主文 1 本件訴えのうち、別紙「差止めを求める行為の目録」第6項に係る被告の機関による行為の差止めを求める部分を却下する。 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨(1) 被告は、別紙「差止めを求める行為の目録」記載の行為をしてはならない。 (2) 被告は、原告ら各自に対し、各金10万円及びこれに対する平成8年3月5日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 2 請求の趣旨に対する答弁(本案前の答弁)請求の趣旨第1項の訴えをいずれも却下する。 (本案の答弁)原告らの請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要 1 事案の概要本件は、米作農家及び米の消費者である原告らが、米の作付け面積を減少させることによって生産調整を行ういわゆる減反政策について人格権を根拠にして、被告に対し、別紙「差止めを求める行為の目録」(以下「差止行為目録」という。)記載の各行為の差止めを求めるとともに、被告が減反政策に基づいて平成4年から平成6年に行った違法な行為によって経済的損害ないし精神的損害を被ったと主張し、国家賠償法1条に基づく損害賠償として、被告に対し、それぞれ10万円の支払及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成8年3月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。 2 争点及び当事者の主張当事者の主張は別紙「当事者の主張」記載のとおりである。 原告らは、人格権に基づいて差止行為目録記載の各行為の差止めを求め、また、いわゆる減反政策を実施することによって公権力の行使に当たる公務員が原告らに違法に損害を加えたとして、損害賠償を求めている。これに対して、被告は、原告らの人格権に 記載の各行為の差止めを求め、また、いわゆる減反政策を実施することによって公権力の行使に当たる公務員が原告らに違法に損害を加えたとして、損害賠償を求めている。これに対して、被告は、原告らの人格権に基づく差止請求は、主張自体失当であるかその適法性に疑問があると主張し、却下ないし棄却判決を求め、また、減反政策に係る公務員の行為には国家賠償法1条1項の「違法」はないし、原告らが賠償を求める損害はいずれも同項にいう損害に当たらず、因果関係もないから原告らの損害賠償請求は失当であると主張し、棄却判決を求める。 したがって、本件の争点は以下のとおりである。 (1) 原告らの差止請求の適否(争点1)(2) 原告ら主張の人格権を根拠とする差止請求自体の可否及び差止めを認めるに足りる事実の有無(争点2)(3) 原告らの損害賠償請求を基礎づける違法行為及び損害の有無(争点3)第3 当裁判所の判断 1 事実関係及び関係法令の定め(以下に記載の事実のうち、証拠等を掲記したもの以外は当事者間に争いのない事実又は弁論の全趣旨によって認められる事実である。)(1) 当事者別紙当事者目録中「生産者原告」とされている者(以下「生産者原告ら」という。)は、いずれも日本国内において米の生産に従事してきた者であり、同目録中「消費者原告」とされている者(以下「消費者原告ら」という。)は、主食として米を消費してきた者である(弁論の全趣旨)。 (2) 食糧管理法(昭和17年法律第40号。主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(平成6年法律第113号。以下「食管法」という。)付則3条により廃止。)の規定と生産調整ア食管法による食糧管理制度の概要食管法は、国民食糧の確保及び国民経済の安定を図るため食糧を管理しその需給及び価格の調整並びに流通の規制を行うことを目的とする法 により廃止。)の規定と生産調整ア食管法による食糧管理制度の概要食管法は、国民食糧の確保及び国民経済の安定を図るため食糧を管理しその需給及び価格の調整並びに流通の規制を行うことを目的とする法律であり(食管法1条)、概要以下のような制度を定めていた(なお、法令は、原則として、原告らが本訴の対象としている平成4年ないし平成6年当時のものである。)。 (ア) 基本計画及び供給計画の策定農林水産大臣は、毎年、基本計画と称して、米穀の管理に関する基本方針、米穀の管理の方法に関する基本事項、米穀の需給見通しに関する事項、政府の管理すべき米穀の数量並びにその用途別、品質別及び流通における管理の態様別の数量の見通しに関する事項、その他米穀の管理に関する重要事項、米穀の管理に関する基本計画を定める(食管法2条の2第1項及び第2項)。また、農林水産大臣は、毎年、消費者に対する米穀の適正かつ円滑な供給を確保するため、基本計画に即して、供給を予定する米穀の数量並びにその用途別、品質別及び流通における管理の態様別の数量等の米穀の供給に関する実施計画を定める(食管法8条)。 (イ) 生産者に対する政府への売渡義務基本計画によって政府が管理するものとされた米穀の数量については、その数量を基礎として、原則として個々の生産者に配分され、政府への売渡義務が課される(食管法3条1項本文、食糧管理法施行令(昭和22年政令第330号。上記の平成7年政令第355号附則2条の規定により平成7年11月1日に廃止されたもの。以下「食管法施行令」という。))政府に売り渡すべき米穀に関する政令(昭和30年政令第134号。主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成7年政令第355号)附則2条の規定により平成7年11月1日に廃止されたもの。以下「旧売渡 る政令(昭和30年政令第134号。主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成7年政令第355号)附則2条の規定により平成7年11月1日に廃止されたもの。以下「旧売渡令」という。)1条の2ないし1条の4)。ただし、後記(オ)のとおり、自主流通に係る販売のための委託をしてする売渡しとして出荷される米穀(以下「自主流通米」という。)については、政府への売渡義務が解除されることとなる(食管法3条1項ただし書、食管法施行令1条の4)。 (ウ) 政府買入価格の決定と政府米の売渡し米穀の政府買入価格は、毎年、生産費及び物価その他の経済的事情を参酌し、米穀の再生産を確保することを旨として定めるものとされている(食管法3条2項、食管法施行令2条)。 政府が買い入れた米穀(以下「政府米」という。)は供給計画に即して卸売業者等に売却される(食管法4条1項)。この売却価格の基準となる標準売渡価格(食管法4条2項、食管法施行令2条の3)は、農林水産大臣が毎年、家計費及び物価その他の経済事情を参酌し、消費者の家計を安定させることを旨として定めるものとされている(食管法4条3項、食管法施行令2条の2)。 (エ) 米穀の流通に係る規制米穀の集荷の業務を行う者は農林水産大臣の指定を、米穀の卸売りの業務又は小売の業務を行う者は都道府県知事の許可を必要とし、農林水産大臣ないし都道府県知事の指導・監督に服することとなる(食管法8条の2、8条の3)。そして、生産者による政府米・自主流通米としての売渡し、右の許可を受けた販売業者による売渡し等を除いて、米穀の有償譲渡等が規制されている(食管法9条、食管法施行令8条ないし12条)。また、米穀等の輸出入については農林水産大臣の許可制とされている(食管法11条)。 政府米、自主流通米ともに、農林 て、米穀の有償譲渡等が規制されている(食管法9条、食管法施行令8条ないし12条)。また、米穀等の輸出入については農林水産大臣の許可制とされている(食管法11条)。 政府米、自主流通米ともに、農林水産大臣の指定する集荷業者(1次集荷業者及び2次集荷業者)を経て集荷され、都道府県知事の許可する販売業者(卸売業者及び小売業者)を経て消費者に供給されることとなる(食管法3条、4条、8条の2、8条の3)。 (オ) 自主流通米について指定法人(1次集荷業者が直接又は間接に組織する全国の区域を地区とする法人であって、一定の要件を備え、かつ、農林水産大臣の指定を受けた者をいう。)が農林水産大臣の認可を受けて定めた自主流通計画に即して流通させる自主流通米は、政府を通じることなく売買される(食管法3条1項ただし書、食管法施行令1条の4)。 イ米の政府買入制度の沿革及び概要(ア) 沿革政府は、昭和30年以降、それまでの米の供出割当制に代えて、収穫前に生産者から事前売渡申込み(予約)を受け、これに基づいて政府への売渡義務数量を定めるとの制度を採用し、当初は生産者が事前売渡申込み(予約)をした数量は無制限に買入れを行うこととしていたが、昭和46年以降、旧売渡令の改正により申込限度数量を設け、一定限度に限り買入れを行うこととした。なお、その後、昭和56年に食管法の改正により、農林水産大臣が、政府の管理すべき米穀の数量等を定める米穀の管理に関する基本計画を策定すると規定されたことから(前記ア(ア)参照)、政府への売渡義務は政府の管理すべきものとされた米穀数量を基礎として定められることとなった(食管法(同年法律第81号による改正後のもの。)3条1項本文、前記ア(イ)参照)。 (イ) 概要生産者ごとの予約限度数量については、過去の政府への売渡の数量及び 基礎として定められることとなった(食管法(同年法律第81号による改正後のもの。)3条1項本文、前記ア(イ)参照)。 (イ) 概要生産者ごとの予約限度数量については、過去の政府への売渡の数量及び当該年度の転作等目標面積を基礎として、基本計画により政府が管理すべきものとされた米穀の数量を農林水産大臣が都道府県別申込限度数量として配分し、都道府県知事が市町村別申込限度数量を、市町村長が生産者別申込限度数量を、それぞれ配分することとされている(旧売渡令1条の2ないし1条の4)。 上記の予約限度数量の配分後、政府米及び自主流通米について、農林水産大臣は売買条件を定めるとともにこれを公示して政府への申込みを受け付け、生産者が、生産者別申込限度数量の範囲内で事前売渡申込みを行うと、これを市町村長に通知する(旧売渡令1条、2条)。通知を受けた市町村長は、その数量を政府買入基準数量として定め、文書で生産者に指示する(旧売渡令3条)。 このように配分される生産者ごとの政府買入基準数量が食管法3条1項の政府に売り渡すべき米穀の数量(売渡義務が課される数量)となる(旧売渡令9条)。ただし、政府に売り渡すべき米穀の数量のうち、自主流通米として売渡しの委託をした米穀については、この売渡義務が解除されることとなり、残った数量が政府の買い入れる米穀の数量として、毎年4月5日までに市町村長から生産者に文書で通知される(旧売渡令9条の2第1項)。 ウ食管法下における米の生産調整(ア) 米の生産調整の経緯昭和41年以降米の自給率が100パーセントとなり、昭和42年から昭和44年には米の生産量はいずれの年も1400万トンを超え、消費量(1200万トンないし1250万トン)を大きく上回った。そこで、政府は、昭和44年度において、「稲から今後生産を伸ばす必要のある 昭和44年には米の生産量はいずれの年も1400万トンを超え、消費量(1200万トンないし1250万トン)を大きく上回った。そこで、政府は、昭和44年度において、「稲から今後生産を伸ばす必要のある飼料作物、園芸作物等への自主的な作付転換を誘導すること」との農林次官通達によって、対象面積を1万ヘクタールとし、奨励金を10アール当たり2万円とする生産調整を開始した。また、翌昭和45年度には、他の作物への転作や休耕などの方法のいかんを問わず、10アール当たり3万5000円の奨励金を交付するという形で生産調整を実施した。そして、昭和46年以降は、奨励金を交付する等の形による生産調整に加え、前記イのとおり、予約限度数量を設け、買入数量を限定することとした。 政府は、昭和46年以降、以下の名称を付して生産調整を行っている。 a 稲作転換対策昭和46年度から昭和50年度までb 水田総合利用対策昭和51年度から昭和52年度までc 水田利用再編対策(a) 第1期昭和53年度から昭和55年度まで(b) 第2期昭和56年度から昭和58年度まで(c) 第3期昭和59年度から昭和61年度までd 水田農業確立対策(a) 前期対策昭和62年度から平成元年度まで(b) 後期対策平成2年度から平成4年度までe 水田営農活性化対策平成5年度から平成7年度まで(イ) 米の生産調整の仕組み(甲17、18の1、乙3、弁論の全趣旨)米の生産調整は昭和53年度以降は、3年を1期とする対策として実施され、農林水産大臣が米の需給状況に応じた転作等基本目標面積を定めるなどして行われたが、その具体的な仕組みは平成5年度から実施された水田営農活性化対策では以下のとおりであり、平成4年度における水田営農活性化対策においてもほ 需給状況に応じた転作等基本目標面積を定めるなどして行われたが、その具体的な仕組みは平成5年度から実施された水田営農活性化対策では以下のとおりであり、平成4年度における水田営農活性化対策においてもほぼ同じ仕組みとなっていた。 a 生産調整目標面積の配分農林水産大臣は、他用途利用米等を含む米の計画的な生産の確保及び水稲作と転作を組み合わせた生産性の高い水田営農の推進を図るため、関係団体の意見を聴いて、対策期間(3年間)を通ずる米の需給状況に応じた生産調整に係る基本面積である転作等目標面積を定めることとされている。 そして、農林水産事務次官の発した通達上、転作等目標面積は、行政機関と農業団体とが一体となって、国から都道府県、市町村を経て生産者まで配分することとされている。 まず、都道府県別の転作等目標面積は、農林水産大臣及び全国農業協同組合中央会(以下「全中」という。)会長が協議調整の上決定し、都道府県知事及び都道府県農業協同組合中央会(以下「都道府県中」という。)会長に通知する。次に、市町村別の生産調整目標面積は、都道府県知事及び都道府県中会長が協議調整の上決定し、市町村長及び農業組合等(以下「農協等」という。)の代表者に通知する。 そして、生産者別の生産調整目標面積は、市町村長及び農協等の代表者が協議調整のうえ決定し、生産者に通知する。 b 生産調整の態様生産調整としての転作等とは、次の、転作、調整水田、水田預託、自己保全管理、土地改良通年施行、他用途利用米生産、需要開発米生産及び実績算入の8態様をいう。生産者が生産調整を実施するに当たっては、これらの態様のいずれかを選択することができる。なお、平成4年度に実施されていた「水田農業確立対策」において生産調整が行われたものとすることができるのは、上記から調整水田を除いた7態様である。 は、これらの態様のいずれかを選択することができる。なお、平成4年度に実施されていた「水田農業確立対策」において生産調整が行われたものとすることができるのは、上記から調整水田を除いた7態様である。 (a) 転作対象水田における稲以外の作物の作付け又は対象水田の転換畑、林地、養魚池、養魚水田、レクリエーション農園、施設園芸用施設の設置に係る土地若しくは農業生産に必要な施設の敷地への転換をいう。 (b) 水田預託転作を目的として対象水田を次の①から⑤までのいずれかの法人に預託することをいう。 ①農業協同組合、②市町村、③都道府県、④土地改良区、⑤農業の振興を目的とする公益法人(民法34条の規定により設立された法人であって、地方公共団体が、社団法人にあっては総社員の表決権の過半数を保有し、財団法人にあっては寄附財産の額の過半を拠出しているものに限る。)(c) 自己保全管理農林水産省農蚕園芸局長が別に定める地域において対象水田を常に耕作可能な状態に管理することをいう。 (d) 土地改良通年施行土地改良事業又はこれに準ずる事業を通年施行により実施することをいう。 (e) 他用途利用米生産他用途利用米実施要綱(昭和59年4月28日付け59食糧業第447号農林水産事務次官依命通達)の定めるところにより他用途利用米(食糧管理法施行規則(昭和57年農林水産省令第1号)別表第1第1号の2に規定する他用途利用米をいう。)の生産を行うことをいう。 (f) 需要開発米生産食糧庁長官が別に定めるところにより需要開発米の生産を行うことをいう。 (g) 実績算入対象水田を稲作以外の用途に利用すること又はこれに準ずることであって、農林水産省農蚕園芸局長が定めるところにより転作等として取り扱うことをいう。 c 生産調整の実効性を確保するための措置 績算入対象水田を稲作以外の用途に利用すること又はこれに準ずることであって、農林水産省農蚕園芸局長が定めるところにより転作等として取り扱うことをいう。 c 生産調整の実効性を確保するための措置生産調整の実効性を確保するため、以下のような措置が講じられていた。 (a) 生産調整助成金の交付平成2年から平成4年までに実施された水田農業確立対策においては、転作、水田預託、自己保全管理又は土地改良通年施行を実施した生産者に対して水田農業確立助成補助金が交付された。 また、平成5年から平成7年までに実施された水田営農活性対策においては、転作、調整水田、水田預託、自己保全管理又は土地改良通年施行を実施した生産者に対して水田営農活性化助成補助金が交付された。 (b) 生産調整未達成部分の翌年度以降の加算等生産調整目標が未達成の都道府県があった場合は、翌年度の当該未達成都道府県への目標面積の配分に当たり、その未達成面積を当該都道府県の目標面積に加算して配分し、都道府県知事及び都道府県中はこれに準じて未達成市町村に、市町村長及び農協等の代表者はこれに準じて未達成生産者にそれぞれ未達成面積を加算して配分することとした。 また、新規開田が行われた都道府県については、翌年度以降の都道府県への目標面積の配分に当たり、その新規開田相当面積が加算され、特に新規開田のあった年度の翌年度については、新規開田面積の2倍の面積が加算されることとされた。生産目標が未達成の場合と同様に、新規開田相当面積の加算は、市町村を通じて当該生産者に加算して配分されることとなる。 さらに、米の事前売渡限度数量についても、その割当てに当たって生産調整目標面積等を基礎としており(旧売渡令1条の2ないし1条の4)、生産調整目標面積が加算されれば加算された面積に見合う米の作付け面積が減 に、米の事前売渡限度数量についても、その割当てに当たって生産調整目標面積等を基礎としており(旧売渡令1条の2ないし1条の4)、生産調整目標面積が加算されれば加算された面積に見合う米の作付け面積が減少することとなるため、翌年度数量の割当てに当たり、加算された面積に相当する米の数量を控除することとされていた。 (c) 関連する施策の取扱い農林水産省所管の水田農業に関連する事業について、生産調整に関連が深い特定の事業については、原則として、生産調整面積を達成している市町村を対象に事業採択を行い(すなわち、達成していない市町村は事業採択の対象とならない。)、これ以外の関連事業における新規採択及び予算配分については、生産調整目標を達成している市町村の要請に優先的に配慮するとの運用を行っていた。 (ウ) 米の政府買入制度と生産調整の関係予約限度数量は、旧売渡令1条の2ないし1条の4において、「その年度の生産の転換の目標を基礎として定める」とされていることなどから明らかなように、予約限度数量と転作等目標面積は表裏の関係にあり、潜在作付面積から転作等目標面積を差し引いた面積に単収を乗じて得られる総米生産量から農家消費等を差し引いた数量が予約限度数量となる。 エ米の生産量、消費量等の推移米の生産量、消費量等の推移は以下のとおりである。なお、総生産量、総消費量及び各年10月末持越在庫量の単位はいずれも玄米万トンである。 会計年度総生産量作況指数総消費量各年10月末持越(年産) 在庫量昭和60年 11,662 104 10,849昭和61年 11,647 105 10,796 102昭和62年 10,627 102 10,647 222昭和63年 9,935 97 2 104 10,849昭和61年 11,647 105 10,796 102昭和62年 10,627 102 10,647 222昭和63年 9,935 97 10,584 209平成元年 10,347 101 10,527 147平成2年 10,499 103 10,484 109平成3年 9,604 103 10,513 108平成4年 10,573 101 10,502平成5年 7,834 74(3) 食糧法の制定とその規定及び生産調整ア食糧法の制定平成6年12月14日に、食糧法が公布され、平成7年11月1日(輸出入関係規定は同年4月1日)から施行された。これに伴い、食管法は廃止された(食糧法附則3条)。 イ食糧法に基づく新たな食糧制度の概要(ア) 食糧法の目的等食糧法は、主要な食糧である米穀及び麦が主食としての役割を果たし、かつ、重要な農産物としての地位を占めていることにかんがみ、米穀の生産者から消費者までの計画的な流通を確保するための措置並びに政府による主要食糧の買入れ、輸入及び売渡しの措置を総合的に講ずることにより、主要食糧の需給及び価格の安定を図り、もって国民生活と国民経済の安定に資することを目的とする(食糧法1条)。 そして、政府は、米穀の需給及び価格の安定を図るため、米穀の需給の適確な見通しを策定し、これに基づき、計画的にかつ整合性をもって、米穀の需給の均衡を図るために生産調整の円滑な推進、米穀の供給が不定する事態に備えた備蓄の機動的な運営及び消費者が必要とする米穀の適正かつ円滑な流通の確保を図るとともに、米穀の適切な買入れ、輸入及び売渡しを行うものとするとされている(食糧法2条1項) の供給が不定する事態に備えた備蓄の機動的な運営及び消費者が必要とする米穀の適正かつ円滑な流通の確保を図るとともに、米穀の適切な買入れ、輸入及び売渡しを行うものとするとされている(食糧法2条1項)。 (イ) 米穀の流通制度についてa 食糧法は、農林水産大臣が、米穀の需給及び価格の安定を図るため、毎年3月31日までに、米穀の需給及び価格の安定に関する基本計画(以下「基本計画という。」を定めるものとし(食糧法4条1項、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律施行令(以下「食糧法施行令」という。)4条)、また、基本計画を作成するに当たっては、当該基本計画が米穀の生産者の適確な営農活動に資するものとなるよう、その前年の11月30日までに、その計画的な生産及び出荷の指針となるべきもの(以下「指針」という。)を定め、公表するものとしている(食糧法4条3項)。 b 基本計画においては、消費者に対し計画的な供給を図る米穀の数量としての計画流通数量や、生産者からの計画的な出荷がなされる米穀の数量としての計画出荷数量を定めることとし(食糧法3条4項、5項、4条)、米穀の生産者は、その生産した米穀のうち、計画出荷数量を基礎として農林水産大臣が米穀の生産者ごとに定める数量に係る米穀(計画出荷米)について、自主流通米ないし政府米として売り渡し、又は売渡しを委託しなければならないとしている(食糧法5条1項)。これに対し、計画出荷米以外の米穀は、あらかじめ売渡しに係る数量を農林水産大臣に届け出ることによって売り渡すことができ(同条5項)、流通ルートの多様化・弾力化が目指されている。ここでいう自主流通米とは、計画出荷数量に係る米穀のうち生産者から登録出荷取扱業者に売り渡され、又は売り渡しが委託されるものであって農林水産大臣の認可を受けた自主流通計画に従い流通するもの れている。ここでいう自主流通米とは、計画出荷数量に係る米穀のうち生産者から登録出荷取扱業者に売り渡され、又は売り渡しが委託されるものであって農林水産大臣の認可を受けた自主流通計画に従い流通するものであって、他方、政府米とは、計画出荷数量に係る米穀のうち生産調整実施者から政府が買入れ、売り渡すもの等であり(食糧法3条6項、7項)、いずれも計画に従った流通が予定されていることから、両者を合わせて計画流通米と定義されている(食糧法3条8項)。 (ウ) 米穀の全体供給の調整米穀の生産調整の具体的な内容については、後記ウ、工のとおりであるが、食糧法は、基本計画において米穀の生産の目標その他米穀の生産調整に関する事項を定めるものとし、政府は、生産調整実施者の売渡しの申込みに応じて、その生産した米穀を買い入れるものとしている(食糧法4条2項3号、59条1項)。食糧法において、このように生産調整実施者からのみ米穀を買い入れることとしていることから、生産者は、生産調整を実施したときは、市町村長の確認を受けることとされている(食糧法施行令3条)。 また、食糧法は、米穀の生産量の減少によりその供給が不足する事態に備え、必要な数量の米穀を在庫として保有することを米穀の備蓄と定義した上(食糧法3条3項)、基本計画で上の目標数量を定めることとし(食糧法4条2項4号)、政府は、米穀の備蓄の円滑な運営を図るため、米穀の買入れを行うものとしている(食糧法59条1項)。また、いわゆるガット・ウルグアイ・ラウンド交渉において、米穀のミニマム・アクセス輸入の実施が国際的に約束されたが、食糧法は、基本計画において、米穀の輸入数量に関する事項を定めることとした(食糧法4条2項8号)。 ウ新生産調整推進対策食糧法が施行された翌年の平成8年度からは「新生産調整推進対策実施 れたが、食糧法は、基本計画において、米穀の輸入数量に関する事項を定めることとした(食糧法4条2項8号)。 ウ新生産調整推進対策食糧法が施行された翌年の平成8年度からは「新生産調整推進対策実施要綱」と題する農林水産事務次官依命通達(平成8年5月10日付け8農産第1550号)に従って、新生産調整推進対策が実施された。 この要綱は、まず、需要に応じた生産を行うことは、本来、生産者及び生産者団体が主体的に取り組むべき課題であり、従来の対策においては、農業者及び農業団体の主体的責任を持った取組を基礎に行政機関及び農業者団体等各地域における関係者が一体となって推進してきたところであるとした上、食糧法においては、生産調整が米穀、特に自主流通米の受給と価格の安定を図るために行われるものであることが明確に位置付けられており、これまで以上に農業者及び農業者団体等が主体的かつ積極的に取り組むことが必要であるとの基本的な認識を示したのち、(ア)ないし(ウ)のとおり、生産調整に関する具体的な定めをしている(乙1)。 (ア) 生産調整対象水田面積の決定手続について食糧法下で行われる新生産調整推進対策における生産調整対象水田面積の決定手続は、おおむね以下のとおりであって、新生産調整推進対策実施要綱においては、食糧法施行令に規定されている決定方法(後記a)に先立って、後記bないしdのとおり生産調整対象水田面積の調整が行われることとされている(乙1)。 a 生産調整対象水田面積は、基本計画における米穀の生産の自標を基礎として、都道府県別、市町村別、農業者別の順に決定される(食糧法施行令2条)。 baの手続に先立ち、農林水産大臣は、関係団体の意見を聴いて、生産調整対象水田面積のガイドラインを定め、これに基づいて、c及びdのとおり、都道府県別、市町村別及び農業者 れる(食糧法施行令2条)。 baの手続に先立ち、農林水産大臣は、関係団体の意見を聴いて、生産調整対象水田面積のガイドラインを定め、これに基づいて、c及びdのとおり、都道府県別、市町村別及び農業者別の生産調整対象水田面積のガイドラインが定められる。 c 農林水産大臣及び全中会長は、都道府県別の生産調整対象水田面積のガイドラインを決定し、これを都道府県知事及び都道府県中会長に通知する。都道府県知事及び都道府県中会長は、都道府県別のガイドラインを基に市町村別の生産調整対象水田面積のガイドラインを決定し、これを市町村長及び農協等の代表者に通知する。 d 市町村長及び農協等の代表者は、生産調整の実施方針を生産者に提示してその意向を聴いた上で、農業者別の生産調整対象水田面積のガイドラインを決定し、これを生産者に通知する。 さらに、生産者・農業者団体等の主体的な取組みによる関係者の合意の下に当該年度限りの措置として生産者別のガイドラインの調整を行うことができる。この場合には、関係者の合意が円滑に得られるよう、生産調整の実施に伴う経済的不利益を補うために、生産者が拠出して基金を造成し、生産調整を実施したものに補償金を支払う「とも補償」の取組を活用するものとするとされている。 edの調整の後、aのとおり、農林水産大臣から都道府県別、市町村別、農業者別の順に生産調整対象水田面積が決定される。農業者別生産調整対象水田面積は、市町村長及び農協等の代表者から各生産者に文書で通知される。この通知を受けた者は、食糧法施行令3条及び主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律施行規則(以下「食糧法施行規則」という。)4条に基づき、生産調整実施計画(以下「実施計画」という。)を作成し、市町村長に提出するものとされている。 (イ) 生産調整の態様(乙1)新生産調整推進対 行規則(以下「食糧法施行規則」という。)4条に基づき、生産調整実施計画(以下「実施計画」という。)を作成し、市町村長に提出するものとされている。 (イ) 生産調整の態様(乙1)新生産調整推進対策において生産調整が行われたものとすることができるのは、次の転作、調整水田、水田預託、多面的機能水田、自己保全管理、土地改良通年施行又は実績算入の7態様である。なお、実績算入以外の6態様によって生産調整を行う場合には、新生産調整推進助成補助金の交付対象となるが、実績算入の方法によって生産調整を行う場合には、同補助金の交付対象とはならない。 a 転作次のいずれかに該当するものをいう。 (a) 稲以外の作物の作付けを行うことをいう(cの(a)、dの(a)及び(b)並びにgに該当するものを除く。)。(食糧法施行規則6条1号に該当)(b) 対象水田を転換畑、養魚水田又は施設園芸用施設の設置に係る土地へ転換し、利用すること。(同規則6条2号に該当)(c) 作付けを行った稲について出穂期以降糊熟期以前の稲の刈り取りを行うこと。(同規則6条3号に該当)(d) 作付けを行った稲についてホールクロップサイレージ用として刈取りを行うこと。(同規則6条3号に該当)(e) 飼料の用に供する米穀の生産を行うこと。(同規則6条4号に該当)(f) 対象水田を林地、養魚池又は農業生産に必要な施設の敷地に転換し、利用すること。(同規則6条5号に該当)b 調整水田対象水田を水を張ることにより常に水稲の生産力が維持される状態に管理することをいう。(同規則6条2号に該当)c 水田預託転作(景観形成作物の作付けを行うこと及び対象水田をレクリエーション農園に転換し、利用することを含む。以下この項において同じ。)を目的として対象水田を①から⑤までのいずれかの法人に預託するこ 預託転作(景観形成作物の作付けを行うこと及び対象水田をレクリエーション農園に転換し、利用することを含む。以下この項において同じ。)を目的として対象水田を①から⑤までのいずれかの法人に預託することであって、(a)から(c)までのいずれかに該当するものをいう。(同規則6条5号に該当)①農業協同組合、②市町村、③都道府県、④土地改良区、⑤農業の振興を目的とする公益法人(民法34条の規定により設立された法人であって、地方公共団体が、社団法人にあっては総社員の表決権の過半数を保有し、財団法人にあっては寄付財産の額の過半を拠出しているものに限る。)(a) 管理転作預託された対象水田(以下「預託水田」という。)について使用貸借による権利の設定が行われ転作が実施されていることをいう。 (b) 保全管理預託水田について使用貸借による権利の設定が行われることを期して柱書きの①から⑤のいずれかの法人により常に耕作可能な状態に管理されていることをいう。 (c) 管理農園預託水田について農業協同組合に対して使用貸借による権利の設定を行い、当該農業協同組合がその組合員の行う農業に必要な施設の用に供することをいう。 d 多面的機能水田次のいずれかに該当するものをいう。 (a) 景観形成作物景観形成作物の作付けを行うことをいう(cの(a)に該当するものを除く。)。(同規則6条1号に該当)(b) レクリエーション農園対象水田をレクリエーション農園に転換し、利用することをいう(cの(a)に該当するものを除く。)。(同規則6条2号に該当)(c) 学童農園等預託水田について地方公共団体に対して使用貸借による権利の設定を行い、当該地方公共団体が学童農園等として活用することをいう。(同規則6条5号に該当)(d) その他(a)から(c)に準ずるも 等預託水田について地方公共団体に対して使用貸借による権利の設定を行い、当該地方公共団体が学童農園等として活用することをいう。(同規則6条5号に該当)(d) その他(a)から(c)に準ずるものとして、水田の多面的機能が発揮されるものをいう。(同規則6条2号ないし5号に該当)e 自己保全管理対象水田を常に耕作可能な状態に管理することをいう(gに該当するものを除く。)。(同規則6条2号に該当)f 土地改良通年施行土地改良事業又はこれに準ずる事業を通年施行により実施することをいう。(同規則6条2号に該当)g 実績算入対象水田を稲作以外の用途に利用すること又はこれに準ずることで、新生産調整推進対策実施要綱に定められているところにより転作等として取り扱われるものである。 (ウ) 生産調整の推進のための措置生産調整の実効性を確保するため、以下のような措置が講じられた(乙1、弁論の全趣旨)。 a 生産調整助成金の交付国は、実施計画に基づいて前記(イ)の生産調整の態様のうち、転作、調整水田、水田預託、多面的機能水田、自己保全管理又は土地改良通年施行を実施した生産者に対して、新生産調整推進助成補助金を交付している。 b とも補償事業に対する補助金の交付国は生産調整を地域で円滑に実施するため、地域の合意に基づき、生産調整の実施に伴う不利益を相互に補償し合う取組みであるとも補償事業に対し新生産調整推進対策地域調整推進事業費補助金を交付している。その額は、とも補償事業への参加率が4分の3以上の場合は10アール当たり2万円又は1万2000円、3分の2以上の場合は10アール当たり1万2000円である。 c 生産調整実施者に対する自主流通米計画流通対策費の交付国は、相当量の自主流通米を確保するため、安定的な出荷や販売ルートに応じた円滑 3分の2以上の場合は10アール当たり1万2000円である。 c 生産調整実施者に対する自主流通米計画流通対策費の交付国は、相当量の自主流通米を確保するため、安定的な出荷や販売ルートに応じた円滑な出荷・流通が図られるよう、助成金を交付しているが、その交付対象とする生産者は、生産調整の円滑な推進に資するよう、生産調整実施者としている。 d 生産調整実施者からの米の政府買入れ生産調整の円滑な推進にかんがみ、政府は、生産調整実施者又は生産調整実施者から直接又は間接に委託を受けた者から米穀を買い入れるものとしている(食糧法59条1項)。 e 生産調整の円滑な実施に必要な条件整備事業の推進国は、農業生産体制強化総合推進対策基本要綱(平成7年4月1日付け農林水産事務次官依命通達7農蚕第1839号)を定め、生産調整対象水田面積が達成されているなどの要件を満たす区域において、生産調整への取組みの推進及び効率的な水田営農の実現に必要な各種事業(水田営農推進事業)が実施される場合には、予算の範囲内において、その事業に要する経費等を補助することとしている。 f 補助事業等の優先配慮措置農林水産省において同省所管の補助事業のうち、水田営農と関連する優先補助事業の実施については、原則として、市町村生産調整推進基本計画等が策定されており、かつ、生産調整の目標を達成している市町村又は生産調整の目標の達成がその事業の実施により確実と認められる市町村の要請に優先的に配慮するものとし、その旨を都道府県知事及び関係団体の長にも要請している(平成8年5月10日付け農林水産事務次官依命通達8農産第1566号)。 また、特定の制度資金について、生産調整の目標を達成している市町村の生産者、生産調整に伴い必要となる農業機械の取得のために資金を必要とする者等を優先する等の措 務次官依命通達8農産第1566号)。 また、特定の制度資金について、生産調整の目標を達成している市町村の生産者、生産調整に伴い必要となる農業機械の取得のために資金を必要とする者等を優先する等の措置が講じられている。 g 食糧法下の生産調整において採用されなかった措置について(a) 生産調整未達成部分の翌年度以降の加算の廃止前記(2)ウ(イ)c(b)のとおり、かつては、生産調整が未達成であった場合には、翌年度の生産調整目標面積に加算して配分されていたが、平成8年度以降は、かかる措置は廃止された(乙1)。 (b) 補助事業の不採択措置の廃止前記(2)ウ(イ)c(c)のとおり、かつては、農林水産省所管の水田農業に関連する事業について、生産調整に関連が深い特定の事業については、原則として、生産調整面積を達成している市町村を対象に事業採択を行い、達成していない市町村は事業採択の対象とならないものとしていたが、平成8年度以降は、かかる措置は廃止された(乙1)。 エ緊急生産調整推進対策平成6年以降4年間豊作が続き、米の需給は緩和基調で推移し、自主流通米の価格も下落した。そこで、農林水産省は、平成10年度及び平成11年度に実施する米の生産調整について、平成9年11月20日に「新たな米政策大綱」と題する省議決定を行い、生産調整の規模等について、平成12年10月末の国産米在庫を200万トンまで縮減すること、平成10年度の生産調整目標面積は96万3000ヘクタール(平成9年度と比較して、17万6000ヘクタールの拡大。)とすることなどを決定した。その具体的な実施要綱等は、「緊急生産調整推進対策実施要綱」と題する農林水産事務次官依命通達(平成10年4月8日付け10農産第1400号)等によって策定され、新生産調整推進対策実施要綱は廃止された(乙2) 的な実施要綱等は、「緊急生産調整推進対策実施要綱」と題する農林水産事務次官依命通達(平成10年4月8日付け10農産第1400号)等によって策定され、新生産調整推進対策実施要綱は廃止された(乙2)。 この要綱も、ウと同様、需要に応じた生産を行うこととは、本来、生産者及び生産者団体が主体的に取り組むべき課題であるとした上、特に食糧法下における生産調整対策においては、農業者及び農業者団体等が主体的かつ積極的に取り組むことが一層求められているとの基本的な認識を示したのちに、具体的な定めをしている(乙2)。 (ア) 生産調整対象水田面積の決定手続について(乙1、2)緊急生産調整推進対策における生産調整対象面積の決定手続きはおおむね新生産調整推進対策実施要綱下における決定手続と同様であり、前記ウ(ア)bないしdのとおり、食糧法4条1項に基づく都道府県別、市町村別、農業者別の生産調整対策水田面積の決定に先立ち、農林水産大臣等が生産調整目標面積を決定する。これは、新生産調整推進対策実施要綱においてガイドラインと称されていたものに相当する。 (イ) 生産調整の態様(乙1、2)緊急生産調整推進対策実施要綱において生産調整が行われたものとすることができるのは、新生産調整推進対策実施要綱と同様、生産調整実施計画に基づいてされた転作、多面的機能水田、調整水田、水田預託、自己保全管理、土地改良通年施行又は実績算入の7態様である。 (ウ) 生産調整の推進のための措置生産調整の実効性を確保するため、以下のような措置が講じられた(乙2)。 a 緊急生産調整推進対策水田営農確立助成補助金(以下、「助成金」という。)国は、望ましい水田営農の実現に取り組む農業者・地域を支援するため、生産調整実施計画に基づいて、生産調整を実施した農業者について、その調整の方法に応 営農確立助成補助金(以下、「助成金」という。)国は、望ましい水田営農の実現に取り組む農業者・地域を支援するため、生産調整実施計画に基づいて、生産調整を実施した農業者について、その調整の方法に応じて(転作、多面的機能水田、調整水田、水田預託、自己保全管理又は土地改良通年施行の6態様に限定され、実績算入は除かれる。)、bの生産調整を実施した生産者に対し、とも補償金の交付対象者とするとともに、助成金を交付することとし、さらにこの助成金の交付はcの稲作経営安定対策と一体的に実施するものとしている。 また、全国農業協同組合連合会は、水田飼料耕作物生産振興基金を造成し、助成金の交付対象者であって飼料作物に係る転作を実施した者で一定の交付規準を満たす者などに対し、助成金を交付することとしている(「水田飼料作物生産振興事業実施要綱」平成10年4月8日付け農林水産事務次官依命通達10畜B第568号)。 b 米需給安定対策(とも補償金の交付)国は、全国各地の生産者の拠出と国の助成による資金を造成し、この資金から生産調整の取組の実体に応じてとも補償金を交付する対策を実施するものとしている。 c 稲作経営安定対策(補てん金の交付)食糧法28条3項所定の自主流通法人は、この対策に加入しようとする米穀の生産者と生産加入契約を締結した上、生産者の拠出及び国の助成により造成した資金を用い、加入契約者のうちbのとも補償金の交付対象者に対し、自主流通米の価格下落が稲作経営に及ぼす影響を緩和するための補てん金を交付することとしている。 d 生産調整実施者からの米の政府買入れ及び補助事業等の優先配慮措置前記ウ(ウ)d及びfと同様に、生産調整実施者からの米の政府買入れ(食糧法59条1項)、農林水産省所管の補助事業に係る優先的な配慮措置等が行われることとされている 入れ及び補助事業等の優先配慮措置前記ウ(ウ)d及びfと同様に、生産調整実施者からの米の政府買入れ(食糧法59条1項)、農林水産省所管の補助事業に係る優先的な配慮措置等が行われることとされている(「緊急生産調整推進のための条件整備について」平成10年4月8日付け農林水産事務次官依命通達10農産第1413号」。 2 争点1について(1) 差止行為目録第6項に係る訴えについて原告らは、差止行為目録第6項において、被告の機関による同項(1)ないし(5)記載の各行為の差止めを求めている。 原告らが本訴において求めている差止行為目録記載の行為を差し止める請求は、一定の行為によって原告らの人格権が侵害されることを根拠として、裁判所の判決により、その一定の個別具体的な行為を差し止めることを求めるものであるから、既判力の客観的範囲を画し、審理の対象、範囲を明らかにするために、審判の対象である差止めを求める行為が個別具体的に特定される必要があると解すべきである(民事訴訟法133条、民事訴訟規則53条1項参照)。そして、既判力をもって確定される判決の効力が及ぶ範囲を明確にするためには、本件のような一定の行為の差止めを求める訴えにおいては、少なくとも、差止めを求める主体を明らかにするとともに代表的行為を明示した上で社会通念上差止めを求める行為とそうでない行為とを明確に区別できる程度に特定して記載することが必要であると解すべきである。 このことからすると、本件の差止行為目録第6項に係る訴えのうち、被告の機関による各行為の差止めを求める部分は、原告らが差止めを求める行為の主体すら明らかにされていないため、結局、差止めを求める行為を個別具体的に特定しているものとは認められず、かかる訴えは請求の特定を欠くものとして不適法といわなければならない。 したがっ める行為の主体すら明らかにされていないため、結局、差止めを求める行為を個別具体的に特定しているものとは認められず、かかる訴えは請求の特定を欠くものとして不適法といわなければならない。 したがって、本件訴えのうち、差止行為目録第6項の被告の機関による行為の差止めを求める部分は不適法なものとして却下を免れない。 (2) 被告の主張について被告は、原告らの差止請求について、客観訴訟の実質を有するからその適法性に疑問があると主張する。 しかし、原告らは、本訴において、差止行為目録記載の各行為によって、原告らの人格権が侵害されるとしてその差止めを求めていることは明らかであって、このように人格権という主観的権利の侵害を根拠にして請求をしている以上、本訴は主観訴訟と解さざるを得ず、その成否は本案の問題であって、被告が主張するように、原告らの差止請求が客観訴訟に当たり不適法であると解することはできない。 その他、被告は、本案前の主張として、差止行為目録記載の各行為の差止めを求める訴えの適法性について種々の疑問を呈しており、本訴の訴訟法的な性格が民事訴訟であるか行政訴訟としての当事者訴訟であるかを問わず、その適法性に疑問がないわけではないが、この点はさておき本案について判断する。 3 争点2について(1) 人格権に基づく差止請求について原告らは、人格権に基づいて差止行為目録記載の各行為の差止めを求めているところ、このような請求に関する実体法上の明文の規定はないが、生命・身体の安全のように個人が一個の人格的存在として生存するに不可欠な重大な保護法益が違法に侵害され、又は侵害されるおそれのある場合には、物権的請求権に準じて、人格権に基づき、加害者に対し、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、私法上の権利として、侵害 に侵害され、又は侵害されるおそれのある場合には、物権的請求権に準じて、人格権に基づき、加害者に対し、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、私法上の権利として、侵害行為の差止めを求めることができると解するのが相当である。 もっとも、このようないまだ人格権侵害の事実が発生していない段階でこれを予防するために差止請求権を行使するには、物権に基づく妨害予防請求権の行使の際と同様に、請求者がその主張する人格権侵害を受けることもあり得るという抽象的な可能性があるだけでは足りず、その侵害発生の蓋然性が客観的にみて極めて大きいものと認められることが必要であると解すべきである。 そこで、以下、原告らが主張する「生存権的人格権」及び「米を作る権利としての人格権」について、①それが人格権の一内容を構成する重大な保護法益に係るものといえるかどうか、②人格権の一内容を構成するとした場合に、当該人格権に基づいて差止行為目録記載の各行為の差止請求権の行使を認めるに足りる事実の存否について検討する。 (2) 生存権的人格権に基づく差止請求権についてア原告らは、減反政策が今後も継続されると、原告ら及びその子孫に対して飢餓を招く高度の危険を生じさせることから、原告らの人格権を侵害すると主張し、人格権に基づいて差止行為目録記載の各行為の差止めを求めている。 この主張は、減反政策が、稲の作付け面積を減少させることにより、主食として日本人の生存に重要な役割を担っている米の生産量を抑制し、もって米の需給の均衡等を図るものである以上、その実施の方法や態様等によっては主食の枯渇という事態を引き起こし、原告らの生命・身体に重大な影響を及ぼす可能性があり、減反政策によって、原告らの生命・身体が侵害されるおそれがあるというものである。 このような生 態様等によっては主食の枯渇という事態を引き起こし、原告らの生命・身体に重大な影響を及ぼす可能性があり、減反政策によって、原告らの生命・身体が侵害されるおそれがあるというものである。 このような生命・身体に係る権利利益は、個人の生存にとってもっとも核心的な権利であって、人格的生存に不可欠な重大な保護法益として人格権としての保護を受けるというべきである。 イ次に、原告らの生命・身体が侵害されるおそれが発生する蓋然性が客観的にみて極めて大きいか否かについて検討する。 食糧法制定以後の食糧制度及び生産調整の態様は、前記1(3)に記載のとおりであって、政府が食糧法の下で行っている生産調整は、需給の均衡を図る観点から、3年ごとの米の需要及び供給を勘案して生産調整対象水田面積を算定するものであって、いたずらに生産面積を減少させたり、米の需給がひっ迫するような不合理な生産調整対象水田面積を決定しているものではなく、むしろ、政府の食糧管理制度を通じて需給の均衡を図り、米の暴落を防ぎ、生産者を保護しようとするものである。もっとも、生産調整の目的がこのようなものであったとしても、このような政策が長期的に継続されると、原告らの指摘するように、米の作付可能な水田面積が減少することにより我が国全体における米の客観的な生産能力が低下するとともに、農業就業者の米作への意識を減退させることにより、米作農家の減少を招き人的な面からも米の生産能力が低下し、米の自給率が大幅に低下するおそれがあることは否定できず、この点において原告らの指摘は傾聴に値するものである。 しかしながら、米の生産調整は少なくとも法律的には個々の生産者に対して直接的な強制力を有するものではないし、前記1(2)エの生産量、総消費量等や、前記1(3)ウ(イ)、同エ(イ)のとおり、生産調整の実施方法に ら、米の生産調整は少なくとも法律的には個々の生産者に対して直接的な強制力を有するものではないし、前記1(2)エの生産量、総消費量等や、前記1(3)ウ(イ)、同エ(イ)のとおり、生産調整の実施方法には、ほかの作物の栽培を行う転作や水稲の生産力が維持される状態に管理する調整水田なども認められていることからすると、現時点においては、生産調整が直ちに近い将来における米の自給率の大幅な低下をもたらす蓋然性が客観的にみて明らかであるとまではいい難い。また、仮に、近い将来に我が国が米の自給が困難な状況に陥ったとしても、原告らが指摘するように、世界的な人口増加や食糧増産の可能性等から長期的な視点での不安材料がないとはいえないものの、ガット・ウルグアイ・ラウンド等により、我が国に米のさらなる輸入が求められている国際的な状況に照らすと、このことが、直ちに我が国の国民の生存に必要な食糧の枯渇という事態に結びつくものでないことは明らかである。したがって、政府が減反政策を政策として実行し、被告が差止行為目録記載の各行為を行ったとしても、それによる原告らの生命・身体等に対する侵害発生の蓋然性が客観的にみて極めて大きいとは認めることはできない。すなわち、原告らの指摘する点は、長期的な視点からすると傾聴に値するものではあるが、司法的判断によって政府の政策を差し止める理由としては不十分であり、その内容の是非につき十分な時間をかけて国民的な議論を行い、民主的手続に則った政策決定の際に考慮すべき事項というべきであって、証人Aの証言によって認められるように、同証人の考える減反に代わる生産調整ですら大多数の農民の支持を得られない現状においては、今、直ちに減反政策を差し止めることはできない。 原告らは、平成5年度に米不足を来したことをもって、政府の行っている生産調整が原告ら る生産調整ですら大多数の農民の支持を得られない現状においては、今、直ちに減反政策を差し止めることはできない。 原告らは、平成5年度に米不足を来したことをもって、政府の行っている生産調整が原告らの生命・身体等を侵害する具体的な危険があると主張するものと思われる。確かに、同年から翌年にかけて、消費者が米の入手のために少なからざる負担を強いられたことは記憶に新しいことであるが、その負担の程度からすると、このことをもって国民の生命・身体に対する侵害が発生したと評価し難いのはもちろんのこと、その発生の蓋然性が客観的にみて極めて大きいとも評価し難い。その上、平成5年度に発生した米不足は、同年の作況指数が74と近年にない極端な不作に見舞われたこと(これは公知の事実である。)がその主たる原因であったというべきであって、政府の行う生産調整が直接の原因であると判断することはできない。 前述のとおり、生産調整は、国内の米の需給の均衡を図り、米の需給バランスが大幅に供給過剰になった場合の国内の米の生産者に与える悪影響及びそれが国内の食糧需給にもたらす悪影響を防止する側面を有するものであるから、生産調整自体には合理性があり、しかも、同年度のように予測し難い天候不順等によってほとんど過去に例をみないような不作によって米不足が生じたにもかかわらず、上記のように国民の生命・身体等に対する侵害が発生したとまでは認められないのであるから、この点からしても、減反政策の実施により現時点において、国民の生命・身体等に対する侵害発生の蓋然性が客観的にみて極めて大きいとは到底認めることができない。 原告らは、これに関連して、国産米の入手が困難になるおそれ自体が原告らの人格権を侵害するかのように主張する。しかしながら、本件全証拠によっても国産米以外に主食として適当なものがないと できない。 原告らは、これに関連して、国産米の入手が困難になるおそれ自体が原告らの人格権を侵害するかのように主張する。しかしながら、本件全証拠によっても国産米以外に主食として適当なものがないとは認められないのであるから、国産米を食べること自体は個人の人格的生存に直接結びつくものであるとはいい難く、このことが差止請求権を基礎づける人格権の内容をなすとは認め難い。既に説示したとおり、差止請求権を基礎づける人格権の内容を構成するのは個人の生存に不可欠な重大な保護法益に限定すべきものである。 以上によると、原告らの主張する生存権的人格権に基づいて差止行為目録記載の各行為の差止めを求めることはできないというべきである。 (3) 米を作る権利としての人格権に基づく差止請求権についてア原告らは、米を作る権利としての人格権に基づいて差止請求を行い、米を作る権利としての人格権について、自ら米作を職業として選択し、これを遂行することによって自己実現を図るものであるとし、減反政策は、かかる自己実現を阻害し人格権侵害を構成すると主張する。 原告ら主張の点が差止請求を基礎づける人格権の内容を構成するものか否かについては疑問がないでもないが、前記第2の1(3)のとおり、現行の食糧法の下においては、食管法が生産者に対し政府への米の売渡し義務を課し、原則的に米の流通を政府が一元的に管理するものとしていたものを変更し、自主流通米を流通の基本に据えるとともに、政府米の位置づけは、米の備蓄の目的のものとしている。食糧法の枠組みにおいてもなお、農林水産大臣が基本計画を定め、計画流通米(政府米及び自主流通米)の数量に係る事項を定めるものとされ、このような基本計画に基づいて個々の生産者が自主流通米として第一次取扱業者に売り渡す数量の上限が定まることとなり(食糧法5条) 計画流通米(政府米及び自主流通米)の数量に係る事項を定めるものとされ、このような基本計画に基づいて個々の生産者が自主流通米として第一次取扱業者に売り渡す数量の上限が定まることとなり(食糧法5条)、また、政府が米を買い入れるのは生産調整実施者に限られることとされているが(食糧法59条)、他方で、自主流通米として売り渡す数量は、生産調整を実施しているかどうかに関わりなく割り当てられるものであり(前記1(3)ウ(ウ)g(a)のとおり、食管法下での生産調整において存在していたいわゆる未達加算も食糧法下においては廃止されている。)、また、農林水産大臣が基本計画をもって策定する計画流通米(政府米及び自主流通米)以外の米については、あらかじめ販売数量を農林水産大臣に届け出れば売り渡すことができるのであって、政府が直接に関与しない米の流通形態が予定されているから、食糧法が米の流通の基本を自主流通米と位置づけていることを併せて考えてみると、生産者原告らが生産調整を実施しないという選択をしても少なくとも食糧法上は不利益を被るものではない。 また、前記1(3)のとおり、食糧法の下において行われる生産調整は、農林水産大臣が基本計画を定め、計画米に係る流通量を定め、生産調整水田面積を決定することとなるが、すべての水田に作付けをすることができなくなるものではなく、生産調整を実施しなかった場合に、政府買入れが認められない、生産調整推進に係る助成補助金の交付を受けられない等の不利益を受けることとなるが、食糧法及び食糧法下において行われる生産調整において、米を作ることそれ自体が法的に認められないなどということはない。 以上のような食糧法の概要及び食糧法の下における生産調整に照らすと、食糧法下の生産調整においては、そもそも米を作ることそれ自体が法的に制限されるもの 自体が法的に認められないなどということはない。 以上のような食糧法の概要及び食糧法の下における生産調整に照らすと、食糧法下の生産調整においては、そもそも米を作ることそれ自体が法的に制限されるものではなく、需給の均衡等の観点から、一定の面積について生産調整が要請されるものにすぎない。そして、これに従わなかった場合についても、法律上、生産した米の出荷の道が閉ざされるわけではないし、事実上も米を作ることそれ自体が禁止されるという効果が生ずるわけではなく、政府買入れが認められない、補助金の交付を受けられないといった不利益を受けるにすぎないものである。 そうすると、減反政策によって原告らの職業選択の自由それ自体が侵害されているとはいい難く、このような意味での原告らの権利が侵害されているとは認められないから、原告らが主張する米を作る権利の侵害とは、結局、米の政府買入れが認められないとか補助金の交付が受けられないとか融資の際に不利益に扱われることであるといわざるを得ない。しかし、既に述べたとおり、米を作ることそれ自体が禁止されるものではなく、そこで生産したものを売却できるかどうかは需要と供給のバランスの問題であるから、生産した米を政府が無制限に買い入れないことをもって人格的生存に必要不可欠な権利を侵害されたなどということができないのは明らかである。また、生産調整実施者は、自らの意思に基づくものとはいえ結果的に職業選択の自由を制限されたに等しい状態に置かれるのであるから、国がその損失のいく分かを補償するために補助金等を交付し、優先的に融資を行うことには合理的な理由がある。これに対し、生産調整をしない者は、上記のとおり、職業選択の自由を制限されてはいないのであるから、補助金の交付を受けられず、優先的な融資を受けられないのは当然の結果というべきであり、 的な理由がある。これに対し、生産調整をしない者は、上記のとおり、職業選択の自由を制限されてはいないのであるから、補助金の交付を受けられず、優先的な融資を受けられないのは当然の結果というべきであり、このことが原告らの主張する米を作る権利を侵害するものとは認め難い。 なお、原告らは、減反政策は生産者に対して強制的に行われていると主張するが、前記のとおり、減反政策は法的に強制力を有しているものではないし、事実上も、原告らのうちに減反を実施していない者がいることからも明らかなとおり、減反を実施しないことも不可能ではない。原告らが強制であると主張することは、結局、被告又はその機関が法令に基づいて行っているものではなく、個々の生産者の属する地方公共団体の職員や、同一地域に属する他の生産者らが、前記新生産調整推進政策実施要綱及び緊急生産調整推進対策実施要綱にいう主体的な取組として当該地方公共団体や地域に割り当てられた生産調整を達成するために強度の説得等を行うことを指しているものと解される。このような説得行為等は、社会的相当性を逸脱する場合には不法行為となり得ることはいうまでもないが、それが個々人の主体的な判断によってされる以上、たとえ前記各要綱によって触発されたものであっても、減反政策自体を違法とするものではなく、あくまで個々の行為を特定して個別的に解決すべきものであるから、原告らの主張を採用することはできない。 イしたがって、原告らの主張する米を作る権利としての人格権に基づいて差止行為目録記載の各行為の差止めを求めることはできないというべきである。 (4) 結論以上のとおり、原告らの差止請求はいずれもその根拠を欠き、認められない。 4 争点3について(1) 生産者原告らは、被告が生産調整に関する通達を発し、その通達に従って平成4年度ないし平成 ) 結論以上のとおり、原告らの差止請求はいずれもその根拠を欠き、認められない。 4 争点3について(1) 生産者原告らは、被告が生産調整に関する通達を発し、その通達に従って平成4年度ないし平成6年度において全国の減反面積と各県への割当面積を指示したことが、生産者原告らの米を作る権利を侵害する違法な行為であると主張し、国家賠償法に基づいて損害賠償を求めている。また、消費者原告らは、仮に凶作が発生したとしても国内の米が不足しない程度の米を確保すべき注意義務を負っているにもかかわらず、農林水産大臣が平成5年度の減反目標面積(転作等基本目標面積)を定めたことに基づき実施された減反により、米の著しい不足を来したことが、消費者原告らの生存権的人格権を侵害する違法な行為であると主張し、国家賠償法に基づいて損害賠償を求めている。 (2) そこで、まず、平成4年度ないし平成6年度において、いわゆる減反政策を実行したことが、国家賠償法1条1項にいう「違法」なものと評価できるかどうかを検討する。 ア食管法(原告らが本訴の対象としている平成4年ないし平成6年当時のもの。 以下同じ。)は、前記1(2)アのとおり、国民食糧の確保及び国民経済の安定を図るために食糧を管理しその需給及び価格の調整並びに流通の規制を行うことを目的とする法律であり、農林水産大臣は、米穀の管理に関する基本計画を定め、その基本計画に即して、供給を予定する米穀の数量等の具体的な供給計画を定めるものとされていた。政府による米の生産調整が行われるに至った経緯及びその具体的内容は、前記1(2)ウのとおりであって、米の生産量が消費量を大きく上回ることとなったことから、需給の均衡を図るために実施されるようになったものである。本訴の対象とされている平成4年ないし平成6年においては、食管法の規定に基づい であって、米の生産量が消費量を大きく上回ることとなったことから、需給の均衡を図るために実施されるようになったものである。本訴の対象とされている平成4年ないし平成6年においては、食管法の規定に基づいて農林水産大臣が定める基本計画、供給計画に基づいて米の生産量が決定され、それに伴って生産調整水田面積が算出され、生産調整が行われたのであるし、これらの生産量の決定等が食管法の趣旨に反するものであったことをうかがわせるに足りる事情も見当たらないから(なお、平成5年度に米不足を来したことについては、前記3(2)イで既に述べたとおり、予想し難い不作を原因とするものであって、農林水産大臣の生産量の決定等が食管法の趣旨に反する違法なものであったとは認められない。)、政府の行った生産調整は食管法に則った適法なものというべきであり、これが国家賠償法1条1項の「違法」との評価を受けるものでないことは明らかである。 この点について、原告らは、仮に凶作が発生したとしても国内の米が不足しない程度の米を確保すべき注意義務を負うと主張するが、いかなる凶作が発生しても国内の米が不足しない程度の米を確保することは不可能を強いることに近く、仮に、これを確保しようとすると膨大な米の備蓄を抱えなければならないことになるが、備蓄されていた古米の最終的な処分方法などを考えると現実的なものとはいえず、物流が国際化した現在においては、輸入等によって食糧を確保する手段もあり、現に平成5年度の凶作の際には、前記のように国民の生命・身体に具体的な危機が発生したとは認められず、このことに、海外からの米の輸入も寄与したことは公知の事実であるから、原告らが主張するような注意義務を被告が負っていると考えることはできない。 イ原告らは、生産調整には法的根拠がないかのように主張するが、上記のように 米の輸入も寄与したことは公知の事実であるから、原告らが主張するような注意義務を被告が負っていると考えることはできない。 イ原告らは、生産調整には法的根拠がないかのように主張するが、上記のように、食管法上、農林水産大臣が基本計画及び供給計画を定めるとされていて、それに基づいて米の生産量が決定されるのであるから、食管法は、一定の需給調整を予定するものであるというべきであって、生産調整が法的根拠を欠く違法なものであるなどということはできない。 ウ原告らは、政府の行う生産調整が、消費者原告らとの関係においては生存権を、生産者原告らとの関係においては職業選択の自由ないし自由に米を作る権利を、それぞれ侵害するものであると主張するが、これは、生産調整を行うことが国家賠償法1条1項の「違法」との評価を受けるものと主張する趣旨であると思われる。 しかし、前述のとおり、生産調整は米の需給の均衡を図るために実施されているものであり、その実施方法や規模等に照らすと、生産調整を実施することが消費者原告らの生存権を侵害するものと評価することは困難であるし、生産調整を実施せず、米の需給のバランスが大幅に供給過剰になった場合の国内の米の生産者に与える影響及びそれが国内の食糧需給にもたらす影響をも考え併せると、先に説示したように長期的に生産調整を継続することには検討すべき点があるものの、少なくとも平成4年ないし平成6年に実施された生産調整自体が直接的に消費者原告らの生存権を侵害するものと認めることはできない。 また、生産者原告らには、職業選択の自由が憲法上保障されているが、前記3(3)で説示したとおり、政府が行った生産調整は、米作農家という職業を選択すること自体を制限するものではなく、原則として政府が米を買入れその流通を管理するという特殊な食糧管理制度の下で、 が、前記3(3)で説示したとおり、政府が行った生産調整は、米作農家という職業を選択すること自体を制限するものではなく、原則として政府が米を買入れその流通を管理するという特殊な食糧管理制度の下で、需給の均衡を図るためには、流通を管理する政府の側で、需要に見合った生産量を調整する必要があることから、一定の割合で、米の需要に見合うように生産量を削減し、それを、各生産者に割り振るというものであるから、それ自体、国家が国民の食糧を確保する見地から食糧の流通を管理する食糧管理制度の下で必要とされるものであり、職業選択について立ち入るものではないことをも考えると、生産者原告らの職業選択の自由を侵害するものとはいえず、生産調整を行うことが憲法22条違反を構成し公務員の職務上の法的義務に違反するものであると解することはできない。そして、原告らは自由に米を作る権利を侵害するものであると主張するが、既に説示したとおり(前記3(3))、原告らが米を作ることそれ自体は侵害されていないから、仮にそのような権利が保障されているとしても、そもそも原告らの自由に米を作る権利が侵害されていると認めることはできない。また、生産調整を行った者に対して交付される補助金等の優遇措置は生産調整実施に伴う経済的損失を補てんするためのものであるから、生産調整を実施しない者は、それらを受けられないし、生産者原告らの属する地方公共団体の職員や同一地域の生産者らが原告らに生産調整の協力を求めるに当たって行きすぎがあったとしても、そのこと自体の適否はともかくとして、生産調整の適否に影響を及ぼすものでないことも先に説示したとおりである。 (3) 以上のとおり、生産調整には国家賠償法1条1項にいうところの「違法」が存在しないから、これを遂行したことについて原告らに国家賠償請求権が発生するものと でないことも先に説示したとおりである。 (3) 以上のとおり、生産調整には国家賠償法1条1項にいうところの「違法」が存在しないから、これを遂行したことについて原告らに国家賠償請求権が発生するものとは認められず、その余の点について判断するまでもなく、国家賠償請求を求める原告らの請求には理由がない。 第4 結論よって、原告らの本件訴えは、差止行為目録第6項のうち被告の機関による行為の差止めを求める部分については不適法であるから、これを却下することとし、その余の請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、65条1項本文を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官藤山雅行裁判官谷口豊裁判官加藤聡は差支えのため署名押印することができない。 裁判長裁判官藤山雅行別紙差止めを求める行為の目録被告又は被告の機関によってなされるべき以下の行為 1 当該年度の全国生産調整対象水田面積の目標面積を決定すること。 2 当該年度の都道府県別生産調整対象面積の目標面積を決定し、かつ、それを各都道府県知事へ通知すること。 3 第1項の目標を補正した当該年度の全国生産調整対象水田面積を決定すること。 4 当該年度の都道府県別生産調整対象面積を決定し、かつ、それを各都道府県知事へ通知すること。 5 生産者からの米穀の政府買入れにつき、生産調整未達成者からの買入れ申し出があった場合において、生産調整未達成者であるという理由をもって、これを拒否すること。 6 被告又は被告の機関による次の行為(1) 市町村長、農業協同組合代表者をして農業者別生産調整対象水田面積の目標面積の決定及び各農業者への通知をなさしめる(なさしめるとは、被告又は被告の機関が、直接又は間接 被告の機関による次の行為(1) 市町村長、農業協同組合代表者をして農業者別生産調整対象水田面積の目標面積の決定及び各農業者への通知をなさしめる(なさしめるとは、被告又は被告の機関が、直接又は間接に当該行為を指導・指示・要請することをいう。以下同じ。)こと。 (2) 都道府県知事、都道府県農業協同組合中央会会長をして市町村別生産対象水田面積の目標面積の決定及び各市町村長への通知をなさしめること。 (3) 市町村長、農業協同組合代表者をして農業者別生産調整対象水田面積の決定及び各農業者への通知をなさしめること。 (4) 都道府県知事、都道府県農業協同組合中央会会長による市町村別生産対象水田面積の決定及び各市町村長への通知をなさしめること。 (5) 各農業者をして生産調整実施計画を作成させ、かつ、これを市町村へ提出せしめること。 7 生産調整推進助成補助金の支出をすること。 8 とも補償事業費補助金の支出をすること。 9 農業近代化資金(農業近代化資金助成法の対象となる各資金をいう。)及び農業改良資金(農業改良資金助成法の対象となる各資金をいう。)の融資において、減反未達成の集落内の農業者又は減反未達成の農業者と減反達成集落内の農業者又は減反を達成している農業者との間で、融資の可否、融資割り当ての優先順位ないし金利・償還期限等の融資条件について、前者を後者と差別して不利益に扱うこと。
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