【DRY-RUN】○ 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実 第一 申立 一 原告 (一) 被告が昭和五三年一一月三〇日付で原告に対してした、昭和四九年ないし 昭和五二年の各六月分の源泉徴
○ 主文原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実第一申立一原告(一) 被告が昭和五三年一一月三〇日付で原告に対してした、昭和四九年ないし昭和五二年の各六月分の源泉徴収所得税紬税告知処分及び不納付加算税賦課決定処分を取り消す。 (二) 訴訟費用は被告の負担とする。 との判決。 二被告主文と同旨の判決。 第二当事者の主張一請求原因(一) 原告会社は、昭和四九年から昭和五二年までの各事業年度(当年三月一日から翌年二月二八日まで)において、商法二九三条の三に基づき、別表一のとおり利益準備金(法人税法二条一八号に規定する利益積立金額)を資本に組み入れたが、当該組入金額を配当所得として所得税を徴収し、これを国に納付することをしなかつた。 (二) これに対し、被告は、昭和五三年一一月三〇日付で、原告会社に対し、所得税法(以下、法という)二五条二項二号、二四条一項、一八一条一項、昭和五二年法律第九号による改正前の租税特別措置法九条及び国税通則法三六条一項二号、六七条一項に基づき、別表二のとおり源泉徴収所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分(以下、両処分を本件処分という)をした。 (三) 原告会社は、昭和五四年一月二二日、被告に対し、本件処分について異議申立をしたところ、被告は、同年三月一日、異議申立を棄却する旨の決定をした。 原告会社は、同年三月一三日、国税不服審判所長に対し、審査請求をしたところ、同所長は、同年八月二九日、審査請求を棄却する旨の裁決をし、原告は、同年九月一四日、裁決書謄本を受領した。 (四) しかし、法二五条二項二号は、憲法二九条、八四条に違反し無効であるから、本件処分は、内容的に違法である。以下にその理由を詳述する。 1 法二五条二項二号の不合理性(1) 法二五条二項二号は、配当所得 しかし、法二五条二項二号は、憲法二九条、八四条に違反し無効であるから、本件処分は、内容的に違法である。以下にその理由を詳述する。 1 法二五条二項二号の不合理性(1) 法二五条二項二号は、配当所得となり得ないものを配当所得とみなす規定であつて、合理性を欠く。 会社が、その財産をどのような形で保存するかは株主の所得とは関係がなく、会社が利益準備金を資本に組み入れても、それは、会社の財産に対する法律上の規制の変更に過ぎず、また、株主の保有株式の価値の増加の顕現に過ぎないのである。 このような単なる会社財産の保有形式の変更による株主の会社財産に対する持分の価値の増加の顕現を、所得の実現とみて所得税を課するのは、所得の定義について包括的所得説(純資産増加説)を採ることによつてのみ、合理的説明が可能である。しかし、包括的所得説は、わが国の民法、商法等の実定法規の総合的解釈からも、所得税法、法人税法等の総合的解釈からも、見出すことが不可能である。 また、わが国の会社の九九パーセントが中小企業であり、解散によつて株主に残余財産が分配されることは、現実には期待できないから、資本の増加は、株主の所得としての意味をなさない。 したがつて、利益準備金の資本組入れを配当所得の対象とすることは、合理性を欠く。 (2) そこで、法二五条二項二号は、不合理な課税法規として憲法八四条に違反するとともに、不合理な課税によつて国民の財産権を侵害するものとして憲法二九条に違反し、無効である。 2 法二五条二項二号の不明確性法二五条二項二号の現定は、所得課税なのか資産の評価益に対する課税なのかが判然とせず、不明確であるから、憲法八四条に違反し、無効である。 (五) 結論原告は、本件処分の取消しを求める。 二請求原因に対する答弁及び主張(認否)(一) 請求原因(一)ないし(三 なのかが判然とせず、不明確であるから、憲法八四条に違反し、無効である。 (五) 結論原告は、本件処分の取消しを求める。 二請求原因に対する答弁及び主張(認否)(一) 請求原因(一)ないし(三)の各事実は認める。ただし、(三)のうち、原告会社が裁決書謄本を受領した日については不知。 (二) 同(四)の主張は争う。 (主張)(一) 原告会社は、法一八一条一項に基づく源泉徴収義務者にすぎないのであつて、配当所得の帰属者たる株主、すなわち納税義務者ではないのであるから、納税義務者の所得を規定するいわゆる課税根拠現定の違憲を事由に本件処分の違法を主張することはできない。つまり、法一八一条一項の規定は、納税義務者の税額の確定を前提として、その税額の徴収の効率化等をはかるために設けられたいわゆる徴収手続規定であつて、右現定によつて徴収を義務づけられた者すなわち源泉徴収義務者は、右規定の要件の存否についての違法を主張するのは格別、右規定以外の自己にかかわりのない課税根拠規定についての要件の存否等を事由に、徴収手続規定に属する本件処分の違法事由を主張することはできない。 (二) 法二五条二項二号は、憲法二九条、八四条に違反するものではなく、本件処分は適法である。以下にその理由を詳述する。 1 法二五条二項二号の合理性(1) 日本国憲法は、「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」(同法八四条)、「国民は法律の定めるところにより納税の義務を負う」(同法三〇条)と規定しているのみで、所得概念をはじめ課税要件につきなんらの規定をおいていないから、所得概念を含め課税要件の決定をすべて法律の規定に委ねている。したがつて、これらを如何に定めるかは、立法政策の問題として立法府の裁量に属する。 そうすると、 要件につきなんらの規定をおいていないから、所得概念を含め課税要件の決定をすべて法律の規定に委ねている。したがつて、これらを如何に定めるかは、立法政策の問題として立法府の裁量に属する。 そうすると、これらを定めた租税法規の憲法適合性を判断するに当たつては、当該規定が立法府に与えられた裁量権の範囲を逸脱した著しく不合理なものでない限り、当該規定の憲法適合性の問題が生じる余地はない。 (2) ところで、資産の増加益を所得として把握することが不合理でないことは、一般に認められているところであるから、資産の増加益以上に明確な形で株主に利益をもたらす利益積立金の資本組入れによる株主の保有株式の価値の増加を所得として把握することができることは論をまたない。 (3) また、利益積立金額の資本組入れを課税対象とすることは、合理的である。すなわち、利益積立金は、元来、会社の稼得利益のうちの株主に対する未分配額を示すものであるから、それが資本に組み入れられるということは、会社がいつたん利益積立金を株主に分配したうえ、あらためて会社の資本の払込みを株主に求めたものと同一の経済的効果を持つものであるとみることができる。仮にこれを課税対象としないとすると、本件の場合と、会社が株主に対し現実に利益を配当し、株主がその配当金をもつて資本の払込みをした場合とを比較したとき(後者の場合は配当金をもつて資本の払込みをするにつき株主に自由が存する点において本件の場合と異なる側面があるとはいえ)、株主が現実に配当利益を留保していないという点においては全く同一であるにもかかわらず、後者では課税されるのに対して、本件の場合は課税されないということになり、著しく課税の公平を欠く結果が生じる。しかも、本件の場合は、株式の譲渡益が原則として課税の対象外とされていることと相まつて税制上も法 課税されるのに対して、本件の場合は課税されないということになり、著しく課税の公平を欠く結果が生じる。しかも、本件の場合は、株式の譲渡益が原則として課税の対象外とされていることと相まつて税制上も法人の稼得した資産が結果的には所得税の課税なしに株主に移転することとなるのである。のみならず、同族会社の留保所得に対する課税(法人税法六七条)も回避され、更には解散の場合のみなし配当課税もされないこととなるなどの租税回避行為を誘発する不合理を生ずるのである。 したがつてこれらの不合理を防止するために法二五条二項二号のような規定を設けることには十分な理由がある。 (4) これを制度の沿革からみても、法人が社内に留保した利益の資本への振替あるいは資本への組入れについては、大正九年から昭和二五年までの税法においては、現行法のような明文の規定がなかつたが、右資本への振替あるいは資本への組入れを株主への利益配当とし配当所得として課税してきたものであり、昭和二六年の改正によつてみなし配当とされたのは、昭和二六年の商法改正によつて利益準備金の資本組入れが商法上利益の配当とされなかつたことによるのである。 そうすると、本件規定は従来の税制の沿革、商法の改正等を考慮し、本来の利益の配当とは異なることを前提としたうえで設けられたもので、何ら不合理なものではない。 (5) したがつて、法二五条二項二号の規定は、合理性を欠くものではないから、憲法八四条、二九条に違反しない。 2 法二五条二項二号の明確性課税要件が明確であるかどうかは、要件を構成する概念中に、たとえば不確定概念を用いる等課税要件事実の認定に困難をきたすものであるかどうかによつて、判断さるべき事柄であつて、課税の性質の明確性とは別問題である。ところで、法二五条二項二号の規定は、利益積立金の資本組入れに課税する いる等課税要件事実の認定に困難をきたすものであるかどうかによつて、判断さるべき事柄であつて、課税の性質の明確性とは別問題である。ところで、法二五条二項二号の規定は、利益積立金の資本組入れに課税することを明らかにしていて課税要件事実の認定をするにつき疑義が生ずる余地はないから、課税要件の明確性を欠くとはいえない。 したがつて、法二五条二項二号は、憲法八四条に違反しない。 第三証拠(省略)○ 理由第一原告会社が、昭和四九年から昭和五二年までの各事業年度(当年三月一日から翌年二月二八日まで)において、商法二九三条の三に基づき、別表一のとおり利益準備金(法人税法二条一八号の利益積立金)を資本に組み入れたが、当該組入金額を配当所得として所得税を徴収し、これを国に納付しなかつたこと、被告が、昭和五三年一一月三〇日付で原告会社に対し本件処分を行つたこと、原告会社が、昭和五四年一月二二日、被告に対し本件処分を不服として異議申立をしたところ、被告が、同年三月一日、異議申立を棄却する旨の決定をしたこと、原告会社が、同月一三日、国税不服審判所長に対し、審査請求をしたところ、同所長が、同年八月二九日、審査請求を棄却する旨の裁決をしたこと、以上のことは当事者間に争いがない。 第二本件処分の適法性について判断する。 一法二五条二項二号によると、株式会社が、法人税法二条一八号に規定する利益積立金額を資本へ組み入れた場合、資本に組み入れられた当該利益積立金額は、利益の配当又は剰余金の分配の額とみなされ、かつ、当該事実の発生の時、法人から株主に対し当該金額の交付がされたものとみなされるから、当該株式会社の株主は、法二四条の配当所得を得たことになる。そこで、株式会社は、法一八二条及び昭和五二年法律九号による改正前の租税特別措置法九条を適用して算出した金額を、法 たものとみなされるから、当該株式会社の株主は、法二四条の配当所得を得たことになる。そこで、株式会社は、法一八二条及び昭和五二年法律九号による改正前の租税特別措置法九条を適用して算出した金額を、法一八一条一項に基づき、所得税として徴収し、これを国に納付すべき源泉徴収義務を負うとしなければならない。しかし、原告会社は、前記のとおり、利益積立金を資本に組み入れたにもかかわらず、組入金額について所得税を徴収し、国に納付することを怠つたものであるから、被告が、国税通則法三六条一項二号、六七条一項に基づき本件処分を行つたことに瑕疵はない。 二原告は、本件処分の根拠となつた法二五条二項二号は、憲法二九条、八四条に違反し、無効であると主張しているので判断する。 源泉徴収による所得税についての納付の告知は、徴収処分であつて課税処分ではないが、納税義務自体の存在を前提とするものであるから、納付の告知を受けた支払者は、納税義務の存否・範囲という実体面の瑕疵を理由として納税の告知の取消しを求めることができると解するのが相当である。したがつて、本件でも、原告会社は、法二五条二項二号の違憲性を取消原因として主張できるというべきである。 三原告会社は、法二五条二項二号が憲法八四条に違反する理由として、右規定の根拠が不明確であり、かつ、不合理である(所得のないところに所得を擬制していること)と主張している。 しかし、憲法八四条が定める租税法律主義は、近代国家での法治主義が租税法の領域で現われたものであり、課税権の行使を国民の代表である議会の定める法律の根拠なしには行わしめないことによつて、国民に法的安定性と予想可能性とを保障しようとするものであつて、課税要件及び租税の賦課・徴収の手続が、すべて法律で明確に定められなければならないということを内容とするにすぎない。そし いことによつて、国民に法的安定性と予想可能性とを保障しようとするものであつて、課税要件及び租税の賦課・徴収の手続が、すべて法律で明確に定められなければならないということを内容とするにすぎない。そして、原告会社の主張するような課税要件の根拠の明確性、合理性は、憲法八四条の定める範囲外のことであるというべきである。そのうえ、法二五条二項二号は、課税の対象すなわち課税物件及び課税標準を定める規定として明確性を欠くことはない。つまり、同号は、それ自体不確定な文言を用いた規定ではないから、画一的、一律に適用することが可能である。 そうすると、法二五条二項二号の規定が、憲法八四条に違反するということはできない。 四次に、原告は、法二五条二項二号は、合理性を欠く課税要件の規定であつて、憲法二九条に違反すると主張している。 (一) 租税は、国民の富の一部を強制的に国家に移転する手段であるから、国民の財産権への侵害という側面をもつことは否定できない。しかし、国民が国家を形成する以上、国民は、その能力に応じて国家の財政的基礎を確立するため拠出し、国費を負担すべきことは当然であり、また、租税は、国家の財政政策の根幹を形成し、かつ、経済政策、社会政策とも緊密なつながりがあり、国の租税体系は、全体として複雑かつ技術的な性格をもつから、個々の具体的課税要件の定立には、立法政策上の裁量的要素が大きい。したがつて、個々の具体的課税要件については、それが明らかに合理性を欠くものでないかぎり、財産権の保障を定めた憲法二九条に違反するものではないと解するのが相当である。 いまこれを課税物件に関する規定についていえば、担税力を欠くことが明らかなものを課税物件として租税が課される場合にはじめて、憲法二九条に違反するというべきであるが、そうでないかぎり、租税法規が、課税の対象と を課税物件に関する規定についていえば、担税力を欠くことが明らかなものを課税物件として租税が課される場合にはじめて、憲法二九条に違反するというべきであるが、そうでないかぎり、租税法規が、課税の対象としても、いわば財産権の内在的制約として、受忍すべきものであつて、これをもつて憲法二九条に違反するとすることはできない。 (二) ところで、法人税法二条一八号に規定する利益積立金額が資本に組み入れられても、そのこと自体によつて株主の利益が実現するものでもないし、株主の会社財産全体に対する割合的持分が変更されるものでもない。しかし、利益積立金額の存在は、元来、会社の利益の反映であつて、利益積立金額は、会社の稼得利益のうちの株主への未分配金額を示すものである。したがつて、利益積立金額が資本に組み入れられた場合、その時点までに株主の保有株式の価値が少くとも資本金額の増加の範囲までは増加していることに着目し、この保有株式の価値の増加益に担税力を認め、これが資本への組入れという形でいわば顕在化した時期をとらえてこれを課税の対象とすることは、何ら不合理ではない。 また、利益積立金額を資本に組み入れることは、会社が、いつたん利益積立金額を株主に分配したうえ、あらためて同額の資本の払込みを受けることと同一の効果をもたらすことからも、課税の合理性は裏付けられる。 したがつて、法二五条二項二号は、明らかに担税力を欠くところに課税物件を認めたということはできないから、憲法二九条に違反しないというべきである。 第三むすび以上の次第で、本件処分は適法であるから、原告会社の本件請求は失当であつて棄却を免れない。そこで、行訴法七条、民訴法八九条に従い、主文のとおり判決する。 (裁判官古崎慶長孕石孟則寺田逸郎) は失当であつて棄却を免れない。そこで、行訴法七条、民訴法八九条に従い、主文のとおり判決する。 (裁判官古崎慶長孕石孟則寺田逸郎)
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