主文 1 原告らの請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,峡北広域行政事務組合に対し,金14億7200万円及びこれに対する平成14年6月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,峡北広域行政事務組合(以下「組合」という。)を構成する市町村の住民である原告らが,組合が峡北広域環境衛生センター(ごみ処理施設)の建設工事(以下「本件工事」という。)に関する請負契約(以下「本件請負契約」という。)を随意契約の方法によって締結したことについて,随意契約の方法は,当該契約が「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」に限って採用することができるところ(地方自治法234条2項,同施行令167条の2第1項2号),本件請負契約はこの要件をみたさない,したがって,本件請負契約の締結は違法であり,組合は,競争入札を実施していれば自由競争によって形成されたであろう代金額と実際の代金額との差額相当額の損害を被った旨主張し,地方自治法(ただし,平成14年法律第4号による改正前のもの。)242条の2第1項4号により,組合に代位して,不法行為による損害賠償請求権に基づき,本件請負契約の締結時に組合の代表理事であった被告に対し,前記差額相当額の賠償を求めている事案である(附帯請求は,訴状送達の日の翌日(不法行為の後の日)からの民法所定年5分の割合による遅延損害金請求である。)。 2 前提となる事実(証拠等を掲記した事実以外は,当事者間に争いがない。)(1) 当事者等ア組合は,地方自治法上の一部事務組合であり,原告らによる住民監査請求(下記(7)ア)が行われた平成14年3月当時は,韮崎市,白州町,小淵沢町,長坂町,高根町,須玉町,双葉町,敷島 1) 当事者等ア組合は,地方自治法上の一部事務組合であり,原告らによる住民監査請求(下記(7)ア)が行われた平成14年3月当時は,韮崎市,白州町,小淵沢町,長坂町,高根町,須玉町,双葉町,敷島町,武川村,大泉村及び明野村の各普通地方公共団体によって構成されていた。 イ被告は,本件請負契約が締結された平成13年3月よりも前から,組合の代表理事の職にあった。 ウ原告らは,本件訴えに先立つ住民監査請求が行われた平成14年3月22日よりも前から,組合を構成する上記普通地方公共団体の住民であった。 (2) 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令等の改正平成9年8月,廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令等が改正され,同年12月1日から施行された。本改正により,ごみ処理施設等からの排気ガス規制基準が定められ,ごみ処理施設(焼却施設)からのダイオキシン類排出濃度が次のとおり規制された(同法施行規則4条の5第1項2号ワ,以下「本件排出濃度規制」という。)。 ア平成9年11月30日以前に設置された施設に対する規制(ア) 平成9年12月1日から平成14年11月30日まで80ng-TEQ/立方メートル以下(イ) 平成14年12月1日からa 1時間当たりの処理能力が4トン以上の施設1ng-TEQ/立方メートル以下b 1時間当たりの処理能力が2トン以上4トン未満の施設5ng-TEQ/立方メートル以下c 1時間当たりの処理能力が2トン未満の施設10ng-TEQ/立方メートル以下イ平成9年12月1日以後に設置された施設に対する規制a 1時間当たりの処理能力が4トン以上の施設0.1ng-TEQ/立方メートル以下b 1時間当たりの処理能力が2トン以上4トン未満の施設1ng-TEQ/立方メートル以下c 1時間当たりの処理能力が2トン たりの処理能力が4トン以上の施設0.1ng-TEQ/立方メートル以下b 1時間当たりの処理能力が2トン以上4トン未満の施設1ng-TEQ/立方メートル以下c 1時間当たりの処理能力が2トン未満の施設5ng-TEQ/立方メートル以下(3) 組合の旧施設ア組合は,上記改正がなされた平成9年8月当時,山梨県韮崎市A町において,1日8時間稼働して約50トンの処理能力(1時間当たり約6.25トン)を有する機械化バッチ式燃焼焼却炉(ストーカ炉)を有するごみ処理施設を操業していた(以下,この施設を「旧施設」という。)(甲3,弁論の全趣旨)。 イ旧施設のダイオキシン類排出濃度は,0.51ng-TEQ/立方メートルから60ng-TEQ/立方メートルと幅があり,平成14年12月1日以降の本件排出濃度規制に適合することができないと見込まれていた(甲3,弁論の全趣旨)。 (4) 新しいごみ処理施設の建設計画組合は,平成9年ころ,旧施設に代わって,ダイオキシン類の発生を抑制し,しかも焼却残渣が非常に少ない新しい方式のごみ処理施設として他の地方公共団体でも導入又は導入が検討され始めていたガス化溶融炉(廃棄物を熱分解させて一部をガス化し,その残りの一部を溶融することによって廃棄物を処理するプラント)を有するごみ処理施設を新設することを計画した(甲3)。 (5) ガス化溶融炉の種類等アガス化溶融炉には,組合が新施設の建設を検討していた当時,大別して,キルン式,シャフト式及び流動床式の3種類があった。 イ組合は,平成12年12月ころ,新施設のガス化溶融炉の選定対象から流動床式を外し,キルン式又はシャフト式のガス化溶融炉を導入する方針を固めた。 ウキルン式及びシャフト式のガス化溶融炉の概要は,次のとおりである(甲2,乙9の4・5,弁論の全趣旨 炉の選定対象から流動床式を外し,キルン式又はシャフト式のガス化溶融炉を導入する方針を固めた。 ウキルン式及びシャフト式のガス化溶融炉の概要は,次のとおりである(甲2,乙9の4・5,弁論の全趣旨)。 (ア) キルン式キルン式は,キルン(熱分解ドラム)を熱分解炉として廃棄物の熱分解を行い,灰などの熱分解残渣の溶解は,熱分解炉とは別の溶融炉で行う方式で,①ごみの自己熱で溶融できるなど省資源・省エネルギー性に優れている,②ごみに含まれる鉄,非鉄金属等が良好な状態で回収できる,③スラグ(鉱さい)の純度が高く,利用価値が高い,④排ガス量及び二酸化炭素排出量が少ないなど環境への負荷が少ないという長所がある反面,①施設が複雑かつ大型化する,②可燃物及び不燃物の選別が必要であるという短所も指摘されている。 (イ) シャフト式シャフト式は,高炉の原理を応用して,廃棄物の熱分解と溶融を一体の炉(竪型シャフト炉)で直接溶融する方式で,①可燃物,不燃物の区別が必要でない(混合ごみでも処理可能である。),②施設がコンパクトであるという長所がある反面,①常にコークス及び酸素を使用する,②コークスを使用するため二酸化炭素の発生量が多い,③スラグ(鉱さい)の中にメタル分が含まれるため利用価値が低いという短所も指摘されている。 (6) 本件請負契約の締結被告は,平成13年3月26日,組合の代表者として,随意契約の方法により,三井造船株式会社(以下「三井造船」という。)との間で,組合を注文者,三井造船を請負人,請負代金を83億7900万円(消費税相当額込み)として,キルン式のガス化溶融炉を有するごみ処理施設である峡北広域環境衛生センターの建設工事(本件工事)に関する請負契約(本件請負契約)を締結した。 (7) 本件監査請求等ア原告らは,平成14年3月2 ,キルン式のガス化溶融炉を有するごみ処理施設である峡北広域環境衛生センターの建設工事(本件工事)に関する請負契約(本件請負契約)を締結した。 (7) 本件監査請求等ア原告らは,平成14年3月22日,組合の監査委員に対し,競争入札を実施することなく,随意契約の方法によって本件請負契約を締結したのは違法であると主張して,本件請負契約の締結によって組合が被った損害を被告に補填させるよう必要な措置を求める旨の住民監査請求をした。 イ組合の監査委員は,平成14年5月1日,本件工事に関する請負契約を締結するに際して随意契約の方法を採用したことは,地方自治法施行令167条の2第1項2号の要件を充足するとして上記アの住民監査請求を棄却し,その旨を代表請求人であった原告成澤勇記に対して通知し,この通知は,平成14年5月2日,同人に到達した。 ウ原告らは,平成14年5月31日,本件訴えを提起した。 3 争点(1) 本件請負契約は,地方自治法施行令167条の2第1項2号所定の「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」に該当するといえるか。 ア原告らの主張(ア) 地方自治法234条2項は,「随意契約は,政令で定める場合に該当するときに限り,これによることができる」として,随意契約は例外的に締結できるとしているが,これは,地方自治法が,地方公共団体の締結する契約の公正性,経済性及び平等性を確保するという観点から,随意契約が原則として好ましくないと考えているからである。したがって,この地方自治法の精神にかんがみると,地方自治法施行令167条の2第1項2号所定の「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」という随意契約を締結できる場合の要件は,厳格に解釈されるべきであり,個別具体的な契約ごとに,当該契約の種類,内容,性質及び目 第1項2号所定の「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」という随意契約を締結できる場合の要件は,厳格に解釈されるべきであり,個別具体的な契約ごとに,当該契約の種類,内容,性質及び目的など諸般の事情を総合考慮し,随意契約による合理性が認められるか否かが検討されるべきである。 (イ) 本件においては,本件請負契約の締結に当たって組合が随意契約の方法を採用したことに合理性を認めることはできない。その理由は,次のとおりである。 a 被告は,流動床式を選定対象から排除した理由について,平成12年12月19日の第1回業者選定検討会が実施された時点において,流動床式のガス化溶融炉が実際に地方公共団体で稼働していなかったと主張する。しかしながら,株式会社神戸製鋼所(以下「神戸製鋼」という。)が建設した中部上北広域事業組合の施設は,流動床式のガス化溶融炉を採用し,平成12年10月には稼働を開始していたし,また,流動床式のガス化溶融炉の先行メーカーである株式会社荏原製作所は,平成7年には千葉県内に1日当たり10トンの処理能力を有する流動床式のパイロットプラントを設置し,また,平成9年には神奈川県内の自社工場敷地内に1日当たり20トンの処理能力を有する流動床式の実証プラントを建設して105日間運転して実証データを採取しており,流動床式を選定の対象から除外したことに合理性はない。 b ガス化溶融炉の建設については,廃棄物研究財団の実証実験によると,平成12年11月時点において,21社が技術評価を取得し,もし,組合が流動床式のガス化溶融炉を最初から選定対象から排除していなければ,組合のガス化溶融炉の新設工事の受注を希望する企業は相当数存在し,適正な競争が行われたと予想される。 c 実際に,キルン式及びシャフト式のガス化溶融炉の建設につい 選定対象から排除していなければ,組合のガス化溶融炉の新設工事の受注を希望する企業は相当数存在し,適正な競争が行われたと予想される。 c 実際に,キルン式及びシャフト式のガス化溶融炉の建設については,三井造船の外,株式会社タクマ(以下「タクマ」という。),石川島播磨重工業株式会社(以下「石川島播磨重工」という。),新日本製鐵株式会社(以下「新日本製鐵」という。)及び日本鋼管株式会社(以下「日本鋼管」という。)という日本を代表する有名企業が,本件請負契約に先立って組合に対し見積書を提出し,その受注を希望していた。 d 平成11年に地方自治法施行令が改正され,いわゆる総合評価入札制度が導入され,競争入札を実施しても,当該契約がその性質又は目的から,予定価格の制限の範囲内で最低の価格をもって入札した者と契約を締結することが難しいときは,予定価格の制限の範囲内の価格をもって申込みをした者のうち,価格その他の条件が最も有利なものをもって申込みをした者と契約することができる(同令167条の10の2,167条の13)のであるから,仮に,ガス化溶融炉の建設請負契約が総合的な検討及び評価を行わなければならない性質の契約であったとしても,随意契約を選択したことの合理性を裏付けない。 イ被告の主張組合が,随意契約の方法によって本件請負契約を締結した理由は,次のとおりであり,合理性を有するものであって,本件請負契約の締結は何ら違法ではない。 (ア) 組合は,本件排出濃度規制によって,平成14年12月1日までに新しいごみ処理施設を建設する必要があったところ,本件排出濃度規制の導入時期までに十分な期間がなかったことから,組合は,旧施設の敷地に新施設を建設することを計画した。しかしながら,旧施設のある山梨県韮崎市A町地区の住民から,いわゆる迷惑施設であ 本件排出濃度規制の導入時期までに十分な期間がなかったことから,組合は,旧施設の敷地に新施設を建設することを計画した。しかしながら,旧施設のある山梨県韮崎市A町地区の住民から,いわゆる迷惑施設であるごみ処理施設(旧施設)が存在することをこれまで我慢してきたのであるから,新施設は外の地区に建設すべきであるという旨の要望がなされた。そこで,組合は,地元住民による対策委員会等と積極的に話合いの場を持ち,また,ガス化溶融炉施設への理解を深めるため,講演会,施設見学等を実施した。そして,地元住民の不安を解消すべく,地方公共団体で実際に新施設と同規模のガス化溶融炉が稼働していなかった流動床式のガス化溶融炉を選定対象から排除して,選定機種をキルン式とシャフト式に絞り,三井造船,タクマ,石川島播磨重工(以上キルン式),新日本製鐵,日本鋼管(以上シャフト式)の5社から見積書を取って総合評価を加えた。その結果,地元住民による対策委員会の要望を充たすこと,総合評価において相対的に高い評価を受け,特に維持管理費が他社に比較して低廉であること,実用機の稼働実績により安全性,信頼性が確認されていること等から,三井造船との間で随意契約を締結することを決定した。原告は,平成12年10月時点で神戸製鋼の建設した中部上北広域事業組合の流動床式のガス化溶融炉が運転していたと主張するが,組合が導入を予定していたガス化溶融炉が1日160トンの処理能力を有する施設であったのに対し,中部上北広域事業組合のガス化溶融炉は,1日30トンの処理能力を有する小規模なものであり,かつ,依然としてパイロット運転中であったのであるから,流動床式のガス化溶融炉を選定対象から除外したことも不合理ではない。 (イ) 平成11年の地方自治法施行令の改正によって総合評価競争入札の制度が導入された してパイロット運転中であったのであるから,流動床式のガス化溶融炉を選定対象から除外したことも不合理ではない。 (イ) 平成11年の地方自治法施行令の改正によって総合評価競争入札の制度が導入されたからといって,随意契約が選択できなくなったわけではない。また,組合は,同改正の趣旨にかんがみて,上述のとおり,総合評価競争入札と同様の総合評価(別紙(省略)参照)を行った上で本件請負契約を締結している。 (2) 仮に,組合が本件工事に関する請負契約について競争入札を実施していた場合,請負代金は幾らであったはずか(組合に発生した損害の額)。 ア原告らの主張(ア) 本件請負契約の請負人である三井造船は,平成9年7月7日,八女西部広域事務組合との間で,「八女西部クリーンセンター建設工事」の請負契約を締結した。この請負契約における契約金額のうち,粗大ごみ処理施設の建設工事に対する代金相当額を除いた熱分解・燃焼溶融炉施設の建設工事の代金は85億3700万円であり,同施設の処理能力は220トンであるから,1トンあたりの単価は3880万円である。 (イ) これに対し,本件請負契約の外構工事を除いた代金額は76億8000万円であり,新施設の処理能力は160トンであるから,1トン当たりの単価は,4800万円である。 (ウ) 随意契約による方法で契約を締結したことが違法である場合に,当該地方公共団体に生じる損害額は,競争入札をすべきであったところを随意契約の方法を採ったことによって生じた損害であるから,随意契約の方法により締結した契約金額と競争入札をしたならば締結されたであろう契約の契約金額との差額と解すべきところ,本件において競争入札を行っていれば,三井造船は,上記(ア)の単価以下で入札したはずであるから,本件工事の入札価格は,少なくとも62億0800万 れたであろう契約の契約金額との差額と解すべきところ,本件において競争入札を行っていれば,三井造船は,上記(ア)の単価以下で入札したはずであるから,本件工事の入札価格は,少なくとも62億0800万円(160トン×3880万円)以下であったはずである。したがって,組合は,本件請負契約を随意契約の方法によって締結したことにより,少なくとも14億7200万円(上記76億8000万円から62億0800万円を控除した金額)の損害を被ったといえる。 イ被告の主張原告らの上記主張事実は争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件請負契約は,地方自治法施行令167条の2第1項2号所定の「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」に該当するといえるか。)について(1) 随意契約は,当該契約が「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」にも採用することができるところ(地方自治法234条2項,同施行令167条の2第1項2号),競争入札の方法による契約の締結が不可能又は著しく困難とはいえないとしても,当該契約の目的・内容に相応する資力,信用,技術,経験等を有する相手方を選定してその者との間で契約を締結をするという方法をとるのが当該契約の性質に照らし又はその目的を達成する上でより妥当であり,ひいては当該地方公共団体の利益の増進につながる場合には,地方自治法施行令167条の2第1項2号にいう「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」に該当すると解すべきである。そして,この「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」に該当するか否かは,地方公共団体の契約担当者が,契約の公正及び価格の有利性を図ることを目的として普通地方公共団体の契約締結の方法に制限を加えている法令の趣旨を勘案し,個々具体的な契約ごとに,当該 に該当するか否かは,地方公共団体の契約担当者が,契約の公正及び価格の有利性を図ることを目的として普通地方公共団体の契約締結の方法に制限を加えている法令の趣旨を勘案し,個々具体的な契約ごとに,当該契約の種類,内容,性質,目的等諸般の事情を考慮して,その合理的な裁量に基づいて判断すべきものと解するのが相当である(最高裁昭和62年3月20日判決民集41巻2号189頁参照)。 (2) そこで,本件請負契約を締結したことについて,被告に裁量逸脱が認められるかについて検討するに,前記前提となる事実に証拠(甲2,乙1の1ないし5,乙2の1ないし6,乙5の1ないし5,乙7,乙8の1ないし3,乙9の1ないし8,乙10の1ないし14)及び弁論の全趣旨を総合すると,本件請負契約の締結に至るまでの経緯等について,次の事実を認めることができる。 ア平成9年8月,廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令等が改正され,本件排出濃度規制が実施されることになったが,組合の旧施設は,本件排出濃度規制を達成することができないと見込まれたため,組合は,平成14年12月1日までに,本件排出濃度規制の実施に備えて,同規制を達成できる施設を新設し,実際に稼働を開始する必要があった。 イ組合は,新施設の建設を計画するに当たって,ごみ処理施設がいわゆる「迷惑施設」であることから,本件排出濃度規制が実施されるまでに新施設の建設候補地を確保し,同地に新施設を建設して実際に稼働を開始することは困難であると判断し,山梨県韮崎市A町に所在する旧施設の敷地に新施設を建設すること(いわゆる建て替え)を計画し,平成9年11月ころから,地域住民に対して説明会を開催し始めた。しかしながら,A町の住民からは,これまでも迷惑施設である旧施設を受け入れてきたのであるから,新施設は外の地区に建設すべきであ 計画し,平成9年11月ころから,地域住民に対して説明会を開催し始めた。しかしながら,A町の住民からは,これまでも迷惑施設である旧施設を受け入れてきたのであるから,新施設は外の地区に建設すべきであるとの意見が強かった。 ウ A町の住民は,組合の新施設建設計画を受けて,平成10年12月8日,A町塵芥焼却場対策委員会(以下「対策委員会」という。)を組織した。 エ組合と対策委員会は,平成10年12月以降,ごみ処理施設の新設について10回以上の会合を重ね,平成12年1月17日,旧施設の敷地上に新しいごみ処理施設を建設することを合意した。 オ平成12年3月28日,新施設について共同して理解を深めるため,組合の理事並びに組合を構成する地域の住民及び議会からの代表者を構成員とする峡北広域行政事務組合廃棄物処理施設建設委員会が設置され,ガス化溶融炉のメーカー各社からの公聴会や施設見学などが実施された。 カ対策委員会は,平成12年12月18日,組合に対し,キルン式ガス化溶融炉が環境に配慮した施設であること,焼却残渣が少ないこと,有価物のリサイクルが可能であること,安全管理が図られ,維持管理が容易であることから,新施設には,キルン式のガス化溶融炉を採用してほしい旨要望した。 キ平成12年12月時点で,実際に地方公共団体で稼働している新施設と同規模の処理能力を有するガス化溶融炉は,キルン式とシャフト式のガス化溶融炉しかなく,また,実際に地方公共団体で稼働しているキルン式のガス化溶融炉は,三井造船が建設したものしか存在しなかった。 ク被告を含む組合の業者選定検討会(以下「業者選定検討会」という。)は,平成12年12月19日に実施された第1回会合において,ガス化溶融炉が新しい技術であることから,不測の事態の発生を回避し,また,できる限り地元住民の不 定検討会(以下「業者選定検討会」という。)は,平成12年12月19日に実施された第1回会合において,ガス化溶融炉が新しい技術であることから,不測の事態の発生を回避し,また,できる限り地元住民の不安を解消するため,キルン式,シャフト式及び流動床式の各ガス化溶融炉のうち,実際に地方公共団体で新施設と同規模のガス化溶融炉が稼働しているキルン式及びシャフト式の各ガス化溶融炉に候補を絞って検討することとし,キルン式のガス化溶融炉を製造していた三井造船,タクマ及び石川島播磨重工並びにシャフト式のガス化溶融炉を製造していた新日本製鐵及び日本鋼管に対し,見積書の提出を求めることとした。 ケ上記クの5社は,平成13年1月15日ころ,組合に対し,新施設建設の見積書を提出した。5社が提出した見積書の見積金額は,次のとおりであった(いずれも消費税相当額を含まない。)。 (ア) 三井造船 96億1000万円(イ) タクマ 96億5000万円(ウ) 石川島播磨重工 99億8000万円(エ) 新日本製鐵 96億0100万円(オ) 日本鋼管 99億円コ業者選定検討会は,平成13年1月22日,上記ケの見積り結果を建設コスト,ランニングコスト,資力信用度等を踏まえて評価した。この評価結果は,別紙(省略)のとおりである(別紙(省略)の業者のうち,最高得点を獲得したC社は三井造船であり,次順位であるA社は新日本製鐵である。)。 サ業者選定検討会は,平成13年1月29日,第4回会合において,対策委員会からは,キルン式のガス化溶融炉を採用してほしいとの要望があるが,シャフト式とキルン式のガス化溶融炉双方を選定対象とし,競争原理を働かせたいと考え,対策委員会等の地元住民と再度話合いを行うこととした。 シ組合は,平成13年1月30日,対策委員会等の地元住民 が,シャフト式とキルン式のガス化溶融炉双方を選定対象とし,競争原理を働かせたいと考え,対策委員会等の地元住民と再度話合いを行うこととした。 シ組合は,平成13年1月30日,対策委員会等の地元住民と話合いを持ち,キルン式のガス化溶融炉とシャフト式のガス化溶融炉の双方を選択肢として,業者の選定を進めたい旨申し入れたが,対策委員会等地元住民のキルン式のガス化溶融炉を採用してほしいとの希望は固く,理解は得られなかった。 スそこで,組合の理事会は,平成13年2月13日,対策委員会等地元住民の意見及び上記ケの見積り結果を勘案し,新施設にはキルン式のガス化溶融炉を採用する方針を固めた。また,業者選定検討会も,平成13年2月22日,第5回会合において,同様の理由から,新施設にはキルン式のガス化溶融炉を採用することとした。 セ平成13年3月2日,第6回業者選定検討会が開催され,新施設にはキルン式のガス化溶融炉を採用し,三井造船との間で随意契約の方法により,本件請負契約を締結する旨内定した。 ソ組合の理事会は,平成13年3月26日,三井造船との間で,随意契約の方法により本件請負契約(仮契約)を締結することを承認し,同日,組合の議会議員協議会及び議会臨時会において,本件請負契約(仮契約)の締結が議決,承認された。 タ被告は,平成13年3月26日,組合の代表者として,本件請負契約を締結した。 (3) 以上の事実を前提に検討する。 本件請負契約の締結は,ごみ処理施設という複雑かつ大規模な施設の建設を目的とするものであって,請負代金も高額に上るものであり,また,導入が予定されたガス化溶融炉は,旧施設の設備と異なり,新しい技術によるものであるから,その性質上当然に競争入札を実施すべき契約であるとまではいえない。 そして,①組合は,早急に新施設を建設, ,導入が予定されたガス化溶融炉は,旧施設の設備と異なり,新しい技術によるものであるから,その性質上当然に競争入札を実施すべき契約であるとまではいえない。 そして,①組合は,早急に新施設を建設,稼働させる必要があり,そのためには,A町の住民の理解を得ることが必要であったところ,A町の住民によって構成される対策委員会から,キルン式のガス化溶融炉を採用してほしい旨の強い要望があったのであるから,組合が,この地元住民の希望にできる限り配慮することは当然であるといえること,②A町の住民の理解を得るため,また,A町の住民の不安を可能な限り解消するため,実際に地方公共団体で新施設と同規模の施設が稼働していなかった流動床式のガス化溶融炉を選定対象から排除したことに合理性がないとはいえないこと,③上記第2の2(5)キルン式とシャフト式のガス化溶融炉の特性にかんがみると,キルン式の方が環境性能が高く,組合の方針と合致しているといえること,④組合は,キルン式のガス化溶融炉の建設の見積りを三井造船の外,タクマ及び石川島播磨重工から徴求しているが,前記2社は,平成12年12月時点で,地方公共団体のごみ処理施設で実際に稼働しているキルン式のガス化溶融炉を建設した実績を有しなかったのであるから,ガス化溶融炉が新しい技術であることにかんがみると,組合が実績を重視して三井造船との契約を選択したことが不合理であるとはいえないこと(原告らも三井造船がキルン式ガス化溶融炉のトップメーカーであることは認めている。),⑤上記(2)ケの見積り結果によると,三井造船の見積金額は,同じくキルン式のガス化溶融炉の見積書を提出しているタクマ及び石川島播磨重工の見積金額よりも低額であることなど,上記(2)の本件請負契約の締結に至るまでの事情にかんがみると,被告が,組合を代表して, じくキルン式のガス化溶融炉の見積書を提出しているタクマ及び石川島播磨重工の見積金額よりも低額であることなど,上記(2)の本件請負契約の締結に至るまでの事情にかんがみると,被告が,組合を代表して,本件請負契約を随意契約の方法によって締結したことに裁量逸脱があるとは到底いえず,本件請負契約を随意契約の方法によって締結したことが違法であるとはいえない。 2 結論以上によると,原告らの請求は理由がないから棄却すべきである。よって,主文のとおり判決する。 甲府地方裁判所民事部裁判長裁判官新堀亮一裁判官倉地康弘裁判官岩井一真
▼ クリックして全文を表示