平成14年(行ケ)第48号審決取消請求事件平成15年3月6日判決言渡、平成15年2月20日口頭弁論終結判決原告三星電子株式会社訴訟代理人弁理士志賀正武、船山武、渡辺隆、村山靖彦被告特許庁長官太田信一郎指定代理人伊東和重、麻野耕一、小林信雄、高橋泰史、林栄二 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 本判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 原告の求めた裁判特許庁が不服2000-16896号事件について平成13年9月13日にした審決を取り消す、との判決。 第2 事案の概要本件は、拒絶査定不服審判の審決の取消しを求める訴訟である。 1 特許庁における手続の経緯原告は、名称を「DVDオーディオディスク再生装置及び方法」とする発明(本願発明)につき、平成10年1月28日、特許出願し(優先権主張日平成9年1月28日)、平成12年7月19日に拒絶査定を受けたので、平成12年10月23日に拒絶査定に対する不服の審判(不服2000-16896号)を請求したが、特許庁は、平成13年9月17日、「本件審判の請求は、成り立たない。」旨の審決をし、その謄本を同年10月3日に原告に送達した(出訴期間として90日付加)。 2 本願発明の要旨(特許請求の範囲の記載)内周領域にオーディオタイトル情報管理テーブルが貯蔵され、データ領域に線形PCM方式のオーディオパックが貯蔵されるDVDオーディオディスク装置において、前記タイトル情報 特許請求の範囲の記載)内周領域にオーディオタイトル情報管理テーブルが貯蔵され、データ領域に線形PCM方式のオーディオパックが貯蔵されるDVDオーディオディスク装置において、前記タイトル情報管理テーブル領域にオーディオデータに対応する第1~第3量子化ビットと、オーディオデータに対応する第1~第3サンプリング周波数と、オーディオデータのオーディオチャネル数に関係する情報を記録し、前記オーディオパックが前記タイトル管理テーブル領域に記録された量子化ビットと、サンプリング周波数と、チャネル数に対応する情報と、オーディオデータとから構成されるオーディオパケットを備え、前記第1~第3量子化ビットがそれぞれ16ビット、20ビット及び24ビットであり、第1~第3サンプリング周波数がそれぞれ48KHz、96KHz及び192KHzであり、最大オーディオチャネル数が13チャネルであり、前記チャネル数は下記のような式(1)によって決定されることを特徴とするDVDオーディオディスク装置。 Fs:オーディオデータのサンプリング周波数(Hz)Qb:オーディオデータの量子化ビット数(bits)Mbr:DVDディスクの最大データ伝送率(Mbps)N:DVDディスクの最大データ伝送率、サンプリング周波数、量子化ビット数によって決定される収録可能な最大チャネル数 3 審決の理由の要旨審決は、別紙審決の写し(以下「審決書」という。)のとおり、本願発明は引用例(特開平8-336103号公報、甲第4号証)に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許 (以下「審決書」という。)のとおり、本願発明は引用例(特開平8-336103号公報、甲第4号証)に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、と認定判断した。 第3 原告主張の審決取消事由の要点 1 取消事由1(引用例の認定の誤り、一致点の認定の誤り)本願発明は、オーディオ専用のDVDオーディオディスク装置であるのに対して、引用例は、本質的にDVDビデオディスクである。DVDビデオディスクは、ビデオデータ及びオーディオデータの属性を記録した「ビデオセット情報」を具備するが、そのビデオ領域にオーディオ情報を記録することはできず、また、割り当てられたオーディオ情報領域も相対的に小さい。両者は異なる。 引用例はDVDビデオディスクに関するものであるから、情報管理テーブル、及び、「ビデオオブジェクトユニットは…オーディオパックのみ…で構成されても良い。」(段落164)の記載は全て、DVDビデオディスクにおける記録に関するものである。DVDオーディオディスク装置においてどのように記録するかという点については一切記載がない。本願発明が目的とする「良質のオーディオ情報が記録できる」点についても引用例には記載がない。 したがって、「引用例記載の発明のDVDディスク装置は、本願発明の「DVDオーデイオディスク装置」に相当する」(審決書5頁)との認定は誤りであり、これに基づく一致点の認定も誤りである。 2 取消事由2(進歩性の判断の誤り)(1)相違点1(サンプリング周波数192kHz)についての判断の誤り従来のCD(サンプリング周波数:44.1kHz、オーディオ情報帯域:20Hz~20kHz)は、帯域外の過渡領域が極めて狭く(20kHz~22.05kHz)、オーディオ情 Hz)についての判断の誤り従来のCD(サンプリング周波数:44.1kHz、オーディオ情報帯域:20Hz~20kHz)は、帯域外の過渡領域が極めて狭く(20kHz~22.05kHz)、オーディオ情報帯域での位相特性が直線特性からずれて音質向上の障害となっている。 引用例は、サンプリング周波数を96kHzに設定することにより過渡領域を広く選定し(20kHz~48kHz)、同過渡領域の減衰特性をCDに比べて緩慢にして音質向上を図るものであるが、オーディオ情報帯域はCDと同様(20Hz~20kHz)である。 これに対し、本願発明では、サンプリング周波数を192kHzに選定することによりオーディオ情報帯域を従来の約倍(20Hz~48kHz)に選定して自然音源とするとともに、過渡領域を更に広く選定し(48kHz~96kHz)、同過渡領域の減衰特性を緩慢にして音質向上を更に図るものである。 以上のように、引用例は、過渡領域を広げるにすぎず、オーディオ情報帯域を広げるものではない。また、192kHzでサンプリングしたオーディオデータの収録が可能なディスク領域につき記載もない。引用例は、サンプリング周波数を96kHz以上に選定する動機付けを欠くものである。 したがって、相違点1(サンプリング周波数192kHz)は、当業者が引用例から容易に想起しうる事項ではない。審決の判断は誤りである。 (2)相違点2(オーディオパケット)についての判断の誤り引用例はDVDビデオディスク装置であるから、主たる情報はビデオ情報であり、オーディオ情報は従たる情報にすぎない。したがって、引用例は、「オーディオパックが量子化ピットと、サンプリング周波数と、チャネル数に対応する情報と、オーディオデータとから構成されるオーディオパケット」を備えてはいない。 審決の認定判断は誤 たがって、引用例は、「オーディオパックが量子化ピットと、サンプリング周波数と、チャネル数に対応する情報と、オーディオデータとから構成されるオーディオパケット」を備えてはいない。 審決の認定判断は誤りである。 (3)相違点3(式(1))及び4(最大チャネル数「13」)についての判断の誤りア引用例には、式(1)について記載がない。また、引用例はDVDビデオディスク装置であり、ビデオ情報とオーディオ情報を併せて伝送するから、最大データ伝送率はビデオ情報のデータ伝送率とオーディオ情報のデータ伝送率との和となる。したがって、引用例の最大チャネル数は式(1)では決まらない。式(1)は実質的な相違ではないとした認定は、誤りである。 イ本願発明は、「192kHz」のサンプリング周波数で記録し、かつ、最大チャネル数を「13」とすることにより良好な音源を有するDVDオーディオディスク装置を提供するものである。したがって、最大チャネル数「13」には臨界的意味がある。しかし、引用例には、サンプリング周波数を192kHzとし、かつ、最大チャネル数を「13」とすることの記載はなく、また、前記のとおり、最大チャネル数は式(1)で決まるものではないから「13」に変更することもできない。審決が最大チャネル数「13」は設計的事項であるとした認定も誤りである。 (4)顕著な効果の看過本願発明は、サンプリング周波数を192kHzに選定をすることにより、格段に優れた音質のオーディオ情報を記録し再生することができる。甲第6号証(1997年10月15日株式会社ステレオサウンド発行の「StereoSound」31巻4号598頁~599頁)によれば、192kHzのサンプリング周波数での記録・再生は、自然音域以上の周波数帯域の再現を可能とし、自然な印象を与え、反響 サウンド発行の「StereoSound」31巻4号598頁~599頁)によれば、192kHzのサンプリング周波数での記録・再生は、自然音域以上の周波数帯域の再現を可能とし、自然な印象を与え、反響も細やかで、立体感も鮮やかな効果をもたらすことが確認されている。この効果は、画期的なことであり、引用例からは予測不可能である。審決は、本願発明の顕著な効果を看過している。 3 取消事由3(判断遣脱)審決は、請求項2~請求項7に記載された発明について判断をしておらず、判断遣脱の違法がある。 第4 被告の反論の要点 1 取消事由1(引用例の認定の誤り、一致点の認定の誤り)に対してDVDディスク規格は、予め、ビデオ用途だけでなく次世代オーディオ用途(DVD-Audio)としても利用できるように定められた規格である。記録される情報がビデオ情報であるかオーディオ情報であるかによらない共通の規格であるから、そのデータ領域にはいずれの情報も記録することができる。 引用例の「ビデオオブジェクトユニットは、…オーディオパックのみ…構成されても良い。」(段落164)との記載はDVDディスクのデータ列がオーディオパックのみで構成されても良いことを示すものであるから、引用例にはオーディオ情報のみを記録したDVDディスクが記載されているということができる。これは、上記次世代オーディオ用途(DVD-Audio)であり、本件発明の「DVDオーディオディスク装置」に相当する。 2 取消事由2(進歩性の判断の誤り)に対して(1)相違点1(サンプリング周波数が192KHz)について高音質化のためにサンプリング周波数を高くすることは、当業者にとって周知の技術的潮流である。良質のオーディオ情報が記録できるDVDオーディオディスク装置を提供するという本願発明の目的も、 について高音質化のためにサンプリング周波数を高くすることは、当業者にとって周知の技術的潮流である。良質のオーディオ情報が記録できるDVDオーディオディスク装置を提供するという本願発明の目的も、上記の技術的潮流に沿った周知のものである。そうすると、引用例において、96KHzよりも高いサンプリング周波数を選定することは、当業者が必然的に導き出せることである。そして、デジタル信号処理においては2のべき乗の数値が取り扱いやすいから、96KHzの2倍である192KHzは96KHzよりも高いサンプリング周波数として当業者が真っ先に想起する周波数である。引用例において192KHzを採用することは、当業者にとって何ら困難ではない。 (2)相違点2(オーディオパケット)についてDVDのオーディオ情報が、量子化ビット数、サンプリング周波数及びチャネル数に対応する情報から構成されるオーディオパケットを備えることは、本願明細書(段落0021)に従来技術として記載されており、原告も十分承知の事項である。そして、引用例もDVDディスク装置であるから、そのオーディオパケットが上記従来技術と同様に、量子化ビット数、サンプリング周波数及びチャネル数に対応する情報を有することは明らかである。審決の判断に誤りはない。 (3)相違点3(式(1))及び相違点4(最大チャネル数「13」)についてア引用例に記載されたオーディオ情報のみを記録するDVDオーディオ装置は、オーディオ情報のみを記録するのであるから、最大データ伝送率はオーディオ情報の最大データ伝送率とほぼ等しくなる。したがって、最大チャネル数Nは式(1)で決まり、審決が式(1)は実質的な相違点でないと認定したことに誤りはない。 イ原告は、引用例はDVDビデオディスクであるから最大オーディオチャネル 。したがって、最大チャネル数Nは式(1)で決まり、審決が式(1)は実質的な相違点でないと認定したことに誤りはない。 イ原告は、引用例はDVDビデオディスクであるから最大オーディオチャネル数を「13」に変更することは不可能であると主張するが、本願明細書(段落0045及び表20)によれば、本願発明において、最大チャネル数が「13」となるのはサンプリング周波数「48KHz」、量子化ビット数「16」を選択したときである。一方、引用例記載のDVDオーディオ装置も、サンプリング周波数「48KHz」、量子化ビット数「16」を選択することができるから、そのときには、上記式(1)によって、最大13チャネルの記録が可能であることを必然的に導き出すことができる。 なお、引用例の最大チャネル数が「8」であるのは、チャネル数に3ビットを割り当てていることによる。チャネル数のビットを適宜増やして13チャネルまで記録できるようにすることは、適宜採用し得る設計的事項にすぎない。 (4)顕著な効果の看過に対して記録可能なオーディオ情報の帯域がサンプリング周波数に比例して規則的に広がり、臨界的な帯域の変化が生じないことは当業者にとって自明であるから、サンプリング周波数を192KHzに選定したことによる本願発明の高音質化は、当業者が容易に予測できる範囲内のものにすぎない。 3.取消事由3(判断逸脱)に対して特許法49条に照らせば、請求項1に係る発明について特許を受けることができないと判断される以上、請求項2~請求項7に係る発明が特許を受けることができるか否かに関わりなく、出願は一体のものとして拒絶される。したがって、審決が請求項2~請求項7に係る発明について判断を示さなかった点に、違法はない。 第5 当裁判所の判断 1 取消事由1(引用例の認定の誤り、一致 りなく、出願は一体のものとして拒絶される。したがって、審決が請求項2~請求項7に係る発明について判断を示さなかった点に、違法はない。 第5 当裁判所の判断 1 取消事由1(引用例の認定の誤り、一致点の認定の誤り)について(1) 本願発明ア本願明細書(甲第2号証の1)には、以下の記載がある(下線付加)。 (ア) 【従来の技術】及び【発明が解決しようとする課題】の欄① 「また、現在には一つのディスク再生装置が多様な種類のディスクを再生し得るように設計されている。前記のようなディスクの中にはDVD(DigitalVersatile Disc)がある。前記DVDはビデオデータ及びオーディオデータを高密度で記録し、…オーディオデータは線形PCM…フォーマット…などで記録する。 …前記DVDビデオディスクは内周領域にビデオタイトルセット情報管理テーブル(…VTSI_MAT…)が記録され、続くデータ領域にオーディオデータ及びビデオデータが記録される。…前記DVDビデオディスクは最大10.08Mbpsのデータ伝送が可能である。」(0003、0033)② (「記録データ」に関して)「前記DVDビデオディスクは内周領域にビデオタイトルセット情報管理テーブル(…VTSI_MAT…)が記録され、続くデータ領域にオーディオデータ及びビデオデータが記録される。そして、…データ領域に記録されるオーディオデータはオーディオパック…構造をもつ。…前記DVDビデオディスクに記録されるオーディオデータ及びビデオデータはパック(pack)単位からなり、…」(0004、0015)「従って、前記DVDディスクに純粋オーディオデータを記録し、DVD再生装置が前記DVDオーディオディスクを再生すると、一層良好な音質のオーディオ信号を再生することができる。 0004、0015)「従って、前記DVDディスクに純粋オーディオデータを記録し、DVD再生装置が前記DVDオーディオディスクを再生すると、一層良好な音質のオーディオ信号を再生することができる。」(0033)③ (「VTS_AST_ATRT」に関して)「前記〈表1〉及び〈表2〉のようなVTSI_MATにおいてVTS_AST_ATRT…の構造は図2に示すようである。…量子化情報…サンプリング周波数fs、及びオーディオチャネル数はそれぞれ〈表4〉、〈表5〉及び〈表6〉のようである。」(0010、0013、 ④ (「オーディオパケット」に関して)「図6のような構造を持つ線形PCMデータの…オーディオパケットの個別データ領域…は…〈表12〉のようである。」(0020、表12)⑤ 【発明が解決しようとする課題】「従って、本発明の目的は最大192kHzのサンプリング周波数及び最大24ビットの量子化ビット数を用いてサンプルされたディジタルオーディオ信号をデータの伝送速度によって制限されるチャネル数まで線形PCM方式で記録しうるDVDオーディオディスクを提供することにある。」(0034)(イ) 【発明の実施の形態】欄⑥ 「本発明の一実施形態によるDVDオーディオディスクのVTSI_MAT…は前記〈表1〉のようなDVDビデオディスクのVTSI_MATでオーデイオ情報が変更される。本発明の一実施形態によるDVDオーディオディスクは前記〈表1〉のようなVTSI_MATで…VTS_AST_ATRTと、…予約(reserved)領域の情報を変更する」(0039)⑦「VTS_AST_ATRTの変更を察してみると、図19に示したようにb55~b48のデータパターン及び定義を変更する。即ち、前記図3に示したようなVTS_AST_ATRTの する」(0039)⑦「VTS_AST_ATRTの変更を察してみると、図19に示したようにb55~b48のデータパターン及び定義を変更する。即ち、前記図3に示したようなVTS_AST_ATRTの…b51の予約(reserved)ビットをオーディオチャネルビット…に吸収する。…オーディオサンプリング周波数fsは前記〈表18〉のように変更し、オーディオチャネル数は前記〈表19〉のように変更する。」(0041、図19、表18、表19)⑧「本発明の一実施例による線形PCMの場合、…オーディオパケットは…〈表21〉のような構造をもつ。」(0046~0047、表21)イ上記によれば、本願出願当時、ビデオデータ及びオーディオデータを高密度で記録するDVD(DigitalVersatileDisk)が既に提示されていたこと、本願発明の「DVDオーディオディスク装置」は、DVDディスクを使用し「純粋オーディオデータを記録する」ものであって、最大データ伝送率(10.08Mbps)に対応可能なように、「VTS_AST_ATRT」(注:ビデオタイトルセットのオーディオストリーム属性テーブル)、及び「オーディオパケットの個別データ領域」の定義を変更したものであることが認められる。 (2) 引用例ア引用例(特開平8-336103号公報、甲第4号証)には、「【発明が解決しようとする課題】…このような光ディスクには、選択可能なビデオデータ、或いは、オーディオデータを複数個記録することが可能となり…」(0003)との記載及び光ディスクについての一般的説明に続けて、以下の記載がある(下線付加)。 ①「図4に示されたビデオタイトルセットの(VTS)72の論理フォーマットの構造について図21を参照して説明する。各ビデオタイトルセット(VTS)72 説明に続けて、以下の記載がある(下線付加)。 ①「図4に示されたビデオタイトルセットの(VTS)72の論理フォーマットの構造について図21を参照して説明する。各ビデオタイトルセット(VTS)72には、図21に示すようにその記載順に4つの項目94、95、96、97が記載されている。」(0070)②「ビデオタイトルセット情報(VTSI)94とこの情報のバックアップ(VTSI_BUP)97との間にはビデオタイトルセットメニュー用のビデオオブジェクトセット(VTSM_VOBS)95及びビデオタイトルセットタイトル用のビデオオブジェクトセット(VTST_VOBS)96が配置されている。」(0071)③「いずれのビデオオブジェクトセット(VTSM_VOBS及びVTST_VOBS)95、96は、既に説明したように図6に示す構造を有している。」(0071)④「図6に示すように…ビデオオブジェクトセット(VOBS)82は、1つのビデオオブジェクト(VOB)83で構成され…ビデオオブジェクト(VOB)83は、1又は複数のセル84から構成される。…各セル84は、1又は複数のビデオオブジェクトユニット(VOBU)85、通常は複数のビデオオブジェクトユニット(VOBU)85から構成される。ここでビデオオブジェクトユニット(VOBS)85は、1つのナビゲーションパック(NVパック)86を先頭に有するパック列として定義される。」(0041~0044)⑤「図6に示すようにビデオオブジェクトユニットがビデオデータを含む場合には、MPEG規格に定められたビデオパック(Vパック)88、副映像パック(SPパック)90及びオーディオパック(Aパック)91から構成されるGOPが配列されてビデオデータストリームが構成される」(0045)⑥「また、オーディオ及び/又は副 パック)88、副映像パック(SPパック)90及びオーディオパック(Aパック)91から構成されるGOPが配列されてビデオデータストリームが構成される」(0045)⑥「また、オーディオ及び/又は副映像データのみの再生データにあってもこのビデオオブジェクトユニットを1単位として再生データが構成される。即ち、オーディオパックのみでビデオオブジェクトユニットが構成されても、ビデオデータのビデオオブジェクトと同様にそのオーディオデータが属するビデオオブジェクトユニットの再生時間内に再生されるべきオーディオパックがそのビデオオブジェクトユニットに格納される。」(0045)「オブジェクトユニット85がビデオパックを含まない場合であってもNVパックがオーディオパック及び/又は副映像パックを含むオブジェクトユニットの先頭に配置される。」(0109)「ビデオオブジェクトユニットは、…オーディオパックのみ…で構成されても良い。」(0164)イ以上によれば、引用例に記載された発明の光ディスクは、そのビデオオブジェクトユニットがビデオパックを含む場合のほか、オーディオパックのみ含む場合も予定した構成であり、これによりオーディオデータのみを記録することができる光ディスクであることが認められる。 (3) 本願明細書に記載されたDVDディスク装置と引用例記載の光ディスク(DVD)とが同じ論理フォーマット構造のディスクであることア乙第2号証(「PIONEERR&D」1996 Vol.6 No. 2、3頁右欄)によれば、DVD規格は、ビデオ、オーディオ及びコンピュータデータをデジタルデータの形で統一的に記録し取り扱うことを目的として開発されたもので、ビデオ用途(DVD-Video)だけでなくオーディオ用途(DVDーAudio)としても使用可 オ及びコンピュータデータをデジタルデータの形で統一的に記録し取り扱うことを目的として開発されたもので、ビデオ用途(DVD-Video)だけでなくオーディオ用途(DVDーAudio)としても使用可能な規格であることが認められる。 イ本願発明は、前記(1)で認定したとおり、DVDディスク装置を使用して「純粋オーディオデータ」を記録するとともに、最大データ伝送率(10.08Mbps)に対応可能なように、オーディオストリームアトリビュートテーブル(VTS_AST_ATRT)及び「オーディオパケットの個別データ領域」の定義を変更したものであるところ、本願明細書(甲第2号証の1)の発明の詳細な説明欄の記載によれば、このDVDディスク装置は、以下のような構造のものであると認められる。 ① 内周領域にビデオタイトルセット情報管理テーブル(VTSI_MAT)を備え、続くデータ領域にオーディオデータ及びビデオデータが記録される。データ領域に記録されるオーディオデータはオーディオパック構造を持つ。(0003~0005)② ビデオタイトルセット情報管理テーブル(VTSI_MAT)は、ビデオタイトルセット(VTS)のオーディオストリームアトリビュートテーブル(VTS_AST_ATRT)を有する。(0010、表2)③ VTS_AST_ATRTの各フィールド値は、VTS_VOBS(ビデオタイトルセットのビデオオブジェクトセット)のオーディオストリーム内部の情報となる。(0010)VTS_AST_ATRTの構造は、図2に示すように64ビット構造であり、上位16ビットは、「オーディオ符号化モード」(b63~b61)、「マルチチャネル拡張」(b60)、「オーディオタイプ」(b59~b58)、「オーディオ応用モード」(b57~b56)、「量子化情報」(b5 ビットは、「オーディオ符号化モード」(b63~b61)、「マルチチャネル拡張」(b60)、「オーディオタイプ」(b59~b58)、「オーディオ応用モード」(b57~b56)、「量子化情報」(b55~b54)、「FS」(b53~b52)、「予約」(b51)及び「オーディオチャネル数」(b50~b48)である。(0010、図2)「量子化情報」は「16ビット、20ビット、24ビット、予約」であり、「サンプリング周波数FS」は「48kHz、96kHz、予約、予約」であり、「オーディオチャネル数」は、「1ch、2ch、3ch、…、8ch、その他予約」である。(0013、表4、表5、表6)④線形PCMオーディオパックは、14ビットのパックヘッダと2034バイトのオーディオパケットから構成され、オーディオパケットは、パケットヘッダ(1バイト)、サブストリームid(1バイト)、オーディオフレーム情報(3バイト)、オーディオデータ情報(3バイト)と、オーディオデータ(1バイト~2013バイト)から構成される。(0016、図6)オーディオデータ情報(3バイト)として、「量子化ビット数」(2ビット)、「サンプリング周波数」(2ビット)、「予約」(1ビット)及び「オーディオチャネル数」(3ビット)が記述され、その内容は、それぞれ、VTS_AST_ATRTと同じ「16ビット、20ビット、24ビット、予約」、「48kHz、96kHz、予約、予約」及び「1ch、2ch、3ch、…、8ch、その他予約」である。(0020、0021、表12)ウ引用例に記載された光ディスク(DVD)は、以下のようなディスクであると認められる(なお、①~④は、前記イの①~④と対応する)。 ①ビデオタイトルセット(VTS)72は、内周領域にビデオタイト ウ引用例に記載された光ディスク(DVD)は、以下のようなディスクであると認められる(なお、①~④は、前記イの①~④と対応する)。 ①ビデオタイトルセット(VTS)72は、内周領域にビデオタイトルセット情報(VTSI)94とこれに続くタイトル用ビデオオブジェクトセット(VTSTT_VOBS)96を備える。VTSIは、ビデオタイトルセット情報管理テーブル(VTSI_MAT)98を備え、VTSTT_VOBSは、ビデオパック88及びオーディオパック91を備える。(0070~0073、図21、図6)②VTSI_MATは、VTSのオーディオストリーム属性(VTS_AST_ATR)を有する。(0082後段、図22)③VTS_AST_ATRはVTSの各フィールド値は、VTSTT_VOBSのオーディオストリーム内部の情報となる。(0082)VTS_AST_ATRTの構造は図23に示すように64ビット構造であり、上位16ビットは、「オーディオ符号化モード」(b63~b61)、「マルチチャネル拡張」(b60)、「オーディオタイプ」(b59~b58)、「オーディオ応用モード」(b57~b56)、「量子化情報」(b55~b54)、「FS」(b53~b52)、「予約」(b51)及び「オーディオチャネル数」(b50~b48)である。(0086、図23)「量子化情報」は「16ビット、20ビット、24ビット、特定せず」であり、「サンプリング周波数FS」は「48kHz、96kHz、予約、予約」であること、「オーディオチャネル数」は、「1ch、2ch、3ch、…、8ch、その他予約」である。(0087~0089、図23)④線形PCMオーディオパック(パック長2048バイト)は、14バイトのパックヘッダと2034バイトのオーディオパケットから構成される。(0 h、その他予約」である。(0087~0089、図23)④線形PCMオーディオパック(パック長2048バイト)は、14バイトのパックヘッダと2034バイトのオーディオパケットから構成される。(0111、図36)エ以上アないしウによれば、本願明細書に記載されたDVDビデオディスクと引用例に記載された光ディスクとは、同じ論理フォーマット構造を有するDVDディスクであることが認められる。 (4) 上記(3)で認定したとおり、本願発明のDVDビデオディスクと引用例記載の光ディスク(DVD)とは、同じ論理フォーマット構造のDVDディスクであり、本願発明は「データ領域に線形PCM方式のオーディオパックが貯蔵されるDVDオーディオディスク装置」以上の構成を要件とするものではないから、本願発明と論理フォーマット構造の同じ引用例記載のDVDディスクにおいて、そのビデオオブジェクトユニットをオーディオパックのみ含む構成として「再生データをオーディオデータのみとする」構成としたものは、本願発明の「純粋オーディオデータを記録する」DVD装置と異なるところがない。 したがって、「引用例記載の発明のDVDディスク装置は、本願発明の「DVDオーディオディスク」に相当する」とした認定及び同認定に基づく一致点の認定に誤りはない。 (5) 原告は、引用例は、本質的にDVDビデオディスクでありビデオ領域にオーディオ情報は記録できないから、オーディオ専用のDVDオーディオディスクとは異なると主張する。しかし、原告の上記主張に理由がないことは、(4)に示したところから明らかである。 2 取消事由2(進歩性の判断の誤り)について(1) 相違点1(サンプリング周波数192kHz)についてアサンプリング周波数を192kHzとした点について、本願明細書には「 らかである。 2 取消事由2(進歩性の判断の誤り)について(1) 相違点1(サンプリング周波数192kHz)についてアサンプリング周波数を192kHzとした点について、本願明細書には「従って、オーディオデータのサンプリング周波数を高くし且つ記録チャネル数を大きくして、再生される音質を向上させるための方法が提示されている。」(0003)と記載されている。 乙第1号証(「DVD&DVC入門基本18章」電波新聞社、1996年、89,90頁)には「現行のCDは、当初からサンプリング周波数による限界や量子化誤差の問題が一部のハイエンドユーザーより指摘されており、」、「従来のデジタル音声で問題となっていた量子化誤差は、サンプリング周波数を高くするか…で減らすことができます。」及び「現在まだADA(注:advanced digitalaudio)に対応した高サンプリング周波数、多ビット量子化デジタルシステムを持つスタジオがほとんどありませんが、…このADAには大変な期待がかけられています。」の記載がある。また、乙第2号証(「PIONEERR&DVol.6No.2」パイオニア株式会社、1996年、3~5頁)には「DVDディスクはCDに比べて8倍以上の容量を持つため、オーディオの応用では、…サンプリング周波数を上げる可能性が考えられる。」の記載がある。 これらの記載によれば、高音質を得ることはデジタルオーディオの分野における普遍的課題であり、サプリング周波数を高くすることが高音質を得る手段の一つであることは周知の事項であることが認められる。また、引用例の「…サンプリング周波数Fsに関しては、…48kHz…96kHz…その他は予約とされている。」(0088)の記載によれば、引用例記載の光ディスク(DVD)が48kHz、96kHz以外 。また、引用例の「…サンプリング周波数Fsに関しては、…48kHz…96kHz…その他は予約とされている。」(0088)の記載によれば、引用例記載の光ディスク(DVD)が48kHz、96kHz以外のより高いサンプリング周波数を予定していることは明らかである。 そして、乙第5号証(特開平3-34165号公報)に高周波数を増大したオーディオ信号の記録再生を行う6トラックオーディオ装置(3頁左上欄7行~12行)に関して「32kHz標本化周波数/15kHz周波数帯域」、「64kHz標本化周波数/30kHz周波数帯域」「96kHz標本化周波数/45kHz周波数帯域」及び「192kHz標本化周波数/90kHz周波数帯域」の記録再生を行うことが記載されている(3頁左上欄13行~左下欄3行)ことに照らせば、より高いサンプリング周波数の候補として整数倍の関係にある周波数を選定することは、当業者に常套手段であると認められる。 そうすると、引用例に記載された発明において、高音質を得るために、サンプリング周波数として48kHzの整数倍(4倍)に当たる192kHzを選定することは、当業者が格別の困難なくなし得ることというべきである。 イ原告は、引用例に記載された発明は、オーディオ情報帯域を広げるものではないばかりか、192kHzでサンプリングしたオーディオデータの収録が可能なディスク領域につき記載もないから、サンプリング周波数を96kHz以上に選定する動機付けを欠くものであると主張するが、前認定のとおり、高音質を得ることがデジタルオーディオの分野における普遍の課題であり、この課題解決の手段の一つがサプリング周波数を高くすることであって、引用例記載の発明においても48kHz、96kHz以外のサンプリング周波数を予約していると認められる以上、サンプリング周波 題であり、この課題解決の手段の一つがサプリング周波数を高くすることであって、引用例記載の発明においても48kHz、96kHz以外のサンプリング周波数を予約していると認められる以上、サンプリング周波数を192kHzとすることに動機付けを欠くとはいえない。原告の主張は採用することができない。 (2) 相違点2(オーディオパケット)について前記のとおり、「本願明細書記載DVDビデオディスク」と「引用例記載光ディスク(DVD)」とは同じ論理フォーマット構造を有するDVDディスクであることが認められる。 そして、本願明細書の表21、図6及び(0020)には、上記「本願明細書記載DVDビデオディスク」の線形PCM方式オーディオパックの構造が示されており、それによれば、オーディオデータ領域の直前に置かれた3バイト内に、「量子化ビット数」(quantization_word_length)、「サンプリング周波数」(audio_sampling_frequency)及び「チャネル数」(number_of_audio_channels)が記述されることが認められる。 そうすると、「引用例記載光ディスク(DVD)」の線形PCM方式オーディオパックも、「量子化ビット」、「サンプリング周波数」及び「チャネル数」が記述される構造であるとするのが相当である。 以上、引用例の線形PCM方式オーディオパックも、「量子化ビットと、サンプリング周波数と、チャネル数に対応する情報」を有していると認められるので、「上記相違点2は実質的な相違点ではない。」とした審決の判断に誤りはない。 (3) 相違点3(式(1))及び相違点4(最大チャネル数「13」)についてア式(1)について(ア) 「データ伝送率(デジタル信号伝送帯域)=サンプリング周波数×ビット数 ない。 (3) 相違点3(式(1))及び相違点4(最大チャネル数「13」)についてア式(1)について(ア) 「データ伝送率(デジタル信号伝送帯域)=サンプリング周波数×ビット数×チャネル数」の関係があることは、乙第3号証(「マルチメディアの基礎技術」電波新聞社)の「当時のPCM録音の標本化周波数は40~50kHzが用いられ、NHK方式では47.25kHzでした。これに必要な伝送帯域を計算してみると、帯域FはL・R2チャネル記録するとして、14ビットで次のようになります。F=47.25×14×2=1.323〔MHz〕」との記載にもあるように、自明の事項と認められる。そうすると、サンプリング周波数(Fs)、量子化ビット数(Qb)及び最大データ伝送率(Mbr)が与えられたときの最大チャネル数(N)が式(1)によって決定されることも、自明の事項である。したがって、審決の「上記相違点3は、実質的な相違ではない。」との判断に誤りはない。 (イ) 原告は、引用例はビデオ情報とオーディオ情報を併せて伝送するから、最大データ伝送率はビデオ情報のデータ伝送率とオーディオ情報のデータ伝送率との和となり、引用例の最大チャネル数は式(1)式では決まらないと主張する。しかし、前認定のとおり、引用例のDVDディスク装置において、ビデオオブジェクトユニットがオーディオパックのみ含む構成とすることにより再生データをオーディオデータのみとしたもの(引用例記載の発明)は、オーディオ情報のみ伝送し、ビデオ情報は伝送しないのであるから、原告の主張は、前提において誤っており、採用することができない。 イ最大チャネル数「13」について(ア) 本願明細書の「DVDビデオで可能な線形PCMのチャネル数は図17のようである。前記図17において最 て誤っており、採用することができない。 イ最大チャネル数「13」について(ア) 本願明細書の「DVDビデオで可能な線形PCMのチャネル数は図17のようである。前記図17において最大ビットレート…は6.75Mbpsであり、下記の〈表17〉のようにチャネルが決定される。」(0032)、及び「DVDの最大データ伝送率(Mbps)→10.08Mbps…前記式(1)によって決定されるチャネル数は…〈表20〉のとおりである。」(0045、表20)の記載によれば、データ伝送率を6.75Mbpsから10.08Mbpsと変更したことにより、最小サンプリング周波数(48kHz)かつ最小量子化ビット数(16ビット)における最大チャネル数が「8」から「13」に増加したことが認められる。すなわち、最大チャネル数の増加は、上記「本願明細書記載DVDビデオディスク」においてデータ伝送率を「10.08Mbps」としたことによることは明らかである。 (イ) 引用例には以下の記載がある。 ①「ビデオタイトルセットタイトル(VTST)のオーディオストリームの属性(VTS_AST_ATR)には、図23に示されるようにビット番号b63からビット番号b48に…量子化、サンプリング周波数及びオーディオチャネルの数が記述され、」(0086:19行~25行)②「オーディオデータの量子化に関しては、ビット番号b55及びb54に記述され、…“00”の場合は、16ビットで量子化されたオーディオデータであることを意味し、…“01”の場合は…20ビットを意味し、…”10”の場合は…24ビットを意味し、…“11”の場合は、特定せずとされている。」(0088:9行~18行)③「オーディオデータのサンプリング周波数Fsに関しては、ビット番号b69及びb68に記述され、… 合は…24ビットを意味し、…“11”の場合は、特定せずとされている。」(0088:9行~18行)③「オーディオデータのサンプリング周波数Fsに関しては、ビット番号b69及びb68に記述され、…48kHzである場合には“00”が記述され、…96kHzである場合には“01”が記述され、その他は予約とされている。」(0088:22行~27行)④「オーディオチャネル数に関しては、ビット番号b50からb48に記述され、…“000”である場合には1チャネル(モノラル)であることを意味、…“001”である場合には2チャネル(ステレオ)であることを意味している。…“111”である場合には8チャネルであることを意味している。」(0089)⑤ビット番号b51は、予約(0)とされている。(図23)上記記載によれば、引用例に記載された光ディスクは、サンプリング周波数が48kHz及び96kHzとされ、量子化ビット数が16ビット、20ビット、24ビットとされ、チャネル数が1~8とされた仕様のディスクである。データ伝送率については記載がない。 (ウ) 乙第2号証には、「この要求を満たすためDVD-videoの仕様を表1のように決めた。」と記載され、同表1には、Videoデータのビットレートを「10Mbps」とすることが記載されている。そうすると、引用例記載の光ディスクにおいて、そのデータ伝送率を上記DVD-Videoの仕様の値「10Mbps」と同程度の値とすることは通常の仕様の範囲であるというべきである。そして、その際、最小サンプリング周波数(48kHz)かつ最小量子化ビット数(16ビット)のときにチャネル数が「13」(最大)となることは上記自明の関係式から明らかである。また、引用例の「オーディオチャネル数」には1ビット(b51)が予約されており、 かつ最小量子化ビット数(16ビット)のときにチャネル数が「13」(最大)となることは上記自明の関係式から明らかである。また、引用例の「オーディオチャネル数」には1ビット(b51)が予約されており、8を超えるチャネル数の記述が予定されているから、フォーマット上の支障もない。 以上によれば、「引用例記載の発明の8チャネルを13チャネルに変更することは、適宜採用した最大伝送率に基づいて算出される設計的事項にすぎない。」とした審決の判断に誤りはないというべきである。 (エ) 原告は、本願発明はサンプリング周波数を192kHzとし、かつ、最大チャネル数を「13」とすることにより良好な音源を有するDVDオーディオディスク装置を提供するから最大チャネル数「13」には臨界的意義があると主張する。 しかし、前記のとおり、最大チャネル数「13」は、最大データ伝送率を「10.08Mbps」とした場合において、最小サンプリング周波数(48kHz)且つ最小量子化ビット数(16ビット)のとき上記自明の関係式から算出されるチャネル数にすぎない。そして、「10.08Mbps」、「48kHz」及び「16ビット」が通常の仕様を超えるものではないことも前記のとおりであるから(乙第2号証及び引用例)、格別の臨界的意義を認めることはできない。 また、「前記DVDビデオディスクは最大10.08Mbpsのデータ伝送が可能である。これを基準として計算すると、192kHzでサンプリングされたデータも2チャネル再生が可能であることが分かる。」(本願明細書:0033)によれば、サンプリング周波数「192kHz」は、最大データ伝送率を「10.08Mbps」とした場合において、最大ビット数(24ビット)でも最低限2チャネル(ステレオ)を確保することができるように設定された周波数でもあ 周波数「192kHz」は、最大データ伝送率を「10.08Mbps」とした場合において、最大ビット数(24ビット)でも最低限2チャネル(ステレオ)を確保することができるように設定された周波数でもあることが認められる。そうすると、最大チャネル数「13」は「192kHz」と直接には関係しないことは明らかである。 この点に関する原告の主張は採用することができない。 (4) 顕著な作用効果の看過の主張に対して前記のとおり、高音質を得ることはデジタルオーディオの分野における普遍の課題である一方、サプリング周波数を高くすることが高音質を得る手段の一つであることは周知の事項である。192kHzによる高音質化はデジタルオーディオ分野における上記周知の事項から容易に予測できることである。また、最低限2チャネル(ステレオ)を確保すべきことは通常の要求であるから、「192kHzでサンプリングされたデータも2チャネル再生が可能である」(本願明細書:0033)との作用効果も格別のものとはいえない。 原告は、196kHzによる録音・再生は、自然音域以上の周波数帯域を可能とすると主張するが、乙第1号証によれば、自然音域以上の周波数帯域を記録再生する要求はデジタルオーディオ分野ですでに意識されていたことが認められるから、デジタルオーディオ分野の周知事項から予測することのできる効果にすぎない。 原告の主張は採用することができない。 3 取消事由3(判断遺脱)について特許法49条は、特許出願に係る発明のうち1の請求項に係る発明につき特許を受けることができないときは、その請求項に係る発明について部分的に出願を拒絶することができる旨の定めをしていないから、その特許出願は全体として拒絶しなければならないものというべきである。審決は、請求項1に係る発明が依然として特許 請求項に係る発明について部分的に出願を拒絶することができる旨の定めをしていないから、その特許出願は全体として拒絶しなければならないものというべきである。審決は、請求項1に係る発明が依然として特許を受けることができないものである以上、特許出願についてした拒絶査定を覆すことはできないとしたものであり、その判断に遺脱はない。原告の主張は、独自の見解に基づくものであって、採用することができない。 4 結論以上のとおりであるから、原告主張の取消事由はいずれも理由がない。よって、原告の請求は棄却されるべきである。 東京高等裁判所第18民事部裁判長裁判官塚原朋一裁判官塩月秀平裁判官古城春実
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