平成26(ワ)20319 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年1月27日 東京地方裁判所
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判決文本文100,685 文字)

平成29年1月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成26年(ワ)第20319号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成28年11月25日判決原告株式会社S-Cube同訴訟代理人弁護士池 田 眞一郎同鈴木正勇同濱 田 真一郎被告アイアンドティテック株式会社同訴訟代理人弁護士三山峻司同清原直己同訴訟代理人弁理士吉本 力 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,原告に対し,6242万2510円及びこれに対する平成26年9月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 仮執行宣言第2 事案の概要 1 本件は,名称を「盗難防止タグ,指示信号発信装置,親指示信号発信装置及び盗難防止装置」とする発明(請求項の数9。以下,特許請求の範囲請求項1ないし4の発明をそれぞれ「本件発明1」ないし「本件発明4」,請求項7の発明を「本件発明6」といい,併せて「本件各発明」という。)についての特許権を有する原告が,被告の製造,販売,貸与する別紙被告製品目録記載1- 1ないし4の盗難防止タグ及び盗難防止タグ用リモコン(以下,それぞれ「被告製品1-1」ないし「被告製品4」という。また,このうち被告製品1-1と1-2を併せて「被告製品1」という。)のうち被告製品1及び2は本件発明1ないし3の技術的範囲に,被告製品3及び4は本件発明4及び6の技 1」ないし「被告製品4」という。また,このうち被告製品1-1と1-2を併せて「被告製品1」という。)のうち被告製品1及び2は本件発明1ないし3の技術的範囲に,被告製品3及び4は本件発明4及び6の技術的範囲にそれぞれ属すると主張して,民法709条及び特許法102条2項に基づき,被告製品1ないし4の販売に係る損害合計6242万2510円及びこれに対する不法行為の後の日(訴状送達の日)である平成26年9月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 なお,原告は,別紙被告製品目録記載5の盗難防止タグ用マスターリモコン(以下「被告製品5」という。)も本件発明4及び上記特許権の特許請求の範囲請求項6の発明(以下「本件発明5」という。)の技術的範囲に属すると主張した上,①特許法100条1項に基づき,被告製品1ないし5の製造,販売,貸渡し,使用,販売のための展示の差止め,②同条2項に基づき,その所有する被告製品1ないし5の廃棄を求めていたが,これらの請求は,平成28年5月18日付け「訴えの変更申立書」によって取り下げられている。また,原告は,当初から被告製品5の販売に係る損害賠償請求をしていない。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)(1) 当事者等ア原告は,盗難防止装置の製造及び販売等を業とする株式会社である。 イ被告は,防犯・防災のシステムに関する機械器具の製造及び販売等を業とする株式会社である。 A(以下「A」という。)は,平成21年まで原告の製品開発部署である大阪事業所所長兼取締役を務め,同年から平成23年まで原告の顧問を務めた上,現在は被告の代表取締役を務めている者である。(弁論 の全趣旨)(2) 原 平成21年まで原告の製品開発部署である大阪事業所所長兼取締役を務め,同年から平成23年まで原告の顧問を務めた上,現在は被告の代表取締役を務めている者である。(弁論 の全趣旨)(2) 原告の特許権原告は,次の特許権を有している(以下「本件特許権」又は「本件特許」という。また,本件特許に係る明細書及び図面を「本件明細書等」といい,その内容は別紙特許公報記載のとおりである。)。(甲1の1,2)特許番号特許第3099107号発明の名称盗難防止タグ,指示信号発信装置,親指示信号発信装置及び盗難防止装置出願日平成8年3月21日登録日平成12年8月18日(3) 本件特許権の出願経過訴外株式会社クボタ(以下「クボタ」という。)は,平成8年3月21日,本件各発明の特許につき出願(特願平8-64978)をし,平成12年7月7日付けで特許査定を受け,同年8月18日,設定登録された。(甲1の2)原告は,クボタから本件特許権の移転を受け,平成15年4月9日にその旨の登録を経た。(甲1の1,弁論の全趣旨)(4) 本件各発明の構成要件本件各発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの記号に従い「構成要件A1」などという。)。 ア本件発明1A1 盗難防止対象物に対する取り付け状態及び取り外し状態を検出する検出手段と,B1 非接触で信号を受信する受信手段と,C1 前記検出手段が取り外し状態を検出したとき及び前記受信手段が所定信号を受信したときに,警報を出力する警報出力手段とを備え た盗難防止タグにおいて,D1 前記受信手段は,前記警報出力手段が作動可能である状態及び警報出力状態の解除を指示する,暗号コードを含む解除指示信号を受信することを可能と 出力手段とを備え た盗難防止タグにおいて,D1 前記受信手段は,前記警報出力手段が作動可能である状態及び警報出力状態の解除を指示する,暗号コードを含む解除指示信号を受信することを可能とする一方,E1 前記受信手段が受信した前記所定信号及び前記解除指示信号を識別する識別手段と,F1 暗号コードを予め記憶する暗号記憶手段と,G1 前記識別手段が識別した解除指示信号に含まれる暗号コード及び前記暗号記憶手段が記憶する暗号コードが一致するか否かを判定する一致判定手段と,H1 該一致判定手段が一致すると判定したときは,前記警報出力手段が作動可能である状態及び警報出力状態を解除する解除手段とを備えることをI1 特徴とする盗難防止タグ。 イ本件発明2A2 前記一致判定手段が一致しないと判定したときに,B2 警告を出力する警告出力手段を備えるC2 請求項1記載の盗難防止タグ。 ウ本件発明3A3 前記暗号記憶手段は,前記受信手段が受信する,新暗号コードへの変更を指示する暗号変更指示信号により,B3 その記憶内容を前記新暗号コードに更新するC3 請求項1又は2記載の盗難防止タグ。 エ本件発明4A4 請求項1~3の何れかに記載の盗難防止タグが備える受信手段が受信すべき解除指示信号に含めるための暗号コードを記憶する暗号 記憶手段と,B4 前記解除指示信号を,該暗号記憶手段が記憶する暗号コードを含めて発信する発信手段とを備えることをC4 特徴とする指示信号発信装置。 オ本件発明6A6 請求項6記載の親指示信号発信装置が発信する暗号変更指示信号を受信する受信手段を備え,B6 前記暗号記憶手段は,該受信手段が受信した暗号変更指示信号に含まれる新暗号コードにより記憶内容を更新するC 6記載の親指示信号発信装置が発信する暗号変更指示信号を受信する受信手段を備え,B6 前記暗号記憶手段は,該受信手段が受信した暗号変更指示信号に含まれる新暗号コードにより記憶内容を更新するC6 請求項4又は5記載の指示信号発信装置。 (5) 被告による無効審判請求被告は,平成27年1月19日,特許庁長官に対し,本件各発明に係る特許について,①本件発明1及び4における「暗号コード」並びに本件発明3,5及び6における「新暗号コード」の記載は不明確であり,特許法36条6項2号に定める明確性要件違反がある,②本件各発明は進歩性要件違反があるなどとして,無効審判請求をした(無効2015-800016)。(乙22)(6) 審決の予告特許庁は,平成28年2月2日,上記(5)の無効審判請求事件において,以下の理由により,本件各発明に係る特許を無効とする旨の審決の予告(以下「本件審決予告」という。)をした(〔〕内の記載は本判決による。)。 (乙33)「本件特許発明1ないし6〔本件発明1ないし6〕は,甲2発明〔後出の乙4発明〕,甲第2号証〔後出の乙4公報〕,甲第3号証〔後出の乙5公報〕及び甲第11号証〔後出の乙13公報〕にそれぞれ記載された事項並びに前記周知技術に基いて〔原文ママ〕当業者が容易に発明する ことができたものであるから,本件特許発明1ないし6に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。」(7) 原告の訂正請求原告は,本件審決予告を受けて,平成28年3月14日,本件特許の特許請求の範囲請求項1及び3について,以下の内容による訂正請求をした(以下「本件訂正」といい,本件訂正後の本件発明1ないし6をそれぞれ「本件訂正発明1」 を受けて,平成28年3月14日,本件特許の特許請求の範囲請求項1及び3について,以下の内容による訂正請求をした(以下「本件訂正」といい,本件訂正後の本件発明1ないし6をそれぞれ「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明6」という。)。(甲12,乙35)ア特許請求の範囲請求項1に「備えた盗難防止タグにおいて」と記載されているのを,「備えた複数の指示信号を受信する盗難防止タグにおいて」に訂正し,同請求項に「解除を指示する,暗号コードを含む解除指示信号」と記載されているのを,「解除を指示する,暗号コードを一部に含む解除指示信号」に訂正する(以下「訂正事項1」という。)。 イ特許請求の範囲請求項3に「新暗号コードへの変更を指示する暗号変更指示信号」と記載されているのを,「新暗号コードへの変更を指示する新暗号コードを一部に含む暗号変更指示信号」に訂正する(以下「訂正事項2」という。)。 ウ本件明細書等の段落【0021】に記載された「備えた盗難防止タグにおいて」と記載されているのを,「備えた複数の指示信号を受信する盗難防止タグにおいて」に訂正し,同段落に記載された「解除を指示する,暗号コードを含む解除指示信号」を「解除を指示する,暗号コードを一部に含む解除指示信号」に訂正する(以下「訂正事項3」という。)。 エ本件明細書等の段落【0022】に記載された「解除を指示する,暗号コードを含む解除指示信号」を「解除を指示する,暗号コードを一部に含む解除指示信号」に訂正する(以下「訂正事項4」という。)。 オ本件明細書等の段落【0024】に記載された「新暗号コードへの変更を指示する暗号変更指示信号」を「新暗号コードへの変更を指示する新暗号コードを一部に含む暗号変更指示信号」に訂正する(以下「訂正事項5」という。)。 (8) 本件 記載された「新暗号コードへの変更を指示する暗号変更指示信号」を「新暗号コードへの変更を指示する新暗号コードを一部に含む暗号変更指示信号」に訂正する(以下「訂正事項5」という。)。 (8) 本件訂正発明1及び3本件訂正発明1及び3の内容は,次のとおりである(下線部が訂正箇所)。 (甲12,乙35)ア本件訂正発明1盗難防止対象物に対する取り付け状態及び取り外し状態を検出する検出手段と,非接触で信号を受信する受信手段と,前記検出手段が取り外し状態を検出したとき及び前記受信手段が所定信号を受信したときに,警報を出力する警報出力手段とを備えた複数の指示信号を受信する盗難防止タグにおいて,前記受信手段は,前記警報出力手段が作動可能である状態及び警報出力状態の解除を指示する,暗号コードを一部に含む解除指示信号を受信することを可能とする一方,前記受信手段が受信した前記所定信号及び前記解除指示信号を識別する識別手段と,暗号コードを予め記憶する暗号記憶手段と,前記識別手段が識別した解除指示信号に含まれる暗号コード及び前記暗号記憶手段が記憶する暗号コードが一致するか否かを判定する一致判定手段と,該一致判定手段が一致すると判定したときは,前記警報出力手段が作動可能である状態及び警報出力状態を解除する解除手段とを備えることを特徴とする盗難防止タグ。 イ本件訂正発明3前記暗号記憶手段は,前記受信手段が受信する,新暗号コードへの変更を指示する新暗号コードを一部に含む暗号変更指示信号により,その 記憶内容を前記新暗号コードに更新する請求項1又は2記載の盗難防止タグ。 (9) 被告製品1ないし4ア被告製品1及び2被告製品1及び2の内部基板には,いずれも「InTTech.AM_TAGVer1.1」との記載が する請求項1又は2記載の盗難防止タグ。 (9) 被告製品1ないし4ア被告製品1及び2被告製品1及び2の内部基板には,いずれも「InTTech.AM_TAGVer1.1」との記載がある。(甲4)イ被告製品3及び4被告は,被告製品3及び4を製造・販売している。 (10) 本件特許出願前の先行文献の存在本件特許の出願日(平成8年3月21日)の前に頒布された刊行物として,以下の文献が存在する。 ア特開平6-318291号公報(公開日平成6年11月15日。乙4。 以下「乙4公報」といい,同公報に係る発明を「乙4発明」という。)イ特開平7-210770号公報(公開日平成7年8月11日。乙5。 以下「乙5公報」といい,同公報に係る発明を「乙5発明」という。)ウ特公平7-75039号公報(公告日平成7年8月9日。乙6。以下「乙6公報」といい,同公報に係る発明を「乙6発明」という。)エ特開平7-325986号公報(公開日平成7年12月12日。乙7。 以下「乙7公報」という。)オ米国特許第4163215号明細書(特許日昭和54年7月31日。 乙8。以下「乙8明細書」という。)カ米国特許第5083122号明細書(特許日平成4年1月21日。乙9。以下「乙9明細書」という。)キ特開平4-276898号公報(公開日平成4年10月1日。乙10。 以下「乙10公報」という。)ク米国特許第4463340号明細書(特許日昭和59年7月31日。 乙11。以下「乙11明細書」という。)ケ特開平4-232147号公報(公開日平成4年8月20日。乙12。 以下「乙12公報」という。)コ特公平3-45436号公報(公告日平成3年7月11日。乙13。 以下「乙13公報」という。)サ米国特許第500512 公報(公開日平成4年8月20日。乙12。 以下「乙12公報」という。)コ特公平3-45436号公報(公告日平成3年7月11日。乙13。 以下「乙13公報」という。)サ米国特許第5005125号明細書(特許日平成3年4月2日。乙14。乙13公報に係る出願において優先権主張の基礎とされた米国特許出願の特許明細書である。以下「乙14明細書」といい,乙13公報及び乙14明細書に係る発明を「乙13・14発明」という。)シ米国特許第5148159号明細書(特許日平成4年9月15日。乙15。以下「乙15明細書」といい,同明細書に係る発明を「乙15発明」という。) 3 争点(1) 被告による被告製品1及び2の製造・販売の有無並びに同各製品のプログラムの制作による間接侵害の成否ア被告による被告製品1及び2の製造・販売の有無イ被告による被告製品1及び2のプログラム制作による間接侵害の成否(2) 被告製品1ないし4は本件各発明の技術的範囲に属するかア被告製品1が本件発明1ないし3の各構成要件を充足するかイ被告製品2が本件発明1ないし3の各構成要件を充足するかウ被告製品3及び4が本件発明4及び6の「暗号コード」(構成要件A4,B4,B6)を充足するかエ被告製品3及び4が本件発明6の「暗号変更指示信号」(構成要件A6)を充足するか(3) 本件各発明に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか ア明確性要件違反(ア) 本件発明1及び4についての無効理由(明確性要件違反)の存否(イ) 本件発明3及び6についての無効理由(明確性要件違反)の存否イ進歩性欠如(ア) 本件発明1についての無効理由(乙4発明を主引例とする進歩性欠如)の存否(イ) 本件発明2についての無 イ) 本件発明3及び6についての無効理由(明確性要件違反)の存否イ進歩性欠如(ア) 本件発明1についての無効理由(乙4発明を主引例とする進歩性欠如)の存否(イ) 本件発明2についての無効理由(乙6発明を主引例とする進歩性欠如)の存否(ウ) 本件発明3についての無効理由(乙13・14発明を主引例とする進歩性欠如)の存否(エ) 本件発明4についての無効理由(乙4発明を主引例とする進歩性欠如)の存否(オ) 本件発明6についての無効理由(乙13・14発明を主引例とする進歩性欠如)の存否(カ) 本件発明6についての無効理由(乙15発明を主引例とする進歩性欠如)の存否(4) 本件訂正による対抗主張の成否ア本件訂正が訂正要件を満たしているかイ本件訂正により無効理由を解消することができるかウ被告製品1及び2が本件訂正発明1ないし3の技術的範囲に属するか(5) 損害発生の有無及びその額第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)ア(被告による被告製品1及び2の製造・販売の有無)について〔原告の主張〕被告は,盗難防止タグ用リモコン(被告製品3及び4)及びマスターリモコン(被告製品5)だけでなく,盗難防止タグ(被告製品1及び2)も製造し, これを訴外株式会社エム・アールビジネス(以下「エム・アールビジネス」という。)に販売していた。このことは,以下の点からも明らかである。 (1) 内部基板の記載被告製品1及び2の内部基板には,いずれも「InTTech.AM_TAG」との記載があり,「InTTech」の「n」は「&」の代わりに用いられたものであることからすると,当該記載は,被告すなわちアイアンドティテック〔I&Tテック〕株式会社の製品であり,被告製作のプログラムが組み込まれている TTech」の「n」は「&」の代わりに用いられたものであることからすると,当該記載は,被告すなわちアイアンドティテック〔I&Tテック〕株式会社の製品であり,被告製作のプログラムが組み込まれていることを示すものである。 (2) 盗難防止タグとリモコンの関係本来,盗難防止タグとリモコンは一対のものであり,他社と互換性のあるものではないことからすると,リモコンのみを製造・販売しているとの被告の主張は極めて不自然である。 (3) 開発・製造能力被告は,エム・アールビジネスは訴外株式会社KDエレクトロニクス(以下「KDエレクトロニクス」という。)から盗難防止タグを購入している旨主張するが,エム・アールビジネスもKDエレクトロニクスも盗難防止タグを開発・製造する能力を有していないのであって,被告が積極的に関与することなく,エム・アールビジネス又はKDエレクトロニクスが被告製品1及び2を開発・製造することはできない。 (4) ロイヤリティの支払エム・アールビジネスは,KDエレクトロニクスから盗難防止タグを購入するごとに,被告に対して1個30円のロイヤリティを支払っている。 (5) KDエレクトロニクスの見積書及び請求書被告は,盗難防止タグを販売していたのは被告ではなくKDエレクトロニクスであったことの証拠として,KDエレクトロニクスのエム・アールビジネスに対する見積書(乙20。以下「乙20見積書」という。)及び請求書 (乙21。以下「乙21請求書」という。)を提出するが,被告がこれらの書面を所持していること自体,不自然である。そもそも,これらの書面上,委託者はいずれもエム・アールビジネスとされているが,これは,与信に不安のある被告を委託者とすることができなかったため,便宜的にエム・アールビジネスを委託者とした である。そもそも,これらの書面上,委託者はいずれもエム・アールビジネスとされているが,これは,与信に不安のある被告を委託者とすることができなかったため,便宜的にエム・アールビジネスを委託者としたものにすぎない。 (6) 被告の主張する開発,製造の経緯被告は,概要,①エム・アールビジネスは,当初,被告に対し,「ID無し」すなわちIDの書換えのできない各店舗共通の解除信号による盗難防止タグ及びリモコンの開発を依頼した,②その後,盗難防止タグについては,エム・アールビジネス側で製造の用意をすることになった,③エム・アールビジネスの指示により,平成25年4月頃から「ID無し」ではなく「ID有り」の盗難防止タグ(被告製品1及び2)及びリモコン(被告製品3及び4)の開発に変更され,被告は「ID有り」のリモコンのみを開発したなどと主張する。 しかし,被告の上記主張は,以下のとおり,不自然な点が多い。 ア 「ID無し」の盗難防止タグは既に他のメーカーからも販売されており,エム・アールビジネスとしてはこれを購入すれば足りるのであって,あえて被告に対して開発を依頼するとは考えられない。 イ盗難防止タグ及びリモコンを開発させるに当たっては,「ID無し」か「ID有り」かは最も基本的かつ重要な検討事項であって,特段の理由もなく途中で「ID無し」から「ID有り」へと変更するようなことはあり得ず,当初から「ID有り」の盗難防止タグ及びリモコンの開発をしていたはずである。 ウエム・アールビジネスから被告への支払が終了したのは平成24年12月31日であるはずであり,「ID無し」の盗難防止タグを「ID有り」のものに変更したのはその後ということになるはずである。しかる に,平成25年3月29日付けの乙21請求書によれば,「ID有り」の盗難防 ずであり,「ID無し」の盗難防止タグを「ID有り」のものに変更したのはその後ということになるはずである。しかる に,平成25年3月29日付けの乙21請求書によれば,「ID有り」の盗難防止タグが変更からわずか3か月後の時点で8812個も製造されており,整合しない。 〔被告の主張〕(1) 被告は被告製品1及び2の盗難防止タグを製造・販売していない。被告製品1及び2を製造してエム・アールビジネスに納入しているのはKDエレクトロニクスである。 (2) 被告製品1及び2の開発・製造の経緯は,次のとおりである。 ア被告は,エム・アールビジネスからの依頼を受け,平成24年3月頃から盗難防止タグ及びリモコンの開発に着手した。 当初被告が開発していたものは,「ID無し」すなわちID(本件各発明の「暗号コード」を指すものではない。)の書換えのできない各店舗共通の解除信号による盗難防止タグ及びリモコンであった。また,当初は訴外テキサスインスツルメント社製のマイコン(以下「TI社製マイコン」という。)を用いることとしていた。 イ当初の予定では,被告が盗難防止タグ及びリモコンの両方を製造し,エム・アールビジネスに販売する予定であった。 しかし,その後,盗難防止タグについてはエム・アールビジネス側で製造の用意をすることになった。すなわち,①エム・アールビジネスがKDエレクトロニクスに盗難防止タグの製造を委託する,②KDエレクトロニクスが中国の製造会社にケースの製造を依頼するとともに,訴外ヨーホー電子株式会社(以下「ヨーホー電子」という。)にケースと基板の組立てを依頼する,③完成した製品をKDエレクトロニクスがエム・アールビジネスに納品することとなった。なお,製品の金型はエム・アールビジネスが所有し,中国の製造会社が管理していた。 ケースと基板の組立てを依頼する,③完成した製品をKDエレクトロニクスがエム・アールビジネスに納品することとなった。なお,製品の金型はエム・アールビジネスが所有し,中国の製造会社が管理していた。 ウ平成24年12月頃,「ID無し」の盗難防止タグ及びリモコンの試 作が出来上がり,評価等を行ったところ,当初予定の性能を有していた。 エム・アールビジネスは,被告に対し,開発費用を同年末までに3回に分けて支払った。 エ平成25年3月頃,TI社製マイコンを用いた「ID無し」盗難防止タグ及びリモコンの量産試作が行われた。その際,盗難防止タグはKDエレクトロニクスが製作し,同社がエム・アールビジネスに納品した。 オ上記エの量産試作の結果,盗難防止タグの1個当たりの単価が269円となることが分かった。エム・アールビジネスはコスト削減を要望し,これを受けてKDエレクトロニクスは,①盗難防止タグに用いるマイコンをTI社製マイコンから訴外ルネサスエレクトロニクス株式会社製のマイコン(以下「ルネサス社製マイコン」という。)に変更して単価を下げる,②ルネサス社製マイコンの販売会社とは従前から緊密な取引関係にあるため,同社に対し,ルネサス社製マイコンのプログラム開発及びダウンロードを無料で行わせる旨の提案をした。 このとき,エム・アールビジネスは,マイコンを変更するのであれば「ID有り」の盗難防止タグ及びリモコンに変更したい旨希望した。 他方,被告はルネサス社製マイコンを扱ったことがないため,ルネサス社製マイコン用のプログラム開発については,エム・アールビジネスの依頼を断った。 カ以上の経緯のもと,平成25年4月頃から,①ルネサス社製マイコンの販売会社は,ルネサス社製マイコンを使用した「ID有り」の盗難防止タグの開発をし,②被告 エム・アールビジネスの依頼を断った。 カ以上の経緯のもと,平成25年4月頃から,①ルネサス社製マイコンの販売会社は,ルネサス社製マイコンを使用した「ID有り」の盗難防止タグの開発をし,②被告は,TI社製マイコンを使用した「ID有り」の盗難防止タグ用リモコンの開発をすることとなった。 キ盗難防止タグ及びリモコンの試作品は平成25年8月頃に完成し,同年12月から量産が行われた。 (3) この点に関して原告は,被告が盗難防止タグも製造・販売していた旨主張 する。しかし,盗難防止タグに関しては乙20見積書及び乙21請求書が存在するところ,これらはいずれもKDエレクトロニクスがエム・アールビジネスに対して発行したものであって,被告は取引の中に入っていない。 また,原告は,被告製品1及び2の内部基板に「InTTech.AM_TAG」との記載があることを指摘するが,この記載は,被告が当初,「ID無し」の盗難防止タグの回路設計を行い,その設計図面をエム・アールビジネスに交付したことによる。 さらに,原告は,エム・アールビジネスが被告に対してロイヤリティを支払っているなどと主張するが,そのような事実は存在しない。 加えて,原告は,盗難防止タグ及びリモコンの開発の途中で「ID有り」から「ID無し」に変更することはあり得ないなどと主張するが,開発の過程で,依頼者の意向により変更があるということは珍しくなく,何ら不合理でもない。 2 争点(1)イ(被告による被告製品1及び2のプログラム制作による間接侵害の成否)について〔原告の主張〕盗難防止タグに組み込むプログラムは当該盗難防止タグ専用として作成されるものであって,当該盗難防止タグに組み込むことにより,そのプログラム仕様に基づいて当該盗難防止タグを動作させることはでき 〕盗難防止タグに組み込むプログラムは当該盗難防止タグ専用として作成されるものであって,当該盗難防止タグに組み込むことにより,そのプログラム仕様に基づいて当該盗難防止タグを動作させることはできるが,当該プログラムを他社製の盗難防止タグに組み込んでも,動作条件,動作内容,回路基板等の仕様が異なるため,当該他社製の盗難防止タグを動作させることはできない。 被告製品1及び2のプログラムも,同様の作成,組込み手順であり,被告製品1及び2専用として作成されたものであって,被告製品1及び2に組み込むことにより,当該製品のプログラム仕様の動作をさせることができるにすぎず,当該プログラムを他社製の盗難防止タグに組み込んでも,当該他社製の盗難防止タグを動作させることはできない。 したがって,被告が被告製品1及び2に組み込むプログラムを作成し,そのの製造用に提供した行為は,特許法101条1号の「その物の生産にのみ用いる物の生産,譲渡等」に該当し,本件発明1ないし3に係る特許権を侵害するものとみなされる。 〔被告の主張〕否認する。被告は被告製品1及び2に組み込むプログラムを作成しておらず,特許法101条1号の間接侵害に該当しない。 3 争点(2)ア(被告製品1が本件発明1ないし3の各構成要件を充足するか)について〔原告の主張〕(1) 本件発明1についてア被告製品1は,別紙被告製品物件説明書1-1及び1-2に記載されたものであり,本件発明1との対比に沿うように分説すると次のとおりである。 a1 導通ワイヤー取付状態検出手段と,b1 共振回路(アンテナ回路)と,c1 前記検出手段が導通ワイヤーの取り外し状態を検出したとき及び前記受信手段がゲートの発信装置から所定信号を受信したときに,駆動部に警報信号を出力させ と,b1 共振回路(アンテナ回路)と,c1 前記検出手段が導通ワイヤーの取り外し状態を検出したとき及び前記受信手段がゲートの発信装置から所定信号を受信したときに,駆動部に警報信号を出力させてLEDを点滅させ,ブザーを鳴動させる点滅・鳴動手段とを備えた盗難防止タグにおいて,d1 前記共振回路は,前記点滅・鳴動手段が作動可能であるセットモード状態及び点滅・鳴動出力状態の解除を指示する,暗号コードを含むリセットコード信号を受信することを可能とする一方,e1 前記共振回路が受信した前記所定信号及びリセットコード信号を識別するコード識別部と,f1 前記暗号コードを予め記憶する暗号記憶部と, g1 前記コード識別部が識別したリセットコード信号に含まれる暗号コード及び前記暗号記憶部が記憶する暗号コードが一致するか否かを判定する信号処理部と,h1 該信号処理部が一致すると判定したときは,前記点滅・鳴動手段が作動可能であるセットモード状態及び点滅・鳴動状態を解除するリセットモード設定手段とを備えるi1 盗難防止タグ。 イ対比・検討(ア) a1の導通ワイヤー取付状態検出手段は,商品から盗難防止タグが取り外されたかを検出するものであり,A1の盗難防止対象物に対する取り付け状態及び取り外し状態を検出する検出手段に相当し,被告製品1は,A1の構成要件を充足する。 (イ) b1の共振回路(アンテナ回路)は,非接触で信号を受信するものであり,B1の受信手段に相当し,被告製品1は,B1の構成要件を充足する。 (ウ) C1の所定信号は,本件明細書等の【発明の詳細な説明】に「この状態で,何者かが盗難防止対象物を持ち出そうとすると,盗難防止タグは,販売店の出口に設置された発信装置(図8,TX)から所定信号を受信して警報を出 信号は,本件明細書等の【発明の詳細な説明】に「この状態で,何者かが盗難防止対象物を持ち出そうとすると,盗難防止タグは,販売店の出口に設置された発信装置(図8,TX)から所定信号を受信して警報を出力する。」(段落【0036】)と記載されていることからすれば,c1の店舗のゲートの発信装置から発せられる信号は,C1の所定信号に相当する。 また,C1の警報出力手段は,本件明細書等の【発明の詳細な説明】に「警報信号は,駆動部8の出力端子が例えば8HzでLレベルになることにより,発光ダイオードLEDを点滅させる。このとき,駆動部8は,8HzのLレベル信号に4kHzの鳴動信号を重畳させて,トランジスタTR2を駆動させ,ブザーBUZを鳴動させる。」(段落【00 60】)と記載されていることからすれば,c1のLEDを点滅させ,ブザーを鳴動させる点滅・鳴動手段は,C1の警報出力手段に相当する。 よって,C1とc1は同じであり,被告製品1は,C1の構成要件を充足する。 (エ) 上記のように,D1の受信手段はd1の共振回路に,D1の警報出力手段はd1の点滅・鳴動手段にそれぞれ相当する。 また,D1の解除指示信号は,本件明細書等の【発明の詳細な説明】に「信号処理部5は,与えられたコードがリセットコードであるときは,暗号コード記憶部9に記憶してある暗号コードと,リセットコードに含まれる暗号コードとが一致するか否かを判定する。そして,一致すると判定したときは,この盗難防止タグをリセットモードに設定し」(段落【0051】)と記載されていることからすると,d1のリセットコード信号は,D1の解除指示信号に相当する。 よって,D1とd1は同じであり,被告製品1は,D1の構成要件を充足する。 (オ) 上記のように,E1の受信手段はe1の共振回路 と,d1のリセットコード信号は,D1の解除指示信号に相当する。 よって,D1とd1は同じであり,被告製品1は,D1の構成要件を充足する。 (オ) 上記のように,E1の受信手段はe1の共振回路に,E1の所定信号はe1のゲートの発信装置から発せられる所定信号に,E1の解除指示信号はe1のリセットコード信号にそれぞれ相当し,E1とe1は同じであり,被告製品1は,E1の構成要件を充足する。 (カ) F1とf1は同じであり,被告製品1は,F1の構成要件を充足する。 (キ) 上記のように,G1の解除指示信号はg1のリセットコード信号に相当し,被告製品1は,G1の構成要件を充足する。 (ク) 上記のように,H1の警報出力手段,警報出力状態は,h1の点滅・鳴動手段,点滅・鳴動状態に相当する。 また,H1の解除は,上記の本件明細書等の段落【0051】の記載からするとリセットモードを意味することから,H1の解除手段は,h 1のリセットモード設定手段に相当する。 よって,H1とh1は同じであり,被告製品1は,H1の構成要件を充足する。 (ケ) I1とi1は同じであり,被告製品1は,I1の構成要件を充足する。 (コ) 以上より,被告製品1は本件発明1の構成要件を全て充足し,本件発明1の技術的範囲に属するものである。 (2) 本件発明2についてア被告製品1は,上記のように別紙被告製品物件説明書1-1及び1-2に記載されたものであり,本件発明2との対比に沿うように分説すると次のとおりである。 a2 前記一致判定手段が一致しないと判定したときに,b2 LEDを点滅させ,ブザーを鳴動させる点滅・鳴動出力手段を備えるc2 a1ないしh1からなる盗難防止タグ。 イ対比・検討(ア) A2とa2は同じであり,被告製品1は,A2 ときに,b2 LEDを点滅させ,ブザーを鳴動させる点滅・鳴動出力手段を備えるc2 a1ないしh1からなる盗難防止タグ。 イ対比・検討(ア) A2とa2は同じであり,被告製品1は,A2の構成要件を充足する。 (イ) 本件明細書等の【発明の詳細な説明】に「警告信号は,駆動部8の出力端子が例えば8Hzの2周期連続1周期休止のリズムでLレベルになって,発光ダイオードLEDを点滅させる。このとき,駆動部8は,8Hzの2周期連続1周期休止のリズムのLレベル信号に4kHzの鳴動信号を重畳させて,トランジスタTR2を駆動させ,ブザーBUZを鳴動させる。」(段落【0053】)と記載されていることからすれば,B2の警告出力手段はb2の点滅・鳴動出力手段に相当し,B2とb2は同じであり,被告製品1は,B2の構成要件を充足する。 (ウ) 上記のように,a1ないしh1は,A1ないしH1と同じであり,c2の盗難防止タグは本件発明1の盗難防止タグに相当することから,被 告製品1はC2の構成要件を充足する。 (エ) 以上より,被告製品1は本件発明2の構成要件を全て充足し,本件発明2の技術的範囲に属するものである。 (3) 本件発明3についてア被告製品1は,上記のように別紙被告製品物件説明書1-1及び1-2に記載されたものであり,本件発明3との対比に沿うように分説すると次のとおりである。 a3 前記暗号記憶手段は,前記受信手段が受信する,新暗号コードへの変更を指示する暗号変更指示信号により,b3 その記憶内容を前記新暗号コードに更新するc3 a1ないしh1又はa2ないしc2からなる盗難防止タグ。 イ対比・検討(ア) A3とa3は同じであり,被告製品1は,A3の構成要件を充足する。 (イ) B3とb3は同じであり,被告製品 c3 a1ないしh1又はa2ないしc2からなる盗難防止タグ。 イ対比・検討(ア) A3とa3は同じであり,被告製品1は,A3の構成要件を充足する。 (イ) B3とb3は同じであり,被告製品1は,B3の構成要件を充足する。 (ウ) 上記のように,a1ないしh1はA1ないしH1と,a2ないしc2はA2ないしC2とそれぞれ同じであり,c3の盗難防止タグは本件発明1及び本件発明2の盗難防止タグに相当することから,被告製品1はC3の構成要件を充足する。 (エ) 以上より,被告製品1は本件発明3の構成要件を全て充足し,本件発明3の技術的範囲に属するものである。 〔被告の主張〕不知。 4 争点(2)イ(被告製品2が本件発明1ないし3の各構成要件を充足するか)について〔原告の主張〕(1) 本件発明1について ア被告製品2は,別紙被告製品物件説明書2に記載されたものであり,本件発明1との対比に沿うように,被告製品1と異なる点について分説すると,次のとおりである。 a1’ボタン押圧状態検出手段と,c1’前記検出手段がボタン押圧開放状態を検出したとき及び前記受信手段がゲートの発信装置から所定信号を受信したときに,駆動部に警報信号を出力させてLEDを点滅させ,ブザーを鳴動させる点滅・鳴動手段とを備えた盗難防止タグ。 イ対比・検討(ア) a1’のボタン押圧状態検出手段は,商品から盗難防止タグが取り外されたかを検出するものであり,A1の盗難防止対象物に対する取り付け状態及び取り外し状態を検出する検出手段に相当し,被告製品2は,A1の構成要件を充足する。 (イ) 上記のように,c1’のボタン押圧開放状態を検出したときは,商品から盗難防止タグが取り外された状態を検出するものであり,C1の取り外し状態を検出したと 品2は,A1の構成要件を充足する。 (イ) 上記のように,c1’のボタン押圧開放状態を検出したときは,商品から盗難防止タグが取り外された状態を検出するものであり,C1の取り外し状態を検出したときに相当し,被告製品2は,C1の構成要件を充足する。 (ウ) 被告製品2のそれ以外の構成は,被告製品1と同じであり,被告製品2は,B1,D1ないしI1の構成要件も充足する。 (エ) 以上より,被告製品2は本件発明1の構成要件を全て充足し,本件発明1の技術的範囲に属するものである。 (2) 本件発明2について被告製品2は,別紙被告製品物件説明書2に記載されたものであり,本件発明2との対比においては,前記3の〔原告の主張〕で被告製品1を分説したものと同じであり,被告製品1での対比・検討した結論と同様に,被告製品2は本件発明2の構成要件を全て充足し,本件発明2の技術的範囲に属す るものである。 (3) 本件発明3について被告製品2は,別紙被告製品物件説明書2に記載されたものであり,本件発明3との対比においては,前記3の〔原告の主張〕で被告製品1を分説したものと同じであり,被告製品1での対比・検討した結論と同様に,被告製品2は本件発明3の構成要件を全て充足し,本件発明3の技術的範囲に属するものである。 〔被告の主張〕不知。 5 争点(2)ウ(被告製品3及び4が本件発明4及び6の「暗号コード」(構成要件A4,B4,B6)を充足するか)について〔原告の主張〕(1) 被告製品3及び4は別紙被告製品物件説明書3及び4に記載されたものであり,いずれも本件発明4及び6の「暗号コード」(構成要件A4,B4,B6)を備える。 (2) この点に関して被告は,本件各発明の「暗号コード」は「第三者に通信内容を知られないように行う たものであり,いずれも本件発明4及び6の「暗号コード」(構成要件A4,B4,B6)を備える。 (2) この点に関して被告は,本件各発明の「暗号コード」は「第三者に通信内容を知られないように行う特殊な通信(秘匿通信)方法のうち,通信文を見ても特別な知識なしでは読めないように変換する表記法(変換アルゴリズム)」である旨主張する。 しかし,本件各発明の「暗号コード」とは,リモートコントロールキーが盗まれたりした場合に,他のリセットコードが漏れないようにするため,コードの一部を任意の数字(信号)を組み合わせたものとしてリセットコードを設定し,それにより盗難防止タグとリモートコントロールキーの間で送受信するものを指すものであって,リセットコードの当該一部が「暗号」すなわち「通信の内容が第三者にもれないように,おたがいに約束して使う記号(のしくみ)。」(三省堂国語辞典第7版52頁〔甲2〕)と目的,機能に おいて類似することから,当該類似する目的,機能を示すために,「暗号コード」の名称を用いたものにすぎない。このことは,本件明細書等の以下の記載などからも明らかである。 ア本件明細書等の段落【0001】の記載によれば,本件各発明は,盗難防止タグ,盗難防止タグに指示信号を与える指示信号発信装置,盗難防止タグ及び指示信号発信装置に指示信号を与える親指示信号発信装置とこれらの盗難防止装置の改良についてのものであって,電気通信事業者が行う無線通信とは異なり,指示信号発信装置から盗難防止タグに対し送信されるリセットコードの個別のデータ内容自体に格別の意味はなく,当該データ内容を第三者に知られないように特殊な通信方法を行うようなものではない。 イ本件明細書等の段落【0074】の記載及び【図8】の記載によれば,盗難防止タグをリセットモー 別の意味はなく,当該データ内容を第三者に知られないように特殊な通信方法を行うようなものではない。 イ本件明細書等の段落【0074】の記載及び【図8】の記載によれば,盗難防止タグをリセットモードに設定するための指示信号発信装置から盗難防止タグへのリセットコードの送信は,店舗のレジでの商品代金の精算時に行われるものである。また,盗難防止タグ,指示信号発信装置のリセットコードを変更するために親指示信号発信装置から盗難防止タグ,指示信号発信装置への当該変更指示信号の送信は,客が立ち入らない店舗の事務室等の作業台で行われるものである。 このように,リセットコード等の送信は,盗難防止タグと指示信号装置が近接した状態で行われ,リセットコード等の信号もその範囲にしか送信されないため,第三者が当該送信を傍受しようとすれば,当該送信が行われた場所の近辺で行う必要があるが,それは当該送信を行っている店員に容易に発覚するため,当該傍受を行うことは困難であり,当該傍受を回避するために当該送信内容を第三者に知られないように特殊な通信方法を行う必要はない。 また,仮に,リセットコードの送信を第三者に傍受されるようなこと があった場合,リセットコード全体の信号が判別されてしまえば,それにより当該信号を送信し,盗難防止タグをリセットモードとすることができてしまうため,リセットコードの個別のデータを第三者に知られないように特殊の通信方法を行うことは意味がない。 ウ本件明細書等の段落【0019】に記載された課題が生じるのは,「リセットモードにするためのリセットコードが共通」なためであって,リセットコードの個別のデータが第三者に知られることによるものではない。 また,本件明細書等の段落【0020】に記載された本件各発明の目的は,いずれも,上 リセットコードが共通」なためであって,リセットコードの個別のデータが第三者に知られることによるものではない。 また,本件明細書等の段落【0020】に記載された本件各発明の目的は,いずれも,上記課題を解決するために,「リセットモードにするためのリセットコードが共通」とならないようにするものである。すなわち,本件発明1及び4では,盗難防止タグについて店舗ごとに異なるリセットコードを設定することができるようにし,本件発明2及び4では,盗難防止タグが異なるリセットコードを受信すると,警告を出力することができるようにし,本件発明3,5及び6では,盗難防止タグのリセットコードを容易に変更できるようにするものであって,リセットコードの個別のデータを第三者に知られないように特殊の通信方法を行うことを目的とするものではない。 〔被告の主張〕(1) 「暗号」とは,「第三者に通信内容を知られないように行う特殊な通信(秘匿通信)方法のうち,通信文を見ても特別な知識なしでは読めないように変換する表記法(変換アルゴリズム)のこと」(ウィキペディア〔乙1〕)であり,「コード」とは,「文字や記号,数字などをコンピューターが識別するためにまとめられた符号」(IT用語辞典BINARY〔乙2〕)をいう。本件明細書等の段落【0019】及び【0026】の記載にも照らすと,本件発明4及び6の構成要件A4,B4及びB6にある「暗号コード」とは, 「第三者が,変換アルゴリズムを知らないと通信文を見ても読めないような,特別な変換アルゴリズムによって,変換された符号の集合体」という意味である。 これに対し,被告製品3及び4は,「ID情報」は有しているものの,「暗号コード」は有していない。「ID情報」とは,単なる数字であり,特別なアルゴリズムを用いた「暗号コー 体」という意味である。 これに対し,被告製品3及び4は,「ID情報」は有しているものの,「暗号コード」は有していない。「ID情報」とは,単なる数字であり,特別なアルゴリズムを用いた「暗号コード」ではない。 したがって,被告製品3及び4は,「暗号コード」なるものを使用していないので,「暗号コードを記憶する暗号記憶手段」を有しておらず,本件発明4の構成要件A4,B4を充足しない。また,同様に,被告製品3及び4は,「前記暗号記憶手段は,該受信手段が受信した暗号変更指示信号に含まれる新暗号コードにより記憶内容を更新する」という「暗号コード」なるものによって動作していないので,本件発明6の構成要件B6を充足しない。 (2)アこの点に関して原告は,本件各発明における課題の解決方法として,通信を「暗号」にすることは技術的に必要がないと主張する。 しかし,本件発明は,「暗号」にすることで課題を解決することができたものであって,現在になってから「暗号」にしなくても課題が解決できると主張しても,本件特許権の権利範囲に何ら影響を与えるものではない。 イまた,原告は,「暗号コード」の定義として「リモートコントロールキーが盗まれたりした場合に,そのリセットコードが漏れないようにするために,コードの一部を任意の数字(信号)を組み合わせたものとしてリセットコードを設定し,それにより盗難防止タグとリモートコントロールキーの間で送受信するもの」と主張するとともに,「リセットコードの当該一部が『暗号』と目的,機能において類似する」旨主張する。 しかし,原告の主張における「リセットコードの当該一部」とは,「暗号コード」を指している。そうであるならば,原告の主張は,「暗 号コード」は「暗号」(「通信の内容が第三者にもれないようにおたがいに約 の主張における「リセットコードの当該一部」とは,「暗号コード」を指している。そうであるならば,原告の主張は,「暗 号コード」は「暗号」(「通信の内容が第三者にもれないようにおたがいに約束して使う記号(のしくみ)」)と目的,機能において類似するという意味である。「暗号コード」が「暗号」の目的及び機能において類似するとは,正に「暗号コード」とは「暗号」そのものと解釈するのが自然である。 ウさらに,原告は,「暗号コード」を「コードの一部を任意の数字(信号)を組み合わせたもの」と解釈しているようである。 しかし,そのような構成は本件明細書等に開示されていないし,原告の主張は無理な解釈によって権利範囲を広げようとするものであって,許されるべきでない。 6 争点(2)エ(被告製品3及び4が本件発明6の「暗号変更指示信号」(構成要件A6)を充足するか)について〔原告の主張〕(1) 被告製品3及び4は別紙被告製品物件説明書3及び4に記載されたものであり,いずれも本件発明6の「暗号変更指示信号」(構成要件A6)を備える。 (2) この点に関して被告は,本件発明6(請求項7)の「暗号変更指示信号」と本件発明5(請求項6)に係る発明の「暗号変更指示信号」が同一のものである旨主張する。 しかし,請求項7の記載及び本件明細書等の記載に照らせば,変更する「新暗号コード」は同じでなければならないものの,同信号に含まれるその他の信号は必ずしも同じでなければならない必要はない。このことは,本件明細書等の以下の記載などからも明らかである。 ア請求項7では,「請求項6記載の親指示信号発信装置が発信する暗号変更指示信号を受信する受信手段を備え」と記載されるのみであり,「暗号変更指示信号」について「盗難防止タグが備える受信手段が受信 請求項7では,「請求項6記載の親指示信号発信装置が発信する暗号変更指示信号を受信する受信手段を備え」と記載されるのみであり,「暗号変更指示信号」について「盗難防止タグが備える受信手段が受信 すべき」との限定はなされておらず,また,請求項6は盗難防止タグに対するものとして構成されたにすぎず,請求項7の「指示信号発信装置」に対する構成において,暗号設定手段が設定した新暗号コードを含めて,暗号変更指示信号を発信する装置である「親指示信号発信装置」(本件明細書等の段落【0029】及び【0031】)が盗難防止タグにより受信されるものとは別の「暗号変更指示信号」を発信する機能を有することは制限されていない。本件各発明の本質からしても制限を受ける理由はなく,同項の発明は,「請求項6記載の親指示信号発信装置が発信する暗号変更指示信号」であれば足り,「盗難防止タグが備える受信手段が受信すべき」ものと同じものである必要はない。 イ本件明細書等の段落【0029】では,請求項6に係る発明につき,「この親指示信号発信装置では,暗号設定手段が,盗難防止タグが備える暗号記憶手段が記憶すべき新暗号コードを設定する。そして,発信手段は,暗号設定手段が設定した新暗号コードを含めて,暗号変更指示信号を発信する。これにより,この親指示信号発信装置は,解除指示信号を発信する指示信号発信装置が盗まれたり,解除指示信号の暗号コードが知られたりしても,暗号コードを容易に変更でき,より確実に盗難を防止することができる。」と記載されている。これによれば,「暗号変更指示信号」は,盗難防止タグが備える暗号記憶手段を「新暗号コード」に変更するもので,それにより,解除指示信号を発信する指示信号発信装置が盗まれたり,解除指示信号の暗号コードが知られたりしても,暗号コードを容易 ,盗難防止タグが備える暗号記憶手段を「新暗号コード」に変更するもので,それにより,解除指示信号を発信する指示信号発信装置が盗まれたり,解除指示信号の暗号コードが知られたりしても,暗号コードを容易に変更でき,より確実に盗難を防止することができるようにするものであり,暗号記憶手段を「新暗号コード」に変更する点に特徴があるものであって,「新暗号コード」を除く親指示信号発信装置から発信される変更を指示する信号自体のコードに格別の意義はない。 ウ本件明細書等の段落【0031】では,請求項7に係る発明につき, 「この指示信号発信装置では,受信手段が,親指示信号発信装置が発信する暗号変更指示信号を受信する。そして,暗号記憶手段は,受信手段が受信した暗号変更指示信号に含まれる新暗号コードにより記憶内容を新する。これにより,この指示信号発信装置は,解除指示信号を発信する他の指示信号発信装置が盗まれたり,解除指示信号の暗号コードが知られたりしても,暗号コードを容易に変更でき,より確実に盗難を防止することができる。」と記載されている。これによれば,「暗号変更指示信号」は,指示信号発信装置の暗号記憶手段を「新暗号コード」に変更するもので,それにより,解除指示信号を発信する他の指示信号発信装置が盗まれたり,解除指示信号の暗号コードが知られたりしても,暗号コードを容易に変更でき,より確実に盗難を防止することができるものであり,暗号記憶手段を「新暗号コード」に変更する点に特徴があるものであって,「新暗号コード」を除く親指示信号発信装置から発信される変更を指示する信号自体のコードに格別の意義はないし,盗難防止タグが受信するものと同じ信号にしなければならない理由もない。 〔被告の主張〕(1) 本件発明6(請求項7)の構成要件A6における「請求項6 指示する信号自体のコードに格別の意義はないし,盗難防止タグが受信するものと同じ信号にしなければならない理由もない。 〔被告の主張〕(1) 本件発明6(請求項7)の構成要件A6における「請求項6記載の親指示信号発信装置が発信する暗号変更指示信号」の「暗号変更指示信号」とは,本件発明5(請求項6)の「盗難防止タグが備える受信手段が受信すべき暗号変更指示信号」のことである。すなわち,本件発明6(請求項7)の指示信号発信装置が受信する「暗号変更指示信号」は,盗難防止タグが受信するものと同じ「暗号変更指示信号」であるとの構成である。 本件明細書等の【図7】で示されているように,「暗号設定コード」は一つしかない。すなわち,盗難防止タグに対する「暗号変更指示信号」及び「指示信号発信装置に対する暗号変更指示信号」は同一のものであることが示されている。 したがって,本件発明6の構成要件A6は,「請求項6記載の親指示信号発信装置が発信する『盗難防止タグが備える受信手段が受信すべき暗号変更指示信号』を受信する受信手段を備え」という意味である。 (2) これに対し,前記5の〔被告の主張〕のとおり,被告製品3及び4は「暗号コード」を用いていないので,その前提となる「暗号変更指示信号」なるものも利用しておらず,構成要件A6は非充足である。 また,被告製品3及び4はリモコンであり,そのマスターリモコンは被告製品5であるところ,この被告製品5は「盗難防止タグ」及び「リモコン」のID情報を更新する機能を有している。しかし,被告製品5は,新しいID情報に書き換えるためのID情報書換信号につき,「盗難防止タグ」と「リモコン」とで別の信号系列を送信しているのであって,被告製品3及び4は「盗難防止タグ」のID情報書換信号によってID情報が書き換えら 報に書き換えるためのID情報書換信号につき,「盗難防止タグ」と「リモコン」とで別の信号系列を送信しているのであって,被告製品3及び4は「盗難防止タグ」のID情報書換信号によってID情報が書き換えられることがない。 したがって,被告製品3及び4は,構成要件A6を充足しない。 (3) この点に関して原告は,「暗号変更指示信号」は「新暗号コード」以外の信号が異なることを排除するものではない旨主張し,その根拠として,①本件明細書等においてはそのような制限がないこと(段落【0029】及び【0031】),②本件各発明の本質からも制限されるべきではないことを挙げる。 しかし,上記②の「本件発明の本質」が何を指すのかは,原告の主張からは明らかではない。「本件発明の本質」などという抽象的な概念によって,「暗号変更指示信号」の意義は導き得ない。 また,上記①についても,本件明細書等の段落【0028】には,請求項6記載のとおり,「盗難防止タグが備える受信手段が受信すべき暗号変更指示信号」として,「暗号変更指示信号」を限定している。これを受けた段落【0029】の「この親指示信号発信装置」とは,段落【0028】で記載 された親指示信号装置であり,盗難防止タグが備える受信手段が受信すべき暗号変更指示信号を発信するものとして記載されたものである。 そして,本件明細書等の段落【0030】においては,「請求項6記載の親指示信号発信装置が発信する暗号変更指示信号」である旨を明確にしているところ,これを受けて,段落【0031】は「この指示信号発信装置」と記載しているのである。すなわち,段落【0031】の暗号変更指示信号は,段落【0030】で記載されている「盗難防止タグが備える受信手段が受信すべき暗号変更指示信号」のことである。 さらに,本件明 記載しているのである。すなわち,段落【0031】の暗号変更指示信号は,段落【0030】で記載されている「盗難防止タグが備える受信手段が受信すべき暗号変更指示信号」のことである。 さらに,本件明細書等の段落【0075】は,暗号変更指示信号が,盗難防止タグ及び指示信号発信装置に対して送信する信号が同一のものであることを明らかにしている。 したがって,本件明細書等の段落【0029】,【0031】及び【0075】の各記載は,親指示信号発信装置が盗難防止タグに向けて発信する「暗号変更指示信号」と,指示信号発信装置に向けて発信する「暗号変更指示信号」とが同一であることを前提に記載されたものであるから,原告の主張には根拠がない。 7 争点(3)ア(ア)(本件発明1及び4についての無効理由(明確性要件違反)の存否)について〔被告の主張〕(1) 本件特許の特許請求の範囲の請求項1(本件発明1)及び請求項4(本件発明4)には,「暗号コード」という記載がある。 本件特許の出願時の技術水準において,「暗号」の意味は,「秘密にしたい情報をかき混ぜて(暗号)特定の者以外にはその内容が解らないようにすること。暗号は,情報をかき混ぜる手順(アルゴリズム)とその手順を変化させるパラメータ(鍵)から成る。」となっており,「コード」の意味は,「データを表現するための一定の明確なルールあるいはそのルールに基づい て表現されたもの」となっている(情報通信用語辞典100頁〔乙3〕)。 したがって,本件の特許請求の範囲における「暗号コード」の記載は,「特定の者以外にはその内容が解らないような,アルゴリズムと鍵から成るデータを表現するための一定の明確なルールあるいはそのルールに基づいて表現されたもの」(前記5の〔被告の主張〕参照)を意味している。 者以外にはその内容が解らないような,アルゴリズムと鍵から成るデータを表現するための一定の明確なルールあるいはそのルールに基づいて表現されたもの」(前記5の〔被告の主張〕参照)を意味している。 一方,本件明細書等の段落【0073】の実施例では,「暗号」は4桁の暗号コードの例で説明されているところ,「暗号」という言葉の意味が「暗号」という文字を含む「暗号コード」という言葉を用いて説明されているため,本件特許における「暗号」の意味が不明である。本件明細書等には,段落【0073】以外に「暗号」の定義はなく,同段落において単に「0」又は「1」を組み合わせた4桁のコードが示されているだけであるが,このような4bitコードは「アルゴリズムと鍵から成るデータ」とは何ら関係なく,「特定の者以外にはその内容が解らないような,アルゴリズムと鍵から成るデータを表現するための一定の明確なルールあるいはそのルールに基づいて表現されたもの」というべきものではない。 このように,本件の特許請求の範囲における「暗号コード」が有する通常の意味と,明細書における「暗号コード」についての記載(4bitコード)とが一致しないため,いずれと解すべきか不明であり,その結果,請求項1及び4については特許を受けようとする発明が明確でない。 (2) 以上により,本件発明1及び4は,特許法123条1項4号,同法36条6項2号に基づき特許無効審判により無効にされるべきものである。 〔原告の主張〕本件特許の特許請求の範囲の請求項1(本件発明1)及び請求項4(本件発明4)について,本件明細書等の段落【0019】,【0022】,【0073】及び【図7】には,リセットコードが共通することに起因して隣接する店舗間での使用上問題が発生するという課題を解決するために,一例として4桁 件明細書等の段落【0019】,【0022】,【0073】及び【図7】には,リセットコードが共通することに起因して隣接する店舗間での使用上問題が発生するという課題を解決するために,一例として4桁 の暗号コードを用いて,店舗ごとに異なる解除指示信号を設定することができる旨記載されているのであって,当業者からすれば,本件発明1及び4が明確であることは明らかである。 また,被告は,暗号とは「アルゴリズムと鍵からなるデータ」であるなどと主張するが,一般に,「暗号」とは「秘密を保つために,当事者間にのみ了解されるようにとり決めた特殊な記号・ことば」(広辞苑第4版99頁〔甲5〕)とされており,出願時の技術常識を考慮しても「暗号」の通常の意味と本件明細書等の記載とは何ら矛盾しない。 したがって,本件発明1及び4が明確であることは明らかであって,特許法36条6項2号の規定に反するものではない。 8 争点(3)ア(イ)(本件発明3及び6についての無効理由(明確性要件違反)の存否)について〔被告の主張〕(1) 本件の特許請求の範囲の請求項3(本件発明3)及び請求項7(本件発明6)には,「新暗号コード」という記載がある。 「新暗号コード」とは,「新しい暗号コード」を意味しているものと解されるが,本件明細書には「新暗号コード」についての明確な定義がない上に,前記7の〔被告の主張〕のとおり,「暗号コード」の意味が不明である。そのため,「新暗号コード」の意味も不明であり,その結果,本件発明3及び6については特許を受けようとする発明が明確でない。 (2) 以上により,本件発明3及び6は,特許法123条1項4号,同法36条6項2号に基づき特許無効審判により無効にされるべきものである。 〔原告の主張〕本件明細書等の段落【0066】には (2) 以上により,本件発明3及び6は,特許法123条1項4号,同法36条6項2号に基づき特許無効審判により無効にされるべきものである。 〔原告の主張〕本件明細書等の段落【0066】には「暗号コードを新暗号コードに変更設定する。」と,また段落【0068】には「暗号変更コード信号を受信したときは,新暗号コードに更新する。」と記載されているのであって,「新暗号コ ード」とは「暗号コード」を変更又は更新したものであり,このことは当業者にとって明らかである。 したがって,本件発明3及び6は明確であり,特許法36条6項2号の規定に反するものではない。 9 争点(3)イ(ア)(本件発明1についての無効理由(乙4発明を主引例とする進歩性欠如)の存否)について〔被告の主張〕(1) 本件発明1と乙4発明との対比本件発明1と乙4発明とを対比すると,本件発明1の構成中,構成要件A1,B1,C1,D1,H1及びI1については乙4発明と一致するが,構成要件E1,F1及びG1については,乙4発明と相違している。 すなわち,本件発明1には「受信手段が受信した所定信号及び解除指示信号を識別する識別手段」という構成要件E1が備えられているのに対し,乙4発明には上記識別手段に対応する構成が明記されていない点が相違している(以下「相違点1-1」という。)。 また,本件発明1には「暗号コードが暗号記憶手段に記憶されており,識別手段が識別した解除指示信号に含まれる暗号コード及び暗号記憶手段が記憶する暗号コードが一致するか否かを一致判定手段で判定する」という構成要件F1及びG1があるのに,乙4発明には「予め定められたコード信号がコード信号出力ユニット11から入力されるか否かを判定する」という構成F1’及びG1’のみが記載されている点が 定する」という構成要件F1及びG1があるのに,乙4発明には「予め定められたコード信号がコード信号出力ユニット11から入力されるか否かを判定する」という構成F1’及びG1’のみが記載されている点が相違している(以下「相違点1-2」という。)。 (2) 容易想到性ア相違点1-1については,乙5発明に,構成要件E1に相当する「警告音作動信号と警告音停止信号のキャリアー周波数を同一にして1つの共振回路1で両信号を受信させ,後段の信号処理回路で信号識別を行う」 という構成が開示されている。 また,相違点1-2については,乙5発明に「コードを予め書き込んである指定コード設定回路22」という構成F1”と,「1つの共振回路1で受信して信号処理回路により識別された警告音停止信号を変換し,予め書き込んである指定コード設定回路22で決定されるコードと一致するか否かを一致回路21で判断する」という構成G1”とが開示されている。乙4発明の構成F1’と乙5発明の構成F1”を組み合わせれば,構成F1’のコード信号を構成F1”のようにあらかじめ書き込んだ構成とすることにより,「暗号コードを予め記憶する暗号記憶手段」という本件発明1の構成要件F1が得られる。また,乙5発明の構成G1”では,一つの共振回路1で受信した信号から識別された警告音停止信号を変換し,あらかじめ書き込んである指定コード設定回路22で決定されるコードと一致するか否かを一致回路21で判断しており,このような構成G1”を乙4発明の構成G1’と組み合わせれば,「前記識別手段が識別した解除指示信号に含まれる暗号コード及び前記暗号記憶手段が記憶する暗号コードが一致するか否かを判定する一致判定手段」という本件発明1の構成要件G1が得られる。 イなお,本件発明1における「暗号コード」 指示信号に含まれる暗号コード及び前記暗号記憶手段が記憶する暗号コードが一致するか否かを判定する一致判定手段」という本件発明1の構成要件G1が得られる。 イなお,本件発明1における「暗号コード」は,「特定の者以外にはその内容が解らないような,アルゴリズムと鍵から成るデータを表現するための一定の明確なルールあるいはそのルールに基づいて表現されたもの」を意味していると解すべきところ,当業者が「コード」を「暗号コード」に置き換えることに何ら困難性はない。また,本件発明1における「暗号コード」が,本件明細書等の段落【0073】に記載されているような「0」又は「1」を組み合わせた4桁の「コード」であるとするならば,乙5公報の段落【0031】に開示されている4bitコードと同様に,一般的なコード(ID)と何ら相違ないものである。 ウそして,乙4発明と乙5発明とでは,技術分野が共通していることは明らかである。また,乙4公報の段落【0036】に記載された「各店毎に,それぞれのコード信号を設定することができるので,防犯効果を更に期待することができる。」という効果と,乙5公報の段落【0033】に記載された「例えば店舗毎に警告音停止信号を変え,セキュリテイを高めることが可能となり,また警告音作動信号も同じ構成でコードによる識別が実現できるものである。」という効果も共通している。 エしたがって,乙4発明と乙5発明とを組み合わせることに何ら困難性はなく,十分な動機付けがあるため,本件発明1(請求項1)は,乙4公報及び乙5公報の記載に基づいて当業者が容易に想到することができる。 (3) 以上により,本件発明1は,特許法123条1項2号,同法29条2項に基づき特許無効審判により無効にされるべきものである。 〔原告の主張〕(1) 本 が容易に想到することができる。 (3) 以上により,本件発明1は,特許法123条1項2号,同法29条2項に基づき特許無効審判により無効にされるべきものである。 〔原告の主張〕(1) 本件発明1と乙4発明との対比被告は本件発明1と乙4発明との相違点として構成要件E1,F1及びG1を挙げているが,正しくは構成要件D1,E1,G1及びH1が相違点である。 ア構成要件D1について構成要件D1は「前記受信手段は,前記警報出力手段が作動可能である状態及び警報出力状態の解除を指示する,暗号コードを含む解除指示信号を受信することを可能とする一方」とするものである。 ここで,「前記受信手段」は,構成要件B1及びC1で記載された「受信手段」を引用するものであり,警報出力手段が作動可能である状態及び警報出力状態の解除を指示する暗号コードを含む解除指示信号を受信する一つの受信手段である。これに対し,乙4発明に開示されたタ グは,乙4公報の【図5】に示す第1のアンテナ51に加えて,段落【0054】に記載の第2のアンテナが付設,つまり付属して設けられている。このように,構成要件D1は,一つの前記受信手段で解除指示信号を受信している点で,二つのアンテナによりそれぞれ異なる情報を受信する乙4発明とは相違する。 また,本件発明1は「暗号コードを含む解除指示信号を受信する」ところ,乙4発明では,暗号コードを含む解除指示信号を受信する点は,一切開示されていない。このように,構成要件D1は,暗号コードを含む解除指示信号を受信している点で,そのような信号を受信していない乙4発明とは相違する。 以上のとおり,構成要件D1と乙4発明との間には二つの相違点が存在するから,被告の主張は誤りである。 イ構成要件H1について構成要 そのような信号を受信していない乙4発明とは相違する。 以上のとおり,構成要件D1と乙4発明との間には二つの相違点が存在するから,被告の主張は誤りである。 イ構成要件H1について構成要件H1は,「該一致判定手段が一致すると判定したときは,前記警報出力手段が作動可能である状態及び警報出力状態を解除する解除手段」である。すなわち,構成要件H1は,被告が相違点と判断した構成要件G1の一致判定手段(暗号コードの一致判定)により一致すると判定したことを条件に解除するものであり,当該条件下で解除処理を行う構成要件H1は乙4発明には一切開示されていない。 したがって,構成要件H1は乙4発明との間の相違点である。 (2) 容易想到性ア構成要件E1について被告は,構成要件E1に対応する記載が乙5発明に開示されていると主張する。 この点,構成要件E1は,「前記受信手段が受信した前記所定信号及び前記解除指示信号を識別する」ものである。すなわち,構成要件E1 は,所定信号との識別に加えて,セットコード,暗号変更コード,WTN設定コード,WTO設定コード,VSN設定コード,VSO設定コード,VSO設定コード,第1動作コード,第2動作コード(S10~S24)等と構成要件D1に記載された「警報出力手段が作動可能である状態及び警報出力状態の解除を指示する,暗号コードを含む解除指示信号」とを識別するものである。 これに対し,乙5発明は,乙5公報の段落【0023】に記載のとおり,単に警告音作動信号と警告音停止信号を識別するにすぎず,上記セットコード等と「警報出力手段が作動可能である状態及び警報出力状態の解除を指示する,暗号コードを含む解除指示信号」をも識別する点は開示も示唆もされていない。 したがって,構成要件E1が乙5 記セットコード等と「警報出力手段が作動可能である状態及び警報出力状態の解除を指示する,暗号コードを含む解除指示信号」をも識別する点は開示も示唆もされていない。 したがって,構成要件E1が乙5発明に開示されているとする被告の主張は,失当である。 イ構成要件G1について被告は,乙5公報におけるコードをあらかじめ書き込んである指定コード設定回路22の記載を根拠に,構成要件G1に対応する記載がされていると主張する。 この点,構成要件G1は,「前記識別手段が識別した解除指示信号に含まれる暗号コード及び前記暗号記憶手段が記憶する暗号コードが一致するか否かを判定する」ものである。すなわち,識別手段により,所定信号との識別に加えて,セットコード等と解除指示信号とを識別した後に,当該識別手段が識別した解除指示信号に含まれる暗号コードと,暗号記憶手段が記憶する暗号コードとを比較するのである。 これに対し,乙5発明は,乙5公報の段落【0017】に記載のとおり,後段の信号処理回路で,警告音作動信号と警告音停止信号との信号識別を行う点を特徴としている。具体的には,乙5公報の【図3】が示 すように,キャリアー周波数が同一の警告音作動信号と警告音停止信号とがコンパレータ4に入力される。そして,カウンタ9及びモノステーブルマルチバイブレータ10等の上段の回路群により,警告音作動信号が識別され,カウンタ23,モノステーブルマルチバイブレータ24及び一致回路21等の下段の回路群により,警告音停止信号が識別される。 すなわち,警告音作動信号及び警告音停止信号等は下段の回路群に入力され,一致回路21での各信号の一致判断に成功した場合に,警告音作動信号と警告音停止信号を識別することができるにすぎない。 このように,乙5発明は,警告音作動信号 音停止信号等は下段の回路群に入力され,一致回路21での各信号の一致判断に成功した場合に,警告音作動信号と警告音停止信号を識別することができるにすぎない。 このように,乙5発明は,警告音作動信号と警告音停止信号を識別する過程で警告音停止信号のコードの一致性を判断するだけで,警告音停止信号を識別した後に警告音停止信号のコードの一致性を判断するものではないのに対し,本件発明1は,本件明細書等の【図9】が示すとおり,先に所定信号やセット信号等と解除指示信号とを識別手段により識別し(S10~S24参照,構成要件E1),次に,【図16】が示すとおり,識別手段が識別した解除指示信号に含まれる暗号コードと,暗号記憶手段が記憶する暗号コードとが一致するか否かを判断するものである(S103参照,構成要件G1)。 したがって,本件発明1の構成要件G1は,乙5発明には開示されていない。 ウ構成要件D1について乙5発明は警告音停止信号を受信しているにすぎず,構成要件D1の「前記警報出力手段が作動可能である状態」を指示する信号を受信していない点で,相違する。さらに,乙5発明は,「暗号コードを含む解除指示信号」を受信していない点においても,構成要件D1と相違する。 したがって,構成要件D1も,乙5発明には開示されていない。 エ構成要件H1について 乙5発明は単に警告音の発生と停止とを行うにすぎず,構成要件H1の「前記警報出力手段が作動可能である状態・・・を解除する解除手段」を開示していない。また,上記(1)イで主張したとおり,本件発明1は「該一致判定手段」(構成要件G1,H1)での一致を条件に処理を行うが,構成要件G1の「一致判定手段」が乙5発明に開示されていない以上,構成要件H1も乙5発明に開示されていない。 したがっ 1は「該一致判定手段」(構成要件G1,H1)での一致を条件に処理を行うが,構成要件G1の「一致判定手段」が乙5発明に開示されていない以上,構成要件H1も乙5発明に開示されていない。 したがって,構成要件H1も,乙5発明には開示されていない。 オ動機付けについて乙5発明は,警告音作動信号と警告音停止信号との識別時に一致回路による判断を行って処理を完結させるものであり,その後一致回路は不要であるから,当業者からすれば,本件発明1のように識別手段が識別した後に更に解除指示信号に含まれる暗号コードと暗号記憶手段が記憶する暗号コードが一致するか否かを判断する処理に想到する動機付けは一切存在しない。 カ作用効果乙4発明では,「コード信号の設定タグ1およびコード信号出力ユニット11にそれぞれ備付け,これらの設定機能によって所望のコード信号を設定できるようにしても構わない」(乙4公報の段落【0036】)と記載されているように,コード信号の設定はタグごとにスイッチの設定を手作業で行うもので,店舗の商品に取り付ける多数のタグのコード信号の設定としてはきわめて煩雑であり,しかもタグとユニットの間でコード信号の設定を誤るおそれがある。これに対し,本件発明1においては,「解除指示信号を含む暗号コード」とすることにより,親指示信号発信装置を用いて,複数の盗難防止タグ及び指示信号発信装置の暗号記憶手段に,所定信号やセットコード等との重複を考慮することなく任意の暗号コードを設定することができ,タグと指示信号発信装置の間で コードの設定を誤るおそれもない。 また,乙5発明は,警告音作動信号と警告音停止信号の二つの信号において,警告音停止信号としてコードを識別し,店舗ごとに警告音停止信号を変えることができるだけで,所定信号に加えて るおそれもない。 また,乙5発明は,警告音作動信号と警告音停止信号の二つの信号において,警告音停止信号としてコードを識別し,店舗ごとに警告音停止信号を変えることができるだけで,所定信号に加えてセットコード等の信号との間で解除指示信号との識別はできず,セットコード等の信号を受信する盗難防止タグにおいて店舗ごとに警告音停止信号を変えることはできない。これに対し,本件発明1においては,「解除指示信号を含む暗号コード」とすることにより,暗号コードを任意に設定しても,セットコード等の信号との間で解除指示信号との識別ができ,セットコード等の信号を受信する盗難防止タグにおいても暗号コードを任意に設定することにより店舗ごとに警告音停止信号を変えることができるという,乙5発明にない特有の効果を奏する。 キ小括以上のとおり,被告の主張は,本件発明1と乙4発明との相違点の認定を誤ったものである。そして,乙5発明には相違点の全てが開示されているわけではなく,しかも動機付けも皆無で,作用効果も異なるのであるから,乙4発明及び乙5発明の組合せにより容易に想到できるとした被告の主張は誤りである。 したがって,本件発明1は特許法29条2項の規定に反するものではない。 争点(3)イ(イ)(本件発明2についての無効理由(乙6発明を主引例とする進歩性欠如)の存否)について〔被告の主張〕(1) 本件発明2と乙6発明との対比本件発明2(請求項2)と乙6発明とを対比すると,本件発明2の構成中,構成要件A2及びB2については乙6発明と一致するが,構成要件C2につ いては,構成要件A2及びB2との関係で乙6発明とは相違している。 すなわち,本件発明2は,「盗難防止タグ」という構成要件C2に構成要件A2及びB2が備えられているのに対 要件C2につ いては,構成要件A2及びB2との関係で乙6発明とは相違している。 すなわち,本件発明2は,「盗難防止タグ」という構成要件C2に構成要件A2及びB2が備えられているのに対し,乙6発明では,「物品監視装置」という構成C2’に,本件発明2の構成要件A2及びB2に相当する構成が備えられている点が相違している(以下「相違点2」という,)。 (2) 容易想到性相違点2については,本件発明2の「盗難防止タグ」及び乙6発明の「物品監視装置」が,いずれも物品の盗難を防止するという技術分野で共通していることから,乙6発明の構成要件A2及びB2を盗難防止タグに転用して本件発明2の構成を得ることは,当業者が容易に行い得ることである。このような転用が容易であることは,乙7公報,乙8明細書,乙9明細書,乙10公報,乙11明細書及び乙12公報に示すように,セキュリティに関する技術分野において構成要件A2及びB2が周知技術にすぎないことからも明らかである。 また,乙6公報の第2頁左欄第20行ないし第23行に記載された「物品が所定位置にない場合や,物品が対象のものと異なる場合は,読み取りの情報と収納情報とが不一致になるため,制御装置から表示装置に信号が出力され,その事実を知ることができる。」という効果は,「例えば,他の店舗から盗んできた指示信号発信装置を使用してリセットしようとしても,すぐに露見する。」という本件発明2の効果と共通している。 したがって,本件発明2(請求項2)は,乙6発明に基づいて当業者が容易に想到することができる。 (3) 以上により,本件発明2は,特許法123条1項2号,同法29条2項に基づき特許無効審判により無効にされるべきものである。 〔原告の主張〕(1) 本件発明2と乙6発明との対比 (3) 以上により,本件発明2は,特許法123条1項2号,同法29条2項に基づき特許無効審判により無効にされるべきものである。 〔原告の主張〕(1) 本件発明2と乙6発明との対比 被告は本件発明2と乙6発明との相違点として構成要件C2を挙げているが,構成要件A2及びB2も相違点である。 ア構成要件A2について本件発明2の構成要件A2は「前記一致判定手段が一致しないと判定したときに,」とされ,「前記一致判定手段」は本件発明1の構成要件G1の「前記識別手段が識別した解除指示信号に含まれる暗号コード及び前記暗号記憶手段が記憶する暗号コードが一致するか否かを判定する一致判定手段」を示すものであるところ,乙6発明では,「比較制御部10が,読取り手段4から入力された情報とメモリ部9に登録された情報とを比較して,不一致の場合に,」とされており,両者は相違している。 すなわち,本件発明2の構成要件A2の「前記一致判定手段」では,一致判定の対象となるコードは,解除指示信号であると識別したものであるが,乙6発明では,単に読取り手段4から入力された情報を対象とするものであり,解除指示信号であることを識別しておらず,本件発明2の構成要件A2と相違している。 また,本件発明2の構成要件A2では,「解除指示信号に含まれる暗号コード」について「暗号記憶手段が記憶する暗号コード」が一致するか否かを判定するが,乙6発明では読取り手段4から入力される情報を,「情報の一部分に相違がある場合の外に,物品1が所定位置になく読み取り情報がない場合」を含め,メモリ部9に登録された情報と比較しており,本件発明2の構成要件A2と相違している。 イ構成要件B2について本件発明2の構成要件B2は「警告を出力する警告出力手段を備える」である 」を含め,メモリ部9に登録された情報と比較しており,本件発明2の構成要件A2と相違している。 イ構成要件B2について本件発明2の構成要件B2は「警告を出力する警告出力手段を備える」であるところ,乙6発明では「表示装置6や警報器に信号を出力して警備員等の関係者に通知する」とされており,両者は相違している。 すなわち,本件発明2の構成要件B2は,盗難防止タグ自らが「警告出力手段を備える」ものであるが,乙6発明では,「制御装置」に接続されている「表示装置」に信号を出力するものであり,盗難防止タグに対応する「識別部材」は信号を出力するものではなく,本件発明2の構成要件B2と相違している。 (2) 容易想到性ア構成要件A2について本件発明2の構成要件A2と乙6発明は,上記(1)アのとおり相違しているところ,乙6公報には,一致判定の対象となるコードが解除指示信号であると識別したものであること,「解除指示信号に含まれる暗号コード」について「暗号記憶手段が記憶する暗号コード」が一致するか否かを判定することについて開示がされていない。 すなわち,乙6発明で行われる一致判定は,「物品が所定位置にない場合や,物品が対象のものと異なる場合」を知るために,「常時又は所定時間毎に読取り手段で読取った情報と予め収納された情報とを比較する」ものにすぎず,本件発明2のように,他の店舗から盗んできた指示信号発信装置を使用してリセットする試みについて,解除指示信号に含まれる暗号コードと暗号記憶手段が記憶する暗号コードの不一致判定に警告を出力することにより露見するようにしたものではない。 イ構成要件B2について本件発明2の構成要件B2と乙6発明は,上記(1)イのとおり相違しているところ,乙6公報には,盗難防止タグ自らが「警告 力することにより露見するようにしたものではない。 イ構成要件B2について本件発明2の構成要件B2と乙6発明は,上記(1)イのとおり相違しているところ,乙6公報には,盗難防止タグ自らが「警告出力手段を備える」ことについては開示されていない。 すなわち,他の店舗から盗んできた指示信号発信装置を使用してリセットしようという企ては,販売員の監視を避けて秘密裏に行われるが,盗難防止タグは制御装置等に直接接続されておらず,盗難防止タグ自体 が警告を出力しないと,盗難防止タグに対して当該企てがなされたことを販売員に知らせることができないため,本件発明2の構成要件B2では,盗難防止タグ自らが「警告出力手段を備える」ものとしているが,これらのことは乙6公報には開示されていない。 さらに,被告の主張は,乙5発明を前提に,乙6発明との組合せを主張するものであるが,そもそも乙5発明は「警告音停止信号」を対象とするものであり,コードが一致すれば警告音(ブザー)を停止し,一致しなければ何も出力しないものである(乙5公報の段落【0031】及び【0032】)。このように既にブザーが鳴っている状態で,さらに不一致の場合に警報器に信号を出力する乙6発明を組み合わせる必要性は皆無である。その上,不一致の場合に何も出力しないとする乙5発明に,信号を出力するという逆の乙6発明を組み合わせることは明らかに技術的に矛盾し,当業者にとってみれば乙5発明に乙6発明を組み合わせることは阻害要因となるものである。 ウ構成要件C2について本件発明2の構成要件C2が「盗難防止タグ」であるのに対して,乙6発明は「物品監視装置」である点で相違しているところ,被告は,当該相違点が容易想到であることの根拠として,本件発明2の「盗難防止タグ」と乙6発明の「物品監視 が「盗難防止タグ」であるのに対して,乙6発明は「物品監視装置」である点で相違しているところ,被告は,当該相違点が容易想到であることの根拠として,本件発明2の「盗難防止タグ」と乙6発明の「物品監視装置」がいずれも物品の盗難を防止するという技術分野で共通していることや,乙7公報,乙8明細書,乙9明細書,乙10公報,乙11明細書及び乙12公報に示すように構成要件A2及びB2が周知技術であることなどを挙げる。 しかし,物品の盗難を防止するという技術分野で共通しているといっても,コードの一致判定を行う目的,時期,一致判定を行う対象であるコードの種類・範囲,一致判定の方法,一致判定が不一致となった場合の警告出力等の対応は種々雑多であり,これらの事項をそれぞれ検討・ 選択する必要がある。しかるに,乙7公報,乙8明細書,乙9明細書,乙10公報,乙11明細書及び乙12公報は,単にコード等の一致判定において不一致の場合に信号等を発する点が共通するだけであり,上記の本件発明2の構成要件A2及びB2と乙6発明の相違点については開示されておらず,当該構成が周知技術ではないことは明らかである。 したがって,乙6発明の「物品監視装置」を本件発明2の構成要件C2の「盗難防止用タグ」に転用できるものではない。 エ作用効果について乙6発明は,物品が所定位置にあるのかを判断する目的で情報の一致判定を行い,読み取り情報がない場合を含め不一致の場合に物品が所定位置にないと判断して信号を出力するものであり,本件発明1の「盗難防止対象物に対する取り付け状態及び取り外し状態を検出する検出手段」が「取り外し状態を検出したとき」に,「警報を出力する警報出力手段」に対応する効果にすぎない。 これに対して,本件発明2は,解除指示信号に含まれる暗号コードと暗 取り外し状態を検出する検出手段」が「取り外し状態を検出したとき」に,「警報を出力する警報出力手段」に対応する効果にすぎない。 これに対して,本件発明2は,解除指示信号に含まれる暗号コードと暗号記憶手段に記憶された暗号コードの一致を判定し,不一致の場合に警報を発することにより,他の店舗から盗んできた指示信号発信装置を使用してリセットしようとすることが露見するようにするものであって,物品の取り外し状態を検出して警報を発するものではない。本件発明2は,商品を盗難防止タグから取り外す前段階の警報出力手段が作動可能な状態において解除指示信号が発せられた時点で,解除指示信号に含まれる暗号コードの一致判定により他店舗から盗まれた指示信号発信装置により不正に解除指示信号が発せられたことを捕捉できるようにするものである。 また,本件発明2では,試行錯誤によりリセットコードを知ることは困難であるので,より確実に盗難を防止することができる。すなわち, 他店舗から盗んだ指示信号発信装置を用いて試行錯誤によりコード番号を順次設定,発信し,盗難防止タグが解除状態となるコードを突き止めようとしても,本件発明2では,解除指示信号に含まれる暗号コードと暗号記憶手段に記憶された暗号コードの不一致により警報を発することから,当該試行錯誤による突止め作業によりリセットコードを知る前に事が発覚してしまい,他店舗から指示信号発信装置が盗まれることがあっても当該装置を用いて解除状態に設定することはできず,盗難を防止できる。これに対して,乙6発明は,「物品に識別部材により固有の情報を付加し,その情報に基づいて物品を監視するようにし」,「物品1が所定位置になく読み取り情報がない場合」も不一致と判定するものであって,他店舗から識別部材を盗んで,それを用いて外部か より固有の情報を付加し,その情報に基づいて物品を監視するようにし」,「物品1が所定位置になく読み取り情報がない場合」も不一致と判定するものであって,他店舗から識別部材を盗んで,それを用いて外部から試行錯誤により固有の情報を突き止めることができるようなものではないのであって,本件発明2のように指示信号発信装置が盗難にあった場合を想定し,試行錯誤によりリセットコードを知ることができないように警報を発し,より確実に盗難を防止するものではなく,そのような効果も認められない。 このように,本件発明2と乙6発明の作用効果は異なるものであって,共通するものではない。 オ小括以上のとおり,被告の主張は,本件発明2の構成要件A2及びB2と乙6発明との相違点の認定を誤ったものである。そして,乙6発明の「物品監視装置」を本件発明2の構成要件C2の「盗難防止タグ」に転用できるものではなく,作用効果も異なるから,乙6発明により容易に想到できるとした被告の主張は誤りである。 したがって,本件発明2は特許法29条2項の規定に反するものではない。 11 争点(3)イ(ウ)(本件発明3についての無効理由(乙13・14発明を主引例とする進歩性欠如)の存否)について〔被告の主張〕(1) 本件発明3と乙13・14発明との対比本件発明3(請求項3)と乙13・14発明とを対比すると,本件発明3の構成中,構成要件A3及びB3については乙13・14発明と一致するが,構成要件C3については,構成要件A3及びB3との関係で乙13・14発明とは相違している。 すなわち,本件発明3では「盗難防止タグ」という構成要件C3に構成要件A3及びB3が備えられているのに対し,乙13・14発明では,EASシステム内の「付け札302(英文表記“Tag”) ている。 すなわち,本件発明3では「盗難防止タグ」という構成要件C3に構成要件A3及びB3が備えられているのに対し,乙13・14発明では,EASシステム内の「付け札302(英文表記“Tag”)」という構成C3’及びC3”に,本件発明3の構成要件A3及びB3と同一の構成が備えられている点が相違している(以下「相違点3」という。)。 (2) 容易想到性相違点3については,乙13公報及び乙14明細書に,第1図ないし第15図を参照して「付け札20」の構成が開示されている。また,乙13公報の第11頁左欄第41行ないし右欄第1行及び乙14明細書の第4欄第44行ないし第49行には,上述の「付け札302(英文表記“Tag”)」を含むEASシステム及びその付け札系を,第1図ないし第15図の構成に拡張して適用できる旨が記載されており,この乙13公報及び乙14明細書の内容中の示唆に基づいて,本件発明3の構成要件A3及びB3に相当する構成が備えられた「付け札20」が容易に得られる。 なお,本件発明3における「新暗号コード」は「新しい暗号コード」を意味しており,「暗号コード」は「特定の者以外にはその内容が解らないような,アルゴリズムと鍵から成るデータを表現するための一定の明確なルールあるいはそのルールに基づいて表現されたもの」を意味していると解すべき ところ,当業者が乙13・14発明の「物品ID」を「新暗号コード」に置き換えることに何ら困難性はない。また,本件発明3における「新暗号コード」が,本件明細書等の段落【0073】に記載されているような「0」又は「1」を組み合わせた4桁の「コード」であるとするならば,一般的なコード(ID)と何ら相違ないものである。 したがって,本件発明4(請求項4)は,乙13公報及び乙14明細書の記載に基 「0」又は「1」を組み合わせた4桁の「コード」であるとするならば,一般的なコード(ID)と何ら相違ないものである。 したがって,本件発明4(請求項4)は,乙13公報及び乙14明細書の記載に基づいて当業者が容易に想到することができる。 (3) 以上により,本件発明3は,特許法123条1項2号,同法29条2項に基づき特許無効審判により無効にされるべきものである。 〔原告の主張〕(1) 本件発明3と乙13・14発明との対比被告は本件発明3と乙13・14発明との相違点として構成要件C3を挙げているが,構成要件A3及びB3も相違点である。 ア構成要件A3について本件発明3の構成要件A3は「前記暗号記憶手段は,前記受信手段が受信する,新暗号コードへの変更を指示する暗号変更指示信号により,」であり,記憶手段は「暗号記憶手段」とされ,受信の対象となる信号は「新暗号コードへの変更を指示する暗号変更指示信号」であるのに対して,乙13・14発明は「物品識別RAM364は,RX/TX304が受信する,物品IDのアップデートを指示する信号により,」であり,記憶手段は「物品識別RAM」とされ,受信の対象となる信号は「物品ID及び価格付けデータのアップデートを指示する信号」であって,本件発明3の構成要件A3と相違している。 イ構成要件B3について本件発明3の構成要件B3は「その記憶内容を前記新暗号コードに更新する」であり,更新する記憶内容は「新暗号コード」であるのに対し て,乙13・14発明は「受取った物品IDを物品識別RAM364に記憶する」であり,記憶の対象は「物品ID」であって,本件発明3の構成要件B3と相違している。 (2) 容易想到性ア構成要件A3について本件発明3の構成要件A3の「新暗号コード」の 4に記憶する」であり,記憶の対象は「物品ID」であって,本件発明3の構成要件B3と相違している。 (2) 容易想到性ア構成要件A3について本件発明3の構成要件A3の「新暗号コード」の「暗号コード」とは,解除指示信号に含まれる暗号コードが暗号記憶手段に記憶された暗号コードと一致するか否かを判断し,一致すると判断した場合には警報出力手段が作動可能である状態及び警報出力状態を解除し(本件発明1),一致しないと判断した場合には警告を出力するものであるが(本件発明2),乙13・14発明の「物品ID」が「暗号コード」として当該一致判定に用いられることは,乙13公報及び乙14明細書に開示されていない。 本件発明3の構成要件A3は,「解除指示信号を発信する指示信号発信装置が盗まれたり,解除指示信号が知られた」(本件明細書等の段落【0024】)りした際に暗号コードを新暗号コードに更新するものであるが,乙13・14発明の「物品ID」は「価格付けデータ」とともに「貯蔵に割当てられた」際にアップデートされるにすぎないものである。 イ構成要件B3について乙13公報及び乙14明細書には,本件発明3の構成要件B3の「その記憶内容を前記新暗号コードに更新する」ことは開示されていない。 乙13・14発明の「物品ID」は,「価格付けデータ」とともに「貯蔵に割当てられた」際にアップデートされるものであり,上記「暗号コード」を更新するようなものではない。また,そもそも物品識別(ID)は,物品を特定するための固有のIDであり,物品の種類に応 じて複数の異なる物品識別(ID)が必要となるものであるから,「新暗号コード」とは異なり,店舗ごとに異なるリセットコード(本件明細書等の段落【0020】)を設定することは不可能である。さらには, じて複数の異なる物品識別(ID)が必要となるものであるから,「新暗号コード」とは異なり,店舗ごとに異なるリセットコード(本件明細書等の段落【0020】)を設定することは不可能である。さらには,複数の種類の物品識別(ID)のうち,一の物品識別(ID)がアップデートされた場合も同様に,異なる物品識別(ID)が混在することとなるから,店舗ごとに異なるリセットコードを設定することは不可能である。このように,「物品ID」は「新暗号コード」とは全く性質の異なるものであり,当業者にとってみれば乙13・14発明の「物品ID」を用いて本件発明3に想到する動機付けはない。 ウ構成要件C3について本件発明3の構成要件C3は「請求項1又は2記載の盗難防止タグ。」であり,単なる盗難防止タグではない。また,乙13・14発明では,「付け札302」に本件発明3の構成要件A3及びB3と同一の構成は備えられていない。 さらに,本件各発明は,解除指示信号に含まれる暗号コードが暗号記憶手段に記憶された暗号コードと一致するか否かを判断し,一致すると判断した場合には警報出力手段が作動可能である状態及び警報出力状態を解除し(本件発明1),一致しないと判断した場合には警告を出力するものである(本件発明2)ところ,これを前提に「暗号コード」を更新する「新暗号コード」に関する本件発明3の構成要件A3及びB3に相当する構成については,乙13公報及び乙14明細書には記載はなく,乙13公報及び乙14明細書から本件発明3の構成要件C3の「請求項1又は2記載の盗難防止タグ。」を得ることはできない。 エ作用効果について本件発明3は,指示信号発信装置が盗まれたり,リセットコードが知られたりしても,リセットコードを容易に変更できるので,より確実に 盗難を防止するこ はできない。 エ作用効果について本件発明3は,指示信号発信装置が盗まれたり,リセットコードが知られたりしても,リセットコードを容易に変更できるので,より確実に 盗難を防止することができる(本件明細書等の段落【0024】)が,乙13・14発明では,「物品ID」を「価格付けデータ」とともに「貯蔵に割当てられた」際にアップデートするだけで,本件発明3のように「暗号コード」を「新暗号コード」に更新するものではなく,本件発明3の作用効果は生じない。乙13・14発明の「携帯送信機78」が盗まれるようなことがあると,乙13・14発明のシステムでは,「終了メッセージを含む信号」を更新することは想定されておらず,同機器による不正な操作により警報表示を終了(解除された状態)させることを阻止することができない。 オ小括以上のとおり,被告の主張は,本件発明3の構成要件A3及びB3と乙13・14発明との相違点の認定を誤ったものである。そして,上記相違点は乙13公報及び乙14明細書に開示されておらず,作用効果も異なることから,乙13・14発明により容易に想到できるとした被告の主張は誤りである。 したがって,本件発明3は特許法29条2項の規定に反するものではない。 12 争点(3)イ(エ)(本件発明4についての無効理由(乙4発明を主引例とする進歩性欠如)の存否)について〔被告の主張〕(1) 本件発明4と乙4発明との対比本件発明4(請求項4)と乙4発明とを対比すると,本件発明4の構成中,構成要件C4については乙4発明と一致するが,構成要件A4及びB4については,乙4発明と相違している。 すなわち,本件発明4は「暗号記憶手段が暗号コードを記憶している」という構成要件A4及びB4を備えるのに対し,乙4発明では「コード信 が,構成要件A4及びB4については,乙4発明と相違している。 すなわち,本件発明4は「暗号記憶手段が暗号コードを記憶している」という構成要件A4及びB4を備えるのに対し,乙4発明では「コード信号発 生器41がコード信号を発生する」という構成A4’及びB4’となっている点のみが相違している(以下「相違点4」という。)。 (2) 容易想到性相違点4について,乙4発明に開示されたコード信号発生器41は,乙4公報の段落【0016】にも記載のとおり,あらかじめ定められたコード信号を発生するものであり,その作用及び機能は本件発明4の「暗号コードを記憶する暗号記憶手段」と均等のものといえることから,乙4発明の「コード信号発生器41」という構成A4’を本件発明4の「暗号記憶手段」という構成要件A4に置換することは,当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。 なお,本件発明4における「暗号コード」は,「特定の者以外にはその内容が解らないような,アルゴリズムと鍵から成るデータを表現するための一定の明確なルールあるいはそのルールに基づいて表現されたもの」を意味していると解すべきところ,当業者が乙4発明の「コード信号」を「暗号コード」に置き換えることに何ら困難性はない。また,本件発明4における「暗号コード」が,本件明細書等の段落【0073】に記載されているような「0」又は「1」を組み合わせた4桁の「コード」であるとするならば,一般的なコード(ID)と何ら相違ないものであり,乙4発明の「コード信号」と実質的に同一である。 また,乙4公報の段落【0036】に記載された「各店毎に,それぞれのコード信号を設定することができるので,防犯効果を更に期待することができる。」という効果は,「店舗毎に異なる解除指示信号を発信することができ,より確 落【0036】に記載された「各店毎に,それぞれのコード信号を設定することができるので,防犯効果を更に期待することができる。」という効果は,「店舗毎に異なる解除指示信号を発信することができ,より確実に盗難を防止することができる。」という本件発明4の効果と共通している。 したがって,作用及び機能並びに効果の共通性に鑑みれば,本件発明4(請求項4)は,乙4発明に基づいて当業者が容易に想到することができる。 (3) 以上により,本件発明4は,特許法123条1項2号,同法29条2項に基づき特許無効審判により無効にされるべきものである。 〔原告の主張〕(1) 本件発明4と乙4発明との対比被告は本件発明4と乙4発明との相違点として,構成要件A4及びB4を挙げ,本件発明4は「暗号記憶手段が暗号コードを記憶している」という構成要件A4及びB4を備えるのに対し,乙4発明では,「コード信号発生器41がコード信号を発生する」という構成A4’及びB4’となっている点のみが相違していると主張する。 しかし,以下のとおり,上記の点以外にも相違点が存在する。 ア構成要件A4について本件発明4の構成要件A4は「請求項1~3の何れかに記載の盗難防止タグが備える受信手段が受信すべき解除指示信号に含めるための暗号コードを記憶する暗号記憶手段」であり,当該解除指示信号を受信する「請求項1~3の何れかに記載の盗難防止タグ」は,乙4発明の「タグ1」とは相違している。すなわち,乙4発明の「タグ1」は,①本件発明1の盗難防止タグと異なるうえに,②あらかじめ定められたものではないコード信号が入力されても本件発明2のように警告を出力するものではなく,③本件発明3のように暗号記憶手段を「新暗号コード」に更新するものでもない。 また,本件発明4の構 め定められたものではないコード信号が入力されても本件発明2のように警告を出力するものではなく,③本件発明3のように暗号記憶手段を「新暗号コード」に更新するものでもない。 また,本件発明4の構成要件A4は,「解除指示信号に含めるための暗号コード」であり,「暗号コード」は「解除指示信号」全体ではなくその一部である(本件明細書等の段落【0073】)。これに対して,乙4公報では,「予め定められたコード信号を発生して」(乙4公報の段落【0016】),「コード信号出力ユニット11からのコード信号を入力し」(同【0024】)と記載されていることから明らかなよう に,警報動作を解除する信号全体を「コード信号」として「入力して識別」するもので,被告が主張するように「電波信号に含めるためのコード信号」ではなく,「電波信号であるコード信号」であり,この点で本件発明4の構成要件A4と相違している。 イ構成要件B4について本件発明4の構成要件B4は「前記解除指示信号を,該暗号記憶手段が記憶する暗号コードを含めて発信する発信手段とを備えることを」であり,「暗号コード」は「含めて発信する」ものである。 これに対して,乙4発明は,「電波信号を,コード信号発生器41が発生するコードを送信するアンテナとを備えることを」であり,被告が主張するように「コード信号を含めて送信する」ものではなく,警報動作を解除する信号全体を「コード信号」とするもので,本件発明4の構成要件B4と相違している。 (2) 容易想到性ア構成要件A4について本件発明4の構成要件A4の「暗号記憶手段」は,「解除指示信号」全体ではなくその一部である「暗号コード」を記憶するものであり,それにより「解除指示信号」について,①本件発明1の盗難防止タグでは,「暗号コード」 構成要件A4の「暗号記憶手段」は,「解除指示信号」全体ではなくその一部である「暗号コード」を記憶するものであり,それにより「解除指示信号」について,①本件発明1の盗難防止タグでは,「暗号コード」を任意に設定しても「解除指示信号」とセット信号等とを識別することができ,②本件発明2の盗難防止タグでは,他店舗から盗んできた指示信号発信装置を使用してリセットしようとした場合,当該リセット信号を解除指示信号と識別したうえで暗号信号が一致しないと判定し,警告を出力することができ,③本件発明3の盗難防止タグでは,「暗号コード」を「新暗号コード」に更新しても,①及び②の識別ができる。 これに対し,乙4発明では,警報動作を解除する信号全体を「コード 信号」とすることから,「コード信号発生器41」も信号全体を発生する機器であり,上記①ないし③の識別はできないのであって,両者の作用及び機能は均等とはいえず,当業者が乙4発明の「コード信号発生器41」を本件発明4の「暗号記憶手段」に置換することはできない。 イ作用効果について乙4発明ではコード信号の設定はタグごとにスイッチの設定を手作業で行うもので,店舗の商品に取り付ける多数のタグのコード信号の設定としては極めて煩雑であり,しかもタグとユニットの間でコード信号の設定を誤るおそれがあるが,本件発明4においては,「解除指示信号に含めるための暗号コード」,「暗号コードを含めて発信する発信手段」とすることにより,親指示信号発信装置を用いて,複数の盗難防止タグ及び指示信号発信装置の暗号記憶手段に,所定信号やセットコード等との重複を考慮することなく任意の暗号コードを設定することができ,タグと指示信号発信装置の間でコードの設定を誤るおそれもない。 また,本件発明4では,店舗ごとに異なる解除指示 信号やセットコード等との重複を考慮することなく任意の暗号コードを設定することができ,タグと指示信号発信装置の間でコードの設定を誤るおそれもない。 また,本件発明4では,店舗ごとに異なる解除指示信号を発信するようにしても,他店舗から盗んできた指示信号発信装置を使用してリセットしようとした場合,当該リセット信号を解除指示信号と識別したうえで暗号信号が一致しないと判定し,警告を出力することができるが,乙4発明では当該識別はできず,他店舗から盗んできた出力ユニットにより警報を解除しようとする企みを把握することはできない。 このように,本件発明4と乙4発明の作用効果は異なるもので,共通するものではない。 ウ小括以上のとおり,被告の主張は,本件発明4と乙4発明との相違点の認定を誤ったものであり,作用効果も異なることから,乙4発明により容易に想到できるとした被告の主張は誤りである。 したがって,本件発明4は特許法29条2項の規定に反するものではない。 13 争点(3)イ(オ)(本件発明6についての無効理由(乙13・14発明を主引例とする進歩性欠如)の存否)について〔被告の主張〕(1) 本件発明6と乙13・14発明との対比本件発明6(請求項7)と乙13・14発明とを対比すると,本件発明6の構成中,構成要件A6及びB6については乙13・14発明と一致するが,構成要件C6については,構成要件A6及びB6との関係で乙13・14発明とは相違している。 すなわち,本件発明6は,「指示信号発信装置」という構成要件C6に構成要件A6及びB6が備えられているのに対し,乙13・14発明では,EASシステム内の「付け札302(英文表記“Tag”)」という構成C6’及びC6”に,本件発明3の構成要件A6及びB6と同一の構成 成要件A6及びB6が備えられているのに対し,乙13・14発明では,EASシステム内の「付け札302(英文表記“Tag”)」という構成C6’及びC6”に,本件発明3の構成要件A6及びB6と同一の構成が備えられている点が相違している(以下「相違点6-1」という。)。 (2) 容易想到性相違点6-1については,乙13公報及び乙14明細書に,第1図ないし第15図を参照して「付け札20」及び「携帯送信機78」の構成が開示されている。また,乙13公報の第11頁左欄第41行ないし右欄第1行及び乙14明細書の第4欄第44行ないし第49行には,上述の「付け札302(英文表記“Tag”)」を含むEASシステム及びその付け札系を,第1図ないし第15図の構成に拡張して適用できる旨が記載されている。 この乙13公報及び乙14明細書の内容中の示唆に基づいて,本件発明6の構成要件A6及びB6に相当する構成が備えられた「付け札20」が得られるが,付け札20に適用される構成を,同じシステム内の携帯送信機78に転用することに何ら困難性はない。付け札20と携帯送信機78はセット で使用されるものであり,付け札20において物品IDをアップデートする場合には,携帯送信機78においても当然に物品IDのアップデートが必要になることからも,上記のような転用は当業者が容易に行い得るものである。 なお,本件発明6における「新暗号コード」は「新しい暗号コード」を意味しており,「暗号コード」は「特定の者以外にはその内容が解らないような,アルゴリズムと鍵から成るデータを表現するための一定の明確なルールあるいはそのルールに基づいて表現されたもの」を意味していると解すべきところ,当業者が乙13・14発明の「物品ID」を「新暗号コード」に置き換えることに何ら困難性はない。ま ための一定の明確なルールあるいはそのルールに基づいて表現されたもの」を意味していると解すべきところ,当業者が乙13・14発明の「物品ID」を「新暗号コード」に置き換えることに何ら困難性はない。また,本件発明6における「新暗号コード」が,本件明細書等の段落【0073】に記載されているような「0」又は「1」を組み合わせた4桁の「コード」であるとするならば,一般的なコード(ID)と何ら相違ないものである。 したがって,本件発明6(請求項7)は,乙13公報及び乙14明細書の記載に基づいて,当業者が容易に想到することができる。 (3) 以上により,本件発明6は,特許法123条1項2号,同法29条2項に基づき特許無効審判により無効にされるべきものである。 〔原告の主張〕(1) 本件発明6と乙13・14発明との対比被告は,本件発明6と乙13・14発明との相違点として構成要件C6を挙げているが,構成要件A6及びB6も相違点である。 ア構成要件A6について本件発明6の構成要件A6は「請求項6記載の親指示信号発信装置が発信する暗号変更指示信号を受信する受信手段を備え,」で,受信する信号は「請求項6記載の親指示信号発信装置が発信する暗号変更指示信号」である。 これに対し,乙13・14発明は「送信機324が送信する信号を受 信するRX/TX304を備え,」で,受信する信号は「送信機324が送信する信号」であり,本件発明6の構成要件A6と相違している。 イ構成要件B6について本件発明6の構成要件B6は「前記暗号記憶手段は,該受信手段が受信した暗号変更指示信号に含まれる新暗号コードにより記憶内容を更新する」で,更新する記憶内容は「暗号変更指示信号に含まれる新暗号コード」である。 これに対し,乙13・14発明は「物 受信手段が受信した暗号変更指示信号に含まれる新暗号コードにより記憶内容を更新する」で,更新する記憶内容は「暗号変更指示信号に含まれる新暗号コード」である。 これに対し,乙13・14発明は「物品識別RAM364は,RX/TX304が受信した信号に含まれる物品IDおよび価格付けデータにより記憶内容をアップデートする,」で,アップデートする記憶内容は「物品IDおよび価格付けデータ」であり,本件発明6の構成要件B6と相違している。なお,「物品ID」と本件発明6の「新暗号コード」とが全く性質の異なるものであることは,本件発明3についての前記11の〔原告の主張〕で述べたとおりである。 ウ構成要件C6について乙13・14発明の携帯送信機78は,終了メッセージの信号を送信するものにすぎず,当該送信をするために携帯送信機78に物品IDの情報は必要ではなく,付け札が貯蔵に割当てられるごとに物品IDをアップデートするようなこともしない。また,乙13公報及び乙14明細書には,携帯送信機78に受信機能を備えていることは記載されておらず,物品IDをアップデートすることは機能的にもできないし,物品IDのアップデートを携帯送信機78で行うとすると,付け札全てについて貯蔵に割り当てられるごとに行うことになり,膨大なメモリーとバッテリーを消費することになるが,携帯送信機でそのような消費に耐え得ることは困難である。これらのことからすれば,付け札20の構成を携帯送信機78に転用できるものではない。 このように,乙13・14発明の「付け札302(英文表記“Tag”)」と本件発明6の構成要件C6の「指示信号装置」が相違することは明らかである。 (2) 容易想到性ア構成要件A6及びB6について乙13公報及び乙14明細書の第1図ないし第 記“Tag”)」と本件発明6の構成要件C6の「指示信号装置」が相違することは明らかである。 (2) 容易想到性ア構成要件A6及びB6について乙13公報及び乙14明細書の第1図ないし第15図には,本件発明6の構成要件A6及びB6の「暗号変更指示信号」について開示されておらず,同図の構成から本件発明6の構成要件A6及びB6の構成に拡張できるものではない。 イ動機付けについて乙13・14発明の携帯送信機78は,終了メッセージの信号を送信するものにすぎず,物品ID,識別コードを記憶し,更新する作用,機能について乙13公報及び乙14明細書には開示されていないのであって,付け札20に適用される構成を,同じシステム内の携帯送信機78に転用することの動機付けはない。 ウ作用効果について本件発明6では,解除指示信号を発信する他の指示信号発信装置が盗まれたり,解除指示信号の暗号コードが知られたりしても,暗号コードを容易に変更でき,より確実に盗難を防止することができる。 これに対して,乙13・14発明では,このような効果について開示されていない。 さらに,本件発明6は,解除指示信号に含まれる暗号コードを新暗号コードに更新するものであり,複数の種類のコード信号を受信する盗難防止タグにおいて,コード信号を識別することができるが,乙13・14発明はコード信号全体を更新するものであり,当該識別を行うことができない。 エ小括以上のとおり,被告の主張は,本件発明6と乙13・14発明との相違点の認定を誤ったものである。そして,乙13・14発明を本件発明6に転用する動機付けもなく,作用効果も異なることから,乙13・14発明により容易に想到することができるとした被告の主張は誤りである。 したがって,本件発明 。そして,乙13・14発明を本件発明6に転用する動機付けもなく,作用効果も異なることから,乙13・14発明により容易に想到することができるとした被告の主張は誤りである。 したがって,本件発明6は特許法29条2項の規定に反するものではない。 14 争点(3)イ(カ)(本件発明6についての無効理由(乙15発明を主引例とする進歩性欠如)の存否)について〔被告の主張〕(1) 本件発明6と乙15発明との対比本件発明6と乙15発明とを対比すると,本件発明6の構成中,構成要件A6及びB6については乙15発明と一致するが,構成要件C6については,構成要件A6及びB6との関係で乙15発明とは相違している。 すなわち,本件発明6は,「指示信号発信装置」という構成要件C6に構成要件A6及びB6が備えられているのに対し,乙15発明では,ベースユニット700(英文表記“baseunit”)とともに利用装置705(英文表記“utilizationdevice”)を制御する「ポータブルユニット200(英文表記“portableunit”)」という構成C6'''に,本件発明6の構成要件A6,B6と同一の構成が備えられている点が相違している(以下「本件相違点6-2」という。)。 (2) 容易想到性相違点6-2については,乙13公報及び乙14明細書に,第1図ないし第15図を参照して「携帯送信機78」の構成が開示されている。この携帯送信機78は,送信ユニット16a,16bとともに付け札20を制御する 指示信号発信装置であり,その作用及び機能が乙15発明に開示された「ポータブルユニット705」と一致している。したがって,乙13公報又は乙14明細書と乙15発明とを組み合わせることに何ら困難性はなく,十分な動機付けがある。 なお 機能が乙15発明に開示された「ポータブルユニット705」と一致している。したがって,乙13公報又は乙14明細書と乙15発明とを組み合わせることに何ら困難性はなく,十分な動機付けがある。 なお,本件発明6における「新暗号コード」は「新しい暗号コード」を意味しており,「暗号コード」は「特定の者以外にはその内容が解らないような,アルゴリズムと鍵から成るデータを表現するための一定の明確なルールあるいはそのルールに基づいて表現されたもの」を意味していると解すべきところ,当業者が乙13公報及び乙14明細書の「物品ID」を「新暗号コード」に置き換えることに何ら困難性はない。また,本件発明6における「新暗号コード」が,本件明細書等の段落【0073】に記載されているような「0」又は「1」を組み合わせた4桁の「コード」であるとするならば,一般的なコード(ID)と何ら相違ないものである。 したがって,本件発明6(請求項6)は,乙15発明と乙13公報及び乙14明細書の記載とに基づいて,当業者が容易に想到することができる。 (3) 以上により,本件発明6は,特許法123条1項2号,同法29条2項に基づき特許無効審判により無効にされるべきものである。 〔原告の主張〕(1) 本件発明6と乙15発明との対比被告は本件発明6と乙15発明との相違点として構成要件C6を挙げているが,構成要件A6及びB6も相違点である。 ア構成要件A6について本件発明6の構成要件A6は「請求項6記載の親指示信号発信装置が発信する暗号変更指示信号を受信する受信手段を備え,」で,受信する信号は「請求項6記載の親指示信号発信装置が発信する暗号変更指示信号」である。 これに対し,乙15発明は「ベースユニット700が発信する信号を受信する非同期通信ポート2 で,受信する信号は「請求項6記載の親指示信号発信装置が発信する暗号変更指示信号」である。 これに対し,乙15発明は「ベースユニット700が発信する信号を受信する非同期通信ポート205を備え,」で,受信する信号は「ベースユニット700が発信する信号」であり,本件発明6の構成要件A6と相違している。 すなわち,乙15発明において受信する信号の「ベースユニット700が発信する信号」にいう「ベースユニット700」は,以下のとおり,本件発明6の構成要件A6の「親指示信号発信装置」とは相違するものである。 (ア) 乙15発明のベースユニットは,ガレージドア制御装置のリモートガレージドアオペレータに用いるものである。そして,ガレージドアの制御においては,自らが識別コードを送信するものではなく,ポータブルユニットから送信された識別コードを受信するものであるから,「指示信号発信装置」ではない。 (イ) 本件発明6の構成要件A6の「親指示信号発信装置」は,販売店の日常業務において警報動作を解除するために使用されるものではなく,盗まれることがないように厳重に保管され,「暗号コード」を変更する必要が生じた場合に使用される装置であるが,乙15発明のベースユニットは,ガレージドア制御装置として日常の業務に使用されており,ベースユニットを不正に使用してポータブルユニットの識別コードを変更されるおそれがある。 (ウ) 本件発明6の構成要件A6の「親指示信号発信装置」は,「指示信号発信装置」についても同時に複数の装置で暗号変更指示信号を受信することができると考えられるが(本件明細書等の段落【0070】),乙15発明のベースユニットは,同時に複数のポータブルユニットに識別コードを送信することはできず,本件発明6の構成要件A6の「親指示信号 とができると考えられるが(本件明細書等の段落【0070】),乙15発明のベースユニットは,同時に複数のポータブルユニットに識別コードを送信することはできず,本件発明6の構成要件A6の「親指示信号発信装置」とは相違している。 (エ) 乙15発明では,「発信する信号」も「識別コード」全体であって,本件発明6の構成要件A6のように「解除指示信号」に含まれその一部である「暗号コード」を「新暗号コード」に変更する「暗号変更指示信号」ではなく,本件発明6の構成要件A6の受信する信号と相違している。乙15発明では,ガレージドア制御装置のリモートガレージドアオペレータに用いるものであるため,受信するコード信号は単一の種類であり,コード信号を識別する必要はないが,本件発明6のように複数の種類のコード信号を送受信する場合には,識別コード全体を送受信するのでは,解除指示信号,暗号変更指示信号,その他のコード信号と識別することはできず,本件発明6の作用効果は得られない。 (オ) 本件発明6の構成要件A6の「親指示信号発信装置」は盗難防止タグにも新暗号コードを含めた暗号変更指示信号を発信するものであり,指示信号発信装置と盗難防止タグにおいて,同じ新暗号コードに更新できるようにするものであるが,乙15発明のベースユニットは,同機の設定により識別コードを更新し,更新した識別コードをポータブルユニットに送信するだけであって,単独で設定機能を備えていない指示信号発信装置と盗難防止タグにおいて,同じ新暗号コードに更新できるようにする技術思想はない。 イ構成要件B6について本件発明6の構成要件B6は「前記暗号記憶手段は,該受信手段が受信した暗号変更指示信号に含まれる新暗号コードにより記憶内容を更新する」で,更新する記憶内容は「暗号変更指示信号に 要件B6について本件発明6の構成要件B6は「前記暗号記憶手段は,該受信手段が受信した暗号変更指示信号に含まれる新暗号コードにより記憶内容を更新する」で,更新する記憶内容は「暗号変更指示信号に含まれる新暗号コード」である。 これに対し,乙15発明は「メモリは,非同期通信ポート205が受信したIDコード信号により記憶内容を更新する」で,更新する記憶内容は「IDコード信号」全体であり,本件発明6の構成要件B6と相違 している。 ウ構成要件C6についてまず,乙15発明のベースユニットには本件発明6の構成要件A6及びB6と同一の構成が備えられておらず,本件発明6の構成要件C6と相違する。 次に,本件発明6の構成要件C6は,「請求項4又は5記載の指示信号発信装置」であり,盗難防止タグに暗号コードを含めた解除指示信号を発信するものである。これに対して,乙15発明のポータブルユニット200は,ベースユニット700に識別コードを送信するものであり,本件発明6の構成要件C6と相違している。 また,乙15発明のベースユニット700は,ガレージドア制御装置のリモートガレージドアオペレータに用いるものであるため,受信するコード信号は単一の種類であり,コード信号を識別する必要はないが,本件発明6の構成要件C6では,複数の種類のコード信号を受信する盗難防止タグに解除指示信号を発信するものとは異なるものである。 そして,本件発明6の構成要件C6の「指示信号発信装置」は,盗難防止タグと対で使用されるものであり,指示信号発信装置のみの解除指示信号に含まれる暗号コードを更新するだけでは意味はなく,盗難防止タグについても親指示信号発信装置により解除指示信号に含まれる暗号コードを更新することが必要であり,同じ暗号コードが更新された盗難 指示信号に含まれる暗号コードを更新するだけでは意味はなく,盗難防止タグについても親指示信号発信装置により解除指示信号に含まれる暗号コードを更新することが必要であり,同じ暗号コードが更新された盗難防止タグに対して,指示信号発信装置は解除指示信号を発信するという関係にある。これに対して,乙15発明のベースユニット700においては,同機において識別コードを設定して更新し,更新した識別コードをポータブルユニット200に送信してその識別コードを更新し,ポータブルユニット200は更新された識別コードをベースユニット700に送信するものであり,指示信号発信装置とはコードの更新関係が異な るものである。この点でも,本件発明6の構成要件C6の「指示信号発信装置」と乙15発明のポータブルユニットとは相違する。 (2) 容易想到性ア構成要件C6について乙13・14発明の携帯送信機78は,終了メッセージの信号を送信するものにすぎず,同機において物品IDのアップデートが行われるものではなく,ポータブルユニット200を携帯送信機78に転用しても,本件発明6の構成要件C6の「指示信号発信装置」を得られるものではない。 イ動機付けについて乙13・14発明の携帯送信機78は,終了メッセージの信号を送信するものにすぎず,物品ID,識別コードを記憶し,更新する作用,機能について乙13公報及び乙14明細書には開示されていないのであって,①付け札20に適用される構成を,同じシステム内の携帯送信機78に転用すること,②乙13・14発明と乙15発明とを組み合わせることの動機付けはない。 ウ作用効果について本件発明6では,解除指示信号を発信する他の指示信号発信装置が盗まれたり,解除指示信号の暗号コードが知られたりしても,暗号コードを容 組み合わせることの動機付けはない。 ウ作用効果について本件発明6では,解除指示信号を発信する他の指示信号発信装置が盗まれたり,解除指示信号の暗号コードが知られたりしても,暗号コードを容易に変更でき,より確実に盗難を防止することができる。 これに対して,乙13・14発明では,このような効果について開示されていない。また,乙15発明は,ガレージドア制御装置のリモートガレージドアオペレータに用いるもので,指示信号発信装置が盗まれたり,解除指示信号の暗号コードが知られたりした場合に,複数の盗難防止タグ及び指示信号発信装置の暗号コードを更新することについては開示されていない。 さらに,本件発明6は,解除指示信号に含まれる暗号コードを新暗号コードに更新するものであり,複数の種類のコード信号を受信する盗難防止タグにおいて,コード信号を識別することができるが,乙13・14発明及び乙15発明はコード信号全体を更新するものであり,当該識別を行うことができない。 エ小括以上のとおり,被告の主張は,本件発明6と乙15発明との相違点の認定を誤ったものである。そして,乙15発明と乙13・14発明を結び付け転用する動機付けもなく,作用効果も異なることから,乙15発明及び乙13・14発明により容易に想到することができるとした被告の主張は誤りである。 したがって,本件発明6は特許法29条2項の規定に反するものではない。 争点(4)ア(本件訂正が訂正要件を満たしているか)について〔原告の主張〕(1) 本件訂正の訂正事項はいずれも,①特許請求の範囲の減縮を目的とし,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず,特許法134条の2第9項で読み替えて準用す いずれも,①特許請求の範囲の減縮を目的とし,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず,特許法134条の2第9項で読み替えて準用する同法126条6項に適合するものであり,②願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,同法134条の2第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。 (2) 訂正事項1についてア 「複数の指示信号を受信する盗難防止タグ」とする訂正について(ア) 被告は,訂正事項1によって請求項1に付け加えられた「複数の指示信号」という文言は,本件明細書等には何ら記載されておらず,「指示信号」の定義すら明確ではないなどと主張する。 しかし,本件明細書等の段落【0046】,【0057】,【0065】,【0067】,【0069】,【0073】,【0083】,【図7】,【図9】ないし【図18】の記載からも明らかなように,本件明細書等には盗難防止タグが複数の指示信号を受信することが記載されている。 また,本件明細書等の上記各記載から,「指示信号」が盗難防止タグが定められた特定の動作を行うことを指示する信号を意味することは明らかである。 しかも,「複数の指示信号を受信する」との訂正は,複数の指示信号を受信する盗難防止タグであることを具体的に特定し,さらに限定するものにすぎず,解除指示信号以外の指示信号の種類,機能等を問題とするものではなく,当該指示信号は指示信号であれば足りるものである。 そして,本件明細書等に記載の各指示信号は例示として認識すべきものであるから,本件明細書等に記載されていない指示信号を含むとしても,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であることは明ら 等に記載の各指示信号は例示として認識すべきものであるから,本件明細書等に記載されていない指示信号を含むとしても,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であることは明らかである。 (イ) 被告は,訂正後の請求項1(本件訂正発明1)では「複数の指示信号を受信する」という動作の主体が明確でない,すなわち,「前記受信手段が複数の指示信号を受信する」とは規定されておらず,他の受信手段(例えば他のアンテナなど)が複数の信号を受信することも含む文言となっているなどと主張する。 しかし,本件訂正発明1の記載からすれば,信号の受信手段としては「非接触で信号を受信する受信手段」のみしか規定されておらず,本件訂正発明1の盗難防止タグは,当該受信手段により信号を受信する構成と理解すべきものであり,「複数の指示信号」も当然,当該受信手段から受信することになる。しかも,被告が例とする「他のアンテナ」も 「非接触で信号を受信する受信手段」に他ならず,他の受信手段が信号を受信することを意味するものではない。また,「複数の指示信号」が他の受信手段により受信し,それが機能を拡張又は変更するものであれば,本件訂正発明1は「非接触で信号を受信する受信手段」が構成とされていることとの対応関係からして同様に他の受信手段も構成を明示する必要があるはずであり,当該構成が規定されていない本件訂正発明1が当該構成を含むものと解する余地はなく,被告が主張するように前記受信手段以外の受信手段が複数の指示信号を受信するものを含むものでもなければ,盗難防止タグの機能を拡張又は変更するものでもない。 (ウ) 被告は,「複数の指示信号」が他の発明特定事項といかなる関連性を有しているのか規定されていないため,盗難防止タグが複数の指示信号を受信すること 止タグの機能を拡張又は変更するものでもない。 (ウ) 被告は,「複数の指示信号」が他の発明特定事項といかなる関連性を有しているのか規定されていないため,盗難防止タグが複数の指示信号を受信することに何ら技術的意義はなく,仮に,識別手段が,解除指示信号を所定信号以外の他の信号と識別することができるという技術的意義を有するものであるとすれば,所定信号及び解除指示信号を識別するにすぎない「識別手段」の機能を拡張又は変更するものであるなどと主張する。 しかし,「複数の指示信号を受信する」との訂正は,本件訂正発明1における盗難防止タグが複数の指示信号を受信する盗難防止タグであることを具体的に特定し,さらに限定し,所定信号と解除指示信号のみしか受信しない盗難防止タグと異なるものであることを明確にするものであり,その技術的意義は明らかである。 また,「複数の指示信号を受信する」との訂正は,複数の指示信号を受信する盗難防止タグであることを具体的に特定し,さらに限定するにすぎず,また訂正前の「識別手段」とは特定の固定された機能に限定されるものではなく,複数の指示信号を受信することに対応した識別手段としての機能を備えるものも含むものであって,「識別手段」自体を変 更することにはならず,当該訂正により「識別手段」の機能を拡張又は変更することになるものでない。 そもそも,訂正前の本件発明1にいう「前記受信手段が受信した前記所定信号及び前記解除指示信号を識別する識別手段」とは,単に「所定信号」と「解除指示信号」との二つの信号との間でのみ識別するものではなく,「非接触で信号を受信する受信手段」が受信し得る信号と受信手段が受信した「所定信号」と,「非接触で信号を受信する受信手段」が受信し得る信号と当該受信手段が受信した「解除指示信号」とをそ のではなく,「非接触で信号を受信する受信手段」が受信し得る信号と受信手段が受信した「所定信号」と,「非接触で信号を受信する受信手段」が受信し得る信号と当該受信手段が受信した「解除指示信号」とをそれぞれ識別するものであり,本件訂正前から当該意味であることは明らかであって,本件訂正により「識別手段」の機能が拡張され又は変更されるようなものではない。 そして,仮に,「識別手段」の当該意味が明瞭でなく,当該訂正により当該意味が明瞭になったとしても,それは「明瞭でない記載の釈明」にすぎず,文理上「識別手段」が所定信号と解除指示信号を識別するとしか解せられないところで,当該意味に変更するようなものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 イ 「暗号コードを一部に含む解除指示信号」とする訂正について(ア) 被告は,「暗号コードを一部に含む」という文言は本件明細書等には何ら記載されておらず,そのため「解除指示信号」が暗号コード以外にいかなるコードを含むものであるか明確でなく,本件明細書等に記載されたコード以外のコードを含む文言となっているなどと主張する。 しかし,本件明細書等の段落【0073】及び【図7】の記載からは,解除指示信号(リセットコード)が暗号コードを一部に含むことは明らかである。 また,解除指示信号のうち暗号コード以外のコードは,本件明細書等の上記記載からすれば,当該コード部分(D0,D1)が他の指示信号 のコードの当該部分(D0,D1)と重複せず,あらかじめ特定されたものであることも明らかである。 しかも,「暗号コードを一部に含む解除指示信号」との訂正は,解除指示信号が暗号コードを一部に含んだ解除指示信号であることを具体的に特定し,さらに限定するものにすぎず,解除指示信号の暗号コード 。 しかも,「暗号コードを一部に含む解除指示信号」との訂正は,解除指示信号が暗号コードを一部に含んだ解除指示信号であることを具体的に特定し,さらに限定するものにすぎず,解除指示信号の暗号コード以外のコードの種類,機能等を問題とするものではなく,当該コードは解除指示信号の暗号コード以外のものであれば足りるものである。そして,本件明細書等に記載の各指示信号は例示として認識すべきものであるから,本件明細書等に記載されていないコードを含むとしても,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であることは明らかである。 (イ) また,被告は,「暗号コードを一部に含む解除指示信号」において,暗号コード以外のコードがいかなるコードであるか明確でなく,暗号コード以外のコードが他の発明特定事項といかなる関連性を有しているのか規定されていないため,解除指示信号が暗号コードを一部に含むことに何ら技術的意義はなく,仮に,識別手段が,暗号コード以外のコードを用いることにより,解除指示信号を所定信号以外の他の信号と識別することができるという技術的意義を主張するものであるとすれば,所定信号及び解除指示信号を識別するにすぎない「識別手段」の機能を拡張又は変更するものであるなどと主張する。 しかし,「暗号コードを一部に含む解除指示信号」との訂正は,本件訂正発明1における盗難防止タグが,解除指示信号が暗号コードを一部に含んだ解除指示信号であることを具体的に特定し,さらに限定し,暗号コードのみからなる解除指示信号を受信する盗難防止タグと異なるものであることを明確にするものであり,その技術的意義は明らかである。 また,「暗号コードを一部に含む解除指示信号」との訂正は,解除指 示信号が暗号コードを一部に含んだ解除指示信号であるこ のであることを明確にするものであり,その技術的意義は明らかである。 また,「暗号コードを一部に含む解除指示信号」との訂正は,解除指 示信号が暗号コードを一部に含んだ解除指示信号であることを具体的に特定し,さらに限定するにすぎず,「識別手段」自体を変更するものではなく,当該訂正により「識別手段」の機能を拡張又は変更することになるものではない。 上記のように,「識別手段」は,所定信号と前記受信手段が受信する他の信号,解除信号を前記受信手段が受信する他の信号とそれぞれ識別する手段を意味するものであり,当該訂正前から当該意味であることは明らかで,当該訂正により「識別手段」の機能が拡張又は変更されるようなものではない。 仮に,「識別手段」の当該意味が明瞭でなく,当該訂正により当該意味が明瞭になったとしても,それは「明瞭でない記載の釈明」にすぎず,文理上「識別手段」が所定信号と解除指示信号を識別するとしか解せられないところで,当該意味に変更するようなものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 ウ独立特許要件について(ア) 被告は,「複数の指示信号を受信する盗難防止タグ」とする訂正及び「暗号コードを一部に含む解除指示信号」とする訂正のいずれについても,他の発明特定事項といかなる関連性を有しているのか明確でないため,これらの訂正により訂正後の請求項1の発明(本件訂正発明1)が特有の効果を奏するものとは認められないなどと主張する。 しかし,上記のように,本件訂正発明1の訂正はいずれも公知の単一の指示信号を受信する盗難防止タグや暗号コードのみかならなる解除指示信号盗難防止タグとの相違を明確にするものであり,特有の効果を奏することは明らかである。 (イ) 被告は,乙13公報(8頁左欄39行目~右欄1 受信する盗難防止タグや暗号コードのみかならなる解除指示信号盗難防止タグとの相違を明確にするものであり,特有の効果を奏することは明らかである。 (イ) 被告は,乙13公報(8頁左欄39行目~右欄13行目)及び乙14明細書(第8欄29行目~44行目)には,付け札に伝達すべき種々の メッセージについての記載があるのであって,盗難防止タグが複数の指示信号を受信するという構成は,本件特許の出願時において周知技術にすぎないなどと主張する。 しかし,「複数の指示信号を受信する」との訂正は,単一の指示信号を受信する盗難防止タグを含まないことを明確にするためのものであって,複数の指示信号を受信するという構成が周知技術であったとしても,本件訂正発明1の独立特許要件を否定するものとはならない。 (ウ) 被告は,解除指示信号が暗号コードを一部に含むという構成については,乙13公報,乙14明細書,乙15明細書,「REMOTECONTROLTRANSMISSIONCMOSIC」と題する文献(乙26。以下「乙26文献」という。)及び「半導体総合セレクションガイド」と題する文献(乙27。以下「乙27文献」という。)などに記載されており,本件特許の出願時において周知技術にすぎないなどと主張する。 しかし,「暗号コードを一部に含む」との訂正は,暗号コードのみからなる解除指示信号を含まないことを明確にするためのものであって,しかも,被告が主張する乙13公報等はいずれも複数のコマンドに共通のIDを組み合わせるものにすぎず,IDを設定する際に各信号のコードの重複は考慮する必要はなく,また各コマンドの信号を受信するごとに当該IDの一致判断を行うものである。したがって,本件訂正発明1のように他の指示信号のコードとの重複を考慮することなく暗号コード ドの重複は考慮する必要はなく,また各コマンドの信号を受信するごとに当該IDの一致判断を行うものである。したがって,本件訂正発明1のように他の指示信号のコードとの重複を考慮することなく暗号コードを設定でき,解除指示信号を受信した時のみ暗号コードの一致判断を行うために解除指示信号に限定される暗号コードを解除指示信号の一部に含むものとは明らかに異なるものであるから,上記各文献の記載の構成が周知技術であったとしても,本件訂正発明1の独立特許要件を否定するものとはならない。 (3) 訂正事項2についてア 「新暗号コードへの変更を指示する新暗号コードを一部に含む暗号変更指示信号」とする訂正について(ア) 被告は,訂正事項2によって請求項3に付け加えられた「新暗号コードを一部に含む」という文言は,本件明細書等には何ら記載されておらず,そのため「暗号変更指示信号」が新暗号コード以外にいかなるコードを含むものであるか明確でなく,本件明細書等に記載されたコード以外のコードを含む文言となっているなどと主張する。 しかし,本件明細書等の段落【0073】及び【図7】の記載からは,暗号変更指示信号が新暗号コードを一部に含むことは明らかである。 また,暗号変更指示信号が新暗号コード以外のコードは,本件明細書等の上記記載からすれば,当該コード部分が他の指示信号のコードの当該部分と重複せず,あらかじめ特定されたものであることも明らかである。 しかも,「新暗号コードを一部に含む」との訂正は,暗号変更指示信号が新暗号コードを一部に含んだ指示信号であることを具体的に特定し,さらに限定するものにすぎず,暗号変更指示信号の新暗号コード以外のコードの種類,機能等を問題とするものではなく,当該コードは解除指示信号の暗号コード以外のものであれば足り あることを具体的に特定し,さらに限定するものにすぎず,暗号変更指示信号の新暗号コード以外のコードの種類,機能等を問題とするものではなく,当該コードは解除指示信号の暗号コード以外のものであれば足りるものである。そして,本件明細書等に記載の各指示信号は例示として認識すべきものであるから,本件明細書等に記載されていないコードを含むとからといって,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であることは明らかである。 (イ) また,被告は,「新暗号コードへの変更を指示する新暗号コードを一部に含む暗号変更指示信号」において,新暗号コード以外のコードがいかなるコードであるか明確でなく,新暗号コード以外のコードが他の発 明特定事項といかなる関連性を有しているのか規定されていないため,暗号変更指示信号が新暗号コードを一部に含むことに何ら技術的意義はなく,仮に,識別手段が,新暗号コード以外のコードを用いることにより,暗号変更指示信号を解除指示信号などの他の信号と識別することができるという技術的意義を主張するものであるとすれば,所定信号及び解除指示信号を識別するにすぎない「識別手段」の機能を拡張又は変更するものであるなどと主張する。 しかし,「新暗号コードを一部に含む」との訂正は,本件訂正発明3における盗難防止タグの暗号変更指示信号に新暗号コードを一部に含んだ指示信号であることを具体的に特定し,さらに限定するものにすぎず,単に識別コード等を消去し,初期化する盗難防止タグと異なるものであることを明確にするものであり,その技術的意義は明らかである。 また,「新暗号コードを一部に含む」との訂正は,暗号変更指示信号に新暗号コードを一部に含んだ指示信号であることを具体的に特定し,さらに限定するにすぎず,「識別手段」自体 術的意義は明らかである。 また,「新暗号コードを一部に含む」との訂正は,暗号変更指示信号に新暗号コードを一部に含んだ指示信号であることを具体的に特定し,さらに限定するにすぎず,「識別手段」自体を変更するものではなく,当該訂正により「識別手段」の機能を拡張又は変更することになるものではないし,上記のように本件訂正発明1におけると同様の理由からしても,「識別手段」の機能が拡張又は変更されるようなものではないことは明らかである。 そもそも,訂正前の請求項3(本件発明3)には「前記暗号記憶手段は,前記受信手段が受信する,新暗号コードへの変更を指示する暗号変更指示信号により,その記憶内容を前記新暗号コードに更新する請求項1又は2記載の盗難防止タグ。」と記載されており,その構成からして必然的に暗号変更指示信号は「新暗号コードへの変更を指示する新暗号コードを一部に含む暗号変更指示信号」とならざるを得ないものである上,解除指示信号を受信する盗難防止タグにおいて暗号変更指示信号を 受信するためには暗号変更指示信号を他の指示信号と識別する機能を備える必要がある。 したがって,「新暗号コードを一部に含む」との訂正により,暗号変更指示信号が解除指示信号との識別機能を備えているものとされるとしても,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 イ独立特許要件について(ア) 被告は,「新暗号コードへの変更を指示する新暗号コードを一部に含む暗号変更指示信号」とする訂正は,他の発明特定事項といかなる関連性を有しているのか明確でないため,この訂正により訂正後の請求項3の発明(本件訂正発明3)が特有の効果を奏するものとは認められないなどと主張する。 しかし,前記のとおり,本件訂正発明3は,単に識別コード等を消去し,初期化するだけ の訂正により訂正後の請求項3の発明(本件訂正発明3)が特有の効果を奏するものとは認められないなどと主張する。 しかし,前記のとおり,本件訂正発明3は,単に識別コード等を消去し,初期化するだけの盗難防止タグとは異なり,前記記憶手段の記憶内容が暗号変更指示信号に含まれる新暗号コードに更新されるものであるから,特有の効果を奏することは明らかである。 (イ) また,被告は,暗号変更指示信号が新暗号コードを一部に含むという構成については,乙13公報,乙14明細書,乙15明細書,乙26文献及び乙27文献などに記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に想到することができるなどと主張する。 しかし,前記のとおり,被告が主張する乙13公報等はいずれも複数のコマンドに共通のIDを組み合わせるものにすぎず,本件訂正発明3のように暗号変更指示信号についての新暗号コードを暗号変更指示信号の一部に含むものとは明らかに異なるものであるから,乙13公報等の記載の構成が周知技術であったとしても,本件訂正発明3の独立特許要件を否定するものとはならない。 (4) 訂正事項3ないし5について 訂正事項3ないし5についても,これまで論じてきたところに照らし,訂正要件に何ら反するものではない。 〔被告の主張〕以下のとおり,本件訂正はいずれも訂正要件を満たしていない。 (1) 訂正事項1についてア 「複数の指示信号を受信する盗難防止タグ」とする訂正について(ア) 本件訂正の訂正事項1は,請求項1を「複数の指示信号を受信する盗難防止タグ」と訂正するものである。 (イ) しかし,「複数の指示信号」という文言は本件明細書等には何ら記載されておらず,「指示信号」の定義すら明確でない。そのため,「複数の指示信号」がいかなる信号を含むものであるか明 ものである。 (イ) しかし,「複数の指示信号」という文言は本件明細書等には何ら記載されておらず,「指示信号」の定義すら明確でない。そのため,「複数の指示信号」がいかなる信号を含むものであるか明確でなく,本件明細書等に記載された信号以外の信号をも含む文言となっている。 したがって,「複数の指示信号を受信する盗難防止タグ」とする訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正には該当せず,特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項に適合していない。 (ウ) また,訂正後の請求項1(本件訂正発明1)では,「複数の指示信号を受信する」という動作の主体が明確でない。すなわち,「前記受信手段が複数の指示信号を受信する」とは規定されておらず,他の受信手段(例えば他のアンテナなど)が複数の信号を受信することも含む文言となっている。このような,前記受信手段以外の受信手段が複数の指示信号を受信するような構成は,本件明細書等に記載されていない上,盗難防止タグの機能を拡張又は変更するものであることは明らかである。 したがって,「複数の指示信号を受信する盗難防止タグ」とする訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正に該当しないだけでなく,実質上特許請求の範囲を拡張又 は変更するものであり,特許法134条の2第9項で準用する同法126条6項にも適合していない。 (エ) さらに,「複数の指示信号」が他の発明特定事項といかなる関連性を有しているのか規定されていないため,盗難防止タグが複数の指示信号を受信することに何ら技術的意義はない。仮に,識別手段に,解除指示信号を所定信号以外の他の信号と識別することができるという技術的意義があると主張するものであるとすれば,所定 防止タグが複数の指示信号を受信することに何ら技術的意義はない。仮に,識別手段に,解除指示信号を所定信号以外の他の信号と識別することができるという技術的意義があると主張するものであるとすれば,所定信号及び解除指示信号を識別するにすぎない「識別手段」の機能を拡張又は変更するものであることは明らかである。 この点からも,「複数の指示信号を受信する盗難防止タグ」とする訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものであり,特許法134条の2第9項で準用する同法126条6項に適合していない。 イ 「暗号コードを一部に含む解除指示信号」とする訂正について(ア) 本件訂正の訂正事項1は,さらに,請求項1を「暗号コードを一部に含む解除指示信号」と訂正するものである。 (イ) しかし,「暗号コードを一部に含む」という文言は本件明細書等には何ら記載されていない。そのため,「解除指示信号」が暗号コード以外にいかなるコードを含むものであるか明確でなく,本件明細書等に記載されたコード以外のコードを含む文言となっている。 したがって,「暗号コードを一部に含む解除指示信号」とする訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正には該当せず,特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項に適合していない。 (ウ) また,「暗号コードを一部に含む解除指示信号」において,暗号コード以外のコードがいかなるコードであるか明確でなく,暗号コード以外のコードが他の発明特定事項といかなる関連性を有しているのか規定さ れていないため,解除指示信号が暗号コードを一部に含むことに何ら技術的意義はない。仮に,識別手段に,暗号コード以外のコードを用いることにより,解除指示信号を所定信号以外の他の信号と識別することができるとい いため,解除指示信号が暗号コードを一部に含むことに何ら技術的意義はない。仮に,識別手段に,暗号コード以外のコードを用いることにより,解除指示信号を所定信号以外の他の信号と識別することができるという技術的意義があると主張するものであるとすれば,所定信号及び解除指示信号を識別するにすぎない「識別手段」の機能を拡張又は変更するものであることは明らかである。 したがって,「暗号コードを一部に含む解除指示信号」とする訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正に該当しないだけでなく,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものであり,特許法134条の2第9項で準用する同法126条6項にも適合していない。 ウ独立特許要件について仮に上記ア及びイの主張が採用されないとしても,訂正後の請求項1に従属する請求項5,8及び9に係る発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 そもそも,「複数の指示信号を受信する盗難防止タグ」とする訂正及び「暗号コードを一部に含む解除指示信号」とする訂正のいずれについても,他の発明特定事項といかなる関連性を有しているのか明確でないため,これらの訂正により訂正後の請求項1の発明(本件訂正発明1)が特有の効果を奏するものとは認められない。一方,仮に特有の効果を奏するものであるとすれば,上述のとおり,「識別手段」の機能を拡張又は変更することになり,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更する訂正に該当することは明らかである。 また,乙13公報(8頁左欄39行目~右欄13行目)及び乙14明細書(第8欄29行目~44行目)には,付け札に伝達すべき種々のメッセージについての記載がある。このように,盗難防止タグが複数の指 示信号を受信するという構成は,本件 3行目)及び乙14明細書(第8欄29行目~44行目)には,付け札に伝達すべき種々のメッセージについての記載がある。このように,盗難防止タグが複数の指 示信号を受信するという構成は,本件特許の出願時において周知技術にすぎない。なお,訂正後の請求項1の発明(本件訂正発明1)において,「前記受信手段が複数の指示信号を受信する」とは規定されていないため,そのような周知技術はより一層存在することとなる。 さらに,解除指示信号が暗号コードを一部に含むという構成については,既に主張しているように乙13公報,乙14明細書,乙15明細書,乙26文献及び乙27文献などに記載されており,本件特許の出願時において周知技術にすぎない。 したがって,訂正後の請求項1に従属する請求項5,8及び9に係る発明は,特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであり,特許法134条の2第9項で読み替えて準用する特許法126条7項に適合していない。 (2) 訂正事項2についてア 「新暗号コードへの変更を指示する新暗号コードを一部に含む暗号変更指示信号」とする訂正について(ア) 本件訂正の訂正事項2は,請求項3(本件発明3)を「新暗号コードへの変更を指示する新暗号コードを一部に含む暗号変更指示信号」と訂正するものである。 (イ) しかし,「新暗号コードを一部に含む」という文言は本件明細書等には何ら記載されていない。そのため,「暗号変更指示信号」が新暗号コード以外にいかなるコードを含むものであるか明確でなく,本件明細書等に記載されたコード以外のコードを含む文言となっている。 したがって,「新暗号コードへの変更を指示する新暗号コードを一部に含む暗号変更指示信号」とする訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲 ドを含む文言となっている。 したがって,「新暗号コードへの変更を指示する新暗号コードを一部に含む暗号変更指示信号」とする訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正には該当せず,特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項に適合していない。 (ウ) また,「新暗号コードへの変更を指示する新暗号コードを一部に含む暗号変更指示信号」において,新暗号コード以外のコードがいかなるコードであるか明確でなく,新暗号コード以外のコードが他の発明特定事項といかなる関連性を有しているのか規定されていないため,暗号変更指示信号が新暗号コードを一部に含むことに何ら技術的意義はない。仮に,識別手段に,新暗号コード以外のコードを用いることにより,暗号変更指示信号を解除指示信号などの他の信号と識別することができるという技術的意義があると主張するものであるとすれば,所定信号及び解除指示信号を識別するにすぎない「識別手段」の機能を拡張又は変更するものであることは明らかである。 したがって,「新暗号コードへの変更を指示する新暗号コードを一部に含む暗号変更指示信号」とする訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正に該当しないだけでなく,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものであり,特許法134条の2第9項で準用する同法126条6項にも適合していない。 イ独立特許要件について仮に上記アの主張が採用されないとしても,訂正後の請求項3に従属する請求項5,8及び9に係る発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 そもそも,「新暗号コードへの変更を指示する新暗号コードを一部に含む暗号変更指示信号」とする訂正は,他の発明特定事項といかなる関連 は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 そもそも,「新暗号コードへの変更を指示する新暗号コードを一部に含む暗号変更指示信号」とする訂正は,他の発明特定事項といかなる関連性を有しているのか明確でないため,この訂正により訂正後の請求項3の発明(本件訂正発明3)が特有の効果を奏するものとは認められない。一方,仮に特有の効果を奏するものであるとすれば,上述のとおり,「識別手段」の機能を拡張又は変更することになり,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更する訂正に該当することは明らかである。 また,暗号変更指示信号が新暗号コードを一部に含むという構成については,上述のとおり,乙13公報,乙14明細書,乙15明細書,乙26文献及び乙27文献などに記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に想到することができるものである。 したがって,訂正後の請求項3に従属する請求項5,8及び9に係る発明は,特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであり,特許法134条の2第9項で読み替えて準用する同法126条7項に適合していない。 (3) 訂正事項3について訂正事項3は,本件明細書等の段落【0021】の記載を訂正後の請求項1(本件訂正発明1)と整合させるためのものであるが,このような訂正は,前記(1)の訂正事項1と同様の理由により訂正要件を満たしていない。 したがって,訂正事項3は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正には該当せず,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものであり,特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合していない。 (4) 訂正事項4について訂正事項4は,本件明細書等の段落【0022】の記載を訂正後の請求項1( るものであり,特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合していない。 (4) 訂正事項4について訂正事項4は,本件明細書等の段落【0022】の記載を訂正後の請求項1(本件訂正発明1)と整合させるためのものであるが,このような訂正は,前記(1)の訂正事項1と同様の理由により訂正要件を満たしていない。 したがって,訂正事項4は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正には該当せず,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものであり,特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合していない。 なお,本件明細書等の段落【0022】に記載されている作用効果は,解除指示信号が暗号コードを一部に含むか否かによって変わるものではない。 (5) 訂正事項5について訂正事項5は,本件明細書等の段落【0024】の記載を訂正後の請求項3(本件訂正発明3)と整合させるためのものであるが,このような訂正は,前記(2)の訂正事項2と同様の理由により訂正要件を満たしていない。 したがって,訂正事項5は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正には該当せず,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものであり,特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合していない。 16 争点(4)イ(本件訂正により無効理由を解消することができるか)について〔原告の主張〕本件審決予告に記載された無効理由は,以下のとおり,本件訂正によって解消されることになる。 (1) 請求項1(本件訂正発明1)ア本件訂正発明1は,「複数の指示信号を受信する盗難防止タグ」及び「暗号コードを一部に含む解除指示信号」とあるように,所 訂正によって解消されることになる。 (1) 請求項1(本件訂正発明1)ア本件訂正発明1は,「複数の指示信号を受信する盗難防止タグ」及び「暗号コードを一部に含む解除指示信号」とあるように,所定信号及び解除指示信号以外の指示信号を受信する盗難防止タグであり,また,解除指示信号は暗号コードを受信した場合に解除するだけのものを含まないものであって,乙4発明とはこれらの点も相違点となる。しかるに,乙4公報には,「複数の指示信号を受信する盗難防止タグ」及び「暗号コードを一部に含む解除指示信号」についての開示も示唆もなく,乙5公報にもこれらの点についての開示も示唆もない。 イ乙12公報の「コマンドコード+IDコード」の「IDコード」と,「GROVEスターターキット formbed の使い方(赤外線リモコンと赤外線受信モジュール編)」と題する文献(乙32。以下「乙32文献」という。)の「カスタマコード,データコード」の「カスタマコード」とは,いずれも各コマンドコード,各データコードに共通のものである のに対して,本件訂正発明1の盗難防止タグでは,「暗号コード」とは受信する複数の指示信号のうちの解除指示信号という特定の信号を対象とするものである。 また,解除指示信号に任意に設定可能な「暗号コード」を含めながら,複数の指示信号から解除指示信号を識別できるように「暗号コードを一部に含む解除指示信号」としたことについては,乙12公報及び乙32文献には開示も示唆もない。 これらのことからすれば,乙12公報の「コマンドコード+IDコード」及び乙32文献の「カスタマコード,データコード」を乙4発明に適用する動機付けはなく,組み合わせることはできない。 ウ本件審決予告には「甲2発明〔判決注:乙4発明〕の『アンテナ51』がコード信 」及び乙32文献の「カスタマコード,データコード」を乙4発明に適用する動機付けはなく,組み合わせることはできない。 ウ本件審決予告には「甲2発明〔判決注:乙4発明〕の『アンテナ51』がコード信号を受信する場合には,甲第3号証〔判決注:乙5公報〕に『後段の信号処理回路で信号識別を行う』(段落【0017】)の記載からみて,CPU55がアンテナ51が受信した所定の周波数の信号及びコード信号を識別するようになすことは,当業者にとって格別困難なことではない。また,阻害事由が存するものともいえない。」とあるが,乙5公報の「警告音作動信号と警告音停止信号のキャリアー周波数を同一にして1つの共振回路(電磁結合手段)で両信号を受信させ,後段の信号処理回路で信号識別を行う」(乙5公報の段落【0017】)ことの当該信号識別は,連続正弦波の警告音作動信号と間欠正弦波の警告音停止信号によるカウントの時間の相違により両信号を識別するものであり,複数の指示信号を受信することは想定されておらず,所定信号に加えて「複数の指示信号を受信する盗難防止タグ」である本件訂正特許発明1の受信手段に適用できるものではない。 仮に,乙4発明に乙5公報の記載事項を適用し,乙5公報の当該記載によりCPU55がアンテナ51が受信した所定の周波数の信号及びコ ード信号を識別することにしても,「複数の指示信号を受信する盗難防止タグ」における解除指示信号を識別することはできず,相違点に係る本件訂正発明1の構成とすることは当業者が容易になし得るものではない。 エ上記のように,乙4発明に乙5公報の記載事項を適用しても,所定信号に加えて「複数の指示信号を受信する盗難防止タグ」において解除指示信号を識別することはできない。 また,乙4発明のように暗号コードのみを受信した場合 発明に乙5公報の記載事項を適用しても,所定信号に加えて「複数の指示信号を受信する盗難防止タグ」において解除指示信号を識別することはできない。 また,乙4発明のように暗号コードのみを受信した場合に解除するものでは,解除指示信号である暗号コードは「複数の指示信号を受信する盗難防止タグ」における他の指示信号と重複する可能性があり,本件訂正発明1の「暗号コードを一部に含む解除指示信号」のように暗号コードを任意に設定することはできない。逆にいうと,他の指示信号と重複しないように暗号コードを設定する必要があり,暗号コードの設定は煩雑なものとなってしまう。 このように,本件訂正発明1は,乙4発明及び乙5公報の記載事項から,当業者が予測できない効果を生じるものである。 オさらに,「暗号コードを一部に含む解除指示信号」と訂正したことに伴い,本件訂正発明1の「前記識別手段が識別した解除指示信号に含まれる暗号コード及び前記暗号記憶手段が記憶する暗号コードが一致するか否かを判定する一致判定手段」が乙4発明及び乙5公報に開示も示唆もされていないことが明らかとなった。すなわち,乙4発明はそもそも「暗号コードを一部に含む解除指示信号」を用いるものではない。また,乙5公報も信号識別時にコードを一致回路21で一致するか否かを判断するものであり(乙5公報の段落【0031】),識別手段が識別した後にさらに解除指示信号に含まれる暗号コードが一致するか否かを重複して判断する技術的必要性は皆無であって,当業者にとって本件訂正発 明1の「前記識別手段が識別した解除指示信号に含まれる暗号コード及び前記暗号記憶手段が記憶する暗号コードが一致するか否かを判定する一致判定手段」に想到する動機付けは存在しない。 カ以上からすれば,本件訂正発明1は,乙4発明及び乙 指示信号に含まれる暗号コード及び前記暗号記憶手段が記憶する暗号コードが一致するか否かを判定する一致判定手段」に想到する動機付けは存在しない。 カ以上からすれば,本件訂正発明1は,乙4発明及び乙5公報に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することはできず,特許法29条2項の規定に違反するものではないから,同法123条1項2号に該当せず,無効とすることはできないのであって,本件審決予告の無効理由は解消されることになる。 また,本件訂正発明2ないし6は,本件訂正発明1の従属項であるため,同様に本件審決予告の無効理由は解消されることになる。 (2) 請求項2(本件訂正発明2)ア本件審決予告には,「甲2発明〔判決注:乙4発明〕のCPU55に上記周知技術を適用して,相違点2の構成にすることは,当業者が容易に想到し得たことである。」,「また,相違点2の構成が奏する効果は,甲2発明及び前記周知技術から,当業者が予測できる範囲内のものであって,格別なものではなく,本件特許発明2が奏する効果は,全体としてみても,甲2発明及び甲第3号証〔判決注:乙5公報〕に記載された事項並びに前記周知技術から,当業者が予測できる範囲内のものである。」と記載されている。 イしかし,請求項2(本件訂正発明2)は,本件訂正発明1の従属項であり,「複数の指示信号を受信する盗難防止タグ」を構成とするものであることから,指示信号を受信し,暗号記憶手段の暗号コードのみからなる解除指示信号と異なるコードであると判定しても,他の指示信号の可能性があり,他の指示信号の場合には警告を出力しないように処理する必要が生じるのであって,「一致判定手段がコード信号が一致しないと判定したときに,警告を出力する警告手段」が周知技術であるとして も,それを適用するだけで は警告を出力しないように処理する必要が生じるのであって,「一致判定手段がコード信号が一致しないと判定したときに,警告を出力する警告手段」が周知技術であるとして も,それを適用するだけでは当該処理はできない。 すなわち,乙5公報は,警告音作動信号と警告音停止信号の二つにおいて識別するものにすぎず,乙5公報の記載事項を適用した乙4発明では,両信号のみを受信するのであれば,警告音作動信号でないと識別することにより,暗号コードが異なっても警告音停止信号であると識別することができ,警告を出力することができるかもしれないが,警告音作動信号以外に複数の指示信号を受信する装置において,暗号コードと異なるコード信号を受信したときに,それが警告音停止信号であると識別することはできず,それを異なる暗号コードによる信号であるとして上記周知技術により警告を出力することはできないのである。 本件訂正発明2は,「複数の指示信号を受信する盗難防止タグ」において,受信した指示信号を解除指示信号であると識別し,暗号コードを一致判定手段が一致しないと判定したときに,警告を出力するものであり,「暗号コードを一部に含む解除指示信号」とすることにより,受信した指示信号が解除指示信号であることを識別するものであるが,これらのことについて,乙4発明,乙5公報及び上記周知技術には開示も示唆もなく,本件審決予告のいう相違点の構成とすることは,当業者が容易に想到し得ないし,上記相違点の構成が奏する効果は,乙4発明,乙5公報及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲内のものではない。 ウ以上からすれば,本件訂正発明2は,乙4発明,乙5公報の記載事項及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することはできず,特許法29条2項の規定に違反するものでもなければ,同法1 ない。 ウ以上からすれば,本件訂正発明2は,乙4発明,乙5公報の記載事項及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することはできず,特許法29条2項の規定に違反するものでもなければ,同法123条1項2号に該当せず,無効とすることはできず,本件審決予告の無効理由は解消されることになる。 (3) 請求項3(本件訂正発明3)ア本件審決予告には,「甲第11号証〔判決注:乙13公報〕に記載さ れた事項1は,請求項3の用語を用いると,『記憶手段は,受信手段が受信する,新コードへの変更を指示する変更指示信号により,その記憶内容を前記新コードに更新する盗難防止タグ。』といえる。」,「甲2発明〔判決注:乙4発明〕において,タグ1にコード信号の設定機能を設けることを把握する当業者であれば,甲2発明のタグ1が『アンテナ51』及び『付設されたアンテナ』を備え,『コード信号』が記憶手段に記憶される点に着目して,甲第11号証に記載された事項1の『受信手段が受信する,新コードへの変更を指示する変更指示信号により,その記憶内容を前記新コードに更新する』ことを適用して,相違点3の構成とすることは,当業者にとって容易である。」,「また,相違点3の構成が奏する効果は,甲2発明及び甲第11号証から,当業者が予測できる範囲内のものであって,格別なものでなく,本件特許発明3が奏する効果は,全体としてみても,甲2発明,甲第2号証〔判決注:乙4公報〕,甲第3号証〔判決注:乙5公報〕及び甲第11号証にそれぞれ記載された事項並びに前記周知技術から,当業者が予測できる範囲内のものである。」との記載がある。 イしかし,本件訂正発明3は「新暗号コードを一部に含む暗号変更指示信号」を構成とするものであるが,乙13公報の「物品識別RAM364の記憶内容をアップデ 範囲内のものである。」との記載がある。 イしかし,本件訂正発明3は「新暗号コードを一部に含む暗号変更指示信号」を構成とするものであるが,乙13公報の「物品識別RAM364の記憶内容をアップデートする物品識別コードに変更する」とは,指示された特定のコードに変更するものではなく,単にそれまでに設定されていたコードを消去し,初期設定にするものであって,「新暗号コードを一部に含む暗号変更指示信号」により,暗号記憶手段の記憶内容を当該新暗号コードに更新するものではない。 また,本件審決予告には「甲第2号証には,コード信号について『コード信号の設定機能をタグ1およびコード信号出力ユニット11にそれぞれ備付け,これらの設定機能によって所望のコード信号を設定できる ようにしても構わない』(段落【0036】)との記載があり,この記載によれば,タグ1にコード信号の設定機能を設けることが開示されているといえる。」との記載があるが,「複数の指示信号を受信する盗難防止タグ」においては,上記のように他の指示信号と重複する可能性があるため,所望のコード信号を設定することはできないし,乙4公報及び乙13公報から容易に予測できる範囲は暗号コードである解除指示信号全体を変更するものであって,本件訂正発明3のように「暗号コードを一部に含む解除指示信号」の暗号コードを変更するものでもない。 このように,本件訂正発明3の構成については,乙4公報及び乙13公報には開示も示唆もなく,これらから本件審決予告のいう相違点の構成とすることは,当業者が容易に想到し得ないし,上記相違点の構成が奏する効果は,乙4発明,乙5公報及び乙13公報にそれぞれ記載された事項及び周知技術から,当業者が予測できる範囲内のものではない。 ウ以上からすれば,本件訂正発明3は,乙4発 ,上記相違点の構成が奏する効果は,乙4発明,乙5公報及び乙13公報にそれぞれ記載された事項及び周知技術から,当業者が予測できる範囲内のものではない。 ウ以上からすれば,本件訂正発明3は,乙4発明,乙5公報及び乙13公報にそれぞれ記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することはできず,特許法29条2項の規定に違反するものではないから,同法123条1項2号に該当せず,無効とすることはできないのであって,本件審決予告の無効理由は解消されることになる。 〔被告の主張〕(1) 仮に本件訂正が訂正要件を満たしているとしても,本件訂正発明1ないし6は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 アすなわち,乙13公報(8頁左欄39行目~右欄13行目)及び乙14明細書(第8欄29行目~44行目)には,付け札に伝達すべき種々のメッセージについての記載がある。このように,盗難防止タグが複数の指示信号を受信するという構成は,本件特許の出願時において周知技術にすぎない。なお,本件訂正発明1において,「前記受信手段が複数 の指示信号を受信する」とは規定されていないため,そのような周知技術はより一層存在することとなる。 また,解除指示信号が暗号コードを一部に含むという構成については,既に主張しているように乙13公報,乙14明細書,乙15明細書,乙26文献及び乙27文献などに記載されており,本件特許の出願時において周知技術にすぎない。 したがって,本件訂正発明1に係る発明は,特許法29条2項に規定する要件を満たしていない。 イさらに,暗号変更指示信号が新暗号コードを一部に含むという構成についても,乙13公報,乙14明細書,乙15明細書,乙26文献及び乙27文献などに記載された周知技術に基づいて当業者が ていない。 イさらに,暗号変更指示信号が新暗号コードを一部に含むという構成についても,乙13公報,乙14明細書,乙15明細書,乙26文献及び乙27文献などに記載された周知技術に基づいて当業者が容易に想到することができるものであるから,本件訂正発明3は,特許法29条2項に規定する要件を満たしていない。 同様に,本件訂正発明1又は3に従属する本件訂正発明2,4,5及び6についても,特許法29条2項に規定する要件を満たしていない。 ウこのように,仮に訂正要件を満たしているとしても,本件訂正発明1ないし6は特許法29条2項の規定に違反してなされたものであり,同法123条1項2号に該当し,無効にすべきものである。 (2) 本件審決予告に関する原告の主張についてア請求項1(本件訂正発明1)について(ア) 原告は,「本件訂正発明1の盗難防止タグでは,『暗号コード』は受信する複数の指示信号のうちの解除指示信号という特定の信号を対象とするものである。」と主張している。 しかし,そもそも「複数の指示信号」という文言は,本件明細書等には何ら記載されておらず,「指示信号」の定義すら明確でないため,「複数の指示信号」がいかなる信号を含むものであるか明確でない。そ の結果,「複数の指示信号」に解除指示信号が含まれているか否かも明確ではなく,「複数の指示信号のうちの解除指示信号という特定の信号を対象とするもの」という原告の主張は,何ら根拠のない主張である。 (イ) また,原告は,「解除指示信号に任意に設定可能な『暗号コード』を含めながら,複数の指示信号から解除指示信号を識別できるように『暗号コードを一部に含む解除指示信号』としたことについて,乙12公報及び乙32文献には開示も示唆もない。」と主張している。 しかし,「暗号コード 複数の指示信号から解除指示信号を識別できるように『暗号コードを一部に含む解除指示信号』としたことについて,乙12公報及び乙32文献には開示も示唆もない。」と主張している。 しかし,「暗号コードを一部に含む解除指示信号」において,暗号コード以外のコードがいかなるコードであるかは明確でなく,暗号コード以外のコードが他の発明特定事項といかなる関連性を有しているのか規定されていない以上,解除指示信号が暗号コードを一部に含むことに何ら技術的意義はない。 したがって,解除指示信号が暗号コードを一部に含むことにより,「複数の指示信号から解除指示信号を識別できる」ことが当然に導き出されるものではない。また,仮に,識別手段に,暗号コード以外のコードを用いることにより,解除指示信号を所定信号以外の他の信号と識別することができるという技術的意義があると主張するものであるとすれば,上述のとおり,所定信号及び解除指示信号を識別するにすぎない「識別手段」の機能を拡張又は変更するものであり,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更する訂正に該当することは明らかである。 (ウ) さらに,原告は,乙5公報について「複数の指示信号を受信することは想定されておらず,所定信号に加えて『複数の指示信号を受信する盗難防止タグ』である本件訂正発明1の受信手段に適用できるものではない。」と主張している。 しかし,「複数の指示信号」がいかなる信号を含むものであるかは明確でなく,「複数の指示信号」が他の発明特定事項といかなる関連性を 有しているのか規定されていない以上,盗難防止タグが複数の指示信号を受信することに何ら技術的意義はない。すなわち,「識別手段」は所定信号及び解除指示信号を識別するにすぎず,複数の指示信号を識別するものではないため,盗難防止タグが複数の指示 止タグが複数の指示信号を受信することに何ら技術的意義はない。すなわち,「識別手段」は所定信号及び解除指示信号を識別するにすぎず,複数の指示信号を識別するものではないため,盗難防止タグが複数の指示信号を受信することによって何ら効果を生じるものではない。 イ請求項2(本件訂正発明2)について原告は,「本件訂正発明2は,『複数の指示信号を受信する盗難防止タグ』において,受信した指示信号を解除指示信号であると識別し,暗号コードを一致判定手段が一致しないと判定したときに,警告を出力するものであり,『暗号コードを一部に含む解除指示信号』とすることにより,受信した指示信号が解除指示信号であることを識別するものであるが,これらのことについて,乙4発明,乙5公報及び周知技術には開示も示唆もない。」と主張している。 しかし,「盗難防止タグが複数の指示信号を受信すること」及び「解除指示信号が暗号コードを一部に含むこと」のいずれについても,「識別手段」との関連性が明確でない。それゆえ,「識別手段」は所定信号及び解除指示信号を識別するにすぎず,複数の指示信号を識別するものではないため,上記のような原告が主張する効果を本件訂正発明2が奏するとはいえない。 ウ請求項3(本件訂正発明3)について(ア) 原告は,「本件訂正発明3では,『新暗号コードを一部に含む暗号変更指示信号』を構成とするものであるが,乙13公報の『物品識別RAM364の記憶内容をアップデートする物品識別コードに変更する』とは,指示された特定のコードに変更するものではなく,単にそれまでに設定されていたコードを消去し,初期設定にするものであって,『新暗号コードを一部に含む暗号変更指示信号』により,暗号記憶手段の記憶 内容を当該新暗号コードに更新するものではない。」と主張 設定されていたコードを消去し,初期設定にするものであって,『新暗号コードを一部に含む暗号変更指示信号』により,暗号記憶手段の記憶 内容を当該新暗号コードに更新するものではない。」と主張している。 しかし,「初期設定」などという記載は乙13公報に明示されておらず,何ら根拠のない主張である。 (イ) また,原告は,「『複数の指示信号を受信する盗難防止タグ』においては,上記のように他の指示信号と重複する可能性があるため,所望のコード信号を設定することはできないし,乙4公報及び乙13公報から容易に予測できる範囲は暗号コードである解除指示信号全体を変更するものであって,本件訂正発明3のように『暗号コードを一部に含む解除指示信号』の暗号コードを変更するものでもない。」とも主張している。 しかし,「盗難防止タグが複数の指示信号を受信すること」及び「解除指示信号が暗号コードを一部に含むこと」のいずれについても,「識別手段」との関連性が明確でなく,何ら技術的意義を有しないことは明らかである。 また,暗号変更指示信号が新暗号コードを一部に含むという構成については,乙13公報,乙14明細書,乙15明細書,乙26文献及び乙27文献などに記載された周知技術に基づいて当業者が容易に想到することができるものである。 17 争点(4)ウ(被告製品1及び2が本件訂正発明1ないし3の技術的範囲に属するか)について〔原告の主張〕(1) 被告製品1及び2は,所定信号,リセットコード信号,暗号変更コード信号を受信するものであり,本件訂正発明1の「複数の指示信号を受信する盗難防止タグ」に該当する。 また,被告製品1及び2は,上記のように「複数の指示信号を受信する盗難防止タグ」であるところ,リセットコードの暗号コードを任意に設定できることから 指示信号を受信する盗難防止タグ」に該当する。 また,被告製品1及び2は,上記のように「複数の指示信号を受信する盗難防止タグ」であるところ,リセットコードの暗号コードを任意に設定できることからして,当該設定により他の指示信号と重複しないように暗号コー ドをリセットコード信号の一部に含まれるものとしていることは明らかであり,本件訂正発明1の「暗号コードを一部に含む解除指示信号」に該当する。 さらに,被告製品1及び2は,新暗号コードを一部に含む暗号変更コードを受信すると,暗号記憶手段に記憶している暗号コードを更新するものであり,当該暗号変更コードは本件訂正発明3の「新暗号コードへの変更を指示する新暗号コードを一部に含む暗号変更指示信号」に該当する。 したがって,被告製品1及び2は,本件訂正発明1ないし3の技術的範囲に属するものである。 (2) この点に関して被告は,訂正後の本件訂正発明1ないし3の技術的範囲が明確でないなどと主張する。 しかし,訂正後の本件訂正発明1ないし3の技術的範囲は明確であり,被告製品1及び2が含まれることは明らかである。 〔被告の主張〕「複数の指示信号」という文言は本件明細書等には何ら記載されておらず,「指示信号」の定義すら明確でない。そのため,「複数の指示信号」がいかなる信号を含むものであるか明確でない。その上,「複数の指示信号を受信する」という動作の主体が明確でなく,「前記受信手段」が複数の指示信号を受信するのか,あるいは他の受信手段(例えば他のアンテナなど)が複数の信号を受信するのかも明確でない。 このように,訂正後の本件訂正発明1ないし3の技術的範囲が明確でないため,その技術的範囲に被告製品1及び2が属するか否かを判断することができない。 18 争点(5)(損害発生の有無及 でない。 このように,訂正後の本件訂正発明1ないし3の技術的範囲が明確でないため,その技術的範囲に被告製品1及び2が属するか否かを判断することができない。 18 争点(5)(損害発生の有無及びその額)について〔原告の主張〕(1) 被告は被告製品1ないし4を販売し,その販売額は平成25年4月頃から平成26年7月頃までの期間で合計1億2611万6690円を超えるもの であるが,その利益率は45%を下ることはなく,被告が得た利益は5675万2510円となり,原告は被告の被告製品1ないし4の販売により同額の損害を被ったことになる。 (2) また,原告は,被告の特許権侵害行為により訴訟提起を余儀なくされたところ,被告の特許権侵害行為と因果関係にある弁護士費用の額は567万円を下らない。 (3) したがって,原告は,被告の行為により合計6242万2510円の損害を被ったことになる。 〔被告の主張〕否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 本件各発明の意義(1) 本件明細書等には,以下の記載がある。 ア発明の属する技術分野・「本発明は,盗難防止対象物に対する取り付け状態及び取り外し状態を検出し,取り外し状態を検出したとき及び非接触で所定信号が与えられたときに,警報を出力する盗難防止タグと,盗難防止タグに指示信号を与える指示信号発信装置と盗難防止タグ及び指示信号発信装置に指示信号を与える親指示信号発信装置と,これらで構成される盗難防止装置の改良に関するものである。」(段落【0001】)イ従来の技術・「図20は,本発明の特許出願人が出願した盗難防止タグの実施の形態の1例の要部構成を示すブロック図である。この盗難防止タグは,IC1とそれに外付けされる外付け回路とから構成されており,コンパクトディス 20は,本発明の特許出願人が出願した盗難防止タグの実施の形態の1例の要部構成を示すブロック図である。この盗難防止タグは,IC1とそれに外付けされる外付け回路とから構成されており,コンパクトディスクのような盗難防止対象物に取り付けられた状態で,押圧された釦に連動してスイッチVSが開放されている。スイッチVSは,手動 操作自動復帰b接点である。」(段落【0002】)・【図20】・「この状態で,何者かが盗難防止対象物を持ち出そうとすると,盗難防止タグは,販売店の出口に設置された発信装置(図示せず)から所定信号を受信して警報を出力する。また,何者かが,これをさけようとして,盗難防止対象物から盗難防止タグを取り外すと,盗難防止タグは,釦が復帰してスイッチVSが短絡し,この場合にも警報を出力する。」(段落【0003】)・「ここで,動作モードは,盗難防止タグが,盗難防止対象物に取り付けられると作動状態(セットモード=警報出力が可能な状態)になる第1動作モードと,盗難防止対象物に取り付けられた状態で,セットコードを与えられることにより作動状態になる第2動作モードとの2種類がある。この盗難防止タグは,リセットコードを与えられると,リセットモード(盗難防止対象物に取り付けられた状態で,取り外されても又発信装置から所定信号を受信しても,警報出力しない状態)になる。但し,第1動作モードになっている場合は,盗難防止タグが盗難防止対象物から取り外されるための解除時間(例えば32秒間)を計時し,解除時間 経過時に取り外されていなければ(スイッチVSが開放されていれば),セットモードに戻る。」(段落【0010】)ウ発明が解決しようとする課題・「ところが,これらの盗難防止タグを使用する盗難防止装置を導入した店舗の間では,上述 イッチVSが開放されていれば),セットモードに戻る。」(段落【0010】)ウ発明が解決しようとする課題・「ところが,これらの盗難防止タグを使用する盗難防止装置を導入した店舗の間では,上述したリセットモードにするためのリセットコードが共通になる。そのため,例えば,互いに隣接する店舗に同じ盗難防止装置が導入されると,A店のリモートコントロールキーでその隣のB店の盗難防止タグをリセットモードにすることができるようになり,盗難防止に役立たない虞がある。また,一旦,ある店舗のリモートコントロールキーが盗まれたり,リセットコードが知られたりしてしまうと,その店舗は勿論のこと,その店舗と同じ盗難防止装置を導入した店舗全てにおいて,盗難防止装置がその機能を果たせなくなる問題がある。」(段落【0019】)・「本発明は,上述したような事情に鑑みてなされたものであり,第1発明,第4発明及び第8発明では,店舗毎に異なるリセットコードを設定することができる盗難防止タグ,指示信号発信装置及び盗難防止装置を提供することを目的とする。第2発明,第4発明及び第8発明では,異なるリセットコードを受信すると,警告を出力することができる盗難防止タグ,指示信号発信装置及び盗難防止装置を提供することを目的とする。第3発明,第6発明,第7発明及び第9発明では,リセットコードを容易に変更できる盗難防止タグ,親指示信号発信装置,指示信号発信装置及び盗難防止装置を提供することを目的とする。第5発明では,盗難防止機能を有する指示信号発信装置を提供することを目的とする。」(段落【0020】)エ課題を解決するための手段(ア) 本件発明1(請求項1の発明) ・「本発明の第1発明に係る盗難防止タグは,盗難防止対象物に対する取り付け状態及び取り外し状態を検出 0020】)エ課題を解決するための手段(ア) 本件発明1(請求項1の発明) ・「本発明の第1発明に係る盗難防止タグは,盗難防止対象物に対する取り付け状態及び取り外し状態を検出する検出手段と,非接触で信号を受信する受信手段と,前記検出手段が取り外し状態を検出したとき及び前記受信手段が所定信号を受信したときに,警報を出力する警報出力手段とを備えた盗難防止タグにおいて,前記受信手段は,前記警報出力手段が作動可能である状態及び警報出力状態の解除を指示する,暗号コードを含む解除指示信号を受信することを可能とする一方,前記受信手段が受信した前記所定信号及び前記解除指示信号を識別する識別手段と,暗号コードを予め記憶する暗号記憶手段と,前記識別手段が識別した解除指示信号に含まれる暗号コード及び前記暗号記憶手段が記憶する暗号コードが一致するか否かを判定する一致判定手段と,該一致判定手段が一致すると判定したときは,前記警報出力手段が作動可能である状態及び警報出力状態を解除する解除手段とを備えることを特徴とする。」(段落【0021】)・「この盗難防止タグでは,受信手段は,警報出力手段が作動可能である状態及び警報出力状態の解除を指示する,暗号コードを含む解除指示信号を受信する。一方,識別手段は,受信手段が受信した所定信号及び解除指示信号を識別する。そして,一致判定手段は,識別手段が識別した解除指示信号に含まれる暗号コード及び暗号記憶手段が記憶する暗号コードが一致するか否かを判定し,この一致判定手段が一致すると判定したときは,解除手段は,警報出力手段が作動可能である状態及び警報出力状態を解除する。これにより,この盗難防止タグは,店舗毎に異なる解除指示信号を設定することができ,より確実に盗難を防止することができる。」(段落【002 警報出力手段が作動可能である状態及び警報出力状態を解除する。これにより,この盗難防止タグは,店舗毎に異なる解除指示信号を設定することができ,より確実に盗難を防止することができる。」(段落【0022】)(イ) 本件発明2(請求項2の発明)・「第2発明に係る盗難防止タグは,前記一致判定手段が一致しないと 判定したときに,警告を出力する警告出力手段を備えることを特徴とする。この盗難防止タグでは,一致判定手段が一致しないと判定したときに,警告出力手段が警告を出力するので,例えば,他の店舗から盗んで来た,解除指示信号を発信する指示信号発信装置を使用してリセットしようとしても,すぐに露見する。また,思考錯誤により解除指示信号の暗号コードを知ることは困難であるので,より確実に盗難を防止することができる。」(段落【0023】)(ウ) 本件発明3(請求項3の発明)・「第3発明に係る盗難防止タグは,前記暗号記憶手段は,前記受信手段が受信する,新暗号コードへの変更を指示する暗号変更指示信号により,その記憶内容を前記新暗号コードに更新することを特徴とする。 この盗難防止タグでは,暗号記憶手段は,受信手段が受信する暗号変更指示信号により,その記憶内容を新暗号コードに更新することができるので,解除指示信号を発信する指示信号発信装置が盗まれたり,解除指示信号の暗号コードが知られたりしても,暗号コードを容易に変更でき,より確実に盗難を防止することができる。」(段落【0024】)(エ) 本件発明4(請求項4の発明)・「第4発明に係る指示信号発信装置は,請求項1~3の何れかに記載の盗難防止タグが備える受信手段が受信すべき解除指示信号に含めるための暗号コードを記憶する暗号記憶手段と,前記解除指示信号を,該暗号記憶手段が記憶する暗号コードを 装置は,請求項1~3の何れかに記載の盗難防止タグが備える受信手段が受信すべき解除指示信号に含めるための暗号コードを記憶する暗号記憶手段と,前記解除指示信号を,該暗号記憶手段が記憶する暗号コードを含めて発信する発信手段とを備えることを特徴とする。」(段落【0025】)・「この指示信号発信装置では,暗号記憶手段が,解除指示信号に含めるための暗号コードを記憶する。そして,発信手段は,暗号記憶手段が記憶する暗号コードを含めて,解除指示信号を発信する。これによ り,この指示信号発信装置は,店舗毎に異なる解除指示信号を発信することができ,より確実に盗難を防止することができる。」(段落【0026】)(オ) 本件発明5(請求項6の発明)・「第6発明に係る親指示信号発信装置は,請求項3記載の盗難防止タグが備える暗号記憶手段が記憶すべき新暗号コードを設定する暗号設定手段と,盗難防止タグが備える受信手段が受信すべき暗号変更指示信号を,前記暗号設定手段が設定した新暗号コードを含めて発信する発信手段とを備えることを特徴とする。」(段落【0028】)・「この親指示信号発信装置では,暗号設定手段が,盗難防止タグが備える暗号記憶手段が記憶すべき新暗号コードを設定する。そして,発信手段は,暗号設定手段が設定した新暗号コードを含めて,暗号変更指示信号を発信する。これにより,この親指示信号発信装置は,解除指示信号を発信する指示信号発信装置が盗まれたり,解除指示信号の暗号コードが知られたりしても,暗号コードを容易に変更でき,より確実に盗難を防止することができる。」(段落【0029】)(カ) 本件発明6(請求項7の発明)・「第7発明に係る指示信号発信装置は,請求項6記載の親指示信号発信装置が発信する暗号変更指示信号を受信する受信手段を備え,前 できる。」(段落【0029】)(カ) 本件発明6(請求項7の発明)・「第7発明に係る指示信号発信装置は,請求項6記載の親指示信号発信装置が発信する暗号変更指示信号を受信する受信手段を備え,前記暗号記憶手段は,該受信手段が受信した暗号変更指示信号に含まれる新暗号コードにより記憶内容を更新することを特徴とする。」(段落【0030】)・「この指示信号発信装置では,受信手段が,親指示信号発信装置が発信する暗号変更指示信号を受信する。そして,暗号記憶手段は,受信手段が受信した暗号変更指示信号に含まれる新暗号コードにより記憶内容を新する。これにより,この指示信号発信装置は,解除指示信号 を発信する他の指示信号発信装置が盗まれたり,解除指示信号の暗号コードが知られたりしても,暗号コードを容易に変更でき,より確実に盗難を防止することができる。」(段落【0031】)オ発明の実施の形態・「以下に,本発明に係る盗難防止タグ,指示信号発信装置,親指示信号発信装置及び盗難防止装置の実施の形態を,それを示す図面を参照しながら説明する。図1は,本発明に係る盗難防止タグの実施の形態の1例の要部構成を示すブロック図である。この盗難防止タグは,IC1とそれに外付けされる外付け回路とから構成されており,コンパクトディスクのような盗難防止対象物に取り付けられた状態で,押圧された釦に連動してスイッチVSが開放されている。スイッチVSは,手動操作自動復帰b接点である。」(段落【0035】)・【図1】・「この状態で,何者かが盗難防止対象物を持ち出そうとすると,盗難防止タグは,販売店の出口に設置された発信装置(図8,TX)から所定信号を受信して警報を出力する。また,何者かが,これを避けようとして,盗難防止対象物から盗難防止タグを取り外すと, うとすると,盗難防止タグは,販売店の出口に設置された発信装置(図8,TX)から所定信号を受信して警報を出力する。また,何者かが,これを避けようとして,盗難防止対象物から盗難防止タグを取り外すと,盗難防止タグは,釦が復帰してスイッチVSが短絡し,この場合にも警報を出力する。こ のように,釦に連動するスイッチVSにより,盗難防止対象物に対する取り付け取り外し状態を検出する盗難防止タグのタイプをVSタイプとする。」(段落【0036】)・【図8】・「信号処理部5は,与えられたコードがリセットコードであるときは,暗号コード記憶部9に記憶してある暗号コードと,リセットコードに含まれる暗号コードとが一致するか否かを判定する。そして,一致すると判定したときは,この盗難防止タグをリセットモードに設定し,一致しないと判定したときは,この盗難防止タグを警告モードに設定し,駆動部8に警告信号を出力させる。警告信号は,駆動部8の出力端子が例えば8Hzの2周期連続1周期休止のリズムでLレベルになって,発光ダイオードLEDを点滅させる。このとき,駆動部8は,8Hzの2周期連続1周期休止のリズムのLレベル信号に4kHzの鳴動信号を重畳させて,トランジスタTR2を駆動させ,ブザーBUZを鳴動させる。」(段落【0051】)・【図3】 ・「図3は,上述したVSタイプ及びWTタイプの盗難防止タグへ,セットコードと,リセットコードと,動作モードの変更を指示するコードと,VSタイプ/WTタイプの変更を指示するコードと,リセットコードに含まれる暗号コードの変更を指示する暗号コード変更コードとを電波で発信するマスタリモートコントロールキーMRK(親指示信号発信装置)の構成を示すブロック図である。このマスタリモートコントロールキーMR れる暗号コードの変更を指示する暗号コード変更コードとを電波で発信するマスタリモートコントロールキーMRK(親指示信号発信装置)の構成を示すブロック図である。このマスタリモートコントロールキーMRKは,セットモード及びリセットモードを指示するためのセット釦SB及びリセット釦RSBと,第1動作モードへの設定を指示するための第1動作モード釦ONEと,第2動作モードへの設定を指示するための第2動作モード釦NORと,VSNモードへの設定を指示するためのVSNモード釦VSNとが,4ビットマイクロコンピュータ10に接続されている。」(段落【0063】)・「また,マイクロコンピュータ10には,VSOモードへの設定を指示するためのVSOモード釦VSOと,WTNモードへの設定を指示するためのWTNモード釦WTNと,WTOモードへの設定を指示するた めのWTOモード釦WTOと,クロック生成のための発振回路12と,発光ダイオード11と,LC共振回路13(アンテナ回路)と,リセットコードに含まれる暗号コードを変更設定するための暗号スイッチCRSと,暗号コードの変更を指示するための暗号変更釦CRBと,マスタリモートコントロールキーMRK及び後述するリモートコントロールキーの切り換えを行うための切り換えスイッチXSとが接続されている。 マスタリモートコントロールキーMRK及びリモートコントロールキーは回路構成を共通化し,組立時に切り換えスイッチXSでそれぞれに設定する。」(段落【0064】)・「また,暗号スイッチCRSが操作されたときは,マイクロコンピュータ10が,この操作に応じて,リセットコードに含まれる暗号コードを新暗号コードに変更設定する。暗号変更釦CRBが操作されたときは,マイクロコンピュータ10が,設定されている暗号コードへの変更を ュータ10が,この操作に応じて,リセットコードに含まれる暗号コードを新暗号コードに変更設定する。暗号変更釦CRBが操作されたときは,マイクロコンピュータ10が,設定されている暗号コードへの変更を指示するための暗号変更コードを,LC共振回路13を通じて変調し発信する。」(段落【0066】)・「図7は,上述したデータコードD0~D5のセットコード,リセットコード,暗号変更コード,WTN設定コード,WTO設定コード,VSN設定コード,VSO設定コード,第1動作コード,第2動作コードの各例“010101”,“00「暗号」”,“11「暗号」”,“100101”,“100110”,“101001”,“101010”,“011011”,“011000”を示した図表である。尚,「暗号」は4桁の暗号コードである。」(段落【0073】) ・【図7】 (2) 上記各記載によれば,本件各発明は,従前,同じ盗難防止タグを使用する盗難防止装置を導入した店舗の間ではリセットモードにするためのリセットコードが共通になるため,互いに隣接する店舗に同じ盗難防止装置が導入された場合や,別の店舗からリセットコードが知られたりした場合には,盗難防止装置がその機能を果たせなくなっていたことを踏まえ,店舗ごとに異なるリセットコードを設定することができる盗難防止タグ及び指示信号発信装置を提供し(本件発明1及び4),異なるリセットコードを受信すると警告を出力することができる盗難防止タグを提供し(本件発明2),リセットコードを容易に変更することができる盗難防止タグ,指示信号発信装置及び親指示信号発信装置を提供する(本件発明3,5及び6)という作用効果を有するものということができる。 そして,本件各発明における盗難防止タグにおいては,①識別手段が識別した 指示信号発信装置及び親指示信号発信装置を提供する(本件発明3,5及び6)という作用効果を有するものということができる。 そして,本件各発明における盗難防止タグにおいては,①識別手段が識別した解除指示信号に含まれる「暗号コード」及び暗号記憶手段が記憶する「暗号コード」が一致するか否かを判定し,両者が一致すると判定したときは警報出力手段が作動可能である状態等を解除する解除手段を備え(本件発 明1),②両者が一致しないと判定したときに警告を出力する警告出力手段を備え(本件発明2),③「新暗号コード」への変更を指示する暗号変更指示信号により,その記憶内容を前記「新暗号コード」に更新する(本件発明3)ことにより,上記の作用効果を達成しようとするものである。 また,本件各発明における指示信号発信装置においては,④上記盗難防止タグが受信すべき解除指示信号に含めるための暗号コードを記憶して,解除指示信号を発信する発信手段を備え(本件発明4),⑤親指示信号発信装置が発信する暗号変更指示信号を受信し,これに含まれる新暗号コードにより記憶内容を更新する(本件発明6)ことにより,上記の作用効果を達成しようとするものである。 2 争点(1)ア(被告による被告製品1及び2の製造・販売の有無)について(1) 原告は,被告が盗難防止タグ用リモコン(被告製品3及び4)及びマスターリモコン(被告製品5)だけでなく,盗難防止タグ(被告製品1及び2)も製造し,これをエム・アールビジネスに販売していたと主張する。 しかし,原告の上記主張を直接裏付ける客観的証拠は,何ら存在しない。 この点につき,エム・アールビジネスのB(以下「B」という。)が作成したとする陳述書(甲10)には,被告が盗難防止タグの開発,生産を行っていた旨の記載がある。しかし,上記陳 は,何ら存在しない。 この点につき,エム・アールビジネスのB(以下「B」という。)が作成したとする陳述書(甲10)には,被告が盗難防止タグの開発,生産を行っていた旨の記載がある。しかし,上記陳述書は,Bが直接体験した事実ではなく,エム・アールビジネスの社内の担当者から報告を受けていた事実を記載したにすぎないものである上,そもそもBの上記陳述は証人としての反対尋問によるテストを経ていないものであるから,上記陳述書の内容につき信用性があるとしてこれをただちに採用することはできない。なお,原告は,被告がBに対して証言しないよう圧力を掛けたなどと主張するが,何らの裏付けもなく,採用することはできない。 (2) かえって,被告は,盗難防止タグ及びリモコンの開発経緯等について,次のとおり主張している。 ア被告は,エム・アールビジネスからの依頼を受け,平成24年3月頃から盗難防止タグ及びリモコンの開発に着手した。 当初被告が開発していたものは,「ID無し」すなわちIDの書換えのできない各店舗共通の解除信号による盗難防止タグ及びリモコンであった。また,当初はTI社製マイコンを用いることとしていた。 イ当初の予定では,被告が盗難防止タグ及びリモコンの両方を製造し,エム・アールビジネスに販売する予定であった。 しかし,その後,盗難防止タグについてはエム・アールビジネス側で製造の用意をすることになった。すなわち,①エム・アールビジネスがKDエレクトロニクスに盗難防止タグの製造を委託する,②KDエレクトロニクスが中国の製造会社にケースの製造を依頼するとともに,ヨーホー電子にケースと基板の組立てを依頼する,③完成した製品をKDエレクトロニクスがエム・アールビジネスに納品することとなった。なお,製品の金型はエム・アールビジネスが の製造を依頼するとともに,ヨーホー電子にケースと基板の組立てを依頼する,③完成した製品をKDエレクトロニクスがエム・アールビジネスに納品することとなった。なお,製品の金型はエム・アールビジネスが所有し,中国の製造会社が管理していた。 ウ平成24年12月頃,「ID無し」の盗難防止タグ及びリモコンの試作が出来上がり,評価等を行ったところ,当初予定の性能を有していた。 エム・アールビジネスは,被告に対し,開発費用を同年末までに3回に分けて支払った。 エ平成25年3月頃,TI社製マイコンを用いた「ID無し」盗難防止タグ及びリモコンの量産試作が行われた。その際,盗難防止タグはKDエレクトロニクスが製作し,同社がエム・アールビジネスに納品した。 オ上記エの量産試作の結果,盗難防止タグの1個当たりの単価が269円となることが分かった。エム・アールビジネスはコスト削減を要望し,これを受けてKDエレクトロニクスは,①盗難防止タグに用いるマイコンをTI社製マイコンからルネサス社製マイコンに変更して単価を下げ る,②ルネサス社製マイコンの販売会社とは従前から緊密な取引関係にあるため,同社に対し,ルネサス社製マイコンのプログラム開発及びダウンロードを無料で行わせる旨の提案をした。 このとき,エム・アールビジネスは,マイコンを変更するのであれば「ID有り」の盗難防止タグ及びリモコンに変更したい旨希望した。 他方,被告はルネサス社製マイコンを扱ったことがないため,ルネサス社製マイコン用のプログラム開発については,エム・アールビジネスの依頼を断った。 カ以上の経緯のもと,平成25年4月頃から,①ルネサス社製マイコンの販売会社は,ルネサス社製マイコンを使用した「ID有り」の盗難防止タグの開発をし,②被告は,TI社製マイコンを使用 頼を断った。 カ以上の経緯のもと,平成25年4月頃から,①ルネサス社製マイコンの販売会社は,ルネサス社製マイコンを使用した「ID有り」の盗難防止タグの開発をし,②被告は,TI社製マイコンを使用した「ID有り」の盗難防止タグ用リモコンの開発をすることとなった。 キ 「ID有り」の盗難防止タグ及びリモコンの試作品は平成25年8月頃に完成し,同年12月から量産が行われた。 (3) そして,上記(2)の開発経緯等は,次のとおり,客観的証拠によって裏付けられる部分が少なくない。 アまず,乙21請求書は,KDエレクトロニクスがエム・アールビジネスに対して発行した平成25年3月29日付け請求書であるところ,同請求書には,品名として「SMARTTAGS1(SWITCH)」,数量として「8812」個との記載があり,被告によればこれは「スマートスイッチタグ」を指すというのである(原告も明らかに争わない。)。そうすると,同請求書によれば,盗難防止タグの一つである「スマートスイッチタグ」をエム・アールビジネスに納入したのは,被告ではなく,KDエレクトロニクスということになり,これは,平成25年3月頃にKDエレクトロニクスがエム・アールビジネスに量産試作を納入したという被告の主張と符合する。 イ次に,乙21請求書には,品名として「MSP430G2302IPW14」との記載があるところ,これは証拠(乙23)によればTI社製マイコンを指すものと認められる。そうすると,同請求書によれば,平成25年3月29日当時は,盗難防止タグの一つである「スマートスイッチタグ」にはTI社製マイコンが用いられていたということになり,被告の主張と符合する。 ウまた,乙20見積書は,KDエレクトロニクスがエム・アールビジネスに対して発行した平成25年 マートスイッチタグ」にはTI社製マイコンが用いられていたということになり,被告の主張と符合する。 ウまた,乙20見積書は,KDエレクトロニクスがエム・アールビジネスに対して発行した平成25年5月20日付け見積書であるところ,同請求書には,「ワイヤータグ一式」との記載があるほか,「イニシャル費用」として「基板一式」「実装一式」「ケース金型一式」及び「ケース設計費用」との記載がある。そうすると,同見積書によれば,盗難防止タグの一つである「ワイヤータグ一式」をエム・アールビジネスに納入するとともに,その実装やケース金型の準備,ケース設計等を行ったのは,被告ではなくKDエレクトロニクス側ということになり,KDエレクトロニクスと緊密な取引関係にあるルネサス社製マイコンの販売会社が盗難防止タグの開発をしたという被告の主張と符合する。 エさらに,乙20見積書には,メーカーを「RENESAS」〔ルネサス〕,正式型式を「R5F10368XXXSP#X0」とする部品の記載があるところ,被告によればこれはルネサス製マイコンを指すというのである(原告も明らかに争わない。)。そうすると,同見積書によれば,平成25年5月当時は盗難防止タグの一つである「ワイヤータグ」にはルネサス社製マイコンが用いられていたということになり,これは,同年4月頃にTI社製マイコンからルネサス社製マイコンに変更されたという被告の主張と符合する。 オそして,上記の乙21請求書(平成25年3月29日付け)には「スマートスイッチタグ」の単価が269円である旨の記載があるのに対し, これより後の平成25年12月31日締切分の請求書(乙24。以下「乙24請求書」という。)には「スマートスイッチタグ」の単価が250円である旨の記載がある。これは,同年4月頃にマイコンの変 これより後の平成25年12月31日締切分の請求書(乙24。以下「乙24請求書」という。)には「スマートスイッチタグ」の単価が250円である旨の記載がある。これは,同年4月頃にマイコンの変更等によって単価を下げることとしたという被告の主張と符合する。 カ加えて,エム・アールビジネスの総勘定元帳(甲6)によれば,平成24年7月から同年12月までの間,エム・アールビジネスから被告に対し,合計1500万円が3回に分けて支払われているところ,これも,被告の主張と符合する。 (4) 以上によれば,被告の上記主張をにわかに裏付けがないなどとして排斥することは困難である。 そして,被告の上記主張を排斥することができない以上,上記主張と相容れない事実である,被告が盗難防止タグ自体を開発して製造・販売していたとする原告主張の事実については,これを認めることができないものといわざるを得ない。 (5) 原告の主張に対する判断この点について原告は,以下のとおりるる主張するが,いずれも採用することができない。 アまず,原告は,盗難防止タグ及びリモコンを開発させるに当たっては,「ID無し」か「ID有り」かは最も基本的かつ重要な検討事項であって,特段の理由もなく途中で「ID無し」から「ID有り」へと変更するようなことはあり得ず,当初から「ID有り」の盗難防止タグ及びリモコンの開発をしていたはずであるなどと主張する。 しかし,本件証拠上,被告が当初から「ID有り」の盗難防止タグ及びリモコンの開発をしていたことをうかがわせる証拠は存在しない。原告は当初用いられていたTI社製マイコンの性能は「ID有り」の盗難防止タグ用のものとしても十分であるなどとも主張するが,結局のとこ ろ,推測の域を出るものではない。 かえって,被告は, は当初用いられていたTI社製マイコンの性能は「ID有り」の盗難防止タグ用のものとしても十分であるなどとも主張するが,結局のとこ ろ,推測の域を出るものではない。 かえって,被告は,開発の過程で依頼者の意向により仕様が変更されることも珍しくない旨主張しているところ,必ずしもこの被告の主張を不合理として排斥することはできない。 のみならず,原告代表者のC(以下「C」という。)自身も,本人尋問において,「ID無し」の盗難防止タグを「ID有り」のものに変更したという事実については,これをエム・アールビジネス側から聞いていたと供述している(本人尋問調書18頁。なお,Cは,変更になった理由として,セキュリティー性が必要だったからではないかとの推測まで供述している。)。 以上に照らせば,原告の上記主張は採用することができない。 イ次に,原告は,①エム・アールビジネスから被告への支払が終了したのは平成24年12月31日であるから,「ID無し」の盗難防止タグを「ID有り」のものに変更したのはその後ということになるはずである,②しかるに,平成25年3月29日付けの乙21請求書によれば,「ID有り」の盗難防止タグが上記①からわずか3か月後の時点で8812個も製造されており,整合しない,などと主張する。 しかし,乙21請求書の盗難防止タグが「ID有り」のものであることを示す証拠は何ら見当たらない。 念のために検討しても,被告は,乙21請求書に記載された盗難防止タグはまだ「ID無し」のものであり,その後の同年4月に「ID有り」のものに変更したと主張しているのであって,被告の主張自体が整合しないというわけでもない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ウまた,原告は,盗難防止タグとリモコンは一体として開発 変更したと主張しているのであって,被告の主張自体が整合しないというわけでもない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ウまた,原告は,盗難防止タグとリモコンは一体として開発されるべきであって,先にリモコンだけ制作できるようなものではないなどと主張 する。 しかし,被告は,リモコンの仕様が固まれば,これを元にリモコン信号の受信側である盗難防止タグを開発することができるものであるなどと説明するところ,この説明自体,不自然,不合理であると断じることはできない。この点につき原告は,被告の製造・販売したリモコン(被告製品3及び4)の説明書(甲7)によれば,同リモコンには「タグ生産情報書込」や「タグソフトウェアバージョン設定」の機能があるなどとも指摘するが,被告によれば,これらはいずれもリモコンから盗難防止タグに向けて一方的に送信するものであって,相互通信を行うものではないというのである。そうすると,被告のリモコンに上記機能があるからといって,先にリモコンだけ制作することが不可能ということにもならない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 エ原告は,①乙21請求書には「スマートスイッチタグ」の数量として「8812」個という数字が記載されているが,量産試作としては過大な数量であり,量産品としての製造としか考えられない,②乙21請求書に記載された部品の数は,「スマートスイッチタグ」の数量「8812」個と整合していない,③乙21請求書にはTI社製マイコンである「MSP430G2302IPW14」だけ2行に分けて記載されており,不自然である,④そもそも被告が乙21請求書を所持しているのは不自然であるなどと主張する。そして,原告は,結論として,乙21請求書の発行先が被告ではなくエム・アー 」だけ2行に分けて記載されており,不自然である,④そもそも被告が乙21請求書を所持しているのは不自然であるなどと主張する。そして,原告は,結論として,乙21請求書の発行先が被告ではなくエム・アールビジネスとなっているのは,与信に不安のある被告を委託者とすることができなかったためであると主張する。 しかし,上記①について,被告は,通常,家電量販店の一店舗当たりのタグの使用数量はおおむね5000ないし1万個であり,8812個という個数は,一店舗でテストする数量としては通常の数量であるなど と説明しているところ,この説明自体,特段不自然,不合理な点は見当たらない。 また,上記②及び③についても,部品数の全てが完成品と整合していなければ不自然であるとか,一つの部品が2行に分けて記載されていることから直ちに不自然であるなどと断じることは困難である。 上記④についても,被告は,乙21請求書はコストダウンの問題で必要な情報であるから提供を受けたものであると説明しているところ,この説明も不合理であるとまではいい難い。 そして,結局のところ,「乙21請求書の発行先が被告ではなくエム・アールビジネスとなっているのは,与信に不安のある被告を委託者とすることができなかったため」との原告の主張は,客観的裏付けを欠き,推測の域を出るものではないというべきである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 オさらに,原告は,乙20見積書についても,被告がこれを所持しているのは不自然であるとした上,発行先が被告ではなくエム・アールビジネスとなっているのは,やはり与信に不安のある被告を委託者とすることができなかったためであると主張する。 しかし,上記エと同様,原告の上記主張は客観的裏付けを欠き,推測の域を出るものではな ビジネスとなっているのは,やはり与信に不安のある被告を委託者とすることができなかったためであると主張する。 しかし,上記エと同様,原告の上記主張は客観的裏付けを欠き,推測の域を出るものではないのであって,採用することができない。 カ加えて,原告は,乙24請求書はエム・アールビジネスが被告に対して発行した請求書であり,これによれば被告は「スマートスイッチタグ」500個及び「スマートワイヤータグ」50個を購入しているのであって,これは転売目的で購入したとしか考えられないと主張する。 しかし,被告は,上記の購入はバッテリー等の信頼性試験のためであって,転売などしていないと主張しており,実際,被告が上記盗難防止タグを転売したことをうかがわせる客観的証拠は存在しない。 この点に関して原告は,信頼性試験のためであればエム・アールビジネスから無償で提供されるはずであり,仮にこれを自ら購入して行ったというのであれば,それこそ被告が開発・製造の実質的な責任主体であることの証左であるなどと主張する。 しかし,いずれにせよ,被告が上記の盗難防止タグを転売した証拠は存在しないし,これを自ら購入して信頼性試験を行ったということについても,本件の盗難防止タグ及びリモコンの開発経緯に照らせば,これが著しく不合理であるとも断じ難い。 以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。 キそして,原告は,エム・アールビジネスは,KDエレクトロニクスから「ID有り」の盗難防止タグ(被告製品1及び2)を購入するごとに,被告に対して1個30円のロイヤリティを支払っており,これは被告が「ID有り」の盗難防止タグの開発に関与していたことの証左である旨主張する。 しかし,本件証拠上,このようなロイヤリティの支払がされていることをうかが のロイヤリティを支払っており,これは被告が「ID有り」の盗難防止タグの開発に関与していたことの証左である旨主張する。 しかし,本件証拠上,このようなロイヤリティの支払がされていることをうかがわせる客観的証拠は存在しない。 この点,エム・アールビジネスのBが作成したとする前記陳述書(甲10)には,1個10円から20円のロイヤリティを被告に支払っている旨の記載があるが,原告の主張する金額と整合しないし,ロイヤリティの額が「10円から20円」という幅を持った額で定められるというのも不自然である上,そもそも前述のとおり,Bについては反対尋問によるテストを経ていないのであって,このような陳述書の記載から,直ちにロイヤリティの支払がされている事実を認めることはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 クなお,原告は,「ID有り」の盗難防止タグ(被告製品1及び2)の内部基板にはいずれも「InTTech.AM_TAG」との記載があり,「InTTech」 の「n」は「&」の代わりに用いられたものであることからすると,当該記載は,被告すなわちアイアンドティテック〔I&Tテック〕株式会社の製品であることを示すなどと主張する。 しかし,被告は,被告が当初「ID無し」の盗難防止タグの回路設計を行い,その設計図面をエム・アールビジネスに交付したため,「InTTech.AM_TAG」との記載がされた旨説明するところ,この説明自体,不自然,不合理として排斥すべきほどのものとはいえない。 この点に関して原告は,①設計図面を渡されただけで,内部基板に印刷はしないし,これに続けて「Ver1.1」とまで記載したりはしない,②「I&T」ではなく「InT」という印刷をしていることは,被告の意向を反映した証左である, 計図面を渡されただけで,内部基板に印刷はしないし,これに続けて「Ver1.1」とまで記載したりはしない,②「I&T」ではなく「InT」という印刷をしていることは,被告の意向を反映した証左である,などと主張する。しかし,上記①及び②の主張は,いずれも推測の域を出るものではなく,にわかに採用することができない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ケおって,原告は,①エム・アールビジネスもKDエレクトロニクスも盗難防止タグを開発・製造する能力を有していないのであって,被告が積極的に関与することなく,エム・アールビジネス又はKDエレクトロニクスが盗難防止タグを開発・製造することはできない,②「ID無し」の盗難防止タグは既に他のメーカーからも販売されており,エム・アールビジネスとしてはこれを購入すれば足りるのであって,あえて被告に対して開発を依頼するとは考えられない,③被告に1500万円もの費用を支払っているのであれば,引き続き「ID有り」の盗難防止タグについても被告に開発させるはずである,④量産試作が終わった段階で,マイコンを変更するようなことは考えられない,⑤TI社製マイコンとルネサス社製マイコンの価格差は,マイコンを変更するほどのものではない,⑥ルネサス社製マイコンを購入するからといって,ルネサス社製 マイコンの販売会社がプログラムの開発費を負担するとは考え難い,⑦盗難防止タグの製造メーカーではないエム・アールビジネスが金型を所有するというのは不自然である,⑧被告における盗難防止タグの開発は途中で終了したことになるから,1500万円のうち一部が返還されるべきところ,返還されていない,⑨本件の盗難防止タグ(被告製品1及び2)には,原告の盗難防止タグと共通する部品が用いられており,これは,原告の元 たことになるから,1500万円のうち一部が返還されるべきところ,返還されていない,⑨本件の盗難防止タグ(被告製品1及び2)には,原告の盗難防止タグと共通する部品が用いられており,これは,原告の元従業員であるA(被告代表者)が関与したことの証左であるなどと主張する。 しかし,原告のこれらの主張は,いずれも裏付けを欠くか,単なる推測をいうものにすぎず,採用することができない。 (6) 以上によれば,被告が盗難防止タグ(被告製品1及び2)をも開発して製造・販売していたとする原告主張の事実については,前述のとおり,これを認めることができない。 したがって,争点(1)アにおける原告の主張は理由がない。 3 争点(1)イ(被告による被告製品1及び2のプログラム制作による間接侵害の成否)について原告は,被告が被告製品1及び2に組み込むプログラムを作成し,その製造用に提供した行為は,特許法101条1号の「その物の生産にのみ用いる物の生産,譲渡等」に該当すると主張する。 しかし,前記2で説示したとおり,被告が被告製品1及び2を製造していたと認めるに足りないのであって,本件全証拠に照らしても,被告が被告製品1及び2に組み込むプログラムを作成していた事実もまた認めることができない。 したがって,争点(1)イにおける原告の主張は,その前提を欠くものであって,理由がない。 4 争点(2)ア(被告製品1が本件発明1ないし3の各構成要件を充足するか)及びイ(被告製品2が本件発明1ないし3の各構成要件を充足するか)につい て事案に鑑み,争点(2)ア及びイについても検討する。 前記2及び3のとおり,被告が被告製品1及び2の盗難防止タグを製造・販売している事実及びこれに組み込むプログラムを作成した事実については,本件証拠上認め ,争点(2)ア及びイについても検討する。 前記2及び3のとおり,被告が被告製品1及び2の盗難防止タグを製造・販売している事実及びこれに組み込むプログラムを作成した事実については,本件証拠上認めることができないところであるが,仮にこれらの事実が認められたとしても,被告製品1及び2は,本件発明1の構成要件のうち「暗号コード」(構成要件D1,F1,G1)を充足せず,それゆえ本件発明1並びにその従属項である本件発明2及び3の各技術的範囲に属するものではない。 すなわち,被告製品1及び2は盗難防止タグであり,被告製品3及び4はこれに対応した盗難防止タグ用リモコンであって,原告の主張によれば,被告製品3及び4の発信する解除指示信号を被告製品1及び2が受信するのであり,この解除指示信号に「暗号コード」が含まれるというものである。しかるに,後記5のとおり,被告製品3及び4は「暗号コード」を含むものとは認められないのであるから,これに対応した盗難防止タグである被告製品1及び2もまた,「暗号コード」を含むものとは認められないということになる(なお,被告製品3及び4以外のリモコンが「暗号コード」を含む解除指示信号を発信し,被告製品1及び2がこれを受信する構成になっているなどという主張は,原告もしていない。)。 したがって,争点(2)ア及びイにおける原告の主張は理由がない。 5 争点(2)ウ(被告製品3及び4が本件発明4及び6の「暗号コード」(構成要件A4,B4,B6)を充足するか)について(1) 「暗号コード」の意義「暗号」とは,一般に,「通信の内容が第三者にもれないように,おたがいに約束して使う記号(のしくみ)」(三省堂国語辞典第7版52頁〔甲2〕),「秘密を保つために,当事者間にのみ了解されるようにとり決めた特殊な記号・ことば。あい 内容が第三者にもれないように,おたがいに約束して使う記号(のしくみ)」(三省堂国語辞典第7版52頁〔甲2〕),「秘密を保つために,当事者間にのみ了解されるようにとり決めた特殊な記号・ことば。あいことば。」(広辞苑第4版99頁〔甲5〕), 「第三者に通信内容を知られないように行う特殊な通信(秘匿通信)方法のうち,通信文を見ても特別な知識なしでは読めないように変換する表記法(変換アルゴリズム)のこと」(ウィキペディア〔乙1〕),「秘密にしたい情報をかき混ぜて(暗号)特定の者以外にはその内容が解らないようにすること。」(情報通信用語辞典13頁〔乙3〕),「情報の意味が当事者以外にはわからないように,情報を変換すること」(エンサイクロペディア電子情報通信ハンドブック〔乙17〕)との意味を有するとされている。 また,「コード」とは,「文字や記号,数字などをコンピューターが識別するためにまとめられた符号」(IT用語辞典BINARY〔乙2〕),「データを表現するための一定の明確なルールあるいはそのルールに基づいて表現されたもの」(情報通信用語辞典100頁〔乙3〕)との意味を有するとされている。 以上を前提にすると,本件発明4及び6の構成要件A4,B4及びB6にいう「暗号コード」とは,通信の内容が第三者に知られることのないように,当事者間にのみ了解されるように取り決めた特殊な記号,文字ないし数字をまとめた符号を意味するものと解するのが相当である。 (2) これを被告製品3及び4についてみるに,被告によれば,被告製品3及び4は「ID情報」を有しているが,この「ID情報」とは単なる数字にすぎないものと認められる(原告も明らかに争わず,これに反する証拠も存在しない。)。そうすると,単なる数字にすぎない以上,その内容が「第三者に知られ を有しているが,この「ID情報」とは単なる数字にすぎないものと認められる(原告も明らかに争わず,これに反する証拠も存在しない。)。そうすると,単なる数字にすぎない以上,その内容が「第三者に知られることのないよう」にしたものではないのであるから,被告製品3及び4の「ID情報」は,通信の内容が第三者に知られることのないよう,当事者間にのみ了解されるように取り決めた特殊な記号,文字ないし数字をまとめた符号ではないのであって,「暗号コード」に該当するものとはいえない。 そして,本件全証拠を精査しても,被告製品3及び4が「ID情報」以外 に「暗号コード」に該当するような符号を使用していることを認めるに足りる証拠はないから,本件においては,被告製品3及び4は,構成要件A4,B4及びB6にいう「暗号コード」を充足しないというべきである。 (3) 原告の主張に対する判断この点に関して原告は,本件発明4及び6にいう「暗号コード」とは,コードの一部を任意の数字(信号)を組み合わせたものとしてリセットコードを設定し,送受信するものにすぎず,辞書等における「暗号」の意味とは異なるものであって,このことは本件明細書等の記載からも明らかであると主張する。 しかし,明細書の技術用語は,特に明細書の中で定義して特定の意味に使用している場合を除き,原則として学術用語を用い,その有する普通の意味を用い,かつ特許請求の範囲及び明細書全体を通じて統一して使用されなければならないところ(特許法施行規則24条参照),本件明細書等においては,「暗号コード」の意義に関し,段落【0073】において「『暗号』は4桁の暗号コードである。」と記載されているにすぎず,「暗号コード」ないし「暗号」の意味が原告主張のようなものであることにつき,何らの明確な定義付けもさ に関し,段落【0073】において「『暗号』は4桁の暗号コードである。」と記載されているにすぎず,「暗号コード」ないし「暗号」の意味が原告主張のようなものであることにつき,何らの明確な定義付けもされておらず,また辞書等における「暗号」の意味と異なるなどといった示唆もされていない。したがって,「暗号コード」とは電気通信技術に関する技術的知識を有する当業者が理解する通常の意味で解釈すべきであるから,原告の上記主張は採用することができない。 (4) 以上によれば,争点(2)ウにおける原告の主張は理由がない。 したがって,被告製品3及び4は,その余の点について判断するまでもなく,本件発明4及び6の技術的範囲に含まれない。 6 争点(2)エ(被告製品3及び4が本件発明6の「暗号変更指示信号」(構成要件A6)を充足するか)について事案に鑑み,争点(2)エについても検討する。 (1) 「暗号変更指示信号」の意義本件発明6(請求項7)の構成要件A6は「請求項6記載の親指示信号発信装置が発信する暗号変更指示信号を受信する受信手段を備え,」というものであるところ,請求項6は「請求項3記載の盗難防止タグが備える暗号記憶手段が記憶すべき新暗号コードを設定する暗号設定手段と,盗難防止タグが備える受信手段が受信すべき暗号変更指示信号を,前記暗号設定手段が設定した新暗号コードを含めて受信する発信手段とを備えることを特徴とする親指示信号発信装置。」と記載されている。 そうすると,本件発明6の構成要件A6にいう「暗号変更指示信号」とは,請求項6の「盗難防止タグが備える受信手段が受信すべき暗号変更指示信号」を指すものというべきである。 このことは,①本件明細書等の【図7】には「暗号設定コード」が一つしか記載されておらず,盗難防止タグに対 「盗難防止タグが備える受信手段が受信すべき暗号変更指示信号」を指すものというべきである。 このことは,①本件明細書等の【図7】には「暗号設定コード」が一つしか記載されておらず,盗難防止タグに対する「暗号変更指示信号」と指示信号発信装置に対する「暗号変更指示信号」とが同一のものであることが示唆されていること,②本件明細書等の段落【0075】にも,「リモートコントロールキーRK及び盗難防止タグTは,この暗号変更コード信号を受信し,それぞれの暗号記憶手段に記憶している暗号コードを更新する」として,両者に対する暗号変更指示信号が同一のものであることが示唆されていることとも符合する。 (2) これを被告製品3及び4についてみるに,被告製品3及び4は盗難防止タグ用リモコンであり,そのマスターリモコン(親指示信号発信装置)は被告製品5である。しかるに,被告の主張によれば,被告製品5は被告製品1ないし4の各「ID情報」を書き換えるためのID情報書換信号につき,被告製品1及び2の盗難防止タグと被告製品3及び4の盗難防止タグ用リモコンとで別の信号系列を送信しているというのである(原告も明らかに争わず,これに反する証拠も存在しない。)。 そうすると,仮に被告製品5が被告製品1及び2に対して発信するID情報書換信号が請求項6の「暗号変更指示信号」に該当するとしても,被告製品3及び4の「ID情報」は,「盗難防止タグ(被告製品1及び2)が備える受信手段が受信すべき暗号変更指示信号」によっては書き換えられないから,被告製品3及び4は「請求項6記載の親指示信号発信装置が発信する暗号変更指示信号を受信する受信手段を備え,」との構成要件A6を充足しないということになる。 (3) 原告の主張に対する判断この点に関して原告は,「暗号変更指示信号 親指示信号発信装置が発信する暗号変更指示信号を受信する受信手段を備え,」との構成要件A6を充足しないということになる。 (3) 原告の主張に対する判断この点に関して原告は,「暗号変更指示信号」は「新暗号コード」以外の信号が異なることを排除するものではない旨主張し,その根拠として,①本件明細書等においてはそのような制限がないこと(段落【0029】及び【0031】),②本件各発明の本質からも制限されるべきでないこと,③本件明細書等の段落【0075】の記載等は実施例にすぎないことを挙げる。 しかし,上記①については,本件明細書等の段落【0028】には,請求項6記載のとおり,「盗難防止タグが備える受信手段が受信すべき暗号変更指示信号」として,「暗号変更指示信号」を限定しているのであって,これを受けた段落【0029】の「この親指示信号発信装置」とは,段落【0028】で記載された親指示信号装置であり,盗難防止タグが備える受信手段が受信すべき暗号変更指示信号を発信するものとして記載されている。また,本件明細書等の段落【0030】においては,「請求項6記載の親指示信号発信装置が発信する暗号変更指示信号」である旨を明確にしているところ,これを受けて,段落【0031】は「この指示信号発信装置」と記載しているのである。そうすると,原告の引用する本件明細書等の段落【0029】及び【0031】をみる限りでも,本件発明6にいう「暗号変更指示信号」とは,請求項6の「盗難防止タグが備える受信手段が受信すべき暗号変更指示信号」を指すことが明らかである。 さらに,上記②についても,原告のいう「本件発明の本質」が何を指すのかは,原告の主張からも明らかであるとはいい難く,このような抽象的な概念のみによって「暗号変更指示信号」の意義を一義的に解する さらに,上記②についても,原告のいう「本件発明の本質」が何を指すのかは,原告の主張からも明らかであるとはいい難く,このような抽象的な概念のみによって「暗号変更指示信号」の意義を一義的に解することは困難である。 そして,上記③についても,本件明細書等の段落【0075】の記載等が実施例にすぎないとしても,いずれにせよ原告の主張するような構成は請求項6及び7には記載されておらず,本件明細書等にも何ら開示されていないところである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (4) 以上によれば,争点(2)エにおける原告の主張は理由がなく,被告製品3及び4はこの点でも本件発明6の技術的範囲に属さない。 7 結論よって,その余の点について判断するまでもなく,本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 瀬孝 裁判官 勝又来未子 (別紙)被告製品目録 1-1 製品名スマートスイッチワイヤータグ(110㎜ワイヤー)物品の種類盗難防止自鳴タグ取付方式ワイヤー式1-2 製品名スマートスイッチワイヤータグ(220㎜ワイヤー)物品の種類盗難防止自鳴タグ取付方式ワイヤー式 2 製品名スマートスイッチタグ物品の種類盗難防止自鳴タグ取付方式貼付 ー)物品の種類盗難防止自鳴タグ取付方式ワイヤー式 2 製品名スマートスイッチタグ物品の種類盗難防止自鳴タグ取付方式貼付け式 3 製品名スマートタグ用ハンディリモコン型番 SMT-SHHR物品の種類盗難防止自鳴タグ用リモコン型式ハンディ型リモコン 4 製品名スマートタグ用デスクトップリモコン型番 SMT-SDTR物品の種類盗難防止自鳴タグ用リモコン型式デスクトップ型(卓上型)リモコン 5 製品名スマートタグ用マスターリモコン型番 SMT-MHHR物品の種類盗難防止自鳴タグ用マスターリモコン型式ハンディ型リモコン

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