令和6年1月29日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 令和4年(ワ)第1832号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日令和5年10月12日判決 原告パンテックコーポレーション 同訴訟代理人弁護士岩瀬吉和 同後藤未来 同小松侑太 同伊藤雄太 同訴訟代理人弁理士綾聡平 被告ASUSJAPAN株式会社 同訴訟代理人弁護士服部誠 同中村閑 同米山朋宏 同岩間智女 同杉森康平 同補佐人弁理士相田義明 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求の趣旨 1 被告は、別紙物件目録記載の通信機器を輸入し、譲渡し、貸渡し、譲渡若しくは貸渡しの申出をし、又は譲渡若しくは貸渡しのための展示をしてはならない。 2 被告は、別紙物件目録記載の通信機器を廃棄せよ。 3 被告は、原告に対し、1000万円及びこれに対する令和4年7月29日から支払済みに至るまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は、別紙特許権目録記載1及び2の各特許(以下、「本件第1特許」及び「本件第2特許」といい、 4年7月29日か ら支払済みに至るまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は、別紙特許権目録記載1及び2の各特許(以下、「本件第1特許」及び「本件第2特許」といい、併せて「本件特許」という。また、本件特許に係る特許権を「本件第1特許権」及び「本件第2特許権」といい、併せて「本件 特許権」という。)を有する原告が、別紙物件目録記載の各製品(以下、併せて「被告製品」という。)は本件特許に係る発明の技術的範囲に属すると主張して、被告製品を輸入、譲渡等している被告に対し、当該行為は、本件特許権の侵害及び本件第2特許権の間接侵害を構成するとして、特許法100条1項及び2項に基づき、被告製品の輸入、譲渡、貸渡し、譲渡又は貸渡しの申出等 の差止め及び被告製品の廃棄を求めるとともに、民法709条及び特許法102条3項に基づく損害賠償の一部請求として、1000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和4年7月29日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 なお、原告は、本件第2特許権について、令和5年4月7日、訴えの追加的 変更申立書を提出したが、事前に技術説明会まで定めていた本件審理の経過等(令和5年2月16日付け書面による準備手続調書参照)に鑑み、当該申立書は一旦陳述せず、また、それに伴い、本件第2特許権に係る無効論については、一旦審理せず、技術説明会(ただし当該無効論に係る争点を除くもの)の結果を踏まえ、心証開示を行うこととされた。その後、裁判所の検討結果によれば、 原告提出に係る上記の追加的変更部分は、本件の結論を左右しないものとされ たところ、レビュー期日における心証開示後に和解が決裂したため、弁論が終結された。 2 前提事実(証拠 よれば、 原告提出に係る上記の追加的変更部分は、本件の結論を左右しないものとされ たところ、レビュー期日における心証開示後に和解が決裂したため、弁論が終結された。 2 前提事実(証拠等の記載のないものは当事者間に争いがない。なお、証拠を摘示する場合には、特に記載のない限り、枝番を含むものとする。)⑴ 当事者 ア原告は、大韓民国ソウル市に本社を置く、知的財産権の保有や通信分野技術の開発等を目的とする会社であり、本件特許を有している。(弁論の全趣旨)イ被告は、日本において、自らのグループ会社の製品であるスマートフォン等を輸入販売する会社であり、被告製品を輸入及び販売していた。 ⑵ 本件特許に係る特許請求の範囲ア本件第1発明本件第1特許の特許請求の範囲の請求項9(以下、同項に係る発明を「本件第1発明」という。)の記載は、次のとおりである。 無線通信システムにおける参照信号の送信のための装置であって、 送受信ポイントから、それぞれが510とおりの9ビット情報である循環遅延ホッピング初期値パラメータ𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻および仮想セルIDパラメータの受信をするパラメータ情報受信部と、前記参照信号のベースシーケンスを、前記受信した仮想セルIDパラメータに基づいて決定をし、前記受信した循環遅延ホッピング初期値パラメ ータ𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻に基づいて実際の循環遅延ホッピング初期値𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡の決定をし、前記決定された実際の循環遅延ホッピング初期値𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡と前記決定した前記参照信号のベースシーケンスとに基づいて前記参照信号の生成をし、前記生成された参照信号の送信をする参照信号処理部と、を含む装置であって、 前記参照信号処理部は、実際の循環遅延ホッピング初期値𝐶𝑖𝑛𝑖 ースシーケンスとに基づいて前記参照信号の生成をし、前記生成された参照信号の送信をする参照信号処理部と、を含む装置であって、 前記参照信号処理部は、実際の循環遅延ホッピング初期値𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡を、前記 受信した循環遅延ホッピング初期値パラメータ(𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻)に基づいて により決定をする、装置。 イ本件第2発明本件第2特許の特許請求の範囲の請求項1及び請求項10(以下、各項 に係る発明をそれぞれ「本件第2発明1」及び「本件第2発明2」といい、併せて「本件第2発明」という。)の記載は、次のとおりである。 本件第2発明1多重コンポーネントキャリアシステムにおける端末によるアップリンク伝送電力の制御方法であって、 第1のサービングセル(servingcell)上で伝送されるアップリンク信号を生成するステップと、第2のサービングセルに対するランダムアクセス手順の開始を命令するランダムアクセス開始情報を基地局から受信するステップと、前記アップリンク信号の伝送のためにスケジューリングされた第1の 伝送電力と、ランダムアクセスプリアンブルがマッピングされる物理ランダムアクセスチャネル(physicalrandomaccesschannel:PRACH)の伝送のためにスケジューリングされた第2の伝送電力とに基づいて推定余剰電力(estimatedpowerheadroom)を計算するステップと、前記推定余剰電力が臨界電力より小さい場合、電力割当優先順位に基 づいて前記第1の伝送電力または前記第2の伝送電力を調整して、前記アップリンク信号及び前記PRACHを同時に伝送する、または、前記電力割当優先順位に基づいて前記アップリンク信号及び前記PRACHのう づいて前記第1の伝送電力または前記第2の伝送電力を調整して、前記アップリンク信号及び前記PRACHを同時に伝送する、または、前記電力割当優先順位に基づいて前記アップリンク信号及び前記PRACHのうちいずれか1つを選択的に伝送するステップと、を含むことを特徴とするアップリンク伝送電力の制御方法。 本件第2発明2多重コンポーネントキャリアシステムにおけるアップリンク伝送電力を制御する端末であって、第1のサービングセル(servingcell)上で伝送されるアップリンク信号を生成する信号生成部と、 第2のサービングセルに対するランダムアクセス手順の開始を命令するランダムアクセス開始情報を基地局から受信する受信部と、前記アップリンク信号の伝送のためにスケジューリングされた第1の伝送電力と、ランダムアクセスプリアンブルがマッピングされる物理ランダムアクセスチャネル(physicalrandomaccesschannel:PRACH)の伝 送のためにスケジューリングされた第2の伝送電力とに基づいて推定余剰電力(estimatedpowerheadroom)を計算し、前記推定余剰電力と臨界電力とを比較し、電力割当優先順位に基づいて前記第1の伝送電力と前記第2の伝送電力とを調整する電力調整部と、前記推定余剰電力が前記臨界電力より小さい場合、前記調整された第 1の伝送電力と前記調整された第2の伝送電力とによって前記アップリンク信号及び前記PRACHを同時に伝送する、または、前記電力割当優先順位に基づいて前記アップリンク信号及び前記PRACHのうちいずれか1つを選択的に伝送する伝送部と、を備えることを特徴とする端末。 ⑶ 本件発明の構成要件本件第 力割当優先順位に基づいて前記アップリンク信号及び前記PRACHのうちいずれか1つを選択的に伝送する伝送部と、を備えることを特徴とする端末。 ⑶ 本件発明の構成要件本件第1発明及び本件第2発明(以下、併せて「本件発明」という。)を構成要件に分説すると、次のとおりである。 ア本件第1発明1-A 無線通信システムにおける参照信号の送信のための装置であっ て、 1-B 送受信ポイントから、それぞれが510とおりの9ビット情報である循環遅延ホッピング初期値パラメータ𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻および仮想セルIDパラメータの受信をするパラメータ情報受信部と、1-C 前記参照信号のベースシーケンスを、前記受信した仮想セルIDパラメータに基づいて決定をし、前記受信した循環遅延ホッ ピング初期値パラメータ𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻に基づいて実際の循環遅延ホッピング初期値𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡の決定をし、前記決定された実際の循環遅延ホッピング初期値𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡と前記決定した前記参照信号のベースシーケンスとに基づいて前記参照信号の生成をし、前記生成された参照信号の送信をする参照信号処理部と、 を含む装置であって、1-D 前記参照信号処理部は、実際の循環遅延ホッピング初期値𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡を、前記受信した循環遅延ホッピング初期値パラメータ(𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻)に基づいて により決定をする、装置。 イ本件第2発明12-1A 多重コンポーネントキャリアシステムにおける端末によるアップリンク伝送電力の制御方法であって、2-1B 第1のサービングセル(servingcell)上で伝送されるアップ リンク信号を生成するステップと、2-1C 第2のサービングセルに対するランダムアクセス 制御方法であって、2-1B 第1のサービングセル(servingcell)上で伝送されるアップ リンク信号を生成するステップと、2-1C 第2のサービングセルに対するランダムアクセス手順の開始を命令するランダムアクセス開始情報を基地局から受信するステップと、2-1D 前記アップリンク信号の伝送のためにスケジューリングされ た第1の伝送電力と、ランダムアクセスプリアンブルがマッピングされる物理ランダムアクセスチャネル(physicalrandomaccesschannel:PRACH)の伝送のためにスケジューリングされた第2の伝送電力とに基づいて推定余剰電力(estimatedpowerheadroom)を計算するステップと、 2-1E 前記推定余剰電力が臨界電力より小さい場合、電力割当優先順位に基づいて前記第1の伝送電力または前記第2の伝送電力を調整して、前記アップリンク信号及び前記PRACHを同時に伝送する、または、前記電力割当優先順位に基づいて前記アップリンク信号及び前記PRACHのうちいずれか1つを選択的に 伝送するステップと、を含むことを特徴とするアップリンク伝送電力の制御方法。 ウ本件第2発明22-2A 多重コンポーネントキャリアシステムにおけるアップリンク伝送電力を制御する端末であって、 2-2B 第1のサービングセル(servingcell)上で伝送されるアップリンク信号を生成する信号生成部と、2-2C 第2のサービングセルに対するランダムアクセス手順の開始を命令するランダムアクセス開始情報を基地局から受信する受信部と、 2-2D 前記アップリンク信号の伝送のためにスケジューリングされた第1の伝送電力と、 するランダムアクセス手順の開始を命令するランダムアクセス開始情報を基地局から受信する受信部と、 2-2D 前記アップリンク信号の伝送のためにスケジューリングされた第1の伝送電力と、ランダムアクセスプリアンブルがマッピングされる物理ランダムアクセスチャネル(physicalrandomaccesschannel:PRACH)の伝送のためにスケジューリングされた第2の伝送電力とに基づいて推定余剰電力(estimated powerheadroom)を計算し、前記推定余剰電力と臨界電力とを 比較し、電力割当優先順位に基づいて前記第1の伝送電力と前記第2の伝送電力とを調整する電力調整部と、2-2E 前記推定余剰電力が前記臨界電力より小さい場合、前記調整された第1の伝送電力と前記調整された第2の伝送電力とによって前記アップリンク信号及び前記PRACHを同時に伝送する、 または、前記電力割当優先順位に基づいて前記アップリンク信号及び前記PRACHのうちいずれか1つを選択的に伝送する伝送部と、を備えることを特徴とする端末。⑷ 被告製品の構成 被告製品は、LTE通信が可能な通信端末であり、LTE通信は、国際標準化団体3GPP(3rdGenerationPartnershipProject)が定めた標準規格に準拠している。そして、被告製品は、当該規格の具体的内容が記載された規格書である、TS36.211 V11.0.0(甲5の1)及びTS36.331 V11.3.0(甲5の2)(以下、併せて「LTE規格」という。)並びにTS36.213 V12.0.0(甲 8の1)及びTS36.213 V15.0.0(甲8の2)(以下、併せて「規格213」という。)に準拠している。(甲4、 せて「LTE規格」という。)並びにTS36.213 V12.0.0(甲 8の1)及びTS36.213 V15.0.0(甲8の2)(以下、併せて「規格213」という。)に準拠している。(甲4、5、8、弁論の全趣旨)⑸ 先行文献本件第1特許の優先日(2012年5月11日)より前に、以下の公刊物が存在した。(甲2の1) ア 「SummaryofCOMPULSession」と題する3GPP技術仕様グループの会合(3GPPTSGRANWGIMeeting)の議事録(乙2。以下「乙2議事録」といい、同議事録に記載された発明を「乙2発明」という。)イ 「UL-DMRSenhancementsforuplinkCoMP」と題する、上記乙2に係る会合に先立ってLGElectronicsが提出したメモ(乙3。以下「乙3メモ」 といい、同メモに記載された発明を「乙3発明」という。) 3 争点⑴ 被告製品の構成要件充足性(争点1)ア本件第1発明について被告製品が「仮想セルIDパラメータ」及び「循環遅延ホッピング初期値パラメータ𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻」を使用して参照信号を生成・送信(構成要件1-C 及び1-D)しているか否か(争点1-1)イ本件第2発明について被告製品が「推定余剰電力を計算」(構成要件2-1D)、「推定余剰電力が臨界電力より小さい場合」(構成要件2-1E)を充足するか否か(争点1-2) ⑵ 本件第1発明の無効理由の有無(争点2)⑶ 差止請求権の行使が権利濫用に当たるか否か(争点3)⑷ 被告の行為及び損害額(争点4)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1-1(被告製品が「仮想セルIDパラメー (争点2)⑶ 差止請求権の行使が権利濫用に当たるか否か(争点3)⑷ 被告の行為及び損害額(争点4)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1-1(被告製品が「仮想セルIDパラメータ」及び「循環遅延ホッピ ング初期値パラメータ𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻」を使用して参照信号を生成・送信〔構成要件1-C及び1-D〕しているか否か)について(原告の主張)⑴ 被告製品は、以下の構成1-aないし1-dを有しているから、構成要件1-Aないし1-Dを充足する。 1-a:無線通信システムにおける参照信号を送信する通信端末1-b:基地局から、それぞれが510とおりの9ビット情報である𝑁𝐼𝐷𝑐𝑠ℎ_𝐷𝑀𝑅𝑆と𝑛𝐼𝐷𝑃𝑈𝑆𝐶𝐻の受信をするパラメータ情報受信部1-c⑴:前記参照信号のベースシーケンスを、前記受信した𝑛𝐼𝐷𝑃𝑈𝑆𝐶𝐻に基づいて決定する処理部 1-c⑵:前記受信した𝑁𝐼𝐷𝑐𝑠ℎ_𝐷𝑀𝑅𝑆に基づいて疑似ランダムシーケンス初 期値𝐶initの決定をする処理部1-c⑶:前記決定された疑似ランダムシーケンス初期値𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡と前記決定した前記参照信号のベースシーケンスとに基づいて前記参照信号の生成をする処理部1-c⑷:前記生成された参照信号の送信をする処理部 1-d:疑似ランダムシーケンス初期値 𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡を、𝑁𝐼𝐷𝑐𝑠ℎ_𝐷𝑀𝑅𝑆に基づいて𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡= ⌊𝑁𝐼𝐷𝑐𝑠ℎ_𝐷𝑀𝑅𝑆/30⌋× 25 + (𝑁𝐼𝐷𝑐𝑠ℎ_𝐷𝑀𝑅𝑆 𝑚𝑜𝑑30)により決定する処理部⑵ 被告は、被告製品に組み込まれたチップセット(以下「本件チップセット」という。)はアップリンクCoMP(ULCoordinatedMulti-Pointtransmission andreception〔アッ れたチップセット(以下「本件チップセット」という。)はアップリンクCoMP(ULCoordinatedMulti-Pointtransmission andreception〔アップリンクの多地点協調〕。以下「CoMP」という。)をサポートしておらず、LTE規格に規定された「𝑁𝐼𝐷𝑐𝑠ℎ_𝐷𝑀𝑅𝑆」及び「𝑛𝐼𝐷𝑃𝑈𝑆𝐶𝐻」の2つのパラメータ(以下、併せて「本件パラメータ」という。)を使用して参照信号を生成しないことから、被告製品は構成要件1-C及び1-Dを充足しない旨主張する。 しかしながら、「CoMPをサポートしていない」からといって、「本件パラメータを使用して参照信号を生成・送信しない」とはいえない。そもそも、LTE規格の記載に基づけば、LTE規格に準拠している製品であれば、構成1-c⑴ないし1-dを備えるはずである。また、原告が本件チップセットの仕様の根拠として提出する乙50及び51は、乙49の引用部分の記 載を引き写しただけであって、本件チップセットの仕様を客観的に規定したものとはいえない。さらに、本件チップセットについて「領域をFALSEに設定」しているとの陳述書(乙52)も、被告と利害を共にするQualcommTechnologies, Inc.(以下「クアルコム」という。)の技術者が、本件チップセットの客観的な仕様書等に基づくことなく、主観的に陳述したも のであるから、これをもって本件チップセットの構成が立証されたとはいえ ない。 (被告の主張)以下で述べるとおり、被告製品は、構成1-c及び1-dを有していないから、構成要件1-C及び1-Dを充足しない。 本件第1発明は、CoMPシステムにおいてUE(端末をいう。以下同じ。) がアップリンク参照信号を生 告製品は、構成1-c及び1-dを有していないから、構成要件1-C及び1-Dを充足しない。 本件第1発明は、CoMPシステムにおいてUE(端末をいう。以下同じ。) がアップリンク参照信号を生成する時に使用するパラメータ、すなわち、CoMPをサポートする上で必要とされるパラメータを用いた参照信号送信装置を提供することを目的とするものである。そして、本件第1発明において、CoMPをサポートする上で必要とされるパラメータとして規定されているのは、循環遅延ホッピング初期値パラメータ𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻及び仮想セルIDパラメータの2つ のパラメータである。この点、原告は、被告製品の構成において、LTE規格に規定された「𝑁𝐼𝐷𝑐𝑠ℎ_𝐷𝑀𝑅𝑆」及び「𝑛𝐼𝐷𝑃𝑈𝑆𝐶𝐻」の2つのパラメータ(本件パラメータ)が、「循環遅延ホッピング初期値パラメータ𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻」及び「仮想セルIDパラメータ」にそれぞれ相当すると主張する。 しかしながら、①3GPP規格上、CoMPはUEの必須の構成とされてい ないこと、②被告製品に組み込まれたチップセット(本件チップセット)はCoMPをサポートしていないこと、③本件チップセットは、CoMPをサポートする上で必要とされるパラメータである本件パラメータを使用して参照信号を生成しないことから、本件チップセットが組み込まれた被告製品は、本件パラメータを使用して参照信号を生成し、送信することを内容とする構成要件1 -C及び1-Dを充足しない。 2 争点1-2(被告製品が「推定余剰電力を計算」〔構成要件2-1D〕、「推定余剰電力が臨界電力より小さい場合」〔構成要件2-1E〕を充足するか否か)について(原告の主張) ⑴ 被告製品が採用する通信方法(以下「被告通信方法」という。)は、 1D〕、「推定余剰電力が臨界電力より小さい場合」〔構成要件2-1E〕を充足するか否か)について(原告の主張) ⑴ 被告製品が採用する通信方法(以下「被告通信方法」という。)は、以下 の構成2-1aないし2-1eを有しているから、構成要件2-1Aないし2-1Eを充足する。 2-1a:多重コンポーネントキャリアシステムにおける移動端末によるアップリンク伝送電力の制御方法2-1b:プライマリーサービングセル上で伝送されるSRS又はPUSCH/P UCCHのアップリンク信号を生成するステップ2-1c:セカンダリーサービングセルに対するランダムアクセス手順の開始を命令するPDCCH命令を上位レイヤから命令されるステップ2-1d:SRS又はPUSCH/PUCCHのアップリンク信号伝送に係る伝送電 力とPRACHの伝送に係る伝送電力との合計とPCMAXとの差分の推定値である推定差分電力を計算するステップ2-1e:推定差分電力が0より小さい場合、優先順位に基づきPUSCH/PUCCHのアップリンク信号の伝送電力を調整してPUSCH/PUCCH及びPRACHを同時に伝送する、または、優先順位に基づき SRSのアップリンク信号とPRACHのうちPRACHを選択的に伝送するステップ⑵ 被告製品は、以下の構成2-2aないし2-2eを有しているから、構成要件2-2Aないし2-2Eを充足する。 2-2a:多重コンポーネントキャリアシステムにおける移動端末による アップリンク伝送電力を制御する移動端末2-2b:プライマリーサービングセル上で伝送されるSRS又はPUSCH/PUCCHのアップリンク信号を生成する信号生成部2-2c:セカンダリーサービングセルに対するランダムアクセ する移動端末2-2b:プライマリーサービングセル上で伝送されるSRS又はPUSCH/PUCCHのアップリンク信号を生成する信号生成部2-2c:セカンダリーサービングセルに対するランダムアクセス手順の開始を命令するPDCCH命令を上位レイヤから受信する受信部 2-2d⑴:SRS又はPUSCH/PUCCHのアップリンク信号伝送にかかる伝 送電力とPRACHの伝送のための伝送電力との合計とPCMAXとの差分の推定値である推定差分電力を計算する処理部2-2d⑵:推定差分電力を0と比較する処理部2-2d⑶:推定差分電力が0より小さい場合、優先順位に基づいて、PUSCH/PUCCHの伝送電力を調整する処理部 2-2e:推定差分電力が0より小さい場合、調整された伝送電力によりPUSCH/PUCCH及びPRACHを同時に伝送する、または、優先順位に基づいて、SRSとPRACHのうちPRACHを選択的に伝送する伝送部⑶ 被告は、被告通信方法においては、「推定余剰電力を計算」していないか ら、構成要件2-1Dを充足しないと主張する。 しかしながら、被告が自認するように、被告通信方法において「合計値がPCMAXの値を超えないようにPUSCH/PUCCHのアップリンク信号伝送に係る伝送電力を調整する」ためには、「PUSCH/PUCCHのアップリンク信号に係る伝送電力とPRACHに係る伝送電力との合計値」と「PCMAX」との差に相当 する電力(構成要件2-1Eの「推定余剰電力」に相当する。)が所定値を下回る場合に、伝送電力を調整するのが自然かつ合理的な方法であり、それ以外の方法が実際上想定し難い。したがって、被告通信方法は構成要件2-1Dを充足する。 ⑷ 被告は、被告通信方法においては、「推定 場合に、伝送電力を調整するのが自然かつ合理的な方法であり、それ以外の方法が実際上想定し難い。したがって、被告通信方法は構成要件2-1Dを充足する。 ⑷ 被告は、被告通信方法においては、「推定余剰電力が臨界電力より小さい」 か否かを判定していないから、構成要件2-1Eを充足しないと主張する。 しかしながら、構成要件2-1Eは、「推定余剰電力が臨界電力より小さい場合」と規定しており、判定する処理自体を規定するものではないから、仮に、被告通信方法において「推定余剰電力が臨界電力より小さい」か否かを判定する処理自体を含んでいないとしても、構成要件2-1Eを充足しな い理由とはならない。 また、仮に、被告通信方法の構成2-1eが被告の主張する内容であったとしても、「PUSCH/PUCCHのアップリンク信号に係る伝送電力とPRACHに係る伝送電力との合計値が、PCMAXの値より大きい場合」とは、「PUSCH/PUCCHのアップリンク信号に係る伝送電力とPRACHに係る伝送電力との合計値」と「PCMAX」との差分(構成要件2-1Eの「推定余剰電力」に相当 する。)が「0」(構成要件2-1Eの「臨界電力」に相当する。)よりも小さい場合に相当するから、いずれにしても被告通信方法は、構成要件2-1Eを充足する。 (被告の主張)⑴ 被告通信方法の構成のうち、2-1b、2-1d及び2-1eは、以下の とおり認定されるべきである。 ア 2-1bについて原告は、SRS又はPUSCH/PUCCHの信号を伝送するセルである「異なるサービングセル」を「プライマリーサービングセル」と称しているが、これは誤りであるから、2-1bは、以下のとおり認定されるべきである。 2-1b セカンダリーサービング るセルである「異なるサービングセル」を「プライマリーサービングセル」と称しているが、これは誤りであるから、2-1bは、以下のとおり認定されるべきである。 2-1b セカンダリーサービングセルとは異なるサービングセル上で伝送されるSRS又はPUSCH/PUCCHのアップリンク信号を生成するステップイ 2-1dについて被告通信方法においては、SRSに係る伝送電力とPRACHに係る伝送電 力の合計が、PCMAXを超える場合に、SRSをドロップするところ、被告通信方法では、伝送電力の合計値とPCMAXの値を対比しているにすぎず、伝送電力の合計値とPCMAXの値との差分を推定するとのステップを備えていない。 同様に、被告通信方法においては、異なるTAGに属する異なるサービ ングセルのPUSCH/PUCCHと並行してPRACHを伝送することを上位レイ ヤから命令されたとき、PUSCH/PUCCHの伝送電力を調整し、その重複部分における伝送電力の合計がPCMAXを超えないようにしているところ、被告通信方法では、伝送電力の合計値とPCMAXの値とを対比しているにすぎず、伝送電力の合計値とPCMAXの値との差分を推定するとのステップを備えていない。 したがって、2-1dは、次のとおり認定されるべきである。 2-1d SRS又はPUSCH/PUCCHのアップリンク信号伝送に係る伝送電力とPRACHに係る伝送電力との合計値と、PCMAXの値を対比するステップウ 2-1eについて 上記のとおり、被告通信方法においては、SRS 又はPUSCH/PUCCH のアップリンク信号伝送に係る伝送電力とPRACH に係る伝送電力との合計値とPCMAX の値を対比して、 て 上記のとおり、被告通信方法においては、SRS 又はPUSCH/PUCCH のアップリンク信号伝送に係る伝送電力とPRACH に係る伝送電力との合計値とPCMAX の値を対比して、伝送電力の合計値がPCMAX の値を超えるか否かを判断しているにすぎず、「推定差分電力が0より小さい」との判定はしていないから、原告による「推定差分電力が0より小さい場合」に所定 の動作をするとの認定は誤りである。 したがって、2-1eは、次のとおり認定されるべきである。 2-1e(i) PUSCH/PUCCHのアップリンク信号伝送に係る伝送電力とPRACHに係る伝送電力との合計値が、PCMAXの値より大きい場合、PUSCH/PUCCHの伝送電力を調整し、その重複部 分における伝送電力の合計がPCMAXの値を超えないようにし、また、(ii) SRSのアップリンク信号伝送に係る伝送電力とPRACHに係る伝送電力との合計値が、PCMAXの値より大きい場合、SRSをドロップするステップ ⑵ 被告製品についても、被告通信方法について述べたことが同様に当てはま るから、被告製品の構成のうち、2-2b、2-2d及び2-2eは、以下のとおり認定されるべきである。 2-2b セカンダリーサービングセルとは異なるサービングセル上で伝送されるSRS又はPUSCH/PUCCHのアップリンク信号を生成する信号生成部と 2-2d SRS又はPUSCH/PUCCHのアップリンク信号伝送に係る伝送電力とPRACHに係る伝送電力との合計値と、PCMAXの値を対比し、(i) PUSCH/PUCCHのアップリンク信号伝送に係る伝送電力とPRACHに係る伝送電力との合計値が、PCMAXの値より大きい場合、PUSCH/PUCCHの 、PCMAXの値を対比し、(i) PUSCH/PUCCHのアップリンク信号伝送に係る伝送電力とPRACHに係る伝送電力との合計値が、PCMAXの値より大きい場合、PUSCH/PUCCHの伝送電力を調整し、その重複部 分における伝送電力の合計がPCMAXの値を超えないようにし、また、(ii) SRSのアップリンク信号伝送に係る伝送電力とPRACHに係る伝送電力との合計値が、PCMAXの値より大きい場合、SRSをドロップする調整部と、 2-2e (i) PUSCH/PUCCHのアップリンク信号伝送に係る伝送電力とPRACHに係る伝送電力との合計値が、PCMAXの値より大きい場合、調整された伝送電力により、PUSCH/PUCCH及びPRACHを同時に伝送する、また、(ii) SRSのアップリンク信号伝送に係る伝送電力とPRACHに 係る伝送電力との合計値が、PCMAXの値より大きい場合、SRSをドロップしてPRACHを伝送する伝送部と⑶ 被告通信方法は、以下のとおり、少なくとも、構成要件2-1D及び構成要件2-1Eを充足しない。 ア構成要件2-1Dについて 被告通信方法においては、SRS又はPUSCH/PUCCHのアップリンク信号 伝送に係る伝送電力とPRACHに係る伝送電力との合計値と、PCMAXの値を対比しているにすぎず、「推定余剰電力を計算」していないから、構成要件2-1Dを充足しない。 イ構成要件2-1Eについて被告通信方法においては、SRS又はPUSCH/PUCCHのアップリンク信号 伝送に係る伝送電力とPRACHに係る伝送電力との合計値と、PCMAXの値を対比しているにすぎず、「推定余剰電力が臨界電力より小さい」か否かを判定していない CH/PUCCHのアップリンク信号 伝送に係る伝送電力とPRACHに係る伝送電力との合計値と、PCMAXの値を対比しているにすぎず、「推定余剰電力が臨界電力より小さい」か否かを判定していないから、構成要件2-1Eを充足しない。 ⑷ 被告製品についても、被告通信方法において述べたとおり、「推定余剰電力」の計算及び推定余剰電力と臨界電力との比較を行わないから、被告製品 は構成要件2-2D及び2-2Eを充足しない。 3 争点2(本件第1発明の無効理由の有無)について(被告の主張)以下に述べるとおり、本件第1発明は、乙2議事録(主引例)に記載された発明(乙2発明)に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができ たものであるから、特許法29条2項により無効とされるべきものである。 ⑴ 乙2発明の内容乙2議事録には、次の発明(乙2発明)が開示されている。 LTEにおけるDMRSの送信のためのユーザ端末であって、基地局から、𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻及び仮想セルIDの受信をするパラメータ情報受信部と、 前記DMRSのベースシーケンスを、前記受信した仮想セルIDに基づいて決定をし、前記受信した𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻に基づいて実際の循環遅延ホッピング初期値𝐶initの決定をし、前記決定された実際の循環遅延ホッピング初期値𝐶initと前記決定した前記DMRSのベースシーケンスとに基づいて前記DMRSの生成をし、前記生成されたDMRSの送信をする参照信号処理部と、 を含むユーザ端末。 ⑵ 一致点上記のとおり、乙2発明は、本件第1発明と、次の点で一致する。 無線通信システムにおける参照信号の送信のための装置であって、送受信ポイントから、循環遅延ホッ ⑵ 一致点上記のとおり、乙2発明は、本件第1発明と、次の点で一致する。 無線通信システムにおける参照信号の送信のための装置であって、送受信ポイントから、循環遅延ホッピング初期値パラメータ𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻及び仮想セルIDパラメータの受信をするパラメータ情報受信部と、 前記参照信号のベースシーケンスを、前記受信した仮想セルIDパラメータに基づいて決定をし、前記受信した循環遅延ホッピング初期値パラメータ𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻に基づいて実際の循環遅延ホッピング初期値𝐶initの決定をし、前記決定された実際の循環遅延ホッピング初期値𝐶initと前記決定した前記参照信号のベースシーケンスとに基づいて前記参照信号の生成をし、前記生成された参 照信号の送信をする参照信号処理部と、を含む装置である点。 ⑶ 相違点上記のとおり、乙2発明は、本件第1発明と、次の2点で相違する。 ア相違点1 本件第1発明は、「循環遅延ホッピング初期値パラメータ𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻及び仮想セルIDパラメータ」の「それぞれが510とおりの9ビット情報である」との構成を有するのに対し、乙2発明は当該構成を有するかが明らかでない点。 イ相違点2 本件第1発明は、「前記参照信号処理部は、実際の循環遅延ホッピング初期値𝐶initを、前記受信した循環遅延ホッピング初期値パラメータ(𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻)に基づいて𝐶init= [𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻=/0 ]×25+(𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻=od30 )により決定をする、装置」との構成を有するのに対し、乙2発明は当該構成を有するかが明らかでない点。 ⑷ 相違点の容易想到性 ア乙3発明の内容乙 𝐻=od30 )により決定をする、装置」との構成を有するのに対し、乙2発明は当該構成を有するかが明らかでない点。 ⑷ 相違点の容易想到性 ア乙3発明の内容乙3メモには、次の発明(乙3発明)が開示されている。 DMRSのベースシーケンスを、510とおりの9ビット情報である仮想セルIDに基づいて決定すること、及び、 𝐶initを、510とおりの9ビット情報である仮想セルID(VCI)に基づいて VCIinitc・25= +(VCI=od3=0 )により決定すること。 イ乙2発明に、乙3発明を適用する動機付けがあること乙2議事録及び乙3メモは、2012年3月26日から同月30日にかけて開催された3GPP技術仕様グループの会合(3GPPTSGRANWGI Meeting)に向けた提案メモ(乙3)と、同提案メモを踏まえて行われた同会合の議事録(乙2)である。具体的には、LTERelease 10の下でのユーザ端末は、自身が所在する物理セルをカバーする1つの基地局と通信していたところ、ユーザ端末が複数の基地局と通信するCoMPを達成するに当たり、DMRSのベースシーケンスと循環シフトホッピングをユーザ 端末固有の構成とする必要があるとの共通理解の下、これを達成する手段を議論したものである。 このように、乙2議事録及び乙3メモの記載内容の技術分野は同一であり、技術的課題も同一であり、作用・機能も同一であるから、乙2発明に乙3発明を適用する動機付けが認められる。 ウ相違点1について上記のとおり、乙2発明に乙3発明を適用する動機付けが認められるから、乙2議事録及び乙3メモに接 乙2発明に乙3発明を適用する動機付けが認められる。 ウ相違点1について上記のとおり、乙2発明に乙3発明を適用する動機付けが認められるから、乙2議事録及び乙3メモに接した当業者は、乙3発明の構成のうち、DMRSのベースシーケンスを決定するためのパラメータである「510とおりの9ビット情報である仮想セルID」との構成を、乙2発明のうち、 同じくDMRSのベースシーケンスを決定するためのパラメータである「仮想セルIDパラメータ」との構成に適用することにより、相違点1に係る本件第1発明の構成のうち、「仮想セルIDパラメータ・・・が510とおりの9ビット情報である」との構成を容易に想到し得たものである。 また、乙2議事録には、𝐶initを決定するためのパラメータについて、乙 3メモと同様、510とおりの9ビット情報とすることを否定した記載はない。そうすると、当業者であれば、仮想セルIDとは別個に𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻を設定する乙2発明の構成において、乙3メモに明記された510とおりの9ビット情報である仮想セルIDとの構成を当該乙2発明の構成における𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻に適用し、510とおりの9ビット情報である𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻とした構成を容易に 想到し得たといえる。 したがって、乙2議事録及び乙3メモに接した当業者は、相違点1に係る本件第1発明の構成のうち、「循環遅延ホッピング初期値パラメータ𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻・・・が510とおりの9ビット情報である」との構成を容易に想到し得たといえる。 エ相違点2について乙2議事録には、乙3メモと同様の510とおりの9ビット情報により𝐶initを算出することを否定した記載はない。また、上記のとおり、当業者であれば、仮 エ相違点2について乙2議事録には、乙3メモと同様の510とおりの9ビット情報により𝐶initを算出することを否定した記載はない。また、上記のとおり、当業者であれば、仮想セルIDとは別個に𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻を設定する乙2発明の構成において、乙3メモに明記された510とおりの9ビット情報である仮想セル IDの構成を、乙2発明の構成における𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻に適用し、510とおりの9ビット情報である𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻とした構成を容易に想到し得たといえる。 そうすると、当業者であれば、乙3メモに明記された510とおりの9ビット情報である仮想セルIDとの構成を乙2発明の構成における𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻に適用し、510とおりの9ビット情報である𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻とした構成において、 乙3に明記された𝐶initの算出式中の仮想セルID(VCI)を𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻に置換した 構成を容易に想到し得たといえる。 したがって、乙2議事録及び乙3メモに接した当業者は、相違点2に係る本件第1発明の構成のうち、「前記参照信号処理部は、実際の循環遅延ホッピング初期値𝐶initを、前記受信した循環遅延ホッピング初期値パラメータ(𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻)に基づいて𝐶init= [𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻=/0 ]×25= +(𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻=od30 )により決 定をする、装置」との構成を容易に想到し得たといえる。 (原告の主張)⑴ 被告は、乙2議事録記載の選択肢3は、乙4記載の発明に以下の操作を加えるものであるとし、それを前提に乙2発明が導かれると主張する。 操作① DMRSのベースシーケンスを決定する際に用いられていた物 理セルに紐付いたパラメータであるNIDcellを、ユーザ端末 であるとし、それを前提に乙2発明が導かれると主張する。 操作① DMRSのベースシーケンスを決定する際に用いられていた物 理セルに紐付いたパラメータであるNIDcellを、ユーザ端末固有のパラメータである仮想セルIDに置換する操作② Cinitを求める算出式において、物理セルに紐付いたパラメータであるΔSSをゼロにし、ユーザ端末固有のパラメータであるCCSH=init を代入する 操作③ ベースシーケンスを決定するためのパラメータである仮想セルIDとは別個に、Cinitを決定するためのパラメータであるCCSH= initを設定するしかしながら、上記選択肢3には、上記操作①~③が記載されていないから、選択肢3に係る記載から、乙2発明を導くことはできない。 ⑵ また、乙3メモを踏まえて議論した結果、乙2議事録の内容で決着したのであるから、乙2発明に更に乙3発明を組み合わせる動機付けがあったとはいえず、むしろこれを阻害する要因があったというべきである。 さらに、被告は、乙4に乙2議事録を組み合わせて「乙2発明」を導いた上で、この「乙2発明」に更に乙3発明を組み合わせることで本件第1発明 を容易想到だと論じているが、かかる論法はいわゆる「容易の容易」に該当 し、容易想到性を肯定することはできない。 4 争点3(差止請求権の行使が権利濫用に当たるか否か)について(被告の主張)本件特許は、FRAND宣言を行ったものであるところ、仮に、被告製品がLTE規格に準拠したことを理由に本件特許の技術的範囲に属し、かつ、本件 特許について無効理由が認められないとすれば、本件特許はFRAND宣言を行った必須特許ということになる。 そして、本件では、被告の親会 拠したことを理由に本件特許の技術的範囲に属し、かつ、本件 特許について無効理由が認められないとすれば、本件特許はFRAND宣言を行った必須特許ということになる。 そして、本件では、被告の親会社であるASUSTeKComputerInc.(以下「ASUS台湾」という。)が原告とのライセンス交渉を行ってきたところ、交渉の経緯において、原告が必要な情報を適時に開示したとはいい難い状況にあっ たにもかかわらず、ASUS台湾は率先して、ライセンス交渉の進展に必要な対応を行ってきた。 また、原告がASUS台湾に提示したライセンス条件はFRAND条件ではなかったから、ASUS台湾がこのライセンス条件に応じなかった事実は、ASUS台湾がFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有しないとの認 定の根拠とはならない。これに対し、ASUS台湾が原告に対して提示した対案となるライセンス条件は、FRAND条件である。 したがって、被告はFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有する者であるから、原告による本件特許権に基づく差止請求権の行使は、権利の濫用に当たり許されない。 (原告の主張)⑴ 被告は、LTE規格のクレームチャートに対する回答について、ベンダへの確認に時間がかかった旨主張するが、対象製品がLTE規格に準拠している以上、端末内部の機械的構成やソフトウェアの内容等を確認する必要はないから、被告のLTE規格のクレームチャートに対する回答は不合理に遅い ものであり、交渉態度は到底誠実とはいえない。また、被告のライセンス条 件の対案の提示は不合理に遅かった上、その内容も明らかに不合理なものであったから、被告の交渉態度が誠実なものだとは到底いえない。 他方で、原告は、第1回交渉時からライセンス条 センス条 件の対案の提示は不合理に遅かった上、その内容も明らかに不合理なものであったから、被告の交渉態度が誠実なものだとは到底いえない。 他方で、原告は、第1回交渉時からライセンス条件の根拠を示したり、誠実な交渉態度として本来は求められるものではない5G規格のクレームチャートを、被告の要請に応じて提示したりするなど、原告の交渉態度は、終始 誠実なものである。 ⑵ 原告の提示した累積ロイヤリティは合理的な値であり、原告が提示したライセンス条件はFRANDである。 他方で、ASUS台湾が原告に提示したライセンス条件は、原告提示のロイヤリティ料率の5000分の1程度であるところ、上記のとおり、原告提 示のロイヤリティ料率は合理的なもので、FRANDであることに照らせば、原告提示のロイヤリティ料率に比べて著しく低いASUS台湾提示のロイヤリティ料率が、FRANDでないことは明らかである。 5 争点4(被告の行為及び損害額)について(原告の主張) 被告は、被告製品の輸入、譲渡、貸渡し、譲渡又は貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。)を行っている。 また、被告製品は本件第2発明1の方法の使用にのみ用いる物で、その課題の解決に不可欠なものであり、被告は当該発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知っている。被告の上記行為は、本件 第2発明1の方法の使用に用いる物の業としての「輸入」、「譲渡」、「貸渡し」、「譲渡」又は「貸渡し」の「申出」に該当するものであり、本件第2特許権の間接侵害に当たる。 さらに、原告は、被告による上記本件第2特許権侵害により生じた損害の賠償を請求する権利を有するところ、被告製品の国内での売上高は累計で100 億円は下ら 本件第2特許権の間接侵害に当たる。 さらに、原告は、被告による上記本件第2特許権侵害により生じた損害の賠償を請求する権利を有するところ、被告製品の国内での売上高は累計で100 億円は下らないと試算され、ライセンス交渉に関する被告の不誠実な交渉態度 等に照らせば、原告の損害額は、売上高の0.1%たる1000万円は下らない。 (被告の主張)被告の行為について、被告が被告製品を輸入及び販売していたことは認めるが、その余は否認する。また、被告は現在、被告製品を輸入していない。 また、損害額については、否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 本件第1発明の内容本件第1特許の願書に添付された明細書及び図面(以下「本件明細書等1」という。甲3の1)には、次のとおりの記載があることが認められる。 ⑴ 技術分野「本発明は無線通信に関し、より詳しくは、無線通信システムにおける参照信号(ReferenceSignal)の送受信方法及び装置に関する。また、無線通信システムにおける参照信号のためのパラメータの構成方法及びそのためのシグナリング方法に関する。」(【0001】) ⑵ 背景技術「現在の種々の通信システムでは、アップリンクまたはダウンリンクを通じて通信環境などに対する情報を相手装置に提供するためにさまざまな参照信号(ReferenceSignal)が使われている。」(【0002】)「また、無線通信システムの性能と通信容量を高めるために、多重セルま たは送受信ポイント協力が導入されている。多重セル協力は、CoMP(cooperativemultiplepointtransmissionandreception)ともいう。CoMPには隣接するセルが協力し 力が導入されている。多重セル協力は、CoMP(cooperativemultiplepointtransmissionandreception)ともいう。CoMPには隣接するセルが協力してセル境界のユーザに干渉を緩和するビーム回避技法と、隣接するセルが協力して同一なデータを転送するジョイント転送(jointtransmission)技法などがある。」(【0003】) ⑶ 発明が解決しようとする課題 「本発明の側面は、参照信号の送受信方法及び装置と、そのための信号シグナリング方法を提供することである。」(【0007】)「本発明の他の側面は、CoMPシステムにおいて、UEが特定のアップリンク参照信号を生成する時に使用するパラメータセットを構成する方法と、それを用いた参照信号送受信装置及び方法を提供することである。」(【0 008】)「本発明の他の側面は、CoMPシステムにおいて、UEがアップリンク参照信号を転送するに当たって、通信環境によって2つ形態の参照信号のうち、参照信号を選択的に生成して転送するように動的スイッチングし、その際、2つ形態の参照信号のためのパラメータセットを構成する方法である。」 (【0009】)⑷ 課題を解決するための手段「上記の目的を達成するために、本発明の一実施形態は、無線通信システムにおける端末(UE)による参照信号の送信方法であって、送受信ポイントから2つ形態の参照信号のための2つのパラメータセット(各パラメータ セットは510個の整数値のうちの1つを表現する9ビット情報である循環遅延ホッピング初期値パラメータ𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻を含み)のうちの1つ以上の情報を受信するステップと、上記2つのパラメータセットのうち、上記参照信号生成に使わ の1つを表現する9ビット情報である循環遅延ホッピング初期値パラメータ𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻を含み)のうちの1つ以上の情報を受信するステップと、上記2つのパラメータセットのうち、上記参照信号生成に使われるパラメータセットを指示する指示情報を動的に受信し、上記指示情報によって指示されるパラメータセットに基づいて上記参照信号を生成 して送信することを含む参照信号送信方法を提供する。」(【0013】) 2 本件第2発明の内容本件第2特許の願書に添付された明細書及び図面(以下「本件明細書等2」という。甲3の2)には、次のとおりの記載があることが認められる。 ⑴ 技術分野 「本発明は、無線通信に関し、より詳しくは、多重コンポーネントキャリ アシステムにおけるアップリンク伝送電力の制御装置及び方法に関する。」(【0001】)⑵ 背景技術「1つの帯域幅と中心周波数を有するキャリアを定義し、複数のキャリアを介して広帯域にデータを送信及び/又は受信できるようにする多重コンポ ーネントキャリア(MultipleComponentCarrier)システムが登場している。 1つまたはそれ以上のキャリアを使用することにより、狭帯域と広帯域を同時にサポートすることである。例えば、1つのキャリアが5MHzの帯域幅に対応するならば、4個のキャリアを使用することにより、最大20MHzの帯域幅をサポートすることである。」(【0004】) 「ところが、多重コンポーネントキャリアシステムが導入されるにつれて、コンポーネントキャリアのアップリンク伝送電力が総合的に考慮されなければならないので、端末の電力制御は一層複雑になる。このような複雑性は、端末の最大送信電力(MaximumTransmissio コンポーネントキャリアのアップリンク伝送電力が総合的に考慮されなければならないので、端末の電力制御は一層複雑になる。このような複雑性は、端末の最大送信電力(MaximumTransmissionPower)の側面で問題を引き起こす恐れがある。一般に端末は、許容可能な範囲の送信電力である最大送信 電力より低い電力によって動作しなければならない。もし、基地局が最大送信電力以上の送信電力を要求するスケジューリングをする場合、実際アップリンク伝送電力が最大送信電力を超過する問題を引き起こす恐れがある。これは、多重コンポーネントキャリアの電力制御が明確に定義されないか、または端末と基地局との間にアップリンク伝送電力に関する情報が十分に共有 されないためである。」(【0006】)⑶ 発明が解決しようとする課題「本発明の技術的課題は、多重コンポーネントキャリアシステムにおけるアップリンク伝送電力の制御装置及び方法を提供することにある。」(【0007】) ⑷ 課題を解決するための手段 「本発明の一態様によれば、多重コンポーネントキャリアシステムにおける端末によるアップリンク伝送電力の制御方法を提供する。前記アップリンク伝送電力の制御方法は、第1のサービングセル(servingcell)上で伝送されるアップリンク信号を生成するステップと、第2のサービングセルに対するランダムアクセス手順の開始を命令するランダムアクセス開始情報を基地 局から受信するステップと、前記アップリンク信号の伝送のためにスケジューリングされた第1の伝送電力と、ランダムアクセスプリアンブルがマッピングされる物理ランダムアクセスチャネル(physicalrandomaccesschannel:PRACH)の伝送 ジューリングされた第1の伝送電力と、ランダムアクセスプリアンブルがマッピングされる物理ランダムアクセスチャネル(physicalrandomaccesschannel:PRACH)の伝送のためにスケジューリングされた第2の伝送電力とから推定余剰電力(estimatedpowerheadroom)を計算するステップと、前記推定 余剰電力が臨界電力より小さい場合、電力割当優先順位に基づいて前記第1の伝送電力または前記第2の伝送電力を調整するステップとを含む。」(【0010】)⑸ 発明の効果「多重コンポーネントキャリアシステムにおいてアップリンク信号を伝送 するとき、電力割当優先順位にしたがって選択的にアップリンク信号を伝送すれば、アップリンク伝送電力が効率的に配分され得る。また、電力割当が単純で、かつ明確な規則によってなされるので、システムの複雑度も減らしつつ、性能が向上し得る。」(【0011】)⑹ 発明を実施するための形態 「端末が複数のアップリンクチャネルを複数のサービングセル上に伝送するためには、複数のアップリンクチャネルを伝送できる電力が必要である。 ところが、端末に構成された最大送信電力(maximumtransmissionpower)は限定されており、全てのアップリンクチャネルを伝送するのに足りないことがある。…このような問題を解決するために端末は、与えられたアップリ ンク伝送電力を優先順位に基づいて各チャネルに割り当てることができる。 優先順位を電力割当優先順位(powerallocationpriority)という。」(【0053】)「余剰電力PPHは、数式1のように端末に設定された(configured)最大送信電力PCM 割当優先順位(powerallocationpriority)という。」(【0053】)「余剰電力PPHは、数式1のように端末に設定された(configured)最大送信電力PCMAXとアップリンク伝送に関して推定された電力Pestimatedとの間の差異で定義され、dBに表現される。」(【0062】) (【0063】)「すなわち、余剰電力は、基地局により設定された端末の最大送信電力から各サービングセルで使用している送信電力の合計であるPestimatedを除いた残りの値がPPH値となる。一方、最大送信電力は、サービングセル毎に個別的に定義され得るが、例えば、サービングセルcでの最大送信電力は PCMAX、cのように表示される。」(【0064】)「端末は、第1のサブフレームで推定される推定余剰電力(estimated-PH:E-PH)を計算する(S710)。推定余剰電力は、タイプ1の余剰電力とタイプ2の余剰電力を含む。タイプ1の余剰電力は数式1により、タイプ2の余剰電力は数式2により計算される。」(【0082】) 「端末は、推定余剰電力が臨界電力(Pth)より小さいかを判断する(S715)。臨界電力は0dBでありうる。例えば、端末がPUSCHのみを伝送する予定であれば、端末はタイプ1の余剰電力が0dBより小さいかを判断し、端末がPUSCHとPUCCHを共に伝送する予定であれば、端末は、 タイプ0の余剰電力が0dBより小さいかを判断する。端末が、推定余剰電力が0dBより小さいかを判断することは、PRACHを伝送する第1のサブフレームでの推定余剰電力が0dBより小さく設定されるサービングセルが存在するかを判断することに対 判断する。端末が、推定余剰電力が0dBより小さいかを判断することは、PRACHを伝送する第1のサブフレームでの推定余剰電力が0dBより小さく設定されるサービングセルが存在するかを判断することに対応した概念である。」(【0083】)「端末は、推定余剰電力が臨界電力(Pth)より小さいかを判断する (S815)。臨界電力は0dBでありうる。例えば、端末がPUSCHのみを伝送する予定であれば、端末はタイプ1の余剰電力が0dBより小さいかを判断し、端末がPUSCHとPUCCHを共に伝送する予定であれば、端末はタイプ0の余剰電力が0dBより小さいかを判断する。端末が、推定余剰電力が0dBより小さいかを判断することは、PRACHを伝送する第1のサブフ レームでの推定余剰電力が0dBより小さく設定されるサービングセルが存在するかを判断することに対応した概念である。」(【0092】) 3 争点1-1(被告製品が「仮想セルIDパラメータ」及び「循環遅延ホッピング初期値パラメータ𝐶𝑖𝑛𝑖𝑡𝐶𝑆𝐻」を使用して参照信号を生成・送信〔構成要件1-C及び1-D〕しているか否か)について ⑴ 本件第1発明の構成要件1-C及び1-Dによれば、本件発明1は、本件パラメータ(「𝑛𝐼𝐷𝑃𝑈𝑆𝐶𝐻」及び「𝑁𝐼𝐷𝑐𝑠ℎ_𝐷𝑀𝑅𝑆」)を使用して参照信号を生成・送信しているところ、原告は、被告製品についても、LTE規格に準拠している以上、本件パラメータを使用して参照信号を生成・送信するものである と主張する。 そこで検討するに、証拠(甲5の1、2)及び弁論の全趣旨によれば、LTE規格においては、𝐶initを決定するに際し、本件パラメータの一つである𝑁𝐼𝐷cshDMRSの値が上位層から提供される場合にはこれを使用し、これが上位層か 1、2)及び弁論の全趣旨によれば、LTE規格においては、𝐶initを決定するに際し、本件パラメータの一つである𝑁𝐼𝐷cshDMRSの値が上位層から提供される場合にはこれを使用し、これが上位層から提供されない場合には、𝑁IDcellを使用していることが認められる。そう すると、LTE規格は、本件パラメータの使用を必須とするものとはいえない。 そして、弁論の全趣旨によれば、本件パラメータは、CoMP(ULCoordinatedMulti-Pointtransmissionandreception。以下「CoMP」という。)をサポートする上で必要とされるパラメータであるところ、証拠 (乙49、93)及び弁論の全趣旨によれば、LTE規格に準拠する端末装置UEは、CoMPを必須の構成とするものと認めることはできない。そうすると、LTE規格に準拠する端末装置UEは、CoMPをサポートしない構成も許容されることからすると、被告製品についてもCoMPを必須の構成とするものとはいえず、この場合には、CoMPをサポートする上で必要 とされる本件パラメータを使用するものではない。 そうすると、被告製品がLTE規格に準拠するものであるとしても、LTE規格は本件パラメータの使用を必須とするものではない上、被告製品は、CoMPを必須の構成とするものと認めるに足りず、CoMPをサポートするに必要な本件パラメータを使用して、参照信号を生成・送信するものであ ると認めるに足りない。 かえって、秘密保持命令の対象とされた証拠(乙50ないし52)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品に組み込まれたチップセット(以下「本件チップセット」という。)は、本件パラメータを使用して参照信号を生成・送信するものではないものと推認され、上記証拠の信 52)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品に組み込まれたチップセット(以下「本件チップセット」という。)は、本件パラメータを使用して参照信号を生成・送信するものではないものと推認され、上記証拠の信用性を疑うに足りる事情 を認めることはできない。その他に、本件チップセットが本件パラメータを 使用して参照信号を生成・送信することを裏付ける客観的な証拠はない。 これらの事情を総合すると、被告製品が本件第1発明の構成要件1-C及び1-Dを充足するものとは、認めるに足りないというべきである。 これに対し、原告は、被告製品がLTE規格に準拠している以上、被告製品は本件パラメータを使用して参照信号を生成・送信するはずである旨主張 する。 しかしながら、LTE規格が本件パラメータの使用を必須とするものではなく、また、被告製品がCoMPを必須の構成とするものではなく、CoMPをサポートする上で必要とされる本件パラメータを使用するものとはいえないことは、上記において説示したとおりである。 したがって、原告の主張は、構成要件充足性に係る客観的な裏付けを欠くものであり、採用することができない。 ⑶ 以上によれば、被告製品は、本件第1発明の構成要件1-C及び1-Dを充足するものとはいえない。 4 争点1-2(被告製品が「推定余剰電力を計算」〔構成要件2-1D〕、 「推定余剰電力が臨界電力より小さい場合」〔構成要件2-1E〕を充足するか否か)について⑴ 構成要件2-1D及びEの意義本件明細書等2の記載によれば、本件第2発明は、第1のサービングセル上で伝送されるアップリンク信号と第2のサービングセル上で伝送されるP RACH(ピーラッチ)の優先順位に基づく伝送制御をする条件として,第1のサービン 件第2発明は、第1のサービングセル上で伝送されるアップリンク信号と第2のサービングセル上で伝送されるP RACH(ピーラッチ)の優先順位に基づく伝送制御をする条件として,第1のサービングセル上で伝送されるアップリング信号による第1の伝送電力と,第2のサービングセル上で伝送されるPRACH(ピーラッチ)による第2の伝送電力とに基づき,推定余剰電力を計算し,推定余剰電力が臨界電力(Pth)より小さいか否かを判断するものであり、この場合における臨 界電力は0dBであり得ることが認められる。そして、技術常識及び弁論の 全趣旨によれば、dB(デシベル)とは、ある物理量を基準となる量との比の常用対数によって表した相対的な計量単位であることからすれば、上記にいう「臨界電力」とは、電力ゼロとは異なる特定の電力値を意味するものと解するのが相当である(【0083】、【0092】等)。 被告製品の構成 ア前記前提事実、証拠(甲8)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品は、規格213に準拠しているところ、同規格5.1.1.1には、次のとおりの記載があることが認められる。 ① 複数のTAGが設定されている場合に、UEは、異なるTAGに属する異なるサービングセルのサブフレーム上のシンボル内のSRS伝送と 並行してセカンダリーサービングセルでPRACHを伝送することを上位レイヤから命令されたとき、シンボル内の重複部分における伝送電力の合計がPCMAXを超える場合はSRSをドロップしなければならない。 ② 複数のTAGが設定されている場合、UEは、異なるTAGに属する異なるサービングセルのPUSCH/PUCCHと並行してセカンダリ ーサービングセルでPRACHを伝送することを上位レイヤから命令されたとき、 設定されている場合、UEは、異なるTAGに属する異なるサービングセルのPUSCH/PUCCHと並行してセカンダリ ーサービングセルでPRACHを伝送することを上位レイヤから命令されたとき、PUSCH/PUCCHの伝送電力を調整し、その重複部分における伝送電力の合計がPCMAXを超えないようにしなければならない。 イ上記認定事実によれば、規格213に準拠する被告製品は、セカンダリ ーサービングセルでPRACHを伝送することを上位レイヤから命令されたとき、伝送電力の合計がPCMAXを超えないように制御するものであり、その際に、伝送電力の合計がPCMAXを超えるか否かを判断するものであることが認められる。 構成要件充足性について 上記及びによれば、被告製品は、2つのサービングセル上で伝送され るアップリンク信号の優先順位に基づく伝送制御をする条件として,2つのサービングセル上で伝送されるアップリング信号に係る伝送電力の合計が,PCMAXを超えるか否かを判断するにとどまり、本件第2発明のように、伝送電力の合計がPCMAXに至るまでどの程度電力に余剰(余力)があるかどうかを判断するため、推定余剰電力が特定の電力値である臨界電力よりも小 さいか否かを判断するものではない。 したがって、被告製品は、本件第2発明の構成要件2-1D及びEを充足するものと認めることはできない。 これに対する原告の主張は、被告製品が上記にいう「臨界電力」により伝送制御を判断するものではない以上、いずれも採用の限りではない。 ⑷ 「推定余剰電力を計算」(構成要件2-2D)及び「推定余剰電力が前記臨界電力より小さい場合」(構成要件2-2E)の充足性被告製品が本件第2発明の構成要件2-1D及び の限りではない。 ⑷ 「推定余剰電力を計算」(構成要件2-2D)及び「推定余剰電力が前記臨界電力より小さい場合」(構成要件2-2E)の充足性被告製品が本件第2発明の構成要件2-1D及びEを充足しないことは、上記において説示したとおりであり、その理は、被告製品による本件第2発明の構成要件2-2D及びEの充足性についても同様に当てはまるというべ きである。したがって、原告の主張は、いずれも採用することができない。 5 まとめ以上によれば、被告製品は、本件発明の各構成要件をいずれも充足しないことからすると、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は、いずれも理由がない。 第5 結論よって、原告の請求は、いずれも理由がないからこれらをいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部裁判長裁判官 中島基至 裁判官 小田誉太郎 裁判官古賀千尋は差支えのため、署名押印することができない。 裁判長裁判官 中島基至 (別紙)物件目録以下の製品型番の通信機器。 1. SmartphoneforSnapdragonInsiders 型番:ZS675KW-BL512R162. ROGPhone 5sPro型番:ZS676KS-BK512R183. ROGPhone 5s 512GB型番:ZS676KS-BK512R16/ZS KW-BL512R162. ROGPhone 5sPro型番:ZS676KS-BK512R183. ROGPhone 5s 512GB型番:ZS676KS-BK512R16/ZS676KS-WH512R16 4. ROGPhone 5s 256GB型番:ZS676KS-BK256R12/ZS676KS-WH256R125. ROGPhone 5 Ultimate型番:ZS673KS-WH512R186. ROGPhone 3 12GB+512GB 型番:ZS661KS-BK512R127. ROGPhone 3 16GB+512GB型番:ZS661KS-BK512R168. Zenfone 8 16GB+256GB型番:ZS590KS-BK256S16/ZS590KS-WH256S16/ZS590KS-SL256S16 9. Zenfone 8 8GB+256GB型番:ZS590KS-BK256S8/ZS590KS-WH256S8/ZS590KS-SL256S810. Zenfone 8 8GB+128GB型番:ZS590KS-BK128S8/ZS590KS-WH128S8/ZS590KS-SL128S811. Zenfone 8 Flip 256GB 型番:ZS672KS-BK256S8/ZS672KS-SL256S8 12. Zenfone 8 Flip 128GB型番:ZS672KS-BK128S8/ZS672KS-SL128S813. ZenFone 7 Pro 8GB+256GB型番:ZS671KS-BK256S8/ZS671KS-WH256S814. ZenFone 7 8GB+128GB 型番:ZS670KS- ZenFone 7 Pro 8GB+256GB型番:ZS671KS-BK256S8/ZS671KS-WH256S814. ZenFone 7 8GB+128GB 型番:ZS670KS-BK128S8/ZS670KS-WH128S815. ZenFone 6 8GB+256GB型番:ZS630KL-BK256S8/ ZS630KL-SL256S816. ZenFone 6 6GB+128GB型番:ZS630KL-BK128S6/ZS630KL-SL128S6 以上 (別紙)特許権目録 1 特許番号第6200944号発明の名称無線通信システムにおける参照信号の送受信方法及び装置 出願日平成25年5月10日(特願2015-511380)登録日平成29年9月1日 2 特許番号第5763845号発明の名称多重コンポーネントキャリアシステムにおけるアップリンク伝送 電力の制御装置及び方法出願日平成24年11月2日(特願2014-540937)登録日平成27年6月19日以上
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