平成17年(ワ)第1874号損害賠償請求事件判決主文 被告は,原告Aに対し,5881万1252円及びうち5381万1252円に対する平成14年10月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告B及び原告Cに対し,それぞれ165万円及びうち150万円に対する平成14年10月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用はこれを2分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。 この判決は,主文第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求 被告は,原告Aに対し,1億962万2505円及びうち1億462万2505円に対する平成14年10月16日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告B及び原告Cに対し,それぞれ1600万円及びうち1500万円に対する平成14年10月16日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要(以下,特に断りのない限り,平成14年中の出来事については月日のみで表示する)。 本件は,被告の開設するD医院(以下「被告医院」という)において出生。 した原告Aが,敗血症及び細菌性髄膜炎を発症した後,水頭症,てんかん及び,,知的障害等の後遺障害を遺し身体障害者第1級の状態となったことについて原告らが,原告Aが発熱した際,被告医院の医師が適切な検査,処置を講じなかったことが原因であると主張して,被告に対し,不法行為(使用者責任)に基づき,損害賠償及び不法行為の日である平成14年10月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 前提事実以下の事実は当事者間に争 (使用者責任)に基づき,損害賠償及び不法行為の日である平成14年10月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 前提事実以下の事実は当事者間に争いがないか,かっこ内摘示の証拠及び弁論の全趣旨により,容易に認めることができる。 (1) 当事者ア原告Aは,10月14日生まれの男子である。 原告Bは原告Aの父であり,原告Cは原告Aの母である。 イ被告は,被告医院を開設し,産婦人科の医療行為の業務を行っている。 被告医院に常勤する医師は被告代表者理事長E医師一人である(乙A5号証。 )(2) 事実経過ア原告Aの出生に至るまで原告Cは,妊娠当初から被告医院において診療を受けていたが,陣痛が始まったことから,10月12日午前1時ころ被告医院に入院した。 原告Cは,同月13日午後8時45分ころ破水し,羊水の混濁は認められなかった(乙A1号証10,13頁。 )そして,原告Cは,同月14日午前1時3分ころ,原告Aを正常分娩にて出産した。原告Aの出生時の体重は3068gであり,出生から1分後及び5分後のアプガースコアはともに9点であった(乙A1号証4頁。 )イ原告Aの新生児室における状況原告Aは出生後新生児室に移され,原告B及び原告Cは,新生児室にいる原告Aを廊下からガラス越しに見ることができたが,直接触れることはできなかった。 ウ10月15日原告Cは10月15日午後1時30分ころ病室を移動し,その際,原告Aも新生児室から原告Cの病室へ移され,以後,原告Cと原告Aは同室となった。 原告Cは,原告Aが原告Cの病室へ移されたとき,被告医院の看護師から,原告Aの検温を毎日午前7時に実施するように指示された。 E医師は,午後4時30分ころ,原告C及び原告Aのいる病室を訪れたが,原告Aの診察は行わな が原告Cの病室へ移されたとき,被告医院の看護師から,原告Aの検温を毎日午前7時に実施するように指示された。 E医師は,午後4時30分ころ,原告C及び原告Aのいる病室を訪れたが,原告Aの診察は行わなかった。 同日における原告Aの哺乳量は,午前1時,同4時,同7時,同10時に各10m,午後1時,同4時,同7時,同10時に各20mであったℓℓ(乙A1号証11頁。 )エ10月16日原告Cは,10月16日午前7時,被告医院の看護師の指示に従い原告Aの体温を測ったところ,38度2分であった。そこで,被告医院の看護師に報告したところ,授乳後に検温し直すように指示された。 原告Cは,哺乳後の同日午前7時20分ころ,原告Aを再度検温したところ,体温は37度1分であった。 原告Cが原告Aの体温が下がったことを被告医院の看護師に伝えると,同看護師は「やはり下がったのね」と言ったのみで,その後のことについて指示をしなかった。 同日における原告Aの哺乳量は,午前1時,同4時に各30m,午前ℓ7時過ぎに20m,午前10時,午後1時,同4時,同7時,同10時ℓに各30mであった(乙A1号証11頁。 ℓ)オ10月17日(ア) 原告Cは,10月17日午前1時ころ,原告Aのオムツを交換した際,同人の身体が熱かったため検温したところ,体温が38度6分であったので,ナースコールで伝えたところ,被告医院の看護師から,授乳後に再度検温するように指示された。 (イ) 原告Cは,原告Aに40m授乳した後,午前1時20分ころ,再度ℓ検温したところ,同人の体温が37度9分であったことから,その旨をナースコールで報告した。 被告医院の看護師は,原告Aをくるんでいた毛布を取って1時間後に再度検温するように指示したが,E医師に報告して診察を仰ぐことはしなかった。 (ウ) ったことから,その旨をナースコールで報告した。 被告医院の看護師は,原告Aをくるんでいた毛布を取って1時間後に再度検温するように指示したが,E医師に報告して診察を仰ぐことはしなかった。 (ウ) 原告Cは,上記指示に従いくるんでいた毛布を取って,午前2時3,,,0分ころ原告Aの検温をしたところ体温が38度であったことからナースコールでその旨報告した。 報告を受けた被告医院の看護師は,原告Aを病室からナースステーションへ移した。 (エ) E医師は,午前4時ころ,原告Aを診察し,被告医院の看護師に対し,経過を観察するように指示をした。 午前4時における原告Aの哺乳量は、30mであった(乙A1号証ℓ11頁。 )(オ) E医師は,午前6時30分ころ,再度原告Aを診察したところ,体温が38度6分あり,ちょっとした刺激に敏感に反応する状態であり,やや顔色が悪く,泣かせると赤くなった。 そこで,E医師はF病院のNICU(新生児集中治療室)に連絡し,原告Aの受け入れを依頼した。 (オ) 午前7時30分ころ,F病院から小児科医師が被告医院に来院し,原告Aは同医師とともにF病院へ搬送された。 カF病院での診療原告Aは,10月17日午前10時ころ,搬送先のF病院において,痙攣発作の症状を呈した。 髄液を採取するなど検査した結果,大腸菌を起因菌とする敗血症及び細(,,)。 菌性髄膜炎と診断された甲A1号証乙A2号証の1・4445頁,,原告Aは12月4日までF病院において入院治療を受けていたところ(,)。 後遺障害として水頭症を併発した甲A1号証乙A2号証の1・63頁キG病院への転院原告Aは,12月4日,F病院からG病院へ転院した(乙A3号証の1・2頁。 )原告Aは,G病院において,数回にわたる手術を受けたが,多胞性水頭症の 1号証乙A2号証の1・63頁キG病院への転院原告Aは,12月4日,F病院からG病院へ転院した(乙A3号証の1・2頁。 )原告Aは,G病院において,数回にわたる手術を受けたが,多胞性水頭症の障害が遺り,検査の結果,てんかんの波形が現れた(甲A3号証,乙A3号証の1・50頁。 )結局,原告Aは,G病院において,これ以上の治療は困難と診断され,平成17年9月20日,愛知県により,IQ35以下の重度(Aランク)(,)。 の知的障害が残存するものに該当すると認定された甲A6号証の12さらに,原告Aは,平成18年2月16日「両)遠視性乱視・弱視,,(外斜視」の後遺障害があると診断された(甲A7号証。 )(3) 新生児の敗血症・細菌性髄膜炎に関する医学的知見ア定義等(乙B3号証462頁)敗血症とは,菌血症(細菌が血液中に存在する状態)に重篤な全身症状を伴った細菌感染症をいう。 細菌性髄膜炎とは,血中の細菌が脳室の脈絡膜から髄膜腔に散布されて中枢神経に炎症を起こした状態を指す。 (,「」新生児の敗血症及び細菌性髄膜炎以下では両者を併せて敗血症等ということがある)の起因菌及び症状は共通している。 。 イ敗血症等の起因菌等(甲B2号証136頁,甲B3号証73頁,乙B1号証301頁,乙B2号証460頁)新生児期を中心に,生後3ヶ月まではGBS(B群溶連菌,膣部に存在する菌)及び大腸菌が主要起因菌である。 特に,生後72時間以内に発症する早発型感染では,GBS,大腸菌の頻度が高い。早発型の大部分は出生後48時間以内に急激に発症し,重篤で死亡率が高い。 ウ診断方法(甲B2号証137頁,甲B3号証78頁,乙B1号証302頁,乙B3号証462頁)新生児敗血症の診断は,<ア>妊娠・分娩歴を調べ,破水から分娩までに長時間を要した等,感染の 率が高い。 ウ診断方法(甲B2号証137頁,甲B3号証78頁,乙B1号証302頁,乙B3号証462頁)新生児敗血症の診断は,<ア>妊娠・分娩歴を調べ,破水から分娩までに長時間を要した等,感染のリスク因子があるか否かを知る,<イ>新生児の臨床症状から敗血症の罹患を疑う,<ウ>検査によって確認する,という3つの段階を踏む。 臨床症状としては,新生児では,重篤な髄膜炎であっても,発熱や髄膜刺激症状などの感染症特有の症状が認められることは少なく,多くは,何となく元気がない,皮膚色が何となく優れない,哺乳力低下,無呼吸,体温の不安定,嘔吐,黄疸,易刺激性といった非特異的な漠然とした症状しか呈しない。新生児髄膜炎では,約60%に発熱,哺乳力低下,嘔吐などがみられ,30~40%に痙攣がみられ,約50%に大泉門の膨隆がみられる。 CRP(C反応性タンパク)は,急性気管支炎,髄膜炎など体内に炎症があれば増加するので,炎症や組織破壊性病変に伴う病態の活動性を判断するために有用な指標であるといえ,特に,発熱や白血球数が炎症の指標になりにくい新生児期において有用性が高いとされる。そこで,炎症の有無を判断するためにCRP試験が実施されるが,敗血症等はCRPなどの炎症反応が出にくく,感染を疑って検査を行った場合でも異常を捉えることができない場合も多い(以上,甲B2号証137頁。 )エ治療及び後遺症(甲B3号証82頁,87頁)細菌性髄膜炎の治療で重要なことは,早期に診断し,早期に抗生剤の投与等の治療を開始することである。 後遺症として,水頭症,てんかん,硬膜下水腫,聴力障害,視力障害,精神発達遅滞,言語発達遅延,行動異常などがある。 本件の争点及び争点に対する当事者の主張(1) 検査及び転院義務違反の有無について(原告らの主張)ア新生児が38度か ,聴力障害,視力障害,精神発達遅滞,言語発達遅延,行動異常などがある。 本件の争点及び争点に対する当事者の主張(1) 検査及び転院義務違反の有無について(原告らの主張)ア新生児が38度から40度の高熱を発したとき,もしくは低体温や元気でないときなどの症状があるときは,敗血症や髄膜炎を発症したのではな,,,いかと疑い速やかに診察するとともに新生児集中治療室等に移動させ採血検査を実施し,CRP試験を実施すべきである。 そして,CRP試験の結果,体内に炎症があると認められれば,髄液検査などを実施するため,小児科医師のいる高次医療機関に転送し,治療を受けさせるべきである。 イ原告Cの陣痛が始まってから出産まで48時間が経過しており,これにより原告Aは強い侵襲を受けたといえ,産道に長い時間はまっていたといえる。 ウ原告Aは,10月14日,新生児室に置かれていたとき,右腕に引っかき傷があり,頻繁に両手を口・目・顔にもっていく仕草を見せ,他の新生児と比べ,泣き方が非常に長くやや異常さが認められた。 また,原告Aは,10月15日午後2時ころ,新生児室から移され,原告Cと同室になった際,ちょっとした物音に対しても過敏と思える反応を示し,すぐに泣き声を上げるという状態であった。 エそうすると,被告医院の医師は,原告Aが38度2分の熱を発していた10月16日午前7時の時点で,原告Aが敗血症や髄膜炎,あるいは他の病気を発症したのではないかと疑い,速やかに原告Aを診察すべきであった。 また,高熱の原因が体内の炎症によるものかどうかを調べるため,CRP試験を施行してCRP定性を測定すべきであった。 そして,CRP定性が陽性を呈すれば,更に髄液検査などを施行するため,小児科医師のいる高次医療機関に転送し,治療を受けさせるべきであった。 オした P試験を施行してCRP定性を測定すべきであった。 そして,CRP定性が陽性を呈すれば,更に髄液検査などを施行するため,小児科医師のいる高次医療機関に転送し,治療を受けさせるべきであった。 オしたがって,被告医院の医師は,原告Aが10月16日午前7時,高熱を発した時点で,速やかに診察しCRP試験を実施すべきであったにもかかわらず,原告Aを診察すること,CRP試験を実施することを怠り,その結果,原告Aを早期に小児科医師のいる高次医療機関に転送すべきであったのにこれを怠った過失があるものである。 カ仮に,10月16日午前7時の時点において被告医院の医師に過失が認められないとしても,原告Aが同月17日午前1時に38度6分,同1時20分に37度9分,同2時30分に38度の高熱を示していたにもかかわらず,被告医院の医師は,同4時まで原告Aを診察することなく経過観察とした以上,原告Aの診察・CRP試験の実施を怠り,その結果,原告Aを早期に小児科医師のいる高次医療機関に転送すべきであったのにこれを怠った過失があるといえる。 (被告の主張)ア原告Aは,10月16日午前7時ころ,38度2分の発熱があった。 被告医院の看護師は,原告Aに228gの体重減があったことから,脱水による発熱を疑った。20mの哺乳後再度検温すると,原告Aの体温ℓは37度1分に下がった。 同日午後5時ころ,被告医院の看護師が原告C及び原告Aのいる病室を訪れた際,午後4時の哺乳量が順調であったことを確認した。また,被告医院の看護師が原告Aの体に触れたところ熱感はなかった。 したがって,原告Aの10月16日午前7時ころの発熱は,脱水による,,。 ものであるといえるから被告医院は診察転送をしなかったものであるイ(ア) 被告医院の看護師は,同月17日午前2時30分ころ,原告Aに発 告Aの10月16日午前7時ころの発熱は,脱水による,,。 ものであるといえるから被告医院は診察転送をしなかったものであるイ(ア) 被告医院の看護師は,同月17日午前2時30分ころ,原告Aに発熱がみられたことから,原告Aをナースステーションへ移して、E医師に経過を報告し,同医師の指示によりアイスノンによる軽いクーリングや検温を行いつつ経過を観察した。 (イ) 原告Aは,同日午前4時ころ,ミルク30mを飲み,E医師が診察ℓしたところ,胸部に異常はなく,大泉門の膨隆もなく,元気さもあり,易刺激性もなかったため,経過観察を続けることとした。 (ウ) 同日午前6時30分,ナースステーションで原告Aの体温を測定すると38度6分と高熱を維持しており,発熱が続いている時間が長くなっていたことから,E医師は,F病院に原告Aの受け入れを依頼して転送した。 (エ) したがって,原告Aの転送に遅れはない。 (2) 因果関係(原告らの主張)原告Aに対する検査・転院が遅れたため,原告Aが敗血症等を発症し,脳室炎・脳腫瘍・水頭症・てんかんの後遺障害が残り,身体障害者第1級に該当する状態になったことは明らかである。 (被告の主張)新生児の感染症による敗血症及び髄膜炎については,発症後何時間以内に抗生剤投与等の治療をすれば,重大な後遺症を残さないといった時間はなく,治療の開始が早くても,起因菌が強力であったり,新生児が起因菌に対して弱い体質であったりすれば,重大な後遺症を残すものである。 仮に,E医師が10月17日午前2時30分又は午前4時の時点において,原告Aの転院を決断すべきであったとしても,それによる治療開始時間の差は最大4時間にすぎないから,結果に差は生じず,過失と原告Aの後遺障害との間には相当因果関係はない。 また,治療開始時間が少しでも早ければ,後 を決断すべきであったとしても,それによる治療開始時間の差は最大4時間にすぎないから,結果に差は生じず,過失と原告Aの後遺障害との間には相当因果関係はない。 また,治療開始時間が少しでも早ければ,後遺障害の程度が多少は軽くなったと考える余地があるとしても,新生児髄膜炎の死亡率は一般的に20%程度であり,40ないし50%の割合で重大な後遺障害が残るものであるから,因果関係は最大20%の限度で割合的に認める余地があるにすぎない。 (3) 損害(原告らの主張)原告らは,被告の不法行為により,次のとおりの損害を被った。 ア原告Aの損害合計1億962万2505円(ア) 逸失利益4193万4452円555万4600円(平成14年賃金センサスによる男子労働者全年齢平均年収)×1(労働能力喪失率100%)×7.5495(0歳時における18歳から67歳までの49年のライプニッツ係数)=4193万4452円(イ) 生涯の介護料3568万8053円5000円(1日あたりの介護料)×365×19.55509768(平均余命を78.32歳とした際のライプニッツ係数)=3568万8053円(ウ) 慰謝料2700万円(エ) 弁護士費用500万円イ原告B及び原告Cの損害各1600万円(ア) 慰謝料各1500万円原告B及び同Cは,被告の不法行為により原告Aに重度の障害を負わされ,生涯にわたってその事実と向き合い,原告Aを介助しなければならず,その肉体的精神的苦痛は筆舌に尽くしがたいものがある。このような場合,被告は民法711条の類推適用により死亡に比肩すべきものとして原告B及び原告Cの被った精神的苦痛に係る損害を賠償すべきであり,その額はそれぞれ1500万円を下らない。 (イ) 弁護士費用各100万円(被告の主張)原告らの主張は争う。 比肩すべきものとして原告B及び原告Cの被った精神的苦痛に係る損害を賠償すべきであり,その額はそれぞれ1500万円を下らない。 (イ) 弁護士費用各100万円(被告の主張)原告らの主張は争う。 第3当裁判所の判断 検査・転院義務違反の有無について(1) 検査・転院義務の有無の判断基準前記認定(第2の1(3))のとおり,新生児敗血症の診断は,妊娠・分娩歴を調べて,感染のリスク因子があるかどうかを知ったうえ,新生児の臨床症状から敗血症を疑うことに始まるから,まず原告Aの敗血症等の感染リスク因子を判断し,その後同人の臨床症状を検討したうえで,同人が敗血症等の感染症に罹患したのではないかと疑い,検査または転院を行うべき注意義務が認められるかを判断することとする。 なお,E医師尋問の結果によれば,被告医院ではCRP試験を実施することはできないことが認められるから,敗血症が疑われる場合には新生児を転院するしかなく,本件では転院義務のみが問題になる。 (2) 原告Aの敗血症等の感染リスク因子ア証拠(乙B2号証461頁,乙B4号証510頁)によれば,新生児敗,,,血症のリスク因子には次のとおり大リスク因子と小リスク因子があり大リスク因子が1個,または,小リスク因子が2個あれば,敗血症が発症する可能性があるので,新生児の臨床症状を見ながら,早期にCRP試験を含めた血液検査や血液培養を施行すべきであることが認められる。 〈大リスク因子〉①破水から分娩まで24時間を経過した前期破水②38度を超える分娩中の発熱③絨毛膜羊膜炎④1分間に160回を超える胎児頻脈の持続〈小リスク因子〉⑤破水から分娩まで12時間を経過した前期破水⑥37度5分を超える母体発熱⑦15000/㎕を超える母体白血球⑧低アプガースコア(出生後1分で 60回を超える胎児頻脈の持続〈小リスク因子〉⑤破水から分娩まで12時間を経過した前期破水⑥37度5分を超える母体発熱⑦15000/㎕を超える母体白血球⑧低アプガースコア(出生後1分で5点未満,出生後5分で7点未満)⑨1500g未満の低出生体重児⑩37週未満の早産⑪多胎⑫悪臭のある悪露⑬GBSの母体定着イところで,原告C及び原告Aに,上記の感染リスク因子があったことを認めるに足りる証拠はない。なお,陣痛開始から出産までに48時間を要したことが感染リスク因子に当たるとの原告らの主張は,上記認定の医学的知見に照らし採用できない。 ウしたがって,原告Aに,敗血症等の感染リスク因子は認められない。 (3) 原告Aの臨床症状次に,原告Aの臨床症状から,同人が敗血症等の感染症に罹患したことを疑うべき注意義務が認められるかを判断する。 ア10月14日及び15日(ア) 原告らは,<ア>原告Aは,10月14日,新生児室に置かれていたとき,右前腕に引っかき傷があり,頻繁に両手を口・目・顔にもっていく仕草を見せ,他の新生児と比べ,泣き方が非常に長くやや異常さが認められた,<イ>原告Aは,10月15日午後2時ころ,新生児室から移され,原告Cと同室になった際,ちょっとした物音に対しても過敏と思える反応を示し,すぐに泣き声を上げるという状態であったと主張し,原告Bの尋問の結果はこれに沿うものであるといえる。 (イ) 仮に,上記<ア>の事実が認められるとしても,新生児が両手を活発に動かして引っかき傷を創ることは異常とまでは言えず,また,新生児の泣き方に個人差があるのは明らかである。また,仮に,上記<イ>の事実が認められるとしても,新生児がちょっとした物音に驚き,泣き出すことも異常とまでは言えない。 さらに,これらの行動が敗血症等 生児の泣き方に個人差があるのは明らかである。また,仮に,上記<イ>の事実が認められるとしても,新生児がちょっとした物音に驚き,泣き出すことも異常とまでは言えない。 さらに,これらの行動が敗血症等の罹患を疑うべき臨床症状であると認めるに足りる証拠もない。 (ウ) 以上によれば,上記<ア>及び<イ>の事実が認められるとしても,これらが敗血症等を疑うべき臨床症状とは評価できず,その他,10月14日及び同月15日の時点において,原告Aに敗血症等の罹患を疑うべき臨床症状があったことを認めるに足りる証拠はない。 イ10月16日(ア) 原告Aは,上記認定のとおり,10月16日午前7時ころに38度2分の発熱があったところ,哺乳後の同7時20分ころに体温が37度1分に下がったことが認められる。 そこで,10月16日午前7時ころ,または同7時20分ころの各時点において,原告Aに敗血症等の罹患を疑うべき臨床症状が存在するかについて検討する。 (イ) ところで,証拠(甲B5号証5頁,乙B5号証118頁,乙B7号証143,153頁)によれば,新生児の体温上昇について,次の医学的知見が認められる。 新生児は,体表面積当たりの体重比が低いので,熱を喪失しやすいのと同様に,外環境の熱を容易に吸収してしまう。そのため,新生児は,環境温度,衣服の着せ過ぎなどで発熱することが多く,水分不足でも発熱し,発熱の主な原因はこれらである。そして,原因不明の発,,熱の中には敗血症や髄膜炎などの重症感染症によるものもあるので注意が必要である。注意すべき発熱の程度は,およそ38度以上である。 (ウ) 上記認定のとおり,新生児が高体温となる原因としては,敗血症等の感染症よりも,外環境因子や水分不足によることが多いところ,原告Aは,哺乳後に体温を測り直し,体温が38度2分から3 である。 (ウ) 上記認定のとおり,新生児が高体温となる原因としては,敗血症等の感染症よりも,外環境因子や水分不足によることが多いところ,原告Aは,哺乳後に体温を測り直し,体温が38度2分から37度1分へ下がったことが認められる。 仮に原告Aの発熱が敗血症等の感染症によるものであるとすれば,哺乳することによって,高体温とされる38度を相当程度下回る37度1分まで体温が下がることは考えがたい。だとすれば,この時点で,原告Aの発熱が,感染症を原因とするものであると疑うべき理由はないと判断するのが相当である。 (エ) この点について,原告らは,新生児が38度から40度の高熱を発したときは敗血症や髄膜炎を発症したのではないかと疑い,速やかに診察するとともに,新生児集中治療室等に移動させ,採血検査を実施し,CRP試験を実施すべきであると主張しH医師作成にかかる意見書甲,(A8号証)はこれに沿うものといえる。 しかし,同意見書は同医師の勤務する病院(小児科医もいる比較的規模の大きな病院)における高熱を発した新生児への一般的対応について記載したものに過ぎず,上記認定の新生児の発熱に関する医学的知見に照らせば,1回でも高熱が出れば直ちに採血検査をすべき(E医師尋問の結果によれば,被告医院では独自に血液検査を実施することはできないことが認められるから,被告医院の場合には転院措置をとらざるを得ない)であるとまではいえず,原告らの上記主張を直ちに採用するこ。 とはできない。 (オ) したがって,上記(ア)の発熱の事実は,敗血症等の感染症を疑うべき臨床症状とは評価できず,その他,10月16日午前7時または7時20分の時点において,原告Aに敗血症等を疑うべき臨床症状を認めるに足りる証拠はない。 ウ10月17日(ア) 原告Aは,上記認定のとおり,10 は評価できず,その他,10月16日午前7時または7時20分の時点において,原告Aに敗血症等を疑うべき臨床症状を認めるに足りる証拠はない。 ウ10月17日(ア) 原告Aは,上記認定のとおり,10月17日午前1時ころに38度6分の発熱があり,哺乳後の午前1時20分ころに37度9分の発熱があり,毛布を取った後に計り直した午前2時30分ころに38度の発熱があったことが認められる。 そこで,以下,上記の各時点において,原告Aに敗血症等の罹患を疑うべき臨床症状が存在するかどうかについて検討する。 (イ) 午前1時ころa原告Aは,前日16日午前7時ころに38度2分の発熱があり,17日午前1時ころに38度6分という38度を超える高熱が再び生じたものである。 bまず,17日午前1時ころの時点においても,発熱以外の敗血症等の臨床症状を認めるに足りる証拠はない。 また,新生児の発熱の主たる原因が外環境因子や水分不足であることを考慮すると,1回の発熱で直ちに敗血症等を疑うべきであるとまではいえない。 cしたがって,同時点の発熱の事実は,敗血症等を疑って転院義務を認めるに足りる臨床症状とは評価できず,その他,同時点において,これを認めるに足りる証拠はない。 (ウ) 午前1時20分ころa17日午前1時20分ころの時点においては,16日と同様に,哺乳後に再度検温がなされているところ,16日の場合と異なり,哺乳後の体温は高熱とされる38度とほぼ同程度の37度9分であった。 bこれにより,原告Aの発熱が水分不足によるものである可能性は排除されたというべきである。 しかし,上記認定のとおり,新生児が高体温となる主たる原因とし,。 ては外環境因子が挙げられるところその可能性が排除されていないまた,前記認定(第2の1(3))のとおり,敗血症等の臨床症状とし しかし,上記認定のとおり,新生児が高体温となる主たる原因とし,。 ては外環境因子が挙げられるところその可能性が排除されていないまた,前記認定(第2の1(3))のとおり,敗血症等の臨床症状として哺乳力低下が挙げられるところ,前記認定(第2の1(2))のとおり,同時点までの原告Aの哺乳力は良好であった。 これらの事情を鑑みれば,同時点において,原告Aが敗血症等に罹患している疑いがあると判断を下すのは困難であると言わざるを得ない。 cしたがって,同時点の発熱の事実は,敗血症等の罹患を疑って転院義務を認めるに足りる臨床症状とまでは評価できず,その他,同時点において,これを認めるに足りる証拠はない。 (エ) 午前2時30分ころa17日午前2時30分ころの時点においては,原告Aをくるんでいた毛布を取った後に検温がなされたところ,原告Aの体温は38度であったのであるから,この時点において,毛布にくるまれていたこと。 ,によって高体温となっていたとの可能性は排除されたといえるまた原告C及び同Aのいた病室の温度が高かったことを認めるに足りる証拠はない。 bしたがって,同時点における原告Aの発熱の原因として,既に午前1時20分に水分不足の可能性が排除されたことに加え,更に外環境因子の可能性が排除されたことになり,そうすると発熱の原因は不明であり,感染症の可能性が十分あるというべきである。そして,新生児の感染症が敗血症に至った場合,短時間で急激に発症し,重篤になるものであるから,感染症の可能性が十分あると考えられる以上,速やかに転院の措置をとるべきであるといえる。 cこれに対し,E医師は,同時点においても原告Aの哺乳力は良好であり,元気がないといった症状の報告もなかったので,経過観察をすることにした旨供述する。 しかし,新生児では,髄膜炎 であるといえる。 cこれに対し,E医師は,同時点においても原告Aの哺乳力は良好であり,元気がないといった症状の報告もなかったので,経過観察をすることにした旨供述する。 しかし,新生児では,髄膜炎であっても,特有の症状はなく,哺乳力が弱いとか,元気がないといった症状も注意して見るべき一つの臨床症状にすぎないのであるから,原因不明の発熱が続いている以上,哺乳力が良好であるといった臨床症状を重視すべきではなく,原告Aの発熱の原因が感染症にあることを疑うべきであるとの判断を左右するものとはいえない。 dしたがって,同時点における原告Aの発熱は敗血症等の罹患が疑われ,転院義務を認めるに足りる臨床症状と評価できる。 エ小括以上のことから,原告Aには,10月17日午前2時30分ころの時点において,転院義務を認めるに足りる臨床症状が認められる。 (4) 結論以上の次第であるから,E医師には,10月17日午前2時30分ころの時点において,原告Aが敗血症等の感染症に罹患した可能性を疑い,転院を行うべき注意義務が認められる。 ところが,E医師は,上記に認定した注意義務に違反して,原告Aを転院することなく経過観察としたものであるから,過失が認められる。 因果関係について(1) 前記認定(第2の1(2))のとおり,原告Aには,敗血症等の後遺障害として,水頭症,てんかん,知的障害などの重篤な後遺障害が生じている(以下「本件後遺障害」という。 。)そこで,E医師の過失行為と原告らの損害との間に因果関係が認められるか否か,すなわち,E医師が10月17日午前2時30分ころの時点において転院を決断していれば,本件後遺障害の発生を回避できた高度の蓋然性が認められるかについて判断する。 (2) 訴訟上の因果関係の立証は,一点の疑義も許されない自然科学的証明では 30分ころの時点において転院を決断していれば,本件後遺障害の発生を回避できた高度の蓋然性が認められるかについて判断する。 (2) 訴訟上の因果関係の立証は,一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく,経験則に照らして全証拠を総合検討し,特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり,その判定は,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とし,かつ,それで足りるものである(最高裁昭和50年10月24日第二小法廷判決・民集29巻9号1417頁参照。 )これは,医師が注意義務に従って行うべき診療行為を行わなかった不作為と患者の後遺障害の発生との間の因果関係の存否の判断においても異なるところはなく,経験則に照らして統計資料その他の医学的知見に関するものを含む全証拠を総合的に検討し,医師の当該不作為が患者の当該後遺障害の発生を招来したこと,すなわち,医師が注意義務を尽くして診療行為を行っていたならば患者に当該後遺障害が生じていなかったであろうことを是認しうる高度の蓋然性が証明されれば,医師の当該不作為と当該後遺障害の発生との間の因果関係は肯定されるものと解するのが相当である(最高裁平成11年2月25日第一小法廷判決・民集53巻2号235頁参照。 )(3) そこで,本件について上記の高度の蓋然性が認められるかどうかについて検討する。 ア本件では,前記認定(第2の1(2))のとおり,10月17日午前6時30分ころにF病院NICUへの転院が決断されているところ,午前2時30分ころに転院が決断されていれば,4時間程度早く治療を開始することが可能であったといえる。 イ次に,上記認定の事実経過及び転院義務違反についての判断によれば,,,,原告Aは同日午前1時ころから発熱が 転院が決断されていれば,4時間程度早く治療を開始することが可能であったといえる。 イ次に,上記認定の事実経過及び転院義務違反についての判断によれば,,,,原告Aは同日午前1時ころから発熱が続いていたから結果的にみれば午前1時の時点において敗血症等に罹患していたと評価することができる。 そして,上記認定の医学的知見に照らし原告Aの敗血症発症時期を鑑みると,同人の敗血症は早発型であったといえ,急激に発症することが多いとされる。 ウまた,前記認定(第2の1(3))の医学的知見によれば,細菌性髄膜炎の治療においては,早期に診断し早期に抗生剤投与等の治療を開始することが重要とされる。そして,細菌性髄膜炎の予後については,次のような文献の記載がある。 ①新生児を含む小児全体の症例報告(平成9年発行の文献,甲B1号証233頁)死亡率は10%,重大な後遺障害の発症率は25%。 ②新生児の症例報告(平成12年発行の文献,甲B3号証87頁)死亡率は10~18%,重大な後遺障害の発症率は11~26%。 ③新生児の症例報告(平成12年発行の文献,乙B1号証304頁)死亡率は20~25%,重大な後遺障害の発症率は20~60%。 ④新生児の症例報告(平成4年発行の文献,乙B6号証548頁)重大な後遺障害の発症率は30~50%。 ⑤新生児の症例報告(平成12年発行の文献,乙B8号証102頁)予後が正常であった割合は58.5%これらの症例報告は,早期に治療が開始されたものから,やや治療開始が遅れたものまで含まれているものと推認され,起因菌も様々で,後遺障害の程度も症例によって異なるものであるが,総合すると,概ね約半数以上では死亡又は重大な後遺障害が発生することなく,治癒しているといえる。 また,急激に発症することが多い早発型敗血症の性質からすると 害の程度も症例によって異なるものであるが,総合すると,概ね約半数以上では死亡又は重大な後遺障害が発生することなく,治癒しているといえる。 また,急激に発症することが多い早発型敗血症の性質からすると,治療の開始時期が早まれば早まるほど予後に有意な差異が生じるといえ,たとえ数時間の差異であったとしても,後遺障害の程度は大きく変わるものであるというべきである。 ,,エしたがってE医師が午前2時30分ころの時点において転院を決断し4時間程度早く敗血症に対する治療を開始することができたとすれば,原告Aに何らの後遺障害も生じなかった高度の蓋然性までは認められないものの,本件後遺障害のような重大な後遺障害の発生を回避できた高度の蓋然性が認められるというべきである。 (4) 結論以上から,E医師の過失行為と本件後遺障害の発生との間に因果関係を認めるのが相当である。 もっとも,午前2時30分ころに転院を決断したとしても,原告Aには本件後遺障害より軽度の後遺障害が生じた蓋然性が認められるというべきであり,この点は,損害の算定に当たって考慮することとする。 損害について(1) 原告Aの逸失利益ア前記認定(第2の1(2))のとおり,原告Aは,Aランクの知的障害が残存していることが認められ,将来の労働能力を100%喪失したといえる。 イそして,前記判断のとおり,E医師が午前2時30分ころに転院を決断したとしても,原告Aには本件後遺障害より軽度の後遺障害が生じた蓋然性が認められることからすれば,原告Aは労働能力を一定程度は喪失したというべきである。 そこで,損害の公平な分担の見地から,被告が負担すべき原告Aの逸失利益は,将来の労働能力を100%喪失したとして算定される金額の5割とするのが相当である。 ウしたがって,本件で認められる原告Aの逸失 こで,損害の公平な分担の見地から,被告が負担すべき原告Aの逸失利益は,将来の労働能力を100%喪失したとして算定される金額の5割とするのが相当である。 ウしたがって,本件で認められる原告Aの逸失利益は,以下の計算のとおり,2096万7226円となる。 555万4600円(平成14年賃金センサスによる男子労働者全年齢平均年収)×1(労働能力喪失率100%)×7.5495(0歳時における18歳から67歳までの49年のライプニッツ係数)×0.5=2096万7226円(小数点以下切り捨て)(2) 原告Aの介護費用ア原告Aは,Aランクの知的障害が残存しているので,生涯にわたり介護を要するものである。 イそして,上記に述べたように,E医師が午前2時30分ころに転院を決断した場合においても,原告Aには本件後遺障害よりも軽度の後遺障害が発生した蓋然性を否定できず,一定の介護費用が生じたというべきであるから,被告が負担すべき介護費用は,原告Aに必要な介護費用の5割とするのが相当である。 ウしたがって,本件不法行為に基づく原告Aの介護費用は,以下の計算のとおり,1784万4026円が相当である。 5000円1日あたりの介護料 55509768平(). (××成14年簡易生命表による0歳男性の平均余命78.32歳のライプニッツ係数)0.5=1784万4026円(小数点以下切り捨て)×(3) 慰謝料ア原告A本件後遺障害は原告Aの生涯に多大な影響を及ぼす重篤なものであるが,本件後遺障害よりも軽度の後遺障害が生じた蓋然性が認められることを慰謝料算定に当たっては考慮せざるを得ない。 そして,これらの事情を含む本件に現れた一切の事情を総合的に考慮すると,原告Aの慰謝料は1500万円が相当である。 イ原告B及び原告C愛する れることを慰謝料算定に当たっては考慮せざるを得ない。 そして,これらの事情を含む本件に現れた一切の事情を総合的に考慮すると,原告Aの慰謝料は1500万円が相当である。 イ原告B及び原告C愛する子に重篤な後遺障害が遺ってしまったことに対する悲しみは大きく,原告B及び原告Cは原告Aが死亡するのに比肩する精神的苦痛を負ったといえるが,上記に述べた本件後遺障害よりも軽度の後遺障害が生じた蓋然性が認められることも慰謝料算定にあたり考慮せざるを得ない。 そして,これらの事情を含む本件に現れた一切の事情を総合的に考慮すると,原告B及び原告Cの慰謝料は各150万円が相当である。 (4) 小計原告Aの損害額5381万1252円原告B及び原告Cの各損害額各150万円(5) 弁護士費用原告らが本件訴訟の提起・遂行のため,弁護士である原告代理人に訴訟を委任したことは本件記録上明らかである。 本件事案の内容,本訴の経緯等を総合すると,弁護士費用として被告に負担させるべき額は,原告Aについて500万円,原告B及び原告Cについて各15万円が相当である。 (6) 結論以上を合計すると,原告Aの損害額は5881万1252円,原告B及び原告Cの損害額は各165万円とするのが相当である。 また,不法行為の日は平成14年10月17日となるから,遅延損害金は同日から認められる。 以上のとおりであり,原告らの本件請求は,主文掲記の限度において理由があるから認容し,その余の請求については理由がないから棄却し,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条,64条本文,65条1項本文を,仮執行の宣言について同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第4部裁判長裁判官永野圧彦裁判官田邊浩典裁判官伊藤孝至 ,仮執行の宣言について同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第4部裁判長裁判官永野圧彦裁判官田邊浩典裁判官伊藤孝至
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