのやり取りをもって,その相手方が被告A本人かどうかにつき疑うべきであったとか,この点の更なる調査・確認を怠ったことにより抗弁権の接続を受けてもやむを得ないなどとまで断じることは困難である。 そして,上記④については,本件契約1の締結当時,平成30年4月及び同 年10月の各契約のいずれの支払も正常にされていたのであって(乙17参照),原告において本件契約1の締結につき特段の不審を抱くべき状況にはなかったといい得るところである。 したがって,被告Aの上記主張は,いずれも採用することができない。 (4) 以上によれば,被告Aが本件会社との売買契約の不存在を抗弁として主張す ることは許されないから,争点(1)ウにおける被告Aの主張は理由がない。 5 争点(1)エ(被告Bによる抗弁接続の主張の可否)について(1) 被告Bは,本件会社との間にはニッサン・モコの売買契約は存在せず,仮に存在するとしても本件会社にはニッサン・モコの引渡しについての債務不履行があるとして,割賦販売法35条の3の19第1項に基づく支払停止の抗弁を 主 にはニッサン・モコの売買契約は存在せず,仮に存在するとしても本件会社にはニッサン・モコの引渡しについての債務不履行があるとして,割賦販売法35条の3の19第1項に基づく支払停止の抗弁を 主張する。 (2) しかし,本件会社と被告Bとの間のニッサン・モコの売買契約はそもそも架空ないし真意を欠くというのであり,被告Bはそのことを認識しながら,Cへの名義貸しを承諾し,本件契約2を締結させたものである。しかも,被告Bによる名義貸しはこれが初めてというわけではなく,本件契約2の直前にも同様 の名義貸しを承諾し,Cに実印及び印鑑登録証明書を渡してオートクレジット契約を締結させていたものであり(前記1(3)イ),本件契約2の締結によって,名義貸しによる契約が2個になることも認識していた(同ウ)。加えて,被告Bは,原告の担当者による電話確認につき「はい,そうです。」などと答えた上,「契約をする際に,お店様からお車の料金はお店が支払をするので契約書にサ インしてください,などといった不正なやり取りはなかったでしょうか。」という,まさに名義貸しの有無を問われた際にも,「大丈夫です。」との虚偽の回答をしていたものである(同エ)。このような経緯の下で名義貸しを行った被告Bに抗弁権の接続を認めるというのは,前記4(2)において摘示した立法の趣旨に沿うものとはいい難い。 したがって,被告Bが本件会社との売買契約の不存在を抗弁として主張する ことは,信義則上許されないというべきである。 (3) この点につき被告Bは,①自分はCに利用されたものにすぎず,購入者として保護に値しないということはできない,②本件契約2の目的物であるニッサン・モコは平成21年式の軽自動車なのに,その販売価格が合計195万円という異常な高額になっ 利用されたものにすぎず,購入者として保護に値しないということはできない,②本件契約2の目的物であるニッサン・モコは平成21年式の軽自動車なのに,その販売価格が合計195万円という異常な高額になっているところ,原告はこの点の調査・確認をしていない, ③被告Bは直前の平成30年11月7日にもオートクレジット契約(前記1(3)イ)を締結しており,原告は与信調査の時点でその不適切利用の可能性を疑うべきであった,④ニッサン・モコについては令和3年4月13日付けで解体されており,これには原告の協力がうかがわれるのであって,自ら被告Bへのニッサン・モコの引渡しを不能にしたなどと主張する。 しかし,上記①については,本件証拠上,Cが被告Bに名義貸しを依頼する際に特段の威迫・欺罔等をしたなどといった事情は見当たらず,かえって,被告B自身,プレミアや原告の担当者からの電話確認に対して虚偽の回答を行うなど,積極的に関与していたものであって(上記1(3)イ,エ),被告Bの主張はその前提を欠くものといわざるを得ない。 また,上記②については,被告Bの指摘する本体価格が異常な高額であり,なおかつこのことが当時明らかであったとまでいえるのか,本件全証拠に照らしても必ずしも判然としないし,この点を措くとしても,原告において目的物の価格が高額であるかどうかを調査する義務があるとか,調査しなかった場合に抗弁権の接続を受けてもやむを得ないなどとまで断じることは困難である。 さらに,上記③については,原告によれば,本件契約2の申込みは平成30年11月13日であり,直前の同月7日のオートクレジット契約はまだ登録未了というのであって,そもそも原告において当該オートクレジット契約の存在を知ることができなかったところである。 込みは平成30年11月13日であり,直前の同月7日のオートクレジット契約はまだ登録未了というのであって,そもそも原告において当該オートクレジット契約の存在を知ることができなかったところである。 そして,上記④については,ニッサン・モコの解体(乙37参照)に原告が 関与したことをうかがわせる証拠は存在せず,被告Bの主張はその前提を欠く。 したがって,被告Bの上記主張は,いずれも採用することができない。 (4) 以上によれば,被告Bが本件会社との売買契約の不存在及び債務不履行を抗弁として主張することは許されないから,争点(1)エにおける被告Bの主張は理由がない。 6 争点(1)オ(不実告知に基づく取消権の有無)について (1) 被告Aは,Cから金利の安い方に借り換えるなどと伝えられていたのに,これは虚偽であり,本件契約1の締結の動機に関する重要な事項についてCから不実告知を受けていたと主張して,本件契約1につき割賦販売法35条の3の13第1項,同項6号に基づく取消権の行使を主張する。 また,被告Bも,Cから「オートローンの金額間違えてて足りなくて」など と伝えられていたのに,これは虚偽であり,本件契約2の締結の動機に関する重要な事項についてCから不実告知を受けていたと主張して,本件契約2につき同条1項,同項6号に基づく取消権の行使を主張する。 (2) しかし,このうち被告Aについては,前記2(2)でも説示したとおり,確かにCのLINEメッセージには「ローンだったんですが,金利の安い方に替え てもらえますか?」との記載があるものの,被告Aは,Cに実印及び印鑑証明カードを渡す際,対象自動車や支払金額につき何ら確認しておらず,他に契約の趣旨・内容につき具体的に確認し の安い方に替え てもらえますか?」との記載があるものの,被告Aは,Cに実印及び印鑑証明カードを渡す際,対象自動車や支払金額につき何ら確認しておらず,他に契約の趣旨・内容につき具体的に確認したような形跡も何らうかがわれない上,実印及び印鑑証明カードは飽くまでも借換えにのみ用いるようにとか,新たな契約は締結しないようになどといった旨を明示的に告げていたようにもうかが われないのであって,結局のところ,被告Aは,Cに実印及び印鑑証明カードを渡すことにより,実質的には同人にオートクレジット契約の締結等についての抽象的・包括的な権限を授与していたものといわざるを得ない。 また,被告Bについては,確かにCのLINEメッセージには「オートローンの金額間違えてて足りなくて」との記載があるものの(前記1(3)ウ),これ が虚偽であることの的確な証拠はないし,この点を措くとしても,被告Bがこ のことを動機としてどの程度重視して名義貸しを承諾したものか,証拠上明らかではないといわざるを得ない(むしろ,前記1(3)ウにおいて認定した経緯によれば,Cから繰り返し懇願されたことが重要な動機となっていたようにもうかがわれる。)。 したがって,いずれにせよ,Cの説明が割賦販売法35条の3の13第1項 6号の定める不実告知に該当するとまではいうことができない。なお,被告らは,Cから「支払は迷惑かけません」などと告げられていたことをも主張しているが,このような発言が直ちに不実告知に該当するものでないことは論を待たない。 (3) 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,争点(1)オにおけ る被告らの主張は理由がない。 7 争点(1)カ(原告の請求額)について前記1(5)において認定した (3) 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,争点(1)オにおけ る被告らの主張は理由がない。 7 争点(1)カ(原告の請求額)について前記1(5)において認定したとおり,被告らは損保ジャパンの借入れにつき期限の利益を喪失し,原告が令和元年5月27日にその残元金及び利息を代位弁済したことが認められる。 したがって,原告は,被告Aに対しては373万3069円,被告Bに対しては188万9888円の各求償金請求権及びこれらに対する同月28日から支払済みまでの遅延損害金請求権を取得したことになる。 第5 結論よって,その余の争点について判断するまでもなく,本訴請求はいずれも理由が あるからこれを認容し,仮執行免脱の宣言は相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第5部 裁判官瀬孝

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