平成27年2月18日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成25年(ワ)第21383号不正競争行為差止等請求事件口頭弁論終結日平成26年12月8日判決東京都渋谷区<以下略>原告イメーション株式会社同訴訟代理人弁護士北原潤一同大月雅博同牧 恵美子同訴訟代理人弁理士古橋伸茂同訴訟復代理人弁護士梶 並 彰一郎アメリカ合衆国ニューヨーク州<以下略>被告ワンブルー,エルエルシー(One-Blue,LLC)同訴訟代理人弁護士大野聖二同小林英了同補佐人弁理士大 谷 寛 主文 1 被告は,第三者に対し,文書又は口頭で,第三者による別紙物件目録記載の製品の販売につき,被告が運営するパテントプールに属する日本国特許権に基づき,同特許権を保有する者が差止請求権を有する旨を告知し,又は流布してはならない。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを70分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 4 被告のために,この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,第三者に対し,文書又は口頭で,第三者 する。 4 被告のために,この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,第三者に対し,文書又は口頭で,第三者による別紙物件目録記載の製品の販売につき,被告が運営するパテントプールに属する特許権に基づき,被告又は同特許権を保有する者が差止請求権を有する旨を告知し,又は流布してはならない。 2 被告は,原告に対し,1億1000万円及びこれに対する平成25年10月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要被告はブルーレイディスク製品(以下「BD」という。)に関する標準必須特許のパテントプールを管理・運営するアメリカ合衆国(以下「米国」という。)法人であり(設立準拠法は,米国デラウェア州法である。),原告はBDを販売する株式会社である。 被告は,原告の取引先の小売店3社に対し,平成25年6月4日付けで,被告の管理する特許権(日本特許を含むが,それに限られるかは争いがある。)に係るライセンスを受けていないBDの販売は特許権侵害を構成し,特許権者は差止請求権を有する旨の通知書を送付した(以下,この通知書を「本件通知書」といい,これによる告知を「本件告知」という。)。 本件は,原告が,被告に対し,(1)本件告知は,不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項14号の虚偽の事実の告知又は私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)19条の不公正な取引方法に該当すると主張して,不競法3条1項又は独禁法24条に基づき,告知・流布行為の差止めを求める(前記第1,1。以下,この請求を「本件請求(1)」という。)とともに,(2)本件告知は,不競法2条1項14号の虚偽の事実の告知に該当し 1項又は独禁法24条に基づき,告知・流布行為の差止めを求める(前記第1,1。以下,この請求を「本件請求(1)」という。)とともに,(2)本件告知は,不競法2条1項14号の虚偽の事実の告知に該当し,又は原告の法律上保護されるべき営業上の利益を違法に 侵害するものであると主張して,不競法4条又は民法709条に基づき,損害賠償金1億1000万円(本件告知による損害1億円と弁護士費用1000万円の合計)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成25年10月17日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(前記第1,2。以下,この請求を「本件請求(2)」という。)事案である。 2 前提となる事実(末尾に証拠等を付した以外の事実は,相手方において争うことを明らかにしない事実である。米国での事実経過については西暦を主とし,括弧内に元号を併記する。)(1) 当事者原告は,1996年(平成8年)に米国法人3M社から分離独立して設立されたImationCorporation(以下「米イメーション社」という。)を中心とするグループ(イメーショングループ)に属する日本法人(株式会社)であり,日本において別紙物件目録記載の「TDKLifeonRecord」ブランドのBD(以下「原告製品」という。)を,株式会社エディオン,株式会社ヤマダ電機,上新電機株式会社(以下,それぞれ「エディオン」,「ヤマダ電機」,「上新電機」という。)の3社を含む小売店に販売している。 被告は,2009年(平成21年)10月,BDに関する標準必須特許の保有会社により設立されたパテント管理会社である。 (2) 原告製品BDには,BD-R,BD-RE,BDXL-R,BDXL-REという4つのフォーマットが存在する。これらのフォーマッ 必須特許の保有会社により設立されたパテント管理会社である。 (2) 原告製品BDには,BD-R,BD-RE,BDXL-R,BDXL-REという4つのフォーマットが存在する。これらのフォーマットにおいて,「BD」とは,Blu-rayDiscの略である。「R」とは,Recordableの略で,1回のみ書き込みが可能という意味であり,「RE」とは,Rewritableの略で,複数回の書き込みが可能という意味である。「XL」とは,3層以上の記録層を有するという意味である。BD市場において現在販売されているものは,そ の大半がBD-RとBD-REである(市場シェアは99.9%)。また,BD-RとBD-REには,それぞれ,1層の記録層を有する1層式と2層の記録層を有する2層式(「DL」)とがあるが,市場でのシェア(販売数量ベース)は,1層式が約86%である(甲9)。 原告製品は,原告が「TDKLifeonRecord」のブランドで販売するBD-R,BD-RE,BDXL-R,BDXL-REである。 (3) FRAND宣言等ア BDに関して,2002年(平成14年)5月,標準規格の策定団体「Blu-rayDiscFounders」(BDF)が設立され(2004年(平成16年)5月,「Blu-rayDiscAssociation」(BDA)に組織変更),同団体において,BDの標準規格が策定された。 イ FRAND宣言2010年(平成22年)10月1日最終改訂のBDA付属定款16条は,以下のとおり規定している(甲1,弁論の全趣旨)。 「第16条特許・知的財産権BDAによる標準化を促進するため,全会員は,特許・知的財産権に関し,以下の指針に従わなければならない。 (1) 各会員は,その関連会社又は自身のために, 趣旨)。 「第16条特許・知的財産権BDAによる標準化を促進するため,全会員は,特許・知的財産権に関し,以下の指針に従わなければならない。 (1) 各会員は,その関連会社又は自身のために,興味を有しているいかなる者(原注:以下「潜在的ライセンシー」という。)に対しても,BDAに加入時又はそれ以降に,会員又はその関連会社が第三者からの承諾や対価の支払を要せずにライセンス又はサブライセンスする権利(原注:以下「フル・ライセンス権」という。)を有している全ての標準必須特許について,公正,合理的,かつ,非差別的な条件 (fair,reasonable, andnon-discriminatoryterms)(判決注:以下,「FRAND条件」ということがある。)で,BDFないしBDAによって策定され,公開されたブルーレイディスク規格に完全に準拠した製品を, 使用,譲渡,譲渡の申出,開発,製造又は製造させ,輸入,輸出,その他の処分をすることについての,非独占的で,譲渡できない,世界的なライセンスを付与し,又は関連会社に付与させる意思を有する(itiswillingtogrant)ことをここに約する。(以下略)(判決注:以下,このような,潜在的ライセンシーに対しFRAND条件によるライセンスを付与する意思を有することを宣言することを,「FRAND宣言」という。)(4) 全会員は,標準必須特許に関する既存のライセンスプログラムに加入しているか否かを問わず,会員の標準必須特許に関し必要となる全てのライセンスの条件が,全体として,全世界的な標準規格であるブルーレイディスク規格の受入れや,ブルーレイディスク規格に準拠した製品の開発や商業化を阻害し,妨げてはならないことを約する。」ウ被告は,BDの標準規格に必須とさ して,全世界的な標準規格であるブルーレイディスク規格の受入れや,ブルーレイディスク規格に準拠した製品の開発や商業化を阻害し,妨げてはならないことを約する。」ウ被告は,BDの標準規格に必須とされる特許について,パテントプール方式によって管理・ライセンスすることによって,当該規格に準拠した製品を製造・販売等する者がワンストップで簡単にライセンスを受けられるようにするとの理念のもと,2009年(平成21年)10月に設立された。 被告は,「One-Blueライセンスプログラム」と題するパテントプール(以下「被告パテントプール」という。)を管理・運営し,以下の15社の特許権者(以下,日本国内における法人登記の有無,正式名称にかかわらず,以下の括弧内の通称を使用する。)からの委託を受けて,同15社が保有するBD規格の標準必須特許を一括してライセンスしている(甲3)。 CyberlinkCorporation(サイバーリンク)DellGlobalB.V. (デル)FujitsuLimited (富士通) Hewlett-PackardCompany (ヒューレット・パッカード)HitachiConsumerElectronicsLtd.(日立)JVCKENWOODCorporation (JVCケンウッド)KoninklijkePhilipsElectronicsN.V. (フィリップス)LGElectronicsInc. (LGエレクトロニクス)PanasonicCorporation (パナソニック)PioneerCorporation (パイオニア)SamsungElectronicsCompanyLtd. (サムスン電子)SharpCorporation (パナソニック)PioneerCorporation (パイオニア)SamsungElectronicsCompanyLtd. (サムスン電子)SharpCorporation (シャープ)SonyCorporation (ソニー)TaiyoYudenCompanyLtd. (太陽誘電)YamahaCorporation (ヤマハ)上記15社の特許権者は,いずれもBDA会員であり,保有する標準必須特許につきFRAND宣言を行っている(弁論の全趣旨)。被告自身は,BDA会員ではなく,FRAND宣言を行っていない。 米イメーション社は,BDA会員であるが,被告パテントプールには参加していない。 エ被告パテントプールに属する標準必須特許は,平成25年8月20日現在,BD-R関係につき2490件(うち日本特許214件),BD-RE関係につき1737件(うち日本特許136件)である(甲17の1・2)。上記15社の特許権者のうち,サイバーリンク,デル,富士通,ヤマハの4社は,原告製品に関係する日本特許を保有していない(甲17の1・2。以下,上記4社を除く,被告パテントプールに属する日本特許を有する11社の特許権者を総称して「被告プール特許権者」といい,被告プール特許権者が保有する,被告パテントプールに属する日本特許を総称して「本件特許権」という。)。 原告製品は,BDの標準規格に準拠しているため,これを日本国内において販売することは,必然的に被告パテントプールに属する本件特許権の実施に該当する。 (4) 米イメーション社と被告との交渉経緯等ア米イメーション社は,被告からライセンスを受けずに米国においてBDを取引していたところ,被告は,米イメーション社に対し,2012年(平成24年)6 (4) 米イメーション社と被告との交渉経緯等ア米イメーション社は,被告からライセンスを受けずに米国においてBDを取引していたところ,被告は,米イメーション社に対し,2012年(平成24年)6月25日付けレター(甲2の同封資料1)により,被告のウェブサイトでは,世界的なライセンスプログラムを提供していることを通知するとともに,ライセンスを受けていないBDの販売等の即時停止を求めた。 被告の提示した実施料は,BD-R1枚につき0.1075米ドル,BD-RE1枚につき0.135米ドル,BDXL-R1枚につき0. 13米ドル,BDXL-RE1枚につき0.16米ドルである(甲3,5,乙3~7,弁論の全趣旨。以下「被告提示実施料」という。)。 イ米イメーション社は,被告に対し,2012年(平成24年)9月4日付けレター(甲2の同封資料2)により,①被告提示実施料は「公正で合理的」でないと考える,②「公正で合理的」な実施料を支払う意思はある,③実施料として,ベア・ディスク(米イメーション社の売上原価の数字であり,包装費用を除いたもの)の3.5%を提示する,④どのようなライセンス条件がFRAND条件かを評価するために,被告に対し,被告が他のライセンシーと締結したライセンス契約の書式,他のライセンシーが締結し,支払った実施料率(グラント・バック条件を含む。),被告が提示する実施料率の根拠及び合理性をサポートする財務分析,の情報を提供するよう求める,旨の提案をした。 ウ被告は,米イメーション社に対し,2012年(平成24年)9月11日付けレター(甲2の同封資料3)により,①非差別的な条件を提供する ために,被告は,実施料率やその他のいかなる条件もライセンシーと個別に交渉することはしないし,できない,②被告は,間違いなく被告提示実施 2の同封資料3)により,①非差別的な条件を提供する ために,被告は,実施料率やその他のいかなる条件もライセンシーと個別に交渉することはしないし,できない,②被告は,間違いなく被告提示実施料は「公正かつ合理的」であることを指摘する,旨を回答した。 エ米イメーション社は,被告に対し,2012年(平成24年)9月26日付けレター(甲2の同封資料4)により,①被告の回答はライセンスの合理的な条件を提供することを拒むものであり,米イメーション社は,被告の要求がFRAND条件によるレートを提案すべき義務とどのように合致し得るのか理解できない,②米イメーション社は先に求めた情報を受け取っていない,旨を回答した。 オ被告の日本子会社であるOne-BlueJapan株式会社は,原告に対し,平成25年4月11日付けレター(甲3)により,ブランドオーナー向け契約書(ブランドオーナー及びメーカーと被告との間で締結されるもの)を添付して,ライセンス契約を提案した。 カ原告は,One-BlueJapan株式会社に対し,平成25年5月9日付けレター(甲2)により,①被告は,米国法上,「公正,合理的かつ非差別的」なロイヤリティ率を提供する義務に違反していると考えている,②原告としては,「公正,合理的」なロイヤリティ率について議論する用意がある,旨を回答した。 キ被告は,2013年(平成25年)5月22日,被告パテントプールに属する特許の保有者4社(ソニー,パナソニック,パイオニア,フィリップス)と共同して,米国デラウェア地区連邦地方裁判所に対し,米イメーション社を被告とする特許権侵害訴訟(事件番号「1:13-cv00917(LPS)」)を提起した(甲7,弁論の全趣旨)。 この訴訟は,本件口頭弁論終結時現在,米国において係属中である。 ク 米イメーション社を被告とする特許権侵害訴訟(事件番号「1:13-cv00917(LPS)」)を提起した(甲7,弁論の全趣旨)。 この訴訟は,本件口頭弁論終結時現在,米国において係属中である。 ク被告は,被告プール特許権者からの委託に基づき(争いがない。),原告の取引先であるエディオン,ヤマダ電機及び上新電機の小売店3社に対し, 平成25年6月4日付けで,被告の管理する特許権に係るライセンスを受けていないBDの販売は特許侵害を構成し,特許権者は差止請求権及び損害賠償請求権を有する旨の本件通知書(これを撮影したものが原告従業員の作成に係る同月10日付け報告書〔甲4〕添付の写真であり,その内容は同報告書2及び3頁のとおりである。)を送付した(本件告知)。 本件通知書には,以下の記載がある。 「1 通知人は,ブルーレイディスク(原注:以下「BD」といいます。)規格の必須特許に係るパテントプールを運営するものです。 BD規格に準拠した記録ディスクである,BD-Rディスク,BD-REディスク,BDXL-Rディスク,及びBDXL-REディスクは,BD規格の必須特許を必然的に用いるものであるため,これらディスクの我が国における生産,使用,譲渡等,輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為(特許法2条3項1号)は,特許権者からの許諾(ライセンス)を得ない限り,特許権の侵害を構成します(同法68条)。 特許権者からの許諾を受けることを要する特許権のリストは,http://www.one-blue.com/license-program/bd-r-re.html の「Patents 」タブをクリックすることでご確認が可能です。通知人には,これらの特許権につき,製造業者及びブランドオーナーとの間で,通知人の提供するライセンスプログラムに登録するた html の「Patents 」タブをクリックすることでご確認が可能です。通知人には,これらの特許権につき,製造業者及びブランドオーナーとの間で,通知人の提供するライセンスプログラムに登録するための契約(原注:以下「登録契約」といいます。)を締結する権限と意思があります。登録契約の締結によって,各特許権者から,バッチ(出荷)毎にライセンスを受けることが可能となります。 2 通知人の調査の結果,貴社は,上記特許権に係るライセンスを受けていない製品の販売を行っており,たとえば,以下のブランドが該当します。 (1)TDK (2)Verbatim(2012年2月28日以前に生産されたライセンス済みの一部製品を除く。)これらの製品の販売をされる行為は,上記特許権の侵害を構成するものであり,そのため,上記特許権の各特許権者は,貴社に対し,上記特許権侵害行為の差止めを請求する権利及び上記特許権侵害行為によって生じた損害の賠償をする請求する権利を有しております。 なお,SONY,Panasonic,Victor及びThat’sブランドの製品については,既に通知人との間で登録契約を締結しているため,その販売が,特許権の侵害行為とされることはありません。 3 係る事情に鑑み,通知人は,貴社に対し,本書面到達後直ちにライセンスを受けていない製品の販売を停止することを求めます。 上記求めにつき,本書面到達後2週間以内に,責任ある回答を,書面にて,通知人代理人宛にして頂きますようお願い申し上げます。 上記期限内に,貴社から,責任ある納得できる回答が得られない場合には,特許権者らは,貴社の特許権侵害行為に対して断固たる法的措置を講じざるを得ないことをあらかじめ申し添えます。」ケ原告は,被告に対し,平成25年6月21日付け警告書( る回答が得られない場合には,特許権者らは,貴社の特許権侵害行為に対して断固たる法的措置を講じざるを得ないことをあらかじめ申し添えます。」ケ原告は,被告に対し,平成25年6月21日付け警告書(甲6)により,①本件告知は不競法2条1項14号の不正競争(虚偽の事実の告知)に該当する,②本件告知は独禁法上の不公正な取引方法に該当する,③原告は,被告に対し,本件告知を撤回するとともに原告の被った実害の回復に向けて誠意ある対応を行うよう求める,④原告としては,被告との間で「公正,合理的かつ非差別的な条件」のもとでのライセンス,具体的には,BD単体の仕入価格の3.5%をロイヤリティ金額とするライセンスを受ける意思や,今後も誠実にライセンス交渉を行っていく意思がある,旨を通知した。 コ原告は,被告に対し,平成25年6月27日,告知・流布行為の仮差止裁判所に顕著)。 サ被告は,原告に対し,平成25年7月3日付け回答書(甲7,乙1)により,原告は事実関係を曲解し,理由のない独自の主張に基づいて不競法違反及び独禁法違反の主張をしており,被告は,かかる不合理な対応に,原告のライセンス意思の欠落を認める旨を回答した。 シ被告は,本件告知の相手方であったヤマダ電機に対し,ヤマダ電機から被告に対する平成25年6月19日付け書簡を受けて,平成25年7月3日付け通知書(甲21)により,ヤマダ電機による原告製品の取扱いは,特許権者らの保有する特許権のヤマダ電機による侵害行為である旨を通知した。 ス原告は,被告に対し,平成25年8月12日,本件訴訟を提起した。 3 争点(1) 本件請求(1)の成否(争点(1))ア本件告知が不競法違反(虚偽の事実の告知)に当たるか(争点(1)ア)イ本件告知が独禁法違反(不公正な取引方法)に当た 訟を提起した。 3 争点(1) 本件請求(1)の成否(争点(1))ア本件告知が不競法違反(虚偽の事実の告知)に当たるか(争点(1)ア)イ本件告知が独禁法違反(不公正な取引方法)に当たるか(争点(1)イ)ウ差止めの必要性(争点(1)ウ)(2) 本件請求(2)の成否(争点(2))ア不競法4条に基づく損害賠償請求権の有無(争点(2)ア)イ民法709条に基づく損害賠償請求権の有無(争点(2)イ)ウ損害額(争点(2)ウ)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)ア(本件告知が不競法違反(虚偽の事実の告知)に当たるか)について(原告の主張) (1) 「競争関係」について不競法2条1項14号の「競争関係」の要件は,判例・学説上,緩やかに解すべきものとされており,例えば,他人のためにする営業誹謗についても,「競争関係」は肯定される。すなわち,AとBが直接の競争関係にある場合に,AのためにCがBを誹謗すれば,CとBが直接の競争関係になくても,Cについて営業誹謗が成立する。 被告は,ソニーやパナソニックなどが保有するBDに関する必須宣言特許からなるパテントプール(被告パテントプール)を管理・運営しているが,ソニー及びパナソニックは,原告と同様,BDを日本国内で販売しており,原告と直接の競争関係にある。 そして,被告は,原告の取引先である小売店3社(ヤマダ電機,上新電機,エディオン)に対する本件告知において,原告製品が被告パテントプールに属する特許権を侵害すると主張し,小売店に対し,原告製品の販売を即時に停止するよう求めているところ,小売店が,被告の上記要求に従い原告製品の販売を停止すれば,ソニーやパナソニックに利益がもたらされる。また,本件告知を受けた小売店が,原告製品の販売を停止する代 即時に停止するよう求めているところ,小売店が,被告の上記要求に従い原告製品の販売を停止すれば,ソニーやパナソニックに利益がもたらされる。また,本件告知を受けた小売店が,原告製品の販売を停止する代わりに,原告に対し,上記特許権侵害問題を解決するよう働きかけ,原告において被告の提示する条件でのライセンスの受諾及び実施料の支払を余儀なくされた場合にも,上記パテントプールに参加するソニーやパナソニックに利益がもたらされる。 したがって,本件告知は,少なくとも,原告と直接の競争関係にあるソニーやパナソニックの利益を図る意図をもって行われたことが明らかである。 よって,本件において「競争関係」の要件は肯定される。 (2) 「他人の営業上の信用を害する」について本件告知は,被告にとって「他人の」製品である原告製品について,特許権侵害というネガティブな事実を指摘し,その即時の販売停止を求めるものであるから,「他人の営業上の信用を害する」ことが明らかである。 (3) 「虚偽の事実を告知し,又は流布する行為」についてア被告プール特許権者は差止請求権を行使できないこと(ア) 知財高裁平成26年5月16日決定・判時2224号89頁(以下「乙21大合議決定」という。乙21)によれば,FRAND宣言をしている特許権者による差止請求権の行使については,相手方において,特許権者がFRAND宣言をしたことに加えて,相手方がFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有する者であることの主張立証に成功した場合には,権利の濫用(民法1条3項)に当たり許されないと解される。 (イ) 原告に対する差止請求権の行使が権利濫用であること被告プール特許権者は,FRAND宣言をしている。 原告は,FRAND条件によるライセンスを受ける意思を有する。 れないと解される。 (イ) 原告に対する差止請求権の行使が権利濫用であること被告プール特許権者は,FRAND宣言をしている。 原告は,FRAND条件によるライセンスを受ける意思を有する。 乙21大合議決定の判示に基づけば,本件において,FRAND宣言をした被告プール特許権者が原告から小売店への原告製品の販売に対して差止請求権を行使することは,権利の濫用(民法1条3項)に当たり許されない。 (ウ) 小売店に対する差止請求権の行使も権利濫用であること原告から小売店への原告製品の販売がFRAND宣言にかかる特許権に基づく差止請求権の行使を受けないということは,原告製品の日本国内での流通について当該特許権に基づくライセンスが付与されたのと実質的に同視できるといえる。また,仮に,小売店による原告製品の販売に対して当該特許権に基づく差止請求権の行使が許されると解するならば,結果的に原告製品の日本国内での流通が阻害され,原告から小売店への原告製品の販売に対する差止請求権の行使を権利濫用として制限したことが実質的に無意味となる。 したがって,FRAND宣言をした被告プール特許権者が原告から小 売店への原告製品の販売に対して差止請求権を行使することが権利の濫用に当たり許されない場合には,原告製品を購入した小売店による原告製品の販売に対して差止請求権を行使することもまた,権利濫用として許されないものと解すべきである。 (エ) 被告提示実施料は,「累積ロイヤリティ問題」を考慮するまでもなく,「ホールドアップ状況」をもたらすものであり,「公正,合理的」でないこと原告が被告提示実施料を支払った場合には,被告の製品購入原価(ディスク本体の価格,パッケージング費用及び輸入諸掛経費の合計)に当該実施料を加えた金額は,原告から小売店に対 正,合理的」でないこと原告が被告提示実施料を支払った場合には,被告の製品購入原価(ディスク本体の価格,パッケージング費用及び輸入諸掛経費の合計)に当該実施料を加えた金額は,原告から小売店に対する販売価格を上回ることになり,その他の変動費(保管費用,販売費用等)や当該製品に合理的に対応する固定費を控除するまでもなく,当該製品の販売により損失(赤字)が発生する(甲9)。そして,上記変動費や固定費を控除すれば,損失(赤字)はさらに拡大する(甲9)。 さらに,原告のBD-R及びBD-REだけでなく,これらと市場において競合する他ブランドの同一フォーマットの製品(競合品)の原価等も原告製品とほぼ同等であると推認すると,競合品についても,仮に被告提示実施料を支払うとすれば,「小売店に対する販売価格-製品購入原価-特許料」,そこから「その他変動費」を控除した「売上総利益」,又は,そこから「固定費」を控除した「営業利益」のいずれかの段階で,赤字となる可能性が極めて高く,採算が取れないことが分かる。 以上のとおり,被告提示実施料は,原告にとっても,また,競合品のブランド保有者にとっても,それを支払うならば採算が取れなくなる程度に高額なものであり,必須特許のライセンスを希望する者に対し,法外な実施料やその他の理不尽なライセンス条件に同意せざるを得なくなる状況(ないし,当該企業が法外な実施料等に同意できずに標準規格に かかる技術の利用を断念せざるを得なくなる状況)(以下「ホールドアップ状況」という。)をもたらすものであるから,FRAND条件における「公正,合理的」に当たらない。 (オ) 被告提示実施料は,「累積ロイヤリティ問題」を考慮すれば,より一層「ホールドアップ状況」をもたらすから,「公正,合理的」でなく,「必須特許全体としての おける「公正,合理的」に当たらない。 (オ) 被告提示実施料は,「累積ロイヤリティ問題」を考慮すれば,より一層「ホールドアップ状況」をもたらすから,「公正,合理的」でなく,「必須特許全体としての商業化妨害禁止条件」にも反すること標準規格に多数の必須特許が組み込まれている場合に「ホールドアップ状況」を生じるか否かを判断するには,標準技術利用者がライセンスを必要としている当該標準規格の必須特許全てについてのライセンスの条件を全体として考察する必要がある。なぜなら,ライセンスを必要とする必須特許全てのライセンスの条件(実施料率等)を「全体として」見たときに「ホールドアップ状況」が生じる場合,標準化された技術を広く普及させるという標準化の目的が妨げられ,標準化におけるFRAND宣言の趣旨に反することになるからである(累積ロイヤリティ問題)。BDA付属定款16条(4)の「当該会員は,上記必須特許に基づき必要な全てのライセンスの条項が全体として当該標準規格に準拠した製品の商業化を妨害するものであってはならない」との約定は,このことを意味する。 BDの標準規格の必須特許を管理し一括ライセンスする団体としては,被告以外にも,「PremierBD」という団体が存在する。これは,株式会社東芝,三菱電機株式会社,トムソンライセンシング,ワーナー・ブラザーズ・ホーム・エンターテインメントの4社が設立し,現在はこれにディズニー・エンタープライズとコロムビア・テクノロジー・ベンチャーズの2社を加えた合計6社によって運営されているものであり,同社らが保有する必須特許をパテントプールとして管理し,その一括ライセンスプログラムを提供している(甲12)。 PremierBDが管理する必須特許は,BD-Rに関するものが421件(うち,日本特許は 須特許をパテントプールとして管理し,その一括ライセンスプログラムを提供している(甲12)。 PremierBDが管理する必須特許は,BD-Rに関するものが421件(うち,日本特許は368件),BD-REに関するものが422件(うち,日本特許は368件)であり,日本特許については,被告パテントプールに属する必須特許の件数(BD-Rに関するものが214件,BD-REに関するものが136件)を大幅に上回っている(甲9)。にもかかわらず,その提案する実施料は,BD-Rにつき,0.065米ドル,BD-REにつき0.09米ドル(いずれも1枚当たり)であって,被告提示実施料(BD-Rにつき,0.1075米ドル,BD-REにつき0.135米ドル)よりも約3割5分~4割も低額である(甲9)。 このように,BDの標準規格の必須特許には,少なくとも被告プールに属するものとPremierBDのプールに属するものとが存在する(実際には,それ以外にも存在すると思われる。)ところ,被告提示実施料をベースに被告パテントプールに属する全世界の特許(BD-Rにつき2490件,BD-REにつき1737件)及びPremierBDに属する全世界の特許(BD-Rにつき421件,BD-REにつき422件)の全てに対する実施料を算定すると,BD-Rにつき,0. 126米ドル,BD-REにつき0.168米ドル(いずれも1枚当たり)となり ,原告製品の損益構造(甲9)からすれば,仮に,原告がこのような高額な実施料を支払うならば,大幅な赤字が発生し,事業として全く採算がとれない状況に陥ることはあまりに明白である。よって,被告提示実施料は,「累積ロイヤリティ問題」を考慮すれば,より一層,ホールドアップ状況をもたらすものであるから,BDA付属定款(甲1)16条(1) れない状況に陥ることはあまりに明白である。よって,被告提示実施料は,「累積ロイヤリティ問題」を考慮すれば,より一層,ホールドアップ状況をもたらすものであるから,BDA付属定款(甲1)16条(1)に定めるFRAND条件にいう「公正,合理的」ではないし,さらに,同条(4)に定める「必須特許全体としての商業化妨害禁止条件」にも違反することが明らかである。 (カ) 被告提示実施料は独禁法に違反する「一括ライセンス」の対価であり,「公正,合理的」でないこと原告においてライセンスを受ける必要がある特許権は,日本特許に限られるのであって,外国特許は全く必要ない。 ところが,被告提示実施料は,外国特許を含めた「一括ライセンス」の対価として設定されており,独禁法に違反する「不公正な取引方法」に該当する「一括ライセンス」の対価である。よって,この点からも,被告提示実施料は「公正,合理的」に当たらず,FRAND条件に違反する。 (キ) 競合品のブランド保有者が被告提示実施料を支払っているとは考えられず,被告提示実施料は「非差別的」でないこと競合品を販売するブランドオーナーが,競合品について被告提示実施料を実際に支払っているとすれば,大幅な赤字が発生する可能性が高く,そのような状況で製品の販売を継続できているとは考え難い。 よって,上記ブランドオーナーが被告提示実施料を実際に被告に支払っている(そして,本件告知時点までに支払っていた)とは考えられず,被告提示実施料は「非差別的」に当たらず,FRAND条件に違反する。 イ原告製品の販売は外国特許を侵害しないこと本件告知は,登録契約の対象となる特許権の全てについてのライセンス,すなわち,「被告パテントプールが提供するワールドワイドのライセンスを得ない限り,特許権の侵害を構成する」 国特許を侵害しないこと本件告知は,登録契約の対象となる特許権の全てについてのライセンス,すなわち,「被告パテントプールが提供するワールドワイドのライセンスを得ない限り,特許権の侵害を構成する」という事実を告知するものであり,本件告知を読んだ小売店は,そのように理解する。 しかしながら,「これらディスクの我が国における生産,使用,譲渡等,輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」が,登録契約の対象となる特許権のうち,少なくとも,日本国外の特許権の侵害になることはない。 つまり,「これら日本国外の特許権については,被告パテントプールが提供するワールドワイドのライセンスを得なくても,特許権の侵害を構成することはない。」というのが真実である。 したがって,本件告知は,「登録契約の対象である特許権の全てについて(外国の特許権を含め)ライセンスを得ない限り,当該ライセンスを受けていない原告製品を小売店が日本で販売することが当該特許権の侵害を構成する。」という点においても,虚偽の事実の告知に該当する。 ウ被告は差止請求権を有しないこと本件告知は,あたかも被告自身が,上記リストに記載された特許権に基づき小売店に対して即時販売停止を求める法的権利を有することを小売店に認識させる内容となっているが,被告は,そもそも上記特許権を自ら保有していないから,即時販売停止を求める法的権利を有しない。よって,この点においても,本件告知は,虚偽の事実の告知に該当する。 エ SONYブランドのBDの一部について登録契約が締結されていないこと本件告知は,SONYブランドのBDについて,既に被告との間で登録契約が締結されているとの事実を告知するものである。 しかし,SONYブランドのBDについての登録契約の契約締結日は,平成25年8月1日であ は,SONYブランドのBDについて,既に被告との間で登録契約が締結されているとの事実を告知するものである。 しかし,SONYブランドのBDについての登録契約の契約締結日は,平成25年8月1日であり(乙4),本件告知がなされた同年6月4日の時点では未だ締結されていなかった。また,SONYブランドのBDのうち,TDK株式会社がOEM製造するものについては,被告と「製造業者及びブランドオーナーとの間で」締結する登録契約(本件告知にはそのように記載されている。)なるものは,未だ締結されていない。 したがって,本件告知のうち,SONYブランドのBDについての事実は虚偽であり,この点においても,本件告知は,虚偽の事実の告知に該当する。 (4) 小括以上のとおり,被告による本件告知は,不競法2条1項14号の全ての要件に該当するから,同項が定義する「不正競争」に該当する。 (5) 「正当な権利行使」論について不正競争の成否に関して,不競法2条1項14号の各要件の該当性に加えて,「正当な権利行使」であるか否かを判断する考え方は,不正競争の成否の判断において,不競法2条1項14号の条文にない要件,例えば,「不正の目的をもって」といった主観的要件を付加するか,あるいは,「正当な権利の行使を目的とする場合を除く」といった消極的要件を付加することにより,不正競争に該当する範囲を限定するのと実質的に同じであり,条文上の根拠に欠ける。 また,虚偽内容の警告について,取引先に対する関係で正当な権利行使であることをもって,信用を毀損された競業者に対する関係でも正当行為であるとして免責するのは,結論の妥当性を欠くうえ,理論的な根拠も不明又は薄弱である。 「正当な権利行使」の判断基準も不明確であり,当事者にとっての予測可能性という点からも問題 る関係でも正当行為であるとして免責するのは,結論の妥当性を欠くうえ,理論的な根拠も不明又は薄弱である。 「正当な権利行使」の判断基準も不明確であり,当事者にとっての予測可能性という点からも問題である。 「正当な権利行使」の有無は,不正競争の成否や差止請求権行使の可否の場面ではなく,不正競争に基づく損害賠償請求権の要件である故意・過失の判断の場面で考慮すれば足りる。 仮に,「正当な権利行使」論の考え方に基づいて判断しても,被告は特許権や専用実施権を有しておらず,本件告知は被告の「権利行使の一環」ではあり得ない。本件告知は特許侵害事件への対応能力を欠いている小売店をターゲットとするものであり,威嚇的効果が高い上,原告製品とSONYブランドの製品とを不当に差別化させる,権利行使の域を超えた不当な内容を含むものである。本件告知を受けた小売店のうちエディオンは,直ちに原告 製品を店頭から撤去して販売を全面的に停止し,現在に至るも,販売を再開していない。被告は,平成25年7月3日付け回答書(甲7)を送付して,上記要請を拒絶するとともに,既に原告製品の販売を停止していたエディオン以外の小売店に対して,平成25年7月3日付け通知書を送付し,同書において,原告との間でライセンス交渉が合意に至る見込みは極めて低いなどとして,ライセンスを受けていない原告製品の販売の停止を執拗に求めている。本件告知は,小売店の紛争回避傾向を認識し,これを不当に利用することを目的としてされたものである。これらの事実を総合考慮すれば,本件告知が「正当な権利行使」といえないことは明らかである。 (被告の主張)(1) 「競争関係」に該当しない他人のためにする営業誹謗が不競法2条1項14号の「競争関係」の要件を満たすのは,取締役が会社の事業の一環として行うよ ないことは明らかである。 (被告の主張)(1) 「競争関係」に該当しない他人のためにする営業誹謗が不競法2条1項14号の「競争関係」の要件を満たすのは,取締役が会社の事業の一環として行うような場合に限られ,事実上又は経済上の利害関係があるという程度では,いわゆる他人のためにする営業誹謗に当たらない。 本件についていえば,被告は,BDを販売している事業者ではなく,当該必須特許のライセンスプログラムを,自らの事業として提供しているのである。 また,被告が小売店に対して本件告知をなしたのは,原告が必須特許を実施してその利益を享受しておきながら,他社と同じ条件での実施料に応じようとしない状況を放置することができなかったからであり,ソニーやパナソニックの利益を直接的に図る目的で行ったのではない。 よって,競争関係に当たるとする原告の主張は失当である。 (2) 「他人の営業上の信用を害する」について不知。 (3) 「虚偽の事実」に該当しない ア被告プール特許権者は差止請求権を有していること原告製品の販売が本件特許権を侵害しており,本件特許権に無効事由が存在しないことについて,原告は何ら争っていない。 よって,被告プール特許権者は,原告(ないし原告製品を販売する小売業者)に対して,本件特許権に基づく差止請求権を有していることは明らかであり(特許法100条),被告提示実施料がFRAND条件に違反しているか否かを論じるまでもなく,本件告知が虚偽事実の告知に該当しないことは明らかである。 この点,原告は,権利濫用に基づく差止請求権の不行使を問題とするが,権利濫用は,単に,権利行使の効果が生じないだけであり,権利が剝奪されるものではないから,被告プール特許権者が差止請求権を保有していることを否定するもので に基づく差止請求権の不行使を問題とするが,権利濫用は,単に,権利行使の効果が生じないだけであり,権利が剝奪されるものではないから,被告プール特許権者が差止請求権を保有していることを否定するものではなく,原告の主張は,主張自体失当である。 イ乙21大合議決定の判示に照らしても,本件特許権に基づく差止請求権の行使が制限される理由がないこと(ア) 本件は乙21大合議決定と事案を異にすること本件においては,複数の特許権が関連するパテントプールにおける包括的なライセンス契約が問題となっており,個別の特許権に基づく権利行使に関する乙21大合議決定とは事案を異にする。 (イ) 小売店は「FRAND条件によるライセンスを受ける意思を有するもの」でないこと本件において,差止請求権の行使対象は原告以外の「第三者」(小売店等)であるから,乙21大合議決定の判示に従えば,小売店等の「第三者」(すなわち,原告以外の者)がFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有することを主張立証する必要がある。 しかるに,本件において,被告が本件告知を発した小売店からは,ライセンスを受ける意思につき何らの回答が得られておらず,原告以外の 「第三者」が,本件特許権についてFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有することを示す事実は全く示されていない。 (ウ) 原告は「FRAND条件によるライセンスを受ける意思を有するもの」とはいえないこと仮に,本件における「相手方」が,小売店ではなく原告であったとしても,被告提示実施料はFRAND条件に合致したものである。そして,原告の主張している実施料を下げる交渉は,他のライセンシーに対して差別を行うものであり,FRAND条件に違反するものであるから,「相手方がFRAND条件によるライセンスを受ける意 のである。そして,原告の主張している実施料を下げる交渉は,他のライセンシーに対して差別を行うものであり,FRAND条件に違反するものであるから,「相手方がFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有するものである」とは到底いえないことは明らかである。 よって,乙21大合議決定の判示に照らしても,本件特許権に基づく差止請求権の行使が制限される理由は存在しない。 (エ) 被告提示実施料は公正かつ合理的であること被告提示実施料の製品販売価格に占める割合は,DVD特許プールであるDVD6Cライセンスグループ(以下「DVD6C」という。)において設定される実施料が占める割合とほぼ同じである。しかも,本件特許権の件数は,BD-Rにつき2490件,BD-REにつき1737件であるところ(甲9の別紙4),DVD6Cにおける必須特許の件数は,391件(DVD-R),525件(DVD-RW)であり(乙14,15),これは,本件特許権の件数の3分の1にも満たないものである。すなわち,実施料が製品価格に占める割合は,特許1件あたりで換算すれば,本件特許権の方がDVD6Cの必須特許よりも低くなることが確実である。また,BDが,DVDよりも新しく,かつ優れた技術であることから,技術的な観点から見ても,本件特許権がDVD6Cの管理する特許権よりも価値が高く,実施料はその分高くなるべきである。しかるに,特許1件あたりで換算した場合に,本件特許権に対する 実施料がDVD6Cの必須特許よりも低く定められているのである。 さらに,DVD6Cにおける特許権者の数,つまりライセンサーの数はDVD-R及びDVD-RWともに8社である一方,本件特許権のライセンサーの数はBD-R及びBD-REともに12社であり,DVD6Cの1.5倍である。権利関係の処理の複 数,つまりライセンサーの数はDVD-R及びDVD-RWともに8社である一方,本件特許権のライセンサーの数はBD-R及びBD-REともに12社であり,DVD6Cの1.5倍である。権利関係の処理の複雑さは,権利処理が必要な権利数のほか,ライセンサーの数に比例するところ,本件特許権にかかるライセンスは,製品販売価格に占める実施料の割合がDVD6Cと同程度でありながら,DVD6Cの1.5倍の数の特許権者らから実施許諾を与えるものであり,権利処理の大幅な効率化を実現している。 このように,被告提示実施料は,他の特許プールであるDVD6Cにて設定される実施料と比較してみれば,非常にリーズナブルなものであり,公正かつ合理的なものであることが明らかである。 (オ) ホールドアップ状況をもたらすものではないこと被告提示実施料が不合理に高額でないことは,他の同種の特許プールであるDVD6Cにおいて提示される実施料と比較して明らかにしたとおりである。 また,現在日本市場にて販売されているBDのブランドは,原告を除きほぼ全てが,本件実施料を含むライセンスを既に受けて,BD事業を続けている。 仮に,原告の主張しているように,被告提示実施料を原告が支払うと赤字となるというのであれば,それは原告自身のコストダウンの努力が競合製品のブランドオーナーに比べて不十分であるということを意味するにすぎず,被告提示実施料が不合理に高いということを意味するものではない。 以上述べたとおり,被告提示実施料は,不合理なものではなく,他社の事業参入を妨げるというものでもなく,原告が指摘するところのホー ルドアップ状況は生じる余地はない。むしろ,原告は,本件特許権に係る発明にフリーライドしつつ,自らは実施料の支払を拒否するという,いわば「逆ホールドアップ」状態 告が指摘するところのホー ルドアップ状況は生じる余地はない。むしろ,原告は,本件特許権に係る発明にフリーライドしつつ,自らは実施料の支払を拒否するという,いわば「逆ホールドアップ」状態を生じさせているのであり,かかる原告の態度こそ,強く非難されるべきである。 「逆ホールドアップ」とは,真にライセンスを取得する意思がないにもかかわらず,ライセンスを希望するかのように装って,実施料を支払うことなく,必須宣言特許を実施するという状況をいう。このような状況を放置すると,ライセンスを取得しようとするというインセンティブが失われるばかりではなく,既にライセンスを取得しているライセンシーに対して,回復し難い損害が生じるのであり,かかる状況下においては,差止請求権の行使は,当然に正当化されるのである。 (カ) 一括ライセンスに該当しないこと本件において,被告が提供するライセンスプログラムにおいて列挙されている特許権は,いずれも,BD-R及びBD-REに関する必須特許であり,BD-R及びBD-REを実現する上で不可欠な技術である。 このことは,当該特許権の登録国いかんに関わらず当てはまるものである。したがって,被告が提供するライセンスプログラムには,BD-R及びBD-REを実現する上で不必要な特許は含まれておらず,不必要な技術のライセンスを義務付けるものではないから,被告提示実施料は,独禁法に違反する「一括ライセンス」に該当するものでない。 また,被告において登録国ごとにライセンス許諾を行わず,全世界で一律の条件にてライセンスを行うことは,極めて合理的である。すなわち,登録国ごとにライセンス許諾が行われた場合,被告において各ライセンシーの使用状況(すなわち,許諾された地域以外で使用されているか否か)を常に監視する必要が生じてしまい, めて合理的である。すなわち,登録国ごとにライセンス許諾が行われた場合,被告において各ライセンシーの使用状況(すなわち,許諾された地域以外で使用されているか否か)を常に監視する必要が生じてしまい,かかる監視コストを踏まえて,実施料を引き上げざるを得ない。全世界での使用につきライセン スを行うことは,かかる監視コストを抑え,ひいては実施料を抑えるという意味でも,合理的なものである。 原告自身,原告製品は台湾及びインドの製造業者から原告ブランドのOEM品として輸入し,小売店に販売していると主張しているのであるから,少なくとも,台湾とインドの特許権のライセンスを取得しない限り,日本の特許権のライセンスを取得しただけでは,原告製品は,特許権侵害の製品となるものである。 また,原告製品を購入した者が,外国において,業として原告製品を使用する場合にはその国の特許権のライセンスが必要となるから,原告においてライセンスを取得して権利関係のクリアランスを行うことが求められる。したがって,「原告においてライセンスを受ける必要がある特許権は,日本特許に限られるのであって,外国特許は全く必要ない」というものでは全くない。 しかも,被告パテントプールは,被告が提供するワールドワイドのライセンスをライセンシーに義務付けるものではなく,原告が望むのであれば,各特許権者と交渉して,原告の望む国のみのライセンスを取得することができるのであり,何らの義務付けは行っていない。つまり,被告が提供するライセンスの条件がワールドワイドというだけであって,被告パテントプールに参加する各特許権者は,それ以外の条件でのライセンスを拒否するものではないから,何らワールドワイドライセンスの義務付けを行うものではなく,かかる観点からも,被告が提供するワールドワイドのライ ールに参加する各特許権者は,それ以外の条件でのライセンスを拒否するものではないから,何らワールドワイドライセンスの義務付けを行うものではなく,かかる観点からも,被告が提供するワールドワイドのライセンスは,一括ライセンスに該当するものではない。 したがって,本件実施料が,独禁法に違反する一括ライセンスに該当するとの原告の主張は失当である。 (キ) 差別的でないこと原告以外のほぼ全てのブランドオーナーは,被告提示実施料にてライ センスを受けており,被告提示実施料が「非差別的」であることは明らかである。 ウ侵害となる特許権の範囲,規模について本件告知(甲4)では,「これらディスクの我が国における生産,使用,譲渡等,輸出もしくは輸入または譲渡等の申出をする行為(特許法2条3項1号)は,特許権者からの許諾(ライセンス)を得ない限り,特許権の侵害を構成します」と記載されているとおり,あくまで原告の日本での販売等の行為のみを問題としている。 そして,本件告知に記載されたURLをクリックして表示されるリストには,左から2列目に登録国が「JP」等の略称によって明記されているのであるから,我が国における特許権の確認が疑義なく可能である。 よって,誤った認識を与えるという原告の主張は,早計な誤解に基づくものであり,失当である。 エ本件告知が,被告が差止請求権を有するという認識を与えるとの主張について本件告知(甲4)には,各特許権者が侵害行為の差止めを求める権利を有する旨明確に記載されているから,被告自身が差止請求権を有するという認識を与えるとの原告の主張は失当である。 オ登録契約を締結しているブランドについて本件告知(甲4)には,SONYブランドのBDについて被告との間で登録契約を締結しているとのみ記載されているので 識を与えるとの原告の主張は失当である。 オ登録契約を締結しているブランドについて本件告知(甲4)には,SONYブランドのBDについて被告との間で登録契約を締結しているとのみ記載されているのであって,SONYブランドのBD全てについて登録契約を締結したとの記載はされていないから,原告の主張は単なる憶測にすぎない。また,本件告知当時には既に,一部のSONYブランドのBDについても登録契約を締結する見込みがあったのであり,このことは,ソニーによる登録契約(乙4)が本件告知後2か月も経たずに締結されていることからも明らかである。よって,本件告知 は,当該SONYブランドのBDが特許権の侵害とならないという,実質的な点において誤りがないから,原告の主張は誤りである。 仮に百歩譲って,一部の製造業者が製造するSONYブランドのBDについて登録契約が締結されていなかった点において誤りがあったとしても,他のブランドオーナーにより販売された大部分のBDについては被告と登録契約が締結されているのであるから,このような些細な点において誤りがあったとしても,これによって原告の営業上の利益が侵害されることはあり得ない。 カ以上のとおり,本件告知が虚偽の事実の告知に該当するという原告の主張は,いずれも理由がない。 (4) 本件告知行為は正当な権利行使に該当し,被告は不競法2条1項14号に基づく責任を負わないことア不競法は,不正競争行為を規制することによって事業者間の公正な競争を確保することを目的としているから,形式的に不正競争に該当する行為であっても,実質的に自由かつ公正な経済秩序の維持発展を妨げる行為といえない場合には,規制の対象とすることはできないはずである。一方,独占的排他権である特許権は,本来はその権利範囲内において他の規制 であっても,実質的に自由かつ公正な経済秩序の維持発展を妨げる行為といえない場合には,規制の対象とすることはできないはずである。一方,独占的排他権である特許権は,本来はその権利範囲内において他の規制を受けることはないのであり,当該特許権に基づく権利行使は,それが正当なものである限り許容されるべきである。 この理は,取引先への権利侵害警告についても同様であり,警告後に,例えば外国の文献や公然実施品が発見されたために無効理由を有する結果となった場合や,警告後に出された裁判例等により事実上権利行使が困難となってしまった場合にも,結果的に虚偽であったという一事をもって不正競争に該当するというのであれば,権利行使を著しく萎縮させることとなり,事業者間の公正な競争を確保するという法目的,及び特許権の保護という観点に照らし妥当ではない。 権利行使が結果的に虚偽であったとの一事をもって,不正競争に該当するというものではなく,告知の具体的事情に照らし,特許権の正当な権利行使に当たるかどうかという観点から判断すべきである。 イ本件告知は,正当な権利行使に該当することまず,本件特許権は,いずれもBDの規格必須特許であり,小売店において販売される原告製品は,本件特許権を侵害するものである。 被告が本件告知を発したのは,原告は本件特許権にフリーライドしていたところ,被告によるFRAND条件に合致したライセンス申し入れを,原告が一方的に拒絶したために,やむを得ず行ったものであって,告知の経緯として非難されるべきものではない。 また,本件告知の内容についても,被告が被告パテントプールを運営するものであること,原告製品が本件特許権を侵害し,損害賠償請求権及び差止請求権を有していることを述べたにすぎず,しかも,本件告知は,大手の家電量販店に対し ついても,被告が被告パテントプールを運営するものであること,原告製品が本件特許権を侵害し,損害賠償請求権及び差止請求権を有していることを述べたにすぎず,しかも,本件告知は,大手の家電量販店に対して,一度だけなされたにすぎないのであるから,相手方に対する威嚇効果が乏しいことは明らかである。 さらに,本件告知の相手方である小売店のうち2社は,現時点でも原告製品の販売を継続している。また,エディオンについてみても,原告による状況説明を受けてもなお,原告製品が本件特許権を侵害していることを否定できなかったために原告製品を店頭から撤去したものと推測されるのであって,本件告知の結果として相当性を欠くものとはいえない。 したがって,本件告知は正当な権利行使に該当し,被告は不競法2条1項14号の不正競争による責任を負うものではない。 2 争点(1)イ(本件告知が独禁法違反(不公正な取引方法)に当たるか)について(原告の主張)(1) 取引妨害 本件告知は,虚偽の事実を告知して小売店と原告との取引を妨害するものであるから,独禁法上の不公正な取引方法である同法2条9項6号及び「不公正な取引方法」(昭和57年公正取引委員会告示第15号。以下「一般指定」という。)14項に定める「取引妨害」に該当する。 (2) 優越的地位の濫用等本件告知は,被告が単独で又は被告プール特許権者と共同して,BD市場から何ら正当な理由なく原告を排除しようとするものであり,独禁法が禁止する私的独占に該当するばかりか(独禁法3条),優越的地位を濫用して不合理な要求を強要して実質的に原告と被告との取引を拒絶し,かつ,原告と小売店との間の取引を不当に妨害する点でも,独禁法上の不公正な取引方法(優越的地位の濫用(同法2条9項5号),共同の取引拒絶(同法2条9項 強要して実質的に原告と被告との取引を拒絶し,かつ,原告と小売店との間の取引を不当に妨害する点でも,独禁法上の不公正な取引方法(優越的地位の濫用(同法2条9項5号),共同の取引拒絶(同法2条9項1号),取引拒絶(同法2条9項6号,一般指定2項),取引妨害(同法2条9項6号,一般指定14項))に該当する。 (3) 差別対価等被告が,そのライセンスプログラムにおいて提示している被告提示実施料を含むライセンス条件は,他の事業者に対するものと異なるものであり,その点においても,独禁法上の不公正な取引方法(差別対価(同法2条9項2号),差別的取扱い(一般指定4項))に該当する。 (4) 一括ライセンス被告の提供するライセンスプログラムは,被告パテントプールが管理する全世界における特許を対象とするものである。 そうすると,被告が原告に対して締結を求めているライセンス契約は,独禁法上の「不公正な取引方法」である「一括ライセンス」(同法2条9項5号イ,ハ(優越的地位の濫用),同法2条9項6号及び一般指定12項(拘束条件付取引),一般指定14項(取引妨害))に該当する。 すなわち,原告にとって不要な特許権を含めてライセンスの対象とし,当 該特許権の対価をも徴収しようとする被告の行為は,優越的地位の濫用についての規定である同法2条9項5号イにいう,「継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。……)に対して,当該取引に係る……役務以外の……役務を購入させること」に該当するとともに,同じく同号ハにいう,「……その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し」に該当する。 また,かかる被告の行為は,拘束条件付取引についての規定である一般指定12項にいう,「……その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつ 相手方に不利益となるように取引の条件を設定し」に該当する。 また,かかる被告の行為は,拘束条件付取引についての規定である一般指定12項にいう,「……その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて,当該相手方と取引すること」に該当する。 (被告の主張)(1) 取引妨害との点について上記1で述べたとおり,本件告知が虚偽であるとする原告の主張はいずれも理由がなく,本件告知は独禁法上の「取引妨害」に該当しない。 (2) 優越的地位の濫用等との点について被告は,被告プール特許権者から与えられた権限の中で,既存のライセンシーと公平な条件で,原告と契約を締結する意思を原告に伝えている(甲3)。ソニー,パナソニック等の主要なブランドがライセンスを受けている中,被告としては,原告がライセンスを受けていない製品を販売し続けることを看過できる余地はなく,ライセンシー間の公平というまさに正当な理由から原告との契約を締結する意思を伝えたのである。 それに対し,原告は,前提を誤った的外れな交渉を被告に求め,誠実に契約締結に臨む意思の欠如を明らかにしたことから(甲2),被告としては,やむを得ず,小売店に対して本件告知をせざるを得なかったものである。 このように,被告による本件告知は正当な理由に基づくものであるから,不公正な取引方法に当たるとする原告の主張は誤りである。 そもそも,標準化に伴うパテントプールの活動に関しては,公正取引委員 会が「標準化に伴うパテントプールの形成等に関する独占禁止法の考え方」を発表し(乙2),「規格に係る特許についてパテントプールを形成・運用することは,規格の採用に伴う複雑な権利関係の処理を効率化し,ライセンス料を調整して高額化を回避することを容易にし得るなど,規格を採用した製品の開発・普及を促進するため てパテントプールを形成・運用することは,規格の採用に伴う複雑な権利関係の処理を効率化し,ライセンス料を調整して高額化を回避することを容易にし得るなど,規格を採用した製品の開発・普及を促進するための有効な手段として,競争促進的に機能し得る」として,パテントプールは,「独占禁止法違反行為の未然防止の観点からは,合理的な理由のない限り非差別的にライセンスすることが必要である」とされている。したがって,被告が他のライセンシーと同一の条件で原告に対して,ライセンス条件を提示することは,独禁法上,競争促進的であると評価されることがあっても,競争制限的であると評価されることはあり得ず,原告の主張は,根本的に誤っている。 (3) 差別対価等との点について被告提示実施料は,他のライセンシーに提示し合意された条件と完全に同等の条件である。 公正取引委員会は,標準化に伴うパテントプールの活動に関しては,「独占禁止法違反行為の未然防止の観点からは,合理的な理由のない限り非差別的にライセンスすることが必要である」(乙2・4頁)としており,ライセンシー間で同等の条件でライセンスすること自体,独禁法の要請でもある。 (4) 一括ライセンスとの点について独禁法で「一括ライセンス」として規制されているのは,技術の効用を発揮させる上で必要でない場合,すなわち,不必要な技術のライセンスを義務付けることである。これを規格必須特許のプールライセンスに関する本件に即して言えば,規格必須特許に加えて,規格に必須ではない特許のライセンスを義務付けることを意味する。 前記1の(被告の主張)(3)イ(カ)で述べたとおり,被告が提供するライセンスプログラムには,BD-R及びBD-REを実現する上で不必要な特許 は含まれておらず,不必要な技術のライセンスを義務付ける 被告の主張)(3)イ(カ)で述べたとおり,被告が提供するライセンスプログラムには,BD-R及びBD-REを実現する上で不必要な特許 は含まれておらず,不必要な技術のライセンスを義務付けるものではないから,被告提示実施料は,独禁法に違反する「一括ライセンス」に該当するものでない。 3 争点(1)ウ(差止めの必要性)について(原告の主張)(1) 不競法2条1項14号,3条1項に基づく差止請求が認容されるべきこと本件告知により,これを受領した小売店3社のうちの1社であるエディオンが直ちに原告製品を店頭から撤去し,販売を全面的に停止したことにより,実際に,原告は営業上の利益を著しく侵害された。 さらに,被告は,本件告知が不正競争に該当することを全面的に争い,本件告知後においても繰り返し,エディオン以外の小売店に対して本件告知と同内容の告知を行っているから,今後も同様の告知をするおそれがあり,そのため,エディオンとの間で原告製品の取引再開は期待できないばかりか,他の小売店もエディオンと同様,原告製品の販売を停止するおそれがあり,そうなると原告はさらに営業上の利益を著しく侵害されることになる。 したがって,原告には「営業上の利益の侵害又はそのおそれ」があり,不競法2条1項14号,3条1項に基づき,被告による本件告知と同内容の告知に対する差止請求権を有する。 (2) 独禁法24条に基づく差止請求が認容されるべきこと本件告知は,不公正な取引方法に該当し,独禁法19条に違反する。また,本件告知によって一部の小売店が原告製品の取扱いを停止したことで,原告は著しい損害を被っており,被告が将来にわたり本件告知と同様の告知を継続的に実行するならば,原告はBD市場から排除されるおそれがあるから,被告のかかる行為により原告に著しい損害 停止したことで,原告は著しい損害を被っており,被告が将来にわたり本件告知と同様の告知を継続的に実行するならば,原告はBD市場から排除されるおそれがあるから,被告のかかる行為により原告に著しい損害を生じ又は生じるおそれがある(独禁法24条)といえる。 したがって,独禁法24条に基づく原告の被告に対する差止請求も認容されるべきである。 (被告の主張)(1) 不競法に基づく差止請求が認められないこと原告は,小売店であるエディオンが原告製品の販売を停止したことにより営業上の利益が侵害されたと主張している。しかしながら,原告が提出した報告書(甲9)によれば,被告に実施料を支払わない場合であっても,ほとんどの原告製品の販売による利益はマイナス(すなわち赤字)であり,原告製品の販売が停止することにより,原告の損失が減少することはあっても,利益が侵害されることはあり得ないのであるから,原告の主張は誤りである。 また,原告は,「被告は,本件告知が不正競争に該当することを全面的に争い,本件告知後においても繰り返し,エディオン以外の小売店に対して本件告知と同内容の告知を行っているから,今後も同様の告知をするおそれがあ」ると主張している。しかしながら,被告としては,原告の不当な請求に対して争うのは当然の事柄であり,何ら非難される筋合いはない。また,被告は,本件告知の後に,小売店に対して同様の告知は一切行っておらず,原告の主張は何ら事実に基づかないものであって失当である。 被告は,本件告知を行った平成25年7月以降,1年以上もの長い間,小売店に対して権利侵害警告を行っていないのであるから,差止めの必要性が存在しないことは明らかである。 したがって,不競法3条に基づく差止請求は認められない。 (2) 独禁法に基づく差止請求が認められな に対して権利侵害警告を行っていないのであるから,差止めの必要性が存在しないことは明らかである。 したがって,不競法3条に基づく差止請求は認められない。 (2) 独禁法に基づく差止請求が認められないこと原告の主張は,否認ないし争う。 4 争点(2)ア(不競法4条に基づく損害賠償請求権の有無)について(原告の主張)前記1の(原告の主張)(1)ないし(4)で述べたとおり,被告が本件告知に及 んだことは,不競法2条1項14号の虚偽の事実の告知に該当するところ,前記1の(原告の主張)(5)で述べたところから,被告が本件告知に及んだことについては違法性があり,かつ,被告に過失があることは明らかである。 また,この点は,次の事実からも肯定される。 第1に,被告は,本件告知以前に,原告の親会社である米イメーション社や原告と交渉する中で,米イメーション社や原告から,FRAND条件でライセンスを受ける意思がある旨を伝えられていた。 第2に,必須宣言特許の行使に関しては,本件告知がなされた時点以前から,日本のほか,米国や欧州諸国においても,FRAND宣言がなされた必須宣言特許に基づき差止請求権を行使することの可否が議論されていたところ,米国においては,FRAND条件でライセンスを受ける意思がある者(いわゆるwillinglicensee)に対する差止請求は許されないとするのが多数説であったうえ,日本においても,平成25年2月28日,東京地裁において必須宣言特許に基づく権利行使(差止請求権及び損害賠償請求権の行使)を権利濫用として否定する判決(甲13)及び決定(乙25)が下され,注目を浴びていた。 被告はかかる議論の状況を十分に認識したうえで,本件告知に及んだものである。このことは,被告が必須宣言特許のパテントプールの管理者・運営者で 決(甲13)及び決定(乙25)が下され,注目を浴びていた。 被告はかかる議論の状況を十分に認識したうえで,本件告知に及んだものである。このことは,被告が必須宣言特許のパテントプールの管理者・運営者であるという事実に加え,本件告知を被告代理人として行った大野弁護士が上記東京地裁の事件の当事者の代理人であるという事実からも明らかである。 よって,被告は,本件告知をするに当たり,そこに言及される特許権者(被告プール特許権者)が小売店に対して特許侵害に基づく差止請求権を有するとの点が,事実に反する可能性のあることを合理的に予見できたものであり,にもかかわらずあえて本件告知に及んだものであるから,上記記載が事実に反する以上,その責任を甘受すべきであり,被告の行為は違法性があり,かつ,被告には過失があるというべきである。 (被告の主張) (1) 被告の行為には違法性がないこと前記1の(被告の主張)(4)で述べたところから,被告が本件告知に及んだことは,正当な権利行使に該当し,違法性がない。 (2) 被告には過失がないこと本件告知がなされた平成25年7月当時,BDに関する規格必須特許に基づく差止請求権の行使が常に否定されるという状況にはなかったのであるから,被告には過失がない。 すなわち,本件告知がなされた当時,規格必須特許に基づく差止請求権の行使が否定された裁判例は,東京地裁平成25年2月28日決定(乙25)のみがあったところ,当該東京地裁決定は,権利濫用法理により,原告は,差止請求権を保有しているが,その行使が権利濫用に該当するとして否定したにすぎず,およそ規格必須特許に関して,特許権者は,差止請求権を保有していないとするものではない。 また,当該東京地裁決定では,①特許権者が,ライセンス契約の締結準備段階における重要 して否定したにすぎず,およそ規格必須特許に関して,特許権者は,差止請求権を保有していないとするものではない。 また,当該東京地裁決定では,①特許権者が,ライセンス契約の締結準備段階における重要な情報を相手方に提供して誠実に交渉を行うべき信義則上の義務に違反したこと,②規格団体であるETSIに対する特許の開示が,特許発明に係る技術が規格に採用されてから約2年を経過していたことといった事情を考慮して,規格必須特許に基づく差止請求権の行使が権利濫用にあたり許されないと判断されている。 しかし,本件においては,①ライセンス条件をホームページ上に開示しており,重要な情報を提供していないという事情はなく,②本件特許権に係る技術がBDの規格に採用されるに当たり,その開示を遅らせたといった事情も存しない。 よって,東京地裁決定が示した法理によっても,本件では,規格必須特許に基づく差止請求権の行使が権利濫用にあたり許されないといった事情は見当たらず,BDに関する規格必須特許に基づく差止請求権の行使が否定され ることにはならないし,まして,規格必須特許の特許権者は,差止請求権は当然に保有されていると考えられる。 したがって,本件告知がなされた平成25年7月当時,BDに関する規格必須特許の特許権者が差止請求権の保有を否定されるという状況にはなかったのであるから,被告には予見可能性がなく,過失がない。 しかも,上述したとおり,乙21大合議決定は,あくまで規格必須特許の特許権者が差止請求権を保有していることは当然の前提であるとして,一定の場合に権利濫用法理により差止請求権の行使を否定したものである。我が国においては,現在に至るまで,規格必須特許の特許権者が差止請求権の保有自体が否定されるという裁判例が出されたことはなく,過失の判断基準時を 濫用法理により差止請求権の行使を否定したものである。我が国においては,現在に至るまで,規格必須特許の特許権者が差止請求権の保有自体が否定されるという裁判例が出されたことはなく,過失の判断基準時を議論するまでもなく,被告には,予見可能性が認められる余地は皆無であり,過失が認められる余地はない。 5 争点(2)イ(民法709条に基づく損害賠償請求権の有無)について(原告の主張)(1) 前記4の(原告の主張)で述べたとおり,被告が本件告知に及んだことは,不競法2条1項14号の虚偽の事実の告知に該当するところ,これが不法行為法上の違法行為と評価されるべきことは,明らかである。 (2) また,本件告知は,不競法2条1項14号の虚偽の事実の告知に該当するか否かを議論するまでもなく,以下のとおり,不法行為法上の違法行為と評価されるべきものである。 すなわち,被告の提供するライセンスプログラムにおいて,ライセンス契約を締結してライセンシーとなり得るのは,製造元やブランドオーナーと称される販売元であり,小売店は,ライセンス契約の当事者たり得ない(甲3添付の契約書ひな形)から,そもそも被告からライセンスの申入れを受ける立場にはない。 また,被告は,パテントプールによるライセンスプログラムを運営する者 でしかなく,被告パテントプールに属する特許権を一切保有していないのであるから,小売店は,そもそも,被告からライセンスを受けていない製品の販売を停止するよう請求を受ける立場にもない。それにもかかわらず,被告は,上記のような立場の小売店に対して,本件通知書に小売店の販売する原告製品が具体的にどの特許権を侵害しているのかを明記せずに,数千件の特許権を含む英語表記のリストを入手できる被告のウェブサイトのURLを摘示して特許権侵害の事実を告知し 件通知書に小売店の販売する原告製品が具体的にどの特許権を侵害しているのかを明記せずに,数千件の特許権を含む英語表記のリストを入手できる被告のウェブサイトのURLを摘示して特許権侵害の事実を告知し,ライセンスを受けていない原告製品の即時の販売停止を求めるとともに,小売店から「責任ある納得できる回答」が得られない場合には,特許権者らは小売店の特許権侵害行為に対して「断固たる法的措置を講じざるを得ない」などという強圧的な言辞まで添えている(甲4)。 このような本件告知の主要な目的が,特許権に基づく権利行使の外形を装って,特許侵害の警告に対して十分な対応能力を有しない小売店に圧力をかけることによって,小売店が原告との原告製品の取引を継続できない状況を作り出し,それにより原告に対し,被告が一方的に設定した高額なロイヤリティ金額の条件を含むライセンスを受けることを承服させることにあるのは,明らかである。このような本件告知は,およそ正当な権利行使とはいえず,自由競争の範囲を逸脱した著しく相当性を欠く行為というほかない。 したがって,本件告知は,故意又は過失により原告の法律上保護される営業上の利益を違法に侵害するものであって,民法709条の不法行為を構成する。 (被告の主張)否認ないし争う。 前記4の(被告の主張)で述べたとおり,被告の行為には違法性がなく,また,被告には過失がない。 6 争点(2)ウ(損害額)について (原告の主張)本件告知の結果,これを受けたエディオンが,平成25年6月11日より,原告製品を店頭から撤去し,販売を中止するに至ったことにより,原告は,同社への原告製品の売上及び販売利益の喪失,同社からの返品分の廃棄費用や保管費用等の損害を被り,かかる損害が今後も拡大していくことが確実である。 その金額は, 売を中止するに至ったことにより,原告は,同社への原告製品の売上及び販売利益の喪失,同社からの返品分の廃棄費用や保管費用等の損害を被り,かかる損害が今後も拡大していくことが確実である。 その金額は,平成25年12月末までに確定するものに限っても,1億円を下らない。 また,原告は,本訴の遂行を原告訴訟代理人弁護士に委任した。このうち,被告による不正競争行為と相当因果関係のある弁護士費用額は上記損害額の10%である1000万円を下らない。 よって,原告は,被告に対し,①不競法2条1項14号及び4条,又は②民法709条に基づき,損害賠償金1億1000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成25年10月17日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 (被告の主張)不知,否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)ア(本件告知が不競法違反(虚偽の事実の告知)に当たるか)について(1) 国際裁判管轄及び準拠法について本件は,我が国の小売店に対してされた本件告知が不正競争に当たるとして,同種行為の差止め及び損害賠償を求める訴えであるから,我が国が国際裁判管轄を有する(民事訴訟法3条の3第8号)。結果発生地は原告の本店所在地である日本であるから,日本法が準拠法となる(法の適用に関する通則法17,19,20条)。 本件告知に係る事実が「虚偽の事実」に当たるか否かの判断の先決問題と して,被告プール特許権者による差止請求権の行使が権利濫用に当たるかが問題となるが,特許権に基づく差止請求の準拠法は,当該特許権が登録された国の法律であると解され(最高裁平成14年9月26日判決・民集56巻7号1551頁),後述のとおり,本件告知は,日本で登録された本件特許に関するものである 差止請求の準拠法は,当該特許権が登録された国の法律であると解され(最高裁平成14年9月26日判決・民集56巻7号1551頁),後述のとおり,本件告知は,日本で登録された本件特許に関するものであると解されるから,日本法が適用される。 (2) 「競争関係」について被告は,自らBDの販売を行う者ではないが,BDの販売を行っているパナソニックやソニー(乙3,4,16ないし18)の参加する被告パテントプールを管理・運営するパテントプール団体であり,被告プール特許権者からの委託を受けて本件告知を行ったのであるから(前記前提となる事実(4)ク),被告は,競業者である被告プール特許権者のいわば代理人的立場にある者として,原告との間に競争関係を認めることができ,本件告知は,被告にとって,「競争関係にある他人」である原告に関する事実の告知といえる。 (3) 「営業上の信用を害する」について本件告知は,小売店3社が販売している「TDK」ブランドのBDは,被告のライセンスを受けていない製品であり,これらの製品を小売店3社が販売することは,被告プール特許権者の特許権を侵害し,差止め及び損害賠償の対象となる旨を摘示するものであるところ(甲4),本件告知には,原告の名称自体が記載されているものではない。 しかし,原告が小売店に販売する原告製品は,「TDK」ブランドのBDなのであるから,本件告知に接した小売店は,原告製品の納入業者である原告が他人の特許権を侵害して原告製品を小売店に譲渡したものと認識し,原告の営業上の信用を低下させるものと認められる。 そして,その特許権侵害行為が差止めの対象となる行為である旨摘示することは,同じ行為が,差止めの対象とならず,単にFRAND条件の範囲内での損害賠償の対象となるにとどまる行為である旨の摘示に比して,より一 の特許権侵害行為が差止めの対象となる行為である旨摘示することは,同じ行為が,差止めの対象とならず,単にFRAND条件の範囲内での損害賠償の対象となるにとどまる行為である旨の摘示に比して,より一 層原告の営業上の信用を低下させるものであると認められる。 したがって,本件告知が原告の名称を明記していないとしても,本件告知は原告の「営業上の信用を害する」事実の告知であるといえる。 (4) 「虚偽の事実」についてア本件告知は,「上記特許権の各特許権者は,貴社に対し,上記特許権侵害行為の差止めを請求する権利及び上記特許権侵害行為によって生じた損害の賠償をする請求する権利を有しております。」と記載しているところ(甲4),原告は,FRAND宣言を行った被告プール特許権者による差止請求権の行使は権利濫用となり,被告プール特許権者が即時の差止請求権を有しているとはいえないのに,これを有しているかのように記載したことは虚偽の事実の告知に該当する,と主張する。 イそこで,まず,FRAND宣言と差止請求権の行使の関係について検討するに,FRAND宣言された必須特許(以下「必須宣言特許」という。)に基づく差止請求権の行使を無限定に許すことは,次に見るとおり,当該規格に準拠しようとする者の信頼を害するとともに特許発明に対する過度の保護となり,特許発明に係る技術の社会における幅広い利用をためらわせるなどの弊害を招き,特許法の目的である「産業の発達」(同法1条)を阻害するおそれがあり合理性を欠くものといえる。 すなわち,ある者が,標準規格へ準拠した製品の製造,販売等を試みる場合,当該規格を定めた標準化団体の知的財産権の取扱基準を参酌して,当該取扱基準が,必須特許についてFRAND宣言する義務を会員に課している等,将来,必須特許についてFRAN の製造,販売等を試みる場合,当該規格を定めた標準化団体の知的財産権の取扱基準を参酌して,当該取扱基準が,必須特許についてFRAND宣言する義務を会員に課している等,将来,必須特許についてFRAND条件によるライセンスが受けられる条件が整っていることを確認した上で,投資をし,標準規格に準拠した製品等の製造・販売を行う。仮に,後に必須宣言特許に基づく差止請求を許容することがあれば,FRAND条件によるライセンスが受けられるものと信頼して当該標準規格に準拠した製品の製造・販売を企図し, 投資等をした者の合理的な信頼を損なうことになる。必須宣言特許の保有者は,当該標準規格の利用者に当該必須宣言特許が利用されることを前提として,自らの意思で,FRAND条件でのライセンスを行う旨の宣言をしていること,標準規格の一部となることで幅広い潜在的なライセンシーを獲得できることからすると,必須宣言特許の保有者がFRAND条件での対価を得られる限り,差止請求権行使を通じた独占状態の維持を保護する必要性は高くない。そうすると,このような状況の下で,FRAND条件によるライセンスを受ける意思を有する者に対し,必須宣言特許による差止請求権の行使を許すことは,必須宣言特許の保有者に過度の保護を与えることになり,特許発明に係る技術の幅広い利用を抑制させ,特許法の目的である「産業の発達」(同法1条)を阻害することになる。 そうすると,必須宣言特許についてFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有する者に対し,FRAND宣言をしている者による特許権に基づく差止請求権の行使を許すことは,相当ではない。 他面において,標準規格に準拠した製品を製造,販売する者が,FRAND条件によるライセンスを受ける意思を有しない場合には,かかる者に対する差止めは許される 請求権の行使を許すことは,相当ではない。 他面において,標準規格に準拠した製品を製造,販売する者が,FRAND条件によるライセンスを受ける意思を有しない場合には,かかる者に対する差止めは許されると解すべきである。FRAND条件でのライセンスを受ける意思を有しない者は,FRAND宣言を信頼して当該標準規格への準拠を行っているわけではないし,このような者に対してまで差止請求権を制限する場合には,特許権者の保護に欠けることになるからである。 もっとも,差止請求を許容することには,前記のとおりの弊害が存することに照らすならば,FRAND条件によるライセンスを受ける意思を有しないとの認定は厳格にされるべきである。 以上を総合すれば,FRAND宣言をしている特許権者による差止請求権の行使については,相手方において,特許権者が本件FRAND宣言をしたことに加えて,相手方がFRAND条件によるライセンスを受ける意 思を有する者であることの主張立証に成功した場合には,権利の濫用(民法1条3項)に当たり許されないと解される(以上につき,知財高裁平成26年5月16日決定・判時2224号89頁[乙21大合議決定])。 ウこれを本件についてみると,被告プール特許権者は,被告パテントプールに属する本件特許権につきFRAND宣言をしているのであるから,FRAND条件によるライセンスを受ける意思のある者に対して差止請求権を行使することは権利の濫用として許されない。 そして,原告がFRAND条件によりライセンスを受けた場合には,原告が適法に製造又は輸入した原告製品を小売店が販売することも適法となるのであるから,原告がFRAND条件によるライセンスを受ける意思があると認められる場合には,被告プール特許権者が,原告の製造又は輸入した原告製品を販売する小売 製品を小売店が販売することも適法となるのであるから,原告がFRAND条件によるライセンスを受ける意思があると認められる場合には,被告プール特許権者が,原告の製造又は輸入した原告製品を販売する小売店に対し差止請求権を行使することは,権利の濫用となるものと解するのが相当である。 エ原告のFRAND条件によるライセンスを受ける意思の有無について原告は,FRAND条件によるライセンスを受ける意思を有する者であると主張するので,以下,この点について検討する。 (ア) 前提となる事実(上記第2の2(4))によれば,①被告は,米イメーション社に対し,2012年(平成24年)6月25日付けレター(甲2の同封資料1)により,被告のウェブサイトが提供するライセンスプログラムについて通知し,被告パテントプールについてのライセンス条件として,被告提示実施料を提示したこと,②米イメーション社は,2012年(平成24年)9月4日付けレター(甲2の同封資料2)により,被告提示実施料は「公正で合理的」でないが,「イメーションは,ブルーレイディスク及び関係機器に必須の技術に対して,公正で合理的な実施料を支払うつもりであり,支払う意思もあります(Imationexpectstopay, andiswillingtopay)」と明言して,売上原価の3. 5%という具体的な実施料を提示し,被告提示実施料が非差別的である根拠,被告提示実施料の根拠等を示すよう要求したこと,③これに対して,被告は,2012年(平成24年)9月11日付けレター(甲2の同封資料3)により,実施料についてライセンシーと個別の交渉はしないし,できない旨を回答し,数社がブランドオーナー登録契約に共同署名していることを回答したが,それ以上に,ブランドオーナーが被告と実際に 資料3)により,実施料についてライセンシーと個別の交渉はしないし,できない旨を回答し,数社がブランドオーナー登録契約に共同署名していることを回答したが,それ以上に,ブランドオーナーが被告と実際に被告提示実施料で契約している資料を示すことも,被告提示実施料の根拠を示すこともなかったこと,④米イメーション社は,2012年(平成24年)9月26日付けレター(甲2の同封資料4)により,「公正」なレートの根拠を示すよう要求したこと,⑤One-BlueJapan株式会社は,原告に対し,平成25年4月11日付けレター(甲3)により,被告提示実施料によるライセンス契約を提案したこと,⑥原告は,One-BlueJapan株式会社に対し,平成25年5月9日付けレター(甲2)により,「公正,合理的」なロイヤリティ率について議論する用意がある旨を回答したこと,⑦被告は,被告提示実施料の根拠を示すことも,実施料について交渉することもなく,米国においては他の被告プール特許権者と共同して米イメーション社に対する特許訴訟を提起し,日本においては原告の取引先に本件告知を行ったこと,が認められる。 本件訴訟において,被告提示実施料がFRAND条件に合致するものか否かに関し,被告と他のブランドオーナーとの間の契約書(乙3ないし7,16),BDの標準必須特許に関する別の特許プールであるPremierBDの提供するライセンスプログラムの実施料に関する証拠(甲9,12),DVDの標準必須特許に関するパテントプールであるDVD6Cの提供するライセンスプログラムの実施料に関する証拠(乙8,14,15),原告製品の小売店に対する販売価格や経費 に関する証拠(甲9)などが提出された(その一部は,当事者間で秘密保持契約を締結した上で開示されたものである。)が,これ 証拠(乙8,14,15),原告製品の小売店に対する販売価格や経費 に関する証拠(甲9)などが提出された(その一部は,当事者間で秘密保持契約を締結した上で開示されたものである。)が,これら被告提示実施料がFRAND条件に合致するか否かの判断の前提となり得る資料も,本件告知の時点においては互いに相手方に開示されていなかった。 (イ) 上記に鑑みると,原告ないし米イメーション社は,被告ないしOne-BlueJapan株式会社に対し,FRAND条件によるライセンスを受ける意思があることを示してライセンス交渉を行っていたものと認められ,原告が米イメーション社を中心とするイメーショングループに属する日本法人であること(前記前提となる事実(1)),前記のとおり,FRAND条件によるライセンスを受ける意思を有しないとの認定は厳格にされるべきことにも照らすと,原告はFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有する者であると認めるのが相当である。 この点,原告ないし米イメーション社と被告との間には,妥当とする実施料について大きな意見の隔絶が存在する。 しかし,ライセンサーとライセンシーとなろうとする者とは本来的に利害が対立する立場にあることや,何がFRAND条件での実施料であるかについて一義的な基準が存するものではなく,個々の特許の標準規格への必須性や重要性等については様々な評価が可能であって,それによって妥当と解される実施料も変わり得ることからすれば,原告ないし米イメーション社の交渉態度も一定程度の合理性を有するものと評価できる。加えて,被告の交渉態度も,必ずしも原告ないし米イメーション社との間でのライセンス契約の締結を促進するものではなかったと評価できることからすると,両社間に大きな意見の隔絶が長期間にわたって存在したとしても 被告の交渉態度も,必ずしも原告ないし米イメーション社との間でのライセンス契約の締結を促進するものではなかったと評価できることからすると,両社間に大きな意見の隔絶が長期間にわたって存在したとしても,原告においてFRAND条件でのライセンス契約を締結する意思を有するとの認定が直ちに妨げられるものではない。 オ上記のとおり,本件告知の時点では,原告はFRAND条件によるライ センスを受ける意思を有していたと認められるから,被告提示実施料がFRAND条件に違反するものであったか否かにかかわらず,被告プール特許権者が原告やその顧客である小売店に対し差止請求権を行使することは,権利の濫用として許されない状況にあったと認められる。 そして,上記のように,差止請求権の行使が権利の濫用として許されない場合に,差止請求権があるかのように告知することは,「虚偽の事実」を告知したものというべきである。 このように解することは,平成16年法律第120号により特許法104条の3が追加される前は,無効事由を有する特許権の行使は権利の濫用とされていたところ(最高裁平成12年4月11日第三小法廷判決・民集54巻4号1368頁[キルビー事件]),そのような特許権に基づく特許権侵害警告は「虚偽の事実」の告知と解されていたこと(東京地裁平成16年3月31日判決・判時1860号119頁等参照)とも整合する。 カなお,原告は,本件告知は,原告製品の販売行為が外国特許をも侵害するかのように小売店に認識させる内容となっており,この点においても「虚偽の事実」の告知に該当する,と主張する。 しかし,本件告知には,「これらディスクの我が国における生産,使用,譲渡等,輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為(特許法2条3項1号)は,特許権者からの許諾(ライセンス)を る,と主張する。 しかし,本件告知には,「これらディスクの我が国における生産,使用,譲渡等,輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為(特許法2条3項1号)は,特許権者からの許諾(ライセンス)を得ない限り,特許権の侵害を構成します(同法68条)。」とも記載されていることから,名宛人である小売店の通常の読み方をもって本件告知を読めば,差止めの根拠とされているのは日本特許のみであると合理的に理解することができる。 したがって,この点について,本件告知が「虚偽の事実」を告知したものということはできない。 キ原告は,本件告知は,被告自身が差止請求権を有しているかのように小売店に認識させる内容となっており,この点においても「虚偽の事実」の 告知に該当する,と主張する。 しかし,本件告知は,「上記特許権の各特許権者は,貴社に対し,上記特許権侵害行為の差止めを請求する権利及び上記特許権侵害行為によって生じた損害の賠償をする請求する権利を有しております。」と明記しており(甲4),被告自身が差止請求権を有しているかのような事実を告知するものとは認められない。 したがって,この点について,本件告知が「虚偽の事実」を告知したものということはできない。 ク原告は,本件告知は,SONYブランドの製品であれば全て(どの製造業者が生産したものであっても)登録契約が締結されていると小売店に認識させる内容となっているが,実際には,TDK株式会社がSONYブランドでOEM生産する製品については,被告と「製造業者及びブランドオーナーとの間で」締結する登録契約は締結されていなかったのであり,この点においても「虚偽の事実」の告知に該当する,と主張する。 しかし,本件告知は,「SONY……ブランドの製品については,既に通知人との間で登録契約を締結してい 約は締結されていなかったのであり,この点においても「虚偽の事実」の告知に該当する,と主張する。 しかし,本件告知は,「SONY……ブランドの製品については,既に通知人との間で登録契約を締結しているため」と記載しているにすぎず,現に,少なくともソニーが一部の製造業者にOEM生産させるSONYブランドの製品については登録契約が締結されていたのであるから(乙16),この点について,本件告知が「虚偽の事実」を告知したものということはできない。 (5) 違法性阻却事由の有無について被告は,形式的に不正競争に該当するとしても,本件告知は正当な権利行使に該当し,違法性が阻却されると主張する。 思うに,特許権等の行使と認められる行為に不競法を適用しないとする同法旧6条を削除した平成5年法律第47号による改正の前後を問わず,特許権の正当な行使と認められる行為については,不正競争は成立せず,他方, 特許権の濫用と認められる行為については,不正競争の成立を妨げないものと解される。 そして,無効事由のある特許権の行使や,FRAND宣言に違反するような特許権の行使は,権利行使の場面においては権利の濫用と認められるのであるから,不正競争の成否の場面においても,同様の基準の下で権利の濫用と認め,不正競争の成立を妨げないものと解するのが相当であり,告知に至る経緯において権利者を保護すべき事情については,差止めの必要性や故意過失の判断に際して考慮すれば足りるというべきである。 (6) 小括以上によれば,本件告知は,FRAND宣言をした被告プール特許権者が,FRAND条件によるライセンスを受ける意思のある原告に差止請求権を行使することが権利の濫用として許されず,原告から原告製品を購入した小売店に差止請求権を行使することも権利の濫用として許されな が,FRAND条件によるライセンスを受ける意思のある原告に差止請求権を行使することが権利の濫用として許されず,原告から原告製品を購入した小売店に差止請求権を行使することも権利の濫用として許されないにもかかわらず,これを行使できるかのように記載した点において虚偽の事実を告知するものであり,不競法2条1項14号の不正競争に該当する。 2 争点(1)ウ(差止めの必要性)について(1) 本件請求(1)のうち,被告が差止請求権を有する旨,及び,「被告が運営するパテントプールに属する特許権」のうち,外国特許権に基づく差止請求権を有する旨の告知・流布行為の差止めを求める部分は,前記1のとおり,そもそも被告がそのような告知をしたとはいうことはできないから,差止めの必要性を欠き,不競法3条1項に基づく差止めは認められない。 また,上記と同様の理由により,本件告知が不公正な取引方法に該当するか否かを検討するまでもなく,独禁法24条に基づく差止めも認められない。 (2) 本件請求(1)のうち,被告プール特許権者が日本国特許権に基づく差止請求権を有する旨の告知・流布行為の差止めを求める部分は,本件告知が原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知するものであったことは前記1の とおりであり,今後同種の告知がなされれば原告は営業上の利益を侵害されるおそれがあると認めるのが相当であるから,原告は,不競法3条1項に基づき,被告に対し,同種の告知又は流布の差止めを求めることができる。 被告は,平成25年6月4日付け本件告知の後,同様の告知に及んでいない(ヤマダ電機に対する平成25年7月3日付け通知書[甲21]には,ヤマダ電機による原告製品の取扱いは特許権侵害行為である旨の記載[なお,差止請求が権利濫用となる場合であっても,特許権侵害行為の存在は否定さ ダ電機に対する平成25年7月3日付け通知書[甲21]には,ヤマダ電機による原告製品の取扱いは特許権侵害行為である旨の記載[なお,差止請求が権利濫用となる場合であっても,特許権侵害行為の存在は否定されるものではないと解されるから,同記載が虚偽の事実を摘示するものとはいえない。]はあるが,被告プール特許権者が差止請求権を有する旨の記載はない。)が,被告は,過去に不正競争を行い,本訴においてこれが不正競争に該当することを争っているのであるから,この点を踏まえても,差止めの必要性は否定されない。 以上のとおり,不競法3条1項に基づく差止めが認められるから,独禁法24条に基づく差止請求権の存否については,判断を要しない。 (3) 付言するに,「被告プール特許権者が差止請求権を有する」旨の告知が「虚偽の事実」の告知となるのは,原告が「FRAND条件によるライセンスを受ける意思を有している」と認められる限りにおいてであるから,本件口頭弁論終結後に,原告が「FRAND条件によるライセンスを受ける意思」を喪失したとみられる事情が発生したなど,差止請求権の前提となる事情の変化が生じた場合には,被告は,請求異議の訴え(民事執行法35条)により,差止判決の既判力を排除することができると解される。 3 争点(2)ア(不競法4条に基づく損害賠償請求権の有無)について(1) 当裁判所は,被告には本件告知が不競法3条1項14号の虚偽の事実の告知に該当する旨の認識があったとは認められず,そのことにつき被告に過失があったとはいえないから,原告に同法4条に基づく損害賠償請求権は発生しないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 (2) 当裁判所は,前記のとおり,FRAND宣言をしている特許権者による差止請求権の行使については,相手方において,特 権は発生しないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 (2) 当裁判所は,前記のとおり,FRAND宣言をしている特許権者による差止請求権の行使については,相手方において,特許権者がFRAND宣言をしたことに加えて,相手方がFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有する者であることの主張立証に成功した場合には,権利の濫用(民法1条3項)に当たり許されないと解するものであるが,このような解釈は,本件告知後の知財高裁平成26年5月16日決定(乙21大合議決定)において初めて示されたものであった。 本件告知の時点(平成25年6月4日)では,乙21大合議決定の原決定である東京地裁平成25年2月28日決定(乙25。なお,同決定が非公開の仮処分手続に係るものであることに照らすと,被告が本件告知時点で同決定を知り得る状態にあったかには疑問もあるが,被告は同決定を前提に過失の有無を争っていることから,これに従って判断する。)や東京地裁平成25年2月28日判決・判時2186号154頁(甲13)は出されていたが,これらの決定及び判決は,特許権者に誠実交渉義務違反があったことを重視しており(乙25・31~39頁,甲13・116~119頁),これらの決定及び判決が示した基準を本件にあてはめた場合の結論の予測は困難であったと認められる。 上記判決の控訴審である知財高裁平成26年5月16日判決・判時2224号146頁(甲22)には,同判決及び乙21大合議決定に当たっては,当事者の協力を得た上で,国内,国外を問わず広く意見を募集したところ,数多くの意見が寄せられ,FRAND宣言された必須特許による差止請求権の制限については,①何らかの制限を課すことは,むしろ当事者間の任意のライセンス契約の成立を阻害し,技術革新や標準化作業に悪影響を 数多くの意見が寄せられ,FRAND宣言された必須特許による差止請求権の制限については,①何らかの制限を課すことは,むしろ当事者間の任意のライセンス契約の成立を阻害し,技術革新や標準化作業に悪影響を及ぼすことになりかねないから,相当ではないとする意見,②いわゆるホールドアップ問題等を指摘し,FRAND宣言された以上は,一定程度の制限がされるべきであるとする意見,③FRAND宣言された特許権についての差止めは 一切認められないとする意見,に分かれ,差止請求権の制限がされるべきとした場合の法律構成や,差止請求権の制限に関する判断基準についても意見が分かれていたことが記載されている(甲22・147~149頁)。 このように,FRAND宣言をしている特許権者による差止請求権の行使については,相手方がFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有する場合に権利濫用とする(乙21大合議決定や本判決の採用する)法的構成以外にも様々な法的構成が考えられるところであり,本件告知の時点において,相手方がFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有するということをもって,直ちに差止請求権の行使が許されないと解することが,確立した法的見解であったということはできないのであるから,被告は,被告プール特許権者の小売店に対する差止請求権の行使が権利濫用として制限され,本件告知が虚偽の事実の告知となることを,本件告知の時点では知らなかったものであり,そのことにつき過失もなかったと認めるのが相当である。 4 争点(2)イ(民法709条に基づく損害賠償請求権の有無)について(1) 原告は,被告が本件告知に及んだことが不競法2条1項14号の虚偽の事実の告知に該当することをもって,不法行為法上の違法行為と評価されるべきである旨主張する。 しかし,前記3にお について(1) 原告は,被告が本件告知に及んだことが不競法2条1項14号の虚偽の事実の告知に該当することをもって,不法行為法上の違法行為と評価されるべきである旨主張する。 しかし,前記3において検討したところによれば,被告は,本件告知が虚偽の事実の告知となることを,本件告知の時点では知らなかったものであり,そのことにつき過失もなかったと認めるのが相当であるから,本件告知が虚偽の事実の告知であることをもって,民法709条に基づく損害賠償請求権が成立するとはいえない。 (2) 原告は,本件告知について,不競法2条1項14号の虚偽の事実の告知に該当するか否かを議論するまでもなく,不法行為法上の違法行為と評価されるべきである旨の主張もする。 しかし,以下のとおり,原告の上記主張は採用することができない。 ア原告は,小売店について,被告からライセンスの申入れを受ける立場にはないとか,被告からライセンスを受けていない製品の販売を停止するよう請求を受ける立場にもない旨主張する。 しかし,被告が被告プール特許権者からの委託に基づき原告の取引先である小売店3社に対し本件通知書を送付した(前記前提となる事実(4))のであるから,原告の上記主張の当否は,本件告知が不法行為となるか否かとは,かかわりがないところである。 イ原告は,被告が本件通知書に小売店の販売する原告製品が具体的にどの特許権を侵害しているのかを明記せずに,数千件の特許権を含む英語表記のリストを入手できる被告のウェブサイトのURLを摘示したとか,「断固たる法的措置を講じざるを得ない」などという言辞を添えた旨主張する。 しかし,本件通知書の記載がそのようなものであったとしても,そのことをもって,直ちに本件告知が不法行為となるものではない。 ウ原告は,本件告知の主要 を得ない」などという言辞を添えた旨主張する。 しかし,本件通知書の記載がそのようなものであったとしても,そのことをもって,直ちに本件告知が不法行為となるものではない。 ウ原告は,本件告知の主要な目的は,特許権に基づく権利行使の外形を装って,特許侵害の警告に対して十分な対応能力を有しない小売店に圧力をかけることによって,小売店が原告との原告製品の取引を継続できない状況を作り出し,それにより原告に対し、被告が一方的に設定した高額なロイヤリティ金額の条件を含むライセンスを受けることを承服させることにあると主張する。 原告は,本件告知が虚偽の事実の告知に該当するか否かを議論するまでもなく,本件告知が不法行為を構成するというのであるから,本件告知が被告プール特許権者が小売店に差止請求権を行使できる場合(虚偽の事実の告知に該当しない場合)であっても,本件告知が不法行為を構成するものでなければならない。 しかし,被告プール特許権者が小売店に差止請求権を行使できる場合には,小売店にその旨を記載して特許侵害の警告をすることも許容されると いうべきであるから,仮に,被告に原告主張の目的があったとしても,直ちに本件告知が不法行為となるものとはいえない。 エまた,本件告知に関して,不法行為を基礎付ける事実となり得るのは,被告が本件通知書においてライセンスを受けていない原告製品の即時の販売停止を求めたことに帰するところ,被告は,本件告知の時点において,被告プール特許権者の小売店に対する差止請求権の行使が権利濫用として制限されることを知らず,そのことについて過失があったといえないことは,既に説示したとおりであるから,被告が小売店に対し原告製品の販売停止を求めたことについても,過失があったということはできず,結局,原告の主張の不法行為が成立 とについて過失があったといえないことは,既に説示したとおりであるから,被告が小売店に対し原告製品の販売停止を求めたことについても,過失があったということはできず,結局,原告の主張の不法行為が成立するとはいえない。 5 結論以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,原告の本件請求(1)は,主文第1項の限度で理由があるから認容し(なお,仮執行宣言は,相当でないから,これを付さない。),原告のその余の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 被告は外国法人であることから,被告のために,控訴のための付加期間を30日と定める(原告は日本法人であるから,原告のためには付加期間は定めない。)。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 嶋末和秀 裁判官 鈴木千帆 裁判官 西村康夫 別紙物件目録 原告が「TDKLifeonRecord」ブランドで販売する以下のブルーレイディスク製品1.BD-R ディスク2.BD-RE ディスク3.BDXL-R ディスク4.BDXL-RE ディスク スク製品1.BD-R ディスク2.BD-RE ディスク3.BDXL-R ディスク4.BDXL-RE ディスク
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