令和7年11月17日判決言渡 令和7年(行ケ)第10029号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和7年9月10日判決 原告松本システムエンジニアリング株式会社 同訴訟代理人弁護士田中伸一郎 同訴訟代理人弁理士弟子丸健 同渡邊徹 同訴訟代理人弁護士松野仁彦 同訴訟代理人弁理士工藤由里子 被告特許庁長官 同指定代理人清野貴雄 同富永亘 同渡邉久美 同阿曾裕樹 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は、原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 特許庁が不服2024-4782号事件について令和7年2月18日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は、被告の負担とする。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 原告は、令和5年1月13日、意匠に係る物品を「カッター付グラップルバケット」として、意匠登録出願をした(意願2023-000474、甲2。以下その出願を「本願」といい、出願に係る意匠登録を受けようとするものにつき、「本願意匠」という。甲2)。 ⑵ 原告は、令和5年8月30日付け拒絶理由通知書を受領し、同年12月15日付けの拒絶査定(以下「本件拒絶査定」という。)を受けたことから、令和6年3月19日、拒絶査定不服審判を請求した(不服2024-4782号、甲3)。 ⑶ 特許庁は、 領し、同年12月15日付けの拒絶査定(以下「本件拒絶査定」という。)を受けたことから、令和6年3月19日、拒絶査定不服審判を請求した(不服2024-4782号、甲3)。 ⑶ 特許庁は、令和7年2月18日、「本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同年3月4日に原告に送達された。 ⑷ 原告は、令和7年4月1日、本件審決の取消しを求めて、本件訴えを提起した。 2 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は、別紙審決書(写し)のとおりであるが、要するに、本願意匠は、審決書(写し)別紙第1のとおり、意匠登録を受けようとする物品の部分(以下「本願部分」という。)を、実線で表された部分とする部分意匠であるところ、これは本願出願前に公知の意匠登録第1727850号に記載され た意匠(以下「引用意匠」という。なお、引用意匠のうち本願部分と対比される部分を「引用部分」という。甲1)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号により意匠登録を受けることができないというものである。 3 原告主張の取消事由本件審決の本願意匠と引用意匠との類似性判断の誤り 第3 取消事由についての当事者の主張 〔原告の主張〕 1 本願意匠に係る物品と側壁縁部の形状バケットは、建設機械のアームの先端に取付けられ、地面の掘削などを行うものであるが、本願意匠の創作者は、地面の掘削などに加えて、伐採された木材を載せ、グラップル(しっかりつかむ)して運搬できるようにグラップル装 置を具備するバケット、すなわちグラップルバケットを発明し、平成9年(1997年)に特許出願をした(甲5、段落【0003】、【0004】)。そのグラップルバケットに、立木、木材の切断を行うためカッターを取付 するバケット、すなわちグラップルバケットを発明し、平成9年(1997年)に特許出願をした(甲5、段落【0003】、【0004】)。そのグラップルバケットに、立木、木材の切断を行うためカッターを取付けた構成が、本願意匠に係る物品である「カッター付グラップルバケット」であり、やはり本願意匠の創作者が平成22年(2010年)の特許出願により提案した(甲 6、段落【0014】ないし【0019】)。 カッター付グラップルバケットを建設機械のアームの先端に取り付けることにより、地面の掘削などの建設作業、木材の運搬、そして立木などの切断が可能になる。したがって、カッター付グラップルバケットは、バケットとグラップル部材でグラップルして固定した立木をカッターで伐倒し、伐倒した立木を 他所に運搬し、バケットを用いて、伐倒した立木の切株を掘り起こして除去することができ、立木が生えていた土地(斜面)を整地し、林道を整備する作業を一台で行うことができる。 地面の掘削を行うため、あるいは掘削に木材のグラップルをするだけであれば、バケットの容量が大きく、より木材を多く運ぶことができる、安価なバケ ットが存在する。それにもかかわらず本願意匠の物品であるカッター付グラップルバケットを必要とし求めるのは、立木、木材の切断をすることがどうしても必要で、その点を重視する林業を営む業者である。地面の掘削のみを行う通常の土木工事事業者も、木材の運搬のみを行う業者も、本願意匠の需要者には含まれない。 地面の掘削のみを行うバケット、木材をグラップルする機能を有するグラッ プルバケット、そして本願意匠に係る物品であるカッター付グラップルバケットで、バケットの側壁縁部の形状は、それぞれ異なる。すなわち、本願の出願以前に公知となった意匠公報ないし特 するグラッ プルバケット、そして本願意匠に係る物品であるカッター付グラップルバケットで、バケットの側壁縁部の形状は、それぞれ異なる。すなわち、本願の出願以前に公知となった意匠公報ないし特許公報に示された、地面の掘削のみを行うバケット(意匠登録第1105810号(甲8)、同第1142360号(甲9)、同第1464176号(甲10))、木材をグラップルする機能を有するグ ラップルバケット(特許第3567961号(甲5))、カッター付グラップルバケット(特許第5911250号(甲6)、意匠登録第1565620号(甲7)及び甲1(引用意匠。バケットの側壁縁部の形状は甲7と同じ))のそれぞれを比較すると、以下のとおりである。 ①従来からの地面を掘削するバケットは、開口部の側壁縁部は湾曲していな い。すなわち、バケットは掘削した土砂をすくって他所に移すために使われるので、側壁縁部を湾曲させるとバケットの容量が減少するからである。②グラップルバケットは木材をバケットに載せて運ぶため、側壁縁部が若干へこんでいるが、バケットの容量が減少することは避けたいので、若干である(甲5)。 ③カッター付グラップルバケットにおいては、切断対象をしっかり安定的に把 持する必要などのため、土砂を入れるバケットの容量を少なくしても側壁縁部の湾曲は大きくしなければならない。 以上のとおり、バケットの側壁縁部における深い湾曲は、平成22年(2010年)の特許出願で初めて提案され、その後に市場に出された「カッター付グラップルバケット」に特有のものであるところ、更に木材の切断に影響する 形状であるから、本願意匠に係る物品の需要者が注目する部位である。そして、バケットの側壁縁部の湾曲形状については、バケットの容量に配慮しながら、切断対象をしっかり 、更に木材の切断に影響する 形状であるから、本願意匠に係る物品の需要者が注目する部位である。そして、バケットの側壁縁部の湾曲形状については、バケットの容量に配慮しながら、切断対象をしっかり安定的に把持する目的のため、極めて厳格に管理されており、甲1(引用意匠)と甲7の意匠は全く同じであり、本願意匠にかかるカッター付グラップルバケットが市場に出されるまで、他の形状のものは殆どなか った。 2 本願意匠及び引用意匠の形状等⑴ 本願意匠は、願書(甲2)に添付した図面に実線で表された部分(本願部分)である。すなわち、本願意匠は、正面視で確認されるバケットの側壁の縁部の形状の意匠である。なお、底面視で確認される側壁はカッターの収納部を形成しているが、底面視で確認される限り、公知の意匠と同一である。 本願部分と引用部分は、正面視において、側壁縁部の形状が相違する。すなわち、本願部分及び引用部分の側壁縁部の形状について、本願意匠と引用意匠とを重ねて表した「重ねた図」(下記図1c)から分かるとおり、以下の指摘ができる。 【図1c】 本願部分の側壁縁部は、右方向に向かった後、湾曲後に左方向に若干戻って来ており、本件審決の言うように略「つ」の字状をなしているともいえ、また湾曲部は左側で若干上方に向った上で(その部分で小さな凸ができる。)、右側に深く入り込んでおり、下側で左に戻った上で下方に延びている(ここ でも凸が生じている。)。 これに対して、引用部分の側壁縁部は、右方向に延びた後に「湾曲」して下方に向かうが、右方向に深く入っていくことはなく、湾曲は鈍角で、下側に行くほど開いていくようになっており、「つ」の字ではなく、全体的に略「へ」の字状をなしている。また 向に延びた後に「湾曲」して下方に向かうが、右方向に深く入っていくことはなく、湾曲は鈍角で、下側に行くほど開いていくようになっており、「つ」の字ではなく、全体的に略「へ」の字状をなしている。また、引用部分の側壁縁部は滑らかで、本願部分のような二つの凸部は存在しない。 ⑵ 上記違いは、それぞれの縁部を構成する線の向きと曲がりの曲率半径の違いによるものであり、以下に詳しく分析する。 ア本願部分においては、縁部を構成する線は、バケットの爪の基部下端から切断刃の回転軸付近まで延びる、三つの線成分(A、B、C)から形成されている(【図2】)。 (ア) 線部分Aは、バケットの爪の基部下端から、縁部の線の全長の約7分の2の長さまで右上方向に延びる直線である。 (イ) 以下の【図2】、【図3】及び【図4】に示すように、線部分Bは、縁部の線の全長の約7分の4の長さの曲率半径の大きい曲線であり、その形状は、直線Aの終端から上方に立ち上がり、すなわち、直線よりも上 方に湾曲した後(B1)、全体的に右上方向に突出する湾曲形状をなすように湾曲した曲率半径の小さな角部(B2)を形成し、角部から線部分Cとの接続部分である切断刃の回転軸付近に向って、曲率半径の大きな左下方向に延びる曲線(B3)を描いている。 【図2】 【図3】 【図4】 (ウ) 上記【図4】に示すように、線部分Cは、線部分Bの終端から延びる、縁部の線の全長の約7分の1の長さの曲率半径の小さい曲線であり、そ の形状は、左方向に突出して湾曲する曲線をなしている。 イ引用部分においては、下記【図5】に示すように、縁部の線は、滑らかに連 部の線の全長の約7分の1の長さの曲率半径の小さい曲線であり、そ の形状は、左方向に突出して湾曲する曲線をなしている。 イ引用部分においては、下記【図5】に示すように、縁部の線は、滑らかに連続した曲線部分(A´、B´、C´)から構成されている。 【図5】 (ア) 下記【図6】に示すように、曲線部分A´は、曲率半径の大きな曲線をなしており、バケットの爪の基部の下端から、縁部線の全長の約7分の 3の長さまで、緩やかに右上方向に向かって延びている。 【図6】 (イ) 下記【図7】に示すように、曲線部分B´は、曲線部分A´から連続してほぼ同じ方向に延びた後、曲線部分A´よりも曲率半径の小さな湾曲(B1´)を形成して、曲率半径の大きな湾曲(B2´)をなして緩やかに右下方向に向かって延びている。 【図7】 (ウ) 上記【図7】に示すように、曲線部分C´は、縁部線の全長の約7分の1の長さの曲率半径の小さな曲線であり、曲線部分B´の終端から連続してほぼ同じ方向に延びた後、ごく僅か左側に膨らんで右下方向に向かっ て縁部線の終端まで延びている。 本願部分の縁部においては、線成分Bが始端から直線部分Aよりも上方に膨らんで右に深く延び、そこから左に若干戻り【図4】に示すように線部分Bと線部分Cの変曲点における接線Lは左に傾いている。したがって、本願部分の縁部は全体で「つ」の字の印象を与え、また線成分 Bは、曲率半径が大きい縁部の弧の中に、より曲率半径の小さい弧が存 在し、この部分が抉えぐられているように見える。 これに対して、引用部分の縁部は、曲線部分A´とB´が滑らかに繋がり、曲線部 率半径が大きい縁部の弧の中に、より曲率半径の小さい弧が存 在し、この部分が抉えぐられているように見える。 これに対して、引用部分の縁部は、曲線部分A´とB´が滑らかに繋がり、曲線部分B´は、その角部から右下方向に延び、続く曲線C´も、【図7】に示すように曲線B´と曲線C´の変曲点の接線L´がほぼ下方に滑らかに延びているため、「へ」の字の印象を生じる。 ウ本件審決は、このような相違点を看過して類似性を判断しているから、失当である。 3 本願部分と引用部分の相違点の評価、及び本件審決の類否判断の誤り⑴ 本願部分と引用部分の相違点については上記のとおりであり、本願部分の側壁縁部は、引用部分に較べてより上方及び右に大きく延びており、また全 体で「つ」の字の印象を与え、曲率半径が大きい縁部の弧の中に、曲率半径の小さいもう一つの弧が抉られるように存在している。これに対して、引用部分においては、縁部が滑らかに繋がっており、右上方での曲がりも緩やかで外側に広がっており、全体で「へ」の字の印象を生じる。 この本願部分と引用部分の側壁縁部の形状の相違は、上記に詳しく説明し たとおりであり、異なる美感を生じせしめている。 本願部分と引用部分の側壁縁部の形状の相違は、更に以下の点を考えれば、異なる美感を生じせしむることは明らかである。 ⑵ 本願意匠の本願部分である側壁縁部は、需要者である林業関係者が最も注目するカッター付グラップルバケットの部位である。 すなわち、カッター付グラップルバケットの需要者である林業関係者が購入するときに最も注目するのは、立木などを効率的に伐採することができるかどうかという点である。立木などを伐採するためには、切断対象である立木、木材等を大きく抱え込むように安定的且つしっかり把持す 購入するときに最も注目するのは、立木などを効率的に伐採することができるかどうかという点である。立木などを伐採するためには、切断対象である立木、木材等を大きく抱え込むように安定的且つしっかり把持することが必要で、そのために、バケットの側壁縁部は然るべく湾曲している。したがって、 需要者がバケットの側壁縁部の湾曲形状に注目することは明白である。 また、「カッター付グラップルバケット」は、平成22年(2010年)の特許出願で初めて提案され、その後に市場に出された新しい製品であるところ、バケットの側壁縁部の湾曲はカッター付グラップルバケットに特有で、その他にはないものであり、その意味でも需要者は側壁縁部に注目する。 ⑶ 本願意匠の側壁縁部の形状はこれまでにないもので、従来にない切断力を 生じさせるものであり、その意味で需要者が注目する。 カッター付グラップルバケットのバケット側壁縁部の湾曲形状については、バケットの容量に配慮しながら、切断対象をしっかり安定的に把持する目的のため、極めて厳格に管理されており、甲1(引用意匠)と甲7の意匠は全く同じであり、本願意匠にかかるカッター付グラップルバケットが市場に出 されるまで、他の形状のものは殆どなかった。そのような中、既に述べたとおり、本願意匠により異なる形状の側壁縁部の形状が示され、同形状により切断能力が大きく向上するというのであるから、需要者が注目することは明白である。 すなわち、カッター付グラップルバケットはパワーショベル等の重機のア タッチメントであるため、その重量は制限され、カッター、油圧シリンダーなどの大型化が難しいところ、本願の側壁縁部の形状であれば、バケットの側壁縁部が抉れているため、木材受け部が引っ込んでおり、木材が従来機よりもカッター回転 の重量は制限され、カッター、油圧シリンダーなどの大型化が難しいところ、本願の側壁縁部の形状であれば、バケットの側壁縁部が抉れているため、木材受け部が引っ込んでおり、木材が従来機よりもカッター回転中心に近づいた位置で受けられるので、従来と同じサイズのバケット装置でもより大きな木材を逃げないようにしっかりと挟み込むこ とができ、カッターの切断範囲が大きくなり、より大きな直径の木をスムーズに切断することが可能となり、30%以上は切断能力が上がる。 したがって、需要者が本願意匠の側壁縁部の形状に注目することは明らかである。 ⑷ 創作の自由度が低い箇所に係る創作性の高い部分意匠である。 カッター付グラップルバケットは、パワーショベル等の重機のアタッチメ ントでサイズ及び重量の制限が存するため、カッターの大きさ、油圧シリンダーの大きさ、配置等を大きく変えることはできないという創作の自由度が低い。本願意匠はそのような制約の中で、切断機能を向上させるために(より大径の木材の切断を可能にし、切断速度も向上)、創意工夫により本願の側壁縁部の形状を変化させたものである。相違点の創作的価値は高い。 以上に加え、バケットの側壁の縁部は、カッター付グラップルバケットでもっとも目につきやすく、大きな面積を有することをも考えれば、本願意匠の本願部分の形状は要部に他ならない。この意匠の要部に前述の相違点が存在するのである。 これに対し、本願部分と引用部分で共通する底面視で確認されるカッター 収納部の形状はそもそも公知のもので、何ら需要者が注目するようなものではない。 ⑸ 以上のとおりであり、本願部分と引用部分の側壁縁部の形状の相違は、要部に関し、両意匠に異なる美感を生じせしめるものであり、本願意匠は引用意匠に類似しない。 者が注目するようなものではない。 ⑸ 以上のとおりであり、本願部分と引用部分の側壁縁部の形状の相違は、要部に関し、両意匠に異なる美感を生じせしめるものであり、本願意匠は引用意匠に類似しない。 4 被告の主張に対する反論⑴ カッター付グラップルバケットのカッターで木材を切断するためには、バケットの側壁とグラップル部材で木材をしっかり固定する必要があり、そのため木材を受けるバケットの側壁縁部を湾曲形状にしたのであるが、木材の径に合わせて湾曲させて固定できれば、それだけでスムーズな木材の切断が 可能となるわけではない。バケットはパワーショベル等の重機のアタッチメントで、また土砂を入れるバケットの容量をある程度確保する必要があるため、その大きさ、重量が制限されており、カッター、油圧シリンダー等の切断装置の大きさ、出力、そして配置も限定されている中で、本願意匠の創作者は、スムーズな木材の切断を如何に達成するかについて検討し、木材にカ ッターの刃が適切な位置で当たるように、バケットの側壁縁部の湾曲形状を 検討したのである。 この検討により到達したバケットの側壁縁部の湾曲形状が、略への字形状の甲7及び甲1であり、原告は従来販売してきた「フェラーバンチャザウルスロボ」に採用した。 カッター付グラップルバケットの市場には、他にも参入を試みるものが現 れたが、原告の従来型「フェラーバンチャザウルスロボ」と同等の切断機能を求め、いずれもバケットの側壁縁部の湾曲形状は「フェラーバンチャザウルスロボ」に採用した甲7及び甲1とほぼ同じであった。例えば、訴外オカダアイヨン株式会社は「ハイブリッドバケット」を製造、販売しているが(甲11)、甲7と同社の「ハイブリッドバケット」(OHB-120、OHB- 200、O とほぼ同じであった。例えば、訴外オカダアイヨン株式会社は「ハイブリッドバケット」を製造、販売しているが(甲11)、甲7と同社の「ハイブリッドバケット」(OHB-120、OHB- 200、OHB-60の三つの型番の製品)のバケット側壁縁部の湾曲形状を対比したところ、全ての製品において(重量の違う製品においても)、「へ」の字形に完全に一致した(甲12の19頁別紙1参照)。 以上の事実は、バケットの側壁縁部の形状は、カッター付グラップルバケットの切断機能のために極めて重要で、需要者が注目することを示している。 ⑵ 本願意匠のバケット側壁縁部の新たな湾曲形状は、カッター付グラップルバケットの切断性能を向上させる極めて重要な機能を営むものであるが、そうであるからこそ需要者の注意を強く引きつけ、異なる美感を生じさせる。 例えば、東京高裁平成4年(行ケ)第9号同年7月30日判決も、「機能的工夫により生じた形状に意匠的価値が生じることがあることは否定し得ないと ころであり、かような形状をもって、単に機能上の利点に由来するものとして、意匠の類否判断の要素としないことは相当ではない。」としており、また、東京高裁平成16年(行ケ)第172号同年10月19日判決も、「エンドミルのような機能的物品については、物品の性質上、重要な機能を営む部分は、当業者の注意を引きつける部分となりやすく、特にその部分の意匠が新規あ るいは特徴のある意匠である場合には、物品全体の意匠においても、看者の 注意を引きつける重要な部分となるのである。」とするところである。 〔被告の主張〕 1 本願部分の形状について、原告が述べる、本願部分のバケットの側壁縁部の形状線が三つの線成分(A、B、C)から形成されるとする点について、なるほど、原告主張の るところである。 〔被告の主張〕 1 本願部分の形状について、原告が述べる、本願部分のバケットの側壁縁部の形状線が三つの線成分(A、B、C)から形成されるとする点について、なるほど、原告主張のような線成分から構成され得ることは否定しないが、当該形 状線には、3種の線成分の境界が明らかにそれと分かるような折曲点等はなく、全体として、滑らかに連続した一つながりの曲線と視認されるものであるから、原告の述べるような三つの線成分に分けて個々に判断することが適切なものとはいえない。 さらに、原告のいう「二つの凸部」についてみても、明らかにそれと認識で きるものではない。 原告主張のような指摘に伴い注視し、かつ、定規や補助線等を用いて詳細に測定したならば、かろうじて判別できる程度の微細な形状についてまでも、本願意匠の認定に取り上げる必要性は希薄であるし、仮に取り上げたとしても、視覚を通じた美感を問題とする意匠の類否判断において、その影響はほとんど 評価し得ないほど小さいことは明白である。要するに、意匠の類否判断における形状等の認定に当たっては、需要者が通常の観察方法で意匠を観察した場合に視覚的に認識できる構成要素を取り上げれば足りるのであって、定規や補助線等を用いた精密な計測によって初めて判別できる構成要素が必ずしも必要とされるものではない。 本件審決は、需要者が通常の観察方法で意匠を観察した場合に把握可能な範囲内において、本願意匠の認定を過不足なく行い、正面視におけるバケットの側壁縁部の形状について、「左端(先端)から右に向かってやや上向きの略『つ』の字状に湾曲したあと、反転して右端(後端)まで小さく凸弧状に湾曲したもの」と認定したものであって、かかる本件審決の認定に誤りはない。 なお、原告は、底面視で に向かってやや上向きの略『つ』の字状に湾曲したあと、反転して右端(後端)まで小さく凸弧状に湾曲したもの」と認定したものであって、かかる本件審決の認定に誤りはない。 なお、原告は、底面視で確認される側壁は公知の意匠と同一であるとして、 底面に現れる形状を軽視するかのような主張をするが、これは正面視における形状線のみに固執して主張したものであって失当である。本願部分は、願書に添付した図面(甲2)において実線で表されているとおり、正面視に表れる形状線(原告がいう三つの線成分(A、B、C))のみならず、底面視に表れる前壁、外壁及び内壁の各縁面を含むものであって、これら正面視及び底面視の部 分について、添付図面から形状を立体的に把握し、認定するのが相当である。 この点においても、本件審決は、本願部分の形状等を適切に認定しており、本件審決の認定に誤りはない。 2 引用部分の形状について、原告は、引用意匠のバケットの側壁の縁部を構成する線は、三つの曲線部分(A´、B´、C´)から形成されて、湾曲しているが、 鈍角で、下側に行くほど開いていき、全体的に略「へ」の字状をなしており、凸部は存在しないと主張する。 しかし、前記同様、引用部分のバケットの側壁縁部の形状線もまた、明らかな折曲点等はなく、全体として滑らかに連続した一つながりの曲線と視認されるものであるから、原告の述べるような三つの線成分が個別に認識できるもの ではない。 さらに、明らかな折曲点等がない線について、原告が述べるところの、「略『へ』の字状をなしている」と認定することは適当ではない。当該曲線は、左端から右上方向に伸びたあと下方向に大回りに湾曲した部分を含むものであって、急激に折れ曲がるような形状ではないから、略「つ」の字状ではなく、略「へ」 と認定することは適当ではない。当該曲線は、左端から右上方向に伸びたあと下方向に大回りに湾曲した部分を含むものであって、急激に折れ曲がるような形状ではないから、略「つ」の字状ではなく、略「へ」 の字状であるというように敢えて換言しなければならないほど特異な形状とはいえない。本件審決は、引用部分に基づいて、線形状の全体について、「左端(先端)から右に向かってやや上向きの略『つ』の字状に湾曲したあと、反転して右端(後端)まで小さく凸弧状に湾曲したもの」と認定したものであって、かかる本件審決の認定に誤りはない。 3 本願部分と引用部分の形状の相違点について、原告は、本願部分と引用部分 の、正面視における側壁縁部の形状は、両部分を重ねてみると(【図1c】)、それぞれの縁部を構成する線の向きと曲率半径の違いに起因する相違があるところ、本件審決は、かかる相違点を看過して類似性を判断しているから、失当であると主張する。 しかし、本願部分と引用部分の形状の相違点は、本件審決に記載のとおりで あって、原告が述べるような相違点の看過はない。すなわち、原告が主張する相違点は、牽強付会といえる原告主張の本願意匠と引用意匠の認定を前提としている点で失当である上、上記被告主張のとおり、本件審決が認定した相違点に包摂されるか、両意匠の類否判断にほとんど影響しない微細な点であるに過ぎない。 また、原告は、両意匠の図面を重ね合わせた図(【図1c】)を用いて、両意匠を比較しているが、そもそも、その様な手法を採らなければ形状の違いを認識できない微差であることが、両意匠が酷似(類似)していることの証左である。さらには、かかる重ね合わせた図を活眼するに、本願意匠と引用意匠をカッターの回転軸を合わせ、本願部分の湾曲の方がより深く回り込むよ ない微差であることが、両意匠が酷似(類似)していることの証左である。さらには、かかる重ね合わせた図を活眼するに、本願意匠と引用意匠をカッターの回転軸を合わせ、本願部分の湾曲の方がより深く回り込むように図を 重ねて配しているが、両部分の側壁縁部の先端部は合っていないから、原告主張の相違点を強調するために都合良く配置を選択したものに過ぎない。以上のとおり、かかる重ね合わせた図に基づく原告の主張は失当である。 4 本願意匠と引用意匠の共通点及び相違点の評価並びに類否判断について、原告は、本願部分が略「つ」の字の印象を与え、引用部分が略「へ」の字の印象 を生じるという両意匠の側壁縁部の形状の相違により、異なる美感を生じさせるところ、本件審決には、本願部分と引用部分の相違点を看過し、その評価を誤り、意匠の類否判断を誤った違法があると主張する。 しかし、本件審決の相違点の認定に看過がないことは前記3のとおりである。 また、原告主張の相違点をみても、その相違の程度は僅かであるから、両意匠 の類否判断にほとんど影響しない微細な点であるに過ぎないことも、前記3の とおりである。 これに対し、本願部分と引用部分とは、本件審決が認定した共通点、すなわち、「正面視において、バケット縁部の側壁の下端に表れる形状線を、左端(先端)から右に向かってやや上向きの略『つ』の字状に湾曲したあと、反転して右端(後端)まで小さく凸弧状に湾曲したもの」とした共通点a(正面)と、 「全体は、底面視において、略横長長方形の壁(前壁)を形成し、その右端寄りの上側に前壁よりやや長い略横長長方形の壁(外壁)と下側に外壁よりやや短い略横長長方形の壁(内壁)を左端を揃えて密着状に形成したものであって、外壁は、右端寄りに縦の形状線を形成して」おり、「各部の りの上側に前壁よりやや長い略横長長方形の壁(外壁)と下側に外壁よりやや短い略横長長方形の壁(内壁)を左端を揃えて密着状に形成したものであって、外壁は、右端寄りに縦の形状線を形成して」おり、「各部の長さの比率は、前壁の長さと厚みの比率を約17:2とし、外壁と内壁の長さをそれぞれ前壁の約 1.5倍、約1.3倍とし、厚みをそれぞれ前壁の約1/2、約1/4としている」とした共通点b(底面)とが、あいまって、林業関係者を含む需要者に強い共通の印象を与えている。 そして、その中にあっては、本件審決が認定した相違点に係る本願部分の形状、すなわち、「正面視における前壁から外壁にかけて下端に表れる形状線につ いて」、「前壁は略直線状とし、外壁は左端寄りを若干凹ませている」点は、本願部分独自の意匠的特徴を表出していないから、需要者に異なる美感をもたらしているということはできない。 したがって、本件審決の本願部分と引用部分の共通点及び相違点の認定とその評価並びに両意匠の類否判断に誤りはない。 また、原告は、原告主張の相違点の意義に関して、「カッター付グラップルバケット」の需要者である林業関係者は、切断対象たる立木等を把持することが必要であること、本願部分の側壁縁部の形状が従来にないものであること、設計の自由度が低い中にあって切断機能向上に寄与する部分であることから、バケットの側壁縁部の湾曲形状に注目する旨主張する。 しかしながら、需要者が、林業関係者であって、切断対象たる立木等を把持 することが必要であるとしても、バケットの購入を検討するに当たり、如何なる径の立木等を伐採することが可能であるかという性能面に着目することはあっても、「カッター付グラップルバケット」のうちごく一部の構成である、バケットの側壁縁部の湾曲 の購入を検討するに当たり、如何なる径の立木等を伐採することが可能であるかという性能面に着目することはあっても、「カッター付グラップルバケット」のうちごく一部の構成である、バケットの側壁縁部の湾曲形状に注目することは想定し難い上、原告は、需要者が、バケットの側壁縁部の湾曲形状に注目することの根拠を何ら示していない。 かえって、本願意匠に係る製品であるとするMSE-45FGZX-DX フェラーバンチャザウルスDX500のカタログ(甲4(令和6年5月2日付け原告提出の手続補正書)の7頁の「カタログ1」を、乙1として提出)における「刃とバケットの位置関係を・・・見直すことで・・・最大切断直径は500mm(・・・)に増大、」との記載によれば、需要者は、刃とバケットの位置関係が、 切断機能向上に寄与する部分と理解するのが自然であって、かかる部分に注目することはあっても、バケットの側壁縁部の湾曲形状に注目するとはいえない。 また、本願部分が、より太い木材を伐採するために、バケットの縁部の湾曲形状を大きめに抉るように広げる工夫がなされたものであったとしても、そのような工夫は、特許法や実用新案法による保護対象たる技術的思想の創作に該 当することはあっても、意匠の類否判断における事実として有意なものではない。原告が主張する相違点が、意匠的特徴を表出して需要者に異なる美感をもたらすものでない限り、その相違は微弱なものといわざるを得ない。両部分の共通点と相違点を総合し、全体として判断した場合は、本件審決が認定する共通点a及び共通点bがあいまって与える共通の印象を相違点が覆すには至ら ないものであるから、本願意匠は引用意匠に類似するものといわざるを得ない。 したがって、原告の主張は失当であって、本件審決の判断に取り消されるべき誤りはない る共通の印象を相違点が覆すには至ら ないものであるから、本願意匠は引用意匠に類似するものといわざるを得ない。 したがって、原告の主張は失当であって、本件審決の判断に取り消されるべき誤りはない。 さらに、原告が、バケットの側面の縁部の線形状が本願意匠の要部であるのに対し、底面視で確認されるカッター収納部の形状は、公知のものであって、 需要者が注目するものではないとする主張について更に検討するに、意匠の類 否判断において、意匠の構成要素に公知の態様が含まれていたとしても、公知であることは、意匠の特徴を示す要素とはなり得ないことに何ら結びつくものではなく、共通点があいまって全体の基調を成すときは、意匠全体の類否判断に大きな影響を及ぼすものである。 この点、本件についてみても同様に、本願部分と引用部分の底面視の共通点 は公知の態様を含むものであるとしても、両部分の大部分の面積を占める部位において、前壁、外壁及び内壁からなる構成態様及び各部の長さの比率もほぼ一致するのであって、正面視におけるバケット側壁縁部の湾曲態様の共通点とあいまって成す全体の基調が、意匠全体の類否判断に影響を及ぼすものである。 また、両部分を占める面積の観点からも、原告が重視するところの正面視の 形状は、バケット縁の角の稜線のみであって、ほとんど面積を認識できないものであるのに対し、底面視に表れる縁面は、本願部分のほぼ全部の面積を占める大きなものであるから、需要者が底面に注目しないとする原告の主張は失当である。 なお、本願意匠出願前に公然知られていたバケット側壁縁部の湾曲形状につ いてみると、湾曲が比較的緩やかなもの(甲6の9頁図7)、湾曲の度合いが増したもの(引用意匠、甲1)、先端部から全体が大きな円弧状に湾曲したもの(乙2)、 いたバケット側壁縁部の湾曲形状につ いてみると、湾曲が比較的緩やかなもの(甲6の9頁図7)、湾曲の度合いが増したもの(引用意匠、甲1)、先端部から全体が大きな円弧状に湾曲したもの(乙2)、先端から長い直線が伸び、その後急激に湾曲したもの(乙3の8、9頁図1~6、8)、といった種々の形状が知られていたところ、本願部分と引用部分のバケット側壁縁部の湾曲形状は、審決認定の共通点aのとおり共通しており、 周辺の他の意匠と比較してみても両部分の形状は近いものである。そして、「本願部分の外壁は、引用部分の外壁よりやや大きく抉れている」が、その相違は、前記共通点aの特徴を損なわない程度の僅かなものに過ぎないから、需要者がその違いを認識し得たとしても、本願部分は、引用部分に類似したバリエーションの意匠との印象を持つものである。 したがって、本件審決が、「両部分全体として総合的に観察した場合、両部分 は、共通点a及び共通点bが両部分の類否判断に与える影響は大きいのに対し、相違点が両部分の類否判断に与える影響は小さい」とした判断に誤りはない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由(本件審決の本願意匠と引用意匠との類似性判断の誤り)について⑴ 証拠(甲1、2)及び弁論の全趣旨によれば、本願意匠及び引用意匠につ いて、次の各事実を認めることができる。 ア本願意匠及び引用意匠、並びに本願部分及び引用部分本願意匠に係る物品は「カッター付グラップルバケット」であり、意匠公報の「意匠に係る物品の説明」には、「カッターの両側に配置されたバケットの材受け部とグラップルとの間に保持した立木等を、カッターを回動 させることによって切断する。」と記載されており、実線で表された部分が、意匠登録を受けようとする部分(本願部分)であ たバケットの材受け部とグラップルとの間に保持した立木等を、カッターを回動 させることによって切断する。」と記載されており、実線で表された部分が、意匠登録を受けようとする部分(本願部分)であるとする部分意匠である。 本願部分は、願書に添付した図面(甲2、別紙審決書(写し)別紙第1)において実線で表されている、カッター付グラップルバケットの、正面視に表れた形状線の一部及び底面視に表れた壁の縁面の一部から成るもの であり、より具体的には、正面視において、バケット縁部の側壁の下端に表れる湾曲した形状線、及び、底面視において、略横長長方形の壁(以下「前壁」という。)を形成し、その右端寄りの上側に前壁よりやや長い略横長長方形の壁(以下「外壁」という。)と下側に外壁よりやや短い略横長長方形の壁(以下「内壁」という。)を左端を揃えて密着状に形成したもので ある。 一方、引用意匠に係る物品は「カッター付グラップルバケット」であり、その意匠は、同物品の全体の形状である。引用意匠の公報(甲1)によれば、引用意匠の「意匠に係る物品」はカッター付グラップルバケットであり、「意匠に係る物品の説明」には、「カッター付グラップルバケットは、 グラップルバケットの両側の側ポケットにそれぞれ収納可能に装着され た2つのカッターを備え、カッターは立ち木の切り倒しに当たって切断操作される。」と記載され、カッター付グラップルバケットは、上記説明にあるとおり、グラップルバケットの両側の側ポケットにそれぞれ収納可能に装着された二つのカッターを備え、カッターは立ち木の切り倒しに当たって切断操作されるものであると認められる。 イ本願意匠(本願部分)及び引用意匠(引用部分)の形状等(ア) 本願部分と、引用意匠において本願部分に カッターは立ち木の切り倒しに当たって切断操作されるものであると認められる。 イ本願意匠(本願部分)及び引用意匠(引用部分)の形状等(ア) 本願部分と、引用意匠において本願部分に相当する部分(引用部分。 本願部分と引用部分を合わせて、以下「両部分」という。)は、いずれも、正面側のバケット縁部の底面の位置であって、大きさ及び範囲は、底面視において、バケットの横幅の約3/5の長さで、縦幅の約1/16の 長さの大きさ及び範囲である。 そうすると、両部分はいずれもカッター付グラップルバケットのバケット縁部の底面に位置するものであり、両部分の用途及び機能は同じで、位置、大きさ及び範囲も、上記のとおり一致するところ、両部分の共通点及び相違点については、以下のとおり認められる。 (イ) 共通点a 正面正面視において、バケット縁部の側壁の下端に表れる形状線を、左端(先端)から右に向かってやや上向きの略「つ」の字状に湾曲したあと、反転して右端(後端)まで小さく凸弧状に湾曲したものとして いる点b 底面全体は、底面視において、略横長長方形の前壁を形成し、その右端寄りの上側に前壁よりやや長い略横長長方形の外壁と下側に外壁よりやや短い略横長長方形の内壁を左端を揃えて密着状に形成したもので あって、外壁は、右端寄りに縦の形状線を形成している点、 各部の長さの比率は、前壁の長さと厚みの比率を約17:2とし、外壁と内壁の長さをそれぞれ前壁の約1.5倍、約1.3倍とし、厚みをそれぞれ前壁の約1/2、約1/4としている点、において共通する。 (ウ) 相違点 正面視における前壁から外壁にかけて下端に表れる形状線について、本願部分は、前壁は略直線状とし、外壁は左端寄りを若干凹ませている 1/4としている点、において共通する。 (ウ) 相違点 正面視における前壁から外壁にかけて下端に表れる形状線について、本願部分は、前壁は略直線状とし、外壁は左端寄りを若干凹ませているのに対し、引用部分は、前壁から外壁の中央寄りまでごく僅かに凹弧状としているものであって、本願部分の外壁は、引用部分の外壁よりやや大きく抉れている点、において相違する。 ⑵ 類否判断ア登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行われるところ(意匠法24条2項参照)、本願意匠に係る物品であるカッター付グラップルバケットの需要者は、木材の伐採作業に関わるカッターの他、木材の搬出等に係るグラップル作 業に関わる部位にも関心が高いものといえるから、両意匠(両部分)を対比する際においては、まず、正面視における前壁から外壁の態様を観察し、合わせて外観全体を観察し、需要者の視覚を通じて起こさせる美感の観点から、両部分の前記共通点及び相違点が類否判断に与える影響を検討すべきである。 イ前記アのとおり、意匠に係る物品は同一であり、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲についても、前記⑴イ(ア)のとおりこれらは一致し、同一である。 ウ両部分は、前記⑴イ(イ)a及びbのとおり、正面視において、バケット縁部の側壁の下端に表れる形状線を、左端(先端)から右に向かってやや上 向きの略「つ」の字状に湾曲したあと、反転して右端(後端)まで小さく 凸弧状に湾曲したものとしている点(共通点a)、及び、底面視において、略横長長方形の前壁を形成し、その右端寄りの上側に前壁よりやや長い略横長長方形の外壁と下側に外壁よりやや短い略横長長方形の内壁を左端を揃えて密着状に形成し いる点(共通点a)、及び、底面視において、略横長長方形の前壁を形成し、その右端寄りの上側に前壁よりやや長い略横長長方形の外壁と下側に外壁よりやや短い略横長長方形の内壁を左端を揃えて密着状に形成したものであって、外壁は、右端寄りに縦の形状線を形成している点、各部の長さの比率は、前壁の長さと厚みの比率を約17: 2とし、外壁と内壁の長さをそれぞれ前壁の約1.5倍、約1.3倍とし、厚みをそれぞれ前壁の約1/2、約1/4としている点(共通点b)において共通する。 そして、両意匠は、前記⑴イ(ウ)のとおり、正面視における前壁から外壁にかけて下端に表れる形状線について、本願部分は、前壁は略直線状とし、 外壁は左端寄りを若干凹ませているのに対し、引用部分は、前壁から外壁の中央寄りまでごく僅かに凹弧状としているものであって、本願部分の外壁は、引用部分の外壁よりやや大きく抉れている点、において相違する。 エ共通点aは、正面視においてバケット縁部の下端に表れる形状線であるところ、左端から右に向かってやや上向きの略「つ」の字状に湾曲したあ と、反転して右端まで小さく凸弧状に湾曲した態様における共通性は、両部分の基本的な構成にかかわるものであり、需要者の視覚を通じた美感に与える影響も大きいものとみられるから、共通点aが、両部分の類否判断に与える影響は大きい。 また、共通点bは、底面視における態様であるところ、略横長長方形の 前壁、外壁及び内壁を前後に密着してなるものであって、各部の長さの比率もほぼ一致するものであるから、共通点aと相まって、需要者に共通の印象を与えるものである。本願部分がカッター付グラップルバケットの一部であり、このうちの底面視に係る部分に共通点bが認められ、特段の相違が認められないことは、仮に同部分に係る形状 て、需要者に共通の印象を与えるものである。本願部分がカッター付グラップルバケットの一部であり、このうちの底面視に係る部分に共通点bが認められ、特段の相違が認められないことは、仮に同部分に係る形状に公知の態様が含まれる としても、特に意匠全体を観察する際に、両部分の類否判断に少なからぬ 影響を与えるものである。 オ相違点として挙げられた、正面視における前壁から外壁にかけて下端に表れる形状線について、引用部分は、前壁から外壁の中央寄りまでごく僅かに凹弧状としているものであるのに対し、本願部分は、前壁は略直線状とし、外壁は左端寄りを若干凹ませており、引用部分の外壁よりやや大き く抉れている点において相違する。しかし、この点に係る相違は、前記第3〔原告の主張〕2⑴の【図1c】に示されたように、本願意匠と引用意匠の正面図を、カッターの回転軸の位置を合わせて重ね合わることによって認識し得る程度の小さなものであると認められ、このような方法で対比をしない通常の場合には、その相違は、直ちには認識し難いものと認めら れる。両部分の正面視に係るバケット縁部の側壁の下端の形状線全体からすると、左端から右に向かって上向きに湾曲し反転して右端まで凸弧状に湾曲した全体の態様は共通しているのに対し、引用意匠との相違点に係る本願意匠の上記態様は、直ちには認識し難いものであり、バケット側壁下端の美感に影響を与えるものとは認め難いから、これが需要者に引用意匠 と異なる印象をもたらすものとは認められない。 そうすると、本願部分の上記の相違点に係る態様が、引用部分との対比において、特段の意匠的特徴を表出して需要者に異なる美感をもたらしているとまではいえないから、この相違点が、両部分の類否判断に与える影響は小さい。 カ両部分 係る態様が、引用部分との対比において、特段の意匠的特徴を表出して需要者に異なる美感をもたらしているとまではいえないから、この相違点が、両部分の類否判断に与える影響は小さい。 カ両部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、両部分全体として総合的に観察した場合、両部分は、共通点a及び共通点bが両部分の類否判断に与える影響は大きいのに対し、相違点が両部分の類否判断に与える影響は小さい。 したがって、相違点がもたらす視覚的効果を考慮しても、共通点が与え る共通の印象を覆すには至らないものということができる。そうすると、 前記需要者の観点からみた場合、本願部分(本願意匠)と引用部分(引用意匠)は類似するというべきである。 ⑶ 小括以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品は同一であり、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は同一で、形状等において類似するもの であるから、両意匠は類似するものである。本件審決の判断に誤りはないというべきである。 2 原告の主張に対する判断⑴ 原告は、前記第3〔原告の主張〕1ないし3のとおり、本願部分は、バケットの縁部を少し抉るようにしてカッターとバケットの縁部の間の空間を広 げることによって、より太い立木を切断、伐採することができるようになったものであり、両部分の全体的な美感は共通しない旨主張する。 しかし、本願部分は、より太い木材の伐出作業を行うため、「カッターとバケットの縁部の間の空間を広げる」工夫がなされたものであったとしても、それが意匠創作上の新規な特徴として需要者の注意を強く引くものでない限 り、意匠上の差異として評価することはできず、前記1⑵オのとおり、両部分の正面視に係るバケット縁部の側壁の下端の形状線全体も、左端から上向き 規な特徴として需要者の注意を強く引くものでない限 り、意匠上の差異として評価することはできず、前記1⑵オのとおり、両部分の正面視に係るバケット縁部の側壁の下端の形状線全体も、左端から上向きに湾曲し反転して右端まで凸弧状に湾曲する全体の態様は共通しており、原告の主張する三つの線成分(A、B、C)ないし曲線部分(A´、B´、C´)も、一連の曲線形状において特段それぞれ異なる部分として認識できるよう なものではなく、両部分の差異についても直ちには認識し難いものといえる。 そうすると、本願部分の態様は、引用部分との対比において、底面視を含めた意匠全体を観察した場合に、需要者に異なる美感を起こさせるまでには至らないものということができる。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ⑵ 原告は、前記第3〔原告の主張〕4⑴のとおり、競合他社のバケット側壁 縁部の湾曲形状も「へ」の字形と一致するなど、バケットの側壁縁部の形状は、カッター付グラップルバケットの切断機能のために極めて重要で、需要者が注目する部分である旨を主張する。 しかし、本願部分は、前記1⑴アのとおり、正面視に表れた形状線及び底面視に表れた壁の一部から成るものであり、これらを引用部分と対比すれば、 引用部分と類似することについて、前記1⑵で検討したとおりである。原告の主張は、両部分の底面視における共通点(共通点b)の評価をことさら軽視するものであり、前提を欠くものというべきである。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 3 結論 以上のとおり、本件審決の認定及び判断に誤りは認められず、原告主張の取消事由は理由がない。 よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 以上のとおり、本件審決の認定及び判断に誤りは認められず、原告主張の取消事由は理由がない。よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。 主文 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 中平健 裁判官 今井弘晃 裁判官 水野正則 別紙省略
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