昭和31(う)1858 銃砲刀剣類等所持取締令違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和31年12月25日 東京高等裁判所 棄却
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【DRY-RUN】主    文      本件控訴を棄却する。          理    由  本件控訴の趣意は末尾添附の弁護人井本良光提出の控訴趣意書記載のとおりであ るからここにこれを引用する。これに対する当裁判

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判決文本文4,232 文字)

主文本件控訴を棄却する。 理由本件控訴の趣意は末尾添附の弁護人井本良光提出の控訴趣意書記載のとおりであるからここにこれを引用する。これに対する当裁判所の判断は左のとおりである。 論旨第一点について。 原判決は所論も指摘するとおり東京都台東区a界隈を縄張とする博徒A一家の配下たる被告人が、元B組配下のC一家の者が賭場における怨みから昭和三十年六月十七日午前零時三十分頃A一家の代貸台東区ab町c丁目d番地D方に殴り込みをかけて来た際、これをよう撃するため、法定の除外事由がないのに、右D方に保管されてあつた刃渡四十五糎六粍の日本刀一振を持ち出し、右時刻頃これを同町同番地E方において携帯して所持したものと判示し銃砲刀剣類等所持取締令第二十六条第二条を適用しているところ、同令の所持とはある物件に対する保管について、支配関係を開始しこれを持続する行為をいうものであることは所論のとおりである。 所論は支配関係の持続したことを示すためには、その始期終期を明らかにするか、若しくは少くともその時間的継続を判文上に示す要があると主張する。しかし支配関係が持続しておればこそ初めて所持といい得るものであり、日本刀を所持したというからにはそれで右日本刀に対する支配関係の持続したことがおのずから判示されているものといわねばならない。 又もし時間的にこれを判示しようとしても、所持が短時間で終つてしまつた場合など、何時何分に初まり何時何分に終つたとすべきか、正確にこれを判示することは極めて困難で、殆んど不可能に近く、かくの如き判示を必要とする理由があるとは認められない。本件に於ては原判示によれば前記のとおり被告人がD方に保管してあつた日本刀一振を持ち出し、E方において携帯したものであり、場所的にその支配関係が持続した 判示を必要とする理由があるとは認められない。本件に於ては原判示によれば前記のとおり被告人がD方に保管してあつた日本刀一振を持ち出し、E方において携帯したものであり、場所的にその支配関係が持続した状況が明示されているから所論のような理由不備の違法があるとはいえない。 なお又原判示の携帯とは所持の一態様を示していること判文上明らかである。なるほど銃砲刀剣類等所持取締令には所持と携帯とを区別した規定の存することは所論のとおりであるが、それら規定はいずれも携帯以外の所持は適法でありこれによる法益侵害は存しないことを前提とし、所持の一態様たる携帯のみを処罰したものである。従つてこれらの規定を適用する場合には所持の事実と区別し、所持よりは狭い観念である携帯の事実を判示すべきであるが、本件の場合の如く、被告人の所持した日本刀一振(東京地方裁判所昭和三十一年押第三十号の五)につき同令第七条の登録を受けていてもなお所持罪が成立すること後記のとおりであるにおいては、特に携帯と所持を区別する要はなく、寧ろ原判決が「携帯して所持し」と判示したことは所持の態様を明示したものというべきで、所論の如き違法はない。それ故論旨は理由がない。 同第二点について。 たとえ数分間位の短時間とはいえ、日本刀をその保管場所から持ち出し、保管場所と同番地に属するとはいつても保管場所とは別個の家屋にこれを持参し、同所においてこれを携帯した所為はその間右日本刀に対する支配関係が持続されていること明白で、銃砲刀剣類等所持取締令第二条に違反する所為であることはいうまでもない。被告人の本件所為がC一家が殴り込みをかけてくるかも判らないと予想された時期であり、しかも突如として侵入した者があり、Dが「大変だ」との声を聞いたからであつても、同令の所持というに該当しないものとすべき理由がない 為がC一家が殴り込みをかけてくるかも判らないと予想された時期であり、しかも突如として侵入した者があり、Dが「大変だ」との声を聞いたからであつても、同令の所持というに該当しないものとすべき理由がない。なるほど右日本刀はFの所有にかかり、同人がC一家の襲撃に備えD方押入に保管しこれを所持したものである。しかしこの事は被告人が右日本刀を持ち出し、E方に於て携帯しこれを所持していた事実と相容れないものではない。言いかえれば前者の所持が認められるからといつて、後者即ち被告人の所持が否定される理由にならない。所論引用の判例は物件の所有者がこれを他に託した場合もその受託者を通じ間接にその物の保存につき支配関係を持続し得る場合を肯定し、その所持を失わないものと認めた趣旨で本件における日本刀所有者たるFの場合における判示をしているに止まり、現実に日本刀を携帯した被告人の所持を否定したものではない。原判決は正当に被告人の所為が銃砲刀剣類等所持取締令第二条の所持に該当する事実を認定し、同令第二十六条をもつて処断したもので、所論の如き事実の誤認も法令適用の誤もなく、論旨は理由がない。 同第三点について。 記録に徴するに本件日本刀が銃砲刀剣類登録証第四四七〇八号による登録を受けたものであることを窺い得ないではない。しかし右日本刀が銃砲刀剣類等所持取締令第七条所定の登録を受けたものである事によつて、被告人の所為が同令第二条違反に問うことが許されないものと解すべきではない。同令第七条は美術品として価値ある刀剣類についての登録を認め、この登録を受けたものについては同令第二条が原則的にその所持を違法としたに拘らず、特にその除外事由を認め所持を適法としたのである。そして右第二条が「銃砲又は刀剣類は、所持することができない。 但し、左の各号の一に該当する場合はこの限りで 条が原則的にその所持を違法としたに拘らず、特にその除外事由を認め所持を適法としたのである。そして右第二条が「銃砲又は刀剣類は、所持することができない。 但し、左の各号の一に該当する場合はこの限りでない」と規定しその第四号に「第七条の規定による登録を受けたものを所持なるとき」と定めているので、その立言方法において同条第三号とは異るし、又同令により廃止された銃砲等所持禁止令の立言とも異るものがあるが、その趣旨たるや刀剣類の愛好者が美術品として価値ある刀剣類を所蔵し、日常これを座右におき絶えず鑑賞せんと願望することもあろうしその他これを手離すに忍びざる事情ありと認められる場合に、その所持を適法なものとするにあり、而してこのような場合所持人は美術品としてこれを尊重愛玩するから、これにその所持を許しても公共の秩序を維持する上に危険を及ぼすが如きは絶無と認められるからに外ならない。それ故何人がいかなる目的をもつてこれを所持しても、同令第七条の登録を受けさえすれば、すべて適法な所持であるとしたものではなく、これを所持する人やその時、所によつては所持は許されないものといわなければならない。この事は同令第七条が「美術品又は骨とう品として価値ある火なわ銃式火器又は美術品として価値ある刀剣類の登録をするものとする」と規定したこと、同令第十二条が、「登録を受けた銃砲又は刀剣類を譲り受け若しくは相続し、又はこれらの貸付若しくは保管の委託をなした者は、所定の手続により、すみやかにその旨を文化財保護委員会に届け出なければならない。貸付又は保管の委託をしなくなつたときも同様とする」と規定し、登録を受けてもその所有者又は保管者に変動があればそれを届け出させることによつて所有者保管者が不明のままに放置することなからしめていること及び同令第十六条が「公安委員会は、第三条 とする」と規定し、登録を受けてもその所有者又は保管者に変動があればそれを届け出させることによつて所有者保管者が不明のままに放置することなからしめていること及び同令第十六条が「公安委員会は、第三条の許可又は第七条の登録を受けた銃砲及び刀剣類の授受、運搬及び携帯が公共の秩序を維持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合においては、一定の公告式による告示をもつて、地域及び期間を定めてこれらの行為を禁止し、又は制限することができる」とし更に同条第二項が「公安委員会は、前項の告示をした場合においては、命令で定める手続により、同項に規定する銃砲又は刀剣類を仮領置することができる」と規定したことをみると、登録制度をとり、所持を適法とした趣旨に反するときは同令第二条の一般原則に帰りその所持は許されないとの解釈をとらざる<要旨>を得ない。本件に於いてこれをみるに、被告人はA一家の配下で、元B組配下のC一家の者が賭場の怨</要旨>からA一家の代貸たるD方に殴り込みをかけて来ることを予想し、他の一味と共にD方に集合し、日本刀や猟銃を集めて右殴り込みに備えていたところ、原判示日時場所に於て、「Dが大変だ」との声に日本刀を保管場所から持ち出し、DがGと争つている現場に赴き右の日本刀でGに斬りかかつた事実は記録上顕著であるから、被告人の日本刀所持は場合により人を殺傷するためのもので、たとえ登録を受けた日本刀であつても、銃砲刀剣類等所持取締令第二条がこれを所持することを認めた趣旨に反すること明白であり、許容されざる所持と断定するのを相当とする。同令第十二条違反には同令第二十八条の罰則が適用されることから、登録制度の趣旨に反する場合にも、登録を受けた刀剣類の譲受人がその旨届け出れば、所持が適法となるとはいえない。又同令第十八条は美術品としての価値を認めて登 同令第二十八条の罰則が適用されることから、登録制度の趣旨に反する場合にも、登録を受けた刀剣類の譲受人がその旨届け出れば、所持が適法となるとはいえない。又同令第十八条は美術品としての価値を認めて登録を受けた趣旨に反しない場合であることを前提とするもので、そうでない場合にも同条違反が成立するのみで第二条違反にはならないとしたものではない。その他同令の解釈上、右説明に反対の規定が存しない。所論は本件日本刀が登録を受けていることにより、その所持人にはいついかなる場合と雖も所持の違反が存しないものであるとし、被告人の本件所為が同令第二条第四号に該当すると主張なるけれど、当裁判所の賛同できないところである。それ故所論は採用できない。 (その他の判決理由は省略する。)(裁判長判事加納駿平判事吉田作穂判事山岸薫一)

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