令和6(行ケ)4 選挙無効請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年2月12日 大阪高等裁判所 棄却
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判決文本文21,472 文字)

- 1 - 令和6年(行ケ)第4号選挙無効請求事件令和7年2月12日大阪高等裁判所第7民事部判決 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は、原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求令和6年10月27日に行われた衆議院小選挙区選出議員選挙の滋賀県第1区ないし第3区、京都府第1区ないし第6区、大阪府第1区ないし第19区、 兵庫県第1区ないし第12区、奈良県第1区ないし第3区、和歌山県第1区及び第2区における選挙を無効とする。 第2 事案の概要本件は、令和6年10月27日施行の衆議院議員総選挙(以下「本件選挙」という。)について、滋賀県第1区ないし第3区、京都府第1区ないし第6区、 大阪府第1区ないし第19区、兵庫県第1区ないし第12区、奈良県第1区ないし第3区、和歌山県第1区及び第2区の選挙人である原告らが、衆議院小選挙区選出議員の選挙(以下「小選挙区選挙」という。)の選挙区割りに関する公職選挙法の規定は憲法に違反し無効であるから、これに基づき行われた本件選挙の上記各選挙区における選挙(以下「本件各小選挙区選挙」という。)も無効 であるなどと主張して提起した公職選挙法204条に基づく選挙無効請求訴訟である。 1 前提事実(1) 公職選挙法は、衆議院議員の選挙制度につき、小選挙区比例代表並立制を採用しており、衆議院議員の定数は465人とされ、そのうち289人が小 選挙区選出議員、176人が比例代表選出議員とされている(4条1項)。小- 2 - 選挙区選挙については、全国に289の選挙区を設け、各選挙区において1人の議員を選出するものとされ(同法13条1項、別表第1。以下、後記の改正の前後 員とされている(4条1項)。小- 2 - 選挙区選挙については、全国に289の選挙区を設け、各選挙区において1人の議員を選出するものとされ(同法13条1項、別表第1。以下、後記の改正の前後を通じてこれらの規定を併せて「区割規定」という。)、比例代表選出議員の選挙(以下「比例代表選挙」という。)については、全国に11の選挙区を設け、各選挙区において所定数の議員を選出するものとされている (同法13条2項、別表第2)。総選挙においては、小選挙区選挙と比例代表選挙とを同時に行い、投票は小選挙区選挙及び比例代表選挙ごとに1人1票とされている(同法31条、36条)。 衆議院議員選挙区画定審議会設置法(以下、後記の改正の前後を通じて「区画審設置法」という。)2条は、衆議院議員選挙区画定審議会(以下「区画審」 という。)は、衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定に関し、調査審議し、必要があると認めるときは、その改定案(以下単に「改定案」という。)を作成して内閣総理大臣に勧告するものと規定している。 (2) 平成24年法律第95号(以下「平成24年改正法」という。)による改正前の区画審設置法(以下「旧区画審設置法」という。)4条は、区画審による 改定案の勧告について、①1項において、統計法5条2項本文の規定により10年ごとに行われる国勢調査(以下「大規模国勢調査」という。)の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものと規定し、②2項において、1項の規定にかかわらず、各選挙区の人口の著しい不均衡その他特別の事情があると認めるときは、これを行うことができると規定して いた。そして、旧区画審設置法3条は、改定案の作成の基準(以下、後記の改正の前後を通じて「区割基準」という。)について、①1項にお の事情があると認めるときは、これを行うことができると規定して いた。そして、旧区画審設置法3条は、改定案の作成の基準(以下、後記の改正の前後を通じて「区割基準」という。)について、①1項において、改定案の作成は、各選挙区の人口の均衡を図り、各選挙区の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることを基本とし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理 的に行わなければならないと規定するとともに、②2項において、改定案の- 3 - 作成に当たっては、各都道府県の区域内の選挙区の数は、各都道府県にあらかじめ1を配当することとし(以下、このことを「1人別枠方式」という。)、この1に、小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とすると規定していた(以下、この区割基準を「旧区割基準」という。)。 平成21年8月30日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成21年選挙」という。)は、平成24年改正法による改正前の区割規定(以下「旧区割規定」という。)の定める選挙区割りの下で行われたものであるところ、同日における選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.304(以下、較差に関する数値は、概数である。)であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2 倍以上となっている選挙区は45選挙区であった。(乙4の1)平成21年選挙につき、最高裁平成22年(行ツ)第207号同23年3月23日大法廷判決・民集65巻2号755頁(以下「平成23年大法廷判決」という。)は、旧区画審設置法3条1項は投票価値の平等の要請に配慮した合理的な基準を定めたものであると評価する一方、同選挙時において、選 挙区間の 巻2号755頁(以下「平成23年大法廷判決」という。)は、旧区画審設置法3条1項は投票価値の平等の要請に配慮した合理的な基準を定めたものであると評価する一方、同選挙時において、選 挙区間の投票価値の較差が拡大していたのは、1人別枠方式がその主要な要因となっていたことは明らかであり、かつ、人口の少ない地方における定数の急激な減少への配慮等の視点から導入された1人別枠方式は、既に立法時の合理性が失われていたものというべきであるから、旧区割基準のうち1人別枠方式に係る部分及び同基準に従って改定された旧区割規定の定める選 挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたと判示した。そして、平成23年大法廷判決は、この状態につき憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず、旧区割基準を定めた規定及び旧区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできないとした上で、事柄の性質上必要とされる是正のための合理 的期間内に、できるだけ速やかに旧区割基準中の1人別枠方式を廃止し、旧- 4 - 区画審設置法3条1項の趣旨に沿って旧区割規定を改正するなど、投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要があると判示した。 (3) 平成23年大法廷判決を受けて、平成24年11月16日、旧区画審設置法3条2項の削除及びいわゆる0増5減の措置(各都道府県の選挙区数を増やすことなく議員1人当たりの人口の少ない5県の選挙区数を1ずつ減ず る措置をいう。)を内容とする平成24年改正法が成立したが、同日に衆議院が解散されたため、同年12月16日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成24年選挙」という。)は平成21年選挙と同じく旧区割規定の定める選挙区割りの下で行われた。 平成 したが、同日に衆議院が解散されたため、同年12月16日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成24年選挙」という。)は平成21年選挙と同じく旧区割規定の定める選挙区割りの下で行われた。 平成24年選挙につき、最高裁平成25年(行ツ)第209号、第210 号、第211号同年11月20日大法廷判決・民集67巻8号1503頁(以下「平成25年大法廷判決」という。)は、同選挙時において旧区割規定の定める選挙区割りは平成21年選挙時と同様に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったが、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず、旧区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反 するものということはできないとした上で、国会においては今後も平成24年改正法による改正後の区画審設置法3条(旧区画審設置法3条1項と同内容の規定)の趣旨に沿った選挙制度の整備に向けた取組が着実に続けられていく必要があると判示した。 (4) 平成24年改正法の附則の規定に基づく区画審の勧告を受けて、平成25 年6月24日、0増5減の措置を前提に、選挙区間の人口の較差が2倍未満となるように17都県の42選挙区において区割りを改定することを内容とする同年法律第68号(以下「平成25年改正法」という。)が成立した。 平成25年改正法による改正後の平成24年改正法によって区割規定が改正され、平成22年に行われた大規模国勢調査の結果によれば選挙区間の人 口の最大較差は1対1.998となるものとされたが、同26年12月14- 5 - 日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成26年選挙」という。)の当日においては、選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.129であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙 日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成26年選挙」という。)の当日においては、選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.129であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は13選挙区であった。(乙4の3、乙5の2、乙6)平成26年選挙につき、最高裁平成27年(行ツ)第253号同年11月 25日大法廷判決・民集69巻7号2035頁(以下「平成27年大法廷判決」という。)は、0増5減の措置における定数削減の対象とされた県以外の都道府県について旧区割基準に基づいて配分された定数の見直しを経ておらず、上記のような投票価値の較差が生じた主な要因は、いまだ多くの都道府県において1人別枠方式を定めた旧区画審設置法3条2項が削除された 後の区割基準に基づいて定数の再配分が行われた場合とは異なる定数が配分されていることにあり、このような投票価値の較差が生じたことは、全体として平成24年改正法による改正後の区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたとはいえないことの表れというべきであるとして、平成25年改正法による改正後の平成24年改正法により改定さ れた選挙区割りはなお憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものといわざるを得ないと判示した。そして、平成27年大法廷判決は、同条の趣旨に沿った選挙制度の整備については、漸次的な見直しを重ねることによってこれを実現していくことも国会の裁量に係る現実的な選択として許容されていると解されるとし、上記の選挙区割りの改定後も国会において 引き続き選挙制度の見直しが行われていること等を併せ考慮すると、平成23年大法廷判決の言渡しから平成26年選挙までの国会における是正の実現に向けた取組は、立法裁量権の行使として相当なものでなかった 引き続き選挙制度の見直しが行われていること等を併せ考慮すると、平成23年大法廷判決の言渡しから平成26年選挙までの国会における是正の実現に向けた取組は、立法裁量権の行使として相当なものでなかったということはできず、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえないと判示した。 (5) 平成25年改正法の成立の前後を通じて、国会においては、今後の人口異- 6 - 動によっても憲法の投票価値の平等の要求に反する状態とならないようにするための制度の見直し等について検討が続けられ、平成26年9月以降、有識者により構成される衆議院議長の諮問機関として設置された「衆議院選挙制度に関する調査会」において調査、検討等が行われた。 上記調査会は、平成28年1月14日、衆議院議長に対し、答申を提出し た。同答申は、衆議院議員の定数を10削減して465人(小選挙区選出議員の定数につき6削減して289人、比例代表選出議員の定数につき4削減して176人)とする案が考えられるとした上、投票価値の較差の是正については、小選挙区選挙における各都道府県への議席配分方式が満たすべき条件として、比例性のある配分方式に基づいて配分すること、選挙区間の投票 価値の較差を小さくするために各都道府県間の投票価値の較差をできるだけ小さくすること、各都道府県の配分議席の増減変動が小さいこと、一定程度将来にわたっても有効に機能し得る方式であることを挙げ、これらの条件に照らして検討した結果として、各都道府県への議席配分をいわゆるアダムズ方式(各都道府県の人口を一定の数値で除し、それぞれの商の整数に小数 点以下を切り上げて得られた数の合計数が小選挙区選挙の定数と一致するようにする方式)により行うものとした。そして、同答申は、各 式(各都道府県の人口を一定の数値で除し、それぞれの商の整数に小数 点以下を切り上げて得られた数の合計数が小選挙区選挙の定数と一致するようにする方式)により行うものとした。そして、同答申は、各都道府県への議席配分の見直しについて、制度の安定性を勘案し、10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口に基づき行うものとし、その中間年に行われる国勢調査の結果、選挙区間の人口の較差が2倍以上の選挙区が生じた ときは、区画審において、各都道府県への議席配分の変更は行うことなく、上記較差が2倍未満となるように関係選挙区の区画の見直しを行うものとした。 (乙10の1ないし17、乙11の1、2)(6) 前記(5)の答申を受けて、平成28年5月20日、衆議院議員の定数を10 削減して465人(小選挙区選出議員の定数につき6削減して289人、比- 7 - 例代表選出議員の定数につき4削減して176人)とするとともに、各都道府県への定数配分の方式としてアダムズ方式を採用すること等を内容とする同年法律第49号(以下「平成28年改正法」という。)が成立した。 平成28年改正法による改正後の区画審設置法(以下「新区画審設置法」という。)4条は、区画審による改定案の勧告について、①1項において、平 成32年(令和2年)以降10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものと規定し、②2項において、1項の規定にかかわらず、統計法5条2項ただし書の規定により大規模国勢調査が行われた年から5年目に当たる年に行われる国勢調査(以下「簡易国勢調査」という。)の結果による各選挙区の日本国民の人口の うち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上となったときは、 年から5年目に当たる年に行われる国勢調査(以下「簡易国勢調査」という。)の結果による各選挙区の日本国民の人口の うち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上となったときは、当該国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に、これを行うものと規定する。そして、新区画審設置法3条は、区割基準について、①1項において、改定案の作成は、各選挙区の人口(最近の国勢調査の結果による日本国民の人口をいう。以下同じ。)の均衡を図り、 各選挙区の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることとし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないと規定するとともに、②2項において、同法4条1項の規定による勧告に係る改定案の作成に当たっては、各都道府県の区域内の選挙区の数は、各都道府県の人口を小選挙区基準 除数(その除数で各都道府県の人口を除して得た数(1未満の端数が生じたときは、これを1に切り上げるものとする。)の合計数が小選挙区選出議員の定数に相当する数と合致することとなる除数をいう。)で除して得た数(1未満の端数が生じたときは、これを1に切り上げるものとする。)とすると規定し(アダムズ方式)、③3項において、同法4条2項の規定による勧告に係る 改定案の作成に当たっては、各都道府県の区域内の小選挙区選出議員の選挙- 8 - 区の数は変更しないものと規定する(以下、この区割基準を含む上記各規定による選挙区の改定の仕組みを「新区割制度」という。)。 さらに、平成28年改正法は、アダムズ方式による各都道府県の選挙区数の変更が行われるまでの投票価値の較差是正のための措置として、附則2条1項において、小選挙区選出議員の 制度」という。)。 さらに、平成28年改正法は、アダムズ方式による各都道府県の選挙区数の変更が行われるまでの投票価値の較差是正のための措置として、附則2条1項において、小選挙区選出議員の定数を6削減することを前提に、新区画 審設置法4条の規定にかかわらず、区画審において平成27年に行われた簡易国勢調査(以下「平成27年国勢調査」という。)の結果に基づく改定案の作成及び勧告を行うこととした。そして、同附則2条2項及び3項は、上記改定案の作成について、新区画審設置法3条の規定にかかわらず、各都道府県の選挙区数につき、選挙区数の変更の影響を受ける都道府県を極力減らす ことによって選挙制度の安定性を確保する観点から、いわゆる0増6減の措置(平成27年国勢調査の結果に基づき、アダムズ方式により得られる選挙区数が改正前の選挙区数より少ない都道府県のうち、当該都道府県の人口を同方式により得られる選挙区数で除して得た数が少ない順から6都道府県の選挙区数を1ずつ減じ、それ以外の都道府県は改正前の選挙区数を維持す る措置をいう。)を講じた上で、平成27年国勢調査の結果に基づく選挙区間の人口の較差が2倍未満となるようにし、かつ、次回の大規模国勢調査が実施される平成32年(令和2年)の見込人口に基づく選挙区間の人口の較差が2倍未満であることを基本とするとともに、各選挙区の平成27年国勢調査の結果による人口及び平成32年(令和2年)の見込人口の均衡を図り、 行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行うこととした。 区画審は、平成29年4月19日、内閣総理大臣に対し、0増6減の措置を講ずることを前提に、19都道府県の97選挙区において区割りを改めることを内容とする改定案の勧告を行った。これを受けて、同年6月 区画審は、平成29年4月19日、内閣総理大臣に対し、0増6減の措置を講ずることを前提に、19都道府県の97選挙区において区割りを改めることを内容とする改定案の勧告を行った。これを受けて、同年6月9日、同年法律第58号(以下「平成29年改正法」という。)が成立し、同法による 改正後の平成28年改正法によって区割規定が改正された(以下、同改正後- 9 - (令和4年法律第89号(以下「令和4年改正法」という。)による改正前)の区割規定の定める選挙区割りを「前回選挙区割り」という。)。 (乙16の1、2)(7) 平成29年9月28日に衆議院が解散され、同年10月22日、前回選挙区割りの下で衆議院議員総選挙(以下「平成29年選挙」という。)が行われ た。平成29年選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙区(東京都第13区)との間で1対1.979であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は存在しなかった。(乙4の4)最高裁平成30年(行ツ)第153号同年12月19日大法廷判決・民集 72巻6号1240頁(以下「平成30年大法廷判決」という。)は、平成29年選挙当時の前回選挙区割りについて、各都道府県への定数配分を人口に比例した方式の一つであるアダムズ方式により行うことによって選挙区間の投票価値の較差を相当程度縮小させその状態が安定的に持続するよう立法措置を講じた上で、同方式による定数配分がされるまでの較差是正の措置 として0増6減の措置や選挙区割りの改定を行うことにより、選挙区間の選挙人数等の最大較差を縮小させたものであり、投票価値の平等を確保するという要請に応えつつ、選挙制度の安定性を確保する観点から漸 として0増6減の措置や選挙区割りの改定を行うことにより、選挙区間の選挙人数等の最大較差を縮小させたものであり、投票価値の平等を確保するという要請に応えつつ、選挙制度の安定性を確保する観点から漸進的な是正を図ったものと評価することができるとした。そして、平成30年大法廷判決は、平成29年改正法までの立法措置の内容やその結果縮小した較差の状況 を考慮すると、平成29年選挙において、1人別枠方式を含む旧区割基準に基づいて配分された定数に変更がなくこれとアダムズ方式により各都道府県の定数配分をした場合に配分されることとなる定数を異にする都道府県が存在していることをもって前回選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反するということはできず、平成29年選挙当時には新区画審設置法3 条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたということができ- 10 - るから、平成28年改正法及び平成29年改正法による選挙区割りの改定等は、国会の裁量権の行使として合理性を有するというべきであり、平成27年大法廷判決が平成26年選挙当時の選挙区割りについて判示した憲法の投票価値の平等の要求に反する状態は、平成29年改正法による改正後の平成28年改正法によって解消されたものと評価することができるとし、平成 29年選挙当時において前回選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできないと判示した。 (8) 令和3年10月14日に衆議院が解散され、同月31日、前回選挙区割りの下で衆議院議員総選挙(以下「令和3年選挙」という。)が行われた。前回選挙区割りの下では、令和2年に行われた大規模国勢調査の結果によれば選 挙区間の人口の最大較差は1対2.096となり、令和3年選挙当日における選挙区間の選挙人数の 」という。)が行われた。前回選挙区割りの下では、令和2年に行われた大規模国勢調査の結果によれば選 挙区間の人口の最大較差は1対2.096となり、令和3年選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙区(東京都第13区)との間で1対2.079であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は29選挙区であった。(乙4の5、乙28の2) 最高裁令和4年(行ツ)第130号同5年1月25日大法廷判決・民集77巻1号1頁(以下「令和5年大法廷判決」という。)は、新区割制度は、選挙区の改定をしてもその後の人口異動により選挙区間の投票価値の較差が拡大し得ることを当然の前提としつつ、選挙制度の安定性も考慮して、10年ごとに各都道府県への定数配分をアダムズ方式により行うこと等によっ てこれを是正することとしているのであり、新区割制度と一体的な関係にある前回選挙区割りの下で拡大した較差も、新区割制度の枠組みの中で是正されることが予定されているということができるとした。そして、このような制度に合理性が認められることは平成30年大法廷判決が判示するとおりであり、上記のような前回選挙区割りの下で較差が拡大したとしても、当該 較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によるものと- 11 - いうべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情がない限り、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至ったものということはできないとした上で、令和3年選挙当時における選挙区間の投票価値の較差は、自然的な人口異動以外の要因によって拡大したものというべき事情はうかがわれないし、その程度も著しいものと ったものということはできないとした上で、令和3年選挙当時における選挙区間の投票価値の較差は、自然的な人口異動以外の要因によって拡大したものというべき事情はうかがわれないし、その程度も著しいものと はいえないから、上記の較差の拡大をもって、前回選挙区割りが令和3年選挙当時において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたものということはできないと判示した。 (9) 令和3年選挙に先立つ令和3年6月25日に令和2年実施の大規模国勢調査の結果(速報値)が官報で公示されたことを受け、区画審は、令和3年7 月2日から区割改定案に係る審議を開始し、区割改定案(以下「本件区割改定案」という。)を取りまとめ、令和4年6月16日、内閣総理大臣に対し、10増10減の措置を講ずることを前提に、25都道府県の合計140の選挙区において区割りを改めることを内容とする本件区割改定案の勧告を行った。(乙2、26の1、2、乙27の1、乙28の1) これを受けて、令和4年11月18日、令和4年改正法が成立し、同法によって区割規定が改正された(以下、同改正後の区割規定を「本件区割規定」といい、本件区割規定の定める選挙区割りを「本件選挙区割り」という。)。 同改正の結果、令和2年に行われた大規模国勢調査の結果に基づく選挙区間の人口の較差は、人口の最も少ない選挙区(鳥取県第2区)と最も多い選挙 区(福岡県第2区)との間で1対1.999となった。(甲19、乙2、26の1)(10) 令和6年10月9日に衆議院が解散され、同月27日、本件選挙区割りの下で本件選挙が行われた。本件選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙区(北海 道第3区)との間で1対2.059であり、選挙 割りの下で本件選挙が行われた。本件選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙区(北海 道第3区)との間で1対2.059であり、選挙人数が最も少ない選挙区と- 12 - 比べて較差が2倍以上となっている選挙区は10選挙区であった。(乙3)なお、原告らは、本件選挙当日における選挙人数の最大較差は、1対2. 06であった旨主張しており、総務省が発表した令和6年10月14日時点の選挙人名簿登録者数に基づき試算すると、同日時点の選挙区間における最大較差が2.06倍であったことは、当事者間に争いがない。 2 争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は、本件選挙時における本件区割規定及びこれに基づく本件選挙区割りの憲法適合性であり、争点に関する当事者の主張は、以下のとおりである。 (1) 原告らの主張 ア以下のとおり、本件区割規定及びこれに基づく本件選挙区割りは、憲法14条等や、新区画審設置法3条1項、4条2項に違反するものであり、これに基づいて行われた本件選挙は、憲法に違反して無効である。 (ア) 平成28年改正法によると、区画審は、本件区割改定案を作成するに当たり、勧告の日である令和4年6月16日以降、令和7年に実施され る簡易国勢調査までの期間を通じて、同年の見込人口を統計上合理的に試算した上で、選挙区間の最大較差が2倍以上とならないようにしなければならない(新区画審設置法3条1項、4条2項)。このことは、平成28年改正法の附則2条3項の規定や、平成30年大法廷判決や令和5年大法廷判決の判示内容からも明らかである。 しかしながら、区画審は、平成29年4月に勧告した改定案(選挙区間の最大較差は1対1.979)よりも 条3項の規定や、平成30年大法廷判決や令和5年大法廷判決の判示内容からも明らかである。 しかしながら、区画審は、平成29年4月に勧告した改定案(選挙区間の最大較差は1対1.979)よりも最大較差の面で劣後する、選挙区間の最大人口較差が1対1.999という2倍未満ぎりぎりの内容の本件区割改定案の勧告を行ったために、これに基づく区割規定の改正がされ(本件区割規定)、本件選挙区割りとなった結果、本件選挙日におけ る選挙区間の最大較差は1対2.06となった。 - 13 - (イ) 令和4年1月時点の住民基本台帳人口に基づく選挙区間の最大較差は1対2.034と2倍以上になっていたところ、区画審は、このことを認識した上で、又は当該認識を怠って、同年6月16日、上記のとおり最大較差をぎりぎりの数値である1対1.999とする本件区割改定案の勧告を行った。 (ウ) 我が国においては、令和2年から令和22年までの間、東京都以外の46道府県の人口が一貫して減少し、令和22年から令和32年までの間、全ての都道府県の人口が一貫して減少すると推計されている。その結果、本件選挙区割りにおける選挙区間の最大較差は、遅くとも令和6年1月から令和32年までの間、2倍以上であり続けるであろうと統計 上合理的に推察される。 イ仮に、前記アの主張が認められないとしても、以下のとおり、本件選挙区割り及びこれに基づく本件選挙は、平成30年大法廷判決の判断基準に照らし違憲状態であり、かつ「合理的期間」を徒過しているので憲法違反である。 (ア) 平成30年大法廷判決は、次回の大規模国勢調査が行われる平成32年(令和2年)までの5年間を通じて選挙区間の人口の較差が2倍未満となるよう前回選挙区割りが定められ、これにより平成 (ア) 平成30年大法廷判決は、次回の大規模国勢調査が行われる平成32年(令和2年)までの5年間を通じて選挙区間の人口の較差が2倍未満となるよう前回選挙区割りが定められ、これにより平成29年選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差が縮小したことを踏まえ、平成29年改正法までの立法措置の内容やその結果縮小した較差の状況を 考慮すると、1人別枠方式を含む旧区割基準に基づいて配分された定数に変更がなくこれとアダムズ方式により各都道府県の定数配分をした場合に配分されることとなる定数を異にする都道府県が存在していることをもって前回選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反するということはできず、平成29年選挙当時には新区画審設置法3条1項 の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたということができる- 14 - と評価して、令和29年選挙は違憲状態ではない旨判示した(令和5年大法廷判決参照)。 (イ) 前記ア(イ)(ウ)と同じ。 (ウ) 本件選挙区割り又は本件選挙は、本件選挙当時における選挙区間の最大較差が1対2.06(2倍以上)であるので、平成30年大法廷判決 の判断基準に照らし、新区画審設置法3条1項、4条2項の趣旨に沿った選挙制度といえず、違憲状態である。 (エ) 区画審及び国会は、本件選挙当日までの間に、少なくとも選挙区間の最大較差を2倍未満にするための取組みを具体的に行っていないことから、「合理的期間」は徒過したものといえるので違憲無効である。 ウ本件選挙は、憲法56条2項、1条、前文1項1文前段及び後段、43条1項により憲法上要求されている人口比例選挙に反し、無効である。 (2) 被告らの主張ア衆議院議員総選挙に関する選挙無効訴訟におけ 、憲法56条2項、1条、前文1項1文前段及び後段、43条1項により憲法上要求されている人口比例選挙に反し、無効である。 (2) 被告らの主張ア衆議院議員総選挙に関する選挙無効訴訟における区割規定及びそれに基づく選挙区割りの合憲性の判断枠組みについて 憲法は、投票価値の平等を要求しているが、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。 そのため、国会において小選挙区制度における具体的な選挙区割りや、 その前提となる区割規定を定めるに当たっては、投票価値の平等を最も重要かつ基本的な基準としつつも、較差という客観的かつ形式的な数値だけでなく、当該較差の数値の背後にある選挙制度の仕組みや、当該較差を生じさせる要因等も含めて種々の政策的考慮要素を総合的に考慮した上で、国政遂行のための民意の的確な反映の実現と、投票価値の平等の要請との 調和を図ることが求められるが、選挙制度の仕組みの決定については国会- 15 - の広範な裁量に委ねられていることから、これらの調和が保たれる限り、当該選挙制度の仕組みを決定したことが、国会の合理的な裁量の範囲を超えるということにはならないというべきである。 したがって、選挙制度の憲法適合性は、以上のような国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されるこ とになる。すなわち、国会が選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが、憲法の投票価値の平等の要求に反するため、国会に認められる裁量権を考慮してもなおその限界を超えており、これを是認することができない場合に、初めてこれが憲法に違反することになると解すべき たところが、憲法の投票価値の平等の要求に反するため、国会に認められる裁量権を考慮してもなおその限界を超えており、これを是認することができない場合に、初めてこれが憲法に違反することになると解すべきである。 イ本件選挙時において、本件区割規定の定める本件選挙区割りは、憲法の 投票価値の平等の要求に反する状態には至っていない。 (ア) 前記アの判断枠組みの下で、本件区割規定の定める本件選挙区割りが、違憲状態に至っているか否かについて見ると、新区割制度は、投票価値の平等の要請を、国会が正当に考慮することができる他の政策目的ないし理由との関連において調和的に実現させるとともに、これを安定的に 継続させることのできるものであるから、合理的なものであるということができる。また、新区割制度の整備は、平成23年から平成27年までの各大法廷判決が国会に対して求めてきた立法措置の内容に適合するものであって、新区割制度が合理性を有することは、平成30年大法廷判決及び令和5年大法廷判決も肯定しているところである。 このように合理性の認められる新区割制度により改定された選挙区割りについては、原則として憲法の投票価値の平等の要求に反するものとはいえず、選挙区間の較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によるものというべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情があるときに 初めて憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至ったものという- 16 - べきである。 しかしながら、新区割制度により改定された本件選挙区割りについて、上記のような事情があるということはできない。 (イ) 原告らは、新区画審設置法3条1項及び4条2項 きである。 しかしながら、新区割制度により改定された本件選挙区割りについて、上記のような事情があるということはできない。 (イ) 原告らは、新区画審設置法3条1項及び4条2項が、令和7年簡易国勢調査までの期間を通じて選挙区間の最大較差が2倍以上とならない ような選挙区割りの改定案の作成を求めていると主張する。 しかしながら、新区画審設置法3条1項は、均衡を図るべき各選挙区の人口について、直前の大規模国勢調査の結果による日本国民の人口であることを明記する一方、その後の人口動態の変動そのものについては何ら規定しておらず、また、同法4条2項は、同条1項にいう大規模国 勢調査が行われた年から5年目に当たる年に実施された簡易国勢調査の結果を踏まえて審議会が行うべき勧告について規定したもので、同項の大規模国勢調査から同条2項の将来の簡易国勢調査までの期間の人口動態について何ら規定していないから、原告ら主張にかかる各規定は、いずれも、大規模国勢調査から簡易国勢調査までの期間の人口動態につ いて考慮しなければならないことを規定したものではない。 (ウ) したがって、本件区割規定の定める本件選挙区割りが、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたということはできない。 ウ仮に違憲状態にあったとの評価をするとしても、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえない。 令和5年大法廷判決は、令和3年選挙当時の前回選挙区割りについて憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったとはいえない旨判断している。本件選挙は、令和5年大法廷判決後に初めて行われた衆議院議員総選挙であり、令和3年選挙施行後には、較差の是正のために令和4年改正が実施されていることも考 する状態にあったとはいえない旨判断している。本件選挙は、令和5年大法廷判決後に初めて行われた衆議院議員総選挙であり、令和3年選挙施行後には、較差の是正のために令和4年改正が実施されていることも考慮すれば、仮に何らかの理由により本件区割規 定の定める本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に- 17 - 至っていると判断されるとしても、国会において、そのことを認識すべき契機が存在したとはいえず、その状態を認識し得ない状況であったことは明らかである。 したがって、仮に本件選挙区割りが違憲状態に至っていたとしても、国会が、憲法上要求される合理的期間にその是正をしなかったということは できない。 第3 当裁判所の判断 1 法の下の平等を保障した憲法14条1項の規定は、国会の両議院の議員を選挙する国民固有の権利につき、選挙人資格における差別の禁止にとどまらず(44条ただし書)、選挙権の内容の平等、換言すれば、議員の選出における各 選挙人の投票の有する影響力の平等、すなわち投票価値の平等をも要求するものと解すべきである。 他方、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであるところ、国会の両議院の議員の選挙につ いては、憲法上、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ(43条2項、47条)、選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められている。 衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用される場合には、選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定するに 際して、憲法上、議員1人 認められている。 衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用される場合には、選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定するに 際して、憲法上、議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべきであるが、それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮することが許容されているものと解されるのであって、具体的な選挙区を定めるに当たっては、都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを基本的な単位と して、地域の面積、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況などの諸要素- 18 - を考慮しつつ、国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに、投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められているところである。したがって、このような選挙制度の合憲性は、これらの諸事情を総合的に考慮した上でなお、国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることになり、国会がこのような選挙制度の 仕組みについて具体的に定めたところが、上記のような憲法上の要請に反するため、上記の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており、これを是認することができない場合に、初めてこれが憲法に違反することになるものと解すべきである。 (最高裁昭和49年(行ツ)第75号同51年4月14日大法廷判決・民集3 0巻3号223頁、最高裁昭和56年(行ツ)第57号同58年11月7日大法廷判決・民集37巻9号1243頁、最高裁昭和59年(行ツ)第339号同60年7月17日大法廷判決・民集39巻5号1100頁、最高裁平成3年(行ツ)第111号同5年1月20日大法廷判決・民集47巻1号67頁、最 7巻9号1243頁、最高裁昭和59年(行ツ)第339号同60年7月17日大法廷判決・民集39巻5号1100頁、最高裁平成3年(行ツ)第111号同5年1月20日大法廷判決・民集47巻1号67頁、最高裁平成11年(行ツ)第7号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号 1441頁、最高裁平成11年(行ツ)第35号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1704頁、最高裁平成18年(行ツ)第176号同19年6月13日大法廷判決・民集61巻4号1617頁、平成23年大法廷判決、平成25年大法廷判決、平成27年大法廷判決、平成30年大法廷判決及び令和5年大法廷判決参照) 2 上記の見地に立って、本件選挙当時の本件区割規定及びこれに基づく本件選挙区割りの憲法適合性について検討する。 (1)ア国会において、今後の人口異動によっても憲法の投票価値の平等の要求に反する状態とならないようにするための制度の見直し等について、衆議院議長の諮問機関として設置された「衆議院選挙制度に関する調査会」等 において調査、検討等が行われ、同調査会による答申を受けて、各都道府- 19 - 県への定数配分の方式としてアダムズ方式を採用すること等を内容とする平成28年改正法が成立し、同法により区画審設置法が改正され(新区画審設置法)、選挙区の改定の仕組みとして新区割制度が設けられたことは、前提事実(5)(6)記載のとおりである。この新区割制度は、投票価値の較差を是正するための新たな議席配分として、アダムズ方式による各都道府県 への定数配分を平成32年(令和2年)以降10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づいて行うこととし、その5年後に行われる簡易国勢調査の結果に基づく選挙区間の人口の較差が2倍以上となったときは同較差が2倍未満と 32年(令和2年)以降10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づいて行うこととし、その5年後に行われる簡易国勢調査の結果に基づく選挙区間の人口の較差が2倍以上となったときは同較差が2倍未満となるように各都道府県内の選挙区割りの改定を行うことを定めるところ、選挙区間の投票価値の較差を相当程度縮小させ、その状態 が安定的に持続するようにするものであって、選挙区の改定をしてもその後の人口異動により選挙区間の投票価値の較差が拡大し得ることを当然の前提としつつ、選挙制度の安定性も考慮して、10年ごとに各都道府県への定数配分をアダムズ方式により行うこと等によってこれを是正することとしているのであり、新区割制度と一体的な関係にある選挙区割りの下で 拡大した較差も、新区割制度の枠組みの中で是正されることが予定されているということができる。かかる新区割制度は、投票価値の平等を最も重要かつ基本的な基準としつつ、国会において考慮することができる諸要素を踏まえた上で定められたものということができ、国会の裁量権の行使として合理性を有するものと認められる。また、上記のとおり、新区画審設 置法は、平成37年(令和7年)以降の簡易国勢調査の結果に基づく最大較差が2倍以上になったときは、区画審が較差是正のために選挙区割りの改定案の作成及び勧告を行うこと等を定めていることに加え、平成28年改正法の施行後も、全国民を代表する国会議員を選出するための望ましい選挙制度の在り方については、不断の見直しが行われるものとすることを 定めており(平成28年改正法附則5条)、投票価値の平等を安定的に持続- 20 - させ、最大較差が2倍を大きく超える較差を生じさせず、かつ、最大較差が2倍以上になることが恒常化することのないように、これを是正する方 法附則5条)、投票価値の平等を安定的に持続- 20 - させ、最大較差が2倍を大きく超える較差を生じさせず、かつ、最大較差が2倍以上になることが恒常化することのないように、これを是正する方途を講じ、選挙制度の安定性の確保を図っているものと評価することができる。 したがって、上記のような新区割制度と一体的な関係にある選挙区割り の下で較差が拡大したとしても、当該較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によるものというべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情がない限り、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至ったものということはできないというべきである。 イ本件選挙は、令和6年10月27日、本件選挙区割りの下で行われたものであるところ、本件選挙区割りにおける選挙区間の人口の較差は、令和2年に行われた大規模国勢調査の結果では人口の最も少ない選挙区(鳥取県第2区)と最も多い選挙区(福岡県第2区)との間で1対1.999と2倍未満であったのに対し、本件選挙当日における選挙区間の選挙人数の 較差は、選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙区(北海道第3区)との間で1対2.059となっており、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は10選挙区あった。(前提事実(9)(10))しかしながら、本件選挙当日における選挙区間の較差が、自然的な人口 異動以外の要因によって拡大したものというべき事情はうかがわれないし、上記のとおり、選挙人数の較差が2倍以上となっている選挙区が複数存したとはいえ、その最大較差の程度が著しいとはいえないことにも鑑みると、当該較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな いし、上記のとおり、選挙人数の較差が2倍以上となっている選挙区が複数存したとはいえ、その最大較差の程度が著しいとはいえないことにも鑑みると、当該較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によるものというべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほ ど著しいものであるといった事情は認められないから、憲法の投票価値の- 21 - 平等の要求に反する状態に至ったものということはできないと解すべきである。 (2)ア原告らは、区画審が、令和4年1月における住民基本台帳人口に基づく選挙区間の最大較差が2.034倍と2倍以上になっていたことを認識した上で、又は当該認識を怠って、本件区割改定案の勧告を行ったと主張す る。 しかしながら、新区画審設置法3条1項は、区画審が作成し、内閣総理大臣に勧告すべきものとする改定案(同法2条)について、その作成に当たって均衡を図るべき各選挙区の人口について、最近の国勢調査の結果による日本国民の人口とし、かつ、同国勢調査は、統計法5条2項の規定に より行われる国勢調査に限るとしており、また、新区画審設置法4条1 項は、区画審による勧告は、大規模国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1 年以内に行う旨規定するところ、本件区割改定案の勧告は令和2年実施の大規模国勢調査(統計法5条2項本文の規定により行われる国勢調査)に基づくものであったといえる(前提事実(9))のに対 し、原告ら指摘の住民基本台帳に基づく人口は、新区画審設置法が求める国勢調査ではない。このことに加え、上記のように選挙区の改定をしてもその後の人口異動により選挙区間の投票価値の較差が拡大し得ることを当然の前提としつつ、選挙制度の安定性も考慮して、大規模国勢調査や簡易国勢調査の結 。このことに加え、上記のように選挙区の改定をしてもその後の人口異動により選挙区間の投票価値の較差が拡大し得ることを当然の前提としつつ、選挙制度の安定性も考慮して、大規模国勢調査や簡易国勢調査の結果を踏まえて較差の是正を図る新区割制度に合理性が認めら れること(前記(1)ア)や上記較差の程度等にも鑑みると、区画審が本件区割改定案を作成するにあたって、原告ら指摘のような住民基本台帳人口に基づく選挙区間の較差を認識していたか否か、あるいは認識し得るものであったか否かにかかわらず、区画審による本件区割改定案の勧告が新区画審設置法の規定に悖るものということはできず、この点についての原告ら の主張をもって、本件区割規定及びこれに基づく本件選挙区割りが憲法に- 22 - 違反するということはできない。 イ原告らは、新区画審設置法3条1項、4条2項が、本件区割改定案について、令和7年簡易国勢調査までの期間を通じて、選挙区間の最大人口較差が2倍以上とならないようにすることを求めていると主張する。 しかしながら、新区割制度は、選挙区の改定をしてもその後の人口異動 により選挙区間の投票価値の較差が拡大し得ることを当然の前提としつつ、選挙制度の安定性も考慮して、大規模国勢調査や簡易国勢調査の結果を踏まえて較差の是正を図るものであって、かかる新区割制度が合理性を有するものといえることは上記説示のとおりであるところ、新区画審設置法3条1項や4条2項をみても、区割改定案について、最近の国勢調査からそ の次の国勢調査(本件区割改定案についていえば、令和2年の大規模国勢調査から令和7年の簡易国勢調査)までの全期間について、選挙区間の最大較差が2倍以上とならないことを求めているものとは認められない。 この点、 割改定案についていえば、令和2年の大規模国勢調査から令和7年の簡易国勢調査)までの全期間について、選挙区間の最大較差が2倍以上とならないことを求めているものとは認められない。 この点、原告らは、平成32年(令和2年)見込人口の較差が2倍未満であることを基本とすることとする平成28年改正法の附則2条3項1号 ロを指摘するが、同項柱書において「第1項の規定による平成27年の国勢調査の結果に基づく改定案の作成は、新選挙区画定審議会法第3条の規定にかかわらず、次に掲げる基準によって行わなければならない。」と規定されているとおり、同号ロは、新区割制度による選挙区割りの改定案の作成が平成32年(令和2年)の大規模国勢調査の結果に基づくものからと され、平成27年の簡易国勢調査の結果に基づく選挙区割りの改定案の作成が、1人別枠方式が完全に解消されることとなる新区割制度導入前の緊急是正措置として行われることとなるため、選挙区間の較差について特に配慮し、これを補完する趣旨で規定されたものであると解すべきであるから、この点についての原告らの主張には理由がない。 ウ原告らは、本件選挙が、憲法56条2項、1条、前文1項1文前段及び- 23 - 後段、43条1項により、憲法の要求する人口比例選挙に反して無効であること等を主張するが、上記説示したところに照らせば、憲法のこれらの規定から原告らの主張するようなほぼ完全な人口比例選挙の原則が当然に導かれると解することはできず、採用することができない。 第4 結論 以上のとおりであるから、本件区割規定及びこれに基づく本件選挙区割りは、憲法14条1項等や、新区画審設置法3条1項、4条2項に違反するものということはできず、したがって、本件各小選挙区選挙が憲法に違反して とおりであるから、本件区割規定及びこれに基づく本件選挙区割りは、憲法14条1項等や、新区画審設置法3条1項、4条2項に違反するものということはできず、したがって、本件各小選挙区選挙が憲法に違反して無効ということはできないから、原告らの請求はいずれも理由がない。 よって、原告らの請求をいずれも棄却することとして、主文のとおり判決す る。 大阪高等裁判所第7民事部 裁判長裁判官田中健治 裁判官上田卓哉 裁判官柴田憲史

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