平成22(ワ)5012 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年9月22日 大阪地方裁判所
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判決文本文21,283 文字)

平成23年9月22日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成22年(ワ)第5012号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成23年7月20日判決原告ヤマトプロテック株式会社同訴訟代理人弁護士大塚忠重同大塚千代同訴訟代理人弁理士中島 了被告株式会社モリタユージー被告株式会社モリタ防災テック被告株式会社モリタホールディングス上記3名訴訟代理人弁護士川木一正同松村和宜同長野元貞同田中崇公同鈴木智仁同訴訟代理人弁理士阿部伸一同金子一郎同補佐人弁理士藤江和典 主文 1 被告株式会社モリタユージーは,別紙物件目録記載の製品を製造し,販売し又は販売の申出をしてはならない。 2 被告株式会社モリタユージーは,同製品を廃棄せよ。 3 被告株式会社モリタユージーは,原告に対し,107万6720円(ただし,69万7657円の限度で被告株式会社モリタ防災テックと連帯して)及びこれに対する平成22年4月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告株 し,107万6720円(ただし,69万7657円の限度で被告株式会社モリタ防災テックと連帯して)及びこれに対する平成22年4月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告株式会社モリタ防災テックは,原告に対し,被告株式会社モリタユージーと連帯して,69万7657円及びこれに対する平成22年4月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告の被告株式会社モリタユージー及び同株式会社モリタ防災テックに対するその余の請求並びに被告株式会社モリタホールディングスに対する請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,原告に生じた費用の20分の1,被告株式会社モリタユージーに生じた費用の10分の1を被告株式会社モリタユージーの負担とし,原告に生じた費用の30分の1,被告株式会社モリタ防災テックに生じた費用の15分の1を被告株式会社モリタ防災テックの負担とし,原告,被告株式会社モリタユージー及び被告株式会社モリタ防災テックに生じたその余の費用並びに被告株式会社モリタホールディングスに生じた費用を原告の負担とする。 7 この判決は,1ないし4項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1) 被告株式会社モリタユージー及び同株式会社モリタ防災テックは,別紙物件目録記載の製品を製造し,販売し又は販売の申出をしてはならない。 (2) 被告株式会社モリタユージー及び同株式会社モリタ防災テックは,同製品を廃棄せよ。 (3) 被告らは,連帯して,原告に対し,2880万円及びこれに対する平成22年4月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4) 被告らは,朝日新聞・毎日新聞・読売新聞・産経新聞・日経新聞の全国版に各2回ずつ別紙記載の文案,条件に 及びこれに対する平成22年4月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4) 被告らは,朝日新聞・毎日新聞・読売新聞・産経新聞・日経新聞の全国版に各2回ずつ別紙記載の文案,条件により広告を掲載せよ。 (5) 訴訟費用は被告らの負担とする。 (6) 仮執行宣言 2 被告ら(1) 原告の請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は原告の負担とする。 第2 事案の概要 1 前提事実(当事者間に争いがない又は弁論の全趣旨により認定できる。)(1) 当事者原告は,消火器具機械,消火剤の製造及び販売等を目的とする会社である。 被告株式会社モリタユージー(以下「被告モリタユージー」という。)は,消火器,消火剤,消火装置,消防ポンプ,避難器具,火災報知設備等防災消防関係機器,設備の製造及び販売等を目的とする会社である。 被告株式会社モリタ防災テック(以下「被告モリタ防災テック」という。)は,防災用機械器具並びに装置の製造,修理及び販売等を目的とする会社である。 被告株式会社モリタホールディングス(以下「被告モリタホールディングス」という。)は,消防用各種自動車,防災用機械器具並びに装置の製造,修理及び販売等を目的とする会社である。 (2) 原告の有する特許権原告は,以下の特許(以下「本件特許」といい,本件特許に係る発明を「本件特許発明」と,本件特許に係る出願明細書を「本件明細書」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有する。 特許番号 3814414号発明の名称固定式消火設備出願年月日平成10年6月3日登録年月日平成18年6月9日特許請求の範囲【請求項1】格納箱内に,消火薬剤貯蔵容器と,この消火薬剤貯蔵容器内を加圧するための加圧用ガス容器 出願年月日平成10年6月3日登録年月日平成18年6月9日特許請求の範囲【請求項1】格納箱内に,消火薬剤貯蔵容器と,この消火薬剤貯蔵容器内を加圧するための加圧用ガス容器と,中継器とを格納してある固定式消火設備において,前記消火薬剤貯蔵容器から導出した薬剤送出管に,水平送出管部を連通形成し,この水平送出管部の複数箇所の各箇所の上下に分岐管を設けるとともに,各分岐管に,前記中継器からの指示信号により分岐管路を電気的に開閉するための電動式の選択弁を設けてあり,前記水平送出管部は,前記格納箱内の消火薬剤貯蔵容器より上方に,平面視で格納箱奥行方向に対して斜交するように斜め方向にかつ側面視で水平に配設してあり,各分岐管は格納箱外の各防火区域へ配管接続されるようにしてある固定式消火設備。 (3) 構成要件の分説上記発明は,以下のとおり分説することができる。 A 格納箱内に,消火薬剤貯蔵容器と,この消火薬剤貯蔵容器内を加圧するための加圧用ガス容器と,中継器とを格納してあるB 固定式消火設備において,C 前記消火薬剤貯蔵容器から導出した薬剤送出管に,水平送出管部を連通形成し,D この水平送出管部の複数箇所の各箇所の上下に分岐管を設けるとともに,E 各分岐管に,前記中継器からの指示信号により分岐管路を電気的に開閉するための電動式の選択弁を設けてあり, F 前記水平送出管部は,前記格納箱内の消火薬剤貯蔵容器より上方に,平面視で格納箱奥行方向に対して斜交するように斜め方向にかつ側面視で水平に配設してあり,G 各分岐管は格納箱外の各防火区域へ配管接続されるようにしてあるH 固定式消火設備。 (4) 被告モリタユージー及び被告モリタ防災テックの行為被告モリタユージーは,平成18年6月9 G 各分岐管は格納箱外の各防火区域へ配管接続されるようにしてあるH 固定式消火設備。 (4) 被告モリタユージー及び被告モリタ防災テックの行為被告モリタユージーは,平成18年6月9日以降,別紙物件目録記載の製品(以下「被告製品」という)を製造販売した。 被告モリタ防災テックは,平成18年6月9日以降,被告モリタユージーから購入した被告製品の販売及び販売の申出をした。 被告製品は,本件特許発明の技術的範囲に属する。 2 原告の請求原告は,被告モリタユージー及び被告モリタ防災テック(以下,この2名を併せて「被告2名」という。)の行為について,被告2名と被告モリタホールディングスとが共同して本件特許権を侵害するものであるとして,本件特許権に基づき,被告らに対し,被告製品の製造販売等の差止め及び同製品の廃棄を求めるとともに,不法行為に基づき,連帯して2880万円の損害賠償及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払並びに謝罪広告の掲載を求めている。 3 争点(1) 本件特許権は,特許無効審判により無効とされるべきものであるかア本件特許発明は,本件特許権の出願前に頒布された宮田工業株式会社作成の固定式給油設備用簡易泡消火設備と題する書面(乙1の2。以下「乙1文献」という。)に記載された発明(以下「乙1発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるかイ本件特許発明は,本件特許権の出願前に頒布された特開平1-1715 81号公報(以下「乙9公報」という。)に記載された発明(以下「乙9発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるか(2) 損害額(3) 差止請求,廃棄請求及び謝罪広告請求の可否( 乙9公報」という。)に記載された発明(以下「乙9発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるか(2) 損害額(3) 差止請求,廃棄請求及び謝罪広告請求の可否(4) 被告モリタホールディングスの共同不法行為者としての責任第3 争点に係る当事者の主張 1 争点(1)ア(本件特許発明は,乙1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるか)について【被告らの主張】以下のとおり,本件特許発明は,乙1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,特許無効審判により無効とされるべきものである。 (1) 乙1発明乙1文献には,以下の発明(乙1発明)が記載されている。 ① 薬剤貯蔵容器側が観音扉,選択弁側が片開き扉となっており,外観寸法(幅1100㎜,奥行き450㎜,高さ1800㎜)の格納箱を備えている。 ② この格納箱内には,薬剤貯蔵容器と,この薬剤貯蔵容器内を加圧するための加圧用ガス容器と,装置制御装置とを格納している。 ③ 薬剤貯蔵容器は,高さが1095㎜で容量が93.5リットルのものを2つ用いている。 ④ 薬剤貯蔵容器から導出した薬剤送出管に,水平送出管部を連通形成し,この水平送出管部の複数箇所の各箇所に分岐管を設けるとともに,各分岐管に,装置制御装置からの指示信号により分岐管路を電気的に開閉するための電動式の選択弁を設けている。 ⑤ 水平送出管部は,格納箱内の消火薬剤貯蔵容器より上方に,側面視で水平に配設してあり,各分岐管は格納箱外の各防火区域へ配管接続されるようにしている。 ⑥ 顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所の固定式消火設備である。 (2) 本件特許発明との対比本件特許発明と乙1発明とを比較すると,次の2つの点で相違してい 域へ配管接続されるようにしている。 ⑥ 顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所の固定式消火設備である。 (2) 本件特許発明との対比本件特許発明と乙1発明とを比較すると,次の2つの点で相違しているほかは,一致している。 ア本件特許発明の構成要件Dに係る相違点(以下「相違点1」という。)本件特許発明は,「水平送出管部の複数の各箇所の上下に分岐管」を設けているのに対し,乙1発明は,「2本の水平送出管部を上下2段に設け,その2本の水平送出管部の複数の各箇所の上に分岐管」を設けている点で相違している。 イ本件特許発明の構成要件Fに係る相違点(以下「相違点2」という。)水平送出管部について,本件特許発明は, 「格納箱内の消火薬剤貯蔵容器より上方に平面視で格納箱奥行方向に対して斜交するように斜め方向にかつ側面視で水平に配設」しているのに対し,乙1発明は, 「格納箱内の消火薬剤貯蔵容器より上方に平面視で格納箱奥行方向に対して斜交しないで上下に2段に並行して設けて,かつ側面視で水平に配設」している点で相違する。 (3) 容易想到性以下のとおり,相違点1及び2は,いずれも単なる設計事項にすぎないから,本件特許発明は,当業者が乙1発明に基づいて容易に発明することができたものである。 ア相違点1水平送出管部から選択弁を分岐させる場合に,「上下に分岐管」とするか「上に分岐管」とするかは単なる設計事項にすぎない。 (ア) 2つに分岐させる十字形分岐管も,1つに分岐させるT字形分岐管も一般的な分岐管として存在しており(乙3),これらは分岐の必要に応じて用いられるものである(乙4及び5)。 (イ) 本件特許発明は,上下に分岐管を設けることで,内部スペースの制約された格納箱内にもできる限り多くの分岐管を収めることができるとす らは分岐の必要に応じて用いられるものである(乙4及び5)。 (イ) 本件特許発明は,上下に分岐管を設けることで,内部スペースの制約された格納箱内にもできる限り多くの分岐管を収めることができるとするものである。しかし,乙1発明と比較すると幅方向では優位性が無く,高さ方向で若干の差異が生じるにすぎない。 このように上下に分岐させることに有利な効果はない。 イ相違点2水平送出管部を格納箱奥行方向に対して斜交するように斜め方向に配設させるか否かも単なる設計事項にすぎない。 (ア) 顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所の位置,構造及び設備の技術上の基準(乙2)によれば,消火薬剤貯蔵容器の泡消火薬剤の貯蔵量,消火薬剤貯蔵容器の設置場所,加圧用ガス容器の能力及び選択弁の機能などについては,所定の条件を満たさなければならないとされている。 これにより,消火薬剤貯蔵容器は必要最低量の泡消火薬剤を貯蔵できる大きさが必要であるものの,その設置場所を選択するには制約があるから,格納箱の幅及び奥行き寸法をむやみに大きくすることはできない。 加圧用ガス容器についても,消火薬剤貯蔵容器の容量に応じて必然的にその大きさは決まるし,選択弁もアイランド(固定給油設備の設置区画)の数に応じた分岐数を備えなければならない上,定期点検やメンテナンスのためには,格納箱の扉を開いた状態で視認できることが必要である。 加えて,アイランドの数は給油所によって異なるものの,標準的な数を超える給油所にも対応できる設計をする必要がある。 このように固定式消火設備の格納箱を設計するに当たっては,物理的な制約がある。 (イ) 乙1発明では,消火薬剤貯蔵容器の数が2つであり,加圧用ガス容器を幅方向に併設することで奥行き寸法を短くしている。本件特許発明の消火薬剤貯蔵容器の数は ては,物理的な制約がある。 (イ) 乙1発明では,消火薬剤貯蔵容器の数が2つであり,加圧用ガス容器を幅方向に併設することで奥行き寸法を短くしている。本件特許発明の消火薬剤貯蔵容器の数は1つであるものの,上記(ア)の基準によれば「消火薬剤貯蔵容器を複数用いてもよい」とされているから,これを2つから1つにすることは設計的に行われる事項である。 そして,消火薬剤貯蔵容器を新たに設計し直すには,改めて圧力計算,容量計算などをする必要があるから,既存の消火薬剤貯蔵容器を用いることが多い。また,既存の消火薬剤貯蔵容器は,薬剤を充填又は再充填する際に容器の高さがあまりに高いと作業が困難となるため,通常,1000㎜から1200㎜程度の高さである(乙6ないし8)。 このような設計上の制約の中で消火薬剤貯蔵容器を2つから1つにすれば,その直径が大きくなることにより格納箱の幅方向寸法が小さくなる反面,奥行き寸法が大きくなる。その結果,乙1発明では余裕を持って選択弁を幅方向に並べることができるのに対し,本件特許発明ではこれを幅方向に並べることができなくなる。 このように幅方向の寸法が規制されており,しかも奥行き方向にスペースがある空間について,視認性を確保しながら,規制された寸法より長い配管を配置するために,水平方向の配置をそのままにして,奥行き方向に配管を振る,すなわち配管の一端を前方に,他端を後方にずらすことで配管を収納することは,当業者にとって単なる設計事項であり,一般人にとっても容易に考え出せることである。 限られた空間に対して部材を斜めに配置することにより長い部材を収容ないし収納することは,様々な分野で一般に考えられてきたことである(乙12,13)から,当業者が乙1発明とこれらの技術を組み合わせて本件特許発明を発明することは容易 配置することにより長い部材を収容ないし収納することは,様々な分野で一般に考えられてきたことである(乙12,13)から,当業者が乙1発明とこれらの技術を組み合わせて本件特許発明を発明することは容易であった。 【原告の主張】 (1) 乙1発明と本件特許発明との対比認める。 (2) 容易想到性ア相違点1本件特許発明の出願前に頒布された文献(乙3ないし5)に,十字形分岐管とT字形分岐管が記載されていることは認める。 しかし,これらの文献には「水平送出管部の複数箇所の上下に分岐管を設け,各分岐管に選択弁を設ける」ことは記載も示唆もされていない。 イ相違点2上記被告らの主張は,相違点に係る構成を後から論理付けした,いわゆる後知恵に基づくものであって,失当である。 (ア) 被告らは,消火薬剤貯蔵容器を乙1発明の2つから本件特許発明の1つに設計変更すると,幅方向寸法が小さくなるから,所定数の選択弁を幅方向に配置することができなくなるが,この場合に水平送出管部を斜めに配置すれば,比較的少数の選択弁の配置スペース分の幅に所定数の選択弁を配置することが可能となるのであり,これは単なる設計事項にすぎないなどと主張する。 しかし,選択弁は幅方向のみならず奥行方向にも厚みを有するから,隣接する選択弁同士を幅方向に重畳配置することは困難であり,仮に重畳配置することができたとしてもその重畳幅はさほど大きくはない。 また,選択弁と格納箱の側板(および正面側扉部)とが干渉しないようにするには,水平送出管部の一端側又は両端側において,選択弁を配置できない部分(非有効部分)が生じる。 したがって,水平送出管部を幅方向に配置したときと斜め方向に配置したときを比較しても,同数の選択弁しか配置することはできないのであり,被 いて,選択弁を配置できない部分(非有効部分)が生じる。 したがって,水平送出管部を幅方向に配置したときと斜め方向に配置したときを比較しても,同数の選択弁しか配置することはできないのであり,被告らの主張は前提を誤っている。 しかも,水平送出管部を斜め方向に配置するためには三角関数等を用いた寸法設計等が必要になるのに対し,左右方向に沿って配置すればその必要はなく,設計が容易である。また,格納箱の斜め方向に水平送出管部を正確に設置するためには,格納箱の側面と背面とが比較的正確に直交することを要し,設計上の交差を比較的正確に設定することが求められることもある。 このように,設計の容易性を確保するという観点からは斜め配置を採用しないのが通例であり,美観を確保するという観点からも,左右方向に沿って水平送出管部を整然と配置することが好ましい。 したがって,水平送出管部を斜め方向に配置することを阻害する要因も存在する。 (イ) そもそも,本件特許発明は幅方向の短縮を課題とするものではなく,給油取扱所内における格納箱の配置場所について選択の自由度が小さくなるという問題を解決することを課題とするものである。乙1文献には,上記課題は記載されていないし,乙1発明によって,この課題を解決することもできない。被告らは,乙1発明でも,取り出し配管の高さを変えれば,選択弁からの取り出し配管を左側や右側から引き出すことができると主張するものの,乙1文献にそのような記載や示唆はない。 (ウ) 乙12に記載された発明は,物干し竿に関する技術であり,本件特許発明の技術分野とは全く異なっている。 しかも,竿体が伸縮自在であることを前提として当該竿体の両端をガイドレールに沿って移動させることによって,当該竿体を滑らかに移動させるとともに竿の収納 特許発明の技術分野とは全く異なっている。 しかも,竿体が伸縮自在であることを前提として当該竿体の両端をガイドレールに沿って移動させることによって,当該竿体を滑らかに移動させるとともに竿の収納等が容易であることを主眼とする技術であり,竿体の伸縮を伴うスライド動作において「結果的に」竿体が斜め方向に配置される技術である。したがって,その技術思想の本質も,本件特許発明とは全く異なる。 また,乙13に記載された発明は,電気実験技術に関するものであり,これも本件特許発明の技術分野とは全く異なっている。具体的には,柔らかな10本の被覆電線を両側で束ねるとともに,コネクター部でずらして結線する技術である。そして,斜めに配置されているものは,水平送出管部でも配管でもなく,10Pコネクターであり,これが結線しているのも巨大コイルを形成するための被覆電線であり,分岐管ではない。 これらのことからすると,本件特許発明の技術分野における当業者が,上記各文献のような全く異なる技術分野における全く異なる構成物の配置技術に基づいて,本件特許発明を容易に発明することはできない。 さらに,限られた空間に対して部材を斜めに配置することにより,長い部材を収容ないし収納することが様々な分野で一般に考えられてきたことであるという被告らの主張も根拠がない。 仮に,上記被告らの主張を前提としても,それを具体的に配管技術に適用するとの着想,特に,固定式消火設備における格納箱の「水平送出管部」に適用するとの着想は,いずれの証拠においても,記載や示唆がない。 2 争点(1)イ(本件特許発明は,乙9発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるか)について【被告らの主張】特許庁の拒絶理由通知(乙10)のとおり,本件特許権は,乙9発明に基 争点(1)イ(本件特許発明は,乙9発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるか)について【被告らの主張】特許庁の拒絶理由通知(乙10)のとおり,本件特許権は,乙9発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,進歩性がない。よって,特許無効審判により無効にされるべきものである。 【原告の主張】乙9発明の技術は,本件特許発明の思想と大きく異なるものであり,本件特許発明の構成要件D及びFが記載も示唆もされていない。 したがって,本件特許発明は,乙9発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。 3 争点(2)(損害額)について【原告の主張】(1) 販売台数被告らは,本件特許権設定登録日である平成18年6月9日から平成22年2月末日までの間に,少なくとも180台の被告製品を製造販売した。 上記販売台数は,原告のパッケージ型消火設備における本件特許発明の実施品の割合と,原告と被告らとの販売台数から推計したものである。 (2) 単位数量当たりの利益被告製品の1台当たりの販売価格は約80万円であり,利益率は20%であるから,被告製品1台当たりの利益は16万円を下らない。 なお,被告モリタ防災テックが販売した分については,被告モリタユージーが得た利益は4万円(5%)であり,被告モリタ防災テックが得た利益は12万円(15%)である。 (3) 損害額よって,原告は,被告らの行為により上記(1)の販売台数に上記(2)の単位数量当たりの利益を乗じた2880万円の損害を被った(特許法102条2項)。 【被告らの主張】(1) 販売台数平成18年6月9日以降の被告製品の製造台数は,平成19年7月から平成21年12月までの期間に,24台である。 を被った(特許法102条2項)。 【被告らの主張】(1) 販売台数平成18年6月9日以降の被告製品の製造台数は,平成19年7月から平成21年12月までの期間に,24台である。このうち被告モリタユージーが11台を,被告モリタ防災テックが10台をそれぞれ販売しており,販売台数は合計21台である。 (2) 被告2名の行為により得られた利益 被告製品の販売額は,被告モリタユージーによるものが合計473万8290円であり,被告モリタ防災テックによるものが合計872万0720円であり,利益率が20%であることは認める。 したがって,被告2名の行為により,被告モリタユージーが得た利益は94万7658円であり,被告モリタ防災テックが得た利益は174万4144円である。 よって,被告2名の行為について,同被告らが損害賠償責任を負うとしても,その額は,それぞれ上記金額にとどまる。 仮に,被告2名の行為について,被告モリタユージー及び被告モリタ防災テックによる共同不法行為が成立するとしても,上記のとおり被告モリタユージーが製造した被告製品のうち,被告モリタ防災テックが販売した10台分の範囲に限られる。 (3) 本件特許発明が被告製品の販売に寄与しなかったこと以下のとおり,本件特許発明は被告製品の販売に寄与しておらず,仮に寄与していたとしても,極めて僅少である。 ア被告モリタユージーによる被告製品の販売先は,すべてが従前からの得意先であり,被告モリタ防災テックの販売先についても,そのうちの7割が得意先であった。 これらの得意先は,火災発生時に火災が発生している箇所だけを選択して集中的に薬剤を放射できるという被告製品の仕様を高く評価し,これを決め手として購入した。これに 7割が得意先であった。 これらの得意先は,火災発生時に火災が発生している箇所だけを選択して集中的に薬剤を放射できるという被告製品の仕様を高く評価し,これを決め手として購入した。これに対し,原告が販売していた製品は,火災発生時に薬剤を左右二区画に同時放射する仕様であり,得意先が求める仕様ではなかった。 イ本件特許発明の作用効果は,被告製品のセールスポイントではなく,そもそも作用効果を発揮していない。 ウ最近約5年間における本件特許発明を用いていない製品と被告製品との 販売実績もほぼ等しいものである。 エ本件特許発明に係る斜め配管部分の材料費が被告製品に占める割合も,全体の25%にとどまる。 【原告の反論】上記【被告らの主張】(3)は争う。 本件特許発明が被告製品の販売に寄与した割合は100%である。 4 争点(3)(差止請求,廃棄請求及び謝罪広告請求の可否)について【原告の主張】(1) 差止請求,廃棄請求の必要性被告製品は,遅くとも平成18年6月9日から現在に至るまで継続して製造販売されているから,被告製品の製造販売の差止め及び同製品の廃棄請求には必要性がある。 (2) 謝罪広告の必要性原告は,被告らの行為により,営業上の信用も侵害された。これを回復するには,差止めや損害賠償のみでは足りないから,謝罪広告請求についても必要性がある。 【被告らの主張】(1) 差止請求,廃棄請求の必要性被告モリタユージーは,平成20年10月14日,被告製品の製造を中止した。被告製品の最終販売日は,同年11月18日であり,以降,被告モリタユージー及び被告モリタ防災テックともに被告製品を販売していないから,差止請求には必要性がない。 (2) 謝罪広告の必要性 した。被告製品の最終販売日は,同年11月18日であり,以降,被告モリタユージー及び被告モリタ防災テックともに被告製品を販売していないから,差止請求には必要性がない。 (2) 謝罪広告の必要性被告らの行為により原告の営業上の信用が害されたことなどなく,謝罪広告の必要性もない。 5 争点(4)(被告モリタホールディングスの共同不法行為者としての責任)につ いて【原告の主張】(1) 民法719条に基づく責任以下の事情からすれば,被告2名は実質的には被告モリタホールディングスの一事業部であり,被告モリタホールディングスは,被告2名の行為について共同不法行為者として責任を負う。仮に,共同不法行為としての責任を負わないとしても,少なくとも幇助者としての責任(民法719条2項)を負う。 ア被告モリタホールディングスは,被告2名の全株式を所有することにより,被告2名の事業活動を支配・管理している。 イ被告モリタホールディングスは,被告2名を含めたモリタグループ全体の知的財産権を統一管理し,モリタグループの知的財産権に関する業務を行っている。 ウ被告モリタホールディングスは,自己の取締役を子会社である被告2名の取締役に選任していた。 また,被告モリタユージーの取締役であるP1は,被告モリタ防災テックの代表取締役を兼任している。 エ被告モリタホールディングスは,被告モリタユージーに対し,資金援助及び金融機関からの借入金についての債務保証をしていた。 また,所有する土地・建物を,被告モリタ防災テックに賃貸し,資金援助をしていた。 オ被告モリタホールディングスは,被告2名の事業活動を指導・管理・支援し,企業集団のコンプライアンスもその指導内容として予定し,指図又は指揮をとっていた。 具体的には,被 助をしていた。 オ被告モリタホールディングスは,被告2名の事業活動を指導・管理・支援し,企業集団のコンプライアンスもその指導内容として予定し,指図又は指揮をとっていた。 具体的には,被告モリタホールディングスの取締役会は,被告モリタユージーが被告製品の製造及び販売をすることを議決し,これに基づいて, 被告モリタユージーの取締役会は,被告製品の製造及び販売をすることを議決し,現に製造・販売した。被告モリタ防災テックも,被告モリタホールディングスの取締役会決議に従って,被告製品の販売を議決し,現に販売したものである。 (2) 民法715条に基づく責任上記のとおり,被告モリタホールディングスは,他の被告らの株式を全部所有し,実質的に支配していたから,民法715条の使用者として被告2名の行為について責任を負う。 【被告らの主張】(1) 民法719条に基づく責任被告2名は,被告モリタホールディングスの子会社又は孫会社であるが,いずれも独立した法人であるから,被告2名の行為は,被告モリタホールディングスとの共同行為などとはならない。 ア被告モリタホールディングスは被告モリタ防災テックの全株式を,被告モリタ防災テックは被告モリタユージーの全株式を,それぞれ有しており,被告モリタホールディングスは,被告モリタユージーの株式を有していない。 イ被告モリタホールディングスは,被告2名を含めたモリタグループ全体の知的財産権を統一管理してはいない。 ウ上記【原告の主張】(1)ウ及びエは認める。 エ上記【原告の主張】(1)オは否認する。 被告モリタホールディングスの取締役会による決議の有無にかかわらず,被告2名が被告製品の製造販売を独自ですることは十分にあり得るのであり,被告モリタホールディングスの行為と被告 1)オは否認する。 被告モリタホールディングスの取締役会による決議の有無にかかわらず,被告2名が被告製品の製造販売を独自ですることは十分にあり得るのであり,被告モリタホールディングスの行為と被告2名の行為との間には条件関係がなく,相当因果関係もない。 (2) 民法715条に基づく責任 親子会社間の関係は資本関係にすぎず,使用者責任について想定される使用関係とは異質なものであるから,この点に関する原告の主張は失当なものである。 第4 当裁判所の判断 1 被告製品が,本件特許発明の技術的範囲に属することについては,当事者間に争いがない。 2 争点(1)ア(本件特許発明は,乙1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるか)について(1) 乙1発明と本件特許発明との対比乙1発明と本件特許発明とが次の相違点1及び2の点について相違し,その余の点について一致していることは当事者間で争いがない。 (相違点1)本件特許発明は,「水平送出管部の複数の各箇所の上下に分岐管」を設けているのに対し,乙1発明は,「2本の水平送出管部を上下2段に設け,その2本の水平送出管部の複数の各箇所の上に分岐管」を設けている点で相違している。 (相違点2)水平送出管部について,本件特許発明は, 「格納箱内の消火薬剤貯蔵容器より上方に平面視で格納箱奥行方向に対して斜交するように斜め方向にかつ側面視で水平に配設」しているのに対し,乙1発明は, 「格納箱内の消火薬剤貯蔵容器より上方に平面視で格納箱奥行方向に対して斜交しないで上下に2段に並行して設けて,かつ側面視で水平に配設」している点で相違している。 (2) 容易想到性以下のとおり,少なくとも相違点2に関する本件特許発明の構成は,乙1発明に基づいて当業 いで上下に2段に並行して設けて,かつ側面視で水平に配設」している点で相違している。 (2) 容易想到性以下のとおり,少なくとも相違点2に関する本件特許発明の構成は,乙1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであると認めることができないから,この点に関する被告らの主張は採用することができない。 ア本件明細書の記載本件明細書には,以下のとおり記載されている。 (ア) 発明が解決しようとする課題「一つの給油取扱所において,固定式消火設備は一箇所に設置されるのに対し,アイランド等の防火区域の数は比較的多い。しかも個々の防火区域は固定式泡消火設備に対し方向が定まっておらず,様々な方向に存在する。 したがって,格納箱内に格納する分岐管及び選択弁の取付個数は防火区域の数に比例して非常に多くなり,しかも分岐管の選択弁以降の配管の格納箱からの取り出し数が多く,取り出し方向も異なるため,それだけ取り出しスペースを広く必要としている。しかし,一般に給油取扱所内は全体的にスペース(敷地面積)に余裕のあることは少ないため,配管取り出しスペースを多く必要とする格納箱の,給油取扱所内での設置場所は,自ずと制約されることになる。」(段落【0004】)「そこで,本発明は,格納箱内における多数の分岐管及び選択弁の取付法や配置法に工夫を凝らすことにより,多数の分岐管の全ての選択弁以降の配管取り出し方向の拡大化を図れ,給油取扱所内への格納箱の設置場所の選択自由度を拡げることのできる固定式消火設備を提供することを目的とする。」(段落【0005】)(イ) 課題を解決するための手段「本発明は,格納箱内に,消火薬剤貯蔵容器と,この消火薬剤貯蔵容器内を加圧するための加圧用ガス容器と,中継器とを格納してある固定式消火設 」(段落【0005】)(イ) 課題を解決するための手段「本発明は,格納箱内に,消火薬剤貯蔵容器と,この消火薬剤貯蔵容器内を加圧するための加圧用ガス容器と,中継器とを格納してある固定式消火設備において,前記消火薬剤貯蔵容器から導出した薬剤送出管に水平送出管部を連通形成し,この水平送出管部の複数箇所の各箇所の上下に分岐管を設けるとともに,各分岐管に,前記中継器からの指示信号により分岐管路を電気的に開閉するための電動式の選択弁を設けてあり, 前記水平送出管部は,前記格納箱内の消火薬剤貯蔵容器より上方に,平面視で格納箱奥行方向に対して斜交するように斜め方向にかつ側面視で水平に配設してあり,各分岐管は格納箱外の各防火区域へ配管接続されるようにしてあることに特徴を有する。」(段落【0006】)(ウ) 作用「薬剤送出管に水平送出管部を連通形成し,この水平送出管部の複数箇所の各箇所の上下に分岐管及び選択弁を設けることにより,内部スペースの制約された格納箱内にもできる限り多くの分岐管及び選択弁を収めることができる。 これら分岐管及び選択弁を取り付けた薬剤送出管の水平送出管部は,平面視で格納箱奥行方向に対し斜交する斜め方向にかつ側面視で水平に配設してあるので,多数の分岐管の全ての選択弁以降の配管取り出しは格納箱の左側,右側,後ろ側のいずれの方向からも行うことができる。 従って,格納箱の左側,右側,後ろ側の三側方のいずれの方向にある防火区域にもよく対応できて取り出し配管を容易に行え,給油取扱所への格納箱の設置場所の選択の自由度を高めることができる。」(段落【0007】)(エ) 発明の効果「本発明の固定式消火設備によれば,複数の分岐管全ての選択弁以降の配管取り出しは,格納箱の左側方,右側方,あるいは後側方のいずれの方向 ことができる。」(段落【0007】)(エ) 発明の効果「本発明の固定式消火設備によれば,複数の分岐管全ての選択弁以降の配管取り出しは,格納箱の左側方,右側方,あるいは後側方のいずれの方向からも行えるので,余裕スペースの少ない給油取扱所内に対しても格納箱の設置場所の選択自由度を拡げることができて有利である。」(段落【0015】)これらの記載によれば,本件特許発明が解決しようとする課題は,給油取扱所における固定式消火設備の設置場所について選択の自由度を高めることにあり,これを解決するための手段が相違点2に係る構成要件Fの構 成であり,これにより選択弁以降の配管取り出しを格納箱の三側方のいずれの方向からも行うことができるという作用効果を奏するという技術的意義があると認めることができる。 イこれに対し,乙1発明に係る乙1文献には,相違点2に係る上記アの課題について記載や示唆はない。被告らが引用する文献(乙2,6ないし8,12及び13)についても同様である(なお,乙6,7について,本件特許出願前の刊行物であるかどうかは不明であり,乙8は,本件特許出願後である平成21年6月に頒布されたものである。)。 また,乙12,13には,「限られた空間に対して部材を斜めに配置」することが開示されている。しかし,乙12は「室内に洗濯物を干すときに使用する物干し竿」の配置に係るものであって,固定式消火設備における水平送出管部の配置を対象とするものではなく,乙13は「巨大コイルを構成する10本の電線の結線部分(コネクター)」の配置に関するものであって,固定式消火設備における水平送出管部の配置を対象とするものではない。 本件特許発明は,前記アのとおり,「格納箱内における多数の分岐管及び選択弁の取付法や配置法に工夫を凝らすこと るものであって,固定式消火設備における水平送出管部の配置を対象とするものではない。 本件特許発明は,前記アのとおり,「格納箱内における多数の分岐管及び選択弁の取付法や配置法に工夫を凝らすことにより,多数の分岐管の全ての選択弁以降の配管取り出し方向の拡大化を図れ,給油取扱所内への格納箱の設置場所の選択自由度を拡げることのできる固定式消火設備を提供すること」(段落【0005】)を課題とし,当該課題を解決するために,水平送出管部を「平面視で格納箱奥行方向に対して斜交するように斜め方向にかつ側面視で水平に配設」(段落【0006】)するものであって,単に,限られた空間に部材を斜めに配置するだけのものではない。 すなわち,前記アのとおり「水平送出管部の複数箇所の各箇所の上下に分岐管を設ける」ことと,水平送出管部を「平面視で格納箱奥行方向に対して斜交するように斜め方向にかつ側面視で水平に配設」する(段落【0 006】)こととが技術的に関連し,有機的に機能し合うことによって,複数の分岐管の全ての選択弁以降の配管取り出しが,格納箱の左側,右側,後ろ側のいずれの方向からも行うことができるとする作用効果を奏するものである。 ウ被告らは,消火薬剤貯蔵容器の数を乙1発明の2つから本件特許発明の1つに変更すると格納箱の幅方向寸法が短くなり,所定の数の選択弁を並べることができなくなるから,これを解決するために水平送出管部を奥行き方向に斜交させることは,当業者にとって単なる設計事項にすぎないなどと主張する。 しかし,幅方向寸法が短くなった場合に,設置することのできる選択弁の数が減少する問題を解決するという課題は,本件特許発明の課題ではないし,被告らが引用する各文献にも記載や示唆はない。この点に関する被告らの主張は,本件特許発明が前提 に,設置することのできる選択弁の数が減少する問題を解決するという課題は,本件特許発明の課題ではないし,被告らが引用する各文献にも記載や示唆はない。この点に関する被告らの主張は,本件特許発明が前提とせず,乙1発明等においても記載や示唆のない課題を独自に設定した上,本件特許発明は乙1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとするものであり,論理付けの前提を誤っているというほかない。 また,仮に被告らの主張する課題を前提としたとしても,水平送出管部を奥行き方向に斜交させることによって設置できる選択弁の数が必ずしも増えないとする原告の主張を排斥することのできる証拠もない。このことからしても,本件特許発明は乙1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいうことはできない。 本件特許発明の課題を前提として,当業者が乙1文献に接したとしても,これを解決するための構成としての相違点2に係る構成要件Fについて記載や示唆は見当たらない。 エ限られた部材を斜めに配置することにより長い部材を収納することは様々な分野で一般に考えられてきたことであるとする主張も,前同様に, 前提となる課題の設定を誤るものであり,採用することができない。 オよって,この点に関する被告らの主張は,いずれも採用することができない。 3 争点(1)イ(本件特許発明は,乙9発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるか)について(1) この点に関する被告らの主張は,本件特許発明は,乙9発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであると抽象的に述べるものにすぎず,およそ失当であり,採用することはできない。 (2) なお念のため検討すると,乙9公報には発明の名称を「消火装置ユニット」とする発明が記載 明することができたものであると抽象的に述べるものにすぎず,およそ失当であり,採用することはできない。 (2) なお念のため検討すると,乙9公報には発明の名称を「消火装置ユニット」とする発明が記載されており,その特許請求の範囲は,「消火薬剤タンクから複数の薬剤供給管を消火を必要とする部位に設けた放射ノズルに導き該薬剤供給管にそれぞれ設けられた選択弁により薬剤放射部位を選定して薬剤放射をする消火装置において,すべての選択弁を消火薬剤タンクの近傍に固定したことを特徴とする消火装置ユニット。」である。 乙9公報の出願書には,薬剤供給管の配設方向に係る記載も示唆も見当たらないから,上記発明は少なくとも相違点2に係る本件特許発明Fの構成の点において本件特許発明と相違している。 そして,上記相違点に係る構成について,乙9発明に基づいて当業者が容易に発明することができたとする具体的な主張は全くないから,この点に関する被告らの主張には理由がない。 4 争点(2)(損害額)について(1) 販売台数乙18ないし20,23及び24によると,被告製品の販売台数は,被告モリタユージーが10台,被告モリタ防災テックは11台であることが認められる。 (2) 被告2名の行為により得られた利益 乙21ないし23によれば,被告製品の販売額は,被告モリタユージーによるものが合計473万8290円であり,被告モリタ防災テックによるものが合計872万0720円であることも認められる。また,被告製品を販売した際の利益率がいずれも20%であることは,当事者間で争いがない。 ところで,被告モリタ防災テックが販売した被告製品は,被告モリタユージーが製造したものであるから,その製造・販売により,被告2名による共同不法行為が成立するといえる。 そうす 争いがない。 ところで,被告モリタ防災テックが販売した被告製品は,被告モリタユージーが製造したものであるから,その製造・販売により,被告2名による共同不法行為が成立するといえる。 そうすると,被告製品の販売により,被告モリタユージーが単独で得た利益は94万7658円であり,被告2名が得た利益は174万4144円である。 (3) 本件特許発明が被告製品の販売に寄与したかについて被告らは,本件特許発明が被告製品の販売に寄与していなかったと主張する。 そこで検討すると,本件特許発明は,その技術的構成自体からして消火設備の設置場所に係る選択の自由度を高める一定の作用効果を奏することが明らかである。 これに対し,乙25及び弁論の全趣旨によれば,被告製品が販売されるに当たり,本件特許発明に係る技術的構成が広告宣伝されるなどしてはいなかったことが認められる。また,上記のとおり被告製品の販売台数が少ないことや販売期間も短期間にとどまることが認められ,これら一切の事情を考慮すれば,本件特許発明が被告製品の販売に寄与した程度は,4割の限度で認めるのが相当である。 (4) 損害額以上によると,特許法102条2項の算定に基づき,被告モリタユージーが支払うべき損害額は,107万6720円であり,被告モリタ防災テックが支払うべき損害額は,69万7657円である。 〔計算式〕(947,658+1,744,144)×0.4=1,076,7201,744,144×0.4=697,657前記(2)のとおり,被告モリタ防災テックが販売した被告製品は,被告モリタユージーが製造したものであるから,被告モリタユージーは,被告モリタ防災テックと連帯して損害賠償責任を負うというべきであるが,他方において,被告モリタ防災テック ックが販売した被告製品は,被告モリタユージーが製造したものであるから,被告モリタユージーは,被告モリタ防災テックと連帯して損害賠償責任を負うというべきであるが,他方において,被告モリタ防災テックが被告モリタユージーの販売した被告製品について連帯責任を負う理由はない。 したがって,被告モリタユージーは,上記69万7657円の限度で,被告モリタ防災テックと連帯して支払義務を負うこととなる。 5 争点(3)(差止請求,廃棄請求及び謝罪広告請求の可否)について被告らの主張によれば,被告モリタユージーは,被告製品8台を現在も保管しているというのであるから,被告モリタユージーに対し,被告製品の製造販売等の差止め及び廃棄を命じる必要性はあると認められる。 他方において,上記のとおり,被告モリタ防災テックは,被告モリタユージーから購入した被告製品を販売したにすぎず,その在庫も有していないから,被告モリタ防災テックに対する製造販売の差止め及び製品の廃棄を命じる必要性があるとは認めるに足りない。 また,本件で被告2名の行為により原告の業務上の信用が侵害されたことに関する立証はないから,謝罪広告を命じる必要性があると認めることもできない。 6 争点(4)(被告モリタホールディングスの共同不法行為者としての責任)について(1) 民法719条に基づく責任について被告モリタホールディングスが,被告2名の株式を直接又は間接に保有しているとしても,そのことから同被告らが被告モリタホールディングスの一事業部にすぎないなどということはできないし,原告が主張するその他の事 情も上記のような評価を基礎づけることはできない。 仮に原告が主張するとおり,被告モリタホールディングスが被告2名の所有する知的財産権を統一管理しているとして し,原告が主張するその他の事 情も上記のような評価を基礎づけることはできない。 仮に原告が主張するとおり,被告モリタホールディングスが被告2名の所有する知的財産権を統一管理しているとしても,被告製品の製造販売など営業上の行為について責任を負うということには直ちに結びつかないし,取締役のうち兼務しているものがいることや貸し付けをしていることについても,一般に,親子会社関係において存在する経営上の協力関係を超えるものではない。これらの事情から,親会社が子会社の行為について,直ちに責任を負うということはできない。 被告モリタホールディングスが被告2名の行為を幇助したとする点についても,親子会社関係において通常存在する経営上の協力関係を取り上げているにすぎず,このことから子会社(又は孫会社)による個別の不法行為に関する親会社の幇助責任まで基礎づけることはできないというべきである。 (2) 民法715条に基づく責任について被告モリタホールディングスが,被告2名の業務に関し,同被告らを被用者として指揮監督下においていたことを認めるに足りる主張立証はない。 この点に関する原告の主張も,親子会社関係において通常存在する経営上の協力関係を取り上げるものにすぎず,採用することはできない。 7 当庁平成23年(モ)第437号文書提出命令申立事件に対する判断以下のとおり,上記申立てについては,理由がないから却下する。 (1) 原告は,被告モリタホールディングスがその余の被告らの事業活動を支配管理していたことを証明すべき事実として,① 被告モリタユージーの設立当初から平成22年3月31日までの営業会議議事録及び取締役会のすべての議事録,② 被告モリタホールディングスが会社分割をする前の平成12年4月1日から平成20年9月末日まで 告モリタユージーの設立当初から平成22年3月31日までの営業会議議事録及び取締役会のすべての議事録,② 被告モリタホールディングスが会社分割をする前の平成12年4月1日から平成20年9月末日までの営業会議議事録及び取締役会のすべての議事録並びに③ 被告モリタホールディングス及び被告モリタ防災テックの平成20年10月1日から平成22年3月31日までの営業会議議事録及 び取締役会のすべての議事録について,書類等の提出命令の申立てをした。 被告モリタホールディングスが被告らの行為について共同不法行為者として責任を負うなどとする原告の主張自体に理由がないことは前述のとおりである。そして,上記各書類について証拠調べの必要性があるとまで認めるに足りる疎明はないから,上記申立てに係る部分には理由がない。 (2) 原告は,被告モリタユージーにおける平成18年6月9日以降の被告製品の製造原価及び販売価格,販売台数並びに被告モリタ防災テックにおける平成18年6月9日以降の被告製品の仕入れ原価及び販売価格,販売台数を証明すべき事実として,被告モリタユージー及び被告モリタ防災テックの得意先元帳,仕入れ先元帳など,被告製品の製造量,販売量,販売単価,製造原価,販売経費などを示す文書についても,書類等の提出命令の申立てをした。 被告製品の販売台数は上記3で認定したとおりであり,被告製品の利益率についても当事者間で争いがない。 したがって,上記各書類についても証拠調べの必要性があるとは認めることができないから,上記申立てに係る部分にも理由がない。 第5 結論よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官山田陽三 第5 結論よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官山田陽三 裁判官達野ゆき 裁判官西田昌吾 (別紙)物件目録製品の型式番号 FSSA101 (別紙)文案謝罪広告当社株式会社モリタホールディングスは,そのグループ会社である株式会社モリタユージー及び株式会社モリタ防災テックが,平成年月以降,貴社の有する特許権を侵害する固定式消火設備を製造・販売したことによって,貴社の営業上の信用を害し,多大の迷惑をおかけしましたことを,株式会社モリタユージー及び株式会社モリタ防災テックとともに,ここに謝罪いたします。 平成22年月日(住所省略)株式会社モリタホールディングス代表取締役 (氏名省略)(住所省略)株式会社モリタユージー代表取締役 (氏名省略)(住所省略)株式会社モリタ防災テック代表取締役 (氏名省略)(住所省略)ヤマトプロテック株式会社御中 条件標題はゴシック15号活字,当事者双方の氏名はゴシック13号活字,その他の部分は12号活字を使用。

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