平成28(ワ)6400 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年8月31日 大阪地方裁判所
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平成29年8月31日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成28年(ワ)第6400号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成29年6月20日判決原告株式会社MTG 同訴訟代理人弁護士關健一同訴訟代理人弁理士小林徳夫被告株式会社ファイブスター同訴訟代理人弁護士横清貴同冨宅恵 同西村啓同補佐人弁理士森田拓生同髙山嘉成主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙「被告製品目録」1ないし3記載の美容器を製造し,使用し,譲渡し,貸し渡し,輸出若しくは輸入し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をし てはならない。 2 被告は,別紙「被告製品目録」1ないし3記載の美容器,その半製品(別紙「被告製品目録」記載の構造を具備しているが製品として完成するに至らないもの)及び製造のための金型を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,2885万円及びこれに対する平成28年7月17日 から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 請求の要旨本件は,後記の特許権を有する原告が,被告が製造販売等する美容器が当該特許権に係る発明の技術的範囲に属し,同特許権を侵害すると主張して,被告に対し,①特許法100条1項に基づき上記美容器 の要旨本件は,後記の特許権を有する原告が,被告が製造販売等する美容器が当該特許権に係る発明の技術的範囲に属し,同特許権を侵害すると主張して,被告に対し,①特許法100条1項に基づき上記美容器の製造,使用,譲渡等の差 止め,②同条2項に基づき上記美容器,その半製品及び金型の廃棄,③特許権侵害の不法行為に基づき,平成27年11月から平成28年6月までの損害金2885万円及びこれに対する平成28年7月17日(本件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求した事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲証拠又は弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお,本判決における書証の掲記は,枝番号の全てを含むときはその記載を省略する。)(1) 当事者原告は,美容機器,化粧品,医薬部外品等の企画製造を業とする株式会社 である。 被告は,美容・健康用品等を企画販売等する株式会社である。 (2) 原告の有する特許権(甲1及び2)原告は,以下の特許に係る特許権を有する(以下,この特許に係る発明を「本件発明」,本件特許の特許出願を「本件出願」といい,本件出願の願書 に添付された明細書及び図面をまとめて「本件明細書」という。また,本件出願の原出願を「本件原出願」という。)。本件明細書の記載は,本判決添付の特許公報のとおりである。 特許番号第5840320号発明の名称美容器 分割の表示特願2011-250916の分割 原出願日平成23年11月16日出願日平成27年8月25日登録日平成27年11月20日特許請求の範囲本判決添付の特許公報のとおり(3) 本件発明の構 原出願日平成23年11月16日出願日平成27年8月25日登録日平成27年11月20日特許請求の範囲本判決添付の特許公報のとおり(3) 本件発明の構成要件の分説 本件発明の構成要件は,次のとおり分説される。 A ハンドルの先端部に一対のボールを,相互間隔をおいてそれぞれ支持軸の軸線を中心に回転可能に支持した美容器において,B 前記ハンドルは,側面視において山なりの湾曲形状をなし,前記ハンドルの湾曲は,ハンドルの基端側よりも先端側がきつく, C 前記ボールは,非貫通状態で前記支持軸に回転可能に支持されていることを特徴とするD 美容器。 (4) 被告の行為被告は,別紙「被告製品目録」記載1ないし3の製品(以下併せて「被告 製品」という。)を販売している。被告製品は,別紙「被告製品説明図(原告)」及び別紙「被告製品説明図(被告)」(乙17の1及び2,乙42)の写真のとおりの物である(なお,同別紙の1及び2は被告製品1についてのものであるが,被告製品2及び3の形状は被告製品1と同一であるから,同じ内容が妥当する。)。 被告製品は,本件発明の構成要件Dを充足する。 3 争点(1) 被告製品は本件発明の技術的範囲に属するか。 ア構成要件Aの充足性(争点1)イ構成要件Bの充足性(争点2) ウ構成要件Cの充足性(争点3) (2) 本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものか。 ア乙20を主引例とする進歩性欠如(争点4)イ乙21を主引例とする進歩性欠如(争点5)ウ乙22を主引例とする進歩性欠如(争点6)エ乙23の1を主引例とする進歩性欠如(争点7) オ乙24を主引例とする進歩性欠如(争点8 イ乙21を主引例とする進歩性欠如(争点5)ウ乙22を主引例とする進歩性欠如(争点6)エ乙23の1を主引例とする進歩性欠如(争点7) オ乙24を主引例とする進歩性欠如(争点8)カ乙25の1を主引例とする進歩性欠如(争点9)キ乙26の1を主引例とする進歩性欠如(争点10)ク明確性要件・実施可能要件・サポート要件違反(争点11)ケ分割要件違反に伴う新規性又は進歩性欠如(争点12) (3) 原告の損害額(争点13)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(構成要件Aの充足性)について【原告の主張】被告製品の構成は,別紙「被告製品説明図(原告)」により,別紙「被告製 品の構成」の「原告の主張」のaのとおりである。 被告製品の「洋なし状の回転体」も本件発明の「ボール」に相当する。被告は,「ボール」の意義について限定解釈を主張するが,本件明細書の【0050】,【0052】には「ボール」に各種形状が含まれることが明示されており,被告指摘の乙27でもローラ20の形状等についての具体的記載はないから, 被告主張のように限定解釈すべき合理的理由はない。 そして,被告製品の回転体も,一対の回転体が相互に間隔をおいて,把持部分の先端の支持軸に回転可能に支持されているので,被告製品は本件発明の構成要件Aを充足する。 【被告の主張】 (1) 被告製品の構成が,別紙「被告製品の構成」の「原告の主張」のaのとお りであることは認める。 ところで,「ボール」とは,一般に「球状」(真円状)のものを指し,本件明細書の【0008】,【0009】,【0025】及び【0029】でも真円状のボールと記載され,図5にも真円状のボールが記載されている。したがって,構成要件Aの「ボー 」(真円状)のものを指し,本件明細書の【0008】,【0009】,【0025】及び【0029】でも真円状のボールと記載され,図5にも真円状のボールが記載されている。したがって,構成要件Aの「ボール」は「真円状」に限定されると解するべきであ る。 仮に「ボール」にバルーン状や断面楕円形状のものが含まれるとした場合,本件原出願の当初の明細書に記載した範囲を超えることになり,無効理由が存在することになる上,本件明細書では,乙27のような断面楕円形状のものの技術的課題を克服することを前提に「ボール」を提示しており,断面楕 円形状のものを除外した出願経過にも反し,許されない。 (2) これに対し,被告製品の回転体は,本体の先端部側が平べったく扁平しており,洋なし状であるから,本件発明の構成要件Aを充足しない。 2 争点2(構成要件Bの充足性)について【原告の主張】 (1) 被告製品の構成は,別紙「被告製品説明図(原告)」により,別紙「被告製品の構成」の「原告の主張」のbのとおりである。 被告製品では,ハンドルは,側面視において山なりの湾曲形状であり,ハンドルの湾曲は,ハンドルの基端側の傾斜角が20度であり,同先端側の傾斜角が30度と前者より後者のほうがきつくなっているから,被告製品は本 件発明の構成要件Bを充足する。 (2) 被告は,構成要件Bについて種々の主張をするが,構成要件Bの解釈においては,その文字どおり,山なり湾曲するハンドルにおいて,基端側よりも先端側の方がきつい傾斜になっていることと解釈すべきものであり,特許請求の範囲においてそれ以上の特段の限定解釈をする必要はない。もっとも, 「基端側より先端側の方がきつい傾斜」なのか否かの具体的測定方法として は,様々な方法があると考えると り,特許請求の範囲においてそれ以上の特段の限定解釈をする必要はない。もっとも, 「基端側より先端側の方がきつい傾斜」なのか否かの具体的測定方法として は,様々な方法があると考えるところであるが,一つの測定方法として,被告が主張するような方法を取り得ることを,原告においても否定するものではない。そして,原告が測定したところでは,別紙「被告製品説明図」のとおり,被告のいう傾斜xと水平基準線との角度は20度であり,被告のいう傾斜yと水平基準線との角度は30度であり,外観上,被告製品を側面方向 から視認すれば,先端側の傾斜が基端側に比較して急傾斜となっていることは明らかであるから,被告製品は構成要件Bを充足する。 【被告の主張】(1) 構成要件Bの「山なり」,「湾曲」,「きつい」の技術的意義は,本件明細書から明らかにすることができないから,出願経過を参酌するほかないところ, 原告は,出願過程の上申書(乙8)において,構成要件Bにつき,本件原出願の図3の記載に基づいて行ったものであると主張したことにより,構成要件Bは,図3に記載されているとおりのものを特定したものとなる。そして,これに上記の語の語義を考慮すると,構成要件Bは,「ハンドル11の湾曲形状について,ハンドル11の基端側の傾斜xの傾斜角と,ハンドル11の 先端側の傾斜yの傾斜角とを比較した場合,傾斜yの傾斜角は,傾斜xの傾斜角よりも大きい。」となり,このことは,図3の各傾斜角を測定した結果と合致する。なお,傾斜xは,本件明細書の【0018】に記載されている中心線xの定義であるところの「ハンドル11の最も厚い部分の外周接線zの間の角度を二分する線と平行な線」である。 ところで,これらの角度を測定するには基準線が必要になるところ,図3では肌 中心線xの定義であるところの「ハンドル11の最も厚い部分の外周接線zの間の角度を二分する線と平行な線」である。 ところで,これらの角度を測定するには基準線が必要になるところ,図3では肌面20を基準に角度が計測されているが,これでは,ハンドル11をどのように握って肌面20に押し当てるかによって,その角度が変化する上に,肌面20自体も,直線的な形状ではないため,肌面20を基準線として考えて傾斜x及びyとの角度を決めること自体が,技術的に不可能である。 他方,原告の主張のように,図3を回転移動させて,美容器を水平な台に載 置したと想定すると,水平線が基準線となり,基準線,傾斜y,及び傾斜xによって得られる三角形は山型になり,ハンドル11が湾曲し,傾斜yに対する傾斜角は51.3度,傾斜xに対する傾斜角は32.1度となり矛盾が生じない(乙16)から,被告としても,本件訴訟においては,基準線として,美容器を水平な台に載置したときの水平線を用いることとする。 (2) 被告製品においてハンドル11の基端側の傾斜xを特定するに当たっては,「ハンドル11の最も厚い部分」の外周接線zを特定する必要がある。 しかし,「ハンドル11の最も厚い部分」については,本件明細書の図3の趣旨を善解して側面視を基準に把握するとしても,ハンドル11のように厚みが不均一な構造物に対して,どの部分を厚みと呼ぶのか一義的に定めるの は不可能である。 このように,傾斜xは一義的でないが,傾斜xとは,基端側の湾曲の度合いを,直線によって近似化したものであるから,当然,どの部分を直線で近似化するかは,測定する当業者によって異なる。この結果,先端側の傾斜yの傾斜角が基端側の傾斜x の傾斜角よりも大きいと評価するには,当業者が 常識的範囲で傾 あるから,当然,どの部分を直線で近似化するかは,測定する当業者によって異なる。この結果,先端側の傾斜yの傾斜角が基端側の傾斜x の傾斜角よりも大きいと評価するには,当業者が 常識的範囲で傾斜xを特定して測定した傾斜角につき,測定された傾斜角全てが,傾斜yの傾斜角よりも小さくなっていない限り,「前記ハンドルの湾曲は,ハンドルの基端側よりも先端側がきつい」と評価することができないから,「基端側より先端側の方がきつい傾斜」とは,「当業者の誰が見ても,明らかに,先端側の傾斜y の傾斜角が基端側の傾斜x の傾斜角よりも大きい と看取できる」という意味に捉えるべきである。 そこで,当業者の直感的感覚に基づいて,最も厚いと思われる部分の接線zを特定すると,別紙「被告製品説明図(被告)」の1のとおりとなり,これによれば,傾斜xは55度,傾斜yは30度となる。 また,本件明細書【0018】及び図3の記載内容を被告なりに善解して, 図3と同様の見た目で測定すると,別紙「被告製品説明図(被告)」の2の とおりとなり,これによれば,傾斜xは32度,傾斜yは30度となる。 さらに,当業者の技術常識に基づいて,本体が水平基準線に接する点から,本体の最高点までを傾斜xとすることは,本体の基端側の湾曲の度合いを現す近似として適切であるが,これによれば,別紙「被告製品説明図(被告)」の3のとおり,傾斜xは34度,傾斜yは30度となる。 したがって,被告製品の構成は,別紙「被告製品の構成」の「被告の主張」のbのとおりとなり,傾斜yの傾斜角は,傾斜xの傾斜角よりも小さく,当業者の誰が見ても,明らかに,先端側の傾斜y の傾斜角が基端側の傾斜x の傾斜角よりも大きいと看取できるものではないから,被告製品は本件発明の構成要件Bを充足 斜角は,傾斜xの傾斜角よりも小さく,当業者の誰が見ても,明らかに,先端側の傾斜y の傾斜角が基端側の傾斜x の傾斜角よりも大きいと看取できるものではないから,被告製品は本件発明の構成要件Bを充足しない。 3 争点3(構成要件Cの充足性)について【原告の主張】被告製品の構成は,別紙「被告製品説明図(原告)」により,別紙「被告製品の構成」の「原告の主張」のcのとおりである。 被告製品では,回転体は非貫通状態で支持軸に回転可能に支持されているか ら,被告製品は本件発明の構成要件Cを充足する。被告製品の回転体が「ボール」に相当することは,争点1の原告の主張のとおりである。 【被告の主張】被告製品の構成は,別紙「被告製品の構成」の「原告の主張」のcのとおりであるところ,争点1の被告の主張のとおり,被告製品の回転体は本件発明の 「ボール」に当たらないから,被告製品は本件発明の構成要件Cを充足しない。 4 争点4(乙20を主引例とする進歩性欠如)について【被告の主張】平成23年1月13日に発行された乙20(国際公開第2011/004627号。以下,乙20に記載の発明を「乙20発明」という。)には,美容器 の発明が記載されているところ,本件発明においては一対のボールを用いてい るのに対して,乙20発明においては一対の円筒状のローラ(18,18)を用いている点で相違する(相違点1)。また,本件発明においては,ボールは,非貫通状態で支持軸に回転可能に支持されているのに対して,乙20発明では,ローラ(18,18)は,貫通状態で支持軸(17,17)に回転可能に支持されている点で相違する(相違点2)。 しかし,回転体として,一対のボールを利用することは,乙24,乙25の1,乙26の1,乙2 8,18)は,貫通状態で支持軸(17,17)に回転可能に支持されている点で相違する(相違点2)。 しかし,回転体として,一対のボールを利用することは,乙24,乙25の1,乙26の1,乙27において開示されており,一対のボールを非貫通状態で支持軸に支持することは,乙24,乙27において開示されている。 よって,乙20発明に対して,回転体として上記文献のいずれかに開示されている一対のボールを用いて,さらに,上記文献の記載に基づいて,一対のボ ールを非貫通状態で支持軸に回転可能に支持することとして,本件発明を発明することは,当業者にとって容易である。 【原告の主張】本件発明と乙20発明との相違点は,被告主張の相違点1,2のほかに,本件発明では,ハンドルの湾曲は,ハンドルの基端側よりも先端側がきつい,換 言すれば,ハンドルの湾曲は,ハンドル11の基端側の傾斜xの傾斜角と,ハンドル11の先端側の傾斜yの傾斜角とを比較した場合,傾斜yの傾斜角は,傾斜xの傾斜角よりも大きいのに対して,乙20発明では,ハンドルの湾曲の傾斜角は,ハンドルの基端よりも先端側が大きいか小さいか不明,すなわち,ハンドルの湾曲は,ハンドルの先端側よりも基端側がきついか否か不明な点も ある(相違点3)。 そして,被告主張の相違点1,2については,被告が主張するような構成を変更する動機付けはなく,相違点3については被告が指摘する文献には開示がなく,構成を変更する動機付けもないから,乙20発明に基づいて本件発明を容易に想到し得たとはいえない。 5 争点5(乙21を主引例とする進歩性欠如)について 【被告の主張】平成22年12月16日に発行された乙21(実用新案登録第3164829号公報。以下,乙21に記載の発明を「 5 争点5(乙21を主引例とする進歩性欠如)について 【被告の主張】平成22年12月16日に発行された乙21(実用新案登録第3164829号公報。以下,乙21に記載の発明を「乙21発明」という。)には,美顔用ローラマッサージ器具の発明が記載されているところ,本件発明においては一対のボールを用いているのに対して,乙21発明においては一対の円筒状の ローラ(2,3)を用いている点で相違する。また,本件発明においては,ボールは,非貫通状態で支持軸に回転可能に支持されているのに対して,乙21発明においては,ローラ(2,3)は,貫通状態で分岐軸部(6,7)に回転可能に支持されている点で相違する。 しかし,回転体として,一対のボールを利用することは,後記の乙24,乙 25の1,乙26の1,乙27に開示されており,一対のボールを非貫通状態で支持軸に支持することは,乙24,乙27に開示されている。 よって,乙21発明に対して,回転体として上記文献のいずれかに開示されている一対のボールを用い,さらに,上記文献の記載に基づいて,一対のボールを非貫通状態で支持軸に回転可能に支持することとして,本件発明を発明す ることは,当業者にとって容易である。 【原告の主張】争点5から争点10について一括して主張する。 本件発明と,乙21発明ないし乙26発明(なお乙22発明ないし乙26発明の定義は後記のとおりである。)とは,以下の点で相違する。 ① 本件発明では,回転体として一対のボールを用いているのに対して,乙21,乙22,乙24の各発明では一対の円筒状・円柱状のローラを用いている点,また,乙23発明の円形体は回転可能か否か不明であり回転体とはいえない点(相違点①)。 ② 本件発明では,ボールは非貫通状 1,乙22,乙24の各発明では一対の円筒状・円柱状のローラを用いている点,また,乙23発明の円形体は回転可能か否か不明であり回転体とはいえない点(相違点①)。 ② 本件発明では,ボールは非貫通状態で支持軸に回転可能に支持されて いるのに対して,乙21,乙23,乙25,乙26発明では,ローラは 貫通状態で支持されている点(相違点②)。 ③ 本件発明では,前記ハンドルは,側面視において山なりの湾曲形状をなし,前記ハンドルの湾曲は,ハンドルの基端側よりも先端側がきつくなっているのに対して,乙21ないし乙26発明は,いずれもハンドル・把持部等は,側面視において湾曲形状をしておらず,また,ハンド ル・把持部等が湾曲形状ではないから,ハンドル・把持部等の湾曲は基端側よりも先端側がきつくというハンドルの湾曲を前提とした構成それ自体が存在しない点(相違点③)。 そして,相違点①については,乙21,乙22,乙24の各発明の構成を置き換える動機付けがなく,相違点②については,乙21,乙23,乙25,乙 26の各発明の構成を置き換える動機付けがなく,相違点③については,被告が指摘する文献には開示がなく,構成を変更する動機付けもない。したがって,乙21ないし乙26発明に基づいて本件発明を容易に想到し得たとはいえない。 6 争点6(乙22を主引例とする進歩性欠如)について 【被告の主張】平成22年5月13日に発行された乙22(実用新案登録第3159255号公報。以下,乙22に記載の発明を「乙22発明」という。)には,マグネット美容ローラの発明が記載されているところ,本件発明においては一対のボールを用いているのに対して,乙22発明においては,一対の円柱状のローラ 部(5,5)を用いている点で相違する。 ネット美容ローラの発明が記載されているところ,本件発明においては一対のボールを用いているのに対して,乙22発明においては,一対の円柱状のローラ 部(5,5)を用いている点で相違する。 一方,乙22発明においては,本件発明と同様に,回転体であるところのローラ部(5,5)を非貫通状態で回転軸に支持しており,非貫通の回転体として,一対のボールを利用することは,後記の乙24,乙27に開示されている。 よって,乙22発明の非貫通の円柱状のローラ部(5,5)を上記文献に記載 の非貫通の一対のボールに置き換えて,本件発明を発明することは,当業者に とって容易である。 【原告の主張】争点5に関する原告の主張のとおりである。 7 争点7(乙23の1を主引例とする進歩性欠如)について【被告の主張】 平成18年3月10日に発行された乙23の1(韓国意匠第30-0408623号公報。以下,乙23の1に記載の発明を「乙23発明」という。)には,マッサージ器の発明が記載されているところ,本件発明においては,非貫通状態で回転軸に支持されている一対のボールを用いているのに対して,乙23発明においては,一対のボールであるところの一対の円形体を貫通状態で回 転軸に支持している点で相違する。 しかし,回転体であるところの一対のボールを非貫通状態で回転軸に支持することは,乙24,乙27に開示されている。 よって,乙23発明における一対の円形体を,上記文献の記載に基づいて,非貫通状態で支持軸に回転可能に支持するように構成し,本件発明を発明する ことは,当業者にとって容易である。 【原告の主張】争点5に関する原告の主張のとおりである。 8 争点8(乙24を主引例とする進歩性欠如)について【被告の主張】 本件発明を発明する ことは,当業者にとって容易である。 【原告の主張】争点5に関する原告の主張のとおりである。 8 争点8(乙24を主引例とする進歩性欠如)について【被告の主張】 平成12年1月25日に発行された乙24(特開2000-24065号公報。以下,乙24に記載の発明を「乙24発明」という。)には,マッサージ具の発明が記載されているところ,本件発明においては一対のボールを用いているのに対して,乙24発明においては一対の円柱状の円柱体(3,3)を用いている点で相違する。 しかし,乙24(【0006】)では,円柱体(3,3)として,球体又は回転 楕円体を用いてもよいことが記載されており,球体又は回転楕円体は,本件発明でいうところのボールに相当する。 よって,乙24発明の円柱体(3,3)を,上記記載又は乙27に基づいて非貫通状態のボールに置き換えて,本件発明を発明することは,当業者にとって容易である。 【原告の主張】争点5に関する原告の主張のとおりである。 9 争点9(乙25の1を主引例とする進歩性欠如)について【被告の主張】昭和10年8月13日に発行された乙25の1(米国特許第2011471 号明細書。以下,乙25の1に記載の発明を「乙25発明」という。)には,ボディマッサージ器の発明が記載されているところ,本件発明においては一対のボールを非貫通状態で支持軸に回転可能に支持しているのに対して,乙25発明では,一対のボール(rollers15)を貫通状態で支持軸(spindles11)に回転可能に支持している点で相違する。 しかし,回転体であるところの一対のボールを非貫通状態で回転軸に支持することは,乙24,乙27に記載されている。 よっ (spindles11)に回転可能に支持している点で相違する。 しかし,回転体であるところの一対のボールを非貫通状態で回転軸に支持することは,乙24,乙27に記載されている。 よって,乙25発明における一対のボール(rollers15)を,上記文献の記載に基づいて,非貫通状態で支持軸(spindles11)に回転可能に支持するように構成し,本件発明を発明することは,当業者にとって容易である。 【原告の主張】争点5に関する原告の主張のとおりである。 10 争点10(乙26の1を主引例とする進歩性欠如)について【被告の主張】昭和10年9月10日に発行された乙26の1(米国再発行特許第1969 6号明細書。以下,乙26の1に記載の発明を「乙26発明」という。)には, マッサージ器の発明が記載されているところ,本件発明においては一対のボールを非貫通状態で支持軸に回転可能に支持しているのに対して,乙26発明においては,一対のボール(sphericalelements16,16又は19,19)を貫通状態で支持軸(axles14又は17)に回転可能に支持している点で相違する。 しかし,回転体であるところの一対のボールを非貫通状態で回転軸に支持す ることは,乙24,乙27に記載されている。 よって,乙26発明における一対のボール(sphericalelements16,16又は19,19)を,上記文献の記載に基づいて,非貫通状態で支持軸(axles4又は17)に回転可能に支持するように構成し,本件発明を発明することは,当業者にとって容易である。 【原告の主張】争点5に関する原告の主張のとおりである。 11 争点11(明確性要件・実施可能要件・サポート要件違反)につい ,本件発明を発明することは,当業者にとって容易である。 【原告の主張】争点5に関する原告の主張のとおりである。 11 争点11(明確性要件・実施可能要件・サポート要件違反)について【被告の主張】(1) 本件発明における「山なりの湾曲形状」,「湾曲がきつい」とは,技術的な 意義において,いかなる形状のことを指すのか明確ではない。傾斜xは,本件明細書の【0018】に記載されている中心線xの定義であるところの「ハンドル11の最も厚い部分の外周接線zの間の角度を二分する線と平行な線」とされるが,「ハンドル11の最も厚い部分」を一義的に特定することできない。したがって,本件発明に係る特許請求の範囲の記載は,特許法3 6条6項2号の要件(明確性要件)を満たしていない。 (2) 本件明細書には,ハンドルをどのような形状にすれば,「山なりの湾曲形状」であるのか,また,ハンドルの湾曲を,どのようにすれば,「ハンドルの湾曲は,ハンドルの基端側よりも先端側がきつく」になるのかについて,当業者が実施できる程度に,明確かつ十分に記載されていないから,本件明 細書の発明の詳細な説明の記載は,特許法36条4項1号の要件(実施可能 要件)を満たしておらず,本件発明に係る特許請求の範囲の記載は,同条6項1号の要件(サポート要件)を満たしていない。 【原告の主張】(1) 被告は明確性要件違反を主張するが,「山なりの湾曲形状」とは,側面からみたハンドルの形状が山のような形に弓なりになっていることと素直に解釈 することができ,「前記ハンドルの湾曲は,ハンドルの基端側よりも先端側がきつく」とは,ハンドルが湾曲形状(弓なりで円弧を描くような形状)をしていて,そのハンドルの湾曲に関して,基端側の湾曲よりも先端側の湾曲が でき,「前記ハンドルの湾曲は,ハンドルの基端側よりも先端側がきつく」とは,ハンドルが湾曲形状(弓なりで円弧を描くような形状)をしていて,そのハンドルの湾曲に関して,基端側の湾曲よりも先端側の湾曲がきつい(湾曲の度合いが大きい)と素直に解釈することができる。 被告は,傾斜xを特定する前提となる「ハンドル11の最も厚い部分」を 一義的に特定することできないと主張するが,ハンドルの最も厚い部分を特定するには,まず,ハンドルを側面視した際の各点について切り口が最短距離となるように輪切りし,各輪切りの厚さ(距離)を比較して最も距離のある輪切り部分が「最も厚い部分」となるのであり,その最も厚い部分のハンドル外周の2点で外周接線zを引き,それを二分する線を中心線xとするの であるから,その意義は明確である。 したがって,明確性要件違反はない。 (2) 被告は,実施可能要件違反及びサポート要件違反を主張するが,(1)の解釈に加え,本件明細書の【0012】ないし【0018】の具体例から,少なくとも当業者は,本件明細書の記載に基づき,本件発明に係る「前記ハンド ルは,側面視において山なりの湾曲形状をな」す構成,「前記ハンドルの湾曲は,ハンドルの基端側よりも先端側がきつ」い構成を実施することができ,開示されていると理解するから,実施可能要件及びサポート要件の違反はない。 12 争点12(分割要件違反に伴う新規性又は進歩性欠如)について 【被告の主張】 本件出願は,本件原出願からの分割出願であるところ,本件発明の構成要件B及び本件明細書の【0007】の記載は,本件原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内でなく,かつ,本件原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内でもない。したがって,本件出願は B及び本件明細書の【0007】の記載は,本件原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内でなく,かつ,本件原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内でもない。したがって,本件出願は,分割出願の要件を満たしていないため,出願日の遡及効を得ることがでず,出願日は平成27 年8月25日となる。他方,本件原出願の内容は平成25年5月30日に乙29で出願公開されているから,本件発明は,乙29に記載された発明と実質的に同一の発明である,あるいは容易に発明できる発明である。 【原告の主張】本件発明の構成要件Bは,本件原出願の図3に明確に図示されているから, なんら分割要件違反ではない。 13 争点13(原告の損害額)について【原告の主張】被告は,平成27年11月頃から被告製品の販売を開始しているところ,少なくとも,1か月当たり,被告製品を合計5000本販売し,1製品ごとに750 円の利益を得ている。そうすると,原告は,本件特許の登録日である平成27年11月20日からの7か月間で,被告製品を販売したことにより,合計2625万円の利益を得ている。したがって,原告の被った損害は2625万円である(特許法102条2項)。また,被告の特許権侵害行為と相当因果関係に立つ弁護士費用の損害額は,260万円が相当である。したがって,原告の被った損害の合計額は,2 885万円である。 【被告の主張】否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断当裁判所は,争点2につき,被告製品が本件発明の構成要件Bを充足するとは 認められないと判断する。その理由は以下のとおりである。 1 本件発明の意義について本件明細書によれば,本件発明は,美容器の発明であり,①従来構成の美肌ローラでは するとは 認められないと判断する。その理由は以下のとおりである。 1 本件発明の意義について本件明細書によれば,本件発明は,美容器の発明であり,①従来構成の美肌ローラでは,柄の中心線と両ローラの回転軸が一平面上にあることから,美肌ローラの柄を手で把持して両ローラを肌に押し当てたとき,肘を上げ,手先が肌側に向くように手首を曲げて柄を肌に対して直立させなければならないた めに操作性が悪い等の問題があった(【0004】)ほか,各ローラは楕円筒状に形成されていることから,肌の広い部分が一様に押圧されたり,両ローラ間に位置する肌がローラの長さに相当する領域で引っ張られたりすることで,毛穴の開きや収縮が十分に行われない等の問題があった(【0005】)ことから,②ハンドルの先端部に一対のボールが相互間隔をおいてそれぞれ一軸線を中 心に回転可能に支持され,前記ハンドルは,側面視において山なりの湾曲形状をなし,前記ハンドルの湾曲は,ハンドルの基端側よりも先端側がきつくなっている構成とすることにより,ハンドルを把持して一対のボールを肌に当てるときに手首を曲げる必要がなく,手首を真直ぐにした状態で,美容器を往動させたときには肌を押圧することができるとともに,美容器を復動させたときに は肌を摘み上げることができるとの効果を奏する(【0008】)とともに,③肌に接触する部分が筒状のローラではなく,真円状のボールで構成されていることから,ボールが肌に対して局部接触するため,ボールは肌の局部に集中して押圧力や摘み上げ力を作用することができるとともに,肌に対するボールの動きをスムーズにでき,移動方向の自由度も高いとの効果を奏する(【000 9】)ものであると認められる。 2 構成要件Bについて(1) 本件出願は, とができるとともに,肌に対するボールの動きをスムーズにでき,移動方向の自由度も高いとの効果を奏する(【000 9】)ものであると認められる。 2 構成要件Bについて(1) 本件出願は,本件原出願の分割出願によるものであるが,証拠(乙8及び28)によれば,構成要件Bの「前記ハンドルは,側面視において山なりの湾曲形状をなし,前記ハンドルの湾曲は,ハンドルの基端側よりも先端側が きつく,」との構成は,本件原出願の当初の明細書の図3(本件明細書の図 3と同一である。)の記載を根拠とするものであると認められる。 (2) そこで,本件明細書中,図3を説明した【0011】【0018】を見ると,次の記載がある。 ① 【図3】 美容器の使用状態を示す側面図② 図3に示すように,美容器10の往復動作中にボール支持軸15の 軸線が肌20面に対して一定角度を維持できるように,ボール支持軸15の軸線がハンドル11の中心線xに対して前傾するように構成されている。 ③ 具体的には,前記ハンドル11の中心線(ハンドル11の最も厚い部分の外周接線zの間の角度を二分する線と平行な線)xに対するボ ール17の軸線yすなわちボール支持軸15の軸線yの側方投影角度αは,ボール17がハンドル11の中心線xに対し前傾して操作性を良好にするために,90~110度であることが好ましい。 ④ この側方投影角度αが90度より小さい場合及び110度より大きい場合には,ボール支持軸15の前傾角度が過小又は過大になり, ボール17を肌20に当てる際に肘を立てたり,下げたり,或いは手首を大きく曲げたりする必要があって,美容器10の操作性が悪くなるとともに,肌20面に対するボール支持軸15の角度の調節が難しくなる。 これらの記載からすると,本 肘を立てたり,下げたり,或いは手首を大きく曲げたりする必要があって,美容器10の操作性が悪くなるとともに,肌20面に対するボール支持軸15の角度の調節が難しくなる。 これらの記載からすると,本件明細書の図3の美容器は,操作性を向上さ せるために,側面視で,ボール支持軸15の軸線yがハンドル11の中心線xに対して「前傾」するようにしたものであり,その操作性の向上の程度は,ボール支持軸15の軸線yとハンドル11の中心線xとの角度の大小により変化するとの趣旨が記載されていると認められる。そして,本件発明もハンドルの形状を工夫することにより操作性を向上させたものであることか らすると,本件発明の構成要件Bが定めるハンドルの形状は,上記の本件明 細書に記載された「前傾」の内容を更に特定したものであると解するのが相当である。また,上記の「前傾」が,ボール支持軸15の軸線yとハンドル11の中心線xとの関係性として把握されていることからすると,本件発明の構成要件Bの「ハンドルの湾曲は,ハンドルの基端側よりも先端側がきつく」というのも,ボール支持軸15の軸線yとハンドル11の中心線xとの 関係性に基づき,側面視で,ボール支持軸15の軸線yの傾斜角度がハンドル11の中心線xの傾斜角度よりも大きいことを意味すると解するのが相当であり,このように解することは,図3の記載とも適合し,当事者双方も主張するところである。 そして,ボール支持軸15の軸線yの傾斜角度とハンドル11の中心線x の傾斜角度を特定し,その大小を比較するには,共通する基準線が必要となるが,本件では,美容器を水平台に載置した場合の水平基準線を基準線とすることで当事者の主張が一致しているから,これによることとするのが相当である。 (3) そこで,被告製 共通する基準線が必要となるが,本件では,美容器を水平台に載置した場合の水平基準線を基準線とすることで当事者の主張が一致しているから,これによることとするのが相当である。 (3) そこで,被告製品の構成要件Bの充足性を判断するに当たり,被告製品に おける回転体支持軸の軸線y(被告製品の回転体が本件発明の「ボール」に該当するかについては争いがあるが,ここでは措く。)と,把持部(本件発明の「ハンドル」に相当する。)の中心線xについて検討する。 アまず,被告製品における回転体支持軸の軸線yについては,原告が主張する別紙「被告製品説明図(原告)」と被告が主張する別紙「被告製品説 明図(被告)」とが一致しているから,そのとおりに認められ,軸線yの傾斜角度は30度と認められる。 イ次に,被告製品における把持部の中心線xについては,本件明細書の【0018】において,「ハンドル11の最も厚い部分の外周接線zの間の角度を二分する線と平行な線」とされているから,これによるのが相当であ る。 ところで,この点について被告は,争点11において,本件発明における「ハンドル11の最も厚い部分」を一義的に特定することができないと主張する。しかし,本件明細書の図3における,2本の外周接線zがハンドルの上面及び下面と接する各点の位置関係からすると,本件明細書においては,争点11に関する原告の主張のとおり,側面視でハンドルの上面 上の1点と下面上の1点とを結ぶ無数の直線(立体的にいえば切り口)のうち,その両端となる各点にとって最短距離となる直線(切り口)をもって各ハンドル部分の厚みとする趣旨であると解することができ,「ハンドル11の最も厚い部分」とは,そうして設定される各最短直線(切り口)の長さ(厚さ)を比較して,最も長い 離となる直線(切り口)をもって各ハンドル部分の厚みとする趣旨であると解することができ,「ハンドル11の最も厚い部分」とは,そうして設定される各最短直線(切り口)の長さ(厚さ)を比較して,最も長い直線の部分(最も厚い輪切りの部分) のことをいうと解することができるから,「ハンドル11の最も厚い部分」の意義が不特定であるとはいえない。 そこで,以上を前提に被告製品の把持部の中心線xについて検討すると,別紙「被告製品説明図(原告)」及び別紙「被告製品説明図(被告)」によれば,被告製品の把持部は,先端から基端に向かって太くなっており,基 端部手前で下面部が凸状になる部分の頂点部において上面との距離が最も長くなっているから,この頂点部を含む最短距離の直線(切り口)が「ハンドル11の最も厚い部分」に相当する部分であると認められる。そして,その最短距離の直線を厳密に特定して中心線xの傾斜角度を測定した証拠は存しないが,それに最も近似するのが別紙「被告製品説明図(被告)」 の2であり,それによれば,中心線xの傾斜角度は32度であると認められる。 これに対し,原告は,被告製品の測定結果は別紙「被告製品説明図(原告)」のとおりであり,中心線xの傾斜角度は20度であると主張する。 しかし,そこで「最も厚い部分」とされた各外周接線の上面側の接点は, 下面部の前記頂点部からの最短距離部分であるとは認められない上,下面 部の外周接線についても,前記頂点部と1点で接する線(接線)であるとは認められないから,別紙「被告製品説明図(原告)」の測定結果を採用することはできない。 ウ以上からすると,被告製品では,回転体支持軸の軸線yの傾斜角度が把持部の中心線xの傾斜角度よりも大きいとは認められないから,「ハンド ルの湾曲 告)」の測定結果を採用することはできない。 ウ以上からすると,被告製品では,回転体支持軸の軸線yの傾斜角度が把持部の中心線xの傾斜角度よりも大きいとは認められないから,「ハンド ルの湾曲は,ハンドルの基端側よりも先端側がきつく」との構成要件Bを充足しない。 なお,原告は,外観上,被告製品を側面方向から視認すれば,先端側の傾斜が基端側に比較して急傾斜となっていることは明らかであると主張するが,先に検討したとおり,本件明細書の記載からすると,同構成要件 の充足性は単なる外観上の視認のみによって判断すべきものとは解されない上,別紙「被告製品説明図(原告)」及び別紙「被告製品説明図(被告)」における被告製品の写真を視認しても,一見して原告が主張するようには認められない。 3 以上によれば,被告製品は本件発明の技術的範囲に属しない。したがって, その余の点について検討するまでもなく,原告の本件請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 髙松宏之 裁判官 野上誠一 裁判官 大門宏一郎 (別紙) 被告製品目録 1 製品名 大門宏一郎 (別紙) 被告製品目録 1 製品名 「エステポイントビューティーシャインミニ」または「ドクター・アイリスゲルマミラーボール美容ローラシャ インミニ」色 「ゴールド」製品番号 「DR-350G」 2 製品名 「エステポイントビューティーシャインミニ」 または「ドクター・アイリスゲルマミラーボール美容ローラシャインミニ」色 「シルバー」製品番号 「DR-350C」 3 製品名 「エステポイントビューティーシャインミニ」または「ドクター・アイリスゲルマミラーボール美容ローラシャインミニ」 色 「ピンク」製品番号 「DR-350P」以上 (別紙) 被告製品の構成 原告の主張被告の主張a把持部分と把持部分の先端側が二股に分岐した二股部分とからなる本体と,二股部分のそれぞれの先端部に一対の洋なし状の回転体を,相互間隔をおいて,それぞれ支持軸の軸線を中心に回転可能に支持した美容器である。 同左b美容器の把持部及び二股部は側面視において山なりの湾曲形状をなし,美容器を水平台に載置した際の水平基準線,美容器の基端側の傾斜x,先端側の基準線yとにおいて,水平基準線と傾斜xの為す角,水平基準線と傾斜yの為す角とを比較すると,前者は20度,後者は30度である。 本体は,美容器を水平な台に載置したときの基準線,本体の基端側 の基準線yとにおいて,水平基準線と傾斜xの為す角,水平基準線と傾斜yの為す角とを比較すると,前者は20度,後者は30度である。 本体は,美容器を水平な台に載置したときの基準線,本体の基端側の傾斜x,及び本体の先端側の傾斜yとからなる三角形に沿って湾曲するように,山なりの湾曲形状をなし,本体の湾曲形状について,本体の基端側の傾斜xの傾斜角と,本体の先端側の傾斜yの傾斜角とを比較した場合,傾斜yの傾斜角は,傾斜xの傾斜角よりも小さい。 c回転体は,非貫通状態で支持軸に回転可能に支持されている。 同左d美容器である。 同左 (別紙) 被告製品説明図(原告) 1 被告製品1(品番:DR-350G) 2 被告製品2(品番:DR-350C) 3 被告製品3(品番:DR-350P) 以上 (別紙) 被告製品説明図(被告) 3 被告製品1ないし3 角度測定図 以上

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