平成31年2月4日判決言渡 平成30年(行ケ)第10033号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成30年12月4日判決 原告 ネオケミア株式会社 同訴訟代理人弁護士 高橋淳 同訴訟代理人弁理士 伊藤晃 新田昌宏 坂田啓司 被告 株式会社メディオン・リサーチ・ラボラトリーズ 同訴訟代理人弁護士 山田威一郎 松本響子 柴田和彦 同訴訟代理人弁理士 田中順也 水谷馨也 迫田恭子 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 特許庁が無効2017-800050号事件について平成30年1月30日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要(後掲証拠及び弁論の全趣旨から認められる事実) 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 被告は,名称を「二酸化炭素含有粘性組成物」とする発明に係る特許権(特許第4912492号,平成 の概要(後掲証拠及び弁論の全趣旨から認められる事実) 1 特許庁における手続の経緯等(1) 被告は,名称を「二酸化炭素含有粘性組成物」とする発明に係る特許権(特許第4912492号,平成24年1月27日設定登録。請求項の数7。以下,「本件特許権」といい,同特許権に係る特許を「本件特許」という。)の特許権者である。本件特許は,平成10年10月5日を国際出願日とする特願2000-520135号(優先権主張平成9年11月7日日本国。 以下「本件優先日」という。)の分割出願として,平成22年9月6日に出願されたものである(特願2010-199412号)。(甲51)(2) 原告は,平成29年4月13日付けで,本件特許の請求項1~5及び7に係る発明についての特許を無効とすることを求めて,特許庁に無効審判請求をし,特許庁は上記請求を無効2017-800050号事件として審理した。 (3) 特許庁は,平成30年1月30日,審判請求は成り立たない旨の審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年2月8日,原告に送達された。 (4) 原告は,平成30年3月6日,本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5及び7の記載は,次のとおりである。以下,各請求項に記載の発明を,請求項の番号に従い,「本件発明1」,「本件発明2」などといい,「本件発明」と総称する。また,本件特許の明細書(甲51)を,「本件明細書」という。 【請求項1】 医薬組成物又は化粧料として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのキットであって,1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と,酸を含有する顆粒剤,細粒剤,又は粉末剤の組み合わせ;2)酸 として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのキットであって,1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と,酸を含有する顆粒剤,細粒剤,又は粉末剤の組み合わせ;2)酸及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と,炭酸塩を含有する顆粒剤,細粒剤,又は粉末剤の組み合わせ;又は3)炭酸塩と酸を含有する複合顆粒剤,細粒剤,又は粉末剤と,アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物の組み合わせ;からなり,含水粘性組成物が,二酸化炭素を気泡状で保持できるものであることを特徴とする,含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する前記二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキット。 【請求項2】得られる二酸化炭素含有粘性組成物が,二酸化炭素を5~90容量%含有するものである,請求項1に記載のキット。 【請求項3】含水粘性組成物が,含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させた後にメスシリンダーに入れたときの容量を100としたとき,2時間後において50以上の容量を保持できるものである,請求項1又は2に記載のキット【請求項4】含水粘性組成物がアルギン酸ナトリウムを2重量%以上含むものである,請求項1~3のいずれかに記載のキット。 【請求項5】含有粘性組成物が水を87重量%以上含むものである,請求項1~4のいずれかに記載のキット。 【請求項7】請求項1~5のいずれかに記載のキットから得ることができる二酸化炭素含有粘性組成物を含む化粧料。 3 本件審決の理由の要旨(1) 原告は,本件特許の請求項1~5及び7に係る発明は,本件優先日前に公開された特開昭63-310807号公報(甲1。以下「甲1文献」という。)に記載された発明,特開平 件審決の理由の要旨(1) 原告は,本件特許の請求項1~5及び7に係る発明は,本件優先日前に公開された特開昭63-310807号公報(甲1。以下「甲1文献」という。)に記載された発明,特開平6-179614号公報(甲2。以下「甲2文献」という。)に記載された発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとして,進歩性欠如を主張した。 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりであり,要するに,下記(2)のとおりの甲1文献の比較例10に係る発明(以下「引用発明」という。)における「Arg・炭酸塩含有PEG被覆粉末1+酸含有PEG被覆粉末2の混合物」と水との組み合わせを,下記(3)のとおりの「Arg・炭酸塩含有含水粘性組成物」と「酸含有粉末剤等」との組み合わせに変更することを,当業者が容易に想到することができたとはいえないから,原告の無効審判請求は成り立たないというものである。 (2) 本件審決が認定した引用発明は次のとおりである。 「 以下の組成(重量%)の1剤式発泡エッセンスであって,下記の調製方法で調製し,用時,水に溶解して使用する1剤式発泡エッセンス。 ポリエチレングリコール(分子量4000)13.5炭酸水素ナトリウム 43.5クエン酸 33.5アルギン酸ナトリウム 9.5(1) 約80℃にてポリエチレングリコール(分子量4000)の一部を溶解し,熱時アルギン酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウムを加え均一に混合した後,室温まで冷却し,粉末とし, (2) 約80℃にてポリエチレングリコールの残部を溶解し,熱時クエン酸を加えて均一に混合した後,室温まで冷却し粉末とし,(3) (1)に に混合した後,室温まで冷却し,粉末とし, (2) 約80℃にてポリエチレングリコールの残部を溶解し,熱時クエン酸を加えて均一に混合した後,室温まで冷却し粉末とし,(3) (1)に(2)を加え均一に混和して調製する。」なお,このうち,(1)の工程で形成される,アルギン酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとの混合物がポリエチレングリコール(分子量4000)(以下「PEG」という。)で被覆された粉末を,「Arg・炭酸塩含有PEG被覆粉末1」と,(2)の工程で形成される,クエン酸がPEGで被覆された粉末を「酸含有PEG被覆粉末2」という(原告は,アルギン酸ナトリウムについて英語表記に従って「Alg」と表記するが,本件審決の記載に合わせてArgと統一して表記する。)。 (3) 本件審決が認定した本件発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。 本件発明1のうちの,「1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と,酸を含有する顆粒剤,細粒剤,又は粉末剤の組み合わせ」からなる発明(以下「本件発明1-1」という。)と引用発明は以下の[一致点]で一致し,[相違点1]について相違する。 なお,本件発明1-1の,炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物のことを「Arg・炭酸塩含有含水粘性組成物」,酸を含有する顆粒剤,細粒剤又は粉末剤のことを「酸含有粉末剤等」という。 [一致点]化粧料として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのキットであって,炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する前記二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキット。 [相違点1]本件発明1-1は,「炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘 性組成物と,酸を含有する顆粒 化炭素を含有する前記二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキット。 [相違点1]本件発明1-1は,「炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘 性組成物と,酸を含有する顆粒剤,細粒剤,又は粉末剤の組み合わせ」からなり,「含水粘性組成物が,二酸化炭素を気泡状で保持することができるものである」のに対して,引用発明は「水に溶解して使用する1剤式発泡エッセンス」であって,「(1)約80℃にてポリエチレングリコール(分子量4000)の一部を溶解し,熱時アルギン酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウムを加え均一に混合した後,室温まで冷却し,粉末とし,(2) 約80℃にてポリエチレングリコールの残部を溶解し,熱時クエン酸を加えて均一に混合した後,室温まで冷却し粉末とし,(1)に(2)を加え均一に混和して調製」したものである点 4 取消事由相違点1に関する容易想到性判断の誤り第3 原告主張の取消事由(相違点1に関する容易想到性の判断の誤り) 1 ダマの形成について一般にアルギン酸ナトリウムを含む粉末を水に溶解させようとする場合にダマが生じるという問題(以下「ダマ形成問題」という。)が存在するが,この問題は,引用発明にも妥当する。そして,このようなダマ形成問題があることから,引用発明のArg・炭酸塩含有PEG被覆粉末1だけをあらかじめ水に溶解させることの動機付けがあるといえ,これを否定した本件審決の認定は誤りである。 (1) アルギン酸塩類を含む物質を水に溶解しようとする際に,「一般に」ダマになりやすいことは,甲2文献,「色材」に連載されていた「添加剤基礎講座」の第X講の「増粘剤」をテーマとする論考から明らかである。また,複数の特許文献(甲30~33)にも,アルギン酸塩類を含む物質を水に溶解しようと ,甲2文献,「色材」に連載されていた「添加剤基礎講座」の第X講の「増粘剤」をテーマとする論考から明らかである。また,複数の特許文献(甲30~33)にも,アルギン酸塩類を含む物質を水に溶解しようとする際に広くダマ形成問題が生じることが示されている。さらに,米国特許第5,246,490号(甲34)からは,産業や製品の種類によら ず,アルギン酸塩が溶けにくく,ママコ(ダマ)を作りやすいことが使用者にとって不便であり,特定の製品に限定されない課題であることが明らかである。 (2) アルギン酸ナトリウムは水に徐々に溶解するものであることが周知であり(甲35~37),アルギン酸ナトリウムを事前に溶解させた水溶液として利用することが慣用技術であったことは,複数の論文(甲38~41)からも明らかである。 エントロピー増大の法則から,水溶液中に発生した気泡状の二酸化炭素は空気中に拡散しようとする傾向があるところ,水溶液に高分子化合物を溶解させると,高分子化合物が結合することにより形成される三次元の網目構造が気泡状の二酸化炭素を水溶液中に閉じ込めて空気中に拡散することを防止できることも明らかである。仮にこの点が明らかでないとしても,特開平9-206001号(甲44)には「生じた炭酸ガスの気泡が,粘性を帯びた増粘多糖類に封じ込められ,外部へ逃散しない」との記載があり,水溶液に高分子化合物を溶解させることにより,気泡状の二酸化炭素を水溶液中に閉じ込めて空気中に拡散することを防止できることは公知であるといえる。 (3)ア甲1文献には,「炭酸ガスの泡が徐々に発生すると共に水溶性高分子及び/又は粘土鉱物の粘性によって安定な泡を形成し,炭酸ガスの保留性が高まる」との記載がある(甲1文献1頁右欄)。この記載は,特許請求の範囲記載の第2剤をPE の泡が徐々に発生すると共に水溶性高分子及び/又は粘土鉱物の粘性によって安定な泡を形成し,炭酸ガスの保留性が高まる」との記載がある(甲1文献1頁右欄)。この記載は,特許請求の範囲記載の第2剤をPEGで被覆することにより,炭酸ガスの急激な発生を抑止するとともに,アルギン酸ナトリウム等の高分子により水溶液に与えられる「粘性」が気泡状の二酸化炭素の持続性をもたらし,その相乗効果により「炭酸ガスの保留性が高まる」ことを示しているが,この点は,「炭酸ガスの保留性」が実施例と同等と評価されている引用発明にも妥当する。 そして,気泡膜を形成する媒質の粘性が増大すると気泡の安定性が高まることが古くから知られている(甲42・27頁)から,「粘性によって 安定な泡を形成し」との記載は,水溶液の粘度を高めて,気泡状の二酸化炭素の気泡の持続性を高めることを示唆するものである。 また,特開昭62-16409号(甲43(2)右下欄7~9行)には,酸と炭酸塩を含む固形の美容剤が開示され,炭酸水素ナトリウム,炭酸ナトリウム及び有機酸を含む実施例(2)及び(3)について,固形であっても液体に入れると同時に炭酸ガスが発生するとの記載があり,酸と炭酸塩の反応速度が非常に速いことが明らかである。 引用発明においてはアルギン酸ナトリウムもPEGで被覆されているところ,① 気泡が崩壊しやすいものであること,② アルギン酸ナトリウムが徐々に水に溶解すること,③ 水の存在下における酸と炭酸塩の反応が急激であることという技術常識を参酌すると,引用発明の構成のままでは,酸と炭酸塩の反応がアルギン酸ナトリウムの水全体に対する溶解よりも速く発生するであろうことが容易に想到できる。そうすると,当業者は,引用発明において,気泡状の二酸化炭素の気泡の持続性を高めるという課題を認識 の反応がアルギン酸ナトリウムの水全体に対する溶解よりも速く発生するであろうことが容易に想到できる。そうすると,当業者は,引用発明において,気泡状の二酸化炭素の気泡の持続性を高めるという課題を認識し,水に事前にアルギン酸ナトリウムを溶解させて粘度を高めておくという発想に至ることは容易である。 イ被告は,PEGでアルギン酸ナトリウムを被覆した引用発明においては,ダマ形成問題が生じないと主張するが,引用発明は,アルギン酸ナトリウムと炭酸塩とを固体のポリエチレングリコールにて被覆したものであり(以下「被覆型」という。),アルギン酸ナトリウム等の水溶性高分子を液体のポリエチレングリコールに分散させたもの(以下「分散型」という。)ではない。 被覆型と分散型の間には,ポリエチレングリコールが固体であるか液体であるかの相違があり,その相違は,以下のとおり,ダマ形成軽減のメカニズムに相違をもたらすものである。すなわち,分散型は,液体のポリオールにアルギン酸ナトリウムを入れて攪拌すると,ポリオールに溶けない アルギン酸ナトリウムがポリオールとの反発力によってポリオール中で微粒子となって分散し,表面積が増えるため,アルギン酸ナトリウムの微粒子が水に接する表面積が多くなることから水に溶けやすくなり,ダマの形成が軽減される。これに対し,被覆型は,まずPEGが水に溶けて,その後,その下にあるアルギン酸ナトリウムが徐々に溶けることにより溶解速度が遅延し,アルギン酸ナトリウムが凝集する可能性が低下し,ダマの形成が軽減される。 そうすると,仮に,分散型においてダマの形成を抑制できることが本件優先日前に周知であったとしても,当業者は,被覆型においてダマの形成を抑制できるとの認識を有することにはならず,むしろ,引用発明が依然としてアルギン酸ナトリウム いてダマの形成を抑制できることが本件優先日前に周知であったとしても,当業者は,被覆型においてダマの形成を抑制できるとの認識を有することにはならず,むしろ,引用発明が依然としてアルギン酸ナトリウムの拡散問題を有することを容易に認識するといえる。なお,被告が,常温で固体のポリエチレングリコールによる被覆によりダマの形成を抑制できることの根拠とする甲28は,本件優先日から17年以上経過後に公開された文献であり,本件優先日当時の技術常識を示すものではない。 (4) 2剤型の化粧品の組み合わせとしては,大別すると,① 含水粘性組成物と含水粘性組成物,② 粉末と粉末,③ 含水粘性組成物と粉末の3種類があるが,これらは全て慣用技術であり,商品特性に応じて選択される。 すなわち,③の剤型をとるものとして,本件優先日前から,第1剤を含水粘性組成物とし,第2剤を粉末とする2剤型パウダーパック製品(商品名:プラスキンII パウダーパック)(甲45,46)が販売されていた。また,特開平7―53324号(甲47)には,「最近,美白や保湿を目的として,粉末或いは顕粒状の組成物を,使用する直前に化粧水や乳液に分散せしめ,皮膚に塗布するいわゆる混合タイプのものが市販されるようになった」(【0003】)との記載があり,粉末又は顕粒状の組成物と粘性組成物(乳液)の2剤型の化粧料がキットとして販売されていたことが分かる。ジェル は,乳液や化粧水と同様にスキンケア化粧品の剤型として一般的なものであり,この記載は顕粒状の組成物とジェルのキットも示唆している。さらに,特開平6-336413号(甲48)には,粉末状の1剤とアルギン酸ナトリウムを含む水溶液の2剤から構成されるキットが実施例として開示されている(【0011】及び【0013】)。以上のとおり,2剤型 特開平6-336413号(甲48)には,粉末状の1剤とアルギン酸ナトリウムを含む水溶液の2剤から構成されるキットが実施例として開示されている(【0011】及び【0013】)。以上のとおり,2剤型の発泡性化粧料に関して,第1剤を含水粘性組成物とし,第2剤を粉末等の固形物とすることは慣用技術である。 したがって,本件発明1-1のように③の剤型とすることは,単に慣用技術を適用しただけのものであり,その選択に特段の困難性が伴わないことは明らかである。 (5) 以上のとおり,甲1文献の示唆のほか,アルギン酸ナトリウムが水に溶解しにくく,事前に溶解させることが通例であるという技術常識等に基づき,経日安定性の向上及び気泡状の二酸化炭素の安定化効果及び閉じ込め効果を向上させることを目的として,その剤型をアルギン酸ナトリウムと炭酸塩を含有する含水粘性組成物と,酸含有PEG被覆粉末の2剤型に置換することの十分な動機付けがあるというべきである。 2 素早く徹底的な攪拌操作が不便かつ煩わしいことについて引用発明には,パック剤の調製には素早く徹底的な攪拌操作が必要とされ,それは不便かつ煩わしいという「自明な課題」があり,甲2文献に記載された発明にも共通の課題があるところ,引用発明と甲2文献には技術分野の関連性があるから,引用発明に甲2文献に記載された事前調製技術(あらかじめアルギン酸塩類を水に溶解させてゲル状とすること)を適用することの動機付けがあるといえ,これを否定した本件審決の認定は誤りである。 (1)ア米国特許第3,164,523号明細書(甲3。以下「甲3文献」という。)には,「アルギン酸塩とカルシウム塩とが反応し,ゲル形成が急速に進むので,均一なパック剤調製のためには素早く徹底的な攪拌が必要となり, その結果,かかる操作が不便 「甲3文献」という。)には,「アルギン酸塩とカルシウム塩とが反応し,ゲル形成が急速に進むので,均一なパック剤調製のためには素早く徹底的な攪拌が必要となり, その結果,かかる操作が不便かつ煩わしい」ことが明示されている。甲3文献に記載された発明において,「均一なパック剤調製のために素早く徹底的な攪拌が必要」とされる理由は,アルギン酸塩類とカルシウム塩とから構成されるゲル組成物の形成が急速に進むため,当該組成物の攪拌が困難となり,その均一化が阻害されることにある。このような,組成物全体の均一化と競争する化学変化は,アルギン酸塩とカルシウム塩との反応による組成物のゲル化に限られるものではなく,カルシウム塩が存在しない場合であっても,アルギン酸水溶液の濃度の上昇による粘度増加によって攪拌効率が低下するから,均一なパック剤調製のために素早く徹底的な攪拌が必要となるといえる。 互いに反応する2剤を用時に加水下で攪拌混合する際に両剤が溶液全体に分散して均一に混ざらなければ,2剤の反応を促進するという攪拌の目的は達せられないから,「攪拌により,アルギン酸塩とカルシウム塩を反応させて,ゲル化が完了するより先に均一なパック剤を調製する」ことは「攪拌により,反応する2剤を分散させて該反応に遅れることなく均一な混合体を調製する」と同義であり,後者の理解は課題を上位概念化するものではない。 イ特開昭61-252231号(甲33。以下「甲33文献」という。)には,先行技術として,「ママコを生じ易い粉末糊料については,この粉末をママコを生じにくい粉末糊料(ポリビニルアルコール等)でコーティングすることによりママコの形成を防ぐとともに溶解時間を短縮する方法も行われている。しかしながら,・・・粉末糊料を別のママコを生じにくい糊料でコーティングす 糊料(ポリビニルアルコール等)でコーティングすることによりママコの形成を防ぐとともに溶解時間を短縮する方法も行われている。しかしながら,・・・粉末糊料を別のママコを生じにくい糊料でコーティングする方法は,主成分(ママコを生じ易い糊料)の特性が阻害されたり,糊液粘度も変動する等の問題点を抱えており,いずれにしてもママコの形成防止ないし消失法として効果的ではなかった。」との記載があり(甲33文献2頁左上欄~右上欄),この「ママコを生じ易 い粉末糊料」の具体例としてアルギン酸ナトリウムも明示されている(甲33文献3頁左上欄~右上欄)から,以上を総合すると,アルギン酸ナトリウムを「ママコを生じにくい粉末糊料(ポリビニルアルコール等)」でコーティングすることによりダマ形成問題を解決する試みがなされたが,効果的ではなかったことが理解できる。そして,ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールは,本件優先日当時,いずれも高分子糊料として認識されていた(甲54)ものであるから,上記「ママコを生じにくい粉末糊料(ポリビニルアルコール等)」の中にポリエチレングリコールが含まれることは自明である。これによれば,アルギン酸ナトリウムをポリエチレングリコールでコーティングすることによりダマ形成問題を解決する試みがなされたが,効果的ではなかったことがわかる。 このように,ポリエチレングリコールで被覆したアルギン酸ナトリウムを水に溶解する際にはダマを生じやすく,この観点からも,攪拌操作が不便で煩わしいという自明の課題が存在する。 (2)ア一般に,化粧品の構成要素として利用することを意図して,粉末状のものを水に溶解する場合には,当該粉末状のものが均一に溶解するべきことが当然に求められる(甲6)。 アルギン酸ナトリウムは水を加えると徐々に溶解し( の構成要素として利用することを意図して,粉末状のものを水に溶解する場合には,当該粉末状のものが均一に溶解するべきことが当然に求められる(甲6)。 アルギン酸ナトリウムは水を加えると徐々に溶解し(甲49・46頁),PEGによる被覆はアルギン酸ナトリウムの溶解を遅らせる(甲1文献,3頁左上欄5行目)。そして,アルギン酸ナトリウム水溶液の粘度は濃度の増加に対してほぼ対数的に増加することが知られ,濃度が2倍になるとその粘度はおよそ10倍になる(甲50・87頁)。 イ引用発明においては,2種類の粉末を均一に水に溶解することが必要であるところ,上記アのとおり,PEGで被覆されたアルギン酸ナトリウムは時間をかけてゆっくりと水に溶解するが,溶解により濃度が増加すると粘度が急激に増加する。そして,アルギン酸ナトリウムの溶解と並行して, PEG被覆された炭酸水素ナトリウムとクエン酸も水に溶解して反応し,二酸化炭素の放出を開始する。 このように,2種類の粉末を水に溶解する際に,アルギン酸ナトリウムの溶解による粘度の増加と炭酸塩と酸の反応による二酸化炭素の発生という競争反応が存在するから,少しでも多くの二酸化炭素を取り込むために,炭酸塩と酸成分を均一に分散させる一方で,アルギン酸ナトリウムの均一な含水粘性組成物を速やかに調製することが必要であり,そのためには,素早く徹底的な攪拌操作をする必要がある。 したがって,反応する2剤を分散させて該反応に遅れることなく均一な混合体を調製するための,時間的制約の存在下における攪拌操作が不便かつ煩わしいという,上記(1)アの課題は,引用発明にも当然に存在するといえる。 (3) 甲2文献には,アルギン酸塩類をあらかじめ水に溶解させてゲル状とすることが記載されている。 引用発明も甲2発明も粉末状のパ う,上記(1)アの課題は,引用発明にも当然に存在するといえる。 (3) 甲2文献には,アルギン酸塩類をあらかじめ水に溶解させてゲル状とすることが記載されている。 引用発明も甲2発明も粉末状のパック剤のキットであるから,使用時に水で均一に溶くことが必要であり,かつ,粘度が急激に上昇する中での二酸化炭素の発生とアルギン酸塩粘性物の固化という時間的制約を与える競争反応が存在する。そうすると,引用発明と甲2発明には,パック剤の調製には素早く徹底的な攪拌操作が必要とされ,それは不便かつ煩わしいという「自明な課題」が共通に存在する。 よって,引用発明と甲2発明の課題の共通性及び技術分野の関連性に基づいて,引用発明に甲2発明の事前調製技術を適用し,引用発明のArg・炭酸塩含有PEG被覆粉末1と酸含有PEG被覆粉末2と水との組み合わせを,本件発明1-1のArg・炭酸塩含有含水粘性組成物と酸含有粉末剤等との組み合わせに変更することは当業者が容易に想到し得たというべきである。 3 上記によれば,本件発明2~5,7と引用発明の相違点についても容易に解 消されることは明らかであるし,特別顕著な効果は見いだされない。 よって,本件審決は誤りであるから,取り消されるべきである。 第4 被告の反論 1 ダマの形成について(1) 引用発明において,Arg・炭酸塩含有PEG被覆粉末1を水に溶解させる際にダマになりやすいという課題を認識することはできず,引用発明に甲2文献に記載されたあらかじめ水に溶解させておくという技術を適用する動機付けが存在しないことは明らかである。 (2) 粉末状のアルギン酸ナトリウムを水に添加すると分散し難く,ダマを形成しやすいことに関しては被告も争うものではなく,本件で問題となるのは,アルギン酸ナトリウム 存在しないことは明らかである。 (2) 粉末状のアルギン酸ナトリウムを水に添加すると分散し難く,ダマを形成しやすいことに関しては被告も争うものではなく,本件で問題となるのは,アルギン酸ナトリウムをPEGで被覆した引用発明の構成において同様の課題が生じるか,また,かかる課題の存在を当業者が認識できるかという点である。 アアルギン酸ナトリウムを水に溶かすとダマを形成しやすいという問題点は,次のとおり,ポリエチレングリコール等のポリオールにアルギン酸ナトリウムを分散させるという手法によって解決可能であることが広く知られており,引用発明においてダマ形成の問題が生じ得ないことは当業者であれば容易に認識できるから,引用発明の構成においてダマを形成しやすいという課題は生じない。 すなわち,複数の特許文献ないし論文(甲21,22,23,24及び28)には,ポリエチレングリコール等のポリオールにアルギン酸ナトリウムを分散させた後に水に添加すると,ダマの形成を抑制しつつアルギン酸ナトリウムを溶解できることが記載され,かかる事項が本件優先日前に当該技術分野で周知であったことが分かる。これによれば,本件優先日当時,粉末状のアルギン酸ナトリウムを水に添加すると分散し難くダマを形成しやすいという問題点は,アルギン酸ナトリウム等の水溶性高分子をポ リエチレングリコールに分散させることによって抑制できることが広く知られていたといえる。したがって,アルギン酸ナトリウムがPEGに被覆された状態になっている引用発明に接した当業者は,既に水添加時のダマを形成しやすいという問題点も改善されていると認識するといえる。 イまた,引用発明においてダマ形成問題が改善されていることは,甲1文献に,アルギン酸ナトリウムのダマ形成に言及する記載がないことからも明ら やすいという問題点も改善されていると認識するといえる。 イまた,引用発明においてダマ形成問題が改善されていることは,甲1文献に,アルギン酸ナトリウムのダマ形成に言及する記載がないことからも明らかである。実験報告書(甲7)の実験も上記を裏付けるものである。 ウこのように,引用発明に接する当業者がダマ形成を問題視することはないから,ダマ形成問題を回避することが,Arg・炭酸塩含有PEG被覆粉末1だけをあらかじめ水に溶解させることの動機付けにならないことは明らかである。 (3)ア甲1文献には,引用発明以外の製剤形態として,酸を含む水溶液(第1剤)と,アルギン酸ナトリウム及び炭酸塩をポリエチレングリコールで被覆した固型物(第2剤)とからなる2剤型の製剤形態が開示されているが(特許請求の範囲(1),実施例1~11等),アルギン酸ナトリウムと水をあらかじめ共存させて,アルギン酸ナトリウムを増粘させた状態で提供する製剤形態については開示も示唆もないから,甲1文献の開示内容に基づいて,引用発明を,「炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含む含水粘性組成物」を含む2剤型の製剤形態に設計変更する動機付けがない。 イ甲1文献は,ガス保留性,経日安定性,官能特性等に優れた発泡性化粧料に関して,「酸性物質を水に溶解して得られる水溶液を第1剤とし,水溶性高分子及び/又は粘土鉱物と炭酸塩とをポリエチレングリコールで被覆した固型物を第2剤とする用時混合型発泡性化粧料」を開示しているが(特許請求の範囲,実施例1~11参照),引用発明は,経日安定性の点で,この実施例に記載の発明に劣る結果になっている(甲1文献の第3表)。 そうすると,仮に,当業者が引用発明に着目して設計変更しようと試み る場合,「酸と水を含む水溶液からなる第1剤」と「炭酸塩及びアルギ 載の発明に劣る結果になっている(甲1文献の第3表)。 そうすると,仮に,当業者が引用発明に着目して設計変更しようと試み る場合,「酸と水を含む水溶液からなる第1剤」と「炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムがポリエチレングリコールで被覆された固型物からなる第2剤」とからなる2剤型の発泡性化粧料(すなわち,甲1文献の実施例1~11の態様)に設計変更することが強く動機付けられるはずであり,本件発明1-1のような,「炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含む含水粘性組成物」を含む2剤型の製剤形態に設計変更することが動機付けられることはない。 甲1文献の比較例1には,炭酸塩,アルギン酸ナトリウム及びポリエチレングリコールを単に混合した粉末状第2剤を使用した場合にガス保留性が著しく劣ることが示されている一方,炭酸塩とアルギン酸ナトリウムがポリエチレングリコールによって被覆された引用発明は優れたガス保留性を有しているから,ポリエチレングリコールによる炭酸塩とアルギン酸ナトリウムの被覆は,反応速度を適切に制御して良好なガス保留性を実現する上で重要な技術事項になっていることが理解できる。したがって,仮に,引用発明を設計変更して,その構成要素の一部を「炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含む含水粘性組成物」にすると,含水粘性組成物中では,ポリエチレングリコールによって炭酸塩とアルギン酸ナトリウムが被覆された状態にはならないため,ガス保留性が損なわれることが懸念される。 このように,甲1文献の記載内容からすれば,甲1文献には,引用発明に対し,「炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含む含水粘性組成物」を構成要素の一部にするような設計変更を行う示唆はなく,むしろ,かかる設計変更を行うことには阻害要因がある。 ウ原告は,甲1文献の1頁右欄の「炭酸ガスの泡が徐々 酸ナトリウムを含む含水粘性組成物」を構成要素の一部にするような設計変更を行う示唆はなく,むしろ,かかる設計変更を行うことには阻害要因がある。 ウ原告は,甲1文献の1頁右欄の「炭酸ガスの泡が徐々に発生すると共に水溶性高分子及び/又は粘土鉱物の粘性によって安定な泡を形成し,炭酸ガスの保留性が高まる。」との記載を根拠に,当業者であれば,引用発明において,二酸化炭素の持続性を高めるため,水に事前にアルギン酸ナト リウムを溶解させて粘度を高めておくという発想に至ることは容易であると主張するが,かかる主張には論理の飛躍がある。上述したとおり,甲1文献において,引用発明につき,水に事前にアルギン酸ナトリウムを溶解させておき,粘度を高めておくとの発想は何ら開示されておらず,原告主張の構成に至ることの示唆があるなどといえない。 原告は,エントロピー増大の法則等に関する主張をしているが,その主張のとおりであったとしても,そのことは,引用発明の剤型を,アルギン酸ナトリウムと炭酸塩を含有する含水粘性組成物と酸含有PEG被覆粉末の2剤型に置換する動機付けの存在を示す根拠にはなり得ない。 原告は,2剤型の発泡性化粧料において,第1剤を含水粘性組成物とし,第2剤を粉末等の固形物とすることが慣用技術であると主張しているが,原告が指摘する化粧料は発泡性化粧料の発明ではない。2剤を混合して炭酸ガスを発生させる用時混合型の化粧料の分野では,本件優先日前にA剤を含水粘性組成物とし,B剤を粉末等の固形物とする発明は存在していなかった。 2 素早く徹底的な攪拌操作が不便かつ煩わしいことについて(1) 原告は,引用発明では,アルギン酸ナトリウムの溶解濃度がゆっくりと上昇するがその粘度は飛躍的に上昇し,攪拌効率は急速に低下してしまうため,均一なパック剤を 作が不便かつ煩わしいことについて(1) 原告は,引用発明では,アルギン酸ナトリウムの溶解濃度がゆっくりと上昇するがその粘度は飛躍的に上昇し,攪拌効率は急速に低下してしまうため,均一なパック剤を調製するためには,素早く徹底的に攪拌する必要性が出てくるが,それが不便かつ煩わしいことは自明であり,現に,甲3文献にも同じ趣旨の記載があると主張する。 しかし,上記1(2)のとおり,アルギン酸ナトリウムを水に溶かすとダマを形成しやすいという問題点はポリエチレングリコール等のポリオールにアルギン酸ナトリウムを分散させるという手法によって解決可能であることが広く知られていたから,引用発明に接した当業者が「素早く徹底的に攪拌する」必要性や,それが不便かつ煩わしいことを認識するとはいえないし,甲1文 献にもそのような課題を示唆する記載はない。また,原告が主張する,引用発明において,アルギン酸ナトリウムの溶解濃度がゆっくりと上昇するが,一方で,その水溶液の粘度は飛躍的に上昇し,攪拌効率は急速に低下してしまうとの点も甲1文献には何ら記載がない。 (2) 原告は,甲3文献から「粉末成分と水とを混合して含水粘性組成物を用時調製することが不便かつ煩わしい」という一般的・抽象的な課題を抽出し,当該課題が引用発明にも当てはまると主張しているが,甲3文献の記載は,従来から広く知られていた粉末状アルギン酸塩類(アルギン酸ナトリウム)の分散困難性による水添加時の問題を記載したものに過ぎず,その記載を,それ以上に上位概念化することはできないし,ましてやかかる課題が引用発明にも及ぶなどといえるものではない。 (3) 原告は,引用発明においても均一溶解性が必須であるとの主張,及び,甲3文献から一般的な課題が抽出可能であるとの主張を前提にして,「時間的制約の存 用発明にも及ぶなどといえるものではない。 (3) 原告は,引用発明においても均一溶解性が必須であるとの主張,及び,甲3文献から一般的な課題が抽出可能であるとの主張を前提にして,「時間的制約の存在下における攪拌操作が不便かつ煩わしいという,甲3に記載の課題は,引用発明においても当然に存在する」と主張するが,上記のとおり,原告の主張は前提が誤っており,引用発明には「攪拌操作が煩わしい」との課題が存在するとはいえず,引用発明と甲2発明の間には課題の共通性はない。 3 以上によれば,本件発明1は当業者が容易に想到し得たものではない。また,これによれば,本件発明2~5,7についても容易想到性は認められない。 したがって,本件審決に誤りはない。 第5 当裁判所の判断 1 本件発明について(1) 特許請求の範囲の記載本件発明の特許請求の範囲の記載は,上記第2の2に記載のとおりである。 (2) 本件明細書の記載 本件明細書(甲51)には以下の記載がある。 【技術分野】【0001】 本発明は,水虫,虫さされ,アトピー性皮膚炎,貨幣状湿疹,乾皮症,脂漏性湿疹,蕁麻疹,痒疹,主婦湿疹,尋常性ざ瘡,膿痂疹,毛包炎,癰,せつ,蜂窩織炎,膿皮症,乾癬,魚鱗癬,掌蹠角化症,苔癬,粃糠疹,創傷,熱傷,き裂,びらん,凍瘡などの皮膚粘膜疾患もしくは皮膚粘膜障害に伴うかゆみ;褥創,創傷,熱湯,口角炎,口内炎,皮膚潰瘍,き裂,びらん,凍瘡,壊疽などの皮膚粘膜損傷;移植皮膚片,皮弁などの生着不全;歯肉炎,歯槽膿漏,義歯性潰瘍,黒色化歯肉,口内炎などの歯科疾患;閉塞性血栓血管炎,閉塞性動脈硬化症,糖尿病性末梢循環障害,下肢静脈瘤などの末梢循環障害に基づく皮膚潰瘍や冷感,しびれ感;慢性関節リウマチ,頸肩腕症候群,筋肉 瘍,黒色化歯肉,口内炎などの歯科疾患;閉塞性血栓血管炎,閉塞性動脈硬化症,糖尿病性末梢循環障害,下肢静脈瘤などの末梢循環障害に基づく皮膚潰瘍や冷感,しびれ感;慢性関節リウマチ,頸肩腕症候群,筋肉痛,関節痛,腰痛症などの筋骨格系疾患;神経痛,多発性神経炎,スモン病などの神経系疾患;乾癬,鶏眼,たこ,魚鱗癬,掌蹠角化症,苔癬,粃糠疹などの角化異常症;尋常性ざ瘡,膿痂疹,毛包炎,癰,せつ,蜂窩織炎,膿皮症,化膿性湿疹などの化膿性皮膚疾患;排便反射の減衰または喪失に基づく便秘;除毛後の再発毛抑制(むだ毛処理);そばかす,肌荒れ,肌のくすみ,肌の張りや肌の艶の衰え,髪の艶の衰えなどの皮膚や毛髪などの美容上の問題などを副作用をほとんどともなわずに治療あるいは改善でき,また所望する部位に使用すれば,その部位を痩せさせられる二酸化炭素含有粘性組成物に関する。 【背景技術】【0002】 痒みの治療に対して,局所療法として外用の抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤などが一般に使用される。これらは痒みが発生したときに使用され,一時的にある程度痒みを抑える。湿疹に伴う痒みに対しては外用の非ステロイド抗炎症剤やステロイド剤の使用が一般的であり,これらは炎症を抑えることにより痒みの発生を防ごうとするものである。 【0003】 しかしながら,外用の抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤はアトピー性皮膚炎,水虫や虫さされの痒みにはほとんど効果がない。外用の非ステロイド抗炎症剤やステロイド剤は,痒みに対する効果は弱く,即効性もない。また,ステロイド剤は副作用が強いため,使用が容易でない。 【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0004】 本発明は,水虫,虫さされ,アトピー性皮膚炎,貨幣状湿疹,乾皮症,脂漏性湿疹,蕁麻疹,痒疹,主婦湿疹,尋常性ざ ,使用が容易でない。 【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0004】 本発明は,水虫,虫さされ,アトピー性皮膚炎,貨幣状湿疹,乾皮症,脂漏性湿疹,蕁麻疹,痒疹,主婦湿疹,尋常性ざ瘡,膿痂疹,毛包炎,癰,せつ,蜂窩織炎,膿皮症,乾癬,魚鱗癬,掌蹠角化症,苔癬,粃糠疹,創傷,熱傷,き裂,びらん,凍瘡などの皮膚粘膜疾患もしくは皮膚粘膜障害に伴う痒みに有効な製剤とそれを用いる治療及び予防方法を提供することにある。 【0005】 また本発明は,褥創,創傷,熱傷,口角炎,口内炎,皮膚潰瘍,き裂,びらん,凍瘡,壊疽などの皮膚粘膜損傷;・・・そばかす,肌荒れ,肌のくすみ,肌の張りや肌の艶の衰え,髪の艶の衰えなどの皮膚や毛髪などの美容上の問題及び部分肥満に有効な製剤とそれを用いる予防及び治療方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】【0006】 本発明者らは鋭意研究を行った結果,二酸化炭素含有粘性組成物が,外用の抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤,非ステロイド抗炎症剤,ステロイド剤などが無効な痒みにも有効であることを発見し,更に該組成物が抗炎症作用や創傷治癒促進作用,美肌作用,部分肥満解消作用,経皮吸収促進作用なども有することを発見して本発明を完成した。 【0007】 即ち,本発明は,下記の項1~30に関する。 項1. 増粘剤の1種または2種以上を含む含水粘性組成物に気泡状の二酸化炭素を含有してなる二酸化炭素含有粘性組成物であって,増粘剤がア ラビアゴム,・・・アルギン酸ナトリウム,・・・からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする二酸化炭素含有粘性組成物。・・・項7. 二酸化炭素が酸と炭酸塩の反応により得られることを特徴とする,項1乃至6のいずれかに記載の二酸化炭素含有粘性組成物 れる少なくとも1種であることを特徴とする二酸化炭素含有粘性組成物。・・・項7. 二酸化炭素が酸と炭酸塩の反応により得られることを特徴とする,項1乃至6のいずれかに記載の二酸化炭素含有粘性組成物。・・・項9. 項1~8のいずれかに記載の二酸化炭素含有粘性組成物を有効成分とする医薬組成物。・・・項26. 項1~8のいずれかに記載の二酸化炭素含有粘性組成物を含む化粧料。・・・【0018】 本発明には,例えば以下のキットが含まれる。 1)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸とのキット;2)酸含有含水粘性組成物と炭酸塩とのキット;3)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒(細粒,粉末)剤とのキット;4)酸含有含水粘性組成物と炭酸塩の顆粒(細粒,粉末)剤とのキット;5)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸含有含水粘性組成物のキット;6)炭酸塩と酸の複合顆粒(細粒,粉末)剤と含水粘性組成物のキット;・・・【発明を実施するための形態】【0064】 実施例1~84 炭酸塩含有含水粘性組成物と酸との組み合わせよりなる二酸化炭素含有粘性組成物を表1~表7に示す。 【0065】 〔製造方法〕 増粘剤と精製水,炭酸塩を表1~表7のように組み合わせ,炭酸塩含有含水粘性組成物をあらかじめ調製する。酸は,固形の場合はそのまま,又は粉砕して,又は適当な溶媒に溶解又は分散させて,液体の場合はそのまま,又は適当な溶媒で希釈して用いる。炭酸塩含有含水粘性組成物と酸を混合し,二酸化炭素含有粘性組成物を得る。・・・【0066】 〔二酸化炭素含有粘性組成物の評価〕<発泡性> 炭酸塩含有含水粘性組成物50gと酸1gを直径5cm,高さ10cmのカップに入れ,その体積を測定する。これを10秒間に20 回攪拌混合し二酸化炭素含有粘性組成物を得る。攪拌混合1分 性> 炭酸塩含有含水粘性組成物50gと酸1gを直径5cm,高さ10cmのカップに入れ,その体積を測定する。これを10秒間に20 回攪拌混合し二酸化炭素含有粘性組成物を得る。攪拌混合1分後の該組成物の体積を測定し,攪拌混合前の体積からの増加率をパーセントで求め,評価基準1に従い発泡性を評価する。 <評価基準1>増加率発泡性70%以上 +++50%~70% ++30%~50% +30%以下 0体積の測定は,各々の測定時点での二酸化炭素含有粘性組成物の高さをカップに記し,該組成物を除去した後でそれらの高さまで水を入れ,それらの水の体積をメスシリンダーで測定する。 <気泡の持続性>炭酸塩含有含水粘性組成物50gと酸1gを直径5cm,高さ10cmのカップに入れ,10秒間に20回攪拌混合し二酸化炭素含有粘性組成物を得る。攪拌混合1分後の該組成物の体積を測定し,その2時間後の体積を測定して体積の減少率をパーセントで求め,評価基準2に従い,気泡の持続性を評価する。 <評価基準2>減少率気泡の持続性20%以下 +++20%~40% ++40%~60% +60%以上 0体積の測定は,各々の測定時点での二酸化炭素含有粘性組成物の高さをカップに記し,該組成物を除去した後でそれらの高さまで水を入れ,それ らの水の体積をメスシリンダーで測定する。 (3) 本件発明の特徴上記(2)によれば,本件発明の特徴は次のとおりと認められる。 ア技術分野本件発明は,皮膚粘膜疾患又は皮膚粘膜障害に伴うかゆみ,皮膚や毛髪等の美容上の問題等を,副作用をほとんど伴わずに治療又は改善でき,また所望する部位に使用すれば,その部位を痩せさせられる二酸化炭素含 本件発明は,皮膚粘膜疾患又は皮膚粘膜障害に伴うかゆみ,皮膚や毛髪等の美容上の問題等を,副作用をほとんど伴わずに治療又は改善でき,また所望する部位に使用すれば,その部位を痩せさせられる二酸化炭素含有粘性組成物に関する。(【0001】)イ背景技術かゆみの治療に対して,局所療法として外用の抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤などが一般に使用され,これらはかゆみが発生したときに使用され,一時的にある程度かゆみを抑える。湿疹に伴うかゆみに対しては外用の非ステロイド抗炎症剤やステロイド剤の使用が一般的であり,これらは炎症を抑えることによりかゆみの発生を防ごうとするものである。しかし,外用の抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤はアトピー性皮膚炎,水虫や虫さされのかゆみにはほとんど効果がなく,外用の非ステロイド抗炎症剤やステロイド剤は,かゆみに対する効果は弱く,即効性もない。また,ステロイド剤は副作用が強いため,使用が容易でない。(【0002】,【0003】)ウ発明が解決しようとする課題本件発明は,水虫,虫さされ,アトピー性皮膚炎等の皮膚粘膜疾患又は皮膚粘膜障害に伴うかゆみ,褥瘡,創傷等の皮膚粘膜損傷,皮膚や毛髪等の美容上の問題及び部分肥満に有効な製剤とそれを用いる予防及び治療方法を提供することを目的とする。(【0004】【0005】)エ課題を解決しようとするための手段本発明者らは,二酸化炭素含有粘性組成物が,外用の抗ヒスタミン剤や 抗アレルギー剤,非ステロイド抗炎症剤,ステロイド剤などが無効なかゆみにも有効であることを発見し,更に該組成物が抗炎症作用や創傷治癒促進作用,美肌作用,部分肥満解消作用,経皮吸収促進作用なども有することを発見して本件発明を完成した。本件発明は,増粘剤の1種又は2種以上を含む含水粘 とを発見し,更に該組成物が抗炎症作用や創傷治癒促進作用,美肌作用,部分肥満解消作用,経皮吸収促進作用なども有することを発見して本件発明を完成した。本件発明は,増粘剤の1種又は2種以上を含む含水粘性組成物に気泡状の二酸化炭素を含有してなる二酸化炭素含有粘性組成物であって,増粘剤がアルギン酸ナトリウムであることを特徴とする二酸化炭素含有粘性組成物であり,二酸化炭素が酸と炭酸塩の反応により得られることを特徴とする医薬組成物又は化粧料であり,以下のキットが含まれる。 炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒(細粒,粉末)剤とのキット;酸含有含水粘性組成物と炭酸塩の顆粒(細粒,粉末)剤とのキット;炭酸塩と酸の複合顆粒(細粒,粉末)剤と含水粘性組成物のキット(【0006】,【0007】,【0018】) 2 引用発明について(1) 甲1文献の記載甲1文献の特許請求の範囲の記載は,次のアのとおりであり,発明の詳細な説明にはイ~コのとおりの記載がある。 ア特許請求の範囲(1)酸性物質を水に溶解して得られる水溶液を第1剤とし,水溶性高分子及び/又は粘土鉱物と炭酸塩とを常温固型のポリエチレングリコールで被覆した固型物を第2剤とする用時混合型発泡性化粧料。 イ技術分野本発明は,炭酸ガスによる血行促進作用によって皮膚を賦活化させる,ガス保留性,経日安定性,官能特性及び皮膚安全性に優れた発泡性化粧料に関する。 ウ従来技術 血行促進などの目的で炭酸ガスを配合した化粧料が従来から提案されている。・・・しかし,これらの化粧料は,容器を耐圧性にしなくてはならない為,コストが高くなるという欠点を有していた。 エ発明の開示・・・後記特定組成の発泡性化粧料は,2剤型である為経日安定性に優れ,炭酸塩と水溶性高分子 化粧料は,容器を耐圧性にしなくてはならない為,コストが高くなるという欠点を有していた。 エ発明の開示・・・後記特定組成の発泡性化粧料は,2剤型である為経日安定性に優れ,炭酸塩と水溶性高分子をポリエチレングリコールで被覆してなる第2剤と酸性物質である第1剤を用時混合する際に,炭酸ガスの泡が徐々に発生すると共に水溶性高分子及び/又は粘土鉱物の粘性によって安定な泡を生成し,炭酸ガスの保留性が高まる事を見出し,本発明を完成するに至った。 オ発明の目的本発明の目的は,ガス保留性,経日安定性,官能特性等に優れた発泡性化粧料を提供することにある。 カ発明の構成即ち,本発明は,酸性物質を水に溶解して得られる水溶液を第1剤とし,水溶性高分子及び/又は粘土鉱物と炭酸塩とを常温固型のポリエチレングリコールで被覆した固型物を第2剤とする用時混合型発泡性化粧料である。 キ構成の具体的な説明本発明に於ける前記の酸性物質としては,水溶性のものが使用され,例えばギ酸,酢酸,プロピオン酸,酪酸,吉草酸等の直鎖脂肪酸;シュウ酸,マロン酸,コハク酸,グルタル酸,アジピン酸,ピメリン酸,フマル酸,マレイン酸,フタル酸,イソフタル酸,テレフタル酸等のジカルボル酸;・・・が挙げられる。本発明ではこれらの一種または二種以上が適用され,特にクエン酸及び酒石酸が好適である。・・・第2剤に使用される炭酸塩としては,常温で固型のものであって例えば炭酸水素ナトリウム,炭酸ナトリウム,・・・等が挙げられ,これらの一 種又は二種以上が適用される。特に本発明では,炭酸水素ナトリウムが好ましい。 第2剤中に占める炭酸塩の割合は,10.0~90.0wt%である。 10.0wt%より少ないと発泡性が十分でなく,90.0wt%を超すと泡の外観(キメ)やガス保 は,炭酸水素ナトリウムが好ましい。 第2剤中に占める炭酸塩の割合は,10.0~90.0wt%である。 10.0wt%より少ないと発泡性が十分でなく,90.0wt%を超すと泡の外観(キメ)やガス保留性が悪くなる。 第2剤に使用される水溶性高分子としては,天然高分子,半合成高分子及び合成高分子が適用される。 天然の高分子のうち,多糖類及びその誘導体としては,例えば,アルギン酸及びその塩類,・・・などが挙げられる。・・・第2剤中に占める水溶性高分子及び/又は粘土鉱物の割合は,1.0~50wt%である。1.0wt%より少ないと増粘性が十分でなく,50wt%を超すと,べたつき感が出たりして官能特性が劣る。 本発明に使用する常温で固型のポリエチレングリコールは分子量1000以上のもので通常分子量1000~10,000,好ましくは2000~6000のものが適用される。 第2剤中に占めるポリエチレングリコールは,5.0~50.0wt%である。5.0wt%より少ないと反応が早すぎる為,泡のもちが十分でなく,50.0wt%を超すと泡の発生が遅すぎる。 本発明の第2剤を調製するには,種々な方法が用いられるが,例えば,融点以上で融解したポリエチレングリコールの中へ水溶性高分子と炭酸塩を加え冷却する事による練合造粒法や水溶性高分子と炭酸塩にポリエチレングリコール水溶液を噴霧し,水を蒸散さす流動造粒法などが挙げられる。 この様にして得られた第2剤の粒径は0.01~1mmである。0.01mmより小さいと反応が早すぎ,1mmより大きいと使用時第2剤が異物感として感じられる為好ましくない。 第1剤と第2剤の使用割合は,重量比で100:1~1:1である。特 に反応後の混合液がpH4.5~6.5になる様に第1剤と第2剤を混合する事が好ましい。 感じられる為好ましくない。 第1剤と第2剤の使用割合は,重量比で100:1~1:1である。特 に反応後の混合液がpH4.5~6.5になる様に第1剤と第2剤を混合する事が好ましい。 発泡性化粧料を使用するには,第1剤を容器に入れ,第2剤を加え,数十秒間攪拌した後適宜使用する。 本発明の目的を達成する範囲内で香料,着色剤,防腐剤,界面活性剤,油性成分などを適宜配合する事が出来る。 また,当該発泡性化粧料は,ローション,エッセンス,ミルク,パック,ソープ等に適用する事が出来る。 ク実施例以下実施例及び比較例の記載にて本発明を詳細に説明する。 尚,実施例に記載する,発泡性試験,経日安定性試験,ガス保留性試験,官能特性及び皮フ安全性試験の各方法は下記の如くである。 (1) 発泡性試験試料5gを透明ガラス製シリンダー(直径5cm,高さ50cm)に入れ常温にてタッチミキサーで30秒間振盪混和し,1分後のあわの高さを測定する。 泡の高さ発泡性30cm以上 | ◎30~20cm | ○20~5cm | △5cm未満 | ×(2) 経日安定性試験1剤,2剤の試料を各々密封しない状態で45℃1ケ月間保存した後,再度発泡性試験を行なう。 45℃1ケ月後の発泡性/試作直後の発泡性経日安定性 0.9以上 | ◎0.8~0.9 | ○0.7~0.8 | △0.7未満 | ×(3) ガス保留性試験試料5gを透明ガラス製シリンダー(直径5cm,高さ50cm)に入れ常温にてタッチミキサーで30秒間振盪混和し,30分後のあわの高さを測定する。 泡の高 | ×(3) ガス保留性試験試料5gを透明ガラス製シリンダー(直径5cm,高さ50cm)に入れ常温にてタッチミキサーで30秒間振盪混和し,30分後のあわの高さを測定する。 泡の高さガス保留性25cm以上 | ◎25~15cm | ○15~5cm | △5cm未満 | ×(3)(判決注:原文のまま) 官能特性及び皮フ安全性試験試料を20名の女性被検者が評価し,(イ)泡の外観(キメ) (ロ)べたつき感 (ハ)粘性 (ニ)皮フ安全性に関して評価した。試験結果は各項に対して(イ)泡の外観(キメ)が良い (ロ)べたつき感が少ない (ハ)粘性が丁度良い (ニ)皮フ刺激を感じる,と回答した被検者の人数で示した。 実施例1~11〔発泡性エッセンス〕第1表の組成の如く,発泡性エッセンスを調製し,前記の諸試験を実施した。 〔調製方法〕<第1剤>水にクエン酸を加えて攪拌し,均一に混和する。尚,クエン酸が溶け難い場合は適宜加熱する。 <第2剤>約80℃にて,ポリエチレングリコール(分子量4000)を溶解し,熱時,炭酸水素ナトリウム,アルギン酸ナトリウムを加え,均一に混合した後室温まで冷却し,ポリエチレングリコールで被覆した粉末とした。 〔特性〕第1表に示す如く,本発明の発泡性エッセンスは,発泡性,ガス保留性,経日安定性に優れ,また,官能特性等諸試験の総てに優れており,本発明の効果は,明らかであった。 <第1表>別紙甲1文献図表目録のとおりケ比較例(比較例1~3)〔発泡性エッセンス〕第2表の組成の如く発泡性エッセンスを調製し,前記諸試験を実施し,その特性を下段に示した。 〔調製方法〕<第1剤>(比較例1~3)水にクエン酸を加え 例1~3)〔発泡性エッセンス〕第2表の組成の如く発泡性エッセンスを調製し,前記諸試験を実施し,その特性を下段に示した。 〔調製方法〕<第1剤>(比較例1~3)水にクエン酸を加えて攪拌し,均一に混合溶解する。尚,クエン酸が溶け難い場合は,適宜加温する。 <第2剤>(比較例1)常温でポリエチレングリコール(分子量4000),炭酸水素ナトリウム,アルギン酸ナトリウムを均一に混和し,粉末とした。 (比較例2)常温で炭酸水素ナトリウム,アルギン酸ナトリウムを均一に混和し粉末とした。 (比較例3)約80℃にてポリエチレングリコール(分子量4000)を溶解し,熱時,炭酸水素ナトリウムを加え,均一に混合した後,室温まで冷却し,粉末とした。 〔特性〕第2表に示す如く,第2剤調製時,炭酸水素ナトリウム及びアルギン酸ナトリウムをポリエチレングリコールで被覆することなく単に混和しただけの比較例1は,実施例2に比べ発泡性はまずまずであったがガス保留性に著しく劣り,経日安定性にも劣った。 ポリエチレングリコールを用いなかった比較例2も同様の特性を示した。 第2剤に水溶性高分子を配合しなかった比較例3は,発泡性,経日安定性は良好であったがガス保留性に著しく劣り,泡の外観(キメ)も悪く粘度も不足していた。 <第2表> 別紙甲1文献図表目録のとおり比較例4~10〔1剤式発泡エッセンス〕第3表の組成の如く,用時,水に溶解して使用する1剤式発泡エッセンスを調製し,用時に10倍量(重量)の水と混合した。前記諸試験を実施し,その特性を下段に示した。 〔調製方法〕(比較例4,5)約80℃にてポリエチレングリコール(分子量4000)を溶解し,熱時,炭酸水素ナトリウム,クエン酸,アルギン酸ナトリウムを 験を実施し,その特性を下段に示した。 〔調製方法〕(比較例4,5)約80℃にてポリエチレングリコール(分子量4000)を溶解し,熱時,炭酸水素ナトリウム,クエン酸,アルギン酸ナトリウムを加え,均一に混合した後,室温まで冷却し粉末とした。 (比較例6) 約80℃にてポリエチレングリコールを溶解し,熱時,炭酸水素ナトリウム,クエン酸を加え均一に混和した後室温まで冷却し,粉末とした。 (比較例7)常温にて,炭酸水素ナトリウム,クエン酸,アルギン酸ナトリウムを均一に混和した後粉末とした。 (比較例8)常温にて,炭酸水素ナトリウム,クエン酸,アルギン酸ナトリウム,ポリエチレングリコール(分子量4000)を均一に混和し,粉末とした。 (比較例9)約80℃にてポリエチレングリコール(分子量4000)を溶解し,熱時,アルギン酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウムを加え均一に混合した後,室温まで冷却し,クエン酸を加え均一に混和し,粉末とした。 (比較例10)(1) 約80℃にてポリエチレングリコール(分子量4000)の一部を溶解し,熱時アルギン酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウムを加え均一に混合した後,室温まで冷却し,粉末とした。 (2) 約80℃にてポリエチレングリコールの残部を溶解し,熱時クエン酸を加えて均一に混合した後,室温まで冷却し粉末とした。 (1)に(2)を加え均一に混和した。 〔特性〕第3表に示す如く,実施例2より水を除いた組成とほぼ同一な組成である比較例4,8~10は発泡性,ガス保留性試験においては実施例2同様良好であったが,経日安定性に著しく劣った。 配合比率を変えた,比較例5及びアルギン酸ナトリウムをのぞいた比較例6,ポリエチレングリコールを除いた比較例7でも経日安定性の改 例2同様良好であったが,経日安定性に著しく劣った。 配合比率を変えた,比較例5及びアルギン酸ナトリウムをのぞいた比較例6,ポリエチレングリコールを除いた比較例7でも経日安定性の改 善にはいたらなかった。 <第3表>別紙甲1文献図表目録のとおり・・・コ発明の効果以上,記載の如く,本発明の発泡性化粧料は,発泡性,ガス保留性,経日安定性に優れ,また,官能特性及び皮フ安全性においても優れた,皮フ化粧料を提供することは明らかである。 (2) 以上によれば,甲1文献には,前記第2の3(2)のとおりの引用発明が記載され,引用発明と本件発明1-1の一致点及び相違点は,同(3)記載の[一致点]及び[相違点1]のとおりであることが認められる。 3 取消事由(相違点1に関する容易想到性判断の誤り)について(1) 本件優先日当時の文献の記載についてア甲2文献には次の記載がある。 (ア) 本発明はアルギン酸水溶性塩類およびこれと反応しうる二価以上の金属塩類を配合した使用性の良好な反応タイプのパック化粧料に関する(【0001】)。 (イ) 従来からパック化粧料には使用後に洗いおとすタイプおよび剥がすタイプの二つがある。……剥がすタイプの基剤は,ゼリー状またはペースト状であって皮膚に塗布し乾燥させて皮膜を形成させ,その後,手で剥がされるものである。ところで,剥がすタイプに属するものの一つにアルギン酸塩類と該塩類と反応する二価以上の金属塩類とを配合した粉末を使用時に水と混合してペースト状とし,パック化粧料としたものが知られている(特開昭52-10426号公報,特開昭58-39608号公報)。このパック化粧料は,従来のように皮膚上での皮膜形成が,水分の蒸発・乾燥によるものとは異 状とし,パック化粧料としたものが知られている(特開昭52-10426号公報,特開昭58-39608号公報)。このパック化粧料は,従来のように皮膚上での皮膜形成が,水分の蒸発・乾燥によるものとは異なり,配合物同士の反応によって水分を含んだまま行われるので肌に対する使用感が良く,従来のものより, 乾燥時間が早いという特徴がある。 しかしながら,上記のアルギン酸塩類を含む粉末状のパック化粧料は,次のような問題点があった。 (1)水を加えてかきまぜる際,ダマになりやすく,顔に塗布する際,均一な膜になりにくい。これは,アルギン酸水溶性塩類が一般に水に溶けにくいためである。・・・(5)反応タイプのため,保管時には水分透過の少ない外装とするなど,経時の保管に注意を必要とする。 本発明は,このような従来の課題を解決して,使用性が良好で,かつ経時的に安定な反応タイプのパック化粧料を提供することを目的とする。 (【0002】,【0003】)(ウ) 本願発明者は,水とまざりにくい原因として,アルギン酸水溶性塩類の溶解性が挙げられることから,アルギン酸塩類についてはあらかじめ水に溶解させてゲル状とさせ,また反応が進行しないように,ゲル状パーツと粉末パーツの2パーツに分けることにより,使用性が良好で,経時で安定なパック化粧料が得られることを見出し,本発明に至った。すなわち,本発明は,アルギン酸水溶性塩類を含有するゲル状パーツからなる第一剤と,前記アルギン酸水溶性塩類と反応しうる二価以上の金属塩類および前記反応の遅延剤を含有する粉末パーツからなる第二剤との二剤からなることを特徴とするパック化粧料である。(【0004】)本発明のパック化粧料は,洗い落とす面倒のない,剥がすタイプのものでありながら,乾燥時間が短く,しかも皮膚に適度 からなる第二剤との二剤からなることを特徴とするパック化粧料である。(【0004】)本発明のパック化粧料は,洗い落とす面倒のない,剥がすタイプのものでありながら,乾燥時間が短く,しかも皮膚に適度な緊張感があり,剥がすとき肌に残りにくく,とりやすい特色を有するほか,使用性が良好で,経時的にも安定であるという特徴がある。本発明のパック化粧料にあっては,使用直前にゲル状パーツと粉末パーツを混合する。この際,ゲル状パーツに含まれるアルギン酸水溶性塩類(例えばアルギン酸ナト リウム)と,粉末パーツに含まれる二価以上の金属塩(例えば硫酸カルシウム)とが水の存在下で化学式1に示すような硬化反応を起こして皮膚形成能のあるアルギン酸金属塩(例えばアルギン酸カルシウム)となり,この結果,弾力性のある凝固体が与えられる。その時,遅延剤(例えばリン酸三ナトリウム)の働きにより化学式2に示すような遅延反応も同時に起こって上記硬化反応の急激な進行が阻止される。 硬化反応:Na・nAlg+n/2CaSO4→n/2Na2SO4+Ca・n/2Alg(【0004】~【0006】)(エ) ゲル状パーツにはアルギン酸水溶性塩類のほか,保湿剤を配合することができる。保湿剤としてはダイナマイトグリセリン,1,3-ブチレングリコール,ジプロピレングリコール,プロピレングリコール,マビット,ソルビット,ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,グルコースおよびその誘導体,ムコ多糖等が挙げられる。(【0009】)イ甲3文献には次の記載がある(甲3,弁論の全趣旨)。 (ア) この発明は,肌への適用が有用な化粧組成物に関し,特に,肌に使用及び適用した際に使用が容易であるのみならず改善された特性を有する肌の処置に適用可能な新しく新規な化粧 甲3,弁論の全趣旨)。 (ア) この発明は,肌への適用が有用な化粧組成物に関し,特に,肌に使用及び適用した際に使用が容易であるのみならず改善された特性を有する肌の処置に適用可能な新しく新規な化粧組成物に関する。(1欄11~16行目)(イ) 最近,パウダー形状の水溶性アルギン酸塩とカルシウム塩との組み合わせを含むゲル形成組成物を水に添加することにより,丈夫で弾力のあるゲル形態の美容マスクが得られている。配合物が水と混合された後,形成されたペーストは肌に適用され,短時間で弾性の可塑性ゲル構造に凝固する。(1欄22~29行目)(ウ) このような組成物は有効であるが,一定の不利益を被る。ゲル形成組成物が固体微細パウダーの形態であるため,湿気の吸収を防ぐためにシ ールされた封筒に包装しなければならない。さらにその上,所望のゲル製造のために,封筒の内容物を水と混合しなければならない。水中への均一な分散を容易にするために組成物は極めて細かい粒子サイズのパウダー形状であるにも関わらず,パウダーを滑らかなペーストに変えるためにはとても急速で徹底的な混合が必須であり,多くの用途においてこの操作は不便かつ煩わしい。(1欄39~49行)(エ) 特許請求の範囲,請求項1「1.水と混合されたとき,低速でコントロールされた速度で,丈夫で弾力のあるフィルムを形成するために適用される非水性ゲル形成システムであって,次のものを含んでいるもの,(A)クエン酸カルシウム,硫酸カルシウム,リン酸三カルシウム,リン酸二カルシウムからなる群から選ばれる,部分的に水溶性のカルシウム塩約1~12重量部;(B)アルギン酸のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩からなる群から選ばれるアルギン酸塩約4~50重量部;及び(C)以下の群から選ばれる非水 部分的に水溶性のカルシウム塩約1~12重量部;(B)アルギン酸のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩からなる群から選ばれるアルギン酸塩約4~50重量部;及び(C)以下の群から選ばれる非水性不活性液体ビヒクル約20~85重量部(a)エチレングリコール,プロピレングリコール,ヘキシレングリコール及びグリセリン;(b)ポリオキシエチレングリコール;(c)ラウリルアルコールエトキシレート;(d)ポリエチレングリコールラウレート及びポリエチレングリコールパルミテート;(e)ノニルフェノキシポリオキシエチレン;及び(f)水分散性液体システムであって以下の混合物を含むもの(a’)ラウリルアルコールエトキシレート,オレイルアルコールエ トキシレート,ラノリン脂肪アルコールエトキシレート,ポリエチレングリコールモノラウレート,ポリエチレングリコールモノオレエート及びノニルフェノキシポリオキシエチレンからなる群から選ばれる湿潤剤;(b’)鉱油;(c’)ステアリン酸イソプロピル,ミリスチン酸イソプロピルからなる群から選ばれる脂肪酸エステル」(6欄14~45行)(2) 容易想到性についてア引用発明は,「Arg・炭酸塩含有PEG被覆粉末1」と「酸含有PEG被覆粉末2」の混合物を,用時に水と組み合わせるものであり,本件発明1-1は「Arg・炭酸塩含有含水粘性組成物」と「酸含有粉末剤等」の組み合わせということができるから,相違点1に係る構成の容易想到性に関し,引用発明において,「Arg・炭酸塩含有PEG被覆粉末1」のみをあらかじめ水に溶解させ,「Arg・炭酸塩含有含水粘性組成物」とすることを当業者が容易に想到することができるかについてまず検討する。 イ甲1文献の Arg・炭酸塩含有PEG被覆粉末1」のみをあらかじめ水に溶解させ,「Arg・炭酸塩含有含水粘性組成物」とすることを当業者が容易に想到することができるかについてまず検討する。 イ甲1文献の「比較例4,8~10は発泡性,ガス保留性試験においては実施例2同様良好であったが,経日安定性に著しく劣った。」(上記2(1)ケ)との記載から,引用発明は経日安定性に問題があることが理解され,当業者は,経日安定性の改善を課題として見いだすといえる。 そして,① 甲1文献に「後記特定組成の発泡性化粧料は,2剤型である為経日安定性に優れ,」(同エ)との記載があり,経日安定性試験の結果が◎又は○である実施例1~11(第1表)はクエン酸と水からなる第1剤とArg・炭酸塩含有PEG被覆粉末である第2剤の2剤型の構成であること(同ク),② 経日安定性が○である比較例3(第2表)は同様の第1剤と炭酸水素ナトリウムのみをPEGで被覆した粉末の2剤型の構成であること(同ケ)から,炭酸塩と酸とを2剤に分ければ経日安定性が向上 すること,及び,酸を水溶液とし,炭酸塩をPEGで被覆すればアルギン酸ナトリウムが存在せずとも経日安定性は十分となることが理解できる。 そうすると,これらの甲1文献に開示された事項に基づき,引用発明の経日安定性を改善しようとした場合,炭酸塩と酸との反応で経日安定性が低下することを避けるため,引用発明において,「Arg・炭酸塩含有PEG被覆粉末1+酸含有PEG被覆粉末2の混合物」という構成を,「Arg・炭酸塩含有PEG被覆粉末1」と「酸含有PEG被覆粉末2」との2剤に分けることは,当業者であれば容易に想到するといえる。 このように,甲1文献の記載から,経日安定性の改善のために引用発明1の構成を2剤に変更するという解決手段を読み取れる EG被覆粉末2」との2剤に分けることは,当業者であれば容易に想到するといえる。 このように,甲1文献の記載から,経日安定性の改善のために引用発明1の構成を2剤に変更するという解決手段を読み取れるにもかかわらず,さらに,このように分けた2剤のうちの一方である,「Arg・炭酸塩含有PEG被覆粉末1」をあらかじめ水に溶解させて「Arg・炭酸塩含有含水粘性組成物」に置き換える動機付けは見当たらない。 ウ以上によれば,本件発明1について,当業者が,引用発明の「Arg・炭酸塩含有PEG被覆粉末1」を「Arg・炭酸塩含有含水粘性組成物」に置き換えることを容易に想到することができたとは認められない。 また,以上によれば,本件発明2~5,7についても,同様に,相違点に係る構成を容易に想到することができたとはいえない。 (3) 原告の主張についてアダマ形成問題について原告は,アルギン酸ナトリウムを水に溶解する際にはダマ形成問題があり,また,酸と炭酸塩の反応がアルギン酸の水全体に対する溶解よりも速く発生するため,当業者であれば,引用発明において,水溶液の粘性が高まる前に二酸化炭素の気泡が崩壊してしまうという事態を防止するため,水に事前にアルギン酸ナトリウムを溶解させて粘度を高めておくという発想に至ることは容易であることを主張し,また,経日安定性,気泡状の二 酸化炭素の安定化効果及び閉じ込め効果を向上させることを目的として,その剤型をアルギン酸ナトリウムと炭酸塩を含有する含水粘性組成物と,酸含有PEG被覆粉末の2剤型に置換することの十分な動機付けもあると主張する。 (ア) このように,原告は,引用発明について,① ダマ形成問題,② 「気泡状の二酸化炭素の持続性」ないし「気泡状の二酸化炭素の安定化効果」の向上,③ することの十分な動機付けもあると主張する。 (ア) このように,原告は,引用発明について,① ダマ形成問題,② 「気泡状の二酸化炭素の持続性」ないし「気泡状の二酸化炭素の安定化効果」の向上,③ 「閉じ込め効果の向上」及び④ 経日安定性の向上の課題があることを主張するから,当業者がこのような課題を見いだすといえるかを検討する。 a このうち,甲1文献には引用発明について④の課題があることが記載されているものの,当該課題の解決のために「Arg・炭酸塩含有PEG被覆粉末1」を「Arg・炭酸塩含有含水粘性組成物」に置き換えることの動機付けがないことは,上記(2)イに説示したとおりである。 b 他方,引用発明に上記①~③の課題があることについては甲1文献には記載も示唆もない。 一般に,ダマとは粉末の水和が早いことにより起こり,粉末の回りを水分子が取り囲んで塊となり,粉末の内部まで水が浸透していかず,粉末が均一に水に分散しない状態をいうと解され,アルギン酸ナトリウムを水に溶解する際にダマが生じる問題があることが認められる(甲2,30~34)。しかし,甲1文献にはこのような問題について記載も示唆もない。そして,引用発明のように炭酸塩とアルギン酸ナトリウムの混合物がPEGで被覆された粉末においては,アルギン酸ナトリウムは少しずつ水に溶解することが容易に理解され,このような炭酸塩とアルギン酸ナトリウムとの混合物がPEGで被覆された粉末と,被覆のないアルギン酸ナトリウム粉末では水和のし易さが異なるから,引用発明にアルギン酸ナトリウムを水に溶解する際の一般的な 問題が同等に当てはまるということはできず,当業者が,引用発明につきダマ形成問題の課題を見いだすとは認められない。 また,原告は,酸と炭酸塩の反応がアルギン酸の水全 解する際の一般的な 問題が同等に当てはまるということはできず,当業者が,引用発明につきダマ形成問題の課題を見いだすとは認められない。 また,原告は,酸と炭酸塩の反応がアルギン酸の水全体に対する溶解よりも速く発生することを指摘するが,このような問題は甲1文献に記載がなく,かえって,ガス保留性は◎という引用発明の試験結果に照らせば,引用発明の構成について,当業者が,気泡状の二酸化炭素の持続性ないし気泡状の二酸化炭素の安定化効果の向上,閉じ込め効果の向上という課題があると解するとはいえない。 c 以上に照らせば,原告の主張は採用できず,当業者が引用発明について,上記①~③の課題を認識するとは認められない。 (イ) 以上のとおり,引用発明において,原告の主張する①~③の課題を見いだすことは認められないし,④の課題を解決するために,「Arg・炭酸塩含有PEG被覆粉末1」をあらかじめ水に溶解して「Arg・炭酸塩含有含水粘性組成物」とすることの動機付けがあるということはできない。 よって,原告の主張は採用できない。 イ攪拌が不便かつ煩わしいという問題について原告は,攪拌により反応する2剤を分散させて該反応に遅れることなく均一な混合体を調製するという観点からも,また,アルギン酸ナトリウムのダマ形成問題の観点からも,均一なパック剤調製のために素早く徹底的な攪拌が必要となり,その結果,かかる操作が不便かつ煩わしいという課題があること,その課題の解決のために,引用発明と甲2文献などに記載されたアルギン酸塩の事前溶解の技術を組み合わせる動機付けが存在することを主張する。 (ア) 甲1文献には原告の主張する課題は記載も示唆もされていないところ,原告は,甲3文献に,均一なパック剤調製のために素早く徹底的な攪拌が必要 わせる動機付けが存在することを主張する。 (ア) 甲1文献には原告の主張する課題は記載も示唆もされていないところ,原告は,甲3文献に,均一なパック剤調製のために素早く徹底的な攪拌が必要となり,その結果,かかる操作が不便かつ煩わしいという一般的 な課題が開示されていると主張する。 しかし,甲3文献は,パウダー形状のアルギン酸水溶性塩とカルシウム塩の組み合わせを含むゲル形成組成物について急速で徹底的な攪拌が必須であることを指摘したのにとどまるから,直ちにこれを一般化して,カルシウム塩をその成分として含まない引用発明にも上記の指摘が妥当するとは限らず,原告の主張は採用できない。 (イ) また,原告は,アルギン酸ナトリウムを水に溶解する際にその濃度の上昇により粘度が対数的に上昇することを根拠に,引用発明において,アルギン酸ナトリウムの溶解による粘度の増加と炭酸塩と酸の反応による二酸化炭素の発生という競争反応が存在するから,少しでも多くの二酸化炭素を取り込むために,炭酸塩と酸成分を均一に分散させ,アルギン酸ナトリウムの均一な含水粘性組成物を速やかに調製することが必要であり,そのために素早く徹底的な攪拌操作をするのが煩わしいという課題があると主張する。 しかし,このような問題は甲1文献に記載がなく,かえって,発泡性及びガス保留性は◎という引用発明の試験結果に照らせば,引用発明の構成において,少しでも多くの二酸化炭素を取り込むために,素早く徹底的な攪拌操作をする必要があり,これが煩わしいという課題があるとは解し得ない。 (ウ) さらに,原告は,ダマが形成されるという問題の観点からも,均一なパック剤調製のために素早く徹底的な攪拌が必要となり,その結果,かかる操作が不便かつ煩わしいという課題があると主張す (ウ) さらに,原告は,ダマが形成されるという問題の観点からも,均一なパック剤調製のために素早く徹底的な攪拌が必要となり,その結果,かかる操作が不便かつ煩わしいという課題があると主張する。 しかし,引用発明において,ダマが形成されるという問題が生じると理解することはできないのは上記ア(ア)に説示したとおりである。なお,原告は,PEGの被覆によりダマが形成されるという問題が解消しないことの根拠として甲33文献を挙げるが,原告の指摘する「主成分(マ マコを生じ易い糊料)の特性が阻害されたり,糊液粘度も変動する等の問題点を抱えており,ママコの形成方法ないし消失法として効果的でなかった」との記載は,PEGの被膜によりママコが消失したとしても,異なる問題が生じ得ることを示したものと解され,引用発明においてダマ形成問題があることの根拠とはならないのは明らかであるから,原告の主張は採用できない。 (エ) 以上のとおり,引用発明において,当業者が原告の主張する課題を見いだすとは認められないから,アルギン酸塩の事前溶解の技術を組み合わせることの動機付けがあるということはできず,原告の主張は採用できない。 (4) 以上によれば,本件発明1~5,7について容易想到性が認められないとした本件審決に誤りはなく,取消事由は理由がない。 4 以上のとおり,原告が主張する取消事由は理由がないから,原告の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官鶴岡稔彦 裁判官高橋 彩 裁判官 鶴岡稔彦 裁判官高橋彩 裁判官寺田利彦 (別紙)甲1文献図表目録 以上
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