平成24年4月25日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成22年(行ウ)第10号行政処分義務付等請求事件口頭弁論終結日平成24年1月25日判決ア市○○○原告(亡A訴訟承継人) B(以下「原告B」という。)ア市●●●原告(亡A訴訟承継人) C(以下「原告C」という。)県ス市△△△原告(亡A訴訟承継人) D(以下「原告D」という。)上記3名訴訟代理人弁護士甲同乙同丙同丁ア市▲▲▲被告ア市同代表者市長イ同訴訟代理人弁護士ウ同エ同訴訟復代理人弁護士オ 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告Bに対し,50万円及びこれに対する平成22年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Cに対し,25万円及びこれに対する平成22年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告Dに対し,25万円及びこれに対する平成22年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要原告らは,承継前原告亡Aの妻子であるところ,承継前原告亡Aに対してされた平成19年度から平成23年度までの障害者自立支援法に基づく介護給付費支給決定が裁量権を逸脱濫用したものであり,同決定をしたア市福祉事務所長によるこの期間の一連の行為が不法行為に当たると主張して,被告に対し 年度から平成23年度までの障害者自立支援法に基づく介護給付費支給決定が裁量権を逸脱濫用したものであり,同決定をしたア市福祉事務所長によるこの期間の一連の行為が不法行為に当たると主張して,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として,慰謝料(原告Bにつき50万円,原告C及び原告Dにつき各25万円)及びこれに対する不法行為の後で訴状送達日の翌日である平成22年9月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 本件では,当初,承継前原告亡Aが,①平成23年5月31日付けの支給決定変更申請却下決定(平成21年度分)の取消し,②亡Aが平成21年5月26日にした支給決定変更申請(平成21年度分)に対する,重度訪問介護の支給量を1か月651時間とする支給決定の義務付け,③平成23年5月31日付けの重度訪問介護の支給量を1か月268時間とする支給決定(平成22年度分)の取消し,④亡Aが平成22年4月14日にした支給申請(平成22年度分)に対する,重度訪問介護の支給量を1か月651時間とする支給決定の義務付け,⑤平成23年2月25日付けの重度訪問介護の支給量を1か月268時間とする介護給付費支給決定(平成23年度分)の取消し,⑥亡Aが平成 23年1月28日にした支給申請(平成23年度分)に対する,重度訪問介護の支給量を1か月651時間とする支給決定の義務付け及び⑦慰謝料100万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めていた。 しかし,亡Aが,平成23年9月8日に死亡したため,上記①ないし⑥の請求に係る訴訟は当然に終了し,国家賠償請求に係る訴訟は原告らに承継された。 そして,本件第6回口頭弁論期日で,上記①ないし⑥の請求に係る訴訟が終了した旨が宣言された。 1 法令等の定め 障害者自立支援法(以 当然に終了し,国家賠償請求に係る訴訟は原告らに承継された。 そして,本件第6回口頭弁論期日で,上記①ないし⑥の請求に係る訴訟が終了した旨が宣言された。 1 法令等の定め 障害者自立支援法(以下「自立支援法」という。)には,以下の定めがある。 アこの法律は,障害者基本法の基本的な理念にのっとり,身体障害者福祉法,知的障害者福祉法,精神保健及び精神障害者福祉に関する法律,児童福祉法その他障害者及び障害児の福祉に関する法律と相まって,障害者及び障害児が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう,必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行い,もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに,障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする(1条)。 イこの法律において「障害福祉サービス」とは,居宅介護,重度訪問介護,同行援護,行動援護,療養介護,生活介護,児童デイサービス,短期入所,重度障害者等包括支援,共同生活介護,施設入所支援,自立訓練,就労移行支援,就労継続支援及び共同生活援助をいう(5条1項前段)。 ウこの法律において「重度訪問介護」とは,重度の肢体不自由者であって常時介護を要する障害者につき,居宅における入浴,排せつ又は食事の介護その他の厚生労働省令で定める便宜及び外出時における移動中の介護を総合的に供与することをいう(5条3項)。 エ自立支援給付は,当該障害の状態につき,介護保険法の規定による介護給付,健康保険法の規定による療養の給付その他の法令に基づく給付であって政令で定めるもののうち自立支援給付に相当するものを受けることができるときは政令で定める限度において,当該政令で定める給付以外の給付であって国又は地方公共団体 の給付その他の法令に基づく給付であって政令で定めるもののうち自立支援給付に相当するものを受けることができるときは政令で定める限度において,当該政令で定める給付以外の給付であって国又は地方公共団体の負担において自立支援給付に相当するものが行われたときはその限度において,行わない(7条)。 オ介護給付費,特例介護給付費,訓練等給付費又は特例訓練等給付費(以下「介護給付費等」という。)の支給を受けようとする障害者又は障害児の保護者は,市町村の介護給付費等を支給する旨の決定(以下「支給決定」という。)を受けなければならない(19条1項)。 カ支給決定は,障害者又は障害児の保護者の居住地の市町村が行うものとする(19条2項本文)。 キ支給決定を受けようとする障害者又は障害児の保護者は,厚生労働省令で定めるところにより,市町村に申請をしなければならない(20条1項)。 ク市町村は,20条1項の申請があったときは,政令で定めるところにより,市町村審査会が行う当該申請に係る障害者等の障害程度区分に関する審査及び判定の結果に基づき,障害程度区分の認定を行うものとする(21条1項)。 ケ市町村審査会は,前項の審査及び判定を行うに当たって必要があると認めるときは,当該審査及び判定に係る障害者等,その家族,医師その他の関係者の意見を聴くことができる(21条2項)。 コ市町村は,20条1項の申請に係る障害者等の障害程度区分,当該障害者等の介護を行う者の状況,当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者の障害福祉サービスの利用に関する意向その他の厚生労働省令で定める事項を勘案して介護給付費等の支給の要否の決定を行うものとする(22条1項)。 サ市町村は,支給決定を行う場合には,障害福祉サービスの種類ごとに月を単位として厚生労働 労働省令で定める事項を勘案して介護給付費等の支給の要否の決定を行うものとする(22条1項)。 サ市町村は,支給決定を行う場合には,障害福祉サービスの種類ごとに月を単位として厚生労働省令で定める期間において介護給付費等を支給する障害福祉サービスの量(以下「支給量」という。)を定めなければならない(22条4項)。 シ支給決定は,厚生労働省令で定める期間(以下「支給決定の有効期間」という。)内に限り,その効力を有する(23条)。 ス支給決定障害者等は,現に受けている支給決定に係る障害福祉サービスの種類,支給量その他の厚生労働省令で定める事項を変更する必要があるときは,厚生労働省令で定めるところにより,市町村に対し,当該支給決定の変更の申請をすることができる(24条1項)。 セ市町村は,前項の申請又は職権により,22条1項の厚生労働省令で定める事項を勘案し,支給決定障害者等につき,必要があると認めるときは,支給決定の変更の決定を行うことができる(24条2項前段)。 ソ市町村は,支給決定障害者等が,支給決定の有効期間内において,都道府県知事が指定する障害福祉サービス事業を行う者(以下「指定障害福祉サービス事業者」という。)若しくは障害者支援施設から当該指定に係る障害福祉サービス(以下「指定障害福祉サービス」という。)を受けたとき,又はのぞみの園から施設障害福祉サービスを受けたときは,厚生労働省令で定めるところにより,当該支給決定障害者等に対し,当該指定障害福祉サービス又は施設障害福祉サービス(支給量の範囲内のものに限る。)に要した費用(食事の提供に要する費用,居住若しくは滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用又は創作的活動若しくは生産活動に要する費用のうち厚生労働省令で定める費用を除く。)について,介護給付費 に要した費用(食事の提供に要する費用,居住若しくは滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用又は創作的活動若しくは生産活動に要する費用のうち厚生労働省令で定める費用を除く。)について,介護給付費又は訓練等給付費を支給する(29条1項)。 タ 29条1項の指定障害福祉サービス事業者の指定は,厚生労働省令で定めるところにより,障害福祉サービス事業を行う者の申請により,障害福 祉サービスの種類及び障害福祉サービス事業を行う事業所ごとに行う(36条1項)。 チ市町村は,厚生労働省令で定めるところにより,地域生活支援事業として,次に掲げる事業を行うものとする(77条1項)。 ① 障害者等が障害福祉サービスその他のサービスを利用しつつ,自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう,地域の障害者等の福祉に関する各般の問題につき,障害者等,障害児の保護者又は障害者等の介護を行う者からの相談に応じ,必要な情報の提供及び助言その他の厚生労働省令で定める便宜を供与するとともに,障害者等に対する虐待の防止及びその早期発見のための関係機関との連絡調整その他の障害者等の権利の擁護のために必要な援助を行う事業 障害者自立支援法施行令には,以下の定めがある。 自立支援法7条の政令で定める給付は,次の表の上欄に掲げるものとし,同条の政令で定める限度は,同表の上欄に掲げる給付につき,それぞれ,同表の下欄に掲げる限度とする(2条)。 介護保険法の規定による介護給付(高額医療合算介護サービス費の支給を除く。),予防給付(高額医療合算介護予防サービス費の支給を除く。)及び市町村特別給付受けることができる給付 障害者自立支援法施行規則(以下「本件規則」という。)には,以下の定めがある。 ア自立支援法5条2項及び3項に規定する厚生労働省 給を除く。)及び市町村特別給付受けることができる給付 障害者自立支援法施行規則(以下「本件規則」という。)には,以下の定めがある。 ア自立支援法5条2項及び3項に規定する厚生労働省令で定める便宜は,入浴,排せつ及び食事等の介護,調理,洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の生活全般にわたる援助とする(1条の3)。 イ自立支援法20条1項の規定に基づき支給決定の申請をしようとする障 害者又は障害児の保護者は,次の各号に掲げる事項を記載した申請書を,市町村に提出しなければならない(7条1項)。 ⑥ 当該申請に係る障害福祉サービスの具体的内容ウ自立支援法22条1項に規定する厚生労働省令で定める事項は,次の各号に掲げる事項とする(12条)。 ① 自立支援法20条1項の申請に係る障害者等の障害程度区分又は障害の種類及び程度その他の心身の状況② 当該申請に係る障害者等の介護を行う者の状況③ 当該申請に係る障害者等に関する介護給付費等の受給の状況④ 当該申請に係る障害児が現に児童福祉法42条に規定する知的障害児施設,同法43条に規定する知的障害児通園施設,同法43条の2に規定する盲ろうあ児施設,同法43条の3に規定する肢体不自由児施設又は同法43条の4に規定する重症心身障害児施設を利用している場合には,その利用の状況⑤ 当該申請に係る障害者が現に介護保険法の規定による保険給付に係る居宅サービスを利用している場合には,その利用の状況⑥ 当該申請に係る障害者等に関する保健医療サービス又は福祉サービス等(第3号から前号までに掲げるものに係るものを除く。)の利用の状況⑦ 当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者の障害福祉サービスの利用に関する意向の具体的内容⑧ 当該申請に係る障害 ービス等(第3号から前号までに掲げるものに係るものを除く。)の利用の状況⑦ 当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者の障害福祉サービスの利用に関する意向の具体的内容⑧ 当該申請に係る障害者等の置かれている環境⑨ 当該申請に係る障害福祉サービスの提供体制の整備の状況エ自立支援法22条4項に規定する厚生労働省令で定める期間は,1月間とする(13条)。 オ自立支援法23条に規定する厚生労働省令で定める期間は,支給決定を 行った日から当該日が属する月の末日までの期間と次の各号に掲げる障害福祉サービスの種類の区分に応じ,当該各号に規定する期間を合算して得た期間とする(15条1項)。 ① 重度訪問介護 1月間から12月間までの範囲内で月を単位として市町村が定める期間カ自立支援法77条1項1号に規定する厚生労働省令で定める便宜は,訪問等の方法による障害者等,障害児の保護者又は介護者に係る状況の把握,必要な情報の提供及び助言並びに相談及び指導,障害者等,障害児の保護者又は介護者と市町村,指定障害福祉サービス事業者等,医療機関等との連絡調整,地域における障害福祉に関する関係者による連携及び支援の体制に関する協議を行うための会議の設置その他の障害者等,障害児の保護者又は介護者に必要な支援とする(65条の10)。 自立支援法に基づく介護給付費支給決定については,被告において,「ア市介護給付費における支給決定基準」(以下「被告支給基準」という。)が定められており,重度訪問介護支給決定基準及び非定型の支給決定基準について,以下の定めがある(甲総3,乙総1)。 ア重度訪問介護支給決定基準 対象者障害程度区分4以上で,次の項目にいずれにも該当する者とする。 ① 二肢以上に麻痺等があるこ 定めがある(甲総3,乙総1)。 ア重度訪問介護支給決定基準 対象者障害程度区分4以上で,次の項目にいずれにも該当する者とする。 ① 二肢以上に麻痺等があること② 障害程度区分の認定調査項目のうち「歩行」「移乗」「排尿」「排便」のいずれも「できる」以外と認定されていること 基本時間の算出別紙1被告支給基準1のとおり,障害程度区分と介護力の大きさをA・B・Cの3段階に分け,基本時間を算出する。 加算時間の算出 別紙1被告支給基準2のとおり,「住居の状況・世帯の状況に関すること」4項目,「本人の身体の状況に関すること」7項目で該当する項目におのおの評価点数を設ける。 別紙1被告支給基準2で算出した合計点数の区分ごとに,別紙1被告支給基準3のとおり加算割合を乗じて加算時間数を算出する。 減算時間の算出別紙1被告支給基準4のとおり,以下の項目について減算する。 ① ケアホーム入居者の経過的給付の場合,障害程度区分ごとに減算を行う。 ② 日中活動系サービスを利用している場合,障害程度区分ごとに減算を行う。 ③ 介護保険対象者の場合,障害程度区分ごとに減算を行う。 イ非定型の支給決定基準利用者の希望する支給決定量が,ア市が必要として勘案した支給決定案を著しく超過する場合は,ア市介護給付等の支給に関する審査会(以下「本件審査会」という。)に諮り,意見を聞いたうえで支給決定を行うものとする。 2 争いのない事実等 当事者等ア亡A(昭和◇◇年◇月◇◇日生)は,ア市内に居住していた者であり,筋萎縮性側索硬化症(ALS)による両上肢機能全廃,両下肢機能全廃,音声機能喪失等の障害を有しており, い事実等 当事者等ア亡A(昭和◇◇年◇月◇◇日生)は,ア市内に居住していた者であり,筋萎縮性側索硬化症(ALS)による両上肢機能全廃,両下肢機能全廃,音声機能喪失等の障害を有しており,身体障害者等級1級の認定を受けていたが(甲A22・4頁),平成23年9月8日,死亡した(甲A36)。 原告Bは,亡Aの妻であり,亡Aと同居していた。原告C及び原告Dは,亡Aと原告Bの子であり,亡Aとは同居していなかった。原告ら以外に亡Aの相続人はいない(甲A36ないし38)。 イ被告は,普通地方公共団体であり,自立支援法に基づく介護給付費支給決定及び支給変更決定を行う権限を有している(同法19条1項,2項,24条1項,2項本文。上記1オカスセ)。 そして,被告においては,同法22条1項による介護給付費等の支給の要否の決定に関するア市長に属する権限が,ア市福祉事務所長(以下「処分行政庁」という。)に委任されている(ア市福祉事務所長に対する事務委任規則2条)。 本件の経緯ア平成19年度の支給決定 亡Aは,平成19年2月5日,処分行政庁に対し,自立支援法に基づく介護給付費支給申請をした(乙A2)。 これに対し,処分行政庁は,同月13日付けで,重度訪問介護の支給量を1か月130時間とする支給決定をした(乙A3。以下「平成19年度当初決定」という。)。 亡Aは,同年8月24日,処分行政庁に対し,平成19年度当初決定につき,自立支援法に基づく支給決定変更申請をした(乙A4)。 これに対し,処分行政庁は,同月28日付けで,支給量を1か月46時間増量し,1か月176時間とする支給決定変更決定をした(乙A5)。 イ平成20年度の支給決定 亡Aは,平成20年3月14日,処分行政庁に対し,重度訪問介護の支給量を 支給量を1か月46時間増量し,1か月176時間とする支給決定変更決定をした(乙A5)。 イ平成20年度の支給決定 亡Aは,平成20年3月14日,処分行政庁に対し,重度訪問介護の支給量を1か月620時間とする介護給付費支給申請をした(乙A6,7)。 これに対し,処分行政庁は,同年4月15日付けで,支給量を1か月233時間とする支給決定をした(乙A7)。 亡Aは,同年6月12日,処分行政庁に対し,上記の支給決定につき,支給量を1か月620時間とする支給決定変更申請をした(甲A4, 乙A14)。 処分行政庁は,被告支給基準における非定型(上記1イ)に該当すると判断して,同年7月8日付けで,重度訪問介護の支給量を1か月268時間とする支給決定変更決定をした(甲A4ないし6,乙A14,弁論の全趣旨)。 ウ平成21年度の支給決定 亡Aは,平成21年1月22日,処分行政庁に対し,介護給付費支給申請をした(乙A8)。 処分行政庁は,亡Aの健康状態や希望する支給量等を勘案し,被告支給基準における非定型(上記1イ)に該当すると判断して,同年2月17日付けで,重度訪問介護の支給量を1か月268時間とする支給決定をした(乙A9,12。以下「平成21年度支給決定」という。)。 亡Aは,同年5月26日,処分行政庁に対し,平成21年度支給決定につき,支給決定変更申請をした(乙A10)。 これに対し,処分行政庁は,同年6月9日付けで,支給決定変更申請却下決定をした(乙A11。以下「平成21年度却下決定1」という。)。 亡Aは,同年7月18日,平成21年度却下決定1を不服として,●●県知事(以下「カ」という。)に対して審査請求をしたところ,カは,同年9月7日付けで,平成21年度却下決定1を取り消す旨の裁決をし 亡Aは,同年7月18日,平成21年度却下決定1を不服として,●●県知事(以下「カ」という。)に対して審査請求をしたところ,カは,同年9月7日付けで,平成21年度却下決定1を取り消す旨の裁決をした(甲A10)。 処分行政庁は,同年10月6日付けで,再度,平成21年度却下決定1と同じ支給決定変更申請却下決定をした(乙A12。以下「平成21年度却下決定2」という。)。 亡Aは,同年12月9日,平成21年度却下決定2を不服として,カに対して審査請求をしたところ,カは,平成22年3月29日付けで,平成21年度却下決定2を取り消す旨の裁決をした(甲A11)。 処分行政庁は,平成22年5月24日付けで,再度,平成21年度却下決定1及び2と同じ支給決定変更申請却下決定をした(甲A1。以下「平成21年度却下決定3」という。)。 亡Aは,平成22年7月16日,平成21年度却下決定3を不服として,カに対して審査請求をしたところ,カは,平成23年3月15日付けで,平成21年度却下決定3を取り消す旨の裁決をした(甲A19。 以下,同裁決と上記の裁決を併せて「平成21年度各取消裁決」という。)。 処分行政庁は,平成23年5月31日付けで,再度,平成21年度却下決定1ないし3と同じ支給決定変更申請却下決定をした(甲A26。 以下「平成21年度却下決定4」という。)。 亡Aは,平成23年6月24日,平成21年度却下決定4を不服として,カに対して審査請求をした(甲A33)。 エ平成22年度の支給決定 亡Aは,平成22年4月14日,処分行政庁に対し,介護給付費支給申請をした(甲A7)。 処分行政庁は,亡Aの健康状態や希望する支給量等を勘案し,被告支給基準における非定型(上記1イ)に該当すると判断して,同年5月 月14日,処分行政庁に対し,介護給付費支給申請をした(甲A7)。 処分行政庁は,亡Aの健康状態や希望する支給量等を勘案し,被告支給基準における非定型(上記1イ)に該当すると判断して,同年5月24日付けで,重度訪問介護の支給量を1か月268時間とする介護給付費支給決定をした(甲A2,8,13。以下「平成22年度当初決定」という。)。 亡Aは,同年7月16日,平成22年度当初決定を不服として,カに対して審査請求をしたところ,カは,平成23年3月15日付けで,平成22年度当初決定を取り消す旨の裁決をした(甲A19。以下,「平成22年度取消裁決」といい,平成21年度各取消裁決と併せて「本件各取消裁決」という。)。 処分行政庁は,平成23年5月31日付けで,支給量を1か月268時間とする支給決定をした(甲A27。以下「平成22年度取消後決定」という。)。 亡Aは,平成23年6月24日,平成22年度取消後決定を不服として,カに対して審査請求をした(甲A33)。 オ平成23年度の支給決定 亡Aは,平成23年1月28日,処分行政庁に対し,重度訪問介護の支給量を1か月651時間以上とする介護給付費支給申請をした(甲A21・3頁)。 処分行政庁は,被告支給基準における非定型(上記1イ)に該当すると判断して,同年2月25日付けで,重度訪問介護の支給量を1か月268時間とする介護給付費支給決定をした(甲A20,22,23。 以下「平成23年度支給決定」という。)。 亡Aは,同年4月1日,平成23年度支給決定を不服として,カに対して審査請求をした(甲A29)。 3 争点 国家賠償請求が認められるか 原告らの損害額 4 争点に対する当事者の主張 争点(国家賠償請求が認められるか)(原告ら て,カに対して審査請求をした(甲A29)。 3 争点 国家賠償請求が認められるか 原告らの損害額 4 争点に対する当事者の主張 争点(国家賠償請求が認められるか)(原告らの主張)ア 1日24時間の公的介護の必要性 以下のような原告の身体状況からすれば,亡Aには1日24時間の介護が必要であった。 a 亡Aは,筋萎縮性側索硬化症(ALS)のため,わずかに眼球及び目蓋を動かすことができること以外に,自力で身体を動かすことがで きなかった。 b 亡Aは,自力で呼吸することができないので,気管にカニューレを装着し,人工呼吸器を使用して呼吸を行っていた。介護者が,カニューレを2週間ごとに交換し,人工呼吸器を管理する必要があった。 c 亡Aは,自力で喀痰の排出及び唾液の嚥下をすることができないので,介護者が喀痰及び唾液を吸引する必要があった。亡Aは,下記fのとおり,コミュニケーションを十分に取ることができなかったので,介護者は,亡Aの表情を見たり,喀痰がのどにからむ音を聞いて,適宜吸引を行う必要があり,その回数も一定ではなかった。そのため,介護者は,昼夜を問わず,常に,亡Aに付き添って,吸引が必要な状態かどうかを確認する必要があった。 d 亡Aは,自力で食事を摂取することができなかったので,胃瘻を造設し,胃瘻から1日3回,1回約90分かけて栄養を摂取していた。 介護者は,この栄養摂取を介助し,その際,亡Aの目の動きを確認し,流入の速度を調節する必要があった。 e 亡Aは,自力で排尿及び排便をすることができなかった。排尿については,膀胱に管を通して直接体外へ尿を排出していたが,介護者が,排出した尿を処分する必要があった。排便については,週に2回,胃瘻から下剤を注入し,その翌日に介護者が複数人で排便の作 った。排尿については,膀胱に管を通して直接体外へ尿を排出していたが,介護者が,排出した尿を処分する必要があった。排便については,週に2回,胃瘻から下剤を注入し,その翌日に介護者が複数人で排便の作業をしていた。また,おむつ交換も1日1回していたが,複数人で対応する必要があった。 f 亡Aは,発声できないので,介護者と会話することができなかった。 そのため,亡Aの介護に慣れた介護者が,目を見開く様子を読み取ってコミュニケーションを取る必要があった。また,亡Aは,様態に変化が生じても発声できないので,1日24時間絶えず,誰かが亡Aのそばで待機し,異変があればすぐに察知できるようにしておく必要が あった。 g 亡Aは,痛み等を知覚することはできたが,自力で体位交換することはできなかった。そのため,介護者が,適宜亡Aの体位交換をする必要があった。 以下の事情を踏まえると,亡Aの妻の原告Bによる単独の介護は不可能であった。 a 上記のとおり,亡Aには1日24時間の介護が必要であったが,原告Bにも,一人の人間として,睡眠,休養,趣味の時間が必要であったし,家事の時間も必要であった。 b 原告Bは,高齢である上,高血圧症(中等度),左高度難聴,右変形性膝関節症(高度),自律神経失調症の診断を受けている。 cALS患者の介護は長時間の重労働であるから,原告Bが単独で亡Aの介護を行うことは,その身体的,精神的負担の限界を超えていた。 そのため,原告Bが,介護疲れで眠り込んでしまい,喀痰及び唾液の吸引ができずに,亡Aが呼吸困難に陥る可能性もあった。 d 亡Aの人工呼吸器に異常が発生しても,原告B一人では素早く的確な対応を取ることができず,亡Aが呼吸困難に陥る可能性があった。 e 原告Bによる単独の介護が困難であったので,実際には もあった。 d 亡Aの人工呼吸器に異常が発生しても,原告B一人では素早く的確な対応を取ることができず,亡Aが呼吸困難に陥る可能性があった。 e 原告Bによる単独の介護が困難であったので,実際には,原告Bとヘルパーによって,1日24時間の介護が行われていた。 イ平成19年度ないし平成23年度の決定(以下「本件各決定」という。) 自立支援法,本件規則及び厚生労働省から出された平成19年4月13日付け事務連絡(甲総2)によれば,市町村は,自立支援法に基づく介護給付費支給決定する際には,申請者の心身の状況及び介護者の状況等個々人の個別事情を適切に考慮し,申請者の日常生活に支障が生じないように配慮して支給量を決定しなければならない。市町村が,支給量の上限を設定することはできない。 上記アの亡Aの事情を適切に考慮すれば,1日24時間の公的介護を前提とした支給量が必要であった。しかし,処分行政庁は,亡Aの個別事情を調査又は考慮せず,1日8時間という事実上の上限を機械的に適用して,本件各決定の介護給付費の支給量を決定した。また,処分行政庁は,原告Bが1日12時間という長時間の過酷な介護を行うことが可能であるという前提で,支給量を決定した。しかし,このように,障害者を抱える家族は自己の生活を犠牲にして我慢するべきであるという考え方は誤りである。 障害者権利条約19条は,締約国に対して,障害のあるすべての人に対し,「他の者と平等の選択の自由をもって地域社会で生活する平等の権利」を認め,締約国は,「障害のある人が,他の者との平等を基礎として,居住地及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること,並びに特定の生活様式で生活するよう義務付けられないこと」等を確保することとしている。日本国政府は,同条約を批准していないが,同 礎として,居住地及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること,並びに特定の生活様式で生活するよう義務付けられないこと」等を確保することとしている。日本国政府は,同条約を批准していないが,同条約に署名している。条約法に関するウィーン条約18条は,批准を条件として条約に署名した場合には,その署名の時から条約の当事国とならない意図を明らかにするまでの間,条約の趣旨及び目的を失わせることとなるような行為を行わないようにする義務があるとしている。したがって,処分行政庁は,障害者権利条約の趣旨に反するような行為を行ってはならない。 また,同条約が定める「他の者と平等の選択の自由をもって地域社会で生活する平等の権利」は,日本においても,憲法13条,14条1項,22条1項,25条によって保障されており,住む地域によって異なる取扱いを受けることがあってはならない。 現在,多くの自治体で,重度の身体障害者に1日24時間の公的介護が提供されており,1日24時間以上の公的介護が提供されている例も 多くある。北海道や岐阜県では,ALS患者で家族と同居している場合でも,1日ほぼ24時間の公的介護が認められている。ア市内では,1日24時間の公的介護が認められている例はないが,他の市区町村では,重度の障害者に1日24時間の公的介護が提供されているのであるから,亡Aにも1日24時間の公的介護が提供されるべきであった。 しかるに,本件各決定は,1日24時間の公的介護を前提とした支給量とはなっていないので,障害者権利条約及び憲法に反している。 亡Aに1日24時間の介護サービスが行われていたのは,生命維持に必要不可欠であるためやむを得ないという訪問介護事業所やヘルパーの善意によるものにすぎない。したがって,介護給付費の支給量を決定する際に,これ 日24時間の介護サービスが行われていたのは,生命維持に必要不可欠であるためやむを得ないという訪問介護事業所やヘルパーの善意によるものにすぎない。したがって,介護給付費の支給量を決定する際に,これを考慮して,支給量を減らすことは許されない。 したがって,本件各決定は,処分行政庁に与えられた裁量権を逸脱濫用した違法な処分である。 ウ国家賠償請求 処分行政庁は,平成19年度当初決定時には,亡Aが介護保険と併せて1日24時間の公的介護を求めていたこと,亡Aが1日24時間の介護を必要とする身体状況にあること,亡Aの妻の原告Bが1日に何時間も原告の介護をすることができない健康状態であること,その他亡Aの介護環境等を十分に把握していた。 その後,処分行政庁は,実際,原告Bが十分に亡Aを介護できないので,訪問介護事業所が無償で亡Aに1日24時間の介護サービスを行わざるを得なくなっていることや,訪問介護事業所による介護体制が,過酷なヘルパーの勤務体制等のために,いつ崩壊してもおかしくない状況であることを把握した。 しかるに,処分行政庁は,何の根拠もないのに,1か月268時間という支給量を事実上の上限とし,亡Aの個別事情を考慮することな く,本件各決定をした。 平成21年度については,重度訪問介護の支給量を1か月620時間とする支給決定変更申請に対する処分行政庁の却下決定が,3回にもわたって,カの裁決によって取り消されたにもかかわらず,処分行政庁は,その都度,支給決定変更申請却下決定を繰り返した。また,平成22年度については,重度訪問介護の支給量を1か月268時間とする処分行政庁の介護給付費支給決定が,カの裁決によって取り消されたにもかかわらず,処分行政庁は,再度支給量を1か月268時間とする支給決定をした。カは,いず 度訪問介護の支給量を1か月268時間とする処分行政庁の介護給付費支給決定が,カの裁決によって取り消されたにもかかわらず,処分行政庁は,再度支給量を1か月268時間とする支給決定をした。カは,いずれも,「本人がどのような生活をしていきたいのかを十分に考慮する必要がある」,「上限枠を設けるのは適当でないと考えられる」などとして,取消しの裁決をしたにもかかわらず,処分行政庁は,同裁決に従わなかった。 以上によれば,処分行政庁は,公務員として尽くすべき注意義務を怠り,漫然と違法な平成19年度当初決定から平成23年度支給決定までの一連の介護給付費支給決定等をした。 したがって,国家賠償法1条1項による損害賠償請求は認められる。 (被告の主張)ア 1日24時間の公的介護の必要性について 亡Aには1日24時間の介護が必要であったとの主張は,否認する。 a 原告らは,1日24時間継続した人工呼吸器の管理が必要であると主張するが,実際の亡Aの介護では,人工呼吸器を時折確認するという程度の対応しかとられていなかった。そして緊急の場合には,警報機の作動によって緊急事態を察知することができるので,早期発見が可能である。したがって,死亡等の不測の事態は通常考えられないから,1日24時間緊張した状態で介護する必要はなかった。 b 喀痰及び唾液の吸引については,亡Aの場合,1時間に2回程度必 要であったというのであるから,吸引のために1日24時間絶えず介護する必要はなかった。 c 亡Aの介護に携わっていた訪問介護員(ヘルパー)は,1人が5日連続で,もう1人が2日連続で介護サービスを行っていたということであるが,1日24時間緊張を強いられるような介護サービスを行っていたとは考えられず,気を付けながら亡Aの様子を見守るという程度であった 続で,もう1人が2日連続で介護サービスを行っていたということであるが,1日24時間緊張を強いられるような介護サービスを行っていたとは考えられず,気を付けながら亡Aの様子を見守るという程度であったと考えられる。 亡Aの妻の原告Bによる単独の介護は不可能であったとの主張は,否認する。 亡Aに対して,ヘルパーが1日24時間の介護サービスを行っていたことは認めるが,その介護サービスの状況は,上記cの程度であったから,これに対して1日24時間の公的介護を提供しなければならない必要性はなかった。 これに対し,原告らは,1日24時間の公費の給付がなされれば,亡Aを介護するヘルパーを確保できるので,亡Aへの生命の危険が少なくなる旨主張する。しかし,仮にそのような公費の給付がされても,質,量ともに十分なヘルパーを確保できるとは限らないので,1日24時間の公的介護を必要とする理由にはならない。 ア市内には,人工呼吸器を装着し,胃瘻を増設し,喀痰及び唾液の吸引を必要とするALS患者が他にもいるが,1日24時間の介護サービスが行われていたのは,亡Aともう1人だけであり,残りの者は,家族による介護を受けており,1日24時間の公的介護の提供を要望してもいない。●●県☆☆市では,ALS患者に1日23時間の公的給付がなされた例があるが(甲総60),これは1人暮らしの者であるから,亡Aとは生活環境が異なる。したがって,他の事例は,亡Aに1日24時間の公的介護を必要とする理由にはならない。 イ本件各決定について自立支援法は,障害者について障害福祉サービスを支給するかどうか,支給する場合にいかなる種類の障害福祉サービスをどれだけの支給量で支給するかという判断については,勘案事項に係る調査結果を踏まえた市町村の合理的な裁量に委ねてい 障害福祉サービスを支給するかどうか,支給する場合にいかなる種類の障害福祉サービスをどれだけの支給量で支給するかという判断については,勘案事項に係る調査結果を踏まえた市町村の合理的な裁量に委ねている。 処分行政庁は,1日8時間という上限を設定しておらず,個別具体的な事情を考慮して本件各決定の支給量を決定した。 そして,亡Aの症状や生活状況,家族の状況,経済状況,ア市内に在住するALS患者に対する支給量の実績,1日24時間の公的介護を提供しない市町村が全国的にもかなりの数に上っていること等に照らすと,処分行政庁が,原告らの主張する重度訪問介護の支給量を1か月651時間とする支給決定をしなくても,裁量権を逸脱濫用したとはいえない。 ウ国家賠償請求について 上記イのとおり,本件各決定には,処分行政庁に与えられた裁量権の逸脱濫用はないので,原告らの主張する重度訪問介護の支給量を1か月651時間とする支給決定をしなくても,処分行政庁が公務員として尽くすべき注意義務を怠ったとはいえない。 そして,処分行政庁は,1日8時間という支給量の上限を設けていない。亡Aの身体状況,家族状況,他の受給者との整合性,他のサービスの利用状況を適切に勘案し,公費であることも考慮して,本件各決定の支給量を決定したのである。 本件各取消裁決は,いずれも,処分行政庁と亡Aが再度協議し,支給量を検討すべきであることを理由とするのであって,1か月268時間という支給量が不足であることを理由とするものではない。 そして,処分行政庁は,本件各取消裁決の後,直ちに亡A宅を訪問して家族やヘルパーから聴き取り調査をし,その調査結果を総合的に 判断して支給量を決定した。また,平成21年度却下決定1については,自立支援協議会運営会議における却下との結論を基に決定 訪問して家族やヘルパーから聴き取り調査をし,その調査結果を総合的に 判断して支給量を決定した。また,平成21年度却下決定1については,自立支援協議会運営会議における却下との結論を基に決定している。 したがって,処分行政庁は,本件各取消裁決を無視したわけではない。 以上によれば,処分行政庁は尽くすべき注意義務を怠り,漫然と本件各決定をしたわけではない。したがって,国家賠償法1条1項による損害賠償請求は認められない。 争点(原告らの損害額)(原告らの主張)亡Aは,平成19年度以来,ずっと1日24時間の介護が必要な状態にあった。亡Aの妻の原告Bも健康ではなく,亡Aの介護を十分にできる状態ではなかった。そうであるにもかかわらず,亡Aは,本件各決定の結果,十分な公的介護を受けることができず,毎日命の危険にさらされるような生活を余儀なくされ,住み慣れた地域で自分らしく生活する人としての当然の権利を侵害されていた。これによって亡Aが負う精神的苦痛を慰謝するための慰謝料は,少なく見積もっても100万円を下回らなかった。 そして,原告らは亡Aの相続人であり,相続分は,原告Bが2分の1,原告C及び原告Dが4分の1ずつである。 (被告の主張)否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実上記第2の1,2の事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 筋萎縮性側索硬化症(ALS)について(甲総8,16,24,29の1 ないし3,42)ア筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは,大脳皮質運動野の上位運動ニューロン(UMN)と脳幹及び脊髄前角の下位運動ニューロン(LMN)の両方が障害される進行性の神経変性疾患であり,難病指定されている。人口10万人当たり2ないし7人の割合で発 皮質運動野の上位運動ニューロン(UMN)と脳幹及び脊髄前角の下位運動ニューロン(LMN)の両方が障害される進行性の神経変性疾患であり,難病指定されている。人口10万人当たり2ないし7人の割合で発症するが,紀伊半島はALSの多発地帯であるとされている。初発症状は筋萎縮と筋力低下がほとんどで,手足の脱力から始まり,次第に全身の筋力低下が進行し,運動神経が障害を受ける。ALSの神経徴候は,UMNの障害によるものとして,腱反射亢進,病的反射陽性,四肢の痙性麻痺,強制笑い及び強制泣きがあり,LMNの障害によるものとして,四肢体幹筋の萎縮,弛緩性麻痺,球麻痺(舌の萎縮,線維束性収縮,嚥下障害,構語障害),顔面筋委縮及び筋力低下等がある。進行性の経過をとり,平均で3年から5年で呼吸不全に陥る。 ALSの原因は不明で,有効な治療法はなく,ALS治療薬も軽度に進行を抑制するにとどまる。そして,嚥下障害に対しては,経管栄養や胃瘻造設を検討し,呼吸不全に対しては,患者の意思を確認しながら人工呼吸器の装着を検討することになる。 イ人工呼吸器のトラブルとしては,人工呼吸器そのものの故障や人工呼吸器取扱い時の出血,細菌感染,喀痰による気道の閉塞等が起こりうる。人工呼吸器を装着したALS患者の場合,そのようなトラブルが発生すれば,自発呼吸ができないので,生命の危険が生じる。そのため,1日24時間の監視が必要であり,不測の事態が発生したときに10分以上放置されないことが望まれるとされている。 ウ ALS患者は,自力で喀痰及び唾液の排出ができないので,気管内に喀痰が貯留し,窒息状態になるため,気管内吸引が必要である。1回の気管内吸引に要する時間は数分程度であり,1日の吸引回数について1日に10回から50回くらい(平均29回)との調査結果もある(甲総29の3・ 貯留し,窒息状態になるため,気管内吸引が必要である。1回の気管内吸引に要する時間は数分程度であり,1日の吸引回数について1日に10回から50回くらい(平均29回)との調査結果もある(甲総29の3・ 6頁)。気管内吸引は,本来,看護師が行うのが最も望ましいが,在宅での人工呼吸器の使用では,家族に気管内吸引を指導して,日常的な吸引を行う必要があるとされている。また,ホームヘルパーによる気管内吸引についても,手技を獲得した者が,ALS患者に限って,家族との契約関係において行うことが許容されている。 本件の経緯ア平成19年度の支給決定 亡Aは,平成19年2月5日,処分行政庁に対し,自立支援法に基づく介護給付費支給申請をした(乙A2)。 これに対し,処分行政庁は,同月13日付けで,重度訪問介護の支給量を1か月130時間とする支給決定(平成19年度当初決定)をした(乙A3)。 亡Aは,同年8月24日,処分行政庁に対し,平成19年度当初決定につき,自立支援法に基づく支給決定変更申請をした(乙A4)。 これに対し,処分行政庁は,同月28日付けで,支給量を1か月46時間増量し,1か月176時間とする支給決定変更決定をした(乙A5)。 イ平成20年度の支給決定 亡Aは,平成20年3月14日,処分行政庁に対し,重度訪問介護の支給量を1か月620時間とする介護給付費支給申請をした(乙A6,7)。 これに対し,処分行政庁は,亡Aの健康状態や希望する支給量等を勘案し,被告支給基準における非定型(上記第2の1イ)に従って決定することとした(乙A7)。 そこで,処分行政庁は,以下の案を作成し,本件審査会に諮問した上で,同年4月15日付けで,支給量を1か月233時間とする支給決定をした(甲A16の1,乙A7)。 することとした(乙A7)。 そこで,処分行政庁は,以下の案を作成し,本件審査会に諮問した上で,同年4月15日付けで,支給量を1か月233時間とする支給決定をした(甲A16の1,乙A7)。 a 基本時間 1か月172時間別紙被告支給基準1で,障害程度区分6で介護力Bに該当する。 b 加算時間 1か月61時間別紙被告支給基準2の加算項目「物理的に時間を要するコミュニケーション支援が必要な場合」,「排泄介護・水分補給・体位交換等のため,夜間介護が必要な場合」及び「医療的な介護が常時必要」に該当するので,加算点が15点となる。したがって,別紙被告支給基準3によって,加算時間は,61時間(基本時間172時間×35%≒61時間(端数は切り上げ))となる。 c 合計 1か月233時間 亡Aは,同年6月12日,処分行政庁に対し,上記の支給決定につき,支給量を1か月620時間とする支給決定変更申請をした(甲A4,乙A14,弁論の全趣旨)。 被告支給基準における重度訪問介護支給決定基準(上記第2の1ア)に従った算定では1か月155時間になったため,処分行政庁は,亡Aの健康状態や希望する支給量等を勘案し,被告支給基準における非定型(上記第2の1イ)に従って決定することとした(甲A4,乙A14)。 そこで,処分行政庁は,同年7月4日,以下の案を作成し,本件審査会に諮問した(甲A5)。 a 主たる介護者である亡Aの妻原告Bの就寝時間等相当分1か月248時間=8時間×31日/月b 原告Bの体調不良等やむを得ない場合の緊急時対応分1か月20時間c 合計 1か月268時間 本件審査会は,討議を行い,同月8日,処分行政庁に対し,処分行政庁の上記の案を承認する旨の諮問結果を通知した(甲A6,16の2)。 応分1か月20時間c 合計 1か月268時間 本件審査会は,討議を行い,同月8日,処分行政庁に対し,処分行政庁の上記の案を承認する旨の諮問結果を通知した(甲A6,16の2)。 処分行政庁は,上記の諮問結果を受けて,同日付けで,支給量を1か月268時間とする支給決定変更決定をした(甲A4,乙A14,弁論の全趣旨)。 ウ平成21年度の支給決定 亡Aは,平成21年1月22日,処分行政庁に対し,介護給付費支給申請をした(乙A8)。 被告支給基準における重度訪問介護支給決定基準(上記第2の1ア)に従った算定では1か月206時間になったため,処分行政庁は,亡Aの健康状態や希望する支給量等を勘案し,被告支給基準における非定型(上記第2の1イ)に従って決定することとした(甲A39,40)。 そこで,処分行政庁は,同年2月9日,以下の案を作成し,本件審査会に諮問した(甲A40)。 a 主たる介護者である亡Aの妻原告Bの就寝時間等相当分1か月248時間=8時間×31日/月b 原告Bの体調不良等やむを得ない場合の緊急時対応分1か月20時間c 合計 1か月268時間 本件審査会は,討議を行い,同月17日,処分行政庁に対し,処分行政庁の上記の案を承認する旨の諮問結果を通知した(甲A12,16の3)。 処分行政庁は,上記の諮問結果を受けて,同日付けで,支給量を1か月268時間とする支給決定(平成21年度支給決定)をした(甲A39,乙A9)。 亡Aは,同年5月26日,処分行政庁に対し,平成21年度支給決定につき,支給決定変更申請をした(乙A10)。 これに対し,処分行政庁は,同年6月9日付けで,支給決定変更申請 却下決定(平成21年度却下決定1)をした(甲A41,乙A 平成21年度支給決定につき,支給決定変更申請をした(乙A10)。 これに対し,処分行政庁は,同年6月9日付けで,支給決定変更申請 却下決定(平成21年度却下決定1)をした(甲A41,乙A11)。 この際,本件審査会への諮問は行わなかった(弁論の全趣旨)。 亡Aは,同年7月18日,平成21年度却下決定1を不服として,カに対して審査請求をしたところ,カは,同年9月7日付けで,平成21年度却下決定1を取り消す旨の裁決をした(甲A10)。 処分行政庁は,上記の裁決を受けて,同月29日,シ病院ケアマネージャーのキ,ク療護園相談支援事業所のケ及び被告障害福祉課課長のコに参加してもらい,ケース会議を開いた。そこでは,亡Aのケアマネージャーであったキが,裁決の結果を受けて亡Aに対する介護給付費支給決定の支給量を増やすように訴えたのに対し,コが,時間数を見直さなければならないとの裁決ではないと認識していること,自立支援協議会(自立支援法77条1項1号,本件規則65条の10に基づいて設置される,地域における障害福祉に関する関係者による連携及び支援の体制に関する協議を行うための会議)に諮る意向であることを伝えた(甲A42・4頁)。 同月30日,被告の社会福祉部障害福祉課,保健所保健対策課,サ県相談支援対策整備事業アドバイザー,ア市の相談支援強化事業所,ア市の相談支援事業所が出席する自立支援協議会の運営会議において,ALS患者の在宅サービス利用に関する検討が行われた(甲A42・4,5頁)。 処分行政庁は,被告障害福祉課内での検討を経て,同年10月6日付けで,再度,平成21年度却下決定1と同じ支給決定変更申請却下決定(平成21年度却下決定2)をした(乙A12)。この際,本件審査会への諮問は行わなかった(弁論の全趣旨)。 亡 同年10月6日付けで,再度,平成21年度却下決定1と同じ支給決定変更申請却下決定(平成21年度却下決定2)をした(乙A12)。この際,本件審査会への諮問は行わなかった(弁論の全趣旨)。 亡Aは,同年12月9日,平成21年度却下決定2を不服として,カに対して審査請求をしたところ,カは,平成22年3月29日付けで, 平成21年度却下決定2を取り消す旨の裁決をした(甲A11)。 処分行政庁は,平成22年5月24日付けで,再度,平成21年度却下決定1及び2と同じ支給決定変更申請却下決定(平成21年度却下決定3)をした(甲A1)。この際,本件審査会への諮問は行わなかった(弁論の全趣旨)。 亡Aは,平成22年7月16日,平成21年度却下決定3を不服として,カに対して審査請求をしたところ,カは,平成23年3月15日付けで,平成21年度却下決定3を取り消す旨の裁決をした(甲A19)。 処分行政庁は,平成23年5月31日付けで,再度,平成21年度却下決定1ないし3と同じ支給決定変更申請却下決定(平成21年度却下決定4)をした(甲A26)。 亡Aは,平成23年6月24日,平成21年度却下決定4を不服として,カに対して審査請求をした(甲A33)。 エ平成22年度の支給決定 亡Aは,平成22年4月14日,処分行政庁に対し,介護給付費支給申請をした(甲A7・3頁)。 被告支給基準における重度訪問介護支給決定基準(上記第2の1ア)に従った算定では1か月206時間になったため,処分行政庁は,亡Aの健康状態や希望する支給量等を勘案し,被告支給基準における非定型(上記第2の1イ)に従って決定することとした(甲A7,8)。 そこで,処分行政庁は,同年5月12日,以下の案を作成し,本件審査会に諮問した(甲A8)。 a を勘案し,被告支給基準における非定型(上記第2の1イ)に従って決定することとした(甲A7,8)。 そこで,処分行政庁は,同年5月12日,以下の案を作成し,本件審査会に諮問した(甲A8)。 a 主たる介護者である亡Aの妻原告Bの就寝時間等相当分1か月248時間=8時間×31日/月b 原告Bの体調不良等やむを得ない場合の緊急時対応分1か月20時間 c 合計 1か月268時間 本件審査会は,討議を行い,同月18日,処分行政庁の上記の案を承認する旨の諮問結果を通知した(甲A13,16の4)。 処分行政庁は,上記の諮問結果を受けて,同月24日付けで,支給量を1か月268時間とする支給決定(平成22年度当初決定)をした(甲A2,7)。 亡Aは,同年7月16日,平成22年度当初決定を不服として,カに対して審査請求をしたところ,カは,平成23年3月15日付けで,平成22年度当初決定を取り消す旨の裁決(平成22年度取消裁決)をした(甲A19)。 処分行政庁は,平成22年度取消裁決を受けて,平成22年度の支給決定を再度行うこととなった。 被告支給基準における重度訪問介護支給決定基準(上記第2の1ア)に従った算定では1か月206時間になったため,処分行政庁は,亡Aの健康状態や希望する支給量等を勘案し,被告支給基準における非定型(上記第2の1イ)に従って決定することとした(甲A30,32)。 処分行政庁は,平成23年4月28日,亡Aの主治医のケ医師から,亡Aの病状及び介護の状況等についての聴き取り調査を行った(甲A32・9頁)。 処分行政庁は,同年5月16日,亡A宅を訪問して,聞き取り調査を行った(甲A32・3,6頁)。 処分行政庁は,同月18日,以下の案を作成し,本件審査会に諮問した 行った(甲A32・9頁)。 処分行政庁は,同年5月16日,亡A宅を訪問して,聞き取り調査を行った(甲A32・3,6頁)。 処分行政庁は,同月18日,以下の案を作成し,本件審査会に諮問した(甲A30)。 a 主たる介護者である亡Aの妻原告Bの就寝時間等相当分1か月248時間=8時間×31日/月b 原告Bの体調不良等やむを得ない場合の緊急時対応分 1か月20時間c 合計 1か月268時間 本件審査会は,討議を行い,同月31日,処分行政庁に対し,本件審査会の意見を基に再検討し支給決定をするように求める旨の諮問結果を通知した(甲A31)。 処分行政庁は,上記の諮問結果を受けて,同日付けで,支給量を1か月268時間とする支給決定(平成22年度取消後決定)をした(甲A27,32)。 亡Aは,平成23年6月24日,平成22年度取消後決定を不服として,カに対して審査請求をした(甲A33)。 オ平成23年度の支給決定 亡Aは,平成23年1月28日,処分行政庁に対し,重度訪問介護の支給量を1か月651時間以上とする介護給付費支給申請をした(甲A21・3頁)。 被告支給基準における重度訪問介護支給決定基準(上記第2の1ア)に従った算定では1か月206時間になったため,処分行政庁は,亡Aの健康状態や希望する支給量等を勘案し,被告支給基準における非定型(上記第2の1イ)に従って決定することとした(甲A21,22)。 そこで,処分行政庁は,同年2月10日,以下の案を作成し,本件審査会に諮問した(甲A22)。 a 主たる介護者である亡Aの妻原告Bの就寝時間等相当分1か月248時間=8時間×31日/月b 原告Bの体調不良等やむを得ない場合の緊急時対応分1か月20時間c 合計 1か 2)。 a 主たる介護者である亡Aの妻原告Bの就寝時間等相当分1か月248時間=8時間×31日/月b 原告Bの体調不良等やむを得ない場合の緊急時対応分1か月20時間c 合計 1か月268時間 本件審査会は,討議を行い,同月22日,処分行政庁に対し,処分行 政庁の上記の案を承認する旨の諮問結果を通知した(甲A23)。 処分行政庁は,上記の諮問結果を受けて,同月25日付けで,支給量を1か月268時間とする支給決定(平成23年度支給決定)をした(甲A20,21)。 亡Aは,同年4月1日,平成23年度支給決定を不服として,カに対して審査請求をした(甲A29)。 カ障害程度区分亡Aは,平成19年度当初決定の当時(上記ア),処分行政庁から,自立支援法における障害程度区分を区分6とする認定を受けていたところ(乙A3),平成22年5月,再び区分6とする認定を受けた(甲A7・9頁,21・6頁)。 亡Aの身体状況等(甲総42,60,甲A21,24の1・2,32,35,36,44,45)ア現在に至るまでの状況 亡Aは,平成17年8月ころ,ALSの症状を発現し,平成18年2月,ALSの診断を受けた。 亡Aは,平成18年8月ころ,寝たきりとなり,同年12月ころには,顔を左右に動かすことと,手首及び足首をわずかに動かすことができるだけで,発語や嚥下等が困難な状態となって,胃瘻を造設された。 亡Aは,平成19年9月ころ,呼吸が困難な状態になり,人工呼吸器を常時装着するようになった。 亡Aは,平成21年7月25日から同年8月18日まで,腸閉塞及び尿路感染症の診断で,シ病院に入院した。 また,亡Aは,平成23年2月23日から同年3月9日まで,人工呼吸器管理の問題に起因する細菌 Aは,平成21年7月25日から同年8月18日まで,腸閉塞及び尿路感染症の診断で,シ病院に入院した。 また,亡Aは,平成23年2月23日から同年3月9日まで,人工呼吸器管理の問題に起因する細菌性肺炎並びに胆嚢結石症及び右腎結石症の診断で,シ病院に入院した。 亡Aは,同年7月21日,低酸素血症及び右肺の肺炎が認められたため,シ病院に入院した。その後,一時は,炎症反応の改善が見られたが,再増悪し,両側肺炎に至り,徐々に全身状態が悪化して,同年9月8日,重症肺炎によって死亡した。 イ平成23年度当時の状況 亡Aは,全身の筋肉が麻痺しており,身体の中で動かすことができるのは眼球だけで,それ以外の部分を動かすことができなかった。また,両脚は,ひざを曲げた状態で硬直していた。そのため,ベッドの上で寝たきりの状態であり,車椅子に乗ることもできず,介助者が体位交換を行わなければならなかった。 亡Aは,自力で呼吸することができないので,人工呼吸器で呼吸を維持していた。人工呼吸器やその周辺機器等に異常が発生した場合には,介助者が,手動の人工呼吸器で,直ちに亡Aの呼吸を確保しなければならなかった。 亡Aは,自力で食物を嚥下することができないので,胃瘻で流動食を摂取していた。この流動食は,1日に3回摂取するが,気管や肺への逆流を防止するため,1回の摂取に約90分かかり,その後,使用した管の洗浄を行わなければならなかった。 亡Aは,自力でたんやつばを嚥下することができず,口や喉にたんやつばが溜まりやすく,たんやつばが気管に入ると呼吸困難や肺炎を起こす可能性があるので,介助者が,頻繁に吸引しなければならなかった。 亡Aは,自力で排尿することができないので,膀胱にカテーテルを挿入して排尿していた。 また,亡Aは 入ると呼吸困難や肺炎を起こす可能性があるので,介助者が,頻繁に吸引しなければならなかった。 亡Aは,自力で排尿することができないので,膀胱にカテーテルを挿入して排尿していた。 また,亡Aは,自力で排便することもできないので,週に2回程度,下剤を使用して排便していた。排便が完全に終わるまでに,おむつを数回交換しなければならず,上記のとおり両脚が硬直しているため,お むつの交換を介助者が1人で行うことは困難であった。 亡Aは,発声することができず,眼球の動きによって,他者からの問いかけに対し肯否の意思表示をすることができるだけであった。 一方,亡Aは,聴覚,触覚,知能に異常等はなかった。 平成23年度当時の亡Aの介護の状況等(甲総60,甲A17,18,21,22,35ないし37,44,弁論の全趣旨)ア亡Aは,妻の原告B(昭和★年★★月★★日生)と2人で居住していた(甲A21・5頁)。 原告Bは,高血圧症(中等度),左高度難聴,右変形性膝関節症(高度),自律神経失調症の診断を受けていた(甲A17,18)。 イ原告C(昭和●●年●月●●日生)は,亡A方の近隣に1人で居住していた。原告Cは,内装業を自営しており,夜間には亡A方を訪れることができる状況であった。 原告D(昭和◎◎年◎月◎日生)は,ス市に居住していた。 ウ原告B及び原告C以外の亡Aの親族等で,亡Aの介護ができる人はいなかった。 エ亡Aは,訪問介護事業所である株式会社セから,ヘルパー2名の派遣を受けていた。 2名のヘルパーは,通常,日曜日の午後5時から水曜日の午前8時までの時間とその余の時間を交代で分担して,24時間,亡Aの居宅介護を行っていた。 オ亡Aは,1週間に1回,訪問診療を受け,1週間に4回,訪問看護及び訪問マッサージを 後5時から水曜日の午前8時までの時間とその余の時間を交代で分担して,24時間,亡Aの居宅介護を行っていた。 オ亡Aは,1週間に1回,訪問診療を受け,1週間に4回,訪問看護及び訪問マッサージを受けていた。 また,亡Aは,1週間に1回,訪問入浴のサービスを受けていた。 亡A家族の経済状況等(甲総60,甲A34ないし36,44)ア亡Aは,2か月で約50万円の年金を受給し,Bは,2か月で約9万円 の年金を受給しており,その他に特別障害者手当等による収入が1か月で約3万5000円であった。 イ亡A及び原告Bが,ヘルパーを雇うに足りる十分な資産を有していたと認めるに足りる証拠はない。 ウ亡Aは,介護保険に関して要介護5の認定を受けており,介護保険法に基づいて,訪問介護,夜間対応型訪問介護及び福祉用具貸与等について,介護給付を受けていた。 エ亡Aは,1日当たり8時間分の介護については自立支援法による介護給付費の支給として,1日当たり4時間分の介護については介護保険法による介護給付として,それぞれ公的給付を受けていた。 株式会社セのヘルパーによる介護のうち,1日当たり12時間分については,この公的給付によって賄われていた。 オ亡Aは,介護保険法に係る保険料及び自立支援法に係る利用者負担金以外に,自身の介護サービスに関する支出をしていなかった。 2 争点(国家賠償請求が認められるか)について 上記1オによれば,処分行政庁は,主たる介護者である原告Bの就寝時間等相当分として1日8時間(1か月248時間)を想定し,原告Bが起床中は,原則として,原告Bが1人で亡Aに対するすべての介護を行うべきという前提で,平成23年度支給決定を行ったことが認められる。 しかし,上記1のとおり,亡Aが,体位変換,呼吸,食事 原告Bが起床中は,原則として,原告Bが1人で亡Aに対するすべての介護を行うべきという前提で,平成23年度支給決定を行ったことが認められる。 しかし,上記1のとおり,亡Aが,体位変換,呼吸,食事,排たん,排泄等,生存に係るおよそすべての要素について,他者による介護を必要としたこと,自力で他者に自分の意思を伝える方法が極めて限定されていたことに鑑みると,亡Aは,ほぼ常時,介護者がその側にいて,見守りも含めた介護サービスを必要とする状態にあったことが認められる。そして,原告Bの年齢や健康状態等に鑑みると,介護保険法による1日4時間分の介護給付があったこと(上記1エ)や,原告Bの体調不良等やむを得ない場合の緊急 時対応分として1か月20時間を想定していたと認められること(上記1オ)を考慮しても,処分行政庁がとる上記前提は,相当性を欠くといわざるを得ない。 したがって,平成23年度支給決定は,原告Bが亡Aの介護を行っているという要素を過度に評価する一方で,亡A及び原告Bの心身の状況等の考慮すべき要素を十分に考慮していないから,勘案事項である「障害の種類及び程度その他の心身の状況」(本件規則12条1号)及び「障害者等の介護を行う者の状況」(同条2号)を適切に考慮しておらず,社会通念に照らして明らかに合理性を欠くというべきである。 しかし,そのことから直ちに平成23年度支給決定に国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく,処分行政庁が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と同決定をしたと認めうるような事情がある場合に限り,上記の評価を受けるものと解するのが相当である。 このことは,本件各決定のうち,平成23年度支給決定を除く決定についても同様である。 そこで,上記の点をさらに具体的に検 な事情がある場合に限り,上記の評価を受けるものと解するのが相当である。 このことは,本件各決定のうち,平成23年度支給決定を除く決定についても同様である。 そこで,上記の点をさらに具体的に検討する。 ア証拠(甲A4,5,7,8,21,22,30,32,39ないし42,乙A3,5,7,9,11,12,14)及び弁論の全趣旨によれば,処分行政庁は,平成19年度ないし平成23年度の介護給付費支給決定をするに際し,亡Aの健康状態,既往歴,障害程度区分,障害の内容,生活状況,受けている介護の状況,病院への受診の状況,服薬状況,訪問看護の状況,従前の介護給付費の支給量,他の公的福祉サービスの受給状況,亡Aや家族の希望,家族及び介護者の状況,居住環境,経済状況及び主治医等を調査し,担当部局内で亡Aに必要な支給量を検討したことが認められる。 また,平成20年度,平成22年度及び平成23年度の各支給決定並び に平成21年度支給決定については,本件審査会に諮問し,その諮問結果を踏まえて支給量を決定していることが認められる。 ところで,処分行政庁は,本件各取消裁決があった後も,重度訪問介護の支給量を従前と同じ支給量とする介護給付費支給決定あるいは介護給付費変更申請却下決定をしている。この点,本件各取消裁決の理由は,亡Aの希望と取消しの対象となる各決定の支給量が大きく離れていることから,処分行政庁が,亡Aや介護者の状況及び主治医の意見等を調査検討し,亡Aやその介護者等と十分に協議した上で,再度支給量を判断し直すことを求めるということであると解され,取消しの対象となる各決定の支給量が不足していることを直接説示するものではないと解される(甲B11)。 そうすると,本件各取消裁決が求める調査検討等を経た上で従前と同じ支給量の介護給付費支給決 れ,取消しの対象となる各決定の支給量が不足していることを直接説示するものではないと解される(甲B11)。 そうすると,本件各取消裁決が求める調査検討等を経た上で従前と同じ支給量の介護給付費支給決定をしたからといって,直ちに本件各取消裁決に反する決定であるということはできない。 そして,上記1ウのとおり,処分行政庁は,平成21年度却下決定2をするに際し,亡Aのケアマネージャーから事情聴取し,自立支援協議会の運営協議会を開いた上で,支給内容を検討し,支給量を決定したことが認められる。また,上記1エないしのとおり,処分行政庁は,平成22年度取消後決定をするに際し,再度原告の主治医から聴き取り調査をし,支給内容を検討して,本件審査会に諮問した上で支給量を決定したことが認められる。なお,平成21年度却下決定3及び4については,それぞれ平成22年度当初決定,平成22年度取消後決定と同じ日にされていることからすると,いずれもこれらの決定の再調査,検討の結果を踏まえて支給量が決定されていると認められる。 イなお,原告らは,処分行政庁が,1日8時間の支給量を上限とする基準を有していた旨の主張をしているが,処分行政庁がこれを超える支給量を一切認めないこととしていたことを認めるに足りる証拠はない。 ウしたがって,平成21年度却下決定2ないし4,平成22年度当初決定,平成22年度取消後決定及び平成23年度支給決定が本件取消裁決に反しているとは認められない。 そして,本件各決定について,裁量権の逸脱濫用であることが明白であったとまでは認められない。 なお,亡Aが死亡した当時,実際に1日24時間の介護が行われていたから,本件各決定が裁量権を逸脱濫用していたことが亡Aの死亡の原因になったとは認められない。 以上の事情 までは認められない。 なお,亡Aが死亡した当時,実際に1日24時間の介護が行われていたから,本件各決定が裁量権を逸脱濫用していたことが亡Aの死亡の原因になったとは認められない。 以上の事情によれば,処分行政庁が職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件各決定をしたと認めることはできないので,本件各決定に係る処分行政庁の一連の行為に国家賠償法1条1項にいう違法があるとは認められない。 したがって,国家賠償法1条1項に基づく原告の損害賠償請求は認められない。 第4 結論以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 和歌山地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官髙橋善久 裁判官永野公規 裁判官田中一孝は転官のため署名押印することができない。 裁判長裁判官髙橋善久
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