主文 処分行政庁が平成18年2月7日付けで原告に対してした別紙課税処分目録記載の各課税処分をいずれも取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1請求主文同旨第2事案の概要本件は,平成17年7月26日法律第87号による改正前の商法(以下「旧商法」という。)373条以下所定の新設分割を行ったことに伴い信託財産の委託者兼受益者の地位を譲り受けた会社が,その後,信託契約終了により,当該信託財産たる不動産を取得したところ,同会社を吸収合併した原告が処分行政庁によって平成18年2月7日付けで上記不動産の取得につき不動産取得税賦課処分を受けたことから,原告が,上記不動産の取得が東京都税条例施行規則12条の3及び地方税法(平成19年3月30日法律第4号による改正前のもの。以下「法」という。)73条の7に定める不動産取得税を課することができない場合に当たるとして,その取消しを求める事案である。 なお,信託については,上記処分時におけるものとして,平成18年12月15日法律第109号による改正前の信託法下における信託を前提として検討する。 前提事実(当事者間に争いがない事実及び顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実。なお,甲2と甲6(いずれも枝番及び孫番を含む。)には重複するものもあるが,その場合には,以下,甲6のみを引用することとする。)(1)A株式会社(以下「A」という。)は,昭和62年3月11日付けで,B銀行株式会社(以下「B」という。)との間で,別紙物件目録記載1の土 地(以下「本件土地」という。)について,Aを委託者兼受益者,Bを受託者とする土地信託契約(以下「本件信託契約」という。)を締結した(甲2の4の1)。 (2)AとBは,昭和63年6月22日付けで,別紙物 下「本件土地」という。)について,Aを委託者兼受益者,Bを受託者とする土地信託契約(以下「本件信託契約」という。)を締結した(甲2の4の1)。 (2)AとBは,昭和63年6月22日付けで,別紙物件目録記載2の建物(以下「本件建物」という。)を本件土地信託契約の信託財産に追加する旨合意した(甲2の5の1)。 (3)Aは,平成14年4月1日付けで,旧商法373条の会社の分割を行い,C株式会社(以下「C」という。)が分割承継法人となった(以下「本件分割」という。)。 本件分割に係る会社分割計画書には,CがAから承継する権利義務について,以下の定めがある(甲6の2の3の1)。 アCが設立に当たり発行される株式は,平成14年2月28日におけるAの株主名簿記載の株主に全株式が割り当てられる。(なお,当時,Aの株主は1名であった(甲6の2の4)。)イCは,Aの賃貸ビルに関する営業(以下「本件営業」という。)に関する資産,負債及びこれに付随する一切の権利義務を承継する(リース契約,これらリース契約に基づくリース債務その他権利義務,及び,一定の物件の営業に関するものを除く。)。ただし,負債については,分割に先立ち,A,C及び債権者が承継に合意し,Aが債権者に承継を通知したものに限る。 ウCは,分割に際し,本件営業に従事するAの従業員と,Aとの間の雇用契約を承継しない。Aは,本件営業に主として従事するAの従業員をCに出向させる。 (4)CとBは,平成17年3月18日付けで,本件信託契約を解除する旨合意した。平成17年3月25日,本件土地及び本件建物について,同日信託財産引継を原因として,Cへの所有権移転登記手続がされた(ただし,本件 建物については,Cと有限会社Dへの所有権移転登記手続がされた(共有持分各2分の1)(甲2の4の2,2の5の ついて,同日信託財産引継を原因として,Cへの所有権移転登記手続がされた(ただし,本件 建物については,Cと有限会社Dへの所有権移転登記手続がされた(共有持分各2分の1)(甲2の4の2,2の5の2)。以下,これらの所有権移転登記手続に係る不動団の取得を併せて「本件不動産取得」という。)。 (5)原告は,平成17年12月1日付けでCを吸収合併した。 (6)処分行政庁は,平成18年2月7日付けで,原告に対し,本件不動産取得につき,別紙課税処分目録記載の各不動産取得税賦課処分(以下「本件各処分」という。)を行った。 (7)原告は,平成18年4月5日付けで,審査庁である東京都知事に対し,本件各処分の取消しを求めて審査請求をした。東京都知事は,同年7月25日付けで,これを棄却する旨の裁決をした。 (8)原告は,平成19年1月12日,本件訴えを提起した。 争点 本件の争点は,本件不動産取得が,法73条の7第4号の定める「委託者のみが信託財産の元本の受益者である信託により受託者から元本の受益者に信託財産を移す場合における不動産の取得」に当たるかどうかであり,これに関する当事者の摘示すべき主張は,後記第3争点に対する判断記載のとおりである。 第3争点に対する判断 法73条の2第1項,1条2項(以下,法の条項を記載するときは,都への準用を定めた1条2項は省略する。)において,不動産取得税は,不動産の取得に対し,当該不動産所在の都道府県において,当該不動産の取得者に課する旨規定し,その上で,法73条の7において,形式的な所有権の移転であること等の理由から不動産取得税を非課税とする場合を,不動産の取得の類型ごとに定めており,本件で問題となる同条第4号もその一つである。 法73条の7第4号を巡る当事者の主張の骨子(1)被告法73条の7第4 から不動産取得税を非課税とする場合を,不動産の取得の類型ごとに定めており,本件で問題となる同条第4号もその一つである。 法73条の7第4号を巡る当事者の主張の骨子(1)被告法73条の7第4号の立法趣旨についてみると,自益信託にあっては,そ もそも信託契約締結時において,信託終了時に信託財産を受託者から信託契約の当事者である委託者に移すことが予定されており,この予定どおりに受託者から委託者に信託財産を移した場合には,信託開始以来継続して委託者に実質的に帰属していた信託財産を,委託者が改めて取得することとなるにすぎないから,その不動産の取得を形式的移転として非課税としたものである。 したがって,自益信託において受託者から委託者兼受益者に対する移転が非課税となる同号にいう「委託者のみが信託財産の元本の受益者である」場合とは,委託者兼受益者が信託開始から継続してその地位にあった場合に限られることになり,本件信託の開始から終了時までの間に,委託者がAからCに変わったことから,本件不動産取得は,法73条の7第4号に該当しないことになる。 (2)原告政令(地方税施行令(昭和25年政令第245号)37条の14)で定める分割による不動産の取得は,形式的な所有権移転であることから,不動産取得税を課することができない旨法73条の7第2号において規定されており,本件分割はこの要件を満たしているので,委託者に実質的な変更がなく,また,同号の要件を満たす会社分割によって不動産の所有者が変更したときには法73条の7第2号によって不動産取得税は賦課されないにもかかわらず,同様の会社分割によって信託の委託者が変更した場合に不動産取得税が賦課されることになれば,権衡を失する結果となる。 したがって,本件不動産取得は,法73条の7第4号に該当する。 検討 かかわらず,同様の会社分割によって信託の委託者が変更した場合に不動産取得税が賦課されることになれば,権衡を失する結果となる。 したがって,本件不動産取得は,法73条の7第4号に該当する。 検討(1)まず,信託財産の移転に関する不動産取得税を非課税とする一類型として,法73条の7第3号は,委託者から受託者に信託財産を移す場合における不動産の取得を,同号が掲げる例外を除いて,非課税とする旨規定してい る。 これは,信託が,委託者の信託行為によって,受託者に信託財産を帰属させるとともに,受託者に対し,その信託財産を一定の信託目的に従って,受益者のために管理,処分すべき拘束を生じさせる法律関係であり,委託者から受託者に不動産が移転しても,受託者の権利行使は信託目的に拘束されるため,受託者の所有権の取得は形式的なものにすぎないからであると解される。 (2)ア次に,本件で問題となっている法73条の7第4号は,委託者のみが信託財産の受益者である信託により受託者から元本の受益に信託財産を移す場合における不動産の取得は非課税とする旨規定している。 これは,上記(1)のように信託の委託者が受託者に信託財産を移す場合と異なり,受託者から受益者に信託財産が移る場合には,もはや受益者の権利行使は信託目的に拘束されることにはならないから,当然には形式的な所有権の取得であるということはできないが,受託者から受益者に信託財産を移した場合であっても,委託者のみが受益者となるいわゆる自益信託の場合は,いわば信託行為によって委託者から受託者に形式的に移転した所有権が,信託終了によって委託者兼受益者に形式的に戻されるだけのことであり,形式的な所有権移転にすぎないとして,非課税にしたものと考えられる。 そして,そもそも租税法規は,侵害規範であって,法的安定性の要請 信託終了によって委託者兼受益者に形式的に戻されるだけのことであり,形式的な所有権移転にすぎないとして,非課税にしたものと考えられる。 そして,そもそも租税法規は,侵害規範であって,法的安定性の要請が強く働くから,原則としてその文言に即して解釈すべきであるところ,法73条の7第4号にいう委託者を,被告が主張するような,信託契約締結時から信託契約終了時まで継続して同一の委託者である場合のみに限る旨の文言は存在しない。 さらに,前記前提事実並びに甲2の7,2の18の1,6の1,6の2の3の1,6の2の4及び弁論の全趣旨によれば,本件分割は,法73条 の3第2号にいう政令(地方税施行令(昭和25年政令第245号)37条の14)で定める分割に当たると認められる。しかるところ,法73条の7第2号が,法人の合併や政令で定める分割による不動産の取得を形式的な所有権の所得であるとして,非課税にしていることに加え,法73条の7第4号の上記非課税の趣旨にも照らせば,法人の合併や,本件分割のように政令で定める分割により信託の委託者の地位が形式上移転したにすぎない場合に,これを法73条の7第4号の委託者に該当しないと解釈すべき根拠はないというべきである。したがって,少なくとも,本件不動産取得をしたCにおいては「委託者であり唯一の受益者」であるとみることができる。 イなお,信託後の契約等によって,委託者兼受益者の地位が特定承継され,その後信託契約が終了したような場合には,信託契約時の委託者兼受益者から承継後の委託者兼受益者に実質上の所有権が移転することになり,こうした場合をすべて非課税とすべき理由はないとも考えられる。しかしながら,これはあくまで特定承継の場合の問題であって,本件とは状況を異にするから,上記アの解釈を左右するものではない。また,「地方税の うした場合をすべて非課税とすべき理由はないとも考えられる。しかしながら,これはあくまで特定承継の場合の問題であって,本件とは状況を異にするから,上記アの解釈を左右するものではない。また,「地方税の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)」と題する通知の第5章「不動産取得税」第1「納税義務者及び課税客体」の6の2には「法第73条の7第4号に規定する「委託者」には,委託者のみが信託財産の元本の受益者である信託の委託者が更迭し,新委託者のみが元本の受益者となった場合の新委託者を含まないものであること」とされているが,専らこのような取扱通知を根拠として,租税法規に関する上記アの解釈を弾劾するのは本末転倒というほかない。 (3)まとめ以上のとおり,本件不動産取得は,法73条の7第4号に該当するから,Cが本件不動産取得を行った後に同会社を吸収合併した原告(前記前提事実 (5))に対し,本件不動産取得につき不動産取得税を課することはできないというべきである。 よって,本件各処分はいずれも違法であるから,これらを取り消すこととし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官大門匡裁判官吉田徹裁判官倉澤守春 (別紙)課税処分目録(土地に係る処分)課税標準額1億5208万9000円納付税額456万2600円納期限平成18年2月28日納税通知書番号XXXXXXXXXX(建物に関する処分)課税標準額1億9545万1000円納付税額586万3500円納期限平成18年2月28日納税通知書番号YYYYYYYYYY 1億9545万1000円納付税額586万3500円納期限平成18年2月28日納税通知書番号YYYYYYYYYY
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