令和7年7月10日宣告令和7年(わ)第63号、同第75号 ①被告人Aに対する入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反、公契約関係競売入札妨害被告事件、②被告人Bに対する公契約関係競売入札妨害被告事件 判決被告人 A 被告人 B 主文 被告人両名をそれぞれ懲役1年6月に処する。 被告人両名に対し、この裁判が確定した日から3年間、それぞれその刑の執行を猶予する。 訴訟費用は被告人Bの負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人Aは、長崎県北松浦郡佐々町長として、同町の業務を統括し、同町が発注する各種工事の指名競争入札における予定価格及び最低制限価格の決定等の職務を掌理していたもの、被告人Bは、土木建築の請負業等を営む株式会社Cの営業本部長 として、同社の営業業務を統括していたものであるが、第1 被告人Aは、令和6年7月26日に同町が執行した「令和6年度D団地(AB棟)給水管改修工事」の指名競争入札に関し、前記職務に従事する者として適正に入札等に関する職務を行う義務があるのに、その職務に反し、相被告人B及び土木工事業、管工事業等を営む株式会社Eの代表取締役として、その業務全般を統 括掌理していたFと共謀の上、同日午前8時39分頃、被告人Aが、同町a番地b所 在の同町役場において、相被告人Bに対し、電話で、前記入札に関する秘密事項である前記工事の最低制限価格(税抜き)が約1657万円である旨教示し、よって、同日午前9時30分頃、同町a番地所在の佐々町文化会館第3研修室において執行された前記工 話で、前記入札に関する秘密事項である前記工事の最低制限価格(税抜き)が約1657万円である旨教示し、よって、同日午前9時30分頃、同町a番地所在の佐々町文化会館第3研修室において執行された前記工事の入札において、相被告人Bから前記工事の最低制限価格に近接する金額の教示を受けたFをして、最低制限価格1657万3300円(税 抜き)に近接する1659万円(税抜き)で入札させて前記工事を前記EG本社に落札させ、もって偽計を用いるとともに入札等に関する秘密を教示することにより、公の入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為を行った第2 被告人Bは、前記指名競争入札に関し、相被告人A及びFと共謀の上、同日午前8時39分頃、被告人Bが、長崎県佐世保市内又はその周辺において、相被告人 Aから、電話で、前記入札における前記工事の最低制限価格(税抜き)が約1657万円である旨教示を受けた上、その頃、同所において、Fに対し、電話で、前記入札における前記工事の最低制限価格に近接する金額が1659万円である旨教示し、よって、同日午前9時30分頃、前記佐々町文化会館第3研修室において、Fが、最低制限価格1657万3300円(税抜き)に近接する1659万円(税 抜き)で入札して前記工事を前記EG本社に落札させ、もって、偽計を用いて、公の入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした第3 被告人Aは、令和6年6月14日に同町が執行した「令和6年度図書館照明LED化工事」の指名競争入札に関し、前記職務に従事する者として適正に入札等に関する職務を行う義務があるのに、その職務に反し、相被告人B及び電気工 事業等を営む株式会社Hの代表取締役として、その業務全般を統括掌理していたIと共謀の上、同日午前8時58分頃、被告人Aが、前 する職務を行う義務があるのに、その職務に反し、相被告人B及び電気工 事業等を営む株式会社Hの代表取締役として、その業務全般を統括掌理していたIと共謀の上、同日午前8時58分頃、被告人Aが、前記佐々町役場において、相被告人Bに対し、電話で、前記LED化工事の入札に関する秘密事項である前記工事の最低制限価格(税抜き)が約2878万円である旨教示した上、相被告人Bをして、Iに対し、電話で、前記LED化工事の入札における最低制限価格(税抜 き)に近接する金額が2879万3000円である旨教示させ、よって、同日午前 11時10分頃、前記佐々町文化会館第3研修室において執行された前記LED化工事の入札において、Iをして、最低制限価格2878万8400円(税抜き)に近接する2879万3000円(税抜き)で入札させて前記工事を前記Hに落札させ、もって偽計を用いるとともに入札等に関する秘密を教示することにより、公の入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為を行った 第4 被告人Bは、前記LED化工事の指名競争入札に関し、相被告人A及びIと共謀の上、同日午前8時58分頃、被告人Bが、長崎県北松浦郡佐々町又はその周辺において、相被告人Aから、電話で、前記LED化工事の入札における前記工事の最低制限価格(税抜き)が約2878万円である旨教示を受けた上、その頃、同所において、Iに対し、電話で、前記入札における前記工事の最低制限価格に近接 する金額が2879万3000円である旨教示し、よって、同日午前11時10分頃、前記佐々町文化会館第3研修室において、Iが、最低制限価格2878万8400円(税抜き)に近接する2879万3000円(税抜き)で入札して前記工事を前記Hに落札させ、もって偽計を用いて、公の入札で契約を締結するた 会館第3研修室において、Iが、最低制限価格2878万8400円(税抜き)に近接する2879万3000円(税抜き)で入札して前記工事を前記Hに落札させ、もって偽計を用いて、公の入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした ものである。 (量刑の理由) 1 本件は、当時町長であった被告人Aが、その職務に反し、町が執行した工事2件の指名競争入札に関して、当時土木建築の請負業等を営む県内の有力企業の営業本部長であった被告人Bに対し、指名競争入札に関する秘密である最低制限価格 を教示し、被告人Bが、土木事業等や電気工事業等を営む中小規模の業者の代表取締役ら(F、I)に対し、最低制限価格に近接する金額を教示して工事各1件を落札させた事案である。指名競争入札において極めて重要な情報である最低制限価格が漏洩され、思惑どおり、教示を受けた業者らが現実に本件各工事を落札しているのであって、公の入札の公正を害する程度は著しい。 2 被告人Aは、町行政の最高責任者として、本件各工事の最低制限価格を決定す るなど、入札手続において中核的な役割を果たす立場にあるとともに、入札を含めた町の業務の公正を特に保つべき立場にあるにもかかわらず、その職責に反し公務の公正やそれに対する町民等の信頼を著しく害しているのであって、悪質というほかない。また、本件各犯行は、相被告人Bとの癒着関係を背景にした常習的犯行の一環として行われており、職務の公正を蔑ろにする行為を繰り返したそ の姿勢は厳しく指弾されなくてはならない。被告人Aは、町の業者に仕事を与えて町の利益を図ろうとしたかったとか、過去に自己の選挙で被告人Bから支援を受けた恩義があり依頼を断ることができなかったなどと述べるが、到底正当化できるものではない。 3 被告人Bは 者に仕事を与えて町の利益を図ろうとしたかったとか、過去に自己の選挙で被告人Bから支援を受けた恩義があり依頼を断ることができなかったなどと述べるが、到底正当化できるものではない。 3 被告人Bは、県内の有力企業において営業部長あるいは営業本部長の職にあっ たことを背景にして長年にわたり町内で常態化していた公共工事における談合の取りまとめ役を担っていたところ、談合に協力的な業者に町発注の公共工事を確実に落札させるなどするため、相被告人Aとの癒着関係を背景にして、幾度となく最低制限価格に近似する金額の教示を受け、自ら業者を選定して金額を教示しており、本件各犯行もその一環をなしているのであって、行政側と業者側の間に 立ち、中心的・主導的な役割を果たしている。さらに、被告人Bは、その見返りに業者から個人的に謝礼まで得ていたというのであるから、利欲的かつ身勝手な動機によって公の入札の公正を軽視すること著しい。 4 以上によれば、被告人両名の犯情は、いずれも悪質であって、金額の教示を受けた業者と比してその責任は重い。他方で、被告人Aについては、反省の態度を示す とともに、町長職を辞していること、妻が更生に向けた支援を誓約していること、犯罪歴がないことなどの、被告人Bについては、反省の態度を示すとともに、勤務先を懲戒解雇されていること、妻が監督を誓約していることなどの事情が認められる。 そこで、これらの犯情以外の事情をも考慮して、被告人両名に対しては、その責 任の重さを明確にすべく、主文掲記の懲役刑を科した上で、社会内での更生の機 会を与えることとして、刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 (検察官海津秀貴、被告人Aの弁護人松田貴史(主任)、同竹口将太、同堀裕子(いずれも私選)、被告人Bの弁護人古舘悟(国 会を与えることとして、刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 (検察官海津秀貴、被告人Aの弁護人松田貴史(主任)、同竹口将太、同堀裕子(いずれも私選)、被告人Bの弁護人古舘悟(国選)各出席)(求刑-被告人両名ともに懲役1年6月)令和7年7月10日 長崎地方裁判所刑事部 裁判長 裁判官太田寅彦 裁判官上原美也子 裁判官井上裕貴
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