令和1(行コ)283 補助金交付決定一部取消及び返還命令取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和2年3月12日 東京高等裁判所
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判決文本文2,798 文字)

- 1 -令和2年3月12日判決言渡令和元年(行コ)第283号補助金交付決定一部取消及び返還命令取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成30年(行ウ)第439号,第440号,第441号) 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の理事長が平成30年3月27日付けで控訴人に対してした平成17年度科学研究費助成事業(科学研究費補助金〔基盤研究(A)〕)の交付決定の一部取消し及び返還命令(課題番号甲)をいずれも取り消す。 3 被控訴人の理事長が平成30年3月27日付けで控訴人に対してした平成18年度科学研究費助成事業(科学研究費補助金〔基盤研究(A)〕)の交付決定の一部取消し及び返還命令(課題番号甲)をいずれも取り消す。 4 被控訴人の理事長が平成30年3月27日付けで控訴人に対してした平成19年度科学研究費助成事業(科学研究費補助金〔基盤研究(S)〕)の交付決定の一部取消し及び返還命令(課題番号乙)をいずれも取り消す。 第2 事案の概要(略称は,原判決のものを用いる。) 1 本件は,国立大学法人C大学大学院D研究科の元教授である控訴人が,被控訴人が交付を行う科学研究費補助金(基盤研究等)(科研費(基盤研究等))の交付決定を受け,これに基づく補助金を受領していたところ,被控訴人の理事長がその一部を取り消す旨の決定及びこれを原因とする補助金の返還命令をしたことから,これらの取消しを求める事案である。 原審は,控訴人の各訴えをいずれも却下したので,控訴人がこれを不服とし - 2 -て控訴した。 2 関連法令等の定め,判断の前提となる事実,争 とから,これらの取消しを求める事案である。 原審は,控訴人の各訴えをいずれも却下したので,控訴人がこれを不服とし - 2 -て控訴した。 2 関連法令等の定め,判断の前提となる事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,控訴人の当審における補充的主張を後記3のとおり加えるほかは,原判決の「第2 事案の概要等」の2ないし4及び「第3 争点に関する当事者の主張」に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 控訴人の当審における補充的主張被控訴人による補助金の交付は振興会法3条,15条1項に法的な根拠を有するものであり,取扱要領により手続的細目が定められていることは本件各取消決定及び本件各返還命令の処分性を否定するものではない。また,本件各取消決定及び本件各返還命令は,振興会法17条1項が準用する適正化法17条1項,18条1項に法的な根拠を有するものであり,本件各取消決定が負担付贈与契約の債務不履行解除に該当することと処分性が認められることとは両立するものであるから,本件各取消決定が負担付贈与契約の債務不履行解除に該当することから処分性がないとはいえない。民法上の契約解除に伴う不当利得返還請求については,受益者が悪意の場合に民事法定利率年5%の割合による利息を請求できるにとどまるが,振興会法17条1項が準用する適正化法19条1項,2項は,受領者の善意悪意を問わず,10.95%という高率の加算金及び延滞金を付して返還を命ずる旨を規定しているところ,これは,上記加算金及び延滞金が原状回復に伴う利息及び遅延利息の性格だけでなく,公法上の事業遂行義務違反に対する制裁的賦課金としての意義を併せ持つからである。以上のことからすると,本件各取消決定及び本件各返還命令は処分性を有するというべきである。 第3 当裁判所の判断 法上の事業遂行義務違反に対する制裁的賦課金としての意義を併せ持つからである。以上のことからすると,本件各取消決定及び本件各返還命令は処分性を有するというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の各訴えをいずれも却下すべきであると判断する。その理由は,後記2のとおり控訴人の当審における補充的主張についての判断を加えるほかは,原判決の「第4 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから, - 3 -これを引用する。 2 控訴人の当審における補充的主張についての判断控訴人は,前記のとおり主張して,本件各取消決定及び本件各返還命令は処分性を有すると主張する。 しかし,科研費(基盤研究等)の交付は,本来,非権力的な作用であり,公権力の発動の実体を有さないものであるところ,これについては,振興会法15条1号において,被控訴人の業務につき学術の研究に関して必要な助成を行う旨が規定されているのみで,具体的な交付手続について振興会法及び適正化法に規定はない。加えて,科研費(基盤研究等)の交付の取消し及び返還については,振興会法17条1項が準用する適正化法24条の2が行政手続法第3章の不利益処分に関する規定は適用しないとしており,また,振興会法17条1項は適正化法25条を準用していないから,交付の取消し及び返還を命じられた者は交付の取消し等が行政処分である場合に認められるべき不服の申出をすることができないとされている。振興会法及び適正化法のその他の規定を見ても,振興会法及び適正化法が被控訴人による補助金の交付を行政処分として扱っていることをうかがわせる規定は存在しないのであるから,科研費(基盤研究等)の交付をもって行政処分と解することはできないというべきである。 確かに,振興会法は,被控訴人による補助金の交付の取消し 扱っていることをうかがわせる規定は存在しないのであるから,科研費(基盤研究等)の交付をもって行政処分と解することはできないというべきである。 確かに,振興会法は,被控訴人による補助金の交付の取消し及び補助金返還命令について適正化法17条1項及び18条1項を準用しているが,被控訴人による科研費(基盤研究等)の交付について行政処分と解されない以上,その取消し及び返還命令を行政処分と解する余地はないから,適正化法17条1項及び18条1項が準用されていることをもって,科研費(基盤研究等)の交付の取消し及び返還命令を行政処分と解することはできない。振興会法17条1項が加算金及び延滞金について定める適正化法19条を準用しているからといって振興会法が科研費(基盤研究等)の交付の取消し及び返還命令を行政処分と扱っているということもできない。 - 4 -以上によれば,本件各取消決定及び本件各返還命令が処分性を有するということはできない。 第4 結論よって,控訴人の各訴えをいずれも却下した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第7民事部 裁判長裁判官足立哲 裁判官松下貴彦 裁判官浅香幹子

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