平成27(ワ)17716 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年1月26日 東京地方裁判所
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判決文本文27,228 文字)

- 1 -平成29年1月26日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成27年(ワ)第17716号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成28年11月15日判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり主文 被告Aは,原告に対し,498万2795円及びこれに対する平成27年7月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告ハートウィングは,原告に対し,658万2795円及びこれに対する平成24年9月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告Cは,原告に対し,598万2795円及びこれに対する平成27年7月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告の被告A,被告ハートウィング及び被告Cに対するその余の請求並びに被告B,被告振興協會及び被告Dに対する請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,原告と被告A,被告ハートウィング及び被告Cの間ではこれを15分し,その1を同被告らの,その余を原告の各負担とし,原告と被告B,被告振興協會及び被告Dの間では全て原告の負担とする。 この判決は,第1項から第3項までに限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求- 2 - 被告A及び被告Bは,原告に対し,連帯して9892万0867円及びこれに対する平成27年7月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告A,被告ハートウィング,被告C,被告振興協會及び被告Dは,原告に対し,連帯して9892万0867円及びこれに対する平成24年9月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,原告が,原告の元取締役である被告A及び被告B,後記本件財産処分行為の相手方等である被告ハートウィング及び被告振興協會並びに同被 支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,原告が,原告の元取締役である被告A及び被告B,後記本件財産処分行為の相手方等である被告ハートウィング及び被告振興協會並びに同被告らの各代表者である被告C及び被告Dに対し,被告Aによる原告の財産の処分等並びに被告ハートウィング及び被告振興協會による原告の顧客名簿の不正使用及び書簡送付等が取締役の任務懈怠ないし不法行為,不正競争防止法2条1項7号,15号等所定の不正競争(以下,同項各号所定の不正競争を「7号の不正競争」などという。)等に当たり,これにより9892万0867円の損害を被ったと主張して,①被告A及び被告Bに対し,会社法423条1項,430条に基づき,上記損害金及びこれに対する請求の日の後である平成27年7月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払,②被告A,被告ハートウィング,被告C,被告振興協會及び被告Dに対し,民法709条,719条1項等に基づき,上記損害金及びこれに対する最終の不法行為の日である平成24年9月11日から支払済みまで上記割合による遅延損害金の連帯支払(被告Aに対しては上記①と選択的請求)を求める訴訟である。 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)当事者等ア原告は,学習教室(能力開発教室)の経営,絵本の出版,教育教材及び- 3 -教具の製造販売等を業とし,「石井式漢字教育」と呼ばれる幼児教育の普及を行う株式会社である。 原告の代表取締役は,平成24年6月24日までが被告A,同日以降がEであったが,その後,Fが代表取締役となった。F及びGは,原告の元従業員であり,被告Aの代表取締役在任中に解雇されたものの,後記の株主総会後に原告に復帰した。 月24日までが被告A,同日以降がEであったが,その後,Fが代表取締役となった。F及びGは,原告の元従業員であり,被告Aの代表取締役在任中に解雇されたものの,後記の株主総会後に原告に復帰した。 イ被告Aは平成16年頃から原告の代表取締役,被告Bは平成24年3月10日から取締役であったが,いずれも同年6月24日に後記のとおり辞任した。 ウ被告ハートウィングは幼稚園・保育園における体育指導等を営む株式会社であり,被告Cはその代表取締役である。被告Cは,原告の代表取締役に在任中の被告Aを社長代行として補佐するとともに,被告振興協會の事務局長としてその日常業務を行っていた。(被告C,被告D)エ被告振興協會は石井式漢字教育を広めるために設立された特定非営利活動法人であり,被告Dはその理事である。 原告の株主総会原告(当時の代表取締役は被告A)は,平成24年4月28日,原告の株主から,被告A及び被告Bの取締役解任等を目的事項とする株主総会の招集請求を受けた。原告は,同年6月7日,開催日を同月24日とする株主総会の招集通知を原告の株主らに対し発した。同日,上記の取締役解任等を議案とする株主総会が開かれたが,被告A及び被告Bは,同議案の決議がされる前に,代表取締役及び取締役を辞任した。(甲6の1~3)原告の財産の処分ア被告Aは,後記①及び③~⑤については原告の代表取締役として,②については原告との契約の相手方として,原告の財産等につき次の各行為(以下,それぞれを「本件財産処分行為①」などといい,これらを「本件- 4 -財産処分行為」と総称する。)をした。 ①平成24年1月11日付けで,被告ハートウィングに対し,原告の保有する「石井式漢字教室」の商標権につき,期間を20年,使用料を年額10万円とする通常使用権を許諾した。(甲7)② る。)をした。 ①平成24年1月11日付けで,被告ハートウィングに対し,原告の保有する「石井式漢字教室」の商標権につき,期間を20年,使用料を年額10万円とする通常使用権を許諾した。(甲7)②同年4月24日付けで,原告に対し,被告A及びその長男が原告に事務所及び倉庫として賃貸していた東京都足立区所在の2件の物件(以下「本件倉庫」と総称する。)につき,長男と連名で,同年6月24日をもって賃貸借契約を解約する旨の申入れをした。(甲8)③同年5月25日,被告振興協會に対し,原告の事務所兼能力開発教室の運営のための教室(以下「旧教室」という。)として賃借していた東京都渋谷区恵比寿南2丁目所在の建物につき,賃貸借契約上の賃借人の地位を譲渡した。 ④同月31日,被告ハートウィングに対し,原告の商品である絵本及び教育教材の在庫全てを代金1647万6893円で売却した。 ⑤同年6月20日,被告ハートウィングに対し,本件倉庫及び旧教室にあった机や椅子,パソコン,事務用品等の備品一式を代金17万円で売却した。 イ上記④の売買代金は,同年6月20日,被告ハートウィングから原告に支払われた。被告Aは,同日,原告から,原告への貸付金の弁済として1650万円の支払を受けた。なお,上記④の売買の対象のうち絵本については,挿絵の作者らの原告に対する著作権侵害訴訟において出版等の差止めの対象とされており,同年3月29日に差止めを認める第一審判決が言い渡されていた。(甲11の1,32)ウ上記⑤の旧教室にあったパソコンには,原告の顧客名簿(以下「本件顧客名簿」という。)のデータが保存されていた(被告ハートウィングへの引渡時にこれが消去されていたか否かについては争いがある。原告は,上- 5 -記パソコンの譲渡により原告の顧客情報を原告から被告ハートウィン いう。)のデータが保存されていた(被告ハートウィングへの引渡時にこれが消去されていたか否かについては争いがある。原告は,上- 5 -記パソコンの譲渡により原告の顧客情報を原告から被告ハートウィングに流出させるという「本件顧客情報流出行為」があった旨主張する。)。 能力開発教室の運営等被告ハートウィングは,同年6月25日以降,旧教室のあった建物において石井式漢字教育の能力開発教室の運営を開始し,本件倉庫において絵本等を保管している。他方,原告は,上記建物を使用できなくなったため,同月28日に東京都渋谷区恵比寿西1丁目所在の建物を事務所兼教室として賃借して能力開発教室(以下「新教室」という。)の運営し,石井式漢字教育に関する事業を再開した。(甲35)被告ハートウィングによる書簡の送付被告ハートウィングは(ただし,後記②の書簡の差出人は,被告振興協會との連名である。),原告の顧客である幼稚園・保育園及び能力開発教室の会員である生徒の保護者らに対し,次の各書簡(以下,それぞれを「本件書簡①」などといい,これらを「本件各書簡」と総称する。)を送付した(以下,これらの送付行為を「本件書簡送付行為」という。)。 ①平成24年6月吉日付け,幼稚園・保育園の理事長・園長宛の「被告振興協會より委託されていた石井式漢字教育は,原告に代わり,6月25日より被告ハートウィングが行うことになった。同被告に移行しても従前どおり絵本の配本や研修会,能力開発教室(恵比寿),各園の課外教室の開催など,社員・講師も引き続き担当する。」旨の書簡(甲19)②同月吉日付け,会員・保護者宛の「被告振興協會が石井式漢字教育を委託していた原告に代わって,6月25日より被告ハートウィングが行うことになった。同被告が新しい教室の委託先になったことに伴い,授業料振込先も新しくな 員・保護者宛の「被告振興協會が石井式漢字教育を委託していた原告に代わって,6月25日より被告ハートウィングが行うことになった。同被告が新しい教室の委託先になったことに伴い,授業料振込先も新しくなる。」旨の書簡(甲20,21)③同年7月12日付け,幼稚園・保育園宛の「7月より被告ハートウィングとの取引となった。」旨の書簡(甲25)- 6 -④同月吉日付け,幼稚園・保育園宛の「被告ハートウィングと会社が変わったので,振込先も変わった。」旨の書簡(甲26)⑤同年9月11日付け,原告の旧教室の生徒の保護者宛の「ご子息が6月まで通っていた教室は,名称を改め,授業を再開した。」旨の書簡(甲29) 争点 本件財産処分行為について本件財産処分行為がされたことは争いがなく,原告は,本件財産処分行為により原告が被った損害につき,①被告A及び被告Bは原告の取締役としての任務懈怠(会社法423条1項)により,②被告ハートウィングは不法行為(民法709条)及び代表取締役である被告Cの行為についての責任(会社法350条)により,③被告Cは不法行為及び被告ハートウィングの取締役としての第三者に対する責任(会社法429条1項)により,④被告振興協會は不法行為及び理事である被告Dの行為についての責任(特定非営利活動促進法8条により準用される一般社団法人及び一般財団法人に関する法律78条)により,⑤被告Dは不法行為により,それぞれ損害賠償責任を負う旨主張する。したがって,これら規定による被告らの責任原因の有無が争点となる。 本件顧客情報流出行為について原告は,本件財産処分行為⑤により原告から被告ハートウィングに引き渡されたパソコン内に本件顧客名簿のデータが保存されていたことを前提に,本件顧客名簿は原告の営業秘密(不正競争防止法2条6項)に当たり,これ ,本件財産処分行為⑤により原告から被告ハートウィングに引き渡されたパソコン内に本件顧客名簿のデータが保存されていたことを前提に,本件顧客名簿は原告の営業秘密(不正競争防止法2条6項)に当たり,これを開示した被告Aに7号の不正競争,これを取得した被告ハートウィング,被告C,被告振興協會及び被告Dに8号の不正競争が成立するなどとして,本件顧客情報流出行為により原告が被った損害につき,①被告A及び被告Bは原告の取締役としての任務懈怠により,②被告ハートウィングは不正競争- 7 -(同法4条),不法行為及び代表取締役である被告Cの行為についての責任により,③被告Cは不正競争,不法行為及び被告ハートウィングの取締役としての第三者に対する責任により,④被告振興協會は不正競争,不法行為及び理事である被告Dの行為についての責任により,⑤被告Dは不正競争及び不法行為により,それぞれ損害賠償責任を負う旨主張する。したがって,争点は以下のとおりとなる。 ア本件顧客名簿の営業秘密該当性イ本件顧客名簿の開示及び取得の有無ウ被告らの責任原因本件書簡送付行為について本件書簡送付行為がされたことは争いがなく,原告は,同行為は原告の営業秘密である本件顧客名簿を使用するものとして7号の不正競争及び虚偽の事実を告知流布するものとして15号の不正競争に該当するなどとして,本件書簡送付行為により原告が被った損害につき,①被告Aは不法行為により,②被告ハートウィングは不正競争,不法行為及び代表取締役である被告Cの行為についての責任により,③被告Cは不正競争,不法行為及び被告ハートウィングの取締役としての第三者に対する責任により,④被告振興協會は不正競争,不法行為及び理事である被告Dの行為についての責任により,⑤被告Dは不正競争及び不法行為により,それぞれ損害賠償 告ハートウィングの取締役としての第三者に対する責任により,④被告振興協會は不正競争,不法行為及び理事である被告Dの行為についての責任により,⑤被告Dは不正競争及び不法行為により,それぞれ損害賠償責任を負う旨主張する。したがって,争点は以下のとおりとなる。 ア本件顧客名簿の営業秘密該当性及び使用の有無イ本件各書簡により告知流布された事実の虚偽性ウ被告ら(被告Bを除く。)の責任原因損害の有無及びその額等 争点に関する当事者の主張 争点 (本件財産処分行為)について- 8 -ア被告A及び被告Bの責任原因(原告の主張)本件財産処分行為は,被告Aが原告の代表取締役の地位を利用して,原告への貸付金を回収するという個人的な目的並びに被告C及び被告Dと結託して原告の事業継続を困難にさせ,原告の事業を被告ハートウィングに実質的に移転する目的で行われた。そして,本件財産処分行為によって原告の事業運営に不可欠な現金,商品,設備等の全財産が処分され,その後の活動に著しい支障が生じた。したがって,被告Aには任務懈怠により原告が被った損害を賠償する責任がある。 被告Bは,被告Aによる本件財産処分行為を認識しながら放置し,何ら是正措置を講じなかったから,監視義務を怠った責任がある。 (被告A及び被告Bの主張)本件財産処分行為①は,「石井式」の名を広めるために商標の使用を許したにすぎず,商標権の価値を失わせるものでも原告による商標の使用を制限するものでもない。 本件財産処分行為②は,被告Aが個人として行ったものである上,原告の厳しい経理状況に鑑みれば,賃料の支出を抑えることは原告の利益となる合理的な行為であった。 本件財産処分行為③~⑤は,当時,原告が多額の債務を負っていたことから,これを減らすために絵本や備品を売却し,高額な賃借費用がかかって 料の支出を抑えることは原告の利益となる合理的な行為であった。 本件財産処分行為③~⑤は,当時,原告が多額の債務を負っていたことから,これを減らすために絵本や備品を売却し,高額な賃借費用がかかっていた旧教室の賃借人の地位を譲渡したものであって,原告の経営状況を改善するために必要かつ合理的な行為であった。また,旧教室については,原告の教室及び事務所として使用されていたものの,その場所でなければ会社運営が成り立たなくなってしまう性質のものでない。絵本については,著作権侵害訴訟において差止めを認容する第一審判決が言い渡されていて,再販することができなかった上,対価である約1600万円は,原価を超- 9 -えており,低額であったということはない。本件財産処分行為時における被告Aの原告に対する貸付金の残高は約2000万円に上っており,被告Aの代表取締役辞任時に弁済するとの約定があったから,被告Aは上記貸付金の弁済として絵本の代金相当額を受領したにとどまる。さらに,旧教室の賃借人の地位を譲渡する以上,旧教室内の備品等は不要となるから,これらも譲渡したものである。一方,被告Aは,原告のその後の事業継続の基盤となる講師の人材等は原告に確保させている。 これらの事情からすれば,本件財産処分行為につき被告Aに任務懈怠はなく,被告Bにも監視義務の違反はない。 イ被告ハートウィング,被告C,被告振興協會及び被告Dの責任原因(原告の主張)本件財産処分行為は,被告らが原告の事業を被告ハートウィングに実質的に移転し,原告の事業継続を不可能にするという共通の目的で行ったものであり,通常の取引行為の範囲を著しく逸脱した違法な行為である。 被告ハートウィングは,本件財産処分行為①,④及び⑤の当事者であり,また,本件財産処分行為②及び③については当事者となっていない たものであり,通常の取引行為の範囲を著しく逸脱した違法な行為である。 被告ハートウィングは,本件財産処分行為①,④及び⑤の当事者であり,また,本件財産処分行為②及び③については当事者となっていないが,これらは被告ハートウィングに本件倉庫や旧教室を使用させるために行われた。そうすると,被告ハートウィングは,故意又は少なくとも重大な過失により,相手方又は利益享受者として違法行為である本件財産処分行為に関与したから,不法行為が成立する。 被告振興協會についても,本件財産処分行為③の当事者となって違法な本件財産処分行為に積極的に加担したから,不法行為が成立する。 被告ハートウィング及び被告振興協會はいずれも代表者個人が支配しており,法人としての行為は個人の意思に基づく個人の行為という側面を有する。したがって,被告C及び被告Dは,それぞれ被告ハートウィ- 10 -ング及び被告振興協會の行為につき不法行為責任を負う。 さらに,被告Cは,被告振興協會の事務局長として被告Dに代わって被告振興協會の業務を担っており,本件財産処分行為③に係る契約書の作成をするなどして関与したことについても不法行為責任を負う。また,被告Dについても,被告振興協會の理事でありながら被告Cに被告振興協會の職印を管理させ,被告Cが上記契約書を作成することを黙認しており,不法行為が成立する。 上記の被告C及び被告Dの不法行為は,それぞれ被告ハートウィングの代表取締役及び被告振興協會の理事としての職務を行うについてされたものであるから,被告ハートウィング及び被告振興協會は,これにつきそれぞれ会社法350条及び特定非営利活動促進法8条に基づく損害賠償責任を負う。 被告Cは,被告ハートウィングの代表取締役として違法行為である本件財産処分行為に関与したものであり,職務を行うについて悪 れぞれ会社法350条及び特定非営利活動促進法8条に基づく損害賠償責任を負う。 被告Cは,被告ハートウィングの代表取締役として違法行為である本件財産処分行為に関与したものであり,職務を行うについて悪意又は重過失があるから,会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負う。 (被告ハートウィング,被告C,被告振興協會及び被告Dの主張)前記ア(被告A及び被告Bの主張)のとおり,本件財産処分行為は合理性のある行為である。また,被告ハートウィング及び被告振興協會が本件財産処分行為の相手方となったことは,単なる契約行為であり,違法と評価されるものでない。さらに,被告C及び被告Dは,それぞれ被告ハートウィング又は被告振興協會の代表者として本件財産処分行為に関与したものであり,個人としての行為が問題とされることはない。したがって,被告ハートウィング,被告C,被告振興協會及び被告Dにつき不法行為は成立せず,また,被告ハートウィング及び被告振興協會が各代表者の行為につき会社法350条等に基づく損害賠償責任を負うこともない。 - 11 -本件財産処分行為は違法でないから,被告Cが取締役としての職務を行うについて悪意又は重大な過失はない。 争点 ア(本件顧客名簿の営業秘密該当性)について(原告の主張)本件顧客名簿には,原告の絵本販売事業の顧客である約130の幼稚園・保育園の園名,住所,在籍人数,口座番号等と,原告の能力開発教室及び課外教室の顧客である生徒の保護者約300名の氏名,住所,家族構成,年齢等の原告の営業上の情報が含まれている。 本件顧客名簿のデータは,旧教室の事務所に設置されていたパソコンに保存されていた。そして,上記パソコンにはパスワードが設定されており,これを操作して本件顧客名簿のデータにアクセスできる者は事務担当の従業員1名に限定されていた 室の事務所に設置されていたパソコンに保存されていた。そして,上記パソコンにはパスワードが設定されており,これを操作して本件顧客名簿のデータにアクセスできる者は事務担当の従業員1名に限定されていたから,秘密として管理されていたということができる。 また,本件顧客名簿は,顧客管理等の事業活動に利用されるものであり,競業他社に知られていないから,有用性及び非公知性の要件を満たしている。 したがって,本件顧客名簿は原告の営業秘密に当たる。 なお,本件顧客名簿記載の全ての情報が紙媒体に印刷されて事務所に備えられていた事実はないし,原告と被告振興協會が顧客情報を共有していたこともない。 (被告らの主張)本件顧客名簿については,パソコン内にデータ形式で保存されていたものと紙媒体に印刷されていたものが存在していたところ,上記パソコン及びデータには何らのパスワードも設定されておらず,紙媒体のものは原告の従業員に加え被告振興協會の職員も見ることが可能であった。このような管理状況に鑑みれば,本件顧客名簿が秘密として管理されていたとはいえず,営業秘密には当たらない。 争点 イ(本件顧客名簿の開示及び取得の有無)について- 12 -(原告の主張)被告Aは,不正の利益を得る目的で,被告ハートウィングに対し本件顧客名簿のデータが保存されていたパソコンを譲渡し(本件財産処分行為⑤),営業秘密を開示した。被告ハートウィングは当事者,被告Cは被告ハートウィングの代表取締役として本件財産処分行為⑤に加担し,本件顧客名簿の不正開示行為があることにつき悪意又は重過失でこれを取得した。さらに,被告振興協會及び被告Dは,不正開示行為が介在したことにつき悪意又は重過失で本件顧客名簿を被告ハートウィングから取得した。 (被告らの主張)ア原告が被告ハートウィングにパソコンを譲渡し 。さらに,被告振興協會及び被告Dは,不正開示行為が介在したことにつき悪意又は重過失で本件顧客名簿を被告ハートウィングから取得した。 (被告らの主張)ア原告が被告ハートウィングにパソコンを譲渡した際,本件顧客名簿のデータは消去されていたから,被告Aが被告ハートウィングに本件顧客名簿を開示したことも,被告ハートウィングがこれを取得したこともない。 イ被告振興協會は,被告ハートウィングから本件顧客名簿を取得していない。なお,原告から絵本を購入する幼稚園・保育園及び原告の教室に通う生徒の保護者は全て被告振興協會の会員となっており,被告振興協會と原告は顧客に関する情報を共有していた。 争点 ウ(本件顧客情報流出行為に係る被告らの責任原因)についてア被告A及び被告B(原告の主張)被告Aによる本件顧客名簿の開示は7号の不正競争に当たり,又はこれに当たらないとしても原告にとって重要な財産的価値を有する名簿を譲渡したことになるから,被告Aには任務懈怠があり,被告Bには監視義務を怠った責任がある。 (被告A及び被告Bの主張)本件顧客名簿は営業秘密に当たらず,その開示もないから,被告A及び被告Bに任務の懈怠はない。 - 13 -イ被告ハートウィング,被告C,被告振興協會及び被告D(原告の主張)本件顧客情報流出行為は,不正競争に当たる違法な行為であり,又は,そうでないとしても本件顧客名簿が原告以外の第三者に譲渡されることは想定されていないから,本件顧客名簿の譲渡は違法な行為である。被告ハートウィング,被告C,被告振興協會及び被告Dは,当事者又は代表者として,被告Aと通じて違法な本件顧客名簿の譲渡に積極的に関与したから,8号の不正競争ないし不法行為が成立する。 被告ハートウィング及び被告振興協會は,それぞれ代表者である被告C及び被告Dが職務と 者として,被告Aと通じて違法な本件顧客名簿の譲渡に積極的に関与したから,8号の不正競争ないし不法行為が成立する。 被告ハートウィング及び被告振興協會は,それぞれ代表者である被告C及び被告Dが職務として行った上記行為につき,会社法350条又は特定非営利活動促進法8条に基づく損害賠償責任を負う。 被告Cは,被告ハートウィングの代表取締役として本件顧客情報流出行為に関与したものであり,職務を行うについて悪意又は重過失があるから,会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負う。 (被告ハートウィング,被告C,被告振興協會及び被告Dの主張)前記及びで主張したとおり,本件顧客名簿は営業秘密に該当せず,これを取得したこともないから,8号の不正競争も不法行為も成立しない。 また,被告C及び被告Dが個人として責任を負うことはなく,被告C又は被告Dの行為につき被告ハートウィング又は被告振興協會が損害賠償責任を負うこともない。さらに,被告Cにつき取締役としての第三者に対する損害賠償責任も生じない。 争点 ア(本件顧客名簿の営業秘密該当性及び使用の有無)について(原告の主張)本件書簡送付行為は,原告から示された本件顧客名簿を使用して原告の顧客であった幼稚園や保護者等に書簡を送付したものである。そして,被告ハートウィング及び被告振興協會は当事者,被告C及び被告Dは代表者として,- 14 -原告から顧客を奪取するという不正の利益を得る目的で本件書簡送付行為に関与したから,7号の不正競争が成立する。 (被告ハートウィング,被告C,被告振興協會及び被告Dの主張)本件顧客名簿は原告の営業秘密に当たらない上,本件書簡送付行為は被告振興協會の保有する会員情報を使用したものであって本件顧客名簿を使用していないから,7号の不正競争は成立しない。 争点 イ(本件各書簡により告 簿は原告の営業秘密に当たらない上,本件書簡送付行為は被告振興協會の保有する会員情報を使用したものであって本件顧客名簿を使用していないから,7号の不正競争は成立しない。 争点 イ(本件各書簡により告知流布された事実の虚偽性)について(原告の主張)ア本件各書簡は,原告の顧客である幼稚園・保育園や保護者に対して,以下の事実を告知流布するものである。 原告が行っていた石井式漢字教育の事業は被告振興協會から委託されたものであり,当該事業の運営主体が原告から被告ハートウィングに変更されたこと(本件書簡①及び②)原告の顧客である幼稚園・保育園における契約の相手方が原告から被告ハートウィングに変更されたこと(本件書簡③及び④)旧教室はその名称が変更されただけであること(本件書簡⑤)被告振興協會が石井式漢字教育の事業の委託先を原告から被告ハートウィングに変更したため,今後は被告ハートウィングとの取引に変更され,絵本代金や授業料等の振込先は被告ハートウィングの口座となること(本件書簡②及び④)イ原告が行う事業は被告振興協會から委託されたものでないから,上記ア及びの事実は虚偽である。また,顧客との契約の相手方が変更されたことも,振込先が変更されたこともないから,同及びの事実は虚偽である。さらに,旧教室については運営主体が変わったから同の事実も虚偽であって,以上はいずれも原告の営業上の利益を害するものである。 (被告ハートウィング,被告C,被告振興協會及び被告Dの主張)- 15 -本件各書簡は,石井式漢字教育関連事業につき,顧客との契約関係が原告から被告ハートウィングに移転した旨を記載したものでなく,被告振興協會が原告への委託を解除して新たに被告ハートウィングへ委託し,同被告が上記事業を行うことになった旨,能力開発教室の名称を変更した旨を から被告ハートウィングに移転した旨を記載したものでなく,被告振興協會が原告への委託を解除して新たに被告ハートウィングへ委託し,同被告が上記事業を行うことになった旨,能力開発教室の名称を変更した旨を記載したものであり,これらの事実はいずれも虚偽ではない。 争点 ウ(本件書簡送付行為に係る被告らの責任原因)について(原告の主張)ア被告ハートウィング及び被告振興協會は原告と競争関係にあり,同被告らは当事者として,被告C及び被告Dはそれぞれ代表者として本件書簡送付行為に関与したから,15号の不正競争が成立する。 イ本件書簡送付行為は,原告の顧客を誤信させ,原告から顧客を奪取し,被告ハートウィングに利益を得させるためにされた違法な行為である。 被告Aは,被告Cと意を通じて本件書簡送付行為に加担した。また,被告ハートウィング,被告C,被告振興協會及び被告Dは,送付主体又はその代表者としてこれに関与したから,本件書簡送付行為について上記被告らの共同不法行為が成立する。被告Dについては,被告Cに被告振興協會の印鑑を所持させて任せていただけであるとしても,そのことに重大な過失がある。 ウ被告ハートウィング及び被告振興協會は,それぞれ代表者である被告C及び被告Dが職務として行った上記行為につき,会社法350条又は特定非営利活動促進法8条に基づく損害賠償責任を負う。 エ被告Cは,被告ハートウィングの代表取締役として本件書簡送付行為に関与したものであり,職務を行うについて悪意又は重過失があるから,会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負う。 (被告Aの主張)被告Aは本件書簡送付行為に関与していないから,不法行為責任を負うこ- 16 -とはない。 (被告ハートウィング,被告C,被告振興協會及び被告Dの主張)ア前記で主張したとおり,本件各書簡の内 被告Aは本件書簡送付行為に関与していないから,不法行為責任を負うこ- 16 -とはない。 (被告ハートウィング,被告C,被告振興協會及び被告Dの主張)ア前記で主張したとおり,本件各書簡の内容は虚偽でないから,15号の不正競争も不法行為も成立しない。 イ被告振興協會は営利を目的としない特定非営利活動法人であり,原告と競争関係にないから,被告振興協會に15号の不正競争は成立しない。 ウ被告Dは本件各書簡の作成や送付にかかわっておらず,本件書簡送付行為が被告振興協會の行為と評価されることはない。また,被告C及び被告Dが個人として責任を負うことはなく,被告ハートウィング又は被告振興協會が代表者である被告C又は被告Dの行為につき損害賠償責任を負うこともない。さらに,被告Cにつき取締役としての第三者に対する損害賠償責任も生じない。 損害の有無及びその額等(原告の主張)ア原告は,本件財産処分行為③~⑤により後記~の損害を被り,これに本件財産処分行為①及び②並びに本件顧客情報流出行為及び本件書簡送付行為を合わせた被告らの一連の違法行為によって後記~の損害を被った。その合計額は,9892万0867円である。 新教室の賃借に要した費用295万円本件財産処分行為③により旧教室が使用できなくなり,新教室のための建物を賃借しなければならなくなったので,そのために要した費用295万円(保証金236万円,礼金59万円)が損害となる。 絵本等の代金相当額との差額2763万4207円本件財産処分行為④は絵本や教育教材の在庫を代金1647万6893円で譲渡するものであったが,上記絵本等は本来販売すべき幼稚園・保育園に対する「園納価」で評価した場合には合計4411万1100- 17 -円で販売されるものであった。そのため,原告は上記代金との差 で譲渡するものであったが,上記絵本等は本来販売すべき幼稚園・保育園に対する「園納価」で評価した場合には合計4411万1100- 17 -円で販売されるものであった。そのため,原告は上記代金との差額である2763万4207円の損害を被った。 備品の再取得に要した費用418万6660円本件財産処分行為⑤は原告が事業に利用していた備品全てを17万円で売却するものであったので,原告は備品を再取得しなければならず,そのために少なくとも435万6660円を要した。したがって,原告は,これらの差額418万6660円相当の損害を被った。 逸失利益4515万円原告は,本件財産処分行為①により許諾された「石井式漢字教育」の商標及び本件顧客情報流出行為により開示された本件顧客名簿を使用して行われた本件書簡送付行為によって顧客の信用を失い,さらに,本件財産処分行為②~⑤により本件倉庫及び旧教室を使用しての絵本の販売及び教室の運営ができなくなったため,平成24年度以降,59の幼稚園・保育園から取引関係を解消された。これら幼稚園・保育園との年間取引額は合計4515万円であり,原告は逸失利益として少なくとも同額の損害を被った。 無形損害1000万円原告は,本件財産処分行為により事業活動に必要な在庫等を失い,資金のない状態で新教室を確保して再出発しなければならない状況に追い込まれた。さらに,本件顧客情報流出行為及び本件書簡送付行為への対応を余儀なくされ,社内は混乱状態に陥った。原告は,これらにより無形損害を被っており,その額は1000万円を下らない。 弁護士費用相当額900万円上記~の損害額の合計8992万0867円の約1割の弁護士費用が被告らの違法行為と相当因果関係のある損害となる。 イ被告らの過失相殺の主張は争う。 - 18 -(被告らの主 相当額900万円上記~の損害額の合計8992万0867円の約1割の弁護士費用が被告らの違法行為と相当因果関係のある損害となる。 イ被告らの過失相殺の主張は争う。 - 18 -(被告らの主張)ア争う。原告の主張のうち~については,本件財産処分行為はいずれも必要性があってされたものであるから,相当因果関係がない。また,原告が顧客との取引を停止した原因は,それまで被告A又は被告Cを個人的に信頼して取引を継続してきた各々の顧客が,原告は取引先として相当でないと判断した結果にすぎないから,同についても被告らの行為との因果関係はない。さらに,同については,原告社内の混乱はF及びGによる原告の乗っ取りが原因であること,原告が従前と変わりなく新教室で事業活動を行っていることからして,損害の発生も因果関係も認められない。 イ本件訴訟は,F及びGが被告Aを原告の代表取締役から降ろして会社を乗っ取ろうとしたことから始まり,原告の運転資金を調達するために提起された。また,本件書簡送付行為は,原告が被告Aを解任した旨の虚偽の内容の文書を送付したことを契機とし,これに対抗する目的で行ったものである。したがって,原告の側に重大な過失があるから,過失相殺をすべきである。 第3当裁判所の判断 争点 (本件財産処分行為に係る被告らの責任原因)について被告A及び被告B原告は,被告A及び被告Bは本件財産処分行為につき原告の取締役としての任務を怠った責任がある旨主張するので,以下,検討する。 ア前記前提事実に加え,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 被告Aは平成16年頃から原告の代表取締役を務めていたが,原告は恒常的に資金不足の状態にあり,被告Aは,被告Aが代表取締役を退任する際に弁済するとの約定で,原告に対し合計数千万 事実 が認められる。 被告Aは平成16年頃から原告の代表取締役を務めていたが,原告は恒常的に資金不足の状態にあり,被告Aは,被告Aが代表取締役を退任する際に弁済するとの約定で,原告に対し合計数千万円に及ぶ貸付けをしていた。(甲62,乙イ2~10,15,被告A)- 19 -被告Aは,平成24年4月28日に被告Aの取締役解任等を目的とする株主総会の招集請求を受け,株主間の対立関係に鑑み,代表取締役を退任することは避けられないと判断した。また,原告の財務状況に照らし,貸付金(被告Aの計算では当時の残高は約2000万円であった。)の弁済を受けることは困難であると考えた。そこで,被告Aは,原告の保有する絵本等を被告ハートウィングに売却して弁済資金を調達すること,被告Aの退任後は被告ハートウィングに能力開発教室を運営させることを企図し,被告ハートウィングの代表者であるとともに被告振興協會の事務局長を務める被告Cとの間で,絵本等の在庫を代金1647万6893円で被告ハートウィングに売却すること(本件財産処分行為④),絵本等を保管中の本件倉庫につき,被告A及びその長男と原告の間の賃貸借契約を解約し(同②),被告ハートウィングが絵本等を保管できるようにすること,旧教室の建物賃借人の地位を被告振興協會に譲渡し(同③),被告ハートウィングが同所で教室を開けるようにすること,上記建物及び本件倉庫にある原告の備品類を被告ハートウィングに17万円で売却すること(同⑤)を約した。なお,被告Dは,被告Cに被告振興協會の業務を任せており,これらの行為に関与していなかった。(甲8~10,12,63,乙イ1,15,乙ロ1,乙ハ7,被告A,被告C,被告D)原告は,同年6月20日,被告ハートウィングに上記絵本等を引き渡して代金1647万6893円を受領し,被告Aは, た。(甲8~10,12,63,乙イ1,15,乙ロ1,乙ハ7,被告A,被告C,被告D)原告は,同年6月20日,被告ハートウィングに上記絵本等を引き渡して代金1647万6893円を受領し,被告Aは,この代金を主たる原資として,原告から上記の貸付金の弁済として1650万円の支払を受けた。(甲11の1,被告A)同月24日に原告の株主総会が開かれ,被告Aが代表取締役を辞任した。翌25日,新たに原告の代表取締役となったEの代理人弁護士が旧教室のある建物を訪れ,原告の印鑑,通帳等の引渡しを受けたが,賃借- 20 -人の地位が原告から被告振興協會に譲渡されているとして,同建物への立入りを拒否された。原告は,同所での能力開発教室の運営を継続することができなくなったことから,近隣(最寄駅である恵比寿駅の周辺)の建物を同月28日までに賃借し,新教室を開設した。また,業務に必要な絵本やカード等の教材,封筒等を発注したが,原告にはその資金がなかったので,E及びその関係者から金銭を借り入れた。一方,被告ハートウィングは,本件倉庫及びそこに保管された絵本等の引渡しを受け,旧教室の建物を使用して能力開発教室の運営を開始した。(甲13,15の1~7,35,48の1~5,49の1及び2,60,乙ハ5,原告代表者)イまず,被告Aの任務懈怠の有無についてみるに,上記事実関係によれば,本件財産処分行為②~⑤により原告は能力開発教室を運営する建物及びパソコンその他備品類と絵本等の在庫といった事業の継続に不可欠な場所及び物品を失うことになったのであり,被告Aが代表取締役を退任した後の原告において石井式漢字教育の事業運営に著しい支障が生じたことは明らかである。しかも,被告Aは,そのような結果が生じることを認識した上で,自己の貸付金を回収し,被告ハートウィングに能力開 任した後の原告において石井式漢字教育の事業運営に著しい支障が生じたことは明らかである。しかも,被告Aは,そのような結果が生じることを認識した上で,自己の貸付金を回収し,被告ハートウィングに能力開発教室を運営させるという自己及び第三者の利益を図る目的で,上記行為に及んだということができる。そして,その行為時において近い将来に退任することが避けられなかったとしても,代表取締役の地位にある以上は,退任後の原告の事業運営に支障が生じないよう職務を遂行すべきものであるから,被告Aは代表取締役としての任務を怠ったものと解すべきである。 一方,本件財産処分行為①については,商標権の使用許諾契約が株主総会の招集請求より3か月以上前の同年1月11日付けで締結されており(甲7。なお,本件財産処分行為②は,解約申入書は同年4月24日付けであるが,実際の申入れは上記招集請求より後にされたと認められる。甲- 21 -63。これに対し,本件財産処分行為①については,上記契約の日付が実際と異なることはうかがわれない。),許諾をした目的等は明らかでなく,任務懈怠に当たるとみることはできない。 ウ次に,被告Bについてみるに,本件の証拠上,本件財産処分行為②~⑤が原告の取締役会において議論又は報告の対象となったことその他被告Aが本件財産処分行為②~⑤に及ぶことを事前若しくは事後に認識し,又は認識し得たことはうかがわれず,被告Bが被告Aの行為につき是正措置を講じることは困難であったということができる。したがって,被告Bにつき監視義務違反等の任務懈怠があったとは認められない。 エこれに対し,被告Aは,本件財産処分行為②~⑤は原告の経営状況を改善するために必要かつ合理的な行為であり,絵本等の譲渡の対価も低廉でないから,任務懈怠はない旨主張する。 そこで判断するに,本件 エこれに対し,被告Aは,本件財産処分行為②~⑤は原告の経営状況を改善するために必要かつ合理的な行為であり,絵本等の譲渡の対価も低廉でないから,任務懈怠はない旨主張する。 そこで判断するに,本件倉庫の賃貸借契約を解約し,旧教室の賃借人の地位を譲渡して賃料債務の負担をなくすこと(本件財産処分行為②及び③),絵本等を売却してその代金を借入金の弁済等に充てること(同④及び⑤)は,それ自体としては原告の債務を減らすものである。しかし,前記イのとおり原告の業務運営に著しい支障を来す上に,被告Aが自らの貸付金の回収目的で行ったことに照らせば,譲渡の対価が適切であったとしても,代表取締役として任務を怠ったとの評価は免れない。したがって,被告Aの上記主張を採用することはできない。 被告ハートウィング及び被告C原告は,本件財産処分行為につき,被告ハートウィングは不法行為責任及び代表者である被告Cの不法行為についての会社法350条による責任を負う旨,被告Cは不法行為責任及び同法429条1項による責任を負う旨主張するので,以下,検討する。 ア前記前提事実及び前記ア認定の事実によれば,被告ハートウィングは,- 22 -本件財産処分行為①において商標権の使用許諾の,同④において絵本等の譲渡の,同⑤において備品等の譲渡の相手方となり,また,同②の賃貸借契約の解約後に本件倉庫を,同③の賃借人の地位の譲渡後に旧教室の建物を使用している。以上のうち本件財産処分行為①については,被告Aの任務懈怠が認められないのと同様の理由により,被告ハートウィングの不法行為も成立しないと解される。一方,本件財産処分行為②~⑤についてみると,これらは前記イのとおり原告の事業運営に著しい支障を来すものであり,被告Cは,原告の社長代行という立場にもあったのであるから(前記前提事 いと解される。一方,本件財産処分行為②~⑤についてみると,これらは前記イのとおり原告の事業運営に著しい支障を来すものであり,被告Cは,原告の社長代行という立場にもあったのであるから(前記前提事実ウ),原告にそのような結果が生じることを当然に認識しながら,被告Aとの間で,被告ハートウィングが本件財産処分行為④及び⑤の相手方となり,同②及び③の受益者となることに合意したとみることができる。そうすると,被告ハートウィングは,被告Aの任務懈怠に加担して,原告に損害を加えたということができるから,原告に対し不法行為責任を負うと解するのが相当である。 これに対し,被告ハートウィングは,譲渡の相手方となることは単なる契約行為であるなどと主張するが,以上に説示したところに照らし,これを採用することはできない。 イ次に,被告Cの責任についてみるに,前記アの事実関係及び上記アで判示したところによれば,被告Cは,本件財産処分行為②~⑤に積極的に関与して被告ハートウィングに原告に対する不法行為責任を負わせたものであり,取締役としての職務を行うにつき悪意又は重大な過失があったというほかない。そうすると,会社法429条1項に基づき,被告ハートウィングの上記不法行為により原告に生じた損害につき損害賠償責任を負うと解すべきものである。 ウ他方,被告Cは,被告ハートウィングの代表者又は被告振興協會の事務局長として本件財産処分行為②~⑤に関与したにとどまり,個人として不- 23 -法行為責任を負うことを基礎付ける事情があると認めるに足りる証拠はない。そうすると,Cの不法行為責任及び会社法350条に基づく被告ハートウィングの責任をいう原告の主張は失当と解される。 被告振興協會及び被告D原告は,本件財産処分行為につき,被告振興協會は不法行為責任及び代表者であ の不法行為責任及び会社法350条に基づく被告ハートウィングの責任をいう原告の主張は失当と解される。 被告振興協會及び被告D原告は,本件財産処分行為につき,被告振興協會は不法行為責任及び代表者である被告Dの不法行為についての特定非営利活動促進法8条に基づく責任を負う旨,被告Dは不法行為責任を負う旨主張する。 そこで判断するに,被告振興協會は本件財産処分行為③において賃借人の地位を譲り受けているが,これは被告ハートウィングに使用させるためのものであり,被告振興協會が特段の利益を享受しているとは認められない。また,被告振興協會が他の本件財産処分行為に関与したことはうかがわれない。 さらに,本件財産処分行為は被告Cと被告Aの間で行われたものであり,被告Dが具体的に関与したことを示す証拠はない。そうすると,被告振興協會及び被告Dのいずれについても不法行為の成立を認めることはできず,被告Dの行為についての被告振興協會の損害賠償責任も認められないと解するのが相当である。 争点 ア(本件顧客名簿の営業秘密該当性)について証拠(乙イ16,証人G,被告B,被告C)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア原告は,旧教室において事業活動をしていた当時,新たに絵本の注文を受けるなどして幼稚園・保育園又は能力開発教室の生徒等の顧客を獲得した場合,まず,その顧客の名称又は氏名及び住所等が記載された注文書をファイルに綴って取引先を整理していた。次いで,原告は,一覧性を高めるため,この注文書等を基にして幼稚園等の一覧表を作成した。これら紙媒体の顧客情報は,原告の旧教室のある建物内の事務所に保管されており,原告の従業員及び旧教室で働く講師であればいつでも見ることが可能であ- 24 -った。 イ原告は,上記アに加え,幼稚園・保育園の名称,住所,園長名 告の旧教室のある建物内の事務所に保管されており,原告の従業員及び旧教室で働く講師であればいつでも見ることが可能であ- 24 -った。 イ原告は,上記アに加え,幼稚園・保育園の名称,住所,園長名,園児数等や,生徒及び保護者の氏名,住所,家族構成等の詳細な情報をパソコンに入力して本件顧客名簿を作成し,電磁データの形で保存し,管理していた。このパソコンを起動するためにはパスワードが必要であったが,本件顧客名簿のデータにはパスワードの設定はなかった。 上記認定事実によれば,原告の顧客に関する情報は,情報の種類や量,一覧性の程度に違いはあるものの,注文書等を綴ったファイル,紙媒体の一覧表及びパソコン内の本件顧客名簿という三つの態様で管理されており,うち前2者については閲覧や利用が制限されていなかったと認められる。また,本件顧客名簿についても,パスワードの管理状況やアクセスし得る者の範囲を的確に認定するに足りる証拠はない。そうすると,本件顧客名簿に含まれる情報が秘密として管理されていたということはできず,本件顧客名簿が不正競争防止法2条6項所定の営業秘密に当たるとは認められないと解するのが相当である。 争点 ウ(本件顧客名簿流出行為に係る被告らの責任原因)について本件顧客名簿が営業秘密に当たるとは認められないことは上記のとおりであり,7号及び8号の不正競争に基づく原告の請求は全て理由がない。 原告は,本件顧客名簿が営業秘密に当たらないとしても,原告にとって重要な財産的価値を有するものであるから,その開示及び取得は不法行為を構成する旨主張する。 そこで判断するに,事業者の営業上の情報は不正競争防止法2条6項所定の営業秘密に該当するものに限りその開示,取得等が不正競争とされるのであり,営業秘密に該当しない場合に直ちに不法行為の成立を認めること こで判断するに,事業者の営業上の情報は不正競争防止法2条6項所定の営業秘密に該当するものに限りその開示,取得等が不正競争とされるのであり,営業秘密に該当しない場合に直ちに不法行為の成立を認めることは相当でない。また,本件の証拠上,原告のいう本件顧客名簿の具体的内容は明らかでなく,これが法律上保護される利益に当たり,その取得及び使用が違- 25 -法であると解すべき事情を認めるに足りない。したがって,不法行為をいう原告の主張も失当というべきである。 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件顧客情報流出行為に係る原告の請求は認められない。 争点 ア(本件顧客名簿の営業秘密該当性及び使用の有無)について前記2のとおり,本件顧客名簿が不正競争防止法2条6項所定の営業秘密に当たるとは認められないから,その余の点について検討するまでもなく,本件書簡送付行為が7号の不正競争に当たるとの原告の主張は失当である。 争点 イ(本件各書簡により告知流布された事実の虚偽性)について本件各書簡の送付先及びその記載内容は前記前提事実のとおりであり,これによれば,本件各書簡は,原告の顧客であった幼稚園・保育園又は旧教室における能力開発教室の生徒の保護者らに対し,(a)絵本の配本,能力開発教室の運営等を行う石井式漢字教育の事業主体が原告から被告ハートウィングに移行された旨(本件書簡①及び③),(b)授業料,絵本の代金等の振込先が原告ではなく被告ハートウィングになった旨(同②及び④),(c)旧教室が名称を改めて授業を再開した旨(同⑤)の事実を告知流布するものと認められる。そして,上記(a)及び(b)は,本件各書簡に接した者に対し,従前原告と幼稚園・保育園又は保護者の間で締結されていた絵本の売買,旧教室での授業の提供等に係る契約の当事者が原告 するものと認められる。そして,上記(a)及び(b)は,本件各書簡に接した者に対し,従前原告と幼稚園・保育園又は保護者の間で締結されていた絵本の売買,旧教室での授業の提供等に係る契約の当事者が原告から被告ハートウィングに変更されたと理解させるものということができる。 これに対し,被告ハートウィング,被告C,被告振興協會及び被告Dは,本件書簡①~④は被告ハートウィングが石井式漢字教育関連事業を行うことになった旨を記載したものであるなどと主張する。そこで判断するに,本件各書簡には原告に「代わり」又は「代わって」被告ハートウィングが石井式漢字教育を行うことになった(本件書簡①及び②),被告ハートウィングに「移行」した(同①),被告ハートウィングとの「取引となりました」(同- 26 -③),「会社が変わりました」(同④)などと記載されている(甲19,20,25,26)。これらの文言に照らせば,上記各書簡は単に被告ハートウィングが石井式漢字教育の事業を開始した旨の事実ではなく,顧客との契約関係を含めて事業主体が原告から被告ハートウィングに変更された旨の事実を告知流布するものと解すべきである。したがって,上記被告らの主張を採用することはできない。 進んで,本件各書簡により告知流布された前記各事実が虚偽であるかについてみるに,前記前提事実に加え,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告は,平成24年6月24日に被告Aが代表取締役を退任するまで,旧教室を運営する,幼稚園・保育園に絵本等を販売する,各園で課外教室を開催するなど石井式漢字教育に関する事業を行っていた。同月28日以降,原告は能力開発教室を新教室に移転したが,講師の多くは残留しており,幼稚園・保育園への絵本等の販売や課外教室の開催についても従前どおり続けるこ 井式漢字教育に関する事業を行っていた。同月28日以降,原告は能力開発教室を新教室に移転したが,講師の多くは残留しており,幼稚園・保育園への絵本等の販売や課外教室の開催についても従前どおり続けることとして,その旨を幼稚園・保育園及び能力開発教室の生徒の保護者らに通知した。(甲14,23,24)イ被告ハートウィングは,上記株主総会の後,原告が行っていたのと同様の石井式漢字教育に関する事業を行うこととし,旧教室のあった建物に新たに「育み能力開発教室」との名称の教室を開設した。被告Cは,被告ハートウィングの代表取締役として,同被告との間で新たに絵本等の販売や課外教室の開催といった取引を行うこと及び同被告の能力開発教室の生徒となることを勧誘する目的で,原告の顧客であった幼稚園・保育園や,旧教室に通っていた生徒の保護者宛に本件各書簡を送付した。(甲19~21,25,26,29,被告C)ウ原告は,本件各書簡を受け取った多数の幼稚園・保育園から問合せを受けたため,その内容が誤りである旨の書面を送付したほか,各園を訪問し- 27 -て口頭で説明するなどの対応をした。また,能力開発教室に生徒を通わせていた保護者の中には,授業料を被告ハートウィングの口座に振り込み,その後返金を求めた者もあった。(甲22,24,27,証人G)上記事実関係によれば,石井式国語教育に関する事業主体が原告から被告ハートウィングに変更されたとみることはできない。また,本件の証拠上,原告の顧客である幼稚園・保育園や保護者との契約関係につきその主体が原告から被告ハートウィングに変更されたことはうかがわれない。したがって,本件書簡①~④に記載された前記(a)及び(b)の事実は虚偽であると解すべきである。 また,上記事実関係によれば,被告ハートウィングが運営を始めた教室は旧 されたことはうかがわれない。したがって,本件書簡①~④に記載された前記(a)及び(b)の事実は虚偽であると解すべきである。 また,上記事実関係によれば,被告ハートウィングが運営を始めた教室は旧教室とは運営主体が異なっており,授業を再開したものでないから,本件書簡⑤に記載された同(c)の事実も虚偽と認められる。 そして,本件各書簡は,原告の顧客に対して被告ハートウィングとの取引を勧誘するものであり,これが原告の営業上の信用を害することは明らかと解される。 そうすると,本件各書簡を送付した者が原告と競争関係にあると認められれば,その送付行為は15号の不正競争に当たると判断すべきものとなる。 争点 ウ(本件書簡送付行為に係る被告らの責任原因)について本件各書簡を送付した被告ハートウィングは,石井式漢字教育に関する事業を行う者であり,原告と競争関係にあることは明らかである。したがって,被告ハートウィングは本件書簡送付行為により原告に生じた損害を賠償すべきものである。 原告は,被告ハートウィングに加え,被告C,被告振興協會及び被告Dについても15号の不正競争が成立する旨主張する。 そこで判断するに,被告Cは,被告ハートウィングの代表取締役であるにとどまり,個人として原告と競争関係にあるとも,本件各書簡を送付したと- 28 -も認められない。 被告振興協會は,被告ハートウィングと連名で本件書簡②の差出人となっているが,前記5に認定した事実関係によれば,本件書簡送付行為は専ら被告Cが被告ハートウィングの代表者として行ったものであり,被告振興協會が本件各書簡の作成又は送付に関与したと認めるに足りる証拠はない。なお,その代表者の被告Dは,本件書簡②の送付後に事務局長であった被告Cからその旨の報告を受けているが(被告D),これをもって被告振興協會 件各書簡の作成又は送付に関与したと認めるに足りる証拠はない。なお,その代表者の被告Dは,本件書簡②の送付後に事務局長であった被告Cからその旨の報告を受けているが(被告D),これをもって被告振興協會に15号の不正競争の成立を認めることは相当でない。 被告Dについては,本件各書簡の作成又は送付に関与したと認めるべき証拠がない上,原告と競争関係にあるとは認められない。 したがって,原告の上記主張はいずれも失当というべきである。 原告は,また,本件書簡送付行為につき,被告A,被告ハートウィング,被告C,被告振興協會及び被告Dの不法行為等を主張する。 そこで判断するに,本件書簡送付行為は被告Aが原告の代表取締役を退任した後に被告ハートウィングにより行われたものであり,被告Aがこれに関与したとうかがわせる証拠はない。したがって,被告Aの不法行為は認められない。 被告ハートウィングについては,上記のとおり15号の不正競争が成立するので,これと別個に不法行為責任を認めるに及ばない。 被告Cについては,本件財産処分行為に関する前記1の判示と同様の理由により,会社法429条1項の責任を負うと解すべきであるが,個人としての不法行為責任は認められない。また,被告Cの不法行為を前提とする被告ハートウィングの会社法350条による責任も否定される。 被告振興協會及び被告Dについては,上記のとおり本件書簡送付行為に関与したと認めるに足りないので,不法行為責任(代表者である被告Dの行為に関する被告振興協會の責任を含む。)を負うことはない。 - 29 - 争点 (損害の有無及びその額等)について以上によれば,本件財産処分行為②~⑤につき被告A(任務懈怠),被告ハートウィング(不法行為)及び被告C(取締役の第三者責任)が,本件書簡送付行為につき被告ハートウィング(15号の の額等)について以上によれば,本件財産処分行為②~⑤につき被告A(任務懈怠),被告ハートウィング(不法行為)及び被告C(取締役の第三者責任)が,本件書簡送付行為につき被告ハートウィング(15号の不正競争)及び被告C(取締役の第三者責任)が損害賠償責任を負うべきものとなるので,原告がこれら行為により被った損害について検討する。 ア原告は,本件財産処分行為③により新教室の賃借のために要した費用295万円相当の損害を被った旨主張するところ,証拠(甲49の1及び2)及び弁論の全趣旨によれば,これを認めることができる。 イ原告は,本件財産処分行為④につき,本来販売すべき「園納価」による評価額4411万1100円と被告ハートウィングから受領した代金1647万6893円の差額2763万4207円が損害になる旨主張する。 そこで判断するに,原告が「園納価」の根拠として提出するのは「商品一覧表在庫数」と題する表のみであり(甲47),裏付けに欠ける。これに加え,本件財産処分行為④の当時,著作権侵害を理由に絵本の出版等の差止めを認める第一審判決が言い渡されており(前記前提事実イ),本件財産処分行為④がなかった場合に原告が主張する額で販売ができたかは不明であること,上記代金額が絵本の原価等に比し低廉であるとうかがわせる証拠はないこと,上記代金が被告Aからの借入金の弁済に充てられ,原告の債務が減少していることを考慮すると,原告が本件財産処分行為④によって原告主張の上記損害を被ったと認めることはできない。 ウ原告は,本件財産処分行為⑤につき,備品等の譲渡価格17万円と再取得に要した費用435万6660円の差額418万6660円相当の損害を被った旨主張する。 そこで判断するに,本件財産処分行為⑤は,本件倉庫及び旧教室にあった備品一式を売却するものであった 万円と再取得に要した費用435万6660円の差額418万6660円相当の損害を被った旨主張する。 そこで判断するに,本件財産処分行為⑤は,本件倉庫及び旧教室にあった備品一式を売却するものであったから(甲12),原告が新教室におけ- 30 -る能力開発教室の運営等の業務を行うためには新たに備品を購入する必要があったと解され,これに要した費用は本件財産処分行為⑤により生じた損害と認められる。 その額についてみるに,原告は上記費用を支出したことの証拠として請求書等を提出するところ,うち220万2795円分(甲48の1~5)は,平成24年7月~12月に封筒,カード,シール帳等の作成に要したものであり,原告の主張を認めることができる。一方,平成25年版以降の教材,パンフレット等や平成25年5月以降に増刷されたカード,書籍等(甲48の6~14)は,本件財産処分行為⑤がなかったとしても生じた支出と解され,同行為により生じた損害と認めることはできない。そうすると,原告の主張は203万2795円(220万2795円-17万円)の限度で認められる。 エ原告は,本件財産処分行為②~⑤及び本件書簡送付行為により逸失利益として4515万円の損害を被った旨主張する。 そこで判断するに,証拠(甲60,証人G,被告A)及び弁論の全趣旨によれば,原告と取引関係があった幼稚園・保育園は100を超えていたが,うち数十か所が本件書簡送付行為の後にこれを解消したこと,その中には被告Aあるいは同被告の代表取締役退任の際に原告を退職した従業員との関係が密接な園が含まれていることが認められる。一方,原告は「平成24年から取引が無くなった園」と題する一覧表を提出するのみであり(甲50),園ごとの取引解消の時期及び理由は明らかでない。また,原告が被告Aの退任後間もなく新教室を開 められる。一方,原告は「平成24年から取引が無くなった園」と題する一覧表を提出するのみであり(甲50),園ごとの取引解消の時期及び理由は明らかでない。また,原告が被告Aの退任後間もなく新教室を開設し,石井式漢字教育に関する事業を再開したこと(前記前提事実),本件各書簡を受け取った幼稚園・保育園に対しその内容が誤りである旨を説明したこと(前記5ウ)に照らすと,本件財産処分行為②~⑤及び本件書簡送付行為が取引関係解消の直接的な原因になったとはいい難い。そうすると,原告が上記損害を被っ- 31 -たと認めるに足りる証拠はないと解すべきである。 オ原告は,本件財産処分行為②~⑤及び本件書簡送付行為により無形損害として1000万円の損害を被った旨主張する。 そこで判断するに,本件財産処分行為②~⑤については,前記ア及びウの財産的損害が生じたと認められるものの,上記のとおり原告が石井式漢字教育に関する事業を再開したことに照らすと,これとは別に原告のいう無形損害を被ったとは認められない。一方,本件書簡送付行為については,前記5のとおり原告の営業上の信用を害する虚偽の事実をその顧客らに告知流布する行為であり,その記載を信じて被告ハートウィングに授業料を振り込んだ保護者がいたことを考慮すると,信用毀損による損害が生じているとみることができる。その額は,本件各書簡の記載内容,送付先その他本件の諸事情を考慮すると,100万円と認めるのが相当である。 カ本件訴訟の経過,上記認定の損害額等を考慮すると,被告ハートウィングの不法行為及び不正競争と相当因果関係があるものとして同被告に負担させるべき弁護士費用相当の損害額は60万円と認める。 以上によれば,原告は本件財産処分行為②~⑤により前記ア及びウの合計498万2795円,本件書簡送付行為により同オの あるものとして同被告に負担させるべき弁護士費用相当の損害額は60万円と認める。 以上によれば,原告は本件財産処分行為②~⑤により前記ア及びウの合計498万2795円,本件書簡送付行為により同オの100万円の損害を被ったと認められるので,被告Aは498万2795円,被告ハートウィングはこれらに同カの弁護士費用を加えた658万2795円,被告Cは598万2795円の各損害金及び遅延損害金を原告に対し賠償すべきものであり,これらは同一の損害の賠償を目的とするものであるから,金額が重複する限度でいわゆる不真正連帯債務の関係となる。なお,被告Cに対する会社法429条1項に基づく請求の遅延損害金の起算日は,訴状送達の日の翌日である平成27年7月23日とすべきである。 被告A,被告ハートウィング及び被告Cは過失相殺を主張するが,本件の証拠上,本件財産処分行為②~⑤及び本件書簡送付行為がされることについ- 32 -て原告の側に落ち度があるといった事情を認めるに足りる証拠はない。 第4 結論 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部裁判長裁判官長谷川浩二裁判官萩原孝基裁判官中嶋邦人- 33 -(別紙)当事者目録原告株式会社石井式国語教育研究会同訴訟代理人弁護士鴨田哲郎三枝充早田由布子大久保修一被告A(以下「被告A」という。)被告B(以下「被告B」という。)上記両名訴訟代理人弁護士樋口卓也淺海菜保子今枝利光被告株式会社ハートウィング(以下「被告ハートウィング」という。)被告C(以下「被告C」という。)- 34 -上記両名訴訟代理人弁護士羽根一成被告特定非営利活動法人日本漢字教育振興協 社ハートウィング(以下「被告ハートウィング」という。)被告C(以下「被告C」という。)- 34 -上記両名訴訟代理人弁護士羽根一成被告特定非営利活動法人日本漢字教育振興協會(以下「被告振興協會」という。)被告D(以下「被告D」という。)上記両名訴訟代理人弁護士松田純一同訴訟復代理人弁護士岩月泰頼兼定尚幸

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