平成29(ネ)10086 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成30年12月18日 知的財産高等裁判所 3部 判決 原判決取消 大阪地方裁判所 平成28(ワ)4167
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判決文本文28,552 文字)

平成30年12月18日判決言渡 平成29年(ネ)第10086号損害賠償請求控訴事件(原審大阪地方裁判所平成28年(ワ)第4167号) 口頭弁論終結の日平成30年10月11日判決 控訴人株式会社MTG 同訴訟代理人弁護士關健一 同訴訟代理人弁理士小林徳夫 被控訴人ベノア・ジャパン株式会社 同訴訟代理人弁護士冨宅恵西村啓 同補佐人弁理士高山嘉成 被控訴人補助参加人株式会社ファイブスター 同訴訟代理人弁護士冨宅恵西村啓 同補佐人弁理士高山嘉成 主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,控訴人に対し,2278万3473円及びこれに対する平成30年8月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 控訴人のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,第1,2審を通じ,補助参加によって生じた費用を除いてこれを2分し,その1を控訴人の,その余は被控訴人の各負担とし,補助参加によって生じた費用は,これを2分し,その1を控訴人の,その余は補助参加人の各負担とする。 事実 及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,控訴人に対し,4555万4232円及びこれに対する平成30年8月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等(略称は原判決のそれに従う。) 1 本件は,名称を「美肌ローラ」とする発明に係る特許権(特許第5230864号。本件特許権)を有する控訴人 みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等(略称は原判決のそれに従う。) 1 本件は,名称を「美肌ローラ」とする発明に係る特許権(特許第5230864号。本件特許権)を有する控訴人が,被控訴人が業として販売するなどする原判決別紙被告製品目録記載の各製品が本件特許に係る発明の技術的範囲に属するとして,被控訴人に対し,不法行為に基づく損害賠償金の一部である1億円及びこれに対する不法行為以後の日である平成28年5月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 原判決は,控訴人の請求を棄却したため,これを不服とする控訴人が控訴した(当審において,控訴人は,平成25年3月29日から平成28年7月3日までの不法行為に基づく損害賠償金4555万4232円(全部請求)及び不法行為以後の日である平成30年8月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求に請求を変更(請求の拡張及び減縮)し,被控訴人は,請求の減縮について同意した。)。 3 前提事実 前提事実は,次のとおり変更するほか,原判決「事実及び理由」「第2事案の概要」「2 前提事実」(原判決2頁8行目から4頁11行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決3頁18行目冒頭から23行目末尾までを次のとおり改める。 「(4) 製品の販売ア原判決別紙被告製品目録記載1のローラー(以下「被告製品1」という。)及び同記載2のローラー(以下「被告製品2」といい,被告製品1と併せて「被告各製品」という。)が販売されていたことがある(販売主体については争いがある。)。」(2) 原判決4頁7行目及び9行目の「及び1C」を「,1C及び1F」と,同頁8行目及び 製品1と併せて「被告各製品」という。)が販売されていたことがある(販売主体については争いがある。)。」(2) 原判決4頁7行目及び9行目の「及び1C」を「,1C及び1F」と,同頁8行目及び10行目の「及び2C」を「,2C及び2F」と改める。 (3) 原判決4頁11行目末尾に改行の上,次のとおり付加する。 「(5) 被控訴人は,本件特許権の請求項1~7記載の発明(本件各発明を含む。)につき,無効審判請求をしたところ(無効2016-800085号事件。以下「本件無効審判請求」という。),特許庁において,平成29年4月18日付けで「本件審判の請求は成り立たない」旨の審決(以下「本件審決」という。)がされた。 被控訴人は,本件審決についての審決取消訴訟を提起せず,本件審決は同年5月29日に確定した。 (甲20,21)」 4 争点及び争点に関する当事者の主張(1) 争点ア技術的範囲の属否(争点1)(ア) 被告各製品が「導体によって形成された…ローラ」(構成要件1B及び2A)を充足するか(争点1-1)(イ) 被告各製品が「生成された電力が…ローラに通電される」(構成要件1C及び2C)を充足するか(争点1-2) (ウ) 被告各製品が「ローラが金属によって形成されている」(構成要件3A)を充足するか(争点1-3)(エ) 被告各製品が「美肌ローラ」(構成要件1F,2F及び3B)を充足するか(争点1-4)イ無効理由(乙24発明を主引例とする進歩性欠如)の存否及び本件において特許無効を主張することの可否(争点2)ウ本件特許権侵害による損害額(争点3)エ被告各製品の販売についての被控訴人の責任の有無及び被告各製品の販売時期(争点4)(2) び本件において特許無効を主張することの可否(争点2)ウ本件特許権侵害による損害額(争点3)エ被告各製品の販売についての被控訴人の責任の有無及び被告各製品の販売時期(争点4)(2) 争点に関する当事者の主張ア争点1(技術的範囲の属否)について(ア) 原判決の引用争点1-1ないし1-3については,原判決5頁9行目から同7頁25行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。 (イ) 当審における付加主張被告各製品が「美肌ローラ」(構成要件1F,2F及び3B)を充足するか(争点1-4)(控訴人の主張)被告各製品は,「美肌ローラ」(構成要件1F,2F及び3B)を充足する。 (被控訴人の主張)構成要件1F,2F及び3Bの「美肌ローラ」は,毛穴の中の汚れを押し出す作用により美肌効果を発揮する器具であると解されるが,被告各製品のローラの大きさからすれば,毛穴の中の汚れを押し出す機能を有しないから,被告各製品は「美肌ローラ」を充足しない。 イ争点2(無効理由(乙24発明を主引例とする進歩性欠如)の存否及 び本件において特許無効を主張することの可否)について(ア) 原判決の引用原判決8頁1行目末尾に改行の上,次のとおり付加し,同14頁23行目「本件発明2」を「本件発明1」と改めるほかは,原判決7頁26行目から同15頁6行目までに記載のとおりであるから,これを引用する(以下,被控訴人の主張する無効理由を「無効理由1」という。)。 「 この点に関する争点は,『本件各発明は,当業者が本件特許の出願日前に頒布された特開2005-66304号公報(以下「乙24公報」という。)に記載された発明(以下「乙24発明」という。)に,特開20 この点に関する争点は,『本件各発明は,当業者が本件特許の出願日前に頒布された特開2005-66304号公報(以下「乙24公報」という。)に記載された発明(以下「乙24発明」という。)に,特開2002-65867号公報(以下「乙25公報」という。),昭60-2207号公報(以下「乙26公報」という。)及び昭61-73649号公報(以下「乙27公報」という。)に各記載された技術,特開平4-231957号公報(以下「乙28公報」という。)に記載された発明(以下「乙28発明」という。)の構成,特開2004-321814号公報(以下「乙29公報」という。)に記載された発明(以下「乙29発明」という。)の構成,大韓民国登録意匠30-0399693号公報(以下「乙30の1公報」という。)に記載された意匠(以下「乙30意匠」という。)の構成又は中華民国M258730号公報(以下「乙31の1公報」という。)に記載された考案(以下「乙31考案」という。)の構成のいずれかを適用することによって容易に発明をすることができたか。』である。」(イ) 当審における付加主張a 被控訴人は,本訴において無効理由1を主張することができるか(控訴人の主張) 無効理由1は本件無効審判請求において無効不成立となった無効理由と同一であるところ,本件審決が確定したため,被控訴人は,同無効理由を主張して無効審判請求をすることはできなくなった(特許法167条)。したがって,本件は,「当該特許が特許無効審判により…無効にされるべきものと認められるとき」(特許法104条の3第1項)に当たらず,被控訴人は本件訴訟において無効理由1を主張することはできないし,控訴人の本件特許権の権利行使に対して権利の濫用の抗弁を主張することも許されな められるとき」(特許法104条の3第1項)に当たらず,被控訴人は本件訴訟において無効理由1を主張することはできないし,控訴人の本件特許権の権利行使に対して権利の濫用の抗弁を主張することも許されない。 (被控訴人の主張)(a) 本件審決の確定により被控訴人が改めて無効理由1に基づく無効審判請求をすることはできないとしても,被控訴人以外の第三者は無効理由1による無効審判請求をすることが可能である。 そして,このような場合も「当該特許が特許無効審判により…無効にされるべきものと認められるとき」(特許法104条の3第1項)に当たると解すべきであるから,被控訴人が無効理由1を主張することは許される。 なお,乙24発明と本件発明2の相違点は,原判決が認定するとおり,相違点2A,相違点1B,相違点2Cに加え,「本件発明2は一対のローラが平面上の把持部材(把持部)によって両側から支持されているのに対し,乙24発明では,一対のローラが棒状の把持部材(把持部)の一端に形成されている点」(相違点4)であるが,乙28公報及び乙29公報の記載によれば,手で握って用いる器具の把持部を棒状に形成するか,平面状に形成するかは適宜選択し得る事項である。 (b) 無効理由1に基づく権利の濫用特許法104条の3第1項の適用がないとしても,本件特許は 無効理由1により無効にされるべきものであるから,本件特許権の行使は,無効な特許を実施する者に不当な不利益を与えるもので衡平の理念に反する。いわゆるキルビー判決は,特許権を対世的に無効にする手続から当事者を解放した上で衡平の理念を実現するというものであり,その理念は本件にも妥当するから,控訴人が被控訴人に対し,本件特許権を行使することは権利の濫用として許されない。 b 新たな無効理由の主張 を解放した上で衡平の理念を実現するというものであり,その理念は本件にも妥当するから,控訴人が被控訴人に対し,本件特許権を行使することは権利の濫用として許されない。 b 新たな無効理由の主張(被控訴人の主張)(a) 本件各発明は,乙24発明に,特開平2-131779号公報(乙44。以下「乙44公報」という。)若しくは特開平3-92175号公報(以下「乙45公報」という。)に記載の発明又は乙25公報若しくは乙26公報記載の技術,乙28発明,乙29発明,乙30意匠又は乙31考案のいずれかを適用することにより容易に想到することができたものであるから進歩性を欠く(以下「無効理由2」という。)。本件特許は,特許無効審判により無効とされるべきものであるから,特許法104条の3第1項により,控訴人は本件特許権につき権利を行使することができない。 (b) 乙24発明と本件発明の一致点及び相違点は無効理由1における一致点及び相違点と同じである。 (c) 乙44公報及び乙45公報には,生体に対して微弱電流を流す際に,電池として太陽電池を用いることが記載されている。乙44公報は,イオンを生体に浸透させるために太陽電池を用いても良いことが開示されており,イオンを生体に浸透させるという点において乙24公報と課題を共通にしている。また,乙45公 報は,イオンを生体に供給するという点において,乙24公報と課題を共通にしている。 (控訴人の主張)被控訴人の主張は,争う。 ウ争点3(本件特許権侵害による損害額)について(控訴人の主張)(ア) 被告各製品の販売利益平成24年5月から平成25年3月まで(以下「本件期間」という。)の被告製品1及び被告製品2の販売数量は4565個及び962個 (控訴人の主張)(ア) 被告各製品の販売利益平成24年5月から平成25年3月まで(以下「本件期間」という。)の被告製品1及び被告製品2の販売数量は4565個及び962個,売上高は1408万0836円及び323万6311円である。 これによれば,本件期間における被告製品1及び被告製品2の平均販売単価は3084円及び3364円であり,また,被告各製品の原価は平成24年4月27日時点で9.95米ドル(807.84円)であるから,被告製品1及び被告製品2の1個当たりの粗利益は2276.16円及び2556.16円である。 本件期間の販売数量から推定される被告製品1及び被告製品2の年間平均販売数量は4980個及び1049個であるから,被告製品1及び被告製品2の年間の粗利益は,1133万5276円及び268万1411円となる。 したがって,平成25年3月29日から平成28年7月3日までの被告製品1及び被告製品2の販売利益は,39か月分の利益に相当する3683万9647円及び871万4585円を下らないことになり,その合計額は4555万4232円である。 よって,平成25年3月29日から平成28年7月3日までの本件特許権侵害による控訴人の損害は4555万4232円であると推定される。 (イ) 被控訴人と補助参加人の間には共同不法行為が成立するから,被控訴人と補助参加人は連帯して4555万4232円を支払う義務を負う。 (ウ) また,仮に,被控訴人が廃業し,共同不法行為が成立しないとしても,被控訴人の法人格が否認され,背後者である補助参加人を同一視すべきであり,被控訴人と補助参加人は連帯して4555万4232円を支払う義務を負う。 (被控訴人の主張)(ア) 補助参加人は 控訴人の法人格が否認され,背後者である補助参加人を同一視すべきであり,被控訴人と補助参加人は連帯して4555万4232円を支払う義務を負う。 (被控訴人の主張)(ア) 補助参加人は平成25年3月26日を最後に被告各製品の販売を行っていないから,過去の販売数量に基づいて損害額を算定するのは相当ではない。 (イ) 本件期間の被告各製品の販売数量は認めるが,控訴人が主張する本件期間の被告各製品の売上げは消費税相当額を含むものであるが,消費税相当額を除いた1341万0320円及び308万2200円をもって売上げとすべきである。 (ウ) 共同不法行為においては,各行為者が損害発生と因果関係がある不法行為と評価される行為を行った場合に各行為者の下で推定される損害の合算金額についての賠償義務を各行為者が連帯して負うものであるが,被控訴人は控訴人の損害発生に因果関係のある特許権侵害行為を行っていないから,被控訴人が補助参加人の下で推定される損害を補助参加人と連帯して賠償すべき義務はない。 エ争点4(被告各製品の販売についての被控訴人の責任の有無及び被告各製品の販売時期)について(控訴人の主張)(ア) 被告各製品の販売についての被控訴人の責任a 共同不法行為 被控訴人は,補助参加人が被告各製品を販売していたと主張するところ,① 被控訴人と補助参加人は本店所在地が同一であり,両社の役員は被控訴人代表者の親族で占められていること,② 被告各製品の取扱説明書の輸入販売元欄には被控訴人の名称が記載されていること,③ 被告各製品の販売名には被控訴人の名称の一部である「ベノア」が付されていること,④ 被告各製品はインターネットモール上で「ベノア・ジャパン正規品」,「メーカー名:ベノア・ジャパン ていること,③ 被告各製品の販売名には被控訴人の名称の一部である「ベノア」が付されていること,④ 被告各製品はインターネットモール上で「ベノア・ジャパン正規品」,「メーカー名:ベノア・ジャパン株式会社」と表示して販売されていたこと,⑤ 被控訴人のフェイスブックページやツイッターアカウントにおいて,被告各製品が紹介されていること,⑥ 被告各製品の販売先である株式会社八木兵に対する売上げは補助参加人の売上げとして計上されているものの,株式会社八木兵からの売買代金を被控訴人が受領していることからすれば,被控訴人と補助参加人は人的・物的資材及び経済的資材を共用しているといえる。被控訴人と補助参加人の被告各製品の販売に関する行為は,客観的に密接な関連共同性が認められ,被控訴人にも共同不法行為責任が認められる。 b 単独の不法行為(法人格の否認)仮に,被控訴人が主張するとおり,被控訴人に事業主としての実態がなかったとすると,その法人格は形骸化していたのであるから,被控訴人の法人格は否認されるべきである。そして,被控訴人と補助参加人の関係に照らせば,被控訴人と背後者である補助参加人の行為は同視すべきものであり,被控訴人と補助参加人は連帯して本件特許権侵害についての損害賠償責任を負う。 また,被控訴人が被告各製品の販売を行っていたことについては,原審において自白が成立しており,自白の撤回は許されない。仮に自白が成立していないとしても,禁反言の法理により,被控訴人は, 被告各製品を販売していたのが補助参加人であると主張することは許されない。 (イ) 被告各製品の販売時期a 本件特許の設定登録日以降も,被控訴人のネットショップ,フェイスブックページ及びツイッターアカウント,補助参加人の公式ウェブサイトにおいて,通 れない。 (イ) 被告各製品の販売時期a 本件特許の設定登録日以降も,被控訴人のネットショップ,フェイスブックページ及びツイッターアカウント,補助参加人の公式ウェブサイトにおいて,通電していることを表示した被告各製品が販売されている。また,平成26年12月25日,補助参加人の直営店において被告製品2が販売され,平成28年7月3日,補助参加人の直営店に被告製品2が通電していることを示すポップが置かれていた。 以上のとおり,補助参加人らは,本件特許の設定登録日以降も平成28年7月3日まで被告各製品を販売していたのであり,その行為は本件特許権侵害に当たる。 b 上記のとおり,通電しているとの外形を作出しつつ販売していた以上,被控訴人において,通電を切断する設計変更をしたとの主張をすることは信義則に反し許されない。 (被控訴人の主張)(ア) 被告各製品の販売についての被控訴人の責任a 補助参加人は,中国の生産者に被告各製品の生産中止を指示したり,平成24年7月2日に被告各製品の輸入手続を行った業者に対しその手数料を支払ったりしていた。このことからも明らかなように,被告各製品の輸入販売を行っていたのは補助参加人である。したがって,被控訴人が損害賠償責任を負うことはない。 b 被控訴人は平成22年3月19日に設立されたが,同年9月30日までの事業年度の後は税務申告を行っておらず,平成23年9月30日ないし平成24年1月4日までには廃業している。このよう に,被控訴人は形骸化した存在であったため,法的に補助参加人と共同して何らかの行為を行う実体を備えておらず,補助参加人との間で共同不法行為が成立するといえるような事実行為を行っていない。 c 控訴人は原審手 た存在であったため,法的に補助参加人と共同して何らかの行為を行う実体を備えておらず,補助参加人との間で共同不法行為が成立するといえるような事実行為を行っていない。 c 控訴人は原審手続の早い段階で補助参加人が被告製品を販売している可能性を認識していたが,被控訴人を被告とすることの適否について確認を行うことなく手続を進めていったのであるから,補助参加人が被告各製品の輸入販売をしていたことを主張することが禁反言の法理により許されないということにはならない。 (イ) 被告各製品の販売時期a 補助参加人は,平成24年8月11日に被告各製品を輸入しようとしたが,税関で輸入不許可にされたことから,被告各製品を積み戻した。補助参加人は,中国の生産者に対し,同年10月26日に被告各製品の生産中止を,同年12月に被告各製品のソーラーパネルと本体の接続線を遮断することを含む設計変更を指示した上,平成25年3月21日に,上記設計変更後の製品(以下,被告製品1の通電を遮断したものを「被告製品3」,被告製品2の通電を遮断したものを「被告製品4」という。また,通電している製品について「マイクロカレント通電品」ということもある。)を輸入し(乙9),同月26日より後は,被告各製品ではなく,被告製品3及び被告製品4を販売していた。 補助参加人が,被告各製品を最後に輸入したのは平成24年4月27日であり,卸売りは平成25年3月26日(100個)が最後である。 b 被控訴人のネットショップ,フェイスブックページ及びツイッターアカウントは被控訴人の名前が冒用されたものであり,被控訴人 とは関わりがない。 補助参加人は,卸売先から返品された被告各製品を直営店で小売りすることがあったが販売個数は非常に限られていた ントは被控訴人の名前が冒用されたものであり,被控訴人 とは関わりがない。 補助参加人は,卸売先から返品された被告各製品を直営店で小売りすることがあったが販売個数は非常に限られていたため,記録も残っておらず,平成25年3月29日以降に販売したことが確認されているのは,同年12月25日に控訴人が購入した被告製品2のみである。これは,補助参加人が小売業者から返品を受けて直営店に展示していた商品を控訴人が見つけ出して購入したものにすぎない。 第3 当裁判所の判断 1 争点4(被告各製品の販売についての被控訴人の責任の有無及び被告各製品の販売時期)について事案に鑑み,まず,争点4(被告各製品の販売についての被控訴人の責任の有無及び被告各製品の販売時期)について検討する。 (1) 認定事実前記前提事実,後掲各証拠(枝番号のある証拠について枝番号を記載しない場合には全ての枝番号を含む。)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。 ア補助参加人及び被控訴人について(ア) 補助参加人は平成19年8月3日に設立された,健康機器,美容健康機器等の販売,輸出入業務等を目的とする株式会社である。本店所在地は,平成26年7月7日より前は(省略)であり,同日に被控訴人肩書住所地(省略)に移転した。 補助参加人の代表取締役は,平成25年4月30日以降はP,平成28年3月18日以降はQであるが,Qは被控訴人代表者の息子であり,Pも親族である。被控訴人代表者は,補助参加人の会長として補助参加人の経営に関与していたが,Qが補助参加人に入社した平成2 7年4月頃から,同社の経営をQに任せるようになった。 被控訴人代表者は,平成22年3月19日に,補助参加人の事業のうち化粧品事業を行わせるため, ,Qが補助参加人に入社した平成2 7年4月頃から,同社の経営をQに任せるようになった。 被控訴人代表者は,平成22年3月19日に,補助参加人の事業のうち化粧品事業を行わせるため,化粧品,美容器具等の販売及び輸出入を目的とする株式会社である被控訴人を設立し,代表取締役に就任し,現在まで務めている。被控訴人の本店所在地は設立時から現在まで被控訴人肩書住所地である。 (甲22,23,乙54~56)(イ) 被控訴人代表者は,補助参加人が取り扱う商品を被控訴人に取り扱わせようと考えたが,多くの卸売先からは被控訴人に売買代金を支払うことについての同意を得られなかった。もっとも,補助参加人の卸売先であった株式会社八木兵のみは被控訴人に売買代金を支払うことに同意し,平成28年7月まで継続的に被控訴人の銀行口座に売買代金を送金していた。被控訴人は,平成23年7月19日に,平成22年3月19日から同年9月30日までの事業年度の確定申告をしたが,その後の税務申告は行わず,株式会社八木兵から入金された売買代金を出金して補助参加人に入金し,被控訴人の売上として計上せずに補助参加人の売上げとしていた。また,被控訴人の銀行口座からは,平成24年1月4日以降も,社会保険料,運送代金,税理士報酬,クレジットカード及び保険料と思われる引き落としがされている。 (乙50,51,53,54)(ウ) 被告各製品は中国において製造され,株式会社ヤスダトレーディング・コーポレーションにより輸入され,多くは補助参加人が小売業者に卸売りし,補助参加人が小売業者からの売買代金を受領していた。 また,被告各製品の一部は,補助参加人の直営店(後記ウ(ウ))で補助参加人により販売(小売り)された。 (乙49)(エ) 株式 加人が小売業者からの売買代金を受領していた。 また,被告各製品の一部は,補助参加人の直営店(後記ウ(ウ))で補助参加人により販売(小売り)された。 (乙49)(エ) 株式会社ヤスダトレーディング・コーポレーションは,平成24 年4月に被告各製品合計5000個を輸入し,補助参加人がこれを販売した。株式会社ヤスダトレーディング・コーポレーションは,平成24年8月に被告各製品を5100個輸入しようとしたところ,税関検査において取扱説明書の記載が薬事法に反するとの指摘を受けたため,全製品の積戻しを行って中国に送り返した。株式会社ヤスダトレーディング・コーポレーションに対する代金の支払は補助参加人が行った。 補助参加人は,平成24年12月,中国の製造者に対し,被告各製品のソーラーパネルと本体の接続線を遮断すること(以下「本件設計変更」という。),及び,取扱説明書からマイクロカレントに関する記載を削除すること(後記イ(イ)の新取扱説明書とすること)を指示したが,被告各製品の品番及び商品名は変更しなかった。 補助参加人は,平成25年3月,中国から,荷印「BENOA-710」,商品の詳細「Ykorokororoller」とされる製品を1300個輸入した。 (乙3,乙6の1,乙7,乙9の2,乙10,11,14,46,52)イ取扱説明書の記載(ア) 甲3,甲4の取扱説明書(以下「旧取扱説明書」という。)a 輸入販売元の記載被控訴人の会社名,被控訴人肩書住所地及び電話番号が記載されている。 b マイクロカレントローラーの説明「電子ローラー」は別名「マイクロカレントローラー」と呼ばれているところ,「マイクロカレント」とは,アンチエイジングのためにマイクロアンペアという超微弱電流を b マイクロカレントローラーの説明「電子ローラー」は別名「マイクロカレントローラー」と呼ばれているところ,「マイクロカレント」とは,アンチエイジングのためにマイクロアンペアという超微弱電流を肌の細胞に流して人工的に刺激を与えて肌の活性化を図る美容法であるという趣旨の記載が ある。 c 保証書の記載保証書の頁には,購入後6か月間は無料修理ができ,購入した販売店又は被控訴人に依頼するよう記載されている。 (イ) 乙10,乙11の取扱説明書(以下「新取扱説明書」という。)上記(ア)a及びcと同様の記載があるが,bと同様の記載はない。 ウ被告各製品の販売状況(ア) 補助参加人の直営店での販売状況a 「5chance船場店」(被控訴人本店所在地所在)平成26年12月25日に新取扱説明書を添付した被告製品2が販売されていた。(甲11,12)b 補助参加人の直営店「クローバー」において,平成28年7月3日,「ベノアプレミアム電子ローラージュエル」(「ベノアプレミアムローラージュエル」を示すことは被控訴人も争っていない。)が販売されており,売り場のポップには「マイクロカレントローラー」と記載されていた。(甲15,24)(イ) 平成27年2月12日現在の補助参加人のウェブサイトの記載補助参加人ウェブサイトの「商品案内〔美容ローラー等〕」のページには,「ベノアプレミアム電子ローラー」及び「ベノアプレミアムローラージュエル」が記載され,それぞれについて,「マイクロカレントローラー」であることや,マイクロカレントについての説明が記載されている(甲10)。 (ウ) 被控訴人や補助参加人以外の者名義の販売状況Yahoo!ショッピング上のストアである「ジョイリビングYa ことや,マイクロカレントについての説明が記載されている(甲10)。 (ウ) 被控訴人や補助参加人以外の者名義の販売状況Yahoo!ショッピング上のストアである「ジョイリビングYahoo 店」(平成28年4月14日)(甲5),「富久屋本店Yahoo!店」(平成28年4月14日)(甲6),「ここあーる」(平成28年6月16 日)(甲13の2)及び「デュアルストア」(平成28年6月29日)(甲14の2)や,Amazon.co.jp 上の販売者「ぷちこれ」(平成28年6月16日)(甲13の1)及び「ショップエスト」(平成28年6月16日)(甲14の1),楽天市場上のストアである「激安輸入雑貨店」(平成28年6月16日)(甲13の3)及び「コウノトリのDVD」(平成28年6月16日)(甲14の3),Qoo10 上のストアである「PumpkinHouse」(平成28年6月16日)(甲13の4)及び「Qoo10」(平成28年6月29日)(甲14の5),ポンパレモール上のストアである「リコメン堂」(平成28年6月29日)(甲13の5),株式会社ハルショウライフの「取扱い商品」のページ(平成28年6月16日)(甲14の4)において,「ベノア・ジャパン正規品プレミアム電子ローラー」,「ベノアプレミアム電子ローラJewel(ジュエル) マイクロカレント×最新多面体ローラー」,「ベノアジャパン純正「プレミアム電子ローラー」…マイクロカレント…マイクロアンペアという超微弱電流で,人工的に刺激を与える美容法です。」,「ベノアプレミアム電子ローラー…マイクロカレント…2つのローラーからは微弱電流が流れています。」,「ベノアプレミアム電子ローラー…マイクロカレント(微弱電流)」,「ベノアプレミアム電子ローラー…マイクロカレ ミアム電子ローラー…マイクロカレント…2つのローラーからは微弱電流が流れています。」,「ベノアプレミアム電子ローラー…マイクロカレント(微弱電流)」,「ベノアプレミアム電子ローラー…マイクロカレントローラー…超微弱電流をお肌に流して」,「ベノアプレミアム電子ローラー…超微弱電流がお肌に刺激を与えます」,「ベノアプレミアム電子ローラージュエル…マイクロカレント(微弱電流)が流れ」,「ベノアジャパンプレミアム電子ローラージュエル…マイクロアンペアという超微弱電流をお肌の細胞に流して」,「ベノア・ジャパンプレミアム電子ローラーJewel(ジュエル)…マイクロカレント(微弱電流)」といった記載がされている。 (エ) 販売主体やアカウント主体の名称に「ベノアジャパン」「BenoaJapan」の表示があるウェブサイトの記載(これらが被控訴人が関係する者によることを認めるに足りる的確な証拠はない。しかし,仮に被控訴人が主張するとおり,これらが被控訴人の名義を冒用したものであるとすると,以下のような大々的な名義冒用行為が行われているのに被控訴人が何らの対応策を講じた形跡も認められないのは不可解といわざるを得ない。)a Yahoo!ショッピング上の「ベノアジャパン」(平成28年6月)の記載(甲7)商品について「ベノアプレミアム電子ローラー…ソーラーパネルにより“マイクロカレント”を発生させます…」,「ベノアプレミアム電子ローラージュエル…ソーラーパネルにより“マイクロカレント”を発生させます…」との記載がある。 また,ストア名はベノアジャパンであり,「BenoaJapan では美容と健康をテーマに美容と健康をテーマに美容ローラーや美容クリームなど多数の商品を扱っております。」との記載がある。 「公式オンラインショッ はベノアジャパンであり,「BenoaJapan では美容と健康をテーマに美容と健康をテーマに美容ローラーや美容クリームなど多数の商品を扱っております。」との記載がある。 「公式オンラインショップ http(以下略)」,「公式Twitter:http(以下略)」,「公式YouTube:http(以下略)」との記載がある。 お問い合わせ情報として,事業者名及び事業責任者が「R」,住所が(省略),メールアドレスがbenoa(以下略)であるとの記載がある。 b フェイスブック上の「BenoaJapan」(省略)のページの記載(甲8)平成26年4月28日から平成27年11月10日までの投稿において,「ベノア電子ローラーはマイクロカレントを使用した美容 製品です。」との記載がある。 また,「BenoaJapan.com」,「BENOA-JAPAN.COM」のサイトや,インターネット上のフリーマーケット販売サイトである「メルカリ」においてベノアプレミアム電子ローラージュエルを販売していることが記載され,これらのURLへのリンクが記載されている。また,「BenoaJapan.com」について,「BenoaJapan の商品を中心に扱っております。大人気のプレミアム電子ローラー…販売しております」と記載がある。 c ツイッター上の「ベノアジャパン公式」(省略)アカウントの投稿平成24年3月31日から平成27年11月9日までの投稿において,「ベノア電子ローラーはマイクロカレントを使用した美容製品です。」との記載が,平成26年3月,4月の投稿において「マイクロカレントって?アンチエイジングのためにマイクロアンペアという超微弱電流をお肌の細胞に流して人工的に刺激を与えてお肌の活性を図る美 品です。」との記載が,平成26年3月,4月の投稿において「マイクロカレントって?アンチエイジングのためにマイクロアンペアという超微弱電流をお肌の細胞に流して人工的に刺激を与えてお肌の活性を図る美容法です」との記載がある。 また,benoa-japan.com サイトや,インターネット上のフリーマーケット販売サイトである「メルカリ」において「ベノアプレミアム電子ローラージュエル」を販売していることが記載されている。 (2) 被告各製品の販売における被控訴人の責任の有無ア上記(1)に認定した事実を前提に,被告各製品の販売における被控訴人の責任の有無を検討する。 原審において,被控訴人は,被控訴人が本件特許の設定登録以降に直営店において少数の被告各製品を小売りしたことを認めており,この限度で自白が成立する。そして,この点に加え,① 被告各製品の輸入に際し,輸入者に対する支払を行ったのは補助参加人であったことや,② 卸売りの際には補助参加人が注文を受け,売買代金を受領していたことが認められる反面,③ 被告各製品の取扱説明書には被控訴人が輸入販売元であるとしてその住所が表示されており,被告各製品やその包装等に補助参加人が輸入者や販売者であることを示す記載があったことはうかがわれないこと,④ 被告各製品の取扱説明書の保証書には被控訴人が無償修理依頼に対応する旨記載され,消費者からの商品に関する問い合わせや無償修理の依頼には被控訴人として何らかの対応を行っていたことがうかがわれること,⑤ 被告各製品の商品名の冒頭には被控訴人の名称の一部(ベノア)が付され,複数のネットショップで被告各製品が「ベノアジャパン」の正規品や純正品であることを示して販売されていたことが認められ,これらの事実は,被控訴人が,被告各製品の販売 の名称の一部(ベノア)が付され,複数のネットショップで被告各製品が「ベノアジャパン」の正規品や純正品であることを示して販売されていたことが認められ,これらの事実は,被控訴人が,被告各製品の販売に関わっていたことをうかがわせる事実であるといえる。さらに,⑥被控訴人代表者は補助参加人の会長として補助参加人の経営に関与し,また,被控訴人の役員は被控訴人代表者のみであったこと,⑦ 被控訴人は,補助参加人と同様,美容機器の販売をも目的とする株式会社であったことからすれば,被控訴人と補助参加人は,同一人物の支配下にあり,密接な関係を有する会社であって,両者が共同して事業等を行うことも十分に考え得る関係にあったといえる。そして,これらの事実を併せ考えると,少なくとも,両社が意思を通じて被告各製品の販売(卸売り及び小売り)を行ったことは,十分にあり得る事柄であったと認められる。 以上のとおり,本件特許権の侵害について主観的な関連共同性が認められるから,補助参加人による被告各製品の販売について被控訴人と補助参加人の共同不法行為が成立するというべきである。 イこれに対し,被控訴人は,被控訴人は平成22年9月30日の後は税務申告をせず,廃業して実体がなかったことから,法的に補助参加人と 共同して何らかの行為を行う実体を備えておらず,補助参加人との間で共同不法行為が成立するといえるような事実行為を行っていないと主張する。 しかし,被控訴人が税務申告を行っていなかったから直ちに廃業して実体がなかったということにはならないところ,被控訴人が廃業のための具体的手続をとったことをうかがわせる証拠はない。そして,被控訴人は,補助参加人に被告各製品の輸入販売元及び製品の保証の主体として被控訴人の名称及び住所を表示させていたの ろ,被控訴人が廃業のための具体的手続をとったことをうかがわせる証拠はない。そして,被控訴人は,補助参加人に被告各製品の輸入販売元及び製品の保証の主体として被控訴人の名称及び住所を表示させていたのであるし,平成24年1月4日以降も被控訴人名義の銀行口座からの引き落としを含む金銭の移動が続いている。また,仮に,被控訴人が同日までに廃業し実体がなかったというのであれば,原審においてその旨主張してしかるべきであるが,被控訴人はそのような主張をせずに訴訟活動を行っただけでなく,本件無効審判請求もしている。 以上によれば,被控訴人が平成23年9月30日ないし平成24年1月4日までに廃業し,実体がなかったとまではいえず,控訴人の主張は採用できない。 (3) 被告各製品の販売時期ア上記(1)に認定した事実を前提に,本件で損害賠償請求の対象となっている平成25年3月29日(本件特許権の設定登録日)以降も被告各製品の販売が行われていたかどうかを検討する。 補助参加人の直営店において,平成26年12月25日に被告製品2が販売され,補助参加人の他の直営店においても,被控訴人が本件設計変更後の製品を輸入を開始したとする平成25年3月から3年以上経過した平成28年7月3日に「ベノアプレミアムジュエルローラー」がマイクロカレント通電品(設計変更前の製品)であることを示すポップが置かれていたことからすれば,補助参加人らが,本件特許の設定登録後 も,被告製品2を小売りしていたことは否定することのできない事実であるといえる(被控訴人は,被控訴人は,補助参加人の直営店での販売に関し,補助参加人は卸売先から返品された被告各製品を直営店で小売りすることがあったが販売個数は非常に限られ,記録も残っていないとして,直営店で販売された商品が卸 訴人は,補助参加人の直営店での販売に関し,補助参加人は卸売先から返品された被告各製品を直営店で小売りすることがあったが販売個数は非常に限られ,記録も残っていないとして,直営店で販売された商品が卸売先から返品された例外的な商品であるかのような主張をするが,被控訴人の主張を裏付ける証拠はない。)。 また,補助参加人の平成27年2月12日当時の公式ウェブサイトの商品案内ページにおいて,マイクロカレント通電品であると表示して被告各製品が掲載されていたところ,これは小売業者をも対象とするウェブサイトであったと解され(弁論の全趣旨),補助参加人らが被告各製品を小売りしていたことを推認させるものである。そして,被控訴人が本件設計変更後の被告製品3及び被告製品4の輸入を開始したとする平成25年3月から3年以上経過した平成28年4月から6月当時も,被控訴人又は補助参加人以外の複数の販売者が,「ベノアプレミアム電子ローラー」及び「ベノアプレミアムジュエルローラー」について,マイクロカレント通電品であることを表示して販売していたことも,上記の事実認定に沿う事実である。 以上によれば,被控訴人及び補助参加人は,平成25年3月29日以降も平成28年7月3日まで,被告各製品を販売していたものと認められる。 イこれに対し,被控訴人は,補助参加人は平成24年4月を最後に被告各製品を輸入しておらず,平成25年3月26日に被告各製品を卸売りした後は被告各製品の卸売りをしていないのであって,販売していたのはマイクロカレント通電品ではない被告製品3及び被告製品4のみであると主張する。しかし,卸売りを終了してから3年以上を経過した後に なっても,インターネットモール等においてマイクロカレント通電品(したがって,被告各製品と推定される製品)が手 みであると主張する。しかし,卸売りを終了してから3年以上を経過した後に なっても,インターネットモール等においてマイクロカレント通電品(したがって,被告各製品と推定される製品)が手広く宣伝販売されていたというのはにわかに考え難いところである上,補助参加人自身,平成28年7月に,自らの直営店において「マイクロカレントローラー」を宣伝販売していたことも,被控訴人の主張とは矛盾する事実といわざるを得ない。 なお,被控訴人は,被告各製品は,薬事法違反により販売することができなくなったという趣旨に受け取れる主張もしているが,被控訴人の主張からは被告各製品がマイクロカレント通電品であることが輸入販売できない理由であった(すなわち,それが薬事法違反とされる理由であった)とは理解できず,その主張を採用することはできない。 以上によれば,補助参加人が平成24年4月を最後に被告各製品の輸入を中止し,本件特許の設定登録後は被告各製品の卸売りを中止したとの補助参加人の主張は採用できない。 2 争点1(技術的範囲の属否)について(1) 被告各製品が「導体によって形成された…ローラ」(構成要件1B)を充足するかア構成要件1Bの「導体によって形成された」の意義(ア) 「導体」とは「熱または電気の伝導率が比較的大きな物質の総称。 金属の類。良導体。」(広辞苑第七版)を意味し,「形成」は「形を作り上げる」(乙18~20)ことを意味する。 そして,構成要件1Bの「導体によって形成された」「一対のローラ」の記載や,請求項1の記載全体から見ても,「導体によって形成された」について,導体のみによって形成されることを意味することを示す記載はない。 (イ) もっとも,特許請求の範囲の記載のみからは,「導体によって形 成され も,「導体によって形成された」について,導体のみによって形成されることを意味することを示す記載はない。 (イ) もっとも,特許請求の範囲の記載のみからは,「導体によって形 成された」の具体的意義は明らかではないから,本件明細書の記載を検討する。本件発明1の実施形態の記載(【0010】~【0021】)には,熱又は電気に関する作用効果の記載として,「太陽電池30により生成した電流をローラ20に通電するように構成することもできる。」(【0014】),「太陽電池30により生成した電流をローラ20に通電することにより、ローラ20が帯電し、毛穴の汚れを引き出し、さらに美肌効果をもたらす。これは入浴中に実行するとさらに効果的である。」(【0018】)との記載があり,これらの記載によれば,本件発明1においてローラを導体によって形成する技術的意義は,太陽電池により生成した電流をローラに通電することにより,ローラを帯電させ,毛穴の汚れを引き出し,美肌効果をもたらすことであると認められる。そうすると,本件発明1におけるローラは,その全てが導体により形成される必要はなく,ローラの使用時に皮膚と接する表面に太陽電池からの電力が供給されるようにローラの一部分が導体で形成されていれば足りると解される。 (ウ) 以上によれば,「導体によって形成された」とは,ローラが導体のみによって形成されることは要せず,ローラの使用時に皮膚と接するローラの表面に電力が供給されるようにローラの一部分が導体で形成されていれば足りると解される。 イ構成要件1Bの充足性被告各製品のローラは,略円筒型の樹脂製部材の表面に金属メッキが施されたものであり(構成1b,2b),太陽電池によって生成された電力が,各ローラの支持軸を介して各ローラに通電されている(構成1c 被告各製品のローラは,略円筒型の樹脂製部材の表面に金属メッキが施されたものであり(構成1b,2b),太陽電池によって生成された電力が,各ローラの支持軸を介して各ローラに通電されている(構成1c,2c)。そして,金属メッキは「導体」に当たるから,ローラの使用時に皮膚と接する表面に電力が供給されるようにローラの一部分が導体で形成されているといえる。 また,被告各製品は,ハンドルの先端が二股に分かれた部分それぞれに一対のローラを有しているから(構成1b,2b),構成要件1Bの「柄の一端に…形成された一対のローラ」の構成を有する。 よって,被告各製品は構成要件1Bを充足する。 ウこれに対し,被控訴人は,「導体によって形成された…ローラ」は,形を作り上げている部材が導体であるローラと解すべきであり,表面に金属メッキを施すことで導電性を獲得したローラはこれに含まれないと主張するが,本件明細書の記載からそのように理解することはできず,採用できない。 (2) 被告各製品が「生成された電力が…ローラに通電される」(構成要件1C)を充足するかア構成要件1Cの「生成された電力が…ローラに通電される」の意義(ア) 「通電」とは,「電流を通すこと。」(広辞苑第七版)との意味であるから,「生成された電力が…ローラに通電される」は,太陽電池で生成された電力がローラに伝わることであると解される。 (イ) 上記(1)ア(イ)において指摘した本件明細書の【0014】,【0018】の記載によれば,本件発明1において太陽電池が生成した電力をローラに通電させる技術的意義は,ローラを帯電させ,毛穴の汚れを引き出し,美肌効果をもたらすことであると認められる。そうすると,本件発明1におけるローラと太陽電池とは,両者間に電流が通るように電気 ローラに通電させる技術的意義は,ローラを帯電させ,毛穴の汚れを引き出し,美肌効果をもたらすことであると認められる。そうすると,本件発明1におけるローラと太陽電池とは,両者間に電流が通るように電気的に接続されていれは足りると解すべきである。 (ウ) 以上によれば,構成要件1Cの「生成された電力が…ローラに通電される」は,ローラと太陽電池とが電気的に接続されていれば足りると評価される。 イ構成要件1Cの充足性被告各製品は,太陽電池によって生成された電力が,各ローラの支持 軸を介して各ローラに通電される(構成1c,2c)から,被告各製品の太陽電池とローラとは電気的に接続されているといえ,被告各製品は,「生成された電力が…ローラに通電される」構成を有するといえる。 また,被告各製品は,太陽電池を有し,太陽電池によって生成された電力がローラに通電されているから(構成1c,2c),構成要件1Cの「生成された電力が…通電される太陽電池」の構成を有する。 よって,被告各製品は,構成要件1Cを充足する。 ウこれに対し,被控訴人は,特許請求の範囲の記載からも,本件明細書の記載からも,柄等ローラ以外の部分にも通電することに言及する記載はないから,「生成された電力が…ローラに通電される」とは,太陽電池によって生成された電力が柄等ローラ以外の部分に通電することまで包含されていないと主張する。 しかし,上記アのとおり,構成要件1Cの技術的意義は,ローラを帯電させ,毛穴の汚れを引き出し,美肌効果をもたらすことであって,電力がローラ以外の部分に通電しているか否かは無関係である。よって,構成要件1Cは,太陽電池で生成された電力がローラ以外に通電していることを除外するものではなく,被控訴人の主張は採用できない。 (3) 被告各製品が「美 に通電しているか否かは無関係である。よって,構成要件1Cは,太陽電池で生成された電力がローラ以外に通電していることを除外するものではなく,被控訴人の主張は採用できない。 (3) 被告各製品が「美肌ローラ」(構成要件1F)を充足するか(争点1-4)ア被告各製品は「美容ローラ」(構成1f,2f)であり,その取扱説明書にも,「お肌の活性を図る」などと記載されているから(甲3,4),「美肌」,すなわち,「肌を美しくする」ローラであると認められ,構成要件1F「美肌ローラ」を充足するといえる。 イこれに対し,被控訴人は,本件発明1の「美肌ローラ」は,ローラにより毛穴を開く,汚れが毛穴開口部に移動する,毛穴を収縮する,汚れが押し出されるという一連の作用により美肌効果を発揮する器具である と解すべきであり,被告各製品のローラの大きさ(被告製品1は直径約3センチメートル,長さ約5センチメートル,被告製品2は直径約4センチメートル,長さ約5センチメートル)からすれば,被告各製品のローラは毛穴の中の汚れを押し出す機能を有しないから,被告各製品は「美肌ローラ」に当たらないと主張する。 出願経過や無効審判請求における主張の経過を参酌して「美肌ローラ」の意義につき被控訴人の主張するような限定解釈をすべきであるとは認め難いが,この点を措くとしても,本件明細書の【0015】,【0016】の記載によれば,ローラにより汚れが押し出されるという効果は,本件発明1において,ローラの回転軸が柄の長軸方向の中心線とそれぞれ鋭角に設けられているという構造と,製品のローラを肌に当てて柄の長軸方向に往復させるという使用方法によりもたされるものと認められる。そして,被告各製品の取扱説明書(甲3,4)の記載に照らせば,被告各製品は,使用時にローラを 構造と,製品のローラを肌に当てて柄の長軸方向に往復させるという使用方法によりもたされるものと認められる。そして,被告各製品の取扱説明書(甲3,4)の記載に照らせば,被告各製品は,使用時にローラを往復させること,往復させる際に被告各製品を中心線のグリップ側に引くと左右のローラが肌を中心線側に寄せる様に回転する作用があること,この作用はグリップの長手方向の中心線に対してローラの回転軸が鋭角に設けられていることによることが認められる。したがって,被告各製品もローラにより毛穴を開く,汚れが毛穴開口部に移動する,毛穴を収縮する,汚れが押し出されるという一連の作用により美肌効果を発揮するといえる。 (4) 以上のとおり,被告各製品は構成要件1B,1C及び1Fを充足し,その余の構成要件の充足については争いがないから,被告各製品は本件発明1の技術的範囲に属する。 3 争点2(無効理由(乙24発明を主引例とする進歩性欠如)の存否)について(1) 認定事実 ア本件無効審判請求のうち,本件に関連する部分は次のとおりである。 (ア) 被控訴人は,本件発明1~3は,乙24公報に記載された発明,乙25~27公報に記載された周知技術及び乙28~31の1公報に記載された発明,意匠ないし考案の構成のいずれかに基づいて,当業者が容易に発明することができたものであると主張したが,本件審決は,次のとおり,本件発明1~3は,乙24公報に記載された発明,乙25~27公報に記載された周知技術及び乙28~31の1公報に記載された発明,意匠ないし考案の構成のいずれかに基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるとはいえないから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものとはいえないと判断した(本件審決における甲1~ の構成のいずれかに基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるとはいえないから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものとはいえないと判断した(本件審決における甲1~8は,本件における乙24~31と対応する。)。 (イ) 乙24公報には次の乙24-1発明及び乙24-2発明が開示され,これらの引用発明と本件発明1及び2との一致点,相違点は次のとおりである。 a 乙24-1発明(a) 乙24-1発明の認定「把持部300と,把持部300の一端に導体によって形成された一対のローラ100,100と,生成された電力がローラ100,100に通電される乾電池400と,を備え,ローラ100,100の回転軸である横軸部210が,把持部300の中心線とそれぞれ直角に設けられ,一対のローラ100,100の回転軸である横軸部210のなす角が180度である, マッサージ器。」(b) 乙24-1発明と本件発明1の一致点及び相違点は次のとおりである。 (一致点)「柄と,前記柄の一端に導体によって形成された一対のローラと,生成された電力が前記ローラに通電される電池と,を備えた肌に適用するローラ。」(相違点1A)ローラに通電される電力に関して,本件発明1では,「太陽電池」によって生成するのに対し,乙24-1発明では,「乾電池400」によって生成する点。 (相違点1B)一対のローラと柄の関係に関して,本件発明1では,「ローラの回転軸が,柄の長軸方向の中心線とそれぞれ鋭角に設けられ,一対のローラの回転軸のなす角が鈍角に設けられ」ているのに対し,乙24- 1B)一対のローラと柄の関係に関して,本件発明1では,「ローラの回転軸が,柄の長軸方向の中心線とそれぞれ鋭角に設けられ,一対のローラの回転軸のなす角が鈍角に設けられ」ているのに対し,乙24-1発明では,「ローラ100,100の回転軸である横軸部210が,把持部300の中心線とそれぞれ直角に設けられ,一対のローラ100,100の回転軸である横軸部210のなす角が180度である」点。 (相違点1C)肌に適用するローラが,本件発明1は「美肌ローラ」であるのに対し,乙24-1発明は「マッサージ器」である点。 b 乙24-2発明(a) 乙24-2発明の認定「導体によって形成された一対のローラ100,100と, 一対のローラ100,100を支持する把持部300と,生成された電力がローラ100,100に通電される乾電池400と,を備え,ローラ100,100の回転軸である横軸部210が,把持部300の中心線とそれぞれ直角に設けられ,一対のローラ100,100の回転軸である横軸部210のなす角が180度である,マッサージ器。」(b) 乙24-2発明と本件発明2の一致点及び相違点は次のとおりである。 (一致点)「導体によって形成された一対のローラと,前記一対のローラを支持する把持部と,生成された電力が前記ローラに通電される電池と,を備えた肌に適用するローラ。」(相違点2A)ローラに通電される電力に関して,本件発明2では,「太陽電池」によって生成するのに対し,乙24-2発明では,「乾電池400」によって生成する点。 (相違点2B)一対のローラと把持部の関係に関し ーラに通電される電力に関して,本件発明2では,「太陽電池」によって生成するのに対し,乙24-2発明では,「乾電池400」によって生成する点。 (相違点2B)一対のローラと把持部の関係に関して,本件発明2では,「ローラの回転軸が,把持部の中心線とそれぞれ鋭角に設けられ,一対のローラの回転軸のなす角が鈍角に設けられ」ているのに対し,乙24-2発明では,「ローラ100,100の回転軸である横軸部210が,把持部300の中心線とそれぞれ直角に設けられ,一対のローラ100,100の回転軸である横軸部210のなす 角が180度である」点。 (相違点2C)肌に適用するローラが,本件発明2は「美肌ローラ」であるのに対し,乙24-2発明は「マッサージ器」である点。 (ウ) 乙25~27公報の記載a 乙25公報には,以下の事項が記載されている。 「【0018】本発明では生体に印加する電気エネルギー源として,特に交流を必要としないために,一般的な一次,二次,太陽電池などが使用できるものである。・・・【0030】電池4としては,好ましくはボタン状のものを用いる。この形状の電池4は小型化,薄型化を図るのに適している。 電池4としては,一次電池,二次電池または太陽電池等を用いることができる。・・・【0038】本発明では生体に印加する電気エネルギー源として,一次電池,二次電池,太陽電池の電池4を使用するから,構造がシンブルで,形態が極めてコンパクトになり,常時身につけても特に負担とならず,邪魔にならない健康器具が得られる。 【0063】本発明の具体的な用法としては,その他の物品と組み合わせて使用することを制限するものではない。その一例を記載すると,・・・マッサージ器・・・」b 乙26公報には,以下の事項が記載され 【0063】本発明の具体的な用法としては,その他の物品と組み合わせて使用することを制限するものではない。その一例を記載すると,・・・マッサージ器・・・」b 乙26公報には,以下の事項が記載されている。 「・・・歯ブラシの柄の部分に乾電池や太陽電池等を内蔵し,その各々の極から電気を導電性の導体で引き出して・・・」(以下「甲3事項」という。)c 乙27公報には,以下の事項が記載されている。 「2.特許請求の範囲 把握柄部の外周面に正電極を周設し,該把握柄部に連接する刷毛柄部の刷毛植設部に負電極を配設して,正電極と負電極の接続導線を把握柄部及び刷毛柄部に埋設した電子歯刷子において,刷毛柄部(2)の基部周面囲繞状に,1又は2以上の太陽電池(7)を受光面を外向させて配設すると共に,把握柄部(1)に化学電池(8)を内装して,該太陽電池(7)による起電力の減少時に補助電源たる化学電池(8)に切り換えるスイッチング回路(9)を,把握柄部(1)周設の正電極(4)と刷毛植設部(2a)配設の負電極(5)とを結線する接続導線(6)中に介在せしめたことを特徴とする,電子歯刷子。」(エ) 相違点1B及び相違点2Bは,乙24-1発明又は乙24-2発明及び乙28~31の1公報に記載の発明,考案ないし意匠に基づいて,当業者において容易に想到し得たとはいえない。また,乙25~27公報は太陽電池をマッサージ器や歯ブラシに適用する技術に関するものであるから,これらの文献により相違点1B及び相違点2Bを容易に想到し得たともいえない。そうすると,その余の点を判断するまでもなく,本件発明1及び本件発明2は当業者において容易に発明できたものではない。 本件発明3は本件発明1又は本件発明2をその構成の一部とするから,同様に当業者が容易に発明でき 余の点を判断するまでもなく,本件発明1及び本件発明2は当業者において容易に発明できたものではない。 本件発明3は本件発明1又は本件発明2をその構成の一部とするから,同様に当業者が容易に発明できたものではない。 イ乙44公報及び乙45公報はイオン導入装置及び健康器に関する発明に関する文献であり,生体に対して微弱電流を流す際に,電池として太陽電池を用いることに関する記載がある。 (2) 無効理由1についてア無効理由1は,本件無効審判請求と同じく,乙24公報に記載の主引例と乙25~31の1公報に記載の副引例ないし周知技術に基づいて進 歩性欠如の主張をしたものであるから,無効理由1は本件無効審判請求と「同一の事実及び同一の証拠」に基づくものといえる。そして,本件審決は確定したから,被控訴人は無効理由1に基づいて本件特許の特許無効審判を請求することができない(特許法167条)。 特許法167条が同一当事者間における同一の事実及び同一の証拠に基づく再度の無効審判請求を許さないものとした趣旨は,同一の当事者間では紛争の一回的解決を実現させる点にあるものと解されるところ,その趣旨は,無効審判請求手続の内部においてのみ適用されるものではない。そうすると,侵害訴訟の被告が無効審判請求を行い,審決取消訴訟を提起せずに無効不成立の審決を確定させた場合には,同一当事者間の侵害訴訟において同一の事実及び同一の証拠に基づく無効理由を同法104条の3第1項による特許無効の抗弁として主張することは,特段の事情がない限り,訴訟上の信義則に反するものであり,民事訴訟法2条の趣旨に照らし許されないものと解すべきである。 そして,本件において上記特段の事情があることはうかがわれないから,被控訴人が本件訴訟において特許無効の抗弁として無 反するものであり,民事訴訟法2条の趣旨に照らし許されないものと解すべきである。 そして,本件において上記特段の事情があることはうかがわれないから,被控訴人が本件訴訟において特許無効の抗弁として無効理由1を主張することは許されない。 イ被控訴人は,特許法104条の3第1項の適用がないとしても,本件特許は無効理由1により無効にされるべきものであるから,本件特許権の行使は衡平の理念に反するし,いわゆるキルビー判決は,特許権を対世的に無効にする手続から当事者を解放した上で衡平の理念を実現するというものであるから,控訴人が被控訴人に対し,本件特許権を行使することは権利の濫用として許されないと主張する。 しかし,被控訴人は,本件訴訟と同一の当事者間において特許権を対世的に無効にすべく無効理由1に基づく無効審判請求を行い,それに対する判断としての本件審決が当事者間で確定し,上記アのとおり,無効 理由1に基づいて特許法104条の3第1項による特許無効の抗弁を主張することが許されないのであるから,本件において,控訴人が被控訴人に対して本件特許権を行使することが衡平の理念に反するとはいえず,権利の濫用であると解する余地はない。 (3) 無効理由2について無効理由2は,無効理由1と主引例が共通であり,本件審決にいう相違点1A及び相違点2Aについて,「生体に印加する直流電源に太陽電池を用いること」が周知技術である,あるいは,副引例として適用できることを補充するために,新たな証拠(乙44公報及び乙45公報)を追加したものといえる。 本件審決は,相違点1B及び相違点2Bに係る構成の容易想到性を否定し,相違点1A及び相違点2Aについては判断していないのであるから,被控訴人が相違点1A及び相違点2Aに関する新たな ものといえる。 本件審決は,相違点1B及び相違点2Bに係る構成の容易想到性を否定し,相違点1A及び相違点2Aについては判断していないのであるから,被控訴人が相違点1A及び相違点2Aに関する新たな証拠を追加したとしても,相違点1B及び相違点2Bに関する判断に影響するものではない。 そうすると,無効理由2は,新たな証拠(乙44公報及び乙45公報)が追加されたものであるものの,相違点1B及び相違点2Bの容易想到性に関する被控訴人の主張を排斥した本件審決の判断に対し,その判断を蒸し返す趣旨のものにほかならず,実質的に「同一の事実及び同一の証拠」に基づく無効主張であるというべきである。したがって,本件審決が確定した以上,被控訴人は無効理由2に基づく特許無効審判を請求することができない。 そうすると,無効理由2についても上記(2)アにおいて説示したところが妥当するから,被控訴人が本件訴訟において無効理由2に基づき特許無効の抗弁を主張することは許されないものというべきである。 4 争点3(本件特許権侵害による損害額)について(1) 被告各製品の販売利益 ア本件期間(平成24年5月から平成25年3月まで)中の販売数量本件期間の被告製品1及び被告製品2の販売数量が4565個及び962個であること,本件期間の被告製品1及び被告製品2の売上高(消費税分を含む。)が1408万0836円及び323万6311円であることについては当事者間に争いがない。 また,平成24年4月の輸入時の被告各製品1個当たりの原価は807.84円であることが認められる(甲25,乙26及び弁論の全趣旨)。 イ平成25年3月29日から平成28年7月3日までの販売利益補助参加人らは,平成25年3月29日以降はマイクロカレント非通電品である被 が認められる(甲25,乙26及び弁論の全趣旨)。 イ平成25年3月29日から平成28年7月3日までの販売利益補助参加人らは,平成25年3月29日以降はマイクロカレント非通電品である被告製品3及び被告製品4を販売していたとして,平成25年3月29日以降の販売数量を開示しないが,上記2のとおり,補助参加人らは,平成25年3月29日以降も平成28年7月3日まで被告各製品を販売していたものと認められる。また,平成25年3月29日から平成28年7月3日までの補助参加人らにおける「ベノアプレミアム電子ローラー」及び「ベノアプレミアムジュエルローラー」の販売実績が本件期間を下回っていたことをうかがわせる証拠はない。なお,控訴人は,控訴人が売上げから控除することを認めた原価以外の費用に関する主張をしない。 そうすると,本件においては,上記アのとおりの本件期間の販売数量,売上げ及び原価を基礎に,平成25年3月29日から平成28年7月3日までの被告各製品の販売利益を算出するのが相当であるところ,同期間の「ベノアプレミアム電子ローラー」及び「ベノアプレミアムジュエルローラー」の販売利益は3684万8074円及び871万8872円の合計4556万6946円と推定することができる(販売利益の算定に当たっての損害期間については,控訴人の計算方法に従い,39か 月間として計算した。)。 (計算式)(小数点以下四捨五入。)被告製品1{14,080,836-(807.84×4,565)}×39÷11=36,848,074被告製品2{3,236,311-(807.84×962)}×39÷11=8,718,872もっとも,本件においては,上記1(1)ア(エ)のとおり,本件設計変更の指示がされ,「ベノア 告製品2{3,236,311-(807.84×962)}×39÷11=8,718,872もっとも,本件においては,上記1(1)ア(エ)のとおり,本件設計変更の指示がされ,「ベノアプレミアム電子ローラー」及び「ベノアプレミアムジュエルローラー」として被告各製品と被告製品3及び被告製品4が流通していたことがうかがわれ(弁論の全趣旨),その割合が明らかではないから,被告各製品と被告製品3及び被告製品4の割合が50%であるものとして,被告各製品の利益を算定するのが相当であり,その金額は2278万3473円である。 なお,被控訴人は,販売利益の算出に当たり,売上げから消費税相当額を控除すべきであると主張するが,消費税相当額を控除すべき根拠は明らかでなく,採用できない。 (2) 控訴人は本件特許の実施品を販売している(乙2,弁論の全趣旨)から,補助参加人らによる本件特許権侵害の共同不法行為に基づく控訴人の損害は,特許法102条2項により,2278万3473円と推定される。 (3) よって,控訴人は,被控訴人に対し,本件特許権侵害の不法行為(共同不法行為)に基づく損害賠償金2278万3473円及びこれに対する不法行為以後の日である平成30年8月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができるので,控訴人の請求は,この金額の支払を求める限度では理由があるが,これを超える部分は理由がない。 5 以上のとおり,本件控訴は一部理由があるから,原判決を取り消し,控訴 人の請求について,2278万3473円及びこれに対する平成30年8月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余の請求を棄却することとして,主文のとおり判決 主文 いて,2278万3473円及びこれに対する平成30年8月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官鶴岡稔彦 裁判官高橋彩 裁判官寺田利彦

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