主文 被告人は無罪。 理由 本件公訴事実及び争点(1)本件公訴事実(ただし,平成19年8月20日付け訴因等変更請求書にかかる訴因変更後のもの)は,「被告人は,a市副市長として,市長を補佐し,同市発注工事に係る事務を掌理するなどの職務に従事していたものであるが,a市長として,同市の事務を管理し,これを執行するなどの職務に従事していたA1,同市議会議員として,同市議会の議決すべき事件につき議会に議案を提出し,提出された議案について質疑し,表決に加わるなどの職務に従事していたA2,大阪府警察官として勤務する傍ら,かねて公共工事に関する情報などを建設業者に提供するなどしていたA3,公共建築工事の受注等に関する業務に従事していた株式会社B1本店常任顧問A4,同社常務執行役員A5,株式会社B2常務執行役員A6,B3株式会社b支店副支店長A7及びB4株式会社c支店支店次長A8らと共謀の上,a市が平成17年11月10日に開札した『仮称第2清掃工場建設工事(土木建築工事)』の制限付き一般競争入札に,B1・B2共同企業体のほか,B3株式会社b支店及びB4株式会社c支店が参加するに際し,公正な価格を害する目的で,同年10月20日ころから同年11月10日ころまでの間,大阪府下又はその周辺において,B1・B2共同企業体に同工事を落札させることで合意するとともに,そのころ,B3株式会社b支店及びB4株式会社c支店のそれぞれの入札金額をB1・B2共同企業体の入札金額を超える金額とする旨の協定をし,もって,入札の公正な価格を害する目的で談合したものである。」というものである。 (2)検察官は,本件公訴事実にかかるa市発注の「仮称第2清掃工場建設工事(土木建築工事)」(以下,同工場を「本件清掃工場」といい,同工事中,建屋の建設工事を「本件工事」という というものである。 (2)検察官は,本件公訴事実にかかるa市発注の「仮称第2清掃工場建設工事(土木建築工事)」(以下,同工場を「本件清掃工場」といい,同工事中,建屋の建設工事を「本件工事」という。)の入札に関し,被告人において株式会 社B1が談合により本件工事を落札・受注することを認識しながら,これに協力するなどして当該談合を共謀した旨主張するところ,被告人は,当該談合がなされたこと自体を知らなかったし,談合の共謀をしたこともないなどと供述し,弁護人も,被告人には当該談合の共謀がなかったなどとしてその無罪を主張している。 そこで,以下,当裁判所が,被告人が本件談合を共謀した事実は認められず,被告人は無罪であると判断した理由について説明する。 前提事実関係各証拠によれば,以下の事実が認められ,これらについては,被告人及び弁護人も概ね争っていない。 (1)被告人と本件の関係者についてア被告人は,昭和40年9月にa市役所に採用され,水道局,下水道部,環境対策部,市長公室勤務,理事などを経て,平成15年5月22日,助役に就任し(平成16年4月に「副市長」と改称),平成19年5月,副市長に再任された。 イA1は,平成7年にa市長となり,以後,平成19年9月に辞任するまで同市長の職にあったが,その間,被告人を前記アのとおり同市の助役ないし副市長に任命した。 ウA2は,平成7年にa市議会議員となり,以後,A1の政治姿勢に共感するなどして,同人との親交を深めていた。 エA3は,大阪府警察官の職にあり,かねてからA1と面識を有していたが,平成12年6月ころ,同人からA2を紹介され,以後,両名と共にA2方に集まり,3人で情報交換等をするようになった。 (2)本件工事が落札された経緯についてア平成5年ころ,a市では,本件清掃工場の建設 12年6月ころ,同人からA2を紹介され,以後,両名と共にA2方に集まり,3人で情報交換等をするようになった。 (2)本件工事が落札された経緯についてア平成5年ころ,a市では,本件清掃工場の建設工事に関する検討委員会が組織され,建設予定地の選定や住民に対する説明等の準備を行っていた。同 工事の発注形態や予算の積算等は,C1部(平成16年4月に「C2部C3室」と改称)が担当しており,C1部の担当助役(副市長)は,平成15年5月まではD,同月22日以降は被告人であった。 イ平成14年,市長の諮問機関として「第2清掃工場建設検討会議」(以下,「検討会議」という。)が組織され,以後,同会議において,焼却炉の焼却方式や発注方式について検討が行われた。そして,平成15年8月29日,検討会議は,本件清掃工場の建設工事の発注方式について,プラント(焼却炉)と建屋の工事を分離発注することが妥当である旨の結論を示し,同年10月7日,被告人を委員長とする検討委員会も,これを尊重する旨の報告を行って,後日,A1がプラントと建屋の工事を分離発注する旨の決裁をした。 さらに,平成16年3月,本件清掃工場の設計の発注方式についても,プラントと建屋とで分離発注することが決定された。 ウ同年5月,本件工事の設計業務を株式会社Eが落札した。 エ同年6月10日,本件清掃工場のプラント設備工事の入札が予定価格59億2346万2000円(税抜き)で実施され,F株式会社が57億7500万円で落札した。その結果,本件工事の予算額は,a市が,平成16年度に本件清掃工場の建設工事全体の予算額として計上していた99億680万円の残額の約39億円(税抜き)となった。 オ平成17年7月21日,本件工事が予定価格を39億2564万8000円として公告され,開札日は同年8月10日とされ 予算額として計上していた99億680万円の残額の約39億円(税抜き)となった。 オ平成17年7月21日,本件工事が予定価格を39億2564万8000円として公告され,開札日は同年8月10日とされていたが,同月2日から同月8日までの入札申込期間中に1社も応札せず,不調となった(以下,これを「1回目の入札」という。)。 カ同月19日,a市の財政課及びC3室の関係職員が協議して,同年9月の市議会に本件工事のための18億円の補正予算を計上する方針となった。同年8月31日,補正後の予算額を57億214万1000円とする補正予算案の市議会への提出がA1によって決裁された。 キ同年10月20日,本件工事が予定価格を56億4896万6000円(税抜き),入札申込期間を同年11月1日から同月8日として再度公告され,同月10日に開札されて,株式会社B1と株式会社B2の共同企業体(JV。以下,このJVを「B1・B2JV」という。)が55億6000万円(税抜き)で落札した(以下,これを「2回目の入札」という。)。同入札においては,B1・B2JV以外に,B4株式会社c支店(以下,「B4株式会社」という。)が55億9800万円で,B3株式会社b支店(以下,「B3株式会社」という。)が56億2500万円(いずれも税抜き)でそれぞれ入札をしていた。 ク同年12月5日,本件工事を落札したB1・B2JVとa市との請負契約がa市議会で承認された。 (3)本件工事の受注に向けた株式会社B1の活動等についてア関西の建設業界においては,平成17年12月に談合決別宣言が出されるまでの間,長年にわたり,建設工事の受注に関して,株式会社B1と株式会社Gが交代で裁定担当役となって,談合が恒常的に行われていた。そこでは,受注を希望する特定の工事について,各社が営業活動等に れるまでの間,長年にわたり,建設工事の受注に関して,株式会社B1と株式会社Gが交代で裁定担当役となって,談合が恒常的に行われていた。そこでは,受注を希望する特定の工事について,各社が営業活動等により落札するための「条件」を獲得し,業者間での話し合いによって,最も条件的に優位な建設会社が当該工事を落札する資格を有する「選手」になるというルールが確立していた。選手になるための条件には,発注者の意向である「天の声」,元施工業者であること,設計会社への技術協力,工事計画地付近に用地を取得していること,設計図面の入手等があった。 イ株式会社B1は,平成7年末ころから,同社の業務担当のA4らが中心となり,本件清掃工場の建設予定地の隣地を賃借するなどし,本件工事の受注に向けて準備していたが,株式会社B2が株式会社Eとの間で本件工事の設計協力をする約束を取り付けていたことが判明したことから,株式会社B1と株式会社B2の談合担当者間の話し合いを経て,平成16年9月ころ,株 式会社B2とJVを組むことで合意し,その結果,株式会社B1は,本件工事につき,立地の点に加えて,設計協力の点で条件が揃ったこととなり,選手になることについて他社よりもはるかに優位に立った。 ウ平成17年7月ころ,株式会社B1の談合担当者であるHらは,1回目の入札における予定価格が株式会社B1内での見積額を大きく下回っており,受注しても採算がとれないと判断したため,営業担当者であるIらと相談の上,応札を見送ることとした。Hは,このことを踏まえて,入札資格を有する他社の談合担当者らに連絡し,株式会社B1のほかに落札意欲のある業者がいないことを確認するとともに,株式会社B1に落札意欲があることを他社の談合担当者らに示した。 エ同年10月,株式会社B1は,2回目の入札に応札すること し,株式会社B1のほかに落札意欲のある業者がいないことを確認するとともに,株式会社B1に落札意欲があることを他社の談合担当者らに示した。 エ同年10月,株式会社B1は,2回目の入札に応札することを決め,Hにおいて,B3株式会社及びB4株式会社の談合担当者に,株式会社B1よりも高い金額で入札に参加する,いわゆる「おつき合い」の依頼をし,前記(2)キの55億9800万円及び56億2500万円の各入札額を指示し,両社は,その指示金額で入札した。 業者間の談合について以上を前提に,まず,本件工事の受注に関し,業者間で談合が行われたかについて検討する。 (1)B1・B2JVが前記2(2)キのとおり本件工事を落札するにあたっては,前記2(3)イないしエのとおり,株式会社B1,株式会社B2,B3株式会社及びB4株式会社の各談合担当者により,順次,同JVの受注に向けた話し合いが行われたことが認められる。 (2)また,2回目の入札における株式会社B1の応札は,前記2(3)アの業界のルールに基づいてなされたものと認められるところ,かかるルールは,公共工事の競争入札において純粋な自由競争が行われると,いわゆる叩き合いとなって落札価格が低額化し,落札業者が十分な利益を確保できなくなる可能性があ ることから,業者間の共同の利益を保持することを主目的として慣行化されたものと解される。 しかるに,公共工事における競争入札は,可能かつ相当な範囲で,その工事費用を低額に抑えることをも企図しているものというべきであるから,そのように十分な利益が確保された入札額は,そもそも,かかる企図に反し,当該入札における公正な価格を害するものであることが相当程度推認される。 しかも,株式会社B1において,1回目の入札では,採算がとれないという判断から応札しなかったにもかか もそも,かかる企図に反し,当該入札における公正な価格を害するものであることが相当程度推認される。 しかも,株式会社B1において,1回目の入札では,採算がとれないという判断から応札しなかったにもかかわらず,2回目の入札では,自ら設定した前記2(2)キの入札額で応札したことからすれば,その額が同社の利益を十分に確保するものでなかったとは考えがたいし,同入札額で確実に受注できるようB3株式会社及びB4株式会社の担当者に「おつき合い」を依頼し,正常な競争入札を装っていることから,株式会社B1には「公正な価格」を害する認識があったと認められる上,前記両社担当者においても,前記ルールの下で「おつき合い」をしている以上,このような株式会社B1の応札目的を認識していなかったとは到底考えられない。 加えて,株式会社B2の工務部で本件工事の見積業務を担当していたJも,「株式会社B2が単体で受注した場合,55億2500万円で落札すれば,一般管理費を賄った上,純利益を確保できるし,もし叩き合いになれば,限界NETの52億8000万円くらいで入札することになる」旨供述しているところである(甲37の同意部分)。 したがって,前記(1)でみた業者間の話し合いは,公正な価格を害する目的でなされたものと認めるのが相当である。 (3)以上によれば,本件工事の受注に関し,業者間において刑法96条の3第2項所定の談合が行われたことが優に認められる。(以下,この談合のことを「本件談合」という。)。 被告人の共謀について (1)関係各証拠によれば,本件談合の端緒となったA1及びA2の行動等として,以下の事実が認められ,これらについては,被告人及び弁護人も概ね争っていない。 アA1が平成7年にa市長に就任した当初,a市議会は同人にとって有利な情勢になく,とりわけ市議会 A2の行動等として,以下の事実が認められ,これらについては,被告人及び弁護人も概ね争っていない。 アA1が平成7年にa市長に就任した当初,a市議会は同人にとって有利な情勢になく,とりわけ市議会議長のKが反A1の中心的存在として議会に強い影響力を及ぼしていた。また,Kには,a市発注の公共工事に関し,特定の建設業者と結託しているとの噂もあった。A2とA1は,かかるKのa市における影響力につき相談し合うなどしていた。 イA2は,A1から紹介された建設業者のLにKの問題を相談したところ,Lから,株式会社B1の営業担当者であるA5を紹介され,以後,LとA5がA2方に出入りするようになった。そして,A2は,LやA5と面談する中で,関西の建設業界では株式会社B1のA4が談合を仕切っており,株式会社B1にa市の状況を直接説明するのがよいと聞き,A1とともに,株式会社B1側と相談することにした。 ウ平成11年12月,b市内にあるホテルMの会議室において,A1,A2,L,株式会社B1営業担当役員N及びA5が出席して会合が持たれた(以下,この会合を「M会談」という。)。この中で,A1及びA2は,Kと結び付いた業者を排除するよう,株式会社B1がa市発注の公共工事を仕切ってもらいたい旨依頼し,株式会社B1側もこれを了承した。そして,その際,Nが「本件清掃工場を是非頑張りたい」と発言し,これを受けて,A1が「それは頑張ってもらったらいいですが,全部が全部というわけにはいきませんけど」などと発言した。 エA2は,M会談以降,本件清掃工場の建設工事に関するものを含め,自身が入手したa市発注の公共事業の議会資料を,Lを介するなどして,株式会社B1に渡すようになった。 (2)さらに,関係各証拠によれば,前記(1)の経緯の後,A3も本件談合に関わ り合いを持 ,自身が入手したa市発注の公共事業の議会資料を,Lを介するなどして,株式会社B1に渡すようになった。 (2)さらに,関係各証拠によれば,前記(1)の経緯の後,A3も本件談合に関わ り合いを持つようになったことが認められるところ,検察官は,主にA3の供述に依拠して,被告人の本件談合への共謀の成立を主張しているものと解されるので,その供述内容をみると,A3は,自身が本件談合を共謀したことを認めた上で,A1,A2及び被告人と本件談合との関わり合いなどについて,次のように供述している。 ア平成14年の秋ごろ,A2方にA1,A2及びA3が集まった際,A1及びA2から「Kの利権を排除するため,株式会社B1に本件清掃工場の仕切りを頼んでいる。良いものをつくりたいから,株式会社B1に取らせたいと考えている」などと打ち明けられ,協力することを承諾した。 イ平成15年4月,A2方で,A5に「談合したらあかんなんてちんけなことは言わん。やるんやったらきっちりやれ。その代わり,A1市長やA2先生に迷惑をかけるようなことをしたらあかん」などと言った。 ウその後,A2方にA1,A2及びA3が集まった際,A2から「本件工事はプラントメーカーに対する一括発注になっているが,Kとつながっているプラントメーカーとゼネコンに受注させないため,分離発注にするのはどうか」と相談され,さらに,その後の同年5月ころ,A2方に同じ3人で集まった際,「『談合防止という観点から分離発注のほうがよい』と市の幹部に説明をしてほしい」と頼まれ,これを引き受けた。そして,同年の5月か6月ころ,a市役所において,A1,被告人,D,その他数名の幹部の前で,本件清掃工場につき談合情報があり,プラントとゼネコンが結託している,プラントと建屋の工事を分離発注するのが談合防止に役立つ旨の説明をす ,a市役所において,A1,被告人,D,その他数名の幹部の前で,本件清掃工場につき談合情報があり,プラントとゼネコンが結託している,プラントと建屋の工事を分離発注するのが談合防止に役立つ旨の説明をすると,A1は,A3の今の意見を参考にして検討するようにと幹部らに指示した。 エ同年の5月か6月ころ,前記ウとは別の機会にA1から,今度助役になり,本件清掃工場のトップだといわれて,被告人を紹介された。その際,被告人は真面目で堅物そうに見えたので,後日,A3がA1とA2に,本件工事を 株式会社B1に受注させる件で被告人と接触しても大丈夫かどうかを確認したところ,A1が「大丈夫や。甲さんには『A3さんとちゃんと話して,A3さんの言うとおり動いてくれ』と言うてる」と言った。それでも不安は残ったが,慎重派のA1が言うことなので,前記受注の話がちゃんと被告人に通じているのだろうと思った。 オ平成16年1月ころ,A2方にA1,A2及びA3が集まった際,A2から「本件清掃工場の設計業務をプラントメーカーに一括発注するようになっているが,株式会社B1から設計業務を分離してほしいと頼まれているので,工事の分離発注と同様,設計が分離発注になるように,また市の幹部に『談合防止になる』と説明してほしい」と頼まれ,これを引き受けた。そして,同月中旬ころ,a市役所において,A1,被告人,D及び担当理事のOらの前で,プラントと建屋の設計業務を分離発注するのが談合防止になる旨の説明をすると,A1が幹部らに前同様検討を指示した。 カ平成17年5月か6月ころ,A3が被告人と会ったとき,本件清掃工場は予算が少なく,応札があるかどうか不安だという話になった。その際,A3は,A1からの話が被告人にきちんと伝わっているかどうかを見極めるため,わざと「株式会社B1」の名前を出し たとき,本件清掃工場は予算が少なく,応札があるかどうか不安だという話になった。その際,A3は,A1からの話が被告人にきちんと伝わっているかどうかを見極めるため,わざと「株式会社B1」の名前を出して,「株式会社B1がちゃんと取る言うとるから取りよります。市長がそういうふうにちゃんと言うとるから取ります」と言ってみると,被告人は「それはそうですな」というような反応であった。A3は,その反応から,A1からの話が被告人にきちんと伝わっていると確信できたと思った。 キ同年7月10日過ぎころ,A2から,入札が近付いてきたので,被告人から入札の予定や条件を聞いて,A5に伝えて欲しいと言われた。そこで,同月19日ころ,副市長室に行き,被告人から「本件工事の予定価格が約39億円ぐらい,経営審査事項(以下,「経審点」という。)のP点が単体で1400点,JVでは1200点以上,Y点が500点である」と教えてもら った。その際,A3が「経審点が緩いと訳の分からんとこがようけ入ってくる」と言ったところ,被告人は「内部で基準があるのでどうしようもない。 予定価格が安いので応札があるかどうか不安だが,なければないでしょうがない。応札がなければ,仕切直して予算取りして出すこともできるから」と言っていた。A3が「どうしてもということなら,どこか業者に取らせましょうか」と言ってみたところ,被告人は非常に驚いた反応を示していた。そこで,A3が「ちゃんと株式会社B1に取るように言います,少々安くても取るように言います」と言ったところ,被告人は,笑って,「そうですね,お願いします」というようなことだった。 クその後すぐに,被告人から聞いた話をA5に伝え,取るよう言ったところ,A5は,安すぎると応札を渋っている様子だった。そこで,A1とA2に相前後して「株式会社B1が ます」というようなことだった。 クその後すぐに,被告人から聞いた話をA5に伝え,取るよう言ったところ,A5は,安すぎると応札を渋っている様子だった。そこで,A1とA2に相前後して「株式会社B1が流すようなので,流れたら補正予算を組むなりして増額して発注する形にしてやってくれ」と言うと,A2は「議会も難しいので無理しても取らせて欲しい」と言い,A1も議会で自分が頭を下げることに難色を示していた。 ケ同月28日,b市内のPホテルで,A5から見積金額記載の紙等を見せられ,「予定価格も安いし,経審点も緩すぎる。今回は不調にするので,予算を増額するよう市のほうに伝えてもらいたい。金額はせめて株式会社Eの算出した53億程度は必要である。経審点も厳しくしてもらいたい」などと言われた。そこで,同月29日ころ,被告人に「今回,株式会社B1は流すと言うてます,金額が安すぎるのでいけないということです」と言うと,被告人は「そちらさんがそう言うんであれば仕方ないですね」と言っていた。その際,A3が「株式会社B1が『設計金額に近い金額でないとしんどい,流す』と言っている。補正予算を組んでもっと上げてやって欲しい」と言ったところ,被告人は「予算はこちらが決めることだ。いちいち言われることではない」と怒っていた。その後,A3は,A5に「今回流すのは仕方がない が,増額した形で再度発注があるから今度は取ってくれ」と言った。 コ同年8月20日ころ,A2方にA1,A2及びA3が集まった際,A2から「次回は増額して発注するので,確実に落札するよう株式会社B1に頼んでもらいたい」と言われたので,A3は「市としても金額を増額して株式会社B1が納得できる金額にしたらなあかんで」と言った。その後すぐ,A2から「『本件工事については,39億をただ増額するのではなく,別に発 いたい」と言われたので,A3は「市としても金額を増額して株式会社B1が納得できる金額にしたらなあかんで」と言った。その後すぐ,A2から「『本件工事については,39億をただ増額するのではなく,別に発注する予定だった12億ほどの工事を15億まで引き上げ,更に2,3億プラスアルファして,上乗せした金額で発注する。合計で56億から57億ぐらいになる』と甲さんから聞いてきた。これで確実に取るよう株式会社B1に言ってほしい」と頼まれた。同月26日ころ,A3は,A5にA2の話を伝えた上,「市の方は目一杯頑張っているから次は取って欲しい」と頼んだ。 それに対するA5の反応は悪くはなかったが,A5は「60億くらいにして欲しい。その旨,市の方にお願いして欲しい」と言ってきた。 サ同月30日ころ,副市長室で,被告人に予算の増額の話がどうなったのかを聞くと,被告人は「もともと7億くらいの付属建物の工事を12億にし,これを15億に引き上げて,それに2,3億プラスアルファするので,これ以上増やすことはできない」と言っていた。そこで,A3が「目一杯やってもらっているんやから,B1のほうもこれやったら取りまっしゃろ。株式会社B1にも取るように言っておく」と言うと,被告人は「1回目が不調になっているし,今度また不調になったら私自身責任問題で失態や。よろしくお願いします」と(いうような話を)言っていた。 シ間もなくA5に被告人の話を伝えた上,ちゃんと取るように言うと,上の方と検討すると言われた。 ス同年10月上旬ころ,A5から株式会社B1が本件工事を取ることを聞かされ,予定価格や入札条件等を教えて欲しいと頼まれた。 セ同年10月中旬ころ,A3は,副市長室で,被告人から「予定価格は56 億少しくらい,入札条件はP点が単体で1500点,JVで1300点,Y点が50 価格や入札条件等を教えて欲しいと頼まれた。 セ同年10月中旬ころ,A3は,副市長室で,被告人から「予定価格は56 億少しくらい,入札条件はP点が単体で1500点,JVで1300点,Y点が500点以上である」と教えてもらった。その際,被告人が「ほんま,大丈夫ですか」などと心配していたので,「株式会社B1が取ると言っているから,間違いなしに取ります」と答えた。A5には,すぐにその情報を伝え,その際,間違いなく取るよう念押ししたら,分かりましたと答えていた。 (3)被告人の弁解内容についてこれに対し,被告人は,本件談合が行われたことも,A3らがこれに加担していたこともまったく知らなかったとして,①A3のことは,A1から談合捜査のプロの警察官として紹介を受け,それを信用しており,A3から本件工事の情報について聞かれた場合には,捜査上必要なのだと思ったのでこれを教えた可能性がある,②本件工事の入札の実施について決裁をした際,被告人自身は,予定価格の金額を記載していない書類に「金抜き決裁」を行ったから,そもそも被告人が公告前に予定価格を知ることはできず,A3に教えることもできなかった,③A3との間で,株式会社B1が本件工事を受注することを前提とした会話をしたことはない,④A3が本件工事の予算について口出しするような発言をしたため立腹したことはあった,などと供述している。 (4)A3供述の信用性についてそこで,被告人の前記供述も踏まえた上で,A3の供述の信用性について検討する。 アA3は,本件談合における自身とA1,A2,被告人及びA5との間のやり取りを具体的かつ詳細に供述しており,その供述内容は,大筋で自然な流れの話となっていて,既に本件談合罪につき判決が確定して虚偽供述をするような動機がなく,具体的かつ詳細で信用性を認めることのでき り取りを具体的かつ詳細に供述しており,その供述内容は,大筋で自然な流れの話となっていて,既に本件談合罪につき判決が確定して虚偽供述をするような動機がなく,具体的かつ詳細で信用性を認めることのできるA5の公判供述や,いずれも証拠能力及び信用性を認めることのできるA2及びA1の捜査段階における各検察官調書謄本(甲65ないし67,82ないし85)中の供述ともほぼ符合している上,本件談合を共謀したことを否認して いるA2の公判供述とも,実質的に一致する部分がかなり存在する。 他方において,なるほど,弁護人が指摘するように,A3は,本件談合の共犯として起訴されていた者であることから,自己の刑責を軽減すべく,被告人を含む本件共犯とされる者らに責任を転嫁する動機がないとはいえないため,その供述の信用性は慎重に検討する必要があるとはいえる。しかし,A3は,本件の証人尋問時には,全ての事実を認めていた一審に引き続き,量刑不当で上訴していた控訴審でも既に実刑判決を言い渡され,上告中ではあったものの,「最高裁で刑が覆るとは思わない」旨の供述をしていたことに鑑みれば,かかる責任転嫁の危険性は,相当程度低下していたというべきであるし,検察側に迎合して事実から乖離した供述をする必要性も乏しい状況にあったとみることができる。また,A3の供述内容をみても,A1及びA2との関係において,自身がa市と株式会社B1間の連絡役等の従属的立場にあったことを強調するかのような部分もみられるが,その反面,本件工事の発注方法等に関してA1やA2に対して自ら提言したり意見を述べたりしたことや,株式会社B1に本件工事を受注するようA5に対して何度も働きかけたこと,A5の依頼を踏まえて被告人と何度も面談し,本件工事に関する情報の提供を受けたことなどに関しては,包み隠さず率直に供述 たことや,株式会社B1に本件工事を受注するようA5に対して何度も働きかけたこと,A5の依頼を踏まえて被告人と何度も面談し,本件工事に関する情報の提供を受けたことなどに関しては,包み隠さず率直に供述していることが窺われる。そして,A3において,A1,A2及びA5との関わり合いに関する事実については,前記のとおり,それらの者の供述とほぼ符合する供述をしていながら,被告人と二人きりでいた際の状況に限ってだけ,敢えて被告人の供述と相反する虚偽の供述をする理由があるとはにわかに考えにくい。 したがって,A3の供述は,その大要においては,相応の信用性が認められる。 イしかしながら,A3の前記供述をより子細に検討してみると,被告人とA3との間で本件工事に関する会話がなされたのは主に平成17年中のことで あるところ,そのときから本件のA3の証人尋問時までに既に3年が経過していることからすれば,A3が当該会話における自身と被告人の発言内容をその供述するとおり正確に記憶していたとは直ちに断じがたいところが散見される。すなわち,A3の供述する被告人の発言描写場面は,実際に被告人が当該発言をしたのか,そういう趣旨の発言としてA3自身が受け取ったのかの区別が必ずしも明確ではない部分がみられる((2)カ,キ参照)し,被告人の発言内容につき,最初は「というような話」と説明しながら,検察官の再度の確認によってはじめて「と言った」旨の断定口調に表現を変えた場面もみられる((2)サ参照)。しかも,A3は,本件談合について自らが既に有していた知見や前記(2)エにみられる被告人を既に共犯に引き込んでいるとも受け取れるA1の発言を聞いていたことを前提として,被告人とのやりとりの状況等も踏まえながら,自らの発言中に「B1」という言葉を含ませつつ,これに対する被告人の反 告人を既に共犯に引き込んでいるとも受け取れるA1の発言を聞いていたことを前提として,被告人とのやりとりの状況等も踏まえながら,自らの発言中に「B1」という言葉を含ませつつ,これに対する被告人の反応や本件談合に関する認識,あるいは被告人の発言の真意を忖度していた様子が窺われ,かかるA3が,自身の主観や予断を混在させずに,実際になされた被告人の発言内容をそのまま忠実に再現することができているかについては,疑問を差し挟む余地がある。 ウまた,A3は,前記(2)ウのように,平成15年の5月か6月ころにa市役所でプラントと建屋の工事を分離発注するよう説明をした際,被告人も同席していたと思う旨供述しているが,A3自身も,その際被告人と特別のやり取りをした記憶がないので,ひょっとしたら自分の思い込みで,被告人がいなかったかもしれないと弁護人の反対尋問で述べている上,その他の関係各証拠に照らしても,その際には被告人は同席していなかった可能性が認められ,この点からしても,A3の記憶の正確性については一定の留保が必要である。 エさらに,仮に,A3が供述するとおり,平成15年の5月か6月ころ,A1が,「甲さんには『A3さんとちゃんと話して,A3さんの言うとおり動 いてくれ』と言うてる」と発言し(前記(2)エ),A1が,被告人に対して,その発言の前提となった何らかの指示を事前に出していたとしても,A1において,みずからの犯罪行為への関与を副市長である被告人に打ち明けることをためらう気持ちから,M会談を含む株式会社B1との関係や本件談合を容認する自らの動機等全ての事実関係を告げないまま,A3から談合捜査に関する情報提供を求められた場合には,これに協力をするようにという名目で被告人に指示を与えていた可能性も考えられる。実際に,A1においても,捜査段階 全ての事実関係を告げないまま,A3から談合捜査に関する情報提供を求められた場合には,これに協力をするようにという名目で被告人に指示を与えていた可能性も考えられる。実際に,A1においても,捜査段階では,自ら本件談合に関与したことについては認めながら,被告人に対して,本件工事を株式会社B1に落札させる計画を打ち明けたことを明確に否定し,ただ,(被告人は)A3からその説明を受けて知るだろうと思っていたと供述をするに止まっており(甲84),もとより,A1が被告人をかばっている可能性が全くないとはいえないものの,その供述の信用性を直ちに排斥することはできない状況にある。 そして,この点に関連して,A1は,その検察官調書謄本(甲84)中において,「平成17年7月ころ,困った様子の被告人から『市長,A3さんの動きがおかしいんです。第2清掃工場をどこかの業者にとらせようとしている感じなんですけど。どうしましょうか』と聞かれ,その時点では,K市議も引退していて,同議員の勢力排除という私の目的が達成されている以上,本件工事を株式会社B1に受注させるという違法な計画に積極的に関与したくないという気持ちと,それ以上その件を聞きたくないという思いから,『気にせんでもええから』と答えたところ,甲さんは『ああ,分かりました』などと答えて市長室から出て行った」旨供述しているところ,仮に,平成15年5,6月ころの段階までに,A1が被告人に株式会社B1との関係や同社に本件工事を受注させる計画であることなどすべての事実を明らかにしていたとすれば,本件工事の1回目の入札が押し迫っていた平成17年7月ころになって,被告人が,わさわざA1に対して,A3の動きについて前 記のような疑問を呈する矛盾した発言をすることは到底考えられないところである(なお,検察官は,その冒頭陳 ていた平成17年7月ころになって,被告人が,わさわざA1に対して,A3の動きについて前 記のような疑問を呈する矛盾した発言をすることは到底考えられないところである(なお,検察官は,その冒頭陳述書6頁及び12頁では,被告人とA1の前記やり取りの存在を被告人の本件共謀を基礎づける主要な事実の一つとして主張しており,公判では検察官請求にかかる甲84号証が証拠として採用されていたのに,論告では,このやり取りをその主張の裏付けとして取り上げていないのは,このような点を意識してのことと推察される。)。そして,A1は,前記供述調書謄本中で,「気にせんでもええから」と言った意図につき,「甲さんには何も考えずにただこれまでと同様にA3の指示に従ってくれたらいいということを指示するつもりで,甲さんにそのように言った」旨供述しているに止まり,その後,この発言を聞いた被告人がこれをどのように理解したかにつき,A1が被告人に確認するなどした形跡はみられない。そうすると,A1の前記発言を聞いた被告人が,「A3に特定の業者に取らせる意図はない」あるいは,「A3にそのような意図が感じられたとしても,市には関係ないことだから」という趣旨でA1が「気にせんでもいい」と言ったと理解したとみる余地も十分にあり,このような抽象的かつ多義的発言から,本件談合によって株式会社B1に本件工事を取らせたいというA1の真意が被告人に正確に伝わったことを推認することは極めて困難である。さらに,被告人とA1との前記やり取りの存在及びその際のA1の心境を前提とすると,A1が,その後も被告人に対して,本件談合の計画を打ち明けたという可能性は低いというべきで,実際にそのような立証も全くなされていない。 オまた,A3の前記供述によっても,被告人が,A3に対して,自ら「株式会社B1に受注 対して,本件談合の計画を打ち明けたという可能性は低いというべきで,実際にそのような立証も全くなされていない。 オまた,A3の前記供述によっても,被告人が,A3に対して,自ら「株式会社B1に受注させたい」などという言葉を積極的に発した事実は全く認められないし,そもそも両名の間では,「談合」あるいは「受注調整」その他の隠語的表現を含めて,本件工事につき談合が行われている,あるいはその見込みであることを示す具体的な言葉が交わされた形跡は全く認められない ところ,A3が,被告人に述べたという「株式会社B1がちゃんと取る言うとるから取りよります。市長がそういうふうにちゃんと言うとるから取ります」(前記(2)カ),「ちゃんと株式会社B1に取るように言います,少々安くても取るように言います」(前記(2)キ),「今回,株式会社B1は流すと言うてます」(前記(2)ケ),「目一杯やってもらっているんやから,株式会社B1のほうもこれなら取りまっしゃろ。株式会社B1にも取るように言っておく」(前記(2)サ),「株式会社B1が取ると言っているから,間違いなしに取ります」(前記(2)セ)という言葉も,被告人が,A3において,株式会社B1が本件工事について強い受注意欲を有していること(前記(2)カ,キ,サ,シ),あるいは株式会社B1が本件工事の入札をしないこと(前記(2)ケ)についてそれぞれ言及し,警察官としては異例ではあるが,A3が株式会社B1に正規の入札による受注を働きかけているにすぎないものと受け止めていたと解する余地があり,株式会社B1が談合という犯罪行為によって,本件工事の受注をすることまでは明確に認識しなかったと考えても必ずしも不自然とはいえない。とりわけ,A1の前記検察官調書謄本(甲84)にみられる被告人とA1のやり取りの存在を前提とすると 為によって,本件工事の受注をすることまでは明確に認識しなかったと考えても必ずしも不自然とはいえない。とりわけ,A1の前記検察官調書謄本(甲84)にみられる被告人とA1のやり取りの存在を前提とすると,A1から「A3の発言を気にしなくていい」旨言われていた被告人が,その言葉を額面どおりに受け取って,A3が株式会社B1のことに言及するのを聞き流すように努めていた可能性も考えられることも併せると,被告人が,A3との折衝過程で,本件談合が行われることを十分認識することができたかについては一層疑問の余地があるし,被告人が本件談合に加担するためにA3に協力したともにわかに考えがたい。また,A3の供述にみられるように,仮に,「少々安くても,株式会社B1に取るように言う」などというA3の発言に対して,被告人が「お願いします。」と応じたとしても,A3が,予算の少ない本件工事につき,株式会社B1に正規の方法で入札をするよう働きかけてくれると被告人が思い,そのような受け答えをした可能性も考えら れるところである。 カところで,検察官は,被告人の説明するA3との折衝状況等に関する説明が全体的に具体性の乏しいあいまいなものであり,A3の公判供述に照らして信用することができないと主張している。しかし,まず,被告人との折衝状況に関するA3証言の信用性については,前記のように一定の留保が必要である。また,関係各証拠によれば,被告人は,A1から,A3を紹介された上,A3が優秀な警察官で,談合捜査にも精通していることを聞かされていたのみならず,平成16年1月16日ころ,市役所で,A3から,本件工事について談合情報があること,本件清掃工場の設計業務をプラントと建屋に分離して発注する方が談合防止になるという説明を聞かされ,A1からは,その意見を聞いて検討するよう指示 役所で,A3から,本件工事について談合情報があること,本件清掃工場の設計業務をプラントと建屋に分離して発注する方が談合防止になるという説明を聞かされ,A1からは,その意見を聞いて検討するよう指示を受けていたことが認められるところ,A1とA2がA3に依頼して,株式会社B1が本件工事を受注し易くするために,談合捜査に従事する警察官の立場をいわば隠れ蓑としてそのような説明をさせたということを被告人が知っていたことを示す証拠もないことから,被告人においては,A3が,本件工事の談合情報を警察官として収集しており,その防止策を市に助言してくれる立場にあるということを強く意識していた可能性が高く,このような状況認識が,被告人のA3に対する信頼の基礎となったとしても何ら不自然ではない。そうすると,被告人が,A3を警察官として信頼していたことから,本件工事の入札に関する情報を問われるままに教えてしまったという可能性が考えられる。そして,被告人においては,A3との折衝時からの時間的経過によって,その状況等に関する記憶が希薄化したことも考えられ,被告人の状況等の説明があいまいであること自体でその信用性が直ちに損なわれるとみることもできない。以上によれば,被告人の公判供述を排斥することは困難である。 キ以上を総合すると,A3の供述中,被告人と本件談合との関わり合いを述べる部分は,その内容面や信用性に鑑みると,被告人が本件談合を共謀した ことを的確に基礎付けるものとはいいがたい。 (5)経審点ないし予定価格の教示について検察官は,被告人が,A3に対して,1回目及び2回目の入札直前に本件工事の入札情報である経審点の点数等を教示したことは,被告人が本件談合がされることを知っていて,株式会社B1に便宜を図ったことを示すものである旨主張しているので,この点 目及び2回目の入札直前に本件工事の入札情報である経審点の点数等を教示したことは,被告人が本件談合がされることを知っていて,株式会社B1に便宜を図ったことを示すものである旨主張しているので,この点につき考察しておく。 なるほど,A3の供述をはじめとする関係各証拠によれば,被告人がA3に対して経審点等の入札情報を各公告の数日前ころに教示していた事実が認められる。一方で,被告人がA3に教示した入札情報中,金額の点は,1回目及び2回目の入札ともに,億単位の数字に止まり,それが前記各入札の予定価格なのか,これに近い予算額であったのかについては,それ自体では必ずしも判然とはしない。この点について,被告人は,捜査段階では,予定価格を教えたことを認める旨の供述をしていた(乙3)が,公判では,予定価格ではなく予算額を教えたにとどまると弁解しており必ずしも一貫していない。しかし,関係各証拠によれば,a市の公共工事の入札公告前には,予定価格を記載しない決裁(いわゆる「金抜き決裁」)が行われていることが認められ,被告人が前記各公告前に具体的な予定価格を知っていたことを示す的確な証拠はなく(被告人の前記検察官調書も「予定価格」とこれに近い「予算額」の違いを明確に意識して供述されたものではない可能性が認められる。),被告人が,既に公表されていた予算額を教示した可能性がないとはいえない。また,被告人が,前記各公告と一致する経審点の点数(P点,Y点)をA3に教示した事実は認められるものの,被告人が公判で供述するとおり,その各数日後には,市の公告によってこれらが公表されることになっていた上,それ自体秘匿性の高い重要情報であるとみるべきかについては議論の余地があり,被告人がそのような重要情報という認識を有していたかについても疑問の余地がないとはいえない。 いずれにして とになっていた上,それ自体秘匿性の高い重要情報であるとみるべきかについては議論の余地があり,被告人がそのような重要情報という認識を有していたかについても疑問の余地がないとはいえない。 いずれにしても,被告人がこれらに関する情報をA3に教示することが,被告 人の本件談合への加担を示す有力な間接事実の一つであるとみるためには,被告人が,これらの情報について,株式会社B1が本件工事を談合により落札するために必要ないし有益なものであることを知った上で教示したというのでなければ,本件談合の共犯性等を裏付ける間接事実としての十分な推認力は働かないというべきである。しかるに,本件においては,もとよりA3が,被告人に対して,これらの情報について,株式会社B1が本件工事を談合により取得するために必要ないし有益なものであるという事情を明らかにした上で被告人に教示を求めたものではないし,被告人が,A3との折衝時に,そのことを明確に知りつつ教示したことを示す的確な証拠があるとはいえない。検察官は,被告人が,A3からこれらの情報提供を求められた際,A3に本件工事について談合情報があるかを尋ねていないし,なぜそのような情報を公告前に得ることが必要なのかについても問い質していないことをもって,捜査情報として必要であると考えてこれらをA3に教示した旨供述している被告人の弁解は不合理である旨主張しているが,立証責任上は,むしろ検察官が,被告人の教示意図を十分に立証しなければならないというべきであるのに,本件においてはこれが的確になされているとみることはできず,この点に関する被告人の弁解を直ちに排斥することはできないというべきである。 (6)発注方式と予算増額に関する被告人の関与についてここで,本件工事の発注方式と予算増額に関する被告人の関与について考察しておく る被告人の弁解を直ちに排斥することはできないというべきである。 (6)発注方式と予算増額に関する被告人の関与についてここで,本件工事の発注方式と予算増額に関する被告人の関与について考察しておくと,本件においては,株式会社B1側が,本件工事を自社で受注し易くする目的で,本件清掃工場のプラントと建屋の分離発注及びプラントと建屋の設計の分離発注をそれぞれ希望し,A5からA2を通じてその働きかけをa市側にしていたこと,A2とA1及びA3がこれに応じて,市役所で市の幹部職員を相手に,談合防止の名目で,二度にわたり,株式会社B1の意向に沿った働きかけをしたことが認められるものの,被告人が,そのような関係者の意図を知っていたことや株式会社B1の本件工事受注が有利になるようにするた めにこれらの実質的決定に関与したことについては適切に立証されているとはいえない。また,被告人が,2回目の入札に際し,株式会社B1の利益を図る目的であえて本件工事に必要のない予算を増額させるために部下職員らに働きかけたり,同社が談合をし易くするために経審点を不当に引き上げて入札可能な業者を減らすのに協力したことを示す的確な証拠も見当たらない。検察官は,被告人が,1回目の入札後に本件工事につき18億円の増額を了承したことをもって,被告人が自己の犯罪として主体的に本件談合に関与したことを示す事実であると主張している。しかし,Qの供述等によれば,被告人が,18億円の増額を了承したのは,平成17年8月19日午後に,C3室と財政課の各職員が補正予算の折衝をしていたところ,15億円の増額に止めるべきと主張する財政課と,18億円の増額を主張するC3室との間で意見の調整がつかず,これを打開する手段として,上司に相談する話となり,Qが担当理事のOに伺いを立てようとしたところ,同人が 額に止めるべきと主張する財政課と,18億円の増額を主張するC3室との間で意見の調整がつかず,これを打開する手段として,上司に相談する話となり,Qが担当理事のOに伺いを立てようとしたところ,同人が在室せず,被告人とは会えたことから,3億の増額につき意見を聞くと,Qの考えで進めてよいと言われたため,その旨持ち帰り財政課と再協議した結果,18億円を増額するという結論になったもので,被告人が本件工事につき談合がされることを意識して,あえて不要な予算の増額に応じる意見を述べた事実を窺うことはできず,被告人の前記意見の表明が,被告人の本件談合の共犯性や主体性を示すようなものとみることはできない。そうすると,この点に関する検察官の主張は失当である。 (7)検察官の被告人による談合疑惑黙殺の主張について検察官は,1回目の入札が不調になった後,市職員の間で談合の疑いが持たれていたにもかかわらず,被告人において,市職員に対して何ら調査を指示せず,その疑いを黙殺したとして,そのことを被告人が本件談合を共謀したことの1つの根拠として主張する。なるほど,Rの検察官調書謄本(甲10)及びSの供述等によれば,被告人もいる場で,C3室の職員らが本件工事の増額の件で話をした際,入札不調の原因についても話題となって,業者間の談合があ ったのではないかという話が出たこと,その際,被告人からは,特にその原因について調査等をするよう指示がされなかったという事実は認められるものの,a市としては,1回目の入札につき監視委員会の報告及び公正取引委員会の判断が示されることになっている以上,必要な調査はしていると判断することは十分に理由があると考えられるし,そもそも,そのような調査権限等を持たない市職員が,公共工事の談合の有無を的確に調査する方法については一定の限界があると考 以上,必要な調査はしていると判断することは十分に理由があると考えられるし,そもそも,そのような調査権限等を持たない市職員が,公共工事の談合の有無を的確に調査する方法については一定の限界があると考えられる。しかも,予算増額の話に付随して,談合のことがあくまで疑いの領域として話題に出たのであれば,これを聞いた被告人が,その有無を特に調査するよう指示しなかったとしても,必ずしも不自然とみることはできず,そのことをもって被告人が「談合の疑いを黙殺した」などと評価するのは無理があり,この点に関する検察官の主張も採用できない。 (8)本件における被告人の立場について被告人とA3,A1,A2らとの間には,見過ごすことのできない立場の相違が認められる。すなわち,関係各証拠を精査しても,被告人が,関西の建設業界において,従来からどのような談合が行われていたかについて知っていたことや,株式会社B1が株式会社Gと並んで関西の受注調整を取り仕切っていたこと,とりわけ,株式会社B1のA4が,各建設会社談合担当者の間で建築工事の受注調整に大きな発言権を持っていることなど知っていたことを裏付ける証拠は存在しない。被告人は,A1やA2が,かねてより市議会でKと政治的に対立していたことくらいは,当時の理事や助役として知っていた可能性は認められるが,Kが,特定の建設業者と結託して,a市の公共工事について談合を行わせ,そこから利権を得ているという話を知っていたことを裏付ける的確な証拠は認められない。ましてや,A1やA2が,M会談以前からa市の公共工事からKを排除することについて相談をしていたことやM会談の状況について,被告人が,A1をはじめとする本件関係者から聞き知っていたことを裏付ける証拠も存在しない。さらに,A1,A2及びA3が,A2宅でたびたび 会合を開き て相談をしていたことやM会談の状況について,被告人が,A1をはじめとする本件関係者から聞き知っていたことを裏付ける証拠も存在しない。さらに,A1,A2及びA3が,A2宅でたびたび 会合を開き,本件工事に関し情報交換を行い,株式会社B1に本件工事を受注させる方向で重要な話し合いをしていたことを知っていたことを示す証拠もなく,A3とA5が,本件工事を株式会社B1に受注させるべく繰り返し折衝をしていた具体的状況を被告人が知っていたことを示す的確な証拠もない。加えて,被告人は,A3と面談した際に,株式会社B1が本件工事に関して,入札金額をどのように考えているか,本件工事を取る,あるいは流すと言っているのか(この点の解釈が多義的であることは前述したとおりである。)などについて聞いているに止まり,関西で受注調整に大きな力を持っていた株式会社B1が,他の建設業者に働きかけて,受注調整をしている,あるいは圧力をかけて,入札を思い止まらせるような動きをしていると明確に知っていたことを的確に示す証拠も見当たらない。 しかも,被告人は,助役ないし副市長として,市長であるA1と日常的に接触していたはずで,本件の共犯であるとすると,被告人とA1との間では,少なくとも部外者であるA3以上に,本件工事の予定価格,参加資格あるいは株式会社B1の動静等について,密接に話し合っていてもなんら不思議ではなく,むしろそうすることが極めて自然とさえいえるのに,その点については,証拠上明らかにされておらず,わずかに,A1が,被告人からA3のことを問われた際に,A3の動きを気にしなくていいと告げたのみで,それ以上に,本件工事の受注先に関する情報のやりとりが両者間でなされたという立証も適切になされていない。 以上によれば,本件における被告人の立場は,何度も一同に会したり,電話 くていいと告げたのみで,それ以上に,本件工事の受注先に関する情報のやりとりが両者間でなされたという立証も適切になされていない。 以上によれば,本件における被告人の立場は,何度も一同に会したり,電話連絡を取り合ったりして,本件工事に関する密接な情報交換を繰り返していたA1,A2,A3,あるいはA3やA2とたびたび接触していたA5,さらに本件談合の形成に直接的に関わっていたA4ら談合担当者とは,全く異質なものがあるとみざるを得ず,この点も,被告人の共犯性に大きな疑問を抱かせる事情というべきである。 (9)本件犯行動機について最後に,被告人が本件談合に加担する動機があるかについてみておくと,検察官は,この点につき,①担当副市長として,本件工事が不調になれば,自らの責任問題になることをおそれ,株式会社B1に落札してもらうことを希望した,②自分を副市長に任命したA1の意向に従うというものがあると主張している。 しかし,①の点は,被告人が,副市長として,大型公共工事の談合という明らかに違法な行為に加担する動機としては,余りにも薄弱というべきである。 すなわち,本件清掃工場建設の責任者であった被告人が自己の職務を忠実に果たしたいと考え,入札が円滑に行われることを望むのは当然のことであって,仮に,本件工事につき,二度目の入札がなかったとしても,その原因は,予算面,業者側の事情,社会情勢その他いろいろと考えることができるのであり,それがひとえに副市長である被告人の責任問題に直結するものではない。検察官は,A3供述にある「今度また不調になったら私自身責任問題で失態や」などという被告人の発言をその主張根拠としているとみられるものの,そのような発言が被告人からなされたとしても,そのことが,被告人の談合加担への犯意や動機を推認させるとはいえない。また 問題で失態や」などという被告人の発言をその主張根拠としているとみられるものの,そのような発言が被告人からなされたとしても,そのことが,被告人の談合加担への犯意や動機を推認させるとはいえない。また,②の点についても,被告人が,違法行為を犯してまで,市長であるA1の意向に従うような事情があったかや被告人に具体的にどのような利益があるのかについて,検察官によって十分な立証がされているとはいえない。仮に,被告人において,助役ないし副市長に任命あるいは再任してもらったということで,市長であるA1に恩義を感じていたとしても,そのことが,事件が発覚した場合の刑事罰や懲戒免職の危険を冒してまで,市長の違法行為を知りつつ,これに積極的に協力加担する動機につながるとはにわかに考えがたい。しかも,被告人とA1との間には,通常の市長副市長という関係を超えて,そのような違法行為を協力して行わざるを得ないような特別な私的関係があったことを窺わせる証拠はない。検察官は,わず かに,被告人が,助役,副市長に就任したときに,A1に対して,商品券(それぞれ5万円と10万円)などのお礼を持って行った事実を取り上げて,被告人とA1との特別な関係を推認させようとしているかのようであるが,そのようなお礼の方法が,社会通念上相当かどうかはさておき,そのことが被告人とA1との間の犯罪の共謀につながる特別な関係を推認させるなどとみることはできない。加えて,被告人が,他の本件共犯者の犯行動機(A2,A3においては株式会社B1から謝礼を得ること,A2,A1においては,政敵を排除することがあったと認められる。)を知っていたことや被告人が共犯者のこのような目的のために,本件談合に協力,加担する気になったなどという立証は全くなされていない。そうすると,被告人において,本件談合に共犯とし あったと認められる。)を知っていたことや被告人が共犯者のこのような目的のために,本件談合に協力,加担する気になったなどという立証は全くなされていない。そうすると,被告人において,本件談合に共犯として加担する動機は存在しないか極めて希薄であり,検察官によって,この点につき的確な立証がなされているということはできない。 (10)そして,他に,本件関係各証拠を子細に検討しても,被告人が本件談合を共謀したことを認めるに足りる十分な証拠はない。 結論 以上の認定説示によって明らかなように,取調済みの全証拠によっても,被告人が本件談合を共謀したと認定することはできず,本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるから,刑事訴訟法336条により被告人に対し,無罪の言渡しをする。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑・懲役1年6月)平成21年4月27日大阪地方裁判所第3刑事部裁判長裁判官樋口裕晃 裁判官能宗美和裁判官橋本健は転補のため署名押印できない。 裁判長裁判官樋口裕晃
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