平成14(わ)245 道路交通法違反,危険運転致死傷被告

裁判年月日・裁判所
平成15年1月22日 山口地方裁判所
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判決文本文3,589 文字)

主文 被告人を懲役2年10月に処する。 未決勾留日数中90日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 酒気を帯び,血液1ミリリットルにつき0.5ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態で,平成14年5月19日午前1時17分ころ,山口県萩市a町b番地のc付近道路において,普通乗用自動車を運転した第2 前記日時ころ,飲酒検問中の警察官の停止指示に従わなかったことから,パトカーに追尾され,これを振り切って自己の飲酒運転の発覚を免れようと,最高速度を時速30キロメートルと指定され,右方に約135度屈折したY字交差点となっている前記場所において,その進行を制御することが困難な時速約85キロメートルを超える高速度で前記車両を東から西に向けて走行させ,そのため,自車を前記Y字交差点の道路の屈折に応じて北西方向に右折して進行させることができなくなり,進路前方のA方石垣に自車をその前部左側から激突させ,よって,自車助手席に同乗中のB(当時18歳)を同日午前3時22分ころ,同市d町e番地C病院において,全身打撲により死亡させるとともに,自車助手席側後部座席に同乗中のD(当時18歳)に安静加療約2か月間を要する左大腿骨骨折の傷害を,自車運転席側後部座席に同乗中のE(当時18歳)に加療約2か月間を要する右恥骨・坐骨骨折等の傷害をそれぞれ負わせたものである。 (証拠の標目)省略(法令の適用)被告人の判示第1の行為は,平成13年法律第51号附則9条により同法による改正前の道路交通法119条1項7号の2,65条1項,平成14年政令第24号附則7条により同政令による改正前の道路交通法施行令44条の3に,判示第2の行為は,各被害者毎にいずれも 条により同法による改正前の道路交通法119条1項7号の2,65条1項,平成14年政令第24号附則7条により同政令による改正前の道路交通法施行令44条の3に,判示第2の行為は,各被害者毎にいずれも刑法208条の2第1項後段,前段にそれぞれ該当するが,判示第2の各行為については,1個の行為が3個の罪名に触れる場合であるから,同法54条1項前段,10条により最も重いBに対する危険運転致死罪の刑で処断することとし,判示第1の罪について所定刑中懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により重い判示第2の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重をし,その刑期の範囲内で被告人を懲役2年10月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中90日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用してこれを被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,被告人が,酒気帯びの状態で普通乗用自動車を運転した事案(判示第1),及びその運転中,警察の追尾を振り切るため,高速で自車を運転した結果,屈折した道路を曲がりきれず,石垣に自車を衝突させ,同乗者のうち1名を死亡させるとともに,他の同乗者2名に重傷を負わせた事案(判示第2)である。 被告人は,友人らと飲酒するため,普通乗用自動車を運転して居酒屋に向かったのであって,当初から飲酒運転を予定していた。被告人は,実際に,飲酒後,カラオケ店に向かうために友人らを同乗させて自車を運転したものであるが,被告人の飲酒量は,正確な量は不明であるものの,ビール,チューハイ,日本酒など相当量にのぼっており,当時の法令の基準を大幅に上回る血液1ミリリットルにつき1. 53ミリグラムものアルコールを保有した状態で運転したのであって,この点だけを取り上げても,そ チューハイ,日本酒など相当量にのぼっており,当時の法令の基準を大幅に上回る血液1ミリリットルにつき1. 53ミリグラムものアルコールを保有した状態で運転したのであって,この点だけを取り上げても,その犯行態様は無軌道,悪質である。また,被告人は,従来から,漠然としたものであったにせよ,酒気帯び運転中に警察の検問に遭遇した場合には逃走するとの考えを持っていたものであり,現に,本件で警察の検問を発見し,警察官から停止を求められるや,躊躇することなく自己の酒気帯び運転の刑責を免れるために逃走を開始し,パトカーに追尾されると,これを振り切るため,国道を右折し,道路状況を熟知したそれほど道幅の広くない公道に入り,制限速度をはるかに超える時速約110キロメートルの速度で走行した挙げ句,本来被告人自身,時速30キロメートルを超えるような高速度では右折が困難であると状況を認識していたはずの現場交差点の直前までブレーキをかけず,本件事故を引き起こしたものである。このように,逃走を図った被告人の動機は言語道断なものであったし,逃走のための運転は極めて無謀,危険極まりないものであったといわざるを得ない。 本件犯行の結果一命を奪われた被害者は,いまだ18歳で,高校卒業後,就職して真面目に働き,保母になるとの夢も抱いていたのであって,これから人生を謳歌しようとしていた矢先に,突然,その生命を奪われた同人の無念さは,到底図り知ることができない。また,愛情を注いで同人の成長を見守り,支えてきた同人の両親らも,突然の訃報に接して極めて大きな衝撃を受け,今後も決してやむことのないであろう大きな悲哀を抱いていることも想像に難くない。さらに,他の同乗者2人の被った傷害の程度も重い。 被告人は,本件以前から飲酒運転を繰り返していたし,検問にあえば逃走する意図を持ってい ないであろう大きな悲哀を抱いていることも想像に難くない。さらに,他の同乗者2人の被った傷害の程度も重い。 被告人は,本件以前から飲酒運転を繰り返していたし,検問にあえば逃走する意図を持っていたのであって,被告人には,交通規範に対する遵法精神が希薄化していたといわざるを得ない。 近時,悪質な交通事犯,これによる悲惨な人身事故が増加しており,これに対処するため,危険運転致死傷罪の制定を始めとして,幾度かの法改正等を経ているところであり,かかる事犯に対しては厳しい姿勢で臨むことが社会的に強く要請されているというべきであって,一般予防の観点からも,本件についての被告人の刑責は,厳正に問われなければならないといわざるを得ない。 以上,本件,とりわけ判示第2の犯行の動機,態様,悲惨かつ重大な結果によれば,被告人の刑責は重いといわなければならず,被告人に対しては,実刑をもって臨むことがやむを得ない。 もっとも,被害者らは,被告人とともに飲食し,被告人が相当飲酒していることを承知しながら,被告人が自動車を運転するのを容認し,これに同乗していたのであって,検問を無視し,パトカーの追尾を振り切るべく被告人が判示の如き無謀運転に及ぶことまでは想定外であったとはいえ,上記の点で被害者らに落ち度が全くなかったといえるかには疑問もある。判示第2の犯行により死亡した被害者の遺族の感情は,前記のとおり,衝撃,悲哀が大きいことは格別,被告人に対するものとしては,今後の更生を願う意思も窺われ,処罰感情が高いとまではいえないし,傷害を負った被害者2名は,いずれも,被告人に対して重い処罰を望まない旨述べている。これらの被害者又はその遺族に対しては,保険により,将来しかるべき賠償のなされることが見込まれてもいる。また,被告人は,捜査段階から一貫して事実関係を率 告人に対して重い処罰を望まない旨述べている。これらの被害者又はその遺族に対しては,保険により,将来しかるべき賠償のなされることが見込まれてもいる。また,被告人は,捜査段階から一貫して事実関係を率直に認め,当公判廷においても,深い反省の情を示している。更に,被告人の両親は,被害者,被害者遺族に対し,被告人に代わって謝罪し,死亡した被害者遺族に対しては100万円を超える金銭を,傷害を負った被害者2名に対しては,それぞれ10万円又は20万円の金銭を支払うなど誠意を尽くすとともに,被告人の父親が当公判廷に出廷し,今後も被害弁償については誠意を持って対応し,合わせて被告人を監督する旨述べている。これらの事情に加え,被告人はいまだ若年で,前科前歴もなく,正業に励んでいたこと,被告人自身も右膝蓋骨解放骨折等の傷害を負っていることなど,被告人にとって酌むべき事情も多々存するところではある。 以上のような事情を総合考慮し,被告人に対しては,前記のとおり実刑をもって臨まざるを得ないが,その量刑については,主文の限度にとどめるのが相当であると判断した。 (求刑・懲役5年)平成15年1月22日山口地方裁判所第3部裁判長裁判官小島正夫裁判官山口浩司裁判官安部勝

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