判決平成13年12月19日神戸地方裁判所平成9年(行ウ)第46号公金違法支出による損害賠償請求事件 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,篠山市に対し,金4億3258万円及びこれに対する平成9年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,篠山市に対し,金212万3000円及び内金106万1000円に対する平成8年10月12日から支払済みまで,内金106万2000円に対する平成9年5月10日から支払済みまで各年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,篠山市に対し,金394万2790円及びこれに対する平成9年5月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は,篠山市に対し,金2969万円及び内金1628万円に対する平成9年4月1日から支払済みまで,内金1341万円に対する平成9年6月18日から支払済みまで各年5分の割合による金員を支払え。 5 1ないし4項につき仮執行の宣言第2 事案の概要等本件は,篠山市(なお,多紀郡4町〔篠山町,丹南町,西紀町及び今田町〕は,平成11年4月1日,合併して篠山市となったが,市となる以前の各町をいうときは,「多紀郡」,「篠山町」,「丹南町」などという。)の住民である原告が,本件で問題となっている各公金支出をした当時の篠山町長であった被告に対し,篠山町が,①丹南町に対してしたJR西日本(西日本旅客鉄道株式会社)の篠山口駅周辺整備事業(以下「本件事業」という。)に伴う事業費負担金4億3258万円(以下「本件負担金」という。)の支出,②篠山町同和教育協議会(以下「 てしたJR西日本(西日本旅客鉄道株式会社)の篠山口駅周辺整備事業(以下「本件事業」という。)に伴う事業費負担金4億3258万円(以下「本件負担金」という。)の支出,②篠山町同和教育協議会(以下「本件協議会」という。)に対してした補助金212万3000円(以下「本件補助金」という。)の支出,③納税奨励金394万2790円(以下「本件奨励金」という。)の支出,④篠山町行政協力員に対してした行政協力員報酬及び委託料の合計2969万円(以下「本件報酬等」という。)の支出(以下,①ないし④を合わせて「本件各公金支出」という。)は,いずれも違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号前段に基づき,篠山市に代位して,篠山市に対する本件各公金支出の合計額4億6833万5790円及び本件各公金支出額について,それぞれ公金支出日の翌日から民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた住民訴訟の事案である。 1 前提となる事実(証拠を掲げた事項以外は,当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告は,篠山市の住民であり,本件訴え提起の時点では篠山町の住民であった。 イ被告は,本件各公金支出の当時の篠山町長である。 (2) 本件各公金支出ア篠山町は,平成9年3月31日,丹南町に対し,JR西日本(西日本旅客鉄道株式会社)福知山線の篠山口駅周辺整備事業(本件事業)に伴う篠山町の事業費負担金として,4億3258万円を支出した(本件負担金)。 イ篠山町は,本件協議会に対し,平成8年10月11日に106万1000円を,平成9年5月9日に106万2000円を,いずれも補助金として支出した(本件補助金)。 ウ篠山町は,同日,篠山町納税奨励金交付規則(篠山町平成7年規則第12号)に基づき,平成9年 0円を,平成9年5月9日に106万2000円を,いずれも補助金として支出した(本件補助金)。 ウ篠山町は,同日,篠山町納税奨励金交付規則(篠山町平成7年規則第12号)に基づき,平成9年度納税奨励金として394万2790円を支出した(本件奨励金)。 エ篠山町は,篠山町行政協力員に対し,平成9年3月31日,行政協力員報酬として1628万円を,同年6月17日,委託料として1341万円をそれぞれ支出した(本件報酬等)。 (3) 住民監査請求ア原告は,平成9年7月25日,篠山町監査委員に対し,前記(2)アの本件負担金の支出が違法であるとして,地方自治法242条に基づき必要な措置を請求する旨の住民監査請求をした(甲1の1・2)。 イ原告は,同日,篠山町監査委員に対し,前記(2)イの本件補助金の支出が違法であるとして,地方自治法242条に基づき必要な措置を請求する旨の住民監査請求をした(甲1の1・3)。 ウ原告は,同月28日,篠山町監査委員に対し,前記(2)ウの本件奨励金の支出が違法であるとして,地方自治法242条の規定に基づき必要な措置を請求する旨の住民監査請求をした(甲1の1・4)。 エ原告は,同日,篠山町監査委員に対し,本件報酬等の支出が違法であるとして,地方自治法242条の規定に基づき必要な措置を請求する旨の住民監査請求をした(甲1の1・5)。 オ篠山町監査委員は,同年11月7日,原告に対し,本件各公金支出はいずれも適法であることを理由として,上記ア,イ,ウ及びエの各住民監査請求に係る措置の必要は認められない旨の同年9月24日付け監査結果通知(甲1の1)を発送した。 (4) 合併多紀郡篠山町,西紀町,丹南町及び今田町は平成11年4月1日合 監査請求に係る措置の必要は認められない旨の同年9月24日付け監査結果通知(甲1の1)を発送した。 (4) 合併多紀郡篠山町,西紀町,丹南町及び今田町は平成11年4月1日合併して,篠山市となった 2 争点は,次のとおり,本件各公金支出の適法性である。 (1) 被告が丹南町に対してした本件負担金4億3258万円の支出は,地方財政法28条の2に違反するか。 (2) 被告が本件協議会に対してした本件補助金合計212万3000円の支出は,憲法13条,14条,89条後段に違反するか。 (3) 被告がした本件納税奨励金394万2790円の支出は違法か。 (4) 被告が篠山町行政協力員に対してした本件報酬等合計2969万円の支出は違法か。 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)(本件負担金の支出の違法性)について(原告の主張)被告が丹南町に対してした本件負担金4億3258万円の支出は,以下のとおり地方財政法28条の2に違反する。 (1) 本件負担金の支出は,法人格を有する地方公共団体間で事業経費を融通し合い,行政の縦割り構造や秩序を破壊し,法による地域区分を混乱させ,互いに内政干渉の口実を与えて独自性を失わせるなどして,地方自治の根本を揺るがすおそれがあるものであって,「地方公共団体は,法令の規定に基づき経費の負担区分が定められている事務について,他の地方公共団体に対し,当該事務の処理に要する経費の負担を転嫁し,その他地方公共団体相互の間における経費の負担区分をみだすようなことをしてはならない。」とする地方財政法28条の2に違反する。 (2) 多紀郡4町は,当時,対等合併を標榜していたため,篠山町が,債務超過であった丹南町に対して公金を内密に横流しをすることによって,債権債務関係を 。」とする地方財政法28条の2に違反する。 (2) 多紀郡4町は,当時,対等合併を標榜していたため,篠山町が,債務超過であった丹南町に対して公金を内密に横流しをすることによって,債権債務関係を調節する必要があった。このような支出は,合併後であれば認められても,合併前に法的根拠なく行うことは許されない。 (被告の主張)以下のとおり,本件負担金の支出は地方財政法28条の2に違反せず,適法である。 (1) 多紀郡4町は古くから篠山盆地の同一の文化,経済,生活圏を形成し発展してきた。こうした歴史的背景の下,住民生活に密接に関わる共通課題については,4町で多紀郡広域行政事務組合を設立し,事務の一部を共同処理し効率ある自治運営を進めてきた。 (2) 本件事業は,多紀郡住民の長年にわたる悲願であったJR福知山線(新三田・篠山口間)複線化に伴う事業で,多紀郡住民の利便性の向上を目指し,4町の交通体系の中心地,玄関口である篠山口周辺の都市機能を充実させようとする広域行政上有益かつ必要な事業である。 (3) 多紀郡4町が本件事業を共同で実施するため,多紀郡4町の町長の間で,平成6年3月3日,事業の種類,事業実施の代表町,経費の負担割合等に関する協定を締結し(乙7。以下「本件協定」という。),本件協定に基づき,篠山町は,地方自治法232条の2を根拠として本件負担金を支出した。 本件事業は,原告が主張するような丹南町が事業主体である同町の単独事業ではなく,4町共同負担の下で整備に取り組む共同事業であって,自治省との協議も経ているものである(乙8)。 (4) 地方財政法28条の2は,地方公共団体相互の財政秩序に関しての一般規定であり,経費の負担区分が定められている事務について,その処理に要する経費の負担を他の地方公共団体 のである(乙8)。 (4) 地方財政法28条の2は,地方公共団体相互の財政秩序に関しての一般規定であり,経費の負担区分が定められている事務について,その処理に要する経費の負担を他の地方公共団体に転嫁する等地方公共団体相互における経費の負担区分をみだすような行為を禁止する規定である。しかるに,本件負担金は,多紀郡4町の共同事業の負担金であって,地方財政法等の法令上,当然負担すべきものとして交付する負担金ではなく,自治体相互に利害関係がある事業に対して応分の負担をしようとするもので,議会の議決を得て予算化し支出されたものであり,同条の射程外にあるものである。 (5) 仮に,本件負担金の支出が違法であったとしても,同支出の後に篠山町と丹南町を含む多紀郡4町は篠山市となった(同人格となった)以上,篠山市にもはや損害はないというべきである。 2 争点(2)(本件補助金の支出の違憲性)について(原告の主張)(1) 被告が本件協議会に対してした本件補助金合計212万3000円の支出は,以下のとおり憲法13条,14条に違反する。 ア本件協議会は,個人が世帯単位で行政協力員を通じて参加するシステムで組織形態が暴力団類似の旧い体質である。同協議会は会員に対する差別的取扱いや差別意識を助長するもので,役員がお手盛りで公金を着服している事実も存在する。このような本件協議会に対して公的に補助金を支出することは,むしろ差別を助長する結果となる。 イ本件協議会の会費は,1世帯あたり一律400円であるが,これは戦前の家父長制を踏襲した会費徴収方法であって,家族の人数及び個人の負担能力を斟酌していない点で不平等な取扱いである。 ウ被告は,会費の徴収は任意であると主張するが,行政協力員から,本件協議会への入会及び会費徴収の依頼がさ 方法であって,家族の人数及び個人の負担能力を斟酌していない点で不平等な取扱いである。 ウ被告は,会費の徴収は任意であると主張するが,行政協力員から,本件協議会への入会及び会費徴収の依頼がされれば,事実上住民は断ることはできない。 (2) さらに,同和教育は「公の支配に属しない教育」に該当するから,本件補助金の支出は憲法89条後段に違反する。 (被告の主張)以下のとおり,本件補助金の支出は憲法13条,14条,89条後段に違反するものではなく,適法である。 (1) 本件協議会は,部落差別等の差別根絶のため同和教育の徹底を期するために昭和51年に発足した組織であり,差別根絶に向けての活動実態及び実績から,公益上必要な団体であることは明らかである。一般に人権教育の推進は本件協議会を含む民主団体の学習推進によるところが大きく,同和教育・人権教育の学習活動推進に本件協議会の果たす役割は高く評価されており,同協議会に対して住民学習を中心とした学習活動に対する支援のための補助金を支出する必要性と公共性は非常に高い。 本件補助金は,地方自治法232条の2所定の「寄附又は補助」に当たるところ,上記のとおりの「公益上の必要」性から,予算として議会に提案されその議決を経て交付されたもので,同条により適法である。 (2) 原告は,「公の支配に属しない教育」に公金を支出することは,憲法89条後段に違反すると主張する。 しかし,本件協議会は,篠山町議会から常任理事2名,町行政から常任理事1名と理事1名の参画を受けており(乙4の21頁),さらに,同協議会の執行部役員の中で会計監査に町議会議員たる常任理事が就いていた(乙5)もので,「公の支配」に属するものである。 また,憲法89条後段にいう「教育の事業」は,教育 の21頁),さらに,同協議会の執行部役員の中で会計監査に町議会議員たる常任理事が就いていた(乙5)もので,「公の支配」に属するものである。 また,憲法89条後段にいう「教育の事業」は,教育される者についてその精神的又は肉体的な育成を図るべき目標があり,教育する者が教育される者を教え導いて計画的にその目標の達成を図る事業(乙22の1035頁,1036頁)と限定して解釈すべきであるところ,本件協議会の行う教育事業は,互いに知識や関心を高め合う,いわば相互教育というべきもので,上記の意味の「教育」には該当しない。 したがって,本件補助金の支出は,いずれにせよ憲法89条後段に違反するものではない。 (3)ア本件協議会の会費については,篠山町が,任意で本件協議会の趣旨・目的に賛同してくれる世帯から,1世帯当たり年額400円を総代会を通じて徴収している(乙6)。なお,徴収率は約80%である。 イまた,役員手当については,会長1名(年額10万円),副会長5名(年額各3万円),会計1名(年額3万円),監査委員2名(年額各5000円)の役員計9名の役員手当は,年額で合計29万円である。 これらについては,憲法13条,14条違反が問題となるようなことはない。 3 争点(3)(本件納税奨励金の支出の違法性)について(原告の主張)以下のとおり,本件納税奨励金394万2790円の支出は,法的根拠がない上,納期前納付報奨金との二重払いとなるもので,違法である。 (1) 納税奨励金は,地方税法321条2項の納期前納付報奨金と名称が似ているが,行政用語にない「奨励金」という言葉をでっちあげて規則を作り,住民,議会に内緒で支出してきたもので,法的根拠はない。本来,条例を制定すべきであるのに,これを怠っているのは違法で と名称が似ているが,行政用語にない「奨励金」という言葉をでっちあげて規則を作り,住民,議会に内緒で支出してきたもので,法的根拠はない。本来,条例を制定すべきであるのに,これを怠っているのは違法である。納期前納付報奨金についても条例制定が義務付られている(地方税法321条2項)。 (2) 納税奨励金交付規則によると,納税を奨励する必要のない納期前納付者の納税額も奨励金交付額算出の根拠としているから,納期前納付者が納税貯蓄組合又は納税協力団体に所属していれば,結局,報奨金と納税奨励金を二重に受け取れることになり,町財政を圧迫することになる。 (3) 篠山町が合併して篠山市になった時点で,本件納税奨励金は廃止されたが,これは本件納税奨励金が違法であると認識されたことの証左である。 (被告の主張)以下のとおり,本件納税奨励金の支出は適法である。 (1) 本件納税奨励金は,篠山町納税奨励金交付規則に基づき,予算の範囲内で篠山町内の納税協力団体である各集落に対して支出されたものである。納税貯蓄組合に対して支出されたものではなく,支払方法としての銀行振込先の口座名義はさまざまではあるが,現実に各集落で受け取り,管理している。 (2) 納税奨励金交付規則の目的は,町民の納税意識を高め,円滑な納税を促進すると共に,組合の健全な発達,町財政の確保を図るためである(1条)。 (3) 本件納税奨励金の支出は,地方自治法232条の2「寄附又は補助」に該当するところ,同奨励金の支出は納税意識の高揚,納期内の納税の実を上げるために役立っており,また,支出を受けた各集落において有意義な用途に使用されているものであるから,「公益上の必要」があるといえ,同条により適法である。 4 争点(4)(本件報酬等の支出の違法性)について(原告の主張) ,支出を受けた各集落において有意義な用途に使用されているものであるから,「公益上の必要」があるといえ,同条により適法である。 4 争点(4)(本件報酬等の支出の違法性)について(原告の主張)被告が篠山町行政協力員に対してした本件報酬等合計2969万円の支出は,以下のとおり違法である。 (1) 行政協力員の報酬は世帯戸数に比例すべきであり,委託料は一律であるべきところ,報酬が定額で委託料が戸数割となっており,逆になっている。すなわち,報酬とは,非常勤職員の勤務に対する反対給付のことで,法や条例等で固定化されていない限り,勤務時間や仕事量によって報酬額が変化するのが通例であるところ,行政協力員報酬は,受持ち世帯数や面積がまちまちであるにもかかわらず均等額が支出されており,他方,行政協力員委託料は,委託契約金のことで,本来同一委託契約の委託料は同額であるのが当然であるにもかかわらず,受持ちの世帯割で支出されている。 (2) 公金は,正当かつ効果的に支出するべきもので,支出先の選定や支出額の算定があいまい,不当であってはならず,地方自治体は,支出した公金の使途及び効果を厳密に調査し,次年度予算の配分の参考にし,公金の支出決定は公平で厳格で,かつ科学的・法的な根拠が必要である。本件報酬等については,形式的には世帯割も取り入れているが,均等割のウェイトが大きすぎ,8世帯の小集落の行政協力員は,200世帯超の大集落の行政協力員より1世帯当たり十倍以上の協力費の支給を受けることになる。 (3) また,行政協力員の中には,町広報の配布をしないとか回覧板を回さないなどの村八分行為をする者が存在し,このような前近代的な差別を温存・助長している行政協力員が公金から報酬等を受け取る資格はない。そのような行政協力員に本件報酬等を支出するこ ないとか回覧板を回さないなどの村八分行為をする者が存在し,このような前近代的な差別を温存・助長している行政協力員が公金から報酬等を受け取る資格はない。そのような行政協力員に本件報酬等を支出することは,結局は地方自治体が経済的・社会的差別を助長・支援することにほかならず,国や地方公共団体や国民を近代人に育てることを趣旨とする憲法13条,14条に違反する。 (被告の主張)以下のとおり,本件報酬等の支出は適法である。 (1) 篠山町行政協力員設置要綱(乙9。以下「本件要綱」という。)に基づき,町内の各集落(自治会,町内会を含む。)から推薦を受けた各集落の代表者を行政協力員として,業務を委嘱しているものであり(一種の業務委託契約〔随意契約〕),委嘱している業務内容は,本件要綱3条規定のとおりであって,町行政の情報伝達等,行政施行の上で重要な役割を担うものである。その役務の代価として,行政協力員報酬(均等割)と委託料(戸数割)を分別支給しているものである。 (2) 篠山町が,行政協力員の協力を得て実施する行政事務の内容及び業務量は,町広報等の文書頒布等,行政からの連絡業務を除き,必ずしも行政協力員が所属する各集落の大小に比例するものではない。そこで,本件報酬等は,適正に計上された関係予算額を戸数割と均等割に分け2段階積算方法による支出をしてバランスを図っており,合理的なものである。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件負担金の支出の違法性)について(1) 第2の1の前提となる事実,証拠(甲3の1・2,乙7,8,14,15,証人E)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア多紀郡4町(篠山町,西紀町,丹南町及び今田町)は古くから篠山盆地の同一の文化,経済,生活圏を形成し発展してきたが,こうした歴史的 証人E)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア多紀郡4町(篠山町,西紀町,丹南町及び今田町)は古くから篠山盆地の同一の文化,経済,生活圏を形成し発展してきたが,こうした歴史的背景の下,住民生活に密接に関わる4町の共通課題について,4町で多紀郡広域行政事務組合を設立して,し尿処理,ごみ処理,消防,訪問看護ステーション,広域市町村圏計画の策定及び同計画に基づく実施の連絡調整,休日診療に関する各事務などを共同処理し効率ある自治運営を進めてきた。 イ本件事業は,上記多紀郡広域行政事務組合が共同処理すべき事務として定められた事務ではないが,多紀郡4町の住民が待望していたJR西日本福知山線新三田・篠山口間の複線化に伴う事業であって,(ア)篠山口駅橋上化事業,(イ)東西自由通路整備事業,(ウ)西口駅前広場整備事業,(エ)西口駅前線新設事業,(オ)広域駐車場新設事業をその内容とする事業である。 ウ多紀郡4町では,本件事業について,同郡住民の利便性の向上を図り,4町から大阪・神戸方面及び山陰地方へ通じる交通の要衝である篠山口駅周辺の都市機能を充実させる広域行政上有益な事業であると認識し,多紀郡4町の共同事業として,篠山口駅所在地の丹南町が代表町となって実施することとし,多紀郡広域行政事務組合議会において事業実施の決議がされた。 エ同決議を受けて,4町の町長が協議を行い,平成3年9月24日付けで締結された福知山線複線化事業に関する覚書に基づき,平成6年3月3日,以下の内容を含む本件協定(乙7)を締結した。 (ア) 事業内容上記イのとおり(イ) 事業実施の代表町丹南町(ウ) 経費の負担割合 a 篠山町が30.754% (ア) 事業内容上記イのとおり(イ) 事業実施の代表町丹南町(ウ) 経費の負担割合 a 篠山町が30.754%b 西紀町が10.260%c 丹南町が49.427%d 今田町が9.559%(エ) 納付丹南町へなお,上記各町の負担割合は,三田市を含む当該地域を通っているレールの長さ,駅の数を基に,乗車人員,各自治体の財政規模,人口などの要素を考慮して算出されたものである。 オ篠山口駅橋上化事業(前記イのとおり,本件事業に含まれる事業の一つである。)の経費10億1000万円のうち,7億8500万円は代表町として丹南町が行う寄付金(そのうち篠山町の負担率は30.754%で,負担額は2億4141万9000円である。)で,その余の2億2500万円をJR西日本で負担することが予定されていた。そこで,丹南町長は,丹南町の上記寄付金の支出について,自治省財政局指導課長宛に寄付金支出協議書を提出したところ,同課長から同寄付について異議がない旨の通知を受けた(乙8。平成6年10月19日自治導第124号)。 カ丹南町都市計画課作成の本件事業財政計画〔平成8年度確定〕において,4町の各負担額が前記ウの本件協定所定の負担割合に従って決定され,篠山町は,各具体的事業毎に次のとおりの負担金を負担することになった。 (ア) 篠山口駅橋上化事業負担割合 30.754%負担金 1億6019万4000円(イ) 東西自由通路整備事業負担割合 30.754%負担金 負担割合 30.754%負担金 1億6019万4000円(イ) 東西自由通路整備事業負担割合 30.754%負担金 2億2322万3000円(ウ) 西口駅前広場整備事業負担割合 30.754%負担金 384万4000円(エ) 西口駅前線新設事業負担割合 30.754%負担金 75万7000円(オ) 広域駐車場新設事業負担割合 30.754%負担金 4456万2000円(ア)ないし(オ)の合計負担金4億3258万0000円キ篠山町は,同町議会で本件負担金として上記カの予算を上程してこれを可決した上,平成9年3月31日,上記財政計画に定められたとおりの4億3258万円の本件負担金を支出した。 (2) 上記(1)の認定事実に基づいて判断する。 ア地方財政法28条の2は,地方公共団体相互間(特に都道府県と市町村間)の財政秩序に関する基本原則を規定した一般的規定であって,それは,地方公共団体の財政の健全性とともに地方公共団体の自主性・自律性を確保するという趣旨から,法令の規定に基づき経費の負担区分が定められている事務について,他の地方公共団体に対して経費の負担を転嫁するなど,法令で定められた地方公共団体相互間における経費の負担区分をみだす行為を禁止している。 ところで,複数の地方公共団体が共通する利害に基づいて一定の共同事業を行う場合,同共同事業によって受益を受ける地方公共団体がその事業遂行に当たって合理的に算出された応分の負担額を支出 る。 ところで,複数の地方公共団体が共通する利害に基づいて一定の共同事業を行う場合,同共同事業によって受益を受ける地方公共団体がその事業遂行に当たって合理的に算出された応分の負担額を支出すること,その方法として,同事業の代表主体たる地方公共団体に対して同負担額を支出することは,地方財政法28条の2の上記趣旨,文言からすると,禁じられていないと解するのを相当とする。 イそこで,本件であるが,本件事業は,前記(1)ウのとおり多紀郡4町の共同事業としてJR西日本の篠山口駅の所在する丹南町が事業主体となって実施されたもので,その事業経費を篠山町を含む多紀郡4町が負担することとしたものである。そして,その負担割合は,本件協定によって,前記(1)エのとおり各町の受益の程度や人口等に応じて定めたもので,合理性を有している。 以上のとおり篠山町を含む4町は,共通の利害を有する本件事業の遂行に当たって,同負担割合に応じて各負担金を支出したものであって,他の町が本来負担すべき負担分を負担したものではない。 そうすると,篠山町が負担した本件負担金の支出は,篠山町が負担すべき経費(地方財政法9条)であって,地方財政法28条の2に違反するものではない。 ウなお,原告は,第3次多紀郡広域市町村圏計画の実施計画(甲3の1・2)には,「事業実施主体」として「丹南町」,「事業の種類」として「町単独」と記載されており,逆に,多紀郡4町の共同事業であることを示す記載はない旨主張する。しかし,本件事業は,前記(1)認定のとおり篠山町を含む多紀郡4町の共同事業であり,上記「町単独」との記載は,同事業が国や県から補助を受けていないということから記載されたものと認めることができる。したがって,原告の上記主張は採用することができない。 郡4町の共同事業であり,上記「町単独」との記載は,同事業が国や県から補助を受けていないということから記載されたものと認めることができる。したがって,原告の上記主張は採用することができない。 また,原告は,本件負担金の丹南町への支出について,対等合併の建前を維持するため,当時債務超過の状態にあった丹南町に対し篠山町が公金を支出することで,合併に伴う債権債務関係の調整を図った旨主張する。しかし,上記主張を認めるに足る的確な証拠がない。 ところで,篠山町の本件負担金の支出について,篠山町議会は,前記(1)キのとおり本件協定に定める負担割合に基づく予算を上程してこれを可決し,それを受けて篠山町が前記財政計画に定められたとおりの金額を支出したのであるから,手続的にも違法な支出であることを窺わせる事情は認められない。 エ以上によると,被告が丹南町に対してした本件負担金4億3258万円の支出が,地方財政法28条の2に違反する違法なものであるとは認められない。 2 争点(2)(本件補助金の支出の違憲性)について(1) 第2の1の前提となる事実,証拠(乙4ないし6,20,証人A)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア本件協議会は,部落差別を始めとする差別根絶のため,同和教育の徹底を期することを目的として,昭和51年に発足した組織で,その事務局は篠山町役場の付属棟に置かれていた。本件協議会は,篠山市の成立後,篠山市人権・同和教育研究協議会となっている。 イ本件協議会は,「篠同協だより」などの啓発のための教材作成,住民学習会,PTAなどの各団体の学習会,研修会及び校区別の同和教育研究大会,篠山町全体での研究大会や各種研修会への参加など,差別根絶のための同和教育推進の活動を行っている。 ウ 教材作成,住民学習会,PTAなどの各団体の学習会,研修会及び校区別の同和教育研究大会,篠山町全体での研究大会や各種研修会への参加など,差別根絶のための同和教育推進の活動を行っている。 ウ本件協議会規約(乙4の22頁)第21条には,常任理事は町議会から2名選出することとされ,理事は町議会から2名,町行政から2名推薦された者をあてる旨規定されていた。 これに基づき,本件協議会は,平成10年当時において,篠山町議会議員から常任理事2名(民生福祉委員長,総務文教委員長),町行政から常任理事1名(同和室長)と理事1名(参事兼総務課長)が参画していた。 また,本件協議会の執行部役員の中で会計監査に,篠山町議会議員たる常任理事(民生福祉委員長)が就いていた。 エ篠山町は,いずれも議会の議決を経て,本件協議会に対し,平成8年10月11日に106万1000円,平成9年5月9日に106万2000円の本件補助金を交付した。 オ本件協議会が徴収している会費については,篠山町が,任意で本件協議会の趣旨・目的に賛同する世帯から,1世帯当たり年額400円を総代会を通じて徴収している。なお,世帯からの会費徴収率は約82%である。 カ役員手当については,会長1名(年額10万円),副会長5名(年額各3万円),会計1名(年額3万円),監査委員2名(年額各5000円)の役員計9名の役員手当は,年額で合計29万円である。同手当は,本件協議会,多紀郡同和教育協議会,丹有同和教育協議会などの会合,常任理事会,理事会,会三役の打合せ等に出席する際の交通費等の費用に充てるために支給されるものである。 (2) 上記(1)の認定事実に基づいて判断する。 ア本件補助金は,対価なく支出されたものであって,地方自治法232条の2所定の「 る際の交通費等の費用に充てるために支給されるものである。 (2) 上記(1)の認定事実に基づいて判断する。 ア本件補助金は,対価なく支出されたものであって,地方自治法232条の2所定の「寄附又は補助」に当たるところ,同支出は,「公益上の必要」がある場合にはじめて適法となる。そこで,本件補助金の支出について「公益上の必要」があるか否か,検討する。 本件協議会は,前記(1)ア,イのとおり,部落差別を始めとする差別根絶のため,同和教育の徹底を期することを目的として昭和51年に発足した組織であり,差別根絶に向けて教材を作成したり,住民学習会を含めて各種の学習会や研修会をしたり,他が主催する研修会に参加したりするなど差別根絶のため,幅広い活動をしてきている。 同和教育を始めとする人権教育の推進は,本件協議会のような広く地域住民をその構成員とする団体によってなされることが多い(公知の事実)ところ,篠山町における同和教育,人権教育の推進においても,前記(1)イで認定した事実からすると,本件協議会がこれまで果たしてきた役割は大きく,そして,今後果たすべき役割も大きいことが推認される。したがって,篠山町が本件協議会に対し,住民学習を中心とした学習活動に対して,支援のため,補助金を支出する必要性は高いというべきである。 このような点に照らすと,本件補助金の支出には「公益上の必要」が認められるというべきである。 イまた,原告は,本件補助金は「公の支配に属しない教育」に公金を支出することになり,憲法89条後段に違反すると主張する。 ところで,憲法89条後段(教育の事業に対する公金などの支出を規制)の趣旨は,教育の事業それ自体がそれを営む者の教育についての信念,主義,思想の実現であるから,仮に,公 反すると主張する。 ところで,憲法89条後段(教育の事業に対する公金などの支出を規制)の趣旨は,教育の事業それ自体がそれを営む者の教育についての信念,主義,思想の実現であるから,仮に,公の支配に属しない教育事業に公の財産が支出された場合,教育の名の下に,公教育の趣旨,目的に合致しない教育活動に公の財産が支出される虞れがあり,ひいては公の財産が濫費される可能性があるため,それを防止することにある。このような憲法の趣旨に鑑みれば,教育の事業に対して公の財産を支出することは,当該教育事業が公の支配に属することを要するが,その程度は,国又は地方公共団体等の公の権力が当該教育事業の運営,存立に影響を及ぼすことにより,同事業が公の利益に沿わない場合にはこれを是正する途が確保され,公の財産が濫費されることを防止しうることをもって足りるものと解するのが相当である(東京高等裁判所平成2年1月29日判決・判例時報1351号47頁,東京高等裁判所平成5年7月20日判決・行裁集44巻6・7号627頁参照)。 そこで,本件であるが,本件協議会規約には,前記(1)ウのとおり,常任理事は町議会から2名選出することとされ,理事は町議会から2名,町行政から2名推薦された者をあてる旨規定されているところ,現に,本件協議会は,平成10年当時において,篠山町議会から常任理事2名,町行政から常任理事1名と理事1名の参画を受けていたばかりか,同協議会の執行部役員の中で会計監査に町議会議員たる常任理事(F)が就いていた。上記のような役員構成からすると,本件協議会が行う教育事業の運営などについて篠山町が影響を与え,仮に,本件補助金に係る事業が,公の利益に沿わない場合が生じたとしても,篠山町において,これを是正する途が確保され,公の財産の濫費を防止しうるものという 教育事業の運営などについて篠山町が影響を与え,仮に,本件補助金に係る事業が,公の利益に沿わない場合が生じたとしても,篠山町において,これを是正する途が確保され,公の財産の濫費を防止しうるものというべきである。したがって,上記関与をもって憲法89条にいう「公の支配」に属するものということができる。 そうすると,本件協議会への本件補助金の支出は,憲法89条後段に違反するとはいえない。 ウなお,原告は,年会費の徴収及び役員手当の支給が憲法13条,14条に違反し,違法であると主張するもののようである。 しかし,前記(1)オ,カのとおり,本件協議会が徴収している会費については,篠山町が任意で本件協議会の趣旨・目的に賛同する世帯から,1世帯当たり僅か年額400円を徴収しているに過ぎない。そして,役員手当についても,会長1名(年額10万円),副会長5名(年額各3万円),会計1名(年額3万円),監査委員2名(年額各5000円)の合計9名にその支給をしているが,その年額は,合計29万円に過ぎない上,同支給されたものも会合等の際の交通費に充てるためのものであって,いずれも合理的かつ相当なものと認められる。 エ以上によると,被告が本件協議会に対してした本件補助金合計212万3000円の支出が,憲法13条,14条,89条後段に違反する違法なものであるとは認められない。 3 争点(3)(本件納税奨励金の支出の違法性)について(1) 第2の1の前提となる事実,証拠(甲2の4,乙10,16,18,19,証人B,同C〔一部〕)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア篠山町は,町税の納税意識を高揚し,円滑な納税を促進することを目的として,各集落に対し,町が課する町県民税(普通徴収分に限る。),固定資産税 論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア篠山町は,町税の納税意識を高揚し,円滑な納税を促進することを目的として,各集落に対し,町が課する町県民税(普通徴収分に限る。),固定資産税,軽自動車税及び国民健康保険税について,納期内に納付した割合(納期内納付率)が70%以上の時は,その割合に応じ,町県民税,固定資産税,軽自動車税につき1.1%から1.8%,国民健康保険税につき0.5から0.9%の奨励金を,1集落当たり20万円を上限として交付することができるという納税奨励金制度を実施していた。 なお,上記の算出方法に基づく納税奨励金の総額が当該年度の予算の範囲を超過した場合には,各集落の納税奨励金の比率に基づいて割り振りをして支給されていた。 イ納税奨励金の交付先は各集落であり,納税貯蓄組合に対して交付されることはなかった。同奨励金の交付は各集落の総代ないしは自治会長などの口座に振り込む方法でなされるが,その振込先口座の指定の手順は,篠山町が納税奨励金の金額を算出した後,各集落の総代などに振込先口座を照会し,指定された口座に振り込むというものであり,たまたま指定された口座が納税貯蓄組合名義の口座であることがあった。 ウ各集落に対して交付された納税奨励金は,各集落の総会の費用,子供会の費用,親睦運動会の費用等に使用された。 エ篠山町は,平成9年5月9日,篠山町納税奨励金交付規則に基づき,本件納税奨励金394万2790円を支出した。 オ納税奨励金制度は,多紀郡4町が合併して篠山市になった時点で廃止された。ところで,同合併以前,多紀郡内の篠山町以外の町でも納税意識を高めるため篠山町と同様の納税奨励金制度がとられていたが,合併した各町でその支給要件等が異なっていたため,合併を契機として納 廃止された。ところで,同合併以前,多紀郡内の篠山町以外の町でも納税意識を高めるため篠山町と同様の納税奨励金制度がとられていたが,合併した各町でその支給要件等が異なっていたため,合併を契機として納税奨励金制度は廃止された。 (2) 上記(1)の認定事実に基づいて判断する。 ア上記(1)イで認定したとおり,本件納税奨励金は,直接各集落に対して支払われたものと認められる。 ところで,納税奨励金交付規則は,納税貯蓄組合及び納税協力団体に対し,納税奨励金を交付する旨規定している(1条,3条)ところ,証人Cは,一部の納税貯蓄組合に対しても納税奨励金が交付されていたことがあった旨証言する。 しかし,証人Cの同証言部分は,同人が平成12年6月1日から篠山市税務課長の職に就いたものであって,本件奨励金支出当時,篠山町税務課に所属してはいたものの本件奨励金の支出に直接関与したわけでないこと(証人C尋問調書36頁)からすると,信用性が低く,そして,篠山町税務課長で納税奨励金制度の責任者であった(証人C尋問調書37頁,証人B尋問調書1頁,19頁)証人Bの証言内容(本件奨励金は,直接各集落に対して支払われたもの。)に照らすと,にわかに採用し難い。 今回,納税奨励金が交付された各集落は,納税協力団体であって,納税貯蓄組合法2条1項で規定する納税貯蓄組合(個人又は法人が一定の地域,職域又は勤務先を単位として任意に組織した組合で,組合員の納税資金の貯蓄のあっ旋その他当該貯蓄に関する事務を行うことを目的とし,且つ,政令で定める手続によりその規約を税務署長及び地方公共団体の長に届け出たもの)に該当しない。したがって,各集落に対する本件奨励金の支出は,同法10条1項にいう「補助金」に該当しないことから,本件での納税奨励金の支払は同法1 の規約を税務署長及び地方公共団体の長に届け出たもの)に該当しない。したがって,各集落に対する本件奨励金の支出は,同法10条1項にいう「補助金」に該当しないことから,本件での納税奨励金の支払は同法10条1項,3項に違反するものでないことは明らかである。 イそうすると,納税奨励金は対価を伴わない支出であるから,地方自治法232条の2にいう「寄附又は補助」に該当するため,同支出は,「公益上の必要」があるとき,適法ということになる。 そこで,この点について検討するに,地方税収入はいうまでもなく地方自治体の財源の主たるものの一つであり,税金の納期内納付によって財源を確保することは地方公共団体にとって極めて重要な課題である。篠山町が採用していた納税奨励金制度は前記(1)アのとおり,町民の納税意識を高め,ひいては納期内納付を促進することによって町の自主財源を確保することに寄与する制度であって,また,支出額も最高1.8%と比較的低率にとどまり,その支出の上限も20万円とした上,「予算の範囲内」という制限もあること,そして,前記(1)ウのとおり,各集落に対し支給された納税奨励金は,各集落の総会の費用,子供会の費用,親睦運動会の費用等に使用され,それぞれ各集落において有意義に使用されていること等に照らすと,本件納税奨励金の支出には「公益上の必要」があると認めるのが相当である。 ウなお,原告は,直接納期内納付の促進につながる使途ではなく,集会場の修復などの用途に使用されるのは制度の目的に反するとも主張するようである。 しかし,納税奨励金制度は,町内の各集落単位で一定の割合以上の納期内納税があった場合に,その割合の高さの段階に応じて税の一部を予算の範囲内で各集落に支払うというもので,納税奨励金交付規則1条所定の目的(町税の納税意 金制度は,町内の各集落単位で一定の割合以上の納期内納税があった場合に,その割合の高さの段階に応じて税の一部を予算の範囲内で各集落に支払うというもので,納税奨励金交付規則1条所定の目的(町税の納税意欲を高揚し,円滑なる納税を促進するという目的)に資するものと解されるから,支払われた金員の使途についても厳格に限定しなければならない必然性はなく,したがって,原告の上記主張は前提を欠き採用することができない。 また,原告は,納税奨励金制度について,本来条例を制定して定めるべきであるとして,本件での納税奨励金制度は法的根拠がない旨主張する。しかし,納税奨励金は,地方税法321条2項の規定する納期前納付報奨金の制度とは異なるものであるうえ,本件納税奨励金の支出も,地方自治法232条の2に基づく適法なものであることは,前記(2)イで判示したとおりである。したがって,原告の上記主張は採用することができない。 さらに,原告は,納期前納付報奨金と納税奨励金の二重払いとなる場合があり,町財政を圧迫するとも主張する。しかし,両制度は目的において重複するところはあるにせよ「納期前納付」に対する報奨金と「納期内納付」に対する奨励金という別個の制度であり,受給者も支給要件も異なるのであるから直ちに二重払いとはいえないし,納税奨励金の支給要件から納期前納付者を除外しなければ不合理であるとも解されない。したがって,原告の上記主張も採用できない。 エ以上によると,被告がした本件納税奨励金394万2790円の支出が違法であるとは認められない。 4 争点(4)(本件報酬等の支出の違法性)について(1) 第2の1の前提となる事実,証拠(乙9,証人D)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア本件要綱第3条には,行政協力員の業務 4)(本件報酬等の支出の違法性)について(1) 第2の1の前提となる事実,証拠(乙9,証人D)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア本件要綱第3条には,行政協力員の業務内容として,次のような規定がある。 (ア) 町広報等の配布(イ) 「善意の人」「ささゆり賞」等表彰候補者の推薦(ウ) 各種選挙事務についての協力(エ) 土木事業等町行政の推進協力(オ) 住民同和学習会の開催(カ) その他行政連絡の伝達,募金協力等イその具体的内容は,次のとおりである。 (ア) 毎月発行の広報「ねんりん」,年4回発行の「議会だより」,「共済だより」といった篠山町の広報紙(1世帯当たり,通常の月で10種類程度で,多い月には20種類程度になる。)の各戸への配布(イ) 善行をした方を表彰の対象とするための推薦(ウ) 選挙に際しての各投票所の投票立会人の依頼,投票の呼びかけや選挙公報の配布等(エ) 通常時,町道に穴があいたり河川が決壊した箇所についての町への報告,災害時の山崩れの箇所等の町への報告(オ) 各集落の同和学習会の開催についての日程調整,住民への参加の呼びかけ(カ) 回覧等による行政全般にわたる連絡,住民からの赤い羽根募金や火災等見舞金などの募金活動ウ篠山町は,篠山町行政協力員に対し,平成9年3月31日に1628万円を,同年6月17日に1341万円をそれぞれ支出したが,前者の1628万円は平成8年度予算における委託料(戸数割)として,後者の1341万円は平成9年度行政協力員報酬(均等割)として,それぞれ支出したものである。 その算定基準は,次の したが,前者の1628万円は平成8年度予算における委託料(戸数割)として,後者の1341万円は平成9年度行政協力員報酬(均等割)として,それぞれ支出したものである。 その算定基準は,次のとおりである。 (ア) 委託料予算額 148集落×11万円=1628万円1集落当たりの支払額1628万円÷7207戸=2259円2259円×集落世帯数=支払額(百円未満切捨て)(イ) 報酬149集落×9万円=1341万円エ篠山町は,平成9年度において,戸数割に重点を置いて,1集落当たりの予算を11万円から12万円に増額する一方で,均等割については据置きをした。 (2) 上記(1)の認定事実に基づいて判断する。 ア原告は,行政協力員の報酬は世帯戸数に比例すべきであり,委託料は一律であるべきところ,報酬が定額で委託料が戸数割となっており,逆になっている旨主張する。 しかし,原告がいうところは必ずしも明らかではないが,「報酬」と「委託料」との呼称が,用語本来の定義からするとあべこべであるとの主張と解されるが,支出自体の違法性とは別に,原告の上記主張の事実のみをもって本件報酬等の支出が違法であるということはできない。 イまた,原告は,形式的には世帯割も取り入れているが,均等割のウェイトが大きすぎ,8世帯の小集落の行政協力員は,200世帯超の大集落の行政協力員より1世帯当たり十倍以上の協力費の支給を受けることになる旨主張する。 しかし,原告の主張は,報酬(均等割。本件では9万円)を世帯数で除した金額に基づいて比較するもので(証人D尋問調書18頁から26頁),行政協力員に対して均等に支給される報酬を世帯数で除し しかし,原告の主張は,報酬(均等割。本件では9万円)を世帯数で除した金額に基づいて比較するもので(証人D尋問調書18頁から26頁),行政協力員に対して均等に支給される報酬を世帯数で除した金額に基づく立論自体,合理的なものとはいえない。 ウもっとも,原告は,報酬(均等割)の制度をとること自体ないしは報酬と委託料の分別方式をとること自体が不合理であると主張するもののようでもあるので,本件報酬等において採用されていた,報酬(均等割)と委託料(戸数割)に分別して支給する方式が合理的か,それぞれの算出方法及び金額が適正か,について検討することとする。 前記(1)ア,イのとおり,善行をした者を表彰の対象とするための推薦,選挙に際しての各投票所の投票立会人を務めること,災害を被った箇所や道路等の修理必要箇所の町への報告などの活動内容には,住戸数にほとんど左右されない業務もあり,また,広報紙等の配布,集落内での募金活動などは概ね戸数に比例した労力を必要とするものではあるが,それらにおいても山間部や郊外においては住戸が広範囲に点在している場合も少なくなく,配布等の作業も戸数に比例した負担であるとは一概にいえないものである。加えて,前記(1)ウ,エのとおり,支給金額でみると戸数割りにウェイトが置かれている上,本件報酬等についての委託料,報酬の算出方法は前記(1)ウのとおりで,それぞれ適正なものであるということができる。 したがって,報酬(均等割)と委託料(戸数割)に分別して支給する方式は不合理なものとはいえず,それぞれの算出方法及び金額についても適正であると認められる。 エさらに,原告は,行政協力員の中には,町広報の配付をしないとか,回覧板を回さないといった村八分行為をする者が存在し,そのような行政協 れの算出方法及び金額についても適正であると認められる。 エさらに,原告は,行政協力員の中には,町広報の配付をしないとか,回覧板を回さないといった村八分行為をする者が存在し,そのような行政協力員に本件報酬等を支出することは,前近代的な差別を温存・助長することになり,憲法13条,14条に違反する等と主張する。 しかし,本件報酬等の支出が問題となっている平成8,9年当時,篠山町の行政協力員の中に,町広報の配付をしないとか,回覧板を回さないといった村八分行為をする者が存在したことを認めるに足る的確な証拠がない上,前認定の行政協力員の活動内容自体,特段不合理なものとは認められないばかりか,かえって公益的な活動に従事していることが窺えるのであるから,原告の上記主張は採用できない。 オ以上によると,被告が篠山町行政協力員に対してした本件報酬等合計2969万円の支出が,違法なものであるとは認められない。 第5 結論以上のとおりであって,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部裁判長裁判官紙浦健二裁判官中村哲裁判官今井輝幸
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