- 1 - 平成31年2月28日判決言渡平成29年(行ウ)第48号判定等取消請求事件 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 大阪入国管理局入国審査官が平成28年12月13日付けで原告に対してした,原告が出入国管理及び難民認定法24条3号の5ロに該当する旨の認定を取り消す。 2 大阪入国管理局特別審理官が平成29年2月28日付けで原告に対してした,入国審査官の認定は誤りがない旨の判定を取り消す。 3 大阪入国管理局主任審査官が平成29年7月26日付けで原告に対してした退去強制令書発付処分を取り消す。 第2 事案の概要 本件は,ベトナム社会主義共和国(以下「ベトナム」という。)国籍を有する外国人である原告が,大阪入国管理局(以下「大阪入管」という。)入国審査官から出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)24条3号の5ロの退去強制事由(他人名義在留カード収受。以下「本件退去強制事由」ということがある。)に該当する旨の認定(以下「本件認定」という。)を,大阪入管特別審理官から上 記認定は誤りがない旨の判定(以下「本件判定」という。)を受け,その後,大阪入管主任審査官から退去強制令書の発付処分(以下「本件退令発付処分」という。)を受けたため,原告は本件退去強制事由に該当しないなどと主張して,被告を相手に,本件認定,本件判定及び本件退令発付処分の各取消しを求める事案である。 被告は,本件訴えのうち本件認定及び本件判定の各取消しを求める部分(以下 「本件認定等の取消しの訴え」という。)については,訴えの利益を欠くとして訴- 2 - えを却下する旨の判決を求めるとともに,仮に上記訴え 件認定及び本件判定の各取消しを求める部分(以下 「本件認定等の取消しの訴え」という。)については,訴えの利益を欠くとして訴- 2 - えを却下する旨の判決を求めるとともに,仮に上記訴えが適法である場合には本件認定及び本件判定の各取消請求をいずれも棄却する旨の判決を求め,本件退令発付処分の取消請求については,これを棄却する旨の判決を求めた。 1 前提事実(当事者間に争いがないか,掲記の証拠等により容易に認定することができる事実。以下,書証番号は特記しない限り各枝番を含む。) ⑴ 原告の身分事項原告は,1994年(平成6年)▲月▲日生まれのベトナム国籍を有する男性である。 ⑵ 原告の入国及び在留状況ア原告は,平成26年4月8日,福岡入国管理局福岡空港出張所入国審査 官から,在留資格を「留学」とし,在留期間を6月とする上陸許可を受けて本邦に上陸した(乙1,3)。 イ原告は,平成26年8月28日,在留期間を6月とする在留期間更新許可を受け,更に,平成27年4月14日,在留期間を3年とする在留期間更新許可を受け,在留期限は平成30年4月14日とされた(乙1,3)。 ウ原告は,大阪入国管理局長に対し,平成28年10月31日,「経営・管理」への在留資格変更許可申請をしたが,同局長は,平成29年7月27日付けでこれを不許可とした(甲2,乙44)。 ⑶ 本件認定に至る経緯ア大阪入管入国警備官A(以下「A入国警備官」という。)及び同B(以下 「B入国警備官」という。)は,平成28年10月28日,原告に対し本件退去強制事由に該当する容疑者として違反調査を実施した(乙23,24)。 その際,A入国警備官が作成し,原告が署名・指印した供述調書(乙23。 以下「本件自認調書」という。)には,要旨,以下の記 し本件退去強制事由に該当する容疑者として違反調査を実施した(乙23,24)。 その際,A入国警備官が作成し,原告が署名・指印した供述調書(乙23。 以下「本件自認調書」という。)には,要旨,以下の記載がされている。 (ア) 原告がアルバイトをしていたCがアルバイトを募集していたので,知 人でベトナム人のDを紹介しようとした。 - 3 - (イ) Dから,Dの在留資格は「留学」であるが学校に通っていないので,誰かに在留カードを借りてほしいと依頼されたため,知人でベトナム人のEに事情を話して在留カードを貸してくれるように依頼し,平成27年10月頃,Eが住む大阪市α区内のマンションの階段で,Eから同人名義の在留カードを借り受けた。 (ウ) Eから借り受けた在留カードは,Eが住むマンションの近くのコンビニエンスストアでコピーを取った。 (エ) Dは,Cのアルバイトの採用面接を受けた際,Eの在留カードのコピーをCの店長に提出し,Eとして採用された。 (オ) 以上のとおり,原告は,平成27年10月頃,当時,Eが住んでいた 大阪市α区内のマンションで,DがCの面接の時に使うために,EからE名義の在留カードを借りて,その後,Dに提供したことに間違いない。 イ大阪入管主任審査官は,平成28年10月28日付けで,原告が本件退去強制事由に該当すると疑うに足りる相当の理由があるとして,収容令書を発付した(乙25)。 原告は,同日,上記収容令書の執行により,大阪入管収容場に収容されたところ,その執行の際,原告は,同令書記載の容疑事実(他人名義在留カード収受の事実。以下,単に「容疑事実」ということがある。)を否認した(乙26)。 ウ大阪入管入国審査官は,平成28年11月9日から同年12月13日ま での間に,原告に 実(他人名義在留カード収受の事実。以下,単に「容疑事実」ということがある。)を否認した(乙26)。 ウ大阪入管入国審査官は,平成28年11月9日から同年12月13日ま での間に,原告に対し,6回にわたり違反審査を実施したが,原告は,いずれの違反審査においても,容疑事実を否認した(乙27~32)。 エ大阪入管入国審査官は,平成28年12月13日付けで,原告が本件退去強制事由に該当する旨の本件認定をした(甲4)。認定事実の要旨は,原告は,平成27年10月下旬頃,大阪市(住所省略)付近において,行使 の目的をもって,Eから,同人を被交付者とする法務大臣作成名義の在留- 4 - カード1通を借り受け,もって他人名義の在留カードを収受したというものであった(以下,この事実を「本件認定事実」という。乙25)。 ⑷ E及びDに対する退去強制手続等ア(ア) A入国警備官及びB入国警備官は,上記⑶アの原告に対する違反調査に先立つ平成28年10月25日,Eに対し入管法24条4号イ(資格 外活動)及び同条3号の5ロ(自己名義在留カード提供)に該当する容疑者として違反調査を実施した(乙5~7)。その際,Eは,A入国警備官に対し,原告から依頼されて,原告に自己名義の在留カードを貸したなどと述べた(乙7)。 (イ) 大阪入管入国審査官は,平成28年10月28日,Eに対し,入管法 24条4号イ(資格外活動)及び同条3号の5ロ(自己名義在留カード提供)につき違反審査を実施した上で,Eが上記各退去強制事由に該当する旨の認定をしたところ,Eは,口頭審理の請求権を放棄し,その認定に服した(乙9)。 (ウ) 大阪入管主任審査官は,平成28年10月28日付けでEに対し退去 強制令書を発付し,Eは,同年11月8日,退去強制により ,Eは,口頭審理の請求権を放棄し,その認定に服した(乙9)。 (ウ) 大阪入管主任審査官は,平成28年10月28日付けでEに対し退去 強制令書を発付し,Eは,同年11月8日,退去強制により本邦から出国した(乙1)。 イ(ア) 大阪入管入国警備官F(以下「F入国警備官」という。)は,上記⑶アの原告に対する違反調査に先立つ平成28年10月21日,Dに対し入管法24条4号ロ(不法残留)に該当する容疑者として違反調査を実施 した(乙4)。 (イ) F入国警備官は,平成28年11月1日,Dに対し入管法24条3号の5ハ(他人名義在留カード行使)に該当する容疑者として違反調査を実施したところ,Dは,原告と共にEの家に行って同人名義の在留カードのコピーを取得し,これをCの面接の際に店長に提出したなどと述べ た(乙10)。 - 5 - (ウ) 大阪入管入国審査官は,平成28年11月4日,Dに対し,入管法24条4号ロ(不法残留)及び同条3号の5ハ(他人名義在留カード行使)につき違反審査を実施した上で,Dが上記各退去強制事由に該当する旨の認定をしたところ,Dは,口頭審理の請求権を放棄し,その認定に服した(乙12)。 (エ) 大阪入管主任審査官は,平成28年11月4日付けでDに対し退去強制令書を発付し,Dは,平成29年3月3日,退去強制により本邦から出国した(乙1)。 ⑸ 本件判定に至る経緯ア原告は,平成28年12月15日,本件認定につき口頭審理の請求をし た(乙33)。その後,原告は,同月22日付けで,仮放免の許可を受け,大阪入管収容場を出所した(甲3)。 イ大阪入管特別審理官G(以下「G特別審理官」という。)は,平成28年12月20日から平成29年2月28日までの間に,5回にわたり,口頭審理を実施 可を受け,大阪入管収容場を出所した(甲3)。 イ大阪入管特別審理官G(以下「G特別審理官」という。)は,平成28年12月20日から平成29年2月28日までの間に,5回にわたり,口頭審理を実施したところ,その主な経緯は,以下のとおりである(乙34~ 39)。 なお,本件原告訴訟代理人弁護士吉田英善(以下「吉田弁護士」という。)は,5回全ての口頭審理に原告の代理人として出席し,同難波泰明は,後記(オ)の口頭審理(5回目)に出席した。 (ア) 平成28年12月20日口頭審理(1回目) 吉田弁護士は,Dの証人尋問を請求した。 (イ) 平成29年1月23日口頭審理(2回目)G特別審理官は,吉田弁護士の上記請求に基づき,Dの証人尋問を実施した。Dは,同尋問において,EからE名義の在留カードを借り受けたが,Dが直接Eに依頼したのであり,原告はそれに関与していないと いった趣旨の証言をした。 - 6 - (ウ) 平成29年2月3日口頭審理(3回目)G特別審理官が,原告に対し,平成28年11月25日付けA入国警備官作成の調査報告書(乙50。以下「任意同行報告書」という。)を示し,その要旨を告げたところ,原告は,同報告書の記載は間違いであるなどとして,同報告書の作成者の証人尋問を請求したが,これに対し, G特別審理官は,同請求を却下した。 (エ) 平成29年2月8日口頭審理(4回目)吉田弁護士は,E及びDの取調官が同じ人物であればその証人尋問を請求する旨述べたのに対し,G特別審理官は,同請求を却下した。 (オ) 平成29年2月28日口頭審理(5回目) ウ G特別審理官は,平成29年2月28日付けで,本件認定には誤りがない旨の本件判定をした(甲5)。 ⑹ 本件訴えの提起等ア原告は (オ) 平成29年2月28日口頭審理(5回目) ウ G特別審理官は,平成29年2月28日付けで,本件認定には誤りがない旨の本件判定をした(甲5)。 ⑹ 本件訴えの提起等ア原告は,平成29年3月3日,法務大臣に対し,本件判定につき異議を申し出た(甲6,乙40)。 イ原告は,平成29年3月10日,本件認定及び本件判定の各取消しを求めて,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 ⑺ 原告の本邦出国等ア法務大臣は,平成29年7月21日付けで原告の上記⑹の異議の申出には理由がない旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をし(乙41),これを 受けて,大阪入管主任審査官は,原告に対し,同月26日付けで退去強制令書を発付した(本件退令発付処分。乙43の1)。 イ原告は,平成29年8月3日,退去強制により本邦から出国した(乙43の2)。 ⑻ 訴えの変更等 原告は,平成29年10月3日,本件裁決及び本件退令発付処分の各取消- 7 - しを求める請求を追加したが,同年12月19日,本件裁決の取消しを求める部分につき訴えを取り下げた。 2 争点⑴ 前記請求1及び2関係(本案前の争点)本件認定等の取消しの訴えにつき訴えの利益があるか ⑵ 前記請求1関係本件認定に事実誤認の違法がないか⑶ 前記請求2関係証人尋問請求を却下した点において本件判定に手続上の違法がないか(なお,原告は,本件判定についても事実誤認の違法がある旨の主張をするよう であるが,入国審査官の認定に誤りがない旨の特別審理官の判定は上記認定に係る不服申立てに対する裁決であり,上記判定の取消しの訴えは行政事件訴訟法上の「裁決の取消しの訴え」(同法3条3項)に該当すると解されるから,同訴えにおいては,上記判定に固有の瑕 の判定は上記認定に係る不服申立てに対する裁決であり,上記判定の取消しの訴えは行政事件訴訟法上の「裁決の取消しの訴え」(同法3条3項)に該当すると解されるから,同訴えにおいては,上記判定に固有の瑕疵しか主張することができず,原処分たる上記認定の違法を主張することはできない(同法10条2項)。よ って,原告の上記主張は,前記請求2との関係においては,それ自体として失当である。)⑷ 前記請求3関係本件退令発付処分の適法性 3 争点に対する当事者の主張 ⑴ 争点⑴(訴えの利益の有無)について(原告の主張)原告は,本件退令発付処分によって本邦から退去を強制されたことにより,退去を強制された日から5年間本邦に上陸することができない(入管法5条1項9号ロ)という法律上の不利益を負っているから,本件退令発付処分の 取消しを求める訴えの利益を有する。そして,退去強制令書は,認定及び判- 8 - 定が正当なものであって初めて発付することができるのであるから,本件認定又は本件判定が取り消されれば,本件退令発付処分も当然に取り消されるべきものである。そうである以上,原告は,本件退令発付処分のみならず,本件認定及び本件判定についても,その取消しを求める訴えの利益を有する。 (被告の主張) ア入国審査官の認定又は認定が誤りがない旨の特別審理官の判定が判決によって取り消されたときは,同判決の趣旨に従い,入国審査官は,再度,当該容疑者が入管法24条各号のいずれにも該当しないか否かを判断することになり,特別審理官は,再度,入国審査官の認定に対する異議を認めるか否かを判断することとなる。その結果,当該容疑者が上記各号のい ずれにも該当しないとの入国審査官の認定がされた場合や,入国審査官の認定に対する異議を認め 入国審査官の認定に対する異議を認めるか否かを判断することとなる。その結果,当該容疑者が上記各号のい ずれにも該当しないとの入国審査官の認定がされた場合や,入国審査官の認定に対する異議を認める旨の特別審理官の判定がされた場合には,当該容疑者は,収容令書に基づく収容から放免され,国外への退去を強制されないという地位を得る(入管法47条1項,48条6項)。そうすると,入国審査官の認定又は認定が誤りがない旨の特別審理官の判定が取り消さ れることにより得られる利益は,収容令書により収容されていることを当然の前提とするものである。 イ前記前提事実のとおり,原告は既にベトナムに送還されており,現在,収容令書に基づく収容を受けていることはないのであるから,本件認定及び本件判定の取消しにより収容から放免されるという法的利益を得る余 地がないことは明らかである。 ウしたがって,本件認定等の取消しの訴えは,その訴えの利益を欠く。 ⑵ 争点⑵(本件認定に事実誤認の違法がないか)について(被告の主張)以下のとおり,原告は,本件退去強制事由に該当するものと認められるか ら,本件認定に事実誤認の違法はない。 - 9 - ア行使の目的でE名義の在留カードを収受したことを自認した原告の供述は信用することができること(ア) 本件自認調書は原告の供述に基づき作成されたものであること本件自認調書作成のためのA入国警備官による聴取及び原告による供述は,ほとんど日本語で実施されたが,原告が日本語を十分に理解し, 日本語で供述することができたことは明らかであり,原告は,A入国警備官の日本語を理解した上で,他人名義在留カード収受の事実を認める旨の供述をしたものである。 原告は,当初,Eから在留カードを借りたことを否定してい ことができたことは明らかであり,原告は,A入国警備官の日本語を理解した上で,他人名義在留カード収受の事実を認める旨の供述をしたものである。 原告は,当初,Eから在留カードを借りたことを否定していたものの,任意同行に応じた後,大阪入管庁舎に向かう移動中の車内において,D から頼まれてDのためにEから在留カードを借りたことを認めたため,A入国警備官は,所持していたメモ帳に原告の供述した内容を記載したメモ(乙53の2。以下「本件メモ」という。)を作成している。このような本件メモの存在及びその内容も,本件自認調書が原告の供述に基づき作成されたものであることを裏付けている。 原告は,本件自認調書添付のEとDの顔写真の下に「私が在留カードをかりたEです」,「私がEからかりた在留カードをわたしたDです」とそれぞれ自筆で記載して署名・指印しており,このことからも,原告が,在留カードの収受を否認したり,本件自認調書への署名を拒否することがなかったことが裏付けられる。 以上のとおり,本件自認調書の作成状況等から,原告が他人名義在留カード収受の事実を自認していたことが認められる。 (イ) 本件自認調書の信用性は高いものといえること本件自認調書の内容には,自認調書作成時点でA入国警備官を含む大阪入管入国警備官が知り得ない事情(原告がEに在留カードを貸してく れるように依頼した内心の動機等)や,同時点で得られていた他の者の- 10 - 供述内容とは齟齬する事情(Cのアルバイトの面接では在留カードのコピーを提出すれば足りること等)が含まれている。 また,原告は,上記のとおり,自筆で「私が在留カードをかりたEです」などと記載して署名・指印している。 本件自認調書の内容は,そもそも原告にとって退去強制につながる不 等)が含まれている。 また,原告は,上記のとおり,自筆で「私が在留カードをかりたEです」などと記載して署名・指印している。 本件自認調書の内容は,そもそも原告にとって退去強制につながる不 利な事情であって,原告において,殊更に虚偽の供述をする理由ないし動機がない。 そして,原告が行使の目的でEから同人名義の在留カードを収受したことについては,Eの供述とも整合する。 以上によれば,本件自認調書の信用性は高いというべきである。 イ Eの供述は原告にE名義の在留カードを貸与したとする点において信用することができること(ア) Eの供述を信用することができることEは,平成28年10月25日,アルバイト先で入管法24条4号イ(資格外活動)該当容疑により摘発され,同日の違反調査において,原 告にE名義の在留カードを貸与したという同条3号の5ロ該当容疑事実についても供述したものである。同日の時点において,D及び原告は,在留カードの提供・収受について供述していなかったところ,Eが貸与した同人名義の在留カードはDがCでアルバイトをするために利用されたものであったから,取調官において原告の関与を疑うべき外形的状 況はなかった。このような状況の下で,Eは,自ら積極的に在留カードを原告に貸与した旨供述したものであるところ,原告が関与していないにもかかわらず,Eが殊更に虚偽の供述をして原告を陥れる動機は何ら見当たらない。 また,原告に在留カードを貸与した時の状況に関するEの供述は具体 的なものであるところ,摘発された当日に何の準備もなく詳細な作り話- 11 - をしたとも考え難い。 しかも,Eは,その後も一貫して在留カードを貸与した相手が原告である旨供述し,その供述の中核部分は,何ら変遷していない。 以上に の準備もなく詳細な作り話- 11 - をしたとも考え難い。 しかも,Eは,その後も一貫して在留カードを貸与した相手が原告である旨供述し,その供述の中核部分は,何ら変遷していない。 以上によれば,Eの供述には十分な信用性が認められるというべきである。 (イ) 原告の主張について原告は,Eの供述は,Eが原告らと共にコンビニエンスストアに行ったかどうか等の点で変遷していることを理由に同供述には信用性がない旨主張するが,Eが原告に在留カードを貸与したという供述の附随的な事情についての変遷にすぎない。むしろ,Eは,誰に自身の在留カー ドを貸与したかという中核的な部分に関しては一切供述を変遷させることなく,一貫して原告に在留カードを貸与したことを述べているのであるから,原告が指摘するような変遷があるからといって,原告に在留カードを貸与したというEの供述の信用性が損なわれるものではない。 また,原告は,Eの供述に,在留カードを貸与した当時の居住状況に ついて,一部,客観的証拠や関係者の供述と異なる点が認められることを理由に,Eの供述は信用することができない旨主張するが,この点は,当時,Eが原告に在留カードを貸与した場所に交際相手が住んでいたのかという違いにとどまり,Eの供述の中核部分との関係では附随的な意味しか持たないものであるから,上記事情をもって,Eの供述の信用性 が損なわれるような事情であるとはいえない。 さらに,原告は,Eの供述は原告の関与を否定する趣旨のDの供述に反する旨主張するが,平成28年11月1日付け供述調書(乙10)及び同年12月8日付け供述調書(乙14)におけるDの供述によれば,Dは,原告が在留カードをEから収受したか否かについて正確な認識を 有していなかったと認められるにもかか け供述調書(乙10)及び同年12月8日付け供述調書(乙14)におけるDの供述によれば,Dは,原告が在留カードをEから収受したか否かについて正確な認識を 有していなかったと認められるにもかかわらず,平成29年1月23日- 12 - の証人尋問において,にわかに,原告がEからの在留カードの収受とは無関係であるとの断定的な供述をするに至っているのであって,そのこと自体が不自然であるし,その供述の根拠等について合理的な説明をしていないから,Dの上記供述は信用することができない。したがって,Dの供述により,Eの供述の信用性が減殺されることはないというべき である。 (原告の主張)大阪入管入国審査官は,証拠上本件認定事実を認定することができないにもかかわらず同事実を認定しており,本件認定には事実誤認の違法がある。 被告は,Eの供述及び本件自認調書から本件認定事実を認定することがで きる旨主張するが,以下のとおり,Eの供述は信用することができず,また,本件自認調書には証拠能力が認められない。 ア Eの供述には信用性がないこと(ア) Eは,本件認定事実の核心部分である在留カードの受渡し後の状況について,平成28年10月25日の取調べ時には,当時Eが交際してい た女性のマンションに訪れた原告に在留カードを渡し,原告及びDがコピーを取りに出掛け,その後,原告らは在留カードを返しにマンションに戻って来たと供述していた(乙7)のに,同年11月2日の取調べ時には,原告に在留カードを渡した後,原告及びDと三人でコンビニエンスストアにコピーを取りに行き,原告とDがコピーを取り終わると在留 カードを返してもらったと供述しており(乙11),その供述内容を変遷させているが,その変遷の理由について,「よくよく思い出してみると アにコピーを取りに行き,原告とDがコピーを取り終わると在留 カードを返してもらったと供述しており(乙11),その供述内容を変遷させているが,その変遷の理由について,「よくよく思い出してみると」といったあいまいな理由しか述べていない。 この供述の変遷については,同月1日にDに対する違反調査が行われ,その際,Dが,Eと原告と三人でコンビニエンスストアに行ったと供述 したことから,取調官によって,Dの供述に合わせるように仕向けられ- 13 - た可能性を払しょくすることができない。 以上のとおり,Eの供述は,合理的な理由なく重要部分において変遷しており,その変遷につき取調官の恣意が介在している可能性が高いから,信用することができない。 (イ) Eは,本件認定事実があったとされる平成27年10月頃,交際して いた女性(H)の住む,I駅近くにあった大阪市α区のマンションに住んでいたと供述しているが,実際には,当時,Eは上記女性とは交際しておらず,当時Eが一緒に生活していたのはJという男性であったことが判明している(乙56の1)。このように,Eの供述は,客観的事実に沿わないものである。 他方で,Dは,Eが誰に在留カードを交付したかについてはあいまいな点があるものの,自らEに対して在留カードを貸してほしいとお願いしたと供述しており,かつ,その供述は一貫しており,同供述は信用することができる。Eの供述は,信用することができるDの供述に反するものである。 以上のとおり,Eの供述は,客観的な事実と合致せず,Dの供述にも反するため,信用することができない。 イ本件自認調書に証拠能力がないこと(ア) 憲法38条は,刑事手続に関する規定であるものの,行政手続であっても,刑事責任追及のための資料収集に直接結び も反するため,信用することができない。 イ本件自認調書に証拠能力がないこと(ア) 憲法38条は,刑事手続に関する規定であるものの,行政手続であっても,刑事責任追及のための資料収集に直接結び付く作用を一般的に有 するものには,その保障が及ぶ(最高裁判所昭和47年11月22日大法廷判決・刑集26巻9号554頁)ところ,入国警備官による違反調査のための取調べは,刑事責任追及のための資料収集に直接結び付く作用を一般的に有する手続に当たる。したがって,入国警備官の違反調査は,憲法38条が定める趣旨に従い行わなければならないというべきで あり,黙秘権の保障が及ぶから,入国警備官は,取調べに先立ち黙秘権- 14 - があることを告知する必要があり,これを欠く取調べは違法な取調べに当たる。 A入国警備官は,原告に対し,黙秘権を告知せずに取調べを行い,本件自認調書を作成したのであるから,A入国警備官による上記取調べは違法である。 したがって,本件自認調書は証拠能力を欠くというべきである。 (イ) 本件自認調書は,原告自身が供述した内容が記載されたものではなく,A入国警備官が,Eら関係者から聴取した内容を基に,あらかじめ記載していたものにすぎない。すなわち,A入国警備官は,原告に質問をすることなく,既存の資料を確認しながら,黙々とパソコンと向き合い, 一通りの作業を終えると,本件自認調書の読み聞かせをすることもなく,原告に署名を求めた。本件自認調書作成時に通訳人はおらず,原告としては,意味の分からないまま,署名すれば早く帰宅できるなどと執拗に言われて署名したものである。 原告は,本件自認調書が作成された直後の収容令書の執行時から,一 貫して本件認定事実を否認しているのであり,本件自認調書においてのみ, く帰宅できるなどと執拗に言われて署名したものである。 原告は,本件自認調書が作成された直後の収容令書の執行時から,一 貫して本件認定事実を否認しているのであり,本件自認調書においてのみ,違反事実を自認するというのは不自然である。 以上のとおり,本件自認調書は,原告の供述に基づいて作成されたものではなく,証拠として排除されるべきものである。 ⑶ 争点⑶(本件判定に手続上の違法がないか)について (被告の主張)ア原告は,本件自認調書の信用性を吟味するために,口頭審理手続においてA入国警備官の証人尋問が必要であったかのような主張をするが,原告は,口頭審理(3回目)において,任意同行報告書の要旨の読み聞かせを受けた際に,同報告書は間違いである旨供述して,その作成者(A入国警 備官)の証人尋問の請求をしたのであって,本件自認調書の信用性を吟味- 15 - するために証人尋問の請求をしたものではない。 その点を措いたとしても,上記⑵で主張したとおり,本件自認調書には十分な信用性が認められ,また,本件自認調書の内容に対する原告の弁解は理由のないものであった。さらに,容疑者に対する取調べ時の供述経緯について最もよく説明することができるのは容疑者自身なのであり,信用 性のない自認調書が作成されたというのであれば,原告において,取調べの状況の詳細を供述して自認調書の信用性を争うことが容易にできることからしても,A入国警備官を証人として尋問する必要性は認められない。 したがって,原告の上記証人尋問の請求を却下したことが違法であるとはいえない。 イ吉田弁護士は,口頭審理(4回目)において,「前提の話となるが,EとDの取調官が同じ人物であれば,証人尋問を請求する」旨申し出たのに対し,G特別審理官は当該証人 であるとはいえない。 イ吉田弁護士は,口頭審理(4回目)において,「前提の話となるが,EとDの取調官が同じ人物であれば,証人尋問を請求する」旨申し出たのに対し,G特別審理官は当該証人尋問の請求を却下しているところ,そもそも,E及びDの供述調書を作成した担当官はそれぞれ異なる者であって,吉田弁護士が述べた証人尋問の請求の前提は満たしていない。また,上記証人 尋問の請求は,いずれの担当官をどのような立証趣旨で請求しているのかさえ判然としないのであるから,G特別審理官が,上記証人尋問の実施を不要と判断し,その請求を却下したことが違法となる余地はないというべきである。 その点を措いたとしても,上記⑵で主張したとおり,原告に在留カード を貸与したとする点において,Eの供述は信用することができるのであり,いずれにしても,証人尋問の必要性は認められず,G特別審理官において上記請求を却下したことが違法とはいえない。 (原告の主張)平成29年2月8日実施の口頭審理(4回目)において,吉田弁護士のし た取調官の証人尋問の請求が却下されている。しかしながら,上記⑵で主張- 16 - したとおり,本件自認調書はA入国警備官があらかじめ準備していたものであり,原告に対する質問を経ずに作成されたものであるから,同人に対する証人尋問は不可欠であり,その請求を却下したことは,原告の口頭審理手続における証人尋問権を侵害する違法なものである(憲法37条2項,入管法48条5項,10条3項)。 なお,被告は,上記証人尋問の請求について,いずれの担当官をどのような立証趣旨で請求しているのかさえ判然としないなどと主張するが,原告は,取調官の名前すら聞かされていない状況で口頭審理における証人尋問の請求をしなければならず,ある程 いて,いずれの担当官をどのような立証趣旨で請求しているのかさえ判然としないなどと主張するが,原告は,取調官の名前すら聞かされていない状況で口頭審理における証人尋問の請求をしなければならず,ある程度は概括的な請求にならざるを得ない。仮に,被告の主張するような理由をもって証人尋問の請求を却下するのであれば, 口頭審理に先立ち,容疑者に証拠を開示するなどして審理の充実を図るべきである。 ⑷ 争点⑷(本件退令発付処分の適法性)について(被告の主張)上記⑵で主張したとおり,原告は,退去強制対象者に該当するから,法務大 臣による原告の異議の申出に理由がない旨の本件裁決は適法である。 そして,主任審査官は,法務大臣から,容疑者がした異議の申出に理由がないとの裁決をした旨の通知を受けたときは,退去強制令書を発付しなければならないとされており(入管法49条6項),退去強制令書の発付に主任審査官の裁量を入れる余地はないから,本件裁決が適法である限り,主任審査官のした 退去強制令書発付処分も適法であるというべきである。 したがって,本件退令発付処分は適法である。 (原告の主張)上記⑵及び⑶で主張したとおり,本件認定及び本件判定はいずれも違法であるから,これらの処分を前提とする本件退令発付処分も違法なものとして取り 消されるべきである。 - 17 - 第3 当裁判所の判断 1 争点⑴(訴えの利益の有無)について入管法24条3号の5ロに該当することを理由とする退去強制令書発付処分により退去強制を受けた外国人で,その退去の日前に本邦からの退去を強制されたこと及び出国命令により出国したことのないものは,退去した日から5 年の期間を経過しないと本邦に上陸することができないとされている(同法5条1項9号ロ)。そう の日前に本邦からの退去を強制されたこと及び出国命令により出国したことのないものは,退去した日から5 年の期間を経過しないと本邦に上陸することができないとされている(同法5条1項9号ロ)。そうすると,上記外国人は,上記期間内に本邦への上陸を拒否されないようにするためには上記処分を取り消す必要があるから,上記期間内は,上記処分の取消しにより回復すべき法律上の利益があるということができる。 そして,主任審査官は,容疑者が入管法47条3項に基づく入国審査官の認定に服したときや,同法48条8項に基づく上記認定に誤りがない旨の特別審理官の判定に服したときは,速やかに容疑者に対して退去強制令書を発付しなければならないとされている(同法47条5項,48条9項)など,入管法が採用する退去強制手続の構造に照らせば,上記認定及び判定は退去強制令書発 付処分の当然の前提を成すものと解される。したがって,上記認定又は判定が取り消されれば,退去強制令書発付処分も違法なものとしてその効果を否定されるべきものであるから,その結果として,上記外国人は,上記規定に基づき上陸を拒否されることがないという法的地位を得ることができるといえる。そうであるとすれば,入管法24条3号の5ロに該当することを理由とする退去 強制令書の執行により退去強制を受けて本邦外にある外国人で,その退去の日前に本邦からの退去を強制されたこと及び出国命令により出国したことのないものは,上記期間が経過するまでの間,上記認定及び判定の取消しを求める法律上の利益を有すると解するのが相当である。 これに対し,被告は,上陸拒否事由に該当することは退去強制令書発付処分 に基づく送還の執行を受けたことによる法的効果であって,入国審査官の認定- 18 - 又は特別審理官の判定 ある。 これに対し,被告は,上陸拒否事由に該当することは退去強制令書発付処分 に基づく送還の執行を受けたことによる法的効果であって,入国審査官の認定- 18 - 又は特別審理官の判定に伴う法的効果ではないとして,既に本邦からの退去を強制され,収容令書により収容されていない外国人には,上記認定及び判定の取消しを求める法律上の利益は認められない旨主張する。しかしながら,上記外国人は,上記認定又は判定が取り消されれば,入管法の規定に基づき上陸を拒否されることがないという法的地位を得ることができるところ,このような 地位を得るという利益をもって上記認定及び判定の取消しを求める法律上の利益に該当するというべきことは上記説示のとおりである。被告の上記主張は,退去強制令書発付処分がされ,又はその執行がされたことにより,上記認定及び判定の直接的な効果がなくなることをいう趣旨と解されるが,行政事件訴訟法9条1項は,処分の直接的な効果がなくなった後においてもなお当該処分の 取消しによって回復すべき法律上の利益が肯定される場合(いわば処分の付随的効果を排除するために訴えの利益が肯定される場合)があることを規定しているのであり,上記認定及び判定の直接的な効果がなくなるからといって,必ずしもその取消しを求める訴えの利益が消滅するということにはならない。そして,上記認定及び判定は,後続する退去強制令書発付処分が適法であること を基礎付けるという点において,なお法的効果(付随的効果)を有するということができるのであり,上記外国人は,この効果を排除するために上記認定及び判定の取消しを求める法律上の利益を有するということができる。したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 また,被告は,上記外国人が退去強制事由に該当しないこ 排除するために上記認定及び判定の取消しを求める法律上の利益を有するということができる。したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 また,被告は,上記外国人が退去強制事由に該当しないことを理由に上陸拒 否事由該当性を争う場合には,上陸拒否の根拠たる退去強制令書発付処分の取消しの訴えを提起すれば足りるなどと主張する。しかしながら,原告が取消しを求める処分のほか,当該処分に後続する他の処分についても取消しの訴えを提起することができ,当該後続処分の取消しの訴えが紛争の終局的解決の方法としてより適切であると解されるとしても,そのことのみによって,当該後続 処分の取消しの訴えのみを提起すべきであり,先行する処分については取消し- 19 - の訴えを提起することができないと解すべき合理的根拠は見いだし難い。いわゆる違法性の承継が認められる場合においては,後続する他の処分の取消しの訴えを提起し,先行する処分の違法を主張することによって,事実上,原告の目的を達成することができるということはできるが,そうであるからといって,先行する処分の取消しを求める訴えの利益が消滅するとは解されない。処分権 主義の下において,複数ある処分のうちいずれの取消しを求めるかは,特段の規定がない限り,飽くまでも原告の選択に委ねられるというべきである。被告の上記主張は,採用することができない。 以上を本件についてみると,前記前提事実によれば,原告がベトナムに送還されたのは平成29年8月3日であり,その退去の日前に本邦から退去を強制 されたこと及び出国命令により出国したことがあるとの事情は見当たらないから,原告は,いまだ同日から5年を経過していない現時点において,本件認定及び本件判定の各取消しによって回復すべき法律上の利益をなお有するも 及び出国命令により出国したことがあるとの事情は見当たらないから,原告は,いまだ同日から5年を経過していない現時点において,本件認定及び本件判定の各取消しによって回復すべき法律上の利益をなお有するものということができる。 よって,本件認定等の取消しの訴えは,適法である。 2 争点⑵(本件認定に事実誤認の違法がないか)について⑴ 認定事実前記前提事実に加え,証拠(乙6,7,9~15,17,18,23~32,45,50,53,54,証人A)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア大阪入管は,EがCとKの2か所の事業所で稼働している旨の登録がされていたこと等から,Eに対する資格外活動の容疑で調査に着手したところ,Cにおいては,DがEを名乗って稼働していたことが判明した。 イ Eは,平成28年10月25日,アルバイト先であるKにおいて,入管法24条4号イ(資格外活動)該当容疑により摘発された。 A入国警備官が,同日,Eに対し,同条3号の5ロ(自己名義在留カー- 20 - ド提供)に該当する容疑者として違反調査を実施したところ,Eは,A入国警備官に対し,要旨,以下のとおり,原告に自己名義の在留カードを貸した旨の供述をした。 (ア) Eは,平成27年10月頃,L専門学校で知り合った原告から,電話で,原告がアルバイトをしているCでアルバイトを募集しているので, 知り合いのDを紹介しようと思っているが,Dは身分証明書を持っていないから,Eの在留カード等を貸してほしいと頼まれ,在留カード等を貸すことにした。 (イ) 原告は,その日のうちに,Dを連れて,Eが彼女(H)と同棲していた大阪市α区内のI駅近くにあった彼女のマンションに来た(なお,E は彼女の名前を「M」と供述しているが,乙第 にした。 (イ) 原告は,その日のうちに,Dを連れて,Eが彼女(H)と同棲していた大阪市α区内のI駅近くにあった彼女のマンションに来た(なお,E は彼女の名前を「M」と供述しているが,乙第56号証の1によれば,Hのことを指しているものと認められる。)。 (ウ) Eは,上記マンションの階段の上で,原告に,E名義の在留カード及びパスポートのほか,E名義の預金口座の通帳及びキャッシュカードを渡した。 (エ) 原告は,Eから在留カードを受け取った後,2時間くらいして彼女のマンションに戻ってきて,コピーを取ったから返すと言って,在留カードとパスポートを返してくれた。他方,通帳やキャッシュカードについては,アルバイト先からの給料をもらうために使うと言って返してくれなかった。 (オ) 以上のとおり,Eは,平成27年10月頃,大阪市α区内にあった彼女のマンション内において,E名義の在留カード等を原告に貸したことに間違いない。 ウ前記前提事実⑶のとおり,本件自認調書は,平成28年10月28日に作成されたものであるところ,同日の経緯は,以下のとおりであった(以 下,この項において,同日の記載は省略する。)。 - 21 - (ア) A入国警備官ら大阪入管職員は,原告を本件退去強制事由該当容疑で摘発すべく,その所在を調査していたところ,午後2時55分頃,原告が在籍する専門学校の教員に付き添われてO駅前に現れた。そこで,A入国警備官が原告に対し他人名義の在留カードを借りたことがないかなどと質問したところ,原告はこれを否認した。もっとも,原告が調査 には応じる意向を示したことから,A入国警備官は,引き続き,公用車内で原告に対する聴取を続けた。 (イ) A入国警備官ら大阪入管職員は,原告の同意を得て,いったん,原 た。もっとも,原告が調査 には応じる意向を示したことから,A入国警備官は,引き続き,公用車内で原告に対する聴取を続けた。 (イ) A入国警備官ら大阪入管職員は,原告の同意を得て,いったん,原告の居住地(大阪府(住所省略))に寄って原告に荷物の整理をさせた上で,大阪入管庁舎まで原告を任意同行した。その間,A入国警備官が,原告 に対し,Eは原告からDにCでのアルバイトを紹介するので在留カード等を貸してほしいと言われ,原告にE名義の在留カードを貸したと言っているが,Eの言うとおりであれば,原告は入管法違反の容疑で強制送還になるかもしれないなどと説明した上で,なぜ原告とEの供述が食い違うのかなどと述べて,正直に話をするよう繰り返し説諭したところ, 原告は,上記居住地から大阪入管庁舎に移動中の車内において,平成27年10月頃,Eから同人名義の在留カードを借り受けた旨,本件退去強制事由を自認する旨の供述をした。 A入国警備官は,原告から供述を聴取しながら,所持していたメモ帳にその要点を記載し,本件メモを作成した。 (ウ) 午後4時5分頃に大阪入管庁舎に到着した後,午後7時頃までの間,A入国警備官及びB入国警備官が原告に対する違反調査を実施した。A入国警備官は,主に,Eからその在留カードを借りたことについて,車内では聴き足りなかった事情を聴取した上で,原告の供述に基づいて本件自認調書を作成した(その記載内容の要旨は前記前提事実⑶ア(ア)か ら(オ)までのとおり。)。A入国警備官は,その後,原告に本件自認調書の- 22 - 内容を読み聞かせた上で,その署名・指印を得たが,原告が署名等を渋ることはなく,また,加除・訂正等を求めることもなかった。また,原告は,E及びDの顔写真が印刷された用紙に,それぞれ,「私が - 内容を読み聞かせた上で,その署名・指印を得たが,原告が署名等を渋ることはなく,また,加除・訂正等を求めることもなかった。また,原告は,E及びDの顔写真が印刷された用紙に,それぞれ,「私が在留カードをかりたEです」,「私がEからかりた在留カードをわたしたDです」と自筆で記載して署名・指印し,これらの紙は本件自認調書に添付され た。 なお,A入国警備官は,原告から事情を聴取するに当たって,原告に対し黙秘権の告知をしなかった。 また,B入国警備官は,A入国警備官による取調べと並行して,主に原告の身上等について,事情を聴取した上で,供述調書(乙24)を作 成し,原告の署名・指印を得た。 (エ) その後,午後7時40分頃,A入国警備官が,原告に対し,収容令書を示し,収容する旨告げたところ,原告は,同令書記載の容疑事実を否認し,そのような供述はしていないなどと述べた。 (オ) A入国警備官及びB入国警備官と原告との間のやり取りのほとんどが 日本語で行われ,本件自認調書の読み聞かせをするに当たって,その一部をA入国警備官がベトナム語に訳すことがあった程度である。 エ前記前提事実⑷ア(イ)及び(ウ)のとおり,大阪入管入国審査官は,平成28年10月28日,Eに対し,違反審査を実施した上で,入管法24条4号イ(資格外活動)及び同条3号の5ロ(自己名義在留カード提供)に該 当する旨の認定をし,Eが同認定に服したため,Eに対する退去強制令書が発付された。Eは,上記違反審査において,原告に自己名義の在留カードを貸した経緯やその状況は入国警備官に話したとおりである旨供述した。 オ F入国警備官は,平成28年11月1日,Dに対し入管法24条3号の 5ハ(他人名義在留カード行使)に該当する容疑者として違反調査を実施 状況は入国警備官に話したとおりである旨供述した。 オ F入国警備官は,平成28年11月1日,Dに対し入管法24条3号の 5ハ(他人名義在留カード行使)に該当する容疑者として違反調査を実施- 23 - したところ,Dは,要旨,以下のとおり,供述した。 (ア) Dが原告に仕事を探していると話したところ,原告が当時働いていたCがアルバイトを募集していると聞いて,Cでアルバイトをしたいと考えた。 (イ) Dは,自分の在留カードを持っていたが,熊本県の学校を辞めて大阪 に来ていたので,自分の在留カードを使っても,雇ってもらえないだろうと考えた。 (ウ) Cでアルバイトをするために他人の在留カードが必要だったが,Cでアルバイトをしている原告から借りるわけにはいかないので,原告を介して知り合ったEに在留カードを貸してくれるように依頼した。 (エ) 原告と共に,Eの家(大阪市α区にあるI駅近くのアパート)に行き,原告とEと3人で近くのコンビニエンスストアに行った。Dは,コンビニエンスストアの店外で待っており,原告及びEが店内に入り,どちらかがE名義の在留カードのコピーを取って,Dに渡してくれた。 カ A入国警備官は,平成28年11月2日,大阪入管入国審査官からの依 頼に基づき,再びEから事情を聴取したところ,Eは,要旨,以下のとおり,供述した。 (ア) Eは,彼女のマンションの階段の上で,E名義の在留カード等を原告に直接渡した。Dとは,その日に初めて会ったばかりで,挨拶程度の会話しかしていないから,在留カード等について直接のやり取りをしたの は原告で間違いない。 (イ) 前回の取調べでは,原告は在留カード等を受け取った後2時間くらいして戻ってきたと述べたが,よく思い出してみると,在留カード等を渡した後 直接のやり取りをしたの は原告で間違いない。 (イ) 前回の取調べでは,原告は在留カード等を受け取った後2時間くらいして戻ってきたと述べたが,よく思い出してみると,在留カード等を渡した後,原告が在留カードやパスポートをコンビニエンスストアでコピーしたいと言ってきたので,原告らと共に彼女のマンションの近くのロ ーソンに行った。 - 24 - (ウ) 原告とDをローソンまで案内した理由は,もし原告らが在留カードやパスポートを持って帰ってしまうと,自分の身分証明書がなくなってしまうので,それを防ぐために,原告らの行動を見張っておこうと思ったからである。 (エ) 原告とDは,ローソンに着くと,2人で店の中に入って行き,15分 くらいして出て来て,在留カードとパスポートを返してくれた。 キ前記前提事実⑷イ(ウ)及び(エ)のとおり,大阪入管入国審査官は,平成28年11月4日,Dに対し,違反審査を実施した上で,入管法24条4号ロ(不法残留)及び同条3号の5ハ(他人名義在留カード行使)に該当する旨の認定をし,Dが同認定に服したため,Dに対する退去強制令書が発 付された。Dは,上記違反審査において,Eに在留カードを貸してほしいと頼み,Eが在留カードを貸してくれた旨供述した。 ク大阪入管入国警備官Pは,平成28年12月7日,8日及び9日に,Dから事情を聴取したところ,その供述の内容は,要旨,以下のとおりであった。 (ア) Dは,原告からCのアルバイトを紹介され,Eから在留カードを借りようと考え,原告の家で,原告とEと三人で食事をしている時に,Eに,在留カード等を貸してほしいと相談した。 (イ) その後,Cのアルバイトの面接の日が決まったので,原告の携帯電話を借りてEに電話をかけて,在留カード等を貸してほ Eと三人で食事をしている時に,Eに,在留カード等を貸してほしいと相談した。 (イ) その後,Cのアルバイトの面接の日が決まったので,原告の携帯電話を借りてEに電話をかけて,在留カード等を貸してほしいとお願いし, 原告と共にEの家に行った。 (ウ) 原告とEと共にEの家の近くのコンビニエンスストアに行ったが,店内には原告とEが入り,Dは店外で待っていた。原告とEが在留カード等のコピーを取って店外に出てきたので,Dは,Eからそのコピーを受け取った。 (エ) 原告は,DがEとしてCのアルバイトに採用されたことを知っていた- 25 - ので,店長や他のスタッフの前では,Dのことを「E」と呼んでいた。 ケ原告は,平成28年11月9日から同年12月13日までに6回にわたり実施された違反審査において,DがEから同人名義の在留カードを借り受けたことは,大阪入管に収容されてから知ったのであり,E名義の在留カードは見たことも触ったこともないなどとして,他人名義在留カードの 収受の事実を否認した。 コ前記前提事実⑸イ(イ)のとおり,平成29年1月23日に実施された原告に対する口頭審理(2回目)においてDに対する証人尋問が実施されたところ,その際,Dは,要旨,以下のとおり,証言した。 (ア) E名義の在留カードを借りたのは,Eからである。この件は,原告と は関係がない。 (イ) 原告と共にEの家に行った後,コンビニエンスストアに行って,在留カード等のコピーをEから受け取った。原告には,Eの家に行く前に,書類をコピーしたい旨を伝えていた。 (ウ) コンビニエンスストアには三人で行ったが,店内に入ったのは,原告 とEである。原告とEは,店内で別々に行動していた可能性がある。 (エ) 原告は,Cにおいて,Dのこと を伝えていた。 (ウ) コンビニエンスストアには三人で行ったが,店内に入ったのは,原告 とEである。原告とEは,店内で別々に行動していた可能性がある。 (エ) 原告は,Cにおいて,Dのことを「E」と呼んだことがある。 ⑵ 事実認定の補足説明原告は,上記⑴ウ(イ)及び(ウ)について,本件自認調書は原告の供述に基づき作成されたものではないなどと主張する。 しかしながら,本件自認調書の作成経緯について述べるA入国警備官の証言や同人作成の任意同行報告書(乙50)の内容に特に不自然・不合理な点は見当たらない上,原告が容疑事実を自認するに至った公用車内でA入国警備官が書き留めた本件メモ(乙53の2)が残っており,その内容が本件自認調書の内容と整合している。加えて,A入国警備官が収容手続書(乙26) に原告が容疑事実を否認した旨を明確に記載していることからすれば,A入- 26 - 国警備官が原告の供述に基づかずに本件自認調書を作成したなどとは考え難い。以上によれば,A入国警備官の上記証言及び同人作成の任意同行報告書の内容は信用することができる。 これに対し,原告は,本件メモだけが保存され,Eに対する取調べ時のメモが保存されていないのは不自然であり,本件メモが原告に対する取調べ時 に作成されたものであるかは疑わしいと主張するが,A入国警備官の証言によれば,本件メモは庁外に出るときに携行しているバインダー式のメモ帳に記載され,同メモ帳の中に保存されていたものであるのに対し,Eの取調べの際には任意同行後に大阪入管庁舎での取調べ時にコピー用紙(白紙)にメモを書き留めたというのであるから,本件メモだけが保存されているとして も特段不自然であるとはいえない。本件メモの記載を見ると,単語や短文だけが記載され,文字も相 べ時にコピー用紙(白紙)にメモを書き留めたというのであるから,本件メモだけが保存されているとして も特段不自然であるとはいえない。本件メモの記載を見ると,単語や短文だけが記載され,文字も相当に崩れており,このような本件メモの体裁等に照らしても,事後にあえて作成されたものとは考え難く,さらに,本件メモの記載内容からしても,他の容疑者に対する取調べ時に作成されたものである可能性は考えられない。そうすると,本件メモは原告に対する取調べ中に車 内で作成されたものであるとするA入国警備官の証言及び調査報告書(乙53の1)の内容は十分に信用することができる。 また,原告は,二,三十分の間に,本件メモに記載されている事情を全て聴き取るのは不可能である旨主張するが,証拠(乙18~22,27,34,50,証人A)及び弁論の全趣旨によれば,原告は日常会話をすることがで きる程度の日本語能力を有していたことが認められ,現に,当日のA入国警備官及びB入国警備官と原告との間のやり取りのほとんどが日本語で行われたことからすれば,本件メモの記載内容に照らし,原告の居住地から大阪入管庁舎までの移動中にその全てを聴き取ることが不可能であったとは考えられない。 原告は,A入国警備官から執拗に署名をするように言われて,その内容も- 27 - 分からないまま本件自認調書に署名・指印したなどと主張するが,原告は,本件自認調書作成の際,E及びDの顔写真が印刷された用紙に「私が在留カードをかりたEです」などと自筆で記載した上で署名・指印しているのであり,同調書の内容が分からなかったというのは不自然であるし,原告は,平成28年11月16日に実施された違反審査の際には,A入国警備官から本 件自認調書の内容を読み聞かされたことを前提に,その内容 り,同調書の内容が分からなかったというのは不自然であるし,原告は,平成28年11月16日に実施された違反審査の際には,A入国警備官から本 件自認調書の内容を読み聞かされたことを前提に,その内容が間違っている旨指摘したのに訂正してもらえなかった旨供述していたのであって(乙28・4~7頁),本件訴訟における上記主張は,退去強制手続における従前の供述とも整合しない。そうすると,内容も分からないまま本件自認調書に署名・指印したなどとする原告の上記主張は,採用することができない。 以上のとおり,本件自認調書が作成された経緯については,A入国警備官の証言及び任意同行報告書に基づき,上記⑴ウ(イ)及び(ウ)のとおりの事実を認定することができる。 ⑶ 本件自認調書についてア本件自認調書の証拠能力について 原告は,入国警備官による違反調査にも黙秘権の保障が及ぶから,黙秘権の告知をせずに作成された本件自認調書は証拠能力を欠く旨(その趣旨は,本件自認調書は,違法に収集された証拠あるいは形式的証拠力を欠く証拠として事実認定に利用することが許されない旨をいうものと解される。)主張する。 しかしながら,仮に,入国警備官による違反調査について,刑事責任追及のための資料収集に直接結び付く作用を一般的に有する手続として憲法38条の保障が及ぶと解すべきであるとしても,黙秘権の告知を要するものとすべきかどうかは,その手続の趣旨・目的等により決められるべき立法政策の問題であると解される(最高裁判所昭和59年3月27日第三小 法廷判決・刑集38巻5号2037頁)。そうであるところ,入管法その他- 28 - の法令に,退去強制手続において容疑者に対し黙秘権を告知しなければならない旨定めた規定は見当たらないから,A入国警備官が原 集38巻5号2037頁)。そうであるところ,入管法その他- 28 - の法令に,退去強制手続において容疑者に対し黙秘権を告知しなければならない旨定めた規定は見当たらないから,A入国警備官が原告に対し黙秘権を告知しなかったことのみをもって,その取調べが違法であるということはできない。 また,上記認定事実によれば,A入国警備官は,なぜ原告とEの供述が 食い違うのかなどと述べて,正直に話をするよう繰り返し説諭したところ,原告が容疑事実を自認する旨の供述をしたため,同供述に基づき,本件自認調書が作成されたというのであり,本件において,原告が上記供述を強制されたなどといった事情は認められない。 したがって,本件自認調書は原告の意思に基づいて作成されたものと認 められ,その取調べが違法であったともいえないから,同調書が証拠能力を欠く旨をいう原告の主張は,採用することができない。 イ本件自認調書の信用性について本件自認調書が作成されるに至った経緯は既に認定・説示したとおりであるところ,その経緯に照らせば,原告が,真実はEから同人名義の在留 カードを借りたことがないにもかかわらず,あえて自己の退去強制事由該当性を認める旨の虚偽の供述をした上で「私が在留カードをかりたEです」等の記載を自書したとは考え難い。また,本件自認調書の内容を見ても,その内容に特に不自然・不合理な点はなく,十分な具体性を有するものである上,後記のとおり,信用性が高いと認められるEの供述の内容とも整 合することにも照らすと,本件自認調書は,その信用性を肯定することができるというべきである。 ⑷ Eの供述についてア上記認定事実によれば,Eは,平成28年10月25日に入管法24条4号イ(資格外活動)該当容疑により摘発され,その日のうちに実施 肯定することができるというべきである。 ⑷ Eの供述についてア上記認定事実によれば,Eは,平成28年10月25日に入管法24条4号イ(資格外活動)該当容疑により摘発され,その日のうちに実施され た同条3号の5ロ(自己名義在留カード提供)該当容疑の違反調査におい- 29 - て,原告に自己名義の在留カードを貸した旨の供述をしたものである。 E名義の在留カードは,DがCで稼働するために必要としたものであるから,あえて原告を収受のために介在させる必要性はないところ,本件全証拠を通覧しても,Eが上記供述をした平成28年10月当時,Eと原告の交流関係が悪かったとは認められず,他にEがあえて虚偽の事実を述べ て原告を陥れようとするような事情があったとは認められない。 そして,上記認定のとおり,Eの上記供述の内容は相応に具体的なものであるといえるところ,Eが,資格外活動の該当容疑で摘発されたその日に,真実は原告に在留カードを貸したのではないにもかかわらず,その旨の詳細な作り話を供述したとは,にわかに考え難い。 また,証拠(乙17)によれば,A入国警備官ら大阪入管職員においては,上記違反審査の時点で,DがE名義の在留カードを使い,EとしてCでアルバイトをしており,そのDをCに紹介したのが原告であることは既に把握していたことが認められるものの,上記認定の調査の経緯からすれば,Eが在留カードを貸与した直接の相手が原告であると疑うべき事情は 乏しかったということができる。そうすると,上記違反調査において,A入国警備官が,Eに対し,在留カードを貸した相手が原告である旨の供述を誘導したとは考え難いのであって,A入国警備官が証言するとおり,Eは,自ら上記供述をしたものと認められる。 以上によれば,Eが原告に自己名義の在 に対し,在留カードを貸した相手が原告である旨の供述を誘導したとは考え難いのであって,A入国警備官が証言するとおり,Eは,自ら上記供述をしたものと認められる。 以上によれば,Eが原告に自己名義の在留カードを貸したとする供述を した経緯に特段不自然な点は見当たらず,さらに,本件全証拠を通覧しても,Eがあえて虚偽の事実を述べて原告を陥れようとするような事情があったとも認められない。 イ原告は,Eの上記供述について,在留カードの受渡し後の状況に関する供述内容が変遷しているから信用性を欠く旨主張するところ,確かに,上 記認定事実によれば,Eは,平成28年10月25日には,原告に在留カ- 30 - ードを渡した後,原告及びDが二人でコピーを取りに行った旨供述していたのに,その後,同年11月2日には,Eも含めた三人でコピーを取りに行った旨供述しており,その供述内容に変遷が認められる。しかしながら,Eの供述は,在留カードを渡した相手が原告であるという点では一貫しており,上記の変遷は,中核部分に関する変遷とはいい難い。また,A入国 警備官は,同年10月25日にEに対し入管法24条4号イ(資格外活動)及び同条3号の5ロ(自己名義在留カード提供)に該当する容疑者として違反調査を実施し,2通の供述調書(乙6,7)を作成しているところ,A入国警備官の証言によれば,同人はEが在留カードを渡した後の行動については特に重要視していなかったことがうかがわれ,また,収容令書に よる収容前の段階では概括的な内容の調書を作成するのが一般的であるというのであり,これらのことからすると,同日の取調べの際には,Eが原告に在留カードを渡した後の行動について,詳しく聴取することができていなかったことも十分に考えられる。これに対し,同年11月2日の際 いうのであり,これらのことからすると,同日の取調べの際には,Eが原告に在留カードを渡した後の行動について,詳しく聴取することができていなかったことも十分に考えられる。これに対し,同年11月2日の際には,A入国警備官は,入国審査官からの依頼に基づき,在留カードの受 渡し当日の状況について詳しく聴取し,Eの記憶が十分に喚起されたため,E自身もコンビニエンスストアに行った旨の供述が得られ,その結果として,上記変遷が生じたとしても何ら不自然ではない。そうすると,上記変遷があることをもって,原告に自己名義の在留カードを貸したとするEの供述の信用性が損なわれることはないというべきである。 ウまた,原告は,Eの供述に,在留カードを貸与した当時の居住状況について,客観的証拠や関係者の供述と異なる点が認められるからEの供述は信用することができない旨主張するところ,確かに,証拠(乙55,56)によれば,平成27年10月当時,EはHとは交際しておらず,Eの供述するマンションには,Jという男性のベトナム人と住んでいたことが認め られ,その限度で,Eの上記供述は客観的事実と整合しない。しかしなが- 31 - ら,上記のとおり,Eが当時上記マンションに住んでいたことは認められ,彼女と住んでいたかどうかという点は,附随的な事情にとどまるから,上記の不整合をもって,原告に自己名義の在留カードを貸したとするEの供述の信用性が損なわれることはないというべきである。 エ以上によれば,Eの上記供述は十分に信用することができる。 ⑸ Dの供述について上記認定事実によれば,Dは,E名義の在留カードをEから借りたのはDであって,原告ではないといった趣旨の供述ないし証言をしていたことが認められる。しかしながら,Dが,Eから在留カードを借り ついて上記認定事実によれば,Dは,E名義の在留カードをEから借りたのはDであって,原告ではないといった趣旨の供述ないし証言をしていたことが認められる。しかしながら,Dが,Eから在留カードを借りた当日に係る事実関係として供述するところをみると,原告と共にEのマンションに到着して から,三人でコンビニエンスストアに行き,原告かEが店内で在留カードのコピーをし,Dが店外でそのコピーをEから受け取ったというものであり,その間に,原告とEの間で在留カードの受け渡しがされたか否かの詳細については認識していないことがうかがわれる。そうすると,仮に,Dの供述する上記日の事実関係を前提としたとしても,必ずしも,原告がEから在留カ ードを受け取った事実が否定されるわけではないものと考えられる。 そもそも,本件自認調書及びEの供述によれば,DがEから在留カードを借りたのは,DがCでアルバイトをするためであって,原告は,DのためにEに在留カードを貸してくれるよう依頼し,現にそれを借り受けたというのであるから,Dが原告に対する罪悪感等から,真実に反して原告が収受に関 与していない旨の原告に有利な供述をしようとしたとしても何ら不自然ではない。 そうすると,既に認定・説示したとおり信用することのできる本件自認調書及びEの上記供述と整合しないDの上記供述は,採用することができないというべきである。 ⑹ 小括- 32 - 以上のとおり,本件自認調書及びEの供述は信用することができるところ,これらの証拠によれば,本件認定事実を認定することができる。 したがって,本件認定に事実誤認の違法はなく,他に本件認定が違法であるというべき事情は見当たらない。 3 争点⑶(本件判定に手続上の違法がないか)について ⑴ 原告は,平成 ことができる。 したがって,本件認定に事実誤認の違法はなく,他に本件認定が違法であるというべき事情は見当たらない。 3 争点⑶(本件判定に手続上の違法がないか)について ⑴ 原告は,平成29年2月8日実施の口頭審理(4回目)において,吉田弁護士のした取調官の証人尋問の請求が却下されたことについて,本件自認調書の証拠能力等について審査するためにA入国警備官に対する証人尋問は不可欠であったなどと主張する。しかしながら,前記前提事実によれば,吉田弁護士は,上記口頭審理において,E及びDの取調官が同じ人物であれば その証人尋問を請求する旨述べたのであって,本件自認調書の作成者の証人尋問を請求したものではないから,原告の上記主張は,その前提となる事実を誤認するものであって,採用する余地がない。 ⑵ もっとも,前記前提事実によれば,原告は,平成29年2月3日実施の口頭審理(3回目)において任意同行報告書の作成者(A入国警備官。本件自 認調書の作成者でもある。)の証人尋問を請求し,これを却下されているから,原告の上記主張は,上記証人尋問の請求が却下されたことの違法をいうものと善解し得る。しかしながら,口頭審理において容疑者等の請求した証人尋問を実施するかどうかは,手続の主宰者たる特別審理官の合理的な裁量に委ねられていると解すべきであって,特別審理官が証人尋問の請求を却下した ことが違法となるのは,当該証人尋問を実施することが退去強制事由の認定等のために必要であることが明らかであるにもかかわらず,殊更に同請求を却下したなど,上記裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したと認められる場合に限られると解するのが相当である。そうであるところ,本件認定事実を認定することができるかを判断するに当たって,本件自認調書の作成経 裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したと認められる場合に限られると解するのが相当である。そうであるところ,本件認定事実を認定することができるかを判断するに当たって,本件自認調書の作成経 緯を明らかにすることは有益であるといえるが,原告本人の弁解内容を踏ま- 33 - えて,任意同行報告書ないし本件自認調書の信用性を判断することも十分に考えられるから,A入国警備官の証人尋問を実施することが必要であるとまではいえず,本件において,G特別審理官が,上記証人尋問を実施する必要があることが明らかであるにもかかわらず,殊更に原告の証人尋問請求を却下したというべき事情は見当たらない。そうすると,G特別審理官が原告の 上記証人尋問の請求を却下したことをもって,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものということはできない。 ⑶ 以上によれば,本件判定の違法をいう原告の主張は採用することができず,他に,本件判定が違法であるというべき事情は見当たらない。 4 争点⑷(本件退令発付処分の適法性)について 以上によれば,原告には本件退去強制事由該当性が認められ,本件認定及び本件判定は適法であるから,それに引き続いてされた本件裁決も適法である(なお,原告は,法務大臣が本件裁決において原告に在留特別許可を付与しなかった点については争っていない。)。 そして,本件退令発付処分は,上記裁決をした旨の通知を受けた大阪入管主 任審査官が,入管法49条6項に基づいてしたものであるところ,上記のとおり,本件裁決は適法であるから,これを前提としてされた本件退令発付処分も適法というべきである。 5 結論よって,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のと おり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判 主文 よって,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 理由 してされた本件退令発付処分も適法というべきである。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官松永栄治 裁判官森田亮 裁判官石川舞子
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