主文 1 被告が,平成14年1月11日付けで別紙物件目録記載の土地についてした原告の平成13年12月18日受付第41391号に係る所有権保存登記申請を却下するとの決定を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要本件は,不動産登記法(以下「法」という。)100条1項2号に基づいて土地の所有権保存登記申請をした原告が,同申請を却下するとの決定をした被告に対し,その取消しを求めた抗告訴訟である。 1 争いのない事実等(1) 別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。別紙省略)は保存登記がされておらず,その登記簿表題部の所有者欄には「共有惣代A外四名」と記載されているが,登記簿上,同人以外の共有者の氏名及び住所を明らかにする記載はなく,それを示す資料も備え付けられていない(甲1)。 Aは明治35年9月23日に死亡し,同月27日にBが家督相続したが,Bも大正10年10月12日に死亡し,昭和16年7月1日にCが家督相続した。その後,Cは昭和51年6月5日に死亡して同人の妻D,長男E及び長女Fが共同相続したが,Eは昭和63年5月23日に死亡した。Eには配偶者及び子がいない(甲5の4ないし11)。 (2) 原告は,D及びFを被告として,名古屋地方裁判所半田支部に対し,権利能力なき社団である冨貴区は,地券の交付が開始された明治7年2月7日以降,本件土地につき所有の意思をもって平穏公然かつ占有の始めにおいて善意無過失にて占有を継続し,その所有権を時効取得したこと,原告は,平成13年1月3日に冨貴区の区長に就任して冨貴区から本件土地の信託を受けたところ,上記Aの承継人であるD及びFが原告の権利を争っていることを請求原因として,本件土地が原告の所有に属することの確認を求める 年1月3日に冨貴区の区長に就任して冨貴区から本件土地の信託を受けたところ,上記Aの承継人であるD及びFが原告の権利を争っていることを請求原因として,本件土地が原告の所有に属することの確認を求める訴えを提起した(同支部平成13年(ワ)第110号事件,以下「別件訴訟」という。)。 名古屋地方裁判所半田支部は,平成13年11月7日,証拠に基づき,冨貴区が本件土地を時効取得した事実を認定した上で,原告の請求を認容する判決(以下「別件判決」という。)を言い渡し,同月30日,同判決は確定した(甲2の1,2)。 (3) 原告は,被告に対し,平成13年12月18日,法100条1項2号の「判決ニ依リ自己ノ所有権ヲ証スル者」として,登記申請書に相続証明書及び別件判決書(正本)等を添付の上,同日受付第41391号をもって本件土地の所有権保存登記の申請をした(甲5の1ないし13,以下「本件登記申請」という。)。 (4) 被告は,平成14年1月11日,申請書に必要な書面の添付がないとして,法49条8号に基づき,本件登記申請を却下するとの決定(以下「本件決定」という。)をした(甲3)。 2 本件に関連する平成10年3月20日民三第552号民事局第三課長通知(甲4,以下「平成10年通知」という。)の要旨(1) 法100条1項2号の「判決」は,表題部に所有者として記載されている者全員を被告とするものでなければならない。 (2) 登記簿の一元化作業により旧土地台帳から移記した登記簿の表題部の所有者欄に「甲外何名」と記載されているが,共同人名簿が移管されなかったなどの理由により「外何名」の氏名住所が明らかでない土地について,甲のみを被告とする所有権確認訴訟に勝訴した者から,当該訴訟の判決書を添付して法100条1項2号に基づく所有権保存登記申請があった場合には,当該判決の 「外何名」の氏名住所が明らかでない土地について,甲のみを被告とする所有権確認訴訟に勝訴した者から,当該訴訟の判決書を添付して法100条1項2号に基づく所有権保存登記申請があった場合には,当該判決の理由中において当該土地が登記簿の記載にかかわらず原告の所有に属することが証拠に基づいて認定されているときに限り,便宜,当該判決を同号の「判決」と取り扱って差し支えない。 3 本件の争点及びこれに関する当事者の主張本件決定の適法性。具体的には,別件判決は法100条1項2号所定の「判決」に該当するか。 (被告の主張)別件判決は,以下のとおり,上記判決には該当しないので,本件登記申請を却下した本件決定は適法である。 (1) 法100条1項2号にいう「判決」は,これに基づいてされる所有権保存登記によってその利害に影響を受ける者が申請に係る登記簿の表題部に所有者として記載されている者であるところから,その者又はその承継人に既判力の及ぶ判決でなければならない。 (2) 本件土地の登記簿の表題部所有者欄には「共有惣代A外四名」との記載があるが,その表示が「共有惣代(総代)何某」とされている土地は,「共有者何某」あるいは「共有者何某ほか何名」と表示されている土地と異なり,入会林野に多くみられるとおり,そもそも生活共同体(私的団体)としての村が当該土地を所有してきた場合が多く,地券制度の時代には住民総有の不動産に対し一人又は数名の代表者が選任され,それらに対して地券が下付されたものであり,地券制度の廃止後においても,その下付を受けた者の記録が土地台帳や一元化後の登記簿の所有者の記載に引き継がれ,現在においてもそのままの状態が存続されている。すなわち,「共有惣代何某」の記載は,特定共有者による(狭義の)共有状態ではなく,地域住民による総有状態にある不動産に 記簿の所有者の記載に引き継がれ,現在においてもそのままの状態が存続されている。すなわち,「共有惣代何某」の記載は,特定共有者による(狭義の)共有状態ではなく,地域住民による総有状態にある不動産について代表者名義で表示がされていると推認される。特に,本件土地は,地目が「墳墓地」であり,なおさら,地域住民の共同墓地等である可能性が大きい。なお,被告は,登記簿表題部の所有者欄を記載するに当たり,共同所有の実体関係(狭義の共有か総有か)の相違を同欄の表示に反映させるための制度的,手続的手当が存在したことについて把握していないものの,登記官については形式的審査主義が採られていることも考慮すると,「共有惣代(総代)何某」と記載された土地については,総有に属するものと認定するほかない。 また,入会団体の代表者には,規約又は慣習に基づき複数名が就任することも何ら妨げられない。実際にもそのような場合があったことは上記のとおりであって,本件土地の登記簿の表題部所有者欄の「共有惣代A外四名」との記載によると,本件土地を地域の共同墓地等として利用していた団体は,かつて,Aを始めとする5名の者が代表者に就任し,本件土地を管理していたものと推測される。このように,本件土地は,狭義の共有地ではなく,本件土地(墓地)を利用する地域住民で構成される団体の構成員全員が総有する土地(入会地)であると解され,これは,入会権の類型でいえば,入会地の地盤所有権自体も入会権者に帰属(総有的帰属)している場合であり,民法263条にいう「共有ノ性質ヲ有スル入会権」に当たるものである。そうすると,本件土地の登記簿の記載からは,本件土地の実体法上の所有者は,入会団体の構成員全員であるということになり,本件土地について,所有権保存登記の申請のため必要となる法100条1項2号の「判決」は すると,本件土地の登記簿の記載からは,本件土地の実体法上の所有者は,入会団体の構成員全員であるということになり,本件土地について,所有権保存登記の申請のため必要となる法100条1項2号の「判決」は,この入会団体の構成員らに既判力の及ぶものでなければならない。 (3) ところで,入会権が存在することの確認を求める訴えは,当該入会地の地盤所有権自体が入会権者に帰属(総有的帰属)している場合であるかどうかを問わず,入会権者全員で提起することを要する固有必要的共同訴訟であるとするのが判例理論(最高裁昭和41年11月25日第二小法廷判決・民集20巻9号1921頁)である。この判例理論からすると,入会権者側から,入会地の地盤所有権自体も入会権者に帰属(総有的帰属)していると主張されるべき事案において,入会権者の権利主張を斥けて自己の地盤所有権の確認を求めようとする者は,排斥すべき入会権(正確にいえば,そのうちの地盤所有権)を総有する者(構成員各人)の全員を被告として訴えを提起すべきであり,その訴えは,固有必要的共同訴訟となると解される。そして,このような訴えに対する判決でなければ,入会権者に対し既判力を生じ得ない。そうすると,本件土地に係る所有権保存登記申請について法100条1項2号の「判決」に当たり得るものは,本件土地(墳墓地)を利用する地域住民で構成される入会団体とされる冨貴区の構成員ら全員を被告とする固有必要的共同訴訟の判決でなければならない(登記官は,判決が,その理由中で上記構成員を確定し,これを判示している限りにおいて,その確定に係る構成員らが当該判決において残らず被告とされているかどうかの訴訟要件の具備の有無について審査権限を有している。)。しかるに,別件判決は,D及びFを被告とする訴訟についてされたものであり,本来不適法却下されるべ 該判決において残らず被告とされているかどうかの訴訟要件の具備の有無について審査権限を有している。)。しかるに,別件判決は,D及びFを被告とする訴訟についてされたものであり,本来不適法却下されるべきであったにもかかわらず,実体判決をした瑕疵があるので,その既判力が,冨貴区の構成員ら全員に対して及ぶ余地のないことは明らかであり,法100条1項2号の「判決」に該当しないというべきである。 なお,入会団体に対する訴えは,入会集団の慣習に反しない範囲で,入会団体の代表者を被告とすることができるとの見解に立ったとしても,別件判決においては,入会団体の代表者を被告とすることが当該入会団体の慣習に反しないとの認定が何らされていないし,また,Dらが冨貴区の規約又は慣習に従い代表者の地位に就いたとの事実は認定されていない。もっとも,Dらは,Aの一般承継人であるところ,仮に,別件判決が,Aは冨貴区の代表者の地位にあったと認定していたとしても,入会権(入会団体構成員の個々の権利)の得喪は,専ら規約又は慣習により定まるものであって,法定相続に従うものではないとされているから,直ちにDらが冨貴区の構成員(入会権者)であるということはできないし,代表者の地位をDらが承継したということもできない。 (4) また,平成10年通知に定める取扱いは,本件土地のように,表題部所有者欄の記載から団体の構成員の総有に属するものと認められる不動産には妥当しない。すなわち,旧土地台帳法時代には,土地台帳に記載されるべき土地の共有者が多数いる場合は,土地台帳の所有者欄に単に「何某外何名」と記載し,共同人名簿(共有者台帳)を別冊として設け,そこに他の共有者全員の氏名住所を記載するという取扱いがされていたが,昭和35年の不動産登記法の一部を改正する法律の施行により,土地台帳と登記簿と 記載し,共同人名簿(共有者台帳)を別冊として設け,そこに他の共有者全員の氏名住所を記載するという取扱いがされていたが,昭和35年の不動産登記法の一部を改正する法律の施行により,土地台帳と登記簿との一元化が実施され,この一元化作業の際に,共同人名簿等が税務署から移管されなかったなどの理由により,「外何名」を明らかにすることができなかったものについては,共同人名簿を作成することなく,単に,登記簿の表題部所有者欄に「何某外何名」と移記し,今日に至っている登記簿がある(このような登記のされている土地を「記名共有地」という。)。こうした記名共有地につき,法100条1項2号に基づき所有権保存登記を申請する場合に添付すべき同号所定の「判決」について,平成10年通知は,原則として,表題部に所有者として記載されている者全員を被告とするものでなければならないとしつつ,「外何名」を明らかにすることができない場合の例外的,便宜的取扱いとして,①登記簿上特定することが可能な者全員を被告とし,②原告の所有権を確認する判決であって,③原告の所有権を証拠に基づいて認定している判決であれば,当該判決を同号にいう「判決」として取り扱って差し支えないとしている。平成10年通知が前記の記名共有地を対象としたものであることは,通知の体裁からも明らかであるし,当局による平成10年通知の解説においても,その旨明示されている。なお,同解説には,記名共有地の実体は,集落の共同体としての権利能力なき社団の所有,市区町村の所有,旧財産区の所有等であると考えられ,当時の利用形態としては,墓地あるいは入会地が圧倒的に多かった旨の記載があるが,上記実体から直ちに記名共有地のすべてが集落の共同体としての権利能力なき社団等の所有であったと認めることはできないし,実質的に見ても,記名共有地について いは入会地が圧倒的に多かった旨の記載があるが,上記実体から直ちに記名共有地のすべてが集落の共同体としての権利能力なき社団等の所有であったと認めることはできないし,実質的に見ても,記名共有地については登記簿の記載からその余の共有者を探知することは相当困難であるのに対し,表題部所有者欄に「共有惣代何某外何名」と記載された総有に係る土地については,登記簿の記載から当該地域団体及びその構成員を探知することは必ずしも困難とはいえないと考えられるから,総有関係においても,その構成員の探知が困難な場合があることは認めるものの,なお前記のように取扱いに差異を設けることにはなお合理性が認められる。もっとも,被告において,上記の差異があることについて実証的調査を行ったことはない。 本件土地の登記簿の表題部所有者欄の記載は,前記のとおり,「共有惣代A外四名」となっていて狭義の共有を示す「何某外何名」とはなっておらず,本件土地は記名共有地ではないから,平成10年通知は,本件土地には妥当しない。 (原告の主張)別件判決は,以下のとおり,法100条1項2号所定の判決に該当するから,本件決定は違法である。 (1) 法100条1項2号が判決による保存登記申請を認めた理由は,一般に司法裁判所が運営する争訟手続の性格に照らし,判決が実体上の権利関係を反映する可能性が高いと考えられるためである。そうすると,同号所定の「判決」に該当するためには,表題部に所有者として記載された者又はその相続人を相手にし,その者に自己の利益を防御する機会が与えられていれば十分であり,それを超えて,登記簿に現れていない実体上の所有者を探知し,これに対しても手続保障を与える必要はない。けだし,そのようなことを登記申請人に求めても不可能に近いし,また,そもそもそのような者は所有者であるとの推定を 記簿に現れていない実体上の所有者を探知し,これに対しても手続保障を与える必要はない。けだし,そのようなことを登記申請人に求めても不可能に近いし,また,そもそもそのような者は所有者であるとの推定を受けるものではなく,登記簿上の利害関係人にも該当しないからである。 本件土地の場合,表題部の所有者欄に「共有惣代A外四名」と記載されており,他の権利者が誰で,他に何人存在していたのか,また,その持分はどれだけかなどの実体上の権利関係の詳細については,登記簿上何ら知る手掛りがないから,A又はその相続人に手続保障を与えればそれで十分であって,別件判決は,手続保障としての当事者要件を充足している。 (2) 被告は,最高裁判所昭和41年11月25日の判決を援用した上で,法100条1項2号の「判決」に当たり得るものは,本件土地を利用する地域住民で構成される入会団体とされる冨貴区の構成員ら全員を被告とする固有必要的共同訴訟の判決でなければならないと主張するが,上記最高裁判決は,入会権の存在することの確認を求めた事案であるのに対し,本件の実体は冨貴区(部落民)自身が本件土地の所有関係を争うAの相続人ら全員を相手に訴訟を提起したものであり,ただ形式的には冨貴区から信託を受けた原告が単独で本件土地の所有関係を争うAの相続人全員を相手に訴訟を提起したにすぎないのであって,本件は上記最高裁判決とは事案を異にしている。 また,被告は,総有の場合,共有惣代として表示された者のみを被告にした判決は構成員全員に既判力が及ばないとして法100条1項1号の判決には当たらないと主張するが,被告のいう「記名共有地」の場合についても,「外何名」を被告にしない限り,「外何名」の部分には既判力は及ばないはずであるにもかかわらず,被告は,「外何名」を当事者としない判決でも上記判決として るが,被告のいう「記名共有地」の場合についても,「外何名」を被告にしない限り,「外何名」の部分には既判力は及ばないはずであるにもかかわらず,被告は,「外何名」を当事者としない判決でも上記判決として取り扱っており,矛盾している。 (3) 平成10年通知は,登記簿表題部に「甲外何名」と記載されている場合に,「外何名」の住所氏名が明らかでなく,特定することが不可能な場合はそれらの者を訴訟の相手から外してもよいとの便宜的扱いを認めたものである。被告は,平成10年通知の趣旨を,いわゆる「記名共有地」に限定されると主張するが,ここにいう「記名共有地」が「甲外何名」と記載されているものに限定されるべき理由はなく,「共有惣代甲」とか「共有惣代甲外何名」と記載されたものも含まれると解すべきであり,本件についても平成10年通知の射程距離内の問題として解決が図られるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 我が国の不動産登記には公信力が認められていないが,取引における重要性等に鑑み,できる限り実体上の権利関係を反映したものであることが望ましいのはいうまでもない。法は,その目的に資するべく,ある登記によって不利益を受けると考えられる登記簿上の利害関係人に対し,当該登記手続に関与する機会を保障する制度を採用している。けだし,原則として形式的審査権しか有しない登記官による審査にこれを期待するのは無理であるから(例外的に実質的審査権を有する場合であっても,対象物の形状等,外観から容易に認識できる事柄は別論として,実体上の権利関係の把握には限界がある。),かかる利害関係人に何らかの形で登記手続に関与する機会を与えることによって,実体との符合が一応確保できると考えられるからである。このような手続保障は,共同申請主義の原則(法26条1項)に最も端的に現われているが,その例 かの形で登記手続に関与する機会を与えることによって,実体との符合が一応確保できると考えられるからである。このような手続保障は,共同申請主義の原則(法26条1項)に最も端的に現われているが,その例外とされる登記においても,その趣旨が妥当する場合があると考えられる。 例えば,表示登記は共同申請主義の対象外とされているものの,法は,不動産の表示登記を申請する際に,申請人の所有権を証する書面の添付を要求し(法80条2項,93条2項),登記官に対して必要があるときは職権で所有権の帰属を含めて表示に関する事項の調査権限を与え(法50条1項),調査結果が申請内容と一致しないときは申請を却下する権限を与えている(法49条10号)など,できる限り実体上の権利関係を反映させるべく,慎重な手続を定めている。したがって,かかる手続を経て表題部に所有者として記載された者(又はその相続人)は,当該不動産の所有者であることにつき事実上の推定を受けるというべきであり,前記の手続保障を与えられるべき登記簿上の利害関係人に当たると解すべきである。もっとも,昭和35年の不動産登記法の一部を改正する法律の施行による登記簿一元化によって土地台帳上の所有者の記載が表示登記に移記された場合には,前記の慎重な手続が採られたわけではないものの,土地台帳に登載されて納税義務を負担していた事実は,一般にその者が実体上の所有者であることを推測させると考えられるから,同様に解すべきである(法100条1項1号が表題部に所有者として記載されている者又はその相続人に保存登記の申請資格を付与しているのは,このような制度的裏付けが背景として存在していることによるものと考えられる。)。 2 ところで,法100条1項2号が判決による保存登記申請を認めた理由は,一般に司法裁判所が運営する争訟手続が,相手方 このような制度的裏付けが背景として存在していることによるものと考えられる。)。 2 ところで,法100条1項2号が判決による保存登記申請を認めた理由は,一般に司法裁判所が運営する争訟手続が,相手方に自己の利益を防御する機会を保障する(当事者対席主義)など,慎重,公正な構造となっており,相手方は,不当に自己の利益を奪われぬよう防御活動を尽くすのが通例であることから,最終形成物である判決が実体上の権利関係を反映する可能性が高いと考えられたためであると解される。 そうすると,同号所定の判決に該当するためには,表題部に所有者として記載された者又はその相続人が当該争訟手続上の当事者たる地位を認められ,現実に自己の利益を防御する機会を与えられた上で形成されたことが必要というべきである。 けだし,前記のとおり,表題部に所有者として記載された者は,実体上の所有権者との推定を受け,登記簿上の利害関係人に当たるというべきであり,その地位を覆滅するためには,当該争訟手続に関与する機会を与えられる必要があると考えられるからである。この理は,権利者が複数存在する場合,すなわち複数の共有者が表示されている場合にも妥当するから,前記の判決の要件としては,表示された共有者全員(又はその承継人)を被告として提起されたものであることを要すると解される。 3 しかしながら,法は,前記のとおり,当該登記によって不利益を受けると考えられる登記簿上の利害関係人に対して手続関与の機会を与え,その活動を通じて登記と実体上の権利関係との符合を図ろうとするものであるが,これを超えて,登記簿に現れていない実体上の所有者を探知し,これに対しても手続保障を与えようとするものではない。そのようなことを登記申請人に求めても不可能なことが多いし,そもそも,かかる者は所有者であるとの推定を受けるもの れていない実体上の所有者を探知し,これに対しても手続保障を与えようとするものではない。そのようなことを登記申請人に求めても不可能なことが多いし,そもそも,かかる者は所有者であるとの推定を受けるものではないので,登記簿上の利害関係人に該当しないというべきである(ちなみに,仮に実体を反映しない不実登記がなされたとしても,登記に公信力がない以上,原則として実体上の権利者が自己の権利を奪われることはない。)。 本件土地の場合,表題部の所有者欄に「共有惣代A外四名」と記載されており,当時の実体上の権利関係はAを始めとする5名の共有であったことがうかがわれるが,前記のとおり,A以外の共有者の氏名及び住所を明らかにする記載はなく,登記簿にはそれを示す資料も備え付けられていない。そうすると,本件において前記の手続保障を与える対象者は,A(又はその承継人)以外には考えられず,かつ同人に手続保障を与えることによって満足すべきところ,前記(争いがない事実等)のとおり,原告は,Aの承継人であるD及びFを被告として別件訴訟を提起し,勝訴の確定判決を得たのであるから,別件判決は,手続保障としての当事者要件を充足し,法100条1項2号所定の判決に該当すると判断するのが相当である。 4 これに対し,被告は,本件土地は,狭義の共有地ではなく,本件土地を利用する地域住民で構成される団体の構成員全員が総有する入会地であることを前提とし,昭和41年11月25日の最高裁判決を援用した上で,本件土地に係る所有権保存登記申請について法100条1項2号の「判決」に当たり得るものは,本件土地を利用する地域住民で構成される入会団体とされる冨貴区の構成員ら全員を被告とする固有必要的共同訴訟の判決でなければならず,本来不適法却下すべきであったにもかかわらず,本案判決をした別件判決は上記判決 を利用する地域住民で構成される入会団体とされる冨貴区の構成員ら全員を被告とする固有必要的共同訴訟の判決でなければならず,本来不適法却下すべきであったにもかかわらず,本案判決をした別件判決は上記判決に該当しないと主張する。 しかしながら,被告の主張するように,登記簿の表題部所有者欄に「共有惣代(総代)」と表示されていることのみをもって,直ちに当該土地の実体関係を総有関係と断定すべきかについては疑問が残るが,それはさておいても,被告が援用する上記最高裁判決は,入会部落の構成員の一部の者が入会権の存在を争う者に対して当該入会権が存在することの確認を求めた事案において,かかる入会権確認訴訟は入会権者全員が提起すべき固有必要的共同訴訟であるから入会権者の一部の者による訴えの提起は不適法であると判示したものであるのに対し,別件訴訟は,本件土地の(信託的)譲渡を受けたと主張する者が,その所有関係を争う者に対して本件土地の所有権の確認を求めた事案であって,上記最高裁判決とは訴訟物である実体上の権利関係や訴えの目的を異にしており,別件訴訟が固有必要的共同訴訟とならないことは明らかである。そうすると,被告の前記主張は,その前提となる認識に誤りがあるから,採用できない。 5 また,平成10年通知は,前記のとおり,登記簿の表題部所有者欄に「甲外何名」と記載されているが,「外何名」と特定できない場合,甲(又はその承継人)のみを被告として所有権確認の請求を認容した判決であっても,原告の所有権が証拠によって認定されている限り,法100条1項2号所定の判決として取り扱う旨定めているところ,別件判決は,明らかにその要件を充足していると判断することができる。 この点につき,被告は,平成10年通知は狭義の共有に係る記名共有地のみを対象としたものであり,総有の場合は同通知 めているところ,別件判決は,明らかにその要件を充足していると判断することができる。 この点につき,被告は,平成10年通知は狭義の共有に係る記名共有地のみを対象としたものであり,総有の場合は同通知は対象としておらず,本件土地は総有地であるから,同通知による便宜的取扱いを認めることはできず,原則どおり「外四名」を含め表題部に記載された者を全員を被告とした判決が登記申請書に添付されていなければならないと主張する。 しかしながら,平成10年通知についての当局の解説(甲4)は,「記名共有地の実体は,明治期からの小さな集落の共同体としての権利能力なき社団の所有,市区町村の所有,財産区の所有等であると考えられ,また,登記簿の地目から推測される当時の利用形態としては,墓地あるいは入会地が圧倒的に多かったものと思われる。」との記載がある反面,狭義の共有と総有とを区別し,前者のみを対象とする趣旨との記載は一切存在せず,かえって後者の土地について,今日の宅地開発や道路整備等の開発に係る土地買収等の関係から登記上の取扱いについての問題点が顕在化するに至ったとして,同通知が発出される動機が解説されていることからすると,通常の日本語読解能力を前提とする限り,同通知は,むしろ総有に係る土地を主たる対象として発出されたものと解さざるを得ない。このような理解の正当性は,本件と同様に法100条1項2号所定の判決に該当するか否かが問題となった当庁平成12年(行ウ)第38号事件において,被告登記官が総有に係る土地についても平成10年通知の対象とすべき旨主張していた(被告も自認している。)ことからも裏付けられる。 この点につき,さらに被告は,狭義の共有に係る記名共有地については登記簿の記載からその余の共有者を探知することは相当困難であるが,表題部所有者欄に「共有惣代何某 いる。)ことからも裏付けられる。 この点につき,さらに被告は,狭義の共有に係る記名共有地については登記簿の記載からその余の共有者を探知することは相当困難であるが,表題部所有者欄に「共有惣代何某外何名」と記載された土地については必ずしもそうとはいえないと主張して,前記主張の合理性を補完しようとするが,被告主張のような経験則があるとはおよそ認め難い(実質的にみても,狭義の共有においては共有者各人が共有持分権を有していて,自己の財産であるとの認識を持ちやすいから,その権利保全措置を講じたり,証拠書類を作成するなどした結果,「外何名」に当たるその余の共有者を探知することが容易な場合も少なくないと考えられるのに対し,総有においては,共有者の潜在的持分さえ存在しないため,自己の財産であるとの意識は希薄である上,その入会権者の地位の承継は相続により行われるとは限らず,慣習や内部的な取決めによって行われることからすれば,その余の共有者のすべてを探知することが困難な場合も十分に考えられる。)上,被告自身も,総有関係におけるその構成員の探知が困難な場合があること,及び被告がそのような困難性の差異があることについて実証的調査を行っていないことを自認しているから,被告の前記主張は採用できない。 6 そうすると,本件決定は,法100条1項2号所定の判決の解釈を誤った違法が存する上,本来適用すべき自己の上級庁が発出した通達を恣意的な解釈の下に適用せず,ひいては行政における基本原則の一つである平等原則にも違反するものであるから,いずれの観点からも取消しを免れない。 7 以上の次第で,原告の本訴請求は理由があるから認容し,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部裁判長裁判官加藤幸雄 以上の次第で,原告の本訴請求は理由があるから認容し,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部裁判長裁判官加藤幸雄裁判官舟橋恭子裁判官富岡貴美別紙物件目録所在愛知県知多郡武豊町大字冨貴字海道地番 51番地目墳墓地地積 393平方メートル
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