平成29年6月29日判決言渡平成29年(ワ)第485号弁護士費用請求事件 主文 1 被告は,原告らに対し,各126万5618円及びこれに対する平成29年1月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求主文第1項同旨第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,被告である愛知県の住民である原告らが,地方自治法242条の2第1項4号に基づき愛知県知事に対して不当利得返還請求の義務付けを求めて提起した住民訴訟(以下「別件訴訟」という。)において全部勝訴したため,同条12項に基づき,別件訴訟について訴訟委任を受けた弁護士ら(以下「別件受任弁護士ら」という。)に支払うべき報酬額の範囲内で相当と認められる額(以下「弁護士報酬相当額」という。)として,被告に対し,各126万5618円及びこれに対する請求をした日の翌日である平成29年1月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。以下,書証番号は,特記しない限り枝番を含む。)(1) 原告ら原告らは,いずれも愛知県の住民である。(弁論の全趣旨)(2) 別件訴訟の経過ア原告らは,平成21年度に愛知県議会の各会派に対して交付された政務調査費の一部に使途基準に反して違法に支出されたものがあると主張して,別件受任弁 護士ら(原告ら訴訟代理人弁護士らを含む弁護士11名)に訴訟追行を委任し(以下「別件委任契約」という。),平成23年5月12日,愛知県の執行機関である愛知県知事を被告として,自由民主党 任弁 護士ら(原告ら訴訟代理人弁護士らを含む弁護士11名)に訴訟追行を委任し(以下「別件委任契約」という。),平成23年5月12日,愛知県の執行機関である愛知県知事を被告として,自由民主党愛知県議員団(以下「自民党議員団」という。)に対し3458万7096円を,民主党愛知県議員団(以下「民主党議員団」という。)に対し3795万1169円を,公明党愛知県議員団(以下「公明党議員団」という。)に対し862万7860円をそれぞれ愛知県(被告)に支払うよう請求することの義務付けを求めて,地方自治法242条の2第1項4号本文に定める別件訴訟(当庁平成23年(行ウ)第68号)を提起した。なお,上記各会派(以下「別件訴訟補助参加人ら」という。)は,それぞれ自己関係分に関する訴訟につき被告に補助参加した。 別件訴訟の第一審裁判所は,平成26年1月16日,愛知県知事(別件訴訟被告)に,自民党議員団に対し1313万1677円を,民主党議員団に対し1204万8121円を,公明党議員団に対し342万3934円をそれぞれ愛知県(被告)に支払うよう請求することを義務付ける内容の一部認容判決をした。(甲3ないし5,弁論の全趣旨)イ原告ら(別件訴訟原告ら)及び愛知県知事(別件訴訟被告)は,上記アの第一審判決の各敗訴部分を不服としてそれぞれ控訴した(名古屋高等裁判所平成26年(行コ)第11号)。 別件訴訟の控訴審裁判所は,平成27年12月24日,上記アの第一審判決を変更し,愛知県知事(別件訴訟被控訴人兼控訴人)に,自民党議員団に対し3458万7096円を,民主党議員団に対し3795万1169円を,公明党議員団に対し862万7860円をそれぞれ愛知県(被告)に支払うよう請求することを義務付ける内容の全部認容判決(以下「別件控訴審判決」という。)をし ,民主党議員団に対し3795万1169円を,公明党議員団に対し862万7860円をそれぞれ愛知県(被告)に支払うよう請求することを義務付ける内容の全部認容判決(以下「別件控訴審判決」という。)をした。(甲2,弁論の全趣旨)ウ別件控訴審判決を不服とする愛知県知事(別件訴訟被控訴人兼控訴人)は,上告を提起するとともに上告受理の申立てをした(最高裁判所平成28年(行ツ) 第163号,同年(行ヒ)第172号)ところ,最高裁判所は,平成28年12月15日,上記上告を棄却するとともに上告審として受理しない旨の決定をした。(甲1,弁論の全趣旨)(3) 原告らによる弁護士報酬の請求原告らは,平成29年1月11日到達の内容証明郵便で,被告に対し,別件訴訟に係る弁護士報酬相当額として,1012万4946円(消費税に相当する額を含む。)の支払を請求した。(甲6)(4) 日本弁護士連合会において従前定められていた報酬等基準規程日本弁護士連合会は,従前,報酬等基準規程(平成7年9月11日会規第38号。 以下「旧報酬規程」という。)を定めていたところ(なお,旧報酬規程は,その後廃止され,以後,弁護士報酬が自由化された。),旧報酬規程17条においては, 民事事件の訴訟事件の着手金及び報酬金について,経済的利益の額を基準として,それぞれ次のとおり算定することとされており(本件に関係する範囲内のもの),これにより算定された標準額は,事件の内容により,30%の範囲内で増減額することができる旨定められていた。(甲7,弁論の全趣旨)経済的利益の額着手金報酬金300万円以下の部分 8% 16%300万円を超え3000万円以下の部分 5% 10% 益の額着手金報酬金300万円以下の部分 8% 16%300万円を超え3000万円以下の部分 5% 10%3000万円を超え3億円以下の部分 3% 6%したがって,経済的利益が3000万円以上3億円以下の場合の着手金及び報酬金の標準額は,それぞれ次のとおりとなる(ただし,消費税に相当する額を含まない。)。 ア着手金経済的利益の額×3%+69万円イ報酬金経済的利益の額×6%+138万円(5) 被告において定められている弁護士報酬支払の基準被告は,「県又は知事が当事者である訴訟の弁護士報酬支払の基準」(乙1。以 下「県報酬基準」という。)を定めているところ,県報酬基準においては,着手金及び完成謝金(報酬金)について,それぞれ次のとおり定められている(ただし,消費税に相当する額を含まない。)。(乙1)ア軽易な事件 30万円イ通常の事件 50万円ウ重要な事件 70万円 3 争点及びこれに関する当事者の主張の要旨本件の主たる争点は,原告らが,別件受任弁護士らに対して支払うべき報酬額の範囲内で,地方自治法242条の2第12項に基づき,被告に対して支払を請求することのできる「相当と認められる額」(弁護士報酬相当額)が幾らかである。この争点に関する当事者の主張の要旨は,以下のとおりである。 (1) 原告らの主張の要旨ア別件訴訟は,訴えの提起から判決が確定するまで長期間を要し,別件訴訟補助参加人らが膨大かつ詳細な主張及び証拠を提出したため,別件受任弁護士らは,極めて困難な訴訟の遂行を強いられたのであるから,別件受任弁護士らの弁護士報酬相当額は,旧報酬規程によって算定さ 別件訴訟補助参加人らが膨大かつ詳細な主張及び証拠を提出したため,別件受任弁護士らは,極めて困難な訴訟の遂行を強いられたのであるから,別件受任弁護士らの弁護士報酬相当額は,旧報酬規程によって算定される標準額を下回るものではない。 イそこで,旧報酬規程に基づいて弁護士報酬相当額を算定すると,別件訴訟の経済的利益は,8116万6125円であるから,着手金は,312万4983円(≒8116万6125円×0.03+69万円),報酬金は,624万9967円(≒8116万6125円×0.06+138万円)であり,合計937万4950円となって,これに消費税に相当する額を加えると,1012万4946円(=937万4950円×1.08)となる。 ウしたがって,別件受任弁護士らの弁護士報酬相当額は,1012万4946円であり,これを原告ら8名で除した金額は,126万5618円(1円未満切捨て)である。 (2) 被告の主張の要旨 ア住民訴訟は,被告の財務行政の適正化を目的とするものであり,公益的性格が強いものであるから,そのための弁護士報酬相当額の基準としては,私人の利益の実現を目的とする多くの民間の取引行為に係る訴訟に適用される旧報酬規程よりも,愛知県(被告)という普通地方公共団体が定めた県報酬基準を用いる方が地方自治法242条の2第12項の趣旨に合致するというべきである。 被告は,別件訴訟の第一審及び控訴審について弁護士2名に委任して訴訟追行をしたところ,別件訴訟が県報酬基準の「重要な事件」に該当すると判断し,上記のうち1名に対して,第一審の着手金73万5000円及び完成謝金73万5000円並びに控訴審の着手金73万5000円及び完成謝金73万5000円を,残りの1名に対して,第一審の着手金73万5000円をそれぞれ支払っ て,第一審の着手金73万5000円及び完成謝金73万5000円並びに控訴審の着手金73万5000円及び完成謝金73万5000円を,残りの1名に対して,第一審の着手金73万5000円をそれぞれ支払った(なお,弁護士1名は第一審係属中に死亡した。)。第一審係属中に弁護士1名が死亡しなければ,同弁護士についても控訴審まで委任したと考えられることからすると,別件訴訟における弁護士報酬としては,控訴審まで弁護士2名に委任したと仮定して,上記算定方法により算定することが相当である。そうすると,弁護士1名当たり280万円(=70万円×4)であり,2名分とすると560万円(=280万円×2)となり,これに消費税に相当する額を加えると,604万8000円(=560万円×1.08)となる。 したがって,別件受任弁護士らの弁護士報酬相当額は,604万8000円である。 イ原告らは,別件受任弁護士らが極めて困難な訴訟の遂行を強いられた旨主張するが,別件訴訟においては,条例,規程,政務調査費の収支報告書等の一般に公開されており入手に困難を伴わない証拠に基づいて訴訟活動が行われたのであるから,別件受任弁護士らの訴訟活動は困難なものではなかったというべきである。 また,仮に旧報酬規程を参照して,弁護士報酬相当額を算定するとしても,①被告が自ら訴訟を提起する場合であれば,顧問弁護士等と交渉し,旧報酬規程を基準とした巨額の支出負担を免れ,公費の支出を抑えているのが通常であって,巨額の 支出がされれば,住民の税金によって運営されている被告の財政に少なからぬ負担を与えることは明らかであること,②別件訴訟は,愛知県(被告)の財務行政の適正化を志向する住民である原告らによって提起されたものであり,別件受任弁護士らも普通地方公共団体である愛知県(被告)の財務行 を与えることは明らかであること,②別件訴訟は,愛知県(被告)の財務行政の適正化を志向する住民である原告らによって提起されたものであり,別件受任弁護士らも普通地方公共団体である愛知県(被告)の財務行政を適正化するために委任事務を行ったと推認され,その報酬についても,ビジネスにおいて生じた同規模の紛争における訴訟活動と比べて低額で合意がされることが推認されることなどからすると,相当な額の減額がされるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 地方自治法242条の2第12項の趣旨地方自治法242条の2の定める住民訴訟は,住民が,自己の個人的な権利利益の保護救済を求めて提起するものではなく,地方財務行政の適正な運営を確保することを目的として,自己を含む住民全体の利益のために,いわば公益の代表者として提起するものであり,これに勝訴すると,結果として普通地方公共団体の財務会計上の違法な行為又は怠る事実が防止され又は是正されることになる。特に,同条1項4号の規定による住民訴訟は,住民が普通地方公共団体の執行機関等に対して損害賠償請求等の義務付けを求めて提起するものであり,この訴訟において住民が勝訴したときは,執行機関等は損害賠償請求権等の行使を義務付けられ,これにより普通地方公共団体が現実に経済的利益を受けることになるのであるから,住民がそのために費やした費用を全て負担しなければならないとすることは,衡平の理念に照らし適当とはいい難い。そこで,同条12項は,上記住民訴訟を提起した住民が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合に,当該住民訴訟の提起及び追行を委任した弁護士に支払うべき報酬額の範囲内で相当と認められる額(弁護士報酬相当額)の支払を普通地方公共団体に対して請求することができることとしたものである。 以上のような同項の立法趣旨に照らすと,同 した弁護士に支払うべき報酬額の範囲内で相当と認められる額(弁護士報酬相当額)の支払を普通地方公共団体に対して請求することができることとしたものである。 以上のような同項の立法趣旨に照らすと,同項にいう「相当と認められる額」とは,上記住民訴訟において住民から訴訟委任を受けた弁護士が当該訴訟のために行った活動の対価として必要かつ十分な程度として社会通念上適正妥当と認められる 額をいい,その具体的な額は,当該訴訟における事案の難易,弁護士が要した労力の程度及び時間,認容された額,判決の結果普通地方公共団体が回収した額,住民訴訟の性格その他諸般の事情を総合的に勘案して定められるべきものと解するのが相当である(以上につき,最高裁平成19年(受)第2069号同21年4月23日第一小法廷判決・民集63巻4号703頁参照)。 2 認定事実前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次のとおりの事実を認めることができる。 (1) 原告らは,別件委任契約を締結した際,別件受任弁護士らとの間で,別件訴訟に係る弁護士報酬については,別件訴訟の判決確定時の認容額を経済的利益として,旧報酬規程に基づいて計算した着手金相当額及び報酬金相当額を合算した金額を支払う旨の合意をした。(弁論の全趣旨)(2) 別件訴訟は,平成23年5月12日に名古屋地方裁判所に提起され,口頭弁論期日を多数回経た上で,平成26年1月16日に原告ら一部勝訴の判決が言い渡され,当事者双方が控訴し,名古屋高等裁判所において口頭弁論期日を多数回経た上で,平成27年12月24日に,自民党議員団に対し3458万7096円を,民主党議員団に対し3795万1169円を,公明党議員団に対し862万7860円をそれぞれ愛知県(被告)に支払うよう請求することを義務付ける内容の原 4日に,自民党議員団に対し3458万7096円を,民主党議員団に対し3795万1169円を,公明党議員団に対し862万7860円をそれぞれ愛知県(被告)に支払うよう請求することを義務付ける内容の原告ら全部勝訴判決(別件控訴審判決)が言い渡され,これに対し愛知県知事(別件訴訟被控訴人兼控訴人)が上告の提起及び上告受理の申立てをしたが,平成28年12月15日に上告棄却及び上告不受理決定がされ,別件控訴審判決が確定した。このように,別件訴訟においては,提訴から判決が確定するまで約5年7か月を要した。(甲1ないし3,弁論の全趣旨)(3) 別件訴訟の争点は,愛知県(被告)から別件訴訟補助参加人らに交付された平成21年度の政務調査費のうち,別件訴訟補助参加人らに所属する各議員の事務所賃借料等及び自動車リース料の支出に充てられた部分が,「愛知県議会における 会派に対する政務調査費の交付に関する条例」(平成13年愛知県条例第41号。 平成23年愛知県条例第31号による改正前のもの。以下「本件条例」という。)の定める使途基準に反するものであり,別件訴訟補助参加人らは,これについて法律上の原因なく受けた利得(不当利得)として返還義務を負うかどうかであった。 上記の事務所賃借料等及び自動車リース料の支出に政務調査費を充てた議員数はいずれも合計58名(事務所賃借料等については,自民党議員団23名,民主党議員団28名,公明党議員団7名。自動車リース料については,自民党議員団29名,民主党議員団23名,公明党議員団6名)であり,別件受任弁護士らは,別件訴訟の第一審及び控訴審を通じて,口頭弁論期日に出頭し,相当数の準備書面を提出したほか,文献,地方自治法の改正に関する衆議院及び参議院の議事録,愛知県議会の議事録,名古屋市議会の議事録,愛知県(被告)の条例・ 審及び控訴審を通じて,口頭弁論期日に出頭し,相当数の準備書面を提出したほか,文献,地方自治法の改正に関する衆議院及び参議院の議事録,愛知県議会の議事録,名古屋市議会の議事録,愛知県(被告)の条例・規程・要綱・取扱要領,全国都道府県議会議長会が作成した資料集,他県における政務調査費の交付に関する規程,名古屋市の条例・規程,関連する下級審裁判例,不動産登記事項全部証明書,商業登記事項全部証明書,政治資金収支報告書等合計50点以上の書証を提出した一方,別件訴訟補助参加人らからは,愛知県議会の議事録,領収証整理票,各議員の陳述書等を含めた1000点以上の膨大な書証及び詳細な主張が提出されたため,これらを検討し,反論を行うなどした。(甲2ないし5,弁論の全趣旨)(4) 別件訴訟の確定判決において認容された額は,合計8116万6125円であり,被告による回収が困難であることをうかがわせる事情はない。(甲2,3,弁論の全趣旨) 3 検討(1) 別件訴訟において確定した別件控訴審判決は,別件訴訟補助参加人らに対し,合計8116万6125円を愛知県(被告)に支払うよう請求することを愛知県知事(別件訴訟被控訴人兼控訴人)に義務付ける旨の判決であり,その回収が困難であることをうかがわせる事情もないから,これが,判決の結果被告が得た経済的利益というべきである。 そうすると,別件委任契約における報酬額は,旧報酬規程に従って算定すると,増減額をしなければ,以下のア及びイの合計額937万4950円に消費税に相当する額を加算した1012万4946円(=937万4950円×1.08)となるところ,その算定方法等に不合理な点等は見当たらないから,上記算定額が弁護士報酬相当額を検討するに当たり,重要な考慮要素になるというべきである。 ア着手金 =937万4950円×1.08)となるところ,その算定方法等に不合理な点等は見当たらないから,上記算定額が弁護士報酬相当額を検討するに当たり,重要な考慮要素になるというべきである。 ア着手金相当額8116万6125円×3%+69万円≒312万4983円イ報酬金相当額8116万6125円×6%+138万円≒624万9967円(2) 別件訴訟は,訴訟の提起(平成23年5月12日)から,第一審判決の言渡し(平成26年1月16日)まで約2年8か月間,別件控訴審判決の言渡し(平成27年12月24日)まで約4年7か月間,別件控訴審判決の確定(平成28年12月15日)まで約5年7か月間を要し,行われた口頭弁論期日も多数回であるところ,別件受任弁護士らは,このような長期にわたる審理において,これらの期日に出頭したものである。 また,別件受任弁護士らは,複数通の主張書面及び50点以上の書証を提出したほか,別件訴訟補助参加人らから提出された1000点以上の書証等を検討し,反論を行うなどした。さらに,これらの主張立証活動においては,別件訴訟補助参加人らに所属する各議員が支出した事務所賃借料等及び自動車リース料が,本件条例所定の政務調査費の使途の一つである「事務費」に該当するか否かといった総論的な主張が問題となったほか,上記各議員の事務所賃借料等及び自動車リース料の支出状況に関する個別の立証等も行われている。 以上の諸事情に照らせば,別件訴訟は決して容易な事案であったということはできず,別件受任弁護士らの上記主張立証活動には,相当程度の労力及び時間を要したものというべきである。そして,これらの事情に加えて,別件委任契約における旧報酬規程に従って増減額をせずに算定した場合の報酬額(上記(1)),住民訴訟の 性格その他 度の労力及び時間を要したものというべきである。そして,これらの事情に加えて,別件委任契約における旧報酬規程に従って増減額をせずに算定した場合の報酬額(上記(1)),住民訴訟の 性格その他諸般の事情を総合的に勘案すれば,原告らが別件受任弁護士らに支払うべき弁護士報酬相当額は,1012万4946円と認定するのが相当である。 (3)アこれに対し,被告は,住民訴訟は,被告の財務行政の適正化を目的とするものであり,公益的性格が強いものであるから,その弁護士報酬相当額の基準としては,旧報酬規程よりも,県報酬基準を用いるべきである旨主張する。 しかしながら,前記前提事実(5)によれば,県報酬基準は,愛知県(被告)又は愛知県知事が当事者である訴訟の弁護士報酬について被告が独自に定めた基準であって,これを受任した弁護士は,①愛知県(被告)の職員の協力を得ることが可能であり,また,愛知県(被告)が所持している豊富な証拠も利用できること,②訴訟において,原告の訴訟代理人としてではなく,被告の訴訟代理人として受任する場合が多いと考えられることなどからすると,弁護士が住民訴訟の原告の訴訟代理人として訴訟を受任する場合とは,依頼者の法的性質,依頼者からの協力の有無及びその程度,訴訟代理人としての立場,証拠収集の労力等の点において,その前提を異にするというべきである。また,県報酬基準の内容についてみても,軽易な事件,通常の事件及び重要な事件の3段階の区分しかなく,着手金と完成謝金(報酬金)が同額という大雑把なもので,基準の文言も抽象的であることからすると,上記のような愛知県(被告)又は愛知県知事が当事者である訴訟の特殊性を前提として定められているものといわざるを得ず,弁護士報酬相当額に係る基準としてこれを用いることは相当ではない。 イまた,被 記のような愛知県(被告)又は愛知県知事が当事者である訴訟の特殊性を前提として定められているものといわざるを得ず,弁護士報酬相当額に係る基準としてこれを用いることは相当ではない。 イまた,被告は,別件受任弁護士らは,別件訴訟において,条例,規程,政務調査費の収支報告書等の一般に公開されており入手に困難を伴わない証拠に基づいて訴訟活動を行ったのであるから,別件受任弁護士らの訴訟活動は困難なものではなかったというべきである旨主張する。 しかしながら,別件訴訟は,膨大な証拠や詳細な主張が提出され,審理期間も長期にわたった事案であって,決して容易なものであったということはできず,別件受任弁護士らの訴訟活動に,相当程度の労力及び時間を要したものというべきであ ることは,上記(2)で説示したとおりであって,被告が主張する事情は,別件受任弁護士らが訴訟追行に当たり要した労力の程度及び時間が,弁護士報酬相当額を特に増額すべき程度に大きなものであったとまではいえないことを基礎付ける事情にとどまるものというべきである。 ウさらに,被告は,①自ら訴えを提起する場合には,通常,顧問弁護士等と交渉して公費の支出を抑えるものであって,巨額の弁護士報酬の支出がされれば,被告の財政に負担を与えること,②別件訴訟は,愛知県(被告)の財務行政の適正化を志向する住民である原告らによって提起されたものであり,別件受任弁護士らも普通地方公共団体である愛知県(被告)の財務行政を適正化するために委任事務を行ったと推認され,その報酬についても,ビジネスにおいて生じた同規模の紛争における訴訟活動と比べて低額で合意がされることが推認されることなどから,相当な額の減額がされるべきである旨主張する。 しかしながら,前記認定事実(1)によれば,原告らは別件受任弁護士ら 模の紛争における訴訟活動と比べて低額で合意がされることが推認されることなどから,相当な額の減額がされるべきである旨主張する。 しかしながら,前記認定事実(1)によれば,原告らは別件受任弁護士らとの間で,旧報酬規程に基づいて計算した着手金相当額及び報酬金相当額を合算した金額を支払う旨の合意をしたと認められる上,弁護士報酬相当額については,当該訴訟における事案の難易,弁護士が要した労力の程度及び時間,認容された額,判決の結果普通地方公共団体が回収した額,住民訴訟の性格その他諸般の事情を総合的に勘案して定められるべきものであることは,前記1で説示したとおりである。そして,前記(1)で説示したとおり,別件訴訟の結果,被告が得た経済的利益は,合計8116万6125円に上り,別件受任弁護士らに対する報酬として1012万4946円を支払ったとしても,7100万円以上の経済的利益が残る一方で,別件訴訟が提起されなければ,被告が上記経済的利益を得ることはなかったこと,そもそも別件訴訟において被告側が原告らの主張を争ったために別件受任弁護士らが上記(2)で説示したとおりの相当程度の労力及び時間を要したことなども併せて総合的に考慮すれば,弁護士報酬相当額を上記金額としても,被告の財政に不相当な負担を与えるということはできず,被告が主張する事情は,上記(2)の判断を左右するもので はない。 以上によれば,被告の上記各主張はいずれも採用することはできない。 4 認容額及び遅延損害金の起算点について原告らは,前記3(2)で認定した弁護士報酬相当額1012万4946円を8名で除し,1円未満を切り捨てた上で,被告に対し,各126万5618円及び遅延損害金の支払を求めている。 住民訴訟を提起した者が勝訴した場合の弁護士報酬相当額に係る請求権は 012万4946円を8名で除し,1円未満を切り捨てた上で,被告に対し,各126万5618円及び遅延損害金の支払を求めている。 住民訴訟を提起した者が勝訴した場合の弁護士報酬相当額に係る請求権は,その性質上,不可分債権であると解されるが,不可分債権であっても,債権者ら各自が全部請求をせず,それぞれ一部請求をすることも当然に許されると解されるから,本件における認容額は,原告ら8名につき,請求額と同額の各126万5618円及び遅延損害金となる。 なお,地方自治法242条の2第12項に基づく被告の弁護士報酬相当額の支払義務は期限の定めのない債務と解するべきであり,被告が原告らから履行の請求を受けた時から遅滞に陥る(民法412条3項)ところ,前記前提事実(3)のとおり,原告らは,平成29年1月11日,被告に対し,別件訴訟に係る弁護士報酬相当額として,1012万4946円(消費税に相当する額を含む。)を支払うように請求しているから,本件の弁護士報酬相当額の遅延損害金の起算日は同月12日となる。 第4 結論よって,原告らの請求はいずれも理由があるから,これらを認容することとし,訴訟費用の負担につき,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する(なお,仮執行宣言を付することは相当でないので,これを付さないこととする。)。 名古屋地方裁判所民事第9部 裁判長裁判官市原義孝 裁判官平田晃史 裁判官山口貴央 裁判官山口貴央
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