平成17(わ)55 贈賄被告事件

裁判年月日・裁判所
平成19年2月26日 熊本地方裁判所
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判決文本文13,353 文字)

平成17年(わ)第55号,第113号贈賄被告事件主文被告人を懲役2年に処する。 この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 【犯罪事実】被告人は,a村長であったもの,Aは,株式会社B代表取締役であったもの,Cは,a村議会議長であったもの,Dは,同村議会議員であったもの,Eは,同村建設課長であったもの,F,G,H及びIは,いずれも平成13年5月から同村議会議員として同村議会の議決に付すべき議案の審議,表決に加わるなどの職務に従事していたものであるが,被告人は,第1A,C及びEと共謀の上,Aにおいて,平成14年2月2日ころ,熊本県球磨郡a村大字bc番地de前に停車中の乗用自動車内において,Fに対し,同月12日の同村議会臨時会に同村長の被告人が提案するEを同村助役に選任することについて議会の同意を求める議案に賛成することの謝礼の趣旨のもとに,現金10万円を供与し,もって前記Fの職務に関し賄賂を供与し,第2A,C,D及びEと共謀の上,Cにおいて, 同月4日,岩手県北上市fg丁目h番i号ホテルjk号室において,Hに対し,前記第1記載の趣旨のもとに,現金10万円を供与し,もって,前記Hの職務に関し賄賂を供与し, 同日,前記第2の1記載の場所において,Iに対し,前記第1記載の趣旨のもとに現金10万円の供与を申し込み,もって前記Iの職務に関し賄賂の申込みをし, 同月5日,前記第2の1記載の場所において,Gに対し,前記第1記載の趣 旨のもとに,現金10万円を供与し,もって,前記Gの職務に関し賄賂を供与したものである。 【事実認定の補足説明】 弁護人らは,被告人が本件各犯行について,C,A,E及びDと共謀した事実はなく,無罪であると主張し,被告人もこれに沿う供述をするとこ 務に関し賄賂を供与したものである。 【事実認定の補足説明】 弁護人らは,被告人が本件各犯行について,C,A,E及びDと共謀した事実はなく,無罪であると主張し,被告人もこれに沿う供述をするところ,当裁判所は,平成17年2月17日付起訴状記載の公訴事実第1の事実については,被告人,C,A及びEの共謀の事実は認められるものの,Dとの共謀の事実は認められず,平成17年2月17日付起訴状記載の公訴事実第2,同年3月18日付起訴状記載の公訴事実第1及び第2の事実については,いずれもDを含む全員の共謀の事実が認められると判断したので,その理由について補足して説明する。 当裁判所が関係各証拠により認定した事実は,以下のとおりである。 (1)被告人は,平成13年11月11日施行のa村長選挙に立候補し,C,A及びDらの支援を受けて,前村長であったJを下して当選し,同月22日,村長に就任した。 当時のa村議会(以下単に「議会」といい,同議会での地位については,単に「議長「議員」等という)は,議長であったCを除くと,被告人を基本」。 的には支持する議員がDを含めて7名,被告人に批判的な議員が6名おり,上記7名も必ずしも一枚岩ではなかったため,勢力が拮抗した状態にあった。 (2)被告人は,村長に就任後,同年12月1日付でa村役場(以下,同役場の役職については役場名を省略する)課長職の人事異動を行い,前村長支持派。 で建設課長であったKを更迭し,環境整備課長の職にあったEを建設課長に異動させるなどした。 当時の助役であったLは,被告人から前記人事異動につき何の相談も受けなかったこと,国土交通省への陳情の際の被告人の言動,指名審査会が選定した公共工事についての指名業者への度重なる被告人からの干渉等から,同月10 日,助役の職を辞任した。 ,(3) 相談も受けなかったこと,国土交通省への陳情の際の被告人の言動,指名審査会が選定した公共工事についての指名業者への度重なる被告人からの干渉等から,同月10 日,助役の職を辞任した。 ,(3)被告人は,当面助役を選任しない予定にしていたが,その後,同年末には助役選任の必要性を感じるようになり,平成14年1月26日(以下,平成14年については,本項では年の記載を省略する,熊本県球磨郡a村大字l。)m番地所在のnのレストランでC,Aと同席していた際,助役にEを選任したい旨を告げ,Cに対し,助役就任を承諾してもらえるようEの説得を依頼した。 Cは,助役には収入役のMが適任と考えていたが,被告人がEを助役と考えているのであれば,それでも構わないなどと考え,Eを説得することを承諾した。 Cは,同日,Eの自宅を訪ねて,Eに対し,被告人がEを助役にしたいとの意向を有していることを告げ,助役就任を承諾するように求めた。E及びその妻は,これを聞いて驚き助役就任を固辞したが,Cが,被告人の意向であることや助役就任による収入増等を説明し,遂には,Eに対して役場を辞めるか助役になるかと強い口調で助役就任を迫ったことなどから,Eは,妻の反対を抑えて,Cに対して助役就任を承諾する旨伝えた。 (4)被告人とCは,同月27日,急遽a村にあるゴルフ場oでゴルフをすることにしたが,そのメンバーが足りないのでD及びEを呼び出して,4名でゴルフをした。 上記ゴルフ場レストランでの昼食の際,Cは,Eに対し,助役選任のために議員の研修旅行において議員に賄賂を渡したらどうかと勧め,これに対してEが消極的な態度を取ったことから,Cは,助役になれば退職金も入り収入も上がるので大丈夫であることなどを説明し,Cから同意を求められたDは「じゃんな(ですね」と述べ,被告人も「ですね」と れに対してEが消極的な態度を取ったことから,Cは,助役になれば退職金も入り収入も上がるので大丈夫であることなどを説明し,Cから同意を求められたDは「じゃんな(ですね」と述べ,被告人も「ですね」と述べ,Cはとりあえず資金は)立て替えておく旨述べ,Eもわかりましたと答えた。 昼食後Dは,Eに対し,スタートホールのティーグランドにおいて,助役選任は早すぎで,3月の定例か4月でもよかった旨述べた。 ,(5)Aは,同月28日,nのレストランでD及び議員であるFと食事をした際 Fに対し,被告人がEを助役に選任する意向であることを伝えると,Fはこれを聞いて驚き,Dは反対の意向を示した。 (6)Cは,同月29日,同人及びその妻が経営する有限会社N電子の応接室において,A及び被告人と話した際,被告人からEの助役選任を確固たるものにしたいなどと言われて「打つ(賄賂としての現金を配る)しかない」などと,答え,その後,A及び被告人との間で,同年2月4日から6日までの日程で予定されている議員研修旅行の際にDを通じて賄賂を配ることを具体的に話し合った。 (7)Dは,同年2月1日ころ,a村役場の村長室を訪れ,被告人に対しEを助役にすることについての真意を確認したところ,被告人は適任者がいなかったなどの理由を挙げてEを助役に推す旨述べ,Eの助役選任案について賛成をするよう協力を求め,Dもこれを了承した。 (8)ア同月2日,副議長で被告人支持派の議員であったOが,病気のため急遽入院し,前記研修旅行に参加することができず,助役選任の議決に参加できるか危ぶまれる状況になったため,被告人,C及びAは,同日,熊本県人吉市p町にあるCが管理する一軒家において,賄賂の金額,賄賂を渡す議員の選別,贈賄側の役割分担等について具体的に話し合い,その席で,C及びDを含めて になったため,被告人,C及びAは,同日,熊本県人吉市p町にあるCが管理する一軒家において,賄賂の金額,賄賂を渡す議員の選別,贈賄側の役割分担等について具体的に話し合い,その席で,C及びDを含めて議員8人に各10万円を賄賂として配ること,賄賂は前記研修旅行の際にCとDとで分担して配ること,賄賂の原資は最終的にはEに負担させるが,当面はAにおいて立て替えておくことなどを決めた。 イAは,同日ころ,判示第1のとおり,Fに対し,現金10万円を供与した。 ウAは,同日ころ,有限会社P建設の現場事務所において,現金70万円程度を持参して,Dに対し,研修旅行において助役選任に関する議会工作として現金10万円ずつを賄賂として議員に配ることなどを説明し,Dとともに,同所で,Dの事務所にあった封筒に現金10万円ずつを分けて入れて,Dにそれぞれ10万円の入った封筒7通合計70万円を託した。 (9)同月4日から研修旅行が行われたが,Dは,同日の宿泊先であるホテルjk号室のCの部屋で,同人に対して,同人が手渡すことになった同人を含む議員5名分の賄賂合計50万円を手渡した。 Cは,上記のうち10万円については自己の分として受領するとともに,同日,判示第2の1のとおり,Hに現金10万円を供与し,その後,判示第2の2のとおり,Iに対し,現金10万円の供与を申し込んだが,これを断られたため,供与を断念した。さらに,Cは,同月5日,判示第2の3のとおり,Gに対し,現金10万円を供与した。 Dは,上記のうち10万円については自己の分として受領し,さらに議員であったQにも10万円の供与を試みたが,Qは,被告人支持派からの工作は受けないという態度を明確にし,DやCらの誘いにものってこなかったため,供与を断念した。 (10)上記研修旅行後の同月7日,Eが,村長室に行くと 万円の供与を試みたが,Qは,被告人支持派からの工作は受けないという態度を明確にし,DやCらの誘いにものってこなかったため,供与を断念した。 (10)上記研修旅行後の同月7日,Eが,村長室に行くと,被告人とCがおり,Cは,研修旅行で上記のとおり現金を供与したことを報告し,Eの助役選任に関する議案は10対3の賛成多数で可決される見込みである旨告げた。被告人は,それに対し,安心した様子で「わかりました,ご苦労様でした」などと述べ,Eに対し大丈夫だから心配ないなどと告げた。その際,Eが負担すべき金額や支払時期等については全く話題とならなかった。 (11)被告人は,同月12日に開催されたa村議会臨時会にEを助役に選任することについて議会の同意を求める議案を提出し,同議案は,賛成10名,反対3名の賛成多数で可決され,Eは,同月13日に助役に就任した。 (12)Eは,同月中旬ころ,被告人からの指示を受けて,上記金員供与の立替金支払いとしてAに200万円を支払うこととなり,同月18日,E名義の郵便貯金口座から100万円,Eの母親名義の郵便貯金口座から100万円をそれぞれ引き出して合計200万円の金員を用意し,同日ころ,A方に赴き,同人に対して200万円を交付した。その際,Eは,被告人,C及びAに対して, 上記200万円の金額の根拠や交付の必要性等について一切確認や質問することはなく,Cらからも一切説明はなかった。 (13)平成15年8月ころ,CやEに対する取調が開始されたが,被告人は,帰宅したEに対して取調状況を確認したり,Eの取るべき取調への態度等について説明するなどし,また,Cに対して何度も電話をしたが,Cがこれに出ないと,母親であるRに依頼して,Aに対しCのための弁護士の着手金120万円を貸付け,Cのために弁護士をつけ,その費用は被告人 ついて説明するなどし,また,Cに対して何度も電話をしたが,Cがこれに出ないと,母親であるRに依頼して,Aに対しCのための弁護士の着手金120万円を貸付け,Cのために弁護士をつけ,その費用は被告人が負担する旨をCの留守番電話に録音するなどした。 以上の認定事実について,弁護人らは,(1)当時の議会情勢等から議会工作の必要はなく,被告人には本件各犯行を行う動機がない,(2)公訴事実に沿うCの公判廷における供述は,敵対関係にある被告人を巻き込もうとする虚偽のものであり,その内容も不自然かつ不合理であって全く信用性がない,(3)Eの供述のうち,捜査段階で共謀を認めた部分や被告人から200万円をAに支払うよう指示を受けたとする部分は,いずれも強引な捜査が行われた結果得られたものであって,いずれも信用することができない,(4)A及びHらの供述に照らせば,本件で供与された現金は,研修旅行にあたっての各議員への小遣い銭であって賄賂ではない,(5)被告人は,一貫して共謀の事実を否認しているところ,その供述は自然かつ合理的で十分に信用できるなどと主張するので,以下検討する。 (1)議会工作の必要性について弁護人らは,当時のa村議会の状況に照らせば,被告人がEの助役選任議案が否決されるおそれは全くなく,そのために議会工作を行う必要はなく,被告人には本件各犯行に及ぶ動機がないと主張する。 しかし,上記2(1)で認定したとおり,被告人は本件各犯行当時,村長就任後わずか3か月足らずで,被告人を基本的には支持する議員と被告人に批判的な議員の数の差は,議決権がない議長のCを除いてわずか1名であることに加え,関係各証拠によれば,各議員は,その所属政党や政策・政治理念等から明 確に対立しているものではなく,単に前回の村長選挙で被告人を支持したか否かによって色分 のCを除いてわずか1名であることに加え,関係各証拠によれば,各議員は,その所属政党や政策・政治理念等から明 確に対立しているものではなく,単に前回の村長選挙で被告人を支持したか否かによって色分けされているに過ぎず,被告人を基本的には支持する議員の中にもq川ダム問題等については意見を異にする者がいるなど,議案の内容次第ではその勢力が変動する可能性も否定できない状況にあったことがうかがわれる。そして,助役が村長に次ぐ地位を有し,村政への影響力が非常に大きいことなどを考えると,助役選任議案を教育委員会委員や農業委員会委員の選任議案と同列に考えることができないのは当然であり,C,AやDら当時被告人を積極的に支持する者でさえ,当初は助役にはE以外の者が適任であると考え,Eの助役選任には反対意見を述べていたというのであるから,就任3か月足らずの被告人が,Eの助役選任議案が万が一にも否決されて,自らの不信任と受け取られることがないかを心配したり,僅差の勝負となることを避けようとしたとしても何ら不思議ではなく,当時議会工作の必要がなかったとはいえず,この点についての弁護人らの主張は採用できない。 (2)Cの供述の信用性についてア弁護人らは,a村と人吉市の合併問題等を巡ってそれまで良好であったCと被告人及びAとの関係が悪化して,被告人及びAがCと距離を取るようになり,Cが自ら作成し可決させた政治倫理条例を被告人が再議にかけて否決するなどしたことから,Cが被告人及びAと決定的に対立して憎悪するようになり,捜査官に対して虚偽の情報を提供したものであるなどと主張する。 確かに,本件についての捜査が開始された平成15年夏ころには,Cと被告人及びAとの関係がa村合併問題等を巡って相当程度悪化したことがうかがわれるが,かかる状況は,それまで隠していた犯罪事 主張する。 確かに,本件についての捜査が開始された平成15年夏ころには,Cと被告人及びAとの関係がa村合併問題等を巡って相当程度悪化したことがうかがわれるが,かかる状況は,それまで隠していた犯罪事実を洗いざらい暴露する動機ともなりうるのであるから,直ちに虚偽の犯罪事実のねつ造を行ったものと決めつけることはできない。 イ弁護人らは,①EとDが1月27日に前記ゴルフ場に来たのは偶然であって,そのレストランという開かれた場所で賄賂の謀議が行われたということ やEの助役選任につき全く知らないはずのDが「じゃんな」と答えたなど。 というのは不自然である,②同月29日の前記N電子の応接室において,前記ゴルフ場での会話を忘れたかのような会話が繰り返され,賄賂を渡す議員や金額も決められていないなど謀議として余りにも中途半端である,③そもそもOの入院により前記研修旅行への参加が危ぶまれたとしても,Eの助役選任案件が審議される予定の議会臨時会の招集通知は発送されておらず,被告人が自由に変更できるのであるから,助役選任案件の否決を危惧する必要はなく,2月2日の前記p町の一軒家に被告人,C及びAが集まったとする経緯等は不自然で,賄賂を渡す議員の選別もCの都合で決められているなど議会工作としての合理性に欠けるなどと指摘して,C供述の内容は信用できないと主張する。 しかし,①については,被告人の意向でCがEを強く説得してなんとか助役就任の内諾を取り付けたという前日の経緯や当日のメンバーを考えると,急遽ゴルフに参加することとなったEに対し,議会工作の必要性やその費用負担を切り出したとしても不自然ではない。そして,上記レストランの状況等に照らせば,他の客の動静,声の大きさや表現方法等に注意を払えば議会工作について手短に話すことも十分に可能であり,Dが,内心はE 負担を切り出したとしても不自然ではない。そして,上記レストランの状況等に照らせば,他の客の動静,声の大きさや表現方法等に注意を払えば議会工作について手短に話すことも十分に可能であり,Dが,内心はEの助役選任の話しに十分納得していなかったとしても,Cから突然同意を求められ,資金の負担や助役の収入等の一般論も含めてとりあえず肯定するような言動を取ったとしても何ら不思議ではない。 また,②については,当時のa村議会の情勢や上記ゴルフ場レストランでの会話内容等からすれば,被告人がEの助役選任につき不安を覚えて改めて大丈夫かとCに確認し,これに対してCが強く直接的な表現で賄賂を渡す必要性について発言したとしても不自然ではなく,CがEの説得を一任されるなどE助役実現に向けた中心的な役割を担い,最初から議会工作の必要性を強く主張していた経緯等に照らせば,被告人,C及びAの間では賄賂を渡す 時期,場所や方法等のみを定め,賄賂の具体的な金額,賄賂を渡す議員の選別や具体的な実行方法についてはCに任されていたことも十分に考えられ,このことは後日の賄賂を渡す議員の選別にあたってCの意向が強く反映されていることとも合致する。 さらに,③については,既に賄賂を供与する時期等が決められていたのであるから,臨時議会開催等の助役選任に向けたスケジュールの大枠は決めらていたと考えるのが合理的である上,予想外の事情により支障が生じたのであるから,被告人が独断で臨時議会開催の変更等を行う前に,Cらとの話し合いを持つ必要性は大きく,その話し合いの内容,場所及び状況等に照らせば,前記p町の一軒家で集まった際の経緯も必ずしも不自然とはいえない。 そして,前記のとおり賄賂を渡す具体的な実行方法がCに任されていたとすれば,賄賂を渡す議員の選別についてCが個人的な事情を強く反映させた 記p町の一軒家で集まった際の経緯も必ずしも不自然とはいえない。 そして,前記のとおり賄賂を渡す具体的な実行方法がCに任されていたとすれば,賄賂を渡す議員の選別についてCが個人的な事情を強く反映させた意見を述べ,被告人やAが特に異議をはさまなかったとしても不思議ではない。 ウCは,弁護人の反対尋問にも揺らぐことなく,一貫して本件各犯行の全体について具体的かつ詳細な供述をしており,伝票等の客観的証拠やEの供述(ただし,上記ゴルフ場レストランでの会話内容については捜査段階のもの)等とも概ね合致しているのであって,自らが賄賂の供与について積極的かつ重要な役割を果たしていること,賄賂として準備した現金のうち議員が受け取らなかったものは返還せずに自己の用途に費消したことなど自己に不利益なことについても隠さず供述し,記憶にあるところとないところを明確に区別して供述するなどしているのであって,本件各犯行から公判廷での供述までに約3年以上が経過し,細部については記憶が薄れたり,若干変容している可能性があることを考慮しても,その供述は十分信用することができる。 (3)Eの供述の信用性について弁護人らは,Eの捜査段階での供述のうち前記ゴルフ場レストランでの共謀 を認めた部分は,長期間に及ぶ身柄拘束と捜査官の罵倒や厳しい叱責等により強引にC供述に沿う内容となったもので,Eは自らの勾留理由開示手続や公判手続において被告人との共謀を明確に否定しており,また,被告人からAに200万円を払うように指示されたという部分の供述は曖昧で,捜査によって記憶が刷り込まれたものであり,いずれも信用性がないなどと主張する。 しかし,Eの捜査段階の供述は,本人が供述しなければわからない供述も含まれ,特に不自然あるいは不合理な点はうかがわれないことに加え,上記ゴルフ場レストラ であり,いずれも信用性がないなどと主張する。 しかし,Eの捜査段階の供述は,本人が供述しなければわからない供述も含まれ,特に不自然あるいは不合理な点はうかがわれないことに加え,上記ゴルフ場レストランにおける会話以外については公判廷でも概ね捜査段階と同様の供述をし,直後のスタートホールのティーグランドにおいてDから助役選任は早すぎる旨言われて不快感を覚えたこと,3月か4月ころでも遅くない旨言われたことなども認めているところ,昼食の際に助役選任の話が全く出ないにもかかわらず,Dが唐突に上記のような発言を行ったというのも不自然である。 そして,Eが勾留理由開示手続後,弁護人と頻繁に接見して捜査への対応について指示等を受けながら,再び共謀の事実を認めて上記勾留理由開示手続でそれまでの供述を翻した理由について説明していること,自らの裁判でも共謀の事実は否定したが,その供述内容は本件の公判供述とは多少異なっていることもうかがわれること,本件での公判廷における供述当時も自らの裁判が係属中であったなどを考えると,Eの捜査段階の供述は十分に信用することができ,これに反する当公判廷における供述は信用できないと言わざるを得ない。 また,Eは,捜査段階及び公判廷を通じて,研修旅行後の2月7日,村長室においてCが,被告人及びEの前で,研修旅行で議会工作を行ないその費用はAが立て替えている旨説明し,被告人がこれを了承していたこと,その後,被告人からAに現金200万円を支払うように指示されたことなどについて一貫して供述し,公判廷においても,記憶の減退は認めながらも概ねこれに沿う供述をしているのであって,Eがことさら被告人に不利な虚偽の供述をするような事情はうかがわれないから,Eの上記供述は十分に信用できる。 (4)供与された現金の性質について弁護人らは,Aが う供述をしているのであって,Eがことさら被告人に不利な虚偽の供述をするような事情はうかがわれないから,Eの上記供述は十分に信用できる。 (4)供与された現金の性質について弁護人らは,Aが,研修旅行等では議員に小遣い銭を渡すことも多く,Dと現金を分けた時期も本件とは違う旨供述し,また,Hは,現金の供与を受けた趣旨,金額が本件とは異なる旨公判廷で供述しており,本件で供与されたという現金は賄賂にはあたらないと主張する。 しかし,Aが供述する上記研修旅行で現金を渡すことになった経緯,Dと現金を分けたり,Fに現金を交付した状況,Eから200万円を受領した経緯等は,極めて曖昧で現金の交付金額及び時期等について他の証拠と明らかに矛盾しており,Aが,被告人とともにCと激しく対立している状況にあり,供述当時自らの刑事裁判が係属中であったことなどと考慮すると,Aの上記供述の信用性は極めて低いというべきである。 また,Hは,自らの刑事裁判において,10万円の賄賂の受領を認めて有罪判決が確定しているところ,本件の公判廷における供述においてはその趣旨及び金額が異なる旨供述するが,その供述内容は全体的に曖昧で,明確な記憶がないと述べる部分も多く,時間の経過等を考慮すると上記公判廷における供述の信用性は極めて低いといわざるをえない。 そして,前記2の認定事実のとおりの現金が供与された経緯及び金額等に照らせば,供与された現金が賄賂であったことは明らかである。 (5)被告人の供述の信用性について弁護人らは,被告人が捜査及び公判を通じて一貫して本件各犯行への関与を否認しており,その内容は自然かつ合理的であり,その政治姿勢等に照らしてCには用心して適度に距離を置いて付き合ってきたものであるから,仮にCが中心となって現金を配ったとしてもこれに被告人が関与していない しており,その内容は自然かつ合理的であり,その政治姿勢等に照らしてCには用心して適度に距離を置いて付き合ってきたものであるから,仮にCが中心となって現金を配ったとしてもこれに被告人が関与していないことは明らかであるなどと主張し,被告人もこれに沿う供述をし,助役はCの色のついた人は選びたくなかったなどと供述する。 しかし,被告人の上記供述は,CやEの前記供述と明らかに矛盾することに 加え,被告人は,Eを助役にする案について誰よりも先にCに相談しただけでなく,その説得をCに一任し,後日,CからEへの説得方法が強引だったことなどを聞かされても,Eに特段の事情説明や十分な話し合いを行うこともなく,Cの忠告に従って他の議員らにも知らせなかったというのであるから,被告人が,当時は少なくともCを十分に信頼し,CがEの助役選任に向けて積極的な行動を取ることを求めていたことは明らかであって,前記のとおり,研修旅行後の2月7日の村長室において,Cから研修旅行で費用を伴う議会工作が行われたことが報告されても,被告人は驚くことなくこれを了承したのみならず,後日,Eに対して,Aに現金200万円を支払うように指示したというのであるから,被告人が,研修旅行での賄賂の供与に関与していなかったというのは到底信用し難く,被告人の供述は信用できないというべきである。 (6)まとめ以上を総合すると,弁護人らの前記主張はいずれも採用できず,上記2のとおりの事実を認定することができる。 そこで,上記2の認定事実を前提に被告人,C,A,E及びDの共謀の有無を検討する。 (1)被告人,A,C及びEの共謀の事実について前記2の認定事実によると,被告人は,Eを助役に据えることを強く希望し,CにEの説得等を依頼して,Eの助役就任の内諾を取り付けると,Eの助役就任のためには研 被告人,A,C及びEの共謀の事実について前記2の認定事実によると,被告人は,Eを助役に据えることを強く希望し,CにEの説得等を依頼して,Eの助役就任の内諾を取り付けると,Eの助役就任のためには研修旅行中に議員に賄賂を渡すことが必要であるとのCの助言を受けてこれに賛成し,Eもこれを了承すると,被告人は,C及びAとの間で賄賂の金額,供与の相手,時期及び場所等について具体的に話し合い,これに基づいてA,D及びCが準備を行って,Cが研修旅行中に判示のとおり本件各犯行を実行したというのであるから,被告人,A,C及びEの本件各犯行についての共謀の事実は優にこれを認定することができる。 (2)Dの共謀について 前記2の認定事実のとおり,前記ゴルフ場レストランにおける会話は,被告人とDが同席し,Cから同意を求められた際,Dが「じゃんな(ですね」と)述べ,被告人が「ですね」と述べたというものである。 被告人は,もともと自らがEの助役就任を強く希望したために,前日の説得が行われ,当日の上記会話に至ったもので,その会話の内容に強い関心や利害関係を有していたというべきであるが,Dは,被告人支持派ではあるものの,助役就任に関して直接の利害関係はなく,また,Eに対し前記2(4)のとおり発言したり,同(7)のとおり後日被告人の真意を確認するなど,当時,必ずしもEの助役就任に納得していなかったことなどを考えると,Dの「じゃんな」という発言をもって直ちにDがCらとの贈賄についての謀議を行ったと認めることはできないというべきである。 また,Dが,前記2(8)ウのとおり,Aから70万円を預かった時点では,贈賄について明確な共謀があったことは疑いないが,それまでの間に,DがCあるいはAらと贈賄について謀議を行ったことを認めるに足りる証拠はない。 そして,前記2(8) Aから70万円を預かった時点では,贈賄について明確な共謀があったことは疑いないが,それまでの間に,DがCあるいはAらと贈賄について謀議を行ったことを認めるに足りる証拠はない。 そして,前記2(8)イのFに対する10万円の供与と同ウのDへの70万円の交付との時間的先後関係について,D及びAの供述は不明確であることなどを考えると,Aが,上記2(8)のFに対する10万円の供与を行ってから,Dへの70万円の交付を行った可能性も否定できず,結局,Fに対する贈賄についてDが共謀に加わっていたことには合理的な疑いが残るといわなければならない。 以上のとおりであるから,平成17年2月17日付起訴状記載の公訴事実第1の事実については,被告人が,A,C及びEと共謀して行った(判示第1)が,Dがその共謀に加わっていたことは認められず,同起訴状記載の公訴事実第2,同年3月18日付起訴状記載の公訴事実第1及び第2の各事実については,被告人が,A,C,E及びDと共謀の上で行った(判示第2の1ないし3)ことが認められる。 【法令の適用】罰条いずれも刑法60条,198条(197条1項前段)刑種の選択いずれも懲役刑併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も重い判示第2の3の罪の刑に法定の加重)刑の執行猶予刑法25条1項訴訟費用の負担刑事訴訟法181条1項本文【量刑の理由】本件は,a村長である被告人がa村議会に提出した同村の助役選任に関する議題の採決に関して,議長,建設会社社長及び建設課長と共謀の上,議員1名に10万円を供与し(判示第1,上記議長ら4名及び議員1名と共謀の上,議員2名に各)10万円を供与し,議員1名に同額の供与の申込みをした(判示第2の1ないし3)という贈賄の事案である。 被告人は,自らが希望する者 し(判示第1,上記議長ら4名及び議員1名と共謀の上,議員2名に各)10万円を供与し,議員1名に同額の供与の申込みをした(判示第2の1ないし3)という贈賄の事案である。 被告人は,自らが希望する者を確実に助役に選任するために本件各犯行に及んだものであり,村民の選挙により直接選ばれ,村民のために誠実に職務を執行すべき村長の地位にありながら,就任後わずか3か月足らずで本件各犯行に及んだものであり,村長としての自覚に乏しく,動機は自己中心的であって酌量の余地はない。 被告人は,本件各犯行に関して共犯者らと複数回にわたり謀議を行って,研修旅行先等で議員らに賄賂としての現金を供与することを決め,共犯者らにこれを実行させているものであって,計画的で悪質な犯行である。 本件各犯行は,助役選任についての被告人の希望を実現するために行われたものであり,被告人の希望なくしては本件各犯行の実行はありえないところ,被告人は計画当初から主体的かつ積極的にこれに関与するなど極めて重要な役割を果たしており,被告人が地方自治体の首長という立場であることなどを考慮すると,被告人の刑事責任は他の共犯者らに比較して重いといわざるを得ない。 それにもかかわらず,被告人は捜査及び公判を通じて本件各犯行を全面的に否認 するなどしており,真摯な反省の態度はうかがわれない。 以上によれば,被告人の刑事責任は重い。 しかしながら,被告人にはこれまで前科前歴がないこと,本件により相当期間勾留されたことなど,被告人に有利に斟酌すべき事情も認められるので,これらの事情を総合考慮の上,被告人を主文の刑に処し,その刑の執行を猶予して社会内で更生の機会を与えるのが相当であると判断した。 (検察官清水登,私選弁護人塩田直司(主任,同内川寛,同原啓章,同河口大輔)各公判出席)(求刑懲役2年)平成 処し,その刑の執行を猶予して社会内で更生の機会を与えるのが相当であると判断した。 (検察官清水登,私選弁護人塩田直司(主任,同内川寛,同原啓章,同河口大輔)各公判出席)(求刑懲役2年)平成19年2月26日熊本地方裁判所刑事部裁判長裁判官松下潔裁判官小田島靖人裁判官中島真希子

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