- 1 -平成23年3月8日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成22年(行ケ)第10186号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成23年2月22日判決原告エイディシーテクノロジー株式会社訴訟代理人弁護士水野健司 弁理士岩田誠被告特許庁長官指定代理人安久司郎 水野恵雄 廣瀬文雄田村正明主文原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1原告の求めた判決特許庁が不服2008-21492号事件について平成22年4月21日にした審決を取り消す。 第2事案の概要本件は,特許出願拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とする審決の取消訴訟である。争点は,本願発明の進歩性の有無である。 特許庁における手続の経緯- 2 -原告は,平成5年9月10日になした原出願(特願平5-224832号)の一部を平成10年5月25日に新たな特許出願とした特願平10-143339号の一部を平成14年8月5日に新たな特許出願とした特願2002-227420号の一部を平成16年10月20日に新たな特許出願とした特願2004-305951号の一部を平成18年3月16日に新たな特許出願とした特願2006-73296号からの分割出願として,平成18年7月21日,名称を「携帯型コミュニケータおよびその監視装置」とする発明について特許出願(特願2006-199480号)をしたが,平成20年7月14日起案日の拒絶査定(甲31)を受けたので,これに対する不服の審判請求をした。 特許庁 ケータおよびその監視装置」とする発明について特許出願(特願2006-199480号)をしたが,平成20年7月14日起案日の拒絶査定(甲31)を受けたので,これに対する不服の審判請求をした。 特許庁は,上記請求を不服2008-21492号事件として審理し,その中で原告は平成20年9月22日付けで名称を「携帯型無線電話装置」とするなどの補正をし(甲33),平成21年10月27日付けで請求項の数を2とするなどの補正をしたが(甲38),特許庁は,平成22年4月21日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は平成22年5月11日原告に送達された。 本願発明の要旨(請求項1の記載)「アンテナによって,公衆通信回線に無線によって接続され,該公衆通信回線を経由してデータの発信,または受信を行う無線通信手段と,マイク及びスピーカを備え,前記無線通信手段を介して音声通話を実現する通話手段と,所定の画像を表示するディスプレイと,前記無線通信手段,前記通話手段,及び前記ディスプレイを保持する筐体と,を備えた携帯型無線電話装置において,前記スピーカは,収納又は引き出しが可能なようにスライド可能に構成され,前記ディスプレイに隣接して設けられ,当該携帯型無線電話装置の状態を,その携帯型無線電話装置の全体に電源が供給される状態であるアクティブ状態にするために使用者に操作されるオンスイッチと,- 3 -前記ディスプレイに隣接して設けられ,当該携帯型無線電話装置の状態を,その携帯型無線電話装置の待機系に電源が供給される状態である待機状態にするために使用者に操作されるオフスイッチと,前記スピーカがそのスピーカの引き出し側にスライドすると,そのスピーカの状態を,音を出力しないオフ状態から音を出力するオン状態に切り換えるスピーカオンスイッチと, 使用者に操作されるオフスイッチと,前記スピーカがそのスピーカの引き出し側にスライドすると,そのスピーカの状態を,音を出力しないオフ状態から音を出力するオン状態に切り換えるスピーカオンスイッチと,を備え,前記スピーカは,スライドすることにより,音を出力するオン状態と音を出力しないオフ状態とに切り替わることを特徴とする携帯型無線電話装置。」 審決の理由の要点(1)刊行物1(実願平1-109600号〔実開平3-48941号〕のマイクロフィルム,甲15)には,実質的に次の発明(刊行物1発明)が記載されていることが認められる。 「被覆体(7)はアンテナ(6)の他に,スピーカ(8),このスピーカ(8)が電気的に接続された回路基板(9),この回路基板(9)上に配された例えばトーン,ボリウム,リダイヤル,フラッシュ等の各種フアンクションボタンスイッチ(10)を収納し,被覆体(7)の下端部(7a)には複数の電気接点(11)が設けられ,回路基板(9)と電気的に接続され,キャビネット(5)側に設けられた回路基板(18)は,電気接点(11)に対応した複数の接点端子(19)を有し,被覆体(7)が外部に飛び出した状態では電気接点(11)と接点端子(19)が接触し,回路基板(18)と被覆体(7)内の回路基板(9)とが電気的に接続され,回路基板(18)にはトークスイッチ(16),電池(17)及びマイク(3)も電気的に接続されており,トークスイッチボタン(13)が矢印aの方向に押されない非通話状態では被覆体(7)がスプリング(12)の弾性力に抗してキャビネット(5)に押し込まれてレバー(14)の他端と被覆体(7)の切欠部(7b)が係合し,被覆体(7)がキャビネット(5)に- 4 -収納された状態にあり,トークスイッチボタン(13)が矢印 キャビネット(5)に押し込まれてレバー(14)の他端と被覆体(7)の切欠部(7b)が係合し,被覆体(7)がキャビネット(5)に- 4 -収納された状態にあり,トークスイッチボタン(13)が矢印aの方向に押されると,レバー(14)が軸(15)を支点として時計方向に回動し,レバー(14)の他端と被覆体(7)の切欠部(7b)の係合が解除され,被覆体(7)がスプリング(12)により引張られて外部に飛び出すようになり,このときトークスイッチ(16)が押圧されてオン状態になると共に電気接点(11)と接点端子(19)が接触して回路基板(18)と(9)が電気的に接続され,通話状態となり,非通話状態ではアンテナ(6)等を含む被覆体(7)をキャビネット(5)内に収納するようにすると共に本来キャビネット本体側に配列されるファンクションボタンスイッチ(10)やスピーカ(8)等を被覆体(7)側に取付けるようにし,通話状態では被覆体(7)が外部に飛び出すので,スピーカ(8)とマイク(3)が丁度耳と口の位置に夫々来るようになる,無線通話機装置。」(2)本願発明と刊行物1発明との一致点及び相違点は次のとおりである。 【一致点】「アンテナ,マイク,スピーカを備え,無線通信手段を介して音声通話を実現する通話手段と,前記無線通信手段,前記通話手段を保持する筐体と,を備えた無線電話装置において,前記スピーカは,収納又は引き出しが可能なようにスライド可能に構成され,スピーカがそのスピーカの引き出し側にスライドすると,状態を切り換えるスイッチを備え,前記スピーカは,スライドすることにより,オン状態とオフ状態とに切り替わる,無線電話装置。」【相違点1】本願発明は,携帯型無線電話装置であるのに対して,刊行物1発明は携帯型か否- 5 -か明記されていない点。 【相 することにより,オン状態とオフ状態とに切り替わる,無線電話装置。」【相違点1】本願発明は,携帯型無線電話装置であるのに対して,刊行物1発明は携帯型か否- 5 -か明記されていない点。 【相違点2】本願発明が,アンテナによって,公衆通信回線に無線によって接続され,該公衆通信回線を経由してデータの発信,または受信を行う無線通信手段を備えるのに対して,刊行物1発明には,公衆通信回線に無線によって接続され,該公衆通信回線を経由してデータの発信,または受信を行うことは記載されていない点。 【相違点3】本願発明の携帯型無線電話装置は,所定の画像を表示するディスプレイを有し,無線通信手段,前記通話手段,及び前記ディスプレイを保持する筐体を備えるのに対して,刊行物1発明はディスプレイを有さず,筐体は無線通信手段及び通話手段を有しているが,ディスプレイを保持していない点。 【相違点4】本願発明は,ディスプレイに隣接して設けられ,携帯型無線電話装置の状態を,その携帯型無線電話装置の全体に電源が供給される状態であるアクティブ状態にするために使用者に操作されるオンスイッチと,ディスプレイに隣接して設けられ,携帯型無線電話装置の状態を,その携帯型無線電話装置の待機系に電源が供給される状態である待機状態にするために使用者に操作されるオフスイッチとを備えているのに対して,刊行物1発明にはそのようなスイッチは記載されていない点。 【相違点5】本願発明は,スピーカがそのスピーカの引き出し側にスライドすると,そのスピーカの状態を,音を出力しないオフ状態から音を出力するオン状態に切り換えるスピーカオンスイッチと,を備え,前記スピーカは,スライドすることにより,音を出力するオン状態と音を出力しないオフ状態とに切り替わるのに対して,刊行物1発明では通話状態と非通話状 ン状態に切り換えるスピーカオンスイッチと,を備え,前記スピーカは,スライドすることにより,音を出力するオン状態と音を出力しないオフ状態とに切り替わるのに対して,刊行物1発明では通話状態と非通話状態が切り替わっている点。 (3)以下の理由により,本願発明は当事者が容易に発明をすることができたものである。 - 6 -①相違点1に係る本願発明の構成は格別のことではない。 ②相違点2に係る本願発明の構成は,刊行物1発明並びに特開平4-49746号公報(刊行物2,甲16),特開平5-30230号公報(刊行物3,甲1)及び特開平5-207544号公報(刊行物4,甲17)に見られる周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。 ③相違点3に係る本願発明の構成は,刊行物1発明並びに刊行物2~4及び特開平5-22392号公報(刊行物5,甲18)に見られる周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。 ④相違点4に係る本願発明の構成は,刊行物1発明並びに周知技術(特開平5-191480号公報〔乙1〕,特開平4-91523号公報〔乙2〕,特開昭56-132654号公報〔乙3〕,特開平4-259156号公報〔乙4〕)に見られる周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。 ⑤相違点5に係る本願発明の構成は,引用文献1発明及び技術常識に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。 ⑥本願発明の効果も,刊行物1発明,刊行物2~5に記載された事項及び周知技術からみて格別のものではない。 第3原告主張の審決取消事由 取消事由1(一致点・相違点認定の誤り)審決は,「スピーカがそのスピーカの引き出し側にスライドすると,状態を切り換えるスイッチを備え,前記スピーカは,スライドすることにより,オン状態 決取消事由 取消事由1(一致点・相違点認定の誤り)審決は,「スピーカがそのスピーカの引き出し側にスライドすると,状態を切り換えるスイッチを備え,前記スピーカは,スライドすることにより,オン状態とオフ状態とに切り替わる」点で一致すると認定した。 しかし,刊行物1の7頁9行~8頁6行の記載によれば,トークスイッチボタン(13)が矢印aの方向に押されない非通話状態(すなわち,トークスイッチ(16)が押されない状態)で被覆体(7)が収納され,トークスイッチボタン(13)が矢印aの方向に押された状態(すなわち,トークスイッチ(16)が押された状態)で被覆体(7)- 7 -が飛び出すという構成を有するものであるから,刊行物1発明は,トークスイッチボタン(13)(トークスイッチ(16))の操作によってオン状態とオフ状態との切り替え(通話状態と非通話状態との切り替え)が実現されるというものであって,被覆体(7)のスライドによってオン状態とオフ状態の切り替えが行われる構成の発明ではない。この点において,審決は本願発明と刊行物1発明の認定を誤っている。 また,審決は,「本願発明は,・・・前記スピーカは,スライドすることにより,音を出力するオン状態と音を出力しないオフ状態とに切り替わるのに対して,刊行物1発明では通話状態と非通話状態が切り替わっている点」で相違すると認定したが,刊行物1発明はスピーカをスライドすることにより通話状態と非通話状態が切り替わるものではないから,上記の相違点認定は誤りである。 取消事由2(相違点の判断の誤り)(1)進歩性の判断基準特許法29条2項が定める要件の充足性,すなわち,当業者が,先行技術に基づいて出願に係る発明を容易に想到することができたか否かは,先行技術から出発して,出願に係る発明の先行技術に対する特徴点( 基準特許法29条2項が定める要件の充足性,すなわち,当業者が,先行技術に基づいて出願に係る発明を容易に想到することができたか否かは,先行技術から出発して,出願に係る発明の先行技術に対する特徴点(先行技術と相違する構成)に到達することが容易であったか否かを基準として判断される。ところで,出願に係る発明の特徴点(先行技術と相違する構成)は,当該発明が目的とした課題を解決するためのものであるから,容易想到性の有無を客観的に判断するためには,当該発明の特徴点を的確に把握すること,すなわち,当該発明が目的とする課題を的確に把握することが必要不可欠である。そして,容易想到性の判断の過程においては,事後分析的かつ非論理的思考は排除されなければならないが,そのためには,当該発明が目的とする「課題」の把握に当たって,その中に無意識的に「解決手段」ないし「解決結果」の要素が入り込むことがないように留意することが必要であり,当該発明が容易想到であると判断するためには,先行技術の内容の検討に当たっても,当該発明の特徴点に到達できる試みをしたであろうという推測が成り立つのみでは十分ではなく,当該発明の特徴点に到達するためにしたはずであるという示唆等が- 8 -存在することが必要であるというべきであるのは当然である。 (2)刊行物1発明の課題刊行物1の〔考案が解決しようとする課題〕欄(2頁~3頁)の記載によれば,刊行物1発明は,無線通話機装置の構造を小型化すること,及び小型化した場合でも優れた操作性を提供することを課題としてなされたものである。 (3)相違点3に対する判断につき審決が指摘するとおり,刊行物2~5には,携帯可能な無線端末装置に関し,ディスプレイを設けることが記載されている。 しかし,刊行物1発明は前記のとおり構造の小型化を図ることを課題と に対する判断につき審決が指摘するとおり,刊行物2~5には,携帯可能な無線端末装置に関し,ディスプレイを設けることが記載されている。 しかし,刊行物1発明は前記のとおり構造の小型化を図ることを課題としており,そのような刊行物1発明においてディスプレイを設けることは,構造の小型化よりもむしろ大型化を導き得るものであることは明白であるから刊行物1発明の課題に相反するものである。 そして,審決は,相違点3に関し,いかに動機付けがなされて容易想到性が導かれるのかについて何ら根拠を示しておらず,極めて形式的かつ一方的に結論を導いており誤りである。 (4)相違点4に対する判断につき審決は,相違点4につき,「オンスイッチと,・・・オフスイッチとを備えることは当業者が容易に想到し得ることであり,その際にスイッチを配置する位置をどうするかは操作性や視認性に配慮して決めることができる設計的事項であるから,スイッチをディスプレイに隣接して設けることは当業者が適宜に行うことができ」る(10頁27行~33行)と判断した。 しかし,前記のとおり,刊行物1発明にはディスプレイは設けられていないところ,構造の小型化という課題に反することなくディスプレイを設ける構成を想到することは当業者にとって容易ではない。そのような刊行物1発明に「ディスプレイに隣接して設けられ」るスイッチをどのように配設し得るかにつき,刊行物1には何らの動機付けも存在しない。 - 9 -また,刊行物1発明は小型化を実現するとともに優れた操作性を提供するという課題を有し,被覆体に操作部を収納するという特有の構成を備えているところ,かかる特有の構成を有する刊行物1発明において上記課題を達成するためにスイッチの配置に創意工夫が求められることは明らかであり,スイッチをどのように配置するかは必 という特有の構成を備えているところ,かかる特有の構成を有する刊行物1発明において上記課題を達成するためにスイッチの配置に創意工夫が求められることは明らかであり,スイッチをどのように配置するかは必ずしも当業者にとって想到容易ではない。つまり,刊行物1発明にスイッチの配置を組み合わせることは単なる設計事項ではなく,むしろ課題解決手段としての技術的特徴部分であると位置づけられる。 さらに,本願発明においては,ディスプレイに隣接してオンスイッチとオフスイッチが設けられることで,ユーザがディスプレイを視認しながらスイッチの操作ができるという効果があるものである。 したがって,「スイッチを配置する位置をどうするかは操作性や視認性に配慮して決めることができる設計的事項である」との審決の判断は誤りである。 (5)相違点5に対する判断につき審決は,「刊行物1発明では,スピーカを取り付けた被覆体が収納された状態では非通話状態とし,被覆体が外部に飛び出した状態では通話状態としている。・・・スピーカをスライドすることにより音を出力するオン状態と音を出力しないオフ状態とに切り替わるようにすることは当業者が容易に想到し得ることである。」(審決10頁下35行~11頁4行)と判断した。 しかし,前記のとおり,刊行物1発明はスピーカをスライドさせることによって通話状態と非通話状態とが切り替わるものではなく,トークスイッチボタン(13)(トークスイッチ(16))の押下によって非通話状態から通話状態に切り替わるものであり,優れた操作性を提供することも課題としている。このような刊行物1発明において,あえてスピーカをスライドさせることによってオン状態とオフ状態とを切り替えるように構成することについて,審決は,いかに動機付けがなされて容易想到性が導かれるのかについて何ら根 刊行物1発明において,あえてスピーカをスライドさせることによってオン状態とオフ状態とを切り替えるように構成することについて,審決は,いかに動機付けがなされて容易想到性が導かれるのかについて何ら根拠を示しておらず,極めて形式的かつ一方的に結論を導いていて誤りである。 - 10 -また,審決は,スピーカのスライドによりスピーカの音が出力されない状態と出力される状態とが切り替わるスイッチが周知技術であることを示していない。 さらに,本願発明は構成要件として「当該携帯型無線電話装置の状態を,その携帯型無線電話装置の全体に電源が供給される状態であるアクティブ状態にするために操作されるオンスイッチ」及び「当該携帯型無線電話装置の状態を,その携帯型無線電話装置の待機系に電源が供給される状態である待機状態にするために使用者に操作されるオフスイッチ」を備えている一方,「前記スピーカがそのスピーカの引き出し側にスライドすると,そのスピーカの状態を,音が出力しないオフ状態から音を出力するオン状態に切り替えるスピーカオンスイッチ」を備えており,本願発明における接続状態/非接続状態がスピーカ音の出力についてのオン/オフ状態と必ず一致するということを予定していない。そして,本願発明は通話状態/非通話状態にかかわらずスピーカのオン/オフ状態が切り換わる構成を含むところ,そのような構成は刊行物1発明から容易想到ではない。 加えて,本願発明は単なる電話装置ではなく,「公衆通信回線に無線によって接続され,該公衆通信回線を経由してデータの発信,または受信を行う無線通信手段」を備えた携帯型無線電話装置であり,「スピーカは,収納又は引き出しが可能なようにスライド可能に構成され」ているものであるから,受話器のスピーカのみを必ずしも予定しているものではないところ,審決のいう技術常 た携帯型無線電話装置であり,「スピーカは,収納又は引き出しが可能なようにスライド可能に構成され」ているものであるから,受話器のスピーカのみを必ずしも予定しているものではないところ,審決のいう技術常識は,受話器のスピーカによる音声出力を予定した場合を前提としたものであり,本願発明のようなデータ通信機能を備えた携帯型無線電話装置にあってはあてはまらない。 (6)発明の効果の相違審決は,「本願発明の構成による効果も,刊行物1発明及び刊行物2~5に記載された事項ならびに周知技術からみて格別のものではない。」と判断した。 しかし,刊行物1発明はトークスイッチ(16)が押圧されてオン状態になるとともに通話状態となるのに対し,本願発明はスピーカをスライドさせるだけでスピーカをオン状態にしたりオフ状態にしたりすることができるのに加え,オンスイッチを- 11 -操作することにより携帯型無線電話装置の状態をアクティブ状態にすることができ,オフスイッチを操作することにより携帯型無線電話装置の状態を非アクティブ状態にすることができる(本願明細書の段落【0008】,【0009】)。すなわち,本願発明によれば,スピーカの状態に関係なくオンスイッチ及びオフスイッチの操作により,携帯型無線電話装置の状態をアクティブ状態と待機状態との何れかに自由に切り替えることができ,また,携帯型無線電話装置の状態に関係なく,スピーカをスライドさせることによってそのスピーカの状態をオン状態とオフ状態とのいずれかに自由に切り替えることができるという特有の効果を奏する。 審決はこのような本願発明に特有の効果について看過しており,誤りである。 第4被告の反論 取消事由1に対し刊行物1の7頁15行~8頁6行の記載によれば,「トークスイッチボタン(13)が矢印aの方向に押されると,レ 発明に特有の効果について看過しており,誤りである。 第4被告の反論 取消事由1に対し刊行物1の7頁15行~8頁6行の記載によれば,「トークスイッチボタン(13)が矢印aの方向に押されると,レバー(14)が軸(15)を支点として時計方向に回動し,レバー(14)の他端と被覆体(7)の切欠部(7b)の係合が解除され,被覆体(7)がスプリング(12)により引張られて外部に飛び出すようになり,このとき,トークスイッチ(16)が押圧されてオン状態になると共に電気接点(11)と接点端子(19)が接触して回路基板(18)と(9)が電気的に接続され,通話状態となる」という発明(刊行物1発明)が記載されており,刊行物1発明において,トークスイッチボタン(13)が矢印aの方向に押されたことにより発生する通話状態となることに関連する動作は,(ⅰ)被覆体(7)が外部に飛び出す,(ⅱ)トークスイッチ(16)が押圧されてオン状態になる,(ⅲ)電気接点(11)と接点端子(19)が接触して回路基板(18)と(9)が電気的に接続されるという3つの動作であり,これら3つの全ての動作が生じることにより刊行物1発明の無線通話機装置は通話状態となるものである。そして,刊行物1の第2図及び第3図によれば,トークスイッチボタン(13)が矢印aの方向に押されると,レバー(14)が軸(15)を支点として時計方向に回動し,レバー(14)の他端と被覆体(7)の切欠- 12 -部(7b)の係合が解除されるものであり,この解除とほぼ同時に,トークスイッチ(16)が押圧されてオン状態となること,係合の解除の時点では,被覆体(7)がスプリング(12)により引張られて外部に飛び出し始めていることになるが,その時点では電気接点(11)と接点端子(19)は接触しておらず,被覆体(7)が外部に飛び出し の解除の時点では,被覆体(7)がスプリング(12)により引張られて外部に飛び出し始めていることになるが,その時点では電気接点(11)と接点端子(19)は接触しておらず,被覆体(7)が外部に飛び出した後に電気接点(11)と接点端子(19)が接触して,回路基板(18)と(9)が電気的に接続されるものであることが認められる。そのため,刊行物1発明において,トークスイッチボタン(13)が矢印aの方向に押されたことにより直接発生する動作は,(ⅰ)被覆体(7)が外部に飛び出す,(ⅱ)トークスイッチ(16)が押圧されてオン状態になるという2つの動作のみであり,(ⅲ)の電気接点(11)と接点端子(19)が接触して回路基板(18)と(9)が電気的に接続されるのは,(ⅰ)被覆体(7)が外部に飛び出すことに連動して発生するものであり,また,(ⅱ)のトークスイッチ(16)が押圧されてオン状態となった時に通話状態となるのではなく,あくまでも(ⅲ)の電気接点(11)と接点端子(19)が接触して回路基板(18)と(9)が電気的に接続された時に通話状態となるものである。 同様に,被覆体(7)が収納されることに連動して電気接点(11)と接点端子(19)が離れ,回路基板(18)と(9)の電気的な接続が解除されることになり,非通話状態となるものであって,トークスイッチボタン(13)の操作により,非導通状態となるものではない。 そうすると,審決で認定したとおり,刊行物1発明は,被覆体が外部に飛び出した状態で電気接点(11)と接点端子(19)が接触して回路基板(18)と(9)が電気的に接続され通話状態となり,収納された状態で非通話状態に切り替わっているものであり,また,電気接点(11)と接点端子(19)が接触することは実質的にスイッチのオン,オフに相当するものである。 よって,刊 され通話状態となり,収納された状態で非通話状態に切り替わっているものであり,また,電気接点(11)と接点端子(19)が接触することは実質的にスイッチのオン,オフに相当するものである。 よって,刊行物1発明はトークスイッチ(16)が押圧されてオン状態になると共に通話状態となる構成であり,トークスイッチボタン(13)(トークスイッチ(16))の操作によってオン状態とオフ状態との切り替え(通話状態と非通話状態との切り替え)が実現されるというものであって,被覆体(7)が飛び出してオン状態(通話状態)- 13 -となる構成の発明ではないという原告の主張は誤りであり,審決の刊行物1発明の認定に誤りはなく,本願発明と刊行物1発明の一致点として「スピーカがそのスピーカの引き出し側にスライドすると,状態を切り替えるスイッチを備え,前記スピーカは,スライドすることにより,オン状態とオフ状態とに切り替わる」と認定した点にも誤りはない。また,同様の理由により相違点5の認定にも誤りはない。 取消事由2に対し(1)相違点3につき刊行物1発明は,構造を小型化し,小型化にも拘らず操作性の優れた無線通信装置を提供することを目的とする。また,刊行物1の2頁11行~3頁1行の記載によれば,刊行物1が公開された当時から,コードレス電話機におけるハンドセットのような携帯可能な無線通信装置について小型化を行う必要性,及び小型化を行う場合には単純に小型化するのではなく,何らかの工夫をして小型化を行う必要があるとの課題が存在していたことは周知の事項であったといえる。そのため,携帯可能な無線通信装置に対して何らかの新たな機能又は構成を付加する場合に,小型化を行うことを考慮した工夫を行い,その上で新たな機能又は構成を付加することは,当業者であれば当然行うことである。 そし 帯可能な無線通信装置に対して何らかの新たな機能又は構成を付加する場合に,小型化を行うことを考慮した工夫を行い,その上で新たな機能又は構成を付加することは,当業者であれば当然行うことである。 そして,携帯可能な無線端末装置にディスプレイを設けること自体は,刊行物2~5に記載されているとおり従来周知の技術であったのであるから,当業者であれば,刊行物1発明に対しディスプレイを設けることは,容易になし得るものであり,その際,小型化とする点についても当然に考慮するものである。 さらに,刊行物2の2頁右上欄15行~左下欄16行の記載には,携帯用無線端末装置において,小型化を考慮して表示機能を実現させることも従来周知の課題であったことが示されている上,刊行物5の図2に記載されている「液晶表示装置(22b)」は表示装置としては充分小型なものであり,ディスプレイを設ける場合に小型化を考慮している事実を読み取ることができる。 そうすると,当業者であれば,必要により,このような小型の構成の液晶表示装- 14 -置を刊行物1発明に適用することは容易になし得ることであり,相違点3について,「刊行物2~5は携帯可能な無線端末装置に関し,ディスプレイを設けることが記載されている。このようにディスプレイを設けることは周知であるから,刊行物1発明の無線通話装置にディスプレイを設けるようにすることは当業者が容易に想到し得ることであり,無線通信手段,前記通話手段とともにディスプレイを筐体が保持することは適宜に実施し得ることである。」とした審決の判断に誤りはない。 (2)相違点4につき携帯型の機器は通常バッテリーで駆動されることから消費電力の低減はよく知られた課題であり,また,スイッチの操作によって機器を動作状態か待機状態にすることにより消費電力を低減することは周知(例え つき携帯型の機器は通常バッテリーで駆動されることから消費電力の低減はよく知られた課題であり,また,スイッチの操作によって機器を動作状態か待機状態にすることにより消費電力を低減することは周知(例えば,特開平5-191480号公報〔乙1〕の2頁段落【0005】~【0007】,特開平4-91523号公報〔乙2〕の3頁左上欄6行~左下欄20行,特開昭56-132654号公報〔乙3〕の1頁特許請求の範囲,特開平4-259156号公報〔乙4〕の段落【0002】~【0004】,【0011】,【0015】~【0019】,【0022】~【0029】)である。そうすると,携帯型無線電話装置の状態について,その携帯型無線電話装置の全体に電源が供給される状態であるアクティブ状態にするために使用者に操作されるオンスイッチと,その携帯型無線電話装置の待機系に電源が供給される状態である待機状態にするために使用者に操作されるオフスイッチとを刊行物1発明に備えるようにすることは,当業者が容易に想到し得ることである。 また,これらのオンスイッチとオフスイッチを刊行物1発明のどの位置に設置するかについては,その必要性を勘案し,当業者が適宜選択すべき技術的な設計事項である。 この点に関し,本件出願の当初明細書の段落【0035】,【0036】,【0043】,図9,図10によれば,ディスプレイに隣接してオンスイッチとオフスイッチとを設けることにつき,収容枠109にディスプレイ115とオンスイッチ117とオフスイッチ119とが隣接して取り付けられていること,及び,収容枠109- 15 -に液晶ディスプレイ103Aを備えたペン入力デバイス103とオンスイッチ117とオフスイッチ119とが近接して取り付けられていることが開示されている。 しかし,本願発明の「オンスイッチ」と「 -に液晶ディスプレイ103Aを備えたペン入力デバイス103とオンスイッチ117とオフスイッチ119とが近接して取り付けられていることが開示されている。 しかし,本願発明の「オンスイッチ」と「オフスイッチ」をディスプレイ115又は液晶ディスプレイ103Aに隣接して設けることについては,単に図9の実施例においてそれらの配置の例示がなされているにすぎず,ディスプレイに隣接してオンスイッチとオフスイッチとを設けることを特定することについて,本件出願の当初明細書に特別な技術的意義は記載されていない。 そして,前記のとおり,刊行物1発明にディスプレイを設けることは当業者であれば容易になし得ることであるから,その際に,刊行物1発明に設けられたディスプレイに隣接してオンスイッチとオフスイッチを設置することも,当業者が必要により適宜選択すべき技術的な設計事項である。例えば,特開平4-273640号公報(乙5)の【図1】及び段落【0008】には,携帯型無線電話装置において,液晶表示部に隣接して操作キーとしての電源のキーが配置されているものが記載されており,表示装置を有する携帯型の機器においてスイッチを表示装置に隣接した位置に配置をすることは周知であり,ディスプレイに隣接してオンスイッチとオフスイッチを設置することは,当業者が適宜選択すべき技術的な設計事項であることを示している。 したがって,相違点4について,「携帯型無線電話装置の状態を,その携帯型無線電話装置の全体に電源が供給される状態であるアクティブ状態にするために使用者に操作されるオンスイッチと,携帯型無線電話装置の状態を,その携帯型無線電話装置の待機系に電源が供給される状態である待機状態にするために使用者に操作されるオフスイッチとを備えることは当業者が容易に想到し得ることであり,その ,携帯型無線電話装置の状態を,その携帯型無線電話装置の待機系に電源が供給される状態である待機状態にするために使用者に操作されるオフスイッチとを備えることは当業者が容易に想到し得ることであり,その際にスイッチを配置する位置をどうするかは操作性や視認性に配慮して決めることができる設計的事項であるから,スイッチをディスプレイに隣接して設けることは当業者が適宜に行うことができ,そのことによる効果も格別のものではない。」とした審決の判断に誤りはない。 - 16 -(3)相違点5につき前記のとおり,刊行物1発明は被覆体が外部に飛び出した状態で電気接点(11)と接点端子(19)が接触して回路基板(18)と(9)が電気的に接続され通話状態となり,収納された状態で非通話状態に切り替わるものであるから,刊行物1発明はスピーカをスライドさせることによって通話状態と非通話状態が切り替わるものではなく,トークスイッチボタン(13)(トークスイッチ(16))の押下によって非通話状態から通話状態に切り替わるものであるとの原告主張は誤りである。 そして,刊行物1発明は,スピーカを取り付けた被覆体が収納された状態では非通話状態とし,被覆体が外部に飛び出した状態では通話状態としており,非通話状態では普通は音声出力は必要としないし,通話状態では音声出力が必要であることを参酌すれば,スピーカをスライドすることにより音を出力するオン状態と音を出力しないオフ状態とに切り替わるようにすることは当業者が容易に想到し得ることである。 したがって,相違点5についての審決の判断に誤りはない。 なお,審決は刊行物1発明とスピーカのスライドによりスピーカの音が出力されない状態/音が出力される状態が切り替わるという周知の技術を組み合わせることで容易性の判断を行っているわけではない。ス ない。 なお,審決は刊行物1発明とスピーカのスライドによりスピーカの音が出力されない状態/音が出力される状態が切り替わるという周知の技術を組み合わせることで容易性の判断を行っているわけではない。スピーカのスライドによりスピーカの音が出力されない状態と出力される状態とが切り替わるスイッチが周知技術であることが示されていないとの原告の主張は審決を正解しないものである。 また,審決は,「非通話状態では普通は音声出力は必要としないし,通話状態では音声出力が必要である」と認定・判断しているのであって,接続状態/非接続状態がスピーカ音の出力についてのオン/オフ状態と必ず一致するとは認定していないし,それをもとにしても判断しているわけでもない。本願発明が「データ通信状態として接続している状態となることに連動して必ず通話状態(スピーカのオン状態)となる」ことや「データ通信を行わない非接続状態になることに連動して必ず非通話状態(スピーカのオフ状態)になる」ことに関連して容易想到性を判断している- 17 -ものでもない。 (4)発明の効果の相違について「刊行物1発明は,トークスイッチ(16)が押圧されてオン状態になるとともに通話状態となる」との原告主張は,前記のとおり誤りであり,刊行物1発明は,被覆体が外部に飛び出した状態で電気接点(11)と接点端子(19)が接触して回路基板(18)と(9)が電気的に接続され,通話状態となり,収納された状態で非通話状態に切り替わるものである。 また,前記のとおり,スイッチの操作によって機器を動作状態か待機状態にすることにより消費電力を低減することは周知であり,携帯型無線電話装置の状態について,その携帯型無線電話装置の全体に電源が供給される状態であるアクティブ状態にするために使用者に操作されるオンスイッチと,その携帯型無 費電力を低減することは周知であり,携帯型無線電話装置の状態について,その携帯型無線電話装置の全体に電源が供給される状態であるアクティブ状態にするために使用者に操作されるオンスイッチと,その携帯型無線電話装置の待機系に電源が供給される状態である待機状態にするために使用者に操作されるオフスイッチとを刊行物1発明に備えるようにすることは,当業者が容易に想到し得ることである。 したがって,「本願発明の構成による効果も,刊行物1発明及び刊行物2~5に記載された事項ならびに周知技術からみて格別のものではない」とした審決の判断に誤りはない。 第5当裁判所の判断 取消事由1(一致点・相違点認定の誤り)について(1)本願発明について本願明細書(甲22の1~4,38)の記載によれば,本願発明は携帯型無線電話装置に関するものであり,従来,警察官の活動を補佐するものとしては携帯型無線通話装置や携帯用のコンピュータが用いられているところ,従来の技術では労力を消費したりする問題があった点に鑑み,その問題点を解決することを目的としたものであって,請求項1に記載された技術的事項を備えることにより,- 18 -(ⅰ)例えば使用者が,スピーカがスライド可能な方向にそのスピーカをスライドさせることにより,スピーカの状態が音を出力するオン状態と音を出力しないオフ状態とに切り替わる,つまり,使用者はスピーカをスライドさせるだけでスピーカをオン状態にしたりオフ状態にしたりすることができる。 (ⅱ)使用者は,オンスイッチを操作することにより,携帯型無線電話装置の状態をその携帯型無線電話装置の全体に電源が供給される状態であるアクティブ状態にすることができる。 (ⅲ)使用者は,オフスイッチを操作することにより,携帯型無線電話装置の状態を,その携帯型無線電話装置の待機 の携帯型無線電話装置の全体に電源が供給される状態であるアクティブ状態にすることができる。 (ⅲ)使用者は,オフスイッチを操作することにより,携帯型無線電話装置の状態を,その携帯型無線電話装置の待機系に電源が供給される状態である待機状態にすることができる。 という効果を奏するものであると認められる。 他方,本願明細書の段落【0036】,【0037】,【0042】~【0044】及び下記の【図9】,【図10】の記載によれば,オンスイッチ117とオフスイッチ119がディスプレイ115やペン入力デバイス103(液晶ディスプレイ103A)に隣接して設けられていることが理解できるが,それ以上の技術的意義に関し特段記載はない。 また,オンスイッチ117が操作された場合には,ポリスケータ1全体に電源を供給してアクティブ状態にし,オフスイッチ119が操作された場合には,ポリスケータ1の待機系に電源を供給して待機状態にすること,スピーカ151はスピーカオンスイッチ152に接続されており,引き出されると,「オフ」状態から「オン」状態に切り替わることが理解できるが,オンスイッチ及びオフスイッチとスピーカオンスイッチとの関係について特段記載はない。 【図9】ポリスケータ1の斜視図- 19 - 【図10】ポリスケータ1の斜視図(2)引用発明について刊行物1(甲15)の記載によれば(第1図,第2図は下記のとおり),刊行物1発明は,コードレス電話機やトランシーバ等に用いて好適な無線通信機装置に関す- 20 -るもので,従来のコードレス電話機におけるハンドセットでは,キャビネット本体はダイヤルボタンのほかファンクションボタンも装荷され,さらにスピーカやマイクも内蔵され,上部にはアンテナが搭載されるようになされているので,構造が大型となり,単純に小型化する は,キャビネット本体はダイヤルボタンのほかファンクションボタンも装荷され,さらにスピーカやマイクも内蔵され,上部にはアンテナが搭載されるようになされているので,構造が大型となり,単純に小型化すると操作性が悪くなる等の欠点があった点に鑑み,構造を小型化することができ,しかも操作性の優れた無線通話機装置を提供することを目的としたものと認められる。そして,被覆体(7)で覆われたアンテナ(6)がキャビネット(1,5)に対して挿脱可能とされており,被覆体(7)にファンクションボタン等の操作部(10)が収納されているので構造を小型化でき,通話中にはアンテナを覆う被覆体(7)を引き延ばしてやればよいので,確実な通話ができるとともに操作がしやすくて操作性を向上できるという作用・効果を奏することが認められる。 【第1図】第1実施例の斜視図【第2図】第1実施例の構成図- 21 - ここで,通話に係る動作についてみると,刊行物1の5頁3行~8頁17行の記載によれば,通話する際には,トークスイッチボタン(13)を押すと,レバー(14)が回動し,レバー(14)の他端と被覆体(7)の切欠部(7b)の係合が解除され,被覆体(7)が引っ張られて外部に飛び出し,また,このときトークスイッチ(16)が押圧されてオン状態になるととともに電気接点(11)と接点端子(19)が接触して回路基板(18)と(9)が電気的に接続され,通話状態となることが認められる。 すなわち,トークスイッチボタン(13)を押すことによって,(ⅰ)レバー(14)の他端と被覆体(7)の切欠部(7b)の係合を解除し,被覆体(7)を外部に飛び出させ,電気接点(11)と接点端子(19)を接触させて回路基板(18)と回路基板(9)を電気的に接続させること(ⅱ)トークスイッチ(16)を押圧することが達成 を解除し,被覆体(7)を外部に飛び出させ,電気接点(11)と接点端子(19)を接触させて回路基板(18)と回路基板(9)を電気的に接続させること(ⅱ)トークスイッチ(16)を押圧することが達成され,通話状態に切り替わり,トークスイッチボタン(13)を押さないようにして被覆体(7)を収納することによって,電気接点(11)と接点端子(19)が離れて回路基板(18)と回路基板(9)の電気的な接続を解除し,非通話状態に切り替わることが認められる。 そして,回路基板(9)に電気的に接続されたスピーカ(8)は通話状態において音声が- 22 -出力可能な状態になり,非通話常態において音声が出力不可能な状態となることは技術的に明らかである。 そうすると,刊行物1発明における通話状態と非通話状態の切り替えには,電気接点(11)と接点端子(19)の接触又は非接触が必要で,電気接点(11)と接点端子(19)の接触又は非接触によって,すなわち,スピーカ(8)の飛び出し又は収納によって,通話状態と非通話状態とを切り替え,スピーカ(8)を音声出力可能な状態と不可能な状態とに切り替えているといえ,電気接点(11)と接点端子(19)の接触又は非接触は実質的にスイッチのオン又はオフ機能に相当すると考えることができる。 (3)一致点認定につき原告は,刊行物1発明は,トークスイッチボタン(13)(トークスイッチ(16))の操作によってオン状態とオフ状態との切り替え(通話状態と非通話状態との切り替え)が実現されるというものであって,被覆体(7)が飛び出してオン状態(通話状態)となる構成の発明ではないから,引用発明は,スピーカがスライドすることによりオン状態とオフ状態とが切り替わるものではない旨主張する。 しかし,前記のとおり,刊行物1発明は,トークスイッチボタン(13)を なる構成の発明ではないから,引用発明は,スピーカがスライドすることによりオン状態とオフ状態とが切り替わるものではない旨主張する。 しかし,前記のとおり,刊行物1発明は,トークスイッチボタン(13)を押すことにより通話状態に切り替わり,被覆体(7)を収納することにより非通話状態に切り替わるものであって,トークスイッチ(13)の操作によって通話状態から非通話状態へ切り替えが実現されるものではないとともに,通話状態又は非通話状態の切り替えには,電気接点(11)と接点端子(19)の接触又は非接触が必要で,電気接点(11)と接点端子(19)の接触又は非接触,すなわち,スピーカ(8)の飛び出し又は収納(スライド)によってオン又はオフ状態が切り替わるといえるものである。 したがって,審決が,「刊行物1発明では,被覆体が外部に飛び出した状態で電気接点(11)と接点端子(19)が接触して回路基板(18)と(9)が電気的に接続され,通話状態となり収納された状態で非通話状態に切り替わっている。電気接点(11)と接点端子(19)が接触することは実質的にスイッチのオン,オフに相当する。そうすると,刊行物1発明と本願発明は,・・・『スピーカがそのスピーカの引き出し側にスライド- 23 -すると,状態を切り替えるスイッチを備え,前記スピーカは,スライドすることにより,オン状態とオフ状態とに切り替わる』点で共通する構成を有している。」(8頁8行~19行)とした認定に誤りはない。 (4)相違点の認定につき原告は,刊行物1発明はスピーカをスライドすることにより通話状態と非通話状態が切り替わるものではないから,審決は相違点の認定を誤っている旨主張する。 しかし,上記のとおり,スピーカ(8)の飛び出し又は収納(スライド)によって,スピーカ(8)のオン又はオフ状態が切り替わるとい が切り替わるものではないから,審決は相違点の認定を誤っている旨主張する。 しかし,上記のとおり,スピーカ(8)の飛び出し又は収納(スライド)によって,スピーカ(8)のオン又はオフ状態が切り替わるといえるものであるから,原告の主張はその前提において理由がない。 取消事由2(相違点判断の誤り)について(1)相違点3の判断につき原告は,刊行物1発明は,構造の小型化を図ることを課題としており,そのような刊行物1発明においてディスプレイを設けることは,構造の小型化よりもむしろ大型化を導き得ることになるから,引用発明の課題に相反するなどとして,審決の相違点3の判断は誤りであると主張する。 しかし,刊行物1発明におけるファンクションボタンスイッチ(10)に係る機能は電話本来の機能に必須のものとまではいえず,適宜に付加された機能であるところ,刊行物1発明は小型化の目的に反しない範囲でファンクションボタンスイッチ(10)に係る機能をさらに付加したものであるから,小型化の目的に反しない範囲でその他の適宜の機能を付加することを十分に示唆しているといえる。 そして,刊行物2~5に示されているように,小型の携帯端末においてディスプレイを設けることは周知の技術であるから,ディスプレイを設けることが刊行物1発明の小型化の目的に反するとはいえず,加えて,刊行物1発明のような小型の携帯端末において,高機能化は通常内在する課題である。 さらに,刊行物1の図面から把握できる構造であってもディスプレイを配する余- 24 -地は十分に認められるし,刊行物5に記載された液晶表示器22bの構造に照らすと,刊行物1発明において小型化を考慮した上でディスプレイを設けることが当業者にとって格別困難であるとは認められない。 このように,ディスプレイを設けることが刊行物1発明の目的に反す bの構造に照らすと,刊行物1発明において小型化を考慮した上でディスプレイを設けることが当業者にとって格別困難であるとは認められない。 このように,ディスプレイを設けることが刊行物1発明の目的に反するとは認められず,適宜の機能を付加することの示唆は十分に認められるとともに,上記の周知の技術を参酌すれば,刊行物1発明において相違点3に係る構成に想到することは,当業者にとって容易であるというべきである。 (2)相違点4の判断につき原告は,刊行物1発明は,構造を小型化するとともに優れた操作性を提供することを課題としており,このような課題のもと「被覆体(7)に操作部(10)を収納した」特有の構成を備えているところ,このような刊行物1発明において,小型化を実現するとともに優れた操作性を提供するという課題を達成するためにスイッチの配置に創意工夫が求められるであろうことは明らかであり,スイッチをどのように配置するかは必ずしも当業者にとって想到容易ではないなどと主張する。 しかし,携帯型の機器は通常バッテリーで駆動されることから消費電力の低減はよく知られた課題であって,当該課題に鑑み,スイッチの操作によって機器を作動状態から待機状態にすることにより消費電力を低減することは,特開平5-191480号公報(乙1),平4-91523号公報(乙2),特開昭56-132654号公報(乙3),特開平4-259156号公報(乙4)に記載されているように周知の技術である。 そして,刊行物1には消費電力の低減に関し明示的な記載はないが,電池(17)で駆動することが予定されている刊行物1発明においても上記のような課題は当然存在すると認められ,課題に反しなければ適宜の機能を設け得ることは技術的に明らかであるとともに,刊行物1発明のような小型の携帯端末において高機能化は通常 刊行物1発明においても上記のような課題は当然存在すると認められ,課題に反しなければ適宜の機能を設け得ることは技術的に明らかであるとともに,刊行物1発明のような小型の携帯端末において高機能化は通常内在する課題である。 そうすると,刊行物1発明において,アクティブ状態にするために操作されるオ- 25 -ンスイッチと待機状態にするために操作されるオフスイッチとを設けることは,当業者にとって容易想到であるというべきである。 その場合,スイッチの具体的な配置位置は,小型化を実現するとともに優れた操作性を提供するという課題の範囲内で適宜に決定し得る事項ということができ,通常想定されるスイッチの大きさ(小ささ)や,刊行物1の図面から見て取れる構造に鑑みれば,配置に際し格別の困難性は認められない。 加えて,前記のとおり,ディスプレイに隣接してオンスイッチとオフスイッチとを設けることについて,本願明細書には特別な技術的意義は記載されていない。仮に,原告主張のようにディスプレイを視認しながらスイッチの操作ができる程度の技術的意義であれば設計的事項といえる。 また,原告は,引用発明においては操作部が被覆体に設けられることが前提とされるため,オンスイッチ,オフスイッチも被覆体に設けられる旨主張しているが,トークスイッチボタン(13)や電源スイッチボタン(4)は本体側に設けられており,被覆体に設けることが前提であるとはいえず,適宜の位置に設け得ると考えられる。 (3)相違点5の判断につき原告は,本願発明は,スピーカがスライドすることによりスピーカの状態が音を出力するオン状態と音を出力しないオフ状態とに切り替わるのに対して,刊行物1発明はそのような構成を備えておらず,刊行物1発明が相違点5に係る構成を具備することを想到するのは容易ではないなどと主張する。 しかし ン状態と音を出力しないオフ状態とに切り替わるのに対して,刊行物1発明はそのような構成を備えておらず,刊行物1発明が相違点5に係る構成を具備することを想到するのは容易ではないなどと主張する。 しかし,前記のとおり,刊行物1発明において通話状態と非通話状態の切り替えには,電気接点(11)と接点端子(19)の接触又は非接触が必要であるから,電気接点(11)と接点端子(19)の接触又は非接触,すなわち,スピーカ(8)の飛び出し又は収納によって,通話状態と非通話状態とを切り替え,スピーカ(8)を音声出力可能な状態と不可能な状態とに切り替えているということができ,電気接点(11)と接点端子(19)の接触又は非接触は実質的にスイッチのオン又はオフ機能に相当する。 そうすると,刊行物1発明は,実質的に,「スピーカがその引き出し側にスライド- 26 -すると,そのスピーカの状態を,音を出力しないオフ状態から音を出力するオン状態に切り替えるスピーカオンスイッチ」を備え,「スピーカは,スライドすることにより,音を出力するオン状態と音を出力しないオフ状態とに切り替わる」ものであるということができる。 この点,確かに,刊行物1発明においてスピーカ(8)を音声出力が可能なオン状態とするためには,トークスイッチボタン(13)やトークスイッチ(16)の押下が必要であるが,それだけではなく,スピーカ(8)の飛び出しも必要である。 しかも,トークスイッチボタン(13)は,トークスイッチ(16)を押圧するだけでなく,レバー(14)の他端と被覆体(7)の切欠部(7b)の係合を解除し,被覆体(7)を飛び出させる(スライドさせる)ためのものであるから,使用者が積極的に被覆体(7),すなわち,スピーカ(8)を飛び出させる(スライドさせる)ことにより通話状態にし,音声出力が可能な状態に 体(7)を飛び出させる(スライドさせる)ためのものであるから,使用者が積極的に被覆体(7),すなわち,スピーカ(8)を飛び出させる(スライドさせる)ことにより通話状態にし,音声出力が可能な状態に切り替える思想が十分に窺えるだけでなく,実質的にかかる構成を備えているということができる。 したがって,刊行物1発明には,積極的(直接的)にスピーカ(8)をスライドさせることにより通話状態にし,音声を出力するオン状態に切り替えることの動機づけは十分に認められ,実質的にかかる構成も備えられていることより,スピーカのスライドによりスピーカの音が出力されない状態と音が出力される状態とが切り替わるスイッチが周知の技術であることを検討するまでもなく,相違点5に係る構成は容易想到というべきである。 なお,審決は,相違点5について,「非通話状態では普通は音声出力は必要としないし,通話状態では音声出力が必要であることを参酌すれば,音を出力するオン状態と音を出力しないオフ状態とに切り替わるようにすることは当業者が容易に想到し得ることである。」と判断しているのであって,スピーカのスライドによりスピーカの音が出力されない状態/音が出力される状態が切り替わるという周知の技術を刊行物1発明に組み合わせることで容易想到性の判断を行っているのではなく,刊行物1発明のような形式の電話装置においては普通,非通話状態では音声出力は必- 27 -要としないし,通話状態では音声出力が必要であることは技術常識であるから,そうした技術常識を参酌すれば,音を出力するオン状態と音を出力しないオフ状態とに切り替わるようにすることは当業者が容易に想到し得ると判断したものである。 この点に関し,原告は,本願発明は単なる電話装置ではなく,「公衆通信回線に無線によって接続され,該公衆通信回線を経由して とに切り替わるようにすることは当業者が容易に想到し得ると判断したものである。 この点に関し,原告は,本願発明は単なる電話装置ではなく,「公衆通信回線に無線によって接続され,該公衆通信回線を経由してデータの発信,または受信を行う無線通信手段」を備えた携帯型無線電話装置であり,「スピーカは,収納又は引き出しが可能なようにスライド可能に構成され」ているものであるから,受話器のスピーカのみを必ずしも予定しているものではないところ,審決のいう技術常識は,受話器のスピーカによる音声出力を予定した場合を前提としたものであり,本願発明のようなデータ通信機能を備えた携帯型無線電話装置にあってはあてはまらないと主張する。 しかし,本願発明において受話器のスピーカのみを必ずしも予定していないとしても,除外しているとも認められないから,刊行物1発明に上記技術常識を踏まえて相違点5に係る本願発明の構成が容易想到であるとした審決の判断に誤りはない。 また,原告は,本願発明が通話状態/非通話状態(接続状態/非接続状態)にかかわらずスピーカのオン/オフ状態が切り替わる構成を含む,スピーカの音声出力オン/オフが,通話状態/非通話状態とは必ずしも関連なく構成されている旨主張しているが,かかる構成は請求項1において特定されておらず,明細書にも特段記載されていない。そして,仮に原告が主張するような構成を含むとしても,刊行物1発明のように,通話状態/非通話状態とスピーカのオン/オフ状態が連動するものを除外するとは認められず,連動するものも含むと解される。原告の上記主張は採用することができない。 (4)発明の効果の判断の誤り原告は,本願発明によれば,スピーカの状態に関係なく,オンスイッチ及びオフスイッチの操作により,携帯型無線電話装置の状態をアクティブ状態と待機状態と- できない。 (4)発明の効果の判断の誤り原告は,本願発明によれば,スピーカの状態に関係なく,オンスイッチ及びオフスイッチの操作により,携帯型無線電話装置の状態をアクティブ状態と待機状態と- 28 -のいずれかに自由に切り替えることができ,また,携帯型無線電話装置の状態に関係なく,スピーカをスライドさせることによってそのスピーカの状態をオン状態とオフ状態との何れかに自由に切り替えることができるという特有の効果を奏するなどと主張する。 しかし,前記のとおり,刊行物1発明においてスピーカをスライドさせることで,スピーカをオン状態にしたりオフ状態にしたりすることは容易想到であるし,アクティブ状態にするオンスイッチと待機状態にするオフスイッチを設けることも容易想到である。 その場合に,スピーカをスライドさせるだけでスピーカをオン状態にしたりオフ状態にしたりすることができるのに加え,オンスイッチを操作することにより携帯型無線電話装置の状態をアクティブ状態にすることができ,オフスイッチを操作することにより携帯型無線電話装置の状態を非アクティブ状態にすることができるといった効果は,当然に期待できるものであって,格別なものではない。 そして,請求項1において,オンスイッチ及びオフスイッチとスピーカオンスイッチとの関係について特定されておらず,本願明細書にも特段記載はないから,本願発明が,スピーカの状態に関係なく,オンスイッチ及びオフスイッチの操作により,携帯型無線電話装置の状態をアクティブ状態と待機状態とのいずれかに自由に切り替えることができ,また,携帯型無線電話装置の状態に関係なく,スピーカをスライドさせることによってそのスピーカの状態をオン状態とオフ状態とのいずれかに自由に切り替えることができる旨の主張は,特許請求の範囲,本願明細書の記載に基づ 線電話装置の状態に関係なく,スピーカをスライドさせることによってそのスピーカの状態をオン状態とオフ状態とのいずれかに自由に切り替えることができる旨の主張は,特許請求の範囲,本願明細書の記載に基づくものではない。 よって,審決が本願発明の特有の効果について看過しているとの原告の主張は採用することができない。 第6 結論 以上によれば,原告主張の取消事由は全て理由がない。 - 29 -よって原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部裁判長裁判官塩月秀平裁判官真辺朋子裁判官田邉実- 30 -
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