昭和28(う)589 関税法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和29年7月28日 広島高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決中被告人A、同B、同C、同Dに関する部分を破棄する。      被告人Aを懲役一〇月に、同Bを懲役六月に同C、同Dを各懲役四月に 処する。 但し被告人Aに対し原審における

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判決文本文4,827 文字)

主文 原判決中被告人A、同B、同C、同Dに関する部分を破棄する。 被告人Aを懲役一〇月に、同Bを懲役六月に同C、同Dを各懲役四月に処する。 但し被告人Aに対し原審における未決勾留日数中六〇日を右本刑に算入する。 被告人B、同C、同Dに対しては、いずれも本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。 被告人Aに対し押収にかかる青銅四屯二一五瓩(但し延棒としたもの合計八五個)を没収する。 被告人Bに対し押収にかかるE号一隻を没収する。 当審における訴訟費用(国選弁護人永井貢に支給した分)は、被告人Aの負担とする。 被告人Fの本件控訴を棄却する。 理由 本件各控訴の趣意は、記録編綴の検察官坂本杢次、被告人Bの弁護人馬場照男、同鈴木惣三郎、被告人Fの弁護人本間大吉の各提出にかかる控訴趣意書記載のとおりであるから、茲にこれを引用する。 これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。 一、 馬場弁護人の論旨第一点及び鈴木弁護人の論旨第一点(事実誤認)について各論旨は、被告人Bは鮮魚貿易船E号(総屯数三三屯)の船長として韓国から日本へ生赤貝を輸送するに当り、これに本件青銅を積載して原判示のように輸送したけれども、右青銅はb港沖合で積込みの際、荷主の代理人である被告人Aが陸揚げのときは必ず通関手続をすると言明したのでこれを信じ輸送したものであり、又A等が広島県a沖合で密かに陸揚げのためG丸に積替えたのは被告人Bの全然不知の間に為されたものである。従つて被告人Bは本件密輸入につき全然犯意はなかつたと主張する。しかし原判決挙示の証拠特に被告人Bの検察官に対する第一回供述調書によると、被告人Bは前記船舶により、生赤貝を本邦内に輸送するに当り、b港沖合で 人Bは本件密輸入につき全然犯意はなかつたと主張する。しかし原判決挙示の証拠特に被告人Bの検察官に対する第一回供述調書によると、被告人Bは前記船舶により、生赤貝を本邦内に輸送するに当り、b港沖合で被告人Aが菰包にした本件青銅を積込もうとしたとき、右は色物(非鉄金属)の密輸入品であることに感付き「変な物は積むな、そんな物を積んでは困る」と言つたところ、Aは笑いながら「必要な手続はするから心配するな、全責任に自分が持つ」と言つたので、Aの言葉を全部信用したわけではないけれども、荷主が積込むのであるし成功した場合は謝礼を貰えると思つてそのままこれを黙認して積込ませ輸送するに至つたものであり、又前記a沖合でA等が密かに陸揚げのためG丸に積替えた際も十分これを知つていたものであることが認められるから、犯意が全然なかつたものとは到底認めることはできない。 (なお、韓国側が密輸出であるからといつて当然それは日本において密輸入となるものでないことは所論のとおりであるけれども、前記証拠に徴するときは、被告人Bは本件青銅は韓国側において密輸出であつたことは勿論日本においても密輸入するものである情を十分察知しながら敢て輸送したものであることが認められるし、又右青銅については所論のように通商産業大臣の輸入承認があつたことは未だ記録上確認し難いところであるのみならず、通商産業大臣の輸入に対する許可又は承認は輸入の際における当該貨物の通関義務まで免れしめるものではないから、仮に右の承認があつたとしても、通関手続を経いで陸揚げするにおいては関税法違反となるのであるから、本件は犯意の成立において欠くるところはないものというべきである。)しかし、<要旨第二>前掲証拠その他記録に現われた事実によれば、被告人Bは前記生赤貝の輸送に当り被告人Aの依頼により単に</要旨第二> 件は犯意の成立において欠くるところはないものというべきである。)しかし、<要旨第二>前掲証拠その他記録に現われた事実によれば、被告人Bは前記生赤貝の輸送に当り被告人Aの依頼により単に</要旨第二>同人のため本件青銅を船積してb港沖合から中途であろa沖合までの輸送に従事し同人の密輸入行為を幇助したに過ぎないものと認められるから、右は従犯を以て問擬するを相当とし、原判決認定の如くAと共同正犯の関係に立つものと認むべき証拠は記録上存しないところである。従つて原判決はこの点において事実を誤認したか又は法律の解釈適用を誤つた違法があるものというべく、右の違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから原判決は破棄を免れない。 二、 検察官の論旨第一点(事実誤認)について所論指摘の各証拠によると、被告人C同Dは前記E号の乗組員としてBと共に生赤貝の輸送に当り、被告人Aが本件青銅を本邦内に密輸入するの情を知りながら右Aのためb港沖合で同船にこれが積込み並びにa沖合までの輸送に協力従事し、以てAの右密輸入行為を幇助した事実を認めることができる。(尤も公訴事実のように同被告入等がAと共同正犯の関係に立つものと認むべき証拠は記録上認められない。)この点に関し原判決は、所論指摘のように、同被告人等は下級船員であつてただ船長、事務長の命に従い盲目的に行動したに過ぎないから密輸入につき犯意はなかつたと認めるを相当とし、結局犯罪の証明が<要旨第三>ないことに帰するとして無罪を言渡していちけれども、本件は前記のように船長においても初めから密輸入品</要旨第三>であることを十分知つて積載したのであるから、これが輸送に関する命令の如きも明かに違法なものであり、被告人等も右の事情をよく知つていたものであることが認められるから、船長の命令に拘束されるいわれはるく、従つて を十分知つて積載したのであるから、これが輸送に関する命令の如きも明かに違法なものであり、被告人等も右の事情をよく知つていたものであることが認められるから、船長の命令に拘束されるいわれはるく、従つて又犯意を阻却するものでもない。又本件はいわゆる行為の期待可能性を欠く場合とも認められないから情状としてはとも角、船長の命令の故を以てその責任を免かれることはできないのである。従つて原判決が前記の如く説示して無罪を言渡したのは、事実を誤認したか又は法律の解釈適用を誤つた違法があるものというべく、右は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、これ又破棄を免かれない。論旨は理由がある。 三、 馬場弁護人の論旨第二、三点及び鈴木弁護人の論旨第二点(船舶没収の違法)について<要旨第一>しかし、憲法第二九条は一般に財産権の不可侵を認めつつしかもそれが絶対性を有するものとはせず公共の福</要旨第一>祉のためには制限を受けるものであることを認め、更にこれを公共のために用いる場合には正当な補償を以てしなければならないことを保障した規定であつて、裁判において没収として科せられる場合の如きは同条の保障する範囲外の問題であると解せられるから、右憲法違反の主張は当らない。又関税法(昭和二九年法律第六一号による改正前のもの)第八三条第一項により、犯罪の用に供した船舶を犯人の占有に係るものとして没収する場合においては、その犯人の占有が元来所有者の意思に基かないものであるとき(例えば所有者が強窃盗によりその所持を奪われたものであるとき)その他所有者に何等故意又は過失の責むべきものがない場合には没収し得ない例外があると解すべきであるけれども(昭和二七年(う)第三二九号昭和二九年一月三〇日広島高等裁判所判決、判例集七巻一号四七頁参照)記録に現われた証拠特に証人Hの原審第三 ものがない場合には没収し得ない例外があると解すべきであるけれども(昭和二七年(う)第三二九号昭和二九年一月三〇日広島高等裁判所判決、判例集七巻一号四七頁参照)記録に現われた証拠特に証人Hの原審第三回公判調書中の供述記載によれば、所論のE号の所有者であるHは、本件犯行当時同船に船主として監督のため同乗していたものであることが明らかであるから、当時前記船長及び船員と同様に、その積載輸送にかかる本件青銅が密輸入品である情を十分知つていたと推知されるのみならず、若し全然これを知らなかつたとせば、その間到底過失の責を免れ得ないものというべく、従つて本件はさきに説明した没収を免かるべき場合ではないといわねばならない。従つて原判決が前記関税法第八三条第一項を適用してこれが没収を言渡したのは正当であつて所論のような法令適用の誤等はない。論旨は理由がない。 四、 本間弁護人の論旨(事実誤認)についてしかし、原判決挙示の証拠によれば、破告人Fに関する原判示第二の事実を認めることができるのであつて、記録を調査するも右の認定に誤があるとは認められない。所論の利益分配に関する約束等は必ずしも事前に存するとは限らないのであるし、又記録によるとIが後に供述を変更するに至つたのは右被告人と通じて証拠の湮滅を図つたがためであることが窺い知られる。要するに原判決には所論のような事実誤認その他採証法則の違背等もない。論旨は理由がない。 五、 検察官の要旨第二点(量刑不当、但し被貴人Bを除く)について記録に現われた事実により諸般の情状を検討するに、本件は被告人A等において計画的に為された悪質な犯行であると認められる。従つて原判決が同被告人に対してまでもその懲役刑につき執行猶予を与えたのは、所論のように科刑軽きに失するものがあると認めざるを得ない。論旨は理由がある。 画的に為された悪質な犯行であると認められる。従つて原判決が同被告人に対してまでもその懲役刑につき執行猶予を与えたのは、所論のように科刑軽きに失するものがあると認めざるを得ない。論旨は理由がある。 以上の次第であるから原判決中被告人A、同B、回C、同Dに関する部分は刑事訴訟法第三九七条によりこれを破棄し、同法第四〇〇条但書に従い左のとおり自判すべく又被告人Fは同法第三九六条によりこれを棄却すべきものとする。 (罪となるべき事実)第一 (一)被告人Aは、税関の免許を受けないで大韓民国より青銅を本邦内に密輸入しょうと企て、昭和二八年四月一七日頃大韓民国b港沖合において、鮮魚貿易船E号に青銅四屯二一五瓩(延棒にしたもの合計八五個)を船積して翌一八日右b港を出航し、同月二〇日頃広島県佐伯郡c町a沖合に至り、更に同所において原審相被告人J、I、K、L等と共に同船より機帆船G丸に積替えた上、密かにこれを広島市d港岸壁に陸揚げして以て密輸入を遂げ(二) 被告人Bは右E号の船長、又被告人C同Dは同船の船員であるところ、同船により大韓民国から本邦内に生赤貝を輸送するに当り、いずれも被告人Aが前記(一)に記載するように税関の免許を受けないで青銅を本邦内に密輸入するものである情を知りながら同人の依頼を受け、同人のためb港沖合におけるこれが船積み並びにa沖合までの輸送に従事し、以て右Aの密輸入行為を容易ならしめて幇助したものである。 (証拠の標目)被告人C及び同Dの司法警察員並びに検察官に対する各供述調書を附加する外原判決掲記の判示第一事実に対するものと同一につきこれを引用する。 (法令の適用)被告人Aに対し昭和二九年法律第六一号による改正前の関税法第七六条第一項(懲役刑選択)刑法第二一条前記関税法第八三条第一項刑事訴訟法第一 一につきこれを引用する。 (法令の適用)被告人Aに対し昭和二九年法律第六一号による改正前の関税法第七六条第一項(懲役刑選択)刑法第二一条前記関税法第八三条第一項刑事訴訟法第一八一条第一項被告人B、同C、同Dに対し各前記関税法第七六条第一項、刑法第六二条第一項(各懲役刑選択)刑法第六三条第六八条第三号第二五条なお被告人Bに対し前記関税法第八三条第一項よつて主文のとおり判決する。 (裁判長判事柳田躬則判事尾坂貞治判事石見勝四)

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