平成16(ワ)1069 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成19年4月13日 東京地方裁判所 棄却
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判決文本文34,967 文字)

平成19年4月13日判決言渡平成16年第1069号損害賠償請求事件( )ワ判決主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求 被告は、原告Aに対し、金1億8542万5008円及びこれに対する平成13年4月19日から支払済みに至るまで、年5分の割合による金員をを支払え。 被告は、原告B及び原告Cに対し、各金1100万円及びこれに対する平成13年4月19日から支払済みに至るまで、年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要 事案の要旨本件は、被告の設置・運営するD病院(以下「被告病院」という)におい。 て帝王切開で出生した女児に、脳性麻痺が生じたことにつき、被告病院担当医師らには、適切な呼吸管理を怠った過失及び小児科への転科時期が遅れた過失がある等として、女児及びその両親である原告らが、被告に対し、債務不履行に基づき、損害賠償の請求をした事案である。 争点 (1)適切な呼吸管理を行わなかった過失の有無(2)血液ガス分析を十分に行わなかった過失の有無(3)小児科へ転科させる義務を怠った過失の有無 (4)被告病院が大学病院であることにより、注意義務に差異が生ずるか否か(5)因果関係(6)損害額(判断の必要がなかった)。 当事者の主張当事者の主張は、別紙1「当事者の主張」のとおりであり、このうち上記争点に関する部分は、同第2ないし第7のとおりである。 第3当裁判所の判断 診療経過等証拠によれば、次の事実が認められる(認定の根拠となった証拠等を()内に示す。直前に示した証拠のページ番号を〔〕内に示す。特に断りのない限り、月日のみの記載は平成11年を指すものとする。以下同じ)。 (1)当事者ア原告A(以下「原 の根拠となった証拠等を()内に示す。直前に示した証拠のページ番号を〔〕内に示す。特に断りのない限り、月日のみの記載は平成11年を指すものとする。以下同じ)。 (1)当事者ア原告A(以下「原告A」という)は、平成11年7月26日に、被告。 病院において出生した児である。原告B(以下「原告B」という)は、。 原告Aの父であり、原告C(以下「原告C」という)は、原告Aの母で。 ある(甲A5〔1、甲B1。 〕)イ被告は、東京都文京区において、被告病院を設置・運営する学校法人である(争いのない事実。 )(2)分娩までの経緯ア原告Cは、平成10年12月26日、被告病院を受診し、妊娠と診断され、出産予定日は、平成11年8月中旬とされた(甲A5〔1。 〕)イ原告Cは、妊娠33週である同年6月頃に、妊娠中毒症と診断され、その後も被告病院に通院をしていたところ、妊娠中毒症が増悪したため、妊娠36週5日である同年7月19日、被告病院に入院した(乙A1〔3、129。なお、甲A5〔1、2〕には、入院日が同月21日との記載が〕あるが、診療録の記載に照らし、採用できない。 。) ウ7月21日、E医師(以下「E医師」という)は、原告B及び原告C。 に対し、妊娠中毒症のために妊娠の終了が必要であること及び分娩方法として、経膣分娩と帝王切開がある旨を説明し、同月26日にいずれかの方法で分娩することとし、その後の検査の結果、帝王切開を行うこととした(甲A5〔2、乙A1〔13ないし26、130。 〕〕)(3)原告Aの出生ア同月26日午後4時28分、帝王切開術が開始された。当初は腰椎麻酔が施行されたが、十分な効果が得られなかったため、全身麻酔が施行された(乙A1〔116、乙A14〔1。 〕〕)イ午後4時43分、体重2802g 時28分、帝王切開術が開始された。当初は腰椎麻酔が施行されたが、十分な効果が得られなかったため、全身麻酔が施行された(乙A1〔116、乙A14〔1。 〕〕)イ午後4時43分、体重2802gで、原告Aが出生した。アプガールスコアは、1分後8点であり、出生直後から啼泣は弱く、四肢にチアノーゼ及び冷感が見られた。また、多呼吸及び陥没呼吸が見られ、吸引を行ったところ、白色水様のものがひけた。頭部、顔色、頚部には問題となる所見はなく、胸部聴診においてもラ音はなく、肺のエア入りは良好であり、心雑音はなかった。腹部は軟であり、圧痛はなく、羊水混濁もなかった(乙A1〔28、116、乙A2〔9、272、289、乙A14〔1。 〕〕〕)ウ酸素を投与し、児背及び足底刺激を継続したところ、啼泣はやや盛んになったが、刺激がないと啼泣しない状態であり、四肢のチアノーゼ及び冷感は持続した。5分後のアプガールスコアは8点ないし9点とされた(乙A1〔2、乙A2〔289、乙A14〔2、E〔10ないし12。 〕〕〕〕)エ午後5時30分、原告Aはクベースに収容された。全身はやや蒼白気味であり、チアノーゼが見られた。また、自発呼吸はあるが、両肺の空気の入りはやや弱く、筋緊張も弱い状態であった。心電図モニター及びSAT(サチュレーション)モニター(酸素飽和度を経皮的に測定し表示するもの。以下、このモニターによる値及び血液ガス分析における酸素飽和度の値を「SAT」という)を装着したところ、午後5時50分のSATは88な、。 いし90%であり、FiO (吸入気酸素濃度)35%で酸素投与、加湿及び 加温を行った(乙A2〔9、289、290、乙A14〔2、E〔1〕〕 。 〕)オ午後6時30分、心拍数は131、呼吸数は73回/分であり、やや多 入気酸素濃度)35%で酸素投与、加湿及び 加温を行った(乙A2〔9、289、290、乙A14〔2、E〔1〕〕 。 〕)オ午後6時30分、心拍数は131、呼吸数は73回/分であり、やや多呼吸気味であると判断されたが、SATは、94ないし96%に上昇した。 無呼吸(アプニア)はなく、皮膚色の回復が見られた。午後6時50分に、胸部レントゲン検査を行った結果、E医師は、索状影が見られると判断した(乙A2〔290、乙A4、乙A14〔2、乙A16、E〔17、1〕〕 。 〕)カ午後7時、原告Bが、ナースステーションの奥のガラス越しに、原告Aの様子を確認したところ、陥没呼吸があることを確認し、その旨をE医師に告げた(甲A5〔3、B〔2、3。 〕〕)キ午後9時の時点では、37.9度の発熱があり、多呼吸が見られたものの、陥没呼吸や呻吟は見られなかった。午後11時30分の時点においても、多呼吸は続いていた(乙A2〔290、乙A14〔2。 〕〕)クE医師は、原告Aが産科入院中、同児を頻回に診察し、活気があると判断した(E〔21、22。 〕)(4)小児科転科までの状態ア同月26日から翌27日の深夜帯においては、バイタルサインに問題はなく、原告Aを観察した看護師は、活気があると評価した。モニター上、SATは90%台前半から後半で推移しており、時折80%台後半までダウンするが、5ないし10秒で回復した。無呼吸は見られなかったが、多呼吸が継続していた(乙A2〔290、乙A14〔2、E〔23、2〕〕 。 〕)イ同月27日午前10時、採血後にSATが85%まで低下し、しばらく回復が見られなかった。回復後、90ないし91%まで回復したが、100 %までは回復しなかった。呼吸数は、80ないし100回/分であり、多呼吸 前10時、採血後にSATが85%まで低下し、しばらく回復が見られなかった。回復後、90ないし91%まで回復したが、100 %までは回復しなかった。呼吸数は、80ないし100回/分であり、多呼吸が見られた。皮膚色には特に変化はなく、チアノーゼは見られなかった。FiO 30%として酸素投与が継続された(乙A2〔291、乙A1 〕4〔3。 〕)ウ午前10時30分、SATは90ないし91%であり、SATの低下が頻回に見られ、足背刺激をしても回復はしなかった。そのため、E医師は、胸腹部レントゲン写真を確認した上で、方針を決定することとした(乙A2〔291、乙A14〔3、E〔24。 〕〕〕)エ午後零時30分、胸腹部レントゲン検査が行われ、E医師がその結果を確認したところ、両肺野がかなり白く、粒ないし線状陰影の増強があると判断した。E医師は、小児科のF医師(以下「F医師」という)と相談。 の上、F医師が小児科に転科することを決定した(乙A2〔11ないし13、291、乙A5の1、乙A14〔3、乙A17、E〔5、6、3〕〕5、F〔11、12。 〕〕)(5)小児科転科後の状態ア午後2時30分、原告Aは、産科から小児科に転科した。F医師が診察したところ、大泉門は平坦で、皮膚に黄疸はなく、チアノーゼも見られなかった。また、肺音を聴取したところ、両肺の空気の入りは乏しく、喘鳴、クラックル音はなかった。心音は整で心雑音はなかった。F医師は、原告Aの病状につき、羊水吸引症候群若しくは新生児一過性多呼吸症と判断した(乙A2〔12、13、291、乙A14〔3、乙A15〔1、F〕〕〕〔1。 〕)イ小児科転科後の呼吸数は90ないし110回/分であり多呼吸が認められ、シーソー呼吸も見られたが、無呼吸は見られなかった。その後も 291、乙A14〔3、乙A15〔1、F〕〕〕〔1。 〕)イ小児科転科後の呼吸数は90ないし110回/分であり多呼吸が認められ、シーソー呼吸も見られたが、無呼吸は見られなかった。その後も、SATは80%台後半から90%台前半で推移しており、心窩部の陥没呼吸が著名であり、多呼吸が継続していた。また、口唇にはチアノーゼが見られ、 全身色も軽度のチアノーゼを呈していた(乙A2〔291、292。 〕)午後2時50分に静脈血の血液ガス分析を行ったところ、PH7.360、PCO 42.1mmHg、PO 29.2mmHg、SAT74.8%であった(なお、被 告病院においては、血液ガス分析における酸素飽和度の値も、前記サチュレーションモニターの値と同様SATと表示しているので、以下もそのとおり表示する。胸部レントゲン検査を行ったところ、著しい変化はなかっ。)た(乙A2〔104、乙A5の2、乙A15〔1。その後の血液ガス〕〕)分析の結果は、別紙2「血液ガス分析結果一覧表」のとおりである。 ウ同日夕方頃、呼吸数は100ないし130回/分と多呼吸が見られ、陥没呼吸も持続していた。肺の空気の入りは弱めであり、FiO が40%の下 ではSATは85ないし95%であったが、FiO が35%以下になると、SAT は80%台前半に下降した。追加的に経皮的酸素飽和度モニター(SpO モ ニター)を右上下肢に装着したところ、上下肢のSpO 値の差はなかった (乙A2〔293。 〕)エ午後8時30分、心エコー検査を行ったところ、動脈管開存レベルで短絡しており、卵円孔開存レベルでの短絡は左→右のみであった。頭部エコー検査では、有意な所見は見られなかった(乙A2〔226、乙A15〕〔2。 〕)午後10時、PCO をモニタリン 存レベルで短絡しており、卵円孔開存レベルでの短絡は左→右のみであった。頭部エコー検査では、有意な所見は見られなかった(乙A2〔226、乙A15〕〔2。 〕)午後10時、PCO をモニタリングするために経皮モニターを装着したと 。 ころ、PO は65ないし85mmHg、PCO は35ないし50mmHgで推移した 同日の深夜帯においても、多呼吸及び陥没呼吸は継続した(乙A2〔29 。 〕)オ同日、F医師は、原告Bに対し、原告Aの状態について、現在の症状は多呼吸、陥没呼吸、チアノーゼ等であり、病名としては、羊水吸引症候群又は新生児一過性多呼吸症が考えられると説明した(乙A2〔277、292、293、294。 〕) (6)7月28日の状況ア同月27日から翌28日の深夜帯においても、多呼吸及び季肋部の陥没呼吸が見られた。当初装着したSATモニターにおいて、SATは80%台後半から90%台後半を維持していたが、追加した上下肢のモニターとは、10前後の値の違いがあった(乙A2〔294、乙A15〔2。 〕〕)同日午前8時30分、血液ガス分析を行った(乙A2〔103、乙A〕15〔2。 〕)イ28日の午前中においても、呼吸数は100ないし140回/分程度であり、多呼吸は継続した。クベース内の酸素濃度が低下すると、SATが低下する状態であった。転科から同日午前5時までの尿量は125mlであり、排便はなく、血圧は60前後であった。皮膚色はやや黄疸があり、肺の空気の入りは低下していたが、心雑音はなかった。腹部は軟で平坦であった。 胸部レントゲン検査の所見について、F医師は、右肺野の含気は上昇するも、左肺野の含気は著しく不良であると判断した(乙A2〔14、294、乙A15〔2。 〕〕)ウ28日の診療録には、原告 た。 胸部レントゲン検査の所見について、F医師は、右肺野の含気は上昇するも、左肺野の含気は著しく不良であると判断した(乙A2〔14、294、乙A15〔2。 〕〕)ウ28日の診療録には、原告Aの診断に関するF医師による以下のような記載がある(乙A2〔15。 〕)「診断として、①羊水吸引症候群②新生児一過性多呼吸③肺炎①→出生時スリーピングベイビーであり、羊水を誤えんした可能性はある。しかし、片側性であり典型的とはいいがたい。 ②→レントゲン所見より否定的③→レントゲン所見からはもっとも疑わしい。しかしCRP(-。出)生直後より呼吸困難出現している点が合わない」。 エ午前11時40分、F医師は、血液ガス分析結果の悪化は見られていなかったものの、多呼吸及び陥没呼吸による原告Aの疲労を考慮して、気管挿管の上での人工呼吸管理を開始した(乙A2〔15、321ないし32 4、乙A15〔3。 〕〕)気管挿管後、数回にわたりSAT値の低下が見られ、チアノーゼが出現したが、ジャクソンリースによる加圧を行うと、回復した(乙A2〔321ないし324。 〕)オ午前中及び午後2時に、レントゲン検査が行われ、午後5時30分には血液ガス分析が行われた(乙A2〔102、295、322、323、〕乙A6の1・2。 )(7)7月29日の状況ア同月29日においても、シーソー呼吸は、やや軽減したものの、いまだ継続していた。また、医師が聴診をしたところ、両側ともに呼吸音は弱かったが、クラックル音や喘鳴はないとされた(乙A2〔17、18。 〕)、午前8時に、看護師が吸引を施行したところ、SATが70%まで低下し口唇にチアノーゼが見られたが、15秒程度で回復した。また、同日午後零時50分には、体位交換を施行したところ、SATが70ないし6 午前8時に、看護師が吸引を施行したところ、SATが70%まで低下し口唇にチアノーゼが見られたが、15秒程度で回復した。また、同日午後零時50分には、体位交換を施行したところ、SATが70ないし65%へ低下した。午後10時30分にも、吸引を契機に、SATの低下が見られた(乙A2〔325、328、331。 〕)イ午前零時15分、午前7時55分、午後2時20分、午後6時10分、午後7時13分、午後8時45分、午後9時54分に血液ガス分析が行われた(乙A2〔99ないし101、107ないし110、324ないし331、乙A15〔3。 〕〕)ウまた、午後1時15分及び夕方に胸部レントゲン検査が実施された。同日夕方に撮影されたレントゲン写真を検討したG医師は「見方によって、はすりガラス状?はっきりしない」との所見を診療録上に記した(乙A2〔18、19、328、乙A7の1・2、乙A15〔3。 〕〕)また、同医師は、原告Aの状態の原因について「呼吸性アシドーシ、ス?あるか。経皮モニターPO 54、PCO 58~60であり、人工呼吸器 設定変更しているが…。人工呼吸器設定はSIMVであり、鎮静中なのでonraspiratorであろう。X‐P、Labodataからも肺炎が呼吸状態悪化とは考えにくいが… 」と記載した(乙A2〔19。 。 〕)エ午後7時30分、心室性期外収縮が出現し、約30分間持続し、その後も、血圧測定等の処置の際に、一過性に心室性期外収縮が出現した(乙A2〔20、330、乙A15〔3。 〕〕)、. オF医師は、カルテ上に「XP所見を肺炎と考えると、原因として、Cトラコマティス、CMV(サイトメガロウイルス)が挙げられる。しかし、C.トラコマティスによる肺炎は産道感染が大半であり(患児はC/S F医師は、カルテ上に「XP所見を肺炎と考えると、原因として、Cトラコマティス、CMV(サイトメガロウイルス)が挙げられる。しかし、C.トラコマティスによる肺炎は産道感染が大半であり(患児はC/S、(帝王切開)にて出生)潜伏期なども考えると、発症時期が早すぎる。CMVの胎内感染としても、発症時期が早いと思われる」と記載した(乙。 A2〔21。 〕)カ同日行われた心エコー検査においては、右心負荷所見+、心室中隔は左心側に突出している、左心負荷所見-との所見であり、F医師は、この所見から新生児遷延性肺高血圧症(以下「PPHN」という)を疑い、翌。 日の同月30日「日令1の心エコー上R→Lシャントはみられていなか、ったが、RV(右心)圧負荷の所見はあり、PPHと考えてもよいのか」とカルテ上に記載した(乙A2〔22。 。 〕)(8)7月30日以降の状況ア同月30日も、原告Aは、イソゾールにて鎮静がされており、自発呼吸は見られず、高圧での人工換気が必要な状況であった(乙A2〔22、332ないし339。 〕)また、体位変換や吸引等を契機として、SATの低下が度々見られ、その都度バギングが施行された(乙A2〔332ないし339。 〕)同日における血液ガス分析は、午前1時35分、午前2時50分、午前4時30分、午前8時40分、午前11時40分、午後2時20分、午後4時 55分、午後7時45分に実施された(乙A2〔111ないし116、332、334ないし337。 〕)イ7月31日も、高圧換気が継続され、また、尿量の低下が見られた(乙A2〔339ないし342、乙A15〔4。 〕〕)同日のレントゲン検査の結果、肺野の含気が上昇し、エアリークが見られないとされた(乙A2〔24。 〕)同日、心エコー検査を施行したところ (乙A2〔339ないし342、乙A15〔4。 〕〕)同日のレントゲン検査の結果、肺野の含気が上昇し、エアリークが見られないとされた(乙A2〔24。 〕)同日、心エコー検査を施行したところ、心室中隔はフラットとなっており、右心房圧と左心房圧がほぼ同じであり、前回に見られた左心室へ突出している所見はなかった。F医師は、右心室への負荷加重所見は減少し、肺動脈圧が低下しているとして、PPHNであっても改善傾向にあるものと判断した(乙A2〔24、乙A15〔4、F〔17。 〕〕〕)ウ同年8月1日、尿量の低下が見られたが、レントゲン検査の結果、前日よりも含気が上昇し、エアリークも見られなかった(乙A2〔26、乙A1〕5〔4。 〕)エ同月2日、尿量の低下及び血圧の低下が認められ、心エコー検査の結果、右室圧の上昇及び左心室収縮機能の低下が認められたため、F医師はPPHNが悪化していると考え、血管拡張剤であるリポPGEを投与した(乙A 2〔26ないし31、343ないし345、乙A15〔4、5、F〔1〕〕 。 〕)オ同月4日からは血管拡張剤であるPGIが投与され、以降も循環動態の 変動が認められたが、呼吸状態の改善とともに安定した。同月12日からは、換気条件を徐々に緩和し、同月14日には、抜管がされ、生後44日目である9月8日、原告Aは、体重3300gで退院した(乙A2〔31ないし74、295ないし311、346ないし388、乙A15〔5。 〕〕)カ退院前の8月27日に頭部CT検査が施行され、9月1日に脳波検査が実施されたが、いずれにおいても異常所見は見られなかった(乙A2〔4、7 7、307、乙A15〔5。 〕〕)(9)退院後の状況ア平成12年3月3日、原告Aは、被告病院フォローアップ外来を受 されたが、いずれにおいても異常所見は見られなかった(乙A2〔4、7 7、307、乙A15〔5。 〕〕)(9)退院後の状況ア平成12年3月3日、原告Aは、被告病院フォローアップ外来を受診し、頭部CT検査を受けたが、正常範囲内の所見であるとされた(乙A3〔13、58、甲A5〔5。 〕〕)同年5月20日、原告Aは、被告病院神経外来を受診した。診察に当たったH医師は、脳性麻痺の疑いがあると判断したが、その旨を原告Bに告げず、CTは問題となる所見がないので分娩時のことが関係したとは考えにくく、また、明らかな病因は不明である旨を話したにとどまった。その後、原告Cの出生地である台湾の医師や住所地近くの小児科医から原告Aは脳性麻痺ではないかと指摘されたことから、原告B及び原告Cがこの点を質したところ、同年9月に被告病院を受診した際に、I医師が脳性麻痺の可能性がある旨を告げ、その旨は既に説明してあると述べた(乙A3〔23、39、40、〕甲A5〔5、B〔5、6。 〕〕)なお、被告病院における原告Aの外来診療録冒頭には、現在に至っても傷病名の欄に何らの記載もなく、空欄のままとなっている(乙A3〔1。 〕)イ原告Aは、平成13年3月、Jリハビリテーションセンターを受診し、低酸素脳症を原因とする脳性麻痺と診断され、同年4月、両上肢機能障害及び移動機能障害により、身体障害者等級1級との認定を受けた(甲A3、甲A4、乙A3〔44、B〔6、7。 〕〕) 医学的知見(1)新生児一過性多呼吸症ア新生児一過性多呼吸症とは、出生直後より多呼吸(60回/分以上)を主訴とし、チアノーゼや陥没呼吸はごく軽度で、数日で軽快する疾患と定義され、新生児の呼吸障害として高頻度に認められる疾患である。胎児の肺胞内に存在し、出生後、自発呼吸の開 多呼吸(60回/分以上)を主訴とし、チアノーゼや陥没呼吸はごく軽度で、数日で軽快する疾患と定義され、新生児の呼吸障害として高頻度に認められる疾患である。胎児の肺胞内に存在し、出生後、自発呼吸の開始とともに吸収される肺水の吸収 が、何らかの理由によって遅延するために生じると考えられている(甲B8〔2。 〕)肺水の吸収には、産道での胸郭の圧迫と生後の自発呼吸が必要であるため、帝王切開時の母体全身麻酔下でスリーピングベイビーとなった児や、何らかの原因で新生児仮死となり自発呼吸の出現しない児等では、本症の発症率が上昇する(甲B7〔60、61、K〔7、8。 〕〕)イ新生児一過性多呼吸症においては、胸部レントゲンでは、肺野全体の水分貯留のため全体の透過性が低下するが、air-bronchogram(気管支透瞭像)は呼吸窮迫症候群のように目立たないとされる(甲B7〔61。 〕)ウ新生児一過性多呼吸症の治療は、水分の吸収が十分になるまで酸素を投与するか、陽圧換気による積極的な水分の排除を行うとされる。また、血漿蛋白の補充と利尿剤の投与も有効であるとされる(甲B7〔61。 〕)(2)新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)アPPHNとは、出生後も高い肺血管抵抗が持続し、正常な胎外循環への移行が阻害された病態をいう(甲B2〔209、甲B3〔503。 〕〕)イPPHNの症状としては、チアノーゼや呼吸障害が生じるとされ、重症例では、啼泣、体動、処置などの些細な刺激でチアノーゼが増強し状態が悪化するフリップフロップ現象が生じるとされる(甲B3〔503、504、甲B4〔67、甲B5〔147。 〕〕〕)上下肢のSpO の差、心エコーにおける高度の肺高血圧の所見、心電図検 査における右心負荷所見及び心筋障害の所見等によって、診断 3〔503、504、甲B4〔67、甲B5〔147。 〕〕〕)上下肢のSpO の差、心エコーにおける高度の肺高血圧の所見、心電図検 査における右心負荷所見及び心筋障害の所見等によって、診断がされる(甲B2〔210、211、甲B3〔504、甲B4〔67、甲B5〕〕〕〔147。 〕)PPHNの治療としては、人工換気療法及び血管拡張剤の投与が中心となる(甲B2〔211ないし214、甲B3〔504ないし506、甲〕〕B4〔67、68、甲B5〔148ないし150。 〕〕) (3)人工換気の方法ア新生児の呼吸管理が問題になる場合、目標とする血液ガス値は、PaO 0ないし70mmHg、PCO 40ないし60mmHgとされる。この範囲内で、吸 入酸素濃度と、最大吸気圧をできるだけ低く保ち、ファイティング(患者の呼吸と人工呼吸器の補助や強制換気が合わないこと)を避けることが必要であり、そのために必要であれば、鎮静・鎮痛剤を積極的に使用するとされる(乙B1〔722。 〕)イnCPAP及びnDPAPについてnCPAPとは、呼吸窮迫症候群の治療として、呼気時の肺胞の虚脱を防ぐために開発された持続陽圧呼吸補助装置である。nDPAPは、nCPAPに存在した気道内圧が過度に高くなり気胸を発生する危険性がある点、呼吸仕事量が増えること、鼻の圧迫が必要であること等の欠点を克服した持続陽圧呼吸補助装置である(甲B7〔99。なお、甲B7は、平〕成14年3月1日発行。 )呼吸管理の目的は、酸素化と高炭酸ガス血症の改善である。酸素化は、投与酸素濃度を上昇させること及び肺容量を増加させることで改善される。 そのため、人工換気を実施していないときには、吸入酸素濃度を上げるか、nCPAP又はnDPAPで気道に陽圧をかけることが有 化は、投与酸素濃度を上昇させること及び肺容量を増加させることで改善される。 そのため、人工換気を実施していないときには、吸入酸素濃度を上げるか、nCPAP又はnDPAPで気道に陽圧をかけることが有効であるとされる(甲B7〔87。また、40%の吸入酸素が必要な場合や、未熟児の〕)無呼吸発作には、まずnCPAPを考えるとされている(乙B1〔722。なお、乙B1は、平成13年発行。 〕)ウ間欠的陽圧換気療法について肺損傷は、気道にかかる圧そのものよりも肺胞の過伸展によって生じやすいと考えられるところ、未熟な新生児ほど同じ吸気圧でも肺胞は過伸展されやすいために、体重別最大吸気圧(以下「PIP」という)につい。 ては、新生児期は出生体重が小さいほど上限を低く設定するものとされ、 出生体重1500g以上の児については、25cmHO程度をPIPの上限と するとされる(乙B1〔723。 〕)他方、呼気終末圧(以下「PEEP」という)については、これによ。 る肺損傷は少ないため、酸素化の改善度と循環動態への悪影響を勘案しながら、4ないし10cmHOに設定するとされる(乙B1〔723。 〕)(4)血液ガス分析結果等PaO とは動脈血酸素分圧をいう。新生児においては、60ないし90mmHg が正常値であるとされる。静脈血における酸素分圧は、動脈血におけるよりも20mmHg程度低いものとされる。SpO (SAT)とは経皮的動脈血酸素飽和 度をいう。SATが80台後半であれば、PaO が50mmHg以上であると推定さ れる(F〔3、5、6、23、争いのない事実。 〕)PCO とは、炭酸ガス分圧をいう。新生児におけるPCO の正常値は、30な いし50mmHg程度とされる。静脈血におけるPCO は、動脈血におけるよ 3、5、6、23、争いのない事実。 〕)PCO とは、炭酸ガス分圧をいう。新生児におけるPCO の正常値は、30な いし50mmHg程度とされる。静脈血におけるPCO は、動脈血におけるよりも 5mmHg程度高いものとされる(F〔3、6、争いのない事実。 〕)(5)脳性麻痺ア脳性麻痺とは、受胎から生後4週間以内に発生した中枢性の病変による非進行性の運動及び姿勢の異常を呈するものをいう。脳性麻痺の発生率は、現在出生人口1000人に約2人前後であるが、出生体重により脳性麻痺の発生率は異なり、出生体重が2500g以上の児においては、1000人に約0.7人であるとされる(甲B9〔731、734。 〕)イ脳性麻痺の原因としては、分娩時の低酸素・虚血、脳室内出血などを中心とした未熟性に起因するもの、代謝異常を含む先天異常、子宮内胎児発育遅延等が報告されているが、原因不明の症例も存在し、その割合は全症例の8%と報告する文献もある(甲B10〔67、甲B11〔113〕4、甲B12〔1215。 〕〕) 争点(1)(適切な呼吸管理を行わなかった過失の有無)について (1)原告らは、被告病院担当医師らは、7月27日の早朝、若しくは遅くとも同日午前10時30分過ぎに、原告Aに対して、積極的な呼吸管理を開始すべきであったと主張する。 まず、行うべき呼吸管理の内容については、原告らは、nDPAPを用いるべきであり、それが不可能であればCPAPの方法を用いるべきと主張するが、証人K医師(以下「K医師」という)は、同方法は平成11年当時。 には一般的ではなかったと証言しており(K〔25、また、本件で提出さ〕)れた文献のうちnDPAPに言及する文献はいずれも平成11年以降に発行されたものであることからすると(甲B7、乙B1、n 。 には一般的ではなかったと証言しており(K〔25、また、本件で提出さ〕)れた文献のうちnDPAPに言及する文献はいずれも平成11年以降に発行されたものであることからすると(甲B7、乙B1、nDPAPが平成1)1年当時において一般的に普及した方法であるとは認められない上、平成11年当時においては、被告病院においてnDPAPの装置は導入されていなかったのであるから(F〔5、呼吸管理の方法として、同方法を行うべき〕)義務は認められない。 そこで、行うべき呼吸管理の方法としては、CPAP若しくは原告らの明示的な主張はないものの気管挿管による方法が検討されるべきであり、以下、これらの方法を行うべき義務の有無について検討する。 (2)ア次に、上記1(3)及び(4)のとおり、原告Aには出生直後から多呼吸が継続しており、同月27日午前10時における呼吸数は、80ないし100回/分であった。なお、陥没呼吸については、上記1(3)キのとおり、同月26日午後9時の段階においては見られておらず、その後も小児科に転科するまで、陥没呼吸ありとの記載は看護記録上存在しないが、上記1(5)イのとおり、小児科転科後において、著名な陥没呼吸が認められていることからすると、同月26日午後9時の段階において陥没呼吸が見られなかったのは、一時的なものと考えるべきであり、陥没呼吸は、小児科転科に至るまで、継続していたものと認められる。また、SATの値については、同月26日から27日の転科以前にかけては、90%台で推移したも のの、時に80%台に低下することもあり、同月27日午前10時30分の時点では、SATが低下し、その回復が遅く、しかも完全ではない状態が見られた。これらのことからすると、この間の原告Aの呼吸状態は安定しない状態であったと評価できる。また、同 27日午前10時30分の時点では、SATが低下し、その回復が遅く、しかも完全ではない状態が見られた。これらのことからすると、この間の原告Aの呼吸状態は安定しない状態であったと評価できる。また、同月26日午後6時50分のレントゲン検査においては、索状影があると判断され、含気が悪い所見であった(K〔12、13)ところ、翌27日午後零時30分のレントゲン検〕査においては、撮影条件の差を考慮すると、前回の検査と比較して所見が増悪したとまでは断定できないものの、被告病院のE医師も粒ないし線状陰影の増強があると判断しているほか、肺の膨らみは悪い所見であると評価でき(K〔13、レントゲンの所見からしても、原告Aの呼吸状態の〕)改善は見られなかった。 これらの点からすると、出生直後からの多呼吸ないし陥没呼吸が遷延しており、同月27日にかけて呼吸状態は徐々に悪化してきたと評価できる。 イこの時点で原告Aの経過観察に当たっていたE医師は、同月27日午前10時ないし10時30分の原告Aの状態について、クベース内で酸素を投与している状態の下、多呼吸で代償することによりSATが90%を維持している状態であり、臨床所見においても活気がある状態であったことから、この時点においては人工換気の必要はなく、また、強制換気のために陽圧をかけること、呼吸をコントロールすること及び気管挿管をすることのデメリットを考慮して人工換気を行わなかった旨の証言をする(E〔33、34。 〕)これに対し、K医師は、生後24時間が経過した児の呼吸数が100回/分を超えている一方で、低酸素の状態にない場合には、多呼吸の原因を肺の虚脱と考え、圧をかけて肺を膨らませるべく積極的な呼吸管理を行う〕〕)。 べきであった旨の陳述及び証言をする(甲B8〔5、K〔23、24しかしながら、K 素の状態にない場合には、多呼吸の原因を肺の虚脱と考え、圧をかけて肺を膨らませるべく積極的な呼吸管理を行う〕〕)。 べきであった旨の陳述及び証言をする(甲B8〔5、K〔23、24しかしながら、K医師の上記陳述等を前提としても、積極的な呼吸管理 を行うべき時期は同月27日の夕方以降となり、原告らの上記主張に沿うものではない。すなわち、K医師は、同月26日午後6時又は同月27日午前中の小児科への転科前の原告Aの状態を前提としたその時点の判断としては、治療を過剰気味にスタートし、呼吸管理を始めるという考え方と、そのまま経過観察として呼吸管理は後追いの形で始める考え方とがあり、同医師の所属する施設ならば前者を選択するものの、この点については、担当する医療チームによって判断が分かれる旨の証言をしており、呼吸数、酸素化の程度及び児の状態について慎重な観察がされるのであれば、そのまま生後24時間程度まで経過観察とする判断にも問題はないとしている(K〔18、19、41、42。 〕)また、E医師は、原告Aの呼吸障害の原因について、一過性の多呼吸であると判断したところ(E〔3、上記1(4)アないしウのとおり、7月〕)27日の早朝、若しくは遅くとも同日午前10時30分過ぎの時点においては、SATの値は、時に80%台に低下することがあったものの、概ね90%台を維持しており、酸素化の程度にはほぼ問題はなく、E医師自身が、原告Aには活気があると判断したものである。このような状況の下では、一過性の多呼吸に過ぎないとのE医師の判断が誤りであったとはいい難く、上記2(1)アのとおり、一過性の多呼吸であれば数日で改善するものであるから、そのような判断の下では、経過観察としたE医師の判断も合理性を有するものである。 そして、上記1(3)エ及びクのとおり、被 上記2(1)アのとおり、一過性の多呼吸であれば数日で改善するものであるから、そのような判断の下では、経過観察としたE医師の判断も合理性を有するものである。 そして、上記1(3)エ及びクのとおり、被告病院においては、出生直後から原告Aをクベースに収容し、酸素飽和度モニター及び心電図モニターを装着し経過を把握していた上、E医師が頻回に原告Aの状態を観察し活気があると判断する等していたのであるから、慎重な経過観察がされていたと評価できる。 その上、上記2(4)のとおり、SATが80%台後半以上であれば、PaO も 50mmHg以上であり、本件では、おおむね80%台後半以上のSATを維持していたのであるから、酸素化の程度には大きな問題はなかったものである。 ウそうすると、本件の経過を事後的に振り返って見れば、より早期に呼吸管理を始めることがよりよい呼吸管理の方法であった可能性は否定できず、仮に原告AがK医師の所属する施設で診療を受けていたならば、そのような方法が選択されていたものと認められるものの、本件当時の判断としては、7月27日の早朝若しくは遅くとも同日午前10時30分過ぎに、原告Aに対して、積極的な呼吸管理を開始すべき義務があったとまでは認められず、原告らの主張は採用できない。 もっとも、上記イのように、K医師は、同日夜には積極的な呼吸管理を行うべき義務があった旨の証言をするところ、この証言によれば、同月27日夜には積極的な呼吸管理をするべき義務があったとみる余地があり、原告らは、このような主張を黙示的にしているものとも理解できるが、仮にこの点についての義務違反が認められたとしても、後記7のとおり、当該義務違反と結果との因果関係が認められないので、この点についての判断は留保することとする。 (3)さらに、原告らは、被告病院 仮にこの点についての義務違反が認められたとしても、後記7のとおり、当該義務違反と結果との因果関係が認められないので、この点についての判断は留保することとする。 (3)さらに、原告らは、被告病院においては、気管挿管による人工換気開始後も、2つないし3つの換気条件を同時に変更したとして、正常な条件変更が行われていなかったと主張する。 しかし、被告病院においては、多くの場合、換気条件を1つずつ変更していたことは看護記録上明らかであり(乙A2〔321ないし378、原告〕)らの主張は、前提を欠くものである。 被告病院においては、呼吸条件について、血液ガス分析の結果を見た上、主に酸素分圧の数値を踏まえて、FiO 及び気道内圧(MAP)を調整し、主 に炭酸ガス分圧の値を踏まえて、換気回数、呼気時間、PIP-PEEPを 調整しており(乙A15〔8、F〔20、21、このような換気条件の〕〕)変更が不適切であったとすべき事情は見当たらない。 また、原告らは、最大吸気圧を22cmHOとしたことを指摘し、これが危 険な数値であるとするが、上記2(3)ウの知見に照らすと、この設定が不適切であったということはできない。 したがって、原告らのこれらの主張も理由がない。 (4)なお、出生直後からの原告Aの病状の原因につき、原告らは、多呼吸に続発した二次性サーファクタント欠乏により肺胞の拡張が不十分になり、十分なガス交換ができなくなったことに加え、出生後の新生児に認められる生理的な肺高血圧が加わって、PPHNを来したと主張するのに対し、被告は、羊水吸引症候群にPPHNが続発したと主張し、両者の主張は相違する。 しかしながら、原因の如何によって、呼吸管理の必要性及びその内容に差異が生じるとする事情は見当たらないことからすれば、原告Aの病状の原因をど 候群にPPHNが続発したと主張し、両者の主張は相違する。 しかしながら、原因の如何によって、呼吸管理の必要性及びその内容に差異が生じるとする事情は見当たらないことからすれば、原告Aの病状の原因をどのように考えたとしても、上記の理は妥当するものであり、原告Aの病状の原因についての見解の相違は、上記結論に影響を及ぼすものではない。 争点(2)(血液ガス分析を十分に行わなかった過失の有無)について(1)原告らは、原告Aの呼吸状態の判断のためには、単に経皮的酸素飽和度を見るだけでは足りず、血液ガス分析を行うことが不可欠であり、小児科へ転科する以前の段階においても、2ないし3時間おきに血液ガス分析を行う義務があったと主張する。K医師は、多呼吸が問題になる児に対しては、酸素の状態だけでなく、炭酸ガスの貯留が問題となり、その点を判断するために血液ガス分析が必要である旨の原告らの主張に沿う陳述及び証言をする(甲B6〔3、K〔22。 〕〕)これに対し、E医師は、小児科転科以前に血液ガス分析を行わなかった理由について、スリーピングベイビーで一時的に生じる呼吸障害があったと判断したことを前提に、SATが80%台後半を維持していたことから、その後 の悪化は想定できなかったため、血液ガス分析の侵襲性を考慮して、同検査を行わなかったと証言する(E〔31。 〕)(2)上記1(3)及び(4)のとおり、小児科転科以前においては、SATの値は、時に80%台に低下することがあったものの、概ね90%台を維持しており、酸素化の程度にはほぼ問題はなく、E医師自身が、原告Aには活気があると判断したものである。このような状況の下では、一般的には数日間で改善する一過性の多呼吸に過ぎないとのE医師の判断が誤りであったとはいい難く、そのような判断の下では、血液ガス分析 告Aには活気があると判断したものである。このような状況の下では、一般的には数日間で改善する一過性の多呼吸に過ぎないとのE医師の判断が誤りであったとはいい難く、そのような判断の下では、血液ガス分析の侵襲性を考慮すると、血液ガス分析の実施が必ずしも必要であったとはいえず、小児科転科以前において血液ガス分析を実施すべき義務があるとは認められない。 なお付言するに、上記1(5)イのとおり、小児科への転科後においては、直ちに静脈血による血液ガス分析を行われているところ、その結果においても、PCO の貯留を示す有意な所見はなく、その結果から遡って考えると、小 児科転科以前においてもPCO の貯留を示すデータは見られなかったと推認さ れ、仮に、小児科転科以前において血液ガス分析を行っていたとしても、その後の治療方針に変更があったとは考え難いから、血液ガス分析の不実施と結果との因果関係も否定されるというべきである。 (3)さらに、小児科転科後においては、上記1(5)イのとおり、午後2時50分に血液ガス分析を行ったほか、上記1(5)エのとおり、SATモニターのみならず、PO モニター及びPCO モニターを装着して、原告Aの呼吸状態につい て経時的に観察していたのであるから、被告病院においては、原告Aの呼吸状態に応じた経過観察措置がとられていたと評価することができ、血液ガス分析の侵襲性も考慮すると、さらに頻繁に血液ガス分析を実施すべき義務があるとは認められない。 したがって、原告らの主張には理由がない。 争点(3)(小児科へ転科させる義務を怠った過失の有無)について 原告らは、産科担当医師は、患児に対してクベース収容及び酸素投与の治療を行っても呼吸状態が改善しないときには、直ちに新生児科ないし小児科に転科させ、人工呼吸管理等の必要な治 失の有無)について 原告らは、産科担当医師は、患児に対してクベース収容及び酸素投与の治療を行っても呼吸状態が改善しないときには、直ちに新生児科ないし小児科に転科させ、人工呼吸管理等の必要な治療を行う義務があるとして、本件でも、同月27日早朝の段階若しくは同日午前10時30分の段階で原告Aを小児科に転科させ、呼吸管理を根本的に行う態勢をとるべき義務があったと主張する。 しかしながら、原告らの主張によれば、小児科への転科は、呼吸管理を行うことを目的とするものであるところ、上記3のとおり、原告らが明示的に指摘する時点において、積極的な呼吸管理を行うべき義務は認められないのであるから、呼吸管理の必要性を前提とする原告らの転科の主張はその前提を欠くものといわざるを得ない。 したがって、原告らの主張には理由がない。 なお、上記3(2)ウのとおり、7月27日夜に呼吸管理を行うべき義務については、認められる余地は否定できないものの、後記7のとおり、この時点における義務と結果との因果関係は否定されるものであり、呼吸管理の必要性を前提とする転科義務との関係においても、同様に因果関係が否定されることとなる。 争点(4)(被告病院が大学病院であることにより、注意義務に差異が生ずるか否か)について原告らは、被告病院における本件医療行為は、大学病院として患者から期待されている最高水準の医療から見た場合、注意義務違反を免れないものであると主張する。 しかし、本件に現れた全証拠及び医学的知見によっても、本件の事案を前提とする限り、前記3ないし5の判断に当たって、被告病院が大学病院であるか否かによって、所属医師の注意義務の内容や程度に差異が生ずるとは認め難く、そうである以上、被告病院が大学病院であることを考慮しても、原告らが指摘する注意義務の有無の判断に差異 病院が大学病院であるか否かによって、所属医師の注意義務の内容や程度に差異が生ずるとは認め難く、そうである以上、被告病院が大学病院であることを考慮しても、原告らが指摘する注意義務の有無の判断に差異が生ずるとはいえない。 また、原告らの主張は、大学病院である以上、常に我が国での最高水準の医療を提供すべきであり、現にK医師の所属する施設における医療行為の内容が、原告Aに対する診療行為としてより適切であると想定されることから、被告病院でそれと同様の診療行為が行われなかったこと自体がその過失を構成するとの趣旨とも理解できるが、それは大学病院に対する過大な要求といわざるを得ない。すなわち、専門科目ごとに大学病院を超える水準の医療行為を行う施設が存在することもあり得るところであり、大学病院の医療行為がその水準に達しないとしても、それが直ちに過失であるとは評価できない。したがって、原告らの主張の趣旨がこのようなものであるとすると、それ自体失当といわざるを得ない。 よって、いずれにしても、原告らのこの点の主張は採用できない。 争点(5)(因果関係)について原告らは、原告Aには出生直後から呼吸障害があり、その後も呼吸障害がある状況が長期間継続していたという経過からすれば、原告Aに生じた脳性麻痺は、継続した呼吸障害による低酸素脳症を原因とするものと見ることが合理的であると主張する。K医師は、決定的な低酸素状態ではなくとも、万全ではない状態が長く積み重なることによって神経発達障害等が起こることは経験上あり得るとした上、本件でもそのような状態が存在した以上、そのような状態が脳性麻痺の原因となったと考えるのが合理的である旨の陳述及び証言をする(甲B8〔6、K〔28ないし30、42ないし49。 〕〕)上記陳述等の趣旨は、本件においては、脳性麻痺の原 そのような状態が脳性麻痺の原因となったと考えるのが合理的である旨の陳述及び証言をする(甲B8〔6、K〔28ないし30、42ないし49。 〕〕)上記陳述等の趣旨は、本件においては、脳性麻痺の原因が低酸素脳症にあると断定し得るほどに明確な低酸素状態は生じておらず、通常の統計学では原因不明の範ちゅうに属するものの、ある程度継続した呼吸障害があった以上、脳への酸素供給が万全とはいい難いから、先天異常等の他の原因よりも、そのことが脳性麻痺の原因とみるのが合理的であるというものである。確かに、脳への酸素供給がなくなることが脳性麻痺の原因のひとつであることからすると、 酸素の供給がなくならないまでも不十分な状態が継続することも同様の結果を生じさせると考えることには、一定の合理性があり、自然科学的には、同医師の指摘するように呼吸障害の継続が脳性麻痺の原因となった可能性は否定できないが、脳性麻痺の原因として前記のとおり低酸素状態以外のものも種々想定されることからすると、この可能性が否定できないことをもって、直ちに法的にみて、呼吸障害の継続がなければ脳性麻痺の発症がなかった高度の蓋然性又は相当程度の可能性があったとは認められない。これらを認めるには、さらに本件程度の呼吸障害の継続が脳性麻痺を発症させることを演繹的に説明するか、それができないまでも、統計的に脳性麻痺発症の原因が不明とされている症例中における呼吸障害の継続した症例を明らかにするなどして、帰納的に上記高度の蓋然性又は相当程度の可能性の存在を明らかにする必要がある。 しかし、同医師の証言ないし陳述は、同医師の経験上、そのような症例に遭遇したというにとどまり、上記のような演繹的又は帰納的な説明はなく、本件全証拠によっても、これを認めることはできない。 さらに、上記1(9)イのとおり、原告 陳述は、同医師の経験上、そのような症例に遭遇したというにとどまり、上記のような演繹的又は帰納的な説明はなく、本件全証拠によっても、これを認めることはできない。 さらに、上記1(9)イのとおり、原告Aは、後医において脳性麻痺の原因が低酸素にあると診断されているが、その診断の根拠は明らかではなく、また、脳性麻痺の原因が低酸素にあるとしても、分娩前、分娩中、出生後のいずれの段階による低酸素がその原因となったのかは明らかではないといわざるを得ない。 以上からすれば、本件における原告Aの脳性麻痺の原因が出生直後からの呼吸障害にあると認めることはできず、この点を前提とする原告らの因果関係についての主張も理由がないといわざるを得ない。 第4結語以上によれば、被告病院における呼吸管理については、過失の有無はともかくとしても、より適切な措置が想定されたところであり、そのような呼吸管理がされていれば、原告Aの脳性麻痺の発症が回避できた可能性は否定できないものの、 その可能性は法的にみて高度の蓋然性又は相当程度の可能性があると評価し得るものではないから、仮に過失があったとしても、生じた結果との因果関係が肯定できるものではない。また、被告病院におけるフォローアップ外来受診中に、原告Aの病名が適時に原告B及び原告Cに理解できるように説明されたとは認め難く、このことが本訴提起の一因となったことは否定できないが、この点は少なくとも本訴における請求原因を前提とする以上、本訴請求の結論を左右するものではない。 したがって、その余の争点について判断するまでもなく、原告らの主張は理由がないから、これらを棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部裁判長裁判官藤山雅行裁判官大嶋洋志裁判官岡田安世 別紙1当事者 主張は理由がないから、これらを棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部裁判長裁判官藤山雅行裁判官大嶋洋志裁判官岡田安世 別紙1当事者の主張第1注意義務の前提としての原告Aの症状とその原因(原告らの主張) 出生直後からの呼吸障害の存在原告Aは、7月26日午後4時43分にスリーピングベイビー状態で出生し、出生直後より自発呼吸が弱く、呼吸障害が見られた。両肺のエア入りがやや弱く、午後5時30分クベースに収容され、午後5時50分に酸素投与が開始されたにもかかわらず、午後6時30分には多呼吸、午後9時には多呼吸(++)陥没呼吸(+)と、カルテ上も記載されている。原告Aの父親である原告Bは、午後7時ころ、ナースステーションの奥の部屋でガラス越しに原告Aと初めて対面した際に、息を吸い込むたびに胸が大きく陥没して、その呼吸が一見して不自然であることを目撃している。 こうした呼吸症状の経過をみれば、原告Aの状態は、被告が主張するような「疾患に特異的に存在するもの(症状)ではない」などといって済ませられ。 るものではなく、明らかに「呼吸障害」であり、慎重な経過観察が必要な状態であった。 なお、被告はことさらに、午後9時は「陥没、呻吟なし」と記載されていると主張するが、7月26日のカルテには「多呼吸(++、陥没呼吸(+」、))との記載があり、7月27日午後2時30分の小児科転科時には「陥没呼吸あり(入院診療録概要)と記載されているのであるから、上記の「陥没、呻吟」なし」は一時的なものでしかなかったことが明らかである。 二次性サーファクタント欠乏及びこれによるPPHNの続発原告Aの症状は、多呼吸及び陥没呼吸が継続し、7月26日から27日にかけての深夜帯には、モニター上SaO しかなかったことが明らかである。 二次性サーファクタント欠乏及びこれによるPPHNの続発原告Aの症状は、多呼吸及び陥没呼吸が継続し、7月26日から27日にかけての深夜帯には、モニター上SaO が、90%台後半から前半、時々80台 後半までダウンし、同月27日午前10時には85%まで下がり、その後も回復が遅く不安定で、多呼吸が目立つといった状況であり、午前10時30分の 胸部レントゲンでは「両肺野に粒~線状陰影増強」と認められ、症状は次第に悪化している。同月26日午後6時50分撮影のレントゲン写真、同月27日午前10時30分撮影のレントゲン写真はいずれも肺の膨らみが良くなく、同月27日午前10時30分のレントゲン写真は、その撮影条件を考慮しても磨りガラス状になっていて、肺の虚脱を示している。 こうした症状の経過と、同月28日午前11時40分の気管挿管後に撮影されたレントゲン写真にair-bronchogram(気管支透瞭像)と思われる陰影が認められ、この所見は、レントゲン写真撮影の時点において、児の肺胞が虚脱し、肺胞を膨らませるために圧力が加わっている所見であると考えられるところから、原告Aは、出生後、多呼吸、陥没呼吸があったものの、取りあえず換気・ガス交換が可能な程度まで拡張した肺が、経時的にその機能を失って行ったのであり、この間の児の経過は、長期間にわたり多呼吸を呈していた児の肺に、肺胞を拡張しておくために必要な肺サーファクタントの消費による「二次性サーファクタント欠乏」が生じたと見るべきである。 原告Aは、多呼吸に続発した二次性サーファクタント欠乏により肺胞の拡張が不十分となり、十分なガス交換ができなくなったことに加え、出生後の新生児に認められる生理的な肺高血圧が加わってPPHNを来した。 被告の主張に対する反論本件 ーファクタント欠乏により肺胞の拡張が不十分となり、十分なガス交換ができなくなったことに加え、出生後の新生児に認められる生理的な肺高血圧が加わってPPHNを来した。 被告の主張に対する反論本件において、レントゲン写真のみによって羊水吸引症候群と確定診断することはできない。 (被告の主張) 呼吸障害が羊水吸引症候群によること(1)7月26日の胸部レントゲン写真に出現しているのは、あくまで索状影(=線状影)や粒状影である(気管支の走行方向の違いにより、索状に写るものと粒状に写るものとがある。なお、7月27日午前中の胸部レントゲ。)ン所見として陰影自体は増強しているが、レントゲンの撮影条件からすると、 所見自体が悪化しているとはいえない。 そして、このような索状影や粒状影は、羊水吸引症候群と合致する。すなわち、羊水が気管支内に存在するために透過性が減少して、白く写っているものである。 (2)なお、原告Aはスリーピングベイビーで出生したところ、スリーピングベイビーの場合には、呼吸運動や体動が十分にできないため、羊水を排出しきれずに羊水吸引症候群となることがあるし、羊水吸引症候群においても、呼吸障害として、多呼吸や陥没呼吸が出現し得る。 PPHNの原因羊水吸引症候群に続発したものである。 肺胞の拡張が不十分であった可能性や二次性サーファクタントが欠乏していた可能性も否定はできないが、これらを裏付ける具体的な所見はない。air-bronchogramは二次性サーファクタント欠乏に特異的な所見ではない。いずれにせよ、これらも羊水吸引症候群に続発したものである。 第2適切な呼吸管理を行わなかった過失の有無(原告らの主張) 呼吸管理を開始すべき時期原告Aは、同月26日午後5時30分のクベ-ス収容、酸素投与にもかかわらず、多 候群に続発したものである。 第2適切な呼吸管理を行わなかった過失の有無(原告らの主張) 呼吸管理を開始すべき時期原告Aは、同月26日午後5時30分のクベ-ス収容、酸素投与にもかかわらず、多呼吸、陥没呼吸は解消せず、それどころか、7月26日から同月27日にかけての深夜帯には、モニター上が、90%台後半から前半、時々8SaO20%台後半までダウンし、状況は悪化していったのであり、同月26日午後6時50分撮影のレントゲン写真で肺がよく膨らんでいないことが認識可能なのであるから、被告はこの段階で原告Aを小児科へ転科させ、肺を膨らませて呼吸の改善を図るべく、積極的な呼吸管理を開始すべきであった。 さらに、同月27日午前10時にはが85%まで下がり、その後も回復SaO2が遅く、多呼吸が目立つ、といった状況であり、同日午前10時30分の胸部 レントゲンでは「両肺野に粒~線状陰影増強」と認められ、肺の膨らみが悪いことも認識できたのであるから、被告病院担当医師らはどんなに遅くともこの段階では、直ちに原告Aを小児科に転科させて、肺を膨らませて呼吸の改善を図るべく、積極的な呼吸管理を開始すべきであった。 採るべき呼吸管理の方法人工呼吸管理の方法としては、持続陽圧換気療法(nDPAP)は、自発呼吸による呼吸管理方法であり、原告Aは、出生後から自発呼吸があり、多呼吸・陥没呼吸等の障害があっても当初はそれなりの換気機能を発揮していたのであるから、同療法が有効な方法であった。かつ、この持続陽圧換気療法(nDPAP)は新生児の鼻にソケット様の器具を装着するだけの侵襲の少ないものであり、肺損傷等の危険もないので、その点でも、早い段階から積極的に使用することができたはずである。こうした点で、持続陽圧換気療法(nDPAP)こそが、本件に最も適した有 するだけの侵襲の少ないものであり、肺損傷等の危険もないので、その点でも、早い段階から積極的に使用することができたはずである。こうした点で、持続陽圧換気療法(nDPAP)こそが、本件に最も適した有効な治療方法であった。 なお、仮に本件当時に被告病院において、持続陽圧換気療法(nDPAP)が実施できなかったとしても、人工呼吸器を用いてCPAPをかけるなどの代替方法による持続陽圧換気療法を行うことは可能であった。 被告病院が行った呼吸管理被告病院担当医師らは、同月27日午後2時30分になってようやく原告Aを小児科に転科させ、翌28日の午前11時40分になってやっと、挿管による人工呼吸を開始した。 被告病院担当医師らは、上記人工呼吸器装着後も血液ガス分析を、同月28日は午後5時30分の1回だけしかせず、翌29日にも午後6時10分までは7時間おきにしかしていない。 同月29日午後7時13分以降、動脈血による血液ガス分析を比較的頻回に行うようになったが、同月30日及び31日にPCO 値が突発的に変動する等、 数値的にも変動が激しく、被告病院担当医師らは換気条件の小刻みな変更を繰 り返し、時には最大吸気圧を22cmH 0などといった気胸などを起こしかねな い危険な数値にまで引き上げるなどしている。 被告病院が行った呼吸管理が不適切であったこと被告病院担当医師らは、7月28日の午前11時40分になって挿管による人工呼吸を開始したが、あまりにも遅きに失したものであり、上記7月26日から27日にかけての深夜帯の時期、遅くとも同月27日午前10時あるいは午前10時30分の時期には、持続陽圧換気療法(nDPAP)等による呼吸管理を行うべきであった。 また、被告病院においては、人工呼吸器装着後も、血液ガス分析を同月28日は午後5時30分の1回だ いは午前10時30分の時期には、持続陽圧換気療法(nDPAP)等による呼吸管理を行うべきであった。 また、被告病院においては、人工呼吸器装着後も、血液ガス分析を同月28日は午後5時30分の1回だけしか実施せず、翌29日にも午後6時10分までは7時間おきにしか行っていない。人工呼吸器を装着して肺を膨らませ、呼吸状態を改善しようというのであるから、当然に血液ガス分析のデータを頻回にとって、その結果に照らして人工呼吸器の換気条件を変え、より早期により適切な設定条件を探す必要があったにもかかわらず、こうした検査・治療を怠ったものであって、その管理体制は極めて杜撰であった。その間原告Aは、人工呼吸器をつけたにもかかわらず状態が徐々に悪化していった。 同月29日午後7時13分以降、動脈血による血液ガス分析を比較的頻回に行うようになったが、同月30日及び31日にPCO 値が突発的に変動する等、 数値的にも変動が激しく、被告病院担当医師らは、検査数値に対する後追いで、換気条件の小刻みな変更を繰り返した。 また、血液ガス分析結果に基づく人工呼吸器の換気条件変更も、同時に3つの条件を変えたりするなど、適切な換気条件をより早期に探し出すために適切な、安定した呼吸管理が行われていない。換気条件は、直前の換気条件と比較しながら変更しなければ、どの換気条件の変更が患児の呼吸状態に影響を与えた原因となっているかを評価することができない。換気条件全てを同時に変更することは、それまでの換気条件によるデータを放棄するに等しく、およそ正 常な条件変更ではない。 この間、原告Aは、挿管による人工呼吸管理を受けた後の方が、かえって症状を悪化させている。したがって、人工呼吸管理開始後の原告Aの状態の悪化についても、専ら被告病院担当医師らの呼吸管理方法についての過失によるも Aは、挿管による人工呼吸管理を受けた後の方が、かえって症状を悪化させている。したがって、人工呼吸管理開始後の原告Aの状態の悪化についても、専ら被告病院担当医師らの呼吸管理方法についての過失によるものである。 被告の主張に対する反論(1)酸素化の悪化や二酸化炭素の貯留を呈する呼吸障害に対する治療法は人工的な補助呼吸であって、治療としては最初に補助呼吸療法が選択されるのが一般的である。 被告は持続的陽圧換気療法を無呼吸発作に対する治療法であるかのように主張するが、持続的陽圧換気療法は無呼吸の治療に限定的に用いられる呼吸管理法ではない。酸素化や二酸化炭素の貯留はそれほど障害されておらず、呼吸数は多いながらも自発呼吸がしっかりしている場合には、肺胞の虚脱を防ぎ児の呼吸努力を軽減する目的で持続的陽圧換気療法の選択が考慮されるのである。 また、鼻に管を装着するだけの持続的陽圧換気療法は、気管内挿管を行い人工呼吸器を装着する方法に比べて、侵襲もリスクもはるかに少なく、早い段階で行うことができる。 こうした点から本件においても、遅くとも上記の時期には同方法による治療が行われるべきであった。 なお、被告は、原告Aの呼吸状態について一方で「人工呼吸管理の絶対的適応ではない」としつつ「多呼吸及び陥没呼吸の持続による児の疲労を考、慮して、人工呼吸管理を実施」したと主張しているが、そうであれば、なおのこと、より早い段階で、侵襲もリスクもはるかに少ない持続的陽圧換気療法を開始すべきだったのである。 (2)人工呼吸管理においては、開始当初の条件設定は多少高くなっても、頻 回に血液ガス分析を行いその所見から児の状態を評価しつつ、より効果的な人工換気の設定を探って行くべきであって、検査数値に対する後追いで小刻みな変更を繰り返すのは妥当ではないし、こうし ても、頻 回に血液ガス分析を行いその所見から児の状態を評価しつつ、より効果的な人工換気の設定を探って行くべきであって、検査数値に対する後追いで小刻みな変更を繰り返すのは妥当ではないし、こうしたより適切な換気条件を探っていく段階では、換気条件変更も、同時に2つも3つもの条件を変えることは適切ではない。 (3)nDPAPは愛育病院では平成10年から使用されており、大学病院を設置・運営する被告の「一般化したのは平成12年過ぎからである」旨の、主張は、是認できない。また、nDPAPが無かったとしても、人工呼吸器を使ってCPAPをかけるなど代替的方法はいろいろあった。 (被告の主張) 被告病院が行った呼吸管理被告病院においては、7月26日午後4時50分に出生後、午後5時30分にはクベース管理とし、午後5時50分から酸素投与を開始している。そして、7月28日午前11時40分には挿管の上、人工呼吸管理としている。 また、原告ら主張の7月27日午前10時30分の時点ですでに、クベースに収容の上、酸素飽和度・心電図モニターを装着しており、酸素飽和度モニターでも、低酸素血症(酸素飽和度90%未満)が持続するなどの所見は出現していない。このように、酸素濃度が維持できており、さらに活気の程度や肌の色調などからすれば、人工呼吸管理の絶対的適応ではない。 そして、翌7月28日午前11時40分には、多呼吸及び陥没呼吸の持続による児の疲労を考慮して、人工呼吸管理を実施しているのであるから、人工呼吸管理の開始時期は適切であったものである。 呼吸管理の方法新生児の人工換気の方法としては、最近は、経鼻的に行う持続陽圧呼吸(CPAP、nDPAP)と気管挿管を行う間欠的人工換気(IMV)+呼気終末陽圧呼吸(PEEP)という方法が用いられているが、自発呼吸があっ の人工換気の方法としては、最近は、経鼻的に行う持続陽圧呼吸(CPAP、nDPAP)と気管挿管を行う間欠的人工換気(IMV)+呼気終末陽圧呼吸(PEEP)という方法が用いられているが、自発呼吸があって も、鎮静剤や筋弛緩剤などで呼吸を抑制して気管挿管を行い、人工呼吸器を装着することは、極めて一般的に行われている医療行為である。そして、本件では、羊水吸引症候群を発症して、多呼吸や頻呼吸などの呼吸障害が継続していることを考慮して、気管までチューブを挿入する方法を行ったものであり、医学的にみて全く妥当な処置である。 なお、nDPAPと気胸発生のリスクとの関係については、本件において気胸は発生しておらず、また、nDPAPが一般化したのは平成12年過ぎからであり、これを一般化するための報告も平成12年以降に多く見られるというのが実際である。 呼吸条件については、主として、酸素分圧(PO )の数値を踏まえて、FiOと気道内圧(MAP)を調整し、主として、二酸化炭素分圧(PCO )の数値を踏 まえて、換気回数、呼気時間、PIP-PEEPを調整している。このように児の呼吸状態にあわせて換気条件を変更することは、むしろ適切な医療行為である。 第3血液ガス分析を十分に行わなかった過失の有無(原告らの主張) 血液ガス分析を2ないし3時間おきに行うべきであったこと児の呼吸障害の状態と原因を客観的に判断するためには、単にサチュレーションを見るだけでは足りず、採血による血液ガス所見を検討することは不可欠である。本件においては、原告Aの症状は上述のようにクベース収容及び酸素投与にもかかわらず、回復するどころか次第に悪化しているのであるから、その呼吸状態の判断のためには、血液ガス分析は必要不可欠であり、7月26日の出生以降、小児科へ転科する以前の クベース収容及び酸素投与にもかかわらず、回復するどころか次第に悪化しているのであるから、その呼吸状態の判断のためには、血液ガス分析は必要不可欠であり、7月26日の出生以降、小児科へ転科する以前の段階でも、仮に動脈血でなくとも、せめて2ないし3時間おき程度には行われているべきであった。 被告病院での血液ガス分析の実施状況被告病院においては、同月26日の出生以降、初めて動脈血での血液ガス分 析を行った同月29日午後7時13分までの間、同月27日は午後2時50分に1回、同月28日になっても2回(午前8時30分と午後5時30分、同)月29日にも上記まではほぼ7時間おき(午前零時15分、午前7時55分、午後2時20分、午後6時10分)にしか同検査を行っていない。 このように、血液ガス分析の実施状況は極めて不十分であった。 被告の主張に対する反論原告Aは、生後24時間を経過しても多呼吸、陥没呼吸の軽快が認められず、むしろ酸素化が次第に不安定になりつつあった。被告の主張する同月27日深夜帯においてもSaO は不安定であったし、同月27日午前10時においても採 血後にSaO は85%まで下がり、回復は遅く、91ないし90%まで上昇した ものの100%までは上がらず、多呼吸が目立ち、午前10時30分においてもSaO の低下が頻回に起こっている。原告Aの呼吸状態の異常は継続していた のであり、その呼吸状態は慎重に観察されるべきであった。 (被告の主張) 被告病院での血液ガス分析の実施状況原告Aの状態を踏まえ、同月27日午後2時50分、同月28日午前8時30分、午後5時30分、同月29日午前零時15分、午前7時55分、午後2時20分、午後6時10分、午後7時13分、午後8時45分、午後9時54分と血液ガス分析を行っている。 被告 8日午前8時30分、午後5時30分、同月29日午前零時15分、午前7時55分、午後2時20分、午後6時10分、午後7時13分、午後8時45分、午後9時54分と血液ガス分析を行っている。 被告病院での血液ガス分析の実施が十分であったこと一般論としていえば、血液ガス分析に有用性が認められるものの、持続的な測定をすることはできない。 通常、経皮的な酸素飽和度の値と、血液ガス分析を行った場合の酸素分圧の値は、並行して変化することになるため、経皮的な酸素飽和度を経時的に計測することにより、血液ガス分析を行う必要性は少なくなる。 また、血液ガス分析は侵襲を伴う検査であるところ、新生児に対して頻繁に 行うことは好ましくない。 他方、本件では、出生直後からクベースに収容した上で、非侵襲的なモニタリングである酸素飽和度及び心電図の経皮モニターを実施し、また、胸部レントゲン検査を経時的に行って厳重な観察を行っており、これらに加えて、1項で述べた血液ガス分析も行っていたものである。 そして、同月27日深夜帯も「バイタルサインは安定しており、SaO モニ、 ターも時々80台後半まで低下もみられるが5ないし10秒程度で回復しており90台後半から前半でキープ」していたものである。また、同月29日午後7時13分の血液ガス分析結果としても、酸素飽和度は100%であったものである。 したがって、厳重なモニタリングを行い、実際、酸素飽和度の極端な低下などの所見がなかった以上、血液ガス分析が2ないし3時間おきでなければならないということはいえない。被告病院担当医師らは呼吸状態を慎重に観察している。 第4小児科へ転科させる義務を怠った過失(原告らの主張) 7月26日から27日の深夜帯に小児科に転科させるべきであったこと産科では呼吸障害に陥っている新生児に対 吸状態を慎重に観察している。 第4小児科へ転科させる義務を怠った過失(原告らの主張) 7月26日から27日の深夜帯に小児科に転科させるべきであったこと産科では呼吸障害に陥っている新生児に対してできることは、クベ-スに収容し酸素を投与するくらいであり、それ以上の治療はできないのであるから(実際に被告病院産科においてもそれ以上のことは行われていない、産科と)しては、上記酸素投与等を行っても症状が回復しないときには直ちに新生児科若しくは新生児科がなければ小児科に転科させ、人工呼吸管理を積極的に行わなければならない義務がある。 原告Aは、同月26日午後5時30分のクベ-ス収容、酸素投与にもかかわらず、多呼吸、陥没呼吸は解消せず、それどころか、同月26日から27日にかけての深夜帯には、モニター上が、90%台後半から前半、時々80台SaO2 後半までダウンし、状況は悪化していったのであり、同月26日午後6時50分撮影のレントゲン写真で肺の膨らみの悪いことが確認できたのであるから、被告病院担当医師らはこの段階で原告Aを小児科へ転科させ、呼吸管理を根本的に行う体制をとるべき義務があった。 7月27日午前10時から午前10時30分に小児科に転科させるべきであったこと同月27日午前10時にはが85%まで下がり、その後も回復が遅く不SaO2安定で、多呼吸が目立つ、といった状況であり、午前10時30分の胸部レントゲンでは「両肺野に粒~線状陰影増強」と認められ、同月26日午後6時50分撮影のレントゲン写真、同月27日午前10時30分撮影のレントゲン写真、いずれも肺の膨らみが悪く、とくに同月27日午前10時30分のレントゲン写真は、磨りガラス状になっていて、肺の虚脱を示していたのであるから、肺を膨らませて呼吸の改善を図るために積極的な トゲン写真、いずれも肺の膨らみが悪く、とくに同月27日午前10時30分のレントゲン写真は、磨りガラス状になっていて、肺の虚脱を示していたのであるから、肺を膨らませて呼吸の改善を図るために積極的な呼吸管理を開始すべく、被告病院担当医師らはどんなに遅くともこの段階では、原告Aを小児科に転科させるべき義務があった。 本件において、原告Aの小児科への転科は同月27日午後2時30分であるが、あまりにも遅すぎたというべきである。 被告の主張に対する反論(1)被告は「陥没呼吸は26日午後9時頃には消失している」と主張しているが、あくまでも「いったん消失」したにすぎないのであって、その後再び発生していることは、上記記載からも明らかである。 前述のとおり、原告Aは、生後24時間を経過しても多呼吸、陥没呼吸の軽快が認められず、むしろ酸素化が次第に不安定になりつつあった。同月26日午後6時30分にはSaO 94ないし96%であったものが、同月27日 深夜帯においては90%台後半ないし前半で、時々80%台後半までダウンするという不安定な状況であった。 (2)同月27日午前10時においても採血後にSaO 85%まで下がり、回復 が遅く、91ないし90%まで上昇したものの100%までは上がらず、多呼吸が目立ち、午前10時30分においてもSaO の低下が頻回に起こってい る。呼吸状態はさらに悪化していたのである。 こうした状況は、産科においては原告Aの症状に対して有効に対処できていないことを明らかに示している。さらに、同月26日午後6時50分撮影のレントゲン写真、同月27日午前10時30分撮影のレントゲン写真、いずれも肺の膨らみが悪く、とくに同月27日午前10時30分のレントゲン写真は、磨りガラス状になっていて、肺の虚脱を示していたのであるから トゲン写真、同月27日午前10時30分撮影のレントゲン写真、いずれも肺の膨らみが悪く、とくに同月27日午前10時30分のレントゲン写真は、磨りガラス状になっていて、肺の虚脱を示していたのであるから、肺を膨らませて呼吸の改善を図るべく、積極的な呼吸管理を開始することが必要だったのであり、そのためには小児科に転科させることが不可欠であった。 (3)被告は「速やかに対応したうえで、小児科転科に至っている」と主張す、るが、レントゲン撮影から読影、判断まで2時間、判断から実際の転科まで2時間というのは、大学病院といえども時間がかかりすぎであり、被告の状況認識の甘さを示しているというべきである。 (被告の主張) 7月26日から27日の深夜帯に小児科に転科させる義務はないことまず、陥没呼吸は同月26日午後9時ころには消失している。 また、酸素飽和度も正確には、午後5時50分には88ないし89%であり、酸素投与を開始したところ、午後6時30分には94ないし96%に上昇している。 そして、深夜帯も90%台後半ないし前半で維持されていたものである。この時間帯について、原告らは時々80%台後半までダウンしていたことを強調するが、それも5ないし10秒ほどで回復する一時的な低下に過ぎず、無呼吸もなかった。 したがって、深夜帯までの時点において特に児の状態は悪化しておらず、小児科に転科すべき注意義務はない。 7月27日午前10時から午前10時30分に小児科に転科させる義務はないこと同月27日午前10時以降、酸素飽和度の状態がやや悪くなり、午前10時30分になっても改善しないため、すぐに午前10時30分の時点で、胸・腹部のレントゲン写真を撮影することを決め、写真を読影した上で、総合的に方針を検討することとしている。 なお、同日午前10時30分の時 分になっても改善しないため、すぐに午前10時30分の時点で、胸・腹部のレントゲン写真を撮影することを決め、写真を読影した上で、総合的に方針を検討することとしている。 なお、同日午前10時30分の時点で、レントゲン検査の実施という判断、同検査の実施及びその読影とが同時にできるわけではない。そして、既にクベースに収容された状態で、酸素投与の上、酸素飽和度・心電図モニターによる継続的な監視を続けており、小児科に転科すれば、これらとは別個の特有な検査や治療が可能になるというわけではなく、より早急に手続きをする理由がない。 したがって、原告ら指摘の時点で小児科に転科させるべき義務はない。 7月27日午後2時30分に小児科に転科させたこと及びその時点での転科が適切であったことレントゲン写真を読影の上、呼吸状態なども含め、総合的に判断して、同日午後零時30分に小児科転科の方針となり、午後2時30分、転科の準備が整ったので、転科となっている。このように、速やかに対応した上で、小児科転科に至っているのである。 しかも、転科する前にすでに同月27日午前中の時点で小児科医師に診療を依頼しているのである。 そして、このような対応を取っている間も、クベースに収容された状態で、酸素飽和度・心電図モニターによる継続的な監視を続けており、特に緊急で処置を要するような状態には至っていない。 したがって、転科の時点は適切である。 第5被告病院が大学病院であることにより、第2ないし第4の注意義務に差異が生じるか否か(原告らの主張)被告病院はいやしくも大学病院として、患者からは最高水準の医療を受けることができると期待される医療機関である。 原告Aは、被告病院の診療録によれば、出生時のアプガールスコア1分後8点、5分後9点とされており、重篤な胎児仮死といった状態で 者からは最高水準の医療を受けることができると期待される医療機関である。 原告Aは、被告病院の診療録によれば、出生時のアプガールスコア1分後8点、5分後9点とされており、重篤な胎児仮死といった状態での出生ではなかった。 また、上述のとおり、多呼吸、陥没呼吸を見せていたが、血液ガス分析の数値を見る限り、当初はある程度の換気・ガス交換ができていたのである。 それが、上述のように、出生後、多呼吸・陥没呼吸が継続し、症状も悪化傾向であったにもかかわらず、すぐに血液ガス分析が行われなかったこと、小児科転科が遅れたこと、入院当初の呼吸管理方法の選択が最良の選択とは考えられないこと、被告病院担当医師らなりの人工呼吸管理についても開始が遅れたこと、その管理内容もある時期までは杜撰でそれ以降は不十分であったこと、といった問題の積み重ねの中で、本件のような重篤な結果を呈するに至るのである。 被告病院における本件医療行為は、大学病院として、患者から期待されている最高水準の医療から見た場合、注意義務違反を免れないものである。 (被告の主張)被告病院においては、大学病院として法的に求められる医療水準を充足している。 第6因果関係(原告らの主張) 原告Aに低酸素脳症による脳性麻痺が生じたこと本件では、CT所見に認められる脳萎縮など、そこに何らかの原因が存在したことは確かである。一般に、成熟児における脳性麻痺は、出生体重2500 g以上では出生人口1000人に対して0.7人程度と発生頻度は小さい。また、脳性麻痺の原因についての各種の資料によれば、原因が不明であるケースはわずかにすぎない。 本件では、原告Aは成熟児であり、かつ「先天性」その他の脳性麻痺原因の存在は何も確認されておらず、存在するエピソードとしては、本件呼吸障害のみである。 原告Aは出生直後アプガ はわずかにすぎない。 本件では、原告Aは成熟児であり、かつ「先天性」その他の脳性麻痺原因の存在は何も確認されておらず、存在するエピソードとしては、本件呼吸障害のみである。 原告Aは出生直後アプガールスコア8点及び呼吸障害があったとはいえ一定程度以上のガス交換機能を発揮していたが、その後、一定程度重度の呼吸障害によりガス交換機能が大きく損なわれていたこと、そうした状況が長期間継続したことが争いようのない事実であることからすれば、本件脳性麻痺は、7月29日以降に特に顕著となる原告Aの呼吸障害による低酸素症を原因とするものと推定することは、十分合理性を持つものである。 第2ないし第4の過失と原告Aの脳性麻痺との間に因果関係があること被告病院において、呼吸管理がより早期かつ適切な内容で始められていれば、原告Aに認められた多呼吸がより早期に改善されたことは確実であったと考えられるのであり、原告Aの呼吸障害が早期に改善されたならば、その脳障害も避け得た可能性は十分にあったというべきである。 低酸素状態が脳の発達に影響を与えるものであることは明らかであり、原告Aの呼吸障害による低酸素状態はその脳性麻痺の原因となり得るエピソードで本件脳性麻痺の原因については、他のある。こうした状態が現に存在した以上、多くの脳性麻痺と同様に不明、あるいは先天性であるなどとして因果関係を否定されるべきではない。 (被告の主張) 原告Aの脳性麻痺の原因脳性麻痺の原因がPPHNにあるとするならば、低酸素血症及び脳虚血によって、脳性麻痺が発症したということになる。 しかし、血液ガス分析結果一覧表にあるとおり、酸素飽和度(SaO )や酸素 分圧(PO )の値からすると、低酸素血症が継続しているかのような所見は認 められていない。酸素化や二酸化炭素の貯留はそれ かし、血液ガス分析結果一覧表にあるとおり、酸素飽和度(SaO )や酸素 分圧(PO )の値からすると、低酸素血症が継続しているかのような所見は認 められていない。酸素化や二酸化炭素の貯留はそれほど障害されていないことは原告ら自身が認めるところである。 また、脳虚血となるためには、低酸素血症の存在のみならず、急激な血圧低下を示唆する所見の存在が重要であるが、急激な血圧低下、あるいは、それを示唆するような所見は認められていない。 さらに、経過中、平成11年8月、平成12年3月と頭部CT検査を実施しているが、脳虚血のあったことを示唆する所見は認められていない。 したがって、脳性麻痺の原因を低酸素血症に求めることはできない。本件脳性麻痺の原因については、他の多くの脳性麻痺と同様に不明であるというほかない。 第2ないし第4の過失と原告Aの脳性麻痺との間に因果関係はないこと本件脳性麻痺の原因が不明であるということ自体から、血液ガス分析の頻度、呼吸管理の時期・内容、小児科転科との因果関係は否定される。 血液ガス分析の頻度を増やしたとしても、実際に行った血液ガス分析結果、各種モニター、レントゲン撮影、血液検査では得られなかった情報が得られ、治療方針が変更されるとは考えにくい。 原告らが問題とする7月29日午後6時10分までの血液ガス分析結果や経皮的酸素飽和度の数値からしても、人工呼吸管理の適応となる数値にはなっておらず、この間の回数を増やしたところで新たな情報が得られるとはいえない。 したがって、この点からも血液ガス分析結果との因果関係は否定される。 小児科転科についても、原告らの主張を前提としても、人工呼吸管理の問題に集約されるはずである。 そして、人工呼吸器装着までの時点においても、著しい低酸素血症には陥っていないことからして、仮に、より早期に人 転科についても、原告らの主張を前提としても、人工呼吸管理の問題に集約されるはずである。 そして、人工呼吸器装着までの時点においても、著しい低酸素血症には陥っていないことからして、仮に、より早期に人工呼吸器を装着したとしても、その後の転帰が変わったとはいえない。この点からも因果関係は否定される。 第7損害(原告らの主張) 入通院付添費 43万7500円 入院雑費 6万5800円 通院交通費 9万0513円 入通院慰謝料 140万円 将来の付添費 9307万7920円 逸失利益 4225万4338円 器具・用具購入費 324万8937円 後遺症慰謝料 4800万円 弁護士費用 1885万円 合計 2億0742万5008円(被告の主張)争う。 以上

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