平成20(行ケ)10433 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成21年9月16日 知的財産高等裁判所 1部 判決 審決取消
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判決文本文44,328 文字)

- 1 -平成21年9月16日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成20年(行ケ)第10433号審決取消請求事件(特許)口頭弁論終結日平成21年7月22日判決原告本田技研工業株式会社原告株式会社日立製作所原告ら訴訟代理人弁理士平木祐輔同関谷三男同島村直己被告特許庁長官同指定代理人森藤淳志同小谷一郎同深澤幹朗同柳田利夫同紀本孝同小林和男主文 特許庁が不服2005-16201号事件について平成20年10月7日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1請求主文同旨。 第2事案の概要本件は,原告らが特許出願したところ,拒絶査定を受けたので,これを不服として審判請求をしたが,請求不成立の審決を受けたことから,その審決の取消しを求- 2 -める事案である。 特許庁における手続の経緯原告らは,平成9年12月9日,名称を「内燃機関の排ガス浄化方法及び浄化装置」とする発明につき特許出願(平成9年特願339028号,特開平11-173181号)をしたが,平成16年1月30日付けで拒絶理由通知(甲12)を受けたことから,同年4月5日付けで意見書(甲15)及び手続補正書(甲6)を提出した。しかし,平成17年7月19日付けで拒絶査定(甲13)がされた。そこで,原告らは,同年8月25日にこれを不服として審判請求をし,同年11月17日付けで手続補正書(甲16)を提出した。 特許庁は,審理の結果,平成20年10月7日,本件審判請求は成り立たないとの審決をし,同月21日,その謄本を原告らに送達した。 特許請求の範囲平成16年4月5日付けの手続補正書(甲6)による補正後の明細書及び出願当 平成20年10月7日,本件審判請求は成り立たないとの審決をし,同月21日,その謄本を原告らに送達した。 特許請求の範囲平成16年4月5日付けの手続補正書(甲6)による補正後の明細書及び出願当初の図面の記載によれば,請求項1に係る発明は,次のとおりである(以下「本願発明」という。なお,請求項は1ないし6まで存在するが,請求項2ないし6に関する部分は,以下,省略する。)。 「【請求項1】排ガス流路にNOx浄化触媒を配置した内燃機関の排ガス浄化方法において,前記NOx浄化触媒が,アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素と,希土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素と,白金族金属(いわゆる貴金属)から選ばれる少なくとも一種の元素と,チタン(Ti)とを含む組成物で,排ガスがリーンのときに排ガス中のNOxを表面に吸着し,排ガスがストイキもしくはリッチのとき吸着したNOxをNに還元するものであ って,内燃機関がリーン運転しているとき,前記NOx浄化触媒で排ガス中のNOxを吸着し,吸着後に,排ガスを0.5秒間乃至4.5秒の間ストイキもしくはリッチの状態とし,前記排ガスのストイキもしくはリッチは,そのリッチ状態の深さを空燃比A/F値で,13.0乃至14.7の間とし,前記NOx浄化触媒で吸着- 3 -したNOxを還元剤と接触反応させてNに還元して排ガスを浄化する内燃機関の 排ガス浄化方法。」 審決の理由審決は,本願発明は,国際公開第94/25143号公報(甲1。以下「引用例」といい,これに記載された発明を「引用発明」という。)並びに特開平7-139340号公報(甲2。以下「周知例1」という。),特開平7-332071号公報(甲3。以下「周知例2」という。)及び特開平6-66129号公報(甲4。以下「周知例3」とい 。)並びに特開平7-139340号公報(甲2。以下「周知例1」という。),特開平7-332071号公報(甲3。以下「周知例2」という。)及び特開平6-66129号公報(甲4。以下「周知例3」という。)に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないと判断した(なお,引用した審決中の公知文献の表記等については,本判決の表記に合わせて訂正している箇所がある。)。 (1) 引用発明の内容「排ガス流路に触媒を配置した内燃機関の排ガス中の窒素酸化物の除去方法において,前記触媒(以下「触媒A」という。)が,少なくとも1種のアルカリないしアルカリ土類金属または該金属の化合物と,セリア・ランタナ・チタニアの混合物や複合酸化物と,白金・パラジウム,ロジウムおよびルテニウムからなる群から選ばれた1種の貴金属とを含む材料で,内燃機関の吸気系において空気吸入量を減らすこと,または燃料を過剰に供給することで排ガスが還元雰囲気となり蓄積したNOxを除去するものであって,内燃機関の酸化雰囲気下で排ガスと接触させて排ガス中のNOxを該触媒Aに吸着させ,吸着後に,内燃機関の吸気系において空気吸入量を減らすこと,または燃料を過剰に供給することを瞬間的に行うことで,排気が瞬間的に還元雰囲気となり蓄積したNOxを除去する内燃機関の排ガス中の窒素酸化物の除去方法。」(2) 引用発明と本願発明の一致点「排ガス流路にNOx浄化触媒を配置した内燃機関の排ガス浄化方法において,前記NOx浄化触媒が,アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素と,希土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素と,白金族金属(いわゆる貴金属)か- 4 -ら選ばれる少なくとも一種の元素と,チタン(Ti)とを含む組成物で, 類金属から選ばれる少なくとも一種の元素と,希土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素と,白金族金属(いわゆる貴金属)か- 4 -ら選ばれる少なくとも一種の元素と,チタン(Ti)とを含む組成物で,排ガスがリーンのときに排ガス中のNOxを吸着し,排ガスがストイキもしくはリッチのとき吸着したNOxをNに還元するものであって, 内燃機関がリーン運転しているとき,前記NOx浄化触媒で排ガス中のNOxを吸着し,吸着後に,排ガスをストイキもしくはリッチの状態とし,前記NOx浄化触媒で吸着したNOxを還元剤と接触反応させてNに還元して排ガスを浄化する内燃機関の排ガス浄化方法。」 (3) 引用発明と本願発明の相違点ア相違点1「本願発明においては,排ガスがリーンのときに排ガス中のNOxをNOx浄化触媒の表面に吸着しているのに対して,引用発明においては,NOxの吸着がどこで行われているか明らかでない点」イ相違点2「本願発明においては,『吸着後に,排ガスを0.5秒間乃至4.5秒の間ストイキもしくはリッチの状態とし,前記排ガスのストイキもしくはリッチは,そのリッチ状態の深さを空燃比A/F値で,13.0乃至14.7の間とし』たのに対して,引用発明においては,吸着後に,ストイキもしくはリッチの状態を瞬間的に行っており,時間及び深さに関しては明確ではない点」(4) 相違点に関する容易想到性の判断ア相違点1について「排ガスがリーンのときに,NOx浄化触媒としてNOxを触媒表面へ吸着するものは周知(例えば,周知例1及び周知例2参照。以下「周知技術1」という。)であることから,相違点1に係る本願発明の発明特定事項は周知である。」イ相違点2について「内燃機関がリーン運転しているとき,前記NOx浄化触媒で排ガス中のNOxを吸着し,吸着後に,排ガスを数 )であることから,相違点1に係る本願発明の発明特定事項は周知である。」イ相違点2について「内燃機関がリーン運転しているとき,前記NOx浄化触媒で排ガス中のNOxを吸着し,吸着後に,排ガスを数秒間ストイキもしくはリッチの状態とし,前記NOx浄化触媒で吸着したNOxを還元剤と接触反応させてNに還元して排ガスを浄化することは周知(例えば,周知 - 5 -例1及び周知例3,以下「周知技術2」という。)であり,相違点2に係る本願発明のように時間及び深さを決定することは,周知例1及び周知例3の周知技術を勘案すれば,適宜なし得る設計的事項に過ぎないものである。」(5) むすび「したがって,本願発明は,引用発明,周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。」第3原告ら主張の取消事由審決は,次に述べるとおり,認定及び判断に誤りがあるから,取り消されるべきである。 一致点の認定の誤り(取消事由1)(1) 審決は,本願発明と引用発明とが「前記NOx浄化触媒が,アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素と,希土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素と,白金族金属(いわゆる貴金属)から選ばれる少なくとも一種の元素と,チタン(Ti)とを含む組成物」である点で一致すると認定しているが,誤りである。 すなわち,審決は,引用発明の触媒Aに関し,「触媒Aは,少なくとも1種のアルカリないしアルカリ土類金属または該金属の化合物と,セリア・ランタナ・チタニアの混合物や複合酸化物と,白金,パラジウム,ロジウムおよびルテニウムからなる群から選ばれた1種の貴金属とを含む材料で構成されている。」とした上,引用発明における『セリア・ランタナ・チタニア チタニアの混合物や複合酸化物と,白金,パラジウム,ロジウムおよびルテニウムからなる群から選ばれた1種の貴金属とを含む材料で構成されている。」とした上,引用発明における『セリア・ランタナ・チタニアの混合物や複合酸化物』は,元素としてセリウム,ランタン,チタンを含むものであることから,本願発明における『希土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素』及び『チタン(Ti)』とを含む『組成物』に相当する。」と認定している。 しかしながら,引用発明の請求項1の「白金,パラジウム,ロジウムおよびルテニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種の貴金属または該貴金属の化合物を- 6 -触媒1リットル当り金属換算で0.1~30gおよびリチウム,カリウム,ナトリウム,ルビジウム,セシウム,ベリリウム,マグネシウム,カルシウム,ストロンチウムおよびバリウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属または該金属の化合物を触媒1リットル当り金属換算で1~80gからなる触媒活性成分と耐火性無機酸化物とからなる触媒」との記載から明らかなように,引用発明に記載の触媒Aは,触媒活性成分として,「貴金属または該貴金属の化合物」と,「アルカリ金属」及び「アルカリ土類金属」から選ばれる少なくとも1種とを含有すれば足り,前記成分に,本願発明における必須成分である「希土類金属」及び/又は「チタン」を組み合わせた触媒を具体的に開示していない(参考例1ないし38)。 また,引用発明において「耐火性無機酸化物」として記載されているセリア(酸化セリウム(CeO)),ランタナ(酸化ランタン),チタニア(酸化チタン (IV))は,元素としてセリウム,ランタン,チタンを含むものであるが,引用発明の請求項1における「白金,パラジウム,ロジウムおよびルテニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種 ア(酸化チタン (IV))は,元素としてセリウム,ランタン,チタンを含むものであるが,引用発明の請求項1における「白金,パラジウム,ロジウムおよびルテニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種の貴金属または該貴金属の化合物を触媒1リットル当り金属換算で0.1~30gおよびリチウム,カリウム,ナトリウム,ルビジウム,セシウム,ベリリウム,マグネシウム,カルシウム,ストロンチウムおよびバリウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属または該金属の化合物を触媒1リットル当り金属換算で1~80gからなる触媒活性成分と耐火性無機酸化物とからなる触媒」との記載から明らかなように,それらは,あくまで「耐火性無機酸化物」であって「触媒活性成分」として記載されているわけではない。すなわち,引用発明に記載されたチタニア,ランタナ,セリアなどの担体は,活性成分を分散性良く保持して反応効率を向上させる安定な大表面積の物質であって,反応に寄与しないものを指す。一方,触媒活性成分は触媒作用を発現するための成分を指すのであって,実際,本願発明のチタン,希土類元素は,微粒化されて担体上に担持されている。 したがって,引用発明において「耐火性無機酸化物」として記載されているチタ- 7 -ニア(酸化チタン(IV)),セリア(酸化セリウム(CeO)),ランタナ (酸化ランタン)は,本願明細書における前記「多孔質耐熱性金属酸化物」に相当するものにすぎず,引用発明には,触媒活性成分として「希土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素」及び「チタン(Ti)」とを含む「組成物」は開示されていない。 (2) 審決が,「排ガスがリーンのときに排ガス中のNOxを吸着し,排ガスがストイキもしくはリッチのとき吸着したNOxをNに還元するものであって,内燃 機関がリーン運転している 示されていない。 (2) 審決が,「排ガスがリーンのときに排ガス中のNOxを吸着し,排ガスがストイキもしくはリッチのとき吸着したNOxをNに還元するものであって,内燃 機関がリーン運転しているとき,前記NOx浄化触媒で排ガス中のNOxを吸着し,吸着後に,排ガスをストイキもしくはリッチの状態とし,前記NOx浄化触媒で吸着したNOxを還元剤と接触反応させてNに還元して排ガスを浄化する内燃機 関」を一致点とした認定は誤りである。 そもそも,本願発明は,(i)アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素と,希土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素と,白金族金属(いわゆる貴金属)から選ばれる少なくとも一種の元素と,チタン(Ti)とを含む組成物で,「排ガスがリーンのときに排ガス中のNOxを表面に吸着し,排ガスがストイキもしくはリッチのとき吸着したNOxをNに還元する『NOx 浄化触媒』」を用いて,()内燃機関がリーン運転しているとき,前記NOx浄ii化触媒で排ガス中のNOxを吸着し,吸着したNOxを還元剤と接触反応させてNに還元して排ガスを浄化する,に当たって,()吸着後に,排ガスを0.5秒 iii間乃至4.5秒の間ストイキもしくはリッチの状態とすると共に,そのリッチ状態の深さを空燃比A/F値で,13.0乃至14.7の間とした,排ガス浄化方法に,その特徴構成を有するものである。つまり,本願発明は,前記構成(i)ないし()を組み合わせた点に格別に技術的意義のある特徴的構成を有することによっiiiて,本願明細書記載の課題を解決したものである。 その結果,本願発明は,次のような格別の作用効果を奏する。すなわち,従来技術の触媒はNOxが触媒バルク内に吸収されるため,放出させる際には還元剤の濃- 8 -度を高める( 題を解決したものである。 その結果,本願発明は,次のような格別の作用効果を奏する。すなわち,従来技術の触媒はNOxが触媒バルク内に吸収されるため,放出させる際には還元剤の濃- 8 -度を高める(リッチシフトを深くする)必要があり,しかも還元剤の利用率は小さくならざるを得ない(本願明細書段落【0041】)結果,深いリッチシフトや長いリッチ時間を要する特性があるという課題に対して,本願発明では,その明細書に「本実施の形態の‥‥NOx浄化触媒は,リーン排ガス中の‥‥NOxの捕捉は,主として触媒表面への吸着により行われる。吸着捕捉されたNOxは,ストイキ及びリッチの排ガスと接触させると,触媒上でHC(炭化水素),CO(一酸化炭素)等の還元剤によりNに還元され,触媒表面は,NOx吸着能を回復する。‥ ‥これは,吸着NOxの還元反応にともなう物質移動過程が,還元剤や生成Nの 気相拡散過程と吸着NOx等の表面拡散過程を含むのみで,物質移動抵抗の大きい触媒バルク内の移動過程を含まないことによる」(同段落【0040】参照),「本実施の形態の‥‥NOx浄化触媒は,バルク内の移動過程を含まないために,リッチシフトを深くする必要はないが,必要な還元剤を供給するための時間が必要となる。‥‥本実施の形態の‥‥NOx浄化触媒では,浅いリッチシフトで十分であるために,リッチシフトによる燃費の低下は小さくなる」(同段落【0042】参照)と記載されているとおり,物質移動抵抗の大きい触媒バルク内のNOx移動過程を含まない吸着触媒を用いており,かつそのリッチ時間と深さを前記の吸着触媒の捕捉特性を考慮した適切なリッチ時間及びリッチ深さに設定した(前記構成(i)ないし()を組み合わせた)ことにより,浅いリッチシフトにより燃費にiii大きな影響を与えることなくNOxの効 着触媒の捕捉特性を考慮した適切なリッチ時間及びリッチ深さに設定した(前記構成(i)ないし()を組み合わせた)ことにより,浅いリッチシフトにより燃費にiii大きな影響を与えることなくNOxの効果的な浄化を行うことができるという格別な作用効果を得ているところに発明としての特徴がある。したがって,本願の請求項1に記載されている「排ガスがストイキもしくはリッチのとき吸着したNOxをNに還元するもの」との記載における「吸着したNOx」は「吸着されているN Ox」,すなわち「触媒表面に吸着するにとどまっているNOx」を意味するものである。 しかしながら,引用発明の参考例に記載されているNOx浄化触媒は,「NOxを硝酸イオン(NO)の形で吸収保持する」ものである。すなわち,引用発明に -- 9 -記載の触媒Aにおいては,NOx吸着能を有する成分に吸着されたNOxが,そのまま触媒表面にとどまるのか,それとも触媒内部に吸収されるのかについては記載されていないばかりか,かえって,引用発明の参考例に記載されているNOx浄化触媒は,実験成績書(甲8)の4ないし6頁の「1.2N-N9の測定結果」に示されているように,「NOxを硝酸イオン(NO)の形で吸収保持する」もの -である。 このように,引用発明に記載の触媒AにおけるNOxの挙動は,該触媒へのNOの吸着保持ではなく,硝酸イオン(NO)の形での吸収保持であり,本願発明 -の上記構成(i)の「排ガスがリーンのときに排ガス中のNOxを表面に吸着し,排ガスがストイキもしくはリッチのとき吸着したNOxをNに還元する『NOx 浄化触媒』」とは,その構成を異にするものである。 換言すれば,本願発明に用いるNOx浄化触媒は,触媒活性成分にチタン(Ti)を含み,NOx吸着材の塩基性が抑制さ したNOxをNに還元する『NOx 浄化触媒』」とは,その構成を異にするものである。 換言すれば,本願発明に用いるNOx浄化触媒は,触媒活性成分にチタン(Ti)を含み,NOx吸着材の塩基性が抑制され,硝酸塩を生成せず,排ガス中のNOxを当該触媒の表面に吸着するのに対して,引用発明のNOx浄化触媒は,触媒活性成分にチタン(Ti)を含まず,塩基性が強く,排ガス中のNOxを硝酸イオン(NO)の形で吸収保持するものである。したがって,本願発明に用いるNO -x浄化触媒(NOx吸着触媒)と引用発明の吸収触媒とは,作用機序が明らかに異なっている。 この点で,審決が,引用発明に「排ガス中のNOxを該触媒Aに吸着させ」と記載されていると認定したことは明らかに誤りである。 (3) 被告の主張に対する反論被告は,後記第4の1において,本願発明の請求項1には,原告らが主張するような「物質移動抵抗の大きい触媒バルク内のNOx移動過程を含まない吸着触媒」との特定はされておらず,また,「排ガス中のNOxを表面に吸着し」との記載によっても,そのような特定がされたものとはいえないなどとして,原告らが本願発明を違法に限定解釈している旨主張する。 - 10 -しかしながら,以下のとおり,本願発明の請求項1の構成を採用すれば,結果として,「物質移動抵抗の大きい触媒バルク内の移動過程を含まない」ようになるのである。したがって,上記「物質移動抵抗の大きい触媒バルク内の移動過程を含まない」との主張は,請求項1の構成に基づいた主張であり,仮にこの点が明白でないとしても,発明の詳細な説明の記載を考慮すれば,本願の特許請求の範囲の記載は明確に理解できるのであるから,上記原告らの主張は,特許請求の範囲の記載に基づくものであって,限定解釈しているものではない。 アまず,被告は,化 説明の記載を考慮すれば,本願の特許請求の範囲の記載は明確に理解できるのであるから,上記原告らの主張は,特許請求の範囲の記載に基づくものであって,限定解釈しているものではない。 アまず,被告は,化学大辞典第1版(株式会社東京化学同人発行,1989年。 乙4。以下「乙4辞典」という。)の566頁の記載を引用して,本願発明に用いるNOx浄化触媒は吸収触媒と区別できない旨主張する。 しかしながら,上記引用箇所には,「化学吸着においては‥‥気体分子が固体表面と相互作用する場合に,単に固体表面に吸着するにとどまらず,さらに固体内部まで拡散する場合があり,これを吸収という。吸着と吸収の両者が同(absorption)時に起こる現象を収着という。」と記載されており,当該記載については,単に固体表面に吸着するにとどまる現象は吸収とはいわず,吸収と吸着とは明確に区別して解釈しており,このように解釈するのが一般的解釈方法といえるものである。したがって,被告の主張は,乙4辞典記載を誤って捉えたもので,失当である。 「吸着」と「吸収」が明確に区別されていることは,「吸着および吸着剤」と題する文献(著,柳井弘・加納久雄共訳,株式会社技報堂発行,昭和C.L.Mantell44年。甲24)に,「吸着は吸収()と明確に区別すべきである。吸absorption着は通常,吸着剤と被吸着質との間に化学反応は起らないが,吸収は多少とも化学反応あるいは相の変化を伴うものである。‥‥他方,吸収とは気体あるいは蒸気が固体構造の中に浸透して固溶体を作る現象をいうのである。‥‥固体が気体や蒸気を収容するとき,収着()という一般的な表現を使用することがある。」sorption(2頁2行から9行)と記載されていることからも明らかである。 イまた,被告は,トヨタ自動車株式会社( 体や蒸気を収容するとき,収着()という一般的な表現を使用することがある。」sorption(2頁2行から9行)と記載されていることからも明らかである。 イまた,被告は,トヨタ自動車株式会社(以下「訴外会社」という。)の論文- 11 -(乙2。以下「乙2論文」という。)の46頁「3-2.吸蔵メカニズム」の記載を引用して,NOxトラップ触媒でも「吸着」と「吸収」とは同時に起こる現象であり,吸着に吸収が含まれる旨主張している。 しかしながら,上記引用箇所には,「このNOxを取り込んだ吸蔵材の形態をFT-IRで調査した結果,硝酸イオンの生成が確認できた(図4)。これは,速い吸蔵速度が単なる吸着反応によるのでは無く,硝酸イオン生成に伴う酸-塩基反応に起因することを示している。‥‥このことは,すべてのNOxが硝酸イオンとして吸収されているのでは無く,一部はNOxでの吸着状態の存在を支持するものである。そのため,ここでは全体を包括してNOx吸蔵という表現を使用することとした。」と記載されており,吸着,吸収を別の状態として把握するとともに,両者を含む概念としての吸蔵を定義している。したがって,単に固体表面に吸着するにとどまる現象は吸収とはいえず,「吸着」と「吸収」とは同時に起こる現象であり,吸着に吸収が含まれるとはいえない。また,上記乙2論文によれば,ほとんど又は多くのNOxが硝酸イオンとして吸収されているが,一部がNOxでの吸着状態の存在を示すために両者を含めたNOx吸蔵との表現を用いることを記載している。 つまり,吸蔵の中で,ほとんどが吸収に該当し,吸着が一部含まれる旨を説明するものである。したがって,被告の主張は上記記載を誤って捉えたもので失当である。 換言すれば,吸蔵が起こるときは,一部形態として吸着状態が含まれるといえるが,「吸着」が起 吸着が一部含まれる旨を説明するものである。したがって,被告の主張は上記記載を誤って捉えたもので失当である。 換言すれば,吸蔵が起こるときは,一部形態として吸着状態が含まれるといえるが,「吸着」が起こるときに常に「吸収」も起こるとはいえない。従来の吸収触媒は,前掲の乙2論文46頁「3-2.吸蔵メカニズム」にも記載されているように,「硝酸イオンの生成」を伴う。一方,吸着触媒は「硝酸イオンの生成」を伴わず,NOxを吸着により捕捉するため,吸着に吸収が含まれるとはいえない。以上のとおり,本願発明に用いるNOx浄化触媒(NOx吸着触媒)と従来の吸収触媒とは,作用機序が異なることは明らかである。 ウさらに,被告は,訴外会社の代表特許(乙1)等を引用して,NOxトラップ触媒の技術分野では,「吸着」と「吸収」が同様の意味で用いられているとも主- 12 -張している。 しかしながら,上記代表特許(乙1)では,「吸着」との用語は全く使用されていない。また,従来,吸着触媒,吸収触媒を明確に区別する定義がなされていたとはいえず,さらに,これらを区別して製造した例がなかったものである。本願発明のように吸収触媒と異なる機能を備えたNOx吸着触媒が初めて公表されたのは,特許第3107294号の公報(甲7)の公開日である平成10年8月11日であり,それ以前の文献である特開平5-168860号公報(乙6),特開平8-24643号公報(乙7)の出願時点では,吸収触媒とは異なる機能に着目した「NOx吸着触媒」は知られておらず,したがって,当該文献において,「吸着」と「吸収」とが混用されていたとしても,本願発明における「表面に吸着」と「吸収」とが区別できないという理由にはならない。 相違点1の認定の誤り(取消事由2)相違点1の「本願発明においては,排ガスがリーンのとき 混用されていたとしても,本願発明における「表面に吸着」と「吸収」とが区別できないという理由にはならない。 相違点1の認定の誤り(取消事由2)相違点1の「本願発明においては,排ガスがリーンのときに排ガス中のNOxをNOx浄化触媒の表面に吸着している」としたことは争わないが,その余の認定は誤っている。 そもそも,引用発明の参考例に記載されているNOx浄化触媒は,「NOxを硝酸イオン(NO)の形で吸収保持する」ものであり,審決が,引用発明に「排ガ -ス中のNOxを該触媒Aに吸着させ」と記載されていると認定したこと自体が誤りであることは,前記1(2) のとおりである。 したがって,相違点1のうち,「引用発明においては,NOxの吸着がどこで行われているか明らかでない」との点は誤りであり,引用発明は排ガス中のNOxを触媒に吸着させるものではなく,NOxを硝酸イオン(NO)の形で吸収保持す -る点を相違点とすべきである。 相違点2の認定の誤り(取消事由3) 相違点2において,引用発明に記載の制御条件は「NOxを硝酸イオン(NO)の形で吸収保持する」NOx浄化触媒に関するものであり,「NOxを表面に-- 13 -吸着する」NOx浄化触媒に関する制御条件は記載されていない。 したがって,本願発明と引用発明との相違点2は,「本願発明においては,排ガス中のNOxを表面に吸着するNOx浄化触媒でNOxを吸着後に,排ガスを0. 5ないし4.5秒の間ストイキもしくはリッチの状態とし,前記排ガスは,そのリッチ状態の深さを空燃比A/F値で,13.0乃至14.7の間としたのに対して,引用発明は,排ガス中のNOxを硝酸イオン(NO)の形で吸収保持するNOx -浄化触媒でNOxを硝酸イオン(NO)の形で吸収保持後に,排ガスを0.1な -い 4.7の間としたのに対して,引用発明は,排ガス中のNOxを硝酸イオン(NO)の形で吸収保持するNOx -浄化触媒でNOxを硝酸イオン(NO)の形で吸収保持後に,排ガスを0.1な -いし20秒の間理論空燃比ないしリッチ空燃比の状態とし,そのリッチ空燃比の状態の深さは開示していない点で相違している。」と認定されるべきである。 相違点1の判断の誤り(取消事由4)審決は,相違点1に係る本願発明の発明特定事項が周知例1及び2を含む周知技術1によって周知であるとしているが,次のとおり,誤りである。 (1) 周知例1及び2の認定の誤り周知例1及び2に記載されたNOx浄化触媒は,いずれも「NOxを硝酸イオン(NO)の形で吸収保持する」ものであり,NOxを触媒表面へ吸着するもので -はないし,本願発明の出願当時,「NOxを触媒表面に吸着するもの」は周知ではなかった。したがって,相違点1に係る本願発明の発明特定事項は周知ではない。 すなわち,まず,審決が相違点1に係る本願発明の発明特定事項が周知であることを示すために引用した周知例1は,例えば,請求項1における「排気の空燃比がリーンのときに排気中のNOxを吸収し,排気中の酸素濃度が低下したときに吸収したNOxを放出するNOx吸収剤」との記載,段落【0024】における「流入排気がかなりリーンになると流入排気中の酸素濃度が大巾に増大し,図2(A)に示されるようにこれら酸素OがOまたはOの形で白金Ptの表面に付着する。 -2-一方,流入排気中のNOは白金Ptの表面上でこのOまたはOと反応し,NO -2-となる(2NO+O→2NO)。次いで生成されたNOの一部は白金Pt上 で酸化されつつ吸収剤内に吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら,図2- 14 - 反応し,NO -2-となる(2NO+O→2NO)。次いで生成されたNOの一部は白金Pt上 で酸化されつつ吸収剤内に吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら,図2- 14 -(A)に示されるように硝酸イオンNOの形で吸収剤内に拡散する。このように -してNOxがNOx吸収剤18内に吸収される。」との記載から明らかなように,「NOxを硝酸イオン(NO)の形で吸収保持する」ものであり,NOxを触媒 -表面に吸着するものではない。したがって,周知例1は,相違点1に係る本願発明の発明特定事項が周知であることを示す文献ではない。 また,周知例2も,例えば,請求項1における「流入する排気ガスの空燃比がリーンのときにNOxを吸収し,流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比又はリッチになると吸収したNOxを放出するNOx吸収剤」との記載,段落【0057】における「燃焼室5内における平均空燃比A/Fがリーンであり,従って流入排気ガスがリーンであるときには流入排気ガス中の酸素濃度が高くなり,このとき図12(A)に示されるようにこれら酸素OがO又はOの形で白金Ptの表面に付 -2-着する。一方,流入排気ガス中のNOは白金Ptの表面上でO又はOと反応し, -2-NOとなる(2NO+O→2NO)。次いで生成されたNOの一部は白金P t上で酸化されつつ吸収剤内に吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら図12(A)に示されるように硝酸イオンNOの形で吸収剤内に拡散する。このよう -にしてNOxがNOx吸収剤26内に吸収される。」との記載から明らかなように,周知例2も,周知例1と同様に,「NOxを硝酸イオン(NO)の形で吸収保持 -する」ものであり,NOxを触媒表面に吸着するものではない x吸収剤26内に吸収される。」との記載から明らかなように,周知例2も,周知例1と同様に,「NOxを硝酸イオン(NO)の形で吸収保持 -する」ものであり,NOxを触媒表面に吸着するものではない。 したがって,周知技術1の検討において周知例1及び2を「NOxを触媒表面に吸着するもの」であるとした認定には誤りがある。 (2) 周知技術の意義そもそも「周知技術」とは,その技術分野において一般的に知られている技術であって,例えば,これに関し,相当多数の公知文献が存在し,又は業界に知れ渡り,あるいは例示する必要がないほどよく知られている技術をいうところ,審決にいう周知技術1又は周知技術2として引用された周知例1ないし3は,いずれも同一出願人による公開公報であって,しかも平成6年3月8日ないし平成7年12月19- 15 -日のわずか2年足らずの間に公開されたものであり,これらわずか2,3の公報の存在をもって「周知技術」を認定することはできないというべきである。 相違点2の判断の誤り(取消事由5)(1) 審決は,相違点2に係る本願発明の発明特定事項が周知例1及び周知例3を含む周知技術2によって周知であるとしているが,以下のとおり,周知例1及び2 のみならず周知例3に記載されたNOx浄化触媒も「NOxを硝酸イオン(NO)の形で吸収保持する」ものであって,「NOxを表面に吸着する」NOx浄化-触媒に関する制御条件は記載されていないから,それらによって相違点2に係る本願発明の発明特定事項が周知であるした審決の判断には誤りがある。 ア周知例3の認定の誤り周知例3は,例えば,請求項1における「流入排気ガスの空燃比がリーンのときにはNOxを吸収し,流入排気ガス中の酸素濃度が低下すると吸収したNOxを放出するNOx吸収剤」との記載,段落【0012】 り周知例3は,例えば,請求項1における「流入排気ガスの空燃比がリーンのときにはNOxを吸収し,流入排気ガス中の酸素濃度が低下すると吸収したNOxを放出するNOx吸収剤」との記載,段落【0012】における「流入排気ガスがかなりリーンになると流入排気ガス中の酸素濃度が大巾に増大し,図4(A)に示されるようにこれら酸素OがOの形で白金Ptの表面に付着する。一方,流入排気 -ガス中のNOは白金Ptの表面上でOと反応し,NOとなる(2NO+O→ - 2NO)。次いで生成されたNOの一部は白金Pt上で更に酸化されつつ吸収 剤内に吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら,図4(A)に示されるように硝酸イオンNOの形で吸収剤内に拡散する。このようにしてNOxがNOx吸 -収剤18内に吸収される。」との記載から明らかなように,「NOxを硝酸イオン(NO)の形で吸収保持する」ものであり,NOxを触媒表面に吸着するもので -はない。 したがって,周知技術2の検討において周知例1及び3を「NOxを触媒表面に吸着するもの」と認定したことには誤りがある。 イ以上により,周知例1ないし3は,いずれも,本願発明の構成(i)の「排ガスがリーンのときに排ガス中のNOxを表面に吸着し,排ガスがストイキもしく- 16 -はリッチのとき吸着したNOxをNに還元する『NOx浄化触媒』」とは,その 構成を異にするものであるため,周知例1及び3を含む周知技術2のようなNOx吸収触媒のリッチ状態の設定と,本願発明におけるリッチ状態の設定とは全く別異のものであるから,周知技術2は本願発明におけるリッチ状態の設定が周知であることを示すものではない。 (2) 相違点2は,前記3のとおりに認定されるべきところ,上記のとおり,両者は,排ガスの触媒 異のものであるから,周知技術2は本願発明におけるリッチ状態の設定が周知であることを示すものではない。 (2) 相違点2は,前記3のとおりに認定されるべきところ,上記のとおり,両者は,排ガスの触媒の酸化作用と還元作用が全く異なると共に,ストイキもしくはリッチの状態の期間(本願発明が0.5ないし4.5秒の間であるのに対して引用発明が0.1ないし20秒の間である)とストイキもしくはリッチの状態の深さ(本願発明が13.0ないし14.7の間であるのに対して引用発明はその点の開示がない)も異なるものであるから,触媒の機能が相違することで排ガスの触媒の酸化作用と還元作用が全く異なると共に,ストイキもしくはリッチの状態の期間と深さも異なる引用発明からは,本願発明の作用効果を期待したり予測したりできるものではない。 また,本願発明におけるリッチ状態の設定は,本願発明の前記構成(i)の,NOxを表面に吸着する触媒に対して特に有効な設定条件を規定したものである。 以上のとおり,本願発明の前記相違点2は,引用発明から適宜なし得る設計的事項に過ぎないものであるとは到底いえるものではなく,引用発明から予測できない構成というべきものである。 したがって,審決が前記相違点2の判断において,「相違点2に係る本願発明のように,時間及び深さを決定することは,周知技術2を勘案すれば,適宜なし得る設計的事項に過ぎないものである」と認定したことは,誤りである。 本願発明の奏する格別の効果の看過誤認(取消事由6)本願発明は,前記1(2) のとおり,引用発明並びに周知技術1及び2から予測される以上の格別の効果を奏するものであるから,審決が,「本願発明を全体として検討しても,引用発明,周知技術1及び周知技術2から予測される以上の格別の効- 17 -果を奏するとも認めることができな れる以上の格別の効果を奏するものであるから,審決が,「本願発明を全体として検討しても,引用発明,周知技術1及び周知技術2から予測される以上の格別の効- 17 -果を奏するとも認めることができない。」と判断したことは誤りである。 すなわち,前記1(2) のとおり,本願発明は,前記構成(i)ないし()を組iiiみ合わせた点に格別に技術的意義のある特徴的構成を有することによって,物質移動抵抗の大きい触媒バルク内のNOx移動過程を含まない吸着触媒を用い,かつそのリッチ時間と深さを前記の吸着触媒の捕捉特性を考慮した適切なリッチ時間及びリッチ深さに設定した(前記構成(i)ないし()を組み合わせた)ことにより,iii本願明細書記載の課題を解決したものであり,その結果,浅いリッチシフトにより燃費に大きな影響を与えることなくNOxの効果的な浄化を行うことができるという格別の作用効果を奏するものである。 また,前記3のとおり,前記構成()の制御条件は,引用発明に記載されたiii「NOxを硝酸イオン(NO)の形で吸収保持する」NOx浄化触媒に関する制 -御条件とは全く別異の「NOxを表面に吸着する」NOx浄化触媒に関するものである。 そして,触媒からNOxを除去する還元工程は,燃費向上と浄化性能向上というリーンバーン燃焼エンジンに課せられた二つの命題を同時に解決しなくてはならないものであること,すなわち,一般の燃焼制御の常識としては,燃費向上のためには,還元頻度を減らして小さくリッチシフトして還元を短時間で行う必要があり,一方,浄化性能向上のためには頻度を増やして大きくリッチシフトして還元を長時間行う必要があり,互いに相反する制御となっていることから,リーンバーン燃焼エンジンにおいて,燃費向上と浄化性能向上とを両立させることは容易なことで には頻度を増やして大きくリッチシフトして還元を長時間行う必要があり,互いに相反する制御となっていることから,リーンバーン燃焼エンジンにおいて,燃費向上と浄化性能向上とを両立させることは容易なことではないところ,本願発明は,前記構成()の制御条件に従って特定の還元時間やリiiiッチ深さを設定することにより,燃費向上と浄化性能向上との両立を図ったものであるから,当該制御条件を採用することは格別技術的意義のあることである。 以上の本願発明の前記(i)ないし()を組み合わせた構成は,引用発明並びiiiに周知技術1及び周知技術2を寄せ集めてみても具現するものではなく,かつ,本願発明が,前記(i)ないし()を組み合わせた構成により,前記のとおりの本iii- 18 -願発明の作用効果を奏するものである以上,前記(i)ないし()を組み合わせiiiた構成は,当業者といえども,引用発明並びに周知技術1及び周知技術2から予測できるものではない。 特許法159条2項の準用する同法50条違反1(取消事由7)本願発明に用いるNOx浄化触媒は,必須成分として,希土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素と,チタン(Ti)とを含む組成物である。 しかしながら,触媒の成分については,拒絶理由通知書(甲12)において,「触媒の成分,構成については,引用文献1又は2に示されている。」,拒絶査定書(甲13)において,「NOx浄化触媒として,NOxを触媒表面への吸着するものは,例示するまでもなく本願出願前において周知である。」と述べられているだけで,前記の希土類金属,チタン(Ti)については何ら言及すらされていなかったところ,審決において,初めて「引用文献記載の発明における『セリア・ランタナ・チタニアの混合物や複合酸化物』は,元素としてセリウム,ランタン,チタ チタン(Ti)については何ら言及すらされていなかったところ,審決において,初めて「引用文献記載の発明における『セリア・ランタナ・チタニアの混合物や複合酸化物』は,元素としてセリウム,ランタン,チタンを含むものであることから,本願発明における『希土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素』及び『チタン(Ti)』とを含む『組成物』に相当する。」との見解が示された。したがって,審決には,特許法159条2項で準用する同法50条に違背する違法がある。 特許法159条2項の準用する同法50条違反2(取消事由8)意見書及び審判理由補充書において原告らが縷々述べているように,「排ガスがリーンのときに排ガス中のNOxを表面に吸着し,排ガスがストイキもしくはリッチのとき吸着したNOxをNに還元する『NOx浄化触媒』」を用いることは本 願発明の重要な部分であるにもかかわらず,審決は,当該相違点に係る構成を,審査手続では示されていない周知例1及び2を含む周知技術1並びに周知例1及び3を含む周知技術2に基づいて認定した。しかし,前記4ないし6のとおり,当該周知技術が普遍的な原理や当業者にとって極めて常識的・基礎的な事項のように周知性の高いものであるとも認められないから,このような場合には,拒絶査定不服審- 19 -判において拒絶査定の理由と異なる理由を発見した場合に当たるということができ,拒絶理由通知制度が要請する手続的適正の保障の観点からも,特許庁は,新たな拒絶理由通知を発し,出願人たる原告らに意見を述べる機会を与えることが必要であったというべきである。そして,審決は,相違点の判断の基礎として前記周知技術を用いているのであるから,この手続の瑕疵が審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。したがって,審決には,特許法159条2項で準用する同法50条に ,審決は,相違点の判断の基礎として前記周知技術を用いているのであるから,この手続の瑕疵が審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。したがって,審決には,特許法159条2項で準用する同法50条に違背する違法がある。 第4被告の主張次のとおり,審決の認定判断には誤りはなく,原告ら主張の取消事由はいずれも理由がない。 原告らが本願発明を限定解釈することの誤りに対して(1) 原告らは,前記取消事由を主張する前提として,発明の詳細な説明に実施の形態として記載した内容に基づいて本願発明を限定的に解釈するが,次のとおり,そもそもその限定解釈が誤りである。 特許法36条5項の規定の趣旨及び判例に従えば,本願発明の認定は,「特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべて」(以下,「発明特定事項」という。)として特許出願人自らが記載した特許請求の範囲に基づいてされることが原則である。そして,この認定は,特段の事情のない限り,願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきであって,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,あるいは,一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限って,明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されるにすぎない(最高裁平成3年3月8日第二小法廷判決(昭和62年(行ツ)第3号審決取消訴訟事件))。すなわち,進歩性等の特許要件の判断に際して,発明の詳細な説明に記載した実施例等に本願発明を限定的に解釈することは許されない。ただし,発明特定事項の意味内容が明- 20 -細書及び図面において定義又は説明されている場合は,その用語を解釈するに当たってそれらを考慮するものであ 本願発明を限定的に解釈することは許されない。ただし,発明特定事項の意味内容が明- 20 -細書及び図面において定義又は説明されている場合は,その用語を解釈するに当たってそれらを考慮するものであるが,特許請求の範囲に記載した事項の概念に含まれる下位概念を単に例示した記載があるだけでは,特許請求の範囲に記載した事項の定義又は説明には含まれないものである。 (2) 本件において,原告らは,本願明細書段落【0040】の「本実施の形態の‥‥NOx浄化触媒は,リーン排ガス中の‥‥NOxの捕捉は,主として触媒表面への吸着により行われる。‥‥これは,吸着NOxの還元反応にともなう物質移動過程が,還元剤や生成Nの気相拡散過程と吸着NOx等の表面拡散過程を含むのみで, 物質移動抵抗の大きい触媒バルク内の移動過程を含まないことによる。」との記載を前提して,本願発明は,物質移動抵抗の大きい触媒バルク内のNOx移動過程を含まない吸着触媒を用いており,かつそのリッチ時間と深さを前記の吸着触媒の補足特性を考慮した適切なリッチ時間及びリッチ深さに設定したものであるなどと主張する。 しかしながら,本願の請求項1には,原告らが主張するような「物質移動抵抗の大きい触媒バルク内のNOx移動過程を含まない吸着触媒」との特定はされておらず,また,「排ガス中のNOxを表面に吸着し」との記載によっても,そのような特定がされたものとはいえない。すなわち,「吸着」とは,通常の学術用語であって,乙4辞典の565頁見出し「吸着」に「二相の界面で分子やイオンが濃縮される現象」と説明され,また,岩波理化学辞典第4版(株式会社岩波書店発行。乙5。 以下,「乙5辞典」という。)302頁見出し「吸着」に「気相または液相中の物質が,その相と接触するほかの相(液相または固相)との界面において,相の内部 波理化学辞典第4版(株式会社岩波書店発行。乙5。 以下,「乙5辞典」という。)302頁見出し「吸着」に「気相または液相中の物質が,その相と接触するほかの相(液相または固相)との界面において,相の内部と異なる濃度で平衡に達する現象」と説明されるとおりの意味を有し,さらに,「化学吸着」と「物理吸着」に分類できることが知られている。また,乙5辞典の302頁見出し「吸着」又は同208頁見出し「化学吸着」に説明されるように「不均一触媒の作用は必ず吸着の過程を含」み,「化学吸着層の上に物理吸着がおこる場合もある」ことが知られ,さらに,乙4辞典の565頁見出し「吸着」にあ- 21 -るように「化学吸着においては…気体分子が固体表面と相互作用する場合に,単に固体表面に吸着するにとどまらず,さらに固体内部まで拡散する場合があ」ること,かかる場合が「吸収」と呼ばれることが知られている。 そうすると,本願発明のNOx浄化触媒が「排ガス中のNOxを表面に吸着し」という発明特定事項は,上記通常の技術用語の意味で理解すれば,NOx浄化触媒が,「排気ガス中のNOxを」「排気ガス(気相)と触媒(固体)の界面(触媒の表面)に濃縮する(排気ガス又は触媒の内部と異なる濃度で平衡に達する)(要は「くっつく」)こと,ここで,固体触媒の作用は必ず吸着の過程を含み,吸着には化学吸着と物理吸着が包含されてそれらは同時に起こり得るものであり,化学吸着においては触媒表面に吸着するにとどまらず,さらに触媒内部まで拡散(吸収)する場合がある」との意味であることが明らかである。ここで,「表面に」という発明特定事項は,そもそも物質の界面において起こる現象である「吸着」という用語に含まれる概念である。また,本願発明では,「吸着」が化学吸着又は物理吸着であるかの特定や「吸着」以外の現象(例えば,「 発明特定事項は,そもそも物質の界面において起こる現象である「吸着」という用語に含まれる概念である。また,本願発明では,「吸着」が化学吸着又は物理吸着であるかの特定や「吸着」以外の現象(例えば,「吸収」)を排除する旨の特定もないことから,本願発明は,NOx浄化触媒がNOxの吸着能を有することが特定されるにとどまり,「吸着」には化学吸着及び物理吸着が包含されるとともに,NOxの吸収能の有無については何ら限定するものではない。 また,「吸着」と「吸収」とは原理的に同時に起こり得る現象であることは,上記のとおりであるが,さらに,NOxトラップ触媒の技術水準を構成する訴外会社の乙2論文46頁「3-2.吸蔵メカニズム」では「すべてのNOxが硝酸イオンとして吸収されているのでは無く,一部はNOxでの吸着状態の存在を支持するものである」として,NOxトラップ触媒でも「吸着」と「吸収」とは同時に起こる現象であることを明確に開示している。 さらに,NOxトラップ触媒の技術水準を構成する訴外会社の一連の特許出願では,NOx触媒の機能を表現する用語として,例えば,訴外会社代表特許の特許公報(乙1)では「吸収」が,特開平5-168860号公報(乙6)の段落【00- 22 -14】等では「吸着」が用いられ,また,特開平8-24643号公報(乙7)の段落【0013】等では「吸収」と「吸着」が併用されているように,「吸着」と「吸収」が混用されている。すなわち,NOxトラップ触媒の技術分野では,「吸着」と「吸収」が同様の意味で用いられていることが分かる。 このように,そもそも触媒表面近傍の化学反応のため,実際の触媒表面層で「吸着」と「吸収」のいずれの現象が起こっているのかについて,明確な識別は困難であり,本願出願時点で,NOxトラップ触媒では,「吸着」と「吸収」が同 も触媒表面近傍の化学反応のため,実際の触媒表面層で「吸着」と「吸収」のいずれの現象が起こっているのかについて,明確な識別は困難であり,本願出願時点で,NOxトラップ触媒では,「吸着」と「吸収」が同時に起こっていることが知られ,「吸着」と「吸収」が同様の概念で用いられていることにかんがみれば,本願発明における「排ガス中のNOxを表面に吸着し」という発明特定事項に接した当業者は,「NOxが触媒表面に吸着するとともに,さらに触媒内部まで拡散(吸収)する」との意味であると理解するものと推定される。 したがって,本願発明における「排ガス中のNOxを表面に吸着し」との記載によっては,物質移動抵抗の大きい触媒バルク内のNOx移動過程を含まない吸着触媒を用いていることが特定されているとはいえない。 以上により,本願発明における「排ガス中のNOxを表面に吸着し」の技術的意義は明確であるから,発明の詳細な説明の記載を参酌して解釈することは許されない。 仮に,本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌するとしても,段落【0001】ないし【0022】,【0045】及び【0046】に記載された【発明の属する技術分野】,【従来の技術】,【課題を解決するための手段】及び【発明の効果】の欄に「吸着」の意味を明確に定義又は説明した箇所は見いだせないから,本願発明が,物質移動抵抗の大きい触媒バルク内のNOx移動過程を含まない吸着触媒を用いていると解釈することはできない。 (3) また,原告らは,前記第3の1(1) において,「触媒活性成分」と「担体」とを区別し,本願発明における「希土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素」及び「チタン(Ti)」とを含む「組成物」は触媒活性成分を指すのであって,担- 23 -体を含まないと限定解釈しているが,請求項1には,原告らが主張するよう 類金属から選ばれる少なくとも一種の元素」及び「チタン(Ti)」とを含む「組成物」は触媒活性成分を指すのであって,担- 23 -体を含まないと限定解釈しているが,請求項1には,原告らが主張するような「チタン,希土類元素が,微粒化された担体上に担持されている」との特定はなく,また,本願発明における「NOx浄化触媒が,アルカリ金属‥‥チタン(Ti)とを含む組成物」との触媒の組成に関する記載によっても,上記のように特定されているとはいえない。すなわち,まず,「組成」とは,通常,「物質の成りたち方」や「成分」を意味するから,本願発明の「組成物」とは,所定の成分を含む物であることが分かる。 そして,乙4辞典の1132頁見出し「触媒」において「単一物質でなく複合体として使用される場合があり,そのなかで副次的役割を果たす物質を助触媒,担体などという」と記載されるように,「触媒」とは,助触媒や担体を包含する概念であり,また,同1378頁見出し「担体」において「触媒機能を有する物質を,安定に担持する固体。‥‥担体自体は触媒活性をもたなくても,触媒機能物質と電子の授受を行ってその機能を変化向上させたり,反応熱の伝播を助け,焼結を防止したり,触媒毒物質を捕捉するなどの役割をする」と記載されるように,触媒機能物質と担体とがあいまって触媒としての所定の機能を発揮するものである。そして,請求項1には,各成分について,触媒機能物質,担体のいずれに該当するのかを特定するような記載はないし,また,各成分が担体上に担持される旨の記載もない。 そうすると,本願発明における「NOx浄化触媒が,アルカリ金属…チタン(Ti)とを含む組成物」との触媒の組成に関する記載を通常の技術用語の意味で理解すれば,「NOx浄化触媒(触媒機能物質,担体,その他を含む)」が,「アルカリ金属及びア 化触媒が,アルカリ金属…チタン(Ti)とを含む組成物」との触媒の組成に関する記載を通常の技術用語の意味で理解すれば,「NOx浄化触媒(触媒機能物質,担体,その他を含む)」が,「アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素と,希土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素と,白金族金属(いわゆる貴金属)から選ばれる少なくとも一種の元素と,チタン(Ti)」を含む物であることが特定されるにとどまり,各成分が触媒機能物質又は担体等のいずれに該当するか,また,各成分が担体上に担持されることまでは特定されないものと解すべきである。 以上のとおり,本願発明における「NOx浄化触媒が,‥‥組成物」の技術的意- 24 -義は明確であるから,発明の詳細な説明の記載を参酌して解釈することは許されない。 取消事由1(一致点の認定の誤り)に対して(1) 前記第3の1(1) の原告らの主張について原告らは,「触媒活性成分」と「担体」とを区別することを前提として,引用発明には,触媒活性成分として「希土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素」及び「チタン(Ti)」とを含む「組成物」は開示されていないことを理由として,審決は,本願発明と引用発明とが「前記NOx浄化触媒が,アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素と,希土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素と,白金族金属(いわゆる貴金属)から選ばれる少なくとも一種の元素と,チタン(Ti)とを含む組成物」である点で一致すると認定していることが誤りである旨主張する。 しかしながら,前記1(3) のとおり,原告らが主張するような限定解釈をすることは許されないというべきであるから,原告らの主張は失当であり,また,仮に,本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌しても,本願発明のチタン 1(3) のとおり,原告らが主張するような限定解釈をすることは許されないというべきであるから,原告らの主張は失当であり,また,仮に,本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌しても,本願発明のチタン,希土類元素は,微粒化された担体上に担持されていると解することはできないのであって,本願発明のNOx浄化触媒は,特許請求の範囲の記載に基づいてそこに記載されている組成をその成分として含む触媒(触媒機能物質,担体,その他を含む)と認定すべきものであるから,原告らの主張は失当である。 (2) 前記第3の1(2) の原告らの主張について原告らは,審決が,引用発明に「排ガス中のNOxを該触媒Aに吸着させ」と記載されていると認定したことは誤りである旨主張するが,審決が摘記した引用発明の内容からすれば,引用発明の触媒が触媒活性成分と耐火性無機酸化物とから成ること,及びNOを吸着することが記載されていることが把握でき,これをもっ て,審決は「触媒活性成分と耐火性無機酸化物とからなる触媒」を「触媒A」と定義した上で「内燃機関の酸化雰囲気下で排ガスと接触させて排ガス中のNOxを該- 25 -触媒Aに吸着させ,」と引用発明の記載事項を整理したものであり,この整理を踏まえ,審決は,引用発明を「排ガス中のNOxを該触媒Aに吸着させ,」と認定したものであるから,何ら誤りはない。 この点,原告らは,引用発明にて例示されている参考例1ないし38に記載されている触媒について実施したとする実験成績書(甲8)の4ないし6頁の「1.2測定結果」に基づいて,引用発明の触媒はNOの吸着保持ではなく,硝酸イオ ン(NO)の形で吸収保持するものである旨主張している。しかし,引用発明の -触媒が硝酸イオン(NO)の形で吸収保持することを示したからといって,前記 -のとおり ではなく,硝酸イオ ン(NO)の形で吸収保持するものである旨主張している。しかし,引用発明の -触媒が硝酸イオン(NO)の形で吸収保持することを示したからといって,前記 -のとおり,NOxトラップ触媒においてNOxが触媒に吸着することが技術常識であることにかんがみれば,引用発明の触媒においてNOxの吸着現象が全く生じていないと断言できるかは疑わしい上,上記実験は,引用発明の実施例についてのみの実験にすぎないし,さらに,第三者に委託して実験する等の客観性担保の配慮もされていないのであるから,「刊行物に記載されている事項」に基づく引用発明の認定を変更する理由はないというべきである。また,引用発明に接する当業者は実験成績書(甲8)の存在を知る由もなく,引用発明を精査しても,引用発明の記載自体にはNOの吸着保持ではないことを窺うに足りる記載を見いだすことができ ないから,実験成績書(甲8)は,当業者がその技術常識によって引用発明記載の触媒Aにおいて,NOxの「吸着」現象が発生しているものとして理解することを妨げるものではない。そうすると,引用発明の実施例の触媒についての実験結果の真偽にかかわらず,引用発明の認定を変更する理由はないというべきである。 (3) 以上のとおり,審決における一致点の認定には誤りはない。 取消事由2(相違点1の認定の誤り)に対して前記2(2) のとおり,本願発明の「表面に」という発明特定事項は,「吸着」に包含される概念である。他方で,引用発明の記載及び技術常識によっても,引用発明の触媒Aにおいて,NOxの「吸着」現象が発生していることは明らかである。 してみると,本願発明の「排ガス中のNOxを表面に吸着」という発明特定事項と- 26 -引用発明の「排ガス中にNOxを該触媒Aに吸着」という事項との間に実 着」現象が発生していることは明らかである。 してみると,本願発明の「排ガス中のNOxを表面に吸着」という発明特定事項と- 26 -引用発明の「排ガス中にNOxを該触媒Aに吸着」という事項との間に実質的な相違はないが,引用発明の記載事項には「表面に」という文言が見いだせないことから,審決は,この点を一応の「相違点1」として抽出したものである。したがって,審決の相違点1の認定に誤りはない。 取消事由3(相違点2の認定の誤り)に対して相違点2の認定に係る原告らの主張も,つまるところ,引用発明では,NOxの「吸着」現象が発生していないことに依拠するものであるから,それが失当であることは,前記のとおりである。 取消事由4(相違点1の判断の誤り)に対して(1) 第3の4(2) の原告らの主張についていわゆるNOxトラップ触媒については,平成5年ころ以降から本願出願時点において,特許文献及び学術論文として相当多数の公知文献が存在し,かつ,「内燃機関の排ガス浄化方法」という分野において知れ渡っていたものであるから,「周知技術」ということができるものであり,したがって,NOxトラップ触媒に関する技術内容は,本願出願時点で当業者に周知の技術である。特に訴外会社のNOxトラップ触媒に関する技術は,例えば,自動車関連雑誌(乙13)において「'94テクノロジー・オブ・ザ・イヤー」の第1位として選定されていること,また,訴外会社の代表特許(乙1)が,恩賜発明賞(最上位の賞)を受賞したことからも理解できるように,同社の技術の概念の公表並びに関連技術の特許取得及び実用化は,世界の自動車産業界に大きな影響を与えたものである。そして,NOxトラップ触媒は,その影響力の大きさから,短期間に当業者が認識するに至ったものであり,訴外会社の代表特許公報(乙1)等の特許 用化は,世界の自動車産業界に大きな影響を与えたものである。そして,NOxトラップ触媒は,その影響力の大きさから,短期間に当業者が認識するに至ったものであり,訴外会社の代表特許公報(乙1)等の特許公報及び訴外会社の乙2論文等の学術論文における開示内容は本願出願時点において当該分野における当業者にとって周知の技術的事項であったといえるものである。このように,NOxトラップ触媒に係る技術的事項は,常識的・基礎的な事項という周知性の高いものであって,本願出願時点で周知であることは例示するまでもないことである。 - 27 -(2) また,上記のとおり,NOxトラップ触媒は,平成5年以降の短期間に当業者が認識するに至ったものであり,審決は,周知の技術である訴外会社のNOxトラップ触媒に係る文献の例示として,訴外会社が出願人である周知例1ないし3を提示しているのであって,NOxトラップ触媒に関する技術動向・水準に照らせば,この点に審決が取り消されなければならない違法はない。 取消事由5(相違点2の判断の誤り)に対して(1) 周知例3の認定の誤りについて原告らは,前記第3の5(1) アにおいて,審決は周知例3の認定を誤った旨主張するが,失当である。 (2) 周知例3の段落【0023】「‥‥NOx 放出フラグがセットされている間は後述するように燃焼室3内に供給される混合気がリッチとされ,従って混合気は3秒間リッチにされることになる。この間にNOx 吸収剤18に吸収されているNOx が放出される。」との記載事項からも分かるように,いずれからも,「NOxトラップ触媒において,排ガスを数秒間ストイキもしくはリッチの状態とし,NOxトラップ触媒で吸着(・吸収)したNOxを還元剤と接触反応させてNに還元 して排ガスを浄化する」ことという技術的事項を把握す ップ触媒において,排ガスを数秒間ストイキもしくはリッチの状態とし,NOxトラップ触媒で吸着(・吸収)したNOxを還元剤と接触反応させてNに還元 して排ガスを浄化する」ことという技術的事項を把握することができる。なお,訴外会社の乙2論文42ないし43頁「4.2.NOx還元法」「(1)NOx還元時の空燃比の影響」において「NOx還元時のリッチの度合いと時間を種々に変化させて,NOx還元に及ぼす影響を調査した(図6)」とも記載されるように,NOxトラップ触媒では,ストイキ又はリッチ状態の期間と深さ(原告らが称する「還元時間と空燃比深さ」又は「還元時間やリッチ深さ」等とも同意。)を種々に変化させてNOx還元に及ぼす影響を調査することが,通常の設計手法である。 したがって,引用発明において,「ストイキ又はリッチ状態の期間と深さ」を具体的に特定することは,当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎないものである。 取消事由6(本願発明の奏する格別の効果の看過誤認)に対して本願発明の構成自体が容易推考可能であることは,前記5及び6で述べたとおり- 28 -であり,このように容易推考性が認められる発明に対して,それにもかかわらず,発明が有する効果を根拠として特許を与えることが正当化されるためには,本願発明が奏する効果が,当該構成の物の効果として予想されるところと比べて格段に異なることを要するものというべきである。 しかしながら,本願発明の「ストイキ又はリッチ状態の期間と深さ」に係る具体的な特定をみても,前記のとおり格別の差異はないのであるから,「浅いリッチシフトにより燃費に大きな影響を与えることなくNOxの効果的な浄化を行うことができる」という作用効果についても格別の差異はないというべきであり,構成自体の容易推考性が認められる本願発明に対して,本願発明 トにより燃費に大きな影響を与えることなくNOxの効果的な浄化を行うことができる」という作用効果についても格別の差異はないというべきであり,構成自体の容易推考性が認められる本願発明に対して,本願発明が有する効果を根拠として特許を与えることが正当化されるに足るほどの格段に異なる効果を奏するといえるものではない。したがって,審決の「本願全体を検討しても,引用発明,周知技術1及び周知技術2から予測される以上の格別の効果を奏するとも認めることができない。」との認定判断に誤りはなく,原告らの主張は失当である。 取消事由7(特許法159条2項の準用する同法50条違反1)に対して拒絶理由通知(甲12)においては,審決がいう引用発明を引用文献1として提示した上で,「備考」で「触媒の成分,構成については,引用文献1‥‥に示されている。」と指摘していることにかんがみれば,本願発明における「アルカリ金属‥‥チタン(Ti)」で特定される組成が引用発明に記載されているとの認定が示されていることが理解でき,これに対して,原告らは,拒絶理由に対する応答時及び審判請求時に補正をし,意見を述べる機会があったことは明らかというべきである。 したがって,審決には,特許法第159条2項で準用する同法第50条に対する違背はない。 取消事由8(特許法159条2項の準用する同法50条違反2)に対して周知技術1は「排ガスがリーンのときに,NOx浄化触媒としてNOxを触媒表面へ吸着するものは周知」であり,この点は,拒絶査定(甲13)において,「備考」で「NOx浄化触媒として,NOxを触媒表面への吸着するものは,例示する- 29 -までもなく本願出願前において周知である。」と説示していることに対応している。 また,周知技術2は,要するに,NOxトラップ触媒におけるNOx還元時の制御 面への吸着するものは,例示する- 29 -までもなく本願出願前において周知である。」と説示していることに対応している。 また,周知技術2は,要するに,NOxトラップ触媒におけるNOx還元時の制御として「排ガスを数秒間ストイキもしくはリッチの状態」とすることが周知であることを説示するものであるが,この点は,拒絶理由通知(甲12)における「備考」で「還元時間は,…当業者が適宜決定しうることにすぎない。」と指摘していること,及び拒絶査定(甲13)における「備考」で「所謂リッチスパイクの頻度及びそのリッチ状態の深さは,当業者が,燃費,浄化性能等を考慮し,実験等を繰り返すことにより最適値を得ることができるものである。」と説示していることに対応している。 そして,かかる周知技術1及び2は,前記5及び6で述べたとおり,当業者にとって常識的・基礎的な事項という周知性の高いものである。 このことから,審決が周知技術1及び2を提示したことは,拒絶査定不服審判において拒絶査定の理由と異なる理由を発見した場合には当たらないものである。 したがって,審決には,特許法159条2項で準用する同法50条に対する違背はない。 第5当裁判所の判断 事案にかんがみ,取消事由8(特許法159条2項の準用する同法50条違反2)について,判断することとする。 (1) 証拠(関係箇所に掲記。)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア本願発明について甲5及び6によれば,本願発明の発明の課題や解決手段等は,次のとおりである。 (ア) 従来技術これまでに提案されてきた技術の一つには,リーン燃焼の排ガスからNOxをNOa「x吸収材を用いて分離し(少なくとも排ガス中のOから分離し)しかる後に,NOx吸収材 により分離されたNOxを炭化水素,一酸化炭素,水素等の還元剤と には,リーン燃焼の排ガスからNOxをNOa「x吸収材を用いて分離し(少なくとも排ガス中のOから分離し)しかる後に,NOx吸収材 により分離されたNOxを炭化水素,一酸化炭素,水素等の還元剤と接触反応させることによ- 30 -ってNOxのNへの還元による無害化を行い,かつ,NOx吸収材のNOx吸収能の回復を 」(段落【0006】)図る手段がある。 例えば,特開昭62-97630号公報,特開昭62-106826号公報,及びb「特開昭62-117620号公報に記載の技術は,排ガス中のNOxを(NOは酸化して吸収され易いNOに変換した後)NOx吸収能を有する触媒と接触させて吸収除去し,吸収効率 が低下した時点で,排ガスの通過を止めてH,メタン・ガソリン等のHC等の還元剤を用い 」(段落て蓄積されたNOxを還元除去し,触媒のNOx吸収能を再生するものである。 【0007】)また,特許第2600492号公報に記載の技術は,排ガスがリーン運転の時にNc「Oxを吸収し,その後,排ガス中の酸素濃度を低下させると吸収したNOxを放出するNOx吸収剤をエンジンの排気通路に設置し,排ガスがリーン運転のときには,NOxを吸収させ,吸収させたNOxをNOx吸収剤に流入する排ガス中のO濃度を低下せしめて放出させて, 」(段落【0008】)しかる後にNに還元する手段を開示している。 (イ) 発明が解決しようとする課題ところで,前記提示の技術は,以下に述べるような解決すべき課題を有している。 a「即ち,まず第一に,触媒で吸収捕捉したNOxの還元無害化のための還元剤を何に求めるかである。リーンバーン燃焼のエンジンを搭載した車のメリットは,前述の如く燃費の向上に基づく省エネルギーにあり,還元剤の投入は,燃費の向上効果を減ずるものであるから,そ 害化のための還元剤を何に求めるかである。リーンバーン燃焼のエンジンを搭載した車のメリットは,前述の如く燃費の向上に基づく省エネルギーにあり,還元剤の投入は,燃費の向上効果を減ずるものであるから,その投入は,必要最小限度とすべきものであり,かつ,還元剤の投入のための装置や制御は,簡単で信頼性のあるものでなければならない。更に,本方式の適用が,自動車の性能や操作性を減じる」(段落【0009】)ものであってはならない。 また第二に,前記特開昭62-97630号公報,同62-106826号公報,b「及び同62-117620号公報に記載の技術は,NOx吸収剤の再生に当たり排ガスの流通を停止してHC等の還元剤をNOx吸収剤に接触させるため,還元剤の排ガス中のOによる 燃焼消費が抑制されて還元剤の使用量が低減する。しかし,NOx吸収剤を2つ設け,且つ,排ガスをこれらに交互に流通させるための排気切り替え機構が必要で,排ガス浄化装置の構造- 31 -」(段落【0010】)が複雑になると云う不具合が生じることは否定できない。 更に第三に,特許2600492号公報記載の技術は,排ガスを常時NOx吸収剤c「に流通させておき,排ガスがリーンの時にNOxを吸収させ,排ガス中のO濃度を低下(燃 焼をリッチ状態)させて,吸収したNOxを放出させて吸収剤を再生するために,排ガス流の」(段落【0011】)切り替えは不要であるので,前記第二の問題点は解消する。 しかし,排ガスがリーンのときにNOxを吸収し,排ガス中のO濃度が低下せしめd「 られたときにNOxを放出できる材料を触媒として採用することが前提となる。また,前記技術には,放出されたNOxを還元するに当たり排ガスの燃焼をリッチとする手段が開示されているが,実際に車のシステムとして前記手段を該車に組 出できる材料を触媒として採用することが前提となる。また,前記技術には,放出されたNOxを還元するに当たり排ガスの燃焼をリッチとする手段が開示されているが,実際に車のシステムとして前記手段を該車に組み込むには,燃料消費率(燃費),操作性,運転性,信頼性等を考慮したリッチ条件の最適化を図る必要があり,燃費の最適化からみれば,燃焼のリッチ化により消費される燃料の量を如何に少なくするかが課題となる。またこれらの最適化は,NOx吸収材の特性とも密接に関係するものもあり,NOx吸収材の選定」(段落【0012】)も重要な要素となるものである。 本発明は,このような問題に鑑みてなされたものであって,その目的とするところe「は,リーンバーン燃焼内燃機関の排ガスからNOx等の有害成分を燃費の低下を抑えて効果的に除去し,無害化できる排ガス浄化方法及び装置を提供することにある。特に,浄化方法及び浄化装置の構成が簡単で,還元剤の消費量も少ないと共に,リーン排ガスからNOxをNOx吸着材を用いて分離し,しかる後に吸着材により分離されたNOxをストイキあるいはリッチ排ガスと接触させることによってNOxのNへの還元による無害化を行う排ガス浄化方法及 び装置であって,排気浄化性能と燃費の両者に優れたリーンバーン燃焼内燃機関を実現する排」(段落【0013】)ガス浄化方法及び装置を提供することにある。 (ウ) 課題を解決するための手段前記目的を達成すべく,本発明に係る内燃機関の排ガス浄化方法は,排ガス流路にa「NOx浄化触媒を配置し,前記NOx浄化触媒が,アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素と,希土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素と,白金族金属(いわゆる貴金属)から選ばれる少なくとも一種の元素と,チタン(Ti)とを含む組成物で, アルカリ土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素と,希土類金属から選ばれる少なくとも一種の元素と,白金族金属(いわゆる貴金属)から選ばれる少なくとも一種の元素と,チタン(Ti)とを含む組成物で,- 32 -排ガスがリーンのときに排ガス中のNOxを表面に吸着し,排ガスがストイキもしくはリッチのとき吸着したNOxをNに還元するものであって,前記内燃機関がリーン運転していると き,前記NOx浄化触媒で排ガス中のNOxを吸着し,吸着後に,排ガスを1秒間乃至4.5秒の間ストイキもしくはリッチの状態とし,前記NOx浄化触媒で吸着したNOxを還元剤と」(段落【001接触反応させてNに還元して排ガスを浄化することを特徴としている。 4】)このように構成された本発明に係る内燃機関の排ガス浄化方法は,排ガスがリーンb「(排ガス中の各成分の酸化還元化学量論関係において還元剤に対して酸化剤が多い状態)のときに,排ガス中のNOxを吸着捕捉し,排ガスがストイキ(酸化剤に対し還元剤が同量)もしくはリッチ(酸化剤に対し還元剤が同量以上)のとき吸着捕捉したNOxをNに還元するよ うにしたこと,即ち,リーン運転しているとき,前記NOx浄化触媒で排ガス中のNOxを吸着し,吸着後に,排ガスを1秒間乃至4.5秒の間ストイキもしくはリッチの状態とし,前記NOx浄化触媒で吸着したNOxを還元剤と接触反応させてNに還元したことにより排ガス を無害化すると共に,リーンバーン燃焼における排ガス中のNOx等を,燃費に大きな影響を」(段落【0015】)与えることなく効果的に浄化できる。 (エ) 発明の実施の形態本実施の形態の‥‥NOx浄化触媒は,リーン排ガス中の‥‥NOxの捕捉は,主a「として触媒表面への吸着により行われる。吸着捕捉されたNOxは,ストイキ及びリッチの排 る。 (エ) 発明の実施の形態本実施の形態の‥‥NOx浄化触媒は,リーン排ガス中の‥‥NOxの捕捉は,主a「として触媒表面への吸着により行われる。吸着捕捉されたNOxは,ストイキ及びリッチの排 ガスと接触させると,触媒上でHC(炭化水素),CO(一酸化炭素)等の還元剤によりNに還元され,触媒表面は,NOx吸着能を回復する。‥‥これは,吸着NOxの還元反応にともなう物質移動過程が,還元剤や生成Nの気相拡散過程と吸着NOx等の表面拡散過程を含 段落むのみで,物質移動抵抗の大きい触媒バルク内の移動過程を含まないことによる。」(【0040】)b「NOxが触媒バルク内に吸収されている場合には,NOxが触媒表面まで拡散移動するか,還元剤が触媒のバルク内に拡散移動する必要がある。バルク内の移動速度を速めるには駆動力としての濃度差が必要で還元剤の濃度を高める必要が生じる。即ち,リッチシフトを深- 33 -」(段落【0041】)くする必要が生じる。 本実施の形態の‥‥NOx浄化触媒は,バルク内の移動過程を含まないために,リc「ッチシフトを深くする必要はないが,必要な還元剤を供給するための時間が必要となる。‥‥本実施の形態の‥‥NOx浄化触媒では,浅いリッチシフトで十分であるために,リッチシフ」(段落【0042】)トによる燃費の低下は小さくなる。 (オ) 発明の効果本発明‥‥は,‥‥内燃機関のリーン運転領域での排ガスの酸化雰囲気でNOxを吸着捕「捉すると共に,還元雰囲気をつくって,NOx浄化触媒を再生することにより,リーンバーン燃焼における排ガス中のNOx等を,燃費に大きな影響を与えることなく効果的に浄化でき」(段落【0046】)る。 イ引用発明について甲1によれば,引用発明の技術内容は,次のとおりである。 目的は,白金,パラジ 排ガス中のNOx等を,燃費に大きな影響を与えることなく効果的に浄化でき」(段落【0046】)る。 イ引用発明について甲1によれば,引用発明の技術内容は,次のとおりである。 目的は,白金,パラジウム,ロジウムおよびルテニウムよ(ア) 本発明(引用発明)の「りなる群から選ばれた少なくとも1種の貴金属または該貴金属の化合物を触媒,1リットル当り金属換算で0.1~30g およびリチウム,カリウム,ナトリウム,ルビジウム,セシウム,ベリリウム,マグネシウム,カルシウム,ストロンチウムおよびバリウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属または該金属の化合物を触媒1リットル当り金属換算で1~80gからなる触媒活性成分と耐火性無機酸化物とからなる触媒を,排ガスと酸化雰囲気下に接触させて該排ガス中の窒素酸化物を該触媒に吸着させ,次いで該排ガス中に還元物質を間欠的に導入して該触媒に吸着された窒素酸化物を還元して浄化することを特徴とする排ガス中の窒素酸」(明細書4頁4行ないし16行)化物の除去方法により達成される。 まず,本発明の原理を説明する。本発明においては,まず酸化雰囲気下で,NOx(イ) 「を含有する排気ガスを酸化活性を示す成分と接触させることにより,NOxは,一般に排気中のNOx成分の内高い割合で存在するNO,NOなどをNOに酸化または活性化する。こう して酸化または活性化されたNOは,ついでNO吸着能を有する成分に吸着される。この蓄 積したNOxに対し,瞬間的に還元物質を排気に導入することにより,吸着されたNOxを還- 34 -元または分解し,NOx除去を完了するものである。このNOxを還元または分解する機能を」(明細書7頁21行ないし8頁9行)有するものが本発明に係る触媒である。 本発明で使用される触媒は,(A)(a)白 または分解し,NOx除去を完了するものである。このNOxを還元または分解する機能を」(明細書7頁21行ないし8頁9行)有するものが本発明に係る触媒である。 本発明で使用される触媒は,(A)(a)白金,パラジウム,ロジウムおよびルテ(ウ) 「ニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種の貴金属または該貴金属の化合物を触媒1リットル当り金属換算で0.1~30gおよび(b)リチウム,カリウム,ナトリウム,ルビジウム,セシウム,ベリリウム,マグネシウム,カルシウム,ストロンチウムおよびバリウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種のアルカリないしアルカリ土類金属または該金属の化合物を触媒1リットル当り金属換算で1~80gよりなる触媒活性成分と,(B)耐火性無機酸化物とからなるもので,さらに必要に応じて触媒活性成分としてマンガン,銅,コバルト,モリブデン,タングステンおよびバナジウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種の重金属または該重金属の化合物を触媒1リットル当り0.1~50g含有してなるものである。 上記成分のうち,酸化雰囲気下でNOxを酸化する成分としては,白金,パラジウム,ロジウム,ルテニウム等の貴金属,特に白金および/またはパラジウムが有効である。これらの貴金属は,酸化雰囲気下ではNOxを酸化する作用がある一方,還元物質の存在または還元雰囲気下においてはNOxを還元・分解する作用を示す。このため,これらの貴金属を使用することにより酸化雰囲気下におけるNOxの酸化または活性化と,間欠的な還元物質の導入または還元雰囲気下における吸着したNOx,特にNOの浄化が効率よく行える。これらの貴金属 の使用量は触媒1リットル当たり金属換算で0.1~30g,好ましくは0.5~5gである。 すなわち,0.1g未満では,NOxの酸化反応が進行しにくくなり,NO の浄化が効率よく行える。これらの貴金属 の使用量は触媒1リットル当たり金属換算で0.1~30g,好ましくは0.5~5gである。 すなわち,0.1g未満では,NOxの酸化反応が進行しにくくなり,NOxの吸着量が少なくなる。また,吸着したNOxを十分に還元除去できなくなる。一方,30gを超えると,使用量に見合った性能が得られず,コストが高くなり,経済性の面から好ましいものではない。 酸化・活性化されたNOx,特にNOを吸着する成分としては,リチウム,ナトリウム, カリウム,ルビジウム,セシウム等のアルカリ金属またはその化合物および/またはマグネシウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウム等のアルカリ土類金属またはその化合物,特にアルカリ金属の化合物が有効である。使用量は触媒1リットル当り金属換算で1~80g,好ましくは5~50gである。すなわち,1g未満では十分なNOx吸着能力を得られないため,- 35 -NOxの処理能力が低下する。一方,80gを超えると,かなり塩基性が強くなり,NOxを強固に吸着することと,貴金属によるNOx酸化反応およびNOx還元反応を抑制することによりNOx処理能力を低下させる。しかして,アルカリ金属としては,カリウム,ナトリウムが特に好ましい。なお,本記載のうち,特にことわらない場合は,上記アルカリ金属等の量は金属換算で示す。 さらに,上記の成分に加えて添加される触媒活性成分としては,マンガン,銅,コバルト,モリブデン,タングステン,バナジウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属またはその化合物を加えることによって,より効率よくNOx浄化が行なわれる。これらの成分は,酸化雰囲気でのNOxの酸化・吸着を促進する働きおよび/または還元剤の存在または酸化雰囲気下での吸着したNOxの還元・分解を促進する働きがあると考 より効率よくNOx浄化が行なわれる。これらの成分は,酸化雰囲気でのNOxの酸化・吸着を促進する働きおよび/または還元剤の存在または酸化雰囲気下での吸着したNOxの還元・分解を促進する働きがあると考えられる。 これらの成分は,触媒1リットル当り0.1~50g,好ましくは1~20gである。すなわち,0.1g未満では,窒素酸化物の吸着量の促進およびNOxの還元反応を十分に行なうことができない。一方,50gを越えると,使用量に見合うNOx吸着能の向上およびNO」(明細書14頁5行ないし17頁5行)x還元能の向上が得られない。 ウ周知例1及び2について(ア) 甲2によれば,周知例1の技術内容は,次のとおりである。 a請求項1の記載‥‥排気の空燃比がリーンのときに排気中のNOxを吸収し,排気中の酸素濃度が低下し「」たときに吸収したNOxを放出するNOx吸収剤と‥‥‥b明細書の記載流入排気がかなりリーンになると流入排気中の酸素濃度が大巾に増大し,図2(A)に示「されるようにこれら酸素OがOまたはOの形で白金Ptの表面に付着する。一方,流入 -- 排気中のNOは白金Ptの表面上でこのOまたはOと反応し,NOとなる(2NO+O -- 2→2NO)。次いで生成されたNOの一部は白金Pt上で酸化されつつ吸収剤内に吸収さ れて酸化バリウムBaOと結合しながら,図2(A)に示されるように硝酸イオンNOの形 -」(段で吸収剤内に拡散する。このようにしてNOxがNOx吸収剤18内に吸収される。 - 36 -落【0024】)cなお,周知例1には,特許請求の範囲,明細書及び図面を精査しても,「吸着」という文言は使用されていない。 (イ) 甲3によれば,周知例2の技術内容は,次のとおりであることが認められる。 a 4】)cなお,周知例1には,特許請求の範囲,明細書及び図面を精査しても,「吸着」という文言は使用されていない。 (イ) 甲3によれば,周知例2の技術内容は,次のとおりであることが認められる。 a請求項1の記載「流入する排気ガスの空燃比がリーンのときにNOxを吸収し,流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比又はリッチになると吸収したNOxを放出するNOx吸収剤」「燃焼室5内における平均空燃比A/Fがリーンであり,従って流入排気ガスがリーbンであるときには流入排気ガス中の酸素濃度が高くなり,このとき図12(A)に示されるようにこれら酸素O2がO又はOの形で白金Ptの表面に付着する。一方,流入排気ガス中 -2-のNOは白金Ptの表面上でO又はOと反応し,NO2となる(2NO+O2→2NO -2-2)。次いで生成されたNO2の一部は白金Pt上で酸化されつつ吸収剤内に吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら図12(A)に示されるように硝酸イオンNOの形で吸収剤 -(段落【00内に拡散する。このようにしてNOxがNOx吸収剤26内に吸収される。」57】)cなお,周知例2には,特許請求の範囲,明細書及び図面を精査しても,「吸着」という文言は使用されていない。 エ本件出願から審決に至る手続の経緯甲12,13,15及び16によれば,本件出願から審決に至る手続の経緯は,前記第2の1のとおりであるほか,次のとおりであることが認められる。 (ア)平成16年1月30日付け拒絶理由通知の記載内容平成16年1月30日付け拒絶理由通知(甲12)の備考欄には,次の記載がある。 触媒の成分,構成については,引用文献1又は2に示されている。 「還元時間は,還元(所謂リッチスパイク)する頻度等に関係することであり,当業者が適宜決定しうるこ 2)の備考欄には,次の記載がある。 触媒の成分,構成については,引用文献1又は2に示されている。 「還元時間は,還元(所謂リッチスパイク)する頻度等に関係することであり,当業者が適宜決定しうることにすぎない。 - 37 -また,引用文献3には,リッチ状態の深さを13.0乃至14.7(14.6)とする点が示されている。 引用文献等一覧1.国際公開第94/25143号パンフレット(1994)(判決注:引用例(甲1))2.特開昭62-97630号公報(判決注:審決では引用されていない。)3.特開平9-4492号公報(判決注:審決では引用されていない。)」(イ) 平成16年4月5日付けの意見書の記載内容原告らは,上記拒絶理由通知(甲12)に対し,平成16年4月5日付けの意見書(甲15)において,次のように意見を述べた(下線の表記を含めて原文のまま)。 「(ロ)‥‥(従来の)技術は,排ガスを常時NOx吸収剤に流通させておき,排ガスがリーンの時にNOxを吸収させ,排ガス中のO濃度を低下(燃焼をリッチ状態)させて,吸収し たNOxを放出させて吸収剤を再生する‥‥(明細書の段落【0011】参照)。(このように)NOxが触媒バルク内に吸収されている場合には,NOxが触媒表面まで拡散移動するか,還元剤が触媒のバルク内に拡散移動する必要がある。バルク内の移動速度を速めるには駆動力としての濃度差が必要で還元剤の濃度を高める必要が生じる。即ち,リッチシフトを深くする必要が生じる‥‥(明細書の段落【0041】参照)。 (ハ)本発明‥‥は,‥‥内燃機関のリーン運転領域での排ガスの酸化雰囲気でNOxを吸着捕捉すると共に,還元雰囲気をつくって,NOx浄化触媒を再生することにより,リーンバーン燃焼における排ガス中のNOx等を,燃費に大きな影響を与えることなく効果 領域での排ガスの酸化雰囲気でNOxを吸着捕捉すると共に,還元雰囲気をつくって,NOx浄化触媒を再生することにより,リーンバーン燃焼における排ガス中のNOx等を,燃費に大きな影響を与えることなく効果的に浄化できる(明細書の段落【0046】参照)。 (ニ)本実施の形態の‥‥NOx浄化触媒は,リーン排ガス中の‥‥NOxの捕捉は,主として触媒表面への吸着により行われる。吸着捕捉されたNOxは,ストイキ及びリッチの排ガス- 38 -と接触させると,触媒上でHC(炭化水素),CO(一酸化炭素)等の還元剤によりNに還 元され,触媒表面は,NOx吸着能を回復する。‥‥これは,吸着NOxの還元反応にともなう物質移動過程が,還元剤や生成Nの気相拡散過程と吸着NOx等の表面拡散過程を含むの みで,物質移動抵抗の大きい触媒バルク内の移動過程を含まないことによる(明細書の段落【0040】参照)。 (ホ)本実施の形態の‥‥NOx浄化触媒は,バルク内の移動過程を含まないために,リッチシフトを深くする必要はないが,必要な還元剤を供給するための時間が必要となる。‥‥本実施の形態の‥‥NOx浄化触媒では,浅いリッチシフトで十分であるために,リッチシフトによる燃費の低下は小さくなる(明細書の段落【0042】参照)。 (3)ところで,引用例1には,『‥‥‥‥』,及び,『‥‥‥‥』と記載されて,酸化又は活性化されたNOがNO吸着能を有する成分を有する触媒に吸着されること,及び,NOx 除去のための還元剤の導入時間が0.1~20秒間,好ましくは1~10秒間であることが示されております。しかし,引用例1に記載の触媒においては,NO吸着能を有する成分に吸 着されたNOが,そのまま触媒表面にとどまるのか,それとも触媒内部に吸収されるのかに ついては記載されておりません。 そ ます。しかし,引用例1に記載の触媒においては,NO吸着能を有する成分に吸 着されたNOが,そのまま触媒表面にとどまるのか,それとも触媒内部に吸収されるのかに ついては記載されておりません。 そして,引用例1に例示されている参考例1~38に記載されている触媒については,出願人の実験等による確認(特許第3107294号の異議事件(異議2001-71379号)の乙1号証等参照)によれば,NOxの該触媒に対する挙動は,NOの吸着保持ではなく, 硝酸イオン(NO)の形での吸収保持であると解されるものであります。」 -「即ち,引用例1には,酸化又は活性化されたNOがNO吸着能を有する成分を有する触媒 に吸着されることが示されておりますが,引用例1に参照例として具体的に示されている触媒の具体例からすれば,引用例1に記載の触媒におけるNOxの挙動は,該触媒へのNOの吸 着保持ではなく,硝酸イオン(NO)の形での吸収保持であり,本願の発明の構成(i)の排 -ガスがリーンのときに排ガス中のNOxを表面に吸着し,排ガスがストイキもしくはリッチのとき吸着したNOxをNに還元する『NOx浄化触媒』とは,その構成を異にするものであ ります。」- 39 -「このように,引用例1~引用例3には,本願の発明の前記構成(i),(の各構成は記載さiii)れておりませんので,引用例1~引用例3に記載されている各発明からは,本願の発明の前記作用効果(ニ),(ホ)である『リーン排ガス中の‥‥NOxの捕捉は,主として触媒表面への吸着により行われ,吸着捕捉されたNOxは,ストイキ及びリッチの排ガスと接触させると,吸着NOxの還元反応にともなう物質移動過程が,還元剤や生成Nの気相拡散過程と吸着N Ox等の表面拡散過程を含むのみで,物質移動抵抗の大きい触 たNOxは,ストイキ及びリッチの排ガスと接触させると,吸着NOxの還元反応にともなう物質移動過程が,還元剤や生成Nの気相拡散過程と吸着N Ox等の表面拡散過程を含むのみで,物質移動抵抗の大きい触媒バルク内の移動過程を含まず,リッチシフトを深くする必要はなく,浅いリッチシフトで十分であるために,リッチシフトによる燃費の低下は小さくなる』は,期待できないものであります。」(ウ) 平成17年7月19日付けの拒絶査定の記載内容上記意見書(甲15)における意見及び同日付けの手続補正(甲6)を受けて,平成17年7月19日付けで拒絶査定(甲13)がされたが,その備考欄には,次の記載がある。 「NOx浄化触媒として,NOxを触媒表面への吸着するものは,例示するまでもなく本願出願前において周知である。所謂リッチスパイクの頻度及びそのリッチ状態の深さは,当業者が,燃費,浄化性能等を考慮し,実験等を繰り返すことにより最適値を得ることができるものである。」(エ) 平成17年8月25日付けの審判請求書上記拒絶査定に対し,平成17年8月25日付け拒絶査定に対する審判請求及び平成17年11月17日付け手続補正書(甲16)により補正された審判請求書の請求の理由において,原告らは,上記意見書(甲15)の主張に加え,さらに,次のように主張した。 審査官殿は,拒絶査定の備考において『(α)NOx浄化触媒として,NOxを触媒表面へ「吸着するものは,例示するまでもなく本願の出願前において周知である』旨認定され,周知の技術の証拠は,何等提示されておりません。 本願の発明は,前記したように,前記構成(i)の『排ガスがリーンのときに排ガス中のNOxを表面に吸着し,排ガスがストイキもしくはリッチのとき吸着したNOxをNに還元す - 40 -る「NOx浄化触媒」』に,その発明の ように,前記構成(i)の『排ガスがリーンのときに排ガス中のNOxを表面に吸着し,排ガスがストイキもしくはリッチのとき吸着したNOxをNに還元す - 40 -る「NOx浄化触媒」』に,その発明の特徴構成を有するものであり,かつ,平成16年4月5日付意見書において,出願人は本願の発明の前記構成(i)の本質的意義及び新規性等について,縷々,述べていることでもありますので,審査官殿の認定の如く,『(α)NOx浄化触媒として,NOxを触媒表面へ吸着するものは,‥‥本願の出願前において周知である』ならば,証拠を示して認定するのが,拒絶査定の常道であり,出願人としては,単に,一方的に周知と認定されても,その証拠を提示してもらわなければ,そのことについて,何等の意見」(5頁3行ないし14行)も申し上げられないものであります。 (オ) 審決の内容これに対し,審決は,前記第2の3のとおり,認定判断した。 (2)以上認定の手続の経緯に基づいて,以下,取消事由8における原告らの主張を検討する。 ア前記(1)アのとおり,「表面に吸着」の意義について,本願発明は,「従来技術」及び「発明が解決しようとする課題」においては,従来技術を表現する部分では「吸収」との表現を用い,本願発明に関する部分については「吸着」を用いる等して,「吸着」と「吸収」を明確に区別して記載しており,「発明の実施の形態」において,「NOxの捕捉は,主として触媒表面への吸着により行われる。」,「これは,吸着NOxの還元反応にともなう物質移動過程が,還元剤や生成Nの 気相拡散過程と吸着NOx等の表面拡散過程を含むのみで,物質移動抵抗の大きい触媒バルク内の移動過程を含まないことによる。」,「本実施の形態の‥‥NOx浄化触媒は,バルク内の移動過程を含まないために,リッチシフトを深くする必要は 面拡散過程を含むのみで,物質移動抵抗の大きい触媒バルク内の移動過程を含まないことによる。」,「本実施の形態の‥‥NOx浄化触媒は,バルク内の移動過程を含まないために,リッチシフトを深くする必要はない」等と記載しており,「表面に吸着」することの意義を明記している。 他方,前記(1)イのとおり,引用発明においては,「吸着」との表現はあるものの,「吸着」と「吸収」とを区別する記載は見当たらない。 そして,前記(1) エ(ア)のとおり,平成16年1月30日付け拒絶理由通知(甲12)では,NOx浄化触媒の成分については引用文献1又は2に記載されていることが指摘されていることは分かる一方,「NOxを表面に吸着」する点について- 41 -は特段の指摘はされていないことから,原告らは,前記(1) エ(イ) のとおり,上記拒絶理由に対し,平成16年4月5日付け意見書(甲15)において,「NOxを表面に吸着」に関し,「本発明‥‥は,‥‥内燃機関のリーン運転領域での排ガスの酸化雰囲気でNOxを吸着捕捉する」,「NOxの捕捉は,主として触媒表面への吸着により行われる。」などの本願明細書の記載を引用した上,従来技術は「排ガスを常時NOx吸収剤に流通させておき,排ガスがリーンの時にNOxを吸収させ」るものであるのに対し,本願発明は,「NOxは主として触媒表面への吸着」するものである点で異なることを強調したものである。 これに対し,審査官は,前記(1) エ(ウ) のとおり,平成17年7月19日付けの拒絶査定(甲13)において,「NOxを触媒表面への吸着するものは,例示するまでもなく本願出願前において周知である。」と説示している。 イ以上の経緯を考えると,審査官が「NOxを表面に吸着し」との本願発明の請求項1の記載をどのように解釈しているかについては何ら具体的に記載さ でもなく本願出願前において周知である。」と説示している。 イ以上の経緯を考えると,審査官が「NOxを表面に吸着し」との本願発明の請求項1の記載をどのように解釈しているかについては何ら具体的に記載されていないため必ずしも明らかではないものの,拒絶査定においては,「NOxを表面に吸着し」に関し,内部への吸収とは異なる表面への吸着であることを強調した平成16年4月5日付け意見書(甲15)の内容を検討した上で行われていること,拒絶査定の中で「表面への吸着」は「周知技術である」と説示していることからすれば,審査官は,「NOxを表面に吸着し」に関して,「吸着」と「吸収」の意義及び関係についての原告ら(出願人)の解釈を受容した上で検討を加え,その結果,「表面への吸着」という相違点については,引用発明又は前記(1) エ(ア)記載の引用文献2に記載された発明を含む周知技術に基づいて,本願発明は容易想到であると判断したものと理解するのが自然である。 一方,審決は,前記第2の3(3)ア相違点1のとおり,「NOxをNOx浄化触媒の表面に吸着している」点を本願発明と引用発明との相違点と認めた上,前記第2の3(4) アのとおり,周知例1及び2を具体的に指摘して,「NOx浄化触媒としてNOxを触媒表面へ吸着するものは周知」であると説示しているが,前記(1)- 42 -ウのとおり,周知例1及び2には,少なくとも,「吸着」という文言は記載されておらず,「表面」という文言に関しては,「Pt表面上で,O,OとNOが反 -2-応する」旨が記載されているにすぎず,かえって,「硝酸イオンNOの形で吸収 -剤内に拡散する」旨の記載が認められるのであるから,審決においては,触媒の表面上でO,OとNOが反応し,かつ硝酸イオンNOの形で吸収剤内に拡散す - 「硝酸イオンNOの形で吸収 -剤内に拡散する」旨の記載が認められるのであるから,審決においては,触媒の表面上でO,OとNOが反応し,かつ硝酸イオンNOの形で吸収剤内に拡散す -2--るという一連の現象を捉えて,「表面に吸着する」現象と認定していることが窺われ,これは,本件において被告が主張するように,「表面に吸着する」とは「触媒表面に吸着するとともに,さらに触媒内部まで拡散(吸収)する」場合に含まれていること,すなわち,「吸着」と「吸収」とは同時に起こる現象であるとの前提に立つ判断であると推断される。 このように,拒絶査定と審決とでは,「表面に吸着」する点に関し,同一性のある解釈をしていたとは認められず,むしろ,拒絶査定及び審決における各説示の文言等に照らし,前者はこれを「表面への吸着」と解釈し,後者は表面のみならず「吸収」を含む現象と解釈していることが認められる。したがって,審決は,拒絶査定の理由と異なる理由に基づいて判断したといわざるを得ない。 そして,前記第3で主張するとおりの原告らの解釈及び前提に立てば,この「表面に吸着」する点はまさしく本願発明の重要な部分であるところ,原告らの意見書や審判請求書における主張からすれば,「表面に吸着」する点に関し,原告らは,審判合議体とは異なる解釈をし,本願発明や引用発明を異なる前提で捉えていることが認められるのであるから,これに対して,審決が,拒絶査定の理由と異なる理由に基づいて,「表面に吸着し」との点について判断をしている以上,原告らに対し,意見を述べる機会を与えることが必要であったというべきである。 なお,審決が原告らに対し上記のような意見を述べる機会を付与しなかったとしても,その双方の場合について実質上審理が行われ,原告らが必要な意見を述べているなどの特段の事情が であったというべきである。 なお,審決が原告らに対し上記のような意見を述べる機会を付与しなかったとしても,その双方の場合について実質上審理が行われ,原告らが必要な意見を述べているなどの特段の事情があれば,審決のとった措置は実質上違法性がないということもできないではないが(知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)第10538号,- 43 -同20年2月21日判決の第5の1(4) 参照),本件においては,そのような特段の事情を認めることはできない。 ウさらに,審決は,拒絶理由通知においてなんら摘示されなかった公知技術(周知例1及び2)を用い,単にそれが周知技術であるという理由だけで,拒絶理由を構成していなくとも,特許法29条1,2項にいういわゆる引用発明の一つになり得るものと解しているかのようである。 すなわち,審決は,相違点1について,「排ガスがリーンのときに,NOx浄化触媒としてNOxを触媒表面へ吸着するものは周知(例えば,周知例1及び周知例2参照。以下「周知技術1」という。)であることから,相違点1に係る本願発明の発明特定事項は周知である。」と説示し,また,相違点2についても,「内燃機関がリーン運転しているとき,前記NOx浄化触媒で排ガス中のNOxを吸着し,吸着後に,排ガスを数秒間ストイキもしくはリッチの状態とし,前記NOx浄化触媒で吸着したNOxを還元剤と接触反応させてNに還元して排ガスを浄化するこ とは周知(‥‥‥)であり,相違点2に係る本願発明のように時間及び深さを決定することは,周知例1及び周知例3の周知技術2を勘案すれば,適宜なし得る設計的事項に過ぎないものである。」,そして,「本願発明は,引用発明,周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明することができたものである」という説示をしているが,誤りである。 被告主 る設計的事項に過ぎないものである。」,そして,「本願発明は,引用発明,周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明することができたものである」という説示をしているが,誤りである。 被告主張のように周知技術1及び2が著名な発明として周知であるとしても,周知技術であるというだけで,拒絶理由に摘示されていなくとも,同法29条1,2項の引用発明として用いることができるといえないことは,同法29条1,2項及び50条の解釈上明らかである。確かに,拒絶理由に摘示されていない周知技術であっても,例外的に同法29条2項の容易想到性の認定判断の中で許容されることがあるが,それは,拒絶理由を構成する引用発明の認定上の微修整や,容易性の判断の過程で補助的に用いる場合,ないし関係する技術分野で周知性が高く技術の理解の上で当然又は暗黙の前提となる知識として用いる場合に限られるのであって,- 44 -周知技術でありさえすれば,拒絶理由に摘示されていなくても当然に引用できるわけではない。被告の主張する周知技術は,著名であり,多くの関係者に知れ渡っていることが想像されるが,本件の容易想到性の認定判断の手続で重要な役割を果たすものであることにかんがみれば,単なる引用発明の認定上の微修整,容易想到性の判断の過程で補助的に用いる場合ないし当然又は暗黙の前提となる知識として用いる場合にあたるということはできないから,本件において,容易想到性を肯定する判断要素になり得るということはできない。 この点に関する被告の主張は失当であり,原告らの主張が正当である。 エ以上により,審決には,上述のいずれについても,特許法159条2項で準用する同法50条に反する違法がある。 結論 よって,原告らの主張する審決取消事由8は理由があるから,審決を取り消すこととする。 知的財産高等 には,上述のいずれについても,特許法159条2項で準用する同法50条に反する違法がある。 結論 よって,原告らの主張する審決取消事由8は理由があるから,審決を取り消すこととする。 知的財産高等裁判所第1部裁判長裁判官塚原朋一裁判官東海林保裁判官- 45 -矢口俊哉

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