令和5(ネ)188 国家賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和5年7月19日 東京高等裁判所 その他 東京地方裁判所 令和3(ワ)2238
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判決文本文17,574 文字)

主文 1 原判決を次のとおり変更する。 2 被控訴人は、控訴人に対し、50万円を支払え。 3 控訴人のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は、第1、2審を通じて、これを9分し、その1を被控訴人の 負担とし、その余を控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決を次のとおり変更する。 2 被控訴人は、控訴人に対し、450万円を支払え。 第2 事案の概要(以下、略語は、原判決の例による。) 1 本件は、甲国国籍を有する外国人である控訴人が、退去強制令書の発付を受け、その執行として入国者収容所東日本入国管理センター(東日本センター)に収容されていたところ、①東京出入国在留管理局(東京入管)の職員によって侮辱され、また、婚姻関係に不当な干渉をされた、②出入国在留管理庁が令 和元年10月1日に公開した資料により名誉を毀損された、③難民認定申請中である控訴人を東日本センターに再収容したことは違法である、④東京入管難民審査参与員事務局が東日本センターの執行部門に対し難民不認定処分の異議申立手続の進捗状況に関する情報を提供し、裁決通知と送還が同日になるよう調整して上記不認定処分に対する提訴の機会を失わせたことは違法である、⑤ 東京入管成田空港支局(成田空港支局)の施設内等において入国警備官により違法な有形力の行使を受けたなどと主張して、被控訴人に対し、国家賠償法(国賠法)1条1項に基づく損害賠償として、慰謝料450万円(上記①につき50万円、②につき50万円、③につき100万円、④につき50万円、⑤につき200万円の合計額)の支払を求める事案である。 2 原審は、上記④に関する控訴人の主張は一部理由があるとした上で、本件 万円、②につき50万円、③につき100万円、④につき50万円、⑤につき200万円の合計額)の支払を求める事案である。 2 原審は、上記④に関する控訴人の主張は一部理由があるとした上で、本件送 還は、控訴人の物理的抵抗により不能となり、控訴人は、結果として送還を免れ、難民不認定処分の取消訴訟を提起したことなどを考慮して、控訴人の請求について、慰謝料3万円の支払を求める限度で認容し、その余をいずれも棄却する旨の判決をした。 控訴人は、原判決の敗訴部分を不服として、本件控訴を提起した。一方、被 控訴人は、控訴を提起しなかった。 3 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、次のとおり補正し、後記4のとおり当審における当事者の主張を加えるほかは、原判決の「事実及び理由」の第2の2及び3に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決4頁3行目の「という資料」を「と題する資料」と改める。 ⑵ 原判決4頁4~5行目の「受けており、仮放免許可を受けている者」を「受けた後、病気その他やむを得ない事情があるために、仮放免許可を受けている者」と、同頁7行目の「送還忌避被収容者のうち」を「送還忌避被収容者858人のうち」とそれぞれ改める。 ⑶ 原判決5頁2~3行目の「送還されている」を「送還される」と改め、同 頁7行目末尾に「その結果、控訴人の妻は、控訴人との婚姻生活の継続に絶望し、控訴人の電話にほとんど応答しなくなり、また、転居先を控訴人に伝えなかった。」を加える。 ⑷ 原判決5頁13行目の「送還されている」を「送還される」と、同頁15行目の「立場にあって」を「立場にあること、及び、」と、同行目の「立場 を」を「立場にあることを」とそれぞれ改める。 ⑸ 原判決6頁1行目の「本件」を「原審」と、同頁 送還される」と、同頁15行目の「立場にあって」を「立場にあること、及び、」と、同行目の「立場 を」を「立場にあることを」とそれぞれ改める。 ⑸ 原判決6頁1行目の「本件」を「原審」と、同頁8行目の「少なくとも」を「早くとも」とそれぞれ改める。 ⑹ 原判決7頁22行目の「退去強制令書の執行をするとき」及び8頁2~3行目の「強制退去令書の執行をするとき」をいずれも「退去強制令書を執行 するとき」と改める。 ⑺ 原判決15頁2行目の「繰り返し」を「繰り返し、」と改める。 ⑻ 原判決15頁13行目の「各暴行(」の次に「いずれも令和元年12月23日の本件送還の執行の際にされたもの。」を加える。 ⑼ 原判決23頁10行目の末尾に「(乙14・2・6:40~7:20)」を加える。 ⑽ 原判決30頁18~19行目の「婚姻関係への不当な干渉は認められず、」を削り、同行目の「損害」を「控訴人の主張する損害」と改める。 4 当審における当事者の主張(控訴人の主張)⑴ 争点⑴(東京入管職員による侮辱行為及び婚姻関係への干渉の国賠法上の 違法性)について原判決は、東京入管職員が控訴人の妻に対して控訴人に関する侮辱的な発言をしたことを認める的確な証拠がないとする。 しかし、控訴人が入国警備官による面接において、当該発言に対する抗議をしており、入国警備官は、その抗議を何らの留保もせずに記録に残してい ることからすれば、当該発言は存在したというべきである。 ⑵ 争点⑵(本件資料の公開による名誉毀損の国賠法上の違法性)について原判決は、本件資料の記載が、控訴人の社会的評価を低下させるに足りる特定性・具体性を欠くとする。 しかし、控訴人が、原審において風評被害に関する裁判 損の国賠法上の違法性)について原判決は、本件資料の記載が、控訴人の社会的評価を低下させるに足りる特定性・具体性を欠くとする。 しかし、控訴人が、原審において風評被害に関する裁判例を挙げて主張し たとおり、被害者が多数であって特定性を欠くことは、社会的評価の低下を否定するものではなく、原判決は不当である。 ⑶ 争点⑶(本件再収容に関する国賠法上の違法性)についてア原判決は、再収容の入管法違反の問題に関し、原則収容主義の条文上の根拠として被控訴人が主張したところを採用した。しかし、控訴人が原審 で主張した「不法入国者等退去強制手続令」の条文との比較等から原則収 容主義に理由がないという指摘に対しては言及しておらず、不当である。 イまた、再収容の憲法違反の主張に関し、原判決が憲法違反でない理由として示しているのは、単に本件再収容が入管法の規定に基づくということだけである。憲法違反と法令違反とは、法令上の階層が異なるものであり、原判決は、憲法違反の主張に対して判断していないに等しい。 ウさらに、原判決は、再収容が自由権規約9条1項に違反しない理由として、再収容が同規約13条に違反しないことをいうが、9条1項違反と13条違反とは異なる問題である。原判決は、9条1項違反の主張に対して判断していないに等しい。 ⑷ 争点⑷(東京入管難民審査参与員事務局と東日本センター執行部門による 送還執行とこれに至る一連の行為の国賠法上の違法性)についてア原判決は、法律の解釈論としては、難民不認定処分に対する異議申立棄却決定後に同決定に対する司法審査の機会を実質的に奪うことを目的として、同決定の告知と同時に送還を実施するための調整を行うことは、入国警備官の有する裁量権 としては、難民不認定処分に対する異議申立棄却決定後に同決定に対する司法審査の機会を実質的に奪うことを目的として、同決定の告知と同時に送還を実施するための調整を行うことは、入国警備官の有する裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものといわざる を得ず、また、かかる調整のために入国審査官が前記決定の告知を遅延することも、同様に入国審査官の有する裁量権の範囲を逸脱し又は濫用したものということができると説示しながら、本件への当てはめにおいては、入国審査官の遅延行為の違法のみを認定し、入国警備官による送還の調整の違法性を認定しなかった。 これは、後者を認定すると、本件における送還執行が全体として違法性を帯びることとなり、個人情報保護法違反も、入国警備官らによる暴行に対する控訴人の抵抗が正当であったことも認めざるを得なくなるため、途中から論理を曲げたものと推測される。しかし、そのような判断は不当である。 そして、控訴人が、本件送還の執行の際に「帰らない」と訴えたことは、 裁判を受ける権利を侵害する送還への抗議であったのであるから、正当なものである。この点、原判決は、控訴人が「帰らない」と訴えたことにつき何らかの危険性があるかのような判示を繰り返しているが、憲法秩序に反する危険な行為をしていたのは、入国警備官の方である。 イ原判決は、行政機関個人情報保護法違反の主張に関して、東京入管難民 審査参与員事務局が、東日本センター執行部門に対して、難民認定手続の進捗に関する情報を提供したことが「速やかな送還という正当な職務執行のためである」としている。 しかし、異議申立棄却決定前に進捗状況(間もなく棄却する見込み)を伝えることは、単に「速やかな送還」のためではなく、控訴人の裁判を受 という正当な職務執行のためである」としている。 しかし、異議申立棄却決定前に進捗状況(間もなく棄却する見込み)を伝えることは、単に「速やかな送還」のためではなく、控訴人の裁判を受 ける機会を実質的に奪うことを目的として異議申立棄却決定の告知と同時に送還を実施する調整のためのものである。そうでなければ、棄却決定後、その通知を送還の執行部門に伝えれば足りる。そして、このような目的は、同法8条2項2号の「相当な理由」に当たらないから、上記情報提供行為は、同法8条1項に違反し、違法である。 ⑸ 争点⑸(本件送還の際の東京入管成田空港支局施設内における入国警備官による暴行の国賠法上の違法性)についてア腕の持ち上げ行為について 4回の行為に分けることの不合理性について原判決は、「腕の持ち上げ行為」を「一回目」から「四回目」までに 分けて判断した。しかし、原判決のいう「二回目」から「四回目」までは、控訴人の腕の高さが「本件初期態勢」の高さまで下がってないし、また、腕を後ろ手に持ち上げられた場合の関節可動域は、平均50度程度であり、50度に達すれば苦痛が生じるところ、上記「二回目」から「四回目」までの間は、控訴人の胴と腕の間が50度前後開いた状態が 継続し、控訴人も苦悶の表情を示しているのであるから、苦痛を伴う持 ち上げ行為は継続していたのであって、これらを分けることに合理性はない。 その上で、原判決のいう「二回目」から「四回目」は、特に胴と腕の角度が約90度まで開くように腕を持ち上げられているから、上記「二回目」は「一回目の90度の持ち上げ行為」、「三回目」は「二回目の 90度の持ち上げ行為」などと呼称するのが適切である。 一回目の持ち上げ行為の必要性の欠如について ているから、上記「二回目」は「一回目の90度の持ち上げ行為」、「三回目」は「二回目の 90度の持ち上げ行為」などと呼称するのが適切である。 一回目の持ち上げ行為の必要性の欠如について原判決は、「一回目の持ち上げ行為」の前に、控訴人が「全身に力を入れるなどして抵抗した」と認定したが、それを示す証拠はなく、一回目の持ち上げ行為の必要性は認められない。 二回目の持ち上げ行為(一回目の90度の持ち上げ行為)の法令上の根拠及び必要性の欠如について原判決は、「二回目の持ち上げ行為」の前に、控訴人が「上半身を脱力させ」などと認定した一方(原判決43頁)、持ち上げ行為の相当性の評価の場面では、控訴人が「全身に力を入れるなどして抵抗を続けた」 としており(原判決56頁)、前後矛盾する判示であって、恣意的である。また、「全身に力を入れるなどして抵抗を続けた」ことについては、動画(乙14等)を見ても確認することができず、これを認めるに足りる証拠がない。 また、原判決は、控訴人が「一回目の持ち上げ行為が終了した後も、 送還を拒絶する発言をするなど強固な抵抗意思を保持していたことは明らか」として(原判決55頁)、持ち上げ行為の必要性を認めているが、上記発言は単なる発声であり、発声を止めさせる(防声)ために有形力を行使することには法令上の根拠がない。 さらに、原判決は、「強固な抵抗意思を保持していたことは明らか」 という理由で持ち上げ行為の必要性を認めているが、内心の抵抗意思を 断念させるために身体的苦痛を与えることには法令上の根拠がない。 以上のとおり、「二回目の持ち上げ行為」(一回目の90度の持ち上げ行為)については、法令上の根拠も必要性も認められない 断念させるために身体的苦痛を与えることには法令上の根拠がない。 以上のとおり、「二回目の持ち上げ行為」(一回目の90度の持ち上げ行為)については、法令上の根拠も必要性も認められない。 三回目の持ち上げ行為(二回目の90度の持ち上げ行為)の法令上の根拠及び必要性の欠如について 原判決は、控訴人が「叫び声を上げたり、再び「甲国帰らない」などと送還を拒否する旨の発言を繰り返し、入国警備官に肩を固定されていたにも関わらず、全身に力を入れ、腰を浮かせて立ち上がろうとした」ことをもって、控訴人及び控訴人に対応する入国警備官に具体的な受傷の危険を生じさせたものとして、三回目の持ち上げ行為の必要性を認め た(原判決56頁)。 しかし、「甲国帰らない」という発言に関しては、発言を止めさせることを目的として有形力を行使することが許されないことは前記のとおりであり、法令上の根拠も必要性もない。 また、控訴人が「全身に力を入れ、腰を浮かせて立ち上がろうとした」 という動きは、腕の回転角度を90度より少なくして、苦痛から逃れようとするものであって、制止の必要性はない。 さらに、「入国警備官に肩を固定されていた」ことは、肩を固定すると同時に腕を持ち上げられることによって、より苦痛が増すから、控訴人はこれを軽減するために腰を浮かせて立ち上がろうとしたのであり、 抵抗ではなく、これを制止する必要はない。 原判決によれば、苦痛を加えられた場合に、体を動かさずにいない限り、抵抗とみなすということになり、不当である。 四回目の持ち上げ行為(三回目の90度の持ち上げ行為)の必要性の欠如について 原判決は、控訴人に、上半身を脱力し、足に力を入れる動きがあった と認定し、これを抵抗と 四回目の持ち上げ行為(三回目の90度の持ち上げ行為)の必要性の欠如について 原判決は、控訴人に、上半身を脱力し、足に力を入れる動きがあった と認定し、これを抵抗と評価した上で、四回目の持ち上げ行為の必要性を認めた。 しかし、三回目の腕の持ち上げ行為から四回目の腕の持ち上げ行為までの間、約50度の腕の持ち上げ行為が継続しており、控訴人は、苦痛から逃れようともがいていたにすぎない。もがく動きを抵抗と評価する ことは不当である。 また、原判決は、控訴人の上記動きによって具体的に受傷の危険が生じたと認定するが、証拠上、何らの根拠もない。 控訴人は、すでに後ろ手に手錠をされ、多数の入国警備官によって身体の各所を把持されて身体の自由を奪われた状態であり、ただ「帰らな い」と口頭で抗議を続けていただけである。 相当性の欠如について前記のとおり、腕を後ろ手に持ち上げられた場合の関節可動域は、平均50度であるところ、50度前後に持ち上げられただけで可動の限界に達しており、苦痛が生じる。さらに、3回にわたって、90度まで持 ち上げられる行為がされているが、これは、関節可動域を大きく超えるものであり、肩に何らかの損傷を生じてもおかしくないほどのものであって、苦痛を与えることを目指す関節技にほかならない。 控訴人は、これを10秒以上継続することを3回繰り返されたのであり、二回目の持ち上げ行為から四回目の持ち上げ行為までは、相当性を 欠くものである。 イ膝に乗る行為について原判決は、入国警備官が控訴人の両足の上に自身の膝を当てて体重を乗せる行為の必要性を肯定した。 しかし、控訴人が「帰らない」と発言したことが有形力行使の イ膝に乗る行為について原判決は、入国警備官が控訴人の両足の上に自身の膝を当てて体重を乗せる行為の必要性を肯定した。 しかし、控訴人が「帰らない」と発言したことが有形力行使の法令上の 根拠とならず、必要性を根拠付けることもないことは前記のとおりであり、 このときの控訴人の身体の動きは、いずれも入国警備官にされた行為による苦痛にもだえているだけであり、抵抗ではないのであるから、制止の必要性はない。 また、控訴人は、上記行為を受けて「足が痛い」と悲鳴を上げており、その苦痛の程度が強いことは明白であって、相当性も欠く。 (被控訴人の主張)⑴ 腕の持ち上げ行為についてア控訴人は、二回目の持ち上げ行為から四回目の持ち上げ行為に分けて検討することが不合理であると主張するが、二回目の持ち上げ行為から四回目の持ち上げ行為までの間、控訴人の胴と腕の間の角度が継続的に50度 前後開いていたわけではない。しかも、関節可動域には個人差があり、控訴人は、背中から約90度の角度まで腕を持ち上げられたときですら、苦痛を訴えることなく、痛がっている様子も見られないことからすれば(乙14・1-2・06:01~06:08)、入国警備官が控訴人の腕を持ち上げる各行為が控訴人の腕の関節可動域を超えたものとは認められず、 上記行為を継続した行為と見ることに合理性はない。 イ二回目の持ち上げ行為に関する控訴人の主張について原判決は、控訴人が「強固な抵抗意思を保持していた」ことを認定した上で、控訴人が「後ろの入国警備官の様子をうかがった上で新たに強い抵抗行為をする危険性があった」旨認定し、そのような状態の下において、 控訴人や入国警備官の受傷を防止するため、有形力を用いて控訴人を制圧する必要 の入国警備官の様子をうかがった上で新たに強い抵抗行為をする危険性があった」旨認定し、そのような状態の下において、 控訴人や入国警備官の受傷を防止するため、有形力を用いて控訴人を制圧する必要性を認定したのであって、入国警備官が防声のために二回目の持ち上げ行為を行ったと認定したものではないし、被控訴人もそのような主張をしているわけではないから、この点に関する控訴人の主張はいずれも失当である。 ウ三回目及び四回目の各持ち上げ行為に関する控訴人の主張について 控訴人は、三回目及び四回目の各持ち上げ行為について、いずれも、その前の控訴人の動作は苦痛を逃れようともがく動きであって抵抗ではないから、制圧の必要性がなかったと主張する。 しかし、控訴人は、二回目の持ち上げ行為の後、「痛い」と発言していたものの、後ろの入国警備官が控訴人の手を持ち上げていた角度を緩め、 右側の入国警備官が控訴人の肩をつかむ手をいったん離した後は、「甲国帰るできない。できない。できない。」との発言を繰り返し、痛みを訴えていないから(乙14・1-2・3:50~4:20)、三回目の持ち上げ行為の直前まで、持ち上げ行為による苦痛が継続していたということはできない。むしろ、控訴人の上記発言内容や、控訴人が入国警備官に肩を つかまれていてもなお立ち上がろうとするなどして動きを強めていたことからすれば、この間の控訴人の動作は、送還に対する抵抗というべきであって、単に苦痛を逃れようともがいていたものではない。 また、三回目の持ち上げ行為後、四回目の持ち上げ行為までの状況についても、控訴人は、「帰るできない。」と叫び、入国警備官が特段の有形 力を行使していない場面でも「痛い」と声を上げ(乙14・1-2・2:05~2:33)、 、四回目の持ち上げ行為までの状況についても、控訴人は、「帰るできない。」と叫び、入国警備官が特段の有形 力を行使していない場面でも「痛い」と声を上げ(乙14・1-2・2:05~2:33)、後方に体重をかけて脱力したり、両足を前に投げ出すなどして、着座姿勢を正すようにとの入国警備官の声掛けに従わなかったのであるから、この間の控訴人の動作が、送還に対する抵抗であることは明らかであって、苦痛を逃れようともがいていたということはできない。 以上のとおり、三回目及び四回目の各持ち上げ行為は、控訴人が立ち上がろうとするなどして送還に抵抗しており、これを放置していては、控訴人や控訴人に対応していた入国警備官が受傷する具体的な危険があったため、これを防止すべく行われたものであって、制圧の必要性がないという控訴人の主張は失当である。 エ相当性の欠如に関する控訴人の主張について 控訴人は、二回目の持ち上げ行為から四回目の持ち上げ行為について、苦痛を与えることを目指す関節技にほかならず、相当性を欠くと主張するが、上記各持ち上げ行為は、控訴人が種々の抵抗行為を続けたために、控訴人や控訴人に対応していた入国警備官が受傷する具体的危険が認められたことから、安全かつ確実な送還を実施すべく、受傷事故防止のために行 われたものであって、苦痛を与えることを目指していたものではない。したがって、控訴人の上記主張は失当である。 ⑵ その他の控訴人の主張に対する被控訴人の主張は、原審で述べたとおりであって、いずれも否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、原審と異なり、控訴人の請求は、被控訴人に対し、50万円の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がないと判断する。 その理由は、次のとおり補 。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、原審と異なり、控訴人の請求は、被控訴人に対し、50万円の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がないと判断する。 その理由は、次のとおり補正し、後記2のとおり当審における当事者の主張に対する判断を加えるほかは、原判決の「事実及び理由」の第3の1から6までに記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決31頁24~25行目の「送還されている」を「送還される」と改める。 ⑵ 原判決32頁9行目の「難民認定」を「難民申請」と改める。 ⑶ 原判決32頁14行目の「客観的な裏付けを欠く伝聞」から同頁15行目末尾までを「控訴人が品川の入管で担当者から聞いたという話の内容を前提 として、控訴人の推測を述べているものにすぎず、同供述によって、直ちに、前記入管職員が、控訴人の妻に対して同内容の発言をしたと認めることはできない。」と改める。 ⑷ 原判決32頁20行目の「民法710条」の次に「にいう」を加える。 ⑸ 原判決33頁10~11行目及び同頁12行目の各「送還忌避収容者」を いずれも「送還忌避被収容者」と改める。 ⑹ 原判決33頁19行目の「強制退去令書」を「退去強制令書」と改める(以下同じ。)。 ⑺ 原判決34頁4行目の「53条」を「52条」と、同頁5行目の「強制退去令書の執行するとき」を「退去強制令書を執行するとき」とそれぞれ改める。 ⑻ 原判決36頁6行目の「認めており」を「認めていること」と、同頁12行目の「委ねているというべきであるから」から同頁13行目の「9条」までを「委ねているものと解されることからすると、入管法の前記規定に基づき退去強制令書の執行として被退去強制者を収容することが、恣意的な拘禁を禁止した自由権規約9条」 ら」から同頁13行目の「9条」までを「委ねているものと解されることからすると、入管法の前記規定に基づき退去強制令書の執行として被退去強制者を収容することが、恣意的な拘禁を禁止した自由権規約9条」とそれぞれ改める。 ⑼ 原判決36頁17行目から37頁20行目までを削り、同頁21行目の「⑵」を「⑴」と改める。 ⑽ 原判決39頁3行目の「難民異議申立事務取扱要領」の前に「出入国在留管理庁が定める」を加える。 ⑾ 原判決39頁20行目の「乙5、6」を「乙1、5、6」と改め、同頁2 1行目の「入国審査官から」の前に「東日本センターにおいて、」を加え、同頁23~24行目の「受領署名を拒み、同日午後12時21分」を「、当該決定書を受領した旨の署名を拒んだが、同日午後0時19分、同センターの入国警備官において控訴人に対し出所手続のため移動する旨告げ、本件送還の執行に着手したこと、同日午後0時21分、同入国警備官から」と、同 頁25行目の「難民終わっていない」を「難民終わってない」とそれぞれ改める。 ⑿ 原判決40頁6行目の「に対し」を「を受けて」と改め、同頁8行目の「推認され」を次のとおり改める。 「推認されるとともに、上記のとおり、入国審査官による本件異議申立棄却決 定の告知と本件送還の執行が同日に連続的に行われていること、前提事実⑴ シのとおり、東京入管難民審査参与員事務局は、東日本センター執行部門に対して、異議申立手続の進捗状況に関する情報を提供していたことからすれば、東日本センター執行部門の入国警備官は、控訴人が本件異議申立棄却決定を受けて訴訟提起することを妨げる目的で、敢えて本件異議申立棄却決定の告知と本件送還の執行が同日に連続的に行われるように日程を調整したこ とが推認され」⒀ 原判決40 が本件異議申立棄却決定を受けて訴訟提起することを妨げる目的で、敢えて本件異議申立棄却決定の告知と本件送還の執行が同日に連続的に行われるように日程を調整したこ とが推認され」⒀ 原判決40頁12行目の「。そもそも」から同頁14行目の「あり得ない」までを削り、同頁19行目の「遅滞したことは、」を「遅滞したこと、及び、入国警備官が控訴人から司法審査を受ける機会を実質的に奪うことを目的として上記の日程調整をしたことは、いずれも」と改める。 ⒁ 原判決40頁21行目末尾に、改行の上、次のとおり加える。 「 他方において、入国審査官らの上記各行為は、民事訴訟における訴訟行為には当たらないから、民訴法2条に違反するものとはいえない。 ⑵ 行政機関個人情報保護法違反の有無ア行政機関個人情報保護法2条5項に定める保有個人情報該当性 控訴人の難民異議申立ての手続の進捗状況に関する情報は、「生存する個人」である控訴人に関する情報であって、氏名、生年月日等の記述により、特定の個人を識別することができるものに当たるから、同法2条2項1号に定める「個人情報」に該当し、これらの情報は東京入管難民審査参与員事務局が保有しているから、同条5項にいう「保有個人情 報」に該当する。 イ行政機関個人情報保護法8条2項該当性入管法52条3項は、入国警備官の事務として、退去強制令書を執行するときは、退去強制を受ける者を速やかに送還先に送還しなければならない旨を定め、同条7項は、入国警備官は、退去強制令書の執行に関 し必要がある場合には、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の 報告を求めることができる旨を定めている。 上記各規定に照らせば、東京入管難民審査参与員事務局が東日本センター執行部門に対して、控訴人 る場合には、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の 報告を求めることができる旨を定めている。 上記各規定に照らせば、東京入管難民審査参与員事務局が東日本センター執行部門に対して、控訴人の難民不認定処分に対する異議申立手続の進捗に関する情報を提供したことは、控訴人の速やかな送還という入国警備官の正当な職務遂行に資する面がある一方で、前記⑴の認定判断 によれば、控訴人が本件異議申立棄却決定を受けて訴訟提起することを妨げる目的で、敢えて本件異議申立棄却決定の告知と本件送還の着手が連続的に行われるように日程を調整するためであったことが推認され、このことは、上記のとおり、控訴人の憲法32条により保障された裁判を受ける権利を侵害し、同31条の適正手続の保障の規定の趣旨にも反 するものである。そうすると、本件において、東京入管難民審査参与員事務局が、東日本センター執行部門に対して、控訴人の難民不認定処分に対する異議申立手続の進捗に関する情報を提供したことは、行政機関個人情報保護法8条2項2号の定める「相当な理由のあるとき」に当たるということはできないし、また、同項柱書のただし書に定める「本人 又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるとき」にも該当し、許されず、同条1項に違反し、違法というべきである。」⒂ 原判決40頁22行目の「争点⑸(」の次に「本件送還の際の」を加える。 ⒃ 原判決41頁8行目末尾に「そして、入国警備官は、午後0時19分、控訴人に対し、出所手続のために移動する旨告げ、本件送還の執行に着手した。」 を加える。 ⒄ 原判決42頁1~2行目の「大声を上げるなどして激しく抵抗したため」を「大声を上げるなどの行為を繰り返したため」と改め、同頁22行目の「「普通に座れ」」の 行に着手した。」 を加える。 ⒄ 原判決42頁1~2行目の「大声を上げるなどして激しく抵抗したため」を「大声を上げるなどの行為を繰り返したため」と改め、同頁22行目の「「普通に座れ」」の次に「「前に行くな」」を加える。 ⒅ 原判決43頁8行目の「後ろ手で手錠されている手を」から同頁9行目の 「以下「一回目の持ち上げ行為」という。」までを「後ろ手で手錠されてい る手を真上の方向に持ち上げた結果、控訴人の上半身は前屈みになって、控訴人の腕と背中の角度は約90度となり(乙14・1-2・2:34、一回目の持ち上げ行為。」と改める。 ⒆ 原判決43頁20行目の「約14秒後」を「約10秒後」と改め、同頁21行目の「戻った」の次に「(乙14・1-2・2:44)」を加える。 ⒇ 原判決44頁4行目の「手錠された手を」から同頁7行目末尾までを「手錠された手を、再び、真上の方向に持ち上げ、左右に座った入国警備官が腕で控訴人の肩を前に押し出して固定した結果、控訴人の上半身は再び前屈みになり、控訴人の腕と背中の角度は約90度となった(乙14・1-2・3:22、二回目の持ち上げ行為)。」と改める。 原判決44頁8行目から45頁6行目までを次のとおり改める。 「 控訴人の後ろに立った入国警備官は、その後、持ち上げた手の力を徐々に緩めつつ、後方で保持し、約14秒後には、控訴人は上半身を起こせるようになったが(乙14・1-2・3:36)、控訴人は、なお「痛い」「痛い」と繰り返し叫んでおり、その後も、甲国に帰らない旨を繰り返し叫んでいた。 これに対し、入国警備官は、控訴人に対し、「力を入れない」「力を入れずに普通に座れるか」「静かにして」「そんな話してない」などと言い、控訴人の後ろに立った入国警備官は、その間、控訴人の後 。 これに対し、入国警備官は、控訴人に対し、「力を入れない」「力を入れずに普通に座れるか」「静かにして」「そんな話してない」などと言い、控訴人の後ろに立った入国警備官は、その間、控訴人の後ろ手を後方で保持し続けていた。 そのようなやり取りの中、控訴人の後ろに立った入国警備官は、再び、控 訴人の後ろ手を徐々に持ち上げ始め(乙14・1-2・4:22)、これに対し、控訴人は、立ち上がって角度を緩めようとしたものの(同4:28)、入国警備官に「立たなくていい」と言われ、左右に座った入国警備官に着座させられた。さらに、控訴人の後ろに立った入国警備官は、控訴人の後ろ手を再び真上の方向に持ち上げ(同4:30)、左右の入国警備官が控訴人の 肩を前に押し出したため、控訴人は、上半身を前屈みにする状態となり、「あ ー」「あー」「あー」と大声で叫び、後ろに立った入国警備官は、約5秒後、手を離した(同4:35、三回目の持ち上げ行為)。」原判決50頁3行目末尾に、改行の上、次のとおり加える。 「入国警備官は、午後8時53分、控訴人の受傷の有無を確認したところ、控訴人が左足の痛みを訴え、左足薬指の爪が剥がれかかっていることが確 認された。そのため、入国警備官は、患部を消毒の上、ガーゼで覆って応急措置をした。」原判決50頁4行目末尾に、改行の上、次のとおり加える。 「 護送車両は、午後9時03分、成田空港を出発し、午後9時45分、東日本センターに到着した。」 原判決51頁7 行目末尾に、改行の上、次のとおり加える。 「 入国警備官が、午後9時46分、控訴人を東日本センター内の入出所手続室に連行した上、受傷の有無を確認したところ、控訴人は、胸、首、両手首、両膝、左足薬指の痛みを訴えた。そのため、入国警備 る。 「 入国警備官が、午後9時46分、控訴人を東日本センター内の入出所手続室に連行した上、受傷の有無を確認したところ、控訴人は、胸、首、両手首、両膝、左足薬指の痛みを訴えた。そのため、入国警備官が、午後10時10分、控訴人を外部の病院に連れて行き、受診させたところ、「左足薬指爪剥 離」との診断を受け、患部消毒がされたほか、外用薬(ゲンタシン軟膏1本)が処方されたが、再診は不要との所見であった。 入国警備官は、午後11時11分、控訴人を東日本センターに再収容した。」原判決51頁8行目から62頁22行目までを次のとおり改める。 「⑵ 判断 前記4の認定判断によれば、入国審査官が、控訴人に対し司法審査を受ける機会を奪うことを目的として、本件異議申立棄却決定の告知を令和元年11月29日から同年12月23日まで遅滞したこと、及び、入国警備官が、控訴人において本件異議申立棄却決定を受けて訴訟提起することを妨げる目的で、本件異議申立棄却決定の告知と本件送還の着手が同日に連 続的に行われるように本件送還の日程を調整したことは、いずれも控訴人 の裁判を受ける権利を侵害するものであり、違法というべきであるところ、このような目的で調整がされた本件送還の執行も控訴人の裁判を受ける権利を侵害するものであって、違法といわざるを得ない。 そして、前記認定事実のとおり、本件送還の執行は、令和元年12月23日午後0時19分に着手され、送還の失敗を経た後、同日午後11時1 1分、控訴人を東日本センターに再収容することによって終了しているが、その間の約11時間に及ぶ執行行為は、その過程でされた入国警備官による有形力の行使を含め、全て違法というべきである。 なお、確かに、本件送還の執行は、退去強制令書に基づい って終了しているが、その間の約11時間に及ぶ執行行為は、その過程でされた入国警備官による有形力の行使を含め、全て違法というべきである。 なお、確かに、本件送還の執行は、退去強制令書に基づいて行われたものであり、その意味で法令上の根拠を有するものではあるが、上記説示の とおり、本件送還に係る一連の行為は、執行行為を含め控訴人の裁判を受ける権利を侵害する違法行為であって、このことは、控訴人に退去強制令書が発付されていることによって左右されるものとはいえない。」 原判決62頁24行目の「前記4⑵のとおり本件異議申立棄却決定の告知を遅延した行為」を「前記4⑵及び5⑵のとおり、入国審査官が本件異議申 立棄却決定の告知を遅延した行為、入国警備官が上記告知と本件送還が同日に行われるよう日程を調整した行為及び本件送還の執行行為」と改める。 原判決62頁26行目の「本件異議申立棄却決定の告知を遅延した行為」を「まず、上記遅延行為及び日程を調整した行為」と改める。 原判決63頁1行目の「ものであって」の次に「(東京入管難民審査参与 員事務局が、東日本センター執行部門に対して、控訴人の難民不認定処分に対する異議申立手続の進捗に関する情報を提供したことは、行政機関個人情報保護法8条1項にも違反している。)」を加える。 原判決63頁5行目の「遅延行為」を「遅延行為等」と、同頁6行目の「3万円」を「5万円」とそれぞれ改める。 原判決63頁6行目末尾に、改行の上、次のとおり加える。 「 次に、本件送還の執行は、その間に行われた入国警備官による有形力の行使を含め、全て違法な行為というべきであるところ、上記執行のために控訴人が拘束された時間は約11時間に及び、その間、前記認定のとおり、 に、本件送還の執行は、その間に行われた入国警備官による有形力の行使を含め、全て違法な行為というべきであるところ、上記執行のために控訴人が拘束された時間は約11時間に及び、その間、前記認定のとおり、入国警備官により、控訴人に対する有形力の行使(後ろ手で手錠をされている控訴人の手を真上の方向に持ち上げる、床の上に寝る姿勢をとった控訴人の膝 等の上に入国警備官が乗り体重をかける、送還便に向かう途中で繰り返し口を押さえるなど)が繰り返されたこと、これによって、控訴人は、多数回にわたり肉体的苦痛を受けたこと、のみならず、控訴人には、本件送還の執行の直後、左足薬指爪剥離の傷害が確認されているところ、これは、上記執行の際に負傷したものであることが推認されること等の事実が認められる。 上記認定事実によれば、本件送還の執行に係る入国警備官らの一連の行為によって控訴人が被った精神的苦痛に対する慰謝料は、45万円と認めるのが相当である。」 2 当審における当事者の主張に対する判断⑴ 争点⑴(東京入管職員による侮辱行為及び婚姻関係への干渉の国賠法上の 違法性)について控訴人は、控訴人が入国警備官による面接において、控訴人に関する侮辱的な発言に対する抗議をし、入国警備官が、その抗議を何らの留保もせずに記録に残していることからすれば、当該発言は存在したというべきであると主張する。 しかし、補正の上引用する原判決の第3の1⑵のとおり、上記記録は、控訴人が品川の入管で担当者から聞いたという話の内容を前提として、控訴人の推測を述べたところを記録したものにすぎず、この供述の記載から、直ちに、東京入管職員が控訴人の妻に対して同内容の発言をしたと認めることができるわけではないから、控訴人の上記主張は採用することがで の推測を述べたところを記録したものにすぎず、この供述の記載から、直ちに、東京入管職員が控訴人の妻に対して同内容の発言をしたと認めることができるわけではないから、控訴人の上記主張は採用することができない。 ⑵ 争点⑵(本件資料の公開による名誉毀損の国賠法上の違法性)について 控訴人は、控訴人が原審において風評被害に関する裁判例を挙げて主張したとおり、被害者が多数であって特定性を欠くことは、社会的評価の低下を否定するものではないと主張する。 この点、一般に、名誉毀損の成立が問題となる表現が、一定の集団を対象としているように見えるものであっても、その表現を一般人の通常の注意と 読み方に照らして解釈したときに、特定の対象を摘示していると認められれば、当該表現は、当該特定人の名誉に関わる表現ということができる。 しかし、本件資料の記載は、引用に係る原判決の第3の2⑵のとおり、「被退令仮放免者」及び「送還忌避被収容者」一般に関する記載にとどまるから、控訴人が「被退令仮放免者」及び「送還忌避被収容者」に該当することを考 慮してもなお、本件資料の記載が控訴人を対象として摘示しているということはできない。したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 ⑶ 争点⑶(本件再収容に関する国賠法上の違法性)についてア控訴人は、原判決が、再収容の入管法違反の問題に関して、控訴人が原審で主張した「不法入国者等退去強制手続令」の条文との比較等から原則 収容主義に理由がないとの指摘に対しては言及しておらず、不当である旨主張する。 しかし、引用に係る原判決の説示は、入管法52条3項及び5項の文言から、入管法が「送還」と「収容」を明確に区別しており、同法61条の2の6第3項により ておらず、不当である旨主張する。 しかし、引用に係る原判決の説示は、入管法52条3項及び5項の文言から、入管法が「送還」と「収容」を明確に区別しており、同法61条の2の6第3項により、送還が停止される場合であっても、収容が停止され るものではないと解されることをいうものであって、原則収容主義を根拠として説示したものではないから、控訴人の上記主張は失当である。 イ控訴人は、原判決が再収容が憲法違反でない理由として示しているのは、単に本件再収容が入管法の規定に基づくということだけであり、原判決は憲法違反の主張に対して判断していないに等しいと主張する。 しかし、引用に係る原判決の説示は、本件再収容があらかじめ定められ た入管法の規定に従ってされたものであると認められるから、恣意的な拘禁の禁止その他の法定手続の保障を定めた憲法31条に違反しないことをいうものである。控訴人の上記主張は、原判決を正解しないで論難するものであって、採用することができない。 ウ控訴人は、原判決が、自由権規約9条1項違反の主張に対して判断して いないに等しいと主張する。 しかし、補正の上引用する原判決の第3の3⑵のとおり、自由権規約は、合法的に締約国の領域内にいる外国人であっても、法律に基づいて行われた決定により、退去強制され得ることを許容していること、自由権規約も、外国人の入国及び在留の許否については国家に自由な決定権がある旨の国 際慣習法を前提としているものと解される上、収容を含めた退去強制の制度をどのように決定するかを各国家の判断に委ねているものと解されることからすると、入管法の規定に基づき退去強制令書の執行として収容することをもって、恣意的な拘禁を禁止した自由権規約9条に違反す の制度をどのように決定するかを各国家の判断に委ねているものと解されることからすると、入管法の規定に基づき退去強制令書の執行として収容することをもって、恣意的な拘禁を禁止した自由権規約9条に違反するとはいえないのであり、控訴人の上記主張は失当である。 ⑷ 控訴人のその余の主張に対する判断は、原判決を補正の上説示したとおりである。 第4 結論以上によれば、控訴人の請求は、被控訴人に対し50万円の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がないというべきであるところ、これと異なる 原判決は一部失当であるから、原判決を変更することとし、仮執行宣言は相当でないからこれを付さないこととして、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第1民事部 裁判長裁判官志田原信三 裁判官影浦直人 裁判官吉田純一郎

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