平成14(ネ)6062 親権者指定協議無効確認請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成15年6月26日 東京高等裁判所 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-20103.txt

判決文本文10,867 文字)

主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(1) 原判決を取り消す。 (2) 平成12年4月3日○○県○○市長に対する届出によりなされた控訴人と被控訴人との間の長男C(平成5年4月20日生)の親権者を被控訴人と指定する協議が無効であることを確認する。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 2 被控訴人主文1項と同じ。 第2 事案の概要等 1 事案の概要控訴人と被控訴人は,両名間の長男C(平成5年4月20日生)の親権者を被控訴人と定めて離婚するとの協議離婚の届出がされているところ,本件は,控訴人が,被控訴人に対し,Cの親権者を被控訴人と定める協議をしたことはないとして,同協議が無効であることの確認を求めた事案である。 原審は,上記離婚届が控訴人の意に反して作成されたものと認めることはできず,むしろ,離婚届に署名押印した時点では,控訴人宅での生活を外形上従前どおり継続することを前提とする限り,親権者を被控訴人と定める離婚届が提出されること自体には,抵抗感を持っていなかったと推認するのが相当であるとして,請求を棄却した。 このため,控訴人がこれを不服として控訴をした。 2 前提となる事実及び争点は,当審において当事者の主張(補充)を次のとおり付加するほか,原判決事実及び理由の「第2  事案の概要及び争点」欄の「1前提となる事実」及び「2 争点」に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,  原判決4頁2行目の「署名をするあたり」を「署名をするにあたり」に,同頁11行目の「G」を「H」にそれぞれ改める。)。 (1) 控訴人の主張ア であるから,これを引用する(ただし,  原判決4頁2行目の「署名をするあたり」を「署名をするにあたり」に,同頁11行目の「G」を「H」にそれぞれ改める。)。 (1) 控訴人の主張ア本件離婚届は,被控訴人がグアムの男性に夢中になっている最中になされ,その後,単身グアムに行くために,控訴人にC  の養育を委ねてアパートに別居し,更に平成13年5月,グアムの男性との関係がなくなった直後に,東京の被控訴人の実家にCを強制連行したのであるから,本件の背後に被控訴人とグアムの男性との関係があることは明らかである。 控訴人は,被控訴人がグアムの男性に狂っているので,離婚もやむなしと思ったのであり,そのような被控訴人にCの養育を委ねることはできないと強く思っていた。控訴人はCを目に入れても痛くない程可愛がっており,離婚後の世間体を重視したなどということはない。 したがって,本件離婚届のうち,被控訴人が書き入れたCの親権者を被控訴人とする部分は,控訴人の意思に反して作成されたものである。 イ控訴人は,本件離婚届に署名押印した際に,直ちに離婚届出がされるとは全く思っておらず,離婚届がされていることは,  平成13年5月まで知らなかった。控訴人の離婚届への署名押印は,いわば離婚の仮合意である。控訴人は,離婚自体は了承したが,離婚の条件は今後の話し合いによるものであり,子供の問題も当然今後の話し合いいかんにかかっている。 被控訴人は,離婚後,僅か9か月後にCを控訴人に委ねて別居し,その際,控訴人がこれを了承してアパート賃貸借契約の連帯保証人となった。別居後被控訴人はCの診察券,学校の半年間の行事予定,週の時間割等を全部控訴人に預けて4か月完全に養育を委ね,自らはグアム島に行き,同年6月1日には突然 パート賃貸借契約の連帯保証人となった。別居後被控訴人はCの診察券,学校の半年間の行事予定,週の時間割等を全部控訴人に預けて4か月完全に養育を委ね,自らはグアム島に行き,同年6月1日には突然Cを連れ去り,その後控訴人との面接交渉も拒否している。 これら一連の事実経過は,本件離婚届作成時,Cの親権者問題が決着されていなかったことを明示している。 ウ被控訴人は,Dが戸籍現在事項証明書を入手後,控訴人が何も行動を取らなかったことを強調するが,控訴人は,従業員である同女が離婚届のことを言っているとは全く思わなかったのである。この時点で,控訴人は,離婚届出がされていることも,親権者として被控訴人が指定されていることも知らなかったからこそ,その後被控訴人がCの養育を控訴人に委ねて別居した際に,おってCの親権者は離婚の金銭問題と合わせ円満に話し合いたいと思い,届出済みであったのであれば当然なすべきその変更を何ら問題としなかったのである。 エ被控訴人は,控訴人が親権者変更の調停申立てをしたことを,親権者指定の協議がされたことの根拠としている。しかし,  上記連行直後の対応としては,家事調停申立てが常識的であり,かつ,親権者変更の家事調停はあるが,親権者指定協議無効の家事調停はないため,不満でも親権者変更の家事調停で財産分与等も合わせ,紛争を解決できればと判断したものである。 (2) 被控訴人の主張ア Dは,平成12年4月6日付けの戸籍現在事項証明書を取り寄せ,控訴人の会社の机の中に入れ,控訴人に対して電話で  「見ておいて下さい」と伝えた。 しかしながら,控訴人は机の中を見ることもなく,Dに何のことかと問いかけることもなく,  何らの行動も取らなかった。 控訴人は,平成12年4月当時,Cの親権者につい おいて下さい」と伝えた。 しかしながら,控訴人は机の中を見ることもなく,Dに何のことかと問いかけることもなく,  何らの行動も取らなかった。 控訴人は,平成12年4月当時,Cの親権者について不服があれば異議を申し立てることができたにもかかわらず,何もしなかったのである。 また,DもCの親権者が被控訴人であると知った後も,控訴人の机の中に戸籍全部事項証明書を入れるほかは何らの行動も取らなかったし,控訴人に対して書類を見るように強く訴えることもなかった。 以上のとおり,控訴人は被控訴人が親権者であることを認めていたのである。 イ控訴人は,平成13年6月に東京家庭裁判所に親権者変更調停を申し立て,平成14年1月30日に取り下げている。控訴人は,調停において親権者の変更が認められそうになかったので,急拠調停を取り下げ,親権者指定協議無効確認請求訴訟を提起したものである。 控訴人が平成13年5月に初めて親権者が被控訴人であることを知り,親権者の協議などなかったと思ったのであれば,当初から親権者の変更ではなく,親権者協議の無効を請求するはずである。にもかかわらず,控訴人が親権者変更の調停を申し立てたということは,控訴人は親権者の協議が有効に成立していたことを認めていたからである。 ウ控訴人は,本件離婚届に署名押印した際に,直ちに離婚届出がされるとは全く思っていなかったと主張するが,控訴人が離婚届に署名押印したのが,被控訴人から署名押印を強く迫られたからなのであれば,被控訴人がすぐにでも離婚届を提出するおそれがあると危惧するのが当然であり,その時点で子供の親権者を空欄にすれば,被控訴人が自ら親権者となることに控訴人が合意したとして,親権者欄に自分の名前を記入して提出する可能性が高いこ するおそれがあると危惧するのが当然であり,その時点で子供の親権者を空欄にすれば,被控訴人が自ら親権者となることに控訴人が合意したとして,親権者欄に自分の名前を記入して提出する可能性が高いことは,容易に予想されることである。 また,控訴人が離婚届に署名押印した際に,金銭的な話し合いが全く行われなかったから,離婚の仮合意でしかなかったと主張する。しかし,そもそも協議離婚時において決めなければならないのは,未成年の子供の親権者だけであって,氏や戸籍は一方で定めることができる。慰謝料・財産分与・子供の養育費等は,あらかじめ協議して決めておいた方が被控訴人にとって有利だといえるが,それでもまず離婚をしたいと離婚届を出すことはありうることである。 第3 当裁判所の判断 1 親権者指定協議無効確認の訴えの適法性について本件は,協議離婚をした元夫婦の一方である控訴人が,離婚意思及び離婚届出意思の存在は認めつつ,すなわち,協議離婚の成立は認めながら,離婚届に記載された未成年の子の親権を行う者の記載に沿う,親権者を定める協議における合意の不存在を主張しているものである。一般にこのような場合,親権者指定の合意の不存在あるいは無効を主張する元夫婦の一方は,  戸籍法114条により,家庭裁判所の許可を得て,戸籍に協議離婚届に基づいて記載された親権者を父又は母と定める記載の訂正(抹消)をすると共に,改めて元の配偶者と親権者を定める協議を行うか,その協議が調わないものとして家庭裁判所へ親権者指定の審判を求める(民法819条5項,家事審判法9条1項乙類7号)ことが考えられる。この場合,戸籍法114  条による戸籍訂正の許可を求める審判手続においても,親権者指定の審判手続においても,親権者を定める協議の不存在あるい 項,家事審判法9条1項乙類7号)ことが考えられる。この場合,戸籍法114  条による戸籍訂正の許可を求める審判手続においても,親権者指定の審判手続においても,親権者を定める協議の不存在あるいは無効の主張の当否が判断の中心の1つとなるものと予測されるが,戸籍訂正の許可を求める審判手続では相手方配偶者は当事者ではないし,戸籍訂正の審判も親権者指定の審判も,親権者を定める協議の不存在あるいは無効について判断がされても,その判断に既判力はなく,紛争が蒸し返される可能性がある。 このようなことを考えると,協議離婚をした元夫婦の一方は,他方を被告として親権者指定協議無効確認の訴えを提起することも許されるものと解するのが相当である。 このような訴訟は,人事訴訟手続法に定められた人事訴訟の類型ではなく,また現在解釈上人事訴訟の類型として認められている訴えではないが,事案の性質に鑑み,離婚無効確認訴訟と同様に解釈上人事訴訟として,手続や効果を規律するのが相当である。また,そうでないとしても,少なくとも,人事訴訟ではない通常訴訟として許されるものである(通常訴訟として考える場合,協議離婚届に記載された子の親権者を父あるいは母と定める記載に沿う協議の無効を確認する旨の請求の趣旨では,過去の法律関係の確認となるが,そのような請求について裁判することが,これを現在の法律関係の確認にひきなおして,「当事者間の子○○が当事者の共同親権に服することを確認する。」との請求について裁判するよりも,当事者間の紛争の焦点に既判力を生じさせ,紛争の根本的な解決を図ることができるところであるから,このような訴えは適法というべきである。)。したがって,本件訴えは適法である。 2 そこで,本件において,控訴人と被控訴人との を生じさせ,紛争の根本的な解決を図ることができるところであるから,このような訴えは適法というべきである。)。したがって,本件訴えは適法である。 2 そこで,本件において,控訴人と被控訴人との間に,Cの親権者を被控訴人と定める協議が成立していたか否か(争点)について検討する。 前記前提となる事実に加え,証拠(甲1,3,4,6,11の1及び2,12の1及び2,22,26,28,29,48  の1及び2,50の1及び2,64の1及び2,66,乙2,証人D,控訴人本人,被控訴人本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) 控訴人(昭和17年3月3日生)と被控訴人(昭和41年5月15日生)は,平成4年10月1日に婚姻の届出をし,平成5年4月20日,長男Cをもうけたが,その後,不仲となり,平成12年3月ころには,既に双方とも離婚することには異存がないという段階にまで婚姻関係は破綻していた。被控訴人は,同年4月のCの小学校入学を機に控訴人と離婚することを考え,離婚届出用紙を手元に用意していた。 (2) 控訴人は,平成12年4月1日,被控訴人の用意した離婚届出用紙の自己の氏名及び住所欄,夫の父の名の欄,夫の職業欄を自筆で記入し,届出人の夫欄に自署して押印し,さらに捨て印を押して被控訴人に交付した。その際,控訴人と被控訴人との間で,離婚しても被控訴人は旧姓に復さないこと,Cを引き続き控訴人宅から通学させること,被控訴人も当面控訴人宅で同居を続けることが前提とされていた。 (3) 翌2日,被控訴人は,控訴人が署名した前記離婚届出用紙を控訴人の実妹であるD方に持参して,Dとその夫に証人としての署名を依頼し,同人らの署名をもらった。被控訴人は,控訴人が書いた夫の父の名の欄の「I」の字を書き直 ,控訴人が署名した前記離婚届出用紙を控訴人の実妹であるD方に持参して,Dとその夫に証人としての署名を依頼し,同人らの署名をもらった。被控訴人は,控訴人が書いた夫の父の名の欄の「I」の字を書き直し,控訴人が記入していなかった夫の母の名と続柄の部分を記入するなどし,翌3日,○○市役所に離婚届を提出した。 被控訴人が提出した離婚届には,被控訴人の筆跡でCの親権者を被控訴人と定める旨の記載がされており,Cの戸籍上,平成12年4月3日,控訴人と被控訴人とがCの親権者を母と定めて届け出た旨の記載がされている。 (4) Dは,控訴人が経営する会社に事務員として勤務しているところ,同月3日,控訴人に対し,被控訴人の依頼により離婚届出用紙に証人として署名したことを告げた。さらに,Dは,同月6日,離婚届が実際に提出されたかどうかを確認するため,控訴人の戸籍の全部事項証明書をとり,Cの親権者を被控訴人と定めて離婚届が提出されていることを確認し,その後,  同証明書を社長室の控訴人の机の引出しに入れ,控訴人に対し,電話で「見ておいて下さい。」などと言って机の引出しに入れておいた旨を伝えた。 (5) 離婚届が提出された後も,控訴人と被控訴人は,控訴人宅において,外形的には何ら従前と変わらない同居生活を継続していた。 (6) 被控訴人は,その前後,平成11年8月から平成13年5月までの間に,合計9回グアム島を訪れているところ,そのうち4回はCも一緒であったが,残りの5回は単身であった。被控訴人の最初のグアム旅行は,控訴人から被控訴人とCの二人で行ってくるようプレゼントされたものであったが,回数を重ねるうちグアム島に知り合いもでき,家族ぐるみで付き合うような友人もできた。被控訴人のグアム島訪問歴中には,離婚届を出す 人とCの二人で行ってくるようプレゼントされたものであったが,回数を重ねるうちグアム島に知り合いもでき,家族ぐるみで付き合うような友人もできた。被控訴人のグアム島訪問歴中には,離婚届を出す10日ほど前までになる平成12年3月12日から同月  23日の足かけ12日間の旅程や,平成12年12月25日から平成13年1月8日まで足かけ15日間の旅程が含まれているところ,被控訴人は,Eという男性が平成12年12月26日から同月28日まで,グアム島のJホテルに滞在したことを示す書類を手元に所持していた。 (7) 平成13年2月7日ころ,被控訴人は,契約期間を同年2月10日から2年間と定めて,○○市内にアパートを借りる契約をした。同契約にあたり,控訴人は連帯保証人になった。被控訴人は,Cを控訴人のもとに残してアパートに移ったが,控訴人宅に毎日行き来してCの食事の世話などをした。その後,被控訴人は,平成13年3月24日から4月6日まで及び4月  23日から5月8日までの旅程でグアム島を訪れ,これに伴い,控訴人の姪であるFが,昼間,Cの世話をするようになっていた。 (8) その間,平成13年4月15日と同年5月21日の2回,1度目は被控訴人と控訴人の姉妹ら3名が,2度目はこれに控訴人本人も交えて,控訴人と被控訴人夫婦の問題についての話し合いをしたが,1度目は控訴人本人が加わらなかったことから,2度目は加わった控訴人がCの親権を巡って興奮した様子であったことから,いずれも具体的な成果はなかった。 (9) 平成13年6月1日朝,被控訴人は,通学途中のCを連れて東京の被控訴人の実家に戻り,Cの転校手続をとった。これに対し,控訴人は,東京家庭裁判所に親権者変更の調停を申し立て,その中で,離婚届出の際にCの親権者を被控訴 ,被控訴人は,通学途中のCを連れて東京の被控訴人の実家に戻り,Cの転校手続をとった。これに対し,控訴人は,東京家庭裁判所に親権者変更の調停を申し立て,その中で,離婚届出の際にCの親権者を被控訴人と定める協議が成立したことはなく,被控訴人が勝手にそのように記載した離婚届を提出したと主張したが,被控訴人がこれを認めなかったことから,同調停を取り下げて,本訴を提起した。 (10) 被控訴人は,現在まで,被控訴人の実家において,Cを養育している。 3 前項認定の事実に基づき,争点について判断する。 (1) 控訴人は,被控訴人から離婚届に署名押印することを強く求められたので取り敢えず署名押印して被控訴人に渡したが,  その際,控訴人がCの親権者になることを強く述べたと主張する。 しかし,そうであるなら,離婚届にCの親権者を控訴人と定める旨の記載をしないまま離婚届出用紙に署名押印し,捨て印まで押して相手に交付するというのは極めて不自然な行動といわなければならない。親権者の定めが記載されていない離婚届出用紙に署名押印して相手に渡した以上,親権者となることに固執していないと見られても仕方がないといえる。 また,控訴人は,親権者のことは後で話し合おうと言って署名押印した趣旨の主張もするが,親権者には自分がなると強く述べたという主張と,親権者のことは後で話し合おうと言ったという主張とは両立し難いものである。 (2) さらに,控訴人は,取り敢えず署名押印した理由として,被控訴人がすぐに離婚届を提出するとは思っていなかったと説明しているが,この点も,被控訴人から署名押印を強く求められたという主張と整合しない。現に,控訴人は,離婚届出用紙に署名押印した翌日に,Dから,被控訴人に頼まれて離婚届に証人として署名したとい 明しているが,この点も,被控訴人から署名押印を強く求められたという主張と整合しない。現に,控訴人は,離婚届出用紙に署名押印した翌日に,Dから,被控訴人に頼まれて離婚届に証人として署名したという話を聞かされた際にも,特に驚いたり行動を起こした様子は窺えない。 しかも,Dは,控訴人の机の引出しに離婚の記載のある戸籍の全部事項証明書をわざわざ入れて,「見ておいて下さい。」  などと控訴人に告げているところ,その直前に,控訴人は,Dから,離婚届の証人として署名したことを聞かされているのであるから,仮に,控訴人が,被控訴人が離婚届をすぐに提出することはないと考えていたのであれば,Dの話に反応して,戸籍の全部事項証明書を確認し,被控訴人に抗議するなどの行動に出たはずである。このように考えると,離婚届がすぐに提出されるとは思っていなかったとする控訴人の供述はにわかに信用できない。 (3) また,控訴人は,控訴人が費用をかけて自宅にCが遊ぶためのプールなどの設備を備えていることなどからも,控訴人の主張が真実であることが窺えると主張する。 しかし,前記のとおり,離婚届を作成したときも,被控訴人がアパートを借りたときも,Cについては引き続き控訴人宅で暮らすことが前提とされていたのであるから,自宅の設備の点は,特段の根拠とはならない。 (4) 控訴人は,本件離婚届は,被控訴人がグアムの男性に夢中になっている最中になされ,その後,単身グアムに行くために,控訴人にCの養育を委ねてアパートに別居し,更に平成13年5月,グアムの男性との関係がなくなった直後に,東京の被控訴人の実家にCを強制連行したのであるから,本件の背後に被控訴人とグアムの男性との関係があることは明らかである旨主張する(当審における補充主張 ムの男性との関係がなくなった直後に,東京の被控訴人の実家にCを強制連行したのであるから,本件の背後に被控訴人とグアムの男性との関係があることは明らかである旨主張する(当審における補充主張)。 しかし,被控訴人が頻繁にグアムに出かけた状況は前記認定のとおりであり,被控訴人がグアムの男性と控訴人主張のような関係があるとまでは認定できず,また,控訴人が被控訴人のそのような関係を疑い,被控訴人にCの養育を委ねることはできないと強く思っていたというのであれば,前記のとおり,離婚届にCの親権者を控訴人と定める旨の記載をしないまま離婚届出用紙に署名押印し,捨て印まで押して相手に交付するというのは極めて不可解であり,被控訴人が頻繁にグアムに出かけたことが,本件親権者指定の協議において,何らかの関係を有していたとは考えられない。 (5) 控訴人は,離婚届への署名押印は,いわば離婚の仮合意であるとし,離婚自体は了承したが,離婚の条件は今後の話し合いによるものであり,子供の問題も当然今後の話し合いいかんにかかっている旨主張する(当審における補充主張)。 しかし,仮合意にすぎないなら,Dから離婚届に証人として署名したことや,戸籍の全部事項証明書を取ったことを告げられた際の控訴人の態度は,前記のとおり説明がつかない。 また,被控訴人は,その後の別居等の一連の事実経過から,本件離婚届作成時,Cの親権者問題が決着されていなかった根拠とするが,被控訴人は,アパートを借りて別居した後も,親権者の指定を受けていながら,なお離婚時のCを控訴人宅から通学させるとの約束を守ろうとした被控訴人の態度が窺われるのであり,控訴人が主張するような経緯が本件離婚届作成時,  Cの親権者問題が決着されていなかった根拠となるもので 婚時のCを控訴人宅から通学させるとの約束を守ろうとした被控訴人の態度が窺われるのであり,控訴人が主張するような経緯が本件離婚届作成時,  Cの親権者問題が決着されていなかった根拠となるものではない。 (6) 控訴人が,離婚届に署名押印した時点において,真にCの親権者になることを望んでいたのであれば,親権者を被控訴人と定めた離婚届が提出されたことを知った時点で,被控訴人に対して強く抗議し,何らかの行動を起こしたはずであるから,  控訴人が,離婚届が既に提出されていることを,いつ,どのようにして知ったのかという点は,極めて重要な間接事実であるが,この最も重要な点について,控訴人の供述(陳述書等を含む。)は,曖昧であるうえ,変遷が見られる。 前記のとおり,Dは,控訴人経営の会社に勤務しており,戸籍の全部事項証明書を直接控訴人に渡せなかったとしても,離婚届に証人として署名した控訴人の離婚という事態を気にかけて,わざわざ同証明書を取ったのであるから,その後電話で机の引き出しに入れた旨告げただけで,そのまま放置し,その件について控訴人との間に何らの会話も交わしていないというのは,余りに不自然であり,到底信用できない。Dはその後控訴人と顔を合わした際に,同証明書に目を通したか否かを当然に確認していると考えられる。そうすると,控訴人は,その時点で,被控訴人をCの親権者とする離婚届が既に提出されていることを知ったというべきである。 (7) 他方,離婚届を作成した時点で,Cが引き続き控訴人宅で暮らすことが前提とされていたということ自体から,少なくとも親権者を被控訴人と定める協議までは成立していなかったと推認することもできないではないが,この点,被控訴人は,離婚届を作成した当時の控訴人の態度について,世間体 ということ自体から,少なくとも親権者を被控訴人と定める協議までは成立していなかったと推認することもできないではないが,この点,被控訴人は,離婚届を作成した当時の控訴人の態度について,世間体を気にして,被控訴人が直ちにCを連れて別居することや,離婚して被控訴人が旧姓を称することには抵抗していたものの,被控訴人がCの親権者になること自体には同意していたと主張し,本人尋問においてその旨供述する。 当時経営する会社の業務が多忙であった控訴人が,実際のCの監護のことを考え,親権者としては被控訴人に指定するものの,毎日の生活を従来どおり続けることを強く望んだとしても,格別不自然であるとはいえない。 4 以上の点を総合して考慮すると,(1) Cの親権者を被控訴人と定め,控訴人の署名押印がなされている協議離婚届が提出されていること(2) 仮に,控訴人が署名押印した際に,離婚届出用紙にCの親権者を指定する記載はなかったという控訴人の主張を採用するとしても,控訴人は,そのような離婚届出用紙に署名押印して,直ちに被控訴人に交付していること(3) 控訴人は,離婚届に署名押印して被控訴人に渡した直後に,実妹であるDから,その離婚届に証人として署名したということを聞かされているのに,特に何の行動もしていないこと(4) Dが戸籍の全部事項証明書をとり,それを控訴人の机の引き出しに入れてその旨告げられていながら,特に何の行動もしていないこと(それに目を通していないとは到底考えられない)以上の事実は動かない事実というべきであるところ,控訴人の供述ないし陳述が肝心な点で不明確ないし曖昧であることを併せ考慮すると,Cの親権者を被控訴人と定めて離婚する旨の意思を表示した本件離婚届が,控訴人の意に反して作成された であるところ,控訴人の供述ないし陳述が肝心な点で不明確ないし曖昧であることを併せ考慮すると,Cの親権者を被控訴人と定めて離婚する旨の意思を表示した本件離婚届が,控訴人の意に反して作成されたものであると認めることはできず,むしろ,本件離婚届に署名押印した時点では,控訴人は,当面の間,被控訴人がCを連れて別居したり,旧姓に復したりせずに,控訴人宅での生活を外形上従前どおりに継続することを前提とする限り,Cの親権者を被控訴人と定める離婚届が提出されることは,了解していたと推認するのが相当である。 5 以上によれば,原判決は相当であって,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官西田美昭裁判官森髙重久裁判官伊藤正晴)

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る