平成9(ワ)389 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年6月11日 青森地方裁判所
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判決文本文15,420 文字)

主文 1 被告Aは,原告に対し,金728万3981円及びこれに対する平成6年11月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告B及び被告Dは,原告に対し,連帯して金92万9343円及びこれに対する平成8年3月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,原告と被告Aとの間においては,原告に生じた費用及び同被告に生じた費用の10分の1を同被告の負担とし,その余は原告の負担とし,原告と被告B及び被告Dとの間においては,原告に生じた費用及び同被告らに生じた費用の36分の1を同被告らの負担とし,その余は原告の負担とする。 5 この判決は,1項,2項及び4項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告Aは,原告に対し,4832万4079円及びこれに対する平成6年11月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告Aは,原告に対し,1127万7147円の範囲で被告B及び被告Dと連帯して,被告B及び被告Dは,原告に対し,連帯して,2255万4295円及びこれらに対する平成8年3月23日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 3 被告A,被告B及び被告Dは,原告に対し,連帯して1398万2495円及びこれに対する平成9年2月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が遭遇した2回の交通事故によって受けた傷害等について,各加害車両の運行供用者である被告らに対し,自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)に基づき損害賠償及び事故当日からの遅延損害金を請求している事案である。 1 争いのない事実(1) 第1回目の事故(以下「第1事故」という。) 動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)に基づき損害賠償及び事故当日からの遅延損害金を請求している事案である。 1 争いのない事実(1) 第1回目の事故(以下「第1事故」という。)ア事故の概要日時平成6年11月13日午後8時40分ころ場所青森市大字a字b先路上加害者被告A加害車両普通乗用自動車被害者原告態様被告Aが加害車両を運転走行中,前方不注視により道路横断中の原告の発見が遅れ,原告に加害車両右前部を接触させた。 過失割合被告A8割,原告2割イ原告の受傷原告は,第1事故により,頭部裂挫傷,外傷性頭頚部症候群,第6頚椎脱臼,右大腿骨内顆骨折,左腓骨骨折,右手挫創傷の傷害を受けた。 ウ治療経過平成6年11月14日~同月15日青森県立中央病院に入院同日~平成7年2月21日 F病院に入院(入院日数99日・外泊3日)同日~同年3月17日青森県立中央病院に再度入院(入院日数25日間)同日~同年9月15日 G病院に入院(入院日数183日間)(この間同年5月16日から同年5月26日までは青森県立中央病院に手術のため転入院)同年9月16日~平成8年3月20日  G病院に通院エ被告Aの責任被告Aは,第1事故における加害車両の運転者で,同車両を自己のため運行の用に供していた者に当たり,自賠法3条に基づき,第1事故によって原告に生じた損害のうち被告Aの過失割合である8割を賠償する責任を負う。 オ既払額被告Aは,原告に対 両を自己のため運行の用に供していた者に当たり,自賠法3条に基づき,第1事故によって原告に生じた損害のうち被告Aの過失割合である8割を賠償する責任を負う。 オ既払額被告Aは,原告に対し,休業補償費及び慰謝料として200万5150円を支払った。 (2) 第2回目の事故(以下「第2事故」という。)ア事故の概要日時平成8年3月23日午前3時40分ころ場所青森市c1丁目先路上加害者被告D加害車両  被告B保有の大型貨物自動車(同被告は,平成9年7月3日に第2事故当時の旧商号E株式会社から商号変更している。)被害者原告被害車両  Hタクシー株式会社保有の普通乗用自動車態様被告Dが同加害車両を運転して赤信号を無視して交差点に進入したため,左側から青信号を確認後交差点に進入してきたI運転の被害車両が緊急停止を余儀なくされ,これにより被害車両の助手席後ろの後部座席に乗車していた原告が助手席シートの背もたれ上部に顔面を強打するなどした。 過失割合被告D10割イ被告B及び被告Dの責任被告Bは第2事故における加害車両の保有者,被告Dは第2事故当時の同車両の運転者で,いずれも同車両を自己のために運行の用に供していた者に当たり,自賠責法3条に基づき第2事故によって原告に生じた損害を賠償する責任を負う。 2 争点(1) 第1事故による後遺症の程度内容と症状固定時期(原告と被告Aとの争点)(原告の主張)原告が,頸部及び上肢,手指の知覚異常(C8)や脱力があり,職業上包丁が使えないと訴えていることからすると,原告の後遺障害は,後遺障害等級9級10号に該当する。症状固定時期は,原告が後記の自 )原告が,頸部及び上肢,手指の知覚異常(C8)や脱力があり,職業上包丁が使えないと訴えていることからすると,原告の後遺障害は,後遺障害等級9級10号に該当する。症状固定時期は,原告が後記の自殺未遂後に入院したG病院を退院した日である平成9年6月28日である。 (被告Aの主張)第1事故による原告の受傷の治癒日は平成8年3月20日であり,治癒後に後遺症は発生していない。 青森県立中央病院は,平成8年4月19日に原告の検査をしており,X線写真,CT検査の結果,頸椎骨癒合良好,神経学的に問題なしと診断し,症状固定を同月とするとともに,その当時後遺症はなかったとの見解を示している。また,平成7年3月17日に原告が受診したG病院も,神経学的には両手に軽度の摩れ感が残っているのみとの診断をしており,同病院における治療終了時の原告の症状は,頸部痛,右手指の痺れ等の愁訴のみで,他覚的所見はなかった。 (2) 第2事故の際の原告の受傷の程度及び治療経過並びにこの受傷と第1事故,第2事故との因果関係(共通の争点)(原告の主張)原告は,第2事故により,頚椎捻挫,顔面・左肩・左手・右膝打撲の傷害を受け,事故当日から平成8年4月4日までG病院に通院した後,翌同月5日から同年9月5日まで同病院に入院し(入院日数154日間),翌同月6日以降も同病院に通院した。 そして,原告は,第1事故により受傷した身体が完治しておらず,身体能力が通常より衰えていたので,被害車両が緊急停止した際に,身を守る動作ができなかった。したがって,第2事故により生じた損害については,被告B及び被告Dが全部に対して連帯責任を負うほか,被告Aも,2分の1の割合による寄与度を認められてしかるべきであり,その範囲において,連帯して損害賠償責任を負う。 (被告B及び被告Dの主張) ,被告B及び被告Dが全部に対して連帯責任を負うほか,被告Aも,2分の1の割合による寄与度を認められてしかるべきであり,その範囲において,連帯して損害賠償責任を負う。 (被告B及び被告Dの主張)第2事故において被害車両の急停止による衝撃は小さかったので,第2事故による原告の受傷の程度は軽微であり,既存の負傷や障害を増悪させるものではない。また,原告が第2事故により傷害を受けているとしても,これは原告が第1事故により重篤な障害を負っていたことによるものであるから,第1事故の影響を考慮すると,第2事故と因果関係のある傷害は,せいぜい通院加療2,3週間程度の頸椎捻挫である。 (被告Aの主張)第1事故による原告の傷害は,平成8年3月20日には症状固定もしくは治癒の段階にあったから,第2事故による原告の傷害について,被告Aに責任はない。また,そもそも第2事故は衝突事故ではないから,これによって原告に傷害が生じたかどうかも疑わしい。 (3) 自殺未遂の事実の有無及び自殺未遂による原告の受傷と第1事故・第2事故との因果関係等(共通の争点)(原告の主張)原告は,第1事故及び第2事故により長期間入通院したが,その費用を被告らが支払わないため,自ら支払わねばならなかった。また,原告は,経営していた喫茶店を休店せざるを得なくなったので,蓄えが底をつきサラ金業者らから借金をするようになり,さらにその借金の返済のために母親から多額の借金をしたが,その返済をすることができず母親と度々口論となった。原告は,こうして母親から勘当寸前にまで追い込まれたほか,事故による受傷が完治していない不安,完治した後の後遺症や喫茶店のこれからの経営等について悩んでいたこと,1人で悩み眠れない日々が続いたことなどから,睡眠薬を服用するようになり,さらには度々軽いパニック による受傷が完治していない不安,完治した後の後遺症や喫茶店のこれからの経営等について悩んでいたこと,1人で悩み眠れない日々が続いたことなどから,睡眠薬を服用するようになり,さらには度々軽いパニック状態に陥いるようになった。 このような次第で,原告の判断能力は長期にわたり少しずつ確実にむしばまれ,その結果,原告は,その精神状態が限界を超え,平成9年2月15日ころ,いわゆる鬱状態からパニック状態に陥り,通常人としての判断力を完全に失い,この苦痛の日々から逃れるためには死ぬしかないと錯覚したあげく発作的に自宅の3階窓から飛び降り自殺を図った。原告は,一命はとりとめたものの,右足関節脱臼骨折・右肘骨折・腰部打撲の傷害を負い,同日から同年4月1日まで青森県立中央病院に入院し,同日から同年6月28日までG病院に入院した(入院日数134日)。 原告の自殺未遂と第1事故及び第2事故との間には相当因果関係がある。 (被告Aの主張)被告Aが原告に対し全額の補償をしていないのは,第2事故の傷害と第1事故との因果関係が不明であったほか,過失相殺や休業損害額について争いがありながら原告が十分な立証をしなかったためであり,被告Aが殊更に不誠実な対応をしたものではない。また,原告が第1事故により収入源を失い借金を重ねたとする事実関係も不明であり,第1事故と自殺未遂との間には因果関係がない。また,原告は,保険会社に対し平成9年2月15日の事故を不注意により屋根から落ちたと申告しており,そもそも自殺の事実そのものが疑わしい。 (被告B及び被告Dの主張)原告は,平成9年2月15日の受傷について,自殺以外の原因による高所からの転落事故であることを前提として保険金を受領しており,自殺未遂の事実はない。また,仮に原告が真実自殺を図ったとしても,第2事故で原告に生じ 9年2月15日の受傷について,自殺以外の原因による高所からの転落事故であることを前提として保険金を受領しており,自殺未遂の事実はない。また,仮に原告が真実自殺を図ったとしても,第2事故で原告に生じた傷害は軽微であるから,第2事故と自殺未遂との間に因果関係はない。 (4) 損害額(共通の争点)(原告の主張)ア第1事故から第2事故までの損害合計4832万4079円被告Aは,下記の損害のうち,(ア)ないし(オ)の合計額のうち同被告の過失割合8割に当たる額に,(カ)の額を加え,損害賠償の既払額200万5150円を控除した額である,4832万4079円(1円未満四捨五入)について損害賠償責任を負う。 (ア) 治療関係費入院雑費 39万7800円(イ) 入通院慰謝料 291万円(ウ) 休業損害 2178万円原告は,第1事故当時2店の喫茶店を経営しており,事故の前年である平成5年の原告の年収は少なくとも1211万3620円は下らなかったから,月収は約100万円にのぼっていた。しかし,原告は,第1事故のため,喫茶店1店を休店せざるを得なくなり,他の1店も利益が出ない状況となり,その月収の16.5か月分を失った。また,原告は,右の期間中経営を続けた喫茶店1店の店舗の賃料(1か月当たり33万円)を16か月分支払い続けた。 (エ) 後遺障害による逸失利益 2954万8736円原告は,第1事故及び第2事故で受けた傷害がもとで,頸部及び上肢,手指の知覚異常(C8)や脱力があり,包丁が使えなくなるなど,後遺障害等級第9級10号(労働能力喪失割合35%)に相当する後遺 原告は,第1事故及び第2事故で受けた傷害がもとで,頸部及び上肢,手指の知覚異常(C8)や脱力があり,包丁が使えなくなるなど,後遺障害等級第9級10号(労働能力喪失割合35%)に相当する後遺障害が残った。 この後遺障害による逸失利益を,賃金センサス第1巻第1表男子労働者学歴計,労働能力喪失期間24年としてライプニッツ係数を用いて計算すると,その額は2954万8736円を下らない。 (オ) 後遺障害慰謝料 640万円(カ) 弁護士費用 150万円イ第2事故から自殺未遂までの損害合計2255万4295円(ア) 治療関係費① 治療費 358万1065円② 入院雑費(1300円×154日) 20万0200円③ 通院及び必需品購入等の交通費 26万3030円(イ) 休業損害(100万円×11か月+33万円×11か月)1463万円(ウ) 入通院慰謝料 238万円(エ) 弁護士費用 150万円ウ自殺未遂以後の損害合計1398万2495円(ア) 治療関係費① 治療費 69万8295円② 入院雑費(1300円×134日) 17万4200円(イ) 休業損害(100万円×8 69万8295円② 入院雑費(1300円×134日) 17万4200円(イ) 休業損害(100万円×8か月+33万円×7か月) 1031万円(ウ) 人通院慰謝料 180万円(工) 弁護士費用 100万円(被告Aの主張)原告の主張する損害のうち,休業損害については十分な立証はなく,また,2店舗でそれぞれ100万円の収入があった喫茶店の店舗閉鎖に至る経緯も不自然である。 第3 争点に対する判断 1 本件各事故による原告の受傷内容,後遺症の内容及びこれに対する各事故の因果関係の有無について(1) 証拠(甲3の1・2,3の3の1ないし6,5の2の1・2,8の1・2,10ないし22,丙2,3の1ないし5,4の1ないし5,5の1・2,6,原告本人)によれば,次の各事実が認められる。 ア原告は,平成6年11月13日に発生した第1事故によって,頭部裂挫傷,外傷性頭頚部症候群,第6頚椎脱臼,右大腿骨内顆骨折,左腓骨骨折,右手挫創傷の傷害を受け,事故翌日から2日間青森県立中央病院に安静目的で入院した。初診当時の原告の主訴は,頚部,右手,右膝関節周辺の圧痛,自発痛であった。 イ原告は,さらにF病院に転院して,安静加療のために引き続き入院し,頭部の創の再縫合,右膝ギブス固定,頸椎カラー装着などを受け,以後,創処置,投薬,リハビリを行っていたが,引き続き頚部の運動制限,両手指の痺れ等が持続する旨訴えたため,同病院は,青森県立中央病院に手術の要否の判断を仰いだ。青森県立中央病院では,原告を診察した結果,自覚症状は弱く明らかな脊髄症所見も認め き続き頚部の運動制限,両手指の痺れ等が持続する旨訴えたため,同病院は,青森県立中央病院に手術の要否の判断を仰いだ。青森県立中央病院では,原告を診察した結果,自覚症状は弱く明らかな脊髄症所見も認めなかったが,X線写真上は第6頸椎の前方への亜脱臼が認められ,原告が将来国際A級ライセンスを取得してヨーロッパでの自動車レースヘ出場することを希望していることから,レースで再受傷した場合の脊髄損傷の危険を防止する趣旨で原告を手術適応と判断し,その旨回答した。 ウ原告は,平成7年2月21日に再度青森県立中央病院に入院し,同年3月1日に,頸椎の固定を目的とした第5,6,7頸椎前方固定術を受けた。同病院では,引き続き経過観察をするため,同月17日に原告をG病院に転院させた。原告は,同日時点における症状として,右上下肢の痺れ感,四肢の腱反射の軽度亢進があり,頚部の運動性が約2分の1に制限されているが四肢の運動制限はなく,吐き気,頭痛と視力障害を訴えていた。 エその後,原告が,前同様に自動車レースに参戦することを強く希望したことから,G病院は,さらに強固な頸椎固定の手術を受けさせるため,平成7年5月16日,原告を再度青森県立中央病院に入院させた。青森県立中央病院では,同月18日,原告に対し第5,6,7頸椎後方固定術を実施したが,この手術中,前回の頸椎固定術により頸椎の固定が得られていることが確認されたが,医師は,原告の希望に従い固定を補強する趣旨で後方固定術を行った。医師は,原告が手術の2日後から歩行を始めたこともあり,経過は良好で原告の頚部が神経学的には特に問題がないと判断したので,引き続き加療を得させるため,同月26日,原告をG病院に転院させた。 オこの後,原告は,G病院に同年9月15日まで入院し,その間の同年7月15日にはカラーキーパ 特に問題がないと判断したので,引き続き加療を得させるため,同月26日,原告をG病院に転院させた。 オこの後,原告は,G病院に同年9月15日まで入院し,その間の同年7月15日にはカラーキーパーによる頚部の固定を終了して,ポリネックソフトによる簡易な頚部保護に切り替えた。この入院期間中,原告は,頻繁に外出や外泊を繰り返した。青森県立中央病院では,平成7年8月3日に原告の頚部についてCT検査を実施したところ,脱臼骨折による偏位は修復されており,脊柱管内には明らかな圧排像は観察されなかった。原告は,G病院を退院した後も,頭痛,頚部痛,めまい,吐き気を訴え,同病院に引き続き1か月に10回程度通院し,理学療法(マッサージ)と注射による薬剤投与を中心とする治療を継続したが,これらの治療は,注射後2,3日は自覚症状が軽減するという,自覚症状を一時的に緩和する効果を有していたにとどまっていた。平成8年1月27日におけるX線撮影の結果によると,側画像では第5及び第6の椎体固定術は良好な骨癒合が完成されており,第5ないし第7椎弓を鋼線で締結した固定も確りしていた。G病院の医師は,同月29日ころ,原告代理人による弁護士法23条の2に基づく照会に対する回答において,原告の当時の症状として上肢の痺れ感,頭痛,視力障害,頚部の疲労感,頚部の運動制限(1/2)があり,原告の第1事故による受傷の症状固定時期として,第5,第6頸椎椎体は塊椎を形成しつつありX線写真上はほぼ固定と思われるが,愁訴が未だあり時期は不詳である旨,それぞれ回答した。同病院においては,平成8年3月20日をもって,原告に対する治療を中止した。 カ原告は,平成8年3月23日,第2事故に遭遇し,頸椎捻挫,顔面・左肩・左手・右膝打撲との傷病名により,事故当日からG病院に受診した。原告の主訴は,嘔気及 もって,原告に対する治療を中止した。 カ原告は,平成8年3月23日,第2事故に遭遇し,頸椎捻挫,顔面・左肩・左手・右膝打撲との傷病名により,事故当日からG病院に受診した。原告の主訴は,嘔気及び頭痛であったが,同病院医師は,原告の頚部について,整形外科的には固定し,本人の愁訴は精神的な要素も大きいと思う旨の記載をカルテになしている。原告は,平成8年4月3日までは同病院に通院した後,頚部痛が悪化したとして,同月5日から入院治療を行った。同病院における同月9日の診察によれば,原告の頸椎部の可動域は各方向に制限されており,特に,前屈,回旋及び側届の可動域はいずれも10度ないし20度との診断がなされた。しかし同日付けのX線撮影の結果によると,頸椎の各椎体の配列は良く,椎間板の狭小化もなく,第5及び第6の椎体固定術は第2事故以前と変わりはなく,後方を固定している鋼線にも締結の緩みや破断は見られなかった。原告は,さらに同月11日,青森県立中央病院でCT検査を受けるとともに,同月19日にも同病院でX線写真撮影を受けたが,その結果は,第7頸椎がやや後方へ突出しているが,管の狭窄はそれほど強くなく,第5頸椎ないし第7頸椎は前方,後方ともに骨癒合は良好で,神経学的に問題はない状態との診断を受けた。原告は,以後,同年9月5日までG病院に入院していたが,上記期間中の治療内容は,投薬や電気療法,マッサージなどに終始し,第2事故前に同病院で受けていた治療と大差はなく,第2事故とは無関係と見られる左下腿の火傷の治療も含まれており,同年4月中旬以降は外泊の数が増し,その期間も長くなるなどしている。原告は,その後,平成9年2月14日まで通院して治療を受けたが,治療内容は前同様であった。原告は,この間,右顔面,右半身の痺れや頭痛,吐き気,手指の運動障害等を訴えたが,これら 長くなるなどしている。原告は,その後,平成9年2月14日まで通院して治療を受けたが,治療内容は前同様であった。原告は,この間,右顔面,右半身の痺れや頭痛,吐き気,手指の運動障害等を訴えたが,これら症状も同期間中はほとんど改善されることはなかった。 キ原告は,平成9年2月15日に高所から転落したことにより((以下「転落事故」という。),右足関節脱臼骨折,右肋骨骨折,腰部打撲の傷害を負って,同日青森県立中央病院に入院し,鋼線牽引や右脛骨骨接合術等の治療を受けた。その後,原告は,同年4月1日,G病院に転院し,同年6月28日まで入院し,同月29日以降は通院して治療を受けた。この間の主訴は,頚部痛,僧帽筋痛,右手指の痺れ,脱力の愁訴が続き,消炎鎮痛剤の投薬及び理学療法,局所のトリガーポイント注射の治療を行った。その後,平成11年2月ころには,右頭頂部痛,右顔面の痺れ,頚部の緊張感,右手指の振せんと痺れ,右足部の痺れ,足関節痛などを愁訴としていた。その後,平成12年2月1日,治療中止となった。原告は,本件における本人尋問においても,頚部,右手及び右足の痺れ等の症状が継続していると訴えている。 (2) 第1事故による後遺症の程度内容と症状固定時期(争点(1))について証拠(丙5の1・2,6)によれば,原告の治療に当たった青森県立中央病院及びG病院の医師は,原告の第1事故における傷害は,いずれも症状固定したと判断していることが認められる。そして,前記認定事実によれば,第1事故によって原告が受けた傷害のうち,第6頸椎脱臼以外のものは,原告が平成7年2月17日にG病院に転院した時点で四肢の運動制限はないと診断されたことなどからすると,そのころ治癒したものと認めることができる。また,第6頸椎脱臼についても,同事故等に起因する頸椎の不安定性を除去す 月17日にG病院に転院した時点で四肢の運動制限はないと診断されたことなどからすると,そのころ治癒したものと認めることができる。また,第6頸椎脱臼についても,同事故等に起因する頸椎の不安定性を除去する目的で平成7年5月までに2度の頸椎固定術を受けた結果,遅くとも平成8年1月27日までには頸椎の骨癒合が完成しており,神経学的にも問題がない状態となっていたこと,同時点以降の原告の主訴は,概ね頚部の可動域制限や右半身の痺れ感,頚部痛といった愁訴に終始しており,これに対する画像診断ないしは理学的な他覚的知見も見出すことができないし,前記(1)カに記載のG病院の診断結果や証拠(丙2)における医師の意見にも照らし,さらに原告がこの当時経済的に窮迫しており家族内の葛藤も抱えていたことなども考えると,同症状が心因に起因するものとの疑いを払拭しがたいこと,原告が平成7年9月16日以降G病院に通院して受けた治療は,リハビリテーション及び原告の愁訴の自覚症状の軽減を目的とする内容のものであり,その効果も一進一退の状態にあったことが認められる。これらの事実によれば,第1事故により原告が受けた傷害は,被告Aが主張するように,遅くともG病院が原告の治療を中止した平成8年3月20日の時点において,治癒ないしは症状固定となっていたものということができる。そして,上記症状固定時における原告の前記症状は,前記のとおりもっぱら心因的・気質的な要因に基づき生じていたものと判断すべきであるから,上記各症状を本件事故における後遺症ということはできない。これに反し,原告は症状固定の時期を平成9年6月28日とするが,上述したところにより,同主張は採用することができない。 (3) 第2事故の際の原告の受傷の程度及び右受傷と第1事故,第2事故との因果関係(争点(2))について原告は 月28日とするが,上述したところにより,同主張は採用することができない。 (3) 第2事故の際の原告の受傷の程度及び右受傷と第1事故,第2事故との因果関係(争点(2))について原告は,第2事故による被害状況について,被害車両が急ブレーキをかけた際に,助手席シートの背もたれ上部に顔面,口から顎にかけて強打し,その反動により左側ドアに頭,左肩,左手等をさらに強打した結果,頸椎捻挫,顔面,左肩,左手,右膝打撲,上の歯(7番・6番)義歯紛失・欠損,下の歯(3番)前装冠脱離,下の歯(5番)歯根破折の各傷害を負ったと主張し,これにそう供述をしている。しかしながら,上記申告内容はにわかには信用しがたいものであって,証拠(丙1の1)によれば,第2事故の態様は前記争いのない事実に記載のとおりであるところ,事故発生時の被害車両の速度は時速15キロメートルくらいであり,車両同士の直接の衝突はなく,急ブレーキによる影響も,速度が遅かったために運転手の上体が前のめりになることもない程度のものであったので,原告の身体に対して,同事故の際,重大な物理的衝撃が加わったとは考えがたいこと,原告は,第2事故に遭遇した直後,被害車両の運転手に対して首の痛みを訴えたが,同運転手が病院に行くよう勧めたにもかかわらず,当初の目的地であった焼鳥屋に人を待たせていることを理由にこれに応じなかったことが各認められるほか,前記認定のとおり,原告の同事故後の症状内容が第1事故の治癒当時のものとほぼ同様の愁訴に終始していたことや,第2事故直後のX線写真撮影の結果も事故による頸椎の損傷を窺わせるものではなかったこと,同事故後の治療の経緯なども併せ考慮すると,同事故による原告の受傷は,軽度の頚部損傷等に止まるものと考えられるのであって,原告が主張するような長期間の入通院を要するものであっ るものではなかったこと,同事故後の治療の経緯なども併せ考慮すると,同事故による原告の受傷は,軽度の頚部損傷等に止まるものと考えられるのであって,原告が主張するような長期間の入通院を要するものであったとは認められない。証拠(丙2)によれば,上記頚部損傷が最も重篤なものであったと仮定しても,頸椎の周辺軟部組織に損傷が生じたに止まるものであって,その治療期間は,入院していればたかだか2ないし3週間程度であると認められるが,これらに加えて前記のような治療経過も併せて考えると,第2事故による原告の受傷のための相当な治療期間は,同事故当日から平成8年4月10日までの入通院期間であり,原告の受傷は,同期間の経過をもって治癒したものとするのが相当である。 なお,原告は,第2事故に際して,第1事故により身体能力の減衰により身を守る動作をとることができなかったと主張して,第2事故により原告に生じた損害の一部には被告Aの寄与度が認められるべき旨主張するが,第1事故による原告の受傷が第2事故発生前に治癒していたと認めるべきことは争点(1)に関して説示したとおりであり,原告の主張はその前提を欠くから採用できない。 (4) 自殺未遂の事実の有無及びこれによる原告の受傷と第1事故・第2事故との因果関係等(争点(3))について原告は,平成9年2月15日の転落事故について,第1及び第2事故による経済的窮迫や家庭内の不和等から鬱状態となり,これが原因でパニック状態に陥って飛び降り自殺を図り,右足関節脱臼骨折等の傷害を負って入院したと主張し,これにそう供述をするほか,証拠(甲11及び12)によれば,同事故後の原告の主治医に対する申告もこれにそうものが見られる。 しかしながら,他方では,証拠(甲11及び21)によれば,原告は,転落して受傷した後飲酒の影 ,証拠(甲11及び12)によれば,同事故後の原告の主治医に対する申告もこれにそうものが見られる。 しかしながら,他方では,証拠(甲11及び21)によれば,原告は,転落して受傷した後飲酒の影響からそのまま入眠し,歩行者に発見されて救急車で搬送され,泥酔状態で入院となったが,事故の詳細は不明であった事実が認められるところ,証拠(被告A申立の調査嘱託,原告本人)によれば,原告は,K保険相互会社及びL火災海上保険株式会社から,上記転落受傷が事故であることを原因として平成9年中に傷害保険金の請求手続をして支払を受けており,特に,L火災海上保険株式会杜に対しては,同年5月17日に,原告が自ら事故の原因及び状況を自分の不注意により雪かき中に転落したと説明する傷害事故状況報告書を作成提出しており,この点に関する原告本人の説明も不明朗なものがあると認められる。これらの事実からすると,転落事故が原告の不注意により招致されたものであるとの疑いも払拭することはできず,原告の主張にそう上記各証拠はにわかに採用し難いというべきであり,結局,原告主張の自殺未遂の事実を認めるに足りる証拠はなく上記主張は,その前提を欠くということになる。したがって,争点(3)に関する原告の主張は理由がない。 2 損害額(争点(4))について(1) 第1事故による損害争点(1)について説示したところによれば,第1事故による原告の受傷のための治療期間は,平成6年11月13日から平成7年9月15日までの入院306目及び同月16日から平成8年3月20日までの通院186日であり,このほかに,第1事故における過失割合,既填補額等を考慮すると,本件請求において被告Aが賠償すべき損害額は,次のとおり合計728万3981円であると認められる。 ア入院雑費入院雑費は, ほかに,第1事故における過失割合,既填補額等を考慮すると,本件請求において被告Aが賠償すべき損害額は,次のとおり合計728万3981円であると認められる。 ア入院雑費入院雑費は,1日当たり1300円として,入院期間が306日間であるから,39万7800円となる。 1,300×306=397,800イ入通院慰謝料上記入通院期間のほか,実通院日数,傷害の程度,治療内容等を考慮すると,入通院慰謝料としては291万円が相当である。 ウ休業損害(ア) 原告は,第1事故当時喫茶店2店の経営により100万円を下らない月収を得ていたとして,前記入通院期間に相当する16.5か月分の月収を休業損害と主張するほか,1か月当たり33万円の店舗の賃料16か月分の支出を余儀なくされたと主張する。 しかしながら,証拠(甲4の1・2,乙1,証人J,原告本人)によれば,原告が平成5年度の確定申告につき所得額を1211万3620円と申告したことは認められるが,他方で前記各証拠によれば,同申告を裏付ける伝票や賃金台帳,仕入台帳,領収書等の客観的資料はないと認められること,また,原告は平成4年度の確定申告は行っておらず,前記確定申告にしても,損害保険関係の調査員が第1事故に関する損害調査のために原告と最初に面談した平成7年10月16日から程なく行われたもので,作為的な面が窺われることなどからすると,上記確定申告の内容はにわかには信用することができない。また,原告は,その本人尋問において,事故前の経営形態や収入状況,本件の負傷により前記のような多額の減収を来した理由についてさまざまに説明するが,前記のような原告の事故後の症状内容の程度等に照らしても合理的なものとは考えられず,前記のような申告の 形態や収入状況,本件の負傷により前記のような多額の減収を来した理由についてさまざまに説明するが,前記のような原告の事故後の症状内容の程度等に照らしても合理的なものとは考えられず,前記のような申告の経過や裏付け資料の欠如に関しても曖昧な説明に終始するものであって,前同様信用することができない。そして,他に原告主張のような減収や固定費の支出を認めるに足りる証拠はないので,第1事故当時の原告の年収については,原告が事故当時39歳であり大卒の学歴があることを考慮し,賃金センサス平成6年度第1巻第1表男子労働者の新大卒・産業計・企業規模計に基づき679万5600円とするのが相当である。 (イ) 第1事故による入通院の状況にかんがみれば,306日の入院期問については収入の全額を,その後の186日間の通院期間については,通院等による減収割合を5割と認めて算定した金額を,それぞれ休業損害と認めるのが相当であり,以上によれば,第1事故による原告の休業損害は742万8614円となる(円未満切り捨て。以下同じ。)。 6,795,600×306÷365+6,795,600×1/2×186÷365=7,428,614エ補填額被告Aが原告に対し本件事故についての損害賠償として支払った額は,200万5150円である(争いがない。)。 オ上記アないしウの合計1073万6414円に対して第1事故における被告Aの過失割合である8割を乗じた858万9131円からエの既填補額を控除すると,658万3981円となる。 カ弁護士費用本件事案の性質,審理の経過,認容額等諸般の事情に照らすと,本件事故と相当因果関係のある損害としての弁護士費用は70万円と認めるのが相当である。 (2) 第2事故による損害争点( 本件事案の性質,審理の経過,認容額等諸般の事情に照らすと,本件事故と相当因果関係のある損害としての弁護士費用は70万円と認めるのが相当である。 (2) 第2事故による損害争点(2)について説示したところによれば,第2事故による原告の受傷のための相当な治療期間は,同事故当日から平成8年4月4日までの通院13日及び同月5日から平成8年4月10日までの入院6日であるから,被告B及び被告Dが連帯して賠償すべき損害は,次のとおり合計92万9343円であると認められる。 ア治療費証拠(甲6の2の1ないし3)によれば,原告が第2事故の治療のためにG病院に人通院することにより要した治療費としては,入院1日当たり2万円及び通院1日当たり5300円が相当と認められる。したがって,上記入通院期間に応じた治療費相当額は,これらの額によって算出した金額のほか,この間に青森県立中央病院の外来を受診するために要した治療費2480円(甲6の1の1)を加えた,合計19万1380円と認められる。 20,000×6+5,300×13+2,480=191,380イ入院雑費入院雑費は,1日当たり1300円として,入院期間が6日間であるから,7800円となる。 1,300×6=7,800ウ通院交通費等前記入通院期間に原告が通院等(G病院入院中に青森県立中央病院の外来で受診するための往復も含む。)に要した費用は,甲第7号証の1によれば,合計1万9040円であると認められる。 エ入通院慰謝料上記入通院期間のほか,実通院日数,負傷の程度,治療内容等を考慮すると,入通院慰謝料としては20万円が相当である。 オ休業損害第2事故により原告が休業を余儀なくされたと認 上記入通院期間のほか,実通院日数,負傷の程度,治療内容等を考慮すると,入通院慰謝料としては20万円が相当である。 オ休業損害第2事故により原告が休業を余儀なくされたと認められる期間としては,上記の入通院期間の19日間が相当である。そして,第2事故当時の原告の収入を認定すべき確たる資料がないことは上記(1)で説示したとおりであるから,第2事故当時の原告(当時40歳)の年収を賃金センサス平成8年度第1巻第1表男子労働者新大卒・産業計・企業規模計に基づき789万7900円として,第2事故による受傷のために必要な上記入通院期間については収入の全額を休業損害と認めるのが相当である。したがって,原告の休業損害は,41万1123円となる。 7,897,900×19÷365=411,123カ弁護士費用本件事案の性質,審理の経過,認容額等諸般の事情に照らすと,第2事故と相当因果関係のある損害としての弁護士費用は10万円と認めるのが相当である。 3 結論以上によれば,原告の請求は,第1事故に関しては被告Aに対して728万3981円及びこれに対する事故の日である平成6年11月13日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,また,第2事故に関してはその余の被告らに対して連帯して92万9343円及びこれに対する事故の日である平成8年3月23日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,それぞれ理由がある。したがって,原告の請求をこの限度で認容することとし,その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとする。 青森地方裁判所民事部裁判長裁判官畠山新裁判官髙木勝己裁判官宮 﨑 謙 請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとする。 青森地方裁判所民事部裁判長裁判官畠山新裁判官髙木勝己裁判官宮 﨑 謙

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