平成29年2月23日判決言渡平成24年(行ウ)第177号固定資産評価審査決定取消請求事件(甲事件)平成25年(行ウ)第76号固定資産評価審査決定取消請求事件(乙事件) 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 甲事件X市固定資産評価審査委員会が原告に対して平成24年3月22日付けでした別紙1物件目録記載の家屋の家屋課税台帳に登録された平成21年度の価格についての審査の申出に対する決定のうち,6億4660万円を超える部分を取り消す。 2 乙事件X市固定資産評価審査委員会が原告に対して平成25年2月4日付けでした別紙1物件目録記載の家屋の家屋課税台帳に登録された平成24年度の価格についての審査の申出に対する決定のうち,5億4160万円を超える部分を取り消す。 第2 事案の概要 1 事案の要旨(1) 甲事件は,鉄骨鉄筋コンクリート造のホテルである別紙1物件目録記載の家屋(以下「本件家屋」という。)に係る固定資産税の納税義務者である原告が,平成21年度の家屋課税台帳に登録された本件家屋の価格(以下「平成21年度登録価格」という。)を不服として,X市固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をしたところ,同委員会から一部を認め,その余 を棄却する決定(以下「本件決定①」という。)を受けたため,本件決定①は固定資産評価基準に基づいて本件家屋を評価しているが,同基準の経過年数に応ずる減点補正率のうち,最終残価率が20%であることや新築時から最終残価率に至るまでの年数(以下「経過年数」という。)には一般的合理性がないなどと主張して,被告を相手に,本件決定①のうち6億4660万円を超える部分の取消しを求める 20%であることや新築時から最終残価率に至るまでの年数(以下「経過年数」という。)には一般的合理性がないなどと主張して,被告を相手に,本件決定①のうち6億4660万円を超える部分の取消しを求める事案である。 (2) 乙事件は,原告が,平成24年度の家屋課税台帳に登録された本件家屋の価格(以下「平成24年度登録価格」という。)を不服として,X市固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をしたところ,同委員会から申出を棄却する決定(以下「本件決定②」といい,本件決定①と併せて「本件各決定」という。)を受けたため,上記(1)同様に主張して,被告を相手に,本件決定②のうち5億4160万円を超える部分の取消しを求める事案である。 2 関係法令等の定め(1) 地方税法ア 341条(固定資産税に関する用語の意義)地方税法341条は,固定資産税に関する用語の定義について,以下のとおり定めている。 (ア) 固定資産土地,家屋及び償却資産を総称する(1号)。 (イ) 家屋住家,店舗,工場,倉庫その他の建物をいう(3号)。 (ウ) 償却資産土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産(鉱業権,漁業権,特許権その他の無形減価償却資産を除く。)でその減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるもののうちその取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のもの(これに類する資産で法人税又は所得税を課されない者が所有するものを含む。)をいう。ただし,自動車税の課税客体である自動車並びに軽自動車税の課税客体で ある原動機付自転車,軽自動車,小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除くものとする(4号)。 (エ) 価格適正な時価をいう(5号)。 (オ) 固定資産課税台帳 に軽自動車税の課税客体で ある原動機付自転車,軽自動車,小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除くものとする(4号)。 (エ) 価格適正な時価をいう(5号)。 (オ) 固定資産課税台帳土地課税台帳,土地補充課税台帳,家屋課税台帳,家屋補充課税台帳及び償却資産課税台帳を総称する(9号)。 (カ) 家屋課税台帳登記簿に登記されている家屋について地方税法381条3項に規定する事項を登録した帳簿をいう(12号)。 イ 349条(土地又は家屋に対して課する固定資産税の課税標準)地方税法349条1項は,基準年度に係る賦課期日に所在する土地又は家屋に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準は,当該土地又は家屋の基準年度に係る賦課期日における価格で家屋課税台帳等に登録されたもの(以下「登録価格」という。)とすると定めている。 ウ 359条(固定資産税の賦課期日)地方税法359条は,固定資産税の賦課期日は,当該年度の初日の属する年の1月1日とすると定めている。 エ 388条(固定資産税に係る総務大臣の任務)(ア) 1項a 地方税法388条1項は,総務大臣は,固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(以下「評価基準」という。)を定め,これを告示しなければならないと定めている。 b なお,昭和37年法律第51号による改正前の地方税法388条1項は,「自治大臣は,地籍図,土地使用図,土壌分類図,家屋見取図,固定資産売買記録簿その他固定資産の評価に関する資料及び固定資産税の統計を作成するための標準様式を定めて,これを市町村長に示さなければならない。」と定めていたが,同改正により,おおむね上記aの内容に改められた。 (イ) 2項a 地方税法388条2項は,総務大臣は,評価基準を定めようとするときは,地方財 示さなければならない。」と定めていたが,同改正により,おおむね上記aの内容に改められた。 (イ) 2項a 地方税法388条2項は,総務大臣は,評価基準を定めようとするときは,地方財政審議会の意見を聴かなければならないと定めている。 b なお,昭和37年法律第51号により地方税法388条の2が追加され,同条1項は,「中央固定資産評価審議会は,次項各号に掲げる事項その他固定資産の評価に関する事項で自治大臣がその意見を求めたものについて調査審議する。」と定め,同条2項柱書は「自治大臣は,次の各号に掲げる事項については,中央固定資産評価審議会の意見をきかなければならない。」とし,同項1号には,「前条第1項の固定資産評価基準に関すること。」との定めがあった。同条は,その後,平成11年法律第102号により削除され,地方税法388条2項は,同年法律第160号により上記aの内容に改められた。 オ 403条(固定資産の評価に関する事務に従事する市町村の職員の任務)(ア) 地方税法403条1項は,市町村長は,同法の規定により道府県知事又は総務大臣が固定資産を評価する場合を除いて,評価基準によって,固定資産の価格を決定しなければならない旨を定めている。 (イ) なお,昭和37年法律第51号による改正前の地方税法403条1項は,「市町村長は,第389条又は第743条の規定によって道府県知事又は自治大臣が固定資産を評価する場合を除く外,自治大臣が示した評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続に準じて,固定資産の価格を決定しなければならない。」と定めていたが,同改正により,おおむね上記(ア)の内容に改められた。 (2) 評価基準(昭和38年自治省告示第158号。以下,本件家屋の平成21年度登録価格の決定に適用された評価基準(平成21年総 定めていたが,同改正により,おおむね上記(ア)の内容に改められた。 (2) 評価基準(昭和38年自治省告示第158号。以下,本件家屋の平成21年度登録価格の決定に適用された評価基準(平成21年総務省告示第225号による改正前のもの。)を「平成21年度評価基準」といい,他の年度 についても同様に略記する。)平成21年度評価基準は,家屋について,以下のとおり定める(甲3。以下の内容については,平成24年度評価基準も同じ。)。 ア家屋の評価は,木造家屋及び木造家屋以外の家屋(以下「非木造家屋」という。)の区分に従い,各個の家屋について評点数を付設し,当該評点数に評点1点当たりの価額を乗じて各個の家屋の価額を求める方法によるものとする(第2章第1節一)。 イ非木造家屋の評点数は,当該非木造家屋の再建築費評点数を基礎として,これに損耗の状況による減点補正率を乗じて付設するものとし,次の算式によって求めるものとする(以下「再建築価格方式」という。)。この場合において,当該非木造家屋について需給事情による減点を行う必要があると認めるときは,当該非木造家屋の評点数は,次の算式によって求めた評点数に需給事情による減点補正率を乗じて求めるものとする。 〔算式〕評点数=再建築費評点数×経過年数に応ずる減点補正率(経過年数に応ずる減点補正率によることが,天災,火災その他の事由により当該非木造家屋の状況からみて適当でないと認められる場合にあっては,評点数=(部分別再建築費評点数×損耗の程度に応ずる減点補正率)の合計)(以上につき,第2章第3節一1)ウ非木造家屋の損耗の状況による減点補正率は,経過年数に応ずる減点補正率(以下「経年減点補正率」という。)によるものとする。ただし,天災,火災,その他の事由により当該非木造家屋の状 第3節一1)ウ非木造家屋の損耗の状況による減点補正率は,経過年数に応ずる減点補正率(以下「経年減点補正率」という。)によるものとする。ただし,天災,火災,その他の事由により当該非木造家屋の状況からみて経年減点補正率によることが適当でないと認められる場合においては,損耗の程度に応ずる減点補正率(以下「損耗減点補正率」という。)によるものとする。 経年減点補正率及び損耗減点補正率の算出要領の要旨は,以下のとおり である。 (ア) 経年減点補正率の算出要領の要旨経年減点補正率は,通常の維持管理を行うものとした場合において,その年数の経過に応じて通常生ずる減価を基礎として定めたものであって,非木造家屋の構造区分に従い,「非木造家屋経年減点補正率基準表」(別表第13)に示されている当該非木造家屋の経年減点補正率によって求めるものとし,同基準表「4 百貨店,ホテル,劇場及び娯楽場用建物」中,各構造別区分の経過年数は以下のとおりであり,最終残価率はいずれの構造区分についても20%である。なお,この経過年数は,ホテルについては平成6年度評価基準(平成5年自治省告示第136号。以下,同告示による改正を「平成5年改正」という。)から平成24年度評価基準まで変更されていない。 a 鉄骨鉄筋コンクリート造,鉄筋コンクリート造 50年b 煉瓦造,コンクリートブロック造及び石造 45年c 鉄骨造(骨格材の肉厚が4mmを超えるもの) 35年d 鉄骨造(骨格材の肉厚が3mmを超え4mm以下のもの) 28年e 鉄骨造(骨格材の肉厚が3mm以下のもの) 20年(イ) 損耗減点補正率の算出要領の要旨損耗減点補正率は,部分別損耗減点補正率基準表(別表第10)によって各部分別に求めた損耗残価率を,当該非木造家屋について非木造家屋経年減点補 の) 20年(イ) 損耗減点補正率の算出要領の要旨損耗減点補正率は,部分別損耗減点補正率基準表(別表第10)によって各部分別に求めた損耗残価率を,当該非木造家屋について非木造家屋経年減点補正率基準表によって求めた経年減点補正率に乗じて各部分別に求めるものとする。損耗残価率は,各部分別の損耗の現況を通常の維持管理を行うものとした場合において,その年数の経過に応じて通常生ずる損耗の状態に修復するものとした場合に要する費用を基礎として定めたものであり,当該非木造家屋の各部分別の損耗の程度に応じ,部分別損耗減点補正率基準表により求めるものとする。ただし,市町村長 は,当該市町村に所在する非木造家屋の損耗の程度,構造等の実態からみて部分別損耗減点補正率基準表を適用することが困難であると認める場合その他特に必要があると認める場合は,部分別損耗減点補正率基準表について所要の補正を行い,これを適用することができるものとする。 損耗減点補正率は,非木造家屋の各部分別ごとに,当該部分別を通じた損耗の状況に応じて一の損耗減点補正率を求めるものとする。 (以上につき,第2章第3節五) 3 前提事実(争いのない事実並びに掲記の各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者等ア原告は,飲食店・ホテル及びスポーツ施設の経営等を目的とする株式会社であり,平成15年12月5日から本件家屋を所有している(甲1,弁論の全趣旨)。 イ本件家屋は昭和62年2月14日に新築されたホテル及び車庫で,その構造は鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根地下1階付10階建であり,登記記録表題部記載の登記事項の概要は別紙1物件目録記載のとおりである(甲1)。 (2) 本件家屋の平成21年度登録価格に関する経緯ア X市長は,本件家屋の平成21年度登 1階付10階建であり,登記記録表題部記載の登記事項の概要は別紙1物件目録記載のとおりである(甲1)。 (2) 本件家屋の平成21年度登録価格に関する経緯ア X市長は,本件家屋の平成21年度登録価格として,家屋課税台帳に10億8716万3662円を登録した(甲2)。 イ原告は,平成21年6月3日,X市固定資産評価審査委員会に対し,本件家屋の平成21年度登録価格を5億7926万2089円とするよう求める旨の審査の申出をした(甲2)。 ウ X市固定資産評価審査委員会は,平成24年3月22日,本件家屋の平成21年度登録価格を9億9545万6565円に変更する旨決定し(本件決定①。甲2),原告は,遅くとも同月27日までに同決定を知った。 エ原告は,平成24年8月31日,甲事件に係る訴えを提起した(顕著な事実)。 (3) 本件家屋の平成24年度登録価格に関する経緯ア X市長は,本件家屋の平成24年度登録価格として,家屋課税台帳に8億8484万8248円を登録した(甲51)。 イ原告は,平成24年6月22日,X市固定資産評価審査委員会に対し,本件家屋の平成24年度登録価格を5億5096万8289円とするよう求める旨の審査の申出をした(甲49)。 ウ X市固定資産評価審査委員会は,平成25年2月1日,上記イの審査の申出を棄却する旨決定し(本件決定②。甲51),原告は,同月5日,同決定を知った。 エ原告は,平成25年3月29日,乙事件に係る訴えを提起した(顕著な事実)。 (4) 調査研究報告書最終残価率及び経過年数に関しては,平成4年9月に社団法人日本建築学会建築経済委員会固定資産評価小委員会により「家屋評価に係る経年減点補正率等に関する調査研究」(以下「日本建築学会報告書」という。丙8),平成19年3月に財団法 は,平成4年9月に社団法人日本建築学会建築経済委員会固定資産評価小委員会により「家屋評価に係る経年減点補正率等に関する調査研究」(以下「日本建築学会報告書」という。丙8),平成19年3月に財団法人資産評価システム研究センターにより「家屋に関する調査研究-家屋評価における経年減点補正率表の見直しに関する調査研究」(以下「平成18年度研究報告書」という。乙4,23),平成21年3月に同センターにより「家屋に関する調査研究」(以下「平成20年度研究報告書」という。乙2,22)の各調査研究報告が出されており,その概要は,別紙2家屋の評価に関する調査結果記載のとおりである。 4 争点(1) 本件では,評価基準の沿革等に関する文献(甲10~13,15,16,19,21,25,26,乙5,6,丙2~7,10など)及び別紙2記載 の各調査結果(乙2,4,22,23,丙8)を踏まえ,原告は,本件各決定において,本件家屋の評価は当該年度の評価基準に基づいて行っているところ,その経年減点補正率のうち,最終残価率が一律に20%と決められていることに加え,経過年数が長きに失するなどとして,上記評価基準に一般的合理性は認められないから,同評価基準に基づいて本件家屋の評価を行うべきではなく,Z不動産鑑定士が不動産鑑定基準に基づいて作成した本件家屋の不動産鑑定書(甲33,65。以下「Z鑑定」という。)に基づいて本件家屋の評価を行うべきであるなどと主張する。これに対して,被告及び参加行政庁(以下「被告ら」という。)は,評価基準には一般的合理性がないとは認められないし,原告がZ鑑定を踏まえて主張する内容は,評価基準に基づく評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情には当たらないと主張する。 (2) 以上のとおりであるから,本件の いし,原告がZ鑑定を踏まえて主張する内容は,評価基準に基づく評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情には当たらないと主張する。 (2) 以上のとおりであるから,本件の争点は,以下のとおりである。 ア本件家屋に適用された評価基準の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的合理性を有するものか否か(争点①)イ本件家屋の評価及び本件各決定の適法性(争点②) 5 争点に関する当事者の主張(1) 争点①(評価基準の一般的合理性)(被告らの主張)ア判断枠組み等(ア) 評価基準の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的合理性を有するか否かについては,地方税法が,全国一律の統一的な基準によって,各市町村全体の評価の均衡を図り,評価に関与する者の個人差に基づく評価の不均衡を解消するため,その適正な時価を算定するための技術的かつ細目的な基準を総務大臣の告示に係る評価基準に委任している趣旨からすれば,評価基準の定める評価方法が適正な時価を 算定する方法として,その委任の趣旨(適正な時価を算定するための技術的かつ細目的な基準を定めること)に反するようなものでないかどうかによって判断されるべきであって,当該評価基準の定めに一定の合理性が認められる場合には,当該評価基準の定めは,委任の趣旨に反するようなものとはいえないから,一般的合理性を有するものと解すべきである。 (イ) 評価基準の一般的合理性の有無の問題は,評価基準それ自体の適法性の問題であって事実の問題でないから,訴訟当事者の立証責任の問題は生じない。もっとも,上記(ア)で指摘した事情に加え,最高裁判所平成25年7月12日第二小法廷判決・民集67巻6号1255頁(以下「平成25年最判」という。)の法廷意見及び補足意見を 証責任の問題は生じない。もっとも,上記(ア)で指摘した事情に加え,最高裁判所平成25年7月12日第二小法廷判決・民集67巻6号1255頁(以下「平成25年最判」という。)の法廷意見及び補足意見を踏まえれば,評価基準の一般的合理性については,原告がその合理性の欠如を明らかにすべき責任を負うものであって,被告がその合理性の存在を証明する責任を負うものではない。 イ本件家屋に適用された評価基準の一般的合理性評価基準は,地方税法388条2項に従い,改正の都度,学識経験者等を委員とする地方財政審議会固定資産評価分科会において審議,了承されており,内容についても以下のとおり一般的な合理性が認められる。 (ア) 再建築価格方式の合理性a 評価基準の制定に当たって,昭和34年4月から2年間にわたり設置された総理大臣の諮問機関である固定資産評価制度調査会では,家屋の評価方法について,取得価格,賃貸料等収益,売買実例価格又は再建築価格のいずれを基準として評価するのが相当かという検討がされた。その際,前三者については問題が指摘された一方,再建築価格は,家屋の価格の構成要素として基本的なものであり,その評価の方式化も比較的容易であることを理由に適切であるとの答申がされた。 評価基準は,上記答申を踏まえ,再建築価格方式を採用したものであり,この考え方は,制定後既に約半世紀を経過して社会に定着しているということができる。したがって,特別の事情がある場合を除き,再建築価格方式によって固定資産税の家屋の評価をすべきであり,評価基準はこの点で合理的である。 b 原告は,収益還元法や原価法によることが適切である旨主張するが,収益還元法は個別的な事情に左右されやすい収益を要因にしており,原価法は再調達原価による建築費の算定や,減価修正における耐用 る。 b 原告は,収益還元法や原価法によることが適切である旨主張するが,収益還元法は個別的な事情に左右されやすい収益を要因にしており,原価法は再調達原価による建築費の算定や,減価修正における耐用年数や観察減価の算定について不動産鑑定士によって相当程度の差異が生じ得るものであり,家屋の評価方法としては不適切である。 (イ) 経過年数の合理性a 評価基準の平成5年改正においては,社団法人日本建築学会に委託して行った調査の結果(日本建築学会報告書。丙8)を参考にしつつ,現実の実情と専門家による知見に基づく検討の結果を踏まえ,非木造家屋について,ほとんどの用途及び構造で,おおむね減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号(甲29の2)。以下,同省令施行前の固定資産の耐用年数等に関する省令(昭和26年大蔵省令第50号。甲29の1)と併せて「耐用年数省令」という。)と一致するように短縮された。 平成5年改正において設定された経過年数は,平成20年度に専門家による検証がされ,妥当と評価されたものである(平成20年度研究報告書(乙2))。 b 原告は,減価償却における固定資産の耐用年数と評価基準における経過年数とは目的及び機能が同じであると主張する。しかし,評価基準の経年減点補正率は,家屋の客観的な交換価値を把握するために,家屋に通常の維持・補修等を行ったものとした場合の経年による減価 を行おうとするものであり,経過年数は,家屋の物理的耐用年数をベースとしつつ社会的耐用年数等を考慮したものである。他方,減価償却は,減価償却資産が収益獲得のために取得・利用されるものであることから,減価償却資産の取得原価を期間的に分配させて収益と対応させることによって企業の利益を適正に明らかにさせようとするもの,又は減価 は,減価償却資産が収益獲得のために取得・利用されるものであることから,減価償却資産の取得原価を期間的に分配させて収益と対応させることによって企業の利益を適正に明らかにさせようとするもの,又は減価償却資産に関する投下資本を何年で回収し次の減価償却資産を取得・整備していくことになるかを示そうとするものであり,その耐用年数は,物理的耐用年数をベースとしつつ経済的耐用年数等を考慮されたものである。したがって,両者は性格が異なるものである。 なお,耐用年数省令は,平成10年度に耐用年数を短縮する改正が行われている一方で,評価基準の経過年数のうち,本件家屋に適用される部分については,平成5年改正以降改正されていない。耐用年数省令の上記改正は,税務会計上,投下資本の回収期間をより短縮するべきであるとの政策的観点から行われたものであって,使用実態に着目する経過年数とは別の観点から行われたものである(丙7,17)。 したがって,平成10年度に耐用年数省令が改正されたことをもって,平成5年改正による経過年数の設定が不合理となったとはいえない。 また,原告は,償却資産の経過年数については評価基準では耐用年数省令に掲げる耐用年数を用いているから,家屋について耐用年数省令と評価基準を同一に論じることはできないとはいえないと主張する。 しかし,評価基準が償却資産については耐用年数省令によって評価することとしているのは,全ての償却資産について再調達価格を個々的に求めることが不可能であるという事情があり,また,償却資産に対する固定資産税は,所有者からの申告手続によるものとしているため,法人税等の税務会計と異なる取扱いをするとすれば,企業は固定資産税のために別の会計経理を強いられ煩瑣な結果となるので,なるべく 法人税等の税務会計の取扱いによることができ のとしているため,法人税等の税務会計と異なる取扱いをするとすれば,企業は固定資産税のために別の会計経理を強いられ煩瑣な結果となるので,なるべく 法人税等の税務会計の取扱いによることができるような評価方法とすることが妥当であると考えられたことによるものである。償却資産と家屋とで異なる扱いをしているからといって,一般的に,経年減点補正率と減価償却との相違がないというのは誤りである。 (ウ) 最終残価率の合理性a 最終残価率は,固定資産税が,資産の保有と市町村の行政サービスとの間に存在する受益関係に着目し,資産価値に応じて課税するものであり,家屋の資産価値については,家屋が居住又は使用のための効用を発揮している限り,最低限度の価値を保持し続けるものと考えることが合理的であることから,その最低限度の価値を最終残価(再建築価格の20%)として設定しているものである。この最終残価率は,現行の評価基準が制定される以前の昭和27年度から現在まで変更されることなく,行政サービスに対する応益課税における水準として定着しているものと考えられる。 そして,最終残価率が20%である点については,専門家による各種の検証において,妥当と評価されたものである(日本建築学会報告書(丙8),平成18年度研究報告書(乙4)及び平成20年度研究報告書(乙2))。 b 原告は,減価償却における固定資産の耐用年数と評価基準における経過年数とは目的及び機能が同じであると主張する。しかし,評価基準の最終残価率は,経過年数を過ぎてもなお家屋として維持・使用されている以上,その客観的価値はゼロとはならず,廃材やスクラップとしての処分価値以上の客観的価値が認められるものとして設定されているものである。他方,減価償却における残存価額は,減価償却資産が耐用年数を経 以上,その客観的価値はゼロとはならず,廃材やスクラップとしての処分価値以上の客観的価値が認められるものとして設定されているものである。他方,減価償却における残存価額は,減価償却資産が耐用年数を経過して用を果たした後において処分した場合に想定される価額として設定されているものである。したがって,両者は性 格が異なるものである。 (原告の主張)ア判断枠組み等(ア) 評価基準は,地方税法が,「適正な時価」を算定する目的で,総務大臣に対して「固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続」を委任した委任立法である。そして,委任立法の内容は,その文言はもとより,法の趣旨や目的,立法過程における議論等を踏まえた上で,委任する授権の趣旨に反しないことを要するところ,評価基準は,固定資産の「適正な時価」を算定するものである以上,対象不動産の客観的な交換価値を評価算定するための基準としての合理性を有していなければならない。 (イ) 課税処分取消訴訟における立証責任は,民事訴訟の通説である法律要件分類説に従って分配されるべきであるところ,課税庁が課税処分を行うためには,課税要件事実の認定が必要であるから,課税要件事実の存否及び課税標準については原則として課税庁側が立証責任を負うとされている。そして,評価基準の一般的合理性は課税の根拠であるから,課税庁側(被告・参加行政庁)において主張・立証すべきである。 イ本件家屋に適用される評価基準の一般的合理性(ア) 評価基準の沿革a 固定資産税は,昭和25年に導入されたが,導入当時に採用された家屋の評価方法のうち,家屋の残価率(残存価格)は3割であり,それに至るまでの経過年数は極めて長いものであった。しかし,当時の実務担当者は,残存価格(残価率)も経過年数も,何らの根拠もなか された家屋の評価方法のうち,家屋の残価率(残存価格)は3割であり,それに至るまでの経過年数は極めて長いものであった。しかし,当時の実務担当者は,残存価格(残価率)も経過年数も,何らの根拠もなかったので,暫定的に決められたものであると述べていた(甲10,11,13,16)。その後,評価基準制定以降の担当者は,評価基準における最終残価率は通常の維持補修を加えた状態において,家屋の 効用を発揮し得る最低限の状態を捉えるとし,少なくとも建築費の20%が限度であるなどと説明するが(甲25,26),何らの科学的実証も伴っていない。したがって,この最終残価率の考え方は,家屋の特質を踏まえたものとして合理性があるとはいえない。 b 評価基準が採用する再建築価格方式は,以下のとおり,歴史的に問題のある方式である。 (a) 家屋の評価は,旧評価基準下から,再建築価格方式等の間接評価方式よりも,個別家屋を直接評価する直接評価方式の方が優れていると認識されていた(甲12)。しかし,直接評価方式は事実上困難なので,不正確であるが間接評価方式(再建築価格方式)を採用し,直接評価方式(部分別損耗減点方式)を併せて使用することとされてきた。 (b) 昭和39年に評価基準を制定するに先立ち審議された固定資産評価制度調査会の答申では,非木造家屋にあっては,正確性確保のため,経年減価方式と部分別損耗減点方式の両方を使用し,原則として「損耗の程度に応ずる減点率」が「経年減点率」より大きいときはそれを,「損耗の程度に応ずる減点率」が「経年減点率」より小さいときは両者の平均をとることが適当とされた(甲18)。しかし,当時の自治省担当者は,この方法ですら必ずしも正確でなく,個別的,直接的方法の重要性を指摘していた(甲19)。 (c) 評価基準は,上記(b)の 者の平均をとることが適当とされた(甲18)。しかし,当時の自治省担当者は,この方法ですら必ずしも正確でなく,個別的,直接的方法の重要性を指摘していた(甲19)。 (c) 評価基準は,上記(b)の答申とは異なり,再建築価格方式が採用された上で,減点補正については,原則が「経年減価方式」によるものとされ,「部分別損耗減点方式」は,例外とされた。 (d) 評価基準は,平成12年自治省告示第217号(以下「平成12年改正」という。)によって,「非木造家屋部分別損耗減点補正率基準表」が「部分別損耗減点補正率基準表」に改められた。これ により,それまで,現状から部分別に損耗減点していたものが,部分別に求めた損耗残価率に,当該非木造家屋について非木造家屋経年減点補正率基準表によって求めた経年減点補正率を乗じて各部分別に求めるものに改められた。したがって,損耗の状況把握が簡易となり,しかも,あいまいな経年減点補正が加味されるものとなった。 (イ) 耐用年数省令との比較a 耐用年数省令で定められていた耐用年数は,同じ時期における評価基準の経過年数より短く,残存価格(残価率)は昭和26年から平成19年まで10%であった。 b 被告らは,減価償却と経年減点補正率は,その趣旨,性格等の違いから,それぞれ全く別の制度となっているため,両者を同一に論じることはできないと主張する。しかし,減価償却の役割は,費用の計上だけではなく,資産の残価を明らかにすることにもある。家屋という資産の残価を明らかにする機能は,減価償却による場合と経年減点補正率に基づく減価による場合とで異なるところはない。 c 減価償却における固定資産の耐用年数は,原則として通常の維持補修を加える場合において,その固定資産の本来の用途用法により現に通常予定される効果を上げるこ 減価による場合とで異なるところはない。 c 減価償却における固定資産の耐用年数は,原則として通常の維持補修を加える場合において,その固定資産の本来の用途用法により現に通常予定される効果を上げることができる効用持続年数によると理解されてきた(甲46,47)。このような理解は,評価基準における経過年数に関する説明と同じである。 d 評価基準では,償却資産の耐用年数については耐用年数省令に掲げる耐用年数によるものとするとされており,これは評価基準が制定された昭和39年以来変わらない。したがって,家屋について耐用年数省令と評価基準を同一に論じることはできないとはいえない。 (ウ) 被告らが提出するデータについて 被告らは,日本建築学会報告書(丙8),平成18年度研究報告書(乙4)及び平成20年度研究報告書(乙2)によって,最終残価率が20%であることや経過年数の一般的合理性が認められると主張する。 しかし,上記各報告書は,研究主体等に問題がある上,その内容にも不合理な点があり,信用性はない。 (2) 争点②(本件家屋の評価及び本件各決定の適法性)(被告らの主張)ア原告は,Z鑑定による評価額が本件家屋の適正な時価であると主張している。しかし,この原告の主張は,評価基準が定める評価の方法によっては再建築費を適切に算定することができない特別な事情,又は評価基準が定める減点補正を超える減価を要する特別な事情があることを,具体的に主張するものではない。したがって,原告の主張は,主張自体失当であり,本件家屋の評価は,平成21年度及び平成24年度のいずれについても,本件各決定のとおりである。 イなお,Z鑑定による評価額は,以下の点に問題がある。 (ア) Z鑑定は,本件家屋及びその敷地を一体とした収益を基礎として,本件家屋を評価 4年度のいずれについても,本件各決定のとおりである。 イなお,Z鑑定による評価額は,以下の点に問題がある。 (ア) Z鑑定は,本件家屋及びその敷地を一体とした収益を基礎として,本件家屋を評価している。しかし,固定資産税は,収益税ではなく,財産税であるから,当該家屋の収益状況を考慮すべきではない。 (イ) Z鑑定は,本件家屋の再調達原価について,類似の高層シティホテルの建築費から査定したとして,1㎡当たり21万円と評価している。 しかし,再調達原価のうち各工事費用の積算根拠が明らかでない上,一般にシティホテルの建築費用は高額になるのが通常であり,本件家屋のような鉄骨鉄筋コンクリート造ならば1㎡当たり32万5000円という状況であるから,再調達原価の評価に疑問がある。 (ウ) 本件家屋は,正面玄関側に幅19m,奥行き8m,高さ23mの吹抜けがあり,地下階にプールを設けていたことから,これらに関する躯 体工事,内装工事,外部・内部の仕上げ工事,基礎・土工事等の費用が増額する要素があるにもかかわらず,極めて安価なものとなっている。 ウよって,本件各決定は適法である。 (原告の主張)ア上記(1)(原告の主張)で主張したとおり,本件家屋に適用される評価基準には一般的合理性がないから,本件家屋の評価はZ鑑定によらなければならない。 イ Z鑑定(甲33,65)によれば,本件家屋の評価は以下のとおりである。 (ア) 平成24年1月1日の鑑定評価額a 積算価格積算価格は,再調達原価を21万円/㎡と査定した。これは,最近のホテル新築費用の実際例(甲39)との比較,本件家屋の建築工事の規模からすると,十分現実的なものである。 その上で,耐用年数に基づく現価率31.9%を観察減価法による補正0.81で補正し,現価率を25.8 築費用の実際例(甲39)との比較,本件家屋の建築工事の規模からすると,十分現実的なものである。 その上で,耐用年数に基づく現価率31.9%を観察減価法による補正0.81で補正し,現価率を25.8%と算定し,再調達原価に現価率と増床分を含めた延床面積1万0985.93㎡を乗じて,本件家屋の積算価格を5億9520万円と算定した。 b 収益価格一棟の土地建物全体をDCF方式で6年間の分析から7億8840万円と査定し,上記金額に積算価格比61.9%を乗じ,本件家屋の収益価格を4億8800万円と算定した。 c 鑑定評価額以上から,本件家屋の平成24年1月1日時点の鑑定評価額を,積算価格5億9520万円と収益価格4億8800万円の中間価格である5億4160万円と算定した。 (イ) 平成21年1月1日の鑑定評価額本件家屋の平成24年1月1日の鑑定評価額(上記(ア))に各時点の積算価格比を乗じる方法により算定した。 a 再調達原価平成24年1月1日の再調達原価21万円/㎡に建築工事費デフレーター(国交省)106.0/101.4を乗じて再調達原価を22万円/㎡と算定した。 b 減価修正による現価率の査定耐用年数に基づく現価率36.3%を,観察減価法による補正0. 81で補正し,現価率を29.4%と算定した。 c 積算価格の査定再調達原価(22万円/㎡)に現価率(29.4%)と延床面積(1万0985.93㎡)を乗じて本件家屋の積算価格を7億1060万円と算定し,平成24年1月1日時点の鑑定評価額(5億4160万円)に積算価格比(平成24年と平成21年の対比)7億1060万円/5億9520万円を乗じて,本件家屋の平成21年1月1日時点の鑑定評価額を6億4660万円と算定した。 (ウ) Z鑑定についてaZ鑑定は 格比(平成24年と平成21年の対比)7億1060万円/5億9520万円を乗じて,本件家屋の平成21年1月1日時点の鑑定評価額を6億4660万円と算定した。 (ウ) Z鑑定についてaZ鑑定は,原価法,収益還元法及び取引事例比較法を組み合わせて評価額を算定する不動産鑑定基準(甲38)に基づき,本件では取引事例がないため,原価法及び収益還元法から評価額を算定したものであり,その手法,計算に誤りはない。 bX市税務課が定めた1㎡当たり再建築費評点数のうち,平成21年度の評点は15万8486点(1点当たり1円)であり,平成24年度の評点は13万9312点(1点当たり1円)である。これに対して,Z鑑定において用いられた本件家屋の再調達原価は,上記評点よ りも1.3倍から1.5倍高額であり,不当に低いということはない。 cZ鑑定は,甲第33号証7頁「設計・意匠等」欄において,平面形状が凹型になっている点を考慮して鑑定をしているし,基礎底の低さについても,同書証6頁「部分別使用資材」の「基礎」欄に「基礎高さは地表より-8.0m」との記載があるとおり,考慮に入れた上で鑑定をしている。 ウよって,本件決定①のうち6億4660万円を超える部分及び本件決定②のうち5億4160万円を超える部分はそれぞれ違法である。 第3 当裁判所の判断 1 争点①(評価基準の一般的合理性)について(1) 判断枠組みア一般的合理性の意義(ア) 地方税法は,家屋に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準を,当該家屋の基準年度に係る賦課期日における価格で家屋課税台帳又は家屋補充課税台帳に登録されたものとし(同法349条1項),上記の価格とは「適正な時価」をいうと定めているところ(同法341条5号),上記の適正な時価とは,正常な条件の下に成 価格で家屋課税台帳又は家屋補充課税台帳に登録されたものとし(同法349条1項),上記の価格とは「適正な時価」をいうと定めているところ(同法341条5号),上記の適正な時価とは,正常な条件の下に成立する当該家屋の取引価格,すなわち,客観的な交換価値をいうと解される。また,同法は,固定資産税の課税標準に係る固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続を総務大臣の告示に係る評価基準に委ね(同法388条1項),市町村長は,評価基準によって,固定資産の価格を決定しなければならない(同法403条1項)と定めている。上記各規定に照らせば,地方税法は,固定資産税の課税標準に係る適正な時価,すなわち客観的な交換価値を,評価に関与する者の個人差に基づく評価の不均衡を生じることなく算定するための技術的かつ細目的な基準の定めを総務大臣の告示に係る評価基準に委任したものであるといえる。 (イ) そうすると,家屋の基準年度に係る賦課期日における登録価格の決定が違法となるのは,当該登録価格が,①当該家屋に適用される評価基準の定める評価方法に従って決定される価格を上回るときであるか,あるいは,②その評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものではなく,又はその評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情が存する場合であって,同期日における当該家屋の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るときであると解される(平成25年最判参照)。 (ウ) そして,上記(ア)において摘示した各規定に照らせば,当該家屋に適用される評価基準の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するか否かは,上記の地方税法の委任の趣旨等を踏まえ,固定資産税の課税標準に係る適正な時価を算定することができるか 用される評価基準の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するか否かは,上記の地方税法の委任の趣旨等を踏まえ,固定資産税の課税標準に係る適正な時価を算定することができるか否かによって判断するのが相当であり,これに反する見解は採用できない。 イ立証責任等(ア) その上で,上記要件の立証責任について検討するに,固定資産税の納税者による固定資産評価審査委員会の決定の取消しを求める訴え(地方税法434条1項)において,同決定の適法性を基礎付ける事実については,被告である市町村が立証責任を負うところ,上記のとおり,登録価格は固定資産税の課税標準であるから(同法349条,349条の2),登録価格が適正な時価であること(同法341条5号)についても,被告が立証責任を負うものと解される。そして,評価基準は,個別の家屋の評価結果とあいまって登録価格を算定するものであるから(同法408条,409条1項),これもまた登録価格の適法性を基礎付ける要素というべきものである。他方,評価基準の一般的合理性の有無の問題は,評価基準の定めが地方税法による委任の趣旨に沿うものかどう かという法令解釈又はこれに類するものであり,個別の事実関係に基づいて判断される規範的要件とは異なる性質の問題といえる。 そうすると,評価基準の一般的合理性については,厳密な意味での立証責任の問題ではないものの,被告において明らかにする必要があるものと解するのが相当である(平成25年最判参照)。もっとも,評価基準の上記性質に鑑みると,被告が常にこれを基礎付ける事情等を網羅的に明らかにしなければならないわけではなく,原告において一般的合理性がない旨を具体的に主張して争う場合においてはじめて,被告において,その争われている評価方法の趣旨や根拠等を示して る事情等を網羅的に明らかにしなければならないわけではなく,原告において一般的合理性がない旨を具体的に主張して争う場合においてはじめて,被告において,その争われている評価方法の趣旨や根拠等を示して,一般的合理性の存在を明らかにする必要があるものと解するのが相当である。 (イ) 本件においては,原告は,本件家屋に適用された評価基準のうち,経年減点補正率,とりわけ最終残価率及び経過年数について,関連する文献等を踏まえて具体的に主張してこれを争っているものと認められる。 したがって,被告において,本件各決定の適法性を主張立証するためには,評価基準の当該部分についてその趣旨や根拠等を示してその一般的合理性を明らかにする必要がある。 そこで,以下では,評価基準のうち,本件で争われている最終残価率(後記(2))及び経過年数(同(3))について,その一般的合理性の有無を判断した上で,その両方に係る基礎資料の信用性(同(4)),耐用年数省令との異同(同(5))及びその余の点(同(6))について,順次判断する。 (2) 最終残価率についてア評価基準の内容及び原告の主張平成21年度評価基準及び平成24年度評価基準において,経年減点補正率の最終残価率は20%とされており(関係法令等の定め(2)ウ(ア)),これは,評価基準制定時以降一貫して同じ割合とされている(甲20)。 これについて,原告は,最終残価率の設定やその具体的な割合について,固定資産税の性質や評価基準の沿革,データ分析の結果等を踏まえてみても,その一般的合理性は認められない旨主張する。 イデータ分析の結果等(ア) 平成18年度研究報告書(乙4)a 平成18年度研究報告書のうち,木造及び非木造の各区分の固定資産評価事例における部分別評点数割合(別紙2の2(2))によれ 。 イデータ分析の結果等(ア) 平成18年度研究報告書(乙4)a 平成18年度研究報告書のうち,木造及び非木造の各区分の固定資産評価事例における部分別評点数割合(別紙2の2(2))によれば,躯体部分(主要構造部)の割合は,各区分の平均でみると,木造家屋は約20%であり,非木造家屋は40%弱から50%弱であったことが認められる。 b また,平成18年度研究報告書によれば,リファイン建築(建て替える可能性のあった家屋を,すっかり建て替えるのではなく,主要構造部を残しデザインも一新する大改修をいう。)の事例において,①(同じものを新築する場合を想定して見積もられた工事費からリファイン建築として大改修されたものの実際の工事費を控除した金額)が,②(上記新築想定工事費)に占める割合は約45%となったことが認められる(別紙2の2(3))。この結果は,建替えが検討された家屋が有していた残存価値がなお相当程度あったことをうかがわせる事例であるといえる。 (イ) 平成20年度研究報告書(乙2)平成20年度研究報告書(乙2)のうち調査①(別紙2の3(1))によれば,最終残価率に至る経過年数に達した後については,修繕により前回投資額の80%程度回復するとの想定の下において,全ての構造・用途に関する残価率曲線の平均線(なお,弁論の全趣旨によれば,同平均線は,各グラフにおける期間の残価率曲線の線形近似曲線である。)が経年減点補正率曲線をおおむね上回っていることが認められる。これ は,分析の対象家屋数や調査方法等に一定の仮定を置いた上で統計上の処理を行ったものであることによる限界はあるとしても,一定の維持補修を行い,効用を発揮している家屋の持つ価値の割合をうかがわせるものといえる。 ウ検討(ア) 以上に示した平成18年度研究 の処理を行ったものであることによる限界はあるとしても,一定の維持補修を行い,効用を発揮している家屋の持つ価値の割合をうかがわせるものといえる。 ウ検討(ア) 以上に示した平成18年度研究報告書及び平成20年度研究報告書の各調査結果に加え,経年減点補正率によることが適当でない場合には損耗減点補正率が適用されて再建築費評点数の20%を下回る場合もあること(前記関係法令等の定め(2)ウ参照),家屋が使用されている以上一定の価値を有していると解されること,固定資産税が市町村の行政サービスに着目して設けられたという沿革(甲11参照)に照らし各種の行政サービスを享受できる対象であることを根拠に価値を認めることができること等を併せ考慮すれば,家屋の評価基準において経年減点補正率に最終残価率が定められ,その割合が20%とされていることは,適正な時価を算定することのできる方法であるといえる。 (イ) 原告は,廃棄物(撤去家屋)の処分費用を考慮すれば当該家屋の交換価値はマイナス20%になるのであるから,最終残価率の割合は誤りである旨主張する。しかしながら,固定資産税の課税標準である固定資産の価格は「適正な時価」(地方税法341条5号)と定められているところ,その文言からすれば,撤去を前提とした交換価値とは解されず,これに当該家屋の撤去に要する費用が含まれるとはいえない。したがって,原告の上記主張は採用できない。 原告は,日本建築学会報告書(丙8)中,各種構造専用住宅及び共同住宅並びに非木造事務所の寿命調査の結果によれば,ほとんど全ての種類の家屋で残存率が最終的にゼロになっているから,最終残価率の設定は実証データに反する旨主張する。しかし,原告の指摘する調査結果は, ある年度に建築された家屋が特定の年度においてどれくらいの割合の棟 残存率が最終的にゼロになっているから,最終残価率の設定は実証データに反する旨主張する。しかし,原告の指摘する調査結果は, ある年度に建築された家屋が特定の年度においてどれくらいの割合の棟数残存しているかを明らかにしたものであり,残存している家屋が新築時に対してどれくらいの割合の残価を有しているのかを示したものではない。したがって,原告の上記主張は採用できない。 (ウ) 他に上記最終残価率の合理性を覆す事実の主張立証はない。したがって,平成21年度評価基準及び平成24年度評価基準において,経年減点補正率に最終残価率が定められ,その割合は20%とされていることには,一般的合理性があるものといえる。 (3) 経過年数についてア評価基準の内容及び原告の主張平成21年度評価基準及び平成24年度評価基準において,経年減点補正率のうち本件家屋に適用される鉄骨鉄筋コンクリート造,鉄筋コンクリート造建物の経過年数は50年とされ,これは平成5年改正から変わらない(前記関係法令等の定め(2)ウ(ア)a)。これについて,原告は,上記経過年数は耐用年数省令と比べて長きに失する上,データ分析の結果等を踏まえてみても,その一般的合理性は認められない旨主張する。 イデータ分析の結果等(ア) 日本建築学会報告書(丙8)日本建築学会報告書によれば,建物の滅失実態調査による建物寿命の推計,部分別耐用年数の合成による建物耐用年数の算定等の調査の結果,当時の評価基準における経過年数と上記調査による建物平均寿命の80%年数を単純に比較してみると,木造家屋については両者の差はそれほどないが,鉄骨造建物,鉄筋コンクリート造建物及び鉄骨鉄筋コンクリート造建物については,経過年数が上記80%年数の約2倍程度となったことが認められる(別紙3)。そして,同報 ついては両者の差はそれほどないが,鉄骨造建物,鉄筋コンクリート造建物及び鉄骨鉄筋コンクリート造建物については,経過年数が上記80%年数の約2倍程度となったことが認められる(別紙3)。そして,同報告書では,上記結果を踏まえ,建物平均寿命と評価基準における経過年数とは異なった概念の ものであり,単純に比較することはできないが,今回得られた建物平均寿命は実態に近いものと考えられ,その値と経過年数との乖離があまりにも大きいことは好ましいことではない旨の指摘がされた。 (イ) 平成18年度研究報告書(乙4)平成18年度研究報告書によれば,平成18年1月1日時点における各種家屋の平均寿命のうち,鉄筋コンクリート造住宅は59.92年,鉄筋コンクリート造アパートは68.22年,鉄筋コンクリート造事務所は68.27年であったことが認められる(別紙2の2(1))。 (ウ) 平成20年度研究報告書(乙2)平成20年度研究報告書のうち調査②によれば,木造専用住宅,鉄骨造工場・倉庫及び軽量鉄骨造住宅のいずれの家屋においても,評価基準により設定された経過年数を超えた家屋の床面積割合が増加傾向にあることが認められる(別紙2の3(2))。 ウ検討(ア) 平成5年改正のうち,経過年数については,衆議院地方行政委員会決議(平成3年3月7日)において,政府に対し,「居住用家屋の評価について,経年減価の見直しなど次回評価替えまでに改善を検討すること」などを求める旨の決議がされたところ(甲24の1),これを受けて,評価基準の改正に向けた検討が始められ,日本建築学会報告書に係る調査分析が行われ,これらの結果を踏まえて経過年数等の改正が行われた(甲25,乙5,丙8)。そして,上記イ(ア)のとおり,日本建築学会報告書のうち,建物滅失実態調査及び寿命調査の 築学会報告書に係る調査分析が行われ,これらの結果を踏まえて経過年数等の改正が行われた(甲25,乙5,丙8)。そして,上記イ(ア)のとおり,日本建築学会報告書のうち,建物滅失実態調査及び寿命調査の結果によれば,非木造家屋については,経過年数が建物平均寿命の80%年数の約2倍程度となったとの結果が示されたことから,非木造家屋の経過年数を原則として耐用年数省令に合わせるよう改正された(丙6,8)。 以上のとおりであるから,平成6年度評価基準における非木造家屋の 経過年数については,評価の適正化を求める国会の議決を受けて,その時点における相当数の家屋に対する複数の調査及び分析を踏まえて改正が行われたものといえる。そして,その改正内容は,日本建築学会報告書の調査分析結果において指摘された内容に沿うものであるところ,同報告書の調査や分析の方法,内容等について特段問題はうかがわれない。 また,上記イ(イ)及び(ウ)のとおり,平成18年度研究報告書によれば,鉄骨鉄筋コンクリート造の平均寿命は目的により59年から68年であったことに加え,平成20年度研究報告書のうち調査②によれば,評価基準により設定された経過年数を超えた家屋の床面積割合が増加傾向にあることなどが認められるのであるから,後述する原告の指摘を踏まえても,平成21年度評価基準及び平成24年度評価基準のうち,鉄骨鉄筋コンクリート造,鉄筋コンクリート造建物の経過年数(50年)につき,これが長きに失し,当該家屋の適正な時価を算定することができないことをうかがわせる事情を見出すことはできない(なお,原告は,上記各報告書にはいずれも信用性がない旨主張するが,後述するとおり採用できない。)。 (イ) 原告は,日本建築学会報告書(丙8)のうち,建物の滅失調査の結果が評価基準の経過年数に係る お,原告は,上記各報告書にはいずれも信用性がない旨主張するが,後述するとおり採用できない。)。 (イ) 原告は,日本建築学会報告書(丙8)のうち,建物の滅失調査の結果が評価基準の経過年数に係る改正に反映されていない上,耐用年数省令の耐用年数に合わせるというのは理由にならないから,経過年数には一般的合理性がない旨主張する。しかしながら,日本建築学会報告書の調査分析結果は,家屋の調査結果について,一定の統計上の分析を行ったものであるから,これによる調査結果の数値がそのままあるべき経過年数であるとまではいえないし,平成18年度研究報告書及び平成20年度研究報告書によれば,その設定に一般的合理性があることは上記説示のとおりである。したがって,原告の上記主張は採用できない。 (ウ) 他に上記経過年数の設定の合理性を覆す事実の主張立証はない。し たがって,平成21年度評価基準及び平成24年度評価基準において,鉄骨鉄筋コンクリート造,鉄筋コンクリート造建物の経過年数が50年とされていることには,一般的合理性があるといえる。 (4) 基礎資料の信用性についてア各報告書の作成主体等について原告は,日本建築学会報告書(丙8)に係る調査分析の委託者が評価基準の所管課(自治省税務局固定資産税課)であることや,評価及び分析に同課職員が参加していることを挙げて,同報告書の信用性を争っている。 しかし,評価基準の改正に係る基礎資料の収集及び分析の手続について法令に特段の定めは置かれていないし,また,原告が挙げる事情が評価及び分析に類型的に誤りを生じさせるものともいえない。さらに,原告は,平成18年度研究報告書(平成20年度研究報告書も同様)の作成主体である財団法人資産評価システム研究センターの理事の構成が地方税の徴税側出身者で構成されている せるものともいえない。さらに,原告は,平成18年度研究報告書(平成20年度研究報告書も同様)の作成主体である財団法人資産評価システム研究センターの理事の構成が地方税の徴税側出身者で構成されていることを問題視するが,原告の指摘する点をもって上記各報告書の信用性に疑いが生じるとはいえない。 したがって,上記各報告書の作成主体等に係る原告の主張はいずれも採用できない。 イ平成18年度研究報告書について原告は,平成18年度研究報告書の参考資料(別紙2の2(2)(3))については,調査対象となる家屋の棟数が非常に少ないのであるから,これによって評価基準の一般的合理性について論評することはできない旨主張する。原告の指摘するとおり,上記資料については,対象となる家屋が限られているので,統計分析としての意味は慎重に考慮する必要があるし,事例分析については一事例の紹介にとどまるものである点を考慮しなければならない。しかしながら,原告の指摘を踏まえても,これらの調査分析結果をおよそ考慮すべきでないとはいえないし,上記(2)ウで説示したとお り,平成18年度研究報告書は一般的合理性の一資料にとどまるものである。したがって,原告の上記主張は採用できない。 ウ平成20年度研究報告書について原告は,平成20年度研究報告書のうち調査①について,分析に用いた家屋の数が少なく,また,その選定過程が不明であるため,信用性がない旨主張する。原告の指摘するとおり,上記対象家屋はいずれの構造又は用途についても6棟又は7棟であるから(別紙2の3(1)ア(ウ)),分析結果の意味は慎重に考慮する必要がある。しかしながら,これらの調査分析結果をおよそ考慮すべきでないとはいえないし,上記(2)ウで説示したとおり,同報告書は一般的合理性の一資料にとどまるのである 分析結果の意味は慎重に考慮する必要がある。しかしながら,これらの調査分析結果をおよそ考慮すべきでないとはいえないし,上記(2)ウで説示したとおり,同報告書は一般的合理性の一資料にとどまるのであるから,原告の上記主張は採用できない。 また,原告は,上記調査①について,定期的な修繕の仮定を前回投資額の80%,67%又は50%とし,80%の平均線によって最終残価率の合理性を分析している点について,上記仮定自体が経済合理性のないものであるから,これに基づく分析結果に基づいて一般的合理性を肯定することはできない旨主張する。しかしながら,調査①の調査方法は家屋の部分別ごとに耐用年数を設定し,部分別に残価率が0になった場合に個々に修繕を行うというモデルによって残価率を把握するものであるところ(別紙2の3(1)ア(イ)),各部分別に耐用年数を経過した時点で前回投資額の8割を費やして修繕を行うこと自体不合理とまではいえない上,①鉄筋コンクリート造の官庁建築物(中規模事務所建築物)を60年間使用した場合のシミュレーションでは,建設コストと修繕,改善コストがほぼ同程度になっていること(甲66,乙12,13,15,17)や,②修繕費用等の状況を把握できている民間建築物の修繕費用等の累積額が上記シミュレーションに沿うものであること(乙14,16,17)からすると,上記仮定に沿う修繕もあり得るものといえるから,原告の上記主張は採用で きない。なお,原告は上記①について,甲第66号証のうち中規模事務所のデータを用いること自体が不相当であり,本件家屋に近い大規模事務所のデータを用いるべきとも主張するが,両者の延べ床面積からすると,原告の主張は採用できない。 原告は,調査①について,修繕の割合についていずれを採用したとしても,残価率曲線は経年減点補正 模事務所のデータを用いるべきとも主張するが,両者の延べ床面積からすると,原告の主張は採用できない。 原告は,調査①について,修繕の割合についていずれを採用したとしても,残価率曲線は経年減点補正率を下回るのであるから,調査①によって経年減点補正率の一般的合理性は基礎付けられない旨主張する。しかし,上記のとおり,調査①は修繕の時期と金額について一定の仮定を置いた上で,その線形近似曲線によって残価率の推移を明らかにするモデルを採用しているところ,原告の指摘は上記仮定の一部を取り上げて調査①の分析結果として扱うものであるから,同主張は採用できない。 エ小括以上のとおりであるから,基礎資料に関する原告の主張については,一部についてその信用性を慎重に吟味すべきとの指摘としては首肯できるものの,いずれも各報告書の信用性を否定すべきものとまではいえず,いずれも採用できない。 (5) 耐用年数省令との異同についてア原告は,評価基準で定められている最終残価率は,耐用年数省令で定められている残存価格よりも高く,評価基準で定められている経過年数は,耐用年数省令で定められている耐用年数よりも長いと主張し,評価基準の最終残価率及び経過年数は,少なくとも耐用年数省令を超える部分については一般的合理性がない旨主張する。しかし,耐用年数省令は減価償却資産に係る償却費用を毎期適切に配分すること(投下資本の適正な費用配分)を目的とするものであるのに対し,評価基準は通常の維持補修を行うものとした場合において,その年数の経過に応じて通常生ずる減価を基礎としており,家屋として維持存続していることによる効用(実体価値)を 把握しようとしているものであるから,両者は目的が異なるものである。 イまた,原告は,減価償却の役割は,費用の計上だけではなく,残価 家屋として維持存続していることによる効用(実体価値)を 把握しようとしているものであるから,両者は目的が異なるものである。 イまた,原告は,減価償却の役割は,費用の計上だけではなく,残価が資産として計上されるのであるから,資産の残価を明らかにするという点で評価基準と異なるところはない旨主張する。しかしながら,建物の減価償却はその取得価額(法人税法施行令54条)について,同令に定める方法によって行うものとされているところ(同令48条),償却後の残額は,今後投下資本の費用配分が予定されているものを意味するのであって,当該資産の価値そのものを示すものとはいえない。 ウ原告は,評価基準では,償却資産の経過年数については耐用年数省令に掲げる耐用年数によるとされているのであるから,家屋の評価において耐用年数省令によらないのは不合理である旨主張する。しかしながら,家屋と償却資産とは対象が異なる以上,両者の扱いが異なることのみをもって家屋に係る評価基準の一般的合理性が否定されることにはならない。 エ以上のとおりであるから,評価基準と耐用年数省令の異同に係る原告の主張はいずれも採用できない。 (6) その余の点についてア原告は,評価基準による評価方法は再建築価格方式という間接評価にすぎず,不動産鑑定基準による不動産鑑定をはじめとする直接評価法に劣るのであって,これは評価基準制定前の段階で既に指摘されており(甲11,12),固定資産評価制度調査会の答申(甲18)に関する文献(甲19)においても指摘されているとし,より直接的な評価方法である不動産鑑定基準(甲38)による鑑定によるべきである旨主張する。しかしながら,原告の挙げる文献はいずれも評価基準制定前のものであり,その後制定された評価基準の個々の評価方法について検討されたもので 不動産鑑定基準(甲38)による鑑定によるべきである旨主張する。しかしながら,原告の挙げる文献はいずれも評価基準制定前のものであり,その後制定された評価基準の個々の評価方法について検討されたものではなく,上記指摘をもって再建築価格方式によって適切な時価を算定することができないとはいえない。したがって,原告の上記主張は採用できない。 イ原告は,非木造家屋の損耗減点補正について,平成12年改正前の評価基準では非木造家屋部分別損耗減点補正率基準表によって各部分別に求められていたのに対し,同改正により,部分別損耗減点補正率基準表によって各部分別に求めた損耗残価率に,経年減点補正率を乗じて各部分別に求めることとなり,これは損耗による減点補正を間接評価にしたものである旨主張する。 しかしながら,原告の指摘する内容の改正(甲30,弁論の全趣旨)によっても,経年減点補正率によることが相当ではない場合において,個別の損耗の状態を踏まえて減価補正を行うことは変わらないのであるから,原告の指摘する点をもって,平成21年度評価基準及び平成24年度評価基準の一般的合理性に疑義が生じるとはいえない。 (7) 小括以上のとおりであるから,平成21年度評価基準及び平成24年度評価基準の経年減点補正率中,最終残価率が20%であること並びに鉄骨鉄筋コンクリート造及び鉄筋コンクリート造の経過年数が50年であることについては,一般的合理性があるものといえる。 2 争点②(本件家屋の評価及び本件各決定の適法性)について以上のとおり,本件各決定において本件家屋に適用された評価基準にはいずれも一般的合理性があり,本件各決定はいずれも評価基準の定める評価方法に従って評価されたものと認められる(甲2,51)。そして,原告は本件家屋の評価はZ鑑定によるべきであ 適用された評価基準にはいずれも一般的合理性があり,本件各決定はいずれも評価基準の定める評価方法に従って評価されたものと認められる(甲2,51)。そして,原告は本件家屋の評価はZ鑑定によるべきであると主張するが,同鑑定からは上記評価基準の評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情を見出すことはできず,その他本件全証拠によっても,同事情は認められない。 以上のとおりであるから,本件各決定は,いずれも適法である。 3 結論よって,原告の各請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文の とおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官山田 明 裁判官岩佐圭祐 裁判官安藤巨騎 (別紙1,2省略)
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