昭和29(オ)873 土地調整委員会の裁定取消請求

裁判年月日・裁判所
昭和37年4月12日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】- 1 - 主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告人代表者我妻栄名義の上告理由は別紙の

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判決文本文4,495 文字)

- 1 - 主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告人代表者我妻栄名義の上告理由は別紙のとおりである。 上告理由第一点について。 論旨は、原判決は、鉱業行政上の監督と代替施設の有無を殆んど考慮せず、ひい ては鉱業法三五条の解釈を誤つた違法があるというのである。 鉱業法三五条は、通商産業局長は、鉱物の掘採が保健衛生上害があると認められ る場合等公共の福祉に反すると認めるときは、その部分については出願を許可して はならない旨を規定している。そして、鉱業出願に対し許可をするかしないかは、 鉱業の正当な実施によつて得られる公共の利益とそれによつて失われる一般公益そ の他あらゆる事情を勘案してこれを綜合的に判断すべきことは論旨のとおりである。 従つて、具体的場合の許否の判断は、一般公益上の損失が僅少であつても、その区 域が鉱業の目的上重要でない場合は、その部分について許可をしないことも考えら れるし、反対に、鉱業上の利益が大きければ、一般公益上の損失は、できるだけ避 けしめる措置をとるべきではあるが、なお、これを忍ばしめることを相当とする場 合も考えられないことはない。 本件の場合、被上告人は、鑑定人の鑑定に基づき、本件出願鉱区内の岩山の南半 分をも掘り尽すというが如きことがあれば、a上の住民の唯一の水源が破壊される 旨を主張しているのである。しからば、上告委員会としては、かかる虞が必然的な ものでないとしても、許可に際し予見できるものであるならば、かかる虞は十分防 止しうることを具体的に論証するかまたは一部区域を除外して許可する余地はない か等十分に考慮して許否を決すべきであるといわなければならない。しかるに、上 - 2 - 告委員会は、本件許可の当否 分防 止しうることを具体的に論証するかまたは一部区域を除外して許可する余地はない か等十分に考慮して許否を決すべきであるといわなければならない。しかるに、上 - 2 - 告委員会は、本件許可の当否について、本件鉱区内にある水源がa部落住民の唯一 の飲料用水源であることを認めながら、Eの鑑定、Fの意見および掘採計画とこれ に対する鉱業監督上の掘採制限等の行政措置等を彼此考慮するときは、本水源に及 ぼす影響を防止又は除去しうるものと認められ、又万一枯渇等の事態の発生すると しても、これに代るべき水源が他に求められ、その給水施設もまた経済上技術上可 能であるとし、今直ちに、これを取り上げて保健衛生上害があり公共の福祉に反す るものとは断ずることができないとして、被上告人の主張を斥けたのである。 もとより、鉱物の掘採が将来において害を生じた場合には、その害が許可に際し 予期できたものであると否とにかかわらず、通商産業局長の監督権の発動によつて その害を防止すべきことは当然であるが、かかる監督権の発動は、行政庁の自発的 な職務の執行によるものであつて、監督権の行使が不十分であつても、上告委員会 は監督権の発動を要求する途はなく、よつて害を受ける者が監督権の発動を訴求す る途も容易には考えられないのである。しからば、上告委員会としては、公益に害 があるとの被上告人の主張が全く根拠のないものでない以上は、許可の当否を判断 するについては、右の監督権の行使が完全に行われて、決して被上告人の主張する ごとき事態の発生し得ないことを具体的に論証するか、または、例えば許可の一部 を取り消す等の方法により万全の措置を講ずべきであるに拘らず、単に一般論とし て監督権の発動をいい、または、鑑定人のいう代替施設の可能性を容れることによ り、a部落住民の唯一の飲料用水源である本件鉱区内の水源が破壊 の方法により万全の措置を講ずべきであるに拘らず、単に一般論とし て監督権の発動をいい、または、鑑定人のいう代替施設の可能性を容れることによ り、a部落住民の唯一の飲料用水源である本件鉱区内の水源が破壊される旨の被上 告人の切実な請求を排斥し去つた上告委員会の本件裁定は、鉱業法三五条の法意に 副うたものとはいいがたい。 原判決が、鉱業法三五条に牴触するか否かの判断は、出願に対し行政処分を為す 時の状態に基いて決定すべき旨を判示しているのも、要するに、出願に対する許否 決定に際し、その時における各般の事情を綜合した上、公共の福祉に反すると認め - 3 - られれば、そのことを考慮しなければならない旨を判示しているのであつて、所論 の監督権の行使または代替施設のことを考慮しないでよいという趣旨のものではな い。それ故原判決には、所論のように鉱業法三五条の解釈を誤つた違法は認められ ない。 同第二点について。 論旨は、原判決は、土地調整委員会設置法五二条及び五四条に違反するというの である。 これらの規定の趣旨が、専門的知識を有する者の判断を尊重することにあること は所論のとおりである。しかし、これらの者の判断が独断に流れてならないことも いうまでもないことであつて、実質的証拠の有無を裁判所が判断すべきものとして いるのもその趣旨である。 鉱業権の実施が公共の福祉に反するかどうかの委員会の判断も、実質的証拠に基 くことを要するのは勿論であり、専門的知識を持つ者の判断も、かかる実質的証拠 に基いていてこそ裁判所はこれを尊重しなければならないのである。しかるに、本 件の場合、記録に徴しても、水源の枯渇がないと断定し得るような資料に乏しく、 それだけでは、裁定の認定した事実が実質的証拠に基くとはいえないのである。本 件裁定が、なお、害がないとしたのは、右の資料に加 件の場合、記録に徴しても、水源の枯渇がないと断定し得るような資料に乏しく、 それだけでは、裁定の認定した事実が実質的証拠に基くとはいえないのである。本 件裁定が、なお、害がないとしたのは、右の資料に加えて、将来の掘採計画や鉱業 監督上の掘採の制限等の行政措置を彼此考慮した結果ではあるが、将来の掘採計画 や鉱業監督上の制限に関する上告委員会の判断は、抽象的、一般的たるを免れない こと前記のとおりであつて、結局、上告委員会の裁定は実質的証拠に基かないもの と断じて支障はないのである。原判決は正当であつて論旨は理由がない。 同第三点について。 論旨は、原判決は証拠を排斥するについて理由を示さず、理由不備の違法がある というのである。 - 4 - しかし、原判決は所論の各資料を検討した上で、このような給水施設は、これを 設けるについて、経済上並びに技術上相当な困難を伴うことは予想に難くなく、果 して計画どおり給水量が得られるか否かは、単に事業実施計画書の案だけによつて 直ちに断定を下すことは些か早計に失する嫌があり、確実に計画どおりの給水を得 る見込の確立するのは、施設完成の上でなければ必ずしも明白であるとは言い難い 旨を判示しており、この判示は、当審においても所論の資料に徴して是認すること ができる。原判決が、結論として、本件水源に代わる十分な給水を得ることがしか く確実に期待できるものとの認定を抱かせるに足る資料として不十分である旨を判 示しても、所論のように理由不備の違法があるとはいえない。 同第四点について。 論旨は、鉱物の掘採が公共の福祉に反するようになる場合として、鉱業権設定許 可に際しての避け難い誤りがある場合と許可後の後発的、人為的事情に因る場合と を挙げるのであるが、いずれの場合でも、鉱業権の許可が直ちに違法といえないこ とはいうまでもない なる場合として、鉱業権設定許 可に際しての避け難い誤りがある場合と許可後の後発的、人為的事情に因る場合と を挙げるのであるが、いずれの場合でも、鉱業権の許可が直ちに違法といえないこ とはいうまでもないことであつて、かかる場合にこそ監督権の行使によつて是正を はからなければならないわけである。しかし、このことから、鉱業権設定許可に際 し、鉱業権の実施により公共の福祉に反するおそれが予見できるにかかわらず、将 来の監督権の行使を期待して、許可を与えることは、鉱業法三五条の趣旨とすると ころではないと解すべきである。原判決が、鉱業法三五条に牴触するか否かの判断 は出願に対し行政処分を為す時の状態に基いて決定すべきものとし、同法五三条に 許可の取消又は変更処分の出来る規定あるが故に、行政処分当時、許可要件を具備 しない場合に於ても、許可を適法ならしめるものではない旨を判示しているのも、 結局、上述と同趣旨に出るものであつて、原判決に所論のような審理不尽の違法は ない。また、原判決は、許可に際しての判断の避け難い誤謬のある場合に、右五三 条の適用がないとしているのではないから、所論のように右五三条の解釈を誤つた - 5 - ものとはいえない。 同第五点について。 論旨は、原判決は土地調整委員会設置法五四条の解釈を誤つた違法があるという のである。 原判決は、事件を上告委員会に差し戻すとも、鉱業権設定許可を取り消すともし ていないことは所論のとおりである。しかし、同条は、単に、委員会の裁定を取り 消すべき旨を規定しているに止まり、同法五五条二項のように差し戻すべき旨の規 定はなく、また、原判決は本件許可が違法であると断定しているわけではないから、 所論のように許可の一部を取り消さないのも当然である。原判決は、単に上告委員 会がした裁定を違法として取り消したに過ぎないから はなく、また、原判決は本件許可が違法であると断定しているわけではないから、 所論のように許可の一部を取り消さないのも当然である。原判決は、単に上告委員 会がした裁定を違法として取り消したに過ぎないから、右原判決が確定すれば、被 上告人の上告委員会に対する裁定申請は、なお、上告委員会に係属することに帰す るのであつて、実質上差し戻す趣旨にほかならないものと解すべきである。原判決 が主文で差し戻す旨の判示をしていないのは、前述のように、同法五四条に差し戻 すべき旨の規定がないからであつて、この点は、規定の不備とも考えられるが、よ つて原判決を違法ということはできない。 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと おり判決する。 最高裁判所第一小法廷 裁判長裁判官 高 木 常 七 裁判官 斎 藤 悠 輔 裁判官 入 江 俊 郎 裁判官 下 飯 坂 潤 夫

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