主文 一本件控訴を棄却する。 二控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第一当事者の求めた裁判一控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、第一、二審を通じて、被控訴人の負担とする。 二控訴の趣旨に対する答弁主文と同旨。 第二事案の概要本件は、県知事から、産業廃棄物の安定型最終処分場を筑紫野市α一〇二四番四一〇山林(控訴人の所有地)に設置することを条件として産業廃棄物処分業の許可を得ている被控訴人が、右土地に設けた産業廃棄物最終処分場への産業廃棄物運搬のために、右処分場に通じる林道高原線を管理する控訴人に対して林道使用許可申請をしたところ、控訴人が平成九年三月一二日付の文書による回答で「林道は森林の育成及び林産物の搬出等を目的に整備された道路であり、産業廃棄物の搬入の為に使用することは、林道使用の主旨に反する」として林道使用を不許可(以下「本件不許可処分」という。)としたことから、被控訴人が本件不許可処分の取消しを求めた事案である。 一争いのない事実等争いのない事実等は、原判決の「事実及び理由」欄の「第二事案の概要」の「一争いのない事実等」に記載のとおりであるから、これを引用する。 二本件訴訟の経緯 1 被控訴人は、控訴人を相手方として本件不許可処分の取消を求めて、平成九年四月三日、福岡地方裁判所へ訴えを提起したところ、福岡地方裁判所第六民事部は、平成一〇年一月二六日、右訴えは不適法であるとしてこれを却下する判決を言い渡した。 すなわち、右判決は、本件林道の法的性質は、「公の施設」(地方自治法二四四条一項所定の普通地方公共団体が、住民の福祉を増進する目的をもってその利用の供するために設けた施設)ではないが、筑紫野市が公共の用に供する行政財産(地 道の法的性質は、「公の施設」(地方自治法二四四条一項所定の普通地方公共団体が、住民の福祉を増進する目的をもってその利用の供するために設けた施設)ではないが、筑紫野市が公共の用に供する行政財産(地方自治法二三八条三項)であるとした上で、本件林道使用を不許可とする控訴人の回答は、取消訴訟の対象なる行政処分性を有しないなどとして、被控訴人の訴えを却下するとした。 2 被控訴人が、これに対して控訴したところ、福岡高等裁判所第二民事部は、平成一〇年一二月二一日、被控訴人の訴えは適法であるとして、右地裁判決を取り消して、本件事件を福岡地方裁判所へ差し戻す旨の判決を言い渡した。 その要旨は次のとおりである。 (一) 本件林道は、「公の施設」には該当しないが、行政財産であり、地方公共団体の行政財産の目的外使用の許可申請に対する不許可は、法令上の申請権に基づく申請に対する拒否行為として行政処分性を有する。 (二) したがって、その取消訴訟は適法であり、前記福岡地裁判決を取り消して、行政処分である本件不許可処分の取消事由の存否について審理を尽くさせるため、これを福岡地裁へ差し戻すこととする。 3 控訴人は、右高裁判決に対して、上告せず、差戻しを受けた福岡地方裁判所は、本件不許可処分においてなされた控訴人の判断は、合理的根拠に基づかず社会通念に照らして著しく妥当性を欠き、裁量権を逸脱するものとして、本件不許可処分を取り消す旨の判決をした。これに対して、控訴人が控訴した。 三被控訴人の主張被控訴人は、原審における主張(原判決の「事実及び理由」欄の「第二事案の概要」の「三原告の主張」の記載を引用する。)に加えて、次のとおり主張した。 1 本件は、本件処分場の設置そのものの可否が争われている裁判ではない。控訴人の主張する産業廃棄物の搬入による環境悪化など 要」の「三原告の主張」の記載を引用する。)に加えて、次のとおり主張した。 1 本件は、本件処分場の設置そのものの可否が争われている裁判ではない。控訴人の主張する産業廃棄物の搬入による環境悪化などは、廃棄物処理場設置に関する県知事の許可処分における裁量の当否を巡る争いや、廃棄物処理施設の建設差止の争いにおいて斟酌されるべきものであっても、本件林道の不許可処分の裁量の当否の判断において斟酌されるべき事情ではない。また、控訴人が主張する自然破壊は、科学的根拠を欠いた憶測にすぎない。 2 控訴人の本件不許可処分の理由は、本件林道の破壊のおそれなどにあるものではなく、本件処分場に通ずる唯一の「道」である本件林道の利用を不可能にさせ、ひいては県知事が被控訴人に対してした産業廃棄物処理業の許可を実質的に無意味にしようとするものであって許されない。 3 なお、控訴人は、本件不許可処分の後の平成一一年一〇月六日に、同じ筑紫野市内の訴外株式会社産興(以下「訴外産興」という。)の産業廃棄物処分場において、硫化水素による作業員の死亡事故が発生したことなどを挙げて、本件処分場の環境への影響について縷々主張する。 訴外産興の事故は、本件林道の通行の問題とは関係がなく、また、本件不許可処分後の事情であって、およそ、本件不許可処分における裁量の当否を判断する際の資料にはなりえない。その点はさておくとしても、訴外産興の産業廃棄物処分場は、最終処分(埋立)のみを行う本件処分場とは異なり、中間処理(焼却)をも行うため、搬入される廃棄物、処理方法を異にするなど、本件とは全く事案が別であって、この事故をもって、本件処分場に危険性があるということができないのも明らかである。 四控訴人の主張の要旨控訴人は、原審における主張(原判決の「事実及び理由」欄の「第二事案の概要」 であって、この事故をもって、本件処分場に危険性があるということができないのも明らかである。 四控訴人の主張の要旨控訴人は、原審における主張(原判決の「事実及び理由」欄の「第二事案の概要」の「四被告の主張」の記載を引用する。)に加えて、次のとおり主張した。 1 原判決は、本件処分場に搬入することを許可された廃棄物は変化しない安全な廃棄物であり、土砂及び砂れきとほとんど同じで環境を汚染しないものとして処分することができるとされていることが認められるなどと認定したが、これは廃棄物処分場の実態を無視するもので、事実誤認である。 すなわち、現実の廃棄物の中には環境を破壊する物質、とりわけ安定五品目の一つである建築廃材にも、有害な化学物質などが含まれることは公知の事実であり、これらが周辺の水質等に悪影響を与え、森林破壊にもつながるものであって、廃棄物が安定五品目であるから環境を汚染しないなどということはない。 訴外産興の産業廃棄物処分場は、本件処分場と同様に筑紫野市内に所在し、安定五品目の産業廃棄物処分場として県知事の許可を受けていたものであるが、平成一一年一〇月六日、硫化水素が発生して作業員が死亡するという事故が発生しており、このことに照らしても、産廃処分場の実態は表向きとは異なっており、環境への悪影響をもたらすことは明らかである。 2 このように森林破壊をもたらす本件処分場の存在及びそれに通じる本件林道の使用は、森林の保護、涵養を目的として設置された林道の設置目的に反するとしてなされた本件不許可処分は極めて合理的であって、裁量権の逸脱などではあり得ないし、付近住民の環境を守るべき市長として控訴人は、本件不許可処分をすることこそが職務に忠実であったといえるものである。 3 そして、とりわけ、本件林道は、道路法にいう道路ではないことはもと あり得ないし、付近住民の環境を守るべき市長として控訴人は、本件不許可処分をすることこそが職務に忠実であったといえるものである。 3 そして、とりわけ、本件林道は、道路法にいう道路ではないことはもとより、近隣住民の生活道路として利用されているものでもなく、門扉が設けられて一般の出入りは禁止されており、森林の保護、育成、林産物の搬出等のためにのみ限定的に使用を認めるものであって、この特殊性からしてもその使用については厳格であるべきである。 4 また、県知事から被控訴人に対して、与えられた廃物処理法一四条四項に基づく産業廃棄物許可証に記載された処理能力は、埋立面積七七五平方メートル、埋立面積は一三八〇・五六立方メートルであるところ、これを前提としても、ほとんど車輌の通行がない本件林道の損傷が予測される。更に、被控訴人は産業廃棄物処分の事業範囲の変更について県知事の許可を受けること(同法一四条の二第一項)によって、本件処分場の処理能力を変更することは可能であり、被控訴人が所有権を取得している本件処分場用地の面積は九八一八平方メートルであることに照らせば、その拡張の可能性は十分あり、その結果、多数の産業廃棄物の運搬車両が本件林道を通行して、構造・強度的に十分でない本件林道へ大きな損傷を与えることが予測される。 第三当裁判所の判断当裁判所も、行政財産である本件林道の使用を許可しなかった本件不許可処分は、控訴人の裁量権を逸脱した違法なものであり、取消を免れないと判断する。 その理由は、次のとおりである。 一本件林道の利用状況等及び本件不許可処分に至る経緯については、原判決の「事実及び理由」欄の「第三判断」の一及び二に記載のとおりであるから、これを引用する。 ただし、原判決一三頁六行目の「定期点検のために」を「無人の無線中継所の定期点検の 経緯については、原判決の「事実及び理由」欄の「第三判断」の一及び二に記載のとおりであるから、これを引用する。 ただし、原判決一三頁六行目の「定期点検のために」を「無人の無線中継所の定期点検のために月に一回程度」と改める。 二本件不許可処分の適法性について 1 本件林道は、相当程度広い範囲の住民の利用を予定したものではないから「公の施設」とはいえないが、行政財産である。そして、地方自治法二三八条の四第四項は、「行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。」と規定しており、右文言に照らせば、行政財産を本来の目的以外に使用することは原則として禁止されているが、その効率的な利用を図るために、その本来の用途又は目的を妨げない限度において、その目的から外れた使用を許可することができるものというべきである。 2 どのような場合が行政財産の用途又は目的を妨げない限度内であるかについては、具体的事例に即して、当該使用をさせることが当該行政財産を本来の目的に供するに当たって障害となるかどうか、当該使用が当該行政財産の本来の使用の目的に反しないかどうか等を総合的に検討して判断するのが相当である。 3 本件林道は、道路法所定の道路ではなく、地域の森林保全及び営林事業の振興を図るという地域限定的かつ特定の目的で設置管理されたものではあるが、公共の用に供する物であること(また、本来、「道」であって、その利用形態も、要するに、通行することであって、例えば建物を使用する場合のように排他的な利用にはなりにくいこと等)にかんがみれば、その目的外使用の許可、不許可が管理者である控訴人の完全な自由裁量に属するとはいえず、管理者である控訴人は、本件林道の保全、他の利用者との調整等の観点に照らして合理的な範囲内で裁量権を有するが、その裁 目的外使用の許可、不許可が管理者である控訴人の完全な自由裁量に属するとはいえず、管理者である控訴人は、本件林道の保全、他の利用者との調整等の観点に照らして合理的な範囲内で裁量権を有するが、その裁量権を濫用ないし逸脱して許可、不許可をする場合には、違法となるというべきである。 そして、一般的に、林道は、森林法に基づき、林産物の運搬、林業経営及び森林管理のために必要な交通の用に供することを目的として開設、管理されるものであること、そして、本件規程は、「林道の維持管理に関する事項を定め、森林の管理経営上適正な林道の整備を図ること」を目的とする(第一条)ものであり、本件林道の使用の禁止及び制限、禁止行為、許可の取消し及び使用の停止について定めた本件規程の第七条ないし第九条に照らしても、本件林道の使用の許可、不許可は、基本的には林産物の搬出等のための交通の用に供される本件林道の維持保全を妨げるか否かの観点からなされるべきである。 4 本件においては、被控訴人が自己の所有地に設置した本件処分場の産業廃棄物の埋立面積は、七七五平方メートルと比較的小規模であり、搬入される物は安定五品目と呼ばれる物で、少なくとも、それ自体が直ちに本件林道を損傷させるような性質はなく、被控訴人は自ら行った家屋等の解体により発生する廃材等を搬入する予定であって、一か月平均で、四トンダンプカーがせいぜい一か月に一二台程度(二日に一台弱程度)の通行が予定されている。そして、本件林道沿いには人家はなく、現在の本件林道の利用状況は、無線中継所の定期点検のために西日本電信電話株式会社の自動車が通行するほかは、年間に数日間、軽トラックが数台通行する程度のものである。 右の産業廃棄物の量、性質、搬入頻度、被控訴人が用いる運搬車両、現在の本件林道の現実の利用状況に照らすと、被控訴人の 動車が通行するほかは、年間に数日間、軽トラックが数台通行する程度のものである。 右の産業廃棄物の量、性質、搬入頻度、被控訴人が用いる運搬車両、現在の本件林道の現実の利用状況に照らすと、被控訴人の本件林道の使用が、その維持保全を害するものとはいえないし(控訴人は、本件林道の損傷の可能性を主張するが、被控訴人が予定する通行量の程度でどのような道路の損傷が生じるかも明らかでないし、また、控訴人は被控訴人に分担金を課すことができるところ、損傷道路の修復費用が被控訴人の分担金を大幅に超えるものかどうかについても明らかでない。)、他の利用者の妨げになるものとも到底いえないことは明らかである。よって、本件不許可処分は、控訴人の裁量を逸脱した違法なものというほかはない。 仮に、被控訴人が、申請内容を超えてより多くの廃棄物搬入や車両通行をして、本件林道の維持保全に支障をきたすおそれが生じた場合などは、本件規程第九条に基づいて許可を取り消したり、本件林道の使用を停止することができるものであって、将来、本件処分場の処理能力の拡大による通行車両の増加を本件不許可処分の理由とすることは相当ではない。 5 控訴人は、産業廃棄物の搬入による環境悪化防止の観点から縷々主張するが、環境保全の目的からする産業廃棄物の処理についての規制は、直接的には廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和三五年法律第一三七号)が律しているところであり、被控訴人は、本件処分場を設置し、本件処分場における同法一四条による産業廃棄物(安定五品目と呼ばれる廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラスくず等、建設廃材)の最終処分(埋立て)を事業区分とする産業廃棄物処分業の許可を得ているのであるから、環境保全の目的から本件処分場における右産業廃棄物の最終処分、そのための本件処分場への搬入を阻止しよ ず等、建設廃材)の最終処分(埋立て)を事業区分とする産業廃棄物処分業の許可を得ているのであるから、環境保全の目的から本件処分場における右産業廃棄物の最終処分、そのための本件処分場への搬入を阻止しようとするのであれば、右処分業の許可処分の取消しを求めるなどの手段をとるべきであり、本件林道の使用許可申請の許否に当たっては、あらためて右処分業許可の基準、許可の当否についてまで踏み込んで判断する必要はなく、前記のとおり本件林道の維持保全や他の利用者との調整という観点から判断すべきである(念のため付言すると、前記処分業の許可があれば当然に本件林道の使用を許可すべきであるということではない。)。 しかし、そうは言っても被控訴人が搬入予定の安定五品目と呼ばれる産業廃棄物それ自体に具体的に明白な環境破壊物質が含まれているというのであれば別論であるが、本件ではそこまでの主張立証はなく、本件事案からはそこまでの事情も窺えない。また、控訴人が縷々主張するように、現実に搬入される産業廃棄物には、安定五品目以外の物が混入する可能性があることは絶無ではないであろうし、これらの異物によって地下水が汚染されることも可能性も絶無であるということはできないかもしれない。しかしながら、本件事案において、かかる環境被害の危険性が具体的に顕れているとはいえず(これを裏付ける的確な資料はないし、また、近時発生した、本件処分場とは搬入される廃棄物、処理方法を異にする訴外産興における事故をもって、その危険性を裏付ける資料といえないことも多言を要しない。)、控訴人の主張を採用することはできない。 第四結論よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却すべきものとし、控訴費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六七条一項本文、六一条を適用して、主文のとおり判決 ない。 第四結論よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却すべきものとし、控訴費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六七条一項本文、六一条を適用して、主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第四民事部裁判長裁判官川畑耕平裁判官岸和田羊一裁判官白石哲
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