平成24(行ウ)726 所得税更正処分等取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年11月19日 東京地方裁判所 租税
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判決文本文32,329 文字)

-1-平成25年11月19日判決言渡平成24年(行ウ)第726号所得税更正処分等取消請求事件 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求渋谷税務署長が平成22年11月24日付けで原告に対してした原告の平成21年分の所得税の更正処分(以下「本件更正処分」という。)のうち総所得金額4億8563万0274円,還付金の額に相当する税額1372万1300円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分(以下,「本件賦課決定処分」といい,本件更正処分と併せて「本件各処分」という。)を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,平成21年分の所得税について,所得税法(平成21年法律第13号による改正前のもの)95条2項に基づき,平成19年分の控除限度額を繰り越して使用することにより外国税額控除をして確定申告をしたところ,渋谷税務署長から,原告の平成20年分の所得税の確定申告書には同条6項所定の事項の記載等がなかったから,同項に規定する手続要件を満たしておらず,平成21年分の所得税について同条2項に基づく外国税額控除をすることはできないとして,同年分の所得税に係る更正処分(本件更正処分)及びこれに伴う過少申告加算税の賦課決定処分(本件賦課決定処分)を受けたことから,本件各処分(本件更正処分については申告を超える部分)の取消しを求める事案である。 1 関係法令の定め別紙2のとおり。なお,各別紙中の略語は,本文においても用いることとする。 -2- 2 前提事実(当事者間に争いがないか,文中記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)(1) 平成19年分の所得税の確定申告原告は,平成19年分の所得税について,所得税法 (当事者間に争いがないか,文中記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)(1) 平成19年分の所得税の確定申告原告は,平成19年分の所得税について,所得税法95条1項の所得税の額から控除する外国税額控除の金額を1億0110万8809円と記載した確定申告書(以下「平成19年分確定申告書」という。)を提出して確定申告をした。平成19年分確定申告書には,同年分の外国所得税額が1億0110万8809円,同年分の控除限度額が5億9043万9038円であるから,同年分の外国税額控除の金額は1億0110万8809円となる旨等が記載された「外国税額控除に関する明細書」が添付されていた(乙1)。 (2) 平成20年分の所得税の確定申告ア原告は,平成20年分の所得税について,外国税額控除の欄に金額の記載をしない確定申告書(以下「平成20年分確定申告書」という。)を提出して確定申告をした。平成20年分確定申告書には,「外国税額控除に関する明細書」や同控除の計算の基礎となる書類等の添付もされていなかった(乙2)。 イ原告は,平成21年5月8日,平成20年分確定申告書記載の株式譲渡等の繰越損失の適用に誤りがあったとして,修正申告をした(乙3)。 ウ原告は,平成22年2月17日,平成20年分の外国所得税額の控除漏れ等を理由として,平成20年分の所得税に係る更正の請求をした(以下「平成20年分更正の請求」という。乙4)。同請求の際,原告は,「外国税額控除に関する明細書」及び同控除の計算の基礎となる書類を添付した。 エ渋谷税務署長は,平成20年分更正の請求について,平成20年分確定申告書に所得税法95条5項に規定する金額の記載や書類の添付がなかったことから,同条1項の適用は認められ 類を添付した。 エ渋谷税務署長は,平成20年分更正の請求について,平成20年分確定申告書に所得税法95条5項に規定する金額の記載や書類の添付がなかったことから,同条1項の適用は認められないとして,平成22年11月-3-24日付けで更正をすべき理由がない旨の通知処分をした(乙5)。なお,原告は,同通知処分に対して不服申立てをしていない。 (3) 平成21年分の所得税の確定申告原告は,平成21年分の所得税について,外国税額控除の金額を4540万4049円と記載した確定申告書(以下「平成21年分確定申告書」という。)を提出して確定申告をした。平成21年分確定申告書には,同年分の外国所得税額が4651万4317円,同年分の控除限度額が370万0897円であり,また,同年分の控除限度超過額が4170万3152円であるところ,同条2項に基づき平成19年分の国税の控除余裕額を繰越使用することにより同額が控除されるから,同年分の外国税額控除の金額は4540万4049円となる旨等が記載された「外国税額控除に関する明細書」が添付されていた(甲1,2)。 なお,原告の主張によれば,原告は,米国デラウェア州法に基づきリミテッド・パートナーシップ(LPS)を組成する旨の契約を締結していたものであり,上記(1)ないし(3)の申告又は更正の請求における外国税額控除は,同契約に基づく分配金の受領や同契約に係る持分の譲渡について,外国所得税を納付したことを理由とするものである。 (4) 本件各処分等の経緯本件各処分及びこれに対する不服申立て等の経緯は,別表に記載のとおりである。このうち本件更正処分は,渋谷税務署長が,原告の平成21年分の所得税について,平成20年分確定申告書には所得税法95条6項に規定する金額 これに対する不服申立て等の経緯は,別表に記載のとおりである。このうち本件更正処分は,渋谷税務署長が,原告の平成21年分の所得税について,平成20年分確定申告書には所得税法95条6項に規定する金額の記載がなかったから,同条2項を適用することはできないとして,平成21年分確定申告書に記載された外国税額控除のうち同項に基づく4170万3152円の控除部分を否認し,外国税額控除の金額を370万0897円としたものである(乙6)。 また,原告は,平成24年10月17日,本件各処分の取消しを求めて本-4-件訴えを提起した。 3 本件各処分の根拠及び適法性に関する被告の主張本件各処分の根拠及び適法性に関する被告の主張は,別紙3のとおりである。 なお,後記第3の争点以外の点や,争点に関する被告の主張が認められた場合の税額算定過程等については,当事者間に争いがない。 第3 争点 1 所得税法95条6項に規定する同条2項の外国税額控除に係る手続要件の充足の有無 2 所得税法95条7項に規定する「やむを得ない事由」の有無第4 争点に関する当事者の主張 1 争点1(所得税法95条6項に規定する同条2項の外国税額控除に係る手続要件の充足の有無)について(被告の主張)(1) 外国税額控除制度の意義とその趣旨我が国の所得税法は,非永住者以外の居住者につき,国内及び国外から生ずる全ての所得を課税所得の範囲に含めている(同法7条1項1号)ため,当該居住者の国外所得につき,源泉地国において課税される場合には,居住地国である我が国との間でいわゆる国際的二重課税の問題が生じる。しかし,国家は,国家主権の派生としての課税権を有しており,国際的二重課税にいかに対処するかは本来的にはそれぞれの国家の立法政策,租税政策に属する事柄であって,国際 る国際的二重課税の問題が生じる。しかし,国家は,国家主権の派生としての課税権を有しており,国際的二重課税にいかに対処するかは本来的にはそれぞれの国家の立法政策,租税政策に属する事柄であって,国際的二重課税排除のために外国税額控除を認めなければならないものではなく,これを認めるとしても,政策目的の実現のために課税を減免するという,国家による一方的な恩恵的措置にすぎない。 我が国においては,国際的二重課税が,国民又は国内企業の海外進出を阻害し,国際的競争力の維持発展という国家の政策目的に反することから,かかる政策的要請に応えて,国際的二重課税を排除することを目的として,外-5-国税額控除制度を設けたものである。 (2) 外国税額控除制度の仕組み我が国の所得税法が規定する外国税額控除制度は,外国所得税額についてその控除を無制限に認めるものではなく,各年において納付の確定した外国所得税額と所得税の控除限度額とのいずれか低い金額を限度として,当年分の所得税の額から控除するものである(同法95条1項及び同法施行令222条)。我が国の外国税額控除制度は,我が国の国際的競争力の維持発展を図るために課税を減免するという,政策的考慮により設けられた制度であり,このことを反映し,かかる政策的考慮を超える適用を制限するため,控除限度額が設けられているのである。 また,我が国の外国税額控除制度は,控除限度超過額又は控除余裕額の翌年以降の繰越使用を認めているが,これは,外国所得税の発生時期と外国所得税の納付時期とのずれを調整するものである。すなわち,我が国における所得計算は発生主義を基調として行われ,他方,外国税額控除制度は,その年において納付することとなった外国所得税額を控除限度額の範囲内で控除するものであるが,外国所得の発生時期とこれに課さ 国における所得計算は発生主義を基調として行われ,他方,外国税額控除制度は,その年において納付することとなった外国所得税額を控除限度額の範囲内で控除するものであるが,外国所得の発生時期とこれに課される外国所得税の納付時期は,必ずしも一致するとは限らないことから,これによる不都合を調整するため,控除限度超過額又は控除余裕額の翌年以降の繰越使用が認められているのである。 (3) 外国税額控除に関する手続要件(所得税法95条5項及び6項)の趣旨前記(1)のとおり,外国税額控除の制度は,国家による恩恵的な措置であって,その要件をどのように定めるかも立法政策に属する。このような観点から,所得税法95条5項及び6項は,確定申告書に所定の金額等の記載があり,かつ,財務省令で定める書類を添付した場合に限って,外国税額控除を認めることとしたものである。このような限定がされたのは,外国税額控除制度において控除限度額が設けられるとともに(同条1項及び同法施行令2-6-22条),控除限度超過額又は控除余裕額の翌年以降の繰越使用が認められていることから(同法95条2項及び3項,同法施行令223条ないし225条),税額の計算の安定を確保し,もって租税法律関係の明確化を図るためである。 すなわち,当該手続要件は,この恩恵的措置の適用を受けようとする者において,所得税の確定申告を行うに当たり,申告書に外国税額控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細を記載し,かつ,外国所得税を課されたことを証する書類等を添付することにより,自らその意思内容を明確に示すことを要するものとしているのである。 (4) 所得税法95条6項の「各年」の意義ア所得税法95条2項は,各年において納付することとなる外国所得税の額が,その年の控除限度額を超える場合に,前3 を要するものとしているのである。 (4) 所得税法95条6項の「各年」の意義ア所得税法95条2項は,各年において納付することとなる外国所得税の額が,その年の控除限度額を超える場合に,前3年以内の各年の控除限度額のうち「その年に繰り越される部分として政令で定める金額」を繰越控除限度額としてその年分の所得税の額から控除する旨規定し,これを受けて,同条6項は「繰越控除限度額(中略。以下同じ。)に係る年」と定めているのである。このように,繰越控除限度額は,3年という連続した期間を基礎として算出されるものであるから,これを受けた同項にいう「繰越控除限度額に係る年」も,繰越控除限度額を算出する際に基礎とした上記期間を指すことは,文理から見ても明らかである。したがって,原告が主張するように「繰越控除限度額に係る年」を「繰越控除限度額が発生する年」などと解することはできない。 イそして,所得税法95条6項の規定は,同条2項の規定による外国税額控除がこれを受けようとする年の前3年以内の各年の控除余裕額を基に控除税額を計算する制度であり,納税者が当該外国税額控除を受けるためには,当該各年の控除限度額及び当該各年において納付することとなった外国所得税の額が明らかになっていることが前提となるため,立法政策と-7-して,当該外国税額控除を受けようとする者において,その控除税額の計算の基礎となる控除限度額及び外国所得税の額を当該各年分の確定申告書に記載する方法で逐次明らかにさせるとともに,納税者自らが当該外国税額控除の適用を受ける意思内容を明確に示すことを求めることによって,税額の計算の安定を確保し,もって租税法律関係の明確化を図ろうとするものである。 このような所得税法95条6項の趣旨,取り分け,税額の計算の安定を確保し,租税法律関係の ことを求めることによって,税額の計算の安定を確保し,もって租税法律関係の明確化を図ろうとするものである。 このような所得税法95条6項の趣旨,取り分け,税額の計算の安定を確保し,租税法律関係の明確化を図るという趣旨からすれば,「各年」を「国税の控除余裕額が存在する年」などと解することは相当ではない。このことは,「最も古い年以後の各年」として,時的要素以外の限定を付していない同項の文理に照らしてみても明らかである。 したがって,「最も古い年以後の各年」は「繰越控除限度額が発生する年」のうちの「各年」を意味するとの原告の主張は失当である。 ウ外国税額控除制度は,前3年以内の各年をその算定の前提として規定されているものであり(所得税法施行令224条1項及び225条1項),その選択によってはその後の繰越控除がないものとみなされる場合もあることから(同施行令224条2項及び225条2項参照),自らの経済取引を最も良く知る納税者において,外国税額控除の適用を継続して受けることを選択するかどうかを,また選択した場合にはその内容及び控除金額の計算過程を,確定申告書を通して明らかにする必要がある。このように,同法95条6項は,納税者の意思内容を明確にするために必要な手続要件であり,この要件を満たしていなくても納税者の意思内容は明確に示される旨の原告の主張には理由がない。 エなお,所得税法施行令224条3項の規定は,同法95条2項の規定の適用を受けた年後の各年における繰越控除限度額の計算に当たっては,一旦加算の対象となった前3年以内の各年に生じた控除余裕額とその額に相-8-当する当年分の控除限度超過額は,二重に加算の対象とすることのないよう翌年分以降はいずれもないものとして取り扱われるという当然のことを定めただけでなく,仮に,その規定の 余裕額とその額に相-8-当する当年分の控除限度超過額は,二重に加算の対象とすることのないよう翌年分以降はいずれもないものとして取り扱われるという当然のことを定めただけでなく,仮に,その規定の適用を受けることができたのに,納税者が確定申告書において加算しなかった場合でも,翌年分以降の取扱いでは加算可能であった控除余裕額とそれに相当する控除限度超過額はないものとみなす趣旨であって,同法施行令224条3項が適用される場面において同法95条6項の手続要件を不要とすることを定めたものではない。 したがって,同法施行令224条3項の規定が適用される場面であっても,同法95条2項の適用を受けるためには,同条6項の手続規定を満たさなければならない。 (5) 原告は所得税法95条6項所定の要件を充足していないこと原告は,平成19年分確定申告書に外国税額控除に関する記載をし,かつ,「外国税額控除に関する明細書」を同申告書に添付して確定申告を行ったものの,平成20年分確定申告書においては,外国税額控除に係る事項を記載せず,当該申告書に明細書の添付もしていない。そうすると,原告は,平成21年分の所得税について,「繰越控除限度額又は繰越外国所得税額に係る年のうち最も古い年以降の各年について当該各年の控除限度額及び当該各年において納付することとなった外国所得税の額を記載した確定申告書を提出」するという所得税法95条6項所定の要件を充足しておらず,同条2項に基づく外国税額控除を受けるための要件を欠いていることは明らかである。 したがって,原告の平成21年分の所得税の額の計算上,所得税法95条2項に規定する外国税額控除の適用を受けることはできない。 (原告の主張)(1) 外国税額控除の意義とその趣旨所得税法95条に定める外国税額控 の所得税の額の計算上,所得税法95条2項に規定する外国税額控除の適用を受けることはできない。 (原告の主張)(1) 外国税額控除の意義とその趣旨所得税法95条に定める外国税額控除制度は,所得税における国際的な二-9-重課税を排除する趣旨のものであり,納税者に対し,同一の所得に対して二重に課税されないことを保障する国際租税法上の基本的な制度である。すなわち,外国税額控除制度は,課税の公平と中立性の原則に基づき,国際的二重課税を排除し,国際取引に対する経済的中立性(資本輸出中立性)の維持を目的とする制度であり,所得課税の基本的構造の性格を有するものと解すべきであり,政策的課税減免規定や一方的な恩恵的措置であるなどとする被告の主張は誤りである。このような国際的二重課税の排除という趣旨に照らせば,同条5項及び6項に規定する確定申告書の記載に係る要件は,納税者の意思確認のために手続的に必要なものにとどまり,確認的なものにすぎないのであって,その欠けつの不備は治癒できる程度のものと解すべきである。 また,我が国の外国税額控除制度において控除限度額が設けられているのは,我が国の税率を超えて控除を認めることにより源泉地国を不当に有利にすることを回避するためであって,政策的考慮により設けられた外国税額控除制度の趣旨,目的を反映したものであるとの被告の主張は誤りである。 (2) 所得税法95条6項の手続要件の趣旨に係る被告の主張について前記(1)のとおり,外国税額控除制度は国家による恩恵的措置とはいえないから,これを前提にその手続要件について広範な立法裁量が認められる旨の被告の主張は誤りである。また,被告は,所得税法95条5項及び6項の手続要件につき,税額の計算の安定を確保し,もって租税法律関係の明確化を を前提にその手続要件について広範な立法裁量が認められる旨の被告の主張は誤りである。また,被告は,所得税法95条5項及び6項の手続要件につき,税額の計算の安定を確保し,もって租税法律関係の明確化を図る趣旨であると主張するが,同条6項については,繰越控除限度額が発生しない年の確定申告書に当該年の控除限度額及び外国所得税の額を記載させることは,税額の計算の安定や租税法律関係の明確化に何ら資するものではない。さらに,同条2項の適用に当たっては,同項の適用を受けようとする年分の確定申告書及び当該年分の所得税から控除しようとする控除余裕額が発生した年の確定申告書に所定の事項が記載されていれば,同項の適用を受けようとする納税者の意思内容は明確に示されているといえ,課税実務-10-上の不都合も生じない。 (3) 所得税法95条6項の規定の文理解釈ア文理解釈によるべきこと租税法については,租税法律主義の観点から厳格な解釈が要請されるから,その解釈は原則として文理解釈によるべきであり,みだりに拡張解釈や類推解釈をすることは許されない。 イ 「繰越控除限度額に係る年」の意義(ア) 所得税法95条6項は,同条2項の規定は「繰越控除限度額に係る.. 年」のうち最も古い年以後の各年について当該各年の控除限度額及び当該各年において納付することとなった外国所得税の額を記載した確定申告書を提出した場合に限り適用するものと規定する。 ここで,所得税法95条2項は,「(繰越控除限度額が)あるときは..... 」と規定していることからすれば,前3年以内の各年において繰越控除限度額がある場合を前提とした規定であるところ,この各年において繰越控除限度額がない場合には同項は適用されないし,この各年のうち繰越控除 規定していることからすれば,前3年以内の各年において繰越控除限度額がある場合を前提とした規定であるところ,この各年において繰越控除限度額がない場合には同項は適用されないし,この各年のうち繰越控除限度額が発生しない年については,当該年における控除限度額や外国所得税の額等は,同項の適用について何ら意味を持たない。すなわち,同項の適用に当たっては,前3年以内の各年のうち,繰越控除限度額がある年のみが,その適用の可否,額等に影響を及ぼすにすぎない。 これに加えて,「係る」とは一般に「かかわる。かかずらう。関係する。」という意味を持つことに鑑みれば,所得税法95条6項の「繰越控除限度額に係る年」とは「繰越控除限度額が発生した年」と解すべきである。 (イ) そして,所得税法95条2項の「繰越控除限度額」とは「その年の前年以前3年以内の各年(前3年以内の各年)の国税の控除余裕額又は地方税の控除余裕額を,最も古い年のものから順次に,かつ,同一年の-11-ものについては国税の控除余裕額及び地方税の控除余裕額の順に,その年の控除限度超過額に充てるものとした場合に当該控除限度超過額に充てられることとなる当該国税の控除余裕額の合計額に相当する金額」をいうものとされており(同法施行令224条1項),すなわち「繰越控除限度額」とは「国税の控除余裕額の合計額」を意味するから,「繰越控除限度額に係る年」とは「国税の控除余裕額が発生した年」であると解すべきである。 さらに,「国税の控除余裕額」とは,その年における「国税の控除限度額から当該外国所得税の額を控除した金額に相当する金額」であるところ(所得税法施行令224条4項),かかる控除は同法95条1項の適用により行われるものであるから,「国税の控除余裕額」は,その年において ら当該外国所得税の額を控除した金額に相当する金額」であるところ(所得税法施行令224条4項),かかる控除は同法95条1項の適用により行われるものであるから,「国税の控除余裕額」は,その年において同項が適用される場合に初めて存在(発生)するものであり,同項が適用されるためには同条5項の要件を満たす必要がある。 以上によれば,所得税法95条6項に規定する「繰越控除限度額に係る年」とは,「国税の控除余裕額が発生した年」であり,そのためには,その年において同条5項の要件を満たし,同条1項が適用されることが必要であると解すべきである。 ウ 「のうち最も古い年以後の各年」の意義所得税法95条6項は,「繰越控除限度額に係る年」に続けて,「のう.. ち. 最も古い年以後の各年について」と規定する。「のうち」という用語は,その前の単語を母集団(全体)として,その後にその母集団の一部を続ける意味を有する。かかる規定を文理解釈すれば,「最も古い年以後の各年」は,「繰越控除限度額に係る年」すなわち「繰越控除限度額が発生した年」のうちの年を意味するのであり,繰越控除限度額が発生しない年が「最も古い年以後の各年」に該当する余地はない。 さらに,これに続く所得税法95条6項の「当該各年の」及び「当該各-12-年において」の「当該各年」とは,「当該」という修飾語からしても,「最も古い年以後の各年」と同義である。つまり,同項の「各年」については,いずれも「繰越控除限度額に係る年のうち」という限定が付されているのである。 このことは,繰越控除限度額が発生しない年の控除限度額や外国所得税の額が所得税法95条2項の適用に当たり何ら実質的な意味を持たず,課税庁としても,繰越控除限度額が発生した年の確定申告書に同条 このことは,繰越控除限度額が発生しない年の控除限度額や外国所得税の額が所得税法95条2項の適用に当たり何ら実質的な意味を持たず,課税庁としても,繰越控除限度額が発生した年の確定申告書に同条6項所定の事項が記載されていれば,同条2項の適用に何ら支障は生じないことからも明らかである。 したがって,所得税法95条6項の「各年」とは,文理上,「繰越控除限度額(国税の控除余裕額)が発生した年」を意味し,そのためには,その年において同条5項の要件を満たし,同条1項が適用されることが必要であると解される。 (4) 国税庁様式の確定申告書等の体裁所得税法95条6項は,「最も古い年以後の各年について」,控除限度額及び外国所得税の額を確定申告書に記載することを求めている。しかし,国税庁様式の確定申告書には,外国税額控除に係る控除限度額や外国所得税の額を記載する欄はないから,これらの金額を確定申告書に記載することはできない。また,電子申告においては,入力内容が固定されており,これらの金額を入力することは不可能である。なお,同条1項の適用を受ける際に確定申告書に添付して提出することとされている「外国税額控除に関する明細書」には,控除限度額及び外国所得税の額を記載する欄が設けられているが,同明細書は確定申告書には当たらない。 確定申告は国税庁様式の確定申告書の提出又は電子申告によることが予定されているところ,控除限度額や外国所得税の額の記載又は入力が不可能であるにもかかわらず,それがないことを納税者の手続上の落ち度として外国-13-税額控除の適用を否定することは,国税庁様式の確定申告書等の不備による不利益を納税者に押し付けるものであって,許されない。 (5) 所得税法95条6項の「各年」の意義 国-13-税額控除の適用を否定することは,国税庁様式の確定申告書等の不備による不利益を納税者に押し付けるものであって,許されない。 (5) 所得税法95条6項の「各年」の意義以上のとおりの外国税額控除制度の趣旨,所得税法95条6項の文理解釈及び国税庁様式の確定申告書等の体裁からすれば,同項の「各年」とは,「繰越控除限度額(国税の控除余裕額)が発生した年」を意味し,そのためには,その年において同条5項の要件を満たし,同条1項が適用されることが必要であると解すべきである。 なお,所得税法施行令224条3項は,同法95条2項が適用された場合,その対象となった前3年以内の各年の控除余裕額と当年分の控除限度超過額を再び使用することはできないという当然のことを規定するにすぎないから,原告が主張する同条6項の解釈に何ら影響を及ぼすものではない。 (6) 原告は所得税法95条6項所定の要件を充足していること原告の平成19年分の所得税については,所得税法95条5項の要件を満たし,同条1項が適用された結果,繰越控除限度額(国税の控除余裕額)が発生した。したがって,同年は,同条6項の「繰越控除限度額に係る年」に当たる。 これに対し,原告の平成20年分の所得税については,平成20年分更正の請求が認められなかった(すなわち,所得税法95条5項の要件を満たさないとして,同条1項が適用されなかった。)結果,繰越控除限度額(国税の控除余裕額)が発生しなかった。したがって,同年は,同条6項の「繰越控除限度額に係る年」ではなく,「各年」にも当たらない。 そうすると,原告の平成21年分の確定申告については,所得税法95条6項の「繰越控除限度額に係る年」及び「各年」は平成19年のみであるところ,原告は,平成19年分の所得税の確定申告 も当たらない。 そうすると,原告の平成21年分の確定申告については,所得税法95条6項の「繰越控除限度額に係る年」及び「各年」は平成19年のみであるところ,原告は,平成19年分の所得税の確定申告において,控除限度額及び外国所得税の額を記載した明細書を添付して提出しているから,同項の要件-14-を満たしている。 2 争点2(所得税法95条7項に規定する「やむを得ない事情」の有無)について(原告の主張)(1) 所得税法95条7項に規定する「やむを得ない事情」の意義所得税法95条7項に規定する「やむを得ない事情」とは,天災その他本人の責めに帰することのできない客観的な事情があって,外国税額控除の制度趣旨に照らし,納税者に対してその適用を拒否することが不当又は酷となる場合をいう。 (2) 本件につき「やむを得ない事情」が認められることア国税庁は,所得税の確定申告書の様式を提供しているところ,これは,税務署における事務処理の迅速化の便宜を図ると同時に,必ずしも租税法規に精通しているわけではない納税者が,租税法規に従って適正に申告することを目的としたものである。そうすると,国税庁が提供する確定申告書の様式は,租税法規において予定されている記載項目を全て網羅する必要があるというべきである。 イ所得税法95条6項は,「最も古い年以後の各年について」,控除限度額及び外国所得税の額を確定申告書に記載することを求めている。しかし,国税庁様式の確定申告書には,外国税額控除に係る控除限度額や外国所得税の額を記載する欄はないから,これらの金額を確定申告書に記載することはできない。また,電子申告においては,入力内容が固定されており,これらの金額を入力することは不可能である。確定申告は国税庁様式の確定申告書の提出又は電子申告によることが を確定申告書に記載することはできない。また,電子申告においては,入力内容が固定されており,これらの金額を入力することは不可能である。確定申告は国税庁様式の確定申告書の提出又は電子申告によることが予定されているところ,控除限度額や外国所得税の額の記載又は入力が不可能であるため,納税者はこれらの金額を記載又は入力することができないのである。 ウ他方,「外国税額控除に関する明細書」には,所得税法95条6項所定-15-の事項の記載欄が設けられているが,同明細書は確定申告書には当たらない。このような国税庁様式の確定申告書の不都合性は,従前から認識されており,平成23年法律第114号による同項の改正により,要件が確定申告書への記載から所定事項を記載した明細書の添付に変更されている。 エまた,被告が指摘するパンフレット,明細書及びホームページ等を見ても,原告の平成20年分の所得税のように外国税額控除の適用を受けない場合において,その年分の確定申告書に所得税法95条6項所定の事項をどのように記載するか,また,「外国税額控除に関する明細書」を提出しなければならないのか等について,全く明らかにされていない。 オ以上の事情を総合すれば,仮に原告の確定申告が所得税法95条6項所定の要件を満たさないとしても,国税庁様式の確定申告書等の不備や被告による案内不足等の天災その他本人の責めに帰すことのできない客観的事情があり,外国税額控除の制度趣旨に照らせば,原告に対してその適用を受けさせないことは不当又は酷であるというべきである。したがって,本件には同条7項に規定する「やむを得ない事情」があるといえるから,なお同条2項の規定が適用されるものである。 (被告の主張)(1) 所得税法95条7項に規定する「やむを得ない事情」の意義所得税法95条6項 に規定する「やむを得ない事情」があるといえるから,なお同条2項の規定が適用されるものである。 (被告の主張)(1) 所得税法95条7項に規定する「やむを得ない事情」の意義所得税法95条6項に規定する外国税額控除を受けるための手続要件は,税額の計算の安定を確保し,租税法律関係の明確化を図るとともに,恩恵的措置を受ける者に自らその意思内容を明確に示すことを求める趣旨であるから,上記手続要件を満たしていないにもかかわらず同条2項の規定による外国税額控除を受けることができる余地を認めるものである同条7項の「やむを得ない事情」とは,天災,又は交通途絶その他の納税者の責めに帰することのできない客観的な事情をいい,納税者の法の不知や事実の誤認等の主観的な事情はこれに当たらない。 -16-(2) 本件につき「やむを得ない事情」が認められないことア所得税は,納税者自身が租税債務に関する事項を申告する申告納税方式(所得税法120条,通則法16条2項1号)を採用しているところ,確定申告書には,課税標準である所得金額,所得控除の額,税額計算の特例の適用を受ける場合の計算内容,税額控除の額,源泉徴収税額,予定納税額その他の課税要件事実を中心として,確定申告により第3期分として納付する納税額又は還付を受ける還付金が算出されるまでの過程を記載する(所得税法120条1項,2項及び同法施行規則47条)が,所得税の確定申告書は,法人税のそれと違って,書式が法定されているわけではない。 イ国税庁において,納税者の便宜を図り,かつ,書式の統一化を図るため,毎年その年分の確定申告書の記載事項を具備した確定申告書用紙を作成の上配付することとしているが,所得税法に規定する記載事項は複雑で多岐にわたっており,これらを全て網羅した様式を作成することは非常に困難 その年分の確定申告書の記載事項を具備した確定申告書用紙を作成の上配付することとしているが,所得税法に規定する記載事項は複雑で多岐にわたっており,これらを全て網羅した様式を作成することは非常に困難であり,仮にそれらを全て網羅した申告書を設けたとしても,納税者にとっては非常に使いづらいものとなってしまう。そこで,国税庁においては,納税者の利便性や大量回帰的に提出される申告書の電算処理等を考慮して,所得区分の項目を一部に絞った申告書(申告書A)や所得税法120条の規定を始めとする申告書の記載事項をできるだけ網羅的に織り込んだ申告書(申告書B)等を提供するとともに,譲渡所得等の分離課税がある場合の申告書別表(第三表),損失がある場合の申告書別表(第四表)を組み合わせて記載できるようにしており,併せて,各種控除における明細書等を提供しこれらを申告書に添付することによって,納税者による適正な申告を確保する仕組みにしており,これら提供している申告書の記載方法等については,確定申告の手引等のパンフレットの提供や申告書類の記載例等を国税庁ホームページに掲載することにより周知しているところである。 ウそして,国税庁の提供する申告書用紙には,その年分において外国税額-17-控除を受ける金額の記載欄しかないところ,所得税法95条1項ないし3項に基づき外国税額控除を受けるためには,その年分における控除額のほか,国税や地方税の繰越控除に係る記載等を要することから,国税庁においては,これら必要事項を網羅した「外国税額控除に関する明細書」を提供し,確定申告書の外国税額控除欄に金額を記載するとともに,その金額の計算根拠が明らかになる明細書等を確定申告書に添付するようにする旨を,同明細書やその記載事項の説明書(明細書控の裏面)及び確定申告書の記載例に係るパン 税額控除欄に金額を記載するとともに,その金額の計算根拠が明らかになる明細書等を確定申告書に添付するようにする旨を,同明細書やその記載事項の説明書(明細書控の裏面)及び確定申告書の記載例に係るパンフレット等により案内しているところである。 エ以上のとおり,我が国の所得税については申告納税方式が採用されており,法令等に基づき申告書を作成する責任は納税者自身にある上,国税庁が便宜上提供している確定申告書用紙には外国税額控除額そのものを記載し,この申告書用紙とともに提供している「外国税額控除に関する明細書」にその計算の明細を記入するなどして適正な申告ができるよう案内している。現に,原告自身も,平成19年分確定申告書においては,この明細書を添付して申告していたのであって,これらの事情を総合すると,原告が平成20年分確定申告書において外国税額控除に関する記載をしていなかったこと及び外国税額控除に関する書類の添付等もなく所得税法95条6項所定の手続を履践していなかったことは,原告の法の不知や事実の誤認等の主観的事情に該当するというべきであり,天災,交通途絶その他本人の責めに帰すことのできない客観的事情には到底当たらない。したがって,本件につき同条7項に規定する「やむを得ない事情」が認められないことは明らかである。 第5 当裁判所の判断 1 争点1(所得税法95条6項に規定する同条2項の外国税額控除に係る手続要件の充足の有無)について(1) 外国税額控除制度の趣旨及び仕組み-18-ア我が国の所得税法は,非永住者以外の居住者につき,国内及び国外から生ずる全ての所得について所得税を課するものとしていることから(同法7条1項1号),当該居住者の国外所得について国外において課税される場合には,我が国の課税との間でいわゆる国際的二重課税の 国外から生ずる全ての所得について所得税を課するものとしていることから(同法7条1項1号),当該居住者の国外所得について国外において課税される場合には,我が国の課税との間でいわゆる国際的二重課税の問題が生じるところ,同法は,我が国の国際的競争力の維持発展を図るという政策的要請の下に,国際的二重課税を防止し,海外取引に対する課税の公平と税制の中立性を維持することを目的として,外国所得税の額を一定の限度で我が国の所得税の額から直接控除することを認める外国税額控除の制度(同法95条)を採用したものと解される。 イそして,所得税法は,上記の趣旨,目的を超える控除を制限するため,①居住者が各年において納付することとなる外国所得税につき,その年分の所得税の額のうち国外所得に対応する部分である控除限度額を限度として,その額をその年分の所得税の額から控除することを認めるとともに(同法95条1項,同法施行令222条),②国外所得の発生時期と外国所得税の納付時期とのずれを一定の範囲で調整するため,各年の外国所得税の額が控除限度額に満たない場合の控除余裕額又は各年の外国所得税の額が控除限度額を超える場合の控除限度超過額につき,翌年以降の繰越使用を3年以内に限り認めている(同法95条2項,3項,同法施行令224条,225条。なお,控除限度額及び控除余裕額につき,特に断らない限り,国税又は地方税に係るものを特に区別せずに記載することとする。 以下同じ。)。 (2) 外国税額控除に係る手続要件の趣旨所得税法95条5項は,同条1項の外国税額控除の規定につき,確定申告書に同項の規定による控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細の記載等がある場合に限り,適用するものと定めているところ,これは,前記(1)イのとおり,外国税額控除制度において控除限度額が設け 告書に同項の規定による控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細の記載等がある場合に限り,適用するものと定めているところ,これは,前記(1)イのとおり,外国税額控除制度において控除限度額が設けられていると-19-ともに,控除余裕額又は控除限度超過額の翌年以降の繰越使用が認められていることから,外国税額控除の規定の適用には確定申告の段階で外国税額控除を受けること及びその計算関係等を明示することを要するものとすることによって,税額の計算の安定を確保し,もって租税法律関係の明確化を図る趣旨であると解される。 また,所得税法95条6項は,控除余裕額又は控除限度超過額の繰越使用による外国税額控除を定める同条2項及び3項の規定につき,所定の事項を記載した確定申告書の提出等がされた場合に限り適用するものと定めているところ,当該繰越使用に係る手続要件についても,上記と同様に,税額の計算の安定を確保し,もって租税法律関係の明確化を図る趣旨のものと解するのが相当である。 (3) 所得税法95条6項の「各年」の意義ア所得税法95条2項は,居住者が各年において納付することとなる外国所得税の額がその年の控除限度額を超える場合において,前3年以内の各年の控除限度額のうちその年に繰り越される部分として政令で定める金額すなわち繰越控除限度額があるときは,その繰越控除限度額を限度として,その超える部分の金額をその年分の所得税の額から控除する旨を規定するところ,この繰越控除限度額とは,前3年以内の各年の国税の控除余裕額又は地方税の控除余裕額を,最も古い年のものから順次に,かつ,同一年のものについては国税の控除余裕額及び地方税の控除余裕額の順に,その年の控除限度超過額に充てるものとした場合に当該控除限度超過額に充てられることとなる当該国税の控除余裕額の から順次に,かつ,同一年のものについては国税の控除余裕額及び地方税の控除余裕額の順に,その年の控除限度超過額に充てるものとした場合に当該控除限度超過額に充てられることとなる当該国税の控除余裕額の合計額に相当する金額をいうものである(同法施行令224条1項)。すなわち,同法95条2項は,その年において納付することとなる外国所得税の額がその年の控除限度額に満たない場合の差額に相当する控除余裕額(同法施行令224条4項,5項)の翌年以降の繰越使用を認める規定であって,同規定に基づ-20-く控除の限度額(繰越控除限度額)は,その控除を受けようとする年の前3年以内の各年の控除余裕額を基に計算されるものである。 また,所得税法施行令224条3項は,同法95条2項の規定の適用を受けることができる年後の各年に係る同法施行令224条1項の規定の適用については,同項の規定により当該適用を受けることができる年の控除限度超過額に充てられることとなる国税の控除余裕額及び地方税の控除余裕額並びにこれらの金額の合計額に相当する金額の当該控除限度超過額は,ないものとみなす旨を規定しているから,その年において納付することとなる外国所得税の額がその年の控除限度額を超え,同法95条2項に基づく従前の控除余裕額の繰越使用による控除が可能である場合には,納税者が同項に基づく控除をして申告をしなかった場合(すなわち,納税者が単に同法95条1項に基づく控除の適用しか求めなかった場合,あるいは同項に基づく控除の適用を求めなかった場合)であっても,翌年以降においては,同法95条2項に基づく控除に使用可能であった控除余裕額とその金額に相当する控除限度超過額は,ないものとみなされることとなる。 以上のとおり,所得税法95条2項に基づき控除余裕額の繰越使用により所得税の額から に基づく控除に使用可能であった控除余裕額とその金額に相当する控除限度超過額は,ないものとみなされることとなる。 以上のとおり,所得税法95条2項に基づき控除余裕額の繰越使用により所得税の額から控除し得る額は,これを受けようとする年の前3年以内の各年の控除限度額及び当該各年において納付することとなった外国所得税の額のそれぞれに基づいて計算されるものであり,納税者が上記各年において同条1項に基づく控除の適用を求めたか否かとは直接の関係がないものとされている。 イ所得税法95条6項は,同条2項の規定は,繰越控除限度額に係る年のうち最も古い年以後の各年について当該各年の控除限度額及び当該各年において納付することとなった外国所得税の額を記載した確定申告書を提出した場合に限り適用するものとしているところ,当該要件は,前記ア-21-のとおり同条2項に基づき控除し得る額が前3年以内の各年の控除限度額及び当該各年において納付することとなった外国所得税の額のそれぞれに基づいて計算されることを踏まえて,その計算の基礎となる控除限度額及び外国所得税の額を当該各年分の確定申告書に記載する方法で逐次明らかにさせておくとともに,納税者に従前の控除余裕額を翌年以降の繰越使用の対象とする意思があることを各年分の確定申告書上に明らかにさせることよって,税額の計算の安定を確保し,もって租税法律関係の明確化を図ったものと解される。 そうすると,所得税法95条6項にいう「各年」とは,「繰越控除限度額に係る年のうち最も古い年」,すなわち,同条2項に基づく控除を受けようとする年の前年以前3年以内であって同法施行令224条1項に基づきその年の控除限度超過額に充てられることとなる国税の控除余裕額の存在する年のうち最も古い年を始まりとして,それ以後同法95条2項に基づ する年の前年以前3年以内であって同法施行令224条1項に基づきその年の控除限度超過額に充てられることとなる国税の控除余裕額の存在する年のうち最も古い年を始まりとして,それ以後同法95条2項に基づく控除を受けようとする年までの各年を意味するものと解すべきである。また,このような解釈は,「各年」につき開始時点以外には明確な限定を付していない同項の文理に照らしても自然なものということができる。 ウこの点につき,原告は,所得税法95条6項の「各年」とは,文理上,「繰越控除限度額が発生した年」すなわち「国税の控除余裕額が発生した年」を意味し,そのためには,その年において同条5項の要件を満たし,同条1項が適用されることが必要である旨を主張する。 しかし,前記アのとおり,所得税法95条2項に基づき控除余裕額の繰越使用により所得税の額から控除し得る額は,これを受けようとする年の前3年以内の各年の控除限度額及び当該各年において納付することとなった外国所得税の額のそれぞれに基づいて計算されるものであって,「繰越控除限度額に係る年のうち最も古い年」(すなわち,前記イのとおり,-22-同項に基づく控除を受けようとする年の前年以前3年以内であって同法施行令224条1項に基づきその年の控除限度超過額に充てられることとなる国税の控除余裕額の存在する年のうち最も古い年)以後の各年について,その年分の所得税につき同法95条1項の適用がされたか否かにかかわらず,その年の控除限度額又はその年において納付することとなった外国所得税の額は,上記の控除し得る額の計算に影響するものである(同法95条1項の適用がされないが上記の計算に影響する例として,例えば,本件において平成20年分の所得税に関して国外所得が発生していたが,それに対応する外国所得税額の納付時期が平成2 るものである(同法95条1項の適用がされないが上記の計算に影響する例として,例えば,本件において平成20年分の所得税に関して国外所得が発生していたが,それに対応する外国所得税額の納付時期が平成21年以降となることが予想されるとした場合において,納税者としては,平成21年以降における同法95条2項に基づく従前の控除余裕額の繰越使用を見越して,平成20年分の所得税の確定申告に際して,同年分における控除限度額を記載しておくことが考えられる。)。そうすると,確定申告書に控除限度額及び納付することとなった外国所得税の額を記載すべきであるのは同法95条1項が適用される年に限られる旨の原告の主張は,このような同条2項に基づく控除余裕額の繰越使用により所得税の額から控除し得る額の計算の仕組みに照らし,根拠に乏しいものといわざるを得ない。 また,原告の主張のように,所得税法95条6項に規定する「各年」がその年において同条5項の要件を満たし,同条1項が適用される年のみを意味するのであれば,当該年については,そもそも同条5項に基づき確定申告書に同条1項の規定による控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細の記載がされており,その明細の内容としてその年の控除限度額及びその年において納付することとなった外国所得税の額が記載されているはずであるから,同条6項のうち,「各年」についてその年の控除限度額及び外国所得税の額を記載した確定申告書を提出することを要求している部分は,実質的には意味のない規定ということになりかねない。 -23-さらに,原告の主張は,所得税法95条6項に規定する「繰越控除限度額に係る年のうち最も古い年以後の各年について」との文言について,「『繰越控除限度額に係る年のうち』『最も古い年以後の各年』について」というように,「繰越控除限 法95条6項に規定する「繰越控除限度額に係る年のうち最も古い年以後の各年について」との文言について,「『繰越控除限度額に係る年のうち』『最も古い年以後の各年』について」というように,「繰越控除限度額に係る年のうち」が直後の「最も古い年」のみならずそれを超えて「各年」まで直接修飾するという解釈をするものと考えられるが,特に文言上の手掛かりがないにもかかわらずこのような解釈を採ることは,文理上困難といわざるを得ない。 もとより,原告の主張のように,所得税法95条1項が適用されずに外国税額控除が行われない年については確定申告書への控除限度額及び外国所得税の額の記載を要求せず,後に同条2項に基づく控除余裕額の繰越使用により控除を受けようとする年に,それ以前の各年に係る控除限度額及び外国所得税の額をまとめて確定申告書に記載することを要求するという手続上の仕組みも,立法政策としては考え得るところである。しかし,所得税法の規定を見ると,前記(2)のとおり,同法95条に定める外国税額控除に係る手続要件は,税額の計算の安定を確保し,もって租税法律関係の明確化を図る趣旨のものと解されるところであって,そのような趣旨からしても,同条6項の文理からしても,前記イのとおり,同項所定の要件は,同条2項に基づき控除し得る額の計算の基礎となる控除限度額及び外国所得税の額を各年分の確定申告書に記載する方法で逐次明らかにさせておくとともに,納税者に従前の控除余裕額を翌年以降の繰越使用の対象とする意思があることを各年分の確定申告書上に明らかにさせることよって,税額の計算の安定を確保し,もって租税法律関係の明確化を図ったものと解釈するのが合理的であり,本件においても,平成21年分の所得税について同項に基づく控除をするために,平成20年分の所得税の確定申告書(外国税額 定を確保し,もって租税法律関係の明確化を図ったものと解釈するのが合理的であり,本件においても,平成21年分の所得税について同項に基づく控除をするために,平成20年分の所得税の確定申告書(外国税額控除に関する明細書)に,その年分の控除限度額及び外国所得税の額がいずれも0であるような場合も含めてその記載を要求-24-することは意味の無いことではない。 以上のとおりであるから,原告の主張を採用することはできない。 エなお,原告は,そのほか,国税庁が提供する所得税の確定申告書の様式等に係る主張をするが(前記第4の1(原告の主張)(4)),所得税の確定申告書については書式が法令上定められているわけではなく,原告の主張は確定申告に係る実務上の取扱いを指摘するにとどまることからすれば,それが所得税法95条6項の「各年」の法律上の意義に係る解釈を直接左右するものとはいえず,原告の当該主張は同条7項に規定する「やむを得ない事情」の有無の問題として検討するのが相当である。 (4) 本件における所得税法95条6項所定の要件の充足の有無原告は,平成21年分の所得税について,同年分の控除限度超過額が4170万3152円であるところ,所得税法95条2項に基づき,平成19年分の国税の控除余裕額を繰越使用することにより同額を所得税の額から控除すること等を内容とする確定申告をしたものである(前記前提事実(3),甲2)。 上記申告につき,所得税法95条6項に規定する「繰越控除限度額に係る年のうち最も古い年」は平成19年であるから,同項によれば,同条2項の規定が適用されるためには,平成19年以後の各年について,当該各年の控除限度額及び当該各年において納付することとなった外国所得税の額を記載した確定申告書を提出している必要がある(同条6項 同条2項の規定が適用されるためには,平成19年以後の各年について,当該各年の控除限度額及び当該各年において納付することとなった外国所得税の額を記載した確定申告書を提出している必要がある(同条6項の「各年」の意義につき,前記(3)イ参照)。しかし,原告は,平成20年分確定申告書には,その添付書類を含めて,同年の控除限度額及び同年において納付することとなった外国所得税の額を記載していないのであるから(前記前提事実(2)ア),同条6項所定の同条2項の適用要件を満たしたものということはできない。 2 争点2(所得税法95条7項に規定する「やむを得ない事情」の有無)について-25-(1) 所得税法95条7項に規定する「やむを得ない事情」の意義前記の1(2)及び(3)イのとおり,所得税法95条6項に規定する同条2項の適用要件は,税額の計算の安定を確保し,もって租税法律関係の明確化を図る趣旨のものと解されるところ,その要件を満たしていないにもかかわらずなお同項の規定による外国税額控除の余地を認めるものである同条7項の「やむを得ない事情」とは,天災,交通途絶その他の納税者の責めに帰することのできない客観的な事情をいい,納税者の法の不知や事実の誤認等の主観的な事情はこれに当たらないものと解するのが相当である。 (2) 本件における「やむを得ない事情」の有無ア原告の主張の概要原告は,国税庁が提供する所得税の確定申告書の書式には外国税額控除に関する控除限度額や外国所得税の額等を記載する欄が設けられていなかったこと,電子申告を行う場合の入力画面においてもこれらの金額等の入力が不可能であったこと,確定申告書への所得税法95条6項所定の事項の記載方法等について被告の案内が不足していたこと等をもって,原告が平成20年分確定申告書に同項所定の においてもこれらの金額等の入力が不可能であったこと,確定申告書への所得税法95条6項所定の事項の記載方法等について被告の案内が不足していたこと等をもって,原告が平成20年分確定申告書に同項所定の事項を記載しなかったことには同条7項に規定する「やむを得ない事情」がある旨を主張する。 イ国税庁が提供する確定申告書の書式についてそもそも,所得税については,確定申告書の書式が法令上定められているわけではなく,国税庁において確定申告書の書式を作成して提供している(乙10,12,弁論の全趣旨)のは,納税者の便宜を図るとともに,書式の統一化による税務処理上の効率化を図る趣旨のものと解され,納税者による確定申告書への記載内容を限定する性質のものではないから,仮に国税庁が提供する確定申告書の書式に法令上確定申告書への記載が要求されている事項の記入欄がなかったとしても,それだけで直ちに納税者が当該事項の記載義務を免れるというものではない。 -26-また,平成20年分の所得税について見ると,国税庁が作成し納税者に提供していた確定申告書の書式には,それ自体としては,外国税額控除の金額を記載する欄しか設けられておらず,その年の控除限度額及びその年において納付することとなった外国所得税の額を記載する欄は設けられていないものの(乙10,12),国税庁は,この確定申告書の書式と併せて,「外国税額控除に関する明細書」の書式を作成して納税者に提供しており,同明細書には,その年の控除限度額及びその年において納付することとなった外国所得税の額その他外国税額控除に関する事項の記載欄が設けられているほか,「この明細書は,申告書と一緒に提出してください。」との記載もされていることが認められる(乙10~12)。そして,この「外国税額控除に関する明細書」が確定申告書に 事項の記載欄が設けられているほか,「この明細書は,申告書と一緒に提出してください。」との記載もされていることが認められる(乙10~12)。そして,この「外国税額控除に関する明細書」が確定申告書に添付されて提出された場合には,同明細書も確定申告書と一体をなすものとして,同明細書の記載をもって確定申告書に記載があるものと解することができるから,納税者において国税庁が提供する確定申告書の書式を用いる場合であっても,所得税法95条6項が要求する控除限度額及び外国所得税の額を確定申告書に記載することに,特に支障があったものということはできない。 このことは,同条5項において,同条1項の規定は確定申告書に外国税額控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細の記載がある場合に限り適用するものとされているところ,国税庁が提供する確定申告書の書式には外国税額控除を受けるべき金額の計算に関する明細の記載欄は設けられていないものの,同明細を「外国税額控除に関する明細書」に記載して確定申告書に添付して提出すれば,確定申告書に同明細の記載があるものとして同条1項の規定が適用されるとの実務上の取扱いがされていたこと(弁論の全趣旨),現に,原告自身も,平成19年分の所得税については,平成19年分確定申告書に外国税額控除の金額を記載し,これに添付した「外国税額控除に関する明細書」に当該金額の計算に関する明細の-27-記載をすることにより,同項の規定に基づく外国税額控除を受けていること(甲1,2)からしても,明らかである。 なお,平成23年法律第114号による改正後の所得税法95条6項は,「第2項(略)の規定は,繰越控除限度額(略)に係る年のうち最も古い年以後の各年分の申告書等に当該各年の控除限度額及び当該各年において納付することとなつた控除対象外国所得税の 所得税法95条6項は,「第2項(略)の規定は,繰越控除限度額(略)に係る年のうち最も古い年以後の各年分の申告書等に当該各年の控除限度額及び当該各年において納付することとなつた控除対象外国所得税の額を記載した書類の添付があ(略)る場合に限り,適用する。」旨を規定し,所定の事項を記載した書類を申告書等に添付することを同条2項の適用の要件としているが,この改正は,申告書等の添付書類に所定の事項を記載することを求める旨を明示的に規定したものであって,上記改正前の同条6項が適用される事案について,確定申告書に添付された明細書上の記載をもって確定申告書に記載があるものと解することと抵触するものではない。 ウ電子申告について電子申告の場合についても,平成20年の所得税の確定申告に関し,確定申告書自体にその年の控除限度額及びその年において納付することとなった外国所得税の額を入力することが可能であったかどうかはともかく,前記イの場合と同様に,「外国税額控除に関する明細書」等にこれらの額を記載し,これを確定申告書と併せて提出する方法等により,所得税法95条6項所定の要件を満たし得るものと考えられ,本件証拠関係上,そのような方法が不可能であったとは認められない。そうすると,納税者において電子申告を用いる場合であっても,所得税法95条6項所定の要件を満たすことに特に支障があったものと認めることはできない。 エ被告による案内について原告は,被告が提供するパンフレット,明細書及びホームページ等を見ても,原告の平成20年分の所得税のように外国税額控除の規定の適用を受けない場合において,その確定申告書に所得税法95条6項所定の事項-28-をどのように記載するか,また,「外国税額控除に関する明細書」を提出しなければならないのか等について,全く明ら の適用を受けない場合において,その確定申告書に所得税法95条6項所定の事項-28-をどのように記載するか,また,「外国税額控除に関する明細書」を提出しなければならないのか等について,全く明らかにされていない旨を主張する。 しかし,本件証拠関係上,被告において,納税者に対し,原告の平成20年分の所得税のように外国税額控除の規定の適用を受けないものとして確定申告書を提出する場合について,その年は同条6項に規定する「各年」に当たらずその年の控除限度額及びその年において納付することとなった外国所得税の額を確定申告書に記載することを要しないとか,「外国税額控除に関する明細書」を利用することはできないといった誤解を招くような案内をしていたとは認められないから,仮に原告がそのように理解していたとしても,それが被告による案内の内容を原因とするものということはできない。 オ小括以上のことからすれば,原告が平成20年分確定申告書に所得税法95条6項所定の事項を記載しなかったことについては,天災,交通途絶その他の原告の責めに帰することのできない客観的な事情によるものということはできず,結局,同項に規定する「各年」の意義に係る原告の解釈の誤りという主観的な事情によるものというほかないから,同条7項に規定する「やむを得ない事情」があるものと認めることはできない。 3 本件各処分の適法性以上によれば,原告は,平成21年分の所得税の額の計算上,所得税法95条2項に基づく外国税額控除を受けることはできない。そして,本件各処分の根拠及び適法性につき,以上の点を除けば当事者間に争いはないから(前記第2の3),本件各処分はいずれも適法ということができる。 第6 結論よって,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用 ,以上の点を除けば当事者間に争いはないから(前記第2の3),本件各処分はいずれも適法ということができる。 第6 結論よって,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用-29-の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官谷口豊 裁判官竹林俊憲 裁判官貝阿彌亮 -30-別紙2関係法令の定め第1 所得税法(平成21年法律第13号による改正前のもの。本判決において同じ。)95条(外国税額控除) 1 1項居住者が各年において外国所得税(外国の法令により課される所得税に相当する税で政令で定めるものをいう。以下同じ。)を納付することとなる場合(居住者が通常行われる取引と認められないものとして政令で定める取引に基因して生じた所得に対する外国所得税を納付することとなる場合を除く。)には,第89条から第92条まで(税率及び配当控除)の規定により計算したその年分の所得税の額のうち,その年において生じた所得でその源泉が国外にあるもの(以下「国外所得」という。)に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額(以下「控除限度額」という。)を限度として,その外国所得税の額をその年分の所得税の額から控除する。 2 2項居住者が各年において納付することとなる外国所得税の額がその年の控除限度額と地方税控除限度額として政令で定める金額との合計額を超える場合において,その年の前年以前3年内の各年(以下「前3年以内の各年」という。)の控除限度額のうちその年に繰り越される部分として政令で定める金額( 税控除限度額として政令で定める金額との合計額を超える場合において,その年の前年以前3年内の各年(以下「前3年以内の各年」という。)の控除限度額のうちその年に繰り越される部分として政令で定める金額(以下「繰越控除限度額」という。)があるときは,政令で定めるところにより,その繰越控除限度額を限度として,その超える部分の金額をその年分の所得税の額から控除する。 3 3項居住者が各年において納付することとなる外国所得税の額がその年の控除限度額に満たない場合において,その前3年以内の各年において納付することとなった外国所得税の額のうちその年に繰り越される部分として政令で定め-31-る金額(以下「繰越外国所得税額」という。)があるときは,政令で定めるところにより,当該控除限度額からその年において納付することとなる外国所得税の額を控除した残額を限度として,その繰越外国所得税額をその年分の所得税の額から控除する。 4 4項居住者が納付することとなった外国所得税の額の全部又は一部につき前3項の規定の適用を受けた年の翌年以後の各年において当該外国所得税の額が減額された場合におけるその減額されることとなった日の属する年の前3項の規定の適用については,政令で定めるところによる。 5 5項第1項の規定は,確定申告書に同項の規定による控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細の記載があり,かつ,外国所得税を課されたことを証する書類その他財務省令で定める書類の添附がある場合に限り,適用する。この場合において,同項の規定による控除をされるべき金額は,当該金額として記載された金額を限度とする。 6 6項第2項及び第3項の規定は,繰越控除限度額又は繰越外国所得税額に係る年のうち最も古い年以後の各年について当該各年の控除限度額及び当該各年にお 該金額として記載された金額を限度とする。 6 6項第2項及び第3項の規定は,繰越控除限度額又は繰越外国所得税額に係る年のうち最も古い年以後の各年について当該各年の控除限度額及び当該各年において納付することとなった外国所得税の額を記載した確定申告書を提出し,かつ,これらの規定の適用を受けようとする年分の確定申告書にこれらの規定による控除を受けるべき金額を記載するとともに,当該申告書に繰越控除限度額又は繰越外国所得税額の計算の基礎となるべき事項を記載した書類その他財務省令で定める書類を添附した場合に限り,適用する。この場合において,これらの規定による控除をされるべき金額は,当該各年分の確定申告書に当該各年の控除限度額及び当該各年において納付することとなった外国所得税の額として記載された金額を基礎として計算した金額を限度とする。 -32- 7 7項税務署長は,第1項から第3項までの規定による控除をされるべきこととなる金額又は前項に規定する控除限度額若しくは外国所得税の額の全部又は一部につき前2項の記載又は書類の添附がない確定申告書の提出があった場合においても,その記載又は書類の添附がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは,その記載又は書類の添附がなかった金額につき第1項から第3項までの規定を適用することができる。 8 8項第92条第2項前段(配当控除)の規定は,第1項から第3項までの規定による控除をすべき金額について準用する。 9 9項第1項から第3項までの規定による控除は,外国税額控除という。 第2 所得税法施行令(平成21年政令第104号による改正前のもの。本判決において同じ。) 1 222条(控除限度額の計算)1項所得税法第95条第1項(外国税額控除)に規定する政令で定めるところに 税法施行令(平成21年政令第104号による改正前のもの。本判決において同じ。) 1 222条(控除限度額の計算)1項所得税法第95条第1項(外国税額控除)に規定する政令で定めるところにより計算した金額は,同項の居住者のその年分の所得税の額(同条の規定を適用しないで計算した場合の所得税の額とし,附帯税を除く。)に,その年分の所得総額のうちにその年分の国外所得総額の占める割合を乗じて計算した金額とする。 2 224条(繰越控除限度額等)(1) 1項所得税法第95条第2項(外国税額控除)に規定するその年に繰り越される部分として政令で定める金額は,その年の前年以前3年以内の各年(前3年以内の各年)の国税の控除余裕額又は地方税の控除余裕額を,最も古い年のものから順次に,かつ,同一年のものについては国税の控除余裕額及び地-33-方税の控除余裕額の順に,その年の控除限度超過額に充てるものとした場合に当該控除限度超過額に充てられることとなる当該国税の控除余裕額の合計額に相当する金額とする。 (2) 2項前3年以内の各年のうちいずれかの年において納付することとなった外国所得税の額をその納付することとなった年の不動産所得の金額,事業所得の金額,山林所得の金額若しくは雑所得の金額の計算上必要経費に算入し,又は一時所得の金額の計算上支出した金額に算入した場合には,当該年以前の各年の国税の控除余裕額及び地方税の控除余裕額は,前項に規定する国税の控除余裕額及び地方税の控除余裕額に含まれないものとして,同項の規定を適用する。 (3) 3項所得税法第95条第2項の規定の適用を受けることができる年後の各年に係る第1項及び次条第1項の規定の適用については,第1項の規定により当該適用を受けることが 適用する。 (3) 3項所得税法第95条第2項の規定の適用を受けることができる年後の各年に係る第1項及び次条第1項の規定の適用については,第1項の規定により当該適用を受けることができる年の控除限度超過額に充てられることとなる国税の控除余裕額及び地方税の控除余裕額並びにこれらの金額の合計額に相当する金額の当該控除限度超過額は,ないものとみなす。 (4) 4項前3項に規定する国税の控除余裕額とは,その年において納付することとなる外国所得税の額がその年の国税の控除限度額(所得税法第95条第1項に規定する控除限度額をいう。以下この条において同じ。)に満たない場合における当該国税の控除限度額から当該外国所得税の額を控除した金額に相当する金額をいう。 (5) 5項第1項から第3項までに規定する地方税の控除余裕額とは,次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に掲げる金額をいう。 -34-1号その年において納付することとなる外国所得税の額がその年の国税の控除限度額をこえない場合その年の地方税の控除限度額(前条に規定する合計額をいう。以下この条において同じ。)に相当する金額2号その年において納付することとなる外国所得税の額がその年の国税の控除限度額をこえ,かつ,そのこえる部分の金額がその年の地方税の控除限度額に満たない場合当該地方税の控除限度額から当該こえる部分の金額を控除した金額に相当する金額(6) 6項第1項及び第3項に規定する控除限度超過額とは,その年において納付することとなる外国所得税の額がその年の国税の控除限度額と地方税の控除限度額との合計額をこえる場合におけるそのこえる部分の金額に相当する金額をいう。 3 225条(繰越外国所得税額等) 納付することとなる外国所得税の額がその年の国税の控除限度額と地方税の控除限度額との合計額をこえる場合におけるそのこえる部分の金額に相当する金額をいう。 3 225条(繰越外国所得税額等)(1) 1項所得税法第95条第3項(外国税額控除)に規定するその年に繰り越される部分として政令で定める金額は,前3年以内の各年の控除限度超過額(前条第6項に規定する控除限度超過額をいう。以下この条において同じ。)を最も古い年のものから順次その年の国税の控除余裕額(前条第4項に規定する国税の控除余裕額をいう。以下この条において同じ。)に充てるものとした場合に当該国税の控除余裕額に充てられることとなる当該控除限度超過額の合計額に相当する金額とする。 (2) 2項前条第2項の規定は,前項の場合について準用する。この場合において,同条第2項中「国税の控除余裕額及び地方税の控除余裕額」とあるのは,「控除限度超過額」と読み替えるものとする。 (3) 3項-35-所得税法第95条第3項の規定の適用を受けることができる年後の各年に係る第1項及び前条第1項の規定の適用については,第1項の規定により当該適用を受けることができる年の国税の控除余裕額に充てられることとなる控除限度超過額及びこれに相当する金額の当該国税の控除余裕額は,ないものとみなす。 (4) 4項(省略)以上-36-別紙3本件各処分の根拠及び適法性(被告の主張) 1 本件更正処分の根拠被告が本訴において主張する原告の平成21年分における所得税額等は,次のとおりである。 (1) 総所得金額 4億8563万0274円上記金額は,次のアの事業所得の金額,イの不動産所得の金額,ウの利子所得の金額,エの配当所得の金額及びオの給与所得 る。 (1) 総所得金額 4億8563万0274円上記金額は,次のアの事業所得の金額,イの不動産所得の金額,ウの利子所得の金額,エの配当所得の金額及びオの給与所得の金額の合計額であり(所得税法22条2項),いずれの金額も原告が平成22年3月15日に処分行政庁に提出した平成21年分確定申告書に記載した各金額と同額である。 ア事業所得の金額 2億4191万9042円イ不動産所得の金額 914万8850円ウ利子所得の金額 223万4722円エ配当所得の金額 1億6752万6900円オ給与所得の金額 6480万0760円(2) 上場株式等に係る譲渡所得の金額 9131万0829円上記金額は,原告が平成21年分確定申告書に記載した上場株式等の譲渡所得の金額と同額である。 (3) 所得控除の額の合計額 475万7181円上記金額は,原告が平成21年分確定申告書に記載した所得控除の額の合計額と同額である。 (4) 課税される所得金額課税される所得金額は,次のアの課税総所得金額及びイの上場株式等に係る課税譲渡所得の金額のとおりであり,いずれの金額も原告が平成21年分確定申告書に記載した各金額と同額である。 -37-ア課税総所得金額 4億8087万3000円上記金額は,上記(1)の総所得金額4億8563万0274円から上記(3)の所得控除の額の合計額475万7181円を控除した後の金額(ただし,国税通則法(以下「通則法」という。)118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨 4億8563万0274円から上記(3)の所得控除の額の合計額475万7181円を控除した後の金額(ただし,国税通則法(以下「通則法」という。)118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。 イ上場株式等に係る課税譲渡所得の金額 9131万円上記金額は,上記(2)の上場株式等に係る譲渡所得の金額9131万0829円から通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後の金額である。 (5) 申告納税額 1億2485万2600円上記金額は,次のアの算出税額から,イの配当控除の金額,ウの外国税額控除の金額及びエの源泉徴収税額を差し引いた後の金額(ただし,通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。 ア算出税額 1億9594万4900円上記金額は,次の(ア)の課税総所得金額に対する税額及び(イ)の上場株式等に係る課税譲渡所得の金額に対する税額の合計額であり,いずれの金額も原告が平成21年分確定申告書に記載した各金額と同額である。 (ア) 課税総所得金額に対する税額 1億8955万3200円上記金額は,上記(4)アの課税総所得金額4億8087万3000円に所得税法89条1項に規定する税率を乗じて算出した金額である。 (イ) 上場株式等に係る課税譲渡所得の金額に対する税額639万1700円上記金額は,上記(4)イの上場株式等に係る課税譲渡所得の金額9131万円に平成20年法律23号附則43条2項による読み替え後の租税特別措置法37条の10第1項に規定する税率(7%)を乗じて算-38-出した金額である。 イ配当 係る課税譲渡所得の金額9131万円に平成20年法律23号附則43条2項による読み替え後の租税特別措置法37条の10第1項に規定する税率(7%)を乗じて算-38-出した金額である。 イ配当控除の金額 837万6345円上記金額は,上記(1)エの配当所得の金額1億6752万6900円に,所得税法92条1項の規定により100分の5の割合を乗じて算出した金額であり,原告が平成21年分確定申告書に記載した配当控除の金額と同額である。 ウ外国税額控除の金額 370万0897円上記金額は,所得税法95条1項及び同法施行令222条1項に基づき計算した金額であり,原告が平成21年分確定申告書に添付した「外国税額控除に関する明細書」2枚目「5 外国税額控除額の計算」欄の「所法第95条第1項による控除税額」欄に記載した金額と同額である。 なお,本文第4(被告の主張)で述べるとおり,原告の平成21年分の所得税から控除できる外国税額控除の額は,上記所得税法95条1項による控除税額のみであり,同条2項による控除(上記「5 外国税額控除額の計算」欄の「所法第95条第2項による控除税額」欄に記載されたもの)は認められない。 エ源泉徴収税額 5901万4980円上記金額は,原告が平成21年分確定申告書に記載した源泉徴収税額と同額である。 (6) 納付すべき税額 2798万1800円上記金額は,上記(5)の申告納税額1億2485万2600円から,原告が平成21年分確定申告書に記載した予定納税額9687万0800円を控除した後の金額である。 2 本件更正処分の適法性被告が本訴において主張する原告の平成21年分の所得税の納付す 0円から,原告が平成21年分確定申告書に記載した予定納税額9687万0800円を控除した後の金額である。 2 本件更正処分の適法性被告が本訴において主張する原告の平成21年分の所得税の納付すべき税額は,上記1(6)で述べたとおり2798万1800円であるところ,当該金-39-額は,本件更正処分に係る納付すべき税額と同額であるから,本件更正処分は適法である。 3 本件賦課決定処分の根拠及び適法性上記2で述べたとおり,本件更正処分は適法であるところ,原告が本件更正処分により新たに納付すべきこととなった税額4170万3100円については,その計算の基礎となった事実のうちに本件更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて,通則法65条4項に規定する正当な理由があるとは認められない。 したがって,本件更正処分に伴って賦課されるべき過少申告加算税の額は,通則法65条1項の規定に基づき,原告が本件更正処分によって新たに納付すべきこととなった税額4170万円(通則法118条3項により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)に,100分の10の割合を乗じて算出した金額417万円となり,当該金額は本件賦課決定処分における過少申告加算税の額と同額であるから,本件賦課決定処分は適法である。 以上

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