平成8(行ウ)9 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成13年9月7日 名古屋地方裁判所 住民訴訟
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判決文本文44,359 文字)

主文 1 原告らの被告名古屋市長に対する訴えを却下する。 2 被告日本下水道事業団及び同三菱電機株式会社は,名古屋市に対し,連帯して5692万8100円及びこれに対する被告日本下水道事業団については平成8年3月8日から,同三菱電機株式会社については同月9日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告名古屋市上下水道局長が,被告日本下水道事業団,同三菱電機株式会社,株式会社日立製作所,株式会社東芝,富士電機株式会社,株式会社明電舎,株式会社安川電機,日新電機株式会社,神鋼電機株式会社及び株式会社高岳製作所に対して,名古屋市が平成4年度に被告日本下水道事業団に委託した同市福徳ポンプ所電気設備工事及び同ポンプ所自家発電設備工事の談合に関する不法行為に基づく前項掲記の金額の損害賠償請求権の行使を怠る事実が違法であることを確認する。 4 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用のうち,原告らと被告名古屋市長との間に生じたものは原告らの負担とし,原告らとその余の被告らとの間に生じたものはこれを4分し、その1をその余の被告らの,その余を原告らの各負担とする。 6 この判決は,主文2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告日本下水道事業団及び同三菱電機株式会社は,名古屋市に対し,連帯して2億3192万5100円及びこれに対する被告日本下水道事業団は平成8年3月8日から,同三菱電機株式会社は同月9日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告名古屋市長及び同名古屋市上下水道局長が,被告日本下水道事業団,同三菱電機株式会社,株式会社日立製作所,株式会社東芝,富士電機株式会社,株式会社明電舎,株式会社安川電機,日新電機株式会社,神鋼電機株式会社及び株式会社高岳製作 水道局長が,被告日本下水道事業団,同三菱電機株式会社,株式会社日立製作所,株式会社東芝,富士電機株式会社,株式会社明電舎,株式会社安川電機,日新電機株式会社,神鋼電機株式会社及び株式会社高岳製作所に対し,名古屋市が平成4年度に被告日本下水道事業団に委託した同市福徳ポンプ所電気設備工事及び同ポンプ所自家発電設備工事の談合に関する不法行為に基づく前項掲記の金額の損害賠償請求権の行使を怠る事実が違法であることを確認する。 第2 事案の概要本件は,名古屋市(以下「市」という。)の住民である原告らが,市が被告日本下水道事業団(以下「被告事業団」という。)に対し委託した別紙建設工事目録記載の工事(以下「本件委託工事」という。)のうち,被告事業団が被告三菱電機株式会社(以下「被告三菱電機」という。)に対して外注した電気設備工事(以下「本件工事1」という。)及び自家発電設備工事(以下「本件工事2」という。)に係る工事請負代金が,被告事業団,同三菱電機及び前記請求の2項記載のその他の業者8社(以下,「訴外8社」という。)による談合により不当につり上げられ,市は同請負代金に被告事業団の管理費を加算した金額の支払をしたことにより,談合がなければ形成されたであろう請負代金額と実際の請負代金額の差額相当分の損害(実際の請負代金額の20パーセント相当額及び同相当額の10パーセント相当の弁護士費用の合計額)を被ったところ,同損害は被告事業団,同三菱電機及び訴外8社の共同不法行為によるものであるから,同被告ら及び訴外8社は連帯して市の被った損害を賠償すべきであるにもかかわらず,被告名古屋市長(以下「被告市長」という。)及び地方公営企業法所定の「管理者」たる地位を有する被告名古屋市上下水道局長(以下「被告管理者」という。)は被告事業団,同三菱電機及び訴外8社に対 わらず,被告名古屋市長(以下「被告市長」という。)及び地方公営企業法所定の「管理者」たる地位を有する被告名古屋市上下水道局長(以下「被告管理者」という。)は被告事業団,同三菱電機及び訴外8社に対する上記損害賠償請求を違法に怠っているとして,地方自治法(平成11年法律第87号による改正前のもの。以下「法」という。)242条の2第1項3号に基づき,被告市長及び同管理者が上記損害賠償請求権の行使を怠る事実が違法であることの確認を求めるとともに,同項4号後段に基づき,市に代位して,上記怠る事実の相手方である被告事業団及び同三菱電機に対して,上記損害額及びこれに対する訴状送達の日の翌日からの民法所定の遅延損害金の支払を求めた住民訴訟である。 1 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に限定可能な事実)(1) 当事者原告らは,いずれも市の住民である。 被告事業団は,日本下水道事業団法(昭和47年法律第41号,以下「事業団法」という。)に基づいて設立され,地方公共団体の要請に基づき,下水道の根幹的施設の建設及び維持管理を行う特殊法人である。被告三菱電機及び訴外8社(以下,これらを併せて「9社」という。)は,いずれも電気設備工事の請負等の事業を営む会社である。被告管理者は,名古屋市水道事業等の設置等に関する条例(昭和41年名古屋市条例58号,以下「本件条例」という。)2条1項,平成12年名古屋市条例31号,地方公営企業法7条及び8条1項の規定により市の下水道事業について市を代表する者である。 (2) 被告事業団の業務執行方法被告事業団は,事業団法27条に基づき,建設大臣の許可を受けて日本下水道事業団業務方法書(昭和50年8月28日規程第43号,以下「業務方法書」という。)を定めている。業務方法書5条は,事業団が下水道施設の建設を受託しよ 法27条に基づき,建設大臣の許可を受けて日本下水道事業団業務方法書(昭和50年8月28日規程第43号,以下「業務方法書」という。)を定めている。業務方法書5条は,事業団が下水道施設の建設を受託しようとするときは,委託地方公共団体と費用の額及び受領方法等を定めた委託協定を締結することとしており,同6条は,事業団が下水道施設の建設を行うときは,これに要する費用を委託地方公共団体に負担させるものとし,同費用の範囲については①工事の施行に直接必要な工事請負費,原材料費その他の工事費,②工事の監督,検査その他工事の施行のため必要とする人件費,旅費及び庁費,③建設業務の処理上必要とする一般管理費,④その他建設業務の処理に伴い必要を生じた費用と定めている(甲10)。 (3) 本件委託工事等ア市は,平成元年8月3日,被告事業団に対し,別紙建設工事目録記載の施設(以下「本件施設」という。)の建設工事委託につき要請書を提出してその建設を要請した(乙ロ4)。 イ市と被告事業団は,協議の上,平成4年6月5日,本件委託工事の施行に要する費用を32億7000万円(うち消費税額9524万2718円)として本件施設の建設工事委託に関する協定(乙ロ1,以下「本件協定」という。)を締結した。本件協定11条は精算に関する条項であり,同条1項及び3項の内容は次のとおりである。 1項乙(被告事業団)は,建設工事が完成したときは,費用の精算を行うものとする。 3項精算の結果生じた納入済額と精算額との差額は,甲(市)に還付するものとする。 ウ本件協定は,3回にわたって変更された(以下,これらを総称して「変更協定」ということがある。)。その経過は次のとおりである。 (ア) 平成4年7月10日第1回変更協定本件委託工事の施行に要する費用を40億9500万円(うち消費 れた(以下,これらを総称して「変更協定」ということがある。)。その経過は次のとおりである。 (ア) 平成4年7月10日第1回変更協定本件委託工事の施行に要する費用を40億9500万円(うち消費税額1億1927万1844円)に増額変更した(乙ハ8)。 (イ) 平成4年11月19日第2回変更協定本件委託工事の施行に要する費用を43億3557万円(うち消費税額1億2627万8737円)に増額変更した(乙ハ9)。 (ウ) 平成6年3月31日第3回変更協定本件委託工事の施行に要する費用を43億0890万円(うち消費税額1億2550万1941円)に減額変更するとともに,本件委託工事の完成期限を一部を除き延長した(乙ハ10)。 エ市は,被告事業団に対し,本件協定及び第1回ないし第3回の変更協定に基づき,本件委託工事の施行に要する費用合計43億0890万円を次のとおり支出した(乙ハ11ないし19の各1,2)。 (ア) 第1回支払平成4年9月7日  1億8582万8000円(イ) 第2回支払平成4年10月5日 3億2214万円(ウ) 第3回支払平成4年11月5日 1億4299万8700円(エ) 第4回支払平成5年2月5日  4851万円(オ) 第5回支払平成5年3月25日 16億8209万3300円(カ) 第6回支払平成5年6月7日  5億1799万2700円(キ) 第7回支払平成5年11月5日 3973万6100円(ク) 第8回支払平成6年3月25日 11億2857万0200円(ケ) 第9回支払平成6年9月5日  2億4103万1000円オ被告事業団は,本件委託工事を分野別にそれぞれ外注して施工させたが,そのうち本件工事1及び2については指名競争入札の結果,被告三菱電機がいずれも落札し,被告事業団から工事を受注して 万1000円オ被告事業団は,本件委託工事を分野別にそれぞれ外注して施工させたが,そのうち本件工事1及び2については指名競争入札の結果,被告三菱電機がいずれも落札し,被告事業団から工事を受注して契約を締結した。その経過は次のとおりである。 (ア) 本件工事1について平成4年8月20日入札執行(乙イ1,乙ロ36)同日契約締結(乙ロ2の1,以下「本件契約1」という。請負代金額9億1361万円,うち消費税額2661万円)平成5年3月12日第1回変更契約(乙ロ2の2,乙ハ6の5,変更内容は出来高及び支払限度額区分の変更であり,請負代金額の変更はない。)平成6年2月28日第2回変更契約(乙ロ2の3,変更内容は工期のみ。)平成6年3月31日第3回変更契約(乙ロ2の4,変更内容は工期のみ。)(イ)本件工事2について平成4年9月25日入札執行(乙イ2,乙ロ36)同日契約締結(乙ロ3の1,以下「本件契約2」という。請負代金額1億4059万5000円,うち消費税額409万5000円)平成6年2月28日第1回変更契約(乙ロ3の2,変更内容は工期のみ。)平成6年3月31日第2回変更契約(乙ロ3の3,変更内容は工期のみ。)カ被告事業団は,同三菱電機に対し,本件契約1及び2に基づく請負代金を次のとおり支払った。 (本件契約1に基づく請負代金9億1361万円について)(ア)第1回支払平成4年10月13日 8886万円(イ)第2回支払平成5年4月28日  3億6136万3300円(ウ)第3回支払平成5年6月30日  1億2399万円(エ)第4回支払平成6年5月31日  2億3952万4700円(オ)第5回支払平成6年9月13日  9987万2000円(本件契約2に基づく請負代金1 平成5年6月30日  1億2399万円(エ)第4回支払平成6年5月31日  2億3952万4700円(オ)第5回支払平成6年9月13日  9987万2000円(本件契約2に基づく請負代金1億4059万5000円について)(ア) 第1回支払平成4年11月13日 2559万円(イ) 第2回支払平成5年5月18日  5109万3500円(ウ) 第3回支払平成5年6月30日  1658万円(エ) 第4回支払平成6年5月31日  3200万0500円(オ) 第5回支払平成6年9月13日  1533万1000円キ被告事業団は,市に対し,平成6年7月20日までに完成した本件施設を引き渡し,本件協定11条に基づき費用の精算をしたが,その結果は,被告事業団が被告三菱電機ほかの業者に対して外注した工事代金合計41億3678万9000円に所定の管理諸費1億7211万1000円を合算すると43億0890万円となり,第3回変更協定によって最終的に変更された本件委託工事の施行に要する費用の額と同額であったため,市に還付すべき差額はないものとされた。(乙ロ19)(4) 公正取引委員会による談合の摘発等公正取引委員会は,平成7年7月12日,被告事業団が指名競争入札の方法により発注する平成4年度特定電気設備工事及び平成5年度特定電気設備工事について,被告三菱電機が訴外8社と共同して新規工事の受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように協力することにより,公共の利益に反して,上記特定電気設備工事の各取引分野における競争を実質的に制限する不当な取引制限を行ったとして,被告三菱電機及び訴外8社に対して私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)7条の2に基づく課徴金納付命令を発し(以下「本件課徴金納付命令」という。),同 行ったとして,被告三菱電機及び訴外8社に対して私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)7条の2に基づく課徴金納付命令を発し(以下「本件課徴金納付命令」という。),同命令は同年8月11日に確定した。本件工事2は本件課徴金納付命令の対象とされた工事に含まれているが,本件工事1は完全な新規発注工事ではなく,被告三菱電機による既設部分の存する工事であったことから,本件課徴金納付命令の対象とされなかった(甲17の2,弁論の全趣旨)。被告三菱電機及び訴外8社は,いずれも本件課徴金納付命令に応じてこれを支払っている。 また,被告事業団が平成5年度に指名競争入札の方法により新規に発注した電気設備工事に関する談合については,公正取引委員会の告発により,被告三菱電機及び訴外8社とその談合担当者並びに被告事業団の元工務部次長が独禁法違反の罪で起訴され(東京高等裁判所平成7年(の)第1号,以下「刑事事件」という。),平成8年5月31日,各被告人に対する有罪判決が言い渡された(甲9,乙ロ21)。 (5) 住民監査請求原告らは,平成7年11月27日,市監査委員に対し,市が被告事業団に対して委託した本件工事1及び2について,被告事業団が指名競争入札の方法により発注し,被告三菱電機との間で本件契約1及び2が締結され,この契約金額は市から被告事業団に対し全額支払われているところ,9社の作っていた「九社会」という談合組織は,被告事業団から工事名及び発注金額に関する提示を受けた上で入札談合を行って契約金額を不当につり上げ,この共同不法行為によって,工事発注者として最終的に契約代金を支払った市に対し,談合によってつり上げられた契約金額と公正な競争が行われていた契約金額との差額に相当する損害を与えたから,被告市長又は被告管理者は,市が被告 て,工事発注者として最終的に契約代金を支払った市に対し,談合によってつり上げられた契約金額と公正な競争が行われていた契約金額との差額に相当する損害を与えたから,被告市長又は被告管理者は,市が被告事業団及び9社に対して有する上記損害賠償請求権を行使して損害を補填する責任があるのにこれを怠っているので,被告市長又は被告管理者に対して必要な措置を構ずべきことを勧告することを求める旨の監査請求をした(甲2,以下「本件監査請求」という。)が,市監査委員は,平成8年1月23日,不当な取引制限が契約金額に影響を及ぼしたとは断定できず,損害発生の事実は認識できないとして本件監査請求を棄却し,原告らに通知した。 2 争点(本案前の争点)(1) 本件につき適法な監査請求が前置されているか。 ア本件監査請求につき,監査請求期間を定めた法242条2項が適用されるか。 イアを積極に解した場合,監査請求期間の起算点はいつか。 ウ本件監査請求が監査請求期間を徒過していると解した場合,法242条2項ただし書の「正当な理由」が存するか。 (2) 被告市長は,法242条の2第1項3号に基づく本件請求に関する被告適格を有するか。 (3) 本件において,法242条の2第1項3号に基づく請求に訴えの利益があるか。 (本案の争点)(4) 被告事業団及び9社が入札談合行為を行ったと認められるか。 (5) 被告事業団及び9社が入札談合行為を行ったと認められる場合,それによって市に損害が生じたか。またその額はいくらか。 (6) 被告市長及び同管理者に損害賠償請求権の行使を怠る違法が存するか。 (被告三菱電機及び同事業団は,本案前の主張としてこの点に関する主張をしている。) 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)ア(監査請求期間制限の適用の有無)について(被告三菱電機及び同 。 (被告三菱電機及び同事業団は,本案前の主張としてこの点に関する主張をしている。) 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)ア(監査請求期間制限の適用の有無)について(被告三菱電機及び同管理者の主張)ア法242条2項は,財務会計上の行為について,住民が個人の権利義務に関わりなく,単に住民であるというだけの資格において,いつまでも当該行為の効力を争い得ることとすることは法的安定性の見地から好ましいことではないため,住民による監査請求を期間的に制限しようとしたものであるが,同条1項に定められている「違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実」についての監査請求は,その起算点を画する事実が存在しない等の理由から,同条2項の期間制限には服しないと解されている(最高裁昭和53年6月23日第三小法廷判決・裁判集民事124号145頁,以下「昭和53年判決」という。)。しかし,地方公共団体において違法に財産の管理を怠る事実があるとして住民監査請求が行われた場合,財務会計行為そのものを違法,無効として監査請求をなすことが同条2項との関係で不可能となった後でも,その財務会計行為が違法,無効であることに基づいて発生する請求権の行使を怠っているという構成をすれば,監査請求期間の制限を受けないとすると,同項が期間制限を設けた趣旨が没却されることとなるから,その監査請求が,地方公共団体の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実とするものであるときは,その財務会計上の行為のあった日又は終わった日を基準として法242条2項の規定を適用すべきである(最高裁昭和62年2月20日第二小法廷判決・民集41巻1号122頁,以下「昭和62年判 であるときは,その財務会計上の行為のあった日又は終わった日を基準として法242条2項の規定を適用すべきである(最高裁昭和62年2月20日第二小法廷判決・民集41巻1号122頁,以下「昭和62年判決」という。)。 イ昭和62年判決が,特定の財務会計上の行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使に関する怠る事実(以下,「不真正怠る事実」といい,それ以外の怠る事実を「真正怠る事実」という。)について法242条2項の期間制限が及ぶと解したのは,前記アのとおり,法律関係の早期安定という同項の期間制限の趣旨が没却されることとなることを防ぐためであって,それは住民が法律構成を変えることによりほしいままに監査請求期間の制限を潜脱することを許さないということを意味するのであるから,同判決のいう「特定の財務会計上の行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権」とは,当該請求権の発生原因事実の中に特定の財務会計行為の違法,無効を基礎付ける事実が包含された一切の請求権を指すというべきである。なぜならば,このような請求権の不行使を怠る事実とする監査請求は,たとえ直接的には財務会計行為の違法,無効を主張するものでないとしても,その審理の過程で必然的に財務会計行為の違法,無効に関する具体的事実に関する主張を伴うことになるから,財務会計行為に関する法的安定性を損なう点では直接的に財務会計行為の違法,無効を主張するものと同一だからである。そして監査委員が住民の主張した違法事由にとらわれず,問題とされた財務会計行為につき監査し,是正の措置を講ずることができることからすると,当該財務会計行為が違法,無効なものであるか否かは,住民が監査請求時に当該財務会計行為の違法,無効を主張していたか否かにかかわらず,客観的に判断されるべき の措置を講ずることができることからすると,当該財務会計行為が違法,無効なものであるか否かは,住民が監査請求時に当該財務会計行為の違法,無効を主張していたか否かにかかわらず,客観的に判断されるべきであって,実際に違法な財務会計行為があり,それを基礎とする損害賠償請求が可能であるならば,そのような財務会計行為もまた監査請求の対象に含まれるというべきである。 ウさらに,法律関係の早期安定という法242条2項の期間制限の趣旨が没却されることを防ぐためには,特定の財務会計行為の違法,無効について監査請求をすることが可能な事案においては,行使を怠っているとされる実体法上の請求権の発生原因事実の中に特定の財務会計行為の違法,無効を基礎付ける事実が完全には包含されておらず,財務会計行為の違法,無効から直接発生する請求権と行使を怠っているとされる請求権が請求権競合の関係に立つような場合であっても両者が社会経済的に同一の効果を得られるものである限り,その怠る事実についても当該財務会計行為のなされた時を基準として監査請求期間を制限すべきである。 エこの点について原告らは,昭和62年判決は当該財務会計行為についての監査請求と怠る事実についての監査請求が表裏一体の関係にある場合に限って適用される旨主張するが,同判決はそのような限定を付しておらず,原告ら独自の解釈にすぎないというべきである。 また,原告らは,昭和62年判決は当該財務会計行為が違法かつ無効な場合に限定して適用される旨主張するが,軽微な瑕疵しか存しない財務会計行為については,法的安定性の要請がより強く働くから,無効の場合に比べて期間制限をなすべき必要性が大きい上,瑕疵ある財務会計行為を取り消した上で実体法上の請求権を行使せよという形で監査請求をすることは可能であるから,昭和62年判決は,財務会 くから,無効の場合に比べて期間制限をなすべき必要性が大きい上,瑕疵ある財務会計行為を取り消した上で実体法上の請求権を行使せよという形で監査請求をすることは可能であるから,昭和62年判決は,財務会計行為が違法で取消し得べき場合にも適用されると解すべきである。 さらに,原告らは法242条1項にいう財務会計行為又は怠る事実の違法とは,地方公共団体に対する長又は職員らの義務違反行為(以下「内部関係違法」という。)のみを指すものであり,それ以外の違法(業者等が地方公共団体に対して不法行為を行ったような場合,以下「外部関係違法」という。)は含まれないと主張するが,このような解釈は住民監査請求が有する地方公共団体の財政の監視という機能をいたずらに限局するものであって失当である。 オこれを本件監査請求についてみるに,原告らは,本件監査請求において,本件協定の締結と九社会が平成4年度当初から談合の実行行為を行っていた事実を摘示した上,工事発注者として最終的に過大な契約代金を支払った市に損害が生じたと構成している。原告らの上記主張によれば,市が本件協定及び変更協定により負担し,確定し,支出した金額は,被告事業団と被告三菱電機らの談合の影響を受けて不当に高額なものとなっているということになるから,当該協定及びこれに基づく支出は地方財政法4条1項に定める必要かつ最少の限度を超えるものとして違法となる。現に,被告事業団は,委託協定を締結した地方公共団体に対して精算金が発生しないように,外注工事の発注金額に応じて委託協定の金額を増額又は減額する内容の変更協定を締結しているという実態があり,本件についても精算金は生じていないから,少なくとも変更協定は談合の影響を受けた違法なものというべきところ,変更協定は本件協定と一体をなすものであるから,本件協定も違法となるし いるという実態があり,本件についても精算金は生じていないから,少なくとも変更協定は談合の影響を受けた違法なものというべきところ,変更協定は本件協定と一体をなすものであるから,本件協定も違法となるし,そのような違法な協定に基づく支出も違法な財務会計行為というべきである。そして,原告らの主張によれば,被告事業団は当該談合に積極的に関与しながら市との間で本件協定を締結して代金を受領したというのであるから,その違法性は重大かつ明白であり,かつ,相手方である被告事業団はその事実を認識し,又は認識し得べきであったから,上記各財務会計行為は無効ということになる。 原告らは,本件監査請求において,不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠る事実を監査の対象としているけれども,上記請求権の発生原因事実中に,損害の発生との関係で,必然的に違法,無効な本件協定,変更協定及び支出という財務会計行為が含まれることとなる以上,上記不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠る事実は,不真正怠る事実に該当し,法242条2項の監査請求期間の制限を受けるというべきである。 (原告らの主張)ア法が監査請求期間に制限を設けた趣旨並びに昭和53年判決及び昭和62年判決の内容は,被告三菱電機ら主張のとおりである。しかしながら,昭和62年判決の事案は,当該財務会計行為について既に一度監査請求が行われており,再度怠る事実についての監査請求をすることにより住民が実質的に同じ議論をむしかえしていたケースであった。同判決は,このような行為を許さないとするものであり,当該財務会計行為に関する監査請求と怠る事実に関する監査請求が表裏一体の関係にあり,両者の請求原因が一致する場合に限って監査請求期間を制限しようとしたものと解すべきであって,被告三菱電機らのように同判決を拡張して解釈すべきでは 請求と怠る事実に関する監査請求が表裏一体の関係にあり,両者の請求原因が一致する場合に限って監査請求期間を制限しようとしたものと解すべきであって,被告三菱電機らのように同判決を拡張して解釈すべきではない。 次に,同判決は「違法,無効」と表現しているところ,住民が地方公共団体に代位して行使し得る権利の中に取消権や解除権が含まれていないこと(法242条の2第1項4号)からすると,当該財務会計行為が無効でなく,単に取り消し得べき瑕疵を帯びるにすぎないような場合は,同判決の射程外であると解すべきである。 また,住民監査請求及び住民訴訟の制度は,地方公共団体の長又は職員の職務違反行為を是正するために創設されたものであって,長又は職員が不正に加担していない場合には,それらの是正措置は,第1次的には長や職員の手で採られるべきことが期待されており,直ちに住民に是正請求権を与える必要までは認められない。 したがって,法242条1項がいう財務会計行為又は怠る事実の違法とは,内部関係違法のみを指すものであり,外部関係違法は含まないと解すべきであるから,昭和62年判決の「違法」も同様に解すべきである。 ウ本件監査請求は,被告事業団及び9社が談合により契約金額を不当につり上げ,市に損害を与えたことにより市が取得した損害賠償請求権の不行使を怠る事実とするものであるが,上記損害賠償請求権は,上記被告らの共同不法行為により発生するものであり,本件協定の無効に基づく不当利得返還請求権のように,本件協定の違法,無効を請求原因として発生するものではなく,その請求原因事実は重要な部分で食い違っている。したがって,本件監査請求は,本件協定(又は変更協定)ないし支出の違法,無効と表裏一体の関係になく,不真正怠る事実には該当しない。 また,入札談合がなされた場合,談合の結果形成 分で食い違っている。したがって,本件監査請求は,本件協定(又は変更協定)ないし支出の違法,無効と表裏一体の関係になく,不真正怠る事実には該当しない。 また,入札談合がなされた場合,談合の結果形成された落札価格は,自由競争がなされた場合に比べて高額なものとなり,発注者にはその差額相当分の損害が発生するが,入札の性質上,予定価格を超えた金額で落札されることはあり得ない。そして,予定価格は取引実例価格等を考慮して適正に定められる価格であるから,予定価格の範囲内で締結された契約は,たとえその価格が入札談合の影響でつり上げられていたとしても,その目的・効果との間で,地方財政法4条1項違反と評価されるほど著しく均衡を欠き,財務会計職員の裁量権逸脱に当たるとはいえないから,違法とは評価できないし,仮に同法違反に該当して違法と評価されるとしても,必ずしも私法上無効になるとは限らない。しかも,本件は市の職員が被告事業団及び同三菱電機らにより欺罔されていたという事案であり,内部関係違法は存しない。したがって,いずれの点からしても,本件協定,変更協定及び委託料の支出は違法,無効ではなく,昭和62年判決適用の前提を欠くから,本件監査請求は不真正怠る事実に関する監査請求とはいえず,監査請求期間の制限を受けない。 (2) 争点(1)イ(監査請求期間の起算点)について(被告三菱電機及び同管理者の主張)ア争点(1)アについて主張したとおり,本件協定,変更協定及びこれに基づく各支出はいずれも違法,無効というべきであるから,第1次的には本件協定の時,第2次的には各変更協定の時,第3次的には各支出の時を監査請求期間の起算点とすべきところ,本件監査請求はそのうち最も遅い第9回支払の日(平成6年9月5日)から起算しても1年以上を経過した平成7年11月27日になされているか 時,第3次的には各支出の時を監査請求期間の起算点とすべきところ,本件監査請求はそのうち最も遅い第9回支払の日(平成6年9月5日)から起算しても1年以上を経過した平成7年11月27日になされているから,監査請求期間経過後になされた不適法な監査請求である。 イ原告らは,最高裁平成9年1月28日第三小法廷判決・民集51巻1号287頁(以下「平成9年判決」という。)を援用して,仮に本件監査請求に法242条2項が適用されるとしても,本件監査請求は適法な住民監査請求であると主張する。 しかし,同判決は,①財務会計上の行為の時点では損害賠償請求権が発生しないという特別な事情が存する場合において,②監査請求期間の起算点を判断するに当たって,地方公共団体自身が損害賠償義務の存否を訴訟で争っているといった,損害賠償請求権を行使するについての法律上の障害若しくはこれと同視し得るような客観的な障害のある場合について,これを行使し得るようになった時点を監査請求期間の起算点としたものであって,財務会計行為がなされた時点で請求権自体は既に発生しているのに,地方公共団体の財務会計行為担当者が当該財務会計行為が違法であることを知らなかったために事実上当該請求権の行使ができなかったにすぎない場合は含まれないと解するのが相当である。 本件監査請求において問題とされた損害賠償請求権は,談合によって協定価格を不当につり上げるという不法行為によって発生したとされるものであり,当該不法行為による損害は,本件協定締結の時又は談合の時に発生しており,仮にそうでないとしても,遅くとも本件協定等に基づく支払がなされた時点においては上記不法行為による損害は具体化している。なるほど,本件において被告管理者は損害の発生を否定しているが,上記のとおり財務会計行為の時点で損害が発生しており,前 定等に基づく支払がなされた時点においては上記不法行為による損害は具体化している。なるほど,本件において被告管理者は損害の発生を否定しているが,上記のとおり財務会計行為の時点で損害が発生しており,前記①の事情が存せず,実際にも原告らが本件訴えを提起することについて何らの障害もなかったから,平成9年判決とは事案を異にするものであって,監査請求期間の起算点が本件協定等に基づく代金の支払日よりも遅くなることはあり得ない。 (被告事業団の主張)原告らの主張する損害賠償請求権の発生原因となる市と被告事業団との間の本件協定は,平成4年6月5日に締結され,次いで被告事業団と同三菱電機との間の本件契約1は同年8月20日に,本件契約2は同年9月25日にそれぞれ締結されているから,本件監査請求が行われた平成7年11月27日までの間に1年以上の期間を経過していることが明らかである。 (原告らの主張)仮に,本件監査請求に対し,法242条2項が適用されるとしても,市は,監査結果並びに被告管理者及び同市長の本訴における対応からも明らかなように,被告事業団及び9社の不法行為に基づく損害賠償請求権の存在を争っている。そして,上記被告らの不法行為により損害が発生するか否かは,完了精算報告書が提出され,精算還付金の存否が判明するまでは確定しないから,本件は平成9年判決が示す2要件を充足しており,監査請求期間の起算点は,上記完了精算報告書の提出の時,すなわち,平成7年3月31日と解すべきである。 したがって,本件監査請求は適法である。 (3) 争点(1)ウ(正当な理由の有無)について(原告らの主張)ア法242条2項ただし書は,住民監査請求期間を経過するという意味での法的安定性を害しても,なお,監査請求を求めるべき必要性があることを認めたものである。したがって,この ついて(原告らの主張)ア法242条2項ただし書は,住民監査請求期間を経過するという意味での法的安定性を害しても,なお,監査請求を求めるべき必要性があることを認めたものである。したがって,この「正当な理由」の解釈に当たっては,法が住民監査請求を認めた趣旨を十分尊重すべきであり,客観的に請求者が法定期間内に監査請求を申し立てることが不可能又は困難であるときには,正当な理由があるといわざるを得ず,その正当な理由の有無の判断は,法242条2項本文の規定する住民監査請求期間経過後であっても,住民監査請求を認めなければ正義に反し,当該事例において住民監査請求ひいては住民訴訟の制度を無意味なものにするかどうかを基準として判断されなければならない。 イ公正取引委員会は,被告三菱電機に対して,平成7年7月12日付けで本件課徴金納付命令をなし,同被告はその納付を行っているが,最高裁は,いわゆる鶴岡灯油事件において,公正取引委員会が排除勧告をなし,勧告を受けた企業が応諾した場合でも,勧告の応諾が社会的非難の回避等を動機としていた場合には,不法行為の成立に関する証拠とはなり得ないとしているから(最高裁平成元年12月8日第二小法廷判決・民集43巻11号1259頁),被告三菱電機が課徴金を納付しても,それだけでは同被告が不法行為の存在を自認したことにはならない。本件の場合,平成7年11月10日に開かれた刑事事件の第1回公判期日において,被告人たる被告三菱電機らが公訴事実を認めたので,住民は不法行為の存在を確定的に知ったものである。本件監査請求は上記第1回公判期日からわずか17日後になされているから,法242条2項ただし書の正当理由があることは明らかである。 また,仮にそうでないとしても,本件において一応監査請求が可能となったのは,早くとも原告ら代理人弁護 らわずか17日後になされているから,法242条2項ただし書の正当理由があることは明らかである。 また,仮にそうでないとしても,本件において一応監査請求が可能となったのは,早くとも原告ら代理人弁護士が情報公開請求により被告事業団との本件協定に基づく平成4年度及び同5年度の工事請負契約の報告関係書類の公開を受け,本件工事1及び2の内容を知った平成7年10月27日であるから,いずれにしても本件については正当理由が存する。 ウこれについて,被告三菱電機及び同管理者は,同年7月28日の毎日新聞による報道(以下「毎日新聞報道」という。)及び週刊下水道情報等の業界新聞によって談合があったとされる契約等を特定することは可能であつたから,監査請求をなし得た旨主張するが,毎日新聞報道には「名古屋市北区の福徳ポンプ所」とあるのみで,工事契約の日時,当事者,金額等の具体的事実は一切明らかにされていないし,被告らの主張する業界新聞等は平均的な住民が用意に入手し得るものではない。また,住民に文書公開請求をする義務があるわけではないから,もっと早期に文書公開請求をすれば契約につき特定が可能だったとする被告らの主張は失当である。 (被告三菱電機及び同管理者の主張)ア正当な理由の有無は,特段の事情がない限り,地方公共団体の住民が相当の注意力を持って調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか,また,当該行為を知ることができたと解されるときから相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきである。 通常,客観的に住民が当該行為を知り得ないか,又は知ることが困難な状況に置かれていたことがまず必要であり,その後当該行為を知り得るようになったときから相当期間内に監査請求をすることが必要とされるのである。 イ本件では,平成6年9月2日以降,被告事 ることが困難な状況に置かれていたことがまず必要であり,その後当該行為を知り得るようになったときから相当期間内に監査請求をすることが必要とされるのである。 イ本件では,平成6年9月2日以降,被告事業団が発注した各地方公共団体における下水道施設の電気設備工事について広く談合が行われているとの報道が多数なされており,その後も毎日新聞報道を含め詳細な報道がなされている。したがって,住民が相当の注意力をもって調査したとすれば,遅くとも独禁法違反による起訴に係る報道のなされた平成7年6月16日や,本件課徴金納付命令に関する報道のあった同年7月13日ごろまでには,市と被告事業団の間における本件協定の存在を知り,かつ,被告三菱電機らによる談合の事実やこれに対する被告事業団の加功を知って,違法ではないかとの合理的な疑いを抱くことができたというべきである。被告事業団発注工事に関する9社の談合については,全国各地で弁護団が形成され,その弁護団が連絡をとりつつ監査請求等を行っていたものであるが,これら全国の弁護団は,同年7月29日までには十分な資料収集を終え,いつでも監査請求可能な状態にあり,現に,同年9月22日には三重県で監査請求が行われているのである。 そして,上記の事実に,本件監査請求における監査対象の特定や疎明資料の添付状況を総合すれば,独禁法違反による起訴に係る報道から5か月以上,本件課徴金納付命令に関する報道がなされてから4か月以上を経過した後になされた本件監査請求は,相当な期間内になされたものといえず,法242条2項ただし書の「正当な理由」はない。 ウ仮に,平成7年6月16日ないし同年7月13日ころまでに,本件協定の存在や談合の事実等につき合理的な疑いを抱くことができなかったとしても,住民は,同月28日の毎日新聞報道によって,本件工事1に ウ仮に,平成7年6月16日ないし同年7月13日ころまでに,本件協定の存在や談合の事実等につき合理的な疑いを抱くことができなかったとしても,住民は,同月28日の毎日新聞報道によって,本件工事1に関し,市又は愛知県が平成4年度において被告事業団と建設委託契約を締結したこと,被告事業団が主宰した入札手続を通じて9社のいずれかの会社が落札したこと,当該入札について談合がなされたことを知ることができた。そして,毎日新聞報道がなされた時点で,週刊下水道情報には,本件に関する落札業者,入札日,落札金額が既に掲載されていたところ,この週刊誌は名古屋市において十分入手可能である。また,本件工事2についても,建通新聞には,被告三菱電機が落札したこと及びその落札金額が報道されているところ,同新聞も愛知県内で多数頒布されている。公正取引委員会は,「株式会社日立製作所外8名に対する課徴金納付命令等について」と題する書面を同月12日に公表し,その中で本件につき問題とされる工事が電気設備工事,特別高圧受変電設備工事,自家発電設備工事のいずれかであることを明らかにしており,原告らはこの書面を同月中には入手していた。原告らは,本件協定に関する文書公開請求の日から18日後にその公開を受けているから,毎日新聞報道の後,速やかに文書公開請求をしてさえいれば,早期にこれを入手して契約当事者等に関する具体的事実を特定することが可能であった。原告らは,週刊下水道情報は入手困難であるとするが,原告ら訴訟代理人と連絡をとりつつ強調して監査請求の準備を進めていた千葉県在住の弁護士上村勉氏は,同種雑誌の存在を同年8月24日の時点で知っていたのであるから,原告らにおいてのみその入手が不可能であったはずはない。また,公文書公開請求についても,上記上村勉氏は同月9日に行っている。 このよ ,同種雑誌の存在を同年8月24日の時点で知っていたのであるから,原告らにおいてのみその入手が不可能であったはずはない。また,公文書公開請求についても,上記上村勉氏は同月9日に行っている。 このように,市の住民は,遅くとも同年7月28日を起算点として相当な期間内に監査請求をなすべきところ,原告らが情報公開を求めたのはそれから約1か月半も経過した同年10月9日になってからであり,その公開を受けてからさらに1か月経過した11月27日になって本件監査請求を行っているから,本件監査請求については正当な理由がない。 (4) 争点(2)(被告市長の被告適格)について(被告市長の主張)ア市の下水道事業については,本件条例2条1項,地方公営企業法2条3項により,同法の全部が適用されるから,被告管理者は,同法8条1項の規定により,同項1号から4号において被告市長の権限として留保されたもの及び法律に特別の定めがあるものを除き,地方公営企業の業務を執行し,当該業務の執行に関して地方公営企業を代表する権限が与えられている。このように,地方公営企業の業務に関する代表権が被告管理者に与えられていることから,その限度において被告市長の執行権は制限されるのであり,被告市長は,自ら地方公営企業の業務を執行し,又は業務執行に関し地方公営企業を代表する権限を有しない。 イ本件で原告が行使を怠っているとする損害賠償請求権の行使は,地方公営企業の業務の執行に当たる行為であるが,地方公営企業法8条1項各号で被告市長の権限として留保された事項のいずれにも該当しないから,被告市長はこれに関する権限を有しない。したがって,被告市長は本件の3号請求に関する被告適格を有しない。 (原告らの主張)ア本件で原告らが行使を怠っているとしてその違法確認を求めている対象は,市に加えられた不 関する権限を有しない。したがって,被告市長は本件の3号請求に関する被告適格を有しない。 (原告らの主張)ア本件で原告らが行使を怠っているとしてその違法確認を求めている対象は,市に加えられた不法行為に基づく損害賠償請求権であって,市の財産ないし債権である操害賠償請求権の取得,管理及び処分については,被告市長が法237条1項,240条1項及び149条6号に基づき市を代表する。したがって,被告市長は被告適格を有する。 イ仮に,上記損害賠償請求権の行使が名古屋市の行う下水道事業に係る業務の執行に関するものであるとしても,被告市長は市を代表する者であり,市の事務を誠実に管理し執行する義務を負うとともに,財産の取得,管理又は処分等の広範な権限を有し,かつ地方公営企業の管理者の任免権を有する者として管理者に対して市の住民の福祉のために必要な指示をなし得るから,その職責及び権限の内容にかんがみ,法242条の2第1項の当該執行機関に該当し,被告適格を有するというべきである。 (5) 争点(3)(訴えの利益)について(被告管理者及び同市長の主張)ア原告らは,被告三菱電機及び同事業団に対し,法242条の2第1項4号に基づき,市に代位して不法行為に基づく損害賠償(以下「4号請求」という。)を求めている。このように4号請求がなされている以上,被告管理者及び同市長に対する同項3号による違法確認請求(以下「3号請求」という。)を並立させる訴訟上の意義ないし必要性は存在しない。 イ地方公共団体の有する損害賠償請求権は,法237条及び240条1項にいう地方公共団体の財産ないし債権に当たるから,これが履行されないときは地方公共団体の長又は管理者は,訴訟手続により履行の請求を行わなければならない(法240条2項及び法施行令171条の2第3号)。しかし,住民が地 の財産ないし債権に当たるから,これが履行されないときは地方公共団体の長又は管理者は,訴訟手続により履行の請求を行わなければならない(法240条2項及び法施行令171条の2第3号)。しかし,住民が地方公共団体に代位して,損害賠償請求の相手方に対して直接4号請求訴訟を行っている場合,地方公共団体の長又は管理者が自ら当該損害賠償請求訴訟を提起することは,二重起訴に該当するため許されない。また、既に提起されている4号請求訴訟において住民が勝訴した場合には,地方公共団体は当該4号請求訴訟の被告から損害の賠償を受けることができるのであるから,当該4号請求訴訟の被告となっていない他の不法行為者が存する場合でも,別途その者らに対して損害賠償請求訴訟を提起すべき実質的な必要性は見出し難い。 ウ原告らは,3号請求の訴えの利益があることの根拠として訴訟参加が可能であるとするが,行政事件訴訟法23条に基づく訴訟参加は被告側に対してのみ認められるものであり,原告側に参加することは,行政意思の分裂をもたらすことになるため認められない。したがって,仮に参加するとしても原告らの側に訴訟参加することは考えられないから,原告らの主張は前提を誤っている。 (原告らの主張)ア 3号請求は,地方公共団体自身の手による積極的な職務執行の行使を期待して,いわば間接的な方法により怠る事実の違法状態を解消し,もって地方公共団体の損害を防止し,又は回復する目的を実現しようとするものであるのに対し,4号請求は,住民自らの手で地方公共団体に代位して請求権を行使し,直接的に同目的を実現しようとするものであり,それぞれの請求が独自の存在意義を有するものである。さらに,法242条の2は,各号の請求の間に優先関係を定めていないし,複数の請求を禁じていないこと,実質的にも地方公共団体の執行機関等 ものであり,それぞれの請求が独自の存在意義を有するものである。さらに,法242条の2は,各号の請求の間に優先関係を定めていないし,複数の請求を禁じていないこと,実質的にも地方公共団体の執行機関等の違法な財務会計行為を是正し,その権利行使の実効性を確保する手段としてどちらが有効適切であるかは一概にはいえない。したがって,3号請求と4号請求は共存すると解すべきである。 イ被告市長及び同管理者は,少なくとも原告らの本件4号請求に訴訟参加することができるのであるから,そのような手続をとらない以上,その不作為は違法と評価されてもやむを得ない。したがって,二重起訴が禁止されているとしても,本件3号請求には訴えの利益がある。 (6) 争点(4)(談合の有無)について(原告らの主張)9社は,被告事業団が指名競争入札の方法により発注する電気設備工事につき,かねてから「九社会」という会合を開いて担当者らにより受注調整を行っていたが,平成2年3月ころ,今後はシェア枠を配分する方式により,同一年度内に被告事業団が発注を予定しているすべての電気設備工事の受注予定者を一括して決定する方法で受注調整を行う旨の合意をし,この方法により平成2年度発注物件以降の受注調整を行うようになった。この合意に関し,被告事業団の工務部次長であったP1は,9社による受注調整が円滑に行われるよう,受注調整に先立ち,九社会の幹事に対し,当該年度の全発注予定工事名とその予定金額及び自治体の意向の有無,内容を教示することを約束した。被告事業団の工務部次長は,平成3年4月にP1からP2に代わったが,P2はP1からの引継ぎを受けて,九社会の幹事に対し,事業団の全発注予定工事のリストを交付したり,入札予定金額や自治体の意向の有無,内容を教示していた。P2は,平成4年5月22日ころ,当時九社会 が,P2はP1からの引継ぎを受けて,九社会の幹事に対し,事業団の全発注予定工事のリストを交付したり,入札予定金額や自治体の意向の有無,内容を教示していた。P2は,平成4年5月22日ころ,当時九社会の幹事会社であった被告三菱電機のP3らに対し,平成4年度の発注予定物件リストを交付した上,各案件の予定金額を口頭で伝えた。同リストは,同年6月上旬,被告三菱電機の会議室で九社会の各社に配布され,同月16日,九社会の構成会社の担当者が同所で開催した「ドラフト会議」と称する入札談合の席上で,本件工事1及び2を被告三菱電機が受注することが決定された。なお,ドラフト会議の席上で本件工事1は直後話題とされなかったが,本件工事1は市が過去に発注した既設設備に関する継続工事を被告事業団が受注して新規に外注したものであり,このような既設物件については,九社会の間で既設業者が受注するものとする慣習があったため,この慣習に従って,既設設備の工事を担当していた被告三菱電機が受注することが黙示的に決定されたものであって,これについても談合により割当がされ,自由な競争が排除されたと評価し得る。 (被告管理者及び同市長の主張)原告ら主張の談合の事実は知らない。 (被告三菱電機の主張)原告ら主張の談合の事実は否認する。 (被告事業団の主張)原告ら主張の談合の事実は知らない。 なお,本件工事1及び2の発注者である市は,法234条1,2項,法施行令167条の2第1項2号に基づき,随意契約の方法で被告事業団との間で本件協定を締結したものであり,これによれば,工事完成に向けた具体的手法の選択権限は,すべて被告事業団に委ねられている。そして,入札談合が独禁法3条に違反し,不法行為が成立するためには,「発注者の主催する競争入札手続」において入札談合が行われたことを要するとこ 的手法の選択権限は,すべて被告事業団に委ねられている。そして,入札談合が独禁法3条に違反し,不法行為が成立するためには,「発注者の主催する競争入札手続」において入札談合が行われたことを要するところ,上記のとおり,発注者である市は,被告事業団に一切を委ねているから,その要件を充足することはあり得ない。 また,談合による不法行為は,入札参加者の固有の行為であり,これを主催した被告事業団は,被害者であっても加害者にはなり得ない。 (7) 争点(5)(損害の有無及び損害額)について(原告らの主張)ア入札談合においては,想定落札価格(ないし契約金額)と現実の落札価格(ないし契約金額)との差額が談合による発注者の損害額と推定すべきところ,全国各地の指名競争入札における調査結果を検討すると,落札価格は,談合が成立した場合は予定価格に近づくが,談合が成立しなかった場合には大幅に低下している。警察は,摘発した談合に関する刑事事件では,自由競争による落札価格との対比又は各入札業者による真の入札価格手の存在を前提に「不正の利益額」を算定しているが,被告人に有利になるよう控えめに算定されていると思われる上記利益額ですら,実際の落札価格の18.56パーセントから22.75パーセントを占めている。また,公正取引委員会が談合を摘発した前と後との落札価格の変化を調査すると,摘発後には予定価格の50ないし80パーセントという低い価格で落札されている実態がある。これらの実態にかんがみれば,被告らによる談合行為がなければ形成されたであろう想定落札価格(ないし契約金額)は,現実の落札価格(ないし契約金額)より少なくとも20パーセントは低下していたはずである。 イ本件協定に基づき市が被告事業団に支払うべき委託費用は,業務方法書により,外注工事費と管理諸費を合算して算出 実の落札価格(ないし契約金額)より少なくとも20パーセントは低下していたはずである。 イ本件協定に基づき市が被告事業団に支払うべき委託費用は,業務方法書により,外注工事費と管理諸費を合算して算出することが定められているから,委託費用は外注工事費と密接な関連性を有し,両者は連動する。したがって,被告事業団と同三菱電機との間で締結された本件契約1及び2について前記のとおり談合が行われ,契約金額が想定落札価格より少なくとも20パーセント(本件契約1につき1億8272万2000円,本件契約2につき2811万9000円)高額なものとなった結果,市が被告事業団に支払うべき委託費用もその差額分だけ高額なものとなり,市は同額の損害を被った。 ウまた,市は,本件住民訴訟で原告らが勝訴し,確定した場合には,法242条の2第7項に基づき,原告らの訴訟代理人である弁護士に対して弁護士費用を支払う義務を負担しているので,これも損害に加算することができると解されるところ,その弁護士費用の額は,前記イの損害額の10パーセントが相当である。 エしたがって,市は,被告事業団及び同三菱電機並びに訴外8社に対し,前記イ及びウの合計である2億3192万5100円の損害賠償請求権を有している。 なお,このような損害について厳密な意味での損害額を直接に立証することは困難であるが,損害が発生している事実は優に認められるのであるから,裁判所は,民事訴訟法248条により相当な損害額を認定する義務があり,その金額は上記金額と一致すべきである。 (被告事業団の主張)ア市は,法の規定に従い,被告事業団と適法な随意契約の方式により請負契約の性質を有する本件協定及び各変更協定を締結し,同協定に基づく委託費用を支払ったものであり,その額は市の下水道局が作成した設計・積算書を基に予定価格の範 被告事業団と適法な随意契約の方式により請負契約の性質を有する本件協定及び各変更協定を締結し,同協定に基づく委託費用を支払ったものであり,その額は市の下水道局が作成した設計・積算書を基に予定価格の範囲内で市が算出している。本件契約1及び2は,請負業者である被告事業団が委託に係る本件施設の建設のために行った外注工事契約であり,本件協定とは別個の独立した契約であって,両者の金額の間に関連性はない。仮に,被告事業団の支出した外注工事費用が本件協定に基づく委託費用を超えた場合でも,当然に被告事業団がその超過分を市に支払わせることができるものではなく,その危険は被告事業団が負担している。この意味で,本件協定は市の支払債務の額が確定した定額請負の性質を有する。なお,本件協定7条2項は協定に係る委託費用額を変更し得る旨の条項であるが,これは一般的な事情変更の原則を定めたものにすぎず,定額請負に通常見られる条項である。 したがって,仮に談合により本件契約1及び2が高額なものとなったとしても,そのことが本件協定に基づき市が支払うべき債務の額に影響することはないから,市に損害は発生しない。 なお,本件協定に係る委託費用額は,3回の変更協定により変更されているが,これはいずれも設計内容の変更によるものであり,本件契約1及び2を含む外注契約の内容とは関係がない。 イ被告事業団は,本件契約1及び2に基づき,現実に被告三菱電機に対して契約どおりの請負代金を支払っている。被告事業団が市に対して精算を行うべき場合は,被告事業団の実際の支出額と管理諸費の合計が市との本件協定額を下回った場合のみである。したがって,仮に本件契約1及び2の契約金額が談合によって不当に高額なものとなっていたとしても,被告事業団が現実にその額を支出している限りは,本件協定の内容上,被告事業 額を下回った場合のみである。したがって,仮に本件契約1及び2の契約金額が談合によって不当に高額なものとなっていたとしても,被告事業団が現実にその額を支出している限りは,本件協定の内容上,被告事業団は市に対して精算をなすべき義務を負わないから,この意味でも,市には談合による損害が発生しない。 (被告三菱電機の主張)本件協定により市が被告事業団に対して支払うべき委託費用額は,本件契約1及び2の契約金額と連動するというべきであるが,本件工事1は被告三菱電機が既設業者として受注していた設備に関する工事であった。このような既設設備については,既設業者が受注することが技術的にもコスト的にも合理的であり,談合がなかりせば既設業者以外の業者がより安価に受注できたという関係にはない。 (8) 争点(6)(被告市長及び同管理者の違法な怠る事実)について(原告らの主張)市が被告事業団及び9社に対して共同不法行為に基づく損害賠償請求権を有していることは明らかであり,同請求権は法237条1項,240条1項の財産ないし債権に該当するところ,財産管理者たる機関は,これを行使するか否かについて裁量権を有しないにもかかわらず,被告市長及び同管理者は,これを行使して損害を回復するための措置を全くとろうとはせず,本訴の4号請求への訴訟参加もしない。このこと自体,違法に市の財産の管理を怠っているといわざるを得ない。 (被告市長及び同管理者の主張)本件契約1及び2は,いずれも刑事事件の対象となっていない。また,9社が本件課徴金納付命令に応じたことも,前記鶴岡灯油事件の最高裁判決に照らせば,不法行為の証拠とはなし得ない。 したがって,本件につき談合行為の存在を推定することは事実上不可能であり,原告ら主張の損害賠償請求権を被告市長及び同管理者が行使しないとしても,その不行 決に照らせば,不法行為の証拠とはなし得ない。 したがって,本件につき談合行為の存在を推定することは事実上不可能であり,原告ら主張の損害賠償請求権を被告市長及び同管理者が行使しないとしても,その不行使が違法になるものではない。 (被告三菱電機及び被告事業団の本案前の主張)損害賠償請求権の不行使が違法な怠る事実に該当するとしてその相手方に対し4号請求訴訟を提起するためには,当該損害賠償請求権の不行使に違法性が備わっていることが必要である(最高裁昭和57年7月13日第三小法廷判決・民集36巻6号970頁)。しかし,損害賠償請求権が発生している場合でも,当該請求権を行使するか否かについては地方公共団体の側に一定の裁量権が認められる。しかるに,本件において,市が被告事業団に支払った委託費用は,市と被告事業団が任意に交渉した結果決定された予定価格を下回っていたのであるから,協定に係る委託費用額は地方財政法所定の適正価格の範囲内にあったというべきであり,市が損害賠償請求をしないことは裁量権の適切な行使であって,その逸脱は認められない。 したがって,本件において,損害賠償請求をしないという市の行為に何ら違法性はなく,違法な財務会計行為が存しないから,本件訴訟は不適法却下されるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)ア(監査請求期間制限適用の有無)について(1) 法242条2項本文は,「当該行為のあった日又は終わった日から1年を経過したとき」は住民監査請求をすることができないと定め,監査請求期間に制限を設けている。同規定は,たとえ財務会計上の行為が違法,不当なものであったとしても,同行為が(普通)地方公共団体の行為である以上,いつまでも住民監査請求の対象となり得るものとしておくことは,法的安定性を損ない好ましくないとの考えから,地方公共団体の ,不当なものであったとしても,同行為が(普通)地方公共団体の行為である以上,いつまでも住民監査請求の対象となり得るものとしておくことは,法的安定性を損ない好ましくないとの考えから,地方公共団体の財政を健全ならしめるという住民監査請求の目的との調和を図るべく,住民監査請求をすることができる期間を制限したものである。もっとも,同項は,文言上「怠る事実」(同条1項後段)についてはその対象としていないこと,実質的にも,怠る事実のような不作為については期間計算上の起算点が観念し難く,それが継続している限り違法ないし不当な財務会計行為は現に存在していると考えられるから,法的安定性を損なうおそれはなく,これをいつでも住民監査請求の対象とすることができるとすることが住民監査請求の目的に照らし合理的であることから,怠る事実に係る住民監査請求については,原則として,同項本文の期間制限の規定の適用はないというべきである(昭和53年判決参照)。 しかしながら,違法な怠る事実を対象とした住民監査請求であっても,地方公共団体の執行機関が違法に公金を支出したり,契約を締結したことによって,地方公共団体が当該職員又は当該財務会計行為の相手方に対して取得した損害賠償請求権又は不当利得返還請求権(これらの実体法上の請求も「財産」に該当することにつき法237条1項,240条1項参照)等の実体法上の請求権の行使を怠る事実を対象とする場合には,住民は,本来,前記の公金の支出や契約の締結などの財務会計上の行為の違法を理由として,当該財務会計行為を住民監査請求の対象にできたはずであり,それら財務会計上の行為を対象としていたならば,法242条2項本文の適用を受けて監査請求期間が経過している掛合であっても,怠る事実という構成をとることによって,期間制限を免れることができることになれ それら財務会計上の行為を対象としていたならば,法242条2項本文の適用を受けて監査請求期間が経過している掛合であっても,怠る事実という構成をとることによって,期間制限を免れることができることになれば,住民監査請求に期間制限を設けた前記の趣旨を没却することになりかねない。 そこで,地方公共団体において違法に財産の管理を怠る事実があるとして法242条1項の規定による住民監査請求があった場合に,同監査請求が,当該地方公共団体の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為を違法であるとし,当該行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているものであるときは,当該監査請求については,原則として,上記怠る事実に係る請求権の発生原因たる当該行為のあった日又は終わった日を基準として,同条2項の「規定を適用すべきものと解するのが相当である(昭和62年判決参照)。 ところで,住民監査請求においては,原則としてその対象となる行為又は怠る事実を他のそれらと区別し,特定して認識できるように個別的,具体的に摘示しなければならない(最高裁平成2年6月5日第三小法廷判決・民集44巻4号719頁参照)が,怠る事実の場合は,当該地方公共団体の不作為を問題とするものであるから,この場合における対象の特定は,怠っていると主張される財産を特定することによってなされることになる。そして,当該財産が債権の場合は,その発生原因事実によって特定されることはいうまでもない。 住民監査請求における対象の特定責任は,監査請求人に課せられているから(特定が不十分である場合は,当該監査請求が却下されるという形で監査請求人の不利益に帰せしめられることにつき,上記最高裁判決参照),住民監査請求の対象となる怠る事実が何であるか,すなわち ているから(特定が不十分である場合は,当該監査請求が却下されるという形で監査請求人の不利益に帰せしめられることにつき,上記最高裁判決参照),住民監査請求の対象となる怠る事実が何であるか,すなわち,本件についていえば,行使を怠る債権が何であるかは,当該監査請求において監査請求人が摘示した事実を基本として判断すべきものであり,その法的性質も摘示された事実からどのような請求権の発生原因事実として構成できるかという観点から決定されるべきである。もっとも,住民監査請求においては,監査請求書だけでなく添付書類を参考にしても,必ずしも訴訟におけるような債権の発生原因事実が明確に摘示されているとは限らないが,このような場合であっても,事案によっては監査請求人が付した請求権の名称や法律構成等を手掛かりとして,監査請求人の合理的な意思を探求すべきである(この意味で,監査請求人の法律構成は,監査請求の対象を把握する上で全く無縁のものとはいえない。)。 なお,監査請求を受けた監査委員は,監査請求人が主張する違法,不当事由に拘束されることなく,それ以外の点にわたって監査することが可能であり,また,監査委員が勧告できる是正措置は,監査請求人が求める内容に拘束されず,違法又は不当な財務会計行為を是正し,地方公共団体の被った損害を補填するのに必要な一切の内容に及び得るが,このことは,監査の対象となる行為又は怠る事実を確定するに際し,監査請求人が摘示した事実が基本となるとの原則の正当性を損なうものではない。 この点,被告三菱電機及び同管理者は,財務会計上の行為の違法とは,当該行為が是正されるべき客観的な違法性が存することであるとの前提で,請求を受けた監査委員はそれら客観的違法性を有する事実すべてについて監査の対象とし,必要な措置を講ずることができるのであるから, 当該行為が是正されるべき客観的な違法性が存することであるとの前提で,請求を受けた監査委員はそれら客観的違法性を有する事実すべてについて監査の対象とし,必要な措置を講ずることができるのであるから,実際に違法な財務会計行為があり,その財務会計上の行為を基礎とする損害賠償請求が可能であるならば,原告らが怠る事実の構成をとっていたとしても,そのような財務会計行為もまた監査請求の対象となると主張する。 しかしながら,被告三菱電機及び同管理者の上記主張が,住民監査請求において摘示されていない行為,事実であっても,客観的違法性を有する限り,監査請求の対象とされるべきであるとの趣旨であるならば,それは前記の特定責任を無視するものとの批判を免れないばかりか,監査請求の対象となる行為,事実の特定の問題と当該監査請求において監査の原因となる違法事由の存否の問題とを混同するものであるといわざるを得ない。すなわち,監査請求人が監査請求の原因とする違法事由の存否は,論理的にはあくまで同請求において対象とした当該行為又は怠る事実が特定された後に問題とされるべきものであるのに,被告らの主張は,違法事由の存否を基準にして監査請求の対象を特定することに帰するといわざるを得ず,その不当なことは明らかである。 (2) そこで本件監査請求の対象について検討するに,本件監査請求書(甲2)には,ア市は,平成4年度に本件協定に基づき,被告事業団に対して本件工事1及び2を委託したこと,イ被告事業団は,本件工事1及び2をいずれも指名競争入札の方法により発注し,これらを落札した被告三菱電機との間で,本件工事1については代金額9億1361万円,本件工事2については同1億4059万5000円で本件契約1及び2を締結したこと,ウアの本件協定に基づく代金は支払済みであること,エ 電機との間で,本件工事1については代金額9億1361万円,本件工事2については同1億4059万5000円で本件契約1及び2を締結したこと,ウアの本件協定に基づく代金は支払済みであること,エ被告事業団が発注する電気設備工事については,9社より,談合組織「九社会」が結成されていたこと,オ 9社は,平成4年度及び5年度において,年度当初に被告事業団から工事件名及び発注金額の提示を受けた上で,当該年度の工事全部について受注予定者を一括決定し,かつ,各工事の入札に先立って受注予定者が必ず落札できるように入札価格を調整する談合を行ったこと,カ公正な競争が確保されていたのであれば,落札価格(契約金額)は20パーセント以上低くなったこと,等の事実が摘示され,これらを踏まえた要約として,前記第2の1(5)のとおり,本件監査請求は,「9社及び被告事業団は,『談合という共同不法行為によって契約金額を不当につり上げることにより,工事発注者として最終的に契約代金を支払った市に対し,談合によってつり上げられた契約金額と公正な競争が行われていた場合の契約全額との差額に相当する損害を与えた』ところ,被告市長若しくは被告管理者は,市が被告事業団及び9社に対して有する損害賠償請求権を行使して市の被った損害を補填する措置を講ずる責任があるのにこれを怠っているので,被告市長若しくは被告管理者に対して,この措置を講ずべきことを勧告することを求める」ものであることが述べらているから,監査請求人である原告らは,被告事業団及び9社による共同不法行為(詐欺類型)に基づく損害賠償請求権を市の財産ととらえ,その行使を被告市長若しくは被告管理者が怠っていることを監査請求の対象としていると認められる。 (3) さらに進んで,この怠る事実に係る本件監査請求が期間制限を受けるか否 請求権を市の財産ととらえ,その行使を被告市長若しくは被告管理者が怠っていることを監査請求の対象としていると認められる。 (3) さらに進んで,この怠る事実に係る本件監査請求が期間制限を受けるか否か(すなわち,真正怠る事実か,不真正怠る事実か)について検討する。 被告三菱電機及び同管理者は,原告ら主張のように,被告事業団及び9社が平成4年度当初から談合の実行行為を行った上で本件協定を締結し,その結果,市の支払った委託費用額が不当に高額であったというのであれば,本件協定の締結,変更協定の締結又はこれらに基づく支出という財務会計行為は,いずれも地方財政法4条1項に反するものとして違法,無効となるから,本件監査請求において行使を怠っているとされた損害賠償請求権は,昭和62年判例にいう財務会計行為の違法,無効に基づいて発生する実体法上の請求権に該当することになり,その不行使は不真正怠る事実に該当すると主張する。 しかしながら,前記のとおり,監査請求の対象は,監査請求書において監査請求人が摘示した事実を基礎として判断すべきものであるところ,そもそも契約法理に基づく債権の発生原因事実と不法行為に基づく債権のそれとは必ずしも重なり合うものではない。すなわち,原告らの主張する不法行為を詐欺類型と見れば,これに基づく損害賠償請求権の発生原因事実としては,①欺罔行為の存在(被告事業団及び9社の担当者らが,市の契約担当職員に対して,談合が行われていることを秘して,協定に係る委託費用額が適正に形成されるかのように誤信させる行為をしたこと),②損害の発生(市に公正な競争の下で形成されるべき金額を超える委託費用額の支払いをさせたこと),③欺罔行為と損害発生の間の因果関係の存在,が挙げられるのであって,本件協定の締結や支出負担行為,支出命令等の特定の財務会計行為 争の下で形成されるべき金額を超える委託費用額の支払いをさせたこと),③欺罔行為と損害発生の間の因果関係の存在,が挙げられるのであって,本件協定の締結や支出負担行為,支出命令等の特定の財務会計行為は,③の損害発生に至る因果関係の流れとして現れるにすぎず,少なくとも,上記の特定の財務会計行為が違法,無効であることに基づいて発生する請求権の発生原因事実とは完全に一致するものではない。例えば,本件監査請求書には,特定の財務会計行為というべき本件協定の締結の事実が現れているものの,厳密にいえば,不法行為に基づく損害賠償請求権としては,「市の契約担当職員をして,被告事業団が公正な競争を前提とした適正な価格で工事を請け負わせるものと誤信せしめ,この誤信に基づいて本件協定締結の意思表示をなさしめた」ことが損害発生に至る因果関係の要件事実として考えられるのに対し,財務会計行為の違法,無効に基づく請求権としては,「市の契約担当職員は,本件協定締結の意思表示をした」ことが要件事実となり,不法行為者による欺罔行為(不作為を含む。)や市の契約担当職員が錯誤に陥った事実を要しない。また,談合成立の事実は,前者においては不法行為の具体的内容になるけれども,後者においては,協定に係る委託費用額が必要最小限度の経費として想定される金額を超えていることの間接事実にすぎず,当該事実があるからといって直ちに経費の必要最小限度性に反することにはならない(地方財政法4条1項や法2条13項に違反した場合に直ちに一部ないし全部の無効という法的効果をもたらすかについては議論の余地があるところであるが,これを肯定する場合には,少なくともそこでいう「経費」とは,客観的見地からみて通常必要とされる費用を指すところ,地方公共団体が支払うべき「代金」については,客観的に適正と認められる原価, ろであるが,これを肯定する場合には,少なくともそこでいう「経費」とは,客観的見地からみて通常必要とされる費用を指すところ,地方公共団体が支払うべき「代金」については,客観的に適正と認められる原価,人件費,管理費等に適正な利潤を加えた金額を意味すると解される。談合が行われた場合には,公正な市場価格の形成が妨げられたわけであるから,多くの場合は「必要最小限度の経費」を上回っていると認定することが可能と思われ,その意味で重要な間接事実となり得ることは否定できないが,入札による落札価格の形成には,入札者の思惑的な要因が影響することも多く,両者が常に一致するものとはいえない。例えば,最低制限価格が設定されていない入札において,資力に余裕のある入札者が,そうでない他の入札者に打撃を与えるべく,原価を大幅に割り込んだ採算度外視の価格でもって入札しようと予定していたところ,談合によってこれを取り止めた結果,客観的に適正な価格でもって落札されたケースにおいては,談合という不法行為の成立は否定し難いものの,上記各法条については,必ずしも違反しているとはいえない。)。 このように不法行為による損害賠償請求権発生と特定の財務会計行為の違法,無効を理由とする請求権発生との間で,その発生原因事実が異なることは,公有財産の窃盗,横領,無断使用等の取引行為等を介在させない事実的不法行為の場合を想定すれば,一層明白となる(この場合は,財務会計行為が要件事実として現れることはないし,ましてやその違法ないし無効を要するものではない。)。 また,9社のように,談合に加わったことから共同不法行為者としての責任は免れ難いものの,市との間で締結された本件協定の直接の当事者にならなかった者に対する損害賠償請求権については,特定の財務会計行為の違法,無効を理由とすることはあり得 から共同不法行為者としての責任は免れ難いものの,市との間で締結された本件協定の直接の当事者にならなかった者に対する損害賠償請求権については,特定の財務会計行為の違法,無効を理由とすることはあり得ない。 したがって,摘示された談合という共同不法行為に基づく損害賠償請求権の発生原因事実から,直ちに本件協定等の違法,無効に基づく請求権の発生を読み取れる関係にないというべきであり,比喩的に表現すれば,両者の請求権は「表裏一体の関係」にないから,本件監査請求書に現れた事実から,監査請求人たる原告らが本件協定等の違法,無効に基づいて発生する請求権を怠る事実の対象としていると見るのは牽強付会というほかなく,結局,本件監査請求の対象が不真正怠る事実であるとの主張は採用できない(本件協定締結時点で,何らかの住民監査請求が可能であるとしても,そもそも是正の対象が異なるから,上記判断を覆すものではない。)(4) もっとも,発生原因事実が完全に一致せず,昭和62年判決にいう不真正怠る事実に該当しないとしても,社会的事実としては重なり合う部分が多く,監査請求人としては,本件協定や公金支出等の財務会計行為の違法,無効に基づく不当利得返還請求権等として怠る財産を構成することが容易であるとも考えられることから,財務会計行為の早期の法的安定性を実現するためには,前掲62年判決の射程距離を拡大し,このような場合にも監査請求の期間制限を受けると解すべきであるとの見解もあり得る。しかしながら,私法上の取引である限り,地方公共団体がその一方当事者であるという一事をもって,私人間の取引より特に取引の安全を図るべきかは慎重になるべきで,被害回復の必要性を無視してまで,財務会計行為の早期の法的安定性を図る必要性は乏しいと考えられる上,前記のような怠る事実について監査請求の期間 取引より特に取引の安全を図るべきかは慎重になるべきで,被害回復の必要性を無視してまで,財務会計行為の早期の法的安定性を図る必要性は乏しいと考えられる上,前記のような怠る事実について監査請求の期間制限を課さない理由を軽視ないし無視するものとの批判を免れず,上記見解には賛成し難い。 (5) そもそも住民監査請求の制度は,住民訴訟の源であるTaxPayer’sSuitの制度にもない我が国独自のものであるが,その趣旨は,住民訴訟と同様に地方公共団体の財政の腐敗防止を図り,住民全体の利益を確保する見地から,当該地方公共団体の長その他の財務会計職員の違法若しくは不当な財務会計上の行為又は怠る事実について,その監査と予防,是正等の措置とを監査委員に請求する権能を住民に与えたものである(昭和62年判決参照)ところ,上記のような判断は,かかる制度趣旨によく適合すると解される。 以上を総合すると,本件監査請求は,いわゆる真正怠る事実についてのものであって,法242条2項本文の規定の適用はないというべきである。 2 争点(2)(被告市長の被告適格)について(1) 原告らは,被告市長に対して3号請求の訴えを提起しているところ,同号の訴えの被告適格を有する者は「当該執行機関又は職員」である。原告らが3号請求において行使を怠っているとする請求権は,市が下水道事業について締結した本件協定に関して不法行為が行われたことに基づく損害賠償請求権であるが,被告管理者は,地方公営企業法8条1項の規定により,同項1号から4号において被告市長の権限として留保されたもの及び法律に特別の定めがあるものを除き,地方公営企業の業務全般を執行し,当該業務の執行に関して地方公営企業を代表する権限が与えられているほか,同法9条に基づき,地方公営企業の業務の執行に関し地方公営企業の用に 別の定めがあるものを除き,地方公営企業の業務全般を執行し,当該業務の執行に関して地方公営企業を代表する権限が与えられているほか,同法9条に基づき,地方公営企業の業務の執行に関し地方公営企業の用に供する資産を取得し,管理し,処分することに関する事務を担任している。 そして,上記損害賠償請求権は,下水道事業に関して市が取得した債権の管理に係るものであるから,地方公営企業法によって被告管理者がその本来的権限者となり,被告市長はその損害賠償請求権を行使する権限を有しないから,被告市長は本件の3号請求に関する被告適格を有しない。 (2) 原告らは,被告市長が被告管理者に対して必要な指示をなし得ることを根拠として,被告市長は当該執行機関に該当する旨主張するが,当該執行機関又は職員とは,当該訴訟においてその適否が問題とされている財務会計行為を行う権限を法令上本来的に有する者又はこれらの者からその権限の委任を受けるなどして当該権限を有するに至った者を意味すると解されるところ,本来的権限者である被告管理者に対して単に住民福祉の観点から指示をなし得ることによって被告市長が上記のような権限を有するに至っているとは解し難いから,原告らの主張は採用できない。 3 争点(3)(3号請求の訴えの利益)について被告市長及び同管理者は,原告らが,法242条の2第1項4号に基づき,被告三菱電機及び同事業団に対し,市に代位して不法行為による損害賠償請求をしている以上,被告市長及び同管理者に対する同項3号による違法確認請求を並立させる訴訟上の意義は存在しないし,地方公共団体としてはもはや相手方に対して当該損害賠償請求権を行使して同一の請求をすることはできないから,本件では被告市長及び同管理者に対する怠る事実の違法確認の訴えは訴えの利益を欠くものであると主張する。 し てはもはや相手方に対して当該損害賠償請求権を行使して同一の請求をすることはできないから,本件では被告市長及び同管理者に対する怠る事実の違法確認の訴えは訴えの利益を欠くものであると主張する。 しかしながら,4号請求における訴訟物が地方公共団体の有する実体上の請求権であるのに対し,3号請求は怠る事実の違法性の法律状態が訴訟物であるから,両請求は訴訟物を異にするし,客観訴訟である住民訴訟に,主観訴訟において形成された民事訴訟法上の確認の利益という概念をそのまま当てはめることはできない。 そうすると,3号請求と4号請求の同時存立の可否は,法が定める範囲でのみ訴えを提起できる客観訴訟の一類型としての3号請求が,いかなる条件の下で訴えの提起を認められていると解するかによって決せられるべきところ,法242条の2第1項は住民訴訟の4つの請求形式に優先順位を定めておらず,複数の請求を許さない旨の定めも存しないこと,実質的にみても,住民による4号請求の提起と,3号請求の住民勝訴により地方公共団体自らが請求権を行使する場合とでは,その法律上の効果を異にし,両請求のどちらかが有効適切であるかは個々の事案で異なる(3号請求の場合,最終的な被害の回復は,当該地方公共団体の手に委ねられるが,逆に住民としては,執行債権者としての負担を免れる利益がある。)から,両請求のいずれを選択するか,あるいは両方を提起するかは住民の意思に委ねられていると考えられること,長などの執行機関等は,4号請求訴訟の係属中に訴訟参加等の手続をとらない以上,その不作為が違法と評価されてもやむを得ないこと(本件のように地方公共団体が不法行為の被害を受けたとの原因に基づく4号請求の住民訴訟について,地方公共団体が原告側に参加することが行政意思の分裂に当たるとは解し難いから,参加が許されないとの被 と(本件のように地方公共団体が不法行為の被害を受けたとの原因に基づく4号請求の住民訴訟について,地方公共団体が原告側に参加することが行政意思の分裂に当たるとは解し難いから,参加が許されないとの被告市長及び同管理者の主張は採用し難い。),これらを総合すると,両請求を並立して提起することを認めるのが相当であるから,4号請求がなされているときは3号請求は訴えの利益を欠くとの被告市長及び同管理者の主張は採用できない。 4 争点(4)(談合行為の有無)について(1)前記第2の1(4)の事実に証拠(甲9,17の1ないし4,37,41ないし44)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 ア被告事業団が発注する電気設備工事については,かねてから9社がその大部分を受注し,施工していた。9社は,被告事業団が改組された昭和50年8月以前から電気設備工事について受注調整を行っており,これに関して「九社会」という会合を開催していたが,政治家を利用した過度の営業等に起因して,次第に9社間で受注実績に格差が生じるようになったことから,平成2年3月ころ,被告事業団の工務部次長のP1の同意も得た上,今後は9社が一定の上限枠に従って受注する旨の「シェア枠方式」といわれる受注調整の方法をとることで合意し,「運用手順」と名付けた受注調整のルールを作成した。 イ平成2年に定められた上記「運用手順」の内容は次のとおりである。 (ア) 被告事業団発注工事を,A物件(新規物件,新規に発注する工事),B物件(継続新規物件,既設物件の竣工から3年以上経過した後に発注する継続工事),B’物件(被告事業団新規物件,自治体発注工事の継続分を被告事業団が受託して新規に発注する工事),C物件(B,B’以外の継続物件,既設物件の竣工から発注までの期間が3年未満の継続工事)に分け,こ ),B’物件(被告事業団新規物件,自治体発注工事の継続分を被告事業団が受託して新規に発注する工事),C物件(B,B’以外の継続物件,既設物件の竣工から発注までの期間が3年未満の継続工事)に分け,このうちA,B,B’各物件をシェア枠の対象とする。 (イ) シェア枠は,9社のうち大手の被告三菱電機,株式会社日立製作所,株式会社東芝,富士電機株式会社及び株式会社明電舎の5社(以下「5社」という。)が全体の80パーセント,株式会社安川電機,日新電機株式会社,神鋼電機株式会社及び株式会社高岳製作所の4社(以下「4社」という。)を20パーセントとして,5社については各社均等にするが,4社については過去の受注実績に基づき格別の比率を決める。 (ウ) 9社のシェア枠から受注予定のB及びB’物件の工事予算金額を差し引いた残りの額をA物件の取り分額とし,9社はその取り分額の範囲内でA物件を選択し,その物件の受注予定社となる。(エ)9社の幹事は,A物件の受注予定社を被告事業団の工務部次長に報告する。 ウ上記運用手順による受注調整を円滑に行うためには,9社が事前に被告事業団の発注する予定の全工事名と各工事の予算金額,各工事に関する自治体の意向(自治体として受注させることを希望する業者名)の有無及び内容を把握していることが必要であったが,被告事業団の工務部次長であったP1は,上層部の了承を得て,9社の幹事に対してこれらを教示することを約束した。 エ被告事業団発注の新規工事については,指名競争入札の方法により受注業者が決められていた。継続工事については,電気設備工事の性質上,既設業者に受注させるのが相当であるということから,入札によらず随意契約の方法によるのが原則とされていたが,例外的にB,B’物件については指名競争入札の方法が取られていた。しかし,B,B’ 性質上,既設業者に受注させるのが相当であるということから,入札によらず随意契約の方法によるのが原則とされていたが,例外的にB,B’物件については指名競争入札の方法が取られていた。しかし,B,B’物件についても,慣行として既設業者が受注することとなっていた。 オ平成3年4月,被告事業団の工務部次長がP1からP2に交替したが,P2は,上層部の指示により,P1から受注調整に関する事務の引継ぎを受け,引き続き受注調整に関する上記役割を果たしていった。 上記運用手順は毎年3月末ころ見直しがされており,平成3年度にはC物件をさらに2分してその一方をシェア枠の対象とすること及び9社の担当者が一堂に会して受注予定者を決める会議(ドラフト会議)を開くことが決められ,平成4年度には5社と4社のシェア枠が75対25に変更された。 カ P2は,平成4年5月20日ころ,当時九社会の幹事会社であった被告三菱電機の担当者であるP3らに対し,平成4年度の発注予定物件リストを交付した上,各案件の予定金額を口頭で伝えた。また,P3はその数日後,P2からの連絡を受けて再度被告事業団に赴き,口頭で自治体の意向についての教示を受けてこれを書き取った。幹事である被告三菱電機の担当者P4らは,同リストに基づき,前記運用手順に従ってA,B等の物件区分を行った上,一覧表を作成し,同年6月上旬,被告三菱電機の会議室で9社の担当者を集めてこれを配布し,予定金額(入札予定価格ではなく,予算段階での発注予定金額)と自治体の意向を伝えた。9社の担当者は,同月16日,被告三菱電機の会議室で,P4の司会により「平成4年度ドラフト会議」と称する会合を開き,9社が順次受注を希望する物件と予定金額を発表する方法で受注調整が行われたが,その際,A物件とされていた本件工事2については,事前に被告事業団か により「平成4年度ドラフト会議」と称する会合を開き,9社が順次受注を希望する物件と予定金額を発表する方法で受注調整が行われたが,その際,A物件とされていた本件工事2については,事前に被告事業団から,市の意向は被告三菱電機に受注させたいとの内容であるとの連絡がなされていたため,被告三菱電機が受注を希望し,受注が決定した。また,本件工事1は前記区分にいうB’物件であったため,慣例に従い,被告三菱電機が受注することとされ,A物件についてのシェア枠配分の際,本件工事1の予定金額が被告三菱電機のシェア枠から控除された。 キ被告三菱電機の営業担当者は,上記ドラフト会議により同被告が受注することとなった工事(本件工事1及び2を含む。)について,P2ら事業団の担当者から入札予定価格とその回数を教えてもらい,これをP4に連絡し,P4が入札に参加する他の会社の入札価格を決めて各社の担当者に電話で連絡し,各社はその指示どおりに入札を行った。また,9社のうち被告三菱電機以外の会社が受注することとなった工事についても,他社の担当者からP4に対し,同様の方法で決定された入札価格に関する連絡がなされ,被告三菱電機はその指示に基づいて入札を行った。 こうして,ドラフト会議で決定されたとおり,被告三菱電機が本件工事1及び2を落札した。 (2) 事業団法41条,同法施行規則19条に基づいて定められた被告事業団の内規である日本下水道事業団会計規程(甲12,以下「会計規程」という。)55条は,「契約職は,売買,賃借,請負その他の契約を締結する場合においては,公示して申込みをさせることにより競争に付さなければならない。」として,指名競争及び随意契約に付する場合の要件を具体的に定めている。このような規定が設けられたのは,被告事業団が地方公共団体から委託を受け,地方公共団体の最終 とにより競争に付さなければならない。」として,指名競争及び随意契約に付する場合の要件を具体的に定めている。このような規定が設けられたのは,被告事業団が地方公共団体から委託を受け,地方公共団体の最終的負担において終末処理場等の施設の建設に当たるものであることから,被告事業団が外注により工事を施行する場合も,競争原理によりできる限り低廉な価格で外注契約を締結することとして,地方公共団体の契約の締結方法につき規制し,原則として競争入札に付すべきこととした法234条及び法施行令167条の2の趣旨が被告事業団が介在することにより没却されることがないようにするとの目的によると解される。そして,前記第2の1(2)のとおり,被告事業団が委託地方公共団体に対し負担させ得る費用は外注工事費等の直接費及び間接費(管理諸費)とされているが,間接費の算定方法は,直接費の総額に基づき,業務ごとに定める一定率によるものとされており(受託業務費用負担細則,乙ロ18),工事終了後,精算を行う場合の精算額は,施設の建設に係る業務については請負額,間接費については協定に際して一定の係数を乗じて算出した管理諸費とし,間接費は工事内容に変更がない限りこれを変更しないものとされている(日本下水道事業団受託業務精算事務処理要領,乙ロ9)。 (3) 前記(1)で認定したとおり,被告事業団及び9社は,平成2年以降,共謀の上,組織的,継続的に入札談合を行うことにより,公正な自由競争を排除し,予定価格に極めて近い価格をもって予め決めておいた落札予定者に入札させ,落札価格を不当に高額なものとして外注契約代金をつり上げていたものであり,かつ被告事業団は市から本件施設の建設に関する委託を受ける際,このような入札談合によって不当に高額な価格で工事を外注する意図でありながらそれを秘し,あたかも公 注契約代金をつり上げていたものであり,かつ被告事業団は市から本件施設の建設に関する委託を受ける際,このような入札談合によって不当に高額な価格で工事を外注する意図でありながらそれを秘し,あたかも公正な自由競争原理に従って工事を外注施工し,適正な費用のみを市に負担させるかのように偽って本件協定及び各変更協定を締結したものであって,全体として独禁法3条の不当な取引制限に該当すると同時に,民事上も明らかに自由競争の枠を逸脱した違法な行為というべきであるから,これによって市に損害が発生した場合,被告事業団及び9社は上記共同不法行為に基づく損害賠償責任を負う。 この点につき,被告事業団は,入札談合が工事発注者である市による競争入札手続において行われたものではないことを理由に,独禁法3条に違反することや不法行為の成立を否定し,かつ入札を主催した被告事業団が不法行為の加害者となることはない旨主張するが,前記のとおり,被告事業団の負担した外注工事費等は工事発注者である市に転嫁できることになっており,入札談合により生じた不利益はそのまま市に引き継がれる関係にあるから,被告事業団の上記主張は,その実体を無視するものとして採用できない。 5 争点(5)(損害発生の有無及び損害額)について(1) 前記第2の1(2),(3)及び上記4(2)のとおり,被告事業団は,現実に支出した外注工事費及び事前の積算により算定された間接費の合計が本件協定に基づく委託費用の額を下回った場合,その差額を精算して市に還付すべき義務を負う。そして,精算額が上記のような方法により決定されることからすると,被告事業団と業者らの外注工事の契約金額,すなわち落札価格がいくらになるかということは,市と被告事業団の間でなされる精算内容に直接影響を及ぼすというべきである。前記4で認定したとおり,本 らすると,被告事業団と業者らの外注工事の契約金額,すなわち落札価格がいくらになるかということは,市と被告事業団の間でなされる精算内容に直接影響を及ぼすというべきである。前記4で認定したとおり,本件の入札談合は自由競争を排し,業者が高額な価格で落札することを可能ならしめるために行われたものであるから,仮に,被告事業団及び9社がこのような談合を行わず,公正な指名競争入札によって本件工事1及び2の落札者及び落札価格が決定されていたとすれば,本件工事1及び2の外注工事費は本件契約1及び2所定の契約金額よりも低下していた蓋然性が高いと認められる。そうすると,当該外注工事費の低下分は市と被告事業団の精算額にそのまま反映されることとなるから,市は,前記4の不法行為によってその利益を受ける機会を奪われたもので,被告事業団が本件工事1及び2の外注契約に際して公正な競争を行わせた場合との差額相当分につき損害を被ったというべきである。 (2) これに関し,被告事業団は,市に対して精算すべき金額は実際に事業団が支出した金額(及び間接費)と協定額の差額であるところ,本件で被害事業団は本件契約1及び2所定の請負代金を現実に支出しているから,市に対して精算すべきものはなく,市に損害は発生していないと主張するが,損害の算定において協定価格と比較する対象となるのは,談合の結果不当に高額な価格で締結された本件契約1及び2所定の契約金額ではなく,公正な競争が行われた場合の外注工事費として被告事業団が支出したと想定される金額なのであるから,被告事業団の上記主張は失当である。また,同被告は,協定に係る委託費用が積算により算出されていることや,本件協定が随意契約であって外注契約とは別個の契約であること等を損害が生じないことの根拠として挙げるが,本件協定は,単純化すれば,被告事 同被告は,協定に係る委託費用が積算により算出されていることや,本件協定が随意契約であって外注契約とは別個の契約であること等を損害が生じないことの根拠として挙げるが,本件協定は,単純化すれば,被告事業団が現実に支出した費用が協定に係る委託費用額よりも少ない場合にはその差額を市に返還させる旨の契約なのであるから,本件協定自体が随意契約によることや,本件協定と本件契約1及び2が別個の契約であることは,前記不法行為により市に損害が生じることと何ら矛盾せず,被告事業団の主張は採用できない。 現に,本件においては,前記第2の1(3)のとおり,3回にわたって変更協定が締結されていて,その都度協定に係る委託費用額が増減変更され,その結果,精算金が発生しないこととされているところ,第2回及び第3回の変更協定が本件工事1及び2の入札並びに本件契約1及び2の締結後になされていることを考慮すれば,第2回及び第3回の変更協定は,談合が行われた本件契約1及び2の契約金額に委託費用額を一致させるべく締結されたものであり,その金額は談合の影響を受けていると推認するのが相当である(被告三菱電機も,両者が連動することを自認している。)から,この意味でも市に損害が発生していると判断できる。 (3) 被告三菱電機は,本件工事1が既設物件に関する工事であることから,談合なかりせばより安価に落札されたとの関係はなく,損害はないと主張する。確かに,既設部分の存する工事については,従来の施工方法等について知悉している既設業者の方がコスト的にも技術的にも優位に立つこととなるから,他業者が既設業者よりも安価に入札することには一定の困難性があると考えられ,これに沿う証拠(甲37)もある。したがって,後記のとおり,損害額の認定においてはこの点を斟酌して判断するのが相当であるが,そのような場 者よりも安価に入札することには一定の困難性があると考えられ,これに沿う証拠(甲37)もある。したがって,後記のとおり,損害額の認定においてはこの点を斟酌して判断するのが相当であるが,そのような場合でも,随意契約の方法によらず,指名競争入札が実施される場合には,既設業者としても落札できるように一定の経営努力を行うのが通常であると考えられる。現に,9社は,指名競争入札が行われる既設物件(B’物件)を談合の対象に加えていたのであり,このこと自体既設物件についても談合によって競争を排除する必要があったこと,すなわち,談合なかりせば入札価格は低落するという蓋然性があったことを示すものにほかならない。 したがって,既設工事については損害がない旨の被告三菱電機の主張は採用できない。 (4) 損害額について,ア前記のとおり,談合行為によって発生する損害とは,談合行為がなければ指名業者間の公正な競争を経て入札された場合に形成されたであろう契約金額(又は想定落札価格)と現実の契約金額(又は落札価格)との差額相当額であると解するのが相当である。 したがって,本件において,市が被った損害を確定するためには,本件工事1及び2の指名競争入札において談合行為がなければ形成されたであろう契約金額について検討することが必要である。 イこの点につき,原告らは,全国各地の指名競争入札における落札価格の例を引用するなどして,本件協定においても,市は少なくとも本件契約1及び2の現実の落札価格の20パーセントに相当する額の損害を被ったと主張しており,これに沿う内容の証拠(甲18の1及び2,19ないし23,24及び25の各1及び2,26の1ないし4,27,28,29及び30の各1及び2,31,32,33の1及び2,34,35の1及び2,36の1ないし8)も一応存在する 18の1及び2,19ないし23,24及び25の各1及び2,26の1ないし4,27,28,29及び30の各1及び2,31,32,33の1及び2,34,35の1及び2,36の1ないし8)も一応存在する。 しかしながら,指名競争入札においては,入札に係る工事の規模,種類や特殊性のほか,入札指名業者の数や各業者の事業規模,更に入札当時の社会経済情勢,入札が行われた地域の特性など,様々な要因が複雑に影響し合って落札価格が形成されるものであるから,このような要因の近似性を検討することなく,単純に他の地方公共団体における指名競争入札を例に取って調査した場合の想定落札価格と対比するのみでは,損害額の認定として不正確であるといわざるを得ないところ,本件において原告らが提出する前記各証拠は,いずれも本件工事1,2と近似した条件下における調査結果であるのか不明であるから,これらを基礎に本件における損害額を認定することは困難である(甲37中の予想下落率も,根拠が明確でないからこの判断を左右しない。)。 ウもっとも,前記のとおり,本件において,市に損害が発生していること自体は認められるところ,指名競争入札における落札価格を形成する要因は多種多様であって,影響力についても公式化することができないことにかんがみると,入札談合の事例における損害は,その性質上,金額算定が極めて困難というべきであるから,本件では,民事訴訟法248条を適用して市が被った被害額を認定するのが相当である。 エそこでこの点について検討するに,前記で認定した本件工事に関する9社及び被告事業団による一連の談合行為の態様及び入札経過,本件契約1及び2の契約金額,9社の競争力(ことに5社は我が国を代表する重電機メーカーであることは公知の事実である。)等,本件に現れた一切の諸事情を総合考慮すると,本 連の談合行為の態様及び入札経過,本件契約1及び2の契約金額,9社の競争力(ことに5社は我が国を代表する重電機メーカーであることは公知の事実である。)等,本件に現れた一切の諸事情を総合考慮すると,本件の談合行為により市の被った損害額は,既設物件である本件契約1については契約金額の5パーセント(4568万0500円),そのような事情のない本件工事2については契約金額の8パーセント(1124万7600円)であると認めるのが相当である。 オ弁護士費用について原告らは,本件訴訟において,原告らの代理人となった弁護士に対して支払うべき報酬についても談合行為によって市が被った損害として併せて請求しているので検討する。 住民訴訟としていわゆる代位請求訴訟(法242条の2第1項4号)を提起した者が勝訴した場合において,弁護士に報酬を支払うべきときは,地方公共団体に対し,その報酬額の範囲内で相当と認められる額の支払を請求することができる(同条7項)。しかしながら,市に上記報酬相当の損害が発生したというためには,勝訴が確定した後,市が同項に基づいた原告らからの請求により,その弁護士の報酬額の範囲内で相当と認められる額の支払約束をするか,あるいはこれを支払ったことなど,市による出損の確実性が必要であり,これらの事実の認められない現段階において,市にそのような損害が発生したということはできない。また,住民らの当該地方公共団体に対する弁護士報酬支払請求権は,事務管理の費用償還請求権に類した性格を有すると解されるが,事務管理者(原告ら住民)が本人である地方公共団体に代位して,相手方(被告三菱電機及び同事業団)に対し,事務管理者が要した事務管理費用(弁護士費用)を地方公共団体に償還することを求めるためには,その旨の特別の規定が必要というべきところ,そのよう に代位して,相手方(被告三菱電機及び同事業団)に対し,事務管理者が要した事務管理費用(弁護士費用)を地方公共団体に償還することを求めるためには,その旨の特別の規定が必要というべきところ,そのような規定も存しない。 よって,いずれの観点からもこの点に関する原告らの請求には理由がない。 6 争点(6)(違法な怠る事実)について(1) 地方公共団体が有する債権については,その長がこれを行使すべき義務を負い,行使するか否かの裁量権を有しない(法施行令171条以下,なお,(法96条1項10号参照)から,長が正当な理由なく相当な期間債権を行使しないときは,違法に財産の管理を怠る事実が成立するものと解されるところ,前記認定のとおり,市は,9社及び被告事業団による共同不法行為に基づき,同被告らに対して損害賠償請求権を有していると認められるにもかかわらず,本件課徴金納付命令及び刑事事件の有罪判決の後も,今に至るまでこれを行使していないことは当裁判所に顕著である。 この点に関し,被告管理者は,9社が課徴金納付命令に応じたことをもって不法行為を認定することはできないので,損害賠償請求権を行使しなくても違法ではないなどと主張するけれども,9社及びその担当者らは刑事事件の第1回公判において起訴にかかる談合の事実を認めているのであって,本件は,談合を行ったとされる業者が課徴金は一応納付したものの談合の事実を争っているというような事案ではない上,そもそも談合の事実を認定するに足りる十分な証拠があることは前記のとおりである。そして,被告管理者が9社及び被告事業団に対する損害賠償請求権の行使を怠っていることについて,これを正当化するに足りる事情は何ら認められないから,本件においては,上記請求権の行使を怠ることは違法というべきである。 (2) なお,被告三菱電機及び 損害賠償請求権の行使を怠っていることについて,これを正当化するに足りる事情は何ら認められないから,本件においては,上記請求権の行使を怠ることは違法というべきである。 (2) なお,被告三菱電機及び同事業団は,被告管理者の裁量権を根拠に,違法な怠る事実がないから本訴は却下されるべきであると主張するが,協定価格が地方財政法所定の適正な価格か否かは談合による不法行為に基づく損害賠償請求権の発生と無関係であって,前記認定にかかる本件の損害の内容に照らせば,委託費用が予定価格の範囲内であるからといって市に損害が発生しないということにはならない。そして,被告管理者が9社及び被告事業団に対して損害賠償請求権の行使を怠ることが違法であることは前記(1)のとおりであるから,被告三菱電機及び同事業団のこの点に関する本案前の主張も理由がない。 第4 結論以上の次第で,原告らの被告市長に対する訴えは不適法であるからこれを却下し,その余の本訴請求については,被告三菱電機及び同事業団に対して金5692万8100円及びこれに対する本件訴状送達日の翌日(被告事業団については平成8年3月8日,被告三菱電機については同月9日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において,被告管理者に対しても上記金額の債権の行使を怠ることの違法確認の限度において理由があるからこれらを認容し,その余は失当であるから棄却し,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条本文,65条1項本文を,仮執行の宣言につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法259条1項を各適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部裁判長裁判官加藤幸雄裁判官橋本都月裁判官冨岡貴美 59条1項を各適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部裁判長裁判官加藤幸雄裁判官橋本都月裁判官冨岡貴美

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