昭和27(う)235 名誉毀損被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和28年3月9日 高松高等裁判所 破棄自判
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      被告人を罰金五千円に処する。      右罰金を完納することができないときは金二百円を一日に換算した期間 被告人を労役場に留置する。      原

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判決文本文3,812 文字)

主文 原判決を破棄する。 被告人を罰金五千円に処する。 右罰金を完納することができないときは金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 原審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。 理由 弁護人唐津志都磨の控訴趣意は別紙記載の通りである。 控訴趣意第一点中理由くいちがいの論旨について。 論旨は、原判決はその事実摘示においてくいちがいがあると主張する。仍て検討するに原判決は被告人が昭和二十六年三月二十日発行の旬刊新聞「A」の紙上にB及びCに関する原判示の如き記事を執筆掲載してその頃右新聞数百部を購読者に頒布した事実を右両名の名誉を毀損した行為と認定した趣旨であること明かであり、原判決が事実摘示の後段において「右掲載の事実中Bが右の如く不当高額の二重請求した点やCが決算せず取支報告をもせず又でたらめをしているとかいう事実はその真実たることの証明なきもの」と判示したのは原判示記事中の重要な点について真実なることの証明がないことを判示したものであり、如何なる点が名誉毀損になるかの点につき必ずしも所論の如く原判決の事実摘示にくいちがいがあるとはいえない。論旨は理由がない。 同第一点中事実誤認の論旨について。 (一) 論旨はBに関する記事中不当高額の二重請求をした点についてはその真実なることの立証がなされていると主張する。しかし論旨摘録の証人D、同E、同Fの原審公判廷における各証言(原審第二回及び第四回各公判調書参照)によつてはFが被告人又はDに対し原判示記事内容の如き事実を話したことを認め得るに止まり未だ本件記事内容が客観的に真実であることを認めるに十分でなく、その他原審が取調べた各証拠に徴するもBに関する原判示記事内容が真実であることの証明があつたものと き事実を話したことを認め得るに止まり未だ本件記事内容が客観的に真実であることを認めるに十分でなく、その他原審が取調べた各証拠に徴するもBに関する原判示記事内容が真実であることの証明があつたものとは見られない。尚同人に関する原判示記事中二重請求の点が所論の如く重要ならざる細目に関する点であるとはいえない。 (二) 論旨はCに関する記事中同人が決算をせず収支報告もせず又でたらめをしているという点については真実なることの証明がなされていると主張する。而して所論の如く原審における証人B、同Cの各証言(原審第二回公判調書参照)に徴すればG株式会社においてはその会計年度は六月一日より翌年五月三十一日迄であつてその年度末に決算報告をすることと定められていることを認め得るけれども、本件記事はCは帳簿も全部握つていて当然決算或は収支報告をすべきであるに拘らずこれをしないとの趣旨であるから、当時未だ年度末でないから右Cが決算報告をしなかつたという事実が認められるとしても直ちに右記事の内容が真実であるとはいえない。原審が取調べた各証拠を検討してもCに関する原判示記事内容が真実であることの証明がなされたものとは見られない。またCが種々でたらめをしているとの点が所論の如く本件記事中重要ならざる細目に該当する部分であるとはいえない。 <要旨>(三) 論旨は次に被告人は本件記事内容は真実であると信じていたものであるから犯意がないと主張する。仍て先</要旨>ず刑法第二百三十条の二の場合において摘示事実が真実であることの証明がなされなかつたとしても行為者が事実の真実であることを信じていたときは犯意の成立を阻却するや否やの点につき考察するに、刑法第二百三十条の二は同条所定の要件を充たす名誉毀損行為については真実なることの証明があつたときはこれを罰しない旨規定している ことを信じていたときは犯意の成立を阻却するや否やの点につき考察するに、刑法第二百三十条の二は同条所定の要件を充たす名誉毀損行為については真実なることの証明があつたときはこれを罰しない旨規定しているから当該摘示事実が真実であることの証明がなされたときは行為の違法性を阻却するものと謂はなければならない。従て行為者が摘示事実を真実なりと信じた場合は行為の違法性阻却事由を認識していた場合であり犯意の成立を阻却するものと一広謂うことができる。しかし本条の場合は所論の如く行為者が単に事実を真実と信じたのみで犯意が阻却されると解するは相当でなく、刑法第二百三十条の二が真実なることの証明があつたときのみこれを罰しない旨規定していることとにらみ合せて考えるときは、行為者において摘示事実が真実であると信ずることが健全な常識に照し相当と認められる程度の客観的状況の存在が立証されたとき初めて犯意の成立を阻却するものと解しなければならない。今本件につき観るに被告人はFよりB及びCに関する原判示の如き事実を聞くや右事実は徳原が他より聞いた事実であるに拘らずその真否を十分確めることなく漫然その言を材料として旬刊新聞に本件記事を執筆掲載したことを本件証拠上認め得るに止まり、原審が取調べた各証拠に徴するも被告人が本件摘示事実が真実であると信ずることが相当と認められる状況は未だこれを認めることができない。従つて本件においては被告人に犯意がなかつたものと見ることはできない。 これを要するに本件全証拠に徴するも原判示記事内容が真実であるとの証明があつたとはいえずまた被告人に犯意がなかつたとは見られず、原判決の認定は蓋し相当であつて所論の如き事実誤認は認められない。従って論旨は採用できない。 同第二点について。 論旨は原審の訴訟手続には判決に影響を及ぼす法令の違反があると なかつたとは見られず、原判決の認定は蓋し相当であつて所論の如き事実誤認は認められない。従って論旨は採用できない。 同第二点について。 論旨は原審の訴訟手続には判決に影響を及ぼす法令の違反があると謂うのである。 (一) 原審第三回公判調書(昭和二十六年十一月十九日の公判)に徴すれば証人H及び証人Iの各尋問に際し尋問前宣誓を命じ且つ偽証の罰を告げた旨の記載のないこと所論の通りでおる。しかし昭和二十六年最高裁判所規則第十五号による改正前の刑事訴訟規則第四十四条によれば証人に宣誓を命じたこと及び偽証の罰を告げたことは公判調書の所謂必要的記載事項とされていないから公判調書にその旨の記載がないからといつて直ちにこれ等の手続が履践されなかつたものと見ることはできない。而して前記公判調書の末尾にはH及びIの各宣誓書が添付されて居り且っ証人尋問前の手続につき訴訟関係人より異議の申立がなされた形跡はなくその他右各手続が行われなかつたことを窺うに足る資料も存しないから証人の宣誓及び偽証の罰の告知等の手続は寧ろ適法に行わしたものと認めるを相当とする。 (二) 原審第四回及び第五回各公判調書に徴すれば証人B、同J、同Cを各再尋問するに際し裁判官はさきになした宣誓の効力を維持する旨告げ新に宣誓をさせていないこと所論の通りである。しかし裁判所が同一の証人を重ねて尋問する場合に前回なされた宣誓を維持することによつてあらためて宣誓手続をなすことを省略しても手続法違背とならないことは従来旧大審院が判例として認めたところであり、新刑事訴訟法の下においてもこれを違法とすべき理は見出せない。従て前掲各証人の再尋問に際し前回の宣誓の効力を維持した原審の措置が刑事訴訟法第百五十四条刑事訴訟規則第百十八条等の規定に違背するものとはいえない。 これを要するに原審の訟訴手続に所論 見出せない。従て前掲各証人の再尋問に際し前回の宣誓の効力を維持した原審の措置が刑事訴訟法第百五十四条刑事訴訟規則第百十八条等の規定に違背するものとはいえない。 これを要するに原審の訟訴手続に所論のような違法は認められず、論旨は理由がない。 同第三点について。 論旨は原判決の量刑は不当であると謂うのである。仍て本件記録を精査して考察するに被告人はFの言を軽信して十分その真否を確めることなく「A」なる題号の旬刊新聞に原判示の如き記事を執筆掲載してB及びCの各名誉を毀損したことは相当責むべきであるけれども、被告人は嘗て物価統制令違反罪により一回罰金に処せられたことがある外前科のないこと、本件行為は被告人の正義感情より発したものであることが窺えることその他諸般の情状を彼此斟酌すれば原審が本件について禁錮刑を選択(禁錮一月但し一年六月間執行猶予)したのは科刑稍重きに失すると認められる。従て論旨は理由がある。 仍て刑事訴訟法第三百八十一条第三百九十七条により原判決を破棄し同法第四百条但書の規定に従い当裁判所において自判することとする。 罪となるべき事実及びこれを認める証拠は原判決の示す通りである。 (法令の適用)Bの名誉毀損の点につき刑法第二百三十条第一項第二百三十条の二第一項罰金等臨時措置法第二条第三条Cの名誉毀損の点につき刑法第二百三十条第一項第二百三十条の二第三項罰金等臨時措置法第二条第三条刑法第五十四条第一項前段第十条(Bの名誉を毀損した罪の刑に従い罰金刑選択)刑法第十八条刑事訴訟法第百八十一条仍て主文の通り判決する。 (裁判長判事坂本徹章判事塩田宇三郎判事浮田茂男) 裁判長 判事坂本徹章 判事塩田宇三郎 判事浮田茂男

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