令和5(わ)1090 詐欺、破産法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
令和6年10月17日 神戸地方裁判所
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判決文本文2,872 文字)

令和6年10月17日宣告令和5年(わ)第1090号詐欺被告事件同第1149号破産法違反被告事件判決 主文 被告人を懲役2年に処する。 理由 【罪となるべき事実】被告人は、第1 自動車等の売買等を業とする株式会社A(以下「本件会社」という。)の代表取締役として同社の業務全般を統括していたもの、Bは同社の取締役兼総務部長として金融機関との融資交渉等に従事していたものであるが、被告人とBは、株式会社C銀行から融資金名目で金銭をだまし取ろうと考え、共謀の上、真実は、本件会社が同行から融資を受けるために提出していた令和2年8月期の決算報告書等が、いずれも本件会社の実際の預金及び売上総利益より過大に見せかけるなどした内容虚偽のものであるのに、その情を秘し、本件会社の経営状態が前記決算報告書等に記載されたとおりであるかのように装い、令和3年1月6日から同月18日までの間、兵庫県内、大阪府内又はその周辺において、電話又はメールを利用して、同行D支店従業員Eに対し、本件会社の実際の預金及び売上総利益より過大に見せかけるなどした内容虚偽の令和2年9月1日から同年11月30日までの期間の残高試算表等を提出するなどして、商品仕入資金名目で手形貸付4000万円の融資を申し込み、令和3年1月27日頃、同人を介し、同行審査部部長代理であったFをして、本件会社の経営状態が前記残高試算表等に記載されたとおりであり、融資金が約定どおりに返済されるものと誤信させて、同手形貸付4000万円の融資実行を決定させ、よって、同年2月1日、同行職員に、同支店に開設された本件会社名義の普通預 金口座に4000万円を入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた、第2 本件会社の代表取締役として同 決定させ、よって、同年2月1日、同行職員に、同支店に開設された本件会社名義の普通預 金口座に4000万円を入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた、第2 本件会社の代表取締役として同社の業務全般を統括していたものであるが、同社が、令和3年8月26日、神戸地方裁判所伊丹支部から破産手続開始の決定をうけ、同決定は同年9月22日に確定したところ、 1 同社の債権者を害する目的で、同年3月24日頃から同月27日頃までの間、兵庫県内又はその周辺において、株式会社Gに対し、本件会社が所有する普通乗用自動車(H)ほか8台(時価合計約4273万4500円相当)を無償で譲渡し、もって債務者の財産を債権者の不利益に処分し、 2 同年10月7日頃、本件会社の破産管財人弁護士Iから、前記H1台の保管場所等について説明を求められた際、真実は、同年3月24日頃、株式会社Gに同車を無償で譲渡していたのに、その情を秘し、同年10月14日頃、兵庫県内又はその周辺において、前記Iに対し、同車について、「架空の車両になっており実車はありません。決算書の粉飾のために項目を作成して記載されている車両でした。」などと虚偽の内容を記載した電子メールを送信し、その頃、前記Iにこれを閲読させ、もって破産管財人の請求があったときに破産に関し虚偽の説明をした、ものである。 【量刑の理由】本件は、被告人が、代表取締役を務める本件会社について、令和3年1月、同社取締役兼総務部長であった共犯者と共謀して、同社が被害者である銀行に融資を申し込む際に、決算報告書等に過大な預金や売上総利益が記載されていることを隠すなどして、同銀行に融資金が返済されるものと誤信させて4000万円を詐取し(判示第1)、また、同社は同年8月に破産手続開始決定を受けるなどしたところ、同年3月、同 上総利益が記載されていることを隠すなどして、同銀行に融資金が返済されるものと誤信させて4000万円を詐取し(判示第1)、また、同社は同年8月に破産手続開始決定を受けるなどしたところ、同年3月、同社の債権者を害する目的で、同社所有の自動車9台を無償譲渡し、同年10月、本件会社の破産管財人から上記自動車のうち1台の保管場所を質問された際、同車が実在しない旨の虚偽の説明をした(判示第2)、という事案である。 本件詐欺についてみると、被害額は4000万円であり高額である。犯行態様は、いわゆる見せ金を用意したり、売上げや仕入れを水増しした書類を作成するなどして内容虚偽の決算報告書等を作成していたところ、その決算報告書等を用いて被害銀行から多額の融資金を詐取するという巧妙なものであって、経済的な法秩序を軽視した犯行である。被告人は、本件会社の粉飾決算が発覚し、メインバンクから多額の融資金の一括返済を求められたが、本件会社の事業を継続することとして、本件会社の取締役にも就任していた顧問税理士や同人の知人等といった関係者の助言に従い、部下であった共犯者に融資申込みをさせて本件詐欺に及んだものであり、被告人の刑事責任は共犯者よりも重い。上記税理士等は本件詐欺を思いとどまるよう被告人に助言するなどしていないが、被告人が代表取締役として本件会社の経営を担い、粉飾決算の発覚後も、その事業を継続することとしていたことにも照らせば、上記助言の点は被告人の刑事責任を大きく左右する事情には当たらないし、上記のとおり、決算報告書等が巧妙に水増しされていたことを考慮すれば、被害銀行の融資審査の点もやはり被告人の刑事責任を左右しないというほかない。 本件破産法違反についてみると、被告人は本件会社の責任財産から約4000万円という高額の財産を流出させたうえで すれば、被害銀行の融資審査の点もやはり被告人の刑事責任を左右しないというほかない。 本件破産法違反についてみると、被告人は本件会社の責任財産から約4000万円という高額の財産を流出させたうえで、破産管財人の調査に対して虚偽説明をして、破産管財人による責任財産の換価や公平な清算を妨げたものであり、やはり経済的な法秩序を軽視した犯行である。 以上によれば、被告人の刑事責任を軽視することはできず、被告人が、親族や知人の協力を得て、詐欺の被害銀行に合計2900万円を支払い、破産管財人には1000万円を支払い、このほかにも共犯者や関係者が詐欺の被害銀行に合計300万円を支払ったことにより、詐欺について相当額の被害弁償がされ、一定額の責任財産の回復が図られていること、被告人が事実を認めたうえで、被害銀行、債権者や管財人に対して迷惑をかけたことについて後悔し、反省しているなどと述べて反省の意思を示していること、被告人に前科前歴がないこと、妻が今後も一緒に頑張るなどと被告人の更生に協力する旨を述べていること等の有利な一般情状を考慮し ても、本件に対しては、実刑を避けられないというほかない。 そこで、上記の有利な一般情状については、刑期を定めるにあたって考慮することとして、主文のとおりとした。(求刑・懲役3年6月)令和6年10月17日神戸地方裁判所第4刑事部裁判官酒井英臣

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